JP3582461B2 - 高強度溶接鋼管 - Google Patents
高強度溶接鋼管Info
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス配管や石油配管等に使用される高強度溶接鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然ガスや原油を長距離輸送するパイプラインでは、操業圧力を高めることによって輸送効率を向上させ、輸送コストの低減を図ることができる。
【0003】
操業圧力を高めるためには、パイプの肉厚を増加させるか、あるいはパイプ材を高強度化することが必要となるが、パイプの厚肉化は現地溶接の施工能率の低下を伴い、また、パイプの質量増加により施工効率が低下するという問題が生じる。そのため、ラインパイプ材に対する高強度化ニーズが高まっており、現在、米国石油協会(API)規格でX80グレード鋼(降伏強さ(YS):551MPa以上、引張強さ(TS):620MPa以上)が規格化され、実用に供されている。
【0004】
ラインパイプ母材の高強度化に関しては、X100グレード鋼(YS:689MPa以上、TS:760MPa以上)を製造し、この鋼を用いてパイプ(鋼管)を試作した結果が報告されている(例えば、「新日鐵技報」第362号(1997)38〜42頁)。また、特開平8−269542号公報および特開平8−199292号公報等では、950MPa以上の引張強さを有する低温靭性および現地溶接性に優れた鋼の製造方法が開示されている。
【0005】
これらの報告および発明によれば、母材が高強度でかつ低温靭性に優れ、また、現地溶接性にも優れた(すなわち、比較的小入熱での溶接施工が可能な)、良好な耐低温割れ特性を有する鋼材の製造が可能とされている。
【0006】
パイプラインに使用される大径の溶接鋼管(大径鋼管)は、板材をプレス成形した後、シーム部を溶融溶接することにより製造される。代表的なシーム溶接方法としては、サブマージアーク溶接による両面一層溶接が用いられている。
【0007】
一般に、溶接継手部(溶接部とその近傍の母材を含む部分を、ここでは溶接継手部という)では、溶接部(溶接中に溶融凝固した部分である溶接金属と、熱影響部を含む部分)、特に溶接金属が母材と同等の強度を有し、引張試験の際、母材部分で破断することが求められるが、前述のX100グレード鋼を用いて試作した鋼管についての試験結果では破断位置が溶接熱影響部となっており、また、母材の引張強さに対して溶接部の引張強さが低いという問題がある。
【0008】
また、HT80と称される引張強さ780MPa以上の高強度鋼では、低温割れに関しては溶接金属に発生する横割れの防止が最も困難であるとの報告がなされており(「溶接学会誌」第46巻(1977)第12号、875〜880頁)、拡散性水素量と溶接ワイヤの組成から割れ発生限界を予測する試みが行われている(「溶接学会誌」第46巻(1977)第8号、561〜566)。しかし、これらの報告では、特定の水素含有量で割れが発生する場合には予熱温度または層間温度を高くすることにより割れ発生が防止できるとの見解を表明するにとどまっている。
【0009】
高強度鋼板を母材とする大径鋼管を安価にかつ大量に供給するためには、溶接部の適正な設計が必須であり、必要とされる特性に見合った溶接部を有する大径鋼管の開発が不可欠であるが、現状では前記の問題、すなわち、破断位置が母材ではないこと、溶接金属の引張強さが低いこと、および溶接金属に横割れが発生すること、に対する解決策は確立されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題を解決し、高強度鋼板を母材とし、優れた溶接部特性を備えた、安価で、かつ大量に供給し得る溶接鋼管を提供することを課題としている。
【0011】
具体的には、母材の引張強さが750MPa以上の高強度溶接管において、
A) 破断が発生する場合には、母材破断する鋼管を得ること、
B) 高強度かつ高靭性な溶接金属を得ること、
C) 製管溶接の際、溶接金属における横割れの発生を防止すること、
である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記の高硬度溶接鋼管にある。
【0013】
内外面に各一層のシーム溶接金属を有する溶接鋼管であって、母材の引張強さが750〜905MPaのときは、下記の条件a、bおよびcを満足し、母材の引張強さが905MPaを超えるときは、下記の条件a、d、eおよびfを満足する高強度溶接鋼管。
【0014】
条件a:溶接金属の引張強さが母材の引張強さの1.05倍以上、
条件b:溶接金属の引張強さ(MPa)≦TM、
条件c:初層側溶接金属の引張強さが950MPa以下、
条件d:第二層側溶接金属の引張強さ(MPa)≦TM、
条件e:初層側溶接金属の引張強さ(MPa)>0.95TM、
条件f:初層側溶接金属の組織がマルテンサイト組織からなり、下記の(1)式により求められるマルテンサイト変態点MS(℃)が375℃以下、
MS=538−317C(%)−33Mn(%)−28Cr(%)−17Ni(%)−11Si(%)−11Mo(%)−11W(%)・・・・(1)
ただし、条件b、dおよびeにおける「TM 」は、溶接金属の組織をマルテンサイト組織からなると仮定した場合に算出される溶接金属の引張強さ(MPa)で、下記の(2)式で表される。
【0015】
TM =2500C(%)+910 ・・・・ (2)
上記の高強度溶接鋼管において、多くのNiを含む溶接金属でも、初層側溶接金属中のNi含有量が下記の条件gを満たす量であれば、横割れは発生しない。
【0016】
