以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
<コンパウンド>
本実施形態に係るコンパウンドは、シロキサン構造を有するポリアミドイミドと、エポキシ樹脂と、金属元素含有粉と、を備える。シロキサン構造を有するポリアミドイミドは、シロキサン変性ポリアミドイミドと言い換えられてよい。シロキサン構造とは、ポリシロキサンの鎖状構造、又はシリコーン(silicone)の鎖状構造と言い換えられてよい。シロキサン構造を有するポリアミドイミドは、「SPAI」(Siloxane−modified PolyAmideImide)と表記される場合がある。本実施形態に係るコンパウンドは、SPAIに加えて、シロキサン構造を有しないポリアミドイミドを含んでもよい。金属元素含有粉とは、例えば、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の粉末であってよい。コンパウンドは、硬化剤を備えてもよい。コンパウンドは、硬化促進剤を備えてもよい。コンパウンドは、添加剤を備えてもよい。SPAI、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び添加剤を包含する成分であって、有機溶媒と金属元素含有粉とを除く残りの成分(不揮発性成分)は、「樹脂組成物」と表記される場合がある。コンパウンドは、樹脂組成物と金属元素含有粉とを含む組成物と言い換えてよい。樹脂組成物に含まれる樹脂は、SPAI及びエポキシ樹脂のみであってよい。樹脂組成物は、SPAI及びエポキシ樹脂に加えて更に別の樹脂を含んでもよい。添加剤とは、樹脂組成物のうち、樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を除く残部の成分である。添加剤とは、例えば、カップリング剤、流動助剤、難燃剤、又は潤滑剤等である。
本実施形態に係るコンパウンドを硬化させることにより、コンパウンドの硬化物が得られる。当該硬化物から構成される成形体の機械的強度は高く、当該成形体は耐熱性に優れる。コンパウンドが備えるSPAIが有する耐熱性が、成形体の耐熱性の向上に寄与していると考えられる。成形体の機械的強度が高い理由は必ずしも明らかではない。コンパウンドが硬化する際、SPAIが有するアミド構造と、エポキシ樹脂とが反応する。このアミド構造とエポキシ樹脂との作用が、成形体の機械的強度の向上に寄与していると推測される。ただし、本発明に係る作用効果は、上記の事項に限定されない。
コンパウンドは、金属元素含有粉と、当該金属元素含有粉を構成する個々の粒子の表面に付着した樹脂組成物と、を含んでよい。樹脂組成物は、当該粒子の表面の全体に付着してもよく、当該粒子の表面の一部のみに付着してもよい。コンパウンドは、未硬化の樹脂組成物と金属元素含有粉とを含んでよい。コンパウンドは、半硬化の樹脂組成物(例えばBステージの樹脂組成物)と金属元素含有粉とを含んでよい。
コンパウンドに含まれるSPAIの質量は、限定されないが、例えば、コンパウンドに含まれるSPAI及びエポキシ樹脂の質量の合計100質量部に対して、80〜99質量部、又は85〜95質量部であってよい。コンパウンドに含まれるエポキシ樹脂の質量は、限定されないが、例えば、コンパウンドに含まれるSPAI及びエポキシ樹脂の質量の合計100質量部に対して、1〜20質量部、又は5〜15質量部であってよい。
コンパウンドに含まれる樹脂組成物の質量は、限定されないが、例えば、コンパウンドに含まれる樹脂組成物及び金属元素含有粉の質量の合計100質量部に対して、0.2〜17質量部、0.2〜10質量部、0.2〜5質量部、0.2〜2質量部、0.4〜17質量部、0.4〜10質量部、0.4〜5質量部、又は0.4〜2質量部であってよい。樹脂組成物の質量が上記範囲内である場合、機械的強度と、耐熱性と、金属元素含有粉に由来する物性とを十分に兼ね備えた成形体が得られ易い。
樹脂組成物の質量が、Mと表され、且つ金属元素含有粉の質量が、mと表される場合、m/(m+M)は、例えば、0.830以上0.998以下、0.830以上0.996以下、0.900以上0.998以下、0.900以上0.996以下、0.950以上0.998以下、0.950以上0.996以下、0.980以上0.998以下、又は0.980以上0.996以下であってよい。m/(m+M)が上記範囲内である場合、機械的強度と、耐熱性と、金属元素含有粉に由来する物性とを十分に兼ね備えた成形体が得られ易い。m/(m+M)・100は、コンパウンドにおける金属元素含有粉の占積率といえる。
(金属含有粉の詳細)
上述の通り、金属元素含有粉は、例えば、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の粉末であってよい。合金は、固溶体、共晶及び金属間化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。合金とは、例えば、ステンレス鋼(Fe‐Cr系合金、Fe‐Ni‐Cr系合金等)であってよい。金属化合物とは、例えば、フェライト等の酸化物であってよい。金属元素含有粉は、一種の金属元素又は複数種の金属元素を含んでよい。金属元素含有粉に含まれる金属元素は、例えば、卑金属元素、貴金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素であってよい。金属元素含有粉に含まれる金属元素は、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)、銀(Ag)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)及びジスプロシウム(Dy)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。金属元素含有粉は、金属元素以外の元素を含んでもよい。金属元素含有粉は、例えば、酸素(О)、ベリリウム(Be)、リン(P)、ホウ素(B)、又はケイ素(Si)を含んでもよい。金属元素含有粉は、磁性粉であってよい。金属元素含有粉は、軟磁性合金、又は強磁性合金であってよい。金属元素含有粉は、希土類磁石の粉末であってよい。金属元素含有粉は、例えば、ネオジム磁石(Nd‐Fe‐B系合金)、サマリウムコバルト磁石(Sm‐Co系合金)、サマリウム‐鉄‐窒素磁石(Sm‐Fe‐N系合金)、及びプラセオジム磁石(Pr−Co系合金)からなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類磁石の粉末であってよい。金属元素含有粉は、希土類磁石以外の磁石の粉末であってもよい。金属元素含有粉は、例えば、アルニコ磁石(Al‐Ni‐Co系合金)の粉末であってよい。金属元素含有粉は、例えば、Fe‐Si系合金、Fe‐Si‐Al系合金(センダスト)、Fe‐Ni系合金(パーマロイ)、Fe‐Cu‐Ni系合金(パーマロイ)、Fe‐Co系合金(パーメンジュール)、Fe‐Cr‐Si系合金(電磁ステンレス鋼)及びフェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる磁性粉であってよい。フェライトは、例えば、スピネルフェライト、六方晶フェライト、又はガーネットフェライトであってよい。金属元素含有粉は、Cu‐Sn系合金、Cu‐Sn‐P系合金、Cu−Ni系合金、又はCu‐Be系合金等の銅合金であってもよい。金属元素含有粉は、上記の元素及び組成物のうち一種を含んでよく、上記の元素及び組成物のうち複数種を含んでもよい。
金属元素含有粉を構成する個々の粒子の形状は、特に限定されない。個々の粒子は、例えば、扁平形状であってよい。扁平形状とは、例えば、粒子の形状アスペクト比が0.3以下である形状であってよい。形状アスペクト比とは、粒子の短径を粒子の長径で除した値(短径/長径)である。金属元素含有粉を構成する個々の粒子の形状が扁平形状である場合、圧縮成形によりコンパウンドから成形体を形成する際に、個々の粒子が積層し易い。そのため、粒子間に空隙及び樹脂溜りが生じ難くなり、成形体における金属元素含有粉の占積率が高くなり易い。その結果、成形体の密度が高くなり易く、成形体の機械的強度が高くなり易い。金属元素含有粉の平均粒子径は、例えば、好ましくは20〜300μm、より好ましくは40〜250μmであってよい。金属元素含有粉の粒度分布は、例えば、篩い分けによる質量測定、又はレーザー回折・散乱装置等の測定機器を用いた分析に基づいて算出される。
(SPAIの詳細)
SPAIは、1分子中にシロキサン構造、アミド基、及びイミド基を有する重合体である。換言すれば、SPAIが有する最小限の構造単位は、シロキサン構造と、イミド結合を有する構造と、アミド結合を有する構造とを含んでよい。上記構造単位では、例えば、シロキサン構造に属するケイ素が、有機基を介して、イミド結合を構成する窒素と結合してよく、イミド基に属する元素(例えば炭素)が、アミド結合を構成する炭素と結合してよい。例えば、SPAIは、1分子中に下記化学式(21)で表される構造単位を少なくとも含んでよい。一つのSPAI分子が、複数種の構造単位を含んでいてもよい。
上記化学式(21)中、R31、R32、及びR35それぞれは独立に、水素原子、又は有機基(例えば1価の有機基)を表す。R33及びR36それぞれは独立に、有機基(例えば2価の有機基)を表す。R34は、有機基(3価の有機基)を表す。
R31、R32、及びR35それぞれは独立に、水素原子、1価の脂肪族基、又は1価の芳香族基であってよい。R31、R32、及びR35それぞれは独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であってよい。R31及びR32は、いずれもメチル基であってよい。R35は、水素原子であってよい。
R33及びR36それぞれは独立に、2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基であってよい。R33及びR36それぞれは独立に、アルキレン基又はアリーレン基であってよい。R33は、プロピレン基であってよい。
R34は、3価の脂肪族基、又は3価の芳香族基であってよい。R34は、環構造であってよい。R34は、脂環式構造又は芳香環であってよい。R34は、ベンゼン環であってよい。
SPAIは、1分子中に下記化学式(22)で表される繰り返し単位を少なくとも含んでよい。
上記化学式(22)中、R41、R44、R45、及びR48それぞれは独立に、水素原子、又は有機基(例えば1価の有機基)を表す。R43、R46、及びR49それぞれは独立に、有機基(例えば2価の有機基)を表す。R42及びR47それぞれは独立に、3価の有機基を表す。n3は、1以上の整数を表す。化学式(22)中に存在する複数のR44は、互いに同じであっても異なってもよい。化学式(22)中に存在する複数のR45は、互いに同じであっても異なってもよい。
R41、R44、R45、及びR48それぞれは独立に、水素原子、1価の脂肪族基、又は1価の芳香族基であってよい。R41、R44、R45、及びR48それぞれは独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であってよい。R41及びR48それぞれは独立に、水素原子であってよい。R44及びR45は、いずれもメチル基であってよい。R41及びR48は、いずれも水素原子であってよい。
R43、R46、及びR49それぞれは独立に、2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基であってよい。R43、R46、及びR49それぞれは独立に、アルキレン基又はアリーレン基であってよい。R43及びR46それぞれは独立に、プロピレン基であってよい。R43及びR46は、いずれもプロピレン基であってよい。
n3は、例えば、1以上50以下の整数であってよい。
SPAIは、1分子中に下記化学式(23)で表される繰り返し単位を少なくとも含んでよい。
上記化学式(23)中、R51、R53、R54、及びR56それぞれは独立に、水素原子、又は有機基(例えば1価の有機基)を表す。R52、R55、及びR57それぞれは独立に、有機基(例えば2価の有機基)を表す。n4は、1以上の整数を表す。化学式(23)中に存在する複数のR53は、互いに同じであっても異なっていてもよい。化学式(23)中に存在する複数のR54は、互いに同じであっても異なってもよい。
