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JP3799921B2 - 容量可変型圧縮機の制御装置 - Google Patents

容量可変型圧縮機の制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用空調装置の冷媒循環回路を構成し、車両の駆動源に補機として駆動される容量可変型圧縮機の吐出容量を制御するための制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に車両用空調装置の冷媒循環回路(冷凍サイクル)は、凝縮器、減圧装置としての膨張弁、蒸発器及び圧縮機を備えている。圧縮機は蒸発器からの冷媒ガスを吸入して圧縮し、その圧縮ガスを凝縮器に向けて吐出する。蒸発器は冷媒循環回路を流れる冷媒と車室内空気との熱交換を行う。熱負荷又は冷房負荷の大きさに応じて、蒸発器周辺を通過する空気の熱量が蒸発器内を流れる冷媒に伝達されるため、蒸発器の出口又は下流側での冷媒ガス圧力は冷房負荷の大きさを反映する。
【0003】
車載用の圧縮機として広く採用されている容量可変型斜板式圧縮機には、蒸発器の出口圧力(吸入圧Psという)を所定の目標値(設定吸入圧という)に維持すべく動作する容量制御機構が組み込まれている。容量制御機構は、冷房負荷の大きさに見合った冷媒流量となるように吸入圧Psを制御指標として圧縮機の吐出容量つまり斜板角度をフィードバック制御する。かかる容量制御機構の典型例は、内部制御弁と呼ばれる制御弁である。内部制御弁ではベローズやダイヤフラム等の感圧部材で吸入圧Psを感知し、感圧部材の変位動作を弁体の位置決めに利用して弁開度調節を行うことにより、斜板室(クランク室ともいう)の圧力(クランク圧)を調節して斜板角度を決めている。
【0004】
また、単一の設定吸入圧しか持ち得ない単純な内部制御弁では細やかな空調制御要求に対応できないため、外部からの電気制御によって設定吸入圧を変更可能な設定吸入圧可変型制御弁も存在する。設定吸入圧可変型制御弁は例えば、前述の内部制御弁に電磁ソレノイド等の電気的に付勢力調節可能なアクチュエータを付加し、内部制御弁の設定吸入圧を決めている感圧部材に作用する機械的バネ力を外部制御によって増減変更することにより、設定吸入圧の変更を実現するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
車載用圧縮機は一般に、内燃機関等の車両の駆動源から動力供給を受けて駆動される。圧縮機は内燃機関の動力を最も消費する補機の一つであり、内燃機関にとって大きな負荷であることは間違いない。それ故、車両用空調装置は、車両の急加速時等において内燃機関の動力性能を車両の走行に極力振り向けたい時には、圧縮機の吐出容量を最小化することで、内燃機関の圧縮機駆動負荷を低減するような制御(一時的な負荷低減措置としての加速カット制御)を行うようにプログラムされている。前述の設定吸入圧可変弁付き容量可変型圧縮機を用いた空調装置では、制御弁の設定吸入圧を通常の設定吸入圧よりも高い値に変更することで現吸入圧を新設定圧に比して低い値とすることにより、圧縮機の吐出容量を最小化する方向に誘導して実質的な加速カット制御を実現している。
【0006】
ところが、設定吸入圧可変弁付きの容量可変型圧縮機の動作を詳細に解析したところ、吸入圧Psを指標としたフィードバック制御を介在させる限り、目論見通りの加速カット制御が常に実現するわけではないということが判明した。
【0007】
図8のグラフは、吸入圧Psと圧縮機の吐出容量Vcとの相関関係を概念的に表したものである。このグラフから分かるように、吸入圧Psと吐出容量Vcとの相関曲線(特性線)は一種類ではなく、蒸発器での熱負荷の大きさに応じて複数の相関曲線が存在する。このため、ある圧力Ps1をフィードバック制御の目標値たる設定吸入圧として与えたとしても、熱負荷の状況によって制御弁の自律動作に基づいて実現される実際の吐出容量Vcには一定幅(グラフではΔVc)のばらつきが生じてしまう。例えば、蒸発器の熱負荷が過大な場合には、設定吸入圧を十分に高くしたつもりでも、実際の吐出容量Vcは内燃機関の負荷を低減するところまで落ちきらないという事態が生じ得る。つまり吸入圧Psに依拠した制御では、単に設定吸入圧を高い値に設定変更しても、蒸発器での熱負荷の変化が追従してこなければ、即座に吐出容量を落とせないというジレンマがある。
【0008】
蒸発器での熱負荷を反映する吸入圧Psに基づいて容量可変型圧縮機の吐出容量Vcを調節する制御手法は、車外の寒暖の変化にかかわらず、人間の快適感を左右する室温の安定維持を図るという空調装置本来の目的を達成する上では極めて妥当な制御手法であった。しかし、上記加速カット制御にみられるように、空調装置本来の目的を一時的に放棄してでも、内燃機関の事情を最優先して緊急避難的に迅速な吐出容量ダウンを実現し、その後に衝撃等を回避できる復帰パターンでもって元の吐出容量Vcまで復帰させるという制御を実現するには、吸入圧Psに依拠した制御では十分に対応できないというのが実状である。
【0009】
本発明の目的は、蒸発器での熱負荷状況に影響されることなく、室温の安定維持を図るための圧縮機の吐出容量制御と、車両の駆動源の高負荷時における吐出容量の迅速な変更及びその後の復帰とを両立させることが可能な容量可変型圧縮機の制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、車両用空調装置の冷媒循環回路を構成し、車両の駆動源に補機として駆動される容量可変型圧縮機の吐出容量を制御するための制御装置において、前記冷媒循環回路に設定された、容量可変型圧縮機の吐出容量が反映される二つの圧力監視点間の差圧を検出する差圧検出手段と、前記車両用空調装置の冷房負荷を検出する冷房負荷検出手段と、前記駆動源の負荷を検出する駆動源負荷検出手段と、前記冷房負荷検出手段からの冷房負荷情報に基づいて、二つの圧力監視点間の差圧の制御目標となる設定差圧を算出する設定差圧算出手段と、前記駆動源負荷検出手段からの駆動源負荷情報に基づいて、駆動源が高負荷状態にあるか否かを判定する駆動源負荷判定手段と、前記駆動源負荷判定手段の判定に基づき、駆動源が高負荷状態にある場合には二つの圧力監視点間の差圧に制限値を設定する制限値設定手段と、前記設定差圧算出手段により算出された設定差圧と制限値設定手段により設定された制限値とを比較し、設定差圧の示唆する容量可変型圧縮機の吐出容量が制限値の示唆する吐出容量以下であれば設定差圧を、設定差圧の示唆する吐出容量が制限値の示唆する吐出容量を上回るなら制限値を新たな設定差圧として取り扱う設定差圧決定手段と、前記設定差圧決定手段からの設定差圧に差圧検出手段が検出した差圧が近づくように容量可変型圧縮機の吐出容量を制御する圧縮機制御手段とを備えたことを特徴とする容量可変型圧縮機の制御装置である。
【0011】
この構成においては、容量可変型圧縮機の吐出容量制御に影響を及ぼす圧力要因として、容量可変型圧縮機の吐出容量が反映される冷媒循環回路における二つの圧力監視点間の差圧を利用している。従って、設定差圧決定手段により決定された設定差圧に基づいて、この設定差圧を維持するように圧縮機の吐出容量を制御する圧縮機制御手段を採用することで、圧縮機の負荷トルクと相関性を持つ吐出容量を直接的に制御することが可能となり、従来の吸入圧感応型制御弁が内在していた欠点を克服することができる。つまり、通常時において室温の安定維持を図るための圧縮機の吐出容量制御が可能となるのみならず、車両の急加速時等、駆動源の負荷が高い場合において緊急避難的な吐出容量の迅速な変更及びその後の復帰を実現することが可能となる。
【0012】
