以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また本明細書等において結晶面および方向の表記にはミラー指数を用いる。結晶面を示す個別面は( )で表す。結晶面、方向および空間群の表記は、結晶学上、数字に上付きのバーを付すが、本明細書等では出願表記の制約上、数字の上にバーを付す代わりに、数字の前に-(マイナス符号)を付して表現する場合がある。
本明細書等において、偏析とは、複数の元素(例えばA,B,C)からなる固体において、ある元素(例えばB)が空間的に不均一に分布する現象をいう。
本明細書等において、均質とは、複数の元素(例えばA,B,C)からなる固体において、ある元素(例えばA)が特定の領域に同様の特徴を有して分布する現象をいう。なお特定の領域同士の元素の濃度が実質的に同一であればよい。たとえば特定領域同士の元素濃度の差が10%以内であればよい。特定の領域としてはたとえば表面、凸部、凹部、内部領域などが挙げられる。
本明細書等において、正極活物質の表面から10nm程度までの領域を表面近傍領域(または表層部)と呼ぶ。ひびやクラックにより生じた面も表面といってよい。また正極活物質の表面近傍表面近傍領域より深い領域を、内部領域(または内部)と呼ぶ。また正極活物質の表面近傍領域のうち、表面から3nmまでの領域を最表面層と呼ぶ。また正極活物質の表面とは、上記最表面層を含む表面近傍領域および内部領域等を含む複合酸化物の表面をいうこととする。そのため正極活物質は、作製後に化学吸着した炭酸、ヒドロキシ基等は含まないとする。また正極活物質に付着した電解質、バインダ、導電材、またはこれら由来の化合物も含まないとする。また正極活物質は必ずしもすべてが充放電に寄与するリチウムサイトを有する領域でなくてもよい。
本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する層状岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属とリチウムが規則配列して二次元平面を形成するため、リチウムの二次元的拡散が可能である結晶構造をいう。なお一部に陽イオンまたは陰イオンの欠損等の欠陥があってもよく、リチウムイオンの二次元的拡散が可能であればよい。また、層状岩塩型結晶構造は、厳密に言えば、岩塩型結晶の格子が歪んだ構造となっている場合がある。
また本明細書等において、岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列している構造をいう。なお一部に陽イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
また本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する擬スピネル型の結晶構造とは、空間群R-3mであり、スピネル型結晶構造ではないものの、コバルト、マグネシウム等のイオンが酸素6配位位置を占め、陽イオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する結晶構造をいう。なお、擬スピネル型の結晶構造は、リチウムなどの軽元素は酸素4配位位置を占める場合があり、この場合もイオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する。
また擬スピネル型の結晶構造は、層間にある確率でLiを有するもののCdCl2型の結晶構造に類似する結晶構造であるということもできる。このCdCl2型に類似した結晶構造は、ニッケル酸リチウムを充電深度0.94まで充電したとき(Li0.06NiO2)の結晶構造と近いが、純粋なコバルト酸リチウム、またはコバルトを多く含む層状岩塩型の正極活物質では通常この結晶構造を取らないことが知られている。
層状岩塩型結晶、および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構造(面心立方格子構造)をとる。擬スピネル型結晶も、陰イオンは立方最密充填構造をとると推定される。これらが接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃う結晶面が存在する。ただし、層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶の空間群はR-3mであり、岩塩型結晶の空間群Fm-3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)およびFd-3m(最も単純な対称性を有する岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミラー指数は層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶、擬スピネル型結晶、および岩塩型結晶において、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合がある。
二つの領域の結晶の配向が概略一致することは、TEM(透過電子顕微鏡)像、STEM(走査透過電子顕微鏡)像、HAADF-STEM(高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡)像、ABF-STEM(環状明視野走査透過電子顕微鏡)像等から判断することができる。X線回折(XRD)、電子線回折、中性子線回折等も判断の材料にすることができる。TEM像等では、陽イオンと陰イオンの配列が、明線と暗線の繰り返しとして観察できる。層状岩塩型結晶と岩塩型結晶において立方最密充填構造の向きが揃うと、結晶間で、明線と暗線の繰り返しのなす角度が5度以下、より好ましくは2.5度以下である様子が観察できる。なお、TEM像等では酸素、フッ素をはじめとする軽元素は明確に観察できない場合があるが、その場合は金属元素の配列で配向の一致を判断することができる。
また本明細書等において混合物とは、複数の材料を混合したものをいう。混合物のうち混合物が有する元素の相互拡散が起きた後のものは複合物といってもよい。一部未反応の材料を有していても複合物といってよい。
また本明細書等において、正極活物質の理論容量とは、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離した場合の電気量をいう。たとえばLiCoO2の理論容量は274mAh/g、LiNiO2の理論容量は274mAh/g、LiMn2O4の理論容量は148mAh/gである。
また本明細書等において、挿入脱離可能なリチウムが全て挿入されているときの充電深度を0、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離したときの充電深度を1ということとする。
本明細書等において、充電とは、電池内において正極から負極にリチウムイオンを移動させ、外部回路において負極から正極に電子を移動させることをいう。正極活物質については、リチウムイオンを離脱させることを充電という。
一般的に層状岩塩型の結晶構造を有する正極活物質では、遷移金属と酸素からなる層状構造の間のリチウムが減少すると、結晶構造が不安定になる。そのため一般的なコバルト酸リチウムを用いた二次電池では、充電深度0.4、充電電圧4.3V(対極リチウムの場合)、充電容量160mAh/g程度までの充電にとどめる。
これに対して充電深度が0.74以上0.9以下、より詳細には充電深度が0.8以上0.83以下の正極活物質を、高電圧で充電された正極活物質ということとする。そのため、例えばLiCoO2において充電容量が219.2mAh/gに充電されていれば、高電圧で充電された正極活物質である。またLiCoO2において、25℃環境下で、充電電圧を4.525V以上4.65V以下(対極リチウムの場合)として定電流充電し、その後電流値が0.01C、あるいは定電流充電時の電流値の1/5から1/100程度となるまで定電圧充電した後の正極活物質も、高電圧で充電された正極活物質ということとする。なおCはCapacity rateの略であり、1Cは二次電池の充放電容量を1時間で完全充電または完全放電させる電流の大きさをいう。
同様に、放電とは、電池内において負極から正極にリチウムイオンを移動させ、外部回路において正極から負極に電子を移動させることをいう。正極活物質については、リチウムイオンを挿入することを放電という。また充電深度が0.06以下の正極活物質、または高電圧で充電された状態から充電容量の90%以上の容量を放電した正極活物質を、十分に放電された正極活物質ということとする。例えばLiCoO2において充電容量が219.2mAh/gならば高電圧で充電された状態であり、ここから充電容量の90%である197.3mAh/g以上を放電した後の正極活物質は、十分に放電された正極活物質である。また、LiCoO2において、25℃環境下で電池電圧が3V以下(対極リチウムの場合)となるまで定電流放電した後の正極活物質も、十分に放電された正極活物質ということとする。
また本明細書等において、本発明の一態様の正極および正極活物質用いた二次電池として、対極にリチウム金属を用いる例を示す場合があるが、本発明の一態様の二次電池はこれに限らない。負極に他の材料、例えば黒鉛、チタン酸リチウム等を用いてもよい。本発明の一態様の正極および正極活物質の、充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくく、良好なサイクル特性を得られる等の性質は、負極の材料に影響されない。また本発明の一態様の二次電池について、対極リチウムで充電電圧4.6V程度の一般的な充電電圧よりも高い電圧で充放電する例を示す場合があるが、より低い電圧で充放電をしてもよい。より低い電圧で充放電する場合は本明細書等で示すよりもさらにサイクル特性がよくなることが見込まれる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、図1及び図3を用いて本発明の一態様の正極活物質について説明する。
図1(A)は本発明の一態様である正極活物質100の断面図である。図1(A)中のA-B付近を拡大した図を図2(A)、(B1)および(B2)に示す。図1(A)中のC-D付近を拡大した図を図3(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)に示す。なお、図1(B)は、他の本発明の一態様である正極活物質104の断面図であり、及び図1(C)は他の本発明の一態様である正極活物質105の断面図であり、詳細は、実施の形態2に示すこととする。
図1(A)、図2(A)、(B1)および(B2)に示すように、正極活物質100は、表面近傍領域100aと、内部領域100bを有する。これらの図中に破線で表面近傍領域100aと内部領域100bの境界を示す。なお、表面近傍領域100aを第1の領域と呼び、内部領域100bを第2の領域と呼ぶこともできる。正極活物質100は、表面近傍に第1の領域と、該第1の領域の一部と接する第2の領域と、を有しているとも言える。また図1(A)に一点破線で結晶粒界101の一部を示す。また図2(A)に二点破線で表面近傍領域100aの中の最表面層100cの境界を示す。
<各領域と格子定数>
本発明の一態様の正極活物質100では、表面近傍領域100aおよび内部領域100bともに結晶構造を有することが好ましい。また表面近傍領域100aの結晶構造のa軸の格子定数の方が、内部領域100bの結晶構造のa軸の格子定数Acoreよりも大きいことが好ましい。また表面近傍領域100aの結晶構造のb軸の格子定数の方が、内部領域100bの結晶構造のb軸の格子定数Bcoreよりも大きいことが好ましい。また表面近傍領域100aの結晶構造のc軸の格子定数の方が、内部領域100bの結晶構造のc軸の格子定数Ccoreよりも大きいことが好ましい。
さらに正極活物質100の最表面層100cも結晶構造を有することが好ましい。また最表面層100cの結晶構造のa軸の格子定数Asurfaceの方が、表面近傍領域100aのa軸の格子定数および内部領域100bのa軸の格子定数Acoreよりも大きいことが好ましい。また最表面層100cの結晶構造のb軸の格子定数Bsurfaceの方が、表面近傍領域100aのb軸の格子定数および内部領域100bのb軸の格子定数Bcoreよりも大きいことが好ましい。また最表面層100cの結晶構造のc軸の格子定数Csurfaceの方が、表面近傍領域100aのc軸の格子定数および内部領域100bのc軸の格子定数Ccoreよりも大きいことが好ましい。
また最表面層のa軸の格子定数Asurfaceから、内部領域のa軸の格子定数Acoreを引いた差をΔAとする。同様に最表面層のc軸の格子定数Csurfaceから、内部領域のc軸の格子定数Ccoreを引いた差をΔCとする。このときΔAよりもΔCが大きいことが好ましい。
格子定数は、領域間で比較しやすくするために、いずれの領域も同じ結晶構造をモデルとして用いて算出することとする。たとえば表面近傍領域100a、内部領域100b、最表面層100cについていずれも層状岩塩型の結晶構造をモデルとして用いて格子定数を算出すると、各領域の格子定数の比較が容易になる。なお層状岩塩型の結晶構造ではa軸とb軸の長さが等しくなるため、以降では層状岩塩型については代表してa軸について述べる。
以降では各領域の格子定数の算出について層状岩塩型の結晶構造をモデルとして用いる例について説明するが、これに限らない。正極活物質100の材料によって最適な構造を選定することが好ましい。たとえば正極活物質100が有する結晶構造のうち最も大きな体積を占める結晶構造を採用することが好ましい。層状岩塩型の他には、たとえば岩塩型、スピネル型、オリビン型等の結晶構造を用いることができる。
表面近傍領域100a、内部領域100b、最表面層100cが結晶構造を有するか否かの判断、および結晶構造を有する場合の格子定数の決定は、たとえば断面TEM、断面STEM、および制限視野電子回折、極微電子回折をはじめとする電子回折等により行うことができる。
断面TEM像、断面STEM像等において規則的な陽イオンと陰イオンの配列が観察できれば、結晶構造を有するということができる。また電子回折像等において規則的なスポットを有する回折パターンが観察できれば、結晶構造を有するということができる。
制限視野電子回折は20nm程度の小さな領域、極微電子回折は1nm程度のさらに小さな領域について結晶構造の解析が可能であり、表面近傍領域100aおよび最表面層100cの格子定数の決定に好適である。
ただしこれらの電子回折法ではカメラ長の歪み等に起因する測定誤差が生じる場合がある。そのため電子回折法により得られた格子定数の有効数字は2桁とすることが好ましい。または電子回折法から得られた格子定数を、粉末XRDから得られた格子定数、文献値等を参照して補正してもよい。
たとえば、正極活物質100では内部領域100bが体積の大半を占める。そのため粉末XRDにより求めた正極活物質100全体の格子定数は、電子回折により求めた内部領域100bの格子定数と等しいと考えることができる。そこで、電子回折から得られた内部領域100bと表面近傍領域100aの格子定数の比と、粉末XRDから得られた格子定数から、補正された表面近傍領域100aの格子定数を求めることができる。
表面近傍領域100aは内部領域100bよりも後述する添加元素の濃度が高いことが好ましい。また添加物は濃度勾配を有していることが好ましい。また添加元素が複数ある場合は、添加元素によって、濃度のピークの表面からの深さが異なっていることが好ましい。
たとえばある添加元素Xは図2(B1)にグラデーションで示すように、内部領域100bから表面に向かって高くなる濃度勾配を有することが好ましい。このような濃度勾配を有することが好ましい添加元素Xとして、例えばマグネシウム、フッ素、チタン、ケイ素、リン、ホウ素およびカルシウム等が挙げられる。
別の添加元素Yは図2(B2)にグラデーションで示すように、濃度勾配を有しかつ図2(B1)よりも深い領域に濃度のピークを有することが好ましい。濃度のピークは表面近傍領域に存在してもよいし、表面近傍領域より深くてもよい。最表面層ではない領域に濃度のピークを有することが好ましい。たとえば表面から5nm以上30nmまでの領域にピークを有することが好ましい。このような濃度勾配を有することが好ましい添加元素Yとして、例えばアルミニウムおよびマンガンが挙げられる。
また添加元素の上述のような濃度勾配に起因して、内部領域100bから、表面近傍領域100aおよび最表面層100cに向かって結晶構造が連続的に変化することが好ましい。
たとえば内部領域100bが層状岩塩型の結晶構造を有している場合について説明する。層状岩塩型の結晶構造の特徴の一つは、陰イオンの立方最密充填構造の間に、遷移金属サイト層と、リチウムサイト層を交互に有することである。そのため内部領域100bは断面TEM等で、強い輝度で観察される原子番号の大きい遷移金属サイト層と、弱い輝度で観察されるリチウムサイト層が交互に観察される。なお陰イオンの酸素およびフッ素は、いずれも原子番号が小さいためリチウムと同程度の輝度で観察される。なおこれらの原子番号の小さい元素は明瞭な輝点とならず、バックグラウンドとわずかな明度の差があるのみの場合もある。
本明細書等では、断面TEM像等において強い輝度で観察される層と、弱い輝度で観察される層を交互に有する場合、層状岩塩型の結晶構造の特徴を有するとする。
一方、最表面層100cでは添加元素の濃度が高いため、リチウムサイト層の一部に添加元素が入る。なおリチウムサイトは酸素等の陰イオンに囲まれているため、添加物の中でもマグネシウム、アルミニウム等の金属元素が入りやすい。またリチウムサイト層の一部に遷移金属、たとえばコバルトが入る場合がある。これらの金属はいずれもリチウムよりも原子番号が大きいため、断面TEM等ではリチウムより強い輝度で観察される。
なお遷移金属層の一部に添加元素またはリチウムが入る場合もある。この場合断面TEM等では遷移金属よりも弱い輝度で観察される。
このように陽イオンの置換が多く生じると、リチウムサイトと遷移金属サイトとの違いのない岩塩型の結晶構造の特徴を有するようになる。岩塩型の結晶構造の特徴を有することは、添加元素が十分な濃度で存在していることを示唆するともいえる。添加元素が十分な濃度で存在していると、高電圧で充電する際に生じうる遷移金属の溶出を抑制できる。そのため電池特性、特に連続充電耐性が向上し、安全性および信頼性の高い二次電池とすることができる。
一方で最表面層100cは、内部領域100bと同じ層状岩塩型の結晶構造の特徴も有していることが好ましい。岩塩型の結晶構造のみで表面が覆われると、リチウムの拡散経路が阻害され、充放電の際に内部抵抗が上昇する恐れがあるためである。同じ理由で、岩塩型の結晶構造の特徴を有するのは、表面から3nm程度に限られることが好ましい。
そのため最表面層100cは、層状岩塩型の結晶構造の特徴と、岩塩型の結晶構造の特徴の両方を有していることが好ましい。すなわち最表面層100cは、断面TEM像等において強い輝度で観察される層と、弱い輝度で観察される層を交互に有する層状岩塩型の結晶構造を有し、さらにリチウムサイトの一部にリチウムより原子番号の大きい金属を有することが好ましい。
最表面層100cのリチウムサイトの一部に、添加元素が好ましい濃度で存在していると、断面TEM像においてリチウムサイト層の輝度が遷移金属サイト層の輝度の3%以上60%以下となる。より好ましくは4%以上50%以下となる。さらに好ましくは6%以上40%以下となる。または3%以上50%以下が好ましい。または3%以上40%以下が好ましい。または4%以上60%以下が好ましい。または4%以上40%以下が好ましい。または6%以上60%以下が好ましい。または6%以上50%以下が好ましい。なお比較に用いるリチウムサイト層および遷移金属サイト層は5nm以上の幅を有していることが好ましい。
断面TEM等における輝度は、たとえば断面TEMの暗視野像中のピクセルの輝度を積算することで算出できる。同様に遷移金属サイト層およびリチウムサイト層の輝度は、これらの層と平行にピクセルの輝度を積算することで算出できる。具体的には画像を、黒を輝度0、白を輝度255とするグレースケールとし各ピクセルの輝度を1列ずつ積算すればよい。また金属サイト層の輝度の比較を容易にするために、酸素等の原子番号の小さい元素に由来する輝度を除く補正をしてもよい。
なお断面TEM等の試料は20nm~200nm程度の厚さを有する。そのため正極活物質100の表面の凹凸がある場合、表面から浅い部分では正確な輝度が得られない場合がある。そのため輝度を比較する場合は輝度が安定して得られる部分同士で行う必要がある。たとえば遷移金属サイト層の輝度の最大値を1としたとき、0.7以上の輝度を有する遷移金属サイト層は、安定した輝度が得られているとする。
なお本明細書等において、断面TEM像、断面STEM像等における正極活物質100の表面とは、最初に金属元素が観察される面とする。より詳細には最初に金属元素の原子核、つまり断面TEM像等における輝度のピークが存在する点とする。
なお、正極活物質の最表面層の少なくとも一部が上述のように、層状岩塩型の結晶構造の特徴と、岩塩型の結晶構造の特徴の両方を有していればよい。正極活物質の表面に露出する結晶面が(001)面と概略平行であれば上記の特徴が観察しやすいが、結晶面によっては、これらの特徴が明瞭に観察できない場合がある。そのため遷移金属サイト層とリチウムサイト層の輝度比が必ずしも上記の範囲内でなくてもよい。
また、電子回折によっても層状岩塩型の結晶構造と岩塩型の結晶構造の特徴を分析することができる。
岩塩型は、陽イオンが1種類であって対称性が高い。一方層状岩塩型は2種類の陽イオンが規則配列しているために岩塩型よりも対称性が低い。そのため、特定の面方位に相当する輝点が岩塩型の2倍存在する。
また岩塩型と層状岩塩型の両方の特徴を有する結晶構造の場合、回折像では、強い輝度の輝点と、弱い輝度の輝点とが交互に配列する面方位が存在する。岩塩型と層状岩塩型で共通する輝点は強い輝度となり、層状岩塩型のみで生じる輝点は弱い輝度となる。
なお遷移金属、特にコバルトおよびニッケルは正極活物質100の全体に均一に固溶していることが好ましい。なお一部の遷移金属、たとえばニッケルの濃度が低い場合、XPS、XPS等の分析において検出下限以下となる場合がある。
たとえばニッケルの原子数がコバルトの原子数と比較して2%以下であるならば、リチウム複合酸化物中のニッケルは0.5原子%以下となる。一方XPSおよびEDXの検出下限はおおむね1原子%程度である。この場合、正極活物質100の全体に均一に固溶していれば、XPS、EDX等の分析方法で検出下限以下となりうる。この場合、検出下限以下となることは、ニッケルの濃度が1原子%以下であること、また正極活物質100の全体に固溶していることを示唆するともいえる。
