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JP2019064948A - 1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法 - Google Patents

1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法 Download PDF

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JP2019064948A JP2017190202A JP2017190202A JP2019064948A JP 2019064948 A JP2019064948 A JP 2019064948A JP 2017190202 A JP2017190202 A JP 2017190202A JP 2017190202 A JP2017190202 A JP 2017190202A JP 2019064948 A JP2019064948 A JP 2019064948A
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Takeshi Hosoi
健史 細井
峰男 渡辺
Mineo Watanabe
峰男 渡辺
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Abstract

【課題】高純度な1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を、取り扱いに優れたフッ素化剤を用いて、効率よく製造する方法を提供する。【解決手段】1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、液相中、2段階のフッ素化反応を行うことにより、副反応を抑制しながら効率的に1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得ることが可能である。【選択図】なし

Description

本発明は、多段階のフッ素化反応による1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン、以下、本明細書で、単にデスフルランと言うことがある。)の製造方法に関する。
1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルは、「デスフルラン」として知られている重要な吸入麻酔薬である。該吸入麻酔薬は、極めて低い生体内代謝率を有しており、生体に優しく安全性の高い薬剤として広く使用されている。デスフルランに関する製造方法は、出発物質として1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)、そして1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを用いてそれぞれをフッ素化することで製造する例が知られている。イソフルランに対するフッ素化反応は、フッ化水素を使用する方法(特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4)が主に知られている。また、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ素化反応も、フッ化水素を使用する方法(特許文献5、特許文献6、特許文献7)が報告されている。
なお、本発明にて開示する、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対する多段階のフッ素化反応によるデスフルランの製造方法は知られていない。
特開平2−279646号公報 米国特許第6800786号明細書 国際公開第2006−076324号 特表2010−533211号公報 西独国特許2361058号明細書 特開平2−104545号公報 特開平6−087777号公報
デスフルランの製造方法については、エーテル部位(「−O−」)を有する化合物の物性上、過酷な条件下でフッ素化反応を行った場合、エーテル部位の開裂に伴った分解物の副生が問題となってくる。また、原料中に含まれる不純物類もエーテル部位を持った類縁体であることが多く、デスフルランの製造工程においては、これら不純物も分解物の発生要因となることがある。分解物の副生を最小限にコントロールする場合、高純度な原料をデスフルランの製造工程に供する必要があると言える。
イソフルランを原料に用いる特許文献1〜4に記載の方法は、フッ化水素を用いたフッ素化を行うことにより、中程度の収率で目的とするデスフルランを得ている。しかし、フッ化水素自身、酸性物質でもあり、また、一般的に反応活性が高いとされる触媒を使用しているため、原料であるイソフルランや目的物であるデスフルランのエーテル部位の開裂に由来した不純物の副生が多く生じていた(なお、原料であるイソフルラン自体は、既に市販されている吸入麻酔薬の1つである。非常に高純度な化合物が入手可能であり、利便性に優れた化合物である)。
特許文献5、6及び7に記載の方法は、低収率であり、吸入麻酔剤としての製造方法としては採用しにくく、何れの方法も課題が残されたままである。また、特許文献7に記載の方法は、該文献の出発原料である1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルにおける、該エーテルの製造方法(塩素化)の選択性が悪く、高純度の該エーテルを得るためには煩雑な精製操作が必要であった。
そこで本発明は、調製の比較的容易な出発原料に対し、取り扱いに優れたフッ素化剤を用いて、高純度のデスフルランを効率良く製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記の特許文献に記載の方法を参考に、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを出発原料としたフッ素化反応によるデスフルランの製造を検討したところ、目的化合物であるデスフルランと共に、クロロホルムやフルオロジクロロメタンが副生することが判った。特に高い温度範囲、かつ、高い圧力範囲でフッ素化反応を行うことで、これが顕著に現れる(後述の参考例1参照)。
この副生物は、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、過酷なフッ素化条件に付すことでエーテル部位の開裂に伴った分解反応が生じて生成したものであると推測される。
さらに、この副生物は蒸留等の精製操作を行ってもデスフルランとの分離が極めて困難であるため、吸入麻酔剤であるデスフルランは、極めて高純度のものが要求されることを考慮すると、この副生物の生成は、高純度のデスフルランを製造する上で避けるべき課題の一つである。
Figure 2019064948
そこで本発明者らは、上記の問題点を鑑み、鋭意検討を行った。その結果、式[1]:
Figure 2019064948
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル(以下、本明細書において、単に「ジクロロメチルエーテル体」と言うことがある。)に対してフッ素化させる際、特に好ましいフッ素化条件を採用することにより、高純度のデスフルランを高い選択性で製造できるという知見を得た。