ここで、車両の運転者が、例えばアクセルペダルを大きく踏み込んで急加速要求を意思表示したとする。従って、駆動源負荷検出手段としての例えばアクセル開度センサからのアクセル開度が所定値以上となり、それに基づいて駆動源負荷判定手段は駆動源が高負荷状態にあると判定する。この駆動源の高負荷状態に応じて、制限値設定手段は二つの圧力監視点間の差圧に制限値を設定するとともに、設定差圧決定手段はこの制限値と冷房負荷に応じて算出された設定差圧とを比較する。そして、設定差圧決定手段は、設定差圧の示唆する容量可変型圧縮機の吐出容量が制限値の示唆する吐出容量以下であれば、つまり設定差圧が実現された場合の圧縮機の消費動力が、急加速要求を満たそうとする駆動源の足かせにはならないと判定された場合には、冷房負荷に応じて算出された設定差圧を取り扱う。従って、この設定差圧に基づいて、圧縮機制御手段により制御される圧縮機の吐出容量は冷房負荷に応じたものとなり、空調が無駄な犠牲を強いられることはない。よって、所定値以上のアクセル開度に応じて一義的に圧縮機の吐出容量を最小とする従来の加速カット制御と比較して、車両の加速性能を同等に発揮させることができてなおかつ空調の犠牲を少なくすることができる。
【0013】
請求項2の発明は、前記駆動源負荷判定手段は駆動源の高負荷の度合を判定し、制限値設定手段は駆動源の高負荷の度合に応じて制限値を調節することを特徴としている。
【0014】
この構成において駆動源負荷判定手段は、例えばアクセル開度が所定値以上であってもこの所定値付近であるなら、急加速要求(高負荷)の度合は小さいと判定する。従って、制限値設定手段は、この急加速要求の度合が小さいことに応じて制限値を緩く(吐出容量を大きめに)調節する。従って、設定差圧算出手段が算出した設定差圧の示唆する吐出容量が、この緩い制限値の示唆する吐出容量を上回り、設定差圧決定手段が制限値を新たな設定差圧として取り扱ったとしても、冷媒循環回路(冷凍サイクル)における冷媒流量はある程度多く確保されることとなる。その結果、駆動源の動力性能が、運転者の急加速要求を満たすよりも余分に、圧縮機の駆動から加速へ振り向けられてしまうことがなく、空調が過度な犠牲を強いられることがない。よって、車両の加速性能の発揮と空調の犠牲を少なくすることとを高次元で両立することができる。
【0015】
請求項3の発明は、前記容量可変型圧縮機は、カムプレートを収容するクランク室の内圧を制御することで吐出容量を変更可能であり、前記圧縮機制御手段は、弁開度調節によりクランク室の内圧を調節可能な制御弁を備え、前記制御弁は、二つの圧力監視点間の差圧を機械的に検出する差圧検出手段を内蔵し、この差圧検出手段が検出した差圧に基づいて自律的に弁体の開度調節が可能であって、さらにはこの自律的な開度調節動作の基準となる設定差圧決定手段からの設定差圧に基づく弁体への付与荷重を、外部からの電気制御によって変更可能な電気駆動部を備えていることを特徴としている。
【0016】
この構成においては、例えば二つの圧力監視点の圧力をそれぞれ電気的に検出して弁体の位置決めに反映させるような複雑な構成(圧力センサ等)や複雑な電気駆動部の電気制御プログラムを必要としない。また、クランク室の内圧の制御構成として、例えば、冷媒循環回路の主回路である冷凍サイクルの高圧領域からクランク室への冷媒ガスの導入量、及びクランク室から冷凍サイクルの低圧領域への冷媒ガスの導出量の少なくとも一方を調節することで行なう構成を採用したとする。この場合、冷凍サイクルの高圧領域からクランク室を経由して冷凍サイクルの低圧領域へ至る容量制御用の冷媒回路は、冷媒循環回路の副回路として捉えることができる。つまりこの副回路に圧力監視点を設定しても良い。
【0017】
請求項4の発明は、前記設定差圧決定手段は、設定差圧を制限値とした後に、設定差圧をこの制限値から設定差圧算出手段により算出された設定差圧に変更する場合には、この設定差圧の変更を所定時間かけて徐々に行なうことを特徴としている。
【0018】
この構成においては、圧縮機の吐出容量の変更過程における衝撃や異音の発生を効果的に防止又は抑制することが可能となる。
請求項5の発明は、現時点で判明している冷房負荷検出手段の一例を具体化したものである。すなわち、前記冷房負荷検出手段は、車室温度と相関性のある温度を検出する温度センサと、所望温度を設定するための温度設定器とを備え、設定差圧算出手段は温度センサからの検出温度情報と温度設定器からの設定温度情報とに基づいて設定差圧を算出することを特徴としている。
【0019】
請求項6の発明は、現時点で判明している駆動源負荷検出手段の一例を具体化したものである。すなわち、前記駆動源負荷検出手段はアクセル開度センサを備え、前記駆動源負荷判定手段はアクセル開度センサからのアクセル開度情報に基づいて駆動源の負荷状態の判定を行なうことを特徴としている。なお、アクセル開度情報は、アクセル開度の絶対量であっても良いし、アクセル開度の単位時間当たりの増加量であっても良い。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、車両用空調装置の冷媒循環回路を構成する容量可変型斜板式圧縮機の制御装置について図1〜図7を参照して説明する。
【0021】
(容量可変型斜板式圧縮機)
図1に示すように容量可変型斜板式圧縮機(以下単に圧縮機とする)は、シリンダブロック11と、その前端に接合固定されたフロントハウジング12と、シリンダブロック11の後端に弁・ポート形成体13を介して接合固定されたリヤハウジング14とを備えている。クランク室15は、シリンダブロック11とフロントハウジング12とで囲まれた領域に区画されている。駆動軸16は、クランク室15を挿通するようにして、シリンダブロック11及びフロントハウジング12によって回転可能に支持されている。ラグプレート17は、クランク室15において駆動軸16に一体回転可能に固定されている。
【0022】
前記駆動軸16の前端部は動力伝達機構PTを介して、車両の駆動源としての内燃機関Egに作動連結されている。動力伝達機構PTは、外部からの電気制御によって動力の伝達/遮断を選択可能なクラッチ機構(例えば電磁クラッチ)であってもよく、又は、そのようなクラッチ機構を持たない常時伝達型のクラッチレス機構(例えばベルト/プーリの組合せ)であってもよい。なお、本件では、クラッチレスタイプの動力伝達機構PTが採用されているものとする。
【0023】
カムプレートとしての斜板18は前記クランク室15に収容されている。斜板18は、駆動軸16にスライド移動可能でかつ傾動可能に支持されている。ヒンジ機構19は、ラグプレート17と斜板18との間に介在されている。従って、斜板18は、ヒンジ機構19を介したラグプレート17との間でのヒンジ連結、及び駆動軸16の支持により、ラグプレート17及び駆動軸16と同期回転可能であると共に駆動軸16の軸線方向へのスライド移動を伴いながら駆動軸16に対し傾動可能となっている。
【0024】
複数(図面には一つのみ示す)のシリンダボア20は、前記シリンダブロック11において駆動軸16を取り囲むようにして貫設形成されている。片頭型のピストン21は、各シリンダボア20に往復動可能に収容されている。シリンダボア20の前後開口は、弁・ポート形成体13及びピストン21によって閉塞されており、このシリンダボア20内にはピストン21の往復動に応じて容積変化する圧縮室が区画されている。ピストン21はシュー28を介して斜板18の外周部に係留されている。従って、駆動軸16の回転に伴う斜板18の回転運動が、シュー28を介してピストン21の往復運動に変換される。
【0025】
吸入圧力(Ps)領域を構成する吸入室22及び吐出圧力(Pd)領域を構成する吐出室23は、前記弁・ポート形成体13とリヤハウジング14とで囲まれた領域にそれぞれ区画されている。そして、吸入室22の冷媒ガスは、ピストン21の上死点位置から下死点側への移動により、弁・ポート形成体13の吸入ポート24及び吸入弁25を介してシリンダボア20(圧縮室)へ吸入される。シリンダボア20に吸入された冷媒ガスは、ピストン21の下死点位置から上死点側への移動により所定の圧力にまで圧縮された後に、弁・ポート形成体13の吐出ポート26及び吐出弁27を介して吐出室23へ吐出される。
【0026】
前記斜板18の傾斜角度(駆動軸16に直交する仮想平面との間でなす角度)は、シリンダボア20(圧縮室)の内圧と、ピストン21の背圧であるクランク室15の内圧(クランク圧Pc)との関係を変更することで調節可能である。本実施形態においては、クランク圧Pcを積極的に変更することで斜板18の傾斜角度を調節する。
【0027】