R51、R53、R54、及びR56それぞれは独立に、水素原子、1価の脂肪族基、又は1価の芳香族基であってよい。R51、R53、R54、及びR56それぞれは独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であってよい。R53及びR54それぞれは独立に、メチル基であってよい。R53及びR54は、いずれもメチル基であってよい。R51及びR56それぞれは独立に、水素原子であってよい。R51及びR56は、いずれも水素原子であってよい。
R52、R55、及びR57それぞれは独立に、2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基であってよい。R52、R55、及びR57それぞれは独立に、アルキレン基又はアリーレン基であってよい。R52及びR55それぞれは独立に、プロピレン基であってよい。R52及びR55は、いずれもプロピレン基であってよい。
n4は、例えば、1以上50以下の整数であってよい。
SPAIは、例えば、下記化学式(24)で表される化合物であってよい。
R61−R62−(X3)n5−R63 (24)
上記化学式(24)中、R61及びR63それぞれは独立に、有機基(例えば1価の有機基)を表す。R62は、有機基(例えば2価の有機基)を表す。X3は、上記化学式(22)で表される構造単位、又は上記化学式(23)で表される構造単位を表す。n5は、1以上の整数を表す。n5が2以上の整数である場合、化学式(24)中に存在する複数のX3は、互いに同じであっても異なってもよい。
R61及びR63それぞれは独立に、イソシアネート基、又は下記化学式(25)で表される基であってよい。R62は、2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基であってよい。R62は、アルキレン基又はアリーレン基であってよい。n5は、1以上80以下の整数であってよい。
上記化学式(25)中、R64は、水素原子、又は有機基(例えば1価の有機基)を表す。R65は、有機基(例えば1価の有機基)を表す。
R64は、水素原子、1価の脂肪族基、又は1価の芳香族基であってよい。R64は、水素原子であってよい。
R65は、2個以上のカルボキシ基を有する1価の有機基であってよい。R65は、2個のカルボキシ基を有する1価の有機基であってよい。
SPAIは、SPAIの分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端に2個以上のカルボキシ基を有してよい。SPAIは、SPAIの分子鎖の両末端それぞれに2個以上のカルボキシ基を有してよい。両末端に2個以上のカルボキシ基を有するSPAIを用いた場合、成形体の靭性がより大きくなり易い。
上記の2個以上のカルボキシ基を有するSPAIを用いた場合、コンパウンドの硬化物の靭性が大きくなり易く、硬化物から構成される成形体の靭性も大きくなり易い。コンパウンドの硬化物の靭性が大きくなり易い理由は以下の通りであると推測される。2個以上のカルボキシ基を有さないSPAIを用いた場合、コンパウンドが硬化する際に、エポキシ樹脂が有するエポキシ基が、SPAIが有するアミド基と反応し易い。エポキシ基とアミド基との反応により、SPAIとエポキシ樹脂とが結合する場合、SPAIが有するアミド基は、SPAIの分子鎖全体に分布するため、SPAIとエポキシ樹脂とが網目状の架橋構造を形成し易い。その結果、硬化物は硬くなり易く、硬化物の靭性が小さくなり易い。一方、上記の2個以上のカルボキシ基を有するSPAIを用いた場合、コンパウンドが硬化する際に、エポキシ樹脂が有するエポキシ基が、SPAIが有するアミド基及びカルボキシ基のうちカルボキシル基と反応し易い。エポキシ基とカルボキシ基との反応により、SPAIとエポキシ樹脂とが結合する場合、カルボキシ基はSPAIの分子鎖の末端に存在するため、SPAIとエポキシ樹脂とが鎖状の架橋構造を形成し易い。その結果、硬化物は過度に硬くならず、硬化物の靭性が大きくなり易い。ただし、硬化物の靭性が大きくなり易い理由は、上記の事項に限定されない。
以下では、SPAIの具体例を詳しく説明する。説明の便宜上、SPAIを「第1のSPAI」と「第2のSPAI」とに分類する。本実施形態に係るコンパウンドは、SPAIとして、第1のSPAIのみを含んでよい。本実施形態に係るコンパウンドは、SPAIとして、第2のSPAIのみを含んでよい。本実施形態に係るコンパウンドは、第1のSPAI及び第2のSPAIの両方を含んでもよい。まず、第1のSPAIの詳細を説明する。
[第1のSPAIの詳細]
第1のSPAIは、例えば、以下の方法によって製造されてよい。3個以上の芳香環を有するジアミン(A)及びシロキサンジアミン(B)の混合物と、無水トリメリット酸とを反応させて、ジイミドジカルボン酸を含む混合物を得る。ジイミドジカルボン酸は、下記の化学式(11)及び化学式(12)で表されてよい。ジアミン(A)のモル数がAであり、シロキサンジアミン(B)のモル数がBであり、無水トリメリット酸のモル数がTMAであるとき、モル比A/Bは99.9/0.1〜0.1/99.9に調整されてよく、モル比(A+B)/TMAは1/2.05〜1/2.20に調整されてよい。続いて、上記のジイミドジカルボン酸を含む混合物と、下記化学式(13)で示される芳香族ジイソシアネートとを反応させることにより、シロキサン含有ポリアミドイミドが得られる。このシロキサン含有ポリアミドイミドを、以下では「SPAI−1a」と記載する場合がある。芳香族ジイソシアネートのモル数がADIであるとき、モル比(A+B)/ADIは1/1.05〜1/1.50に調整されてよい。
化学式(11)中のR21は、上記化学式(11-a)で表されてよい。
上記化学式(11-a)中のX2は、上記(11-b)、(11-c)、(11-d)、(11-e)、(11-f)、(11-g)、(11-h)及び(11-i)からなる群より選ばれる一種の化学式で表されてよい。
化学式(12)中のR22は、上記化学式(12-a)で表されてよい。
化学式(12)中のR23及びR24それぞれは独立に2価の有機基を表す。化学式(12)中のR25、R26、R27及びR28それぞれは独立に、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を表す。n2は、1〜50の整数を表す。
上記化学式(13)中のR29は、上記(13-a)、(13-b)、(13-c)、(13-d)及び(13-e)からなる群より選ばれる一種の化学式で表されてよい。
第1のSPAIの合成効率を向上させる観点から、上記のモル比A/Bは、50/50〜90/10であることが好ましく、60/40〜80/20であることがより好ましく、65/35〜75/25であることが特に好ましい。
触媒などを添加することなく、高分子量のシロキサン含有ポリアミドイミドを合成し易い観点から、上述のモル比(A+B)/ADIは1/1.10〜1/1.50であることが好ましく、1/1.20〜1/1.30であることがより好ましい。
SPAI−1aの製造方法では、上記のジアミン(A)及びシロキサンジアミン(B)の混合物(混合物1)と、無水トリメリット酸とを、非プロトン性極性溶媒中において、50〜90℃で反応させてよい。続いて、芳香族炭化水素を非プロトン性極性溶媒へ投入した後、120〜180℃で非プロトン性極性溶媒中での反応を更に進行させてよい。これらの反応により、芳香族ジイミドジカルボン酸とシロキサンジイミドジカルボン酸を含む混合物(混合物2)の溶液が得られる。この混合物2と芳香族ジイソシアネートとの反応により、シロキサン含有ポリアミドイミド(SPAI−1a)を得てよい。混合物2中の芳香族ジイミドジカルボン酸は、例えば、上記化学式(11)で表される。混合物2中のシロキサンジイミドジカルボン酸は、例えば、上記化学式(12)で表される。
上記混合物2の溶液から芳香族炭化水素を留去した後、混合物2と芳香族ジイソシアネートとの反応を行ってよい。
第1のSPAIの製造に用いる非プロトン性極性溶媒は、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、4−ブチロラクトン、スルホラン及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。イミド化反応には高温を要するため、沸点の高いN−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。非プロトン性極性溶媒中に含まれる水分量は、0.2質量%以下に管理されていることが好ましい。非プロトン性極性溶媒中の水分が多いほど、無水トリメリット酸の水和により生成するトリメリット酸により、充分に反応が進行せず、第1のSPAIの分子量が低下し易い。非プロトン性極性溶媒中のジアミン(A)、シロキサンジアミン(B)及び無水トリメリット酸の含有量は、10〜70質量%であってよい。
非プロトン性極性溶媒に投入される芳香族炭化水素は、水と共沸可能な芳香族炭化水素であればよい。水と共沸可能な芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン及びエチルベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。特に沸点が比較的低く、有害性の少ないトルエンが好ましい。反応中、芳香族炭化水素は120〜180℃での水との共沸により、反応系外に流出する。したがって、非プロトン性極性溶媒中の芳香族炭化水素は徐々に減少し易い。反応系内に存在する芳香族炭化水素の量を一定割合に維持するために、例えばコック付きの水分定量受器等を用いて、系外に流出した溶媒を水と分離した後に系内に戻したり、芳香族炭化水素を反応系内へ補充したりしてよい。120〜180℃での上記反応は、反応系で水が副生しなくなるまで行われる。
非プロトン性極性溶媒へ投入される芳香族炭化水素の質量は、非プロトン性極性溶媒の質量の0.1〜0.5倍(10〜50質量%)に調整されてよい。芳香族炭化水素の使用量が上記の範囲未満であると、共沸蒸留による水の除去効果が低下し、ジイミドジカルボン酸が生成し難い。芳香族炭化水素の使用量が上記の範囲を超えると、反応中間体の芳香族アミドカルボン酸、又は生成した芳香族ジイミドジカルボン酸が析出してしまうおそれがある。
第1のSPAIは、ジイミドジカルボン酸として2,2−ビス[4−{4−(5−ヒドロキシカルボニル−1,3−ジオン−イソインドリノ)フェノキシ}フェニル]プロパン(C)とビス(5−ヒドロキシカルボニル−1,3−ジオンイソインドリノ)プロピルポリジメチルシロキサン(D)との混合物(混合物3)と、芳香族ジイソシアネートとを反応させて得られるシロキサン含有ポリアミドイミドであってよい。2,2−ビス[4−{4−(5−ヒドロキシカルボニル−1,3−ジオン−イソインドリノ)フェノキシ}フェニル]プロパン(C)のモル数がCであり、ビス(5−ヒドロキシカルボニル−1,3−ジオンイソインドリノ)プロピルポリジメチルシロキサン(D)のモル数がDであり、芳香族ジイソシアネートのモル数がADIであるとき、モル比C/Dは99.9/0.1〜0.1/99.9に調整されてよく、モル比(C+D)/ADIは1/1.05〜1/1.50に調整されてよい。
上記の混合物3は、例えば、芳香族ジアミン(A)である2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンと、シロキサンジアミンであるジアミノポリジメチルシロキサンとの混合物を、無水トリメリット酸と反応させることによって得られる。
第1のSPAIは、上記の方法で得られたSPAI−1aと、上記の混合物3と、芳香族ジイソシアネートとを反応させて得られるシロキサン含有ポリアミドイミドであってもよい。
第1のSPAIの原料である上記のジアミン(A)は、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。上記のジアミン(A)を、単独で又は組み合わせて用いてよい。ポリアミドイミドの特性のバランスとコストの観点から、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが特に好ましい。
第1のSPAIの原料である上記のシロキサンジアミン(B)は、例えば、化学式(14)で表されるものが用いられてよい。
化学式(14)中のR23及びR24それぞれは独立して2価の有機基を表す。化学式(14)中のR25、R26、R27及びR28それぞれは独立してアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を表す。化学式(14)中のn2は、1〜50の整数を表す。