すなわち、ジクロロメチルエーテル体を、液相中、穏和な条件下でフッ素化反応させることにより、高い変換率で反応が進行し、式[2]:
Figure 2019064948
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテル(以下、本明細書において、単に「フルオロクロロメチルエーテル体」と言うことがある。)を、副反応を抑制しつつ、高い選択率で得ることができる。
式[2]のフルオロクロロメチルエーテル体は、それ自身、安定な化合物でエーテル部位の開裂に起因する副反応を生じることもなく、また、単離が容易である為、未反応の式[1]のジクロロメチルエーテル体やその他の化合物の、式[2]のフルオロクロロメチルエーテル体からの分離除去が容易であるという知見を得た。
続いて、単離した式[2]のフルオロクロロメチルエーテル体に対し、液相中、先のフッ素化反応よりも過酷な条件でフッ素化反応させることで高い変換率で反応が進行し、式[3]:
Figure 2019064948
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を、反応基質の分解を抑制しつつ、高い選択率で得られるという知見を得た。
本発明者らは、出発原料であるジクロロメチルエーテル体を、一旦、式[2]のフルオロクロロメチルエーテル体に誘導することで、該エーテルとその他の化合物(副生成物等)との分離除去が容易である性質を、実験を重ねることで見出し、その性質を利用することで、段階的とは言え、高純度のデスフルランを高選択率で製造できることが可能となった。
式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテル自身が持つ特異的な性質より熱安定性が向上し、続く2段階目のフッ素化反応時に、熱履歴に起因した、エーテル部位の開裂による不純物の副生を最小限に抑えることにより、高い変換率かつ高い選択率でデスフルランを得ることが可能になったものと推測される。この結果は、吸入麻酔薬として利用する為には高純度のものが必要不可欠であることを考慮すると、極めて好ましいフッ素化条件の一つと言える。
また、詳細は後述するが、フッ素化反応において、好ましい温度範囲、好ましい圧力条件等、特定の条件に付すことにより、既知の方法に比べて収率が向上すると言う知見も得た。
本発明は、出発原料として1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)を用いたフッ素化反応を採用するよりも、式[1]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを用いた方が、出発原料が持つ基質特異性と、本発明のフッ素化反応の条件との組み合わせが、デスフルランを製造する上で有利である(後述の比較例1参照)ことも考慮すると、本発明は、非常に優位性のある製造方法と言える。
すなわち、本発明は、以下の[発明1]〜[発明9]に記載する、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法を提供する。
[発明1]
式[1]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルをフッ素化反応させることにより、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を製造する方法において、
1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに、液相中、フッ化水素または「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより、式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルと、未反応の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルとを含む混合物を得る工程(第1工程)と、
第1工程で得た混合物を精製することにより、該混合物に含まれる1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを、該混合物から分離除去し、純度の高められた1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルを得る工程(第2工程)と、
第2工程で得た混合物に含まれる1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルに対し、液相中、フッ化水素または「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを製造する工程(第3工程)、
を含む、前記製造方法。
[発明2]
第1工程において、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」における有機塩基が、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンまたは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである、発明1に記載の製造方法。
[発明3]
第1工程における反応を、反応温度として0〜50℃の範囲で、かつ、反応圧力として0.1MPa〜2MPaの範囲で行う、発明1または2に記載の製造方法。
[発明4]
第2工程における精製を、蒸留操作により行う、発明1乃至3の何れかに記載の製造方法。
[発明5]
第3工程において、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」における有機塩基が、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンまたは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである、発明1乃至4の何れかに記載の製造方法。
[発明6]
第3工程における反応を、触媒の存在下、フッ化水素を反応させることにより行う、発明1乃至5の何れかに記載の製造方法。
[発明7]
前記触媒が四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズ、四塩化チタン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、及び五フッ化アンチモンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、発明6に記載の製造方法。
[発明8]
第3工程における反応を、反応温度として80〜180℃の範囲で、かつ、反応圧力として0.1MPa〜4MPaの範囲で行う、発明1乃至7の何れかに記載の製造方法。
[発明9]
式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルに対し、液相中、フッ化水素または「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を製造する方法。
