JP3765376B2 - ショットピーニング装置及び方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、浸炭処理、焼き入れ処理等の熱処理を施した後の熱処理済材に2種類以上の投射材を投射することにより、所望の圧縮残留応力を生じさせるようにしたショットピーニング装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
このショットピーニング方法においては、近年、疲労強度を向上させるために、例えば特開平6−145785号公報に記載されているように、一次ショットピーニングで比較的粒径の大きいショット粒を用いて鋼材表面に圧縮残量応力層の深さを増し、次の二次ショットピーニングで比較的粒径の小さなショット粒を使用して最表面の圧縮残留応力を高めることにより、強度上最適な残留応力分布状態を得るようにした所謂2段ショットピーニング法が用いられている。
【0003】
このような2段ショットピーニング法では、異なる粒径の2種類のショット粒を使用して、2回のショットピーニング処理を行う必要があるため、例えば特開平7−171766号公報に記載されているような、投射ノズルから被処理面に投射した投射材を回収用のフードにより回収して、これに接続された回収ホースを経て分離タンクへ送給して、投射材とダストとを分離し、投射材を加圧タンクと投射ホースを経て投射ノズルに送給することにより、投射材を循環使用するようにし、回収ホースから分離タンクへの送給を、回収ホースに流下した投射材を回収ホースの通路の途中から分離タンク側へ向けて圧縮空気を噴出させて通路中に生じさせた部分的真空による吸引噴出作用によって行うようにしたエアブラスト装置を使用して、一次ショットピーニング処理と二次ショットピーニングとで異なる2種類のショット粒を入れ換えるか又は2台のショットピーニング装置を使用するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例にあっては、1台のショットピーニング装置で二段ショットピーニング処理を行うには、一次ショットピーニング処理から二次ショットピーニング処理に、二次ショットピーニングから一次ショットピーニングに切換える際に、両処理で使用するショット粒の粒度が異なることから、前処理で使用したショット粒を全て入れ換える必要があり、この入れ換え作業に長い時間と労力が必要となると共に、全てのショット粒を入れ換えるのは困難であり、多少粒度の異なるショット粒が混入することは避けられないという未解決の課題がある。
【0005】
また、2台のショットピーニング装置を使用して、これらに夫々粒度の異なるショット粒を装填しておくことにより、一次ショットピーニング処理及び二次ショットピーニング処理を異なるショットピーニング装置で行うことも考えられるが、この場合には、2台のショットピーニング装置が必要となり、導入コスト及び保守点検コスト等が嵩むという未解決の課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、1台のショットピーニング装置で2種類以上の投射材を使い分けて、2段以上の多段ショットピーニング処理を行うことができるショットピーニング方法及び装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係るショットピーニング装置は、熱処理後の材料表面に異なるショットピーニング処理を行う2種類以上の投射材を順次投射して圧縮残留応力を生じさせるショットピーニング装置において、大サイズの投射材、中サイズの投射材及び小サイズの投射材を個別に貯留する3つの貯留手段と、前記熱処理後の被処理材料を回転自在に保持する材料保持手段と、前記3つの貯留手段のうちから中サイズ投射材、大サイズ投射材及び小サイズの投射材をその順に選択して順次供給される投射材を前記材料保持手段で保持している被処理材料に高速で噴射して3段階のショットピーニング処理を行う噴射ノズルと、被処理材料に投射された投射材を回収する回収手段と、該回収手段で回収された投射材を種類別に分離する投射材分離手段と、該投射材分離手段で分離された投射材を対応する前記3つの貯留手段に個別に送給する再循環手段とを備え、前記投射材分離手段は、ケース体の上部に配設されて前記回収手段で回収された投射材をケース体内に定量流下させる受けホッパーと、該受けホッパーから流下される投射材に対してその流下方向と交差する方向から所定風量の分離用送風を行う送風機と、該送風機の分離用送風によって飛ばされた投射材を飛距離に応じて分離回収する2つ以上の分離回収用ホッパーとを有することを特徴としている。
