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JP2019006615A - 化学強化ガラスの製造方法 - Google Patents

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JP2019006615A JP2017121419A JP2017121419A JP2019006615A JP 2019006615 A JP2019006615 A JP 2019006615A JP 2017121419 A JP2017121419 A JP 2017121419A JP 2017121419 A JP2017121419 A JP 2017121419A JP 2019006615 A JP2019006615 A JP 2019006615A
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祐輔 藤原
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出 鹿島
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Abstract

【課題】本発明は、強度および外観品質を兼ね備えた化学強化ガラスを製造する方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、ナトリウムを含むガラスを特定の塩を含む無機塩に接触させることによって、前記ガラス中のNaと前記無機塩中のKとをイオン交換する化学強化工程、前記化学強化工程の後に前記ガラスを酸処理する酸処理工程、前記酸処理工程の後に前記ガラスをアルカリ処理するアルカリ処理工程含む、化学強化ガラスの製造方法に関する。本発明の第一実施形態は、超音波洗浄における周波数および音圧を特定の条件とする。また、本発明の第二実施形態は、前記酸処理工程から前記アルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下で行う。【選択図】なし

Description

本発明は化学強化ガラスの製造方法に関する。
デジタルカメラ、携帯電話または携帯情報端末PDA(Personal Digital Assistants)等のフラットパネルディスプレイ装置において、ディスプレイの保護および美観を高めるために、画像表示部分よりも広い領域となるように薄い板状のカバーガラスをディスプレイの前面に配置することが行われている。ガラスは理論強度が高いものの、傷がつくことで強度が大幅に低下するため、強度が求められるカバーガラスには、イオン交換等によりガラス表面に圧縮応力層を形成した化学強化ガラスが用いられている。
フラットパネルディスプレイ装置に対する軽量化および薄型化の要求に伴い、カバーガラス自身も薄くすることが要求されている。したがってカバーガラスには、その目的を満たすために表面にさらなる強度が求められる。
ガラスの強度を向上させる手法の一つとして、特許文献1には、特定塩を含む無機塩による化学強化工程の後に酸処理工程およびアルカリ処理工程を行う化学強化ガラスの製造方法が開示されている。特許文献1に記載の製造方法によれば、化学強化後に研磨またはフッ酸等を用いたエッチング処理をせずに、従来の化学強化により得られる化学強化ガラスと比較して、面強度が顕著に高い化学強化ガラスを得ることができる。
一方、化学強化ガラスの量産工程においては、各工程間で超音波洗浄が実施されている。超音波洗浄においては、ガラスを洗浄液に浸漬して、該洗浄液に超音波振動を与える。このとき、洗浄液中の水分子などの粒子が高速に振動して水が急速に気化して気泡が発生し、該気泡が急激に凝縮して消滅することが繰り返され、局所的に高温高圧の状態になる。この現象をキャビテーションと呼ぶ。キャビテーションにより汚染物がガラスから剥離され、洗浄液中に容易に分散するようになるので、ガラスの洗浄を効果的に行うことできる。特に、ブラシ洗浄等の物理洗浄が困難な形状のガラスを洗浄する場合において、超音波洗浄は効果的な手法である。
特許文献2には、磁気ディスク用ガラス基板を超音波洗浄する洗浄工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、除去対象となる異物の大きさが主に1.0μm以下である時に、超音波の周波数を80kHz〜120kHzとし、超音波の音圧を1.5mV〜2.5mVとする製造方法が開示されている。
また、特許文献3には、洗浄剤を用いて、超音波洗浄によりガラス製品の白ヤケを洗浄して、ガラス製品から白ヤケを除去する方法において、20〜400kHzの周波数および10〜150mVの音圧の超音波洗浄により、ガラス製品の白ヤケを洗浄する方法が開示されている。
国際公開第2015/008763号 特開2010−238298号公報 特開2007−253065号公報
図1Aに示すように、特定塩を含む無機塩による化学強化工程を含む特許文献1に記載の化学強化ガラスの製造方法(以下、特定塩を含む無機塩による化学強化工程を含む製造方法とも略す)においては、ガラスの清浄度を高めるために、通常、化学強化処理の後の洗浄工程、酸処理工程における水リンス、アルカリ処理工程における水リンスおよびアルカリ処理工程後の洗浄工程を行うことが好ましく、これらの洗浄処理は超音波を印加して行う超音波洗浄とする場合がある。
また、図1Bに示すように、特定塩を含まない無機塩による従来の化学強化工程を含む化学強化ガラスの製造方法(以下、従来の化学強化工程を含む製造方法とも略す)では、通常、化学強化工程の後に洗浄工程を行う。
本発明者らは、特定塩を含む無機塩による化学強化工程を含む製造方法により、従来の化学強化工程を含む製造方法と比較して、得られる化学強化ガラスの面強度が飛躍的に向上するが、化学強化ガラスの外観品質を担保する為に通常の条件で超音波洗浄を実施するとガラスにダメージが付与され、化学強化ガラスの面強度が従来の化学強化工程を含む製造方法により得られる化学強化ガラスと同等程度まで低下するという問題があることを見出した。
このような問題は、特定塩を含む無機塩による化学強化工程を含む製造方法により、従来の化学強化工程を含む製造方法と比較して顕著に高い面強度を達成できるからこそ顕在化する課題である。
したがって、本発明は、強度および外観品質を兼ね備えた化学強化ガラスを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、特定塩を含む無機塩による化学強化工程の後に酸処理工程およびアルカリ処理工程を行う化学強化ガラスの製造方法において、超音波洗浄を特定範囲の条件とするか、または酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下で行うことにより、超音波洗浄により化学強化ガラスの強度が低下するのを抑制することができ、また超音波洗浄を複数回実施する場合には、超音波洗浄と超音波洗浄の間の工程をウェット環境下で行うことにより、強度および外観品質を兼ね備えた化学強化ガラスが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.ナトリウムを含むガラスを硝酸カリウムとKCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩とを含む無機塩に接触させることによって、前記ガラス中のNaと前記無機塩中のKとをイオン交換する化学強化工程、前記化学強化工程の後に前記ガラスを酸処理する酸処理工程、前記酸処理工程の後に前記ガラスをアルカリ処理するアルカリ処理工程を含む化学強化ガラスの製造方法であって、