本発明によれば、高純度な1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を効率的に製造できるという効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜実施することができる。
本発明は、2段階のフッ素化工程(第1工程、第3工程)と、1つの精製工程(第2工程)を含む製造方法であり、各工程の関係を以下に示す。
Figure 2019064948
[第1工程(1段階目のフッ素化)]
まず、第1工程について説明する。第1工程は、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに、液相中、フッ化水素または「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより、式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルと、未反応の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルとを含む混合物を得る工程である。
出発原料の式[1]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは、例えば、特許文献7に記載の方法(例えば、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対する、塩素(Cl)を用いた反応)を参考に合成することができる(後述の合成例)。この方法がジクロロメチルエーテル体を製造できる、有用な技術と言える。
なお、特許文献7に記載の方法を参考に式[1]のジクロロメチルエーテル体を製造した場合、ジクロロメチルエーテル体の他に、式[5]:
Figure 2019064948
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテル(本明細書では、単に「過塩素化物」または「トリクロロメチルエーテル体」と言うことがある)が生成する。この過塩素化物は、蒸留等の精製操作を行ってもジクロロメチルエーテル体から完全に分離することが難しい副生成物である(後述の合成例)。また、この過塩素化物は、第1工程〜第3工程を経由することにより、過塩素化物に対するフッ素化反応が進行し、本発明の目的物であるデスフルランと共に、過塩素化物に対するフッ素化体である、1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロジフルオロメチルエーテルも得られ、該エーテルは、構造上、デスフルランと類似している為、精製時におけるデスフルランとの分離が大変困難な化合物である(後述の参考例2参照)。
従って、デスフルランの一連の製造工程を考えた場合、式[1]のジクロロメチルエーテル体に含まれる過塩素化物を、本工程を行う前にできる限り低減させることが好ましい。
なお、本工程は、過塩素化物を含む式[1]のジクロロメチルエーテル体であってもフッ素化反応は十分進行し、続く第2工程における精製操作により、過塩素化物を効率的に分離除去できる(後述の実施例参照)。
本工程において、フッ素化反応を行う際はフッ化水素または「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」が好ましく用いられる。
有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体における有機塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等である。但し、これらに限定されず、有機合成において一般的に用いられる有機塩基も採用することができる。その中でもトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが好ましく、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが特に好ましい。これらの有機塩基は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
「有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体」の、有機塩基とフッ化水素のモル比は、100:1〜1:100の範囲で用いれば良いが、50:1〜1:50が好ましく、25:1〜1:25が特に好ましい。アルドリッチ社(Aldrich、2012−2014カタログ)から市販されている「トリエチルアミン1モルとフッ化水素3モルとからなる錯体」または「ピリジン〜30%とフッ化水素〜70%とからなる錯体」を用いるのが簡便である。
フッ化水素、または「有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体」中に含まれるフッ化水素の使用量は、式[1]で示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル1.0モルに対し、0.1〜200モルであり、好ましくは0.5〜10モルであり、さらに好ましくは1.0〜50モルである。フッ化水素量が0.1モル未満の場合は、反応における変換率が悪い。また、フッ化水素量が200モルを超える量の使用は経済的な観点から好ましくない。
本工程では、液相中でフッ素化反応を行う際、触媒を用いることができる。触媒を用いることにより反応が加速する場合がある。触媒の具体例としては、四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズ、四塩化チタン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、及び五フッ化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒が利用できる。中でも、四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズの使用が好ましく、特に四塩化スズが好適に用いられる。なお、これらの触媒は単独、または組み合わせて使用することができる。
上記の触媒を用いる際の使用量は、式[1]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル100質量部に対し、0.01質量部〜50質量部であり、好ましくは0.1質量部〜20質量部であり、さらに好ましくは0.5質量部〜10質量部である。触媒を50質量部を超える量を用いると、高沸点化合物からなるタール生成量が増加することがある。
なお、本工程は、後述するが、特定の反応温度範囲並びに特定の圧力範囲を採用し、触媒の非存在下で反応を行うことで、前述した副生成物(式[1]のジクロロメチルエーテル体由来の分解物)等)の生成を抑えつつ、高い選択率で式[2]のフルオロクロロメチルエーテル体を得ることが可能である。
本工程のフッ素化反応における反応温度は、−20℃〜150℃の範囲で行えば良く、通常は−10℃〜100℃が好ましく、中でも0℃〜80℃が特に好ましい。
本工程のフッ素化反応における圧力条件は、0.1MPa(絶対圧基準。以下、本明細書で同じ。)〜4MPaの範囲で行えば良く、通常は0.1MPa〜3MPaが好ましく、特に0.1MPa〜2MPaがより好ましい。
