以下、電池システム10の構成について図面を参照して説明する。図1は、電池システム10が搭載された電動車両100の概略構成を示す図である。この電動車両100は、動力源として、二つの回転電機MG1,MG2と一つのエンジン104とを備えたハイブリッド自動車である。
エンジン104は、遊星歯車等からなる動力分割機構106に接続されている。遊星歯車は、エンジン104の動力を、駆動輪108と第一回転電機MG1とに分割して伝達する。二つの回転電機MG1,MG2は、いずれも、電動機として機能するとともに発電機としても機能する。第二回転電機MG2の出力軸は、駆動輪108に連結されている。第二回転電機MG2は、主に、電動機として機能するもので、車両走行時には、駆動輪108に駆動トルクを供給する。また、第二回転電機MG2は、車両制動時には、制動力により発電する発電機としても機能する。第一回転電機MG1は、主に、発電機として機能するもので、動力分割機構106に連結されており、エンジン104の余剰動力を受けて、発電する。また、第一回転電機MG1は、エンジン104を始動させるスタータモータとしても機能する。
インバータ102は、直流電力を交流電力に、また、交流電流を直流電力に変換する。具体的には、インバータ102は、後述する電池12から供給された直流電力を交流電力に変換して、電動機として駆動する第一、第二回転電機MG1,MG2に出力する。また、インバータ102は、発電機として駆動する第一、第二回転電機MG1,MG2で発電された交流電力を直流電力に変換して電池12に供給する。なお、インバータ102と電池12との間には、電力を、昇圧または降圧させる変圧器が設けられてもよい。こうしたインバータ102や、回転電機MG1,MG2、エンジン104等の駆動は、制御装置14により制御される。
電池システム10は、充放電可能な電池12を備えている。電池12は、回転電機MG1,MG2を駆動するための電力を供給するとともに、回転電機MG1,MG2で発電された電力を蓄電する二次電池である。この電池12は、直列または並列に接続した複数の単電池を有している。電池12の種類としては、種々考えられるが、本例では、シリコン系材料とグラファイトを含んだ複合体を負極活物資として用いたリチウムイオン二次電池を用いている。シリコン系材料とグラファイトを含んだ複合体を負極活物質として用いた場合、電池12は、充電率Cに対する開放電圧値Voの変化特性が、一部の充電率範囲でヒステリシスを持つが、これについては、後述する。なお、充電率Cとは、電池12の満充電容量FCCに対する現在の充電容量に100%を乗じた値(%)であり、一般的には、SOC(State Of Charge)と呼ばれる値である。
電池システム10には、この電池12の状態を特定するために、電流センサ20、電圧センサ22、温度センサ24等が設けられている。電流センサ20は、電池12に入出力する電流値を検出する。検出された電流値は、検出電流値Ibとして制御装置14に入力される。なお、電流センサ20は、放電電流を正値、充電電流を負値として検出する。電圧センサ22は、電池12の端子間電圧値を検出する。検出された電圧値は、検出電圧値Vbとして、制御装置14に入力される。なお、電池12は、通常、複数のセルを直列または並列に接続した組電池である。そのため、電圧センサ22は、個々のセルごとに設けられてもよいし、複数のセルで構成されるブロックごとに設けられてもよいし、組電池全体で、一つのだけ設けられてもよい。温度センサ24は、電池12の温度を検出する。検出された温度は、電池温度Tbとして、制御装置14に入力される。なお、温度センサ24は、一つでもよいし、複数でもよい。電圧センサ22や温度センサ24が複数設けられている場合には、当該複数の電圧センサ22または温度センサ24の検出値の統計値、例えば、平均値や最高値、最低値等を、検出電圧値Vbまたは電池温度Tbとして扱えばよい。
電池システム10は、さらに、電池12を、外部充電するための充電器16およびコネクタ18も有している。外部充電とは、ハイブリッド車両100の外部に設けられた外部電源(例えば、商用電源)からの電力により、電池12を充電することである。コネクタ18は、この外部電源のコネクタ(いわゆる充電プラグ)に接続することができる。充電器16は、コネクタ18を介して供給される外部電力(交流電力)を、直流電力に変換して、電池12に供給する。
