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JP2019034980A - 油脂の乾式分別法 - Google Patents

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JP2019034980A JP2016230442A JP2016230442A JP2019034980A JP 2019034980 A JP2019034980 A JP 2019034980A JP 2016230442 A JP2016230442 A JP 2016230442A JP 2016230442 A JP2016230442 A JP 2016230442A JP 2019034980 A JP2019034980 A JP 2019034980A
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賢司 村井
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賢司 村井
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Fuji Oil Holdings Inc
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Abstract

【課題】SUS含有油脂からSUSに富む油脂を得る、攪拌晶析と圧搾ロ過による乾式分別法において、晶析後の結晶画分と液体画分の分離性に優れた晶析方法の提供を課題とする。【解決手段】SUS含有量30重量%以上のSUS含有油脂からSUS含有量60重量%以上であるSUSに富む油脂を得る油脂の乾式分別において、該SUS含有油脂の曇り点より0〜2℃高い温度で結晶状のS3成分を該SUS含有油脂に対し5〜200重量ppm添加、混合して攪拌晶析する。SUSがStOStを主要成分とする場合は、S3成分は常温液状油脂の極度硬化油由来であるのが好ましい。【選択図】 なし

Description

この発明は、油脂の乾式分別に関し、詳細には、油脂の乾式分別において晶析工程中に特定のシード剤を添加、混合後に攪拌晶析を行い、その後に圧搾ロ過により結晶画分と液体画分に分離する方法に関するものである。
天然の油脂、天然の油脂の混合物、それらの水素添加油およびエステル交換油は融点の異なる各種トリグリセリドの混合物である。油脂はその物理的性状に合わせて、フライ用油脂、マーガリン/ショートニング用油脂、フィリング用油脂、チョコレート用油脂など幅広い用途に使用されている。油脂の物理的性状を調整するための加工技術のひとつとして、乾式分別や溶剤分別のような油脂の分別が広く実用化されている。
上記の溶剤分別は、結晶画分と液体画分の分画に古くから好適に利用されているが、大量に有機溶剤であるヘキサンやアセトンを使用する必要があるため安全・安心の観点から、近年ではより簡便で安全性の高い乾式分別法が広く検討されるようになっている。
乾式分別法は、一般的には溶剤を用いず加熱によって完全に融解された原料油脂を晶析槽内で攪拌しながら冷却し、結晶を析出(晶析)させた後、圧搾及び又はロ過によって結晶画分とロ液(未固化の低融点画分)に分画する方法であり、すでにパーム核油、バターオイル及びパーム油他の分別に広く利用されている。
乾式分別法はエネルギー効率の面でも溶剤分別より好ましい方法であるが、溶剤分別との対比において結晶画分と液体画分の固液分離性が低く、結晶画分に抱き込まれた液体画分の除去が容易でない、晶析後の結晶量が多すぎると結晶スラリーの粘度が上昇して圧搾やロ過による分離が困難になる等の問題があった。
上記のような問題を解決するために、種々の結晶改質法が提案されている。特許文献1は、高融点成分含有油脂類の分別において、融解状態の油脂類を上昇融点の0〜30℃高い温度まで冷却後、高融点成分の種晶を接種し、次いで分別温度まで冷却し、高融点成分を析出せしめる自然分別法である。本方法によると、高融点成分を収率よく、且つ濾過性よく分別し、しかも高融点成分を晶析するに必要な晶析時間を大幅に短縮可能とするものであるが、高融点成分の種晶としてイガグリ状β結晶含有スラリーの調製にかなりの長時間を要するという問題があった。
