JP3555115B2 - 電子楽器用鍵盤装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は電子楽器の鍵盤に関し、特に押鍵時に適正な押圧タッチ感を得るための鍵タッチ感触機構の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在まで鍵のタッチ感触機構として、特にピアノタッチ感触を電子鍵盤楽器に実現させようとして様々な機構が考えられてきた。その1つの機構が、特開昭63−240592に開示されている。この公知技術の特徴は、ダッシュポットを用いた押鍵対応流体ダンパ手段であって、流体室と外部との連通バイアス路を押鍵ストロークに対応して、即ち押鍵位置(変位量)に対応して開閉する構成である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来技術の構成では押鍵速度に対応したタッチ感触が考慮されていないので、自然楽器に近い感触の良好なタッチ感触は得られない。即ち、弱いタッチ強いタッチともに良好なタッチ感触が得られ弱いタッチでも適度な反力が得られ、また強いタッチでもあまり大きくない反力に留められるような快適な演奏感覚で演奏でき、これにより演奏者の意志を忠実に反映できるような良好なタッチ感触をもつ鍵盤楽器は実現されていない。
【0004】
ここで良好なタッチ感触とはどのようなものかについて考察する。
良好な演奏操作性を得るためのタッチ感触調整機構を構成するためには、タッチ感に関連する各種パラメータを選定して容易に確実に鍵盤の押圧タッチを変化させる必要がある。これらの要素を解析するにあたっては、鍵の静的タッチ感触および動的タッチ感触を総合した論理的な力学的考察が必要である。ここで、静的タッチ感触とは、押鍵ストロークの途中で停止したときあるいは鍵を非常にゆっくり押圧したときに鍵からの反力により指が受ける感触であり、動的タッチ感触とは、打鍵強さ(速さ)に応じて指に受ける反力が異なるタッチ感触であって、鍵およびハンマーの慣性モーメントが大きい程打鍵強さによる反力が大きくなり、さらにこれに加えて鍵およびハンマーの移動時に発生する非移動体に対する粘性が大きい程打鍵強さによる反力が大きくなる。
【0005】
このような静的タッチ感および動的タッチ感を総合した押鍵タッチ感触について図11を用いて以下に考察する。図11の模式図に関し、粘性係数Kvの流体とバネ定数Ksの弾性体を含む系に運動の第2法則を適用した一般式では、指の力(F)と鍵の変位(x)の関係を式1のように表すことができる。
【0006】
である。この式1は、ばね(S)と係合し、ダッシュポット(D)の流体中を外力(F)を受けて移動する質量(m)を有する物体(M)の運動方程式で、右辺第1項は慣性項、第2項は粘性項そして第3項は弾性項である。
【0007】
式1の右辺を考察すると、パラメータ(m,kV,kS)を変化させると指で押す力が変り鍵からの反力が変化することがわかる。また別な見方をすれば上記パラメータm、Kv、Ksが一定値をとるもにであっても、物体(鍵)mに働く加速度、物体(鍵)mがもつ速度、物体(鍵)mが移動中の位置によって、物体(鍵)mから指に受ける反力が時々刻々変化するということを式1から読取れる。またより具体的な意味で上記パラメータを構成する要素を具体的な鍵盤装置に対応させると、
(1)mとして
(a)鍵に装着する錘の質量
(2)kVとして
(b)ダッシュポットの流体による摩擦抵抗力
(c)鍵ガイド摺動部や鍵支点摺動部のグリスの粘性抵抗力
(d)鍵ガイドおよび鍵支点に対する押圧力による摩擦抵抗力
(3)kSとして
(e)鍵のスイッチ接点の板ばねまたはゴム膜等による復帰力
(f)鍵の復帰用ばねのばね定数
(4)さらにxに関与する幾何学的構成要素として
(g)錘の装着位置、ばね係止部の位置、スイッチの位置、鍵ガイドの位置、支点の位置等がある。さらに図11の模式図においてこれらを組み合わせた効果を利用することも可能である。
【0008】
自然楽器のピアノでは、鍵盤と絃との間に設けられた複雑なアクション機構の中で、大なり小なり前記慣性項、粘性項および弾性項を含む式1の全ての項を満足するような運動をさせているといえる。
【0009】
本発明は、このような自然楽器のピアノに近似したタッチ感触を得るために、この式1のうち特に右辺第2項の速度の項(粘性項)に着目したものである。しかしながら一般的には、この速度項に関し、粘性を考慮してある特定の場合には良好なタッチ感触が得られるが、全体的に総合して良好なタッチ感触を得ることはきわめて困難である。例えば、前述の従来技術である特開昭63−240592に開示された構成の場合、弱いタッチ強いタッチに係わらず、あるストローク位置で急激に反力を弱めて脱進感を得るものであり、弱いタッチのときにも所定位置を越えると極端に軽いタッチ(反力)になってしまうため、弱いタッチ(押す力)による微妙な楽音制御ができない。つまり演奏意志を的確に反映することができなくなり、例えば演奏者がmpの強さのつもりで弾いてもpの強さの音で演奏されたり、あるいはその逆にpの強さで弾いてもmpの強さの音が出てくるという演奏上の不具合が起こる。即ち、質量ゼロに近い鍵盤(例えばホロスコープで映した鍵盤)で曲を感情をこめて弾けと言われても困難を極めることが容易に想像される。
【0010】
従って、弱いタッチの演奏であればある程、ある程度鍵からの反力が必要であり、弱いタッチのときにそれなりに反力を感じさせるような感触が良好なタッチ感触といえる。しかしながら、弱いタッチに対し必要以上に反力を与えると、強いタッチのときに前述の式1における第1項の慣性項と第2項の粘性項(速度項)の両方が作用して、反力が極端に大きくなりすぎ、例えば質量を増して反力を与えると強いタッチのとき第1項の質量mおよび加速度(d2x/dt2)がともに大きくなり、また第2項の速度(dx/dt)も大きくなるため、ffやfff等の強いタッチのときに反力が大きすぎて円滑な演奏ができなくなり、指が痛んだり疲労が蓄積され演奏感覚も低下する。
【0011】