制御装置14は、回転電機MG1,MG2やエンジン104等の駆動源の駆動を制御するとともに、電池12の充放電を制御する。この制御装置14は、センサインターフェース26、メモリ28、CPU30等を備えている。センサインターフェース26には、各種センサ20,22,24が接続されている。センサインターフェース26は、各種センサ20,22,24に制御信号を出力するとともに、各種センサ20,22,24から入力されたデータをCPU30で取り扱える信号形態に変換する。メモリ28は、各種制御パラメータや各種プログラムを記憶する。CPU30は、各種情報処理や、演算を行う。このセンサインターフェース26とCPU30とメモリ28との間は、相互にデータバスによって接続されている。なお、図1では、制御装置14を一つのブロックで図示しているが、制御装置14は、複数の装置(複数のCPU30、複数のメモリ28等)で構成されてもよい。また、制御装置14の一部の機能は、車両の外部に設けられ、車両内に設けられた制御装置と無線で通信できる外部装置で実現されてもよい。
制御装置14は、電池12の充電率Cが、所定の目標範囲に収まるように、電池12の充放電を制御する。こうした制御を可能にするために、制御装置14は、電池12の充電率Cを定期的に推定し、監視している。
この充電率Cの推定について図2を参照して説明する。図2は、制御装置14の機能ブロック図である。なお、図2では、充電率推定に関与する機能のみを図示しているが、実際には、図示していない種々の機能を有する。
制御装置14は、Ci推定部32と、Cv推定部34と、Ce算出部36と、を備えている。Ci推定部32は、電流由来充電率Ciを推定する。電流由来充電率Ciとは、検出電流値Ib、より具体的には、検出電流値Ibを積算した電流積算値ΔAhを参照して推定された充電率である。この電流由来充電率Ciは、積算開始時刻の充電率である開始時充電率C_0に、充電率の変動量ΔCを加算することで推定される。すなわち、Ci推定部32は、Ci=C_0+ΔCの演算を行う。
また、充電率の変動量ΔCは、電流積算値ΔAhの満充電容量FCCに対する比率で表すことができ、ΔC=(ΔAh/FCC)×100となる。また、電流積算値ΔAhは、検出電流値Ibのサンプリング周期をΔtとした場合、ΔAh=Σ(Ib×Δt)/3600である。なお、電池12の満充電容量FCCは、メモリ28に記録されている。制御装置14は、電池12の経年劣化を推定し、経年劣化に応じて、この満充電容量FCCの変化を補正する補正機能を有していてもよい。
Cv推定部34は、電圧由来充電率Cvを推定する。電圧由来充電率Cvとは、検出電圧値Vbを参照して推定された充電率である。この電圧由来充電率Cvの推定方法としては、いくつかのバリエーションが考えられる。
例えば、電圧由来充電率Cvは、開放電圧値Voを、SOC−OCV曲線に照らしあわせて推定されてもよい。SOC−OCV曲線は、充電率Cに対する開放電圧値Voの変化特性を示す曲線である。図3は、SOC−OCV曲線の一例を示す図である。図3において、横軸は、電池12の充電率C(SOC)を、縦軸は、電池12の開放電圧値Vo(OCV)を示している。こうしたSOC−OCV曲線は、メモリ28に記憶されている。なお、満充電容量FCCと同様に、このSOC−OCV曲線も、電池12の経年劣化に応じて、補正されてもよい。
電圧由来充電率Cvは、検出電圧値Vbから開放電圧値Voを取得し、さらに、この開放電圧値Voを、メモリ28に記憶されているSOC−OCV曲線に照らし合わせる。そして、電圧由来充電率Cvは、照らし合わせにより得られた充電率Cを、電圧由来充電率Cvとして取得する。例えば、図3の例では、開放電圧値Vo=V1の場合、電圧由来充電率Cv=C1となる。
なお、開放電圧値Voは、電池12に分極が生じていない状態(緩和状態)での電池12の端子間電圧である。各種演算で用いられる開放電圧値Voは、実測値でもよいし、推定値でもよい。したがって、一定期間、電池12の充放電を停止し、分極が解消したときに、電圧センサ22で検出された検出電圧値Vbを、開放電圧値Voとして取り扱ってもよい。また、分極が生じているときでも、電池12に流れる電流が微小であり、分極成分を精度よく推定できるのであれば、電圧センサ22で検出された検出電圧値Vbから、分極の影響分を補正した値を、開放電圧値Voとして取り扱ってもよい。電池12に流れる電流が微小の状態としては、例えば、エンジン104の動力のみで走行しており、回転電機MG1,MG2をほぼ停止させている状態や、信号待ち等により車両自体が停車している状態等が挙げられる。