下記(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1の洗浄処理をさらに含む化学強化ガラスの製造方法。
(1)前記酸処理工程の間における、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
(2)前記酸処理工程の後且つ前記アルカリ処理工程前における、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
(3)前記アルカリ処理工程の間における、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
(4)前記アルカリ処理工程の後に、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
2.前記(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1の洗浄処理を複数回行う場合、該洗浄処理間の工程をウェット環境下にて行う、前記1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
3.前記アルカリ処理工程の後に乾燥工程を含み、前記酸処理工程から前記乾燥工程の前までをウェット環境下にて行う、前記1または2に記載の化学強化ガラスの製造方法。
4.前記化学強化ガラスがカバーガラスである前記1〜3のいずれか1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
5.ナトリウムを含むガラスを硝酸カリウムとKCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩とを含む無機塩に接触させることによって、前記ガラス中のNaと前記無機塩中のKとをイオン交換する化学強化工程、前記化学強化工程の後に前記ガラスを酸処理する酸処理工程、前記酸処理工程の後に前記ガラスをアルカリ処理するアルカリ処理工程を含む化学強化ガラスの製造方法であって、
前記酸処理工程から前記アルカリ処理工程までの一連の工程を、ウェット環境下で行う化学強化ガラスの製造方法。
本発明の化学強化ガラスの製造方法は、特定の塩を含む無機塩による化学強化工程の後に酸処理工程およびアルカリ処理工程を行う製造方法である。本発明の第一実施形態によれば、周波数および音圧が特定範囲である超音波洗浄処理を含むことにより、超音波洗浄によるサブミクロンオーダーのダメージの発生を防いで、飛躍的に向上した面強度の低下を抑制し、強度および外観品質を兼ね備えた化学強化ガラスを製造することができる。
また、本発明の第二実施形態によれば、前記酸処理工程から前記アルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下で行うことにより、超音波洗浄をしなくとも外観品質を担保することができ、強度および外観品質を兼ね備えた化学強化ガラスを製造することができる。
図1Aは、特定塩を含む無機塩による化学強化工程を含む化学強化ガラスの製造方法の工程を説明するための概略図である。また、図1Bは、特定塩を含まない無機塩による化学強化工程を含む、従来の化学強化ガラスの製造方法の工程を説明するための概略図である。 図2は、超音波洗浄における音圧を測定する方法を説明するための概略図である。 図3(a)〜(d)は、本発明に係る化学強化ガラスの製造工程を表す模式図である。 図4は、ボールオンリング試験の方法を説明するための概略図である。 図5は、実施例または比較例で得られた化学強化ガラス(組成:ガラスA)の面強度を評価した結果を示す。 図6は、実施例または比較例で得られた化学強化ガラス(組成:ガラスB)の面強度を評価した結果を示す。 図7は、実施例または比較例で得られた化学強化ガラス(組成:ガラスC)の面強度を評価した結果を示す。 図8は、実施例または比較例で得られた化学強化ガラス(組成:ガラスD)の面強度を評価した結果を示す。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。ここで、本明細書において“質量%”と“重量%”、“質量ppm”と“重量ppm”とは、それぞれ同義である。また、単に“ppm”と記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。
本発明の化学強化ガラスの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)は、ナトリウムを含むガラスを硝酸カリウムとKCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩とを含む無機塩に接触させることによって、前記ガラス中のNaと前記無機塩中のKとをイオン交換する化学強化工程、前記化学強化工程の後に前記ガラスを酸処理する酸処理工程、前記酸処理工程の後に前記ガラスをアルカリ処理するアルカリ処理工程を含む。
〔超音波洗浄〕
本発明の第一実施形態は、下記(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1の洗浄処理を含むことを特徴とする。
(1)前記酸処理工程の間における、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
(2)前記酸処理工程の後且つ前記アルカリ処理工程前における、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
(3)前記アルカリ処理工程の間における、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
(4)前記アルカリ処理工程の後に、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
前記(1)〜(4)の洗浄処理について以下に説明する。
前記(1)について、酸処理工程の間において超音波洗浄を行うことにより、化学強化工程に用いた無機塩、酸処理工程中に生じるガラス溶出物等の付着物をガラス表面から効率的に取り除き、酸処理による効果を高めてガラスの強度および清浄度を向上することができる。酸処理工程の間における超音波洗浄の音圧は80mV以下であり、好ましくは60mV以下であり、より好ましくは40mV以下である。該音圧を80mV以下とすることにより、超音波洗浄による面強度の低下を抑制することができる。