(冷媒循環回路)
図1及び図2に示すように、車両用空調装置の冷媒循環回路(冷凍サイクル)は、上述した圧縮機と外部冷媒回路35とから構成される。外部冷媒回路35は、凝縮器36、減圧装置としての温度式膨張弁37及び蒸発器38を備えている。膨張弁37の開度は、蒸発器38の出口側又は下流側に設けられた感温筒37aの検知温度および蒸発圧力(蒸発器38の出口圧力)に基づいてフィードバック制御される。膨張弁37は、熱負荷に見合った液冷媒を蒸発器38に供給して外部冷媒回路35における冷媒流量を調節する。流通管39は、外部冷媒回路35の下流域において、蒸発器38の出口と圧縮機の吸入室22とを接続している。流通管40は、外部冷媒回路35の上流域において、圧縮機の吐出室23と凝縮器36の入口とを接続している。圧縮機は外部冷媒回路35の下流域から吸入室22に導かれた冷媒ガスを吸入して圧縮し、圧縮したガスを外部冷媒回路35の上流域へとつながる吐出室23に吐出する。
【0028】
さて、冷媒循環回路を流れる冷媒の流量が大きくなるほど、回路又は配管の単位長さ当りの圧力損失も大きくなる。つまり、冷媒循環回路に沿って設定された第1圧力監視点P1と第2圧力監視点P2との間の圧力損失(差圧)は、この冷媒循環回路における冷媒流量と正の相関を示す。従って、この第1圧力監視点P1のガス圧力(P1圧力)PdHと第2圧力監視点P2のガス圧力(P2圧力)PdLとの差(二点間差圧(PdH−PdL))を把握することは、冷媒循環回路における冷媒流量を間接的に検出することに他ならない。本実施形態では、流通管40の最上流域に当たる吐出室23内に上流側(高圧側)の第1圧力監視点P1を定めると共に、そこから所定距離だけ離れた流通管40の途中に、下流側(低圧側)の第2圧力監視点P2を定めている。
【0029】
なお、前記冷媒循環回路における冷媒流量は、圧縮機において駆動軸16の単位回転あたりの冷媒ガス吐出量(吐出容量)と、駆動軸16の回転速度との積で表すことができる。駆動軸16の回転速度は、内燃機関Eg(その出力軸)の回転速度と動力伝達機構PTのプーリ比とから算出することができる。つまり、内燃機関Egの回転速度が一定の条件下では、圧縮機の吐出容量が増大すれば冷媒循環回路における冷媒流量も増大し、圧縮機の吐出容量が減少すれば冷媒流量も減少する。逆に、圧縮機の吐出容量が一定の条件下では、内燃機関Egの回転速度が増大すれば冷媒循環回路における冷媒流量も増大し、内燃機関Egの回転速度が減少すれば冷媒流量も減少する。
【0030】
前記流通管40において両圧力監視点P1,P2間には、二点間差圧拡大手段としての固定絞り43が配設されている。固定絞り43は、両圧力監視点P1,P2をそれ程離して設定しなくとも、二点間差圧(PdH−PdL)を明確化(拡大)する役目をなしている。このように、固定絞り43を両圧力監視点P1,P2間に備えることで、特に第2圧力監視点P2を圧縮機(吐出室23)寄りに設定することができ、ひいてはこの第2圧力監視点P2と圧縮機に備えられている制御弁46との間の後記第2検圧通路42を短くすることができる。
【0031】
(制御装置を構成するクランク室の圧力制御機構)
図1及び図2に示すように、圧縮機のクランク圧Pcを制御するためのクランク圧制御機構は、抽気通路31、第1検圧通路41、第2検圧通路42、及びクランク通路44並びに制御弁46によって構成されている。抽気通路31はクランク室15と吸入室22とを連通する。第1検圧通路41は、冷媒循環回路の第1圧力監視点P1と制御弁46とを連通する。第2検圧通路42は、冷媒循環回路の第2圧力監視点P2と制御弁46とを連通する。クランク通路44は制御弁46とクランク室15とを連通する。
【0032】
そして、制御弁46の開度を調節することで、第2検圧通路42及びクランク通路44(所謂給気通路)を介した第2圧力監視点P2からクランク室15への高圧な吐出ガスの導入量と、抽気通路31を介したクランク室15から吸入室22へのガス導出量とのバランスが制御され、クランク圧Pcが決定される。クランク圧Pcの変更に応じて、ピストン21を介してのクランク圧Pcとシリンダボア20の内圧との差が変更され、斜板18の傾斜角度が変更される。斜板18の傾斜角度の変更に応じて、ピストン21のストロークすなわち吐出容量が調節される。
【0033】
(制御弁)
図3及び図4に示すように圧縮機制御手段を構成する制御弁46は、その上半部を占める入れ側弁部51と、下半部を占める電気駆動部としてのソレノイド部52とを備えている。入れ側弁部51は、第2圧力監視点P2とクランク室15とを接続する給気通路42,44の開度(絞り量)を調節する。ソレノイド部52は、制御弁46内に配設された作動ロッド53を、外部からの通電制御に基づき付勢制御するための一種の電磁アクチュエータである。作動ロッド53はその図面上端部から下端部に向かって、区画部54、連結部55、弁体としての弁部56及びガイドロッド部57を同順に備えている。弁部56はガイドロッド部57の一部にあたる。連結部55の軸直交断面積を「S3」、ガイドロッド部57(弁部56)の軸直交断面積を「S4」とすると、S4>S3の関係が成り立っている。
【0034】
前記制御弁46のバルブハウジング58は、栓体58aと、入れ側弁部51の主な外郭を構成する上半部本体58bと、ソレノイド部52の主な外郭を構成する下半部本体58cとから構成されている。弁室59及び連通路60は、バルブハウジング58の上半部本体58b内に区画されている。第1圧力室としての高圧室65は、上半部本体58bとその上部に螺入された栓体58aとの間に区画されている。作動ロッド53は、弁室59、連通路60及び高圧室65内に、バルブハウジング58の軸線方向(図面上下方向)へ移動可能に配設されている。弁室59及び連通路60は作動ロッド53の配置次第で連通可能となる。
【0035】
前記弁室59の底壁は、ソレノイド部52を構成する固定鉄心70の上端面によって提供されている。第1ポート62は、弁室59を取り囲むバルブハウジング58の周壁において、その半径方向に延びるようにして設けられている。第1ポート62は、第2検圧通路42を介して弁室59を第2圧力監視点P2に連通させる。従って、第2圧力監視点P2のP2圧力PdLが、第2検圧通路42及び第1ポート62を介して弁室59に導入されている。第2ポート63は、連通路60を取り囲むバルブハウジング58の周壁において、その半径方向に延びるようにして設けられている。第2ポート63は、クランク通路44を介して連通路60をクランク室15に連通させる。従って、弁室59及び連通路60は、第2圧力監視点P2の圧力をクランク室15に供給するための制御弁内給気通路を構成する。
【0036】
前記作動ロッド53の弁部56は弁室59内に配置されている。連通路60の口径面積S1は、ガス流通が妨げられないように、それに挿通される作動ロッド53の連結部55の軸直交断面積S3より大きくされている。また、連通路60の口径面積S1は、ガイドロッド部57(弁部56)の軸直交断面積S4より小さくされている。このため、弁室59と連通路60との境界に位置する段差は弁座64として機能し、連通路60は一種の弁孔となる。作動ロッド53が図3の位置(最下動位置)から弁部56が弁座64に着座する最上動位置へ上動されると、連通路60が遮断される。つまり作動ロッド53の弁部56は、給気通路42,44の開度を任意調節可能な入れ側弁体として機能する。
【0037】
前記作動ロッド53の区画部54は高圧室65に挿入されている。この区画部54は高圧室65と連通路60との間の圧力隔壁の役目を果たし、両者60,65の直接連通を許容しない。区画部54のシール部分(圧力隔壁として機能する部分)の軸直交断面積を「S2」とすると、この軸直交断面積S2は連通路60の口径面積S1と同じとなっている(S1=S2)。
【0038】
第3ポート67は、前記高圧室65を取り囲むバルブハウジング58の周壁に設けられている。高圧室65は、第3ポート67及び第1検圧通路41を介して、第1圧力監視点P1である吐出室23と常時連通されている。従って、P1圧力PdHが第1検圧通路41及び第3ポート67を介して高圧室65に導入されている。戻しバネ68は前記高圧室65に収容されている。この戻しバネ68は、区画部54(作動ロッド53)を高圧室65から弁室59に向けて付勢する。