条件g:Ni(%)≦0.4{Cr(%)+1.5Mo(%)}+3.5
また、上記の高強度溶接鋼管において、溶接金属中の酸素含有量に対するアルミニウム含有量の比〔Al(%)/O(%)〕が1.2以下であり、かつ、B含有量が0.002質量%以下であれば、特に低温靱性が向上する。
【0017】
ここで、例えば、「C(%)」のように、元素記号の後に(%)を付した記号は、その元素の溶接金属中または初層側溶接金属中における含有量(質量%)を意味する。
【0018】
「シーム溶接金属」または単に「溶接金属」とは、特に断らない限り、板材をプレス成形した後シーム部を内外面各一層の溶接により製造した鋼管における前記各層の双方の溶接金属をいう。また、そのうちの最初に溶接した側を「初層側溶接金属」、その後に溶接した側を「第二層側溶接金属」という。
したがって、前記条件aおよびbにおける「溶接金属」とは、溶接鋼管における初層側溶接金属と第二層側溶接金属の双方を含む。
【0019】
前記条件aおよびbにおける「溶接金属の引張強さ」とは、実測の引張強さ、つまり、溶接鋼管における溶接金属の引張強さをいう。これは、実際に溶接したときに形成される溶接金属の部分から引張試験片を採取して引張試験を行うことにより測定することができる。
次に、条件cおよびeにおける「初層側溶接金属の引張強さ」とは、鋼管の初層側に対応する溶接時と同じ組み合わせのワイヤ/フラックスを用い、かつ同じ条件で母材を1層溶接したときの溶接金属の引張強さを指す。また、条件fにおける「初層側溶接金属の組織」とは、鋼管の初層側に対応する溶接時と同じ組み合わせのワイヤ/フラックスを用い、かつ同じ条件で母材を1層溶接したときの溶接金属の組織を意味する。
更に、条件dにおける「第二層側溶接金属の引張強さ」とは、溶接鋼管における第二層側溶接金属の引張強さを指す。
【0020】
上記のA)〜C)の課題を解決するため、本発明者らは種々検討を重ね、以下の知見を得た。
A) 母材破断する鋼管を得る条件
シーム溶接金属の引張強さが母材の引張強さの1.05倍以上であれば、溶接金属の引張強さが母材と同等であり、かつ、破断が発生する場合には、破断位置が母材となる。
B) 溶接金属の高強度化および靱性確保
溶接金属の組織は合金元素量の増加に伴い上部ベイナイトから下部ベイナイトを経てマルテンサイトへと変化し、それに伴って引張強さが上昇する。溶接金属の組織をマルテンサイト組織からなると仮定した場合に算出される溶接金属の引張強さ(これをTMで表す。)はC含有量で整理することができ、下記の(2)式により推定することができる。
【0021】
TM(MPa)=2500C(%)+910・・・・(2)
高い靱性を安定して確保するには、溶接金属の組織をアシキュラーフェライト(溶接金属では、上部ベイナイトをアシキュラーフェライトとすることにより靱性が向上する)、または、アシキュラーフェライト、下部ベイナイトおよびマルテンサイトが混合した中間的な組織に制御する必要があり、そのためには、溶接金属の引張強さを、その組織がマルテンサイト組織からなると仮定した場合の引張強さ(TM)以下に制御することが必須である。
C) 溶接金属における横割れ発生の防止
(イ)横割れは初層側溶接金属で発生し、初層側溶接金属内または初層側溶接金属と第二層側溶接金属を貫通して存在する。
【0022】
(ロ)溶接金属の組織がアシキュラーフェライト、または、アシキュラーフェライトと下部ベイナイトとマルテンサイトが混合した中間的な組織の場合、溶接金属の引張強さが950MPaを超えるとシーム溶接の際に溶接金属に横割れが発生する。
【0023】
(ハ)溶接金属がマルテンサイト組織からなる場合、溶接金属の引張強さが950MPaを超えても、下記の(1) 式により推定されるマルテンサイト変態点MSが375℃以下であれば横割れの発生を防止できる。
【0024】
MS=538−317C(%)−33Mn(%)−28Cr(%)−17Ni(%)−11Si(%)−11Mo(%)−11W(%) ・・・・ (1)
(ニ)ただし、上記はNi含有量が比較的少ない溶接金属の場合であり、Ni含有量、具体的には初層側溶接金属中のNi含有量が多い溶接金属では横割れが発生することがある。しかし、初層側溶接金属中のNi含有量を下記の条件gを満足する量に制限すれば横割れの発生を防止できる。
【0025】
条件g:Ni(%)≦0.4{Cr(%)+1.5Mo(%)}+3.5
上記本発明は、これらの知見に基づきなされたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高強度溶接鋼管について詳細に説明する。
【0027】
上記のように、本発明の高強度溶接鋼管は、内外面に各一層のシーム溶接金属を有する溶接鋼管である。前述したように、パイプラインに使用される大径の溶接鋼管は、通常、サブマージアーク溶接による両面(鋼管の内面および外面)一層溶接が用いられているので、これを前提条件とした。
【0028】
次に、本発明の溶接鋼管は、母材の引張強さが750〜905MPaのときは、上記a、bおよびcの条件を満足することが必要である。
【0029】
母材の引張強さを750MPa以上とするのは、前述したラインパイプ材に対する高強度化ニーズに応えるためで、母材自体が750MPa以上の強度を有することが必要だからである。ただし、後述するように、条件aとbの関係から、母材の引張強さが905MPa以下という上限が自ずと定まる。
【0030】
引張強さが750MPa以上の鋼管母材を得るための素材としての鋼板が有すべき望ましい合金元素とその含有量について述べる。なお、合金元素の「%」は「質量%」を意味する。
【0031】
C:0.02〜0.15%