【0008】
この請求項1に係る発明では、大サイズの投射材、中サイズの投射材及び小サイズの投射材を貯留する3つの貯留手段のうち選択した1つの貯留手段から中サイズの投射材を噴射ノズルに投入し、この噴射ノズルから投射材を材料保持手段に保持されている被処理材料に投射することにより、一次ショットピーニング処理を行い、この一次ショットピーニング処理に続いて大サイズの投射材による二次ショットピーニング処理を行うために、該当する貯留手段を選択してこれから投射材を噴射ノズルに送給することにより、二次ショットピーニング処理を行い、さらに二次ショットピーニング処理に続いて小サイズの投射材による三次ショットピーニング処理を行うことができ、この際に混合された投射材が投射材分離手段で種類毎に分離され該当する貯留手段に送給される。このとき、投射材分離手段では、回収された投射材を受けホッパーから定量流下させ、これに対して送風機で所定風量の分離用送風を作用させることにより、投射材の粒径や質量等の材質差により、飛距離が変化して着地位置が異なることを利用して3つ以上の分離回収用ホッパーで分離回収する。
【0009】
また、請求項2に係るショットピーニング装置は、請求項1に係る発明において、前記材料保持手段が、ケース体の上部に配設された回転駆動源に着脱自在に装着される熱処理後の被処理材料を保持する回転保持軸と、該回転保持軸の下端に配設された軸受を覆う円盤とで構成されていることを特徴としている。
【0010】
この請求項2に係る発明では、回転保持軸で非処理材料を保持し、これに噴射ノズルから投射材を噴射することにより、ショットピーニング処理を行い、この際に、投射された投射材が下方に落下することになるが、この投射材が下方の円盤に落下し、遠心力で外周縁から下方に落下することにより、軸受を投射材や破砕された投射材から保護することができる。一方、回転駆動源はケース体上部に配設されているので、投射される投射材の影響を受けることがない。
【0011】
さらに、請求項3に係るショットピーニング装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記投射材分離手段が、送風機に供給する送風を加熱乾燥する乾燥手段を備えていることを特徴としている。
この請求項3に係る発明では、材料保持手段で保持する被処理材に付着している水分によって投射材が湿気をおびたとき、又は送風空気に圧力空気を使用した場合や空気中の湿度が高い場合に、乾燥手段で加熱乾燥させた送風を吹き付けることにより、再循環中に投射材を乾燥させてから貯留手段に貯留する。
【0012】
さらにまた、請求項4に係るショットピーニング方法は、熱処理後の材料表面に投射材を投射して圧縮残留応力を生じさせるショットピーニング方法において、同一チャンバー内で、中サイズの投射材を投射する第1ショットピーニング処理と、大サイズの投射材を投射する第2ショットピーニング処理と、小サイズの投射材を投射する第3ショットピーニング処理とを連続して行い、投射されて混合された3種類以上の投射材を分離して循環再使用するようにしたことを特徴としている。
【0013】
この請求項4に係る発明では、第1ショットピーニング処理で表面を硬化させると共に、ある程度の深さまで圧縮残留応力を分布させた状態で大サイズの投射材を使用した第2ショットピーニング処理を行うことにより、表面粗さの低下を抑制しながら深い位置まで圧縮残留応力を分布させ、さらに小サイズの投射材を使用した第3ショットピーニング処理を行うことより、表面粗さをより小さくする。
【0014】
なおさらに、請求項5に係るショットピーニング方法は、請求項4に係る発明において、前記投射材の分離を、3種類以上の投射材が混合した混合投射材を受けホッパーに貯留して当該受けホッパーから定量流下させると共に、その流下方向と交差する方向に所定風量の送風を行い、投射材の着地位置に応じて分離回収することを特徴としている。