本発明は、上記従来技術の欠点に鑑みなされたものであって、前記式1の右辺第2項に係わる粘性抵抗力をダッシュポットを用いて積極的に適用するとともに、弱いタッチ強いタッチともに良好なタッチ感触が得られるようにし、弱いタッチでも適度な反力が得られ、これにより演奏者の意志を忠実に反映できる精度のよいタッチ感触を得られるようにし、かつ強いタッチでも反力が大きくなりすぎないようにして強弱いかなる演奏でも良好なタッチ感触を実現させ速くて軽く遅くて重い快適な演奏感覚が得られる電子楽器用鍵盤装置の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、この発明に係る電子鍵盤楽器は、鍵支持部材と、押離鍵操作により上記鍵支持部材に対し変位移動する多数の鍵と、該鍵を非押鍵位置方向に付勢する鍵復帰手段と、上記鍵の押離鍵動作に連動する反力発生手段とを具備した電子鍵盤楽器において、上記反力発生手段は、押鍵速度に応じてその粘性係数を変化させるとともに、上記押鍵速度が所定値を越えると上記粘性係数を減少させることを特徴としている。
【0013】
なお、より好ましい実施例では、
鍵支持部材と、
押離鍵操作により上記鍵支持部材に対し変位移動する多数の鍵と、
該鍵を非押鍵位置方向に付勢する復鍵手段と、
上記鍵の押離鍵動作に連動するダッシュポット手段と、
上記ダッシュポット手段の粘性抵抗を実質的に不連続に押鍵速度に応じて変化させる反力抵抗変化手段とを具備し、この反力抵抗変化手段は押鍵速度が速いときに該抵抗が軽くなるようにしている。
【0014】
さらに、この発明に係る電子楽器用鍵盤装置は、
鍵支持部材と、
押離鍵操作により上記鍵支持部材に対し変位移動する多数の鍵と、
該鍵を非押鍵位置方向に付勢する復鍵手段と、
上記鍵の押離鍵動作に連動するダッシュポット手段と、
上記ダッシュポット手段に設けた弁と、
上記弁の開閉状態を検出するセンサー手段と、
上記センサー手段の検出出力に応じて楽音を制御する手段とを具備したことを特徴としている。
【0015】
なお、より好ましい実施例では、
鍵支持部材と、
押離鍵操作により上記鍵支持部材に対し変位移動する多数の鍵と、
該鍵を非押鍵位置方向に付勢する復鍵手段と、
上記鍵の押離鍵動作に連動するダッシュポット手段と、
上記ダッシュポット手段に設けた弁と、
上記弁の開閉状態を検出するセンサー手段とを具備し、このセンサー手段にて弁の開閉を検出した際、タッチ感触の不連続点を得るとともにこの不連続点を境にして楽音制御を異ならせるようにしている。
【0016】
【作用】
請求項1に係る発明においては、押鍵速度が遅いときには、例えばダッシュポットの小孔径に対応したほぼ一定の粘性抵抗が反力として付与される。押鍵速度が速くなるとこの粘性抵抗が変る。この場合所定の速度以上になると不連続的に粘性抵抗が変化する。好ましい実施例では、押鍵速度がある速度以上になると粘性抵抗が急に小さくなり反力が軽くなる。即ち、例えばメゾピアノ(mp)やピアノ(p)のようなゆっくりした弱い押鍵操作のときにはダッシュポットに固有の所定の粘性抵抗が重い反力として付与され、フォルテ(f)やフォルテッシモ(ff)のようなある速度以上の速さで強く押鍵操作するとダッシュポットの粘性抵抗が弱まり軽い反力となる。
【0017】
また、本発明ではさらに、ダッシュポットに弁が設けられこの弁の開閉が検出される。弁の開閉に応じて各種楽音が制御される。この場合、弁の開閉によりダッシュポットの粘性抵抗が不連続に変化する。即ち、弁が開くと実質上ダッシュポット固有の小孔径が増加したことになり粘性抵抗が小さくなる。従って、押鍵速度がある速度以下の弱い押鍵操作ではダッシュポット固有の小孔径に対応した重い反力が付与され、この反力を越えて強く速い押鍵操作になると弁が開いて粘性抵抗が弱められ軽い反力となる。このような押鍵速度(押鍵強さ)を検出してこれに応じて楽音を制御すればタッチ感触に対応して演奏者の意志を的確に反映したマンマシンインターフェイスの良好な楽音制御が図られる。
【0018】
以上のように、本発明に係わる電子楽器用鍵盤装置においては、ダッシュポットを用いてその流体の粘性抵抗力を押鍵速度に応じて変化させるように構成している。これにより、以下に説明する図12に示すように粘性摩擦係数が小さい場合と大きい場合とでは異なるヒステリシスを生じ生じさせることができるとともに、押鍵速度に応じてダッシュポットの流体抵抗力が変化してゆっくりした押鍵操作のときには重く感じ、速い押鍵操作のときには軽く感じるようなタッチ感触が実現される。しかも押鍵操作による演奏は、図12に示すようなヒステリシス曲線の立ち上がり位置、曲線の勾配および曲線で囲まれた面積等に影響されるため、ヒステリシス曲線の形状は鍵盤の演奏タッチ感触を多様に特徴付けることを可能にする。
【0019】
図12は、ダッシュポットの流体の粘性による押鍵反力のヒステリシスのグラフである。(a)(b)はそれぞれ粘性摩擦を異ならせたグラフであり、(a)は粘性による摩擦係数が小さい場合を示し、(b)は粘性による摩擦係数が大きい場合を示す。この粘性による摩擦係数は、ダッシュポットの小孔の径を変えることによりピストン駆動時の流体摩擦係数を変化させることができる。
【0020】
また、(c)(d)は粘性摩擦力に加えてバネ材等の反力による鍵の動き始めに要する力(バイアスα)を考慮したグラフであり、(c)は例えばキースケーリングした高音側の軽いタッチのグラフであり、(d)は低音側の重いタッチのグラフである。
【0021】
【実施例】
図1は本発明の実施例に係る鍵盤装置の断面図である。楽器本体を構成する棚板1上にスチール材料等からなる鍵フレーム(鍵支持部材)2が固定される。この鍵フレーム2に対し鍵(この例では白鍵)3がその後端部4に装着した支点部材5を介して回動可能に取付けられる。この鍵3の後端部4と鍵フレーム2との間には、押鍵操作後に鍵3を非押鍵位置に戻すための圧縮コイルバネからなる鍵復帰バネ6が装着される。この鍵復帰バネ6としては、圧縮コイルバネに限らず例えば帯状の平板バネを上下どちらかに幾分湾曲させた状態で装着して用いてもよい。平板バネを用いた場合には、押鍵ストローク範囲内に平板バネの座屈位置を設定することにより押鍵途中でバネ定数を変化させることができる。7は鍵復帰バネ6の取付け用および確認用の孔である。
【0022】
鍵後端部4の近傍の鍵フレーム2に鍵脱落防止シート8が固定される。鍵3を演奏者側に引抜くような力をかけたとき、この鍵脱落防止シート8の自由端部が鍵後端部4の脱落防止部材当接部に当接し鍵3が前方に抜け落ちることを防止する。保守点検あるいは鍵その他の部品を交換する場合には、この鍵脱落防止シート8の先端を上から押圧して撓ませることによって、鍵後端部との係合を外し鍵後端部4を演奏者側に引きながら持上げるようにすると容易に分解することができる。