Cは鋼の強度を確保するために必要な元素であって、その効果を得るためには、0.02%以上含有させることが望ましい。一方、Cを過剰に含有させると炭化物の析出量が増加し、炭化物が粗大化して鋼の靭性が劣化する。また、マルテンサイトの硬さが上昇するため、溶接部(特に周溶接部)の耐水素割れ性が劣化する。したがって、C含有量の上限は0.15%とするのが望ましい。より望ましくは、0.10%である。
【0032】
Si:0.6%以下
Siは鋼の強度を確保するために必要であると同時に、製鋼時の脱酸剤としても重要な元素である。しかし、過剰に含有させると溶接金属の靭性低下の原因となるとともに、耐割れ感受性が劣化するので、その上限は0.6%とするのが望ましい。望ましい下限は、0.05%である。
【0033】
Mn:0.2〜2.5%
Mnは、Siと同様、鋼の強度を確保するために必要であると同時に、製鋼時の脱酸剤としても重要な元素である。その効果を得るために最低でも0.2%は含有させるのが望ましい。しかし、過剰に含有させると中心偏析の増大等、鋼板の品質面での問題を生じることから、その上限は2.5%とするのが望ましい。
【0034】
sol.Al(酸可溶性アルミニウム):0.1%以下
Alは脱酸剤として重要な元素である。しかし、必ずしも必須ではなく、Si、Mnで代替することも可能である。Alを過剰に含有させると粗大なAl酸化物が形成され、母材の靭性が劣化するので、sol.AlとしてのAl含有量の上限は0.1%とするのが望ましい。
【0035】
本発明の溶接鋼管に用いる鋼板には、目的に応じてさらに下記の成分を含有させてもよい。
【0036】
Ni:0.2〜3.5%
Niには鋼の強度および靭性を高める作用がある。0.2%未満ではその効果は認められないので、0.2%以上含有させるのが望ましい。含有量が多いほどこの効果は大きく、強度および靭性の改善の観点からは含有量の上限を設ける必要はないが、経済性を考慮して、その上限は3.5%とするのが望ましい。
【0037】
Cr:0.2〜3%
Crには鋼の強度および耐食性を高める作用がある。0.2%未満ではその効果は認められないので、0.2%以上含有させるのが望ましい。一方、過剰に含有させると鋼の靭性を低下させるので、その上限は3%とするのが望ましい。
【0038】
Mo、W:いずれも0.2〜3%
Mo、Wには鋼の強度を高める作用がある。0.2%未満ではその効果は認められないので、0.2%以上含有させるのが望ましい。一方、過剰に含有させると靭性が低下するので、その上限はいずれも3%とするのが望ましい。
【0039】
V、Nb:いずれも0.005〜0.5%
V、Nbには鋼の強度と靭性を高める作用がある。0.005%未満ではその効果は認められないので、0.005%以上含有させるのが望ましい。一方、過剰に含有させると溶接熱影響部の靭性が低下するので、その上限はいずれも0.5%とするのが望ましい。
【0040】
Ti:
Tiには連続鋳造時にスラブに発生する横ひび割れを防止し、あるいは溶接熱影響部での結晶粒粗大化を抑制する作用がある。このいずれの効果もTiとNの相互作用を介して発現するので、Nの含有量に対するTiの含有量の比率〔Ti(%)/N(%)〕が1〜5の範囲に入るように制御するのが望ましい。
【0041】
B(ほう素):0.0003〜0.003%
Bは、極微量含有させることにより鋼の焼入性を著しく高め、強度を向上させる。この効果は0.0003%以上含有させると現れるので、下限は0.0003%とするのが望ましい。一方、過剰に含有させると靭性が低下するので、その上限は0.003%とするのが望ましい。
【0042】
Ca:0.0005〜0.01%
Caには、CaSの形態制御を介して耐サワー性(耐HIC特性)を改善する作用がある。その効果は0.0005%以上含有させると認められるが、過剰に含有させると鋼の清浄性が損なわれるので、その含有量は0.0005〜0.01%とするのが望ましい。
【0043】
上述した元素以外、残部が実質的にFeからなる鋼を圧延および熱処理することにより引張強さが750MPa以上の鋼板を得ることが可能である。なお、不純物としてのP(燐)、S(硫黄)、N(窒素)およびO(酸素)の含有量は低いほど望ましい。
【0044】
P、S:
P、Sはともに不純物元素であり、その含有量は低いほど好ましい。P、Sは、再加熱による粒界脆化の原因となり、シーム溶接金属に発生する横割れに対して影響を及ぼすが、母材中のP、Sは、母材希釈を通して溶接金属のP、S含有量にも影響を与えるので、特に本発明の溶接鋼管では、母材においてもこれらの元素の含有量を極力低い値に抑えるのがよい。
【0045】
N、O:いずれも0.005%以下
N、Oはいずれも不純物元素であり、その含有量はいずれも0.005%以下とするのが望ましい。
【0046】
母材の引張強さが750〜905MPaのときに本発明の溶接鋼管が満たすべき条件aは、溶接金属の引張強さが母材の引張強さの1.05倍以上ということであるが、このように規定したのは、引張強さが750MPa以上の母材鋼板に対して1.05倍以上の引張強さを有する溶接金属を組み合わせることにより、溶接継手部が母材並の引張強さを有し、かつ母材破断するような溶接鋼管を得ることが可能となるからである。
【0047】
母材の引張強さに対して溶接金属の引張強さが著しく低い場合は、溶接継手部の引張強さは母材より低く、破断位置は溶接金属となる。溶接金属の引張強さの上昇とともに溶接継手部の引張強さが上昇し、溶接金属の引張強さが母材引張強さの0.95倍程度以上になると溶接継手部の引張強さはほぼ母材並となる。しかし、破断位置は溶接金属または溶接熱影響部であり、母材破断には至らない。溶接金属の引張強さがさらに上昇して母材の引張強さの1.05倍以上になると、溶接継手部の引張強さが母材と同等で、かつ破断位置が母材となる。これは、溶接熱影響部には不可避的に軟化部が存在するが、溶接金属の強度を母材より高くすることにより塑性拘束が生じ、破断位置が母材に移行するものと推測される。