特許文献2は、油脂類のシード分別法、特に高圧処理したシードによる油脂類の分別方法に関し、組成の異なる複数の油脂成分を含む油脂類に10〜400MPaの高圧をかけて調製したシードを利用する方法である。本方法によると、シード調製時間の短縮、晶析時間の短縮およびろ過性の改善が可能であるが、高圧処理のための特殊な装置が必要となるため非効率という問題があった。
特許文献3は、原料油脂に炭素数4〜14の遊離脂肪酸を添加することにより、結晶化速度を速めるドライ分別方法に関し、結晶の純度を高く保ちながら結晶化速度をたかめた効率的なドライ分別を可能とするものである。本方法は有力なドライ分別方法の一つではあるが、分別後の低融点画分に遊離脂肪酸が濃縮されるため、低融点画分の精製負荷が極めて大きくなるという欠点があった。
特開昭54−77605号公報 特開2005−281462公報 特開2012−188584号公報
本発明は、油脂の攪拌晶析と圧搾ロ過による乾式分別法において、晶析後の結晶画分と液体画分の分離性に優れた晶析方法の提供を課題とする。
本出願人は、先に特願2010−285275号として、晶析前の原料油脂または晶析終了後の結晶スラリーに特定量のロ過助剤を添加、混合してから圧搾及び又はロ過することによって、優れた固液分離性を得るという分別方法を完成させたが、引き続き生産設備費と生産コストの低減に努力して来た。かかる状況の中から、攪拌晶析法における結晶スラリーの増粘の問題の解消法、結晶へのロ液抱き込み量の低減法などをさらに鋭意研究した結果、晶析工程中に特定のシード剤を添加することにより、晶析後の固液分離性を簡便に高めることができ、さらに高収率でSUSに富む結晶画分を得る方法を見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の第1は、攪拌晶析と圧搾ロ過により、SUS含有量30重量%以上のSUS含有油脂からSUS含有量60重量%以上であるSUSに富む油脂を得る油脂の乾式分別において、該SUS含有油脂の曇り点より0〜2℃高い温度で結晶状のS3成分を該SUS含有油脂に対し5〜200重量ppm添加、混合して攪拌晶析することを特徴とする晶析方法である。(SUS:2−不飽和、1,3−ジ飽和型グリセリド、S3:3飽和型トリグリセリド、S:炭素数16〜22の飽和脂肪酸、U:炭素数18の不飽和脂肪酸)
第2は、圧搾ロ過に供する結晶スラリーの結晶量が固体脂含量として10〜20重量%である第1記載の晶析方法である。
第3は、SUSがStOSt(St:ステアリン酸、O:オレイン酸)である第2記載の晶析方法である。
第4は、S3成分が常温液状油脂の極度硬化油由来の3飽和型トリグリセリドである第3記載の晶析方法である。
第5は、StOSt含有油脂が、シア脂、サル脂、アランブラキア脂、またはトリグリセリドの2位がオレイン酸に富む油脂の1,3位に選択的にステアリン酸を導入して得たエステル交換反応油のいずれか1種以上である第3または第4記載の晶析方法である。
晶析工程中のSUS含有油脂の曇り点より0〜2℃高い温度で、特定量の結晶状のS3成分を添加、混合してから晶析することにより、油脂の結晶画分と液体画分の分離性を向上させることができ、より純度の高い結晶画分を得ることができる。また、S3成分添加量が微量なため、得られたSUSに富む結晶画分中のS3含有量の増加によるSUSに富む油脂の結晶性を損ねることなく、優れた結晶性を有するSUSに富む油脂を得ることができる。
以下、本発明の乾式分別における晶析方法について詳細に説明する。
この発明における攪拌晶析とは、加熱により融解した原料油脂を、冷却開始から晶析完了まで終始攪拌しながら結晶化を行う工程である。また、圧搾ロ過とは、晶析した結晶スラリーに圧力をかけながらロ過して固液分離する工程であり、圧搾されたケーキ側が結晶画分、ロ液側が液体画分である。
この発明による乾式分別法は典型的には以下の手順で行うことが出来る。
1)SUS含有油脂を45℃以上、好ましくは50℃〜70℃に加熱して、完全に液化する。
2)液化したSUS含有油脂を攪拌装置及び冷媒による冷却装置が付いた晶析槽内で、攪拌しながら冷却する。
