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JP2018145115A - 高分子複合体 - Google Patents

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JP2018145115A JP2017039312A JP2017039312A JP2018145115A JP 2018145115 A JP2018145115 A JP 2018145115A JP 2017039312 A JP2017039312 A JP 2017039312A JP 2017039312 A JP2017039312 A JP 2017039312A JP 2018145115 A JP2018145115 A JP 2018145115A
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泰孝 安楽
Yasutaka Anraku
泰孝 安楽
片岡 一則
Kazunori Kataoka
一則 片岡
中村 直人
Naoto Nakamura
直人 中村
直人 吉永
Naoto Yoshinaga
直人 吉永
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Abstract

【課題】薬物をキャリアに安定して封入でき、しかも、所望の標的組織(例えば脳実質)への薬物送達、および当該組織での薬物放出を可能とする手段を提供する。【解決手段】フェニルボロン酸基又はピリジルボロン酸基から選択される少なくとも一つのボロン酸基を側鎖に有する高分子セグメントと、親水性高分子セグメントと、を有するブロックコポリマーと、前記ボロン酸基との結合部位を含む低分子薬物と、を含む、高分子複合体である。【選択図】なし

Description

本発明は、高分子複合体及び薬物送達デバイスに関する。詳しくは、低分子薬物を標的部位に送達するための高分子複合体及び薬物送達デバイスに関する。
ドラッグデリバリーシステム(drug delivery system:DDS)は、薬物を必要な時に必要最小限の薬物を必要な部位に選択的に送達する技術であり、これにより、薬物の効果を最大限に高め、副作用を最小化することを目的とするものである。薬物を標的部位で選択的に放出するためには、標的部位に到達するまでは吸収・分解されることなく薬物が安定して保持され、標的部位で薬物を放出することのできる技術が必要である。
様々な薬物をキャリア中に組み込んだ薬物運搬体をDDSとして利用する試みが盛んに研究され、一部は既に臨床応用されている。薬物を運搬するためのキャリアとしては、リポソーム、微粒子、各種高分子などが利用されており、非共有結合(疎水性相互作用、静電相互作用など)又は共有結合又を介して、薬物をさまざまなキャリアに担持させる技術が提案されている。薬物放出制御技術についても様々な検討がされており、温度、電場、磁場、超音波のような物理刺激やpH変化のような環境刺激などの様々な刺激に自律応答して薬物放出を制御する技術が開発されている。
例えば、特許文献1および非特許文献1には、ポリエチレングリコール(PEG)などの親水性ポリマーセグメントとポリアミノ酸などのカチオン性ポリマーセグメントとのブロック共重合体が自己組織化して形成された高分子ミセルに、フェニルボロン酸基を利用して核酸を担持させた環境応答性複合体が提案されている。該複合体では、細胞質に移行した後には、細胞質内に存在するATPやリボ核酸等の他の分子との置き換わりにより内包された核酸の放出を可能としている。
DDSにより標的化する部位としては、がん細胞、腫瘍組織、炎症組織などの様々な組織や細胞があるが、近年では、脳へ薬物を送達する技術の研究も進められている。血液と脳との間には、物質交換を制限する血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)とよばれる生体内バリアが存在する。BBBの高い透過選択性によって、血液中から脳実質への薬物輸送は著しく制限されており、そのため、脳への薬物送達は非常に困難とされていた。
一般に、(1)低分子量(500Da以下)で、(2)脂溶性の高い、化合物がBBBを通過できるとされていることから、脳へ送達を目的として、疎水性の高い低分子量の化合物の薬物の開発およびスクリーニングが行われている。しかし、現状では、疎水性の高い低分子量の化合物であっても、BBBを突破し、脳内へ送達できる薬物は依然として非常に限られている。
国際公開第2013/073697号
Mitsuru Naito, Takehiko Ishii, Akira Matsumoto, Kanjiro Miyata, Yuji Miyahara, Kazunori Kataoka; A Phenylboronate Functionalized Chemie International Edition, Vol.51, 2012: 10751-10755, doi: 10.1002/anie.201203360.
薬物がキャリアに安定して担持され、標的部位での薬物放出を可能とする技術が依然として求められている。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のボロン酸基を側鎖に有するポリマーと、ボロン酸基との結合部位を含む低分子薬物とを組み合わせることで、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は例えば以下の通りである。
[1] フェニルボロン酸基又はピリジルボロン酸基から選択される少なくとも一つのボロン酸基を側鎖に有する高分子セグメントと、親水性高分子セグメントと、を有するブロックコポリマーと、
前記ボロン酸基との結合部位を含む低分子薬物と、
を含む、高分子複合体。
[2] 前記ボロン酸基との結合部位は、ポリオール構造、ジアミン構造、ヒドロキシアミン構造、ヒドロキサム酸構造、アルコキシカルボキシアミド構造、及び二リン酸構造から選択される少なくとも一種である、[1]に記載の複合体。
[2−1] 前記結合部位は、1,2−ジオール構造である、[2]に記載の複合体。
[2−2] 前記ボロン酸基との結合部位は、下記構造2〜44から選択される少なくとも1つである、[2]に記載の複合体。
[2−3]前記低分子薬物と前記ボロン酸基との比(薬物/BA比)は、0.05〜1である、[1]〜[2]、[2−1]、[2−2]のいずれかに記載の複合体。
[3] 前記低分子薬物は疎水性物質である、[1]又は[2]に記載の複合体。
[4] 前記ブロックコポリマーが、前記高分子セグメントが内側となり、前記親水性高分子セグメントが外側となるように放射状に配列してミセルを形成し、前記ミセルに前記低分子薬物が内包されている、[1]〜[3]のいずれかに記載の複合体。
[5] 前記高分子セグメントは、ポリアミノ酸から構成され、前記ボロン酸基が、ポリアミノ酸の側鎖に導入されている、[1]〜[4]のいずれかに記載の複合体。
[5−1] 前記ポリアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン等の非極性アミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸;リシン、オルニチン、アルギニン、ホモアルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;及びこれらの誘導体;並びにこれらの組合せから選択されるアミノ酸の重合体である、[1]〜[5]のいずれかに記載の複合体。
[5−2] 前記ボロン酸基は、アミド結合、カルバモイル結合、アルキル結合、エーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、スルホンアミド結合、ウレタン結合、スルホニル結合、チミン結合、ウレア結合、チオウレア結合およびこれらの組み合わせから選択される連結基を介してポリアミノ酸の側鎖に導入されている、[1]〜[5]、[5−1]のいずれかに記載の複合体。
