JP3660055B2 - カートリッジフィルター及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は製薬・食品工業等における液体濾過用に好適な円筒状のカートリッジフィルター及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カートリッジフィルターは、通常、濾過層が中空円筒状に形成され、液体が濾過層を通過する間にこの濾過層が液体中の微粒子を捕捉する構造になっている。そしてこのカートリッジフィルターは、製薬工業、電子工業等における精製水の濾過、あるいは食品工業における飲料水製造工程内での液体濾過、自動車工業における塗装剤の濾過等、各種業界において広く利用されている。
【0003】
そこで、従来より、様々な態様のカートリッジフィルターが提案されている。例えば、実開昭59−162914号公報や実開昭60−79521号公報には多孔性芯筒に糸を巻き付けたカートリッジフィルターが、また特開平2−21918号公報には熱接着性繊維を含むカードウェブを加熱しながら芯筒に巻き付けたものが提案されている。
【0004】
また、高い濾過精度が要求される分野においては、濾材となるシート状物がひだ状に折りたたまれながら芯筒に巻き付けられてなる、いわゆるプリーツタイプのカートリッジフィルターが使用されている。このプリーツタイプのカートリッジフィルターにおいても、濾材として紙や不織布等の繊維質シートが使用されることが多い。そして高い濾過精度を確保するには、繊維間に形成される空隙(一般的にポアサイズで表される)が小さく、かつその空隙のサイズが均一なものを濾材として用いることが好ましいとされている。
【0005】
かかる条件を満たすものとして、例えば、▲1▼メルトブロー不織布やスパンボンド不織布にカレンダー加工を施して繊維間空隙を小さくしたもの、▲2▼不織布にアクリル系やエポキシ系の樹脂を含浸させたもの、▲3▼四フッ化エチレンやガラス繊維を素材としたもの、等が提案され実用に供されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの濾材には以下のような問題がある。まず、スパンボンド不織布はその製造工程上、繊度の小さな繊維からなるものを得ることが難しく、これにカレンダー加工を施しても繊維間空隙を小さくさせるのには限界がある。
【0007】
これに対し、メルトブロー不織布は1デニール以下の極細繊維で構成することができ繊維間空隙を小さくすることが可能であるため、濾材として最も汎用されている。しかし、その製造工程上、不織布中の繊維の繊度が不均一になりやすく、その結果繊維間空隙のサイズの分布が広くなる。従ってこれにカレンダー加工を施しても、空隙の大きな箇所が残存するおそれがある。繊維間空隙を小さくするためにはカレンダー加工を高温高圧で行うとよいが、温度及び圧力をあまり高くすると微細な繊維間空隙が閉塞されてしまうため、濾過流量が減少するという不都合が生じる。つまり、メルトブロー不織布を用いる場合、濾過精度か濾過流量のいずれか一方を犠牲にせざるを得ないのである。
【0008】
一方、不織布にアクリル系、エポキシ系の樹脂を含浸させると、繊維間空隙が小さくなると同時にその分布のばらつきが是正されるので前記不都合は解消されるが、これらの樹脂は耐薬品性に劣るため用途が限定されるという問題がある。また、その製造工程において、樹脂を含浸させる工程が煩雑であるという問題もある。
【0009】
四フッ化エチレンやガラス繊維を素材とするものは耐薬品性および濾過性能ともに優れているが、非常に高価であるため特殊用途にのみ限定使用されている。
【0010】
即ち、濾過性能および耐薬品性に優れ、かつ経済的なプリーツタイプのカートリッジフィルターは未だ得られていないのが実情である。