3)SUS含有油脂温度が、SUS含有油脂曇り点より0〜2℃高い温度となった時点で、結晶状のS3成分5〜200ppmを添加し、さらに冷却しながら攪拌晶析を行う。このときの冷媒温度は、晶析後にポンプ輸送可能な流動性のある結晶スラリーとなるよう適宜設定する。
4)晶析終了後に、結晶スラリーを圧搾ロ過器にポンプ輸送する。
5)圧搾ロ過しSUSが濃縮された結晶画分とロ液画分に分離する。
6)必要であれば、さらに1段目ロ液画分を1)〜4)の操作を繰り返して、SUSが濃縮された2段目結晶画分と2段目ロ液画分に分離する。
かくしてSUSに富む油脂が多段で分取され、それらは混合使用することもできる。
上記攪拌晶析工程での攪拌速度は、冷却開始から油温がSUS含有油脂曇り点より約5℃高い温度になるまでは特に制限が無いが、比較的速い方が冷却効率を高めて冷却時間も短縮出来るので有利である。油温がSUS含有油脂曇り点より約5℃高い温度まで低下してから晶析スラリーの圧搾ロ過前まではロ液成分の残液率(抱き込み)の低い分離効率の高い結晶を得るために、結晶が沈降しない範囲での低速攪拌が好ましい。なお、本発明における攪拌装置としては、晶析中に結晶が沈降しない程度に攪拌できるものであれば特に制限はないが、パドル型やプロペラ型の攪拌羽根や、国際公開特許2007/082766号開示の冷却筒そのものを攪拌素子として用いる攪拌装置などを利用することができる。
本発明に用いるSUS含有油脂としては、POP(P:パルミチン酸、O:オレイン酸)を多く含有するパーム油、パーム中融点部、パームステアリン及びパームオレイン、StOSt(St:ステアリン酸、O:オレイン酸)を多く含有するシア脂、サル脂、アランブラキア脂などが例示できる。また、トリグリセリドの2位がオレイン酸やリノール酸に富む油脂の1,3位に選択的にパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸の1種以上を導入したエステル交換反応油も利用することができる。本発明は、上記SUS含有油脂の中でも、特にStOStを多く含有する油脂の乾式分別へ好適に利用することができる。
本発明に用いるSUS含有油脂の曇り点とは、試料を冷却した時、試料が曇り始める温度を意味する。測定方法は、日本油化学協会制定の油脂基準分析試験法(2.2.7−1996 曇り点)の測定方法による。本発明においては、SUS含有油脂の曇り点より0〜2℃高い温度で結晶状のS3成分を該SUS含有油脂に対し5〜200重量ppm添加、混合して攪拌晶析する必要がある。曇り点未満の温度で結晶状のS3成分を添加すると、晶析後の結晶スラリーの粘度が高くなり圧搾ロ過工程へのポンプ輸送が困難になるとともに、圧搾ロ過工程での結晶へのロ液成分の残液率(抱き込み)が高くなり分別精度が低下するので好ましくない。逆に、曇り点より2℃を超えて高い温度で結晶状のS3成分を添加すると、晶析時間が長くなりすぎるとともに、圧搾ロ過工程での結晶へのロ液成分の残液率(抱き込み)が高くなる傾向がある。
上記のSUS含有油脂に対する結晶状のS3成分の添加量は5〜200重量ppmが適当である。5ppm未満であると、晶析時間が長くなりすぎるとともに、圧搾ロ過工程での結晶へのロ液成分の残液率(抱き込み)が高くなる傾向がある。逆に、200重量ppmを超えると、晶析後の結晶スラリーの粘度が高くなり圧搾ロ過工程へのポンプ輸送が困難になるとともに、圧搾ロ過工程での結晶へのロ液成分の残液率(抱き込み)が高くなる傾向があり、好ましくない。
本発明に用いるS3成分とは、炭素数16〜22の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とする3飽和型トリグリセリドを意味し、PPP,PPSt、PStSt,StStSt,StStA,StAA,StStB,StBB(P:パルミチン酸、St:ステアリン酸、A:アラキジン酸、B:べヘン酸)などが例示できる。SUS含有油脂のSUSがパーム油のようなPOPを主要成分とする分別原料油脂からPOPに富むパーム中融点部を得る場合は、PPP,PPStのようなS3成分を好適に利用することができる。