【0039】
前記ソレノイド部52は有底円筒状の収容筒69を備えている。固定鉄心70は収容筒69の上部に嵌合され、この嵌合により収容筒69内には第2圧力室としてのプランジャ室71が区画されている。プランジャ(可動鉄心)72は、プランジャ室71内にバルブハウジング58の軸線方向へ移動可能に収容されている。ガイド孔73は固定鉄心70に形成され、このガイド孔73内には作動ロッド53のガイドロッド部57が、バルブハウジング58の軸線方向に移動可能に配置されている。ガイド孔73の内壁面とガイドロッド部57との間には若干の隙間(図示略)が確保されており、この隙間を介して弁室59とプランジャ室71とは常時連通されている。つまり、プランジャ室71には弁室59の圧力、つまり第2圧力監視点P2のP2圧力PdLが導入されている。
【0040】
前記作動ロッド53のガイドロッド部57はその下端部がプランジャ室71内に延出され、この延出部分にはプランジャ72が嵌合固定されている。従って、プランジャ72と作動ロッド53とは一体となって上下動する。緩衝バネ74はプランジャ室71に収容されている。この緩衝バネ74の付勢力は、プランジャ72を固定鉄心70に近接させる方向に作用してプランジャ72及び作動ロッド53を図面上方に付勢する。この緩衝バネ74は戻しバネ68よりもバネ力が弱いものが用いられ、このため戻しバネ68は、プランジャ72及び作動ロッド53を最下動位置(非通電時における初期位置)に戻すための初期化手段として機能する。
【0041】
コイル75は、前記固定鉄心70及びプランジャ72の周囲において、これらを跨ぐ範囲に巻回されている。このコイル75には制御コンピュータ81の指令に基づき駆動回路82から駆動信号が供給され、コイル75はその電力供給量に応じた大きさの電磁力Fを固定鉄心70とプランジャ72との間に発生させる。そして、その電磁力Fによってプランジャ72が固定鉄心70に向かって吸引されて作動ロッド53が上動する。
【0042】
なお、前記コイル75への通電制御は、このコイル75への印加電圧を調整することでなされる。印加電圧の調整は、電圧値そのものを変更する手段と、PWM制御(一定周期のパルス状電圧を印加し、そのパルスの時間的な幅を変更することで平均電圧を調整する方法。印加電圧はパルスの電圧値×パルス幅/パルス周期となる。パルス幅/パルス周期はデューティ比と呼ばれ、PWM制御を応用した電圧制御をデューティ制御と呼ぶこともある)による手段が一般的に採用されている。PWM制御とした場合、電流が脈動的に変化しこれがディザとなって電磁石のヒステリシスを軽減する効果も期待できる。また、コイル電流を測定し、印加電圧調整にフィードバックすることで電流制御とすることも一般的に行われている。本実施形態ではデューティ制御を採用する。制御弁46の構造上、デューティ比Dtを小さくすると弁開度(給気通路42,44の開度)が大きくなり、デューティ比Dtを大きくすると弁開度が小さくなる傾向にある。
【0043】
(制御弁の動作条件及び特性に関する考察)
図3の制御弁46の弁開度は、弁体としての弁部56を含む作動ロッド53の配置如何によって決まる。作動ロッド53の各部に作用する種々の力を総合的に考察することで、この制御弁46の動作条件や特性が明らかとなる。
【0044】
図3及び図4に示すように、作動ロッド53の連結部55には、戻しバネ68の下向きの付勢力f1によって加勢された区画部54の上下の差圧(P1圧力PdH−クランク圧Pc)に基づく下向きの押圧力が作用する。但し、区画部54においてP1圧力PdHの受圧面積はS2であるが、区画部54においてクランク圧Pcの受圧面積は(S2−S3)である。下向き方向を正方向として連結部55に作用する全ての力ΣF1を整理すると、ΣF1は次の数1式のように表される。
【0045】
(数1式)
ΣF1=PdH・S2−Pc(S2−S3)+f1
他方、作動ロッド53のガイドロッド部57(弁部56を含む)には、緩衝バネ74の上向き付勢力f2によって加勢された上向きの電磁付勢力Fが作用する。ここで、弁部56、ガイドロッド部57及びプランジャ72の全露出面に作用する圧力を単純化して考察すると、まず弁部56の上端面56aは、連通路60の内周面から垂下させた仮想円筒面(二本の垂直破線で示す)によって内側部分と外側部分とに分けられ、前記内側部分(面積:S1−S3)にはクランク圧Pcが下向きに作用し、前記外側部分(面積:S4−S1)にはP2圧力PdLが下向きに作用するものとみなすことができる。他方、プランジャ室71に及んでいるP2圧力PdLは、プランジャ72の上下面での圧力相殺を考慮すれば、ガイドロッド部57の軸直交断面積S4に相当する面積でもってガイドロッド部57の下端面57aを上向きに押している。上向き方向を正方向として弁部56及びガイドロッド部57に作用する全ての力ΣF2を整理すると、ΣF2は次の数2式のように表される。
【0046】
(数2式)
ΣF2=F+f2−Pc(S1−S3)−PdL(S4−S1)+PdL・S4
=F+f2+PdL・S1−Pc(S1−S3)
なお、上記数2式を整理する過程で、−PdL・S4と、+PdL・S4とが相殺されてPdL・S1項のみが残った。つまりこの計算過程は、ガイドロッド部57(弁部56を含む)の上下面56a,57a及びプランジャ72の上下面に作用されているP2圧力PdLの影響を、このP2圧力PdLがガイドロッド部57及びプランジャ72の一面(下端面)にのみ集約的に作用するものと仮定して考察するときに、弁部56を含むガイドロッド部57のP2圧力PdLに関する有効受圧面積がS4−(S4−S1)=S1と表現できることを意味している。つまりP2圧力PdLに関する限り、ガイドロッド部57の有効受圧面積は、ガイドロッド部57の軸直交断面積S4にかかわらず、連通路60の口径面積S1に一致する。このように本明細書では、ロッド等の部材の両端に同種の圧力が作用している場合に、その圧力が部材の一方の端部にのみ集約的に作用するものと仮定して考察することを許容するような実質的な受圧面積のことを特に、その圧力に関する「有効受圧面積」と呼ぶことにする。
【0047】
さて、前記作動ロッド53は、区画部54、連結部55、及びガイドロッド部57(弁部56)からなる一体物であるから、その配置は次の数3式に示すΣF1=ΣF2の力学的均衡を充足する位置に決まる。なお、数3式はΣF1=ΣF2を整理した後を示す。
【0048】
(数3式)
PdH・S2−PdL・S1−Pc(S2−S1)=F−f1+f2
ここで、本実施形態においては、連通路60の口径面積S1と区画部54の軸直交断面積S2とが等しくされており(S1=S2)、従って数3式をさらに整理すれば次の数4式となる。
【0049】
(数4式)
PdH−PdL=(F−f1+f2)/S1
上記数4式において、f1,f2,S1は機械設計の段階で一義的に決まる確定的なパラメータであり、電磁付勢力Fはコイル75への電力供給量に応じて変化する可変パラメータである。この数4式から明らかなように図3の制御弁46は、電磁付勢力Fによって決定された二点間差圧(PdH−PdL)の制御目標(設定差圧)を維持するように、この二点間差圧(PdH−PdL)に応じて内部自律的に作動ロッド53を位置決めする。コイル75へのデューティ比Dtを大きくして電磁付勢力Fを大きくすれば設定差圧は大きくなり、逆にデューティ比Dtを小さくして電磁付勢力Fを小さくすれば設定差圧は小さくなる。本実施形態においては、区画部54にてP1圧力PdHを受承するとともに、ガイドロッド部57にてP2圧力PdLを受承する作動ロッド53が差圧検出手段を構成している。
【0050】
(制御体系)