化学式(14)で表されるシロキサンジアミン(B)の具体例は、例えば、下記(15‐a)、(15‐b)及び(15-c)からなる群より選ばれる一種の化学式で表されてよい。
化学式(15‐a)、(15‐b)及び(15-c)中のn2は、1〜50の整数を表す。
シロキサンジアミン(B)は、例えば、アミノ変性反応性シリコーンオイル(両末端にアミノ基を有するジメチルシロキサン)であってよい。このようなシロキサンジアミン(B)の市販品は、例えば、X-22-161AS(アミン当量450)、X-22-161A(アミン当量840)、X-22-161B(アミン当量1,500)、BY16-853(アミン当量650)、又はBY16-853B(アミン当量2,200)である。X-22-161AS、X-22-161A及びX-22-161Bはいずれも信越化学工業株式会社製の商品名である。BY16-853及びBY16−853Bのいずれも、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社(現社名:東レ・ダウコーニング株式会社)製の商品名である。
上記のシロキサンジアミン(B)を、単独で又は組み合わせて用いてよい。
第1のSPAIの原料である芳香族ジイソシアネートは、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート及び2,4−トリレンジイソシアネートダイマーからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。上記の芳香族ジイソシアネートを単独で又は組み合わせて用いてよい。分子構造においてイソシアネート基が互いに離れており、第1のSPAIの分子中におけるアミド基及びイミド基其々の濃度が相対的に低く、溶解性に優れる観点から、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。イソシアネート同士の反応を抑制しながら短時間で第1のSPAIを生成される観点から、芳香族ジイミドジカルボン酸及びシロキサンジイミドジカルボン酸の混合物と、芳香族ジイソシアネートとを100〜200℃で反応させることが好ましい。
[第2のSPAIの詳細]
第2のSPAIは、当該第2のSPAIの分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端に2個以上のカルボキシ基を有してよい。
第2のSPAIは、第2のSPAIの分子鎖中にポリシロキサンイミド構造を有してよく、ポリシロキサンイミド構造は、側鎖に不飽和結合含有基を有してよい。
第2のSPAIは、第2のSPAIの分子鎖中にポリオキシプロピレンイミド構造を更に含んでよい。
第2のSPAIの分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端は2個以上のカルボキシ基を有する芳香族アミド基であってよい。
第2のSPAIは、シロキサン構造を有するジカルボン酸と、ジイソシアネートとを、ジカルボン酸1モルに対してジイソシアネート1.05〜1.45モルの割合で反応させた後に、カルボキシ基を3個以上有する化合物を更に反応させて得られてよい。
上記カルボキシ基を3個以上有する化合物は、脱水閉環しない芳香族トリカルボン酸であってよい。
第2のSPAIはオルガノポリシロキサン構造を含んでよい。
第2のSPAIは、ジカルボン酸化合物とジイソシアネートの反応により得られることが好ましい。具体的には、ジカルボン酸1モルに対してジイソシアネート1.05〜1.45モルの割合で反応させた反応生成物の分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端に2個以上のカルボキシ基を導入することにより得られることが好ましい。ジカルボン酸化合物として、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むものを用いると、側鎖に不飽和結合含有基を有するシロキサンイミド構造を含む第2のSPAIを作製することができる。なお、側鎖に不飽和結合含有基を有するジカルボン酸化合物の作製方法については後述する。
上述のように、ジカルボン酸化合物に対して過剰のジイソシアネートを反応させると分子鎖末端がイソシアネート基であるSPAIを生成することができる。そして、分子鎖末端がイソシアネート基であるSPAIに対して、例えば、閉環しないカルボキシ基を3つ以上有する化合物を所定量反応させることによって、上記カルボキシ基の1個の基のみをイソシアネートと反応させることができる。これにより、2個以上のカルボキシ基を残すことが可能である。こうして、分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端に2個以上のカルボキシ基を有する第2のSPAIを作製することができる。なお、分子鎖末端がイソシアネート基であるSPAIと、閉環しないカルボキシ基を3つ以上有する化合物との反応において、上記化合物の量比を選ぶことでゲル化の抑制が可能となる。なお、ここで、閉環しないカルボキシ基とは、100℃以上の反応温度条件において、脱水閉環しないものをいう。例えば、3つのカルボキシ基が芳香環又は縮合環に結合した化合物である場合、最も近くにある2つのカルボキシ基の位置関係が、カルボキシ基が結合する炭素原子同士が少なくとも1つの炭素原子を隔てて結合している位置関係にあるものをいう。つまり、第2のSPAIの分子鎖の末端に位置する2個以上のカルボキシ基(上記3つのカルボキシ基)のうち、1つのカルボキシ基がカルボキシ基1と表され、カルボキシ基1に最も近い位置に存在する別のカルボキシ基がカルボキシ基2と表され、カルボキシ基1が結合している炭素が炭素1と表され、カルボキシ基2が結合している炭素が炭素2と表されるとき、炭素1と炭素2とが少なくとも1つの炭素原子を介して結合していてよい。このような化合物を用いると、カルボキシ基が互いに離れており、閉環してイミド環を作ることがないので、好ましい。
閉環しないカルボキシ基を3つ以上有する化合物は、芳香族多塩基酸であることが好ましく、熱により脱水閉環しないものであることが好ましい。閉環しないカルボキシ基を3つ以上有する化合物が、芳香族多塩基酸であると、上記第2のSPAIの分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端を、2個以上のカルボキシ基を有する芳香族アミド基とすることができる。これにより、コンパウンドの耐熱性及び耐加水分解性を向上させることができ、またコンパウンドを熱硬化した際に支持体なしでフィルムを形成できる硬化物を得ることができる。このような芳香族多塩基酸としては、例えば、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,3,5−ナフタレントリカルボン酸、1,3,7−ナフタレントリカルボン酸、1,5,7−ナフタレントリカルボン酸等の芳香族トリカルボン酸が挙げられる。これらのうち、入手容易性と、ポリアミドイミドの成形性の観点から1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)が特に好ましい。
また、分子鎖末端がイソシアネート基であるSPAIと、2つ以上の閉環しないカルボキシ基及び水酸基を有する化合物とを、所定量反応させることによっても分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端に2個以上のカルボキシ基を有する第2のSPAIを作製することが可能である。2つ以上の閉環しないカルボキシ基及び水酸基を有する化合物としては、ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシ−3,6−カルボキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有芳香族多塩基酸が挙げられる。
フェノール性水酸基含有芳香族多塩基酸に含まれる水酸基はカルボキシ基に比べてイソシアネートと反応し易いことから、より低温で反応できる点で好ましい。
なお、カルボキシ基が芳香環に結合している芳香族カルボキシ基とイソシアネートとの反応ではアミド結合が生成し、フェノール性水酸基とイソシアネートとの反応ではウレタン結合が生成する。これらの反応性の違いから、例えば、1個以上の水酸基と2個以上のカルボキシ基を有する芳香族多塩基酸を用いると、分子鎖末端にはウレタン結合を介して2個以上の芳香族カルボキシ基が残った第2のSPAIを作製することができる。1個以上の水酸基と2個以上のカルボキシ基を有する芳香族多塩基酸としては、ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシ−3,6−カルボキシナフタレン等が挙げられる。ただし、ウレタン結合を介した第2のSPAIは、アミド結合を介した第2のSPAIに比べ、耐熱性又は吸湿性に劣ることがある。
上記芳香族多塩基酸として、閉環しない芳香族トリカルボン酸を用いた場合、その添加量は、閉環しない芳香族トリカルボン酸の分子量(MW)、分子鎖末端がイソシアネート基であるSPAIの質量(A)及び当該SPAIの数平均分子量Mnから「2×A×MW/Mn」によって求まる量に対して、0.3〜1.2倍量とすることが好ましく、0.5〜1.0倍量とすることがより好ましい。この量が、0.3未満では、SPAIの分子末端への2個以上のカルボキシ基の導入による効果が小さくなる傾向にあることに加え、樹脂組成物をワニスとしたときにワニス中にミクロゲルが生成する場合がある。また、この量が、1.2を超えると、未反応の閉環しない芳香族トリカルボン酸が、ワニス中に析出し、フィルム性が低下する場合があることから、未反応の閉環しない芳香族トリカルボン酸を濾別するための濾過工程が必要となる。
なお、第2のSPAIの数平均分子量は、10,000〜40,000であることが好ましく、15,000〜30,000であることがより好ましく、18,000〜25,000であることが更に好ましい。この数平均分子量が40,000を超えるとフィルムとしたときの成形性が不十分となる傾向があり、10,000未満であるとフィルム化が困難になるとともに熱硬化後のフィルムの強度が不十分となる傾向がある。
上記第2のSPAIの数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定(25℃)された分子量分布のクロマトグラムを標準ポリスチレンを用いて換算することによって求められる。
また、分子鎖末端がイソシアネート基であるSPAIと、芳香族多塩基酸との反応温度は、140〜190℃であることが好ましく、160〜180℃であることが更に好ましい。
次に、分子鎖末端がイソシアネート基であるSPAIの生成に用いるジカルボン酸及びジイソシアネートについて詳細に説明する。
上記ジカルボン酸化合物は、ジアミンと無水トリメリット酸を反応させたジイミドジカルボン酸であることが好ましい。反応に用いるジアミンの構造を選択することで第2のSPAIの可とう性、耐熱性、強度などを制御することが可能となる。
上記ジアミンは、下記化学式(1)で示されるオルガノポリシロキサン構造を有するジアミンであってよい。上記ジアミンにオルガノポリシロキサン構造を有するジアミンを含有させることで、オルガノポリシロキサン構造を有する第2のSPAIが得られる。上記オルガノポリシロキサン構造を含む第2のSPAIの可とう性が、上記オルガノポリシロキサン構造を有しないポリアミドイミドよりも向上する。また、樹脂組成物をフィルムとしたときに、フィルムの乾燥性が高くなり、フィルムの低揮発分化が容易となることに加え、フィルムを低弾性率化させることができる。
化学式(1)中、R1及びR2それぞれは独立に、2価の有機基を示し、R3、R4、R5及びR6それぞれは独立に、1価の有機基を示し、nは1以上の整数を示す。また、R3及びR5が複数存在する場合、複数のR3及びR5はそれぞれ異なっていてもよい。
上記2価の有機基としては、アルキレン基、フェニレン基又は置換フェニレン基が好ましい。また、上記2価の有機基の炭素数は1〜6であることが好ましい。上記2価の有機基としては、炭素数1〜3のアルキレン基が更に好ましい。
上記1価の有機基としては、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基が好ましい。また、上記1価の有機基の炭素数は、1〜6であることが好ましい。上記1価の有機基としては、炭素数1〜3のアルキル基が更に好ましい。