本工程における特に好ましい温度条件及び圧力条件は、0℃〜50℃の温度範囲であって、かつ、0.1MPa〜2MPaの圧力範囲である。更に、上記の条件に加え、触媒の非存在下で反応を行うのが、高い選択率で式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルを得る、特に好ましい態様の一つである。
本工程で用いる反応容器については、ステンレス鋼(SUS)の様な材質でできた耐圧反応容器やフッ化水素に対する耐食性能を有するテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂にて内部がライニングされた耐圧反応容器を用いて反応を行うことが好ましい。
反応時間は、通常は24時間以内であるが、使用したフッ化水素の使用量に起因した反応条件の違いにより、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。
本工程において、式[1]のジクロロメチルエーテル体へのフッ素化反応を出来る限り進行させる、すなわち、該エーテル体を殆ど消失する時点まで反応を行うことは、一見すると好ましい態様と考えられる。しかし、実際にそれを試みると、反応時間が長期化する、また、式[1]のジクロロメチルエーテル体自体、フッ素化反応の条件によりエーテル部位が開裂し(分解反応が生じる)、デスフルランとは分離困難なクロロホルムやフルオロジクロロメタンを副生することが多い。従って、本工程では、フッ素化を行うにあたり、例えば、前述した特定の温度範囲、かつ、特定の圧力範囲で、ガスクロマトグラフィー等の分析手段により反応の進行状況を追跡しながらフッ素化反応を行い、式[2]のフルオロクロロメチルエーテルの生成を確認しながら、未反応の式[1]のジクロロメチルエーテル体の分解反応が生じないよう、進めることが好ましい。
式[1]のジクロロメチルエーテル体の変換率(%)としては、概ね95%程度で本工程の反応の終点とすると良い。なお、95%を超えるよう、反応を続けることは可能であるが、式[2]のフルオロクロロメチルエーテルの生成よりも、式[1]のジクロロメチルエーテル体の分解反応が多くなってしまう場合がある。
このように、本工程では、例えば上記の好ましい実施態様を採ることにより、未反応の式[1]のジクロロメチルエーテル体は反応系内に残存することになるが、該エーテル体の分解反応を回避でき、また、続く第2工程の精製操作で回収し、再び第1工程の出発原料として利用できる。
なお、本工程における生成物は、式[2]のフルオロクロロメチルエーテルの他、未反応の式[1]のジクロロメチルエーテル体であるが、条件によっては第3工程の目的物であるデスフルランも微量生成することがある(ここで生成した微量のデスフルランは、結果的に、最終製品として単離できる。また、他の反応に影響を与えない為、本工程〜第2工程でデスフルランを取り除く必要は必ずしもない)。さらに、式[1]のジクロロメチルエーテル体の、該エーテル体の製造方法如何により、該エーテル体由来の副生成物(前述の式[5]の過塩素化物)も含まれる場合がある。デスフルラン以外の化合物については、続く第2工程を経由することにより前記化合物を分離除去できる。この操作により、第3工程(フッ素化反応)における副反応を抑制することが可能となる。
[第2工程(精製工程)]
次に、第2工程について説明する。第2工程は、第1工程で製造した、式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルと、未反応の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルとを含む混合物を精製することにより、該混合物中に含まれる1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを、該混合物から分離除去し、純度の高められた1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルを得る工程である。
本工程は、高純度の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルを得ることと共に、式[2]のフルオロクロロメチルエーテル体に含有している、未反応の式[1]のジクロロメチルエーテル体を分離除去することを主としているが、本工程では、前記で述べたように、式[1]のジクロロメチルエーテル体の、それを特定の製造方法で製造した際に副生する化合物(前述の式[5]の過塩素化物)についても、本工程で分離することが可能である。
第1工程の出発原料である式[1]のジクロロメチルエーテル体は、前記で述べた通り、フッ素化反応の条件により、エーテル部位の開裂に伴った分解反応が生じ、目的化合物であるデスフルランと分離困難な、クロロホルムやフルオロジクロロメタンを副生することが多い。そのため、第3工程のフッ素化反応を行う前に、式[1]のジクロロメチルエーテル体を本工程で可能な限り分離除去しておくことは、高純度なデスフルランを得る上で好ましい態様である(なお、これに先立ち、第1工程において、式[1]のジクロロメチルエーテル体をできるだけ低減できるよう、また、ガスクロマトグラフィー等の分析手段で式[1]のジクロロメチルエーテル体の分解反応が生じないようフッ素化を進行させることは、本工程での精製の負荷を軽減できる為、より好ましい)。本工程における精製操作は、蒸留、活性炭処理、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の操作があり、何れの方法でも高い化学純度で精製することが可能であるが、これらのうち、蒸留操作が最も簡便かつ効率的である為、好ましく用いられる。
蒸留操作を行う際、第1工程のフッ素化工程の反応液をそのまま蒸留精製に供することも可能であるが、必要に応じ、水洗浄等の後処理を行うことにより、反応に使用したフッ素化剤を除去した後、得られる反応粗体をそのまま蒸留に用いても構わない。また、蒸留操作については、後述する理論段数、還流比でもって「分別蒸留」(fractional distillation)(なお、ここで言う「分別蒸留」についての説明を行うにあたり、便宜上、「蒸留」または「精密蒸留」と言うことがある)を行うのが好ましい。蒸留を行うことで、式[1]のジクロロメチルエーテル体を分離・除去することが可能となるが、あまり完全に除去しようとすると、蒸留の負荷が過大にかかることになる。例えば、後述するデスフルランの製造・精製に影響を与えない程度までに低減させることが好ましい。概ね、1000ppm未満まで低減できれば、本発明の効果は十分得ることができる。
蒸留搭の段数は、不純物等の低減の度合いに応じて変わるが、例えば、2以上、50以下であればよい。中でも、3以上、40以下が好ましく、5以上、30以下がより好ましい。還流比は0.5〜8.0、好ましくは0.5〜7.0、より好ましくは0.5〜6.0である。
蒸留塔に充填する充填物としては、規則性充填物、不規則性充填物の何れも利用できる。規則性充填物としては、通常用いられるもので良く、例えば、スルザーパッキング、メラパック、テクノパック、フレキシパック等が挙げられる。不規則性充填物としては、通常用いられるもので良く、例えば、ヘリパック、ラシヒリング、ディクソンパッキング等が挙げられる。