一方で、ICP-MS等を用いれば濃度が1原子%以下でも遷移金属を定量することが可能である。
なお正極活物質100の内部領域100bに広く固溶し、濃度勾配を有さない添加元素を有していてもよい。また正極活物質100が有する遷移金属Mの一部、たとえばマンガンが内部領域100bから表面に向かって濃くなる濃度勾配を有していてもよい。
<含有元素>
正極活物質100は、リチウムと、遷移金属Mと、酸素と、添加物と、を有する。正極活物質100はLiMO2で表される複合酸化物に添加物が添加されたものといってもよい。ただし本発明の一態様の正極活物質はLiMO2で表されるリチウム複合酸化物の結晶構造を有すればよく、その組成が厳密にLi:M:O=1:1:2に限定されるものではない。
正極活物質100が有する遷移金属Mとしては、リチウムとともに空間群R-3mに属する層状岩塩型の複合酸化物を形成しうる金属を用いことが好ましい。たとえばマンガン、コバルト、ニッケルのうち少なくとも一を用いることができる。つまり正極活物質100が有する遷移金属としてコバルトのみを用いてもよいし、ニッケルのみを用いてもよいし、コバルトとマンガンの2種、またはコバルトとニッケルの2種を用いてもよいし、コバルト、マンガン、ニッケルの3種を用いてもよい。つまり正極活物質100は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルトの一部がマンガンで置換されたコバルト酸リチウム、コバルトの一部がニッケルで置換されたコバルト酸リチウム、ニッケル-マンガン-コバルト酸リチウム等の、リチウムと遷移金属Mを含む複合酸化物を有することができる。遷移金属Mとしてコバルトに加えてニッケルを有すると、コバルトと酸素の八面体からなる層状構造のずれを抑制する場合がある。そのため特に高温での充電状態において結晶構造がより安定になる場合があり好ましい。
正極活物質100が有する添加元素としては、マグネシウム、フッ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、鉄、クロム、ニオブ、コバルト、ヒ素、亜鉛、ケイ素、硫黄、リン、ホウ素のうち少なくとも一を用いることが好ましい。これらの元素が、後述するように正極活物質100が有する結晶構造をより安定化させる場合がある。つまり正極活物質100は、マグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウム、マグネシウム、フッ素およびチタンが添加されたコバルト酸リチウム、マグネシウムおよびフッ素が添加されたニッケル-コバルト酸リチウム、マグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト-アルミニウム酸リチウム、ニッケル-コバルト-アルミニウム酸リチウム、マグネシウムおよびフッ素が添加されたニッケル-コバルト-アルミニウム酸リチウム、マグネシウムおよびフッ素が添加されたニッケル-マンガン-コバルト酸リチウム等を有することができる。なお本明細書等において添加元素のかわりに混合物、原料の一部、不純物などといってもよい。
本発明の一態様の正極活物質100では、充電により正極活物質100からリチウムが抜けても、コバルトと酸素の八面体からなる層状構造が壊れないよう、添加100の濃度の高い表面近傍領域100a、すなわち粒子の外周部が補強している。
また添加物の濃度勾配は、正極活物質100の表面近傍領域100aに均質に存在することが好ましい。表面近傍領域100aの一部に補強があっても、補強のない部分が存在すれば、ない部分に応力が集中する恐れがある。粒子の一部に応力が集中すると、そこからクラック等の欠陥が生じ、正極活物質の割れおよび充放電容量の低下につながる恐れがある。
ただし必ずしも、正極活物質100の表面近傍領域100a全てにおいて全種類の添加元素の濃度勾配が均質でなくてもよい。図1(A)のC-D付近の添加元素Xの分布の例を図3(A1)、(B1)および(C1)に示す。C-D付近の添加元素Yの分布の例を図3(A2)、(B2)および(C2)に示す。
例えば図3(A1)および(A2)に示すように、添加元素Xおよび添加元素Yが存在しない領域があってもよい。また図3(B1)および(B2)に示すように、添加元素Xが存在するが、添加元素Yが存在しない領域があってもよい。また図3(C1)および(C2)に示すように、添加元素Xは存在しないが、添加元素Yが存在する領域があってもよい。図3(C2)における添加元素Yは、図2(B2)と同様に最表面層ではない領域にピークを有することが好ましい。たとえば表面から3nmを超えて30nmまでの領域にピークを有することが好ましい。
また正極活物質100は図1(A)に示すような、電界緩和領域103を有していてもよい。電界緩和領域103を形成するための添加元素としては、Hf、Zr、Y、Ba、Ti、Pb、Sc、Sr、Bi、Taのうち少なくとも一を用いることが好ましい。なお、本明細書では、電界緩和領域103は充放電に寄与する、または寄与しないにも関わらず、正極活物質100の一部とする。電界緩和領域103に、内部領域100bまたは表面近傍領域100aよりも高濃度に添加元素が存在していてもよい。
正極活物質100は凹部、クラック、窪み、断面V字形などを有する場合がある。これらは欠陥の一つであり、充放電を繰り返すとこれらから遷移金属の溶出、結晶構造の崩れ、本体の割れなどが生じる恐れがある。図示しないが、電界緩和領域103が凹部、クラック、窪み、断面V字形などを覆うように形成されると、これらの欠陥が起因する劣化を抑制でき、信頼性およびサイクル特性の優れた正極活物質100とすることができる。
また正極活物質100は添加元素を含み、その添加元素を含み、且つ、強誘電性を有しうる材料が偏在する領域として電界緩和領域103を有していてもよい。強誘電性を有しうる材料としては、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、HfZrOX(X>0)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、チタン酸バリウム、PbTiOX、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸ストロンチウム、タンタル酸ビスマス酸ストロンチウムが挙げられる。例えば、酸化ハフニウムは、成膜条件だけでなく、上下の膜構成やプロセスによっても結晶構造(特性)が変わり得る可能性があるため、本明細書では強誘電性を発現する材料のみを強誘電体と呼ぶのではなく、強誘電性を有しうる材料または強誘電性を有せしめると呼んでいる。
電界緩和領域103を有していると、正極活物質100と電解質の間に電界緩和領域を形成することで高電位において電気化学的に安定である二次電池を実現することができる。
なお本明細書等において、偏在とはある元素の濃度が他と異なることをいう。偏析、析出、不均一、偏り、濃度が高い、などといってもよい。
添加元素Xの一つであるマグネシウムは2価であり、層状岩塩型の結晶構造における遷移金属サイトよりもリチウムサイトに存在する方が安定であるため、リチウムサイトに入りやすい。マグネシウムが表面近傍領域100aのリチウムサイトに適切な濃度で存在することで、層状岩塩型の結晶構造を保持しやすくできる。マグネシウムは、適切な濃度であれば充放電に伴うリチウムの挿入および離脱に悪影響を及ぼさず好ましい。
添加元素Yの一つであるアルミニウムは3価であり酸素との結合力が強い。そのため添加物としてアルミニウムを有すると、リチウムサイトに入ったときに結晶構造の変化が抑制できる。そのため充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくい正極活物質100とすることができる。
チタン酸化物は超親水性を有することが知られている。そのため、表面近傍領域100aにチタン酸化物を有する正極活物質100とすることで、極性の高い溶媒に対して濡れ性がよくなる可能性がある。二次電池としたときに正極活物質100と、極性の高い電解質との界面の接触が良好となり、内部抵抗の上昇を抑制できる可能性がある。
二次電池の充電電圧の上昇に伴い、正極の電圧は一般的に上昇する。本発明の一態様の正極活物質は、高い電圧においても安定な結晶構造を有する。充電状態において正極活物質の結晶構造が安定であることにより、充放電の繰り返しに伴う充放電容量の低下を抑制することができる。
また、二次電池のショートは二次電池の充電動作や放電動作における不具合を引き起こすのみでなく、発熱および発火を招く恐れがある。安全な二次電池を実現するためには、高い充電電圧においてもショート電流が抑制されることが好ましい。本発明の一態様の正極活物質100は、高い充電電圧においてもショート電流が抑制される。そのため高い充放電容量と安全性と、を両立した二次電池とすることができる。
本発明の一態様の正極活物質100を用いた二次電池は好ましくは、高い充放電容量、優れた充放電サイクル特性、および安全性を同時に満たす。
添加物の濃度勾配は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)、EPMA(電子プローブ微小分析)等を用いて評価できる。EDX測定のうち、領域内を走査しながら測定し、領域内を2次元に評価することをEDX面分析と呼ぶ場合がある。また、EDXの面分析から、線状の領域のデータを抽出し、原子濃度について正極活物質粒子内の分布を評価することを線分析と呼ぶ場合がある。
EDX面分析(例えば元素マッピング)により、正極活物質100の最表面層100cを含む表面近傍領域100a、内部領域100bおよび結晶粒界101近傍等における、添加物の濃度を定量的に分析することができる。また、EDX線分析により、添加物の濃度のピークを分析することができる。また、電子エネルギー損失分光法(EELS(Electron Energy Loss Spectroscopy))によって、正極活物質100の最表面層100cを含む表面近傍領域100a、内部領域100bおよび結晶粒界101近傍等における、元素組成や化学結合状態を定量的に分析することができる。
正極活物質100についてEDX線分析をしたとき、表面近傍領域100aのマグネシウム濃度のピークは、正極活物質100の表面から中心に向かった深さ3nmまで、つまり最表面層100cに存在することが好ましく、深さ1nmまでに存在することがより好ましく、深さ0.5nmまでに存在することがさらに好ましい。
また正極活物質100が有するフッ素の分布は、マグネシウムの分布と重畳することが好ましい。そのためEDX線分析をしたとき、表面近傍領域100aのフッ素濃度のピークは、正極活物質100の表面から中心に向かった深さ3nmまで、つまり最表面層100cに存在することが好ましく、深さ1nmまでに存在することがより好ましく、深さ0.5nmまでに存在することがさらに好ましい。
なお、全ての添加物が同様の濃度分布でなくてもよい。たとえば正極活物質100が添加物としてアルミニウムを有する場合はマグネシウムおよびフッ素と若干異なる分布となっていることが好ましい。たとえばEDX線分析をしたとき、表面近傍領域100aのアルミニウム濃度のピークよりも、マグネシウム濃度のピークが表面に近いことが好ましい。例えばアルミニウム濃度のピークは正極活物質100の表面から中心に向かった深さ0.5nm以上50nm以下に存在することが好ましく、深さ5nm以上30nm以下に存在することがより好ましい。または0.5nm以上30nm以下に存在することが好ましい。または5nm以上50nm以下に存在することが好ましい。
なおEDX線分析結果における正極活物質100の表面は、たとえば以下のように推定することができる。正極活物質100の内部領域100bにおいて均一に存在する元素、たとえば酸素またはコバルト等の遷移金属について、内部領域の検出量の1/2となった点を表面とする。
正極活物質100は複合酸化物であるので、酸素の検出量を用いて表面を推定することが好ましい。具体的には、まず内部領域100bの酸素の検出量が安定している領域から酸素濃度の平均値Oaveを求める。このとき表面より外に化学吸着またはバックグラウンドによると考えられる酸素Obackgroundが検出される場合は、測定値からObackgroundを減じて酸素濃度の平均値Oaveとすることができる。この平均値Oaveの1/2の値、つまり1/2Oaveに最も近い測定値を示した測定点を、正極活物質の表面であると推定することができる。
よって、正極活物質100が有する遷移金属を用いても表面を推定することができる。たとえば遷移金属の95%以上がコバルトである場合は、コバルトの検出量を用いて上記と同様に表面を推定することができる。または複数の遷移金属の検出量の和を用いて同様に推定することができる。遷移金属の検出量は化学吸着の影響を受けにくいため、表面の推定に好適である。
また正極活物質100について線分析または面分析をしたとき、結晶粒界101近傍における添加物Iと遷移金属Mの比(I/M)は0.020以上0.50以下が好ましい。さらには0.025以上0.30以下が好ましい。さらには0.030以上0.20以下が好ましい。または020以上0.30以下が好ましい。または020以上0.20以下が好ましい。または025以上0.50以下が好ましい。または025以上0.20以下が好ましい。または0.030以上0.50以下が好ましい。または0.030以上0.30以下が好ましい。
たとえば添加物がマグネシウム、遷移金属がコバルトであるときは、マグネシウムとコバルトの原子数の比(Mg/Co)は、0.020以上0.50以下が好ましい。さらには0.025以上0.30以下が好ましい。さらには0.030以上0.20以下が好ましい。または020以上0.30以下が好ましい。または020以上0.20以下が好ましい。または025以上0.50以下が好ましい。または025以上0.20以下が好ましい。または0.030以上0.50以下が好ましい。または0.030以上0.30以下が好ましい。
<結晶構造>
コバルト酸リチウム(LiCoO2)などの層状岩塩型の結晶構造を有する材料は、放電容量が高く、二次電池の正極活物質として優れることが知られている。
遷移金属化合物におけるヤーン・テラー効果は、遷移金属のd軌道の電子の数により、その効果の強さが異なることが知られている。
ニッケルを有する化合物においては、ヤーン・テラー効果により歪みが生じやすい場合がある。よって、LiNiO2において高電圧における充放電を行った場合、歪みに起因する結晶構造の崩れが生じる懸念がある。LiCoO2においてはヤーン・テラー効果の影響が小さいことが示唆され、高電圧で充電されたときの耐性がより優れる場合があり好ましい。
図9乃至図12を用いて、正極活物質について説明する。図9乃至図12では、正極活物質が有する遷移金属Mとしてコバルトを用いる場合について述べる。
<従来の正極活物質>
図11に示す正極活物質は、後述する作製方法にてフッ素およびマグネシウムが添加されないコバルト酸リチウム(LiCoO2)である。図11に示すコバルト酸リチウムは、非特許文献1および非特許文献2等で述べられているように、充電深度によって結晶構造が変化する。
図11に示すように、充電深度0(放電状態)であるコバルト酸リチウムは、空間群R-3mの結晶構造を有する領域を有し、ユニットセル中にCoO2層が3層存在する。そのためこの結晶構造を、O3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、CoO2層とはコバルトに酸素が6配位した8面体構造が、稜共有の状態で平面に連続した構造をいうこととする。
また充電深度1のときは、空間群P-3m1の結晶構造を有し、ユニットセル中にCoO2層が1層存在する。そのためこの結晶構造を、O1型結晶構造と呼ぶ場合がある。
また充電深度が0.88程度のときのコバルト酸リチウムは、空間群R-3mの結晶構造を有する。この構造は、P-3m1(O1)のようなCoO2の構造と、R-3m(O3)のようなLiCoO2の構造と、が交互に積層された構造ともいえる。そのためこの結晶構造を、H1-3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、実際にはH1-3型結晶構造は、ユニットセルあたりのコバルト原子の数が他の構造の2倍となっている。しかし図11をはじめ本明細書では、他の構造と比較しやすくするためH1-3型結晶構造のc軸をユニットセルの1/2にした図で示すこととする。
H1-3型結晶構造は一例として、非特許文献3に記載があるように、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0、0、0.42150±0.00016)、O1(0、0、0.27671±0.00045)、O2(0、0、0.11535±0.00045)と表すことができる。O1およびO2はそれぞれ酸素原子である。このようにH1-3型結晶構造は、1つのコバルトおよび2つの酸素を用いたユニットセルにより表される。一方、後述するように、本発明の一態様の擬スピネル型の結晶構造は好ましくは、1つのコバルトおよび1つの酸素を用いたユニットセルにより表される。これは、擬スピネルの構造の場合とH1-3型構造の場合では、コバルトと酸素との対称性が異なり、擬スピネルの構造の方が、H1-3型構造に比べてO3の構造からの変化が小さいことを示す。正極活物質が有する結晶構造をいずれのユニットセルを用いて表すのがより好ましいか、の選択は例えば、XRDのリートベルト解析において、GOF(good of fitness)の値がより小さくなるように選択すればよい。
充電電圧がリチウム金属の酸化還元電位を基準に4.6V以上になるような高電圧の充電、あるいは充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電と、放電とを繰り返すと、コバルト酸リチウムはH1-3型結晶構造と、放電状態のR-3m(O3)の構造と、の間で結晶構造の変化(つまり、非平衡な相変化)を繰り返すことになる。
しかしながら、これらの2つの結晶構造は、CoO2層のずれが大きい。図11に点線および矢印で示すように、H1-3型結晶構造では、CoO2層がR-3m(O3)から大きくずれている。このようなダイナミックな構造変化は、結晶構造の安定性に悪影響を与えうる。
さらに体積の差も大きい。同数のコバルト原子あたりで比較した場合、H1-3型結晶構造と放電状態のO3型結晶構造の体積の差は3.0%以上である。
加えて、H1-3型結晶構造が有する、P-3m1(O1)のようなCoO2層が連続した構造は不安定である可能性が高い。
そのため、高電圧の充放電を繰り返すとコバルト酸リチウムの結晶構造は崩れていく。結晶構造の崩れが、サイクル特性の悪化を引き起こす。これは、結晶構造が崩れることで、リチウムが安定して存在できるサイトが減少し、またリチウムの挿入脱離が難しくなる。
<本発明の一態様の正極活物質>
本発明の一態様の正極活物質100は、高電圧の充放電の繰り返しにおいて、CoO2層のずれを小さくすることができる。さらに、体積の変化を小さくすることができる。よって、本発明の一態様の正極活物質は、優れたサイクル特性を実現することができる。また、本発明の一態様の正極活物質は、高電圧の充電状態において安定な結晶構造を取り得る。よって、本発明の一態様の正極活物質は、高電圧の充電状態を保持した場合において、ショートが生じづらい場合がある。そのような場合には安全性がより向上するため、好ましい。
本発明の一態様の正極活物質では、十分に放電された状態と、高電圧で充電された状態における、結晶構造の変化および同数の遷移金属原子あたりで比較した場合の体積の差が小さい。
正極活物質100の充放電前後の結晶構造を、図9に示す。正極活物質100はリチウムと、遷移金属Mとしてコバルトと、酸素と、を有する複合酸化物である。上記に加えて添加物としてマグネシウムを有することが好ましい。またフッ素を有することが好ましい。
図9の充電深度0(放電状態)の結晶構造は、図11と同じR-3m(O3)である。一方、正極活物質100は、十分に充電された充電深度の場合、H1-3型結晶構造とは異なる構造の結晶を有する。本構造は、空間群R-3mであり、スピネル型結晶構造ではないものの、コバルト、マグネシウム等のイオンが酸素6配位位置を占め、陽イオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する。よって、本構造を本明細書等では擬スピネル型の結晶構造と呼ぶ。また図9ではリチウムが全てのリチウムサイトに同じ確率で存在するように示したが、本発明の一態様の正極活物質はこれに限らない。一部のリチウムサイトに偏って存在していてもよい。例えば空間群P2/mに属するLi0.5CoO2のように、整列した一部のリチウムサイトに存在していてもよい。リチウムの分布は、たとえば中性子回折により分析することができる。また、O3型結晶構造および擬スピネル型の結晶構造のいずれの場合も、CoO2層の間、つまりリチウムサイトに、希薄にマグネシウムが存在することが好ましい。また、酸素サイトに、ランダムかつ希薄に、フッ素が存在することが好ましい。
なお、擬スピネル型の結晶構造は、リチウムなどの軽元素は酸素4配位位置を占める場合があり、この場合もイオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する。
また擬スピネル型の結晶構造は、層間にランダムにLiを有するもののCdCl2型の結晶構造に類似する結晶構造であるということもできる。このCdCl2型に類似した結晶構造は、ニッケル酸リチウムを充電深度0.94まで充電したとき(Li0.06NiO2)の結晶構造と近いが、純粋なコバルト酸リチウム、またはコバルトを多く含む層状岩塩型の正極活物質では通常この結晶構造を取らないことが知られている。
本発明の一態様の正極活物質100では、高電圧で充電し多くのリチウムが離脱したときの、結晶構造の変化が、従来の正極活物質よりも抑制されている。例えば、図9中に点線で示すように、これらの結晶構造ではCoO2層のずれがほとんどない。
より詳細に説明すれば、本発明の一態様の正極活物質100は、充電電圧が高い場合にも構造の安定性が高い。例えば、従来の正極活物質においてはH1-3型結晶構造となる充電電圧、例えばリチウム金属の電位を基準として4.6V程度の電圧においてもR-3m(O3)の結晶構造を保持できる充電電圧の領域が存在し、さらに充電電圧を高めた領域、例えばリチウム金属の電位を基準として4.65V乃至4.7V程度の電圧においても擬スピネル型の結晶構造を取り得る領域が存在する。さらに充電電圧を高めるとようやく、H1-3型結晶が観測される場合がある。なお、二次電池において例えば負極活物質として黒鉛を用いる場合には、例えば二次電池の電圧が4.3V以上4.5V以下においてもR-3m(O3)の結晶構造を保持できる充電電圧の領域が存在し、さらに充電電圧を高めた領域、例えばリチウム金属の電位を基準として4.35V以上4.55V以下においても擬スピネル型の結晶構造を取り得る領域が存在する。