【0011】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、耐薬品性、濾過性能、経済性いずれにも優れたカートリッジフィルターを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のカートリッジフィルターは、繊維長20mm以下の短繊維からなり、かつ構成繊維同士が交絡している不織布であって、構成繊維中に単糸繊度1.0デニール以下の極細繊維が含まれており、その極細繊維のうち少なくとも一種類が湿熱接着性を有するものであり、かつこの湿熱接着性を有する極細繊維によって、構成繊維同士が接着している不織布により濾過層が形成されていることを特徴とする。かかる不織布は極細繊維を含んでいるため、不織布中に形成される繊維間空隙が微細なものとなる。さらに、不織布中の繊維同士が接着されているため、繊維間空隙はより微細なものとなる。また、湿熱接着性を有する極細繊維は湿潤状態で加熱されるとゲル化して流動性を増し、その一部が周囲の繊維間空隙内へ部分的に侵入する。その結果、繊維間空隙が過度に閉塞されることなく微細化される。同時に繊維間空隙のサイズのばらつきも是正され均一化される。従って、この不織布を用いれば、濾過流量が大幅に減少することなく濾過精度が向上したカートリッジフィルターを得ることができる。
【0013】
上記不織布は湿式不織布であることが望ましい。湿式不織布は、比較的短い繊維を水中に分散させたスラリーを抄紙して得られるものである。この不織布は、優れた均一性を有し、繊維間空隙のサイズ分布の範囲はメルトブロー不織布等のそれよりも狭い。従って、これを濾材として用いれば濾過性能をより向上させることができる。
【0014】
湿熱接着性を有する極細繊維は、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるものであることが望ましい。この共重合体は、湿潤状態下において、比較的低温で接着性を示すため、これを含む不織布は湿熱接着処理を容易に行うことができる。
【0015】
また、前記極細繊維は分割型複合繊維の分割により形成されたものであることが望ましい。極細繊維を出発材料として不織布を形成する場合に比べて均一な不織布を得ることができるからである。
【0016】
また、分割型複合繊維は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を第一成分、ポリオレフィン系重合体を第二成分とするものであることが望ましい。かかる分割型複合繊維は、湿熱接着性のエチレン−ビニルアルコール共重合体を一成分とするため、これを用いれば、湿熱接着処理を容易に行うことができる。また、オレフィン系樹脂のみで構成されているため耐薬品性に優れているという利点がある。
【0017】
本発明においては、前記不織布を、芯筒上にひだ状に折りたたみながら巻き付けてプリーツタイプのカートリッジフィルターとすることが特に好ましい。かかる態様のフィルターにおいてこそ、この不織布の利点が最も効果的に発揮されるからである。
【0018】
本発明のカートリッジフィルターの好ましい製造方法は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を第一成分とし、ポリオレフィン系重合体を第二成分とする分割型複合繊維を含む繊維シートを湿式抄紙法により製造し、これに高圧水流処理を施して、分割型複合繊維を分割させて極細繊維を形成せしめると同時に繊維同士を交絡させた不織布を形成し、さらにこの不織布を湿潤状態にして、加熱温度70〜130℃、圧力30〜70kg/cmで、加熱加圧処理を施すことにより、湿熱接着性を有する極細繊維がゲル化し、ゲル化した湿熱接着性極細繊維の一部を不織布中の繊維間空隙内に侵入させ、繊維同士を接着させた不織布を用いて濾過層を形成する方法である。かかる方法により、微細な繊維間空隙が均一に形成された濾過層を有するフィルターを得ることができる。さらに、この方法によれば、加熱加圧処理の条件を適宜変更することにより繊維間空隙のサイズを任意に変更させることできる。以下、本発明の内容を具体的に説明する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明ではカートリッジフィルターの濾材として、繊維長20mm以下の短繊維からなり、かつ構成繊維同士が交絡している不織布を採用する。かかる不織布は、湿式不織布であることが最も望ましい。湿式抄紙法によれば均一な不織布、即ち繊維間空隙のサイズのばらつきが比較的小さな不織布を得ることができるからである。そして本発明においては、不織布強力の向上を図るべく、構成繊維同士を交絡させることを特徴としている。繊維同士の交絡は後述するように水流の作用によって行うことが望ましい。
【0020】
前記不織布には単糸繊度1デニール以下、より好ましくは0.5デニール以下の極細繊維が含まれていることが望ましい。繊維間空隙を微細なものにするためである。
【0021】