また、nは1〜50の整数であることが好ましい。
本実施形態においては、R1及びR2がいずれもプロピレン基であり、R3、R4、R5及びR6がいずれもメチル基であることが特に好ましい。
上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサン構造を有するジアミンとしては、例えば、下記化学式(3)及び(4)のシロキサンジアミンが挙げられる。
化学式(3)中のnは、上記と同義である。また、化学式(4)中、mは、1以上の整数を示し、qは、0以上の整数を示し、m+qは、1〜50であることが好ましい。
上記化学式(3)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、X−22−161AS(現名称:KF8010)(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)(以上、信越化学工業株式会社製、製品名)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)、(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社(現社名:東レ・ダウコーニング株式会社)製、製品名)等が挙げられる。上記式(4)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業株式会社製、製品名)等が挙げられる。
上記第2のSPAIの主鎖は、上述したオルガノポリシロキサン構造の他に、アルキレン基及び/又はオキシアルキレン基を含んでいてもよい。すなわち、上記第2のSPAIの主鎖は下記(I)、(II)及び(III)を含んでいてもよい。
(I)オルガノポリシロキサン構造及びアルキレン基、
(II)オルガノポリシロキサン構造及びオキシアルキレン基、
(III)オルガノポリシロキサン構造、アルキレン基及びオキシアルキレン基。
ここで、(I)及び(III)のアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、当該アルキレン基の炭素数は1〜12であることが好ましい。また、(II)及び(III)のオキシアルキレン基の炭素数は1〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。なお、当該オキシアルキレン基は2以上が繰り返してポリオキシアルキレン構造を形成していてもよい。
上記(I)、(II)及び(III)を含む第2のSPAIは、例えば、上記ジアミンとして、アルキレン基及び/又はオキシアルキレン基を有するジアミンと、オルガノポリシロキサン構造を有するジアミンとを用いることで作製できる。
アルキレン基及び/又はオキシアルキレン基を含むジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ジアミノジエチルエーテル等の低分子ジアミン;両末端アミノ化ポリエチレン、両末端アミノ化ポリプロピレン等の両末端アミノ化オリゴマー;又は、両末端アミノ化ポリマーなどが例示できる。アルキレン基を含むジアミンとしてはアルキレン基の炭素数は4以上が好ましく、6〜18がより好ましい。本実施形態においては、アルキレン基及びオキシアルキレン基を有するジアミンを用いることが特に好ましい。かかるジアミンとしては、下記化学式(6a)、(6b)、(6c)及び(6d)などのジアミンが挙げられる。
化学式(6a)中、aは2〜70の整数を示す。
化学式(6b)中、b、c及びdは1以上の整数を示す。なお、b+c+dは5〜40であることが好ましい。
(6a)、(6b)、(6c)及び(6d)のジアミンとしては、それぞれ、ジェファーミンD2000、ジェファーミンD230、ジェファーミンD400、ジェファーミンD4000等のジェファーミンDシリーズ、ジェファーミンED600、ジェファーミンED900、ジェファーミンED2003等のジェファーミンEDシリーズ、ジェファーミンXTJ−511、ジェファーミンXTJ−512(以上、ハンツマン社製、製品名)などが挙げられる。
上記アルキレン基及び/又はオキシアルキレン基を有するジアミンの分子量は30〜20000であることが好ましく、50〜5000であることがより好ましく、100〜3000であることが更に好ましい。アルキレン基及び/又はオキシアルキレン基を有するジアミンの分子量がこのような範囲であることにより、得られた繊維基材に含浸する際に、乾燥させた後のしわ及び反りの発生を効果的に減少させることが可能になる。中でも、ジェファーミンは適度な分子量を持ち、得られる第2のSPAIの弾性率及び誘電率に優れるため、特に好ましい。
第2のSPAIの主鎖は上記(III)を含むことが特に好ましい。また、かかる場合のアルキレン基及びオキシアルキレン基は、下記化学式(4a)、(4b)、(4c)及び(4d)の構造のうち1種以上を有することが特に好ましい。
化学式(4a)中、aは化学式(6a)と同義である。
化学式(4b)中、b、c及びdは化学式(6b)と同義である。
側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサンイミド構造を含む第2のSPAIは、例えば、上記ジカルボン酸化合物として、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むものを用いることにより作製できる。そして、側鎖に不飽和結合含有基を有するジカルボン酸化合物は、例えば、上記ジアミンとして、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むジアミンを用いることにより製造できる。なお、不飽和結合含有基としては、例えば、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。
側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むジアミンとしては、例えば、ビニル基が結合した珪素を含有するポリシロキサンジアミンなどが挙げられる。このような、ポリシロキサンジアミンとしては、例えば、下記化学式(1a)で表されるジアミン等が挙げられる。
化学式(1a)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17は、CH3、C2H5又はC3H7を示す。なお、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。R18及びR19それぞれは独立に、二価の有機基を示す。なお、R18及びR19それぞれは独立に、炭素数1〜3の飽和炭化水素基が好ましい。n1は0以上の整数、m1は1以上の整数であり、n1+m1は1から50である。
化学式(1a)で表される、ポリシロキサンジアミンとしては、X−22−9412(信越化学工業株式会社製、製品名)が商業的に入手可能である。
上記ジアミンが化学式(1a)で表されるジアミンを含有する場合、用いるジアミンの合計量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、35〜65質量部であることがより好ましく、40〜60質量部であることが更に好ましい。
また、不飽和結合としてフェニル基が結合した珪素を含有するポリシロキサンジアミンとしては、例えば、X−22−9409、X−22−1660−B3(以上、信越化学工業株式会社製、製品名)等が挙げられる。
ここで、上記ジアミンとして、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むジアミンと、末端アミノ化ポリプロピレングリコールの混合物を用いると、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造及びポリオキシプロピレン構造を有するジカルボン酸化合物を作製することができる。すなわち、ジアミンとしてこのようなものを用いると、結果的に、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサンイミド構造及びポリオキシプロピレンイミド構造を有する第2のSPAIを作製できる。このような第2のSPAIによれば、コンパウンドが更に低弾性率化し、伸びが向上する。
この場合、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むジアミン100質量部に対して、末端アミノ化ポリプロピレングリコールは70〜130質量部であることが好ましく、80〜120質量部であることがより好ましく、90〜110質量部であることが更に好ましい。
なお、ジアミンと無水トリメリット酸からジイミドジカルボン酸を生成する工程では、溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、4−ブチロラクトン、スルホラン等が挙げられる。中でも、ジイミドジカルボン酸を生成する工程は高い反応温度を必要とするため、沸点が高く、且つ原料及び得られるポリマーの溶解性が良好であるN−メチル−2−ピロリドンを用いることが特に好ましい。
ジアミンと、無水トリメリット酸とを合わせた質量は、溶媒の質量に対して10〜70質量%に相当する量であることが好ましい。10質量%未満である場合は溶媒を大量に消費するため効率が悪く、70質量%を超えると、ジアミン及び無水トリメリット酸を溶解しきれなくなり、十分な反応を行うことが困難になる傾向がある。
ジアミンの合計モル数に対して、無水トリメリット酸は2.00〜2.20倍のモル量を用いることが好ましい。アミン混合物の2.00〜2.20倍モル量の無水トリメリット酸を用いることにより、両末端がより確実にカルボキシ基となった反応物(ジイミドジカルボン酸)を高収率で得ることができる。その結果、ジイソシアネートとの反応活性点を増加させ得るため、高分子量の第2のSPAIを得ることが容易になり、得られる第2のSPAIの機械的強度を更に向上させることが可能になる。
また、ジアミンと無水トリメリット酸との反応における反応温度は、50〜150℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。50℃より低い温度では、反応が遅く、工業的に不利となる傾向があり、また150℃より高い温度では、環化しないカルボキシ基との反応が進行し、イミドを生成する反応が阻害される傾向がある。
ジイミドジカルボン酸生成工程においては、ジアミンと無水トリメリット酸との反応により、無水トリメリット酸の無水部分は一旦開環した後に脱水閉環してイミド結合が形成されると考えられる。なお、かかる脱水閉環反応は、ジイミドジカルボン酸生成工程の最後に、得られた反応混合物に水と共沸可能な芳香族炭化水素を加え温度を上げることにより、実施することが好ましい。反応混合物に水と共沸可能な芳香族炭化水素を加えることによって、脱水閉環反応によって生じた水を効率よく除去することができる。
上記脱水閉環反応は水の生成がなくなるまで行うことが好ましい。脱水閉環反応の完了は、例えば、水分定量受器等により、理論量の水が留去されていることを確認することによって行うことができる。
水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、トルエン等が挙げられる。沸点が低いため留去し易いこと、有害性が比較的低いことから、トルエンが好ましい。
水と共沸可能な芳香族炭化水素は非プロトン性極性溶媒の質量に対して10〜50質量%に相当する量を加えることが好ましい。水と共沸可能な芳香族炭化水素の量が、非プロトン性極性溶媒の量に対して10質量%未満では、水の除去効果が低下する傾向があり、50質量%以上では、生成物であるジイミドジカルボン酸が析出する傾向がある。
また、脱水閉環反応は反応温度120〜180℃で行うことが好ましい。120℃より低い温度では水が十分に除去できない場合があり、また180℃より高い温度では芳香族炭化水素の散逸を防げない場合がある。
さらに、水と共沸可能な芳香族炭化水素は、ジイミドジカルボン酸をジイソシアネートと反応させる前に除去しておくことが好ましい。芳香族炭化水素を含んだ状態では、反応中に生成物である、分子鎖末端がイソシアネート基であるポリアミドイミドが析出する場合がある。芳香族炭化水素を除去する方法に、特に制限は無いが、例えば、脱水閉環反応の後、更に温度を上げることによって芳香族炭化水素を留去する方法が挙げられる。