そのため、本発明の一態様の正極活物質100においては、高電圧で充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくい。
なお擬スピネル型の結晶構造は、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0,0,0.5)、O(0,0,x)、0.20≦x≦0.25の範囲内で示すことができる。
CoO2層間、つまりリチウムサイトにランダムかつ希薄に存在する添加物、たとえばマグネシウムは、高電圧で充電したときにCoO2層のずれを抑制する効果がある。そのためCoO2層間にマグネシウムが存在すると、擬スピネル型の結晶構造になりやすい。そのためマグネシウムは本発明の一態様の正極活物質100の全体(つまり表面近傍領域100aおよび内部領域100b)に適度な濃度で分布していることが好ましい。またマグネシウムを全体に分布させるために、本発明の一態様の正極活物質100の作製工程において、加熱処理を行うことが好ましい。
しかしながら、加熱処理の温度が高すぎると、カチオンミキシングが生じて添加物、たとえばマグネシウムがコバルトサイトに入る可能性が高まる。コバルトサイトに存在するマグネシウムは、高電圧充電時においてR-3mの構造を保つ効果がない。さらに、加熱処理の温度が高すぎると、コバルトが還元されて2価になってしまう、リチウムが蒸散するなどの悪影響も懸念される。
そこで、マグネシウムを全体に分布させるための加熱処理よりも前に、コバルト酸リチウムにフッ素化合物等のハロゲン化合物を加えておくことが好ましい。ハロゲン化合物を加えることでコバルト酸リチウムの融点降下が起こる。融点降下させることで、カチオンミキシングが生じにくい温度で、マグネシウムを粒子全体に分布させることが容易となる。さらにフッ素化合物が存在すれば、電解質が分解して生じたフッ酸に対する耐食性が向上することが期待できる。
なお、マグネシウム濃度を所望の値以上に高くすると、結晶構造の安定化への効果が小さくなってしまう場合がある。マグネシウムが、リチウムサイトに加えて、コバルトサイトにも入るようになるためと考えられる。本発明の一態様の正極活物質が有するマグネシウムの原子数は、遷移金属Mの原子数の0.001倍以上0.1倍以下が好ましく、0.01より大きく0.04未満がより好ましく、0.02程度がさらに好ましい。または0.001倍以上0.04未満が好ましい。または0.01以上0.1以下が好ましい。ここで示すマグネシウムの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の粒子全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
図9中の凡例に示すように、ニッケル、マンガンをはじめとする遷移金属およびアルミニウムはコバルトサイトに存在することが好ましいが、一部がリチウムサイトに存在していてもよい。またマグネシウムはリチウムサイトに存在することが好ましい。酸素は、一部がフッ素と置換されていてもよい。
本発明の一態様の正極活物質のマグネシウム濃度が高くなるのに伴って正極活物質の充放電容量が減少することがある。その要因として例えば、リチウムサイトにマグネシウムが入ることにより、充放電に寄与するリチウム量が減少する可能性がある。また、過剰なマグネシウムが、充放電に寄与しないマグネシウム化合物を生成する場合もある。本発明の一態様の正極活物質がニッケルを有することにより、重量あたりおよび体積あたりの充放電容量を高めることができる場合がある。また本発明の一態様の正極活物質がアルミニウムを有することにより、重量あたりおよび体積あたりの充放電容量を高めることができる場合がある。また本発明の一態様の正極活物質がニッケルおよびアルミニウムを有することにより、重量あたりおよび体積あたりの充放電容量を高めることができる場合がある。
以下に、本発明の一態様の正極活物質が有するニッケルおよびアルミニウムの元素の濃度を、原子数を用いて表す。
本発明の一態様の正極活物質が有するニッケルの原子数は、コバルトの原子数を100%としたとき、コバルトの原子数に対して0%を超えて7.5%以下が好ましく、0.05%以上4%以下が好ましく、0.1%以上2%以下がより好ましい。または0%を超えて4%以下が好ましい。または0%を超えて2%以下が好ましい。または0.05%以上7.5%以下が好ましい。または0.05%以上2%以下が好ましい。または0.1%以上7.5%以下が好ましい。または0.1%以上4%以下が好ましい。ここで示すニッケルの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の粒子全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
本発明の一態様の正極活物質が有するアルミニウムの原子数は、コバルトの原子数を100%としたとき、コバルトの原子数に対して0.05%以上4%以下が好ましく、0.1%以上2%以下がより好ましい。または0.05%以上2%以下が好ましい。または0.1%以上4%以下が好ましい。ここで示すアルミニウムの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の粒子全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
マグネシウムは本発明の一態様の正極活物質100の全体(つまり表面近傍領域100aおよび内部領域100b)に分布していることが好ましいが、これに加えて上述したように表面近傍領域100aの添加物およびフッ素の濃度が、粒子全体の平均よりも高いことが好ましい。より具体的には、XPS等で測定される表面近傍領域100aの添加物およびフッ素の濃度が、ICP-MS等で測定される粒子全体の平均の添加物およびフッ素の濃度よりも高いことが好ましい。
本発明の一態様の正極活物質100が有する添加物およびフッ素の一部は図1(A)に示すように結晶粒界101に偏析していることがより好ましい。
換言すれば、本発明の一態様の正極活物質100の結晶粒界101およびその近傍の添加物およびフッ素の濃度は、内部の他の領域よりも高いことが好ましい。
結晶粒界101は面欠陥の一つである。そのため粒子表面と同様不安定になりやすく結晶構造の変化が始まりやすい。そのため、結晶粒界101およびその近傍の添加物およびフッ素の濃度が高ければ、結晶構造の変化をより効果的に抑制することができる。
また、結晶粒界およびその近傍の添加物およびフッ素の濃度が高い場合、本発明の一態様の正極活物質100の粒子の結晶粒界101に沿ってクラックが生じた場合でも、クラックにより生じた表面の近傍で添加物およびフッ素の濃度が高くなる。そのためクラックが生じた後の正極活物質においてもフッ酸に対する耐食性を高めることができる。
なお本明細書等において、結晶粒界101の近傍とは、粒界から10nm程度までの領域をいうこととする。
≪粒径≫
本発明の一態様の正極活物質100の粒径は、大きすぎるとリチウムの拡散が難しくなる、集電体に塗工したときに活物質層の表面が粗くなりすぎる、等の問題がある。一方、小さすぎると、集電体への塗工時に活物質層を担持しにくくなる、電解質との反応が過剰に進む等の問題点も生じる。そのため、平均粒子径(D50:メディアン径ともいう。)が、
1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下がさらに好ましい。または1μm以上40μm以下が好ましい。または1μm以上30μm以下が好ましい。または2μm以上100μm以下が好ましい。または2μm以上30μm以下が好ましい。または5μm以上100μm以下が好ましい。または5μm以上40μm以下が好ましい。
また、2つ以上の異なる粒径を有する正極活物質100を混合して用いてもよい。換言すれば、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定したとき複数のピークが生じる正極活物質を用いてもよい。このとき、粉体パッキング密度が大きくなるような混合比とすると、二次電池の体積あたりの容量を向上させることができ好ましい。
<分析方法>
ある正極活物質が、高電圧で充電されたとき擬スピネル型の結晶構造を示す本発明の一態様の正極活物質100であるか否かは、高電圧で充電された正極を、XRD、電子回折、中性子回折、電子スピン共鳴(ESR)、核磁気共鳴(NMR)等を用いて解析することで判断できる。特にXRDは、正極活物質が有するコバルト等の遷移金属の対称性を高分解能で解析できる、結晶性の高さおよび結晶の配向性を比較できる、格子の周期性歪みおよび結晶子サイズの解析ができる、二次電池を解体して得た正極をそのまま測定しても十分な精度を得られる、等の点で好ましい。
本発明の一態様の正極活物質100は、これまで述べたように高電圧で充電した状態と放電状態とで結晶構造の変化が少ないことが特徴である。高電圧で充電した状態で、放電状態との変化が大きな結晶構造が50wt%以上を占める材料は、高電圧の充放電に耐えられないため好ましくない。そして添加物およびフッ素を添加するだけでは目的の結晶構造をとらない場合があることに注意が必要である。例えばマグネシウムおよびフッ素を有するコバルト酸リチウム、という点で共通していても、高電圧で充電した状態でH1-3型の面積強度IH1-3が70%を超える場合と、そうでない場合がある。また、所定の電圧では、擬スピネル型の結晶構造がほぼ100wt%になり、さらに当該所定の電圧をあげるとH1-3型結晶構造が生じる場合もある。そのため、本発明の一態様の正極活物質100であるか否かを判断するには、XRDをはじめとする結晶構造についての解析が必要である。
ただし、高電圧で充電した状態または放電状態の正極活物質は、大気に触れると結晶構造の変化を起こす場合がある。例えば擬スピネル型の結晶構造からH1-3型結晶構造に変化する場合がある。そのため、サンプルはすべてアルゴン雰囲気等の不活性雰囲気でハンドリングすることが好ましい。
≪充電方法≫
ある複合酸化物が、本発明の一態様の正極活物質100であるか否かを判断するための高電圧充電は、例えば対極リチウムでコインセル(CR2032タイプ、直径20mm高さ3.2mm)を作製して充電することができる。
より具体的には、正極には、正極活物質、導電助剤およびバインダを混合したスラリーを、アルミニウム箔の正極集電体に塗工したものを用いることができる。
対極にはリチウム金属を用いることができる。なお対極にリチウム金属以外の材料を用いたときは、二次電池の電圧と正極の電位が異なる。本明細書等における電圧および電位は、特に言及しない場合、正極の電位である。
溶媒である第1の電解質に混合する第2の電解質には、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用い、第1の電解質には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)がEC:DEC=3:7(体積比)、ビニレンカーボネート(VC)が2wt%で混合されたものを用いることができる。
セパレータには厚さ25μmのポリプロピレン多孔質フィルムを用いることができる。
正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いることができる。
上記条件で作製したコインセルを、4.6V、0.5Cで定電流充電し、その後電流値が0.01Cとなるまで定電圧充電する。なおここでは1Cは137mA/gとする。そのためコインセル一個の正極の活物質量が10mgであった場合、0.685mAで充電することに相当する。正極活物質の相変化を観測するためには、このような小さい電流値で充電を行うことが望ましい。温度は25℃とする。このようにして充電した後に、コインセルをアルゴン雰囲気のグローブボックス中で解体して正極を取り出せば、高電圧で充電された正極活物質を得られる。この後に各種分析を行う際、外界成分との反応を抑制するため、解体した正極をアルゴン雰囲気で密封することが好ましい。例えばXRDは、解体した正極をアルゴン雰囲気のXRD測定用密閉容器内に封入して行うことができる。
≪XRD≫
擬スピネル型の結晶構造と、H1-3型結晶構造のモデルから計算される、CuKα1線による理想的な粉末XRDパターンを図10および図12に示す。また比較のため充電深度0のLiCoO2(O3)と、充電深度1のCoO2(O1)の結晶構造から計算される理想的なXRDパターンも示す。なお、LiCoO2(O3)およびCoO2(O1)のパターンはICSD(Inorganic Crystal Structure Database)(非特許文献5参照)より入手した結晶構造情報からMaterials Studio(BIOVIA)のモジュールの一つである、Reflex Powder Diffractionを用いて作成した。2θの範囲は15°から75°とし、Step size=0.01、波長λ1=1.540562×10-10m、λ2は設定なし、Monochromatorはsingleとした。H1-3型結晶構造のパターンは非特許文献3に記載の結晶構造情報から同様に作成した。擬スピネル型の結晶構造のパターンは本発明の一態様の正極活物質のXRDパターンから結晶構造を推定し、TOPAS ver.3(Bruker社製結晶構造解析ソフトウェア)を用いてフィッティングし、他と同様にXRDパターンを作成した。
図10に示すように、擬スピネル型の結晶構造では、2θ=19.30±0.20°(19.10°以上19.50°以下)、および2θ=45.55±0.10°(45.45°以上45.65°以下)に回折ピークが出現する。より詳しく述べれば、2θ=19.30±0.10°(19.20°以上19.40°以下)、および2θ=45.55±0.05°(45.50°以上45.60以下)に鋭い回折ピークが出現する。しかし図12に示すように、H1-3型結晶構造およびCoO2(P-3m1、O1)ではこれらの位置にピークは出現しない。そのため、高電圧で充電された状態で2θ=19.30±0.20°、および2θ=45.55±0.10°のピークが出現することは、本発明の一態様の正極活物質100の特徴であるといえる。
これは、充電深度0の結晶構造と、高電圧充電したときの結晶構造で、XRDの回折ピークが出現する位置が近いということもできる。より具体的には、両者の主な回折ピークのうち2つ以上、より好ましくは3つ以上において、ピークが出現する位置の差が、2θ=0.7以下、より好ましくは2θ=0.5以下であるということができる。
またXRDパターンにおける回折ピークの鋭さは結晶性の高さを示す。そのため、充電後の各回折ピークは鋭い、すなわち半値幅が狭い方が好ましい。半値幅は、同じ結晶相から生じたピークでも、XRDの測定条件や2θの値によっても異なる。上述した測定条件の場合は、2θ=43°以上46°以下に観測されるピークにおいて、半値幅は例えば0.2°以下が好ましく、0.15°以下がより好ましく、0.12°以下がさらに好ましい。なお必ずしも全てのピークがこの要件を満たしていなくてもよい。一部のピークがこの要件を満たせば、その結晶相の結晶性が高いことがいえる。そのため十分に充電後の結晶構造の安定化に寄与する。
なお、本発明の一態様の正極活物質100は高電圧で充電したとき擬スピネル型の結晶構造を有するが、粒子のすべてが擬スピネル型の結晶構造でなくてもよい。他の結晶構造を含んでいてもよいし、一部が非晶質であってもよい。
たとえば4.6V充電したときのH1-3型と擬スピネル型のピークの面積強度比を比較して、H1-3型が一定以下であればよい。またはH1-3型のピークの面積強度比と、擬スピネル型およびLiCoO2のO3型のピークの面積強度比が一定以上であればよい。
たとえばH1-3型は2θ=19.69°±0.2°に(006)面に相当するピークが観測される。また擬スピネル型およびLiCoO2のO3型は2θ=19.30±0.20°に(003)面に相当するピークが観測される。そのため2θが18°以上20°以下の範囲の面積強度のうち、19.30°以下が擬スピネル型およびO3型のピークの面積強度であると考えることができる。これらの面積強度比IH1-3(006)/I擬スピネル+O3(003)が70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。このような面積強度比であると、十分に充放電サイクル特性に優れた正極活物質とすることができる。
またH1-3型は2θ=43.83°±0.2°に(107)面に相当するピークが観測される。また擬スピネル型およびO3型は2θ=45.55°±0.2°に(104)面に相当するピークが観測される。そのため2θが43°以上46°以下の範囲の面積強度のうち、44.50°以上を擬スピネル型およびO3型のピークの面積強度であると考えることができる。これらの面積強度比IH1-3(107)/I擬スピネル+O3(104)が50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。このような面積強度比であると、十分に充放電サイクル特性に優れた正極活物質とすることができる。H1-3型の(107)面および擬スピネル型の(104)面に相当するピークは他のピークとの分離がしやすく、ピーク強度比の比較に好適である。
また、正極活物質の粒子が有する擬スピネル型の結晶構造の結晶子サイズは、放電状態のLiCoO2(O3)の1/10程度までしか低下しない。そのため、充放電前の正極と同じXRDの測定条件であっても、高電圧充電後に明瞭な擬スピネル型の結晶構造のピークが確認できる。一方単純なLiCoO2では、一部が擬スピネル型の結晶構造に似た構造を取りえたとしても、高電圧充電によって結晶子サイズが小さくなり、XRDピークはブロードで小さくなる。結晶子サイズは、XRDピークの半値幅から求めることができる。
本発明の一態様の正極活物質においては、前述の通り、ヤーン・テラー効果の影響が小さいことが好ましい。本発明の一態様の正極活物質は、層状岩塩型の結晶構造を有し、遷移金属としてコバルトを主として有することが好ましい。また、本発明の一態様の正極活物質において、ヤーン・テラー効果の影響が小さい範囲であれば、コバルトの他に、先に述べた添加物、ニッケルおよびマンガンを有してもよい。
なお粉体XRDパターンに出現するピークは、正極活物質100の体積の大半を占める、正極活物質100の内部領域100bの結晶構造を反映したものである。表面近傍領域100aの結晶構造は、正極活物質100の断面の電子回折等で分析することができる。
≪EPMA≫
EPMA(電子プローブ微小分析)は元素の定量が可能である。面分析ならば各元素の分布を分析することができる。
EPMAでは表面から約1μm程度の深さまでの領域を分析する。そのため、各元素の濃度は他の分析法を用いた測定結果と異なる場合がある。たとえば正極活物質100の表面分析を行ったとき、表面近傍領域に存在する添加物の濃度が、XPSの結果より低くなる場合がある。また表面近傍領域に存在する添加物の濃度が、ICP-MSの結果または正極活物質の作製の過程における原料の配合の値より高くなる場合がある。
本発明の一態様の正極活物質100の断面についてEPMA面分析をしたとき、添加物の濃度が内部領域から表面近傍領域に向かって高くなる濃度勾配を有することが好ましい。より詳細には、図2(B1)に示すようにマグネシウム、フッ素、チタン、ケイ素は内部領域から表面に向かって高くなる濃度勾配を有することが好ましい。また図3(C2)に示すようにアルミニウムは上記元素の濃度のピークよりも深い領域に濃度のピークを有することが好ましい。アルミニウム濃度のピークは表面近傍領域に存在してもよいし、表面近傍領域より深くてもよい。
なお本発明の一態様の正極活物質の表面および表面近傍領域には、正極活物質作製後に化学吸着した炭酸、ヒドロキシ基等は含まないとする。また正極活物質の表面に付着した電解質、バインダ、導電材、またはこれら由来の化合物も含まないとする。そのため正極活物質が有する元素を定量するときは、XPSおよびEPMAをはじめとする表面分析で検出されうる炭素、水素、過剰な酸素、過剰なフッ素等を除外する補正をしてもよい。
≪表面粗さと比表面積≫
本発明の一態様の正極活物質100は、表面がなめらかで凹凸が少ないことが好ましい。表面がなめらかで凹凸が少ないことは、表面近傍領域100aにおける添加物の分布が良好であることを示す一つの要素である。
表面がなめらかで凹凸が少ないことは、たとえば正極活物質100の断面SEM像または断面TEM像、正極活物質100の比表面積等から判断することができる。
たとえば以下のように、正極活物質100の断面SEM像から表面のなめらかさを数値化することができる。
まず正極活物質100をFIB等により加工して断面を露出させる。このとき保護膜、保護剤等で正極活物質100を覆うことが好ましい。次に保護膜等と正極活物質100との界面のSEM像を撮影する。該SEM像に画像処理ソフトでノイズ処理を行う。たとえばガウスぼかし(σ=2)を行った後、二値化を行う。さらに画像処理ソフトで界面抽出を行う。さらにmagic handツール等で保護膜等と正極活物質100との界面ラインを選択し、データを表計算ソフト等に抽出する。表計算ソフト等の機能を用いて、回帰曲線(二次回帰)から補正を行い、傾き補正後データからラフネス算出用パラメータを求め、標準偏差を算出した二乗平均平方根表面粗さ(RMS)を求めた。また、この表面粗さは、正極活物質は少なくとも粒子外周の400nmにおける表面粗さである。
本実施の形態の正極活物質100の粒子表面においては、ラフネスの指標である粗さ(RMS:二乗平均平方根表面粗さ)は3nm未満、好ましくは1nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満の二乗平均平方根表面粗さ(RMS)であることが好ましい。
なおノイズ処理、界面抽出等を行う画像処理ソフトについては特に限定されないが、たとえば「ImageJ」を用いることができる。また表計算ソフト等についても特に限定されないが、たとえばMicrosoft Office Excelを用いることができる。
またたとえば、定容法によるガス吸着法にて測定した実際の比表面積ARと、理想的な比表面積Aiとの比からも、正極活物質100の表面のなめらかさを数値化することができる。