この請求項5に係る発明では、第1ショットピーニング処理、第2ショットピーニング処理及び第3ショットピーニング処理を連続して行うことにより、種類の異なる3種類の投射材が混合されたときに、これらを受けホッパーで貯留し、この受けホッパーから定量流下させながら、その流下方向と交差する方向に所定風量の送風を行うことにより、3種類の投射材の粒径差或いは質量差等の材質差によって、飛距離が変化して着地位置が異なることを利用して、種類の異なる投射材を正確に分離回収する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を伴って説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す概略構成図であって、図中、1は浸炭処理、焼戻し処理等の熱処理を行った後の歯車、精密加工品等の被処理材2に対してショットピーニング処理を行うショットピーニング装置本体であって、中空逆円錐形状の回収部3とその上部に連接する円筒部4とで構成されるケース体5を有し、このケース体5の上端部に回転駆動装置6が配設され、回収部3に支持脚7によって支持された軸受8が配設されていると共に、この軸受8に円盤9が回転自在に支持されている。この円盤8の上面中央部には、被処理材料2を保持した保持軸10を支持する挿通孔11が穿設されている。
【0019】
この保持軸10は、上端に形成された断面方形の係合部10aと、中央部に形成された被処理材料9を所定数図1においては5段分保持する保持部10bと、下端に形成された円盤8の挿通孔11に挿通される突出部10cとを備えており、突出部10cを円盤8の挿通孔11に挿通させた状態で、回転駆動源6の回転軸に摺動自在に保持された角筒部12を係合部10aに上方から係合させることにより、回転駆動源6と軸受7とによって回転自在に保持される。
【0020】
そして、保持軸10に保持された各被処理材料2と対向するケース体5の壁面に夫々等角間隔で3つの噴射ノズル15が配設され、これら噴射ノズル15に異なる種類の投射材を貯留する貯留手段として貯留ホッパー16A〜16Cが配管17A〜17Cを介して接続されている。
貯留ホッパー16Aには例えば粒サイズ0.6mmの鋼球が多数貯留され、貯留ホッパー16Bには粒サイズが0.3mmの鋼球が多数貯留され、さらに貯留ホッパー16Cには粒サイズ0.5μmのガラスビーズが多数貯留されている。各貯留ホッパー16A〜16Cには、その下部に投入弁18A〜18Cが設けられ、これら投入弁18A〜18Cを選択的に開くことにより、貯留ホッパー16A〜16Cに貯留されている投射材が配管17A〜17Cを介して噴射ノズル15に送給される。そして、噴射ノズル15には、配管19を介して高圧の圧縮空気が供給されており、この圧縮空気で投射材を被処理材料2に噴射する。
【0021】
また、ケース体5の回収部3の底頂部には、回収管21が接続され、この回収管21が投射材を上方に搬送するエレベータ又はバケットコンベヤで構成される揚送機構22に接続され、この揚送機構22の上端が配管23を介して投射材分離手段としての投射材分離装置24に接続されている。
この投射材分離装置24は、風洞状に形成されたケース体25を有し、このケース体25の上端に回収された投射材を貯留する受けホッパー26が配設され、この受けホッパー26の下端に定量切り出し機構27が設けられ、この定量切り出し機構27によって貯留された投射材が定量づづ切り出されて垂直管28を介してケース体25内に垂直に流下される。
【0022】
また、ケース体25の垂直管28から流下する投射材の落下位置にその落下方向と直交して送風機30が配設されている。この送風機30には、空気取入れ口31から導入された空気を脱水剤を充填し且つ空気を加熱乾燥する加熱乾燥機32を介して乾燥された空気が導入され、この乾燥空気を一時貯留する風箱33と、駆動モータ34及びその回転軸に取付けられた送風ファン35とを備えており、送風ファン35で発生される送風が角筒状の送風案内筒36で案内されてケース体25内に流下する投射材と交差するように供給される。
【0023】
さらに、ケース体25の下部には、送風によって飛距離が異なる投射材を分離回収する回収用ホッパー37A〜37Eが送風機30の送風方向と平行に併設されている。ここで、回収用ホッパー37Aでは粒サイズ0.6mmの鋼球を分離回収し、回収用ホッパー37Bでは粒サイズ0.3mmの鋼球を分離回収し、回収用ホッパー37Dでは粒サイズ0.5μmのガラスビーズを分離回収する。
【0024】
そして、回収用ホッパー37A,37B及び37Dで分離回収された各投射材回収管38A,38B及び38Cを介して前述した揚送機構22と同様の構成を有する揚送機構39A,39B及び39Cに搬送され、これら揚送機構39A〜39Cで揚送された各投射材が配管40A〜40Cを介して貯留ホッパー17A〜17Cに搬送され、残りの回収用ホッパー37C及び37Eで回収した投射材は廃棄管41を介して廃棄される。