本発明においては、極細繊維のうち少なくとも一種類が湿熱接着性を有するものであることが望ましい。そして、この湿熱接着性を有する極細繊維(以下、湿熱接着性極細繊維と略す場合がある)がゲル化し、ゲル化した湿熱接着性極細繊維の一部が不織布中の繊維間空隙内に侵入して、繊維同士を接着させれば、繊維間空隙をより微細なものにすることができる。ここで湿熱接着性を有する繊維とは、湿潤状態で加熱されるとゲル化し、ゲル化した状態で圧力を加えられることにより接着する性質を有するものをいう。湿熱接着性を有する素材としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコールが挙げられる。エチレンビニルアルコール共重合体は、耐薬品性に優れ、また約70〜130℃と比較的低い温度で湿熱接着させることができるので、本発明では特にその使用が好ましい。
【0022】
湿熱接着性極細繊維が不織布に占める割合は30重量%以上70重量%以下が好ましい。より好ましくは40〜60重量%である。30重量%未満では、繊維間空隙を十分に微細化することができず、70重量%を超えると繊維間空隙を過度に閉塞し、濾過流量の低下を招く。
【0023】
湿熱接着性極細繊維以外の極細繊維の素材は特に限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド系樹脂、等からなる繊維を任意に使用することができる。特に、ポリオレフィン系重合体は耐薬品性に優れていることからも、その使用が好ましい。
【0024】
極細繊維を得ることは技術的に難しく、また極細繊維を用いて湿式不織布を得ようとしても、細い繊維はスラリー中において絡み合いやすく不織布の均一性が低下する場合がある。そこで本発明においては、分割型複合繊維を用いて湿式抄紙法により繊維シートを製造し、分割型複合繊維を分割することによって極細繊維を形成させることが望ましい。
【0025】
ここで、分割型複合繊維とは二種類以上の成分が交互に配列されてなり、物理的あるいは化学的な処理によって各構成成分に分割するようなものをいう。汎用されている分割型複合繊維は、第一成分(1)と第二成分(2)とからなり、図1から図4に示すような繊維断面を有するものである。
【0026】
本発明においては、エチレン−ビニルアルコール共重合体を第一成分とし、ポリオレフィン系重合体を第二成分とする分割型複合繊維の使用が望ましい。ポリオレフィン系重合体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ4−メチルペンテン−1等が挙げられる。これらの組み合わせからなる分割型複合繊維を使用すれば、耐薬品性に優れ、また繊維同士の接着が良好な不織布を得ることができる。
【0027】
分割型複合繊維は、その単糸繊度が1〜20デニールであって、分割により形成される極細繊維の単糸繊度が1デニール以下となるようなものが好ましい。より好ましくは単糸繊度1〜8デニール、分割後の極細繊維の繊度が0.5デニール以下となるものである。
【0028】
極細繊維が不織布に占める割合は70重量%以上であることが好ましい。70重量%未満では濾過精度を向上させるに至らないからである。より好ましくは75〜90重量%である。従って、分割型複合繊維を使用する場合は、分割後に形成される極細繊維の占める割合が上述した範囲内になるよう、分割率等を考慮してその含有量を決定する必要がある。
【0029】
極細繊維が前述した範囲内の割合で占められていれば、湿式不織布には他の繊維が含まれていても良い。他の繊維として、例えば、湿式抄紙する際に糊剤として作用する繊維、いわゆるバインダー繊維を使用すれば不織布強力を高めることができる。バインダー繊維の素材としてはビニロン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等が挙げられる。また、三井石油化学工業(株)から販売されている「SWP(商品名)」のようなポリオレフィン系のパルプ状多分岐繊維を使用することもできる。
【0030】
バインダー繊維等を混合する場合も、混合する繊維の繊度はできるだけ小さいことが望ましい。繊度の大きな繊維が不織布中に存在すると大きな繊維間空隙が形成されやすくなり、濾過性能に好ましくない影響を及ぼす。また、バインダー繊維等の含有量は30重量%以下であることが好ましい。より好ましくは5〜20重量%である。含有量が30重量%を超えると極細繊維の占める割合が減って濾過性能が低下する。