なお、検出電圧値Vbから分極の影響分を補正して開放電圧値Voを取得する方法としては、種々、提案されているが、例えば、電池12の内部状態を模式的に表したモデル式に基づいて、開放電圧値Voを推定してもよい。また、かかる電池モデルを用いて(SOC−OCV曲線を参照することなく)、電圧由来充電率Cvを推定してもよい。電池モデル式としては、従来から種々の形態が知られているが、例えば、特開2008−243373号公報に開示されている電池モデルを用いることができる。この電池モデルは、バトラ・ボルマーの式に基づいて構成されており、負極および正極の活物質内のリチウム濃度分布を規定する活物質拡散モデル式と、電池12の電圧と電流との関係を示す電圧電流モデル関係式と、を含む。式(1)は、電圧電流モデル関係式を、式(2)は、活物質拡散モデル式の一例を示している。また、式(3)、式(4)は、活物質拡散モデル式の境界条件を示している。
上記のモデル式中の変数および定数について、添字eは電解液中の値であることを示し、sは活物質中の値であることを示す。また、添字jは正極および負極を区別するものであり、j=1は、正極における値を示し、j=2は、負極における値を示すものとする。また、正極および負極での変数あるいは定数を包括的に表記する場合には、添字jを省略して表記することとする。また、変数あるいは定数に付された記号♯は、平均値を表わす。
また、モデル式中、tは、時間を、Tは、電池温度を、θは、局所充電率を、Dsは、拡散係数を示している。拡散係数Dsは、電池温度Tに依存する値であり、メモリ28には、この電池温度Tに対する拡散係数Dsのマップを記憶しておく。その他のパラメータは、図4に示す通りである。
図5は、電池モデル式を用いるCv推定部34の構成の一例を示すブロック図である。Cv推定部は、拡散推定部50と、開放電圧推定部52と、電流推定部54と、電池パラメータ値設定部56と、境界条件設定部58と、平均濃度算出部60と、推定部62と、を含む。
拡散推定部50は、活物質拡散モデル式(2)と、境界条件設定部58によって式(3)および式(4)に従って設定された境界条件と、に基づいて、活物質内部でのリチウム濃度分布を、たとえば差分形式により逐次演算する。拡散推定部50によって推定されたリチウム濃度分布に基づき、最外周の領域におけるリチウム濃度を物質界面でのリチウム濃度csejとして、局所充電率θが設定される。
開放電圧推定部52は、正極および負極それぞれの開放電圧、あるいは正極および負極を合成した開放電圧を求める。図5中では、これらを包括的に開放電圧U(θ)と表記する。
電池パラメータ値設定部56は、温度センサ24で検出された電池温度Tb、および、拡散推定部50による推定に基づく現在の局所充電率θに応じて、使用する電池モデル式中の電池パラメータを設定する。
電流推定部54は、上述の式(1)のU(θ)、電池電圧V(t)それぞれに、開放電圧推定部52によって推定された開放電圧、電圧センサ22で検出された検出電圧値Vbを代入して、電池電流密度I(t)を算出する。
次に、境界条件設定部58は、演算された電流密度I(t)を反応電流密度(リチウム生成量)jj Liに換算したうえで、得られた反応電流密度(リチウム生成量)jj Liを、式式(4)に代入して、物質拡散モデル式(2)の境界条件を更新する。
したがって、この場合、Cv推定部34は、電圧センサ22で検出された検出電圧値Vbおよび温度センサ24で検出された電池温度Tbを入力として、活物質中の反応物質(リチウム)の拡散モデル式(2)と、電気化学反応モデル式に従う簡易化された電圧−電流関係モデル式(1)とに基づいて、活物質中での反応物質(リチウム)の濃度分布を推定し、この濃度分布に基づいて二次電池の内部状態を高精度に推定することができる。
平均濃度算出部60は、下記式(5)により、拡散推定部50によって推定された、正極活物質モデル内のリチウム平均濃度csave(t)を求める。さらに、推定部62は、下記式(6)に従って、電池12全体の充電率の推定値SOC#を電圧由来充電率Cvとして生成する。なお、式(6)において、COは、完全に放電した場合(C=0%)におけるリチウム平均濃度であり、Cfは、満充電時(C=100%)におけるリチウム平均濃度である。これらCO,Cfの値は、予め、メモリ28に記憶されている。