[6] 前記親水性高分子セグメントは、ポリ(エチレングリコール)、ポリサッカライド、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリアミノ酸、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、またはこれらの誘導体から選択される親水性ポリマーで構成される、[1]〜[5]のいずれかに記載の複合体。
[7] 前記ボロン酸基は下記式(b1)で表されるフェニルボロン酸基(PBA)又は下記式(b2)で表されるピリジルボロン酸基である、[1]〜[6]のいずれかに記載の複合体。
(上記式中、
は、フッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素から選択されるハロゲン、又はニトロを表し、
nは0〜4の整数であり、
*はポリマー鎖との結合点を示す)
[7−1] 前記ボロン酸基は下記式(b11)で表されるフェニルボロン酸基(PBA)又は下記式(b21)で表されるピリジルボロン酸基である、[7]に記載の複合体。
(上記式中、
nは1〜4の整数であり、
*はポリマー鎖との結合点を示す)
[7−2] 前記結合部位は、二リン酸構造(好ましくは、上記44の構造)であり、前記ボロン酸基は上記式(b11)で表されるピリジルボロン酸基である、[7]に記載の複合体。
[7−3] 前記結合部位は、1,2−ジオール構造であり、前記ボロン酸基は上記式(b21)で表されるピリジルボロン酸基である、[7]に記載の複合体。
[8] 前記ブロックコポリマーは下記式(3)で表される、[1]〜[7]のいずれかに記載の複合体。
(式中、
は、水素原子あるいは未置換もしくは置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキル基であり;
は、水素原子、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル基あるいは炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルカルボニル基であり、
4aは、相互に独立して、メチレン基またはエチレン基であり、
は、−S−S−または原子価結合であり、
は、−NH−、−O−、−O(CHp1−NH−、または−L2a−(CHq1−L2b−であり、ここで、p1およびq1は、相互に独立して、1〜5の整数であり、L2aはOCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOであり、L2bはNHまたはOであり、
9aは、−NH−(CHp2−〔NH−(CHq2−〕r2NH-で示される2価の基であり、p2、q2、およびr2は、それぞれ相互に独立して、1〜5の整数であり、
9bは、−NH−(CHp3−〔NH−(CHq3−〕r3NHであり、p3、q3、およびr3は、それぞれ相互に独立して、1〜5の整数であり
BAはボロン酸基を表し
xは0.1〜0.9であり、
mは1〜300の整数である。)
[9] 前記複合体の表面がグルコース又はグルコース誘導体により修飾されている、[1]〜[8]のいずれかに記載の複合体。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の複合体を含む、組成物。
[11] 活性酸素種の存在下で前記高分子複合体から前記低分子薬物が放出されるものである、[10]に記載の組成物。
[11−1] 1mM以上のHの存在下で前記高分子複合体から前記低分子薬物が放出されるものである、[11]に記載の組成物。
[12] 前記低分子薬物を脳に送達するために用いられる、[10]又は[11]に記載の組成物。
[13] [1]〜[9]のいずれかに記載の複合体又は[10]〜[12]のいずれかに記載の組成物を含む、薬物送達デバイス。
本発明は、以下の一以上の効果を有する。
(1)ボロン酸基との結合部位を含む低分子薬物がポリマー内に安定に担持され、活性酸素種による酸化によって薬物放出が可能である、高分子複合体が提供される。
(2)所望の標的組織(例えば脳実質)への薬物送達および当該組織での薬物放出が可能となる。
(3)標的組織の活性酸素種の濃度に依存した薬物放出制御が可能となる。
(4)薬物が内包された高分子ミセルを形成できる。
本発明の一形態に係る高分子複合体の模式図である。(a)は各構成成分を示し、(b)は形成された高分子複合体(薬物内包高分子ミセル)を示している。 フッ素化フェニルボロン酸基(FPBA)とルチンの1,2−ジオール構造との結合の形成を示す模式図である。 活性酸素種(ROS)による酸化ストレスに応答して自己開裂する薬物内包高分子ミセルの脳内送達システムの概要図である。 実施例1で製造されたブロック共重合体(2k−45−22.7%)を用いて実施例2で調製した高分子ミセル(Rutin/FPBA=0.25)の動的光散乱(DLS)法による粒径分布の測定結果を示す図である。 実施例1で製造されたブロック共重合体(2k−45−22.7%)を用いて実施例2で調製した高分子ミセル(Rutin/FPBA=0.25)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図である。 実施例1で製造されたブロック共重合体(2k−70−23.3%)を用いて実施例2で調製した高分子ミセル(Rutin/FPBA=0.1)の動的光散乱(DLS)法による流体力学直径(Size)の経時変化(異なるpH下)を示す図である。 実施例2で調製した高分子ミセル(2k−31−20.4%(Rutin/FPBA=0.5)、2k−45−22.7%(Rutin/FPBA=0.25),2k−70−23.3%(Rutin/FPBA=0.1))の動的光散乱(DLS)法による流体力学直径(Size)の経時変化(PBS(pH7.4)中)を示す図である。 図7A及び図7Bはそれぞれ、異なる濃度のH(1mM及び0.1mM)存在下での高分子ミセル(2k−45−22.7%(Rutin/FPBA=0.25))の動的光散乱(DLS)法による流体力学直径(Size)及び多分散度(PdI)の経時変化を示す図である。 非存在下(図8A)又は1mM H存在下(図8B)におけるルチンの吸光スペクトルの経時変化を示す図である。 1mM H存在下(図9A)、0.1mM H存在下(図9B)又はH非存在下(図9C)における高分子ミセル(2k−45−22.7%(Rutin/FPBA=0.25))の吸光スペクトルの経時変化を示す図である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。本明細書に記載した全ての文献および刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込む。
1.高分子複合体
本発明の一形態は、高分子複合体を提供する。実施形態に係る高分子複合体は、フェニルボロン酸基又はピリジルボロン酸基から選択される少なくとも一つのボロン酸基を側鎖に有する高分子セグメントと、親水性高分子セグメントと、を有するブロックコポリマーと、該ボロン酸基との結合部位を含む低分子薬物と、を含む。
本発明者らは、特定のボロン酸基と薬物内のボロン酸基との結合部位(例えばcis-ジオール構造)との結合が活性酸素種(ROS)による酸化により開裂し、薬物を放出し得ることに着目し、低分子薬物の送達に利用できる高分子複合体を得ることに成功した。
従来より、側鎖にフェニルボロン酸基を導入したポリマー鎖を利用した薬物送達用のキャリアが提案されている(例えば、特許文献1:国際公開第2013/073697号)。これらは薬物として核酸を対象とするものであり、薬物放出機構も、細胞内環境に高濃度で存在するアデノシン三リン酸(ATP)との交換又はpH変化(低pH化)を利用したフェニルボロン酸エステル構造の開裂に依存するものである。本発明においては、pH変化(低pH化)を利用したフェニルボロン酸エステル構造の開裂及びさらにこれによる薬物の放出も生じうるが、pH変化がない場合であってもROSに応答した高分子側鎖からのボロン酸基の脱離を薬物放出の際に利用することができる。また、特許文献1では、核酸がアニオン性高分子であるために、フェニルボロン酸基をもつポリマー鎖がカチオン性鎖に限られていた。しかし、本発明の低分子薬物(特に、疎水性の低分子化合物)を含む高分子複合体ではカチオン性鎖に限られず、多様なポリマー鎖が適用され得る。なお、本発明は、当該推定メカニズムに限定されるわけではない。本発明は、低分子薬物とボロン酸基との結合の生体環境内安定性が比較的高いこと(低分子薬物が結合したボロン酸高分子セグメント間の疎水性相互作用)およびROS酸化による新規な薬物放出機構の発見に基づくものである。