本工程における使用可能な容器の材質については、フッ化水素等に対する耐食性能を有するステンレス鋼(SUS)または、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂にて内部がライニングされた蒸留容器を用いることが好ましい。ただし、後処理操作により酸を除去した反応粗体を蒸留する場合は、通常のホウケイ酸ガラスの蒸留容器を用いても構わない。
[第3工程(2段階目のフッ素化)]
次に、第3工程について説明する。本工程は、第2工程で得た混合物中に含まれる、式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルに対し、液相中、フッ化水素または「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを製造する工程である。
本工程のフッ素化反応におけるフッ素化剤は、フッ化水素、または「有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体」を用いるが、
・フッ素化剤における有機塩基の種類
・「有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体」における、有機塩基とフッ化水素のモル比
・フッ化水素、あるいは「有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体」中に含まれるフッ化水素の、原料(本工程では式[2]のフルオロクロロメチルエーテル体)1.0モルに対する使用量
については、前述した第1工程に記載の条件と全く同一の条件で実施することができる。更に、本工程では、液相中でフッ素化反応を行う際、触媒の非存在下で反応を行うこともできるが、触媒を用いる際の触媒の具体例な種類、触媒の使用量や使用形態についても、前述した第1工程に記載の条件と同様の条件で実施できる為、本工程における上記で述べた形態は、重複記載を避ける為、繰り返しの記載を省略する。
本工程における反応温度は、−20℃〜250℃の範囲で行えば良く、通常は20℃〜200℃が好ましく、中でも80℃〜180℃が特に好ましい。
本工程における圧力条件は、0.1MPa〜6MPaの範囲で行えば良く、通常は0.1MPa〜5MPaが好ましく、特に0.1MPa〜4MPaがより好ましい。
本工程では、第1工程におけるフッ素化反応と比べ、好ましい反応温度、好ましい反応圧力が異なる為、以下に条件を述べる。
本工程における特に好ましい条件として、80℃〜180℃の温度範囲であって、かつ、0.1MPa〜4MPaの圧力範囲を採用することで、高い選択率で式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを得ることが可能である。更に、本工程では、上記の特定の温度範囲、かつ、特定の圧力範囲であって、触媒の存在下でフッ素化反応を行う、すなわち、反応温度が80℃〜150℃、圧力条件が0.1MPa〜3MPaの条件であって、触媒として四塩化スズを用いてフッ素化反応を行うことで、目的物のデスフルランを高い選択率で製造できる。このことは本工程における特に好ましい態様の一つと言える。
本工程における反応容器については、ステンレス鋼(SUS)の様な材質でできた耐圧反応容器やフッ化水素に対する耐食性能を有するテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂にて内部がライニングされた耐圧反応容器を用いて反応を行うことが好ましい。
反応時間は、通常は24時間以内であるが、使用したフッ化水素の使用量に起因した反応条件の違いにより、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。
また、反応終了後の反応液に対し、水洗浄等の後処理を行い、蒸留等の精製操作を用いることにより、高純度のデスフルランを得ることができる。なお、第2工程で用いた蒸留操作の条件を、本工程にそのまま適用させることが可能であり、好ましい態様である。
[実施例]
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」は、原料または生成物をガスクロマトグラフィー(特に記述のない場合、検出器はFID)によって測定して得られた組成の「面積%」を表す。
[合成例:式[1]のジクロロメチルエーテル体の製造]
Figure 2019064948
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル500g(3.79mol、1.00当量)を量り取った。また、冷却管コンデンサーの出口には、反応で副生する塩酸を吸収する水トラップを接続した。冷却下、反応器の外側より400Wの高圧水銀ランプ(ウシオ社製)にて紫外線を照射しながら、塩素537g(7.58mol、2.00当量)を発熱に注意しながら、12時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応粗体675gを得た。得られた反応粗体をガスクロマトグラフィーによる分析へ供すると、原料の1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルは未検出、低次塩素化物の1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルは3.0%、式[1]で表される目的物の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは72.8%、過塩素化物の1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは18.8%、その他は5.4%であった。得られた反応粗体については理論段数35段の蒸留塔を用い、常圧蒸留を行ったところ、主留分(82℃)として411g、反応収率54%にて回収した。回収した主留分をガスクロマトグラフィーによる分析へ供すると、低次塩素化物の1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルは0.1%、式[1]で表される目的物の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは95.9%、過塩素化物の1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは2.8%、その他は1.2%であった。
[物性データ]
・1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.72(3H,s),5.28 (1H,dq,J=60.0,3.2Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−84.33(3F,s),−146.04(1F,d,J=60.7Hz)
・1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):5.57(2H,dd,J=9.5,9.9Hz),5.73(1H,dq,J=59.4,3.2Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−83.91(3F,s),−152.60(1F,d,J=57.7Hz)