SUSがシア脂、サル脂、アランブラキア脂肪などのStOStを主要成分とする原料油脂からStOStに富む油脂を得る場合は、PStSt,StStSt,StStA,StAA,StStB,StBBのようなS3成分の利用が好ましく、かかるS3成分は常温液状油脂の極度硬化油から容易に得ることができる。常温液状油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、ヒマワリ油、サフラワー油、パーム油低融点部、高エルシン酸含有菜種油などが例示できる。常温液状油の他に、シア脂、サル脂、アランブラキア脂肪などのStOSt(O:オレイン酸)含有油脂やそれらの分別油の極度硬化油、S3成分に富む分別高融点部もS3成分として使用可能である。
上記の結晶状のS3成分の添加方法としては、例えば、下記の方法が例示できる。
(1)S3成分含有油脂の結晶粉末を、あらかじめ融解、冷却してSUS含有油脂の曇り点より0〜2℃高い温度に設定したSUS含有油脂の一部を採取したものに添加し、ミキサーなどで10〜30秒間、混合、分散させてから、該分散液を元のSUS含有油脂に添加し、晶析を行う。
(2)S3成分含有油脂10〜30重量部と常温液状油90〜70重量部を混合し、80℃まで加熱して完全融解後、30〜40℃まで攪拌しながら緩慢冷却を行い、ペースト状の結晶状のS3成分含有シードを得る。この結晶状のS3成分含有シードをSUS含有油脂の曇り点より0〜2℃高い温度に温調したものを、SUS含有油脂の曇り点より0〜2℃高い温度となったSUS含有油脂に添加し、晶析を行う。
本発明の圧搾ロ過に供する結晶スラリーの好ましい結晶量は、固体脂含有量として10〜20重量%、好ましくは10〜15重量%である。10重量%未満であると圧搾ロ過での分離性は良好であるが、結晶画分の分別収率が低く効率的でない。20重量%を超えると、結晶スラリーの粘度が高くなり圧搾ロ過工程へのポンプ輸送が困難になるとともに、圧搾ロ過工程での結晶へのロ液成分の残液率(抱き込み)が高くなり分別精度が低下するので好ましくない。なお、固体脂含有量の測定は、BRUKER社製固体脂測定装置などによるNMR―パルスで簡便に測定出来、工程管理も容易である。
本発明における1段目の乾式分別で得られたSUSに富む結晶画分は、必要に応じて、昇温・一部溶解して高融点部を除去した画分にすることも出来る。分別原料油脂の組成によっては、結晶画分はSUS含有量が高まるのと併せて3飽和トリグリセリドや2飽和ジグリセリドなどの高融点成分含有量も高くなり、この高融点成分を除去しないままココアバター代用脂にするとチョコレートのテンパリング性作業性を低下(テンパリング中の増粘)やチョコレートの口溶けの低下が生じることがある。かかる問題を未然に防ぐため、結晶画分の圧搾ケーキを加熱昇温して結晶中のSUS成分の融点以下の油脂成分を溶解し、高融点成分だけを未溶解成分として残存させ、フィルタープレスなどでロ別するなどの方法で、高融点成分の大部分が除去されたSUSに富む画分を得ることが出来る。
本発明の晶析方法は、SUS含有量が30重量%以上のSUS含有油脂に好適に利用出来る。また、本発明により得られるSUSに富む油脂のSUS含有量は60重量%以上であることが望ましい。SUS含有量が60%未満であると、ココアバター代用脂としては使用可能であってもチョコレートのスナップ性や耐熱保型性が低下する問題があり好ましくない。ココアバターに匹敵するスナップ性や耐熱保型性を持つココアバター代用脂とするには、SUS含有量は60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%とするのが望ましい。
本発明の晶析方法は、SUSが実質的にStOSt(St:ステアリン酸、O:オレイン酸)からなるSUS含有油脂からStOStに富む油脂の分別に好適に利用出来る。StOSt含有油脂の1段だけの攪拌晶析による乾式分別では、結晶量の増加とともに結晶スラリーの増粘や固化が発生する傾向が強く、結晶画分とロ液画分の分離が困難になる。本発明の晶析と圧搾ロ過を多段に分けてSUSを分取することにより、StOStに富む油脂の効率的な分別が可能となる。