本発明者らは、ROS酸化による結合開裂が、ROS濃度に依存して生じることをも見出した。例えば、ボロン酸基の導入率を制御することにより、ROSへの応答性を制御することができる。したがって、生体環境のROS濃度の相違に基づき、標的部位での薬物放出および薬物放出の制御が可能となる。例えば、フッ素化フェニルボロン酸基とルチンの1,2−ジオールとの結合は、血中のH濃度に相当する約0.04mM以下においては開裂せず安定に保持される一方で、アルツハイマー病患者の脳におけるような高酸化ストレス下(高濃度のH 約1mM以上)において開裂し得る。このような従来にない新規なROS酸化による新規な薬物放出機構に基づく薬物送達システムは送達薬物及び標的組織の多様化並びに薬物放出制御性の面で有益である。
活性酸素種(ROS)とは、酸素分子(O)に由来する反応性の高い酸素種の総称である。具体的には、スーパーオキシドアニオンラジカル(通称スーパーオキシド;O -)、ヒドロキシルラジカル(・OH)、過酸化水素(H)、一重項酸素()、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(ONO)、オゾン(O)、過酸化脂質(LOOH)が挙げられる。一実施形態において、活性酸素種(ROS)は過酸化水素(H)である。
本明細書において、「高分子複合体」とは、高分子体中に薬物が担持されて存在する構造体をいう。高分子複合体は、薬物送達のためのキャリア(薬物運搬体)として利用することができる。本明細書では、「薬物送達のための」とは、生体適合性であること、および、薬物をキャリアに担持できることを意味する。
高分子複合体は、例えば、薬物を内包した微粒子であり、例えば、小胞、デンドリマー、ハイドロゲルおよびナノスフェアなどが挙げられる。
「小胞」とは、ミセル、リポソームや中空微粒子を意図している。小胞は、好ましくは生体適合性の外殻(シェル部分)を有し、必要によりその外表面がリガンドにより修飾されていてもよい。
「ミセル」とは、1層の分子膜により形成される小胞を意味する。ミセルとしては、界面活性剤などの両親媒性分子により形成されるミセル、および、ポリイオンコンプレックスにより形成されるミセル(PICミセル)が挙げられる。
「ポリイオンコンプレックス」(以下、「PIC」ともいう)とは、PEGなどの親水性ブロックとアニオン性ブロックとの共重合体と、PEGなどの親水性ブロックとカチオン性ブロック(例えばポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸など)との共重合体とを水溶液中で荷電を中和するように混合することにより両ブロック共重合体のカチオン性ブロックとアニオン性ブロックとの間で形成されるイオン層である。PEGと上記の荷電性ポリマー鎖とを結合させる意義は、ポリイオンコンプレックスが凝集して沈殿することを抑制すること、および、それにより、ポリイオンコンプレックスが粒径数十nmの単分散なコア−シェル構造を有するナノ微粒子を形成することである。この際、PEGはナノ微粒子の外殻(シェル)を覆うため、生体適合性が高く、血中滞留時間を向上させる点で都合がよいことでも知られている。また、ポリイオンコンプレックス形成において、一方の荷電性ブロックコポリマーは、PEG部分を必要とせず、ホモポリマー、界面活性剤、核酸および/または酵素に置き換えてもよいことが明らかとなっている。そして、ポリイオンコンプレックス形成においては、アニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーの少なくとも1つがPEGとの共重合体を形成しており、その両方がPEGとの共重合体を形成していてもよい。また、PEG含有量を増加させるとPICミセルが形成されやすく、PEG含有量を低減させるとPICsomeが形成されやすいことがよく知られている。ポリイオンコンプレックスについては例えば、特開平8−188541及び国際公開WO2006/118260に開示されている。
「ポリイオンコンプレックス型ポリマーソーム」(以下、「PICsome」ともいう)とは、ポリイオンコンプレックスにより形成される中空の微粒子を意味する。
「リポソーム」とは、2層の分子膜により形成される小胞を意味する。分子膜は通常はリン脂質による二重膜である。
実施形態の高分子複合体の平均粒径は、例えば、その直径が400nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下または80nm以下であり、例えば、10nm以上m、20nm以上、30nm以上または40nm以上である。ミセル状構造体は、例えば30nm〜150nm、または、例えば30nm〜100nmの直径を有する。
高分子複合体の多分散度(PDI)は例えば、0.25以下、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下である。
本発明において、ミセル状構造体の平均粒径は流体力学直径(平均粒子径)を指す。平均粒径および多分散度(PDI)は、動的光散乱(DLS)法により測定され、分散安定性の指標として品質管理目的に適した値である。
本発明の一実施形態に係る高分子複合体は、薬物を内包したミセル状構造体である。以下、図1Aに示すミセル状構造体について説明するが、本発明の高分子複合体は、かかる形態に限定されるわけではない。
図1Aに一実施形態に係るミセル状構造体(薬物内包高分子ミセル7)の模式図を示す。図1Aにおいて、(b)は薬物内包高分子ミセル7を示し、(a)は薬物内包高分子ミセル7の各構成成分を示す。図1A(a)及び(b)に示すように、薬物内包高分子ミセル7は、ブロックコポリマー5と低分子薬物6を含んで構成される。ブロックコポリマー5は、高分子セグメント1及び親水性高分子セグメント3、並びに必要に応じて末端にリガンド4から構成される。高分子セグメント1が内側となり、親水性高分子セグメント3が外側となるように放射状に配列してミセルを形成し、該ミセルに低分子薬物6が内包されている。
ブロックコポリマー5の高分子セグメント1は側鎖にボロン酸基2を有し、低分子薬物6はボロン酸基との結合部位(図示せず)を有しており、該ミセル7内部において当該ボロン酸基2とボロン酸結合部位とは共有結合を形成している。例えば、図1Bに示すように、ボロン酸基2の一例であるフッ素化フェニルボロン酸基(FPBA)とボロン酸との結合部位として1,2−ジオール構造を有するルチン(Rutin)との間には共有結合(フェニルボロン酸エステル構造)が形成されている。すなわち、薬物内包高分子ミセル7は、低分子薬物6とブロックコポリマー5中の高分子セグメント1とが共有結合してコア部分を形成しており、ポリマー5中の他の部分(親水性高分子セグメント3など)は外側に広がってシェル部分(外殻部分)を形成した状態となっている。この薬物内包高分子ミセル7では、シェル部分に親水性高分子セグメント3を有するために生体適合性(血中での安定性)に優れる。
ボロン酸基2とボロン酸結合部位との間の結合構造は、活性酸素種(ROS)による酸化により開裂する。開裂により生じるボロン酸エステル構造は不安定であるために、加水分解され、低分子薬物が放出される。
なお、図1Aに示す実施形態では、薬物内包高分子ミセル7を構成するブロックコポリマー5は、末端にリガンド4を有するブロックコポリマー5a及び末端にリガンド4を有しないブロックコポリマー5bを含み、これにより、ミセルの表面の一部がリガンド4で修飾された薬物内包高分子ミセル7が形成されている。リガンド4は標的部位に薬物を送達するために機能し得る。なお、ブロックコポリマー5は、末端にリガンド4を有しないブロックコポリマー5bのみで構成されていてもよい。