上記ジイミドジカルボン酸と反応させるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIという。)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。ポリアミドイミドの耐熱性を向上させる観点からは、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
上記ジイソシアネートは、上記ジイミドジカルボン酸の合計モル数に対して、1.05〜1.45倍のモル量で用いることが好ましい。上記範囲内のジイソシアネートを用いることによって、得られる第2のSPAIの分子量を溶融成形が可能な分子量域のものとすることができる。これにより、この後に続く分子鎖末端がイソシアネート基であるSPAIとカルボキシ基を3個以上有する化合物との反応におけるゲル化を抑制することができ、最終的には多官能グリシジル化合物を含むコンパウンドを硬化した際の伸びを十分なものとすることができる。
両末端ジカルボン酸変性ポリアミドイミド(γ)及びその作製スキームを以下に示す。
上記スキーム中、シロキサン構造Xを有するジアミンは、上述したジアミンから任意に選択できる。また、Yを有するジイソシアネートについても、上述したジイソシアネートから任意に選択できる。また、kは1以上の整数である。なお、kは10〜80であることが好ましく、20〜50であることがより好ましく、30〜40であることが更に好ましい。このようなスキームによれば、2個以上のカルボキシ基を有する芳香族アミド基を両末端に有する両末端ジカルボン酸変性第2のSPAI(γ)を作製することができる。分子鎖の両末端にカルボキシ基を有しない上記SPAI(β)も、本実施形態に係るコンパウンドに用いてよい。
このような方法によれば、ジアミンと無水トリメリット酸の反応から、第2のSPAIの生成に至る全工程において、反応物を取り出すことなく反応させることが効率的に進められて好ましい。
なお、ここで、両末端ジカルボン酸変性第2のSPAI(γ)を、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサンイミド構造を含む両末端ジカルボン酸変性第2のSPAIとする場合には、Xを有するジアミンを、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むジアミンとする。このようなスキームによれば、2個以上のカルボキシ基を有する芳香族アミド基を両末端に有し、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサンイミド構造を含む両末端ジカルボン酸変性第2のSPAIを作製することができる。
第2のSPAIの作製に用いられるジアミンは、上記ジアミンに加えて、更に別のジアミンを含有してもよい。例えば、ジアミンは、脂肪族ジアミン及び芳香族ジアミンの少なくともいずれかを含有してよい。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン等の直鎖型脂肪族ジアミン、及び末端アミノ化ポリプロピレングリコールが挙げられる。脂肪族ジアミンは、低弾性率及び高いTgの両立の観点から、エーテル基を含むことが好ましく末端アミノ化ポリプロピレングリコールが好ましい。末端アミノ化ポリプロピレングリコールとしては分子量の異なるジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000(ハンツマン社製、製品名)が入手できる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニル−ビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等が挙げられる。
(エポキシ樹脂の詳細)
エポキシ樹脂は、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であってよい。エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のグリシジル基を有してよい。エポキシ樹脂は、180℃以下の温度で硬化してよい。エポキシ樹脂は、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アルコール類のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、及びオレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。エポキシ樹脂は、液体又は半固形であってもよい。コンパウンドは上記のうち一種のエポキシ樹脂を備えてよく、コンパウンドは上記のうち複数種のエポキシ樹脂を備えてもよい。
(第2のSPAIとエポキシ樹脂との反応について)
分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端に2個以上のカルボキシ基を有さないSPAIとエポキシ樹脂とを含有するコンパウンドにおいては、SPAI中のアミド基が架橋点となる。そのため、加熱硬化後のCステージ状態の樹脂は架橋密度が高くなる傾向にある。これに対して、分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端に2個以上のカルボキシ基を有するSPAIの場合、エポキシ樹脂のグリシジル基がSPAIのアミド基よりもSPAIのカルボキシ基と優先的に反応する。そのため、熱硬化時には、SPAIの末端で鎖伸長と架橋が優先して起こり、アミド基は架橋点を形成しにくくなる。これにより、柔らかい成分の架橋密度を低く維持しながらも、コンパウンドに含まれる樹脂組成物全体の架橋を十分なものとすることができる。その結果、機械的強度及び耐熱性を両立することができると本発明者らは考えている。ただし、本発明に係る作用効果は上記の事項に限定されない。
上記の作用効果を説明するための具体例として、両末端ジカルボン酸変性SPAIと、エポキシ樹脂(以下、場合により「EP」と示す)との反応を模式化したものを反応(i)として以下に示す。
上記反応(i)では、両末端ジカルボン酸変性SPAIの場合の反応を模式化して示したが、片末端がジカルボン酸で変性しているSPAIであっても、エポキシ樹脂が、SPAIの分子鎖末端のカルボキシ基又はイソシアネート基と反応して鎖伸長と架橋を起こすため、上記と同様の効果を奏することができる。
SPAIが側鎖に不飽和結合含有基を有する場合、側鎖の不飽和結合含有基が、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂等の硬化剤に対するSPAIの相溶性を向上させることにより、エポキシ樹脂同士の反応又はエポキシ樹脂と硬化剤との反応などが、エポキシ樹脂とSPAIとの反応に優先して起こることが抑制される。その結果、硬化後の樹脂の弾性率が低くなり易いと考えられる。なお、このような推察は、不飽和結合含有基が熱硬化時に反応せずに残るという本発明者らの知見に基づくものである。ただし、本発明に係る上記作用効果は、上記の事項に限定されない。
上記の作用効果を説明するための具体例として、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサンイミド構造を含む両末端ジカルボン酸変性SPAIと、エポキシ樹脂(以下、場合により「EP」と示す)との反応を模式化したものを反応(ii)として以下に示す。
上記反応(ii)では、両末端ジカルボン酸変性SPAIの場合の反応を模式化して示したが、片末端にカルボン酸が変性しているSPAIであっても、エポキシ樹脂が、SPAIの分子鎖末端のカルボキシ基又はイソシアネート基と反応して鎖伸長と架橋を起こすため、上記と同様の効果を奏することができる。
(硬化剤の詳細)
硬化剤は、低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤と、加熱に伴ってエポキシ樹脂を硬化させる加熱硬化型硬化剤と、に分類される。低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤は、例えば、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、及びポリメルカプタン等である。加熱硬化型硬化剤は、例えば、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック樹脂、及びジシアンジアミド(DICY)等である。
低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を用いた場合、エポキシ樹脂の硬化物のガラス転移点は低く、エポキシ樹脂の硬化物は軟らかい傾向がある。その結果、コンパウンドの硬化物から構成される成形体も軟らかくなり易い。一方、成形体の耐熱性を向上させる観点から、硬化剤は、好ましくは加熱硬化型の硬化剤、より好ましくはフェノール樹脂、さらに好ましくはフェノールノボラック樹脂であってよい。特に硬化剤としてフェノールノボラック樹脂を用いることで、ガラス転移点が高いエポキシ樹脂の硬化物が得られ易い。その結果、成形体の耐熱性及び機械的強度が向上し易い。
フェノール樹脂は、例えば、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノールとアラルキル型フェノールとの共重合型フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノール樹脂は、上記のうちの2種以上から構成される共重合体であってもよい。市販のフェノール樹脂としては、例えば、荒川化学工業株式会社製のタマノル758、又は日立化成株式会社製のHP−850N等を用いてもよい。
フェノールノボラック樹脂は、例えば、フェノール類及び/又はナフトール類と、アルデヒド類と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール類は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール及びアミノフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するナフトール類は、例えば、α−ナフトール、β−ナフトール及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するアルデヒド類は、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド及びサリチルアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
硬化剤は、例えば、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物であってもよい。1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物は、例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及び置換又は非置換のビフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
硬化剤は、アミン類、多官能フェノール類、及び酸無水物類からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。例えば、硬化剤がアミン類である場合、硬化剤の含有量は、アミンにおける活性水素の当量と、エポキシ樹脂におけるエポキシ当量とがほぼ等しくなる量であることが好ましい。ここで、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、ポリアミドイミドのアミド基との反応も考慮した値であることが好ましい。硬化剤が、多官能フェノール類又は酸無水物類である場合、エポキシ樹脂1当量に対して、フェノール性水酸基又はカルボキシ基が0.6〜1.2当量であることが好ましい。硬化剤の含有量が少なすぎると、コンパウンドの硬化物中に未硬化のエポキシ樹脂が残り易く、コンパウンドの硬化物のガラス転移点Tgが低くなる傾向にある。硬化剤の含有量が多すぎると、コンパウンドの硬化物中に未反応の硬化剤が残り易く、コンパウンドの硬化物の絶縁性が低下する傾向にある。ただし、硬化剤の含有量が上記範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