本発明におけるStOSt含有油脂は、シア脂、サル脂、アランブラキア脂肪、またはトリグリセリドの2位がオレイン酸に富む油脂の1,3位に選択的にステアリン酸を導入して得たエステル交換反応油のいずれか1種以上であり、本発明はこれらの油脂の分別に好適に利用することが出来る。トリグリセリドの2位がオレイン酸に富む油脂の1,3位に選択的に飽和脂肪酸を導入して得たエステル交換反応油とは、ハイオレイックひまわり油、ハイオレイック菜種油、茶実油、オリーブ油、パーム油軟質部、またはこれらの油脂の1,3位に選択的にステアリン酸を導入して得たエステル交換油の分別低融点部の1種以上の油脂とステアリン酸またはその低級アルコールエステル、例えばエチルエステル、を基質として、1,3位特異性リパーゼを用いてエステル交換した油脂である。
以下本発明を実施例により具体的に説明する。なお、各例におけるテスト結果は以下の測定値である。
SFC:結晶スラリーの固体脂含量%
SFC測定法:結晶スラリー 3±0.3gを長さ180mm,直径10mmの試験管に採取して、可及的速やかにBRUKER社製SFC測定装置 「minispec pc120 SFC測定装置」プローブに挿入し、結晶スラリーSFCをNMR−パルスで測定した。
StOSt含量、StOO含量:高速液体クロマトグラフィー測定値
結晶画分へのロ液残液率(%)=結晶画分のStOO含有量/ロ液画分のStOO含有量×100
なお、%は全て重量%である。なお、残液率(%)から晶析後の固液分離性を下記の基準で評価した。
固液分離性:
残液率24%未満:非常に良好、24〜26%未満:良好、26〜28%未満:やや不良、28%以上:不良
<トリグリセリドの2位がオレイン酸に富む油脂の1,3位に選択的にステアリン酸を導入して得たエステル交換油の調製>
ステアリン酸エチルとアルゼンチン産のハイオレイックひまわり油に1,3位特異性を有するリパーゼを触媒としてエステル交換を行い、その後エチルエステルを蒸留除去しエステル交換油A(StOSt含量40.8%、StOO含量27.3%。曇り点34.5℃)を得た。
実施例1
エステル交換油A 14Kgを60℃に加熱し完全に融解して、冷媒ジャケット付きの直径270mm、高さ350mmの晶析槽に入れ、35℃の冷媒を冷媒ジャケットに循環しながら攪拌冷却した。攪拌羽根は幅260mm、高さ260mmのパドル型を用い、油温が60℃から40℃に低下するまで攪拌速度を40rpmで冷却し、40℃に低下後に攪拌速度を12rpmに減速し、攪拌晶析した。
油温が60℃から35℃に低下した時点で分別原料油脂、エステル交換油Aから200mlを採取した。これに0.14gの市販StStSt粉末(β型安定結晶)を添加し、ジューサーミキサーを用いて10秒間の弱攪拌を行い、結晶状のS3成分としてStStSt粉末含有のシード分散液を調製した。このシード分散液全量を元の分別原料油脂、エステル交換油Aに添加し、さらに35℃の冷媒を循環しながら攪拌晶析を継続した。晶析時間が冷却開始時より42時間の時点で晶析を終了した。晶析後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして12.0%であり、スラリー粘度は6,700cPであった。
その後、圧搾ロ過機にポンプ移入し、2.0Kg/cm2/minで15分で30Kg/cm2まで昇圧し、さらに同圧で15分間保持して圧搾ロ過した。圧搾した結晶画分として、StOSt含有量72.2%に濃縮された結晶画分を分別収率30.2%で得た。結晶画分へのロ液残液率は22.9%と固液分離性は非常に良好であった。
なお、35℃は分別原料油脂の曇り点より0.5℃高い温度である。
実施例2
実施例1のStStSt粉末に代えて、S3成分含有油脂として高エルシン酸菜種極度硬化油粉末(脂肪酸組成:べヘン酸43.1%、アラキジン酸8%、ステアリン酸40%、パルミチン酸4%)を用いた。該粉末は、高エルシン酸菜種極度硬化油を80℃で完全融解後、60℃保温庫で1週間保持し、その後室温で固化させてから、すり鉢で微粉末化して調製したβ型結晶粉末である。実施例1同様に、シード分散液を添加して攪拌晶析を行い、合計晶析時間43時間の時点で晶析を終了した。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして12.8%であり、スラリー粘度は7,200cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過したところ、圧搾した結晶画分として、StOSt含有量71.6%に濃縮された結晶画分を分別収率32.3%で得た。結晶画分へのロ液残液率は23.8%と固液分離性は非常に良好であった。