【0025】
また、ケース体25の送風機30と対向する右上部位置には排気ダクト42が設けられ、この排気ダクト42が集塵機43に接続されている。
ここで、送風機30の風速と回収用ホッパー37A〜37Eの配置関係は、以下のように設定されている。
すなわち、実験装置によって、各投射材を落下高さを50cmとし、風速を5m/sに設定して、0.6mmの鋼球、0.3mmの鋼球、1μmのガラスビーズ、0.3μmのガラスビーズについて着地位置までの飛距離(cm)を測定した結果を図2に示す。この図2において、0.6mmの鋼球については飛距離が実線図示のように1cmから7cmの範囲となり、0.3mmの鋼球については点線図示のように、飛距離が8cmから19cmの範囲となり、1μmのガラスビーズについては破線図示のように、飛距離が37cmから64cmの範囲となり、0.3μmのガラスビーズについては二点鎖線図示のように飛距離が75cmから112cmの範囲となり、各投射材を送風によって分離することができる。
【0026】
続いて、風速を増加させて落下状態を測定したところ図示しないが、10m/sを超える風速では0.3μmのように細かなサイズのガラスビーズについては飛距離が長くなりすぎるが、粒サイズの違う鋼球の分離には風速が25m/sでも明確に分離することができた。
一方、風速を5m/sから減少させて、風速が1m/s未満となると、混合した投射材のサイズが0.3mmの鋼球と1μmのガラスビーズでも飛距離が重なる部分が大きくなり、明確な分離ができないことが解った。
【0027】
したがって、鋼球とガラスビーズとを混合した投射材の場合は、風速が3m/sから7m/sの範囲の風速とすることにより、より明確な分離を行うことができた。
このため、上記実施形態のように、0.6mmの鋼球、0.3mmの鋼球及び0.3μmのガラスビーズが混合された場合には、送風機30の風速を3m/s〜7m/sの範囲で選択し、上述したように5m/sに設定した場合には、回収用ホッパー37Aの開口の右端位置を投射材の流下位置から右側に7cmの位置とし、回収用ホッパー37Bの開口位置を左端を投射材の流下位置から右側に8cmの位置とすると共に、右端を19cmの位置とし、回収用ホッパー37Cの開口位置を左端を流下位置から37cmの位置とすると共に、右端を62cmの位置とし、回収用ホッパー37Dの開口位置を左端を流下位置から76cmとすると共に、右端を112cmとし、回収用ホッパー37Eの開口位置を流下位置から113cm以上とすることにより、混合して流下される投射材を確実に分離して回収することができる。
【0028】
そして、このときの送風量(m3 /s)を流量計で測定し、この送風量と風速の実測値(m/s)、風速計算値(m/s)及び送風圧力(Pa)とを計測した結果、下記表1に示すようになり、送風量、風速実測値、風速計算値及び送風圧力との間に明らかな相関関係があり、風速を制御するために、実際の風速を風速計で検出するか送風量を流量計で検出するか、送風圧力を圧力計で検出することができ、これらに基づいて風速を制御することにより、投射材の分離回収を正確に行うことができる。
【0029】
【表1】
【0030】
なお、送風と投射材の分離との関係は、送風口の形状や受けホッパー26の位置、回収用ホッパー37A〜37Dの形状、排気ダクト42の排気量によって影響を受けるので、これらを考慮して最適な条件を設定する。
次に、上記実施形態の動作を説明する。ここでは、実機で送風案内筒36の出側風速が5m/sとなるように調整している。
【0031】
今、被処理材料2として、浸炭焼入れ処理した硬度がHRC60で粒界酸化による軟化層は生じておらず、表面粗さRmax 3μmである歯車を適用し、この被処理材料2を保持軸10の保持部10bにセットし、この保持軸10の下端に形成された突出部10cを円盤9の挿通孔11に挿通し、この状態で係合部10aに角筒部12を係合させることにより、回転駆動源6に連結する。
【0032】
この状態で、回転駆動源6を回転駆動することにより、保持軸10及び円盤9が回転状態となり、これと同時に又はその後に各噴射ノズル15に所望の貯留ホッパー16A〜16Cの選択した1つから投射材を供給すると共に、配管18から圧縮空気を供給することにより、投射材が被処理材料2に噴射される。