図2及び図3に示すように、車両用空調装置はその制御全般を司る制御コンピュータ81を備えている。制御コンピュータ81は、CPU、ROM、RAM、タイマ及びI/Oインターフェイスを備えている。A/Cスイッチ(乗員が操作する空調装置のON/OFFスイッチ)83、車室内温度Te(t)を検出するための温度センサ84、車室内温度の好ましい設定温度Te(set)を設定するための温度設定器85、内燃機関Egの吸気管路に設けられたスロットル弁の開度又はアクセルペダルの踏み込み量を検知するためのアクセル開度センサ86は、制御コンピュータ81のI/Oの入力端子に接続されている。駆動回路82は、制御コンピュータ81のI/Oの出力端子に接続されている。制御コンピュータ81は、冷房負荷検出手段、駆動源負荷検出手段、設定差圧算出手段、駆動源負荷判定手段、制限値設定手段、設定差圧決定手段及び圧縮機制御手段を構成する。温度センサ84及び温度設定器85は冷房負荷検出手段を構成し、アクセル開度センサ86は駆動源負荷検出手段を構成する。
【0051】
前記制御コンピュータ81は、各検知手段83〜86から提供される各種の外部情報に基づいて適切なデューティ比Dt(設定差圧)を演算し、駆動回路82に対しそのデューティ比Dtでの駆動信号の出力を指令する。駆動回路82は、命じられたデューティ比Dtの駆動信号を制御弁46のコイル75に出力する。コイル75に提供される駆動信号のデューティ比Dtに応じて、制御弁46のソレノイド部52の電磁付勢力Fが変化する。
【0052】
次に、図5〜図7のフローチャートを参照して制御コンピュータ81による制御弁46へのデューティ制御の概要を簡単に説明する。
(メインルーチン)
図5のフローチャートは、空調制御プログラムの幹となるメインルーチンを示す。車両のイグニションスイッチ(又はスタートスイッチ)がONされると、制御コンピュータ81は電力を供給されて演算処理を開始する。制御コンピュータ81は、ステップS101(以下単に「S101」という、他のステップも以下同様)において初導プログラムに従い各種の初期設定を行う。例えば、駆動回路82へ指令するデューティ比Dtを初期値又は暫定値とする。S102では、A/Cスイッチ83がONされるまでこのスイッチ83のON/OFF状況を監視する。A/Cスイッチ83がONされると、S103〜S108において内燃機関Egが高負荷状態であるか否かの判定、及びこの高負荷の度合に応じたデューティ比Dt(設定差圧)の制限値(上限値)Dtlm(x)の設定が行われる。なお、本実施形態においては、内燃機関Egの高負荷状態として、運転者により車両の急加速要求が意思表示された場合を想定している。
【0053】
すなわち、S103では、アクセル開度センサ86のアクセル開度ACC(x)が第1所定値ACC(1)以上であるか否かを判定する。S103判定がNOの場合、つまり運転者がアクセルペダルをそれ程大きく踏み込んでおらず、車両の加速要求が無いかあったとしても急とは呼べない程度と推定できる場合、制御コンピュータ81は駆動回路82へ指令するデューティ比Dtに上限を設けずにS110へジャンプされる。
【0054】
S103判定がYESの場合、つまり運転者がアクセルペダルを大きく踏み込んでおり、加速要求が急と呼べるものであって、場合によっては冷媒循環回路の冷媒流量つまりは圧縮機の消費動力に制限を加える必要があると判断された場合には、S104へ移行される。このS104では、アクセル開度センサ86からのアクセル開度ACC(x)が、第2所定値ACC(2)(>ACC(1))以上であるか否かを判定する。S104判定がNOの場合、つまりACC(1)≦ACC(x)<ACC(2)の場合、急加速要求の度合は小さいと判断される。従って、S105において制御コンピュータ81は、駆動回路82に指令するデューティ比Dtの上限値Dtlm(x)を、制限の最も緩やかな第1上限値Dtlm(1)に設定する。
【0055】
S104判定がYESの場合には、S106においてアクセル開度センサ86からのアクセル開度ACC(x)が、第3所定値ACC(3)(>ACC(2))以上であるか否かを判定する。S106判定がNOの場合、つまりACC(2)≦ACC(x)<ACC(3)の場合、急加速要求の度合は中程度と判断される。従って、S107において制御コンピュータ81は、駆動回路82に指令するデューティ比Dtの上限値Dtlm(x)を、中間値である第2上限値Dtlm(2)(<Dtlm(1))に設定する。
【0056】
S106判定がYESの場、つまりACC(x)≧ACC(3)の場合、急加速要求の度合は大きいと判断される。従って、S108において制御コンピュータ81は、駆動回路82へ指令するデューティ比Dtの上限値Dtlm(x)を、制限の最も厳しい第3上限値Dtlm(3)(<Dtlm(2))、例えば0%(コイル75への給電停止)に設定する。
【0057】
S109では、制御コンピュータ81が駆動回路82に対して現在指令しているデューティ比Dtが、上述したアクセル開度ACC(x)に応じて設定された上限値Dtlm(x)より大であるか否かを判定する。つまり、現在制御目標として掲げている設定差圧が実現されたと仮定した場合の圧縮機の吐出容量が、それと同一条件(内燃機関Egの回転速度が同じ等)において、設定差圧の上限値が実現されたと仮定した場合の圧縮機の吐出容量より大であるか否かを判定する。S109判定がNOの場合、つまり運転者の急加速要求を内燃機関Egが満足させるのにあたり、冷媒循環回路における現在の冷媒流量程度、詳しくはこの冷媒流量を実現している圧縮機の消費動力程度ではその妨げにはならないと判断された場合、制御コンピュータ81はS110へ移行して図6の通常時制御ルーチンに示す一連の処理を実行する。
【0058】
S109判定がYESの場合、つまり運転者の急加速要求を内燃機関Egが満足させるのにあたり、冷媒循環回路における現在の冷媒流量、詳しくはこの冷媒流量を実現している圧縮機の消費動力では多すぎてその妨げになると判断された場合、制御コンピュータ81はS111へ移行して図7の加速カット制御ルーチンに示す一連の処理を実行する。
【0059】
(通常時制御ルーチン)
図6に示すように、S121において制御コンピュータ81は、温度センサ84の検出温度Te(t)が温度設定器85による設定温度Te(set)より大であるか否かを判定する。S121判定がNOの場合、S122において前記検出温度Te(t)が設定温度Te(set)より小であるか否かを判定する。S122判定もNOの場合には、検出温度Te(t)が設定温度Te(set)に一致していることになるため、冷房能力の変化につながるデューティ比Dtの変更の必要はない。それ故、制御コンピュータ81は駆動回路82にデューティ比Dtの変更指令を発することなく、通常時制御ルーチンを離脱する。
【0060】
S121判定がYESの場合、車室内は暑く蒸発器38の熱負荷が大きいと予測されるため、S123において制御コンピュータ81はデューティ比Dtを単位量ΔDだけ増大させ、その修正値(Dt+ΔD)へのデューティ比Dtの変更を駆動回路82に指令する。すると、ソレノイド部52の電磁力Fが若干強まり、その時点での二点間差圧(PdH−PdL)では上下付勢力の均衡が図れないため、作動ロッド53が上動して戻しバネ68が蓄力され、この戻しバネ68の下向き付勢力f1の増加分が上向きの電磁付勢力Fの増加分を補償して再び数4式が成立する位置に作動ロッド53の弁部56が位置決めされる。その結果、制御弁46の開度、つまり連通路60の開度が若干減少し、クランク圧Pcが低下傾向となり、このクランク圧Pcとシリンダボア20の内圧とのピストン21を介した差も小さくなって斜板18が傾斜角度増大方向に傾動し、圧縮機の状態は吐出容量が増大し負荷トルクも増大する方向に移行する。圧縮機の吐出容量が増大すれば冷媒循環回路における冷媒流量も増大し、蒸発器38での除熱能力も高まり温度Te(t)も低下傾向に向かうはずであり、又、二点間差圧(PdH−PdL)は増加する。
【0061】
他方、S122判定がYESの場合、車室内は寒く蒸発器38の熱負荷が小さいと予測されるため、S124において制御コンピュータ81はデューティ比Dtを単位量ΔDだけ減少させ、その修正値(Dt−ΔD)へのデューティ比Dtの変更を駆動回路82に指令する。すると、ソレノイド部52の電磁力Fが若干弱まり、その時点での二点間差圧(PdH−PdL)では上下付勢力の均衡が図れないため、作動ロッド53が下動して戻しバネ68の蓄力も減り、この戻しバネ68の下向き付勢力f1の減少分が上向きの電磁付勢力Fの減少分を補償して再び数4式が成立する位置に作動ロッド53の弁部56が位置決めされる。その結果、制御弁46の開度、つまり連通路60の開度が若干増加し、クランク圧Pcが増大傾向となり、クランク圧Pcとシリンダボア20の内圧とのピストン21を介した差も大きくなって斜板18が傾斜角度減少方向に傾動し、圧縮機の状態は吐出容量が減少し負荷トルクも減少する方向に移行する。圧縮機の吐出容量が減少すれば、蒸発器38での除熱能力も低まり温度Te(t)も増加傾向に向かうはずであり、又、二点間差圧(PdH−PdL)は減少する。