実施例3
実施例1のStStSt粉末に代えて、実施例2記載の高エルシン酸菜種極度硬化油を用いた。高エルシン酸菜種極度硬化油20部とハイオレイックひまわり油80部を混合し、80℃まで加熱し完全融解後、35℃保温庫内で緩慢攪拌を行いながら24時間の冷却を行い、結晶状のS3成分としてペースト状のシード分散液を得た。該シード分散液を3.75gを、実施例1同様に分別原料油脂に添加して攪拌晶析を行い、合計晶析時間42時間の時点で晶析を終了した。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして13.0%であり、スラリー粘度は7,200cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過したところ、圧搾した結晶画分として、StOSt含有量72.0%に濃縮された結晶画分を分別収率31.6%で得た。結晶画分へのロ液残液率は23.2%と固液分離性は非常に良好であった。なお、該シード分散液中の高エルシン酸菜種極度硬化油の結晶型はα型であった。
比較例1
実施例1のStStSt粉末に代えて、StSt−DG粉末(試薬、1,2−DG及び1,3−DGの混合物、結晶型はβとβ’の混合物、DG:ジグリセリド)を用いた。実施例1同様に、シード分散液を添加して攪拌晶析を行い、合計晶析時間44時間の時点で晶析を終了した。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして12.4%であり、スラリー粘度は6,200cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過したところ、圧搾した結晶画分として、StOSt含有量70.5%に濃縮された結晶画分を分別収率32.0%で得た。結晶画分へのロ液残液率は26.8%と固液分離性はやや不良なものであった。
比較例2
シード剤を用いることなく、下記条件で晶析を行った。油温が60℃から高融点成分を析出させるために、25℃冷却水を循環しながら25℃に低下するまで12rpmの攪拌速度で攪拌冷却し、25に低下後に攪拌速度を10rpmに減速し、その後80分間保持してから、35℃冷却水を循環して35℃まで再加熱し、その後同温度で12rpmの攪拌速度で攪拌晶析を行い、合計晶析時間51.5時間の時点で晶析を終了した。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして7.8%であり、スラリー粘度は6,100cPであった。
その後、結晶スラリーを保持しながら圧搾ロ過機にポンプ移入し、実施例1同様に圧搾ロ過を行い、結晶画分として、StOSt含有量69.5%に濃縮された結晶画分を分別収率22.2%で得た。結晶画分へのロ液残液率は29.5%と固液分離性は不良なものであった。
表−1に、実施例1〜3及び比較例1〜2のテスト結果を示す。
表−1
Figure 2019034980
StStSt粉末または高エルシン酸菜種極度硬化油を結晶状のS3成分として10ppm添加した実施例1〜実施例3は、StSt−DGをシード剤として用いた比較例1やシード剤無添加の比較例2との対比において、ロ液残液率の低い結晶画分が得られ、固液分離性が非常に良好であった。比較例1及び比較例2では、ロ液残液率がやや高い傾向で、固液分離性はやや不良または不良であった。
実施例4
実施例1のStStSt粉末添加量を0.14gから1.4gに代えて、実施例1同様に結晶状のS3成分含有のシード分散液を得た。実施例1同様に、シード分散液を添加して攪拌晶析を行い、合計晶析時間48時間の時点で晶析を終了した。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして12.7%であり、スラリー粘度は8,200cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過したところ、圧搾した結晶画分として、StOSt含有量71.4%に濃縮された結晶画分を分別収率32.7%で得た。結晶画分へのロ液残液率は23.4%と固液分離性は非常に良好であった。