以下、高分子複合体を構成する各構成成分について説明する。
(1)ブロックコポリマー
ブロックコポリマーは、ボロン酸基を側鎖に有する高分子セグメント(以下単に「ボロン酸セグメント」ともいう)と、親水性高分子セグメントと、を有する。
A 親水性高分子セグメント
親水性高分子セグメントは、任意の適切な親水性ポリマーによって構成され得る。該親水性ポリマーとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリサッカライド、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリアミノ酸、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、またはこれらの誘導体が挙げられる。ポリサッカライドの具体例としては、デンプン、デキストラン、フルクタン、ガラクタン等が挙げられる。これらの中でも、ポリ(エチレングリコール)(PEG)は、末端に種々の官能基を有する末端反応性ポリエチレングリコールが市販されており、また、種々の分子量のものが市販されており、容易に入手できることから、好ましく用いられ得る。
B ボロン酸セグメント
B−1 ボロン酸基
ボロン酸セグメントは側鎖にボロン酸基を含む。ボロン酸基は、低分子薬物に含まれるボロン酸結合部位と結合を形成し、その結果、安定な複合体(例えば、当該低分子薬物を内包したミセル状構造体)を形成し得る。
ボロン酸基としては、R−B(OH)で表されるものであれば制限されないが、生体内で利用可能なものとして、例えば、フェニルボロン酸又はピリジルボロン酸基が挙げられる。フェニルボロン酸又はピリジルボロン酸基のフェニル又はピリジルの少なくとも1つの水素は、置換基で置換されていてもよい。すなわち、本明細書における「フェニルボロン酸」又は「ピリジルボロン酸基」との語は、フェニル又はピリジルが置換されたものを包含する。置換される水素の数は、1、2、3、または4であり、水素が1つのみ置換されるときの置換基およびB(OH)の導入箇所は、オルト、メタ、パラのいずれでもよい。置換基を導入することで、ボロン酸基のpKaを制御することができる。ボロン酸基のpKaは、単量体として合成したボロン酸基含有ポリマー鎖から特定するものとする。
一実施形態においては、ボロン酸基は、血液に代表される生体環境(pH7.5未満)に適合させる観点から、生理的pH付近にpKaを有するように、ボロン酸基のフェニル又はピリジルの少なくとも1つの水素が任意の置換基によって置換されている。ボロン酸基のpKaは8未満であることが好ましく、7.5未満であることがより好ましい。一方、ボロン酸基のpKaの下限値は特に制限されないが、例えば2以上、または例えば3以上、であってよい。
置換されたボロン酸基を使用することで、以下の利点がある。
第一に、ボロン酸セグメントの疎水性が高まることにより、水性媒体中においてブロックコポリマー間に疎水性相互作用が好適に働く結果、ポリマー間の会合力が増強されるので、本発明のブロックコポリマーは、水性媒体中で非常に安定なミセル状構造体を形成し得る。当該水性媒体としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液等の水性緩衝液が挙げられる。特に、置換されたボロン酸基は、pKa以下のpH環境下で高度に疎水化するため、pKaを適度に制御することにより、ミセル状構造体の安定化が図られ得る。
第二に、ボロン酸セグメントの疎水性が高まることにより、低分子薬物が疎水性物質である場合に、低分子薬物のボロン酸結合部位(例えば1,2−ジオール)とブロックコポリマーとの間の疎水性相互作用を強化することができる。その結果、これらの分子との極めて安定な複合体が得られ得る。
第三に、フェニルボロン酸のpKaは通常8〜9程度であるが、置換によりpKaを適度に制御することができる。pKa以上のpH環境下でボロン酸基とボロン酸結合部位とが結合するため、例えば、生理的pH付近又は生理的pH未満にpKaを有するように(好ましくは8未満、より好ましくは7.5未満のpKaを示すように)置換を行うことにより、生体環境下で好適に上記結合能を発揮し得る。
一実施形態において、ボロン酸基は、下記式(b1)で表されるフェニルボロン酸基(PBA)又は下記式(b2)で表されるピリジルボロン酸基から選択される。
(上記式中、
は、フッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素から選択されるハロゲン、又はニトロを表し、
nは0〜4の整数であり、
*はポリマー鎖との結合点を示す)
中でも、pKaを低下させる観点から、ボロン酸基は、上記式(b1)においてRがフッ素であるフッ素化フェニルボロン酸基(すなわち、下記式(b11)の基;以下、「FPBA基」と称する場合がある)又は式(b2)においてnが0であるピリジルボロン酸基(すなわち、下記式(b21)の基)であることが好ましく、さらに好ましくは下記の式(b11)で示されるフッ素化フェニルボロン酸基(FPBA基)である。
(上記式中、
nは1〜4の整数であり、
*はポリマー鎖との結合点を示す)
好ましい実施形態において、ボロン酸基は、上記式(b11)の基であり、前記ボロン酸基がカルバモイル結合(−CONH−)を介してポリアミノ酸の側鎖に導入されている。かかる場合には、ボロン酸のpKaが7.2程度まで低下させることが可能となる。
実施形態のブロックコポリマーに導入されるボロン酸基の数は、ボロン酸セグメントを構成するポリマー鎖の種類(例えばアミノ酸残基の種類または数)によって適切に調整され得る。具体的には、ミセル状構造体が安定して形成され得る限りにおいて、ボロン酸基の数または導入率は、任意の適切な値に設定され得る。一例をあげると、ブロックコポリマーに対するボロン酸基(BA;フェニルボロン酸基又はピリジルボロン酸基)の導入率、すなわちブロックコポリマーの分子量に対するボロン酸基(BA)の分子量の割合(BA導入率)が10〜40%であることが好ましく、10〜30%がより好ましく、ミセルの安定性の面から、12〜35%が更に好ましく、20〜25%が特に好ましい。
なお、BA分子量は、ブロックコポリマー中に存在するボロン酸基(例えば式(b1)で表されるフェニルボロン酸基(PBA)又は下記式(b2)で表されるピリジルボロン酸基)の分子量の合計である。
また、ブロックコポリマーに含まれるボロン酸基の総数は、例えば1以上、好ましくは5〜50、より好ましくは10〜40である。
B−2 高分子セグメント
ボロン酸セグメントを構成する高分子セグメントを構成するポリマー鎖は、ボロン酸基を側鎖に導入することができ、低分子薬物を担持可能なものであれば特に制限されない。
一実施形態は、高分子セグメントは、ポリアミノ酸から構成され、ボロン酸基が、ポリアミノ酸の側鎖に導入されている。ポリアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン等の非極性アミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸;リシン、オルニチン、アルギニン、ホモアルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;及びこれらの誘導体;並びにこれらの組合せから選択されるアミノ酸の重合体が挙げられる。
ボロン酸基は、代表的には、連結基を介してポリアミノ酸の側鎖に導入されている。当該連結基としては、例えば、アミド結合、カルバモイル結合、アルキル結合、エーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、スルホンアミド結合、ウレタン結合、スルホニル結合、チミン結合、ウレア結合、チオウレア結合およびこれらの組み合わせが挙げられる。当該連結基はこれらの結合の間に任意の適切なスペーサーを含んでいてもよい。スペーサーとしては、例えば、炭素数1〜27、好ましくは炭素数2〜5の直鎖状または分岐状アルキレン基、短鎖のエチレングリコール鎖(-OCHCH-)等が挙げられる。