以上のような電池モデル式を用いた方法によれば、開放電圧値Voが取得できない状況でも、電圧由来充電率Cvが正確に推定できる。また、この電池モデル式は、充電率Cが有る程度、変動する期間中に、演算サイクルを繰り返すことで、SOC推定誤差を自動的に解消する自己修復機能が有効に発揮される。換言すれば、SOC推定誤差を含んだ電圧由来充電率Cvから演算を開始しても電池モデル式を用いて電圧由来充電率Cvの推定を一定時間以上、継続すれば、初期に含まれるSOC推定誤差は、徐々に解消されていく。
ところで、既述した通り、また、図3に示す通り、本例の電池12は、SOC−OCV曲線が、部分的に有意なヒステリシスを持つ。すなわち、図3において、実線は、電池12を完全放電した後、充電していく過程で得られるSOC−OCV曲線である。いわば、充電継続後のSOC−OCV曲線である。以下では、この曲線を、「充電OCV」または「OCV_ch」と呼ぶ。また、一点鎖線は、電池12を満充電にした後、放電していく過程で得られるSOC−OCV曲線である。いわば、放電継続後のOCV−OCV曲線である。以下では、この曲線を、「放電OCV」または「OCV_dis」と呼ぶ。
図3から明らかな通り、充電率Cbが、比較的高い高SOC領域では、OCV_disとOCV_disとの差は、殆ど無く、当該領域では、有意なヒステリシスは、存在しない。一方、充電率Cbが比較的低い低SOC領域では、OCV_disとOCV_chとが一定以上異なっており、有意なヒステリシスが生じている。以下では、この有意なヒステリシスが生じていない領域を「ノンヒス領域」と呼ぶ。また、有意なヒステリシスが生じている領域を「ヒス領域」と呼ぶ。さらに、ノンヒス領域とヒス領域との境界となる充電率を境界充電率C_bと呼ぶ。
ノンヒス領域では、開放電圧値Voの値が同じであれば、放電継続後、充電継続後のいずれであっても、充電率Cの値は同等と考えられる。換言すれば、電池12の充電率Cが、ノンヒス領域内にあれば、電圧値から充電率Cを精度よく推定することができる。一方、ヒス領域では、開放電圧値Voの値が同じであっても、放電継続後と充電継続後とで、対応する充電率Cが異なる。例えば、開放電圧値Vo=V2であった場合、放電継続後であれば、充電率C=Coとなり、充電継続後であれば、充電率C=Ciとなる。換言すれば、電池12の充電率Cが、ヒス領域内にあれば、電圧値から充電率Cを精度よく推定することが困難となる。つまり、電圧由来充電率Cvは、ノンヒス領域では信頼度が高いが、ヒス領域では、信頼度が低下すると言える。
Ce算出部36は、電池12の充放電制御の際に参照される制御充電率Ceを算出する。この制御充電率Ceは、Ci推定部で推定された電流由来充電率Ciと、Cv推定部34で推定された電圧由来充電率Cvと、を重み付け加算することで得られる。すなわち、Ce=Ki×Ci+Kv×Cvとなる。なお、Ki,Kvは、加算比率であり、Ki+Kv=1である。この加算比率Ki,Kvは、電池12の充電率Cに応じて変化する。
図6は、加算比率マップの一例を示す図であり、横軸は、充電率Cを示している。図6に示す通り、充電率Cが、境界充電率C_b以下となるヒス領域では、電流由来充電率Ciの加算比率Ki=1とし、電圧由来充電率Cvの加算比率Kv=0としている。また、充電率Cが、境界充電率C_bを越えれば、加算比率Kiを徐々に低下、かつ、加算比率Kvを徐々に増加させ、Ki=0、Kv=1としている。
このように重み係数Kを可変するのは、充電率Cに応じて、電圧由来充電率Cvの信頼度が変化するためである。すなわち、既述した通り、ヒス領域においては、開放電圧値Voに対する充電率Cの値が一意に定まらないため、電圧由来充電率Cvの精度が低下する。そのため、ヒス領域においては、電圧由来充電率Cvの加算比率Kvを低下させている。一方、電圧由来充電率Cvの信頼性が増加するノンヒス領域においては、電圧由来充電率Cvの加算比率Kvを増加させている。
なお、図6の例では、ヒス領域においてKi=1,Kv=0としているが、電流由来充電率Ciの加算比率Kiが、電圧由来充電率Cvの加算比率Kvよりも高いのであれば(Ki>Kvであれば)、その他の値でもよい。例えば、ヒス領域において、Ki=0.8、Kv=0.2等でもよい。また、図6の例では、高SOC領域において、Ki=0,Kv=1としているが、他の値でもよい。したがって、例えば、高SOC領域において、Ki=0.5、Kv=0.5等でもよい。