実施例5
実施例1のStStSt粉末添加量を0.14gから2.8gに代えて、実施例1同様に結晶状のS3成分含有のシード分散液を得た。実施例1同様に、シード分散液を添加して攪拌晶析を行い、合計晶析時間48時間の時点で晶析を終了した。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして14.4%であり、スラリー粘度は12,200cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過したところ、圧搾した結晶画分として、StOSt含有量70.9%に濃縮された結晶画分を分別収率34.9%で得た。結晶画分へのロ液残液率は24.9%と固液分離性は良好であった。
実施例6
実施例2の高エルシン酸菜種極度硬化油粉末添加量を0.14gから1.4gに代えて、実施例1同様に結晶状のS3成分含有のシード分散液を得た。実施例1同様に、シード分散液を添加して攪拌晶析を行い、合計晶析時間43時間の時点で晶析を終了した。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして12.0%であり、スラリー粘度は7,200cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過したところ、圧搾した結晶画分として、StOSt含有量70.6%に濃縮された結晶画分を分別収率32.7%で得た。結晶画分へのロ液残液率は25.1%と固液分離性は良好であった。
比較例3
実施例1のStStSt粉末添加量を0.14gから3.5gに代えて、実施例1同様に結晶状のS3成分含有のシード分散液を得た。実施例1同様に、シード分散液を添加して攪拌晶析を行い、合計晶析時間40時間の時点で晶析を終了した。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして14.0%であり、スラリー粘度は7,600cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過したところ、圧搾した結晶画分として、StOSt含有量69.7%に濃縮された結晶画分を分別収率36.6%で得た。結晶画分へのロ液残液率は27.0%と固液分離性はやや不良であった。
比較例4
実施例4のStStSt粉末1.4gに代えて、StOStの安定結晶フレーク(不二製油株式会社製 メラノSS400のケース充填品の表面を薄く削ってフレーク状とした)1.4gを用いて、実施例4同様にシード分散液を得た。実施例1同様に、シード分散液を添加して攪拌晶析を行い、合計晶析時間26時間の時点で晶析を終了した。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして7.9%であり、スラリー粘度は5,800cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過を試みたが、晶析後の結晶スラリーが急激に粘度上昇し、圧搾ロ過ができない状態であった。
表−2に、実施例4〜6及び比較例3〜4のテスト結果を示す。
表−2
Figure 2019034980
StStSt粉末または高エルシン酸菜種極度硬化油を結晶状のS3成分含有のシード剤として100ppmまたは200ppm添加した実施例4〜実施例6は、ロ液残液率の比較的低い結晶画分が得られ、固液分離性が良好であった。StStSt粉末を結晶状のS3成分含有のシード剤として250ppm添加した比較例3では、ロ液残液率がやや高い傾向で、固液分離性はやや不良であった。また、シード剤としてStOStの安定結晶フレークを用いた比較例4では、晶析終了後の結晶量の急激な増加によるスラリー粘度上昇が顕著で、圧搾ロ過に供することができなかった。
実施例7