被処理材料2に投射された後の投射材は下方に落下し、一部は円盤9上に落下するが、この円盤9も回転していることにより、遠心力によって外周縁から下方に落下して逆円錐状の回収部3で回収され、これが回収管21を介して揚送機構22に供給され、この揚送機構22で上方に揚送され、配管23を介して投射材分離装置24の受けホッパー26に供給される。
【0033】
この受けホッパー26からは定量切り出し機構27によって所定量づつ投射材が切り出され、垂直管28を介してケース体25内に流下される。
このとき、送風機30の送風口37から風速が5m/sとなるように制御された送風がケース体25内に、流下する投射材に真横から当たるように吹き出されているので、前回の処理時に使用した投射材と今回の処理時に使用した投射材等が混在している場合に、両者の飛距離が異なることにより、例えば0.3mmの鋼球と0.3μmのガラスビーズとが混入していた場合には、0.3mmの鋼球が回収用ホッパー37Bまで飛ばされてこれに回収され、0.3μmのガラスビーズが回収用ホッパー37Dまで飛ばされてこれに回収され、ガラスビーズの破砕屑は軽いので回収用ホッパー37Eに回収されるか又は排気ダクト42から集塵機43で集塵される。
【0034】
そして、回収用ホッパー37B及び37Dに分離回収された鋼球及びガラスビーズは回収配管38B及び38Cを介して揚送機構39B及び39Cに送られ、これら揚送機構39B及び39Cで揚送されて貯留用ホッパー16B及び16Cに戻され循環再使用される。
このショットピーニング処理で、前述した浸炭焼入れ処理した歯車について投射材として0.6mmの鋼球、0.3mmの鋼球、1.0μmのガラスビーズ、0.5μのガラスビーズ、0.3μmのガラスビーズを使用して、投射圧力を0.25MPa、0.35MPa、0.45MPa及び0.55MPaとした夫々について投射時間を例えば5秒、10秒、20秒、30秒及び60秒としたときの歯車の表面粗さRmax を測定したところ下記表2に示す結果が得られた。ここで、ガラスビーズの投射に関しては、最初に0.3mmの鋼球を夫々5秒、20秒、30秒及び60秒間投射した後にガラスビーズを同一の5秒、20秒、30秒及び60秒間投射した場合の表面粗さRmax を示す。
【0035】
【表2】
【0036】
この表2から明らかなように、0.6mm及び0.3mmの鋼球を投射材として使用した場合には、粒サイズが大きくなるほど、投射圧力が大きくなるほど、投射時間が長くなるほど表面粗さは粗くなることが解る。
また、1.0μm、0.5μm及び0.3μmのガラスビーズについては、0.3mmの鋼球との2段ショットピーニングとなるので、0.3mmの鋼球を使用した1段ショットピーニングに比較して表面粗さを大きく改善することができ、特に0.3mm鋼球を30秒間ショットピーニング処理し、次いで0.3μmガラスビーズを30秒間ショットピーニング処理する2段ショットピーニングを行った場合には表面粗さRmax を0.03μmとすることができ、格段に表面粗さを改善することができる。
【0037】
そして、ショットピーニング処理を施した被処理材料の材料強度は、ショットピーニング処理を施さない材料に比較して、明らかに疲労強度が改善されることは周知の事実である。ここで、ショットピーニングによって材料強度が向上させる要因は、表面近傍における圧縮残留応力値がショットピーニング処理によって大きくなることに基づくことが知られている。一方、鋼材の表面粗さも材料強度と密接な関係が有り、表面粗さが粗くなるにつれて、鋼の強度が低下することも知られている。鋼の表面近傍に、圧縮残留応力を大きく付与させるために質量の大なる投射材を強く投射すると、応力が大きくなるばかりではなく、表面よりも内部に向かって深く残留応力が発生することも知られている。しかし、その場合、表面粗さは著しく粗くなり鋼の強度を劣化させてしまうという未解決の課題がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、最初に貯留ホッパー16Bの投入弁18Bを開状態として、この貯留ホッパー16Bに貯留されている0.3mmの鋼球を投射材として噴射ノズル15に供給し、この噴射ノズル15で0.25MPaの投射圧力で、30秒間被処理材料2に投射して第1ショットピーニング処理を行う。このときの圧縮残留応力の分布を実測した結果を下記表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
この表3から明らかなように、粒サイズ0.3mmの鋼球を投射材として使用することにより、表面から10μm位置に8MPaの圧縮残留応力を発生させる。このときの表面粗さRmax は4μm前後であった。