メモリ28には、図6に示すような加算比率マップが記憶されている。Ce算出部36は、現在の充電率C(正確には、1サンプリング前の制御充電率Ce)を、メモリ28に記憶されている加算比率マップに照らし合わせて、加算比率Ki,Kvを特定する。そして、Ce算出部36は、この加算比率Ki,Kvを用いて、電流由来充電率Ciと電圧由来充電率Cvとを重み付け加算した値を、制御充電率Ceとして出力する。
Ci補正部38は、Ci推定部32で推定される電流由来充電率Ciを、Cv推定部34で推定される電圧由来充電率Cvで補正する。すなわち、電流由来充電率Ciは、上述したヒステリシスの影響は、受けない一方で、電流センサ誤差由来で電流積算値ΔAhに含まれる積算誤差の影響を受ける。したがって、電流由来充電率Ciの信頼性は、時間の経過(電流積算値ΔAhの増加)に伴い、徐々に低下する。一方、電圧由来充電率Cvは、ヒス領域における信頼性は低いものの、ノンヒス領域における信頼性は高い。そこで、Ci補正部38は、電流由来充電率Ciに含まれる積算誤差が大きく、電流由来充電率Ciの補正が必要と判断した場合には、ノンヒス領域において推定された電圧由来充電率Cvに基づいて、電流由来充電率Ciを補正する。この電流由来充電率Ciの補正の具体的方法については、後に詳説する。Ci補正部38は、ノンヒス領域において推定された電圧由来充電率Cvを得るために、補正が必要と判断したときには、走行モード切替部40に、ノンヒス領域への移行を指示する。
走行モード切替部40は、適宜、電動車両100の走行モードを切り替える。電動車両100の走行モードとしては、EV走行モード、HV走行モード、エンジン走行モード等がある。
EV走行モードは、エンジン104を停止させた状態で、第二回転電機MG2の動力のみで車両を走行させるモードである。このEV走行モードでは、通常、電池12の放電量が、充電量を上回るため、電池12の充電率Cは、低下していく。
HV走行モードは、エンジン104と第二回転電機MG2の動力で車両を走行させるとともに、エンジン104の余剰動力で、第一回転電機MG1を発電させる。このHV走行モードでは、通常、電池12の放電と充電とが行われるため、電池12の充電率Cの変動は、比較的小さく抑えられる。
エンジン走行モードは、第二回転電機MG2の駆動を停止し、エンジン104の動力のみで車両を走行させる。このエンジン走行モードは、さらに、充電過多モードと、充放電抑制モードとがある。充電過多モードは、車両の要求動力以上の動力をエンジン104から出力し、このエンジン104の余剰動力で、第一回転電機MG1を発電させる。この充電過多モードでは、電池12の充電量が、放電量を上回るため、電池12の充電率Cは、徐々に増加していく。充放電抑制モードは、車両の要求動力に応じた動力をエンジン104から出力し、第一、第二回転電機MG1,MG2の動作を極力、抑制するモードである。この充放電抑制モードでは、電池12に入出力する電流が小さくなるため、開放電圧Voの取得が容易となる。
走行モード切替部40は、車両100の運転状態(例えばアクセルペダルの踏み込み量等)や電池12の充電率C等に基づいて、走行モードを選択する。また、走行モード切替部40は、Ci補正部38からの指示に応じても、走行モードを切り替える。
次に、電流由来充電率Ciの補正について説明する。既述した通り、電流由来充電率Ciは、電流積算値ΔAhを参照して推定される充電率である。この電流由来充電率Ciは、ヒステリシスの影響は、殆ど受けない一方で、検出電流値Ibを積算した電流積算値ΔAhを参照して推定されるため、電流センサ由来で電流積算値ΔAhに含まれる積算誤差ΣEの影響を受ける。
検出電流値Ibに含まれる誤差としては、ノイズ等に起因する偶然誤差E1の他、検出値が真値に対して一定値ずれるオフセット誤差E2、検出値が真値に対して比例した値だけずれるゲイン誤差E3等がある。これらの誤差のうち、偶然誤差の積算値ΣE1は、長時間積算していく過程で、徐々にゼロに近づく。一方、オフセット誤差の積算値ΣE2は、積算を続けても、ゼロには近付かず、その絶対値が徐々に増加する。また、ゲイン誤差の積算値ΣE3は、充放電に偏りがあると、その絶対値が徐々に増加する。したがって、電流積算値ΔAh、ひいては、当該電流積算値ΔAhを参照して推定される電流由来充電率Ciは、積算時間や電流積算値ΔAhが大きくなるほど、含まれる誤差も大きくなり、精度が低下する。