【0048】
母材の引張強さが750〜905MPaのとき本発明の溶接鋼管が満たすべき条件bは、溶接金属の引張強さ(前述したように、実測値である)が下記の(3)式を満足することである。これは、安定した高い靭性を有する溶接金属を得るためである。なお、式中のTMは前記の(2)式で与えられる、溶接金属の組織がマルテンサイト組織からなると仮定した場合のその溶接金属の引張強さである。
【0049】
溶接金属の引張強さ(MPa)≦TM・・・・(3)
前述したように、溶接金属の組織は、合金元素の増加に伴い上部ベイナイトから下部ベイナイトを経てマルテンサイトへと変化し、それに伴って引張強さが上昇する。マルテンサイト組織からなると仮定した溶接金属の引張強さ(MPa)は前記の(2)式により推定することが可能であるが、実測により求めた溶接金属の引張強さがこのマルテンサイト組織からなる溶接金属の引張強さの80%以下である場合には、溶接金属の組織はほぼ上部ベイナイト単相となり、80〜100%の場合には上部ベイナイト、下部ベイナイトおよびマルテンサイトが混合した中間的な組織となる。
【0050】
一般に、ラス状の上部ベイナイトは低靭性であるが、溶接金属ではアシキュラーフェライトと称される微細組織とすることにより、溶接金属の破面遷移温度を−60℃以下程度にすることが可能である。また、溶接金属の組織がアシキュラーフェライト、下部ベイナイトおよびマルテンサイトが混合した中間的な組織からなる場合は、それらが微細に入り組むため結果的には微細組織を得ることが可能となり、破面遷移温度が−60℃以下の高靭性の溶接金属とすることができる。マルテンサイト単相からなる溶接金属は上述の組織を有する溶接金属に比べて靭性は低く、破面遷移温度で−50℃程度となる。
【0051】
したがって、安定した高い靭性を有する溶接金属を得るには、その組織をアシキュラーフェライト、または、アシキュラーフェライト、下部ベイナイトおよびマルテンサイトが混合した中間的な組織に制御すべきであり、このためには、溶接金属の引張強さをC含有量から推定されるマルテンサイト組織からなると仮定した溶接金属の引張強さ以下に、すなわち、溶接金属の引張強さが前記の(3)式を満足することが必須である。
【0052】
また、母材の引張強さが750〜905MPaのとき本発明の溶接鋼管が満たすべき条件cは、初層側溶接金属の引張強さが950MPa以下を満足することである。これは、以下に説明するように、製管溶接の際、溶接金属に発生する横割れを防止するためである。
【0053】
溶接金属に発生する横割れは遅れ割れの一種とされており、溶接金属の引張強さおよび溶接金属に含まれる拡散性水素の含有量に影響され、溶接金属の引張強さが高いほど、また、拡散性水素量が増大するほど横割れが発生しやすくなることが知られている。
【0054】
拡散性水素量については、2〜4cc/100gの水素含有量に低減するのが現在の技術では限界と考えられる。そこで、拡散性水素量を約4cc/100gで一定として、溶接金属の横割れ発生位置を詳細に調査し、また、限界引張強さを求めるとともに、割れ防止方法の検討を行った。なお、拡散性水素量は、JIS Z3118に規定されるグリセリン置換法で測定した。その結果、以下の事実が判明した。
【0055】
(イ)横割れは初層側溶接金属内に、あるいは初層側溶接金属と第二層側溶接金属を貫通して存在する。しかし、第二層側溶接金属内のみにとどまるような割れは観察されなかった。この観察結果から、横割れは初層側溶接金属で発生し、一部が初層側溶接金属と第二層側溶接金属を貫通したものと考えられる。すなわち、初層側溶接金属での横割れ発生を防止することにより横割れは防止可能であり、第二層側溶接金属については上記の強度上の制約を受けずに設計することができる。
【0056】
(ロ)溶接金属の組織がアシキュラーフェライト、または、アシキュラーフェライトと下部ベイナイトとマルテンサイトが混合した中間的な組織の場合は、溶接金属の引張強さが950MPaを超えるとシーム溶接の際に溶接金属に横割れが発生する。逆に、溶接金属の引張強さが950MPa以下であれば、横割れは発生しない。
【0057】
(ハ)一方、溶接金属がマルテンサイト組織からなる場合は、溶接金属の引張強さが950MPaを超えても下記の(1) 式により推定されるマルテンサイト変態点MSが375℃以下であれば横割れの発生を防止することができる。これは、合金元素の含有量の上昇に伴ってマルテンサイト変態点MS(℃)が低下し、溶接残留応力が緩和されるためである。
【0058】
MS=538−317C(%)−33Mn(%)−28Cr(%)−17Ni(%)−11Si(%)−11Mo(%)−11W(%) ・・・・ (1)
(ニ)ただし、前記はNi含有量が比較的少ない溶接金属の場合であり、Ni含有量、具体的には初層側溶接金属中のNi含有量が多い溶接金属では横割れが発生することがある。しかし、初層溶接金属中のNi含有量を前記の条件gである下記(4) 式を満たす量に制限すれば横割れの発生を防止できる。これは、初層側溶接金属中のNi含有量が多い溶接金属の場合には、オーステナイトの単相凝固に起因する凝固組織の粗大化が生じやすく、この粗大化により横割れが助長されるのに対し、初層溶接金属中のNi含有量が下記(4) 式を満たす量の場合には、オーステナイトの単相凝固が生じず、凝固組織の粗大化が抑制されるためである。
【0059】
Ni(%)≦0.4{Cr(%)+1.5Mo(%)}+3.5 ・・・・ (4)