【0031】
湿式不織布を構成する繊維の繊維長は、20mm以下であることが望ましい。より好ましくは3mm以上20mm以下である。3mm未満では繊維同士が交絡しにくい。20mmを超えるとスラリー中で繊維同士が絡み合いやすくなり、均一な不織布を得ることが難しくなる。
【0032】
本発明では、不織布の目付は、20g/m2 以上200g/m2 未満であることが望ましい。目付が20g/m2 未満の不織布においては、均一な繊維間空隙が形成されにくく、これを用いれば濾過性能が低下するおそれがある。200g/m2 を超えると不織布の厚みが増して、濾過流量の減少を招くため好ましくない。また、プリーツタイプのカートリッジフィルターを製造する場合には、濾材の厚みが増すと一定周長におけるプリーツの山数が少なくなる。プリーツの山数の減少は、濾過面積の減少に繋がり好ましくない。
【0033】
次に、本発明のカートリッジフィルターを製造する方法について説明する。
不織布は通常の湿式抄紙法に従って製造することができる。分割型複合繊維を用いる場合はスラリー調製の際に加えられる叩解力によって分割がある程度進行するが、あまり進行しすぎると分割された繊維同士がスラリー中で絡み合って、最終的に得られる不織布の均一性が低下することに留意する必要がある。従って、ここでは分割率を30%以下に抑えることが望ましい。
【0034】
スラリーは長網式あるいは丸網式の抄紙機を用いて抄紙される。そして抄紙された繊維シートに高圧水流処理を施し、繊維同士を交絡させる。ここで分割型複合繊維を用いた場合は、高圧水流によって交絡と同時に分割も進行することとなる。高圧水流処理の条件は使用する繊維の特性に応じて決定することができる。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体/ポリプロピレンの組み合わせからなる分割型複合繊維を使用する場合は、水圧30〜100Kg/cm2 の柱状水流を、孔径0.05〜0.5mmのオリフィスが0.5〜1.5mm間隔で設けられたノズルから噴射して処理するとよい。
【0035】
次いで、この不織布を湿潤状態にして加熱加圧処理を施し、繊維同士を湿熱接着させる。高圧水流処理を施した直後に湿熱接着処理を行えば、連続的に処理することができるので好ましい。不織布を一旦乾燥させた場合にあっては、不織布に水を噴霧する、あるいは不織布を水に浸漬する等して不織布を湿潤状態にする必要がある。
【0036】
加熱加圧処理は、一対の熱ロールを用いて行うと良い。加熱温度は、湿熱接着性極細繊維がゲル化して接着性を示す温度に設定する。例えば、湿熱接着性極細繊維としてエチレン−ビニルアルコール共重合体からなるものを用いる場合は、加熱温度を70〜130℃に設定するとよい。
【0037】
圧力は、湿熱接着性極細繊維が接着するように、加熱温度や不織布の目付等を考慮して設定する。一般に加熱温度が低いときは、圧力を高めにする必要があり、加熱温度が高いほど、低い圧力でも接着させることができる。また、圧力を高くするほど、ゲル化した湿熱接着性極細繊維が周囲の繊維間空隙内へ侵入しやすくなるので、繊維間空隙の微細化が促進される。但しあまり圧力を高くしすぎると、ゲル化した極細繊維が延展されてフィルム化し、空隙を閉塞するおそれがあるため注意を要する。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる湿熱接着性極細繊維を含む目付40〜80g/m2 程度の不織布を、加熱温度70〜130℃で処理する場合は、圧力を30〜70kg/cm程度にするとよい。
【0038】
このようにして得られた不織布を、芯筒の周囲に濾材として位置させることにより本発明のカートリッジフィルターとなすことができる。本発明においては、図5のように、この不織布(3)をスパンボンド不織布やネット状シートのような補強材とともに芯筒(4)の周囲にひだ状に折りたたみながら巻き付け、いわゆるプリーツタイプのカートリッジフィルター(5)とすることが最も望ましい。勿論、この不織布を連続的に供給しながら芯筒の周囲に一定径になるまで巻き付けた、いわゆる深層濾過タイプのカートリッジフィルターとすることも可能である。また図6のように他の濾材シート(7)と併用し、この不織布が精密濾過層(6)として一部巻きこまれるようにしても良い。また、他の濾材と重ね合わせて積層体とし、これを芯筒に巻き付けてもよい。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。実施例中、不織布の物性および濾過性能は以下の方法により評価した。