そこで、Ci補正部38は、電流由来充電率Ciを電圧由来充電率Cvに基づいて補正する補正処理を必要に応じて実行している。ただし、補正において参照される電圧由来充電率Cvは、電池12の状態を正確に表していることが重要となる。既述した通り、電圧由来充電率Cvは、ヒス領域においては、その信頼性が低下する一方で、ノンヒス領域においては、その信頼性は高く、電池12の状態を正確に表すとみなせる。そこで、Ci補正部38は、電流由来充電率Ciを補正する際には、電池12の充電率Cがノンヒス領域内にあるときに取得された電圧由来充電率Cvを参照する。
この場合、電流由来充電率Ciを補正するためには、電池12の充電率Cが、ノンヒス領域内になければならない。しかしながら、低SOC領域中心でハイブリッド走行を継続すると、充電率Cが、ノンヒス領域内にあるタイミングが少なく、電流由来充電率Ciの補正の機会が得にくいという問題がある。これについて図7を参照して説明する。図7は、ハイブリッド自動車、特にプラグインハイブリッド自動車における典型的な充電率Cの変化の一例を示す図である。図7に示す例では、電池12に対する外部充電が完了した状態、すなわち、充電率Cが満充電に近い(例えば90%)状態から走行を開始している。
制御装置14は、外部充電の直後など、充電率Cが高いときには、EV走行を積極的に実施し、充電率Cを、中間値C_c(例えば30%)前後まで低下させる。電池12の充電率Cが、中間値C_c前後まで低下すれば、その後は、電池12の充電率Cが、中間値C_c前後に保たれるようにHV走行を積極的に実施する。
図7の図示例では、外部充電の完了後、時刻t1において、車両のパワーがオンされている。このとき、電池12の充電率Cは、中間値C_cよりも十分に高いため、制御装置14は、EV走行を積極的に実施させるため、充電率Cは、中間値C_c前後まで低下する。そして、時刻t2において、充電率Cが中間値C_c前後まで低下すれば、以降は、充電率Cの増減が小さくなるように、HV走行を積極的に実施する。
ここで、この中間値C_cは、通常、境界充電率C_bよりも小さく、ヒス領域内にある。そのため、ハイブリッド走行中は、充電率Cが、ノンヒス領域内にあるタイミング、換言すれば、電圧由来充電率Cvで電流由来充電率Ciを補正できるタイミングが生じにくい。
そこで、Ci補正部38は、電流由来充電率Ciの補正が必要と判断すれば、走行モード切替部40に走行モードの変更を指示し、充電率Cをノンヒス領域へと積極的に移行させる。
具体的に、電流由来充電率Ciの補正の流れについて、図8を参照して説明する。図8は、電流由来充電率Ciの補正の流れを示すフローチャートである。Ci補正部38は、所定の制御周期ごとに、電流由来充電率Ciの補正の要否を判断する(S10)。この補正の要否は、種々の要素に基づいて判断できる。例えば、前回の補正からの経過時間teが、予め規定された基準時間tdef(例えば、数時間)以上になれば、電流由来充電率Ciの補正が必要と判断してもよい。また、別の形態として、電流積算値ΔAhが、予め規定された、基準積算値ΔAhdef以上になれば、補正が必要と判断してもよい。これは、電流由来充電率Ciに含まれる積算誤差は、電流積算値ΔAhが大きい程、大きくなるためである。また、上述の基準時間tdefや、基準積算値ΔAhdefを、適宜、変更させてもよい。例えば、電流センサ20は、温度に応じて誤差特性が変化することがあるため、電池温度Tbに応じて、上述の基準時間tdef、基準積算値ΔAhdefを変更してもよい。さらに、経過時間teと電流積算値ΔAhを組み合わせたパラメータに基づいて、補正の要否を判断してもよい。例えば、経過時間teが大きくなるにつれ大きくなる比例係数と電流積算値ΔAhとを乗算した値に基づいて補正の要否を判断してもよい。
Ci補正部38は、電流由来充電率Ciの補正が必要と判断すれば、電池12の制御充電率Ceをノンヒス領域内へと移行させる(S12)。具体的には、Ci補正部38は、走行モード切替部40に、充電過多モードへの切り替えを指示する。この指示を受けて、車両の走行モードが、充電過多モードに切り替わると、制御充電率Ceが徐々に増加する。