・式[1]:1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):6.05(1H,dq,J=54.2,3.2Hz),7.27(1H,s)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−83.68(3F,s),−148.66(1F,d,J=54.8Hz)
・式[5]:1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):6.10(1H,dq,J=52.7,3.2Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−83.38(3F,s),−148.06(1F,d,J=52.2Hz)
[有機塩基とフッ化水素とからなる錯体の調製例]
攪拌機、圧力計を備えた1000mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器にピリジン158g(2mol、1当量)を量り取り、ドライアイスにて冷却した。その後、発熱に注意しながらフッ化水素200g(10mol、5当量)を内温20℃以下にてゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温にて1時間攪拌することにより、ピリジン・フッ化水素錯体(モル比、ピリジン:フッ化水素=1:5)を調製した。
Figure 2019064948
攪拌機、圧力計、そしてコンデンサーを備えた500mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器へ、前述の合成例で調製した式[1]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル201g(1mol、1当量)を量り取り、ドライアイスにて冷却した。冷却下、フッ化水素100g(5mol、5当量)を発熱に注意しながら導入した後、50℃まで昇温することで反応を開始した。昇温後、反応圧力を1.0MPaでコントロールするため、副生する塩酸はコンデンサーを通して系外へ除去しながら、反応を15時間行った。反応後、反応液に対するガスクロマトグラフィー組成分析の結果、目的物である式[2]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルは85.1%、未反応の原料である式[1]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは4.8%、最終目的物である式[3]のデスフルランは4.1%、原料に含まれる不純物である式[5]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは2.4%であった。
前記反応液を冷却下、イオン交換水500g、次いで5%重曹水250gを用いて洗浄することにより、過剰に用いたフッ化水素を除去することで、反応粗体187gを得た。反応粗体に関しては理論段数25段の蒸留塔を用いて常圧蒸留を行ったところ、主留分(50℃)として149g、反応収率81%にて目的物である式[2]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルを得た。主留分の組成は、目的物である式[2]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルが94.6%、最終目的物である式[3]のデスフルランが4.9%であった。主留中には未反応の原料である式[1]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルや原料に含まれる不純物である式[5]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは未検出であった。
[物性データ]
・式[2]:1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):6.06(1H,dq,J=54.8,2.9Hz),7.06(1H,dd,J=56.6,0.9Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−79.28(1F,dd,J=57.8,11.6Hz),−84.07(3F,s),−147.78(1F,dq,J=54.9,5.8Hz)
Figure 2019064948
攪拌機、圧力計、そしてコンデンサーを備えた500mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器へ実施例1で得られた式[2]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテル100g(542mmol、1当量)量り取り、ドライアイスにて冷却した。冷却下、フッ化水素54g(2.71mol、5当量)を発熱に注意しながら導入した後、100℃まで昇温することで反応を開始した。昇温後、反応圧力を1.5MPaでコントロールするため、副生する塩酸はコンデンサーを通して系外へ除去しながら、反応を24時間行った。反応後の、反応液に対するガスクロマトグラフィー組成分析の結果、目的物である式[3]のデスフルランは98.6%、未反応の原料である式[2]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルは1.0%であり、反応基質(式[2])のエーテル部位の開裂に由来する分解物は未検出であった。反応液は冷却下、イオン交換水250g、次いで5%重曹水125gを用いて洗浄することにより、過剰に用いたフッ化水素を除去することで、反応粗体84gを得た。反応粗体に関しては理論段数25段の蒸留塔を用いて常圧蒸留を行ったところ、主留分(23℃)として72g、反応収率79%にて目的物である式[3]で示すデスフルランを得た。主留分の組成は、目的物である式[3]のデスフルランが99.9%であった。主留中には未反応の原料である式[2]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルや反応基質(式[2])のエーテル部位の開裂に由来する分解物は未検出であった。
[物性データ]
・式[3]:1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン):
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):5.91(1H,dq,J=2.8Hz,54.2Hz),6.43(1H,t,J=70.5Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−146.5(1F,d,J=54.8Hz),−86.8(1F,dd,J=69.3Hz,J=161.7Hz),−85.5(1F,dd,J=69.3Hz,J=161.7Hz),−84.6(3F,s)
Figure 2019064948