【0023】
鍵フレーム2の中央部よりやや後方の下面側にスイッチ回路あるいは制御回路等を形成したプリント基板9が固定される。このプリント基板9上に各鍵に対応してキースイッチ10が搭載されている。このキースイッチ10は弾性材料からなる同心円の2メイク式のスイッチであり、鍵フレーム2に設けた孔201を通して鍵フレーム2の上面側に突出し、鍵3の内面側に一体的に形成したアクチュエータ11により駆動される。押鍵動作により鍵3が押し下げられると、アクチュエータ11がキースイッチ10を押圧変形させて同心円の2つの接点を順番に閉じキーオン信号および押鍵速度信号を発信する。このキースイッチ10の弾性力は鍵3の復帰力として作用させることもできる。
【0024】
鍵フレーム2の前端部側(図の左側)は各鍵に対応して垂直上方に折曲げられてキーガイド芯材12が形成される。この芯材12に樹脂材料がアウトサート成形により外装されキーガイド13を構成する。キーガイド13は各鍵3の前端部の内側に挿入され、その両側(図面に直角方向の両側面)が各鍵3の両側の内壁面14に摺接して、押鍵時に鍵3が支点部材5を介して上下に回転運動する際、鍵3を上下方向にガイドして鍵3の横振れやねじれを防止する。
【0025】
この鍵フレーム2と一体のキーガイド13の芯材12の途中から前方に突出片15が切り起こされて形成される。 この突出片15の下面および上面にそれぞれフェルト材からなる上限ストッパ16および下限ストッパ17が設けられる。上限ストッパ16に対して鍵3の前端部下側に突出して一体形成した係止片18の上面が当接する。図はこの係止片18の上面が上限ストッパ16に当接している状態を示し、鍵3の非押鍵位置、即ち、押鍵ストロークの上限位置を示している。
【0026】
一方、下限ストッパ17に対しては鍵3の先端部下面19が当接する。図示した状態から押鍵動作により鍵3が押下げられると押鍵ストロークの最下位置で鍵3の先端部下面19が下限ストッパ17に当接して押鍵動作が停止する。20は隣接する黒鍵(図示しない)のキーガイドであり、また21は黒鍵用の下限ストッパである。
【0027】
鍵フレーム2の下側の棚板1上に、位置決めストッパ部22を介して位置合わせされたダンパユニット23がねじ止め固定される。このダンパユニット23は、第1ダッシュポット24と第2ダッシュポット25により構成される。これらの第1および第2ダッシュポット24、25はそれぞれ支持フレーム26に装着される。第1ダッシュポット24は第2ダッシュポット25よりも幾分下がった位置に装着されるように第1ダッシュポット24の装着位置と第2ダッシュポット25の装着位置の間の支持フレーム26に段差が設けられている。これは、ダンパユニット23を効率良く作用させるためなるべく鍵3の自由端部側に配置ししかも隣接する黒鍵のキーガイド部の被ガイド片(図示しない)との係合を避けるためである。即ち、黒鍵用ダッシュポット241(図2参照)は白鍵用のそれよりも鍵支点側に配設し、かつ白鍵用ダッシュポットより低く設けることができるように段差を設けている。
【0028】
第1ダッシュポット24は、シリンダ27と押鍵動作に連動してこのシリンダ27内を摺動運動するピストン28からなる。ピストン28と一体のピストンロッド29の先端は、鍵3の内面側に一体に形成されたアクチュエータ70の下端部で屈曲する連結フック30とリンク結合される。この連結フック30の先端は例えばテーパ状に形成され、ピストンロッド29の先端に設けた孔(図示しない)に挿入され鍵3の押鍵動作に応じて鍵3の上下運動をピストン28に伝達する。なお、シリンダ27内は空間であり(即ち空気が充填され)、ダッシュポットの特性は主としてこの空気の粘性抵抗と後述の小孔の径により定まる。しかしながら、水あるいはその他適当な粘性係数を有する液体をシリンダ内に収容しこれらの液体の適当な回収機構を設けて各種粘性特性を有するダッシュポットを構成してもよい。
【0029】
シリンダ27は外筒容器31内に摺動可能に装着される。シリンダ27の底面にはピストン駆動時に内部の流体(空気)を逃すための小孔32が形成される。この小孔32はピストン28に形成してもよい。いずれの場合にも、小孔32を通過する流体の抵抗力による通常のダッシュポットとしての機能を果すように構成される。また、ピストン28とシリンダ27との間の摺接面およびシリンダ27と外筒容器31との間の摺接面には摺動運動を円滑に行わせるためにグリスが塗布される。このようなグリスは、後述の第2ダッシュポットについても同様に塗布される。
【0030】
なお、ピストン28とシリンダ27の摺動摩擦抵抗に関し、後述のように、ゆっくりした動作の場合には、小孔32の径やシリンダ27の下方に設けた圧縮コイルバネ35の作用等とあいまって、シリンダ27と外筒容器31との間の摺接面に比べ、ピストン28とシリンダ27との間の摺接面の摩擦抵抗を小さくして、ピストン28がシリンダ27内を摺動する力をシリンダ27が外筒容器31内を摺動する力よりも小さな力とし、かつ速い動作の場合にはシリンダ27と外筒容器31との間の摺接面に比べ、ピストン28とシリンダ27との間の摺接面の摩擦抵抗を大きくしてシリンダ27が外筒容器31内を摺動する力をピストン28がシリンダ27内を摺動する力よりも小さな力となるように小孔32の面積を設定する。即ち、遅い打鍵時には、小孔32から流体が単位時間内に流出する流出量が小さく、これを前式(1)の粘性項(速度項)に対応させると、速度が小のため、この項の値は限りなく0である。また、加速度項も加速度が動き始め(終り)のみ少し表れるのみである。従って、大部分がバネ定数項(距離項)に左右され、打鍵ストロークに対応して増加するバネ力に支配された系のタッチ感触となる。この場合にあっても、バネ6は、打鍵ストローク増加に従って垂直分力が減少するので、反力としてのKs(図11のように垂直にバネを作用させた式(1)のksとは異なる)は仮想的に距離に対し若干減少するか同一化をキープする。
【0031】
また速い打鍵時には、上記式(1)の粘性項がある所定の速度を有するため、第2項と第3項がタッチ感触の系に影響を与えるものとなる。さらにもっと強打鍵すれば、第1、第2、第3項も考慮された系となる。
【0032】
これにより、鍵の動きに連動して、遅い打鍵のときにはピストン28がシリンダ27内を摺動し、速い打鍵のときにはピストン28がシリンダ内をわづかながら摺動しつつシリンダ27が外筒容器31内を主に摺動させることができる。