一実施形態において、ボロン酸基は、カルバモイル結合(−CONH−)を介してポリアミノ酸の側鎖に導入されている。かかる場合には、ボロン酸基のpKaを低下させ、生体環境下でボロン酸基と薬物内のボロン酸結合部位との結合能を発揮し得る。
一実施形態において、ボロン酸高分子セグメントは、荷電性高分子セグメント(例えばアニオン性ポリマー鎖セグメントまたはカチオン性ポリマー鎖セグメント)および/または疎水性高分子セグメントでありうる。かかる場合には、水性媒体中で、低分子薬物が共有結合を介して担持された荷電性高分子セグメントおよび/または疎水性高分子セグメントからなるコア部分が親水性高分子セグメントからなるシェル部分に覆われた構成のミセル状構造体を形成し得る。
なお、荷電性高分子セグメントを含むブロックコポリマーと相反する電荷を有するポリマーとを組み合わせることで、PIC等の複合体を好適に形成してもよい。
カチオン性高分子セグメントは、任意の適切なカチオン性ポリマーによって構成され得る。カチオン性ポリマーの代表例としては、側鎖にカチオン性基を有するポリアミノ酸が挙げられる。カチオン性基としては、アミノ基が好ましい。側鎖にアミノ基を有することにより、水性媒体中において、該アミノ基がボロン酸基のホウ素に配位し、高分子複合体(例えばミセル状構造体)の安定化に寄与し得る。
側鎖にカチオン性基を有するポリアミノ酸を構成するアミノ酸残基が由来するアミノ酸としては、例えば、リシン、オルニチン、アルギニン、ホモアルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸および酸性アミノ酸に任意の適切なアミン化合物が導入されたアミノ酸誘導体が挙げられる。なかでも、リシンおよび酸性アミノ酸のカルボキシル基(−C(=O)OH)の−OH部が下記式(i)〜(iv)のいずれかの基で置換されたアミノ酸誘導体が好ましく、リシンおよびアスパラギン酸のα位もしくはβ位またはグルタミン酸のα位もしくはγ位のカルボキシル基(−C(=O)OH)の−OH部が下記式(i)〜(iv)のいずれかの基で置換された アミノ酸誘導体がより好ましく、リシンおよびアスパラギン酸のα位もしくはβ位またはグルタミン酸のα位もしくはγ位のカルボキシル基 (−C(=O)OH)の−OH部が下記式(i)の基で置換されたアミノ酸誘導体がさらに好ましい。
−NH−(CHp1−〔NH−(CHq1−〕r1NH (i);
−NH−(CHp2−N〔−(CHq2−NH (ii);
−NH−(CHp3−N{〔−(CHq3−NH〕〔−(CHq4−NH−〕r2H} (iii);および
−NH−(CHp4−N{−(CHq5−N〔−(CHq6−NH (iv)
(式(i)〜(iv)において、p1〜p4、q1〜q6、およびr1〜r2は、それぞれ相互に独立して、1〜5の整数である。)
上記式(i)〜(iv)において、p1〜p4およびq1〜q6は、それぞれ相互に独立して、好ましくは2または3であり、より好ましくは2である。また、r1〜r2は、それぞれ相互に独立して、好ましくは1〜3の整数である。
上記カチオン性アミノ酸残基がリシン残基である場合には、ポリアミノ酸鎖の合成が容易であり、かつ、得られたブロックコポリマーが生体適合性に非常に優れるという利点がある。また、上記カチオン性アミノ酸残基が酸性アミノ酸のカルボキシル基(−C(=O)OH)の−OH部が上記式(i)〜(iv)のいずれかの基で置換されたアミノ酸残基である場合、これらの残基は、異なる複数のアミン官能基を有するので、pKaが複数段階を示し、生理条件であるpH7.4においては複数のアミン官能基は部分的にプロトン化状態にあり、細胞に対するダメージが低いことが明らかにされている。
一実施形態において、荷電性高分子セグメントは低分子薬物と相反する電荷を帯びていることが好ましい。例えば、低分子薬物が水性媒体中で正の電荷を有する場合、荷電性高分子セグメントはアニオン性ポリマー鎖セグメントであることが好ましい。一方、低分子薬物が水性媒体中で負の電荷を有する場合、荷電性高分子セグメントはカチオン性ポリマー鎖セグメントであることが好ましい。相反する電荷を有する低分子薬物と高分子セグメントとが静電相互作用により結合することにより、低分子薬物および荷電性高分子セグメントが内側となるようなミセル状構造体が形成される。水性媒体(好ましくは、中性近傍の水性媒体)中で極めて安定なミセル状構造体が形成され得るという効果が得られ得る。
ボロン酸基が導入されるアミノ酸残基としては、上記連結基を介してボロン酸基が導入され得る限りにおいて、任意の適切なアミノ酸残基が選択され得る。合成の容易さの観点から、ボロン酸基は、上記側鎖にアミノ基を有するカチオン性アミノ酸残基に導入されることが好ましい。ボロン酸基は側鎖に1つのみ導入してもよく、複数導入してもよい。
具体例としては、ボロン酸基は、上記の側鎖にアミノ基を有するカチオン性アミノ酸残基に、当該アミノ基とフェニル環の少なくとも1つの水素が置換されたカルボキシフェニルボロン酸またはそのエステル等との反応によって生じるアミド結合を介して導入され得る。
別の具体例としては、ボロン酸基は、2つのアミド結合とその間に含まれるプロピレン基とからなる連結基を介して上記の側鎖にアミノ基を有するカチオン性アミノ酸残基のアミノ基に導入され得る。
上記ポリアミノ酸鎖は、上記カチオン性アミノ酸残基およびボロン酸基含有アミノ酸残基に加えて、側鎖に疎水性基を有するアミノ酸残基(以下、「疎水性アミノ酸残基」と称する場合がある)をさらに含み得る。当該疎水性アミノ酸残基を含むことにより、水性媒体中において、ボロン酸セグメント間に働く疎水性相互作用が大きくなり、その結果、より安定なミセル状構造体が形成され得る。
上記疎水性アミノ酸残基が由来するアミノ酸としては、このようなアミノ酸としては、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン等の非極性天然アミノ酸や、側鎖に疎水性基が導入されたアミノ酸の疎水性誘導体が挙げられる。当該アミノ酸の疎水性誘導体としては、好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸の側鎖、アミン化合物が導入された酸性アミノ酸の側鎖、およびリシン、オルニチン、アルギニン、ホモアルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸の側鎖に疎水性基が導入された誘導体が挙げられる。
本明細書において、「疎水性」とは、好ましくは25℃の水100gに対する溶解度が5g以下、より好ましくは4g以下であるものである。
上記導入される疎水性基としては、炭素数6〜27の飽和もしくは不飽和の直鎖または分枝状の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜27の芳香族炭化水素基あるいはステリル基(ステロイドに由来する残基)が好ましく例示され得る。
上記炭素数6〜27の飽和の直鎖または分枝状の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ヘキシル基(例えば、n−ヘキシル基)、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、およびヘプタコシル基が挙げられる。上記炭素数6〜27の不飽和の直鎖または分枝状の脂肪族炭化水素基としては、例えば、上記に例示したアルキル基の鎖中の炭素−炭素結合の1個〜5個が、炭素−炭素二重結合となっている基が挙げられる。
上記炭素数6〜27の芳香族炭化水素基としては、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。これらの好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