コンパウンドは、上記のうち一種のフェノール樹脂を備えてよく、コンパウンドは、上記のうち複数種のフェノール樹脂を備えてもよい。コンパウンドは、上記のうち一種の硬化剤を備えてよく、コンパウンドは、上記のうち複数種の硬化剤を備えてもよい。
エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する硬化剤中の活性基(フェノール性OH基)の比率は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、好ましくは0.5〜1.5当量、より好ましくは0.9〜1.4当量、さらに好ましくは1.0〜1.2当量であってよい。硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、硬化後のエポキシ樹脂の単位質量当たりのOH量が少なくなり、樹脂組成物(エポキシ樹脂)の硬化速度が低下する。また硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、得られる硬化物のガラス転移温度が低くなったり、硬化物の充分な弾性率が得られなかったりする。一方、硬化剤中の活性基の比率が1.5当量を超える場合、硬化後の成形体の機械的強度が低下する傾向がある。ただし、硬化剤中の活性基の比率が上記範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
(硬化促進剤の詳細)
硬化促進剤は、例えば、エポキシ樹脂と反応してエポキシ樹脂の硬化を促進させる組成物であれば限定されない。硬化促進剤は、例えば、アルキル基置換イミダゾール、又はベンゾイミダゾール等のイミダゾール類であってよい。コンパウンドは、一種の硬化促進剤を備えてよく、複数種の硬化促進剤を備えてもよい。
硬化促進剤がイミダゾール類である場合、硬化促進剤の含有量は、イミダゾールにおける活性水素の当量に基づいて設定するのではなく、経験的に、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が少なすぎると、コンパウンドの硬化物中に未硬化のエポキシ樹脂が残り易く、コンパウンドの硬化物のガラス転移点Tgが低くなる傾向にある。硬化促進剤の含有量が多すぎると、コンパウンドの硬化物中に未反応の硬化促進剤が残り易く、コンパウンドの硬化物の絶縁性が低下する傾向にある。ただし、硬化促進剤の含有量が上記範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
(カップリング剤の詳細)
カップリング剤は、樹脂組成物と金属元素含有粉との密着性を向上させ、コンパウンドの硬化物から構成される成形体の機械的強度を向上させる。カップリング剤は、例えば、シラン系化合物(シランカップリング剤)、チタン系化合物、アルミニウム化合物(アルミニウムキレート類)、及びアルミニウム/ジルコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、酸無水物系シラン及びビニルシランからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。特に、アミノフェニル系のシランカップリング剤が好ましい。コンパウンドは、上記のうち一種のカップリング剤を備えてよく、上記のうち複数種のカップリング剤を備えてもよい。
(流動助剤の詳細)
コンパウンドの流動性の向上のために、コンパウンドは流動助剤を含んでよい。流動助剤は、例えば、無機微粒子であってよい。無機微粒子は、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリンクレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク及びマイカからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。これらの中でも、シリカは、安価であるため好ましい。シリカは、例えば、アエロジル(登録商標)であってよい。コンパウンドがアルミナを含む場合、得られる成形体の熱伝導性が向上し易い。コンパウンドは、上記のうち一種の流動助剤を備えてよく、上記のうち複数種の流動助剤を備えてもよい。流動助剤の平均粒子径(D50)は、100nm以下、又は10nm以下であってよい。流動助剤の平均粒子径(D50)が上記範囲内である場合、成形体の機械的強度が向上し易い。
コンパウンドの環境安全性、リサイクル性、成形加工性及び低コストのために、コンパウンドは難燃剤を含んでよい。難燃剤は、例えば、臭素系難燃剤、鱗茎難燃剤、水和金属化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、窒素含有化合物、ヒンダードアミン化合物、有機金属化合物及び芳香族エンプラからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。コンパウンドは、上記のうち一種の難燃剤を備えてよく、上記のうち複数種の難燃剤を備えてもよい。
コンパウンドは、SPAI及びエポキシ樹脂に加えて、更に別の樹脂を備えてよい。コンパウンドは、例えば、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。コンパウンドに含まれる樹脂は、SPAI及びエポキシ樹脂のみであってもよい。
(コンパウンドの製造方法)
本実施形態に係るコンパウンドの製造方法は、限定されないが、例えば、以下のとおりであってよい。まず、SPAI、エポキシ樹脂、金属元素含有粉、及び有機溶媒を均一に撹拌・混合することにより、樹脂溶液を調製する。換言すれば、上述の樹脂組成物、金属元素含有粉及び有機溶媒を混合することにより、樹脂溶液を調製する。樹脂溶液は、硬化剤を含んでもよい。樹脂溶液は、硬化促進剤を含んでもよい。樹脂溶液は、カップリング剤、流動助剤、難燃剤、及び潤滑剤等の添加剤を含んでもよい。樹脂溶液は、金属元素含有粉及び添加剤を除く成分(SPAI、エポキシ樹脂及び有機溶媒)を含むワニスをあらかじめ調製し、ワニス、金属元素含有粉及び添加剤を均一に撹拌・混合することにより、調製されてもよい。添加剤は、その種類に応じて、樹脂溶液に含有してもよいし、樹脂溶液には含有せずに、後述される粗粉末に添加してもよい。有機溶媒は、樹脂組成物を溶解する液体であればよく、特に限定されない。有機溶媒は、例えば、N−メチルピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン及びキシレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。有機溶媒は、低沸点溶媒又は高沸点溶媒であってよい。低沸点溶媒は、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン及びキシレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。高沸点溶媒は、例えば、N−メチルピロリジノン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。有機溶媒は、低沸点溶媒のみであってよい。有機溶媒は、高沸点溶媒のみであってもよい。有機溶媒は、高沸点溶媒及び低沸点溶媒の混合溶媒であってもよい。樹脂溶液は、上記のうち一種の有機溶媒を備えてよく、上記のうち複数種の有機溶媒を備えてもよい。
続いて、上記の樹脂溶液から有機溶媒を十分に除去することにより、凝集物を得る。ここで、有機溶媒の除去に伴って、樹脂組成物が金属元素含有粉を構成する個々の粒子の表面に付着する。樹脂組成物は、当該粒子の表面の全体に付着してもよく、当該粒子の表面の一部のみに付着してもよい。樹脂溶液から有機溶媒を除去する方法は、特に限定されない。例えば、有機溶媒が低沸点溶媒である場合、低沸点溶媒は乾き易い。そのため、樹脂溶液を乾燥することにより、樹脂溶液から有機溶媒を除去することができる。樹脂溶液を乾燥する方法は、例えば、真空乾燥であってよい。有機溶媒が高沸点溶媒である場合、例えば以下の方法により、樹脂溶液から有機溶媒を除去してよい。まず、樹脂溶液を貧溶媒中に注いで、樹脂溶液を貧溶媒に接触させることにより、沈殿物を得る。貧溶媒とは、樹脂組成物を溶解し難い溶媒である。貧溶媒は、例えば、メタノールであってよい。沈殿物は、さらに貧溶媒で洗浄されてよい。続いて、沈殿物を乾燥することにより、凝集物を得る。沈殿物を乾燥する方法は、例えば、真空乾燥であってよい。SPAIが、SPAIの分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端に2個以上のカルボキシ基を有する場合、当該SPAIは、低沸点溶媒に溶解し易い。そのため、上記の2個以上のカルボキシ基を有するSPAIを用いた場合、有機溶媒として低沸点溶媒を用いることができ、樹脂溶液の乾燥により、樹脂組成物を金属元素含有粉に容易に付着させることができる。
続いて、上記の凝集物を粗粉砕することにより、粗粉末を得る。成形体の密度を高めるために、粗粉末の粒度を調整してよい。粗粉末の粒度は、例えば、ふるいを用いて粗粉末から粗大粉を除去することにより調整してよい。
後述される第二工程における金型の損傷を低減するために、上記で得られた粗粉末に潤滑剤を添加してもよい。潤滑剤は、特に限定されない。潤滑剤は、例えば、金属石鹸及びワックス系潤滑剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。金属石鹸は、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、及びステアリン酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。ワックス系潤滑剤は、例えば、長鎖炭化水素、EBS(エチレンビスステアリン酸アミド)、及びポリエチレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。また、第二工程における金型の損傷を低減するために、潤滑剤を適当な分散媒に分散して分散液を調製し、この分散液を金型ダイス内の壁面(パンチと接触する壁面)に塗布し、塗布された分散液を乾燥してもよい。以上の方法により、粉末状のコンパウンドが得られる。
(コンパウンドの用途)
コンパウンドに含まれる金属元素含有粉の組成又は組合せに応じて、コンパウンドの硬化物から構成される成形体の電磁気的特性又は熱伝導性等の諸特性を自在に制御し、当該成形体を様々な工業製品又はそれらの原材料に利用することができる。コンパウンドを用いて製造される工業製品は、例えば、自動車、医療機器、電子機器、電気機器、情報通信機器、家電製品、音響機器、及び一般産業機器であってよい。例えば、コンパウンドが金属元素含有粉として永久磁石の粉末を含む場合、コンパウンドはボンド磁石の原材料として利用されてよい。コンパウンドが金属元素含有粉としてFe‐Si‐Cr系合金又はフェライト等の磁性粉を含む場合、コンパウンドから作製された成形体(例えばシート)は、EMIフィルタ等のインダクタの原材料(例えば磁心)として利用されてよい。コンパウンドが金属元素含有粉として鉄粉と銅粉とを含む場合、コンパウンドから作製された成形体(例えばシート)は、電磁波シールドとして利用されてよい。本実施形態に係るコンパウンドの硬化物から構成される成形体は、高い機械的強度を有し、耐熱性に優れる。そのため、当該成形体を、例えば200℃以上の高温に曝される車載環境下で使用したり、冷凍機油中で高温に長時間曝したりしても、成形体の機械的強度が低下し難く、成形体の寸法が変化し難い。
<コンパウンドの硬化物>
本実施形態に係る硬化物は、上記コンパウンドの硬化物である。硬化物は、硬化したSPAI及びエポキシ樹脂と、当該硬化したSPAI及びエポキシ樹脂によって互いに結着された金属元素含有粉と、を備えてよい。換言すれば、硬化物は、硬化した樹脂組成物と、当該硬化した樹脂組成物によって互いに結着された金属元素含有粉と、を備えてよい。「硬化した樹脂組成物」を「樹脂硬化物」と表記する場合がある。コンパウンドが備えるSPAIは、当該SPAIの分子鎖の両末端のうち少なくとも一方の末端に2個以上のカルボキシ基を有してよく、硬化物は、当該カルボキシ基と、エポキシ樹脂が有するエポキシ基との反応部位を含んでよい。反応部位とは、カルボキシ基とエポキシ基とが反応することによって形成された部位である。硬化物がカルボキシ基とエポキシ基との反応部位を含む場合、当該硬化物から構成される成形体の靭性が大きくなり易い。