母材の引張強さが750〜905MPaのとき、条件c(初層側溶接金属の引張強さが950MPa以下)を満足することとしたのは、上記(イ)および(ロ)の知見によるものである。
【0060】
ただし、このように、初層側溶接金属の引張強さを950MPa以下という限定をした場合、母材破断する溶接鋼管を得る条件から、母材の引張強さには自ずと上限が定まる。すなわち、溶接継手が母材破断する条件を満たそうとすれば、シーム溶接金属の引張強さを少なくとも母材の引張強さ(750MPa以上)の1.05倍とすることが必要であり、また、初層側溶接金属の引張強さは950MPa以下であるから、母材の引張強さの上限は905MPaとなる。したがって、母材の引張強さが750〜905MPaのときは、前述した条件a、bおよびcを満たすこととした。
【0061】
一方、母材の引張強さが905MPaを超えるときは、本発明の溶接鋼管は、前述したように、条件a、d、eおよびfを満たすことが必要である。
【0062】
まず、条件aを満たすことが必要なのは、母材の引張強さが750〜905MPaの場合と同じで、溶接継手部が母材並の引張強さを有し、かつ母材破断するような溶接鋼管を得るためである。
条件e、すなわち、第二層側溶接金属の引張強さ(実測値)がTM(溶接金属の組織がマルテンサイト組織からなると仮定した場合のその溶接金属の引張強さ)以下である、という条件を満たすこととするのは、母材の引張強さが750〜905MPaの場合と同じで、安定した高い靱性を有する溶接金属を得るためである。ただし、この場合は、第二層側溶接金属がこの条件を満たせばよい。
【0063】
条件f、すなわち、初層側溶接金属の組織がマルテンサイト組織からなり、上記の(1) 式により求められるマルテンサイト変態点MSが375℃以下、を満たすこととするのは、前記(ハ)の知見によるもので、溶接金属に発生する横割れを防止するためである。この場合、初層側溶接金属がマルテンサイト組織からなるものであることを前提としているが、そのために必要なのが条件e、すなわち、初層側溶接金属の引張強さ(実測値)が0.95TM よりも大きい、という条件を満たすことである。なお、溶接金属に発生する横割れを防止するには初層側溶接金属での横割れ発生が防止できればよいので、いずれも初層側溶接金属についてのみ規定した。つまり、条件eとfは、母材の引張強さが905MPaを超えるときに、溶接金属に発生する横割れを防止するために必要な条件である。
【0064】
ただし、前述したように、初層側溶接金属中のNi含有量が多い溶接金属では横割れが発生することがあるので、初層溶接金属中のNi含有量は前記(4) 式、すなわち条件gを満足する量に制限するのが望ましい。
【0065】
割れ防止策としては、予熱・後熱により拡散性水素を実質的に低減させることが考えられるが、このような方法では溶接施工の効率が悪く、生産性が阻害される。しかし、本発明の溶接鋼管では、溶接施工の際、予熱・後熱を実施する必要がなく、材質面から横割れを防止することができる。
【0066】
次に、溶接金属の靭性、特に低温靱性を確保する方法について述べる。
【0067】
前述したように、ラス状の上部ベイナイトは靭性が低いが、溶接金属ではアシキュラーフェライトと称される微細組織とすることで破面遷移温度を−60℃以下程度にすることが可能である。また、アシキュラーフェライト、下部ベイナイトおよびマルテンサイトが混合した中間的な組織では各々が微細に入り組むため結果的には微細組織を得ることが可能となり破面遷移温度で−60℃以下の高靭性が確保される。特に、中間的な組織を含まず、アシキュラーフェライト組織のみにすれば、低温靱性が確保できる。
【0068】
上部ベイナイト組織をアシキュラーフェライト組織とするには、溶接金属中のAl含有量とO含有量の比〔Al(%)/O(%)〕を1.2以下とし、かつ、B含有量を以下に述べるように、0.002%以下に調整すればよい。
【0069】
〔Al(%)/O(%)〕が1.2以下では、溶接金属中の酸化物はAl、Mn、TiおよびSiの酸化物を含有する複合酸化物となる。このような複合酸化物を核として粒内変態が生じ、微細なアシキュラーフェライトが析出する。逆に、〔Al(%)/O(%)〕が1.2を超える場合には、溶接金属中の酸化物がAl2O3となるが、Al2O3は粒内変態核としての機能を有していないため変態は粒界からしか生じず、この場合にはラス状の上部ベイナイトとなる。
【0070】
また、Bは、強度が比較的低い溶接金属において、組織をアシキュラーフェライトとするのに必須の元素であり、通常0.003%程度含有させる。Bの効果は粒界フェライトの析出を抑制して粒内からの組織変態を促進することにある。しかし、本発明のような高強度溶接金属では、マトリックス自身の焼入性が高いため、Bの過剰な添加はむしろ靭性を悪化させる。そのため、上限は0.002%とする。望ましくは0.0015%以下である。なお、Bの効果を得るための最低含有量は0.0003%である。
【0071】
本発明の溶接鋼管において、溶接金属のAl(%)/O(%)およびB含有量を上記のように調整すれば、溶接金属の靱性を向上させ、特に低温靱性を確保することができる。
【0072】
溶接金属の化学組成は、母材の化学組成とワイヤの化学組成およびボンドフラックスを用いた場合にはフラックスの化学組成により決定される。本発明の溶接鋼管では、母材の化学組成が既知であるから、溶接金属の化学組成が目標値となるような化学組成を有するワイヤ、フラックスを選択することが可能である。
【0073】
以下に、溶接金属の好ましい成分(前記のBを除く)範囲とその理由について述べる。
【0074】
C:0.01〜0.15%