【0033】
第1および第2ダッシュポット24、25を支持する支持フレーム26の下側にはシーソーレバー33が支点軸部34を中心に回転可能に設けられる。このシーソーレバー33の第1ダッシュポット24の下側にはレバー33を介してシリンダ27を非押鍵状態(初期状態)にするための圧縮コイルバネ35が装着される。第1ダッシュポット24のシリンダ27は回動ピン36を介してシーソーレバー33に対し回転可能に取付けられる。このようなシーソーレバー33は底板37上に取付けられた支持台341を介して支持フレーム26とともに楽器本体の棚板1上に固定される。
【0034】
一方、第2ダッシュポット25は、第1ダッシュポット24と同様に空気あるいはその他適当な粘性係数を有する流体を充填したシリンダ38とこのシリンダ38内を摺動するピストン39とにより構成される。シリンダ38(またはピストン39)にはピストン駆動時に内部の流体を逃すための小孔40が形成される。この小孔40は第1ダッシュポット24の小孔32と同様に通常のダッシュポットのダンパ作用を行うためのものである。
【0035】
第2ダッシュポット25のシリンダ38の底面に開口41が設けられ、この開口41に対応してシーソーレバー33にアクチュエータ42が設けられる。また開口41にはアクチュエータ42により開閉駆動される弁43が設けられる。また、ピストン39のピストンロッド44の先端には孔(図示しない)が形成され、この孔に、前述の第1ダッシュポット24の場合と同様に、鍵3の内面側に一体形成されたアクチュエータ71の下端部で屈曲する連結フック45が挿入される。これにより、鍵3と第2ダッシュポット25のピストン39が上下方向の運動を相互に伝達可能に連結される。
【0036】
上記構成の鍵盤装置を組立る場合、まずダンパユニット23を組み立てこれを棚板1にネジで固定する。この時ダンパユニット23の第1および第2ダッシュポット24、25の各ピストン28、39のロッド29、44は、それぞれのシリンダ27、38内に装着された図示しない弱いコイルバネ(タッチ感触にほとんど影響を与えない組み立て用のコイルバネ)により上方に突出している。このようにピストンロッド29、44を上方に突出させておくことにより、ユニットを組込んだときにロッドの先端が自動的に鍵フレームの上面に突出する。これにより以下のように鍵盤ユニットを組込むときにアクチュエータ70、71の先端がピストンロッド29、44と自動的に連結される。次に複数の鍵を組込んだ鍵盤ユニットを組み立て、この鍵盤ユニットを棚板上で位置決めストッパ22に当たるまで滑らせ、ストッパ22に当たったところで位置を固定する。このとき各鍵3側のアクチュエータ70、71の先端の連結フック30、45が、各ダッシュポット24、25のピストンロッド29、44の先端の孔(図示しない)に自動的に嵌入して連結される。
【0037】
次に上記構成の鍵盤装置の作用について説明する。図1に示す鍵3の非押鍵位置から鍵3の前端自由端部を指で押圧操作して押鍵動作を開始すると、鍵後端部の支点部材5を中心に鍵3が回動して鍵3が押し下げられる。これに連動して、鍵3の内面に設けたアクチュエータ70、71がそれぞれ連結フック30、45を介して結合されたダンパユニット23の第1、第2ダッシュポット24、25のピストン28、39を押し下げる。
【0038】
ここで、まず速度の遅いゆっくりした押鍵動作の場合について説明する。この場合には、第1ダッシュポット24において、前述のように圧縮コイルバネ35や小孔32の作用等により、ピストン28とシリンダ27との間の初期摩擦抵抗がシリンダ27と外筒容器31との間の初期摩擦抵抗より小さいため、即ち、動き始めに要する力がピストン28の方がシリンダ27より小さいため、外筒容器31内でシリンダ27は静止したまま、このシリンダ27内でピストン28が押し下げられる。従って、この第1ダッシュポット24は、シリンダ27内を摺動下降するピストン28により小孔32を通過する流体の抵抗力による反力を鍵3に付与する。このとき同様に、第2ダッシュポット25においては、シリンダ38内でピストン39が下降し、小孔40を通して流体が通過しその抵抗力による反力を鍵3に付与する。従って、このようにゆっくりとした押鍵動作の場合には、第1ダッシュポット24および第2ダッシュポット25の両方がそれぞれ小孔32、40を通過する流体の抵抗力による緩衝作用を行い、その反力を鍵3に付与するため、演奏者の指に対して比較的大きな力が反力として加わり、ゆっくりした重い感じのタッチ感触となる。
【0039】
一方、押鍵速度がある程度以上の速さになると、第1ダッシュポット24において、ピストン28の押し下げ速さが小孔32を通過することができる流体量を越えるため、流体の通過抵抗が大きくなりすぎてピストン28はシリンダ27内を下降することができず、鍵の押圧力がシリンダ27に対し作用する。このため、シリンダ27が外筒容器31内で押し下げられ圧縮バネ35に抗してシーソーレバー33を回転軸部34を介して反時計廻りに回転させる。これにより、シーソーレバー33に設けたアクチュエータ42が上昇して第2ダッシュポット25のシリンダ38の底面に設けた孔41を介して弁43を押し開く。このため、第2ダッシュポット25のシリンダ38内の流体は孔41を通して一気に外部に流出し、小孔40によるダンパ作用がなくなる。
【0040】
従って、このように速い速度の押鍵動作の場合には、第2ダッシュポット25がダッシュポットとしての流体摩擦による緩衝作用を行わず鍵3に対し反力を付与しなくなるため、演奏者の指に対する反力が小さくなり、速くて軽いタッチ感触となる。
【0041】
なお、第2ダッシュポット25の弁43が開く押鍵速度は、第1ダッシュポット24の小孔32の大きさ、流体の粘性係数、ピストン28やシリンダ27の摺動抵抗力あるいは圧縮バネ35の強さ等を変えることにより調整可能である。
【0042】
図2は図1の鍵盤装置のダッシュポット部分の詳細図であり、(A)はダンパユニット23の上面図、(B)はダッシュポットの小孔によるキースケーリングの説明図である。WKは白鍵を表し、BKは黒鍵を表している。第1、第2ダッシュポット24、25を支持するフレームを樹脂成形する場合には、図2(A)に示すように、成形時のひけ防止および材料の節約のために各ダッシュポット周辺部に孔46が形成される。
【0043】