攪拌機、圧力計、そしてコンデンサーを備えた500mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器へ実施例1で得られた式[2]で示される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテル40g(217mmol、1当量)量り取り、ドライアイスにて冷却した。冷却下、別途調製したピリジン・フッ化水素錯体(モル比、ピリジン:フッ化水素=1:5)78g(434mmol、2当量)を発熱に注意しながら導入した後、120℃まで昇温することで反応を開始した。昇温後、反応圧力を1.5MPaでコントロールするため、副生する塩酸はコンデンサーを通して系外へ除去しながら、反応を15時間行った。反応後のガスクロマトグラフィー組成分析の結果、目的物である式[3]のデスフルランは96.2%、未反応の原料である式[2]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルは2.6%であり、反応基質(式[2])のエーテル部位の開裂に由来する分解物は未検出であった。
Figure 2019064948
圧力計、そしてコンデンサーを備えた100mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器へポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、合成例で調製した式[1]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル10g(49.8mmol、1当量)を量り取り、ドライアイスにて冷却した。冷却下、フッ化水素10g(500mmol、10当量)を発熱に注意しながら導入した後、室温まで昇温することで反応を開始した。昇温後、反応圧力を0.5MPaでコントロールするため、副生する塩酸はコンデンサーを通して系外へ除去しながら、反応を24時間行った。反応後のガスクロマトグラフィー組成分析の結果、目的物である式[2]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルは78.1%、未反応の原料である式[1]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは5.4%、最終目的物である式[3]のデスフルランは13.5%、原料に含まれる不純物である式[5]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは2.3%であった。また、最終目的物である式[3]のデスフルランと分離困難である、式[5]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルが部分フッ素化された1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロクロロメチルエーテルや反応基質(式[1])のエーテル部位の開裂に由来する分解物は未検出であった。
Figure 2019064948
圧力計、そしてコンデンサーを備えた100mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器へポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、別途調製した、ガスクロマトグラフィー組成99.0%の式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテル10g(54.2mmol、1当量)、四塩化スズ0.71g(2.71mmol、5mol%)を量り取り、ドライアイスにて冷却した。冷却下、フッ化水素10g(500mmol、10当量)を発熱に注意しながら導入した後、100℃まで昇温することで反応を開始した。昇温後、反応圧力を1.2MPaでコントロールするため、副生する塩酸はコンデンサーを通して系外へ除去しながら、反応を24時間行った。反応後のガスクロマトグラフィー組成分析の結果、目的物である式[3]のデスフルランは98.6%、未反応の原料である式[2]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルは0.3%であり、反応基質(式[2])のエーテル部位の開裂に由来する分解物は未検出であった。
[比較例1]
Figure 2019064948
ドライアイス冷却下、圧力計とコンデンサーを備えた100mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、別途調製したピリジンとフッ化水素との錯体(モル比:1対5)を7.2g(40.2mmol)、イソフルランを3.7g(20.1mmol)それぞれ量り取り、自然昇温後、室温から130℃の温度にて12時間攪拌を行った。反応後、1.2MPaの反応圧力を開放し、反応液を水洗後、2層分離により得られた有機物をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、目的物であるデスフルランは2.0%であり、反応はほとんど進行しておらず原料回収に終わった。
本結果より、当該発明に用いている反応基質(式[1]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル)の方が反応性に富み、取扱に優れている一面がある。
[参考例1]
Figure 2019064948
攪拌機、圧力計、そしてコンデンサーを備えた500mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器へ前記の合成例で調製した式[1]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル140g(697mmol、1当量)を量り取り、ドライアイスにて冷却した。冷却下、フッ化水素139g(6.97mol、10当量)を発熱に注意しながら導入した後、直ちに120℃まで昇温することで反応を開始した。昇温後、反応圧力を1.5MPaでコントロールするため、副生する塩酸はコンデンサーを通して系外へ除去しながら、反応を24時間行った。反応後のガスクロマトグラフィー組成分析の結果、最終目的物である式[3]のデスフルランは94.0%、未反応の原料である、式[1]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは0.4%、式[2]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルは0.9%、原料に含まれる不純物である式[5]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルは0.1%であった。更に、式[5]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルが部分フッ素化された1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロクロロメチルエーテルは1.7%、反応基質(式[1]のジクロロメチルエーテル体)のエーテル部位の開裂に由来する分解物(クロロホルムやフルオロジクロロメタン)は0.9%検出された。