続いて、貯留ホッパー16Aの投入弁18Aを開状態として、この貯留ホッパー16Aに貯留されている粒サイズ0.6mmの鋼球を投射材として噴射ノズル15に供給し、この噴射ノズル15で、0.45MPaの投射圧力で30秒間投射して第2ショットピーニング処理を行ったときの圧縮残留応力の分布を実測した結果を下記表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
この表4から明らかなように、粒サイズ0.6mmの鋼球を投射材として使用することにより、表面から40μmの位置に15MPaの圧縮残留応力を発生させることができる。この場合の表面粗さRmax は僅か2μmであった。
引き続いて、貯留ホッパー16Aの投入弁18Aを開状態として、この貯留ホッパー16Aに貯留されている粒サイズ0.3μmのガラスビーズを投射材として噴射ノズル15に供給し、この噴射ノズル15で0.25MPaの投射圧力で20秒間被処理材料に投射して第3ショットピーニング処理を行うことにより、表面粗さRmax は0.08μmに改善することができた。
【0043】
同様に、0.25MPaの投射圧力で、0.3mmの鋼球を被処理材料2に投射して、この被処理材料2の表面を硬化させ、略HV900程度の硬さとし、この状態で0.6mmの鋼球を投射材として、0.45MPaの投射圧力で60秒間投射しても表面粗さRmax は2.5μm程度であり、表面粗さを改善することができ、続いて0.5μmのガラスビーズを投射材として0.25MPaの投射圧力で40秒間投射すると、表面粗さRmax は0.04μmとなり、且つ最大圧縮残留応力は表面で16MPaであった。
【0044】
このように、中サイズの投射材による第1ショットピーニング処理、大サイズの投射材による第2ショットピーニング処理及び小サイズの投射材による第3ショットピーニングを連続して行うことにより、被処理材料の深い位置に圧縮残留応力を発生させながら表面粗さRmax を向上させることができ、材料強度を著しく向上させることができる。
【0045】
以上のように、上記実施形態によると、被処理材料に噴射した後の投射材を回収し、これを投射材分離装置24で投射材の種類毎に分離して回収することができるので、1台のショットピーニング装置を使用して、被処理材料に対して2段以上のショットピーニング処理を連続して行うことができ、短い処理時間で2段以上のショットピーニング処理を正確に行うことができる。
【0046】
しかも、ショットピーニング処理後に回収された投射材を投射材分離装置24で、定量流下させながら送風機30の送風を当てることにより、飛距離差を利用して分離するので、第1ショットピーニング処理から第2ショットピーニング処理に切換える際、第2ショットピーニング処理から第3ショットピーニング処理に切換える際、及び第3ショットピーニング処理から第1ショットピーニングに切換える際に、異なるサイズや材質の投射材が混合されて回収される場合でも、これらを正確に分離回収することができる。
【0047】
なお、上記実施形態においては、投射材として0.6mmの鋼球、0.3mmの鋼球及び0.3μmのガラスビーズを使用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の種々の形状のチップ、ワイヤ、アトマイズ鉄粉等の粒状物を適用することができる。
また、上記実施形態においては、送風案内筒36から流下される投射材に対して直交するように送風を供給する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、流下される投射材に対して交差する方向に送風を供給するようにすればよく、投射材として径の異なる鋼球を使用した場合には、これらを分離するためには、送風をノズルから吹き出させ、このノズルの角度が上向きとなる方が好ましく、このためにはノズル角度及びノズル開口面積を可変とすることが好ましい。
【0048】
さらに、上記実施形態においては、ショットピーニング装置本体1と投射材分離装置24とを水平面に並列に配置する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ショットピーニング装置本体1の下側に投射材分離装置24を配設することにより、揚送機構22を省略することができる。