Cは溶接金属の強度を確保するために必要であり、その効果を得るためには0.01%以上含有させることが望ましい。一方、Cを過剰に含有させると炭化物の析出量が増加し、炭化物が粗大化して靭性が劣化する。したがって、その上限は0.15%とするのが望ましい。
【0075】
Si:0.02〜0.6%
Siは溶接金属の強度を確保する上で重要な元素である。その効果を得るために、最低0.02%は含有させるのが望ましい。しかし、過剰に含有させると溶接金属の靭性低下の原因になるとともに、耐割れ感受性が劣化するので、その上限は0.6%とするのが望ましい。
【0076】
Mn:0.3〜3%
MnはSiと同様、溶接金属の強度を確保する上で重要な元素である。その効果を得るために、最低0.3%は含有量させるのが望ましい。しかし、過剰に含有させると溶接金属の靭性低下の原因となるとともに、耐割れ感受性が劣化するので、その上限は3%とするのが望ましい。
【0077】
Al(Total Al):0.004〜0.08%
Alは脱酸剤として重要な元素であり、その効果を得るには少なくとも0.004%含有させることが望ましい。一方、過剰に含有させると粗大な介在物の生成原因となるため、その上限値は0.08%とするのが望ましい。また、本発明の溶接鋼管においては、溶接金属の組織制御を通して溶接金属の靭性を向上させる非常に重要な元素である。その適正範囲は後述する酸素含有量との関係で決定される。
【0078】
O(酸素):0.005〜0.06%
Oは不純物元素であり、O含有量の増加はシャルピー衝撃試験の上部棚エネルギーを減少させる。このため、O含有量は低いほど好ましく、その上限は0.06%とするのが望ましい。より望ましくは、0.04%である。下限は、一般的に行われる溶融溶接(サブマージアーク溶接、ガスメタルアーク溶接、レーザー溶接等)での限界を考慮して、0.005%とするのが望ましい。
【0079】
Ti:0.002〜0.03%
Tiは脱酸剤として重要な元素である。また、Tiには鋼の焼入性を高め、高強度の鋼を安定して得られるようにする作用がある。その効果を得るためには、0.002%以上含有させるのが望ましい。一方、過剰に含有させると、TiCが析出し、溶接金属の靭性が著しく劣化する。したがって、その上限は0.03%とするのが望ましい。
【0080】
Cu:3%以下
Ni:10%以下
Cr:3%以下
Mo:2%以下
V :0.05%以下
Nb:0.05%以下
これらの元素には、溶接金属の強度を上昇させる作用があり、そのため、これらの元素のうちの一種または二種以上を含有させるのが望ましい。ただし、いずれの元素の場合も、過剰に含有させると靭性や耐割れ性が劣化するので、その含有量は上記の範囲とするのが望ましい。
【0081】
また、Niの過剰添加、特に初層側溶接金属に対するNiの過剰添加は、前述したように、凝固組織の粗大化を招いて横割れが生じやすくなるので、初層側溶接金属中のNi含有量は条件gである前記の(4) 式を満足する量にするのが望ましい。
【0082】
なお、溶接金属中に含まれる上記の元素は、母材、溶接ワイヤ、フラックスのいずれをその供給源としてもよく、最終的に得られる溶接金属中での上記元素の含有量が上記の望ましい範囲内に入るようにすればよい。また、不純物は少ない方が望ましく、特に、P:0.03%以下、S:0.03%以下、N:0.01%以下とするのが望ましい。
【0083】
上記本発明の高強度溶接鋼管は、750MPa以上の鋼板を母材とし、破断位置が母材で、高強度かつ高靭性であり、しかも製管溶接の際に横割れが発生しないという優れた溶接部特性を備えている。この溶接鋼管は、サブマージアーク溶接法やガスメタルアーク溶接法、さらにはレーザー溶接法等の溶融溶接法を用いて容易に製造することができ、安価で、かつ大量に供給し得る溶接鋼管である。
【0084】
【実施例】
《実施例1》
まず、表1に示す組成の鋼を転炉法により溶製した。得られた溶鋼を連続鋳造により300mm厚のスラブとし、20mm厚にまで制御圧延した後直ちに水冷した(鋼板A)。この鋼板Aに、さらに、500℃、600℃または700℃で焼戻処理を施した(それぞれ鋼板B、CおよびD)。
【0085】
表2に、鋼板A、B、CおよびDの製造条件とそれぞれの降伏強さおよび引張強さを示す。なお、引張試験は、これらの鋼板からJIS(1994…以下同じ) Z2201に規定される5号試験片を切り出し、JIS Z2241に規定される方法に準じて行った。
【0086】
次いで、これらの鋼板A、B、CおよびDを母材とし、溶接ワイヤとフラックスの組み合わせを種々変えて内径36インチ(914mm)の大径鋼管を試作した。溶接は、いずれも鋼管内面側から1層溶接した後に外面から1層溶接する両面1層溶接で行った。また、溶接には、3電極(DC−AC−AC)のサブマージアーク溶接を適用し、溶接入熱量は4.5kJ/cmで一定とした。
【0087】
表3に、用いた溶接ワイヤの化学組成をまとめて示す。これらはいずれも直径4.0mmの試作ワイヤである。
【0088】
表4に、用いたフラックスの組成を示す。これらはいずれも試作した高塩基度フラックスである。なお、これらのフラックスを用いた場合の溶接金属に含まれる拡散性水素量をJIS Z3118に規定されるグリセリン置換法で測定した結果、代符F1のフラックスを用いた場合は3.9cc/100g、代符F2のフラックスを用いた場合は4.0cc/100g(いずれも、n数=5の平均値)であった。
【0089】