また、図2(B)に示すように、第1ダッシュポットのシリンダ27に形成する小孔32を、低音側では小さく、高音側では大きくなるように形成しておく。これにより、鍵動時のダッシュポットの緩衝力が低音部で大きく高音部で小さくなり、低音側では重いタッチ、高音側では軽いタッチの押鍵タッチ感触が得られるようにキースケーリングすることができる。
【0044】
このようなキースケーリングは、前述の弁43(図1)が開くタイミングを各鍵ごとに(または複数の鍵域ごとに)異ならせてキースケーリングしてもよい。即ち、高音側の鍵程ゆっくりした速度で弁43が開くように小孔の径とともに弁43材料の強さや形状あるいはアクチュエータの作動位置等を鍵ごとに変えてキースケーリングしてもよい。
【0045】
図3は、上記鍵盤装置の反力−ストローク特性のグラフである。横軸は押鍵ストローク(X)を表し、縦軸は指が鍵から受ける反力(F)を表す。縦軸のPは鍵復帰バネ6によるプリテンションの力を示す。CV0は復帰バネの反力のみを考慮した場合のグラフであり、CV1はキースイッチ等による反力を考慮したグラフである。CV2は、非常に弱い力(例えばピアニッシシモpppの強さ)で押鍵操作したときの反力であり、CV3はこの場合にキースイッチの反力を考慮したグラフである。点線のCV4は、例えばピアニッシモppの強さで押鍵操作したときの反力である。このCV4の押鍵強さ(速度)のときにダンパユニットの第2ダッシュポットの弁が開くように設定しておく。このように設定した場合には、このCV4よりも強いタッチで押鍵すると、例えばCV8(例えばmfの強さ)やさらに強いCV9(例えばfの強さ)のように、最初は大きな反力が急激に発生するが、ただちに前述の説明のように、第2ダッシュポットの弁が開いてこのダッシュポットの反力がなくなるため、指に対する反力が急激に低下しCV4で示される設定反力以下になる。
【0046】
一方、第2ダッシュポットの弁が開くときの押鍵強さをさらに高くして、点線のCV7で示す例えばmpの強さに設定した場合には、前記CV4の設定反力より強いタッチ、例えばCV6(例えばpの強さのタッチ)で表される押鍵強さ(速度)で演奏してもCV7の強さ以下であれば、第2ダッシュポットの弁は開かないため、反力が急激に変化することなく第1および第2の2つのダッシュポットから指に対し反力が付与される。なお、CV5はキースイッチの反力を考慮しないカーブである。この場合、CV7よりも強いタッチで押鍵すると、例えば前記CV8やCV9で示す場合と同様に第2ダッシュポットの弁が開いて反力が急激に低下する。
【0047】
なお、2つのダッシュポットを備えた本発明のダンパユニットを用いた場合、ピストンが所定の有効行程ストロークに達した後は、ダッシュポットによる反力はなくなり、タッチ強さに関係なく復帰バネによる反力のみとなる。従って、長い音符を弾く場合に、指に受ける反力が復帰バネのみの力になるため指が疲れることがない。
【0048】
また、例えばmfの強さ以上の強いタッチで押鍵した場合、押鍵始めに、鍵からの反力が急増した後急激に減少するため、トラッカータッチのような歯切れのよいタッチ感が得られる。これにより、押鍵の実感を演奏者に充分満足させ弾きごたえ感のある鍵タッチを実現するとともに、このクリック感の後は押鍵タッチが軽くなるため、強い打鍵や連続強打鍵の演奏をしても指に対する痛みや疲労がなく、極めて快適な演奏を達成することができる。
【0049】
図4は、本発明の別の実施例に係る鍵盤装置の第2ダッシュポット25の弁部分の構成詳細図である。(A)は組み立て状態の断面図、(B)は弁自体の斜視図で(A)図の弁43を裏面側からみた図、(C)はシリンダ低部の斜視図、(D)はセンサーの回路図である。なお、(A)図は(B)図および(C)図におけるA−A断面およびB−B断面を含む組み立て状態の断面図である。
【0050】
この実施例においては、後述のように、第2ダッシュポット25に設けた弁43の開閉状態を検出するセンサーを設け、このセンサー出力を楽音制御に用いた点が特徴であり、その他の構成および作用効果は基本的に前述の実施例と同様である。
【0051】
シリンダ38の底部48には、(C)図に示すように、弁取付け用の孔52が形成される。この孔52に(B)図に示す弁43の突起47が圧入して装着される。(C)図のシリンダ38に装着する場合には、弁43を(B)図の状態から上下反転させてその突起47をシリンダ38の孔52内に挿入して取付ける。弁43の中央部分は弁の撓み剛性を小さくして弁が開きやすいようにするために薄肉部50が形成される。この薄肉部50には、光が反射しやすいように白色の塗料が塗られている。また、弁43の直径方向に関し弁取付け用の突起47の反対側には弁を開閉動作させるための被駆動部51が形成される。この被駆動部51に対し、シーソーレバー33の先端に形成したアクチュエータ42が当接して弁43を押し開く。弁43の底部48にはこのアクチュエータ42が挿通する孔72が形成される。
【0052】
シリンダ38の底面には、フォトセンサー53が弁43の薄肉部50に対向する位置に設けられる。このフォトセンサー53は、発光素子(LED)54と受光素子(フォトトランジスタ)55とにより構成され(D図参照)、発光素子54からの光が弁43の底面(薄肉部50)で反射され、この反射光が受光素子55で検出される。この受光素子55の検出光量により弁43の開閉あるいは開度が検出される(後述)。
【0053】
図5は、上記構成のダンパユニットのフォトセンサーを組込んだ楽音制御回路のブロック図である。56は鍵盤回路であり、押圧された鍵を検出するスキャン回路58、2メイク式スイッチの第1接点群と第2接点群からなるキースイッチ回路59およびその出力回路60を含んでいる。鍵盤回路56はさらに前記ダンパユニットの弁のためのスキャン回路61と弁の開閉を検出するためのフォトリフレクタ(フォトカプラ)回路群からなるセンサー回路62およびその出力回路63とを含んでいる。このような鍵盤回路56は、音色や各種効果を設定するスイッチ群からなる楽音設定回路64とともに、バスライン75を介してROM,RAM,CPUからなるマイクロコンピュータ回路57に接続される。バスライン75にはさらに楽音信号発生回路58が接続されこの楽音信号発生回路58にスピーカ(SP)が接続されている。
【0054】