実施例1の結晶状のS3成分含有のシード分散液の調製温度、シード分散液添加温度の35℃を、それぞれ36℃と変更し、36℃で攪拌晶析を計10時間、その後35℃まで冷却し35℃で計38時間の攪拌晶析を行った。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして10.8%であり、スラリー粘度は5,700cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過したところ、圧搾した結晶画分として、StOSt含有量72.0%に濃縮された結晶画分を分別収率28.3%で得た。結晶画分へのロ液残液率は23.9%と固液分離性は非常に良好であった。なお、36℃は分別原料油脂の曇り点より1.5℃高い温度である。
比較例5
実施例1の結晶状のS3成分含有のシード分散液の調製温度、シード分散液添加温度の35℃を、それぞれ34℃と変更し、34℃で攪拌晶析を計10時間、その後35℃まで加熱し35℃で計38時間の攪拌晶析を行った。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして15.0%であり、スラリー粘度は8,000cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過したところ、圧搾した結晶画分として、StOSt含有量69.0%に濃縮された結晶画分を分別収率36.0%で得た。結晶画分へのロ液残液率は28.5%と固液分離性は不良であった。なお、34℃は分別原料油脂の曇り点より0.5℃低い温度である。
比較例6
実施例1の結晶状のS3成分含有のシード分散液の調製温度、シード分散液添加温度の35℃を、それぞれ37℃と変更し、37℃で攪拌晶析を計10時間、その後35℃まで冷却し35℃で計38時間の攪拌晶析を行った。晶析終了後の結晶スラリーの結晶量は、SFCとして10.0%であり、スラリー粘度は6,000cPであった。実施例1同様に圧搾ロ過したところ、圧搾した結晶画分として、StOSt含有量69.0%に濃縮された結晶画分を分別収率23.0%で得た。結晶画分へのロ液残液率は30.0%と固液分離性は不良であった。なお、37℃は分別原料油脂の曇り点より2.5℃高い温度である。
表−3に、実施例1、実施例7及び比較例5〜6のテスト結果を示す。
表−3
Figure 2019034980
StStSt粉末10ppmを結晶状のS3成分含有のシード剤として、分別原料油脂の曇り点より0.5℃及び1.5℃高い温度で添加した実施例1及び実施例7では、ロ液残液率の低い結晶画分が得られ、固液分離性が非常に良好であった。分別原料油脂の曇り点より0.5℃低い温度で添加した比較例5及び2.5℃高い温度で添加した比較例6では、ロ液残液率が高い傾向で、固液分離性は不良であった。
本発明は、油脂の乾式分別において、油脂の結晶画分と液体画分の分離性を向上させることができ、より純度の高い結晶画分を得ることを可能とする、攪拌晶析による油脂の晶析方法に関するものである。

Claims (5)

  1. 攪拌晶析と圧搾ロ過により、SUS含有量30重量%以上のSUS含有油脂からSUS含有量60重量%以上であるSUSに富む油脂を得る油脂の乾式分別において、該SUS含有油脂の曇り点より0〜2℃高い温度で結晶状のS3成分を該SUS含有油脂に対し5〜200重量ppm添加、混合して攪拌晶析することを特徴とする晶析方法。(SUS:2−不飽和、1,3−ジ飽和型グリセリド、S3:3飽和型トリグリセリド、S:炭素数16〜22の飽和脂肪酸、U:炭素数18の不飽和脂肪酸)
  2. 圧搾ロ過に供する結晶スラリーの結晶量が固体脂含量として10〜20重量%である請求項1記載の晶析方法。
  3. SUSがStOSt(St:ステアリン酸、O:オレイン酸)である請求項2記載の晶析方法。
  4. S3成分が常温液状油脂の極度硬化油由来の3飽和型トリグリセリドである請求項3記載の晶析方法。
  5. StOSt含有油脂が、シア脂、サル脂、アランブラキア脂、またはトリグリセリドの2位がオレイン酸に富む油脂の1,3位に選択的にステアリン酸を導入して得たエステル交換反応油のいずれか1種以上である請求項3または請求項4記載の晶析方法。
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