理想的な比表面積Aiは、すべての粒子の直径がD50と同じであり、重量が同じであり、形状は理想的な球であるとして計算して求める。
メディアン径D50は、レーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計等によって測定することができる。比表面積は、たとえば定容法によるガス吸着法を用いた比表面積測定装置等によって測定することができる。
本発明の一態様の正極活物質100は、メディアン径D50から求めた理想的な比表面積Aiと、実際の比表面積ARの比AR/Aiが2以下であることが好ましい。
本発明の一態様の正極活物質100を用いて二次電池を作製した場合において、充電時の、集電体近傍の模式図を図4(A)に示す。
図4は、集電体と、正極活物質100と、導電助剤としてグラフェンを図示している。電界緩和領域103は、正極活物質100表面近傍に点在または散在しているため、集電体と、該集電体と接するグラフェンと、該グラフェンと接する正極活物質100とで電子のやり取りを行うことができる。また、正極活物質100には電界緩和領域103が設けられており、電界緩和領域103は、正極活物質100と、該正極活物質100と隣接する電解質との間に強い電位差が生じることを軽減することができる。従って、正極活物質100と電解質の間に電界緩和領域103を形成することで高電位において電気化学的に安定である二次電池を実現することができる。
電解質を用いるリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解質と、外装体とを有する。なお、リチウムイオン二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
また、図4(B)は、充電時におけるリチウムイオン二次電池の模式断面図である。
図4(B)に示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池1400が充電される。蓄電池1400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。図4(B)では、蓄電池1400の外部の端子から、正極1402の方へ流れ、蓄電池1400の中において、正極1402から負極1404の方へ流れ、負極から蓄電池1400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。
充電では負極にリチウムイオンが溜まる。負極の充電容量は正極よりも大きいことが求められる。第1段階として、リチウムイオンが負極、電解質、正極の順に放電で動く。第2段階として、電子が負極、正極の順に外部回路で動く。電流が正極から負極に流れる。第3段階として正極側にリチウムイオンが集まってきて、LCO、MCNなどの部材中で外部から電子が電極経由、グラフェン、CNTなどの導電助剤を経由して正極部材に放出され、この電子とイオン化してリチウムイオンとが中和する。第4段階として、リチウムイオンと電子とが中性化し、そのリチウムが正極部材中に拡散して入る。この入り方が必ずしも均一にならないことが大きな問題を引き起こす。例えば、急速の放電では、正極部材の一部にリチウムイオンが入り、不均一な状態になる可能性がある。また、正極活物質層の集電体付近では、電子は多く集まる。正極活物質層にはグラフェン、CNTなどの導電助剤が散在している。従って、正極活物質層の空隙に粘度の低い電解質を入れ、リチウムイオンの移動をスムーズにさせるという対策もとりえる。
正極に大電圧を加えると正極は高電位側、負極は低電位側になる。リチウムイオンが正極から脱離するとき、電子はグラフェン、CNTなどの導電助剤を介して外部回路へと動く。リチウムイオンは電解質へと溶け出す。リチウムイオンの拡散が行われると、その場所では結晶はそれなりに膨れる。加えて、電解質との間に電位ポテンシャルができる。正極部材中にリチウムイオンがたくさん入ると、正極部材自体が膨れるのに加えて、このコバルト元素などが酸素と反応(バルクと分散)して電解質に電界ドリフトにより溶け出す。強誘電性を有せしめる材料が電界緩和をしてコバルト等が電解質中へ溶け出すことをブロックする作用が期待できる。充電が大きくなると、この正極・電解質界面には、高い電位差(ポテンシャル)ができる。強誘電性を有せしめる材料をシェルとして設ける、または強誘電性を有せしめる材料を表面に点在または散在させることで高い電位差を緩和させる。
強誘電性を有せしめる材料をシェルとして設けたシェル構造とするためには、強誘電性を有せしめる材料をコーティングする技術が重要である。強誘電性を有せしめる材料によって高い電位差を緩和させると、正極・電解質界面での電位差が低減される。よって、コバルトなどの溶出がなくなる、或いは減らすことができる。充電電圧4.7以上、さらに5.0V以上に充電して、LCOのひずみが大きくなっても、電位差がLCO表面にないと、外側の電解質側へ溶出してゆけない。
強誘電性を有せしめる材料としては、例えば、HfZrOX(X>0)や、HfZrOX(X>0)を用いることができる。強誘電性を有せしめる材料としては、2層構造、多層構造、アロイ構造(合金構造)またはこれらの混合または組み合わせがあり得る。ZrOX(X>0)系は、合金化させたほうが安定する。
局部的に正極部材の表面に強誘電性を有せしめる材料があっても、それなりの電界緩和をその周囲にして、正極部材と電解質の間に電界緩和領域を作り得る。よって、それなりに高電圧での充電はできる。また、局部的に網の目状、碁盤の目のように局在化していても、強誘電性を有せしめる材料を複数設け、その電界緩和をする領域の隙間からリチウムイオンを自由に出入りさせうる構成としてもよい。
劣化するとLCO自体の結晶が壊れ、コバルトなどが電解質に溶けだす問題がある。シェルの外側に、グラフェン、CNTなどの導電助剤が密接していると、放電で正極は最も大きくなり、結晶も膨らみ、破壊されやすい。特に85℃などの高温下において、Co-O結合は弱くなるためである。よって、壊れた正極部材料に外方拡散させないために、正極部材と電解質の間にεSの大きい、特に強誘電性を有せしめる材料が介在して電界緩和をするのが好ましい。電界緩和する領域を設けることによって、コバルトの溶出を抑えることができる。
強誘電性を有せしめる材料の誘電率εSは、10以上、好ましくは15以上、5000未満とする。強誘電性を有せしめる材料は、LCOやNCMなどの正極材料に接する、または近接させる。強誘電性を有せしめる材料の誘電率εSが相対的に大きいと定着し、電界緩和ができる。よって、特に誘電率が高いほうが好ましい。
強誘電性を有せしめる材料は、無機化合物であり、正極活物質の内部よりも大きい誘電率を有し、充放電でリチウムイオンの貯蔵機能の積極的に有していない、非導電材料として定着することもできる。
強誘電性を有せしめる材料を形成する前に、正極粒子に欠陥、クラックなどが入っていてもよいし、またこれらに補強用の添加元素であるMg、Al、Fを局在させ、さらに欠陥のクラックを増大させないようにすることは有効である。それらを覆って強誘電性を有せしめる材料を被覆または点在または散在させて付着させる。これらの表面に強誘電性を有せしめる材料を電解質と接する側に設けて、電解質と接する側での電界緩和をすることで、正極の劣化元素(Co、Ni、Mn、O等)が電界損傷で電解質に溶けだすのを防ぐ、または減少させる。強誘電性を有せしめる材料を用いてシェル構造とする場合、粒径の大きい粒子と小さい粒子が散在して、正極において、より大きい粒子に付着している方が正極部材自体より損傷されづらくなり好ましい。
また、正極内部にリチウムイオンを含む電解質が存在する隙間(スペース)があり、ここからリチウムイオンが正極粒子に注入される。このため、このスペースからのリチウムイオンの出入りを頻繁に行う部位に強誘電性を有せしめる材料を設け、電界緩和させる構造とすることが好ましい。
LCOや、MCNなどの正極部材は強誘電性を有せしめる材料を用いて、局部的、または全体的に付着またはコートさせることは、充放電時の破壊を抑え、高耐圧化させるために有効である。
本実施の形態では、リチウムイオン二次電池の例を示すが、リチウムイオン二次電池に限定されず、リチウムにかえて、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を用いる二次電池に適用することもできる。
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。
また、負極にシリコンを用いる場合は、アモルファスで弾力性のある保護膜が好ましい。例えば、アモルファス状態のSiOXとグラフェンとの組み合わせが好ましい。
また、二次電池は、短絡を防ぐため、セパレータを有する構成としてもよい。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
また、正極活物質層や負極活物質層を形成する場合に、スラリーを用い、集電体上に塗布する。スラリーとは、集電体550上に活物質層を形成するために用いる材料液であり、少なくとも活物質とバインダと溶媒を含有し、好ましくはさらに導電助剤を混合させたものを指している。スラリーは電極用スラリーや活物質スラリーと呼ばれることもあり、正極活物質層を形成する場合には正極用スラリーと呼ばれることもあり、負極活物質層を形成する場合には負極用スラリーと呼ばれることもある。
導電助剤は、導電付与剤、導電材とも呼ばれ、炭素材料が用いられる。複数の活物質の間に導電助剤を付着させることで複数の活物質同士が電気的に接続され、導電性が高まる。なお、「付着」とは、活物質と導電助剤が物理的に密着していることのみを指しているのではなく、共有結合が生じる場合、ファンデルワールス力により結合する場合、活物質の表面の一部を導電助剤が覆う場合、活物質の表面凹凸に導電助剤がはまりこむ場合、互いに接していなくとも電気的に接続される場合などを含む概念とする。
導電助剤として用いられる炭素材料として代表的なものにカーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、黒鉛など)がある。
二次電池の正極として、金属箔などの集電体と、活物質と、を固着させるために、バインダ(樹脂)を混合している。バインダは結着材とも呼ばれる。バインダは高分子材料であり、バインダを多く含ませると正極における活物質の割合が低下して、二次電池の放電容量が小さくなる。そこでバインダの量は最小限に混合させている。
また本明細書等においてバインダとは、活物質、導電材等を集電体上に結着するためのみに混合される高分子化合物をいう。たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料、フッ素ゴム、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンジエンポリマー等の材料をいう。
リチウムイオン導電性ポリマーは高分子化合物であるため、よく混合して正極活物質層に用いることで正極活物質および導電材を正極集電体上に結着することが可能となる。そのためバインダを使用しなくても正極を作製できる。バインダは充放電反応に寄与しない材料である。そのためバインダが少ないほど活物質、電解質等の充放電に寄与する材料を増やすことができる。そのため放電容量、またはサイクル特性等が向上した二次電池とすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示した正極活物質100とは異なる例として図1(B)に示す正極活物質104を以下に説明する。
正極活物質104は、内部に結晶粒界101を有し、表面近傍領域100aと、内部領域100bを有する。また、被覆膜(コーティング膜とも呼ぶ)となっている電界緩和領域103を有している。図1(B)では正極活物質100の表面全体に均一な膜厚を有する電界緩和領域103を示しているが、特に限定されず、部分的に薄い部分や、厚い部分があってもよい。
また、電界緩和領域103の厚さとしては、電界緩和領域103の部分の誘電率が高い場合には薄くしても十分に電界緩和機能を発揮できる。特に、電界緩和領域103を薄く形成する場合には、電界緩和領域103の形成前の被表面がなめらかで凹凸が少ないことが好ましい。被表面がなめらかで凹凸が少ない表面に電界緩和領域103を形成すると、その表面もまたなめらかで凹凸が少ない表面とすることができる。表面がつるつるしているように、なめらかで凹凸が少ないことは、たとえば正極活物質104の断面SEM像または断面TEM像、正極活物質104の比表面積等から判断することができる。正極活物質104の粒子形状が真球状であることは少なく、不定形であるため、曲率半径を求めることは困難であり、粒子の大きさが変われば曲率半径も変わってしまうため、定義することも困難であるが、正極活物質104を任意の位置で切断した断面形状において、その形状の角張った縁がほとんどなく、その縁が丸みを帯びた形状とすることができる。このように、表面がツルツルしている、またはツヤツヤしている状態とするにはフッ素が重要であり、表面にきれいな結合を作る。フッ素は正極活物質表面の濡れ性をよくして均質化、平坦化をさせている。例えばリチウム酸化物とフッ化物と混合して加熱することで正極活物質粒子を作製することが重要である。
正極活物質粒子表面に純粋なLiCoO2が露出している部分が存在していると、凹凸も生じ、充放電時にコバルトや酸素が脱離して結晶構造が崩れ、劣化が生じる。この純粋なLiCoO2が露出している部分が表面に露出しないように、マグネシウムを含む化合物で表面を均一に覆うことが好ましい。マグネシウムは、放電時にLiが脱離しても結晶構造(層状岩塩型の結晶構造)を維持する機能を有している。正極活物質粒子の表面付近以内にマグネシウム(またはフッ素)を存在させることも特徴の一つである。
また、電界緩和領域103の部分の誘電率が低い場合には厚くすることで十分に電界緩和機能を発揮できる。従って、二次電池の用途に合わせ、電界緩和領域103の材料によって、適宜、膜厚を調節することが好ましい。
正極活物質104は、正極活物質100と同様に電界緩和の効果を得ることができる。
また、図1(C)に示す正極活物質105は、図1(A)及び図1(B)とも異なる例を示している。
正極活物質105は、内部に結晶粒界101を有し、混在領域106と、内部領域100bを有する。混在領域106は、図1(A)や図1(B)の表面近傍領域100aや電界緩和領域103の組成が複雑に分布している領域を示している。例えば、図1(A)の正極活物質100に対して加熱処理を加え、表面近傍領域100a及び凸部となっている電界緩和領域103に含まれる材料を部分的に溶融させる場合にも正極活物質105が得られる。加熱処理及び電界緩和領域103に含まれる材料によっては、凸部となっている電界緩和領域103が表面近傍領域100aと一体化して混在領域106を形成しうる。
また、図1(B)の正極活物質104に対して加熱処理を加え、表面近傍領域100a及び電界緩和領域103に含まれる材料を部分的に溶融させる場合に正極活物質105が得られる。加熱処理によって内部領域100bはほとんど変化しないが、その外側領域がさまざまな元素が組み合わさることによって融点が下がる部分が生じ、部分的に溶融され、合金などが形成される場合がある。また、混在領域106は、被覆膜(コーティング膜とも呼ぶ)となっており、部分的または全体的に電界緩和領域の機能を有する。
正極活物質105は、正極活物質100と同様に電界緩和の効果を得ることができる。
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態3)
図3を用いて、本発明の一態様である合金を有している領域を有する正極活物質100の例を示す。
図5(A)は本発明の一態様である、1種または複数種の添加元素が偏在している領域として凸部となっている電界緩和領域103を有する正極活物質100の上面模式図である。図5(A)中のE-Fにおける断面模式図を図5(B)または図5(C)に示す。なお凸部とは他と高さが異なる部分であればよく、水滴状部、コロニー状部、丘状部などということもできる。また複数の凸部を有する場合、形状が揃っていなくてもよい。
凸部となっている電界緩和領域103は正極活物質100表面上に存在することが好ましい。正極活物質100が不純物(または添加元素)としてフッ素と、マグネシウムおよびチタンのような金属の化合物と、の両方を有する場合は、図3(B)に示すように凸部となっている電界緩和領域103はフッ素高濃度領域103aおよび金属元素高濃度領域103bを有することが好ましい。フッ素高濃度領域103aは正極活物質100全体および金属元素高濃度領域103bよりもフッ素の濃度が高い。金属元素高濃度領域103bは正極活物質100全体およびフッ素高濃度領域103aよりも金属の濃度が高い。正極活物質100は正極活物質100上に、フッ素高濃度領域103aを覆うように金属元素高濃度領域103bを有することが好ましい。
そして正極活物質100の表面近傍領域100aには、適切な濃度のチタン、マグネシウムおよびフッ素等の不純物(または添加元素)が存在することが好ましい。不純物(または添加元素)は正極活物質100の内部から表面に向かって高くなる濃度勾配を有することが好ましい。
なお正極活物質100が遷移金属Mとしてニッケルを有する場合、ニッケルの一部が金属元素高濃度領域103bに存在していてもよい。このとき金属元素高濃度領域103bは正極活物質100全体およびフッ素高濃度領域103aおよびもニッケルの濃度が高い。
さらに図5(C)に示すように凸部となっている電界緩和領域103と重畳する正極活物質100の一部にニッケル高濃度領域100dが存在していてもよい。ニッケル高濃度領域100dは、正極活物質100の内部に固溶していたニッケルが凸部となっている電界緩和領域103に吸い寄せられた痕跡と考えることができる。ニッケル高濃度領域100dは、正極活物質100のニッケル高濃度領域100d以外の部分よりもニッケルの濃度が高く、金属元素高濃度領域103bよりもニッケル濃度が低い。
また全ての不純物(または添加元素)が上記のような分布となっていなくてもよい。たとえば正極活物質100が不純物(または添加元素)としてアルミニウムを有する場合は、アルミニウムはマグネシウムまたはチタンと異なる分布となっていることが好ましい。たとえばアルミニウムは凸部となっている電界緩和領域103にほとんど偏在せず、正極活物質100の表面近傍領域100aに存在していることが好ましい。つまり凸部となっている電界緩和領域103のアルミニウム濃度よりも、表面近傍領域100aのアルミニウム濃度の方が高いことが好ましい。
また本明細書等において、正極活物質100が有する凸部となっている電界緩和領域103は、正極活物質100と異なる組成を有する領域をいう。正極活物質100と、過剰な不純物(または添加元素)が偏在している領域とは、結晶構造が異なっていてもよい。たとえば正極活物質100が層状岩塩型の結晶構造を有し、過剰な不純物(または添加元素)が偏在している領域が岩塩型、スピネル型、ルチル型またはアナターゼ型の結晶構造を有していてもよい。EDX、断面TEM、表面SEM、電子線回折をはじめとする各種分析により、異なる組成または結晶構造を有する領域であることを判断できる。
また正極活物質100では、不純物(または添加元素)に含まれない、リチウム、遷移金属および酸素は均一に分布していることが好ましい。本明細書等において均一とは、実質的に均一であればよく、たとえば元素濃度の差が10%以内であればよい。
図6の正極活物質100における、表面近傍領域100aの不純物(または添加元素)の濃度勾配等については、図2及び図3の記載を参酌することができる。
本実施の形態では、遷移金属Mとしてコバルトおよびニッケルを有し、さらにマグネシウム、複数の添加元素(ニッケル、アルミニウム、チタンなど)、およびフッ素を有する図6に示す正極活物質100の作製方法の例について説明する。
<ステップS11>
図5のステップS11として、まずリチウム、遷移金属Mおよび酸素を有する複合酸化物(LiMO2)の材料として、リチウム源および遷移金属M源を用意する。
リチウム源としては、例えば炭酸リチウム、フッ化リチウム等を用いることができる。
遷移金属Mとしてはリチウムとともに空間群R-3mに属する層状岩塩型の複合酸化物を形成しうる金属を用いことが好ましい。たとえばマンガン、コバルト、ニッケルのうち少なくとも一を用いることができる。つまり遷移金属M源としてコバルトのみを用いてもよいし、ニッケルのみを用いてもよいし、コバルトとマンガンの2種、またはコバルトとニッケルの2種を用いてもよいし、コバルト、マンガン、ニッケルの3種を用いてもよい。
層状岩塩型の複合酸化物を形成しうる金属を用いる場合、層状岩塩型の結晶構造をとりうる範囲のコバルト、マンガン、ニッケルの混合比とすることが好ましい。また、層状岩塩型の結晶構造をとりうる範囲で、これらの遷移金属にアルミニウムを加えてもよい。
遷移金属M源としては、遷移金属Mとして例示した上記金属の酸化物、水酸化物等を用いることができる。コバルト源としては、例えば酸化コバルト、水酸化コバルト等を用いることができる。マンガン源としては、酸化マンガン、水酸化マンガン等を用いることができる。ニッケル源としては、酸化ニッケル、水酸化ニッケル等を用いることができる。アルミニウム源としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、等を用いることができる。
<ステップS12>
次にステップS12として、上記のリチウム源および遷移金属M源を混合する。混合は乾式または湿式で行うことができる。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えば粉砕メディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。
<ステップS13>
次にステップS13として、上記で混合した材料を加熱する。本工程は、後の加熱工程との区別のために、第1の加熱または焼成という場合がある。第1の加熱はアルミナるつぼに材料を入れ、蓋をしてマッフル炉にて加熱する。加熱は800℃以上1100℃未満で行うことが好ましく、900℃以上1000℃以下で行うことがより好ましく、950℃程度がさらに好ましい。または800℃以上1000℃以下が好ましい。または900℃以上1100℃以下が好ましい。温度が低すぎると、リチウム源および遷移金属M源の分解および溶融が不十分となるおそれがある。一方温度が高すぎると、遷移金属Mとして用いる、酸化還元反応を担う金属が過剰に還元される、リチウムが蒸散するなどの原因で欠陥が生じるおそれがある。例えば遷移金属Mとしてコバルトを用いた場合、コバルトが2価となる欠陥が生じうる。