さらにまた、上記実施形態においては、ショットピーニング装置本体1で被処理材料2を回転駆動する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、装置が複雑とはなるが被処理材料2を固定し、噴射ノズル15を回転させるようにしてもよい。
【0049】
なおさらに、上記実施形態では、3段ショットピーニングを行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2段以上のショットピーニング処理を行うことができ、当然に1段のショットピーニング処理も行うことができる。
また、上記実施形態においては、3つの貯留ホッパー16A〜16Cを設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、使用する投射材の種類数に応じた数の貯留ホッパーを設けることができ、これに応じて分離機24の回収用ホッパー数及び揚送機構数を増加させればよい。
【0050】
さらに、上記実施形態においては、投射材分離装置24の回収用ホッパー37A〜37Eが固定配置される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、使用する投射材の飛距離に応じて開口位置を任意に調整することができる構成とすることが望ましい。
さらにまた、上記実施形態においては、送風機30に加熱乾燥機32を設けた場合について説明したが、投射材回収系統の何れかに加熱乾燥機を配設するようにしてもよい。
【0051】
なおさらに、上記実施形態においては、分離用送風を送風機30を使用して形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、エアコンプレッサを使用して形成した圧縮空気を使用するようにしてもよく、この場合には、吹き出し量を流量又は圧力を検出して制御すればよい。
【0052】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、3つの貯留手段のうち選択した1つの貯留手段から中サイズの投射材を噴射ノズルに投入し、この噴射ノズルから投射材を材料保持手段に保持されている被処理材料に投射することにより、一次ショットピーニング処理を行い、この一次ショットピーニング処理に続いて大サイズの投射材による二次ショットピーニング処理を行うために、該当する貯留手段を選択してこれから投射材を噴射ノズルに送給することにより、二次ショットピーニング処理を行い、さらに二次ショットピーニング処理に続いて小サイズの投射材による三次ショットピーニング処理を行うことができ、第1ショットピーニング処理で表面を硬化させると共に、ある程度の深さまで圧縮残留応力を分布させた状態で大サイズの投射材を使用した第2ショットピーニング処理を行うことにより、表面粗さの低下を抑制しながら深い位置まで圧縮残留応力を分布させ、さらに小サイズの投射材を使用した第3ショットピーニング処理を行うことにより、表面粗さをより小さくすることができ、被処理材料の材料強度を向上させることができ、この際に混合された投射材を投射材分離手段で種類毎に分離され該当する貯留手段に送給されるので、異なる種類の投射材を使用した複数段のショットピーニング処理を連続して行うことができると共に、投射材分離手段で、ホッパーから回収された種類の異なる投射材を定量流下させ、これに対して送風機で所定風量の分離用送風を作用させることにより、投射材の粒径や質量の差により、飛距離が変化して着地位置が異なることを利用して複数の分離回収用ホッパーで分離回収するので、3種類の投射材が混合された場合で正確に分離回収することができるという効果が得られる。
【0053】
また、請求項2に係る発明によれば、回転保持軸で被処理材を保持し、これに噴射ノズルから投射材を噴射することにより、ショットピーニング処理を行う際に、投射された投射材が下方に落下することになるが、この投射材が下方の円盤に落下し、遠心力で外周縁から下方に落下することになり、軸受を投射材や破砕された投射材から保護することができるという効果が得られる。
【0054】
さらに、請求項3に係る発明によれば、材料保持手段で保持する被処理材に付着している水分によって投射材が湿気をおびたときや、送風空気の湿度が高いときに、乾燥手段で乾燥状態にさせることにより、再循環中に投射材を乾燥させてから貯留手段に貯留することができ、投射材に破砕された投射材等のダストが付着することを確実に防止して、良好なショットピーニング処理を行うことができるという効果が得られる。