表5と表6に溶接金属(W1〜W8)の化学組成を示す。これは、上記大径鋼管の試作に用いた鋼板について、試作時の組み合わせと同じ組み合わせのワイヤ/フラックスを用い、かつ同じ条件での溶接施工を別に行い、得られた溶接金属W1ないしW8の部分のそれぞれから採取した試料の分析結果である。なお、表5の「ワイヤ/フラックス組合わせ」の欄の、例えば、a−a−aというのは、3電極ともに代符aの溶接ワイヤを使用したことを表す。
【0090】
また、表7に、溶接金属(W1〜W8)について、前記(2) 式から求めたTM 、およびTM ×0.95と、前記(1) 式から求めたMS、ならびに、実際に引張試験およびシャルピー衝撃試験を行って求めた引張強さ(TS)、および破面遷移温度vTs(℃)と、−20℃での吸収エネルギーvE−20 (J)を示す。
【0091】
引張試験は、前述した溶接金属(W1〜W8)の分析に用いた試料の採取と同様に、大径鋼管の試作に用いた鋼板について溶接施工を別に行い、得られた溶接金属W1ないしW8の部分のそれぞれから次に述べるように採取した試験片を用い、JIS Z2241に規定される方法に準じて行った。また、シャルピー衝撃試験は、同じく溶接金属W1ないしW8の部分のそれぞれから採取した試験片を用い、JIS Z2242に規定される方法に準じて行った。
【0092】
図1および図2は、それぞれ前記の引張試験およびシャルピー衝撃試験で用いた試験片の採取位置を示す図で、シーム溶接方向に垂直な断面図である。これらの試験片は、前述したように、大径鋼管の試作に用いた鋼板2枚を突き合わせ、試作時の組み合わせと同じ組み合わせのワイヤ/フラックスを用い、かつ同じ条件で溶接施工(ただし、鋼板の上面1層溶接)を行って得られた溶接部を有する鋼板1から切り出したものである。
【0093】
図1に示すように、引張試験片3は、鋼板1の表面から5mmの位置で、溶接金属2の中央部から切り出したもので、JIS Z2201に規定される14A号試験片(平行部が直径6mmの円形断面を有する試験片)である。また、図2に示すように、衝撃試験片4は、切欠き部5が溶接金属2の中央部に位置するような部位から切り出したもので、JIS Z2202に規定されるフルサイズの4号試験片である。なお、前記の分析試料は引張試験片の採取位置から採取した。
【0094】
表8に、試作した上記大径鋼管(No. 1〜No. 12)の母材、初層側溶接金属、第二層側溶接金属および溶接継手部の引張強さ、横割れ発生の有無の調査結果をまとめて示す。
【0095】
母材の引張強さは前記表2に示した引張強さである。また、初層側および第二層側溶接金属の引張強さはそれぞれ前記表7に示した溶接金属(W1〜W8)の引張強さであり、「強度比」とは、母材の引張強さに対する溶接金属の引張強さの比である。
【0096】
溶接継手部の引張試験は、試作した上記大径鋼管(No. 1〜No. 12)のそれぞれについて溶接部とその近傍の母材を含む部分から採取した試料をプレスで偏平にした後、それから切り出したJIS Z2201に規定される5号試験片を用いて行った。なお、引張試験片は、図3に示すように、溶接金属7が引張試験片8の平行部の中央に位置するように作製した。
【0097】
横割れ発生の有無は、それぞれの試作大径鋼管について、製管溶接後72時間経過した後に行った超音波およびX線による探傷で、欠陥の存在が認められた部分を切断し、断面を調査した結果である。
【0098】
表8において、鋼管No. 1、2、4および12は、母材の引張強さが750〜905MPaの場合であって、前記の条件a、bおよびcを満たしており、溶接継手部の引張試験での破断位置が母材で、横割れがなく、良好な結果を示した。
【0099】
No. 3は、同じく母材の引張強さが750〜905MPaの場合で、条件aおよびbは満たしているが、初層側溶接金属の引張強さが950MPa以下という条件cから外れており、横割れが生じた。
【0100】
No. 5は、母材の引張強さが905MPaを超える場合で、条件dは満たしているが、条件a、eおよびfから外れており、引張試験での破断位置が溶接金属であった。
【0101】
No. 6は、同じく母材の引張強さが905MPaを超える場合で、条件aおよびdは満たしているが、条件eおよびfから外れており、横割れが生じた。
【0102】
No. 7および9は、同じく母材の引張強さが905MPaを超える場合で、条件a、d、eおよびfを満たしており、破断位置が母材で、横割れがなく、良好な結果を示した。
【0103】
No. 8は、同じく母材の引張強さが905MPaを超える場合で、条件d、eおよびfを満たしているが、第二層側溶接金属が条件aから外れており、引張試験での破断位置が溶接熱影響部(HAZ)であった。
【0104】
No. 10および11は、母材の引張強さが905MPaを超える場合で、条件a、d、eおよびfを満たしており、破断位置が母材で、横割れがなく、良好な結果を示した。
【0105】
なお、No. 4、11および12は、いずれも、本発明で規定する条件を満たすものの、表5と表6に示すように、No. 4は溶接金属(代符W2)のAl(%)/O(%)が1.2を超えており、No. 11(溶接金属代符W7)および12(溶接金属代符W8)はB含有量が0.002%を超えている。このため、表7のシャルピー衝撃試験の結果から明らかなように、本発明で規定する条件を満たすNo. 1(溶接金属代符W1)、2(溶接金属代符W1とW4)、7(溶接金属代符W3とW4)、9(溶接金属代符W3とW5)および10(溶接金属代符W6)に比べて溶接金属の靭性が低かった。
【0106】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
《実施例2》