加熱時間はたとえば1時間以上100時間以下行うことができ、2時間以上20時間以下とすることが好ましい。または1時間以上20時間以下が好ましい。または2時間以上100時間以下が好ましい。焼成は、乾燥空気等の水が少ない雰囲気(例えば露点-50℃以下、より好ましくは-100℃以下)で行うことが好ましい。例えば1000℃で10時間加熱することとし、昇温は200℃/h、乾燥雰囲気の流量は10L/minとすることが好ましい。その後加熱した材料を室温(25℃)まで冷却することができる。例えば規定温度から室温までの降温時間を10時間以上50時間以下とすることが好ましい。
ただし、ステップS13における室温までの冷却は必須ではない。その後のステップS41乃至ステップS43の工程を行うのに問題がなければ、冷却は室温より高い温度までとしてもよい。
第1の加熱は、連続式およびバッチ式のいずれで行ってもよい。
<ステップS14>
次にステップS14として、上記第1の加熱で得られた材料を回収し、リチウム、遷移金属Mおよび酸素を有する複合酸化物(LiMO2)を得る。具体的には、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルトの一部がマンガンで置換されたコバルト酸リチウム、コバルトの一部がニッケルで置換されたコバルト酸リチウム、またはニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムなどを得る。
また、ステップS14としてあらかじめ合成されたリチウム、遷移金属Mおよび酸素を有する複合酸化物を用いてもよい。この場合、ステップS11乃至ステップS13を省略することができる。
例えば、あらかじめ合成された複合酸化物として、日本化学工業株式会社製のコバルト酸リチウム粒子(商品名:セルシードC-10N)を用いることができる。これは平均粒子径(D50)が約12μmであり、グロー放電質量分析法(GD-MS)による元素分析において、マグネシウム濃度およびフッ素濃度が50ppm wt以下、カルシウム濃度、アルミニウム濃度およびシリコン濃度が100ppm wt以下、ニッケル濃度が150ppm wt以下、硫黄濃度が500ppm wt以下、ヒ素濃度が1100ppm wt以下、その他のリチウム、コバルトおよび酸素以外の元素濃度が150ppm wt以下である、コバルト酸リチウムである。
または、日本化学工業株式会社製のコバルト酸リチウム粒子(商品名:セルシードC-5H)を用いることもできる。これは平均粒子径(D50)が約6.5μmであり、GD-MSによる元素分析において、リチウム、コバルトおよび酸素以外の元素濃度がC-10Nと同程度かそれ以下である、コバルト酸リチウムである。
本実施の形態では、金属Mとしてコバルトを用い、あらかじめ合成されたコバルト酸リチウム粒子(日本化学工業株式会社製セルシードC-10N)を用いることとする。
<ステップS21>
次にステップS21として、混合物902の材料として、フッ素源また塩素源等のハロゲン源およびマグネシウム源を用意する。またリチウム源も用意することが好ましい。
フッ素源としては、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化チタン(TiF4)、フッ化コバルト(CoF2、CoF3)、フッ化ニッケル(NiF2)、フッ化ジルコニウム(ZrF4)、フッ化バナジウム(VF5)、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化クロム、フッ化ニオブ、フッ化亜鉛(ZnF2)、フッ化カルシウム(CaF2)フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化セリウム(CeF2)、フッ化ランタン(LaF3)六フッ化アルミニウムナトリウム(Na3AlF6)等を用いることができる。またフッ素源は固体に限られず、たとえばフッ素(F2)、フッ化炭素、フッ化硫黄、フッ化酸素(OF2、O2F2、O3F2、O4F2、O2F)等を用い、後述する加熱工程において雰囲気中に混合してもよい。また複数のフッ素源を混合して用いてもよい。なかでも、フッ化リチウムは融点が848℃と比較的低く、後述するアニール工程で溶融しやすいため好ましい。
塩素源としては、例えば塩化リチウム、塩化マグネシウム等を用いることができる。
マグネシウム源としては、例えばフッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等を用いることができる。
リチウム源としては、例えばフッ化リチウム、炭酸リチウムを用いることができる。つまり、フッ化リチウムはリチウム源としてもフッ素源としても用いることができる。またフッ化マグネシウムはフッ素源としてもマグネシウム源としても用いることができる。
本実施の形態では、フッ素源としてフッ化リチウムLiFを用意し、フッ素源およびマグネシウム源としてフッ化マグネシウムMgF2を用意することとする。フッ化リチウムLiFとフッ化マグネシウムMgF2は、LiF:MgF2=65:35(モル比)程度で混合すると融点を下げる効果が最も高くなる(非特許文献4)。一方、フッ化リチウムが多くなると、リチウムが過剰になりすぎサイクル特性が悪化する懸念がある。そのため、フッ化リチウムLiFとフッ化マグネシウムMgF2のモル比は、LiF:MgF2=x:1(0≦x≦1.9)であることが好ましく、LiF:MgF2=x:1(0.1≦x≦0.5)がより好ましく、LiF:MgF2=x:1(x=0.33近傍)がさらに好ましい。なお本明細書等において近傍とは、その値の0.9倍より大きく1.1倍より小さい値とする。
また、次の混合および粉砕工程を湿式で行う場合は、溶媒を用意する。溶媒としてはアセトン等のケトン、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール、ジエチルエーテル等のエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を用いることができる。リチウムと反応が起こりにくい、非プロトン性溶媒を用いることがより好ましい。本実施の形態では、アセトンを用いることとする。
<ステップS22>
次に、ステップS22において、上記の混合物902の材料を混合および粉砕する。混合は乾式または湿式で行うことができるが、湿式はより小さく粉砕することができるため好ましい。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えば粉砕メディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。この混合および粉砕工程を十分に行い、混合物902を微粉化することが好ましい。
<ステップS23>
次に、ステップS23において、上記で混合、粉砕した材料を回収し、混合物902を得る。
混合物902は、例えばD50(メディアン径)が600nm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。または600nm以上10μm以下が好ましい。または1μm以上20μm以下が好ましい。このように微粉化された混合物902ならば、後の工程でリチウム、遷移金属Mおよび酸素を有する複合酸化物と混合したときに、複合酸化物の粒子の表面に混合物902を均一に付着させやすい。複合酸化物の粒子の表面に混合物902が均一に付着していると、加熱後に複合酸化物粒子の表面近傍領域にもれなくハロゲンおよびマグネシウムを分布させやすいため好ましい。表面近傍領域にハロゲンおよびマグネシウムが含まれない領域があると、充電状態において後述する擬スピネル型の結晶構造になりにくいおそれがある。
<ステップS41>
次にステップS41において、ステップS14で得られるLiMO2と、混合物902と、を混合する。リチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物中の遷移金属の原子数Mと、混合物902が有するマグネシウムの原子数Mgとの比は、M:Mg=100:y(0.1≦y≦6)であることが好ましく、M:Mg=100:y(0.3≦y≦3)であることがより好ましい。
ステップS41の混合は、複合酸化物の粒子を破壊しないためにステップS12の混合よりも穏やかな条件とすることが好ましい。例えば、ステップS12の混合よりも回転数が少ない、または時間が短い条件とすることが好ましい。また湿式よりも乾式のほうが粒子を破壊しにくい条件であると言える。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えば粉砕メディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。
また、ステップS41の混合ではさらに、アルミニウムやニッケルを混合してもよい。アルミニウムは3価であり酸素との結合力が強い。そのため不純物(または添加元素)としてアルミニウムを有すると、リチウムサイトに入ったときに結晶構造の変化が抑制できる。そのため充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくい正極活物質とすることができる。また、ニッケルは、重量あたりおよび体積あたりの容量を高めることができる場合がある。ニッケル源およびアルミニウム源は、混合物902と同時にステップS42で混合することができる。ニッケル源としては、酸化ニッケル、水酸化ニッケル等を用いることができる。アルミニウム源としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、等を用いることができる。この方法は加熱炉に入れる回数が少ないため、生産性が高く好ましい。
<ステップS42>
次にステップS42において、上記で混合した材料を回収し、混合物903を得る。
なお、本実施の形態ではフッ化リチウムおよびフッ化マグネシウムの混合物を、不純物(または添加元素)の少ないコバルト酸リチウムに添加する方法について説明しているが、本発明の一態様はこれに限らない。ステップS42の混合物903の代わりに、コバルト酸リチウムの出発材料にマグネシウム源およびフッ素源等を添加して焼成したものを用いてもよい。この場合は、ステップS11乃至ステップS14の工程と、ステップS21乃至ステップS23の工程を分ける必要がないため簡便で生産性が高い。
または、あらかじめマグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムを用いてもよい。マグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムを用いれば、ステップS32までの工程を省略することができより簡便である。
さらに、あらかじめマグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムに、さらにマグネシウム源およびフッ素源を添加してもよい。
<ステップS43>
次にステップS43において、混合物903を、酸素を含む雰囲気中で加熱する。該加熱は、混合物903の粒子同士が固着しないよう、固着抑制効果のある加熱とするとより好ましい。この加熱時に、一部の元素源、たとえばフッ素源およびリチウム源となりうるLiFは酸素よりも軽いため、加熱によりLiFが揮発し混合物903中のLiFが減少する場合がある。そのため混合物903を加熱する際は、雰囲気中のフッ素またはフッ化物の分圧を適切な範囲に制御することが好ましい。たとえば、この加熱の前後において混合物903を収納した後に加熱用るつぼに蓋をするといった方法がある。本工程は第2の加熱であり、先の加熱工程との区別のためにアニールという場合がある。
固着抑制効果のある加熱としては、たとえば混合物903を攪拌しながらの加熱、混合物903の入った容器を振動させながらの加熱等をあげることができる。
ステップS43における第2の加熱の温度はLiMO2と混合物902の反応が進む温度以上である必要がある。ここでいう反応が進む温度とは、LiMO2と混合物902の有する元素の相互拡散が起こる温度であればよい。そのためこれらの材料の溶融温度より低くてもよい。例えば、酸化物では溶融温度Tmの0.757倍(タンマン温度Td)から固相拡散が起こる。そのため例えば500℃以上であればよい。
ただし混合物903の少なくとも一部が溶融する温度以上であるとより反応が進みやすく好ましい。そのため第2の加熱の温度は混合物902の共融点以上であることが好ましい。混合物902がLiF及びMgF2を有する場合、LiFとMgF2の共融点は742℃付近であるため、ステップS43の温度を742℃以上とすると好ましい。
また、LiCoO2:LiF:MgF2=100:0.33:1(モル比)となるように混合した混合物903は、示差走査熱量測定(DSC測定)において830℃付近に吸熱ピークが観測される。よって、第2の加熱の温度としては830℃以上がより好ましい。
アニール温度は高い方が反応が進みやすく、アニール時間が短く済み、生産性が高く好ましい。
ただし第2の加熱の温度はLiMO2の分解温度(LiCoO2の場合は1130℃)以下である必要がある。また分解温度の近傍の温度では、微量ではあるがLiMO2の分解が懸念される。そのため、第2の加熱の温度としては、1130℃以下であることが好ましく、1000℃以下であるとより好ましく、950℃以下であるとさらに好ましく、900℃以下であるとさらに好ましい。
よって、第2の加熱の温度としては、500℃以上1130℃以下が好ましく、500℃以上1000℃以下がより好ましく、500℃以上950℃以下がさらに好ましく、500℃以上900℃以下がさらに好ましい。また、742℃以上1130℃以下が好ましく、742℃以上1000℃以下がより好ましく、742℃以上950℃以下がさらに好ましく、742℃以上900℃以下がさらに好ましい。また、830℃以上1130℃以下が好ましく、830℃以上1000℃以下がより好ましく、830℃以上950℃以下がさらに好ましく、830℃以上900℃以下がさらに好ましい。
さらに混合物903を加熱する際、雰囲気中のフッ素またはフッ化物の分圧を適切な範囲に制御することが好ましい。
本実施の形態で説明する作製方法では、一部の材料、例えばフッ素源であるLiFが融剤として機能する。この機能により第2の加熱の温度をLiMO2の分解温度以下、たとえば742℃以上950℃以下にまで低温化でき、表面近傍領域にマグネシウムをはじめとする添加物を分布させ、良好な特性の正極活物質を作製できる。
しかしLiFは酸素よりも軽いため、加熱によりLiFが揮発すると混合物903中のLiFが減少する。すると融剤としての機能が弱くなってしまう。よって、LiFの揮発を抑制しつつ、加熱する必要がある。なおフッ素源等としてLiFを用いなかったとしても、LiMO2表面のLiとFが反応して、LiFが生じ、揮発する可能性もある。そのため、LiFより融点が高いフッ化物を用いたとしても、同じように揮発の抑制が必要である。
そこで、LiFを含む雰囲気で混合物903を加熱すること、すなわち、加熱炉内のLiFの分圧が高い状態で混合物903を加熱することが好ましい。このような加熱により混合物903中のLiFの揮発を抑制することができる。
第2の加熱は、適切な時間で行うことが好ましい。適切な第2の加熱の時間は、第2の加熱の温度、ステップS14のLiMO2の粒子の大きさおよび組成等の条件により変化する。粒子が小さい場合は、大きい場合よりも低い温度または短い時間がより好ましい場合がある。
例えばステップS14の粒子の平均粒子径(D50)が12μm程度の場合、第2の加熱の温度は例えば600℃以上950℃以下が好ましい。第2の加熱の時間は例えば3時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましく、60時間以上がさらに好ましい。
一方、ステップS24の粒子の平均粒子径(D50)が5μm程度の場合、第2の加熱の温度は例えば600℃以上950℃以下が好ましい。第2の加熱の時間は例えば1時間以上10時間以下が好ましく、2時間程度がより好ましい。
第2の加熱後の降温時間は、例えば10時間以上50時間以下とすることが好ましい。
第2の加熱は、連続式およびバッチ式のいずれで行ってもよい。
<ステップS51>
ステップS51において、添加元素源を準備する。本実施の形態において、電界緩和領域103を形成するための添加元素としては、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、バリウム、チタン、鉛、スカンジウム、ストロンチウム、ビスマス、タンタルから選ばれる一種または複数種とする。
本実施の形態では、チタンを用い、ゾルゲル法を適用する場合の例を示す。ゾルゲル法を適用する場合には、ゾルゲル法に用いる溶媒を準備する。チタンの場合は例えば、コバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数を1とし、金属源が有するチタンの濃度が0.001倍以上0.02倍以下となればよい。
ここでは一例として、ゾルゲル法を適用し、金属源としてチタン(IV)テトライソプロポキシド(TTIP)を、溶媒としてイソプロパノールを用いる例を示す。
次に、チタンアルコキシドをアルコールに溶解させ、さらにコバルト酸リチウム粒子を混合する(図6のステップS61)。
コバルト酸リチウムの粒径によって、金属アルコキシドの必要量は異なる。たとえばチタンイソプロポキシドを用いる場合でコバルト酸リチウムの粒径(D50)が20μm程度ならば、コバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数を1とし、チタンイソプロポキシドが有するチタンの濃度が0.001倍以上0.02倍以下となるよう加えることが好ましい。
次に、金属アルコキシドのアルコール溶液とコバルト酸リチウムの粒子の混合液を、水蒸気を含む雰囲気下で撹拌する。撹拌はたとえばマグネチックスターラーで行うことができる。撹拌時間は、雰囲気中の水と金属アルコキシドが加水分解および重縮合反応を起こすのに十分な時間であればよく、例えば4時間、25℃、湿度90%RH(Relative Humidity、相対湿度)の条件下で行うことができる。また、湿度制御、および温度制御がされていない雰囲気下、例えばドラフトチャンバー内の大気雰囲気下において攪拌を行ってもよい。そのような場合には攪拌時間をより長くすることが好ましく、例えば室温において12時間以上、とすればよい。
雰囲気中の水蒸気を徐々に取り込み、アルコールを徐々に揮発せることで、水と金属アルコキシドが反応し、穏やかにゾルゲル反応を進めることができる。また常温で金属アルコキシドと水を反応させることで、たとえば溶媒のアルコールの沸点を超える温度で加熱を行う場合よりも穏やかにゾルゲル反応を進めることができる。
また、水を積極的に加えてもよい。穏やかに反応させたい場合は、アルコールで希釈した水を徐々に加える、浴のアルコール量を減らす、安定化剤を加える等で反応時間を制御しても良い。穏やかにゾルゲル反応を進めることで、厚さが均一で良質な被覆膜を形成することができる。ただし、得られる被覆膜は均一とは限らず、点在する場合もある。本実施の形態では、意図的に点在させて正極活物質100の表面に点在する凸部となった電界緩和領域103を形成している。
上記の処理を終えた混合液から、沈殿物を回収する。回収方法としては、ろ過、遠心分離、蒸発乾固等を適用することができる。沈殿物は金属アルコキシドを溶解させた溶媒と同じアルコールで洗浄することができる。なお、蒸発乾固を適用する場合には、本ステップにおいては溶媒と沈殿物の分離を行なわなくてもよく、例えば次のステップ(ステップS44)の乾燥工程において、沈殿物を回収すればよい。
次に、回収した残渣を乾燥し、混合物904を得る(図6のステップS62)。乾燥工程は例えば、80℃で1時間以上4時間以下、真空または通風乾燥することができる。
なお、ゾルゲル法を用いない場合は、混合物903に対して、スパッタ法や蒸着法により成膜を行ってもよい。また、その場合には、成膜後に混合物904を得ることができる。また、攪拌球と混合物903を攪拌しながらの加熱、攪拌球と混合物903の入った容器を振動させながらの加熱等をあげることができる。攪拌球の材料としては電界緩和領域103を形成するための添加元素を用い、酸化ジルコニウム、酸化チタン等が好ましい。ロータリーキルンによる加熱は、連続式、バッチ式いずれの場合でも攪拌しながら加熱することができ、固着抑制アニールとして好ましい。連続式は生産性がよく好ましい。バッチ式は雰囲気制御が容易であり好ましい。ローラーハースキルンによって加熱する場合は、加熱中に混合物903の入った容器を振動させることが好ましい。ローラーハースキルンは連続式であるため生産性がよく好ましい。また、その場合には、撹拌後に混合物904を得ることができる。
<ステップS63>
次に、得られた混合物を加熱する(図6のステップS63)。
加熱時間は、加熱温度の範囲内での保持時間を1時間以上80時間以下とすることが好ましく、生産性を考えると1時間以上20時間以下がさらに好ましい。
加熱温度としては1000℃未満、好ましくは、700℃以上950℃以下が好ましく、850℃程度がさらに好ましい。
また、加熱は酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。
本実施の形態では、加熱温度を850℃として2時間保持することとし、昇温は200℃/h、酸素の流量は10L/minとする。
ステップS63における加熱温度は、ステップS43における加熱温度よりも低いことが好ましい。
<ステップS66>
次に、冷却された粒子を回収する。さらに、粒子をふるいにかけることが好ましい。上記の工程で、本発明の一態様の正極活物質100を作製することができる(図6のステップS66)。
また、第3の加熱の条件(温度や時間)を変えて第N(N>3)の加熱、冷却と、回収をn(n>2)回繰り返してもよい。
<表面SEM像>
図7(A)は本実施の形態のサンプルの表面SEM像である。
本実施の形態のサンプルは、市販のコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、セルシードC-10N)を出発材料に用いた。この出発材料に、固相法で、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、水酸化ニッケルおよび水酸化アルミニウムを添加し、さらにチタンをゾルゲル法で加えた。コバルトの原子数を100としたとき、フッ化リチウムの分子量が0.33、フッ化マグネシウムの分子量が1、ニッケルの原子量が0.5、アルミニウムの原子量が0.5となるように添加した。固相法で加熱条件は900℃、10時間として加熱後に粒子の固着を乳棒で叩いて崩した。この加熱と固着を崩す工程を計3回繰り返した。ゾルゲル法での加熱温度は850℃とし、加熱時間を2時間として得られたた正極活物質100である。