前記(2)について、酸処理工程の後且つアルカリ処理工程前に超音波洗浄を行うことにより、酸処理工程に用いた酸、ガラス溶出物等の付着物をガラス表面から効率的に取り除き、アルカリ処理による効果を高めてガラスの強度および清浄度を向上することができる。酸処理工程の後且つアルカリ処理工程前に行う超音波洗浄の音圧は80mV以下であり、好ましくは60mV以下、より好ましくは40mV以下である。該音圧を80mV以下とすることにより、超音波洗浄による面強度の低下を抑制することができる。
前記(3)について、アルカリ処理工程の間において超音波洗浄を行うことにより、酸処理工程に用いた酸、アルカリ処理工程中に生じるガラス溶出物等の付着物をガラス表面から効率的に取り除き、アルカリ処理による効果を高めてガラスの強度および清浄度を向上することができる。該超音波洗浄の音圧は80mV以下であり、好ましくは60mV以下、より好ましくは40mV以下である。該音圧を80mV以下とすることにより、超音波洗浄による面強度の低下を抑制することができる。
前記(4)について、アルカリ処理工程の後に、超音波洗浄を行うことにより、アルカリ処理工程に用いたアルカリ、ガラス溶出物等の付着物をガラス表面から効率的に取り除き、ガラスの強度および清浄度を向上することができる。該超音波洗浄の音圧は80mV以下であり、好ましくは60mV以下、より好ましくは40mV以下である。該音圧を80mV以下とすることにより、超音波洗浄による面強度の低下を抑制することができる。
前記(1)〜(4)について、超音波の出力の下限は特に制限されないが、外観品質を担保する観点から、音圧は通常10mV以上とすることが好ましい。
超音波洗浄の音圧は、市販の超音波音圧計(例えば、株式会社カイジョー社製19001D型本体11003型センサー)を用いて、測定することができる。超音波振動子の位置と洗浄槽内の構成によって、洗浄槽内に音圧分布が生じることがあるため、洗浄槽内上部、中部、下部でそれぞれセンサー部分を手動でスウィープし、最大の音圧を測定する。
音圧の測定方法を説明するための概略図を図2に示す。図2に示すように、洗浄槽13内の上部のガラス板14、中部のガラス板15、下部のガラス板16のそれぞれにおいて、超音波音圧計11のセンサー部分12を矢印方向に手動でスウィープし、最大の音圧を測定する。
前記(1)〜(4)について、超音波の周波数は25kHz以上であり、好ましくは38kHz以上である。また、80kHz以下であり、好ましくは78kHz以下である。超音波の周波数を25kHz以上80kHz以下とすることにより、カバーガラス工程で付着する異物等に対して、効果的な洗浄効果を得ることができる。一般的に、周波数の値が小さいほどキャビテーションを発生させやすく、洗浄効果を高められる。一方、周波数の値が大きいほど超音波洗浄による面強度への影響度を低減することができる。
前記(1)〜(4)について、超音波洗浄の洗浄液としては特に限定されないが、例えば、界面活性剤を用いた水系のアルカリまたは、中性の洗剤、純水、イオン交換水等が挙げられる。前記(1)の酸処理工程の間における超音波洗浄および前記(3)のアルカリ処理工程の間における超音波洗浄の洗浄液としては、酸処理およびアルカリ処理を阻害しない観点から、純水またはイオン交換水が好ましい。アルカリまたは、中性の洗浄剤としては、例えば、苛性ソーダ、苛性カリを少量含む洗浄剤、グリコール系洗浄剤が挙げられる。
前記(1)〜(4)について、超音波洗浄の温度としては、通常5℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上であり、また、通常100℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以下である。
前記(1)〜(4)について、超音波洗浄の時間は短い程、超音波洗浄による面強度の低下を抑制することができる。超音波洗浄の時間は特に限定されず適宜設定することができるが、通常1〜100分間であることが好ましく、より好ましくは3〜60分間である。
〔ウェット環境〕
本発明の第一実施形態において、前記(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1の洗浄処理を複数回行う場合、該洗浄処理間の工程をウェット環境にて行うことが好ましい。
このことにより、強度および外観品質を向上することができる。
また、本発明の第一実施形態において、好ましくは酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下にて行うことで、外観品質をより向上することができる。例えば、第一実施形態においてアルカリ処理工程の後にさらに乾燥工程を含む場合、酸処理工程から乾燥工程の前まではウェット環境下にて行うことが好ましい。
本発明の第二実施形態は、酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下にて行うことを特徴とする。酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下で行うことで、超音波洗浄を行わなくとも外観品質を担保することもできる。
本明細書において、「一連の工程をウェット環境下で行う」とは、たとえば、各工程間について、ガラスを水に浸漬させた状態を維持すること、または、ガラスに水スプレーをしながら、ガラスが乾燥しない状態に維持することをいう。
以下、本発明の製造方法における各工程について説明する。
〔化学強化工程〕
化学強化工程は、ナトリウムを含むガラスを硝酸カリウムとKCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩とを含む無機塩に接触させることによって、前記ガラス中のNaと前記無機塩中のKとをイオン交換することにより、イオン交換された圧縮応力層をガラス表面に形成する工程である。
前記イオン交換により、ガラスの表面をイオン交換し、圧縮応力が残留する表面層を形成する。具体的には、ガラス転移点以下の温度でイオン交換によりガラス板表面のイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(典型的には、Liイオン、Naイオン)をイオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的には、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオン)に置換する。これにより、ガラスの表面に圧縮応力が残留し、ガラスの強度が向上する。
本発明の製造方法で使用されるガラスはナトリウムを含んでいればよく、成形、化学強化処理による強化が可能な組成を有するものである限り、種々の組成のものを使用することができる。具体的には、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノボロシリケートガラス等が挙げられる。