【0040】
(平均ポアサイズ) ASTM F316−86のバブルポイント法に基づいて測定した。
【0041】
(通気度) フラジール型試験機を用い、JIS L 1096に準じて測定した。
【0042】
(濾過効率) 試験用ダストJIS11種とJIS8種を等量ずつ混合したダストを水中に投入し、その濃度が50ppmになるように調製した懸濁液1リットルを、面積9.2cm2 の濾材で吸引濾過し、濾過後の懸濁液を乾燥させて含まれているダスト重量(A)を測定し、これと濾過前の懸濁液中のダスト重量(B)から次式、濾過効率(%)=[(B−A)/B]×100より算出した。
【0043】
(濾過精度) 濾過効率の測定と同様にして懸濁液を吸引濾過し、濾過後の懸濁液中の粒子径別の粒子個数(N)を粒度分布測定機(商品名 コールターカウンターZM型:コールターエレクトロニクス社製)を用いて測定する。また同様にして濾過前の懸濁液中の粒子径別の粒子個数(M)を測定し、式[(M−N)÷M]×100から各粒子径別の遮断率を算出し、遮断率が99%の粒子径を濾過精度とした。
【0044】
(濾過流量) 濾過精度の測定と同様にして懸濁液1リットルを吸引濾過し、濾過開始から懸濁液の全量が濾材を通過するのに要した時間を測定し、この結果より、単位面積・単位時間あたりの流量を算出した。
【0045】
[実施例1]
エチレン−ビニルアルコール共重合体を第一成分、ポリプロピレンを第二成分とし、図1に示す繊維断面を有する繊度3デニール、繊維長5mmの16分割型複合繊維95重量%と、繊度1デニール、繊維長3mmのビニロン繊維5重量%とをパルパーで混合してスラリーを調製し、これを用いて湿式抄紙法により目付50g/m2 の湿式不織布を作成した。続いてこの不織布に、孔径0.13mmのオリフィスが0.6mm間隔で穿設されたノズルから水圧70kg/cm2 の高圧柱状水流を噴射し、分割型複合繊維を分割させると同時に繊維同士を交絡させた。そして高圧水流処理後、未だ不織布が湿潤状態にある間に、金属ロールとコットンロールからなる加工機(以下の実施例および比較例においても同じものを使用)を用いて加熱温度120℃、線圧50kg/cmでカレンダー加工を施し、エチレン−ビニルアルコール共重合体によって繊維同士を湿熱接着させ、濾過層用の不織布とした。得られた不織布においては、繊度約0.19デニールの極細繊維が形成され、全体の約90重量%を占めていた。
【0046】
[実施例2]
湿熱接着させる際の線圧を60kg/cmにする以外は実施例1と全く同様にして濾過層用の不織布を製造した。
【0047】
[比較例1]
セルロース繊維からなる濾紙にエポキシ樹脂を含浸させたものを濾過層とするプリーツタイプのカートリッジフィルター(商品名:TC−1 アドバンテック東洋(株)製)を用意し、濾過層のみを取り出して濾過性能を評価した。
【0048】
[比較例2]
ポリプロピレンからなるメルトブロー不織布に加熱加圧処理を施したもの濾過層とするプリーツタイプのカートリッジフィルター(商品名:TCP−1 アドバンテック東洋(株)製)を用意し、濾過層のみを取り出して濾過性能を評価した。
【0049】
[比較例3]
ポリエステルからなるメルトブロー不織布にセルロースアセテートを含浸させたものを濾過層とするプリーツタイプのカートリッジフィルター(商品名:TCYE−LS アドバンテック東洋(株)製)を用意し、濾過層のみを取り出して濾過性能を評価した。
【0050】
実施例1〜2、および比較例1〜3の各不織布の物性および濾過性能を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1、2と比較例1は、濾過効率はほぼ同じであるが、実施例の方が濾過流量および濾過精度の点で優れている。また実施例1は、平均ポアサイズが比較例2のものより大きいにもかかわらず、優れた濾過性能を呈する。これは、比較例2の不織布の繊維間空隙のサイズ分布が広範囲に亘っているためであると考えられる。実施例2と比較例3は、濾過効率および濾過精度についてはほぼ同じ性能を有するが、実施例2の方が濾過流量が大きい。
【0053】
【発明の効果】