【0062】
このようにS123及び/又はS124でのデューティ比Dtの修正処理を経ることで、検出温度Te(t)が設定温度Te(set)からずれていてもデューティ比Dtが次第に最適化され、更に制御弁46での内部自律的な弁開度調節(設定差圧の維持動作)も相俟って温度Te(t)が設定温度Te(set)付近に収束する。
【0063】
(加速カット制御ルーチン)
図7に示すように、S131(準備ステップ)において制御コンピュータ81は、現在駆動回路82へ指令しているデューティ比Dtを復帰目標値DtRとして記憶する。DtRは、後述するS135でのデューティ比Dtの戻し制御における目標値である。そして制御コンピュータ81は、S132で内蔵タイマの計測動作をスタートさせ、S133で駆動回路82に指令するデューティ比Dt(設定差圧)を、急加速要求の度合に応じた上限値Dtlm(x)(=Dtlm(1)、Dtlm(2)或いはDtlm(3))に減少させる。言い換えれば、冷媒循環回路における冷媒流量の減少、つまりは圧縮機の消費動力の減少を指令する。
【0064】
S133でのデューティ比Dtの減少により、ソレノイド部52の電磁力Fが弱まって制御弁46の開度が増加し、斜板18が傾斜角度減少方向に傾動して圧縮機の吐出容量(負荷トルク)が減少し、冷媒循環回路の冷媒流量つまりは圧縮機の消費動力も減少する方向に移行する。S134において、タイマによって計測された経過時間が予め定められた設定時間STを超えたか否かを判定する。S134判定がNOである限り、デューティ比Dtは上限値Dtlm(x)に維持される。言い換えれば、タイマスタートからの経過時間が少なくとも設定時間STを超えるまで冷媒循環回路の冷媒流量は少なめに保たれ、圧縮機の消費動力が確実に少なくされる。そして、急加速時における内燃機関Egの圧縮機駆動負荷の低減を少なくとも時間STだけは確実に達成する。一般に車両の加速は一時的なものであるため設定時間STは短くてよい。
【0065】
時間STの経過後、S135においてデューティ比Dtの戻し制御が行われる。この戻し制御の趣旨は、デューティ比Dtを上限値Dtlm(x)から徐々に復帰目標値DtRに戻す(増大する)ことで、斜板18の傾斜角度の急変による衝撃を回避することにある。S135の枠内に示したグラフによれば、S134の判定がYESになったときが時点t4であり、デューティ比Dtが復帰目標値DtRに到達したときが時点t5である。所定時間(t5−t4)をかけて直線的パターンのDt復帰が実施される。なお、時間隔(t4−t3)は、前記設定時間STとS134判定でNOを繰り返す時間との和に相当する。デューテイ比Dtが上限値Dtlm(x)から目標値DtRに到達すると、加速カット制御ルーチンの処理が終了し、処理が図5のメインルーチンに戻される。
【0066】
上記構成の本実施形態においては、次のような効果を奏する。
(1)本実施形態では、蒸発器38での熱負荷の大きさに影響される吸入圧Psそのものを制御弁46の開度制御における直接の指標とすることなく、冷媒循環回路における二つの圧力監視点P1,P2間の差圧(PdH−PdL)を直接の制御対象として圧縮機の吐出容量のフィードバック制御を実現している。このため、蒸発器38での熱負荷状況にほとんど影響されることなく、内燃機関Eg側の事情を優先すべき加速時には外部制御によって即座に吐出容量を減少させることができる。それ故に、加速カット制御の応答性や信頼性及び安定性に優れている。
【0067】
(2)通常時においても、検出温度Te(t)及び設定温度Te(set)に基づいてデューティ比Dtを自動修正(図6のS121〜S124)すると共に、二点間差圧(PdH−PdL)を指標とした制御弁46の内部自律的な弁開度調節に基づいて圧縮機の吐出容量を制御することにより、検出温度Te(t)と設定温度Te(set)との差が小さくなる方向に冷媒流量を誘導して人間の快適感を満足させるという空調装置本来の目的を十分に達成することができる。つまり本実施形態によれば、通常時における室温の安定維持を図るための圧縮機の吐出容量制御と、車両の急加速時における緊急避難的な吐出容量の迅速な変更とを両立させることができる。
【0068】
(3)差圧検知手段53は、冷媒循環回路の冷媒流量の変化に伴い二点間差圧(PdH−PdL)が増大又は減少傾向を示すとき、圧縮機からの冷媒ガスの吐出量が二点間差圧(PdH−PdL)の変化を打ち消すものとなるように、この二点間差圧(PdH−PdL)に基づく押圧作用を弁体(弁部56)に及ぼす。従って、種々の要因で冷媒循環回路の冷媒流量が変化したとしても、その変化を打ち消す方向でクランク圧Pcの調節つまりは吐出容量の調節を達成することができる。
【0069】
(4)制御弁46(コイル75)のデューティ比Dtを外部制御することで、冷媒循環回路の冷媒流量(ひいては圧縮機の吐出容量)をほぼ一義的に変化させることができる。このため、特に加速カット制御における圧縮機の吐出容量の復帰パターンを、図7のS135(t4−t5間)で示すようなある程度緩やかな直線的パターンとすることが容易となり、吐出容量の復帰過程における衝撃や異音の発生を効果的に防止又は抑制することが可能となる。
【0070】
(5)制御弁46は、ソレノイド部52のコイル75への通電制御によって、二点間差圧(PdH−PdL)に基づく押圧力と対抗する電磁力Fを適宜変更できる。このため、冷媒循環回路における冷媒流量の目標値(設定差圧)を外部からの制御により設定変更することができる。故に本実施形態の制御弁46は、ソレノイド部52の電磁力Fを変更しない限り定流量弁的に振る舞うが、外部からのコイル75の通電制御によって冷媒流量の目標値(設定差圧)を必要に応じて変えられるという意味で外部制御方式の冷媒流量制御弁46(又は吐出容量制御弁46)として機能する。又、かかる冷媒流量(又は吐出容量)の外部制御性のために、必要時(又は車両の急加速時)には、冷媒循環回路の蒸発器38での熱負荷状況にかかわりなく、圧縮機の吐出容量(ひいては負荷トルク)を短時間に急変させるような緊急避難的な容量変更も可能となる。従ってこの制御弁46によれば、通常時において室温の安定維持を図るための圧縮機の吐出容量制御と、車両の急加速時における緊急避難的な吐出容量の迅速な変更とを両立させることが可能となる。
【0071】
(6)従来の加速カット制御としては、アクセル開度ACC(x)が所定値(例えばACC(1))以上となると、一義的に制御弁46(コイル75)への給電を停止して圧縮機の吐出容量を最小とし、圧縮機の消費動力を低減して内燃機関Egの動力性能を極力加速に振り向けることが行われている。
【0072】
しかし、冷房負荷が小さく、冷媒循環回路の冷媒流量が最小付近で制御されている場合には、元々圧縮機の消費動力は少ないために、加速カット制御を介在させずにこのままの状態を維持し続けても、車両の加速性能の低下はほとんどない。従って、この場合において、所定値ACC(1)以上のアクセル開度ACC(x)に応じて一義的に圧縮機の吐出容量を最小とすることは、車両の加速性能を向上させるにおいて殆ど意味がなく、単に空調が無駄な犠牲を強いられるのみであった。
【0073】
また、アクセル開度ACC(x)が所定値ACC(1)以上でかつこの所定値ACC(1)付近の場合、つまり急加速要求が生じていてもその度合が小さい場合には、内燃機関Egの動力性能の殆どを車両の加速に振り向ける必要もない。従って、急加速要求の度合が小さい場合に、所定値ACC(1)以上のアクセル開度ACC(x)に応じて一義的に吐出容量を最小とすれば、この急加速要求を満たすよりも余分な内燃機関Egの動力性能が、圧縮機の駆動から加速に振り向けられることとなり、空調が過度な犠牲を強いられることとなっていた。