ガラスの製造方法は特に限定されず、所望のガラス原料を連続溶融炉に投入し、ガラス原料を好ましくは1500〜1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを板状に成形し、徐冷することにより製造することができる。
なお、ガラスの成形には種々の方法を採用することができる。例えば、ダウンドロー法(例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウン法およびリドロー法等)、フロート法、ロールアウト法およびプレス法等の様々な成形方法を採用することができる。
ガラスの厚みは、特に制限されるものではないが、化学強化処理を効果的に行うために、通常5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。また、後述する酸処理による面強度の向上効果が特に現れる観点から、ガラスの厚みは1m以下であることがさらに好ましく、0.7mm以下であることが特に好ましい。一方、ガラスの厚みが薄すぎるとガラスの強度が十分担保できなくなる場合があることから、0.4mm以上が好ましい。
また、ガラスの形状は特に限定されない。例えば、均一な板厚を有する平板形状、表面と裏面のうち少なくとも一方に曲面を有する形状および屈曲部等を有する立体的な形状等の様々な形状のガラスを採用することができる。
ガラスの組成としては特に限定されないが、例えば、以下の組成が挙げられる。
(i)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiOを50〜80%、Alを2〜25%、LiOを0〜10%、NaOを0〜18%、KOを0〜10%、MgOを0〜15%、CaOを0〜5%およびZrOを0〜5%を含むガラス
(ii)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiOを50〜74%、Alを1〜10%、NaOを6〜14%、KOを3〜11%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%およびZrOを0〜5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が75%以下、NaOおよびKOの含有量の合計が12〜25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス
(iii)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiOを68〜80%、Alを4〜10%、NaOを5〜15%、KOを0〜1%、MgOを4〜15%およびZrOを0〜1%含有するガラス
(iv)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiOを67〜75%、Alを0〜4%、NaOを7〜15%、KOを1〜9%、MgOを6〜14%およびZrOを0〜1.5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が71〜75%、NaOおよびKOの含有量の合計が12〜20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス
(v)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiOを55.5〜80%、Alを8〜20%、NaOを8〜25%、KOを0〜3%、TiOを0〜1%、ZrOを0〜5%、アルカリ土類金属RO(ROはMgO+CaO+SrO+BaOである)を1%以上含有するガラス
(vi)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiOを56〜72%、Alを8〜20%、Bを3〜20%、NaOを8〜25%、KOを0〜5%、MgOを0〜15%、CaOを0〜15%およびTiOを0〜1%含有するガラス
(vii)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiOを55.5〜76.5%、Alを5〜20%、NaOを8〜25%、KOを0〜5%、Pを0.1%以上、アルカリ土類金属RO(ROはMgO+CaO+SrO+BaOである)を1%以上含有するガラス
(viii)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを64〜71%、Alを2.1〜4.6%、NaOを12〜18%、CaOを6〜9%、MgOを5〜8%含有し、NaOおよびKOの含有量の合計が12〜19%であるガラス
(ix)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを67〜74%、Alを0.9〜2%、NaOを10〜14%、CaOを7〜10%、MgOを5〜8%含有し、NaOおよびKOの含有量の合計が10〜15%であるガラス
本発明の製造方法において、化学強化は、硝酸カリウム(KNO)を含有する無機塩にガラスを接触させることにより行なわれる。これによりガラス表面のNaイオンと無機塩中のKイオンとがイオン交換されることで、高密度な圧縮応力層が形成される。無機塩にガラスを接触させる方法としては、ペースト状の塩をガラスに塗布する方法、塩の水溶液をガラスに噴射する方法、融点以上に加熱した溶融塩の塩浴にガラスを浸漬させる方法などが可能であるが、これらの中では、溶融塩に浸漬させる方法が好ましい。
無機塩としては化学強化を行うガラスの歪点(通常500〜600℃)以下に融点を有するものが好ましく、本発明においては硝酸カリウム(融点330℃)を含有する無機塩である。硝酸カリウムを含有することでガラスの歪点以下で溶融状態であり、かつ使用温度領域においてハンドリングが容易となることから好ましい。無機塩における硝酸カリウムの含有量は50質量%以上であることが好ましい。
無機塩はさらに、KCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩を含有する。中でもKCO、NaCO、KHCO及びNaHCOからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩を含有することが好ましい。
上記塩(以下、「融剤」と称することもある。)は、Si−O−Si結合に代表されるガラスのネットワークを切断する性質を有する。化学強化処理を行う温度は数百℃と高いので、その温度下でガラスのSi−O間の共有結合は適度に切断され、後述する低密度化処理が進行しやすくなる。
なお、共有結合を切断する度合いはガラス組成や用いる塩(融剤)の種類、化学強化処理を行う温度、時間等の化学強化処理条件によっても異なるが、Siから伸びている4本の共有結合のうち、1〜2本の結合が切れる程度の条件を選択することが好ましいものと考えられる。
例えば融剤としてKCOを用いる場合には、無機塩における融剤の含有量を0.1mol%以上とし、化学強化処理温度を350〜500℃とすると、化学強化処理時間は1分〜10時間が好ましく、5分〜8時間がより好ましく、10分〜4時間がさらに好ましい。