実施例1で用いたのと同じ鋼板Bを母材とし、前記表3中の代符b、c、d、gおよびhの溶接ワイヤと、表4中の代符F1のフラックスとを用い、溶接ワイヤの組み合わせを種々変えて実施例1と同じ寸法の10種類の大径鋼管(No. 13〜22)を試作した。溶接は、いずれも、鋼管内面側から1層溶接した後に外面から1層溶接する両面1層溶接で行った。また、内面側の溶接には、3電極(DC−AC−AC)、外面側の溶接には4電極(DC−AC−AC−AC)のサブマージアーク溶接を適用し、溶接入熱量は両側ともに4.5kJ/cmで一定とした。
【0107】
表9と表10に溶接ワイヤの組み合わせと内面(初層)側および外面(第二層)側の溶接金属の化学組成を示す。また、表11に、各鋼管の初層側および第二層側の溶接金属について、前記の(2) 式から求めたTM 、およびTM ×0.95、前記の(1) 式から求めたMS、実際に引張試験を行って求めた初層側および第二層側の溶接金属の引張強さ(TS:MPa)と溶接金属中のNi含有量、前記の(4) 式(条件g)の右辺から求めた値、ならびに溶接継手部の引張試験における破断位置および横割れ発生の有無の調査結果をまとめて示す。
【0108】
なお、初層側および第二層側の溶接金属の引張強さ(TS:MPa)、溶接継手部の破断位置、および横割れ発生の有無は、実施例1の場合と同様の方法により調査した。
【0109】
表11において、管No. 13〜22は、いずれも、母材の引張強さが905MPaを超える場合であり、No. 15と18は、前記の条件a、d、eおよびfを満たし、かつ条件gも満たしており、溶接継手部の引張試験での破断位置が母材で、横割れがなく、良好な結果を示した。
【0110】
しかし、No. 13は、条件a、eおよびfを満たしていないため破断位置がHAZで、横割れが生じた。No. 14は、条件aおよびfを満たしていないため破断位置がHAZで、横割れが生じた。No. 16と17は、条件a、d、eおよびfを満たすものの、条件gを満たしていないため、横割れが生じた。No. 19および22は、条件aを満たしていないためHAZで破断した。No20と21は、条件dを満たしていないため靭性が劣っていた。
【0111】
この実施例2から明らかなように、初層側溶接金属中のNi含有量は条件g、すなわち前記の(4) 式を満たす量に制限するのが望ましいことがわかる。
【0112】
【表9】
【表10】
【表11】
【発明の効果】
本発明の高強度溶接鋼管は、750MPa以上の鋼板を母材とするもので、高強度かつ高靭性であり、引張試験の破断位置が母材で、しかも製管溶接の際に横割れが発生しないという優れた溶接部特性を備えている。この溶接鋼管は、安価で、かつ大量生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶接金属の引張試験片の採取位置を模式的に示す図で、シーム溶接方向に垂直な断面図である。
【図2】溶接金属のシャルピー衝撃試験片の採取位置を模式的に示す図で、シーム溶接方向に垂直な断面図である。
【図3】溶接継手部の引張試験片の採取位置を模式的に示す図で、(a)は試作した大径鋼管の一部のシーム溶接部を含む部分の横断面図、(b)は引張試験片における(a)に示したシーム溶接部の位置を示す図である。
【符号の説明】
1:鋼板
2:溶接金属
3:引張試験片
4:衝撃試験片
5:切欠き部
6:試作大径鋼管
7:溶接金属
8:引張試験片
Claims (3)
- 内外面に各一層のシーム溶接金属を有する溶接鋼管であって、母材の引張強さが750〜905MPaのときは、下記の条件a、bおよびcを満足し、母材の引張強さが905MPaを超えるときは、下記の条件a、d、eおよびfを満足する高強度溶接鋼管。
条件a:溶接金属の引張強さが母材の引張強さの1.05倍以上、
条件b:溶接金属の引張強さ(MPa)≦TM、
条件c:初層側溶接金属の引張強さが950MPa以下、
条件d:第二層側溶接金属の引張強さ(MPa)≦TM、
条件e:初層側溶接金属の引張強さ(MPa)>0.95TM、
条件f:初層側溶接金属の組織がマルテンサイト組織からなり、下記の(1)式により求められるマルテンサイト変態点MS(℃)が375℃以下、
MS=538−317C(%)−33Mn(%)−28Cr(%)−17Ni(%)−11Si(%)−11Mo(%)−11W(%)・・・・(1)
ただし、条件b、dおよびeにおける「TM 」は、溶接金属の組織をマルテンサイト組織からなると仮定した場合に算出される溶接金属の引張強さ(MPa)で、下記の(2)式で表される。
TM=2500C(%)+910・・・・(2)
ここで、条件aおよびbにおける「溶接金属」とは、溶接鋼管における初層側溶接金属と第二層側溶接金属の双方を含み、「溶接金属の引張強さ」とは、溶接鋼管における溶接金属の引張強さを指す。
次に、条件cおよびeにおける「初層側溶接金属の引張強さ」とは、鋼管の初層側に対応する溶接時と同じ組み合わせのワイヤ/フラックスを用い、かつ同じ条件で母材を1層溶接したときの溶接金属の引張強さを指す。また、条件fにおける「初層側溶接金属の組織」とは、鋼管の初層側に対応する溶接時と同じ組み合わせのワイヤ/フラックスを用い、かつ同じ条件で母材を1層溶接したときの溶接金属の組織を意味する。
更に、条件dにおける「第二層側溶接金属の引張強さ」とは、溶接鋼管における第二層側溶接金属の引張強さを指す。 - 初層側溶接金属中のNi含有量が下記の条件gを満足する請求項1に記載の高強度溶接鋼管。
条件g:Ni(%)≦0.4{Cr(%)+1.5Mo(%)}+3.5 - 溶接金属中のAl(%)/O(%)が1.2以下であり、かつ、B含有量が0.002質量%以下である請求項1または2に記載の高強度溶接鋼管。
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