【0074】
しかし、本実施形態において制御コンピュータ81は、運転者による車両の急加速要求が生じると、駆動回路82に指令するデューティ比Dtに上限値Dtlm(x)を設定する。そして、現在のデューティ比Dtが上限値Dtlm(x)を上回っている場合にのみ、駆動回路82へ指令するデューティ比Dtを上限値Dtlm(x)に設定変更する加速カット制御を行なうように構成されている(S109,S111)。従って、冷媒循環回路の冷媒流量が元々少ない場合には、言い換えれば内燃機関Egの動力性能が元々圧縮機の駆動にそれ程振り向けられていない場合には(デューティ比Dt≦Dtlm(x))、冷房負荷に応じて算出されたデューティ比Dtを駆動回路82へ指令することで、空調を阻害するのみの無駄な加速カット制御が行われることを防止できる。その結果、従来の加速カット制御と比較して、車両の加速性能を同等に発揮させてなおかつ、空調の犠牲を少なくすることができる。
【0075】
また、本実施形態において制御コンピュータ81は、急加速要求の有無のみならずこの急加速要求の度合も判定し、この急加速要求の度合に応じてデューティ比Dtの上限値Dtlm(x)を調節する(S103〜S108)。従って、急加速要求が生じている場合であってもこの要求度合が小さければ、デューティ比Dtの上限値Dtlm(x)は緩く(高く)設定される。このため、この緩い上限値Dtlm(x)を現在のデューティ比Dtが上回って加速カット制御が行われたとしても、冷媒循環回路の冷媒流量はある程度多く確保されることとなる。その結果、急加速要求を満たすよりも余分な内燃機関Egの動力性能が、圧縮機の駆動から加速に振り向けられてしまうことがなく、空調の過度な犠牲を防止できる。つまり、車両の加速性能の発揮と空調の犠牲を少なくすることとを高次元で両立することができる。
【0076】
(7)制御弁46には差圧検出手段としての作動ロッド53が備えられており、この作動ロッド53は冷媒循環回路の二つの圧力監視点P1,P2の圧力PdH,PdLに感応することで、この差圧(PdH−PdL)に基づく荷重を弁部56に対して付与している。従って、例えば二つの圧力監視点P1,P2の圧力PdH,PdLをそれぞれ電気的に検出して電磁吸引力Fに反映させるような複雑な構成(圧力センサ等)や、複雑なコイル75(駆動回路82)の電気制御プログラムを必要としない。
【0077】
(8)圧縮機は、クランク室15の内圧Pcを制御することでピストン21のストロークを変更可能に構成された斜板式の容量可変型圧縮機であり、本実施形態の制御装置はこの斜板式の容量可変型圧縮機の容量制御に最も適している。
【0078】
なお、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で以下の態様でも実施できる。
○上記実施形態においては、運転者の急加速要求の有無のみならずこの急加速要求の度合も判定し、この急加速要求の度合に応じて上限値Dtlm(x)を調節していた。しかし、これに限定されるものではなく、運転者の急加速要求の有無のみを判定し(S103)、急加速要求が生じているのならその度合に関係なく一義的に上限値(例えばDtlm(3))を設定するようにしても良い。
【0079】
○上記実施形態において、運転者の急加速要求の度合は小・中・大の三段階に判定され、この各段階に応じて上限値Dtlm(x)が調節されていた。しかし、急加速要求の度合の判定は三段階に行われることに限定されるものではなく、例えば三以外の二、四、五、六或いは七等の複数段階であっても良い。
【0080】
○上記実施形態において制御コンピュータ81は、急加速要求の度合を小から大へ段階的に判定し、この急加速要求の度合に応じて段階的に上限値Dtlm(x)を調節していた。これを変更し、急加速要求の度合を小から大へ連続的に判定し、この急加速要求の度合に応じて連続的に上限値Dtlm(x)を調節するように構成すること。このようにすれば、急加速要求の度合に応じて上限値Dtlm(x)をより高精度に空調側へ寄せて調節することができ、車両の加速性能の発揮と空調の犠牲を少なくすることとをさらに高次元で両立することができる。
【0081】
○上記実施形態においてデューティ比Dtの戻し制御(図7のS135)は、デューティ比Dtを上限値Dtlm(x)から復帰目標値DtRへ、所定時間(t5−t4)かけて直線的に戻すことで行われていた。これを変更し、デューティ比Dtを上限値Dtlm(x)から復帰目標値DtRへ、所定時間(t5−t4)かけて段階的に戻すようにすること。
【0082】
○上記実施形態においてデューティ比Dtの戻し制御(S135)は、デューティ比Dtを上限値Dtlm(x)から復帰目標値DtRへ戻す時には必ず行われていた。これを変更し、例えば復帰目標値と上限値の差(DtR−Dtlm(x))が所定値以上に大きい場合にのみ、或いは上限値Dtlm(x)がDtlm(3)の場合にのみ、デューティ比Dtの戻し制御が行われるようにし、それ以外の場合にはデューティ比Dtを上限値Dtlm(x)から復帰目標値DtRへ時間をおかずに変更すること。
【0083】
○上記実施形態において運転者の急加速要求の有無及びこの急加速要求の度合の判定は、アクセル開度センサ86からのアクセル開度ACC(x)が第1〜第3設定値ACC(1)〜ACC(3)以上であるか否かに基づいて行われていた。これを変更し、アクセル開度ACC(x)の単位時間当たりの増加量(アクセルペダルの踏み込み速度)に基づいて、運転者の急加速要求の有無及びこの急加速要求の度合の判定を行なうこと。例えば、今回のアクセル開度が前回のアクセル開度より第1所定値以上に増大していれば、運転者が急加速を要求しているものと判断する。そして、このアクセル開度の増大量が、第1所定値以上でかつ第2所定値未満の場合(急加速要求の度合が小さい場合)と、第2所定値以上でかつ第3所定値未満の場合(急加速要求の度合が中程度の場合)と、第3所定値以上の場合(急加速要求の度合が大きい場合)とで、上記実施形態と同様に上限値Dtlm(x)をそれぞれDtlm(1)、Dtlm(2)、Dtlm(3)に設定する。
【0084】
○駆動源負荷検出手段としてはアクセル開度センサ86以外にも、内燃機関Egの吸入空気量を検出する吸入空気量センサ、内燃機関Egの吸入空気圧を検出する吸入空気圧センサ、内燃機関Egの出力軸の回転速度を検出する回転速度センサ、或いは車両の走行速度を検出する車速度センサであっても良い。つまり、内燃機関Egの負荷状態を推定できるものであれば、そのパラメータとしては上記実施形態のアクセル開度や吸入空気量或いは吸入空気圧ような内燃機関Egの負荷状態に影響を与えるものであっても、回転速度や車速度のような内燃機関Egの負荷状態に影響されるものであってもなんでも良い。
【0085】
○上記実施形態においては内燃機関Egの高負荷状態として、運転者により車両の急加速が要求された場合を想定していた。これを変更し、内燃機関Egの高負荷状態として登坂走行や高速走行等を想定し、それに好適に対応するように負荷状態判定パラメータを変更しても良い。例えば登坂走行の場合には、パラメータとしてはアクセル開度と車速度とから負荷状態を判定し(アクセル開度が大きいのに車速度が上がらない場合には急な登り坂)、高速走行の場合には車速度のみ或いは内燃機関Egの回転速度と変速機の変速比で負荷状態を判定しても良い。
【0086】
○冷房負荷検出手段として、温度センサ及び温度設定器に加えて、日射量センサや外気温度センサ等を備えても良い。
○第1圧力監視点P1を蒸発器38と吸入室22との間の吸入圧力領域に設定するとともに、第2圧力監視点P2を同じ吸入圧力領域において第1圧力監視点P1の下流側に設定すること。
【0087】
○第1圧力監視点P1を吐出室23と凝縮器36との間の吐出圧力領域に設定するとともに、第2圧力監視点P2を蒸発器38と吸入室22との間の吸入圧力領域に設定すること。
【0088】