融剤の添加量は表面水素濃度を制御する点から0.1mol%以上が好ましく、1mol%以上がより好ましく、2mol%以上が特に好ましい。また生産性の観点から各塩の飽和溶解度以下が好ましい。また、融剤を過剰に添加するとガラスの腐食につながるおそれがある。例えば、融剤としてKCOを用いる場合には、24mol%以下が好ましく、12mol%以下がより好ましく、8mol%以下が特に好ましい。
無機塩は、硝酸カリウム及び融剤の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の化学種を含んでいてもよく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等のアルカリ塩化塩やアルカリホウ酸塩などが挙げられる。これらは単独で添加しても、複数種を組み合わせて添加してもよい。
以下、ガラスを溶融塩に浸漬させる方法により化学強化を行う態様を例に、化学強化工程を説明する。
(溶融塩の製造1)
溶融塩は下記に示す工程により製造することができる。
工程1a:硝酸カリウム溶融塩の調製
工程2a:硝酸カリウム溶融塩への融剤の添加
(工程1a−硝酸カリウム溶融塩の調製−)
工程1aでは、硝酸カリウムを容器に投入し、融点以上の温度に加熱して溶融することで、溶融塩を調製する。溶融は硝酸カリウムの融点(330℃)と沸点(500℃)の範囲内の温度で行う。特に溶融温度を350〜470℃とすることが、ガラスに付与できる表面圧縮応力(CS)と圧縮応力層深さ(DOL)のバランスおよび強化時間の点からより好ましい。
硝酸カリウムを溶融する容器は、金属、石英、セラミックスなどを用いることができる。中でも、耐久性の観点から金属材質が好ましく、耐食性の観点からはステンレススチール(SUS)材質が好ましい。
(工程2a−硝酸カリウム溶融塩への融剤の添加−)
工程2aでは、工程1aで調製した硝酸カリウム溶融塩中に、先述した融剤を添加し、温度を一定範囲に保ちながら、攪拌翼などにより、全体が均一になるように混合する。複数の融剤を併用する場合、添加順序は限定されず、同時に添加してもよい。
温度は硝酸カリウムの融点以上、すなわち330℃以上が好ましく、350〜500℃がより好ましい。また、攪拌時間は1分〜10時間が好ましく、10分〜2時間がより好ましい。
(溶融塩の製造2)
上記の溶融塩の製造1では、硝酸カリウムの溶融塩の調製後に融剤を加える方法を例示したが、溶融塩はまた、下記に示す工程により製造することができる。
工程1b:硝酸カリウムと融剤の混合
工程2b:硝酸カリウムと融剤との混合塩の溶融
(工程1b―硝酸カリウムと融剤の混合―)
工程1bでは、硝酸カリウムと融剤とを容器に投入して、攪拌翼などにより混合する。複数の融剤を併用する場合、添加順序は限定されず、同時に添加してもよい。容器は上記工程1aで用いるものと同様のものを用いることができる。
(工程2b―硝酸カリウムと融剤との混合塩の溶融―)
工程2bでは、工程1bにより得られる混合塩を加熱して溶融する。溶融は硝酸カリウムの融点(330℃)と沸点(500℃)の範囲内の温度で行う。特に溶融温度を350〜470℃とすることが、ガラスに付与できる表面圧縮応力(CS)と圧縮応力層深さ(DOL)のバランスおよび強化時間の点からより好ましい。攪拌時間は1分〜10時間が好ましく、10分〜2時間がより好ましい。
上記工程1a及び工程2a又は工程1b及び工程2bを経て得られる溶融塩において、融剤の添加により析出物が発生する場合には、ガラスの化学強化処理を行う前に、当該析出物が容器の底に沈殿するまで静置する。この析出物には、飽和溶解度を超えた分の融剤や、融剤のカチオンが溶融塩中で交換された塩が含まれる。
前記溶融塩は、Na濃度が好ましくは500重量ppm以上であり、より好ましくは1000重量ppm以上である。溶融塩におけるNa濃度が500重量ppm以上であることで、後述する酸処理工程により、低密度層が深化しやすくなるため好ましい。Na濃度の上限としては特に制限はなく、所望の表面圧縮応力(CS)が得られるまで許容できる。
なお、化学強化処理を1回以上行なった溶融塩にはガラスから溶出したナトリウムが含まれている。したがって、Na濃度が既に上記範囲内であれば、ガラス由来のナトリウムをそのままNa源として用いてもよいし、Na濃度が満たない場合や、化学強化未使用の溶融塩を用いる場合には、硝酸ナトリウム等の無機ナトリウム塩を添加することにより調整することができる。
以上、上記工程1a及び工程2a、又は工程1b及び工程2bにより、溶融塩を調製することができる。
次に、調製した溶融塩を用いて化学強化処理を行う。化学強化処理は、ガラスを溶融塩に浸漬し、ガラス中の金属イオン(Naイオン)を、溶融塩中のイオン半径の大きな金属イオン(Kイオン)と置換することで行われる。このイオン交換によってガラス表面の組成を変化させ、ガラス表面が高密度化した圧縮応力層20を形成することができる[図3(a)〜(b)]。このガラス表面の高密度化によって圧縮応力が発生することから、ガラスを強化することができる。
なお実際には、化学強化ガラスの密度は、ガラスの中心に存在する中間層30(バルク)の外縁から圧縮応力層表面に向かって徐々に高密度化してくるため、中間層と圧縮応力層との間には、密度が急激に変化する明確な境界はない。ここで中間層とは、ガラス中心部に存在し、圧縮応力層に挟まれる層を表す。この中間層は圧縮応力層とは異なり、イオン交換がされていない層である。
化学強化処理は、具体的には、下記工程3により行うことができる。
工程3:ガラスの化学強化処理
(工程3−ガラスの化学強化処理−)
工程3では、ガラスを予熱し、上記工程1a及び工程2a又は工程1b及び工程2bで調製した溶融塩を、化学強化を行う温度に調整する。次いで予熱したガラスを溶融塩中に所定の時間浸漬したのち、ガラスを溶融塩中から引き上げ、放冷する。なお、ガラスには、化学強化処理の前に、用途に応じた形状加工、例えば、切断、端面加工および穴あけ加工などの機械的加工を行うことが好ましい。
ガラスの予熱温度は、溶融塩に浸漬する際の温度に依存するが、一般に100℃以上であることが好ましい。
化学強化温度は、被強化ガラスの歪点(通常500〜600℃)以下が好ましく、より高い圧縮応力層深さを得るためには特に350℃以上が好ましい。
ガラスの溶融塩への浸漬時間は1分〜10時間が好ましく、5分〜8時間がより好ましく、10分〜4時間がさらに好ましい。かかる範囲にあれば、強度と圧縮応力層の深さのバランスに優れた化学強化ガラスを得ることができる。
強度および外観品質を担保する観点から、化学強化工程と酸処理工程との間に、工水、イオン交換水等を用いてガラスの洗浄を行うことが好ましい。洗浄の条件は用いる洗浄液によっても異なるが、イオン交換水を用いる場合には0〜100℃で洗浄することが付着した塩を完全に除去させる点から好ましい。洗浄の際に超音波を印加してもよく、条件としては具体的には、周波数を好ましくは25kHz以上80kHz以下、音圧を好ましくは80mV以下とすることが好ましい。
〔酸処理工程〕
酸処理工程は、前記化学強化工程の後にガラスを酸処理する工程である。ガラスの酸処理とは、酸性の溶液中に、化学強化ガラスを浸漬させることによって行い、これにより化学強化ガラス表面のNa及び/又はKをHに置換することができる。