【0055】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、第1ショットピーニング処理で表面を硬化させると共に、ある程度の深さまで圧縮残留応力を分布させた状態で大サイズの投射材を使用した第2ショットピーニング処理を行うことにより、表面粗さの低下を抑制しながら深い位置まで圧縮残留応力を分布させ、さらに小サイズの投射材を使用した第3ショットピーニング処理を行うことにより、表面粗さをより小さくすることができ、被処理材料の材料強度を向上させることができるという効果が得られる。
【0056】
なおさらに、請求項5に係る発明によれば、第1ショットピーニング処理、第2ショットピーニング処理及び第3ショットピーニング処理を連続して行うことにより、種類の異なる投射材が混合されたときに、これらを受けホッパーで貯留し、この受けホッパーから定量流下させながら、その流下方向と交差する方向に所定風両の送風を行うことにより、種類の異なる投射材の粒径差或いは質量差によって、着地位置が異なることを利用して、種類の異なる投射材を正確に分離回収することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】複数の投射材に送風を当てたときの落下高さと落下位置までの距離との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ショットピーニング装置本体
2 被処理材料
3 回収部
6 回転駆動源
8 軸受
9 円盤
10 保持軸
15 噴射ノズル
16A〜16C 貯留ホッパー
18A〜18C 投入弁
24 投射材分離装置
26 受けホッパー
27 定量切り出し機構
30 送風機
32 加熱乾燥機
37A〜37E 回収用ホッパー
39A〜39C 揚送機構
Claims (5)
- 熱処理後の材料表面に異なるショットピーニング処理を行う2種類以上の投射材を順次投射して圧縮残留応力を生じさせるショットピーニング装置において、大サイズの投射材、中サイズの投射材及び小サイズの投射材を個別に貯留する3つの貯留手段と、前記熱処理後の被処理材料を回転自在に保持する材料保持手段と、前記3つの貯留手段のうちから中サイズ投射材、大サイズ投射材及び小サイズの投射材をその順に選択して順次供給される投射材を前記材料保持手段で保持している被処理材料に高速で噴射して3段階のショットピーニング処理を行う噴射ノズルと、被処理材料に投射された投射材を回収する回収手段と、該回収手段で回収された投射材を種類別に分離する投射材分離手段と、該投射材分離手段で分離された投射材を対応する前記3つの貯留手段に個別に送給する再循環手段とを備え、前記投射材分離手段は、ケース体の上部に配設されて前記回収手段で回収された投射材をケース体内に定量流下させる受けホッパーと、該受けホッパーから流下される投射材に対してその流下方向と交差する方向から所定風量の分離用送風を行う送風機と、該送風機の分離用送風によって飛ばされた投射材を飛距離に応じて分離回収する3つ以上の分離回収用ホッパーとを有することを特徴とするショットピーニング装置。
- 前記材料保持手段は、ケース体の上部に配設された回転駆動源に着脱自在に装着される熱処理後の被処理材料を保持する回転保持軸と、該回転保持軸の下端に配設された軸受を覆う円盤とで構成されていることを特徴とする請求項1記載のショットピーニング装置。
- 前記投射材分離手段は、送風機に供給する送風を加熱乾燥する乾燥手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のショットピーニング装置。
- 熱処理後の材料表面に投射材を投射して圧縮残留応力を生じさせるショットピーニング方法において、同一チャンバー内で、中サイズの投射材を投射する第1ショットピーニング処理と、大サイズの投射材を投射する第2ショットピーニング処理と、小サイズの投射材を投射する第3ショットピーニング処理とを連続して行い、投射されて混合された3種類以上の投射材を分離して循環再使用するようにしたことを特徴とするショットピーニング方法。
- 前記投射材の分離は、3種類以上の投射材が混合した混合投射材を受けホッパーに貯留して当該受けホッパーから定量流下させると共に、その流下方向と交差する方向に所定風量の送風を行い、投射材の着地位置に応じて分離回収することを特徴とする請求項4に記載のショットピーニング方法。
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