上記回路の具体的構成について、図6から図8を参照して以下にさらに詳しく説明する。図6は、上記鍵盤回路56に含まれるダンパユニットの弁の開閉検出回路部分の具体例の一構成例を示す詳細回路図である。また図7は、そのセンサー回路62の構成説明図であり、図8は図6の回路におけるスキャン信号波形およびセンサー回路の出力の例を示す図である。
【0055】
スキャン回路61は、例えば15本の横のラインに接続された第1デマルチプレクサ76および6本の縦のラインに接続された第2デマルチプレクサ77とにより構成される。各ラインはマトリクス状に接続されその各交点は、それぞれ各鍵のフォトセンサー53(図4参照)の発光素子54に連結している。スキャン回路61は、このような発光素子(LED)群からなる発光センサー素子回路(発光素子群)62aに連結する。
【0056】
同様に各鍵のフォトセンサー53の受光素子(フォトトランジスタ)55群により受光センサー素子回路62bが構成され、出力回路63に接続される。このような発光センサー素子回路(発光素子群)62aと受光センサー素子回路(受光素子群)62bとによりセンサー回路62が構成される(図7参照)。このマトリクス回路からなる発光センサー素子回路62aおよび受光センサー素子回路62bの15本の横のラインは共通の電源供給ラインである。
【0057】
これらの共通の15本の横のラインをスキャン回路61の第1デマルチプレクサ76の各出力端子に接続し、発光素子群62aの6本の縦のラインをそれぞれダイオードDsを介してスキャン回路62bの第2デマルチプレクサ77の各出力端子に接続している。
【0058】
一方、受光素子群62bの6本の縦のラインは、それぞれ出力回路63の出力抵抗R1、R2、・・・R6を介して接地するとともに、マルチプレクサ78の各入力端子に接続される。
これらの第1および第2のデマルチプレクサ76、77およびマルチプレクサ78は、それぞれマイクロコンピュータ回路57からの各ビットが時間的にカウントアップするスキャン制御信号SC1、SC2、SC3によって各タイミングを異ならせて制御され、第1デマルチプレクサ76は図8(a)に示すような所定のパルス幅のハイレベルの電圧をそのパルス幅だけタイミングをずらせて15本の共通の横のラインに順次印加していく。
【0059】
一方、第2デマルチプレクサ77は、図8(b)に示すようなパルス幅の短いローレベルのパルス信号を、そのパルス幅だけタイミングをずらせて発光素子群62aの6本の縦のラインに順次印加し、アノード側が抵抗を介して共通の横のラインに接続された6個の発光素子54のカソード側を順次ローレベルにして点灯させる。
【0060】
マルチプレクサ78は、第2デマルチプレクサ77と同じタイミングで、受光素子群62(b)の6本の縦のライン中の第2デマルチプレクサ77によってローレベルにされるラインに対応するラインの出力信号を選択して出力し、抵抗R7を介してマイクロコンピュータ回路57に弁開検出信号Svとして取込ませる。
【0061】
従って、ある鍵のダンパユニット23に設けた弁開検出用フォトセンサー53の発光素子54がスキャン回路61によって点灯されると、その射出光が図4の弁43の薄肉部50で反射され、その反射光がフォトトランジスタ55によって受光される。反射光がフォトトランジスタ55に受光されると、その光量に応じた光電流が出力回路に対応するラインの抵抗(R1〜R6のいずれか、抵抗値はすべて同じ)に流れ、この抵抗によって電圧が発生する。
【0062】
この電圧は、弁43の開度に応じたアナログ信号であり、この電圧信号をマルチプレクサ78によって検出して順次出力する。
例えば、演奏者があるときに、図8(c)に示すように、左手の小指でC3、中指でE3、親指でG3の各鍵を押鍵し、右手の人差し指でC5の鍵を押鍵していたとすると、マイクロコンピュータ回路57には同図(c)のようなタイミングで各鍵の弁43の開度に応じたレベルの異なる弁開検出信号V1、V2、V3およびV4が取込まれる。
【0063】
このような弁開検出信号に基づいて、マイクロコンピュータ回路57により予め設定された各種楽音(音色、音高、リバーブ深さ、パン、その他各種効果)が制御され楽音信号が形成される。この楽音信号に基づいて楽音信号発生回路58において電子音が作成されスピーカを通して放音される。
なお、上記実施例の回路では、弁43の開度をアナログ的に検出したが、弁のオンオフ状態のみを検出する回路構成としてもよい。弁が開いたことを検出することにより、その鍵が所定設定値以上の速さ(強さ)で押鍵されたことを検出することができる。このようなオンオフ検出によっても、後述のように各種楽音制御が可能になる。
【0064】
図9は、上記弁開検出用のフォトセンサーを備えた鍵盤装置の楽音発生と楽音制御の一例を示すキーオンイベント処理のフローチャートである。
まず、制御すべき楽音パラメータやその基準値等の各種初期設定が行われる(ステップS1)。次に、図5、図6における回路構成にて理解できるように、鍵スイッチ並びにフォトセンサ(フォトリフレクタ)および音色効果設定スイッチ等の各種スイッチのスキャン信号をマイクロコンピュータ57からバスライン75を介して鍵盤側および音色等のパネル回路にたえず送出する。即ち、ステップS2において、スキャン信号発生処理を行い、スイッチおよびセンサの数だけ毎回インクリメントする信号を発生し、各種スイッチ、センサのうち、どのスイッチ、どのセンサからのデータであるかをステップS3、ステップS5、ステップS9で判別する。
【0065】
なお、図5の音色効果設定SW群64においては、鍵盤回路56におけるスキャン回路等が省略されている。
ステップS3において、キースイッチイベント情報であるかが判別され、キースイッチイベント情報であればステップS4に進み、2メイク式キースイッチの第1接点がオン中の各鍵の第2接点がオン時の時間と前回の第1接点オン時の時間との差をレジスタKTに取込み鍵速度を検出する。このレジスタKTの値をテーブル変換して鍵データと鍵速度データとしてこれらのデータを楽音信号発生回路に送り出す。続いてフローはステップS5に進む。
【0066】
一方、前記ステップS3でキースイッチイベント情報でないと判別された場合にも、フローはステップS5に進み、与えられた情報が弁開検出情報かどうかが判別される。即ち、CPUに入力された信号が図5のフォトリフレクタ群からなるセンサー回路62からの信号かどうかが判別される。ステップS5において、弁開イベント情報を検出すると(押鍵速度が所定の設定値以上であることを意味する)、ステップS6に進みキースイッチの第2接点がオンイベントありかあるいはオン中かどうかが判別される。