溶液は酸性であれば特に制限されずpH7未満であればよく、用いられる酸が弱酸であっても強酸であってもよい。具体的には塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸及びクエン酸等の酸が好ましい。これらの酸は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
酸処理を行う温度は、用いる酸の種類や濃度、時間によっても異なるが、100℃以下で行うことが好ましい。酸処理を行う時間は、用いる酸の種類や濃度、温度によっても異なるものの、10秒〜5時間が生産性の点から好ましく、1分〜2時間がより好ましい。
酸処理を行う溶液の濃度は、用いる酸の種類や時間、温度によって異なるものの、容器腐食の懸念が少ない濃度が好ましく、具体的には0.1質量%〜20質量%が好ましい。
強度および外観品質を担保する観点から、酸処理工程において超音波を印加してもよい。酸処理工程において超音波を印加する場合、具体的な条件としては、例えば、周波数を好ましくは25kHz以上80kHz以下とし、音圧を好ましくは80mV以下、より好ましくは60mV以下とすることが好ましい。
また、酸処理工程の間において超音波洗浄をしてもよく、その場合は〔超音波洗浄〕において(1)について上述した条件にて超音波洗浄することが好ましい。
酸処理工程を経ることにより、ガラス表面には圧縮応力層20の表層が変質した、具体的には低密度化された、低密度層10をさらに有することとなる[図3(b)〜(c)]。低密度層とは、圧縮応力層の最表面からNaやKが抜け(リーチングし)、代わりにHが入り込む(置換する)ことによって形成される。
低密度層は、後述するアルカリ処理により除去されるため、低密度層が厚いほどガラス表面が除去されやすい。したがって低密度層の厚みはガラス表面除去量の観点から5nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。低密度層の厚みは化学強化工程における融剤濃度、ナトリウム濃度、温度、時間等により制御することができる。
低密度層の密度はガラス表面除去性の観点から、イオン交換された圧縮応力層よりも深い領域(バルク)の密度に比べて低いことが好ましい。
低密度層の厚みはX線反射率法(X−ray−Reflectometry:XRR)によって測定した周期(Δθ)から求めることができる。低密度層の密度はXRRによって測定した臨界角(θc)により求めることができる。なお、簡易的には走査型電子顕微鏡(SEM)でガラスの断面を観察することによって、低密度層の形成と層の厚みを確認することも可能である。
強度および外観品質を担保する観点から、酸処理工程とアルカリ処理工程との間に、工水、イオン交換水等を用いてガラスの洗浄を行うことが好ましい。洗浄の際に超音波を印加する場合は、〔超音波洗浄〕において(2)について上述した条件で超音波洗浄することが好ましい。
〔アルカリ処理工程〕
アルカリ処理工程は、前記酸処理工程の後にガラスをアルカリ処理する工程である。アルカリ処理工程により、酸処理工程までに形成された低密度層10の一部又は全部を除去することができる[図3(c)〜(d)]。
アルカリ処理とは、塩基性の溶液中に、化学強化ガラスを浸漬させることによって行い、これにより低密度層の一部又は全部を除去することができる。溶液は塩基性であれば特に制限されずpH7超過であればよく、弱塩基を用いても強塩基を用いてもよい。具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム等の塩基が好ましい。これらの塩基は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ処理を行う温度は、用いる塩基の種類や濃度、時間によっても異なるが、0〜100℃が好ましく、10〜80℃がより好ましく、20〜60℃が特に好ましい。かかる温度範囲であればガラスが腐食するおそれがなく好ましい。
アルカリ処理を行う時間は、用いる塩基の種類や濃度、温度によっても異なるものの、10秒間〜5時間が生産性の点から好ましく、1分間〜2時間がより好ましい。アルカリ処理を行う溶液の濃度は、用いる塩基の種類や時間、温度によって異なるものの、ガラス表面除去性の観点から0.1質量%〜20質量%が好ましい。
強度および外観品質を担保する観点から、アルカリ処理工程において超音波を印加してもよい。アルカリ処理工程において超音波を印加する場合、具体的な条件としては、例えば、周波数を好ましくは25kHz以上80kHz以下、音圧を好ましくは80mV以下、より好ましくは60mV以下とすることが好ましい。
また、アルカリ処理工程の間において超音波洗浄をしてもよく、その場合は〔超音波洗浄〕において(3)について上述した条件により超音波洗浄することが好ましい。
上記アルカリ処理により、Hが侵入した低密度層の一部又は全部が除去され、面強度が向上した化学強化ガラスを得ることができる。さらに、低密度層が除去されることでガラス表面に存在していた傷も同時に除去されるので、この点も強度向上に寄与すると考えられる。
なお、除去される低密度層の量は、アルカリ処理の条件による。図3(d)には、低密度層10が全て除去された態様を示すが、低密度層10の一部が除去され一部が残存していてもよい。強度向上の観点からは、低密度層の全部が取り除かれずとも効果を得ることができるが、ガラスの透過率を安定的に確保する観点から低密度層の全部を取り除くことが好ましい。
外観品質を担保する観点から、アルカリ処理工程後に、工水、イオン交換水等を用いてガラスの洗浄を行うことが好ましい。洗浄の際に超音波を印加する場合は、〔超音波洗浄〕において(4)について上述した条件で超音波洗浄することが好ましい。
本発明の製造方法によれば、面強度が格段に向上し、且つ外観品質を兼ね備えた化学強化ガラスを安全かつ効率的に得ることができる。本発明の製造方法は、優れた面強度および外観品質が要求されるカバーガラス、並びに洗浄方法として超音波洗浄が適している2.5Dガラスまたは3Dガラス等の製造方法として好ましい。
本発明の製造方法により得られる化学強化ガラスの強度(面強度)は、ボールオンリング(Ball on Ring;BoR)試験により測定されるBoR強度により評価することができる。BoR試験の試験方法および条件は、具体的には次の通りである。
板厚t(mm)のガラス板を直径30mm、接触部が曲率半径2.5mmの丸みを持つステンレスからなるリング上に配置し、該ガラス板に直径10mmの鋼からなる球体を接触させた状態で、該球体を静的荷重条件下で該リングの中心に荷重するBoR試験により測定したBoR強度F(N)を評価する。
図4に、本発明で用いたBoR試験を説明するための概略図を示す。BoR試験では、ガラス板1を水平に載置した状態で、SUS304製の加圧治具2(焼入れ鋼、直径10mm、鏡面仕上げ)を用いてガラス板1を加圧し、ガラス板1の強度を測定する。