本発明のカートリッジフィルターは、濾過層に湿式不織布のような均一性に優れた不織布を用いていること、この不織布が極細繊維を含んでいること、極細繊維の少なくとも一種類が湿熱接着性極細繊維であって繊維同士を接着していること等に加えて、ゲル化した湿熱接着性極細繊維の一部が不織布中の繊維間空隙内に侵入していることを特徴とする。かかる不織布は、不織布に樹脂を含浸させたものに近い構造を有しており、不織布には微細な繊維間空隙が均一に形成されている。また、繊度の極めて小さい繊維の部分的な流動によって繊維間空隙が微細化されているので、空隙が過度に閉塞されることがない。従って、この不織布を濾過層に用いれば、濾過流量が大幅に減少することなく濾過精度が向上されたカートリッジフィルター、即ち、濾過流量と濾過精度のバランスが非常に良いカートリッジフィルターを提供することができる。また、この不織布は、繊維同士が湿熱接着されているために不織布強力が向上しており、プリーツ加工性も良い。
【0054】
さらに、湿熱接着性極細繊維の素材としてエチレン−ビニルアルコール共重合体を採用すれば、耐薬品性に優れた濾過層を形成することができる。そのため、本発明のカートリッジフィルターは、不織布に樹脂を含浸させた濾材の使用が不可能な分野においても使用され得る。
【0055】
かかる不織布は、分割型複合繊維を使用することにより容易に製造することができる。従って、本発明によれば優れた濾過性能を有するカートリッジフィルターを安価に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用できる分割型複合繊維の一例の断面拡大図である。
【図2】本発明で使用できる分割型複合繊維の一例の断面拡大図である。
【図3】本発明で使用できる分割型複合繊維の一例の断面拡大図である。
【図4】本発明で使用できる分割型複合繊維の一例の断面拡大図である。
【図5】本発明のカートリッジフィルターの一例の一部破断斜視図である。
【図6】本発明のカートリッジフィルターの一例の一部破断斜視図である。
【符号の説明】
1 第一成分
2 第二成分
3 不織布
4 芯筒
5 プリーツタイプのカートリッジフィルター
Claims (9)
- 繊維長20mm以下の短繊維からなり、かつ構成繊維同士が交絡している不織布であって、構成繊維中に単糸繊度1.0デニール以下の極細繊維が含まれており、その極細繊維のうち少なくとも一種類が湿熱接着性を有するものであり、かつこの湿熱接着性を有する極細繊維がゲル化し、ゲル化した湿熱接着性極細繊維の一部が不織布中の繊維間空隙内に侵入して、構成繊維同士が接着している不織布により濾過層が形成されていることを特徴とするカートリッジフィルター。
- 不織布が湿式不織布である請求項1記載のカートリッジフィルター。
- 極細繊維が不織布中、70重量%以上含まれている請求項1もしくは2いずれか一項記載のカートリッジフィルター。
- 湿熱接着性を有する極細繊維が、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるものである請求項1〜3いずれか一項記載のカートリッジフィルター。
- 湿熱接着性を有する極細繊維が、不織布中30重量%以上70重量%未満含まれている請求項1〜4いずれか一項記載のカートリッジフィルター
- 極細繊維が分割型複合繊維の分割により形成されたものである請求項1〜5いずれか一項記載のカートリッジフィルター。
- 分割型複合繊維が、エチレン−ビニルアルコール共重合体を第一成分、ポリオレフィン系重合体を第二成分とするものである請求項6記載のカートリッジフィルター。
- 不織布がひだ状に折りたたまれながら芯筒に巻き付けられて濾過層を形成している請求項1〜7いずれか一項記載のカートリッジフィルター。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体を第一成分とし、ポリオレフィン系重合体を第二成分とする分割型複合繊維を含む繊維シートを湿式抄紙法により製造し、これに高圧水流処理を施して分割型複合繊維を分割させて極細繊維を形成せしめると同時に繊維同士を交絡させた後、これを湿潤状態にして、加熱温度70〜130℃、圧力30〜70kg/cmで、加熱加圧処理を施すことにより、湿熱接着性を有する極細繊維がゲル化し、ゲル化した湿熱接着性極細繊維の一部を不織布中の繊維間空隙内に侵入させ、繊維同士を接着させた不織布を用いて濾過層を形成することを特徴とするカートリッジフィルターの製造方法。
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