【0067】
このステップS6において第2接点がオンの状態とは、押鍵動作がある程度以上の強いタッチで行われたことが弁開検出センサーにより検出された場合(ステップS5がYESの場合)に、この速い押鍵動作がこの時点ですでにキースイッチの第2接点がオンになることにより2つの接点(第1および第2接点)がオンになる時間差に基づいて検出されていることを示している。この場合には、フローはステップS8に進み前記ステップS5で識別した弁開検出情報を楽音制御信号として楽音信号発生回路に送り出す。これにより、楽音信号発生回路において、キースイッチから得られた鍵データおよび実際の押鍵速度データ(キースイッチによるデータ)ととともに弁開検出センサーから得られた弁開データに基づいて楽音を制御し、押鍵操作された鍵の電子楽音を作成する。
【0068】
一方、前記ステップS6においてノーと判断された場合、即ち第2接点がオン中ではなかったと判断された場合、これは押鍵動作がある程度以上の強いタッチで行われた場合(ステップS5がYESの場合)であって、この速い押鍵動作がまだキースイッチの第2接点をオンにしていない状態、即ちキースイッチによる押鍵速度データがまだ得られていない状態を示している。この場合にはステップS7に進み、キースイッチの第1接点からの情報もしくは第2ダッシュポットからの情報による鍵データと予め設定した所定の速度以上のプリセット速度データを楽音信号発生回路に送り出す。即ち、キースイッチの第2接点が閉じるより前にダッシュポットの弁が開くような速い押鍵速度に対応した速度値をプリセット速度データとして予めROM等に格納しておき、強いタッチの(速い)押鍵操作のときに、この打鍵をキースイッチの第1第2の2つの接点により検出する前に弁開センサーにより検出して、予め記憶してある上記プリセット速度データを楽音信号発生回路に送り出す。
【0069】
このように、2メイク式のキースイッチにより強いタッチの打鍵を実際に検出する前にこの強い打鍵に対応したプリセット速度データを楽音信号発生回路に送ることにより、いわゆる「つっこみ発音」が可能となる。このつっこみ発音とは、自然楽器のピアノにおいて、ffやfff等の強いタッチの打鍵時に、ハンマーが鍵よりも速く動き鍵とハンマーの連結が外れてハンマーが鍵に先行し、鍵のストロークにおける通常の発音位置よりも前の位置でハンマーが弦に当たって音を発する押鍵動作のことをいう。従来の電子鍵盤楽器においては、2メイク式のキースイッチのみにより強い打鍵時の押鍵速度を検出する構成であり、この2メイク式のキースイッチは鍵のストローク変位による位置検出制御であるため、このようなつっこみ発音はできない。
【0070】
これに対し、上記この発明の実施例においては、鍵のストロークが通常発音位置に達するよりも前に音を出すことができるため、即ち、第2接点オン信号により速度を検出する前に音を出すことができるため、つっこみ発音が可能になる。さらに上記第2ダッシュポットの弁開検出信号に基づいて、音色、音量、効果その他各種楽音を制御することができるため、自然楽器のピアノに極めて近い演奏表現あるいは自然楽器のピアノ以上に幅広い演奏表現が可能になる。
【0071】
なお、弱いタッチの場合にはこのようなつっこみ発音を行わないように、所定の設定値以下の遅い押鍵速度においては速度データとしてプリセット速度データを用いずに必ずキースイッチからの速度データにより制御するように回路を構成してもよい。
【0072】
ステップS7で前述のように鍵データとプリセット速度データを楽音信号発生回路に送出すると、前記のステップS6で第2接点がオン中の場合と同様にステップS8に進み、前記ステップS5で識別した弁開検出情報を楽音制御信号として楽音信号発生回路に送り出す。これにより、楽音信号発生回路において、キースイッチから得られた鍵データおよびプリセット速度データととともに弁開検出センサーから得られた弁開データに基づいて楽音を制御し、押鍵操作された鍵の電子楽音を作成する。
【0073】
次にステップS9において、演奏者により音色や各種楽音効果のスイッチがオンにされたかどうかが判別される。スイッチオンであればそのスイッチ情報を楽音信号発生回路に送出して、各種音色、効果の設定を行う(ステップS10)。この設定を行った後、あるいはステップS9でスイッチオンイベントがなかった場合には再び上記ステップS2に戻り、前述のフロー(ステップS2〜S8)を繰り返す。
【0074】
前述のステップS8における楽音制御信号の具体的制御対象は、例えば、
(1)接点時間差スイッチ(2メイク式キースイッチ)により制御される鍵の音量レベルを弁開検出時にさらに上げる。
(2)接点時間差スイッチにより制御される鍵の音色を弁開が検出された時に明るくする。
(3)接点時間差スイッチにより制御されるリバーブ深さを弁開検出時にさらに深くする。また、リバーブ効果がスイッチオフになっていた場合には、これをオンにする。
等が制御対象となる。
【0075】
なお、上記(2)において、音色を明るくするためには、図10に示すように、音源回路において用いるフィルター回路の周波数特性を、弁開検出センサーにより弁が開いたことを検出したときに、フィルタリングの周波数位置が高周波数側に移るようにシフトさせる。図10において、横軸は周波数、縦軸は出力レベルを表し、(A)図はハイパスフィルターのフィルター周波数特性のシフトを示し、(B)図および(C)図はそれぞれバンドパスフィルターおよびローパスフィルターの周波数特性のシフト状態を示している。このように、弁開時にフィルター特性を変化させることにより、例えば強い打鍵時に音色を明るくするように楽音制御することができる。
【0076】
なお、前述のように、弁の開度をアナログ的に検出する場合には、フォトリフレクター(図4のセンサー53)と弁43の反射面(薄肉部50)との間の距離を適当に(例えば1.5mm程度)離すことにより、反射光量をアナログ的に検出しこれを弁開度に対応させることができる。この場合、受光素子側は、フォトトランジスタの特性あるいは抵抗との組合せ回路の構成により、反射光量が減少するに従って(即ち弁が開くに従って)、出力レベルを大きくすることもできるし逆に小さくすることもできる。
【0077】