反応液は冷却下、イオン交換水500g、次いで5%重曹水250gを用いて洗浄することにより、過剰に用いたフッ化水素を除去することで、反応粗体115gを得た。反応粗体に対し、理論段数25段の蒸留塔を用いて常圧蒸留を行ったところ、主留分(22−23℃)として53g、反応収率45%にて最終目的物である式[3]で示すデスフルランを得た。主留分の組成は、目的物である式[3]のデスフルランが98.7%であり、不純物として式[5]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテルが部分フッ素化された1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロクロロメチルエーテルが0.7%、反応基質(式[1]のジクロロメチルエーテル体)のエーテル部位の開裂に由来する分解物(クロロホルムやフルオロジクロロメタン等)が0.6%含有していた。
このように、目的物である式[3]のデスフルランと、反応で副生する不純物類との完全な分離は困難であった。
[参考例2;過塩素化物がフッ素化条件にて反応する例]
Figure 2019064948
ドライアイス冷却下、圧力計とコンデンサーを備えた100mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、式[5]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテル5.0g(21.2mmol)、フッ化水素8.5g(425mmol)、五塩化アンチモン329mg(1.1mmol)をそれぞれ量り取り、120℃まで昇温した。昇温後、反応圧力を1.2MPaでコントロールするため、副生する塩酸はコンデンサーを通して系外へ除去しながら、反応を12時間行った。反応後、1.2MPaの反応圧力を開放し、反応液を水洗後、2層分離により得られた有機物をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロジフルオロメチルエーテルを92.0%にて得た。
[物性データ]
・1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):5.96(1H,dq,J=53.4,2.8Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−28.93(1F,d,J=86.8Hz),−29.95(1F,d,J=92.8Hz),−83.41(3F,s),−146.75(1F,d,J=54.8Hz)
本発明で対象とする1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)は、吸入麻酔剤として利用できる。

Claims (9)

  1. 式[1]:
    Figure 2019064948
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルをフッ素化反応させることにより、式[3]:
    Figure 2019064948
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を製造する方法において、
    1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに、液相中、フッ化水素または「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより、式[2]:
    Figure 2019064948
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルと、未反応の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルとを含む混合物を得る工程(第1工程)と、
    第1工程で得た混合物を精製することにより、該混合物中に含まれる1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを該混合物から分離除去し、純度の高められた1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルを得る工程(第2工程)と、
    第2工程で得た混合物に含まれる1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルに対し、液相中、フッ化水素または「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを製造する工程(第3工程)、
    を含む、前記製造方法。
  2. 第1工程において、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」における有機塩基が、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンまたは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 第1工程における反応を、反応温度として0〜50℃の範囲で、かつ、反応圧力として0.1MPa〜2MPaの範囲で行う、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 第2工程における精製を、蒸留操作により行う、請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
  5. 第3工程において、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」における有機塩基が、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンまたは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである、請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法。
  6. 第3工程における反応を、触媒の存在下、フッ化水素を反応させることにより行う、請求項1乃至5の何れかに記載の製造方法。
  7. 前記触媒が四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズ、四塩化チタン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、及び五フッ化アンチモンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の製造方法。
  8. 第3工程における反応を、反応温度として80〜180℃の範囲で、かつ、反応圧力として0.1MPa〜4MPaの範囲で行う、請求項1乃至7の何れかに記載の製造方法。
  9. 式[2]:
    Figure 2019064948
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルに対し、液相中、フッ化水素または「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより、式[3]:
    Figure 2019064948
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を製造する方法。
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