○第1圧力監視点P1を吐出室23と凝縮器36との間の吐出圧力領域に設定するとともに、第2圧力監視点P2をクランク室15に設定すること。或いは、第1圧力監視点P1をクランク室15に設定するとともに、第2圧力監視点P2を蒸発器38と吸入室22との間の吸入圧力領域に設定すること。つまり、圧力監視点P1,P2は、上記実施形態のように、冷媒循環回路の主回路である冷凍サイクル(外部冷媒回路35(蒸発器38)→吸入室22→シリンダボア20→吐出室23→外部冷媒回路35(凝縮器36))へ設定すること、さらに詳述すれば冷凍サイクルの高圧領域及び/又は低圧領域に設定することに限定されるものではなく、冷媒循環回路の副回路として位置付けられる、容量制御用の冷媒回路(給気通路42,44→クランク室15→抽気通路31)を構成する中間圧領域としてのクランク室15に設定しても良い。なお、後者の別例の場合には、圧縮機の吐出容量が増大すると二点間差圧(Pc−Ps)が減少する構成である(上記実施形態とは逆である)。従って、制限値設定手段は、内燃機関Egが高負荷状態にある場合には、二つの圧力監視点間の差圧に制限値としての下限値を設定する。そして、設定差圧決定手段は、設定差圧算出手段により算出された設定差圧と制限値設定手段により設定された下限値とを比較し、設定差圧が下限値以上であれば設定差圧を、設定差圧が下限値を下回るなら下限値を新たな設定差圧として取り扱うこととなる。
【0089】
○例えば、制御弁46を電気弁駆動構成のみとし、二つの圧力監視点P1,P2の圧力PdH,PdLをそれぞれ圧力センサにより検出すること。この場合、各圧力監視点P1,P2の圧力PdH,PdLを検出する圧力センサが差圧検出手段を構成する。
【0090】
○制御弁46を、給気通路42,44ではなく抽気通路31の開度調節によりクランク圧Pcを調節する、所謂抜き側制御弁としても良い。
○制御弁46を、給気通路42,44及び抽気通路31の両方の開度調節によりクランク圧Pcを調節する三方弁構成としても良い。
【0091】
○動力伝達機構PTとして、電磁クラッチ等のクラッチ機構を備えたものを採用すること。この場合、例えばアクセル開度ACC(x)が第3設定値ACC(3)以上の場合には、一義的にクラッチ機構を遮断して圧縮機を停止させるようにしても良い。
【0092】
○ワッブル式の容量可変型圧縮機の制御装置において具体化すること。
○車両の駆動源としては内燃機関以外にも、電気モータやこの電気モータと内燃機関とを併せ持つハイブリッドタイプ等が挙げられる。
【0093】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記駆動源負荷判定手段81は駆動源Egの高負荷の度合を段階的(ACC(1)≦ACC(x)<ACC(2)、ACC(2)≦ACC(x)<ACC(3)、ACC(3)≦ACC(x))に判定し、制限値設定手段81は駆動源Egの高負荷の度合に応じて制限値Dtlm(x)を段階的(Dtlm(1)、Dtlm(2)、Dtlm(3))に調節する請求項2に記載の容量可変型圧縮機の制御装置。
【0094】
(2)前記圧縮機は、クランク室15の内圧Pcを制御することでピストン21のストロークを変更可能に構成された斜板式又はワッブル式の容量可変型圧縮機である請求項1〜6又は前記(1)のいずれかに記載の容量可変型圧縮機の制御装置。
【0095】
【発明の効果】
上記構成の本発明によれば、蒸発器での熱負荷状況に影響されることなく、室温の安定維持を図るための圧縮機の吐出容量制御と、車両の駆動源の高負荷時における吐出容量の迅速な変更及びその後の復帰とを両立させることが可能となる。
【0096】
また、例えば、急加速要求が生じた場合には、一義的に圧縮機の吐出容量を最小とする従来の加速カット制御と比較して、車両の加速性能を同等に発揮させてなおかつ空調の犠牲を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 容量可変型斜板式圧縮機の断面図。
【図2】 冷媒循環回路の概要を示す回路図。
【図3】 制御弁の断面図。
【図4】 作動ロッドの位置決めを説明するための要部拡大断面図。
【図5】 空調制御のメインルーチンのフローチャート。
【図6】 通常時制御ルーチンのフローチャート。
【図7】 加速カット制御ルーチンのフローチャート。
【図8】 従来技術での吸入圧と吐出容量の関係を概念的に示すグラフ。
【符号の説明】
35…容量可変型圧縮機とともに車両用空調装置の冷媒循環回路を構成する外部冷媒回路、46…圧縮機制御手段を構成する制御弁、53…差圧検出手段としての作動ロッド、81…冷房負荷検出手段、駆動源負荷検出手段、設定差圧算出手段、駆動源負荷判定手段、制限値設定手段、設定差圧決定手段及び圧縮機制御手段を構成する制御コンピュータ、84…冷房負荷検出手段を構成する温度センサ、85…同じく温度設定器、86…駆動源負荷検出手段を構成するアクセル開度センサ、Eg…車両の駆動源としての内燃機関、P1…第1圧力監視点、P2…第2圧力監視点。

Claims (6)

  1. 車両用空調装置の冷媒循環回路を構成し、車両の駆動源に補機として駆動される容量可変型圧縮機の吐出容量を制御するための制御装置において、
    前記冷媒循環回路に設定された、容量可変型圧縮機の吐出容量が反映される二つの圧力監視点間の差圧を検出する差圧検出手段と、
    前記車両用空調装置の冷房負荷を検出する冷房負荷検出手段と、
    前記駆動源の負荷を検出する駆動源負荷検出手段と、
    前記冷房負荷検出手段からの冷房負荷情報に基づいて、二つの圧力監視点間の差圧の制御目標となる設定差圧を算出する設定差圧算出手段と、
    前記駆動源負荷検出手段からの駆動源負荷情報に基づいて、駆動源が高負荷状態にあるか否かを判定する駆動源負荷判定手段と、
    前記駆動源負荷判定手段の判定に基づき、駆動源が高負荷状態にある場合には二つの圧力監視点間の差圧に制限値を設定する制限値設定手段と、
    前記設定差圧算出手段により算出された設定差圧と制限値設定手段により設定された制限値とを比較し、設定差圧の示唆する容量可変型圧縮機の吐出容量が制限値の示唆する吐出容量以下であれば設定差圧を、設定差圧の示唆する吐出容量が制限値の示唆する吐出容量を上回るなら制限値を新たな設定差圧として取り扱う設定差圧決定手段と、
    前記設定差圧決定手段からの設定差圧に差圧検出手段が検出した差圧が近づくように容量可変型圧縮機の吐出容量を制御する圧縮機制御手段と
    を備えた容量可変型圧縮機の制御装置。
  2. 前記駆動源負荷判定手段は駆動源の高負荷の度合を判定し、制限値設定手段は駆動源の高負荷の度合に応じて制限値を調節する請求項1に記載の容量可変型圧縮機の制御装置。
  3. 前記容量可変型圧縮機は、カムプレートを収容するクランク室の内圧を制御することで吐出容量を変更可能であり、
    前記圧縮機制御手段は、弁開度調節によりクランク室の内圧を調節可能な制御弁を備え、
    前記制御弁は、二つの圧力監視点間の差圧を機械的に検出する差圧検出手段を内蔵し、この差圧検出手段が検出した差圧に基づいて自律的に弁体の開度調節が可能であって、さらにはこの自律的な開度調節動作の基準となる設定差圧決定手段からの設定差圧に基づく弁体への付与荷重を、外部からの電気制御によって変更可能な電気駆動部を備えている請求項1又は2に記載の容量可変型圧縮機の制御装置。
  4. 前記設定差圧決定手段は、設定差圧を制限値とした後に、設定差圧をこの制限値から設定差圧算出手段により算出された設定差圧に変更する場合には、この設定差圧の変更を所定時間かけて徐々に行なう請求項1〜3のいずれかに記載の容量可変型圧縮機の制御装置。
  5. 前記冷房負荷検出手段は、車室温度と相関性のある温度を検出する温度センサと、所望温度を設定するための温度設定器とを備え、設定差圧算出手段は温度センサからの検出温度情報と温度設定器からの設定温度情報とに基づいて設定差圧を算出する請求項1〜4のいずれかに記載の容量可変型圧縮機の制御装置。
  6. 前記駆動源負荷検出手段はアクセル開度センサを備え、前記駆動源負荷判定手段はアクセル開度センサからのアクセル開度情報に基づいて駆動源の負荷状態の判定を行なう請求項1〜5のいずれかに記載の容量可変型圧縮機の制御装置。
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