また、前述の図9のフローチャートはキーオン時の制御のみを行うものであり、この場合、楽音信号発生回路のEG(包絡線データ発生回路)としてキーオフ処理不要な減衰系のものが採用される。なお、図9のフローチャートで、ステップS3とステップS4との間にキーオフ処理のフローを追加して持続系の音も発音可能としてもよい。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明においては、ダッシュポットを用いて、その流体の粘性抵抗力を実質的に押鍵速度に応じて変化させる手段を設けたため、弱いタッチ強いタッチともに良好なタッチ感触が得られるようになり、弱いタッチでも適度な反力が得られ、これにより演奏者の意志を正確に反映できる精度のよいタッチ感触を得られるようになり、かつ強いタッチでも反力が大きくなりすぎず、強弱いかなる演奏でも良好なタッチ感触を実現でき、速くて軽く遅くて重い快適な演奏感覚で電子楽器を演奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例に係る電子楽器用鍵盤装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】(A)(B)はそれぞれ図1の実施例のダンパユニット部分の上面図およびダッシュポットのシリンダの小孔によるキースケーリングの説明図である。
【図3】図1の実施例で用いるダンパユニットの作用を説明するための押鍵反力を示すグラフである。
【図4】この発明の別の実施例に係るダッシュポットの構成を説明するための図であり、(A)は組み立て状態の断面図、(B)は弁の斜視図、(C)はシリンダ底部の斜視図、(D)は弁開状態を検出するためのフォトセンサーの回路図である。
【図5】図4の実施例による電子楽器用鍵盤装置の楽音制御手段の構成を示すブロック図である。
【図6】図5のブロック図に示されたこの発明に係るダッシュポットの弁開検出用のセンサー部の具体的構成例を示す回路図である。
【図7】図6の回路のマトリクス交点部分に配置されるフォトリフレクタの構成説明図である。
【図8】図6の回路に含まれるスキャン回路の駆動パルス波形およびフォトリフレクタ群からの出力波形の一例を示す波形説明図である。
【図9】図5の楽音制御手段による鍵盤装置の楽音制御作用を示すフローチャートである。
【図10】フィルター回路により音色を制御する場合に、音色を明るくするためのフィルター特性シフトの説明図であり、(A)(B)(C)はそれぞれハイパスフィルター、バンドパスフィルター、およびローパスフィルターの特性を示すグラフである。
【図11】本発明に係る電子楽器用鍵盤装置の押鍵反力の原理を説明するための模式図である。
【図12】本発明に係る電子楽器用鍵盤装置における押鍵操作1サイクルのヒステリシスをグラフで示す説明図である。
【符号の説明】
2:鍵支持部材(鍵支持フレーム)
3:白鍵
5:鍵回動用の支点部材
6:圧縮コイルバネからなる鍵復帰用スプリング
10:2メイク式キースイッチ
11:キースイッチ10用のアクチュエータ
12:鍵支持フレーム2の前端部を屈曲させたキーガイドの芯材
13:樹脂アウトサート成形材からなるキーガイド
14:鍵自由端部の内壁面
16:上限ストッパ
17:下限ストッパ
18:上限ストッパ用の鍵側に設けた当接用係止片
23:ダンパユニット
24:第1ダッシュポット
25:第2ダッシュポット
26:第1、第2ダッシュポット24、25を支持する支持フレーム
27:第1ダッシュポット24のシリンダ
28:第1ダッシュポット24のピストン
29:第1ダッシュポット24のピストンロッド
30:第1ダッシュポット24の連結フック
31:第1ダッシュポット24が装着される外筒容器
32:第1ダッシュポット24の小孔
33:シーソーレバー
35:圧縮コイルスプリング
38:第2ダッシュポット25のシリンダ
39:第2ダッシュポット25のピストン
40:第2ダッシュポット25の小孔
41:孔
42:弁駆動用のアクチュエータ
43:弁
44:第2ダッシュポット25のピストンロッド
45:第2ダッシュポット25の連結フック
53:弁開検出用フォトリフレクター
54:発光素子(LED)
55:受光素子(フォトトランジスタ)
Claims (4)
- 鍵支持部材と、
押離鍵操作により上記鍵支持部材に対し変位移動する多数の鍵と、
該鍵を非押鍵位置方向に付勢する鍵復帰手段と、
上記鍵の押離鍵動作に連動する反力発生手段とを具備した電子鍵盤楽器において、
上記反力発生手段は、押鍵速度に応じてその粘性係数を変化させるとともに、上記押鍵速度が所定値を越えると上記粘性係数を減少させることを特徴とする電子鍵盤楽器。 - 上記反力発生手段は、上記鍵の押離鍵動作に連動するダッシュポット手段と該ダッシュポット手段に設けた弁とを有し、押鍵速度が所定値を越えると、前記弁が開くことで実質的に前記粘性係数を減少させることを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
- 上記押鍵速度が所定値を越えたか否かを検出するセンサー手段と、該センサー手段の検出出力に応じて楽音を制御する楽音制御手段を具備したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子鍵盤楽器。
- 上記反力発生手段は、第1反力発生手段及び第2反力発生手段からなり、
上記第1反力発生手段は、押鍵速度に応じてその粘性係数を実質的に増加させるようにし、上記第2反力発生手段は、押鍵速度が所定値を越えたらその粘性係数を実質的に減少させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
Priority Applications (1)
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| JP04604994A JP3555115B2 (ja) | 1994-03-16 | 1994-03-16 | 電子楽器用鍵盤装置 |
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| JP04604994A JP3555115B2 (ja) | 1994-03-16 | 1994-03-16 | 電子楽器用鍵盤装置 |
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1994
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