制御充電率Ceが、ノンヒス領域内に到達すれば、Ci補正部38は、電圧由来充電率Cvに基づいて、電流由来充電率Ciの補正を行う(S14)。電流由来充電率Ciは、ノンヒス領域内で推定された電圧由来充電率Cvに基づいて補正されるのであれば、その補正方法は、特に限定されない。例えば、電圧由来充電率Cvに基づいて、積算開始時刻の開始時充電率C_0を補正してもよい。すなわち、電流由来充電率Ciは、既述した通り、積算開始時刻の充電率C_0に、積算開始時刻から積算された電流積算値ΔAhから求まる充電率の変動量ΔCを加算した値として算出される。そこで、必要に応じて、電圧由来充電率Cvを、新たな開始時充電率C_0として設定するとともに、当該タイミングから検出電流値Ibの積算を開始するようにしてもよい。また、電圧由来充電率Cvに基づいて、電流由来充電率Ciを徐々に補正してもよい。
また、別の形態として、特開2005−261130号公報等に開示されているように、電圧由来充電率Cvの変化と、電流積算値ΔAhの変化と、の比較に基づいて、オフセット誤差E2を特定してもよい。具体的に説明すると、電流積算値ΔAhの変化量は、充電容量の変動量ΔFiとみなすことができる。また、電圧由来充電率Cvは、充電容量の変化率とみなすことができるため、この電圧由来充電率Cvの変化量に、満充電容量FCCを乗算した値は、充電容量の変化量とみなすことができる。電圧由来充電率Cvが、電池12の状態を正しく表している場合、この電流積算値ΔAhから求まる充電容量の変動量ΔFiと、電圧由来充電率Cvから求まる充電容量の変動量ΔFvと、の差分値(ΔFi−ΔFv)は、電流積算値ΔAhに含まれる積算誤差ΣEとみなすことができる。そこで、ある期間Tの間において、電流積算値ΔAhから求まる充電容量の変動量ΔFiと、電圧由来充電率Cvから求まる充電容量の変動量ΔFvとの差分値(ΔFi−ΔFv)を求め、当該差分値を、期間Tで除算した値をオフセット誤差E2の候補値として取得する。このオフセット誤差E2の候補値の算出を、ノンヒス領域内において複数回行い、得られた複数の候補値の平均値を、オフセット誤差E2として出力する。ただし、電流積算値ΔAhが大きい場合、ゲイン誤差E3の影響が含まれやすくなるため、オフセット誤差E2の算出は、電流積算値ΔAhが所定量以下で実施するのが好ましい。
なお、以上の説明から明らかな通り、電流由来充電率Ciを補正する際には、電圧由来充電率Cvを参照するが、この電圧由来充電率Cvは、既述した通り、開放電圧値VoをSOC−OCV曲線に照らし合わせて推定してもよいし、電池モデル式を用いて推定してもよい。いずれにしても、ノンヒス領域では、充電率Cに対する開放電圧Voの変化特性に有意なヒステリシスは生じていない。そのため、ノンヒス領域で推定された電圧由来充電率Cvの信頼性は高いと言える。この信頼性の高い電圧由来充電率Cvに基づいて、電流由来充電率Ciを補正することで、電流由来充電率Ciの推定精度、ひいては、制御充電率Ceの推定精度をより向上できる。
電流由来充電率Ciの補正ができれば、Ci補正部38は、電池12の制御充電率Ceを中間値C_c近傍へと移行させる(S16)。具体的には、Ci補正部38は、走行モード切替部40にEV走行など、放電過多な走行モードへの切り替えを指示する。この指示を受けて、車両の走行モードが、切り替わると、制御充電率Ceが徐々に低下する。そして、制御充電率Ceが、中間値C_c付近に到達すれば、Ci補正部38は、走行モード切替部40にHV走行モードへの切り替えを指示する。この指示を受けて、車両の走行モードが、HV走行モードに切り替わると、制御充電率Ceは、大きく変化することなく、中間値C_c前後で保たれる。そして、全ての処理が終われば、電流由来充電率Ciは、ステップS10に戻り、同様の処理を繰り返す。
図9は、電流由来充電率Ciの補正の動作例を示す図である。図9において、横軸は、時刻を、縦軸は、制御充電率Ceを示している。図9において、制御装置14は、時刻t1において、電流由来充電率Ciの補正が必要と判断すれば、電池12の制御充電率Ceをノンヒス領域へと強制的に移行させる。具体的には、車両100の走行モードを、充電過多モードに変更する。これにより、電池12の制御充電率Ceが徐々に増加していく。そして、時刻t2において、制御充電率Ceが、ノンヒス領域内に達すれば、当該ノンヒス領域内で取得した電圧由来充電率Cvに基づいて、電流由来充電率Ciを補正する。