上記ステリル基が由来するステロイドとしては、例えばステロールまたはそれらの誘導体である。例えば、天然のステロールとしては、限定されるものではないが、コレステロール、コレスタノール、ジヒドロコレステロール、コール酸、カンペステロール、シストステロール等が挙げられ、その半合成または合成の化合物としては、これら天然物の例えば、合成前駆体(必要により、存在する場合には、一定の官能基、ヒドロキシ基の一部もしくは全部が当該技術分野で既知のヒドロキシ保護基により保護されているか、またはカルボキシル基がカルボキシル保護基により保護されている化合物を包含する)であることができる。また、ステロール誘導体とは、本発明の目的に悪影響を及ぼさない範囲内で、シクロペンタノンヒドロフェナントレン環にC1−12アルキル基、ハロゲン原子、例えば、塩素、臭素、フッ素、が導入されていてもよく、該環系は飽和、部分不飽和、であることができること等を意味する。上記ステリル基が由来し 得るステロールとしては、好ましくはコレステロール、コレスタノール、ジヒドロコレステロール、コール酸、カンペステロール、シストステロール等の動植物油起源のステロールであり、さらに好ましくはコレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロールであり、特に好ましくはコレステロールである。
上記ポリアミノ酸鎖セグメントは、カチオン性アミノ酸残基、ボロン酸基含有アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基として、それぞれ一種のみのアミノ酸残基を含んでもよく、二種以上のアミノ酸残基を含んでもよい。また、ポリアミノ酸鎖セグメントにおけるカチオン性アミノ酸残基、ボロン酸基含有アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基の結合順は任意であり、ランダム構造であってもよく、ブロック構造であってもよい。
上記ポリアミノ酸鎖セグメントに含まれるカチオン性アミノ酸残基、ボロン酸基含有アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基の数は、各アミノ酸残基の種類等によって適切に調整され得る。
例えば、上記ポリアミノ酸鎖セグメントに含まれるアミノ酸残基の総数は好ましくは10以上、より好ましくは20以上の整数(例えば、30以上、40以上または50以上の整数)であり、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下、さらにより好ましくは100以下の整数である。ポリアミノ酸鎖セグメントが疎水性アミノ酸残基を含む場合、カチオン性アミノ酸残基の数は、疎水性アミノ酸残基の数に応じて上記の好適な範囲から適切に調整され得る。当該ポリアミノ酸鎖セグメントが疎水性アミノ酸残基を含む場合、ミセルがより安定化し得ることから、カチオン性アミノ酸残基、ボロン酸基含有アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基の総数は、好ましくは10〜150、より好ましくは20〜100の整数であり得る。
アニオン性高分子セグメントは、任意の適切なアニオン性ポリマーによって構成され得る。アニオン性ポリマーの代表例としては、側鎖にアニオン性基を有するポリアミノ酸が挙げられる。アニオン性基としては、カルボキシル基などが挙げられる。例えば、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)及びポリ(リンゴ酸)からなる群より選ばれるアニオン性ポリマーに由来するものが挙げられる。あるいは、アミノ酸の側鎖に、カルボキシ基などのアニオン性基が導入されたアミノ酸誘導体から構成されたポリアミノ酸であってもよい。
アニオン性高分子セグメントの側鎖へのボロン酸基の導入も、上記のカチオン性高分子セグメントと同様にして連結基を介して導入されることが好ましい。側鎖へのボロン酸基の導入数は1つであってもよいし、複数であってもよい。また、ポリアミノ酸鎖は、上記アニオン性アミノ酸残基およびボロン酸基含有アミノ酸残基に加えて、側鎖に疎水性基を有するアミノ酸残基(疎水性アミノ酸残基)をさらに含み得る。
疎水性高分子セグメントは、任意の適切な疎水性ポリマーによって構成され得る。疎水性ポリマーの代表例としてはポリスチレンなどが挙げられる。疎水性高分子セグメントの側鎖へのボロン酸基の導入も、上記のカチオン性高分子セグメントと同様にして連結基を介して導入されることが好ましい。ボロン酸セグメントが疎水性高分子セグメントから構成される場合には、水性媒体中で、ボロン酸高分子セグメント間に疎水性相互作用が好適に働く結果、ポリマー間の会合力が増強され、安定なミセル状構造体を形成し得る。
C ブロックコポリマーの具体例
ブロックコポリマーの具体例(カチオン性ブロックコポリマー)を式(1)または(2)に示す。当該式(1)または(2)のブロックコポリマーにおいては、ボロン酸基は、カチオン性アミノ酸残基の側鎖に導入される。代表的には、ボロン酸基は、式(1)または(2)のブロックコポリマーのQ部分、あるいは、R6aおよび/またはR6b部分と反応することにより導入され得る。
(式(1)または(2)中、
の基は、水素原子あるいは未置換もしくは置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキル基であり、
の基は、水素原子、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル基あるいは炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルカルボニル基であり、
の基は、ヒドロキシル基、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルオキシ基、炭素数2〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルケニルオキシ基、炭素数2〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキニルオキシ基あるいは炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル置換イミノ基であり、
4a、R4b、R5aおよびR5bの基は、相互に独立して、メチレン基またはエチレン基であり、
6aおよびR6bの基は、相互に独立して、上記(i)〜(iv)の基から選択される基であり、
6cおよびR6dの基は、相互に独立して、上記(i)〜(iv)の基から選択される基のアミノ基に炭素数6〜27の飽和もしくは不飽和の直鎖または分枝状の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜27の芳香族炭化水素基あるいはステリル基が導入された基であり、
7aおよびR7bの基は、相互に独立して、−O−または−NH−であり、
8aおよびR8bの基は、相互に独立して、炭素数6〜27の飽和もしくは不飽和の直鎖または分枝状の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜27の芳香族炭化水素基あるいはステリル基であり、
1の基は、−NH、−NHC(=NH)NH、または以下の式(II)で表される基であり、
の基は、−NH、−NHC(=NH)NH、または上記式(II)で表される基のアミノ基に炭素数6〜27の飽和もしくは不飽和の直鎖または分枝状の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜27の芳香族炭化水素基あるいはステリル基が導入された基であり、
Pの基は、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンの側鎖であり、
およびLは、相互に独立して、−S−S−または原子価結合であり、
は、−NH−、−O−、−O(CHp1−NH−、または−L2a−(CHq1−L2b−であり、ここで、p1およびq1は、相互に独立して、1〜5の整数であり、L2aはOCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOであり、L2bはNHまたはOであり、