ガラス転移温度は、動的粘弾性測定においてtanδがピーク(極大)になる温度である。樹脂硬化物は、−50℃付近にジメチルシロキサンに由来するガラス転移点を有してよい。この温度域よりも高温側では、シロキサン構造による応力緩和機能が働き、成形体に外的な衝撃が加えられた際に応力が分散される。その結果、成形体の機械的強度が高くなり易い。また、樹脂硬化物は、エポキシ樹脂が有するエポキシ基と、ポリアミドイミドが有するアミド基とが反応して形成される架橋構造に由来するガラス転移温度を有してよい。上記架橋構造に由来するガラス転移温度は、例えば、150℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であってよい。樹脂硬化物が150℃以上のガラス転移温度を有する場合、高温環境下においても、コンパウンドの硬化物から構成される成形体の機械的強度が低下し難い。
熱分解温度は、5%熱重量減少温度である。樹脂硬化物の熱分解温度は、例えば、350℃以上であってよい。樹脂硬化物の熱分解温度が上記範囲内である場合、樹脂硬化物と金属元素含有粉との濡れ性及び接着性が向上し易い。その結果、コンパウンドの硬化物から構成される成形体の耐熱性及び機械的強度が向上し易く、当該成形体の機械的強度が低下し難い。そのため、樹脂硬化物の熱分解温度が上記範囲内である場合、成形体は、車載分野の工業製品に適する。
(成形体の製造方法)
本実施形態に係るコンパウンドの硬化物から構成される成形体の製造方法は、第一工程、第二工程及び第三工程を備えてよい。以下では、各工程の詳細を説明する。
第一工程では、金属元素含有粉を構成する個々の粒子の表面に樹脂組成物を付着させ、コンパウンドを作製する。コンパウンドを作製する方法は、上記の通りであってよい。
第二工程では、コンパウンドを金型中で加圧することにより、成形体(Bステージの成形体)を得る。ここで、樹脂組成物が、金属元素含有粉を構成する個々の粒子間に充填される。そして樹脂組成物は、結合材(バインダ)として機能し、金属元素含有粉を構成する個々の粒子同士を互いに結着する。コンパウンドに及ぼす圧力が高いほど、成形体の密度が高くなり易く、成形体の機械的強度が高くなり易い。ボンド磁石を製造する場合、コンパウンドに及ぼす圧力が高いほど、ボンド磁石の磁束密度が高くなり易く、ボンド磁石の機械的強度が高くなり易い。コンパウンドに及ぼす圧力は、例えば、好ましくは500MPa以上2500MPa以下、より好ましくは1400MPa以上2000MPa以下であってよい。コンパウンドに及ぼす圧力が上記範囲内である場合、成形体の量産性が向上し易く、金型の寿命が延び易い。金属元素含有粉の真密度に対する成形体の相対密度は、例えば、好ましくは75%以上86%以下、より好ましくは80%以上86%以下であってよい。成形体の相対密度が上記範囲内であると、機械的強度と、耐熱性と、金属元素含有粉に由来する物性とを十分に兼ね備える成形体が得られ易い。
第三工程では、成形体を熱処理によって硬化させ、Cステージの成形体を得る。熱処理の温度は、成形体中の樹脂組成物が十分に硬化する温度であればよい。熱処理の温度は、例えば、好ましくは150℃以上300℃以下、より好ましくは175℃以上250℃以下であってよい。成形体中の金属元素含有粉の酸化を抑制するために、熱処理を不活性雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理温度が300℃を超える合、熱処理の雰囲気に不可避的に含まれる微量の酸素によって金属元素含有粉が酸化されたり、樹脂硬化物が劣化したりする。金属元素含有粉の酸化、及び樹脂硬化物の劣化を抑制しながら樹脂組成物を十分に硬化させるためには、熱処理温度の保持時間は、好ましくは数分以上4時間以下、より好ましくは5分以上1時間以下であってよい。
<ボンド磁石>
本実施形態に係るボンド磁石は、上記のコンパウンドの硬化物を含む。ボンド磁石は、コンパウンドの硬化物のみからなっていてよく、硬化物に加えて他の成分を含んでもよい。
Nd‐Fe‐B系磁石の磁束密度は高く、Nd‐Fe‐B系磁石は非常に強い磁力を有する。そのため、コンパウンドを用いてボンド磁石を製造する場合、金属元素含有粉としてNd‐Fe‐B系磁石(Nd‐Fe‐B系合金)の粉末を用いることが好ましい。ボンド磁石におけるNd‐Fe‐B系磁石の粉末の占積率が83%以上である場合、当該ボンド磁石を、軸部材を有するモータの回転子等として用いても、十分な磁気特性が得られ易い。硬化した樹脂組成物は、金属元素含有粉との濡れ性及び接着性に優れる。そのため、ボンド磁石におけるNd‐Fe‐B系磁石の粉末の占積率を、例えば95%以上又は98%以上とすることができる。Nd‐Fe‐B系磁石の粉末の占積率は高いほど、ボンド磁石の磁力が高くなり易く、ボンド磁石の密度が高くなり易く、ボンド磁石の機械的強度が高くなり易い。
以下では実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
<ポリアミドイミドの合成>
(合成例1)
コック付きの25mlの水分定量受器、温度計、及び撹拌器が取り付けられた1リットルのセパラブルフラスコを用意した。水分定量受器には還流冷却器を連結した。このセパラブルフラスコに、芳香環を3個以上有するジアミン65.7g(0.16mol)、シロキサンジアミン33.3g(0.04mol)、無水トリメリット酸(TMA)80.7g(0.42mol)、及び非プロトン性極性溶媒560gを容れた。
芳香環を3個以上有するジアミンとしては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を用いた。シロキサンジアミンとしては、信越化学工業株式会社製の反応性シリコーンオイル「X−22−161AS」を用いた。シロキサンジアミンのアミン当量は、416であった。非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。
セパラブルフラスコ内の原料を80℃で30分間撹拌した。続いて、水と共沸可能な芳香族炭化水素100mlをセパラブルフラスコに容れた。水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、トルエンを用いた。
セパラブルフラスコ内の原料を約160℃で2時間加熱することにより、還流した。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、及び、水の留出が見られなくなっていることを確認した。水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、セパラブルフラスコ内の原料を約190℃まで加熱することにより、原料からトルエンを除去した。この原料を室温に戻した後、セパラブルフラスコに芳香族ジイソシアネート60.1g(0.24mol)を容れた。芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いた。
セパラブルフラスコ内の原料を190℃で2時間加熱することにより、合成例1のポリアミドイミドのNMP溶液を得た。合成例1のポリアミドイミドは、シロキサン構造を有していた。
(合成例2)
コック付きの25mlの水分定量受器、温度計、及び撹拌器が取り付けられた1リットルのセパラブルフラスコを用意した。水分定量受器には還流冷却器を連結した。このセパラブルフラスコに、シロキサンジアミン52.4g(0.06mol)、脂肪族ジアミン80.0g(0.04mol)、新日本理化株式会社製の「ワンダミンWHM」2.1g(0.01mol)、無水トリメリット酸(TMA)40.3g(0.21mol)、及び非プロトン性極性溶媒357gを容れた。
シロキサンジアミンとしては、信越化学工業株式会社製の反応性シリコーンオイル「X−22−9412」を用いた。シロキサンジアミンのアミン当量は、437であった。脂肪族ジアミンとしては、三井化学ファイン株式会社製の「D2000」を用いた。脂肪族ジアミンのアミン当量は、1000であった。非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。
セパラブルフラスコ内の原料を80℃で30分間撹拌した。続いて、水と共沸可能な芳香族炭化水素120mlをセパラブルフラスコに容れた。水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、トルエンを用いた。
セパラブルフラスコ内の原料を約160℃で2時間加熱することにより、還流した。水分定量受器に水が約3.8ml以上たまっていること、及び、水の留出が見られなくなっていることを確認した。水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、セパラブルフラスコ内の原料を約190℃まで加熱することにより、原料からトルエンを除去した。この原料を50℃まで冷却した後、セパラブルフラスコに芳香族ジイソシアネート32.5g(0.13mol)を容れた。芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いた。
セパラブルフラスコ内の原料を180℃で2時間加熱した。この原料を50℃まで冷却した後、セパラブルフラスコにトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)2.6g(0.0122mol)を容れた。セパラブルフラスコ内の原料を160℃で1時間加熱することにより、合成例2のポリアミドイミドのNMP溶液を得た。合成例2のポリアミドイミドは、シロキサン構造を有していた。合成例2のポリアミドイミドの分子鎖の末端は、2個のカルボキシ基を有していた。合成例2のポリアミドイミドの数平均分子量は、30500であった。合成例2のポリアミドイミドのNMP溶液の不揮発分の含有量は、34質量%であった。
(比較合成例1)
コック付きの25mlの水分定量受器、温度計、及び撹拌器が取り付けられた1リットルのセパラブルフラスコを用意した。水分定量受器には還流冷却器を連結した。このセパラブルフラスコに、芳香環を3個以上有するジアミン82.13g(0.20mol)、シロキサンジアミン33.3g(0.04mol)、無水トリメリット酸(TMA)80.7g(0.42mol)、及び非プロトン性極性溶媒560gを容れた。
芳香環を3個以上有するジアミンとしては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を用いた。非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。
セパラブルフラスコ内の原料を80℃で30分間撹拌した。続いて、水と共沸可能な芳香族炭化水素100mlをセパラブルフラスコに容れた。水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、トルエンを用いた。
セパラブルフラスコ内の原料を約160℃で2時間加熱することにより、還流した。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、及び、水の留出が見られなくなっていることを確認した。水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、セパラブルフラスコ内の原料を約190℃まで加熱することにより、原料からトルエンを除去した。この原料を室温に戻した後、セパラブルフラスコに芳香族ジイソシアネート60.1g(0.24mol)を容れた。芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いた。
セパラブルフラスコ内の原料を190℃で2時間加熱することにより、比較合成例1のポリアミドイミドのNMP溶液を得た。比較合成例1のポリアミドイミドは、シロキサン構造を有していなかった。
<ワニスの調製>
(ワニス1)
合成例1のポリアミドイミドのNMP溶液、エポキシ樹脂、硬化促進剤、及び希釈溶媒をプラスチック容器に容れた。プラスチック容器内の原料における合成例1のポリアミドイミドのNMP溶液、エポキシ樹脂、及び硬化促進剤それぞれの含有量は、下記の表1に示される値(単位:質量部)に調整された。表1において、「SPAI」は、シロキサン構造を有するポリアミドイミドのNMP溶液を意味する。「PAI」は、シロキサン構造を有さないポリアミドイミドのNMP溶液を意味する。
エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の「NC3000H」を用いた。溶媒としては、γ−ブチロラクトン(GBL)及びメチルエチルケトン(MEK)の混合液を用いた。表1において、「GBL/MEK」とは、GBL及びMEKの混合液を意味する。硬化促進剤としては、四国化成工業株式会社製の「2E4MZ」を用いた。
フラスチック容器内の原料を、ミックスロータを用いて回転数40rpmで1時間撹拌・混合することにより、ワニス1を得た。ワニス1の不揮発分(固形分)の含有量は、表1に示される値(単位:質量%)であった。
[ガラス転移点の算出]
ワニス1を銅箔の表面に塗布した。銅箔としては、古河サーキットフォイル株式会社製の「F2−WS−12」を用いた。銅箔の厚さは、12μmであった。銅箔に塗布されたワニス1を140℃で15分間乾燥することにより、シートを銅箔の表面に形成した。乾燥されたシートの厚みは、50μmであった。上記の方法により、銅箔の表面に形成されたシートを2つ作製した。2つのシートの表面同士を重ね合わせることにより、積層体を形成した。この積層体を真空プレスした。真空プレスでは、積層体を2MPaで加圧しながら200℃で1時間加熱した。続いて、積層体からエッチング処理により銅箔を除去して、樹脂フィルムを得た。動的粘弾性測定装置を用いて、樹脂フィルムの動的粘弾性を測定した。動的粘弾性測定装置としては、株式会社ユービーエム製のREO−GEL E−4000を用いた。動的粘弾性の測定では、樹脂フィルムを昇温速度5℃/分で30℃から350℃まで加熱した。動的粘弾性としては、貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E’’を測定した。E’及びE’’からtanδを算出した。tanδは、損失弾性率E’’と貯蔵弾性率E’との比(E’’/E’)で定義される。上記の動的粘弾性の測定において、tanδが極大を示す温度をガラス転移点Tg(単位:℃)として算出した。ワニス1から作製された樹脂フィルムのTgを表1に示す。
[熱分解温度の測定]
上記のガラス転移点の算出と同様の方法により、ワニス1から樹脂フィルムを作製した。ブルカー株式会社製のTG−DTAを用いて、熱分解温度として5%熱重量減少温度を測定した。熱分解温度の測定では、樹脂フィルムを空気雰囲気下にて昇温速度10℃/分で加熱した。ワニス1から作製された樹脂フィルムの熱分解温度を表1に示す。
(ワニス2〜5)
ワニス2〜5それぞれの調製では、各ワニスの組成が表1に示される組成となるように、各原料をプラスチック容器に容れた。以上の点を除いてワニス1と同様の方法により、ワニス2〜5それぞれを調製した。
ワニス1と同様の方法により、ワニス2〜5それぞれから樹脂フィルムを作製し、各樹脂フィルムのTgを算出した。各Tgを表1に示す。ワニス1と同様の方法により、ワニス2〜5それぞれから樹脂フィルムを作製し、各樹脂フィルムの熱分解温度を測定した。各熱分解温度を表1に示す。
<ボンド磁石の作製>
(実施例1)
上記ワニス1、磁性粉、及びシランカップリング剤を650mlの軟膏容器に容れた。軟膏容器内の原料におけるワニス1、磁性粉、及びシランカップリング剤それぞれの含有量は、下記の表2に示される値(単位:質量部)に調整された。
磁性粉としては、ネオジム‐鉄‐ボロン系合金を用いた。ネオジム‐鉄‐ボロン系合金としては、モリコープマグネクエンチ社製の「MQP−B」を用いた。磁性粉の平均粒径は、100μmであった。シランカップリング剤としては、信越化学工業株式会社製の「KBM−573」を用いた。
軟膏容器内の原料を、自公転撹拌機を用いて公転速度1000rpm及び自転速度500rpmで40秒間撹拌した後、室温まで冷却した。この操作を3回繰り返した。続いて、軟膏容器内の原料の全量を500mlのメタノール中に注いだ。メタノール中に生じた沈殿物をさらにメタノールで洗浄した。沈殿物を室温で24時間真空乾燥することにより、凝集物を得た。凝集物を粗粉砕して、粗粉末を得た。100メッシュのふるいを用いて粗粉末から粗大粉を除去することにより、粗粉末の粒度を整えた。粒度を整えた粗粉末100質量部に、潤滑剤0.3質量部を添加した。潤滑剤としては、ステアリン酸カルシウムを用いた。この粗粉末と潤滑剤とを、V型混合機を用いて1.0時間ほど混合することにより、実施例1のコンパウンドを得た。表2において、「コーティング手法」とは、金属元素含有粉(磁性粉)の表面に樹脂組成物を付着させる方法を意味する。「貧溶媒接触」とは、軟膏容器内の原料を貧溶媒(メタノール)に接触させたことを意味する。
実施例1のコンパウンドを、油圧プレス機を用いて2000MPaで加圧することにより、円柱形状の圧縮成形体を得た。圧縮成形体の寸法は、外径11.3mm×高さ8mmであった。圧縮成形体を、窒素ガス(N2)雰囲気下にて200℃で10分間加熱して、圧縮成形体を硬化させることにより、実施例1のボンド磁石(コンパウンドの硬化物)を得た。
[圧壊強度試験]
万能圧縮試験機を用いて、未使用の実施例1のボンド磁石に高さ方向から圧縮圧力を加えた。万能圧縮試験機としては、株式会社島津製作所製の「AG−10TBR」を用いた。圧縮圧力によってボンド磁石が破壊されたときの圧縮圧力の最大値を、圧壊強度(単位:MPa)として算出した。未使用の実施例1のボンド磁石の圧壊強度を表2に示す。
[熱劣化試験]
未使用の実施例1のボンド磁石に対して、熱劣化試験を行った。熱劣化試験では、未使用のボンド磁石を、乾燥機内で空気雰囲気下にて200℃で1000時間加熱した。
上記の圧壊強度試験と同様の方法により、熱劣化試験後のボンド磁石の圧壊強度を算出した。熱劣化試験後の実施例1のボンド磁石の圧壊強度を表2に示す。
(実施例2)
実施例2では、ワニス1の代わりに上記ワニス2を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法により、実施例2のコンパウンドを得た。
実施例1のコンパウンドの代わりに、実施例2のコンパウンドを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法により、実施例2のボンド磁石を得た。
実施例1と同様の方法により、未使用の実施例2のボンド磁石の圧壊強度、及び、熱劣化試験後の実施例2のボンド磁石の圧壊強度をそれぞれ算出した。各結果を表2に示す。
(実施例3)
上記ワニス3、磁性粉、及びシランカップリング剤を300mlのナス型フラスコに容れた。ナス型フラスコ内の原料におけるワニス3、磁性粉、及びシランカップリング剤それぞれの含有量は、表2に示される値(単位:質量部)に調整された。
磁性粉としては、ネオジム‐鉄‐ボロン系合金を用いた。ネオジム‐鉄‐ボロン系合金としては、モリコープマグネクエンチ社製の「MQP−B」を用いた。磁性粉の平均粒径は、100μmであった。シランカップリング剤としては、信越化学工業株式会社製の「KBM−573」を用いた。
ナス型フラスコ内の原料を、エバポレータ内にて25℃で30分間ほど撹拌した。エバポレータ内を減圧し、原料をナス型フラスコから取り出した。エバポレータ内を0.1MPa以下に減圧して、原料を真空乾燥することにより、原料から溶媒を十分に除去して、凝集物を得た。凝集物を粗粉砕して、粗粉末を得た。100メッシュのふるいを用いて粗粉末から粗大粉を除去することにより、粗粉末の粒度を整えた。粒度を整えた粗粉末100質量部に、潤滑剤0.3質量部を添加した。潤滑剤としてはステアリン酸カルシウムを用いた。この粗粉末と潤滑剤とを、V型混合機を用いて1.0時間ほど混合することにより、実施例3のコンパウンドを得た。表2において、「真空乾燥」とは、ナス型フラスコ内の原料を真空乾燥したことを意味する。
実施例1のコンパウンドの代わりに、実施例3のコンパウンドを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法により、実施例3のボンド磁石を得た。
実施例1と同様の方法により、未使用の実施例3のボンド磁石の圧壊強度、及び、熱劣化試験後の実施例3のボンド磁石の圧壊強度をそれぞれ算出した。各結果を表2に示す。
(実施例4)
実施例4では、ワニス3の代わりに上記ワニス4を用いたことを除いて、実施例3と同様の方法により、実施例4のコンパウンドを得た。
実施例1のコンパウンドの代わりに、実施例4のコンパウンドを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法により、実施例4のボンド磁石を得た。
実施例1と同様の方法により、未使用の実施例4のボンド磁石の圧壊強度、及び、熱劣化試験後の実施例4のボンド磁石の圧壊強度をそれぞれ算出した。各結果を表2に示す。
(比較例1)
エポキシ樹脂13.0g、硬化剤7.0g、硬化促進剤0.13g、磁性粉、及びシランカップリング剤を300mlのナス型フラスコに容れた。ナス型フラスコ内の原料のうち、磁性粉及びシランカップリング剤を除く残りの部分が、比較例1のワニスに相当する。ナス型フラスコ内の原料における比較例1のワニス、磁性粉、及びシランカップリング剤それぞれの含有量は、表2に示される値(単位:質量部)に調整された。
エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の「EPPN502H」を用いた。硬化剤としては、日立化成株式会社製の「HP850N」を用いた。硬化促進剤としては、四国化成工業株式会社製の「2PZ−CN」を用いた。磁性粉としては、ネオジム‐鉄‐ボロン系合金を用いた。ネオジム‐鉄‐ボロン系合金としては、モリコープマグネクエンチ社製の「MQP−B」を用いた。磁性粉の平均粒径は、100μmであった。シランカップリング剤としては、信越化学工業株式会社製の「KBM−573」を用いた。
ナス型フラスコ内の原料を、エバポレータ内にて25℃で30分間ほど撹拌した。エバポレータ内を減圧し、原料をナス型フラスコから取り出した。エバポレータ内を0.1MPa以下に減圧して、原料から溶媒を十分に除去することにより、凝集物を得た。凝集物を粗粉砕して、粗粉末を得た。100メッシュのふるいを用いて粗粉末から粗大粉を除去することにより、粗粉末の粒度を整えた。粒度を整えた粗粉末100質量部に、潤滑剤0.3質量部を添加した。潤滑剤としては、ステアリン酸カルシウムを用いた。この粗粉末と潤滑剤とを、V型混合機を用いて1.0時間ほど混合することにより、比較例1のコンパウンドを得た。比較例1のコンパウンドはSPAIを含有しないものであった。
実施例1のコンパウンドの代わりに、比較例1のコンパウンドを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法により、比較例1のボンド磁石を得た。
実施例1と同様の方法により、未使用の比較例1のボンド磁石の圧壊強度、及び、熱劣化試験後の比較例1のボンド磁石の圧壊強度をそれぞれ算出した。各結果を表2に示す。
(比較例2)
比較例2では、ワニス1の代わりに上記ワニス5を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法により、比較例2のコンパウンドを得た。
実施例1のコンパウンドの代わりに、比較例2のコンパウンドを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法により、比較例2のボンド磁石を得た。
実施例1と同様の方法により、未使用の比較例2のボンド磁石の圧壊強度、及び、熱劣化試験後の比較例2のボンド磁石の圧壊強度をそれぞれ算出した。各結果を表2に示す。
表2に示すように、未使用の実施例1〜4それぞれのボンド磁石の圧壊強度は、未使用の比較例1及び2それぞれのボンド磁石の圧壊強度に比べて高かった。熱劣化試験後の実施例1〜4それぞれのボンド磁石の圧壊強度は、熱劣化試験後の比較例1及び2それぞれのボンド磁石の圧壊強度に比べて高かった。実施例1〜4では、比較例1及び2と比べて、未使用のボンド磁石の圧壊強度から熱劣化試験後のボンド磁石の圧壊強度を引いた値が小さかった。つまり、実施例1〜4では、比較例1及び2と比べて、熱劣化試験によるボンド磁石の圧壊強度の低下が抑制された。本発明によれば、機械的強度が高く、耐熱性に優れる成形体を作製できるコンパウンド、当該コンパウンドの硬化物、及び当該硬化物を含むボンド磁石が提供されることが確認された。