なお、電流由来充電率Ciの補正期間中における車両の走行モードは、制御充電率Ceがノンヒス領域内に収まるのであれば、特に限定されない。したがって、例えば、SOC−OCV曲線に基づいて電圧由来充電率Cvを推定する場合には、開放電圧値Voが計測しやすいように、定期的に、充放電抑制モードに切り替えてもよい。また、電池モデル式では、電池12の充電率Cが有る程度、変動したほうが、推定精度が向上する。また、電圧由来充電率Cvの変化と電流積算値ΔAhの変化との比較に基づいて、オフセット誤差E2を推定する場合は、電池12の充電率Cの変動量、ひいては、電流積算値ΔAhは、所定量以下であることが望ましい。したがって、この場合には、例えば、HV走行モード等を選択することが望ましい。
時刻t3において、電流由来充電率Ciの補正が完了すれば、制御装置14は、車両100の走行モードをEV走行モードなどの放電過多の走行モードに変更する。これにより、放電過多状態となるため、制御充電率Ceが急激に低下していく。そして、時刻t4において、制御充電率Ceが、中間値C_cに達すれば、制御装置14は、走行モードを、HV走行モードに変更する。これにより、制御充電率Ceは、中間値C_c前後に保たれる。
以上の説明から明らかな通り、本明細書で開示する電池システムでは、ノンヒス領域で推定された電圧由来充電率Cvに基づいて、電流由来充電率Ciを補正している。その結果、ヒステリシスの影響を受けることなく、電流由来充電率Ci、ひいては、制御充電率Ceの推定精度をより向上できる。また、電流由来充電率Ciの補正が必要と判断した場合には、電池12の充放電を制御して、充電率Cをノンヒス領域に強制的に移行させている。そのため、適切なタイミングで、電流由来充電率Ciの補正を行える。
なお、これまで説明した構成は一例であり、ノンヒス領域で推定された電圧由来充電率Cvに基づいて、電流由来充電率Ciを補正するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、本明細書では、負極活物質が、シリコン系材料とグラファイトとを含む電池12を例示したが、本明細書で開示の技術は、部分的に有意なヒステリシスを持つ二次電池であれば、他の種類の二次電池に適用されてもよい。例えば、本明細書で開示の技術は、負極活物質がシリコン系材料とチタン酸リチウムを含むリチウムイオン二次電池に適用されてもよい。シリコン系材料とチタン酸リチウムを含むリチウムイオン二次電池の場合、高SOC領域においてヒステリシスが生じる。したがって、かかるリチウムイオン二次電池を用いる場合は、低SOC領域を、ノンヒス領域と設定し、この低SOC領域(ノンヒス領域)で推定した電圧由来充電率Cvに基づいて、電流由来充電率Ciを補正すればよい。また、本明細書で開示の技術は、リチウムイオン二次電池に限らず、ニッケル水素二次電池等、他の種類の二次電池に適用されてもよい。
なお、SOC−OCVのヒステリシスは、体積変化(膨張・収縮)が大きい材料を活物質に含んだ電池で生じやすい。例えば、負極材料として、リチウムを合金化するシリコン系(Si,SiO等)や、スズ系(Sn,SnO)、そして、ゲルマニウム系や鉛系の化合物が挙げられる。ここで、一般に、リチウムイオン電池の負極材として用いられるグラファイトの体積変化は、10%程度である。SOC−OCVのヒステリシスを招くような「体積変化の大きい材料」とは、グラファイトよりも体積変化が大きい(体積変化が10%より大きい)材料と考えることができる。
あるいは、下記の式13で代表されるコンバージョン材料(例えば、CoO,FeO,NiO,Fe2O3等)が負極材料に用いられてもよい。なお、式13において、Mは、遷移金属を、Xは、O,F,N,S等を示している。
nLi++ne−+Mn+Xm←→M+nLiXm/n (13)
また、正極にFeF3のようなコンバージョン材料が用いられてもよい。本明細書では、負極材料由来でSOC−OCVのヒステリシスが発生する場合を例示しているが、正極材料由来でヒステリシスが発生する場合でも、本明細書で開示の技術は、適用可能である。
また、本明細書では、ハイブリッド自動車に搭載される電池システム10を例に挙げて説明したが、本明細書で開示の電池システムは、他の電動車両に搭載されてもよい。例えば、本明細書で開示の電池システムは、エンジンを搭載していない電気自動車や、エネルギー源として電池12の他に燃料電池を搭載した燃料電池自動車等に搭載されてもよい。