図4において、SUS304製の受け治具3(直径30mm、接触部の曲率R2.5mm、接触部は焼入れ鋼、鏡面仕上げ)の上に、サンプルとなるガラス板1が水平に設置されている。ガラス板1の上方には、ガラス板1を加圧するための、加圧治具2が設置されている。
ガラス板1の上方から、ガラス板1の中央領域を加圧する。なお、試験条件は下記の通りである。
加圧治具2の下降速度:1.0(mm/min)
この時、ガラスが破壊された際の、破壊荷重(単位N)をBoR強度とし、20回の測定の平均値をBoR平均強度とする。ただし、ガラス板の破壊起点がボール押しつけ位置より2mm以上離れている場合は、平均値算出のためのデータより除外する。
本発明の製造方法により得られる化学強化ガラスは、F≧1300×tを満たすことが好ましく、より好ましくはF≧1500×tである[式中、FはBoR試験により測定したBoR強度(N)であり、tはガラス基板の板厚(mm)である。]。BoR強度F(N)が前記範囲であることにより、薄板化した場合にも優れた強度を示す。
本明細書において、「外観品質が担保された」とは、ガラス面内に汚れ等の異物が無い状態をいい、照度1500ルクスの条件下で目視にてガラス表面を観察した場合に、欠点が無い状態をいう。
本発明の製造方法により得られる化学強化ガラスは、表面に研磨傷を有さないことが好ましい。ここで、本発明における研磨とは、砥粒を用いてガラス表面を削ることにより平滑化することをいう。また、研磨傷の有無はAFM(Atomic Force Microscope;原子間力顕微鏡)による表面観察によって判別することができ、10μm×5μm領域内に長さ5μm以上幅0.1μm以上のスクラッチが2本以上存在しないという場合に、表面に研磨傷がない状態ということができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<評価方法>
(面強度)
ガラス面強度は上述したボールオンリング試験の試験方法および条件に従い、BoR強度を測定した。BoR強度評価用のガラスの板厚は0.7mmとし、フロートバス内で溶融金属に触れていない面であるトップ面(T面)または該トップ面と対向するボトム面(B面)について評価した。
測定したBoR強度F(N)について、F≧2000×tである場合を「◎」、F≧1500×tである場合を「○」、F≧1300×tである場合を「△」と評価した。
(表面応力)
本発明の化学強化ガラスの圧縮応力層の圧縮応力値および圧縮応力層の深さは、表面応力計(例えば、折原製作所製FSM−6000)等を用いて測定することができる。また、圧縮応力層の深さは、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)等を用いて測定したイオン交換深さによって代用することができる。実施例では、表面圧縮応力値(CS、単位はMPa)および圧縮応力層の深さ(DOL、単位はμm)は折原製作所社製表面応力計(FSM−6000)を用いて測定した。
(除去量)
ガラスの除去量厚みは、薬液処理前後の重量を分析用電子天秤(HR−202i;AND製)により測定し、次の式を用いて厚み換算することにより求めた。
(片面あたりの除去量厚み)=[(処理前重量)−(処理後重量)]/(ガラス比重)/処理面積/2
このとき、ガラス比重を2.48(g/cm)として計算した。
(外観品質)
照度1500ルクスの条件下で、目視にてガラス表面を観察し、汚れや異物等の欠点が無い場合を○、汚れや異物等の欠点がある場合を×とした。
<化学強化ガラスの製造>
[実施例1〜16並びに比較例1〜7、10〜13、16〜19および21〜26]
(化学強化工程)
SUS製のカップに硝酸カリウム5100g、炭酸カリウム637g、硝酸ナトリウム220gを加え、マントルヒーターで450℃まで加熱して炭酸カリウム8mol%、ナトリウム10000重量ppmを含む硝酸カリウムを主成分とする溶融塩を調製した。50mm×50mm×0.7mmの表1に示す組成のガラスを用意し、それぞれ200〜400℃に予熱した後、450℃の溶融塩に120分間浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却することにより化学強化処理を行った。得られた化学強化ガラスは水洗いし、次の工程に供した。
ガラスA〜Dの組成(酸化物基準のモル%表示)を下記に示す。
ガラスA:SiO 64.2%、Al 8.0%、NaO 12.5%、KO 4.0%、MgO 10.5%、CaO 0.1%、SrO 0.1%、BaO 0.1%、ZrO 0.5%
ガラスB:SiO 68.0%、Al 10.0%、NaO 14.0、MgO 8.0%
ガラスC:SiO 67%、B 4%、Al 13%、NaO 14%、KO <1%、MgO 2%、CaO <1%
ガラスD:SiO 68.7%、Al 3.0%、NaO 14.2%、KO 0.2%、MgO 6.2%、CaO 7.8%
(酸処理工程)
6.0重量%の塩酸硝酸(HNO;関東化学社製)をビーカーに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整を行った。前記化学強化工程で得られた各ガラスを、調整した硝酸中に120秒間浸漬させ、酸処理を行い、その後純水で数回洗浄した。ガラスDは、同様の手順で、60℃に温度調整した硝酸中に600秒間浸漬させた。
(アルカリ処理工程)
4.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液をビーカーに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整を行った。前記酸処理工程で得られた各ガラスを、調整した水酸化ナトリウム水溶液中に120秒間浸漬させ、アルカリ処理を行い、その後純水で数回洗浄した。ガラスDは、同様の手順で、60℃に温度調整した硝酸中に600秒間浸漬させた。
(超音波洗浄)
ガラスを、下記超音波振動子を有する超音波洗浄機を用い、表1に示す条件により超音波洗浄した。
周波数26kHz:Kaijo社製26kHz、600W超音波振動子
周波数40kHZ:Branson社製40kHz、600W超音波振動子
アルカリ洗剤:ライオン社製TL−110を純水で30倍希釈
超音波洗浄における音圧は、〔超音波洗浄〕において上述した方法により、株式会社カイジョー社製19001D型本体11003型センサーを用い、洗浄槽内上部、中部、下部でそれぞれセンサー部分を手動でスウィープし、最大の音圧を測定した。
[比較例8、14、20および27]
(化学強化工程)
50mm×50mm×0.7mmであり、表1に示すガラス組成の板状ガラスを、実験室で、それぞれ350〜400℃に予熱した後、450℃のナトリウム2000質量ppmを含む硝酸カリウムを主成分とする溶融塩中に120分間浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却することにより化学強化処理を行った。
[比較例9、15および28]
化学強化工程後に表1に示す条件で超音波洗浄した以外は、それぞれ比較例8、14および27と同様に行った。