は、−OCO−(CHp2−CO−、−NHCO−(CHp3−CO−、または−L4a−(CHq2−CO−であり、ここで、p2、p3、およびq2は、相互に独立して、1〜5の整数であり、L4aは、OCONH、−CHNHCO−、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOであり、
kは、5〜20,000の整数であり、
sは、1〜6の整数であり、
mは、0〜300の整数であり、
nは、0〜mの整数であり、
aは、0〜300の整数であり、
bは、0〜aの整数であり、
vは、0〜300の整数であり、
cは、0〜300の整数であり、
xは、0〜300の整数であり
yは、0〜xの整数であり
zは、0〜300の整数であり、
ただし、mが0のときzは2以上の整数であり;
zが0のときmは1以上の整数であり;
z個のQの基に含有される1級アミノ基および2級アミノ基の総数と(m−n)個のR6aの基とn個のR6bの基とに含有される1級アミノ基および2級アミノ基の総数との合計をwとしたとき、1以上w未満の当該アミノ基の水素原子がボロン酸基(例えば、上記式(I)で示されるFPBA基)を有する有機基(例えば、アシル基)で置換されている。)
上記式(1)または(2)において、LおよびLの組み合わせ、ならびに、LおよびLの組み合わせは、一緒になって一つの連結基となり得るように組み合わされる必要がある。例えば、Lが−NH−である場合、Lは−S−S−でなく、原子価結合である。
上記式(1)または(2)において、エチレングリコール(またはオキシエチレン)の繰り返し数を表すkは、5〜20,000、好ましくは5〜2,000、より好ましくは5〜1,500の整数である。
上記R〜Rの基で定義する、炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキルオキシ基、アルキル置換イミノ基、およびアルキル基のアルキル部分としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、デシル基、およびウンデシル基等 を挙げることができる。炭素数2〜12の直鎖または分枝状のアルケニルオキシ基または炭素数2〜12の直鎖または分枝状のアルキニルオキシ基における、ア ルケニルまたはアルキニル部分は、炭素数が2以上の上記に例示したアルキル基中に二重結合または三重結合を含むものを挙げることができる。
このような基または部分について、「置換された」場合の置換基としては、限定されるものでないが、C1−6アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールC1−3オキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C2−7アシルアミド基、トリ−C1−6アルキルシロキシ基、シロキシ基、シリルアミノ基を示すか、またはアセタール化ホルミル基、ホルミル基、塩素またはフッ素等のハロゲン原子を挙げることができる。ここで、例えば、C1−6の表示は、炭素数1〜6を意味し、以下同様な意味を表すものとして使用する。さらに、炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルカルボニル基の内の炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル部分は上述した例示を参考にでき、炭素数13以上のアルキル部分は、例えば、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ノナデシル基、ドコサニル基およびテトラコシル基等を挙げることができる。
上記式(1)または(2)において定義する上記式(i)〜(iv)の基ならびに炭化水素基またはステリル基については、上述した通りである。Q、Q、R6a、R6b、R6c、R6d、R8aおよびR8bの基については、属する繰り返し単位全てについて同一の基が選択されてもよく、異なる基が選択されてもよい。また、sは、例えば、1、3、または4である。
、R6cまたはR6dの基に導入される疎水性基は、任意の適切な連結基を介して導入されていてもよい。該連結基の具体例としては、ボロン酸基の導入の際に適用可能な連結基として上述したものが挙げられる。
式(1)または(2)において、R4aおよびR4bの基の両者がエチレン基を表す場合には、代表的には、nおよびbが整数0であるか、またはm−nおよびa−bが整数0であるポリアミノ酸を表すことになる。前者は、例えば、グルタミン酸γ−ベンジルエステルのN−カルボン酸無水物の重合により得られるポリ−α−グルタミン酸を表し、後者は、例えば、納豆菌をはじめとする細菌バチルス(Bacillus)属の菌株が生産するポリ−γ−グルタミン酸を表す。一方、R4aおよびR4bの基の両者ともメチレン基を表す場合には、これらの基を有するそれぞれの反復単位は共存し得るものと理解されている。式(1)または(2)におけるR5aおよびR5bの基についても同様である。製造効率の観点からは、好ましくはR4aおよびR4bの基がメチレン基であり、R5aおよびR5bの基がエチレン基である。
別の実施形態において、Rの基は、標的結合部位を含む基で置換されてもよい。標的結合部位をポリマーの末端に導入することにより、標的となる所望の部位への薬物(例えば、核酸)の到達性を向上できる。標的結合部位を含む基としては、標的となる組織に対する指向性または機能性を有する限りにおいて任意の適切な基であり得、例えば、抗体もしくはその断片、またはその他の機能性もしくは標的指向性を有するタンパク質、ペプチド、アプタマー、ラクトース等の糖、葉酸といった生理活性物質およびその誘導体に由来する基であり得る。
一実施形態において、Rの基はリガンドでありうる。リガンドをポリマーの末端に導入することにより、表面の少なくとも一部がリガンドで修飾された高分子複合体(例えばミセル状構造体)が形成され得る。リガンドは、標的となる所望の部位への薬物の到達性を向上できる。
例えば、リガンドはグルコース又はGLUT1に結合するグルコースの誘導体GLUT1リガンドでありうる。この場合、外表面に露出したグルコース又はその誘導体が脳の血管内皮細胞の血管内表面に発現するグルコーストランスポーターであるGLUT1に結合し、これにより高分子複合体が血管内皮細胞に取り込まれ、血液脳関門(BBB)を通過して脳実質に移行することが可能となりうる。例えば、Rは下記構造でありうる。
他の一実施形態において、ブロックコポリマーは生分解性であることが好ましい。そのような共重合体としては様々な共重合体が知られ、いずれを用いることも原理的に可能である。例えば、生体適合性が高く、生分解性であるブロック共重合体としては、例えば、ポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸、ポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸、およびポリエチレングリコール−ポリ((5−アミノペンチル)−アスパラギン酸)ブロック共重合体などを用いることができ、これらのポリマーのポリアミノ酸鎖の側鎖に上記ボロン酸を導入したポリマーも好ましい。
好ましい一実施形態において、ブロックコポリマーは下記式(3)で表される。
式(3)中、R9aは、−NH−(CHp2−〔NH−(CHq2−〕r2NH-で示される2価の基であり、p2、q2、およびr2は、それぞれ相互に独立して、1〜5の整数である。好ましくは、p2、q2、およびr2は、それぞれ相互に独立して、1〜3の整数である。
式(3)中、R9bは、−NH−(CHp3−〔NH−(CHq3−〕r3NHであり、p3、q3、およびr3は、それぞれ相互に独立して、1〜5の整数である。好ましくは、p3、q3、およびr3は、それぞれ相互に独立して、1〜3の整数である。
式(3)中、BAはボロン酸基を表す。具体的には、上記式(b1)もしくは(b11)で表されるフェニルボロン酸基(PBA)又は上記式(b2)もしくは(b21)で表されるピリジルボロン酸基である。
式(3)中、xは0.1〜0.9である。
式(3)中、mは1〜300の整数である。