正極活物質が本体の表面上に多数の凸部を有する様子が観察された。図7(A)の白い点線部分の断面STEM像を図7(B)に示す。凸部である図7(B)の白い点線部分を拡大した断面STEM像を図7(C)に示す。
図7(C)の白い点線の四角の部分のEDXマッピング像を図8(A)乃至(G)に示す。図8(A)は酸素、図8(B)はフッ素、図8(C)はマグネシウム、図8(D)はチタン、図8(E)はニッケル、図8(F)はアルミニウム、図8(G)はコバルトについてのマッピング像である。
図8(A)乃至(G)から凸部はフッ素の濃度が本体および金属元素高濃度領域よりも高い、フッ素高濃度領域を有することが確認された。また凸部はマグネシウム、チタンおよびニッケルの濃度が本体およびフッ素高濃度領域よりも高い、金属元素高濃度領域を有することが確認された。この金属元素高濃度領域は合金領域とも呼べる。
図8(E)のニッケルのマッピング像から、本体の一部にニッケル高濃度領域が存在することが確認された。正極活物質が有する過剰なマグネシウム、チタンおよびニッケルが金属元素高濃度領域に凝集していることが推測される。特にニッケルは本体の内部から金属元素高濃度領域に吸い寄せられ、本体の一部に存在するニッケル高濃度領域は合金領域とも呼べ、その痕跡である可能性が示唆された。
一方、アルミニウムは本体の表面近傍の濃度が内部または凸部よりも高かった。アルミニウムは金属元素高濃度領域に凝集せず、表面近傍にとどまっていることが確認された。
なお、凸部である図7(B)の白い点線部分は図1(A)の電界緩和領域103に対応する領域である。本実施の形態での作製方法では、図1(A)に示す正極活物質100が得られるが、添加元素源を選択し、図6で示した作製フローでの条件などを適宜変更することで、図1(B)に示す正極活物質104や、図1(C)に示す正極活物質105を得ることもできる。
また、図6で示した作製フローは一例にすぎず、特に限定されない。例えば、加熱の回数を低減し、製造コストを下げるため、ステップS14のLiMO2と、複数の添加元素源を混合し、第3の加熱を行わず、ステップ43の第2の加熱で正極活物質100を得ることもできる。
本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した作製方法によって作製された正極または負極を有する二次電池の複数種類の形状の例について説明する。
[コイン型二次電池]
コイン型の二次電池の一例について説明する。図14(A)はコイン型(単層偏平型)の二次電池の分解斜視図であり、図14(B)は、外観図であり、図14(C)は、その断面図である。コイン型の二次電池は主に小型の電子機器に用いられる。
図14(A)では、わかりやすくするために部材の重なり(上下関係、及び位置関係)がわかるように模式図としている。従って図14(A)と図14(B)は完全に一致する対応図とはしていない。
図14(A)では、正極304、セパレータ310、負極307、スペーサ322、ワッシャー312を重ねている。これらを負極缶302と正極缶301で封止している。なお、図14(A)において、封止のためのガスケットは図示していない。スペーサ322、ワッシャー312は、正極缶301と負極缶302を圧着する際に、内部を保護または缶内の位置を固定するために用いられている。スペーサ322、ワッシャー312はステンレスまたは絶縁材料を用いる。
正極集電体305上に正極活物質層306が形成された積層構造を正極304としている。
正極と負極の短絡を防ぐため、セパレータ310と、リング状絶縁体313を正極304の側面及び上面を覆うようにそれぞれ配置する。セパレータ310は、正極304よりも広い平面面積を有している。
図14(B)は、完成したコイン型の二次電池の斜視図である。
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。また、負極307は、積層構造に限定されず、リチウム金属箔またはリチウムとアルミニウムの合金箔を用いてもよい。
なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
正極缶301、負極缶302には、電解質に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解質による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に浸し、図9(C)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
実施の形態1で得られる正極活物質100を正極304に用いることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れたコイン型の二次電池300とすることができる。なお、負極307、正極304の間に二次電池とする場合にはセパレータ310を不要とすることもできる。
[円筒型二次電池]
円筒型の二次電池の例について図15(A)を参照して説明する。円筒型の二次電池616は、図15(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図15(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。図15(B)に示す円筒型の二次電池は、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解質に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解質による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を電池缶602に被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解質(図示せず)が注入されている。非水電解質は、コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。
実施の形態1で得られる正極活物質100を正極604に用いることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた円筒型の二次電池616とすることができる。
正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構613に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構613は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構613は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
図15(C)は蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数の二次電池616を有する。それぞれの二次電池の正極は、絶縁体625で分離された導電体624に接触し、電気的に接続されている。導電体624は配線623を介して、制御回路620に電気的に接続されている。また、それぞれの二次電池の負極は、配線626を介して制御回路620に電気的に接続されている。制御回路620として、充放電などを行う充放電制御回路や過充電または過放電を防止する保護回路を適用することができる。
図15(D)は、蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数の二次電池616を有し、複数の二次電池616は、導電板628及び導電板614の間に挟まれている。複数の二次電池616は、配線627により導電板628及び導電板614と電気的に接続される。複数の二次電池616は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池616を有する蓄電システム615を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
複数の二次電池616が、並列に接続された後、さらに直列に接続されてもよい。
複数の二次電池616の間に温度制御装置を有していてもよい。二次電池616が過熱されたときは、温度制御装置により冷却し、二次電池616が冷えすぎているときは温度制御装置により加熱することができる。そのため蓄電システム615の性能が外気温に影響されにくくなる。
また、図15(D)において、蓄電システム615は制御回路620に配線621及び配線622を介して電気的に接続されている。配線621は導電板628を介して複数の二次電池600の正極に、配線622は導電板614を介して複数の二次電池600の負極に、それぞれ電気的に接続される。
[二次電池の他の構造例]
二次電池の構造例について図16及び図17を用いて説明する。
図16(A)に示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解質中に浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図16(A)では、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
なお、図16(B)に示すように、図16(A)に示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図16(B)に示す二次電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
さらに、捲回体950の構造について図16(C)に示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
また、図17に示すような捲回体950aを有する二次電池913としてもよい。図17(A)に示す捲回体950aは、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。負極931は負極活物質層931aを有する。正極932は正極活物質層932aを有する。
実施の形態1で得られる正極活物質100を正極932に用いることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた二次電池913とすることができる。
セパレータ933は、負極活物質層931aおよび正極活物質層932aよりも広い幅を有し、負極活物質層931aおよび正極活物質層932aと重畳するように捲回されている。また正極活物質層932aよりも負極活物質層931aの幅が広いことが安全性の点で好ましい。またこのような形状の捲回体950aは安全性および生産性がよく好ましい。
図17(B)に示すように、負極931は端子951と電気的に接続される。端子951は端子911aと電気的に接続される。また正極932は端子952と電気的に接続される。端子952は端子911bと電気的に接続される。
図17(C)に示すように、筐体930により捲回体950aおよび電解質が覆われ、二次電池913となる。筐体930には安全弁、過電流保護素子等を設けることが好ましい。安全弁は、電池破裂を防止するため、筐体930の内部が所定の内圧で開放する弁である。
図17(B)に示すように二次電池913は複数の捲回体950aを有していてもよい。複数の捲回体950aを用いることで、より充放電容量の大きい二次電池913とすることができる。図17(A)および(B)に示す二次電池913の他の要素は、図16(A)乃至(C)に示す二次電池913の記載を参酌することができる。
<ラミネート型二次電池>
次に、ラミネート型の二次電池の例について、外観図の一例を図18(A)及び図18(B)に示す。図18(A)及び図18(B)は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リード電極510及び負極リード電極511を有する。
図19(A)は正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体501を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正極503は正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。正極及び負極が有するタブ領域の面積や形状は、図19(A)に示す例に限られない。
<ラミネート型二次電池の作製方法>
ここで、図18(A)に外観図を示すラミネート型二次電池の作製方法の一例について、図19(B)、図19(C)を用いて説明する。
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。図19(B)に積層された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5組、正極を4組使用する例を示す。負極とセパレータと正極からなる積層体とも呼べる。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
次に外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
次に、図19(C)に示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時、後に電解質508を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解質508(図示しない。)を外装体509の内側へ導入する。電解質508の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池500を作製することができる。
実施の形態1で得られる正極活物質100を正極503に用いることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた二次電池500とすることができる。
[電池パックの例]
アンテナを用いて無線充電が可能な本発明の一態様の二次電池パックの例について、図20を用いて説明する。
図20(A)は、二次電池パック531の外観を示す図であり、厚さの薄い直方体形状(厚さのある平板形状とも呼べる)である。図20(B)は二次電池パック531の構成を説明する図である。二次電池パック531は、回路基板540と、二次電池513と、を有する。二次電池513には、ラベル529が貼られている。回路基板540は、シール515により固定されている。また、二次電池パック531は、アンテナ517を有する。
二次電池513の内部は、捲回体を有する構造にしてもよいし、積層体を有する構造にしてもよい。
二次電池パック531において例えば、図20(B)に示すように、回路基板540上に、制御回路590を有する。また、回路基板540は、端子514と電気的に接続されている。また回路基板540は、アンテナ517、二次電池513の正極リード及び負極リードの一方551、正極リード及び負極リードの他方552と電気的に接続される。
あるいは、図20(C)に示すように、回路基板540上に設けられる回路システム590aと、端子514を介して回路基板540に電気的に接続される回路システム590bと、を有してもよい。
なお、アンテナ517はコイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ517は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ517を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
二次電池パック531は、アンテナ517と、二次電池513との間に層519を有する。層519は、例えば二次電池513による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層519としては、例えば磁性体を用いることができる。
本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1で得られる正極活物質100を用いて全固体電池を作製する例を示す。
図21(A)に示すように、本発明の一態様の二次電池400は、正極410、固体電解質層420および負極430を有する。
正極410は正極集電体413および正極活物質層414を有する。正極活物質層414は正極活物質411および固体電解質421を有する。正極活物質411には、実施の形態2で得られる正極活物質104を用いており、内部領域と、電界緩和領域であるシェルの境界を点線で示している。なお、ここでは、実施の形態2で示した正極活物質104を一例として図示したが、特に限定されず、正極活物質104に代えて実施の形態1で得られる正極活物質100や、実施の形態2で示した正極活物質105を用いることもできる。また、正極活物質層414にこれらの異なる正極活物質を2種または3種組み合わせて用いてもよい。また正極活物質層414は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
固体電解質層420は固体電解質421を有する。固体電解質層420は、正極410と負極430の間に位置し、正極活物質411および負極活物質431のいずれも有さない領域である。
負極430は負極集電体433および負極活物質層434を有する。負極活物質層434は負極活物質431および固体電解質421を有する。また負極活物質層434は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。なお、負極430に金属リチウムを用いる場合は、図21(B)のように、固体電解質421を有さない負極430とすることができる。負極430に金属リチウムを用いると、二次電池400のエネルギー密度を向上させることができ好ましい。
固体電解質層420が有する固体電解質421としては、例えば硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質等を用いることができる。
硫化物系固体電解質には、チオシリコン系(Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4等)、硫化物ガラス(70Li2S・30P2S5、30Li2S・26B2S3・44LiI、63Li2S・38SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、50Li2S・50GeS2等)、硫化物結晶化ガラス(Li7P3S11、Li3.25P0.95S4等)が含まれる。硫化物系固体電解質は、高い伝導度を有する材料がある、低い温度で合成可能、また比較的やわらかいため充放電を経ても導電経路が保たれやすい等の利点がある。
酸化物系固体電解質には、ペロブスカイト型結晶構造を有する材料(La2/3-xLi3xTiO3等)、NASICON型結晶構造を有する材料(Li1-YAlYTi2-Y(PO4)3等)、ガーネット型結晶構造を有する材料(Li7La3Zr2O12等)、LISICON型結晶構造を有する材料(Li14ZnGe4O16等)、LLZO(Li7La3Zr2O12)、酸化物ガラス(Li3PO4-Li4SiO4、50Li4SiO4・50Li3BO3等)、酸化物結晶化ガラス(Li1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3等)が含まれる。酸化物系固体電解質は、大気中で安定であるといった利点がある。
ハロゲン化物系固体電解質には、LiAlCl4、Li3InBr6、LiF、LiCl、LiBr、LiI等が含まれる。また、これらハロゲン化物系固体電解質を、ポーラス酸化アルミニウムやポーラスシリカの細孔に充填したコンポジット材料も固体電解質として用いることができる。
また、異なる固体電解質を混合して用いてもよい。
中でも、NASICON型結晶構造を有するLi1+xAlxTi2-x(PO4)3(0〔x〔1)(以下、LATP)は、アルミニウムとチタンという、本発明の一態様の二次電池400に用いる正極活物質が有してもよい元素を含むため、サイクル特性の向上について相乗効果が期待でき好ましい。また、工程の削減による生産性の向上も期待できる。なお本明細書等において、NASICON型結晶構造とは、M2(XO4)3(M:遷移金属、X:S、P、As、Mo、W等)で表される化合物であり、MO6八面体とXO4四面体が頂点を共有して3次元的に配列した構造を有するものをいう。
〔外装体と二次電池の形状〕
本発明の一態様の二次電池400の外装体には、様々な材料および形状のものを用いることができるが、正極、固体電解質層および負極を加圧する機能を有することが好ましい。
例えば図20は、全固体電池の材料を評価するセルの一例である。
図22(A)は評価セルの断面模式図であり、評価セルは、下部部材761と、上部部材762と、それらを固定する固定ねじや蝶ナット764を有し、押さえ込みねじ763を回転させることで電極用プレート753を押して評価材料を固定している。ステンレス材料で構成された下部部材761と、上部部材762との間には絶縁体766が設けられている。また上部部材762と、押さえ込みねじ763の間には密閉するためのOリング765が設けられている。
評価材料は、電極用プレート751に載せられ、周りを絶縁管752で囲み、上方から電極用プレート753で押されている状態となっている。この評価材料周辺を拡大した斜視図が図22(B)である。
評価材料としては、正極750a、固体電解質層750b、負極750cの積層の例を示しており、断面図を図22(C)に示す。なお、図22(A)、(B)、(C)において同じ箇所には同じ符号を用いる。
正極750aと電気的に接続される電極用プレート751および下部部材761は、正極端子に相当するということができる。負極750cと電気的に接続される電極用プレート753および上部部材762は、負極端子に相当するということができる。電極用プレート751および電極用プレート753を介して評価材料に押圧をかけながら電気抵抗などを測定することができる。
また、本発明の一態様の二次電池の外装体には、気密性に優れたパッケージを使用することが好ましい。例えばセラミックパッケージや樹脂パッケージを用いることができる。また、外装体を封止する際には、外気を遮断し、密閉した雰囲気下、例えばグローブボックス内で行うことが好ましい。