こうして得られた化学強化ガラスについて各種評価を行なった。ガラスの処理条件及び評価結果を表1および図5〜8に示す。表1において、「ウェット環境下」が「○」とは、酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下にて行ったことを示す。
Figure 2019006615
表1および図5〜8に示すように、本発明の製造方法により得られた化学強化ガラスは、比較例の化学強化ガラスと比較して、高い面強度を有するとともに、外観品質が担保されていた。
本発明の製造方法により得られた化学強化ガラスは、従来の化学強化工程の後に超音波洗浄を行った比較例9、15および28の化学強化ガラスと比較して、顕著に高い面強度および外観品質を有していた。また、本発明の第一実施形態による効果は、酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下にて行うことにより、より向上することがわかった。
また、特定の塩を含む溶融塩で化学強化した後に超音波洗浄を行わず、且つ酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下にて行った実施例1の化学強化ガラスは外観品質が担保されていた。一方、特定の塩を含む溶融塩で化学強化した後に超音波洗浄を行わず、且つ酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下にて行わなかった比較例7の化学強化ガラスは外観品質が担保されなかった。
また、酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下にて行い且つ酸処理時に超音波洗浄を行った実施例2、および酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下にて行い且つ酸処理時とアルカリ処理時の両方で超音波洗浄を行った実施例3の化学強化ガラスは、共に高い面強度を有するとともに、外観品質が担保されていた。
洗浄液として、アルカリ洗剤を用いた実施例7および16、並びに比較例6および26の化学強化ガラスは、純水を用いた以外は同条件で処理した実施例6および15、並びに比較例5および25の化学強化ガラスよりもそれぞれ高い面強度を示した。これは、アルカリ洗剤は一般的に表面張力が低いため、キャビテーション生成が阻害されているためと考えられる。
また、図5および図6に示すように、化学強化処理工程の後に酸処理工程およびアルカリ処理工程を行うことにより面強度が飛躍的に増加するが、超音波出力が増加するに伴い、面強度が低下することがわかった。これは、超音波洗浄によりガラス表面がダメージを受けるためであると考えられる。
これらの結果から、本発明の第一実施形態における(1)〜(4)で規定される周波数および音圧が特定範囲である超音波洗浄処理を含むか、または本発明の第二実施形態で規定されるように酸処理工程からアルカリ処理工程までの一連の工程をウェット環境下で行うことにより、特定の塩を含む無機塩を用いる化学強化後に酸処理工程およびアルカリ処理工程を行うことによる顕著に高い面強度が超音波処理により低下するのを抑制するとともに、外観品質を担保できることがわかった。
本発明の化学強化ガラスの製造方法によれば、化学強化後に研磨やフッ酸等を用いたエッチング処理をせずに、非常に面強度が高く且つ外観品質に優れた化学強化ガラスを得ることができる。すなわち、フッ酸等によるエッチング処理に伴う潜傷の拡大による外観不良や、研磨に伴う研磨傷のない、面強度且つ外観品質に優れた化学強化ガラスを得ることができる。
このため、化学強化処理前のガラスの表面傷、潜傷の有無や程度によらず、あらゆるガラスに適用可能であり汎用性が高い。そして溶液への浸漬により処理を進めることができるため、様々なガラス形状や大面積のガラスに対応しやすい等の点で効率的である。さらに、フッ酸等を用いたエッチング処理に比べ、安全性が高くまた低コストである。
11 超音波音圧計
12 センサー部分
13 洗浄槽
14,15,16 ガラス板
1 ガラス板
2 加圧治具
3 受け治具
10 低密度層
20 圧縮応力層
30 中間層

Claims (5)

  1. ナトリウムを含むガラスを硝酸カリウムとKCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩とを含む無機塩に接触させることによって、前記ガラス中のNaと前記無機塩中のKとをイオン交換する化学強化工程、前記化学強化工程の後に前記ガラスを酸処理する酸処理工程、前記酸処理工程の後に前記ガラスをアルカリ処理するアルカリ処理工程を含む化学強化ガラスの製造方法であって、
    下記(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1の洗浄処理をさらに含む化学強化ガラスの製造方法。
    (1)前記酸処理工程の間における、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
    (2)前記酸処理工程の後且つ前記アルカリ処理工程前における、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
    (3)前記アルカリ処理工程の間における、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
    (4)前記アルカリ処理工程の後に、周波数25kHz以上80kHz以下、音圧80mV以下の超音波による洗浄処理
  2. 前記(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1の洗浄処理を複数回行う場合、該洗浄処理間の工程をウェット環境下にて行う、請求項1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  3. 前記アルカリ処理工程の後に乾燥工程を含み、前記酸処理工程から前記乾燥工程の前までをウェット環境下にて行う、請求項1または2に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  4. 前記化学強化ガラスがカバーガラスである請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  5. ナトリウムを含むガラスを硝酸カリウムとKCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩とを含む無機塩に接触させることによって、前記ガラス中のNaと前記無機塩中のKとをイオン交換する化学強化工程、前記化学強化工程の後に前記ガラスを酸処理する酸処理工程、前記酸処理工程の後に前記ガラスをアルカリ処理するアルカリ処理工程を含む化学強化ガラスの製造方法であって、
    前記酸処理工程から前記アルカリ処理工程までの一連の工程を、ウェット環境下で行う化学強化ガラスの製造方法。
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