図23(A)に、図22と異なる外装体および形状を有する本発明の一態様の二次電池の斜視図を示す。図23(A)の二次電池は、外部電極771、772を有し、複数のパッケージ部材を有する外装体で封止されている。
図23(A)中の一点破線で切断した断面の一例を図23(B)に示す。正極750a、固体電解質層750bおよび負極750cを有する積層体は、平板に電極層773aが設けられたパッケージ部材770aと、枠状のパッケージ部材770bと、平板に電極層773bが設けられたパッケージ部材770cと、で囲まれて封止された構造となっている。パッケージ部材770a、770b、770cには、絶縁材料、例えば樹脂材料やセラミックを用いることができる。
外部電極771は、電極層773aを介して電気的に正極750aと電気的に接続され、正極端子として機能する。また、外部電極772は、電極層773bを介して電気的に負極750cと電気的に接続され、負極端子として機能する。
実施の形態1で得られる正極活物質100を用いることで、高エネルギー密度かつ良好な出力特性をもつ全固体二次電池を実現することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、円筒型の二次電池である図15(D)とは異なる例である。図24(C)を用いて電気自動車(EV)に適用する例を示す。
電気自動車には、メインの駆動用の二次電池として第1のバッテリ1301a、1301bと、モータ1304を始動させるインバータ1312に電力を供給する第2のバッテリ1311が設置されている。第2のバッテリ1311はクランキングバッテリー(スターターバッテリーとも呼ばれる)とも呼ばれる。第2のバッテリ1311は高出力できればよく、大容量はそれほど必要とされず、第2のバッテリ1311の容量は第1のバッテリ1301a、1301bと比較して小さい。
第1のバッテリ1301aの内部構造は、図16(A)、図16(B)、図16(C)、または図17(A)に示した巻回型であってもよいし、図18(A)、図18(B)、図19(A)、図19(B)、または図19(C)に示した積層型であってもよい。また、第1のバッテリ1301aは、実施の形態5の全固体電池を用いてもよい。第1のバッテリ1301aに実施の形態5の全固体電池を用いることで高容量とすることができ、安全性が向上し、小型化、軽量化することができる。
本実施の形態では、第1のバッテリ1301a、1301bを2つ並列に接続させている例を示しているが3つ以上並列に接続させてもよい。また、第1のバッテリ1301aで十分な電力を貯蔵できるのであれば、第1のバッテリ1301bはなくてもよい。複数の二次電池を有する電池パックを構成することで、大きな電力を取り出すことができる。複数の二次電池は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後、さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池を組電池とも呼ぶ。
また、車載用の二次電池において、複数の二次電池からの電力を遮断するため、工具を使わずに高電圧を遮断できるサービスプラグまたはサーキットブレーカを有しており、第1のバッテリ1301aに設けられる。
また、第1のバッテリ1301a、1301bの電力は、主にモータ1304を回転させることに使用されるが、DCDC回路1306を介して42V系の車載部品(電動パワステ1307、ヒーター1308、デフォッガ1309など)に電力を供給する。後輪にリアモータ1317を有している場合にも、第1のバッテリ1301aがリアモータ1317を回転させることに使用される。
また、第2のバッテリ1311は、DCDC回路1310を介して14V系の車載部品(オーディオ1313、パワーウィンドウ1314、ランプ類1315など)に電力を供給する。
また、第1のバッテリ1301aについて、図24(A)を用いて説明する。
図24(A)では9個の角型二次電池1300を一つの電池パック1415としている例を示している。また、9個の角型二次電池1300を直列接続し、一方の電極を絶縁体からなる固定部1413で固定し、もう一方の電極を絶縁体からなる固定部1414で固定している。本実施の形態では固定部1413、1414で固定する例を示しているが電池収容ボックス(筐体とも呼ぶ)に収納させる構成としてもよい。車両は外部(路面など)から振動または揺れが加えられることを想定されているため、固定部1413、1414や。電池収容ボックスなどで複数の二次電池を固定することが好ましい。また、一方の電極は配線1421によって制御回路部1320に電気的に接続されている。またもう一方の電極は配線1422によって制御回路部1320に電気的に接続されている。
また、制御回路部1320は、酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いてもよい。酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を有する充電制御回路、又は電池制御システムを、BTOS(Battery operating system、又はBattery oxide semiconductor)と呼称する場合がある。また、充電制御回路は、電池パック1415に収納されている二次電池を制御する手段である。
酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウム等から選ばれた一種、又は複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物530として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(C-Axls Aligned Crystal Oxide Semiconductor)、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)であることが好ましい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。CAAC-OSは、複数の結晶領域を有し、当該複数の結晶領域はc軸が特定の方向に配向している酸化物半導体である。なお、特定の方向とは、CAAC-OS膜の厚さ方向、CAAC-OS膜の被形成面の法線方向、またはCAAC-OS膜の表面の法線方向である。また、結晶領域とは、原子配列に周期性を有する領域である。なお、原子配列を格子配列とみなすと、結晶領域とは、格子配列の揃った領域でもある。さらに、CAAC-OSは、a-b面方向において複数の結晶領域が連結する領域を有し、当該領域は歪みを有する場合がある。なお、歪みとは、複数の結晶領域が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。つまり、CAAC-OSは、c軸配向し、a-b面方向には明らかな配向をしていない酸化物半導体である。また、CAC-OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つまたは複数の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
さらに、CAC-OSとは、第1の領域と、第2の領域と、に材料が分離することでモザイク状となり、当該第1の領域が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。つまり、CAC-OSは、当該第1の領域と、当該第2の領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。
ここで、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSを構成する金属元素に対するIn、Ga、およびZnの原子数比のそれぞれを、[In]、[Ga]、および[Zn]と表記する。例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSにおいて、第1の領域は、[In]が、CAC-OS膜の組成における[In]よりも大きい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、CAC-OS膜の組成における[Ga]よりも大きい領域である。または、例えば、第1の領域は、[In]が、第2の領域における[In]よりも大きく、且つ、[Ga]が、第2の領域における[Ga]よりも小さい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、第1の領域における[Ga]よりも大きく、且つ、[In]が、第1の領域における[In]よりも小さい領域である。
具体的には、上記第1の領域は、インジウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。また、上記第2の領域は、ガリウム酸化物、ガリウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。つまり、上記第1の領域を、Inを主成分とする領域と言い換えることができる。また、上記第2の領域を、Gaを主成分とする領域と言い換えることができる。
なお、上記第1の領域と、上記第2の領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、Inを主成分とする領域(第1の領域)と、Gaを主成分とする領域(第2の領域)とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
CAC-OSをトランジスタに用いる場合、第1の領域に起因する導電性と、第2の領域に起因する絶縁性とが、相補的に作用することにより、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSに付与することができる。つまり、CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。導電性の機能と絶縁性の機能とを分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。よって、CAC-OSをトランジスタに用いることで、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および良好なスイッチング動作を実現することができる。
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、CAC-OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
また、高温環境下で使用可能であるため、制御回路部1320は酸化物半導体を用いるトランジスタを用いることが好ましい。プロセスを簡略なものとするため、制御回路部1320は単極性のトランジスタを用いて形成してもよい。半導体層に酸化物半導体を用いるトランジスタは、動作周囲温度が単結晶Siよりも広く-40℃以上150℃以下であり、二次電池が加熱しても特性変化が単結晶に比べて小さい。酸化物半導体を用いるトランジスタのオフ電流は、150℃であっても温度によらず測定下限以下であるが、単結晶Siトランジスタのオフ電流特性は、温度依存性が大きい。例えば、150℃では、単結晶Siトランジスタはオフ電流が上昇し、電流オン/オフ比が十分に大きくならない。制御回路部1320は、安全性を向上することができる。また、実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池と組み合わせることで安全性についての相乗効果が得られる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池及び制御回路部1320は、二次電池による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いた制御回路部1320は、マイクロショート等の10項目の不安定性の原因に対し、二次電池の自動制御装置として機能させることもできる。10項目の不安定性の原因を解消する機能としては、過充電の防止、過電流の防止、充電時過熱制御、組電池でのセルバランス、過放電の防止、残量計、温度に応じた充電電圧及び電流量自動制御、劣化度に応じた充電電流量制御、マイクロショート異常挙動検知、マイクロショートに関する異常予測などが挙げられ、そのうちの少なくとも一以上の機能を制御回路部1320が有する。また、二次電池の自動制御装置の超小型化が可能である。
また、マイクロショートとは、二次電池の内部の微小な短絡のことを指しており、二次電池の正極と負極が短絡して充放電不可能の状態になるというほどではなく、微小な短絡部でわずかに短絡電流が流れてしまう現象を指している。比較的短時間、且つ、わずかな箇所であっても大きな電圧変化が生じるため、その異常な電圧値がその後の推定に影響を与える恐れがある。
マイクロショートの原因の一つは、充放電が複数回行われることによって、正極活物質の不均一な分布により、正極の一部と負極の一部で局所的な電流の集中が生じ、セパレータの一部が機能しなくなる箇所が発生、または副反応による副反応物の発生によりミクロな短絡が生じていると言われている。
また、マイクロショートの検知だけでなく、制御回路部1320は、二次電池の端子電圧を検知し、二次電池の充放電状態を管理するとも言える。例えば、過充電を防ぐために充電回路の出力トランジスタと遮断用スイッチの両方をほぼ同時にオフ状態とすることができる。
また、図24(A)に示す電池パック1415のブロック図の一例を図24(B)に示す。
制御回路部1320は、少なくとも過充電を防止するスイッチと、過放電を防止するスイッチを含むスイッチ部1324と、スイッチ部1324を制御する制御回路1322と、第1のバッテリ1301aの電圧測定部と、を有する。制御回路部1320は、使用する二次電池の上限電圧と下限電圧と設定されており、外部からの電流上限や、外部への出力電流の上限などを制限している。二次電池の下限電圧以上上限電圧以下の範囲内は、使用が推奨されている電圧範囲内であり、その範囲外となるとスイッチ部1324が作動し、保護回路として機能する。また、制御回路部1320は、スイッチ部1324を制御して過放電や過充電を防止するため、保護回路とも呼べる。例えば、過充電となりそうな電圧を制御回路1322で検知した場合にスイッチ部1324のスイッチをオフ状態とすることで電流を遮断する。さらに充放電経路中にPTC素子を設けて温度の上昇に応じて電流を遮断する機能を設けてもよい。また、制御回路部1320は、外部端子1325(+IN)と、外部端子1326(-IN)とを有している。
スイッチ部1324は、nチャネル型のトランジスタやpチャネル型のトランジスタを組み合わせて構成することができる。スイッチ部1324は、単結晶シリコンを用いるSiトランジスタを有するスイッチに限定されず、例えば、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)、InP(リン化インジウム)、SiC(シリコンカーバイド)、ZnSe(セレン化亜鉛)、GaN(窒化ガリウム)、GaOx(酸化ガリウム;xは0より大きい実数)などを有するパワートランジスタでスイッチ部1324を形成してもよい。また、OSトランジスタを用いた記憶素子は、Siトランジスタを用いた回路上などに積層することで自由に配置可能であるため、集積化を容易に行うことができる。またOSトランジスタは、Siトランジスタと同様の製造装置を用いて作製することが可能であるため、低コストで作製可能である。即ち、スイッチ部1324上にOSトランジスタを用いた制御回路部1320を積層し、集積化することで1チップとすることもできる。制御回路部1320の占有体積を小さくすることができるため、小型化が可能となる。
第1のバッテリ1301a、1301bは、主に42V系(高電圧系)の車載機器に電力を供給し、第2のバッテリ1311は14V系(低電圧系)の車載機器に電力を供給する。
本実施の形態では、第1のバッテリ1301aと第2のバッテリ1311の両方にリチウムイオン二次電池を用いる一例を示す。第2のバッテリ1311は鉛蓄電池や全固体電池や電気二重層キャパシタを用いてもよい。例えば、実施の形態5の全固体電池を用いてもよい。第2のバッテリ1311に実施の形態5の全固体電池を用いることで高容量とすることができ、小型化、軽量化することができる。
また、タイヤ1316の回転による回生エネルギーは、ギア1305を介してモータ1304に送られ、モータコントローラ1303やバッテリーコントローラ1302から制御回路部1321を介して第2のバッテリ1311に充電される。またはバッテリーコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301aに充電される。またはバッテリーコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301bに充電される。回生エネルギーを効率よく充電するためには、第1のバッテリ1301a、1301bが急速充電可能であることが望ましい。
バッテリーコントローラ1302は第1のバッテリ1301a、1301bの充電電圧及び充電電流などを設定することができる。バッテリーコントローラ1302は、用いる二次電池の充電特性に合わせて充電条件を設定し、急速充電することができる。
また、図示していないが、外部の充電器と接続させる場合、充電器のコンセントまたは充電器の接続ケーブルは、バッテリーコントローラ1302に電気的に接続される。外部の充電器から供給された電力はバッテリーコントローラ1302を介して第1のバッテリ1301a、1301bに充電する。また、充電器によっては、制御回路が設けられており、バッテリーコントローラ1302の機能を用いない場合もあるが、過充電を防ぐため制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301a、1301bを充電することが好ましい。また、接続ケーブルまたは充電器の接続ケーブルに制御回路を備えている場合もある。制御回路部1320は、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれることもある。ECUは、電動車両に設けられたCAN(Controller Area Network)に接続される。CANは、車内LANとして用いられるシリアル通信規格の一つである。また、ECUは、マイクロコンピュータを含む。また、ECUは、CPUやGPUを用いる。
充電スタンドなどに設置されている外部の充電器は、100Vコンセントや、200Vコンセントや、3相200V且つ50kWなどがある。また、非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することもできる。
急速充電を行う場合、短時間での充電を行うためには、高電圧での充電に耐えうる二次電池が望まれている。
また、上述した本実施の形態の二次電池は、実施の形態1で得られる正極活物質100を用いることで高密度な正極を有している。さらに、導電助剤としてグラフェンを用い、電極層を厚くして担持量を高くしても容量低下を抑え、高容量を維持することが相乗効果として大幅に電気特性が向上された二次電池を実現できる。特に車両に用いる二次電池に有効であり、車両全重量に対する二次電池の重量の割合を増加させることなく、航続距離が長い、具体的には一充電走行距離が500km以上の車両を提供することができる。
特に上述した本実施の形態の二次電池は、実施の形態1で説明した正極活物質100を用いることで二次電池の動作電圧を高くすることができ、充電電圧の増加に伴い、使用できる容量を増加させることができる。また、実施の形態1で説明した正極活物質100を正極に用いることでサイクル特性に優れた車両用の二次電池を提供することができる。
次に、本発明の一態様である二次電池を車両、代表的には輸送用車両に実装する例について説明する。
また、図15(D)、図17(C)、図24(A)のいずれか一に示した二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。また、農業機械、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、電動カート、小型又は大型船舶、潜水艦、固定翼機や回転翼機等の航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などの輸送用車両に二次電池を搭載することもできる。本発明の一態様の二次電池は高容量の二次電池とすることができる。そのため本発明の一態様の二次電池は、小型化、軽量化に適しており、輸送用車両に好適に用いることができる。
図25(A)乃至(D)において、本発明の一態様を用いた輸送用車両を例示する。図25(A)に示す自動車2001は、走行のための動力源として電気モータを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モータとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。二次電池を車両に搭載する場合、実施の形態4で示した二次電池の一例を一箇所または複数個所に設置する。図25(A)に示す自動車2001は、電池パック2200を有し、電池パックは、複数の二次電池を接続させた二次電池モジュールを有する。さらに二次電池モジュールに電気的に接続する充電制御装置を有すると好ましい。
また、自動車2001は、自動車2001が有する二次電池にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。充電に際しては、充電方法やコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。二次電池は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車2001に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、2台の車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
図25(B)は、輸送用車両の一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車2002を示している。輸送車2002の二次電池モジュールは、例えば3.5V以上、好ましくは4.7V以上の二次電池を4個セルユニットとし、48セルを直列に接続した170Vの最大電圧とする。電池パック2201の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図25(A)と同様な機能を備えているので説明は省略する。
図25(C)は、一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車両2003を示している。輸送車両2003の二次電池モジュールは、例えば3.5V以上好ましくは4.7V以上の二次電池を百個以上直列に接続した600Vの最大電圧とする。従って、特性バラツキの小さい二次電池が求められる。実施の形態1で説明した正極活物質100を正極に用いた二次電池を用いることで、安定した電池特性を有する二次電池を製造することができ、歩留まりの観点から低コストで大量生産が可能である。また、電池パック2202の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図25(A)と同様な機能を備えているので説明は省略する。
図25(D)は、一例として燃料を燃焼するエンジンを有した航空機2004を示している。図25(D)に示す航空機2004は、離着陸用の車輪を有しているため、輸送車両の一部とも言え、複数の二次電池を接続させて二次電池モジュールを構成し、二次電池モジュールと充電制御装置とを含む電池パック2203を有している。
航空機2004の二次電池モジュールは、例えば4Vの二次電池を8個直列に接続した32Vの最大電圧とする。電池パック2203の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図25(A)と同様な機能を備えているので説明は省略する。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を建築物に実装する例について図26(A)および図26(B)を用いて説明する。
図26(A)に示す住宅は、本発明の一態様である二次電池を有する蓄電装置2612と、ソーラーパネル2610を有する。蓄電装置2612は、ソーラーパネル2610と配線2611等を介して電気的に接続されている。また蓄電装置2612と地上設置型の充電装置2604が電気的に接続されていてもよい。ソーラーパネル2610で得た電力は、蓄電装置2612に充電することができる。また蓄電装置2612に蓄えられた電力は、充電装置2604を介して車両2603が有する二次電池に充電することができる。蓄電装置2612は、床下空間部に設置されることが好ましい。床下空間部に設置することにより、床上の空間を有効的に利用することができる。あるいは、蓄電装置2612は床上に設置されてもよい。
蓄電装置2612に蓄えられた電力は、住宅内の他の電子機器にも電力を供給することができる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置2612を無停電電源として用いることで、電子機器の利用が可能となる。
図26(B)に、本発明の一態様に係る蓄電装置700の一例を示す。図26(B)に示すように、建物799の床下空間部796には、本発明の一態様に係る蓄電装置791が設置されている。また、蓄電装置791に実施の形態6に説明した制御回路を設けてもよく、実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池を蓄電装置891に用いることで安全性についての相乗効果が得られる。実施の形態6に説明した制御回路及び実施の形態1で説明した正極活物質100を正極に用いた二次電池は、二次電池を有する蓄電装置791による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
蓄電装置791には、制御装置790が設置されており、制御装置790は、配線によって、分電盤703と、蓄電コントローラ705(制御装置ともいう)と、表示器706と、ルータ709と、に電気的に接続されている。
商業用電源701から、引込線取付部710を介して、電力が分電盤703に送られる。また、分電盤703には、蓄電装置791と、商業用電源701と、から電力が送られ、分電盤703は、送られた電力を、コンセント(図示せず)を介して、一般負荷707及び蓄電系負荷708に供給する。
一般負荷707は、例えば、テレビやパーソナルコンピュータなどの電気機器であり、蓄電系負荷708は、例えば、電子レンジ、冷蔵庫、空調機などの電気機器である。
蓄電コントローラ705は、計測部711と、予測部712と、計画部713と、を有する。計測部711は、一日(例えば、0時から24時)の間に、一般負荷707、蓄電系負荷708で消費された電力量を計測する機能を有する。また、計測部711は、蓄電装置791の電力量と、商業用電源701から供給された電力量と、を計測する機能を有していてもよい。また、予測部712は、一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量に基づいて、次の一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費される需要電力量を予測する機能を有する。また、計画部713は、予測部712が予測した需要電力量に基づいて、蓄電装置791の充放電の計画を立てる機能を有する。
計測部711によって計測された一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量は、表示器706によって確認することができる。また、ルータ709を介して、テレビやパーソナルコンピュータなどの電気機器において、確認することもできる。さらに、ルータ709を介して、スマートフォンやタブレットなどの携帯電子端末によっても確認することができる。また、表示器706、電気機器、携帯電子端末によって、予測部712が予測した時間帯ごと(または一時間ごと)の需要電力量なども確認することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、二輪車、自転車に本発明の一態様である蓄電装置を搭載する例を示す。
また、図27(A)は、本発明の一態様の蓄電装置を用いた電動自転車の一例である。図27(A)に示す電動自転車8700に、本発明の一態様の蓄電装置を適用することができる。本発明の一態様の蓄電装置は例えば、複数の蓄電池と、保護回路と、を有する。
電動自転車8700は、蓄電装置8702を備える。蓄電装置8702は、運転者をアシストするモータに電気を供給することができる。また、蓄電装置8702は、持ち運びができ、図27(B)に自転車から取り外した状態を示している。また、蓄電装置8702は、本発明の一態様の蓄電装置が有する蓄電池8701が複数内蔵されており、そのバッテリ残量などを表示部8703で表示できるようにしている。また蓄電装置8702は、実施の形態6に一例を示した二次電池の充電制御または異常検知が可能な制御回路8704を有する。制御回路8704は、蓄電池8701の正極及び負極と電気的に接続されている。また、制御回路8704に図23(A)及び図23(B)で示した小型の固体二次電池を設けてもよい。図23(A)及び図23(B)で示した小型の固体二次電池を制御回路8704に設けることで制御回路8704の有するメモリ回路のデータを長時間保持することに電力を供給することもできる。また、実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池と組み合わせることで安全性についての相乗効果が得られる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池及び制御回路8704は、二次電池による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
また、図27(C)は、本発明の一態様の蓄電装置を用いた二輪車の一例である。図27(C)に示すスクータ8600は、蓄電装置8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。蓄電装置8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。また、実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池を複数収納された蓄電装置8602は高容量とすることができ、小型化に寄与することができる。
また、図27(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、蓄電装置8602を収納することができる。蓄電装置8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説明する。二次電池を実装する電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。携帯情報端末としてはノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、電子書籍、携帯電話機などがある。
図28(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機2100は、筐体2101に組み込まれた表示部2102の他、操作ボタン2103、外部接続ポート2104、スピーカ2105、マイク2106などを備えている。なお、携帯電話機2100は、二次電池2107を有している。実施の形態1で説明した正極活物質100を正極に用いた二次電池2107を備えることで高容量とすることができ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
携帯電話機2100は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
操作ボタン2103は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯電話機2100に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン2103の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯電話機2100は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯電話機2100は外部接続ポート2104を備え、他の情報端末とコネクタを介して直接データのやりとりを行うことができる。また外部接続ポート2104を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は外部接続ポート2104を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯電話機2100はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
図28(B)は複数のローター2302を有する無人航空機2300である。無人航空機2300はドローンと呼ばれることもある。無人航空機2300は、本発明の一態様である二次電池2301と、カメラ2303と、アンテナ(図示しない)を有する。無人航空機2300はアンテナを介して遠隔操作することができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、無人航空機2300に搭載する二次電池として好適である。
図28(C)は、ロボットの一例を示している。図28(C)に示すロボット6400は、二次電池6409、照度センサ6401、マイクロフォン6402、上部カメラ6403、スピーカ6404、表示部6405、下部カメラ6406および障害物センサ6407、移動機構6408、演算装置等を備える。
マイクロフォン6402は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ6404は、音声を発する機能を有する。ロボット6400は、マイクロフォン6402およびスピーカ6404を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
表示部6405は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット6400は、使用者の望みの情報を表示部6405に表示することが可能である。表示部6405は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、表示部6405は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット6400の定位置に設置することで、充電およびデータの受け渡しを可能とする。
上部カメラ6403および下部カメラ6406は、ロボット6400の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ6407は、移動機構6408を用いてロボット6400が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット6400は、上部カメラ6403、下部カメラ6406および障害物センサ6407を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。
ロボット6400は、その内部領域に本発明の一態様に係る二次電池6409と、半導体装置または電子部品を備える。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、ロボット6400に搭載する二次電池6409として好適である。
図28(D)は、掃除ロボットの一例を示している。掃除ロボット6300は、筐体6301上面に配置された表示部6302、側面に配置された複数のカメラ6303、ブラシ6304、操作ボタン6305、二次電池6306、各種センサなどを有する。図示されていないが、掃除ロボット6300には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット6300は自走し、ゴミ6310を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
例えば、掃除ロボット6300は、カメラ6303が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ6304に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ6304の回転を止めることができる。掃除ロボット6300は、その内部領域に本発明の一態様に係る二次電池6306と、半導体装置または電子部品を備える。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、掃除ロボット6300に搭載する二次電池6306として好適である。
図29(A)は、ウェアラブルデバイスの例を示している。ウェアラブルデバイスは、電源として二次電池を用いる。また、使用者が生活使用または屋外使用において水による耐水性を高めるため、接続するコネクタ部分が露出している有線による充電だけでなく、無線充電も行えるウェアラブルデバイスが望まれている。
例えば、図29(A)に示すような眼鏡型デバイス4000に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。眼鏡型デバイス4000は、フレーム4000aと、表示部4000bを有する。湾曲を有するフレーム4000aのテンプル部に二次電池を搭載することで、軽量であり、且つ、重量バランスがよく継続使用時間の長い眼鏡型デバイス4000とすることができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、ヘッドセット型デバイス4001に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。ヘッドセット型デバイス4001は、少なくともマイク部4001aと、フレキシブルパイプ4001bと、イヤフォン部4001cを有する。フレキシブルパイプ4001b内やイヤフォン部4001c内に二次電池を設けることができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、身体に直接取り付け可能なデバイス4002に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。デバイス4002の薄型の筐体4002aの中に、二次電池4002bを設けることができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、衣服に取り付け可能なデバイス4003に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。デバイス4003の薄型の筐体4003aの中に、二次電池4003bを設けることができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、ベルト型デバイス4006に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。ベルト型デバイス4006は、ベルト部4006aおよびワイヤレス給電受電部4006bを有し、ベルト部4006aの内部領域に、二次電池を搭載することができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、腕時計型デバイス4005に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。腕時計型デバイス4005は表示部4005aおよびベルト部4005bを有し、表示部4005aまたはベルト部4005bに、二次電池を設けることができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
表示部4005aには、時刻だけでなく、メールや電話の着信等、様々な情報を表示することができる。
また、腕時計型デバイス4005は、腕に直接巻きつけるタイプのウェアラブルデバイスであるため、使用者の脈拍、血圧等を測定するセンサを搭載してもよい。使用者の運動量および健康に関するデータを蓄積し、健康を管理することができる。
図29(B)に腕から取り外した腕時計型デバイス4005の斜視図を示す。
また、側面図を図29(C)に示す。図29(C)には、内部領域に二次電池913を内蔵している様子を示している。二次電池913は実施の形態4に示した二次電池である。二次電池913は表示部4005aと重なる位置に設けられており、高密度、且つ、高容量とすることができ、小型、且つ、軽量である。
腕時計型デバイス4005においては、小型、且つ、軽量であることが求められるため、実施の形態1で得られる正極活物質100を二次電池913の正極に用いることで、高エネルギー密度、且つ、小型の二次電池913とすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
<二次電池の作製および評価>
実施の形態3の作製フローに従って得られる比較例と、本実施の形態のサンプルの正極活物質を用いて二次電池を作製した。まず比較例と、本実施の形態のサンプルの正極活物質を用い、それぞれのサンプルに対して、アセチレンブラック(AB)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、活物質:AB:PVDF=95:3:2(重量比)で混合してスラリーを作製し、該スラリーをアルミニウムの集電体に塗工した。スラリーの溶媒としてNMPを用いた。PVDFは融点を134℃以上169℃以下の範囲に有する樹脂であり、熱安定性に優れた材料である。
集電体にスラリーを塗工した後、溶媒を揮発させた。その後、210kN/mで加圧を行った後、さらに1467kN/mで加圧を行った。以上の工程により、正極を得た。正極の担持量はおよそ7mg/cm2とした。密度は3.8g/cc以上であった。
作製した正極を用いて、CR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン型の電池セルを作製した。
対極にはリチウム金属を用いた。
溶媒である第1の電解質が有する第2の電解質には、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用い、第1の電解質には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)がEC:DEC=3:7(体積比)、で混合したものに、ビニレンカーボネート(VC)を2wt%添加したものを用いた。
セパレータには厚さ25μmのポリプロピレンを用いた。
正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。
遷移金属Mとしてコバルトを有し、不純物を特に有さない正極活物質として、市販のコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、セルシードC-10N)を用いた。これを比較例とした。
比較例および本実施の形態のサンプルの二次電池のサイクル特性を図13に示す。いずれも45℃で測定した。充電はCC/CV(0.5C,4.6V,0.05Ccut)、放電はCC(0.5C,2.5Vcut)とし、次の充電の前に10分休止時間を設けた。なお本実施例等において1Cは200mA/gとした。
添加元素(または不純物)としてマグネシウムおよびフッ素を有する本実施の形態のサンプルは、45℃という比較的高温にもかかわらず、良好なサイクル特性を示した。
正極活物質表面に点在する凸部を有する本実施の形態のサンプルは、比較例よりも放電容量が増加していた。たとえば比較例の放電容量が215.5mAh/gであるのに対して、本実施の形態のサンプルの放電容量は227.2mAh/gであった。
不純物としてチタンを有する本実施の形態のサンプルでは、正極活物質の表面に点在する凸部が形成され、凸部に一部または全部は、チタンを含む電界緩和領域を有する。そのため電界緩和領域の存在により電解質と正極活物質の界面における電位差を小さくすることができたと考えられる。
本実施の形態のサンプルでは過剰な添加元素(または不純物)が偏在している電界緩和領域の存在により、本体からマグネシウムをはじめとする過剰な不純物が内部から除かれ、内部において適切な金属元素濃度とできた。そのため二次電池としたときの抵抗が抑制され、放電容量が増加したと考えられた。