式(3)中、R、R、L、L、R4a、kは上記式(1)及び(2)の定義と同様である。
例えば、脳への薬剤送達に用いる場合には、kは好ましくは5〜100の整数である。
好ましくは、xは0.1〜0.9である。
また、mは1〜300の整数である。
xおよびmが大きいほど、R9bの末端に存在するカチオン性のアミノ基(NH)が増大するため、一般にミセルコア部分(ボロン酸セグメント)の電荷反発が増大し、ミセルの安定性が低下する傾向にある。また、xが大きいほど、ミセルコア部分(ボロン酸セグメント)の疎水性が増大し、ミセルの安定性が向上する傾向にある。
ブロックコポリマーは、任意の適切な合成方法によって調製され得る。例えば、カチオン性ブロックコポリマーの製造方法の一例は、例えば、国際公開WO2015/170757に開示されており、当業者であれば当該製造方法を参照して及びこれを改変して所望のブロックコポリマーを製造することができる。
(2)低分子薬物
本発明で用いられる低分子薬物としては、ボロン酸基と結合を形成しうる結合部位(以下「BA結合部位」ともいう)を含む低分子化合物であれば特に制限されない。分子量は、例えば、2,000以下、1,000以下、800以下、500以下であることが好適である。分子量の下限は特に制限されない。なお、本発明の低分子薬物は核酸や抗体のような生体高分子などの高分子化合物を含まない。
BA結合部位としては、ボロン酸基と結合を形成し得る任意の適切な化学構造が採用され得る。BA結合部位を構成し得る化学構造としては、例えば、ポリオール(特に、cis−ジオール)構造、ジアミン構造、ヒドロキシアミン構造、ヒドロキサム酸構造、アルコキシカルボキシアミド構造、二リン酸構造が挙げられる。BA結合部位とボロン酸基との反応は代表的には脱水反応であり、したがって、BA結合部位とボロン酸基との結合は代表的には共有結合である。BA結合部位となり得る化学構造を有する化合物としては、例えば下記2〜44の構造を一部に含む化合物およびこれらの誘導体が挙げられる。
ボロン酸基がフェニルボロン酸基である場合には、低分子薬物は上記2〜43のいずれかの化学構造を含むのが好ましい。
一実施形態において、低分子薬物は、1,2−ジオール構造を含む。すなわち、低分子薬物は上記2〜28のいずれかの化学構造を含むことが好ましい。これらはいずれもジオール構造を有しており、フェニルボロン酸基との間に安定な結合が形成されうる。より好ましくは、低分子薬物は、上記22のカテコール構造を含むのが好ましい。カテコールは平面内にジオール基が固定されているため、ボロン酸との結合定数が高い。このため、カテコール構造を有する低分子薬物は、生体環境下でボロン酸基と一層安定な共有結合を形成し得る。
また、ボロン酸基がピリジルボロン酸基である場合には、二リン酸構造(例えば上記44の化学構造)であるのが好ましい。ピリジルボロン酸基と二リン酸構造とは、pH6以下で共有結合を形成することが知られている(Sanjoh et al, Org. Lett.17, 2015, 588-591)。
一実施形態において、低分子薬物は、疎水性物質である。低分子薬物が疎水性物質である場合には、低分子薬物が結合したボロン酸高分子セグメント間に疎水性相互作用が働くことからより一層安定なミセル状構造体を形成し得る。
一実施形態において、低分子薬物とボロン酸基との比(薬物/BA比)は、0.05〜1である。好ましくは、0.1〜0.5である。低分子薬物とボロン酸基との比(薬物/BA比)を制御することにより、安定性および薬物保持性に優れたミセル状構造体を形成することができる。薬物/BA比は、高分子複合体に含まれるボロン酸基の合計数に対する薬物の合計数の比率(薬物のモル数/ボロン酸基のモル数)である。
低分子薬物としては、種々の薬物を挙げることができ、例えば、合成化合物、生理活性物質、生体適合性の蛍光色素、並びに超音波、MRIおよびCT用造影剤などの造影剤が挙げられる。
後述の通り、本発明の一実施形態の高分子複合体は、脳への薬物送達に好適であり、薬物を選択性高く脳に送達することができる。従って、薬物としては、特に限定されないが、例えば、脳の生理機能を高める生理活性物質、脳の疾患を処置し得る生理活性物質、脳を染色できる生体適合性の蛍光色素、並びに超音波、MRIおよびCT用造影剤などの造影剤を用いることができる。
一実施形態は、低分子薬物は、活性酸素種が直接的又は間接的に関与する疾患の治療剤である。上述のように、実施形態の高分子複合体は、活性酸素種による酸化により、すなわち、活性酸素種の存在下において、薬物が放出されるものであるため、活性酸素種が直接的又は間接的に関与する疾患においては優れた治療効果が期待される。例えば、抗酸化剤である場合には放出された薬物により活性酸素種を除去し得る。
以下に、ボロン酸結合部位を有する低分子薬物の一例をあげる。下記化合物はカテコール構造を含み、水溶性が低い疎水性物質である。
2.高分子複合体の製造方法
高分子複合体は、上記ブロックコポリマーを用いて周知の方法により形成させることができる。例えば、低分子薬物をアルコールなどの溶媒に溶解させた溶液およびブロックコポリマーをpH緩衝液に溶解させた溶液を別々に調製し、次いで、当該2つの溶液を混合し、PBSに対して透析を行うことにより低分子薬物とブロックコポリマーとの高分子複合体(例えば、低分子薬物が内包されたミセル状構造体)を製造することができる。PICミセルやリポソームの場合も、PICミセルやリポソームを形成する高分子の溶液と薬物との混合液を調製し、攪拌混合すれば、薬物はPICミセルまたはリポソームに内包される。あるいは、ブロックコポリマーの溶液を攪拌してミセル状構造体やPICミセルを形成後、薬物を溶解した溶液をミセル溶液に添加し、ミセル内に薬物を内包させることもできる。
3.薬物送達デバイス
本発明の一形態は、上述した高分子複合体又は当該高分子複合体を含む組成物を含む薬物送達デバイスを提供する。本発明の薬物送達デバイスは、内包した所望の薬物を、標的組織に選択的かつ効率的に導入する手段として使用できる。また、他の一形態は、内包した所望の薬物を、標的組織において放出する方法、あるいは、放出を制御する方法を提供する。
具体的には、所望の低分子薬物を内包した高分子複合体を含む溶液を、被験動物に投与することにより、体内の各種組織に上記高分子複合体を取り込ませる。
実施形態の薬物送達デバイスは、活性酸素種による酸化により、すなわち、活性酸素種の存在下において、薬物が放出されるものである。さらに、一実施形態において、薬物の放出は活性酸素種の濃度に依存する。したがって、活性酸素種の濃度が高い組織において選択的に薬物を放出することが可能である。
一実施形態は、ROS濃度の相違に基づき、標的部位での薬物を放出する方法である。例えば、血中のH濃度に相当する約0.04mM下においては薬物が高分子複合体内に安定に保持され、高ROS濃度下(高酸化ストレス下;例えば高濃度のH 約1mM以上)において薬物を放出しうる。
本発明の薬物送達デバイスは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、ネコ等の各種動物に適用することができ、限定はされない。被験動物への投与方法は、通常、点滴静注などの非経口用法が採用され、投与量、投与回数及び投与期間などの各条件は、被験動物の種類及び状態に合わせて適宜設定することができる。
本発明の薬物送達デバイスは、各種疾患の原因となる組織に所望の低分子薬剤を導入する治療に用いることができる。よって本発明は、前述した高分子複合体を含む医薬組成物、及び、前述した高分子複合体(薬物送達デバイス)を用いる各種疾患の治療方法を提供することもできる。
上記医薬組成物については、薬物製造上一般に用いられる賦形材、充填材、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤及び等張化剤等を適宜選択して使用し、常法により調製することができる。また、医薬組成物の形態は、通常、静脈内注射剤(点滴を含む)が採用され、例えば、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態等で提供される。
上記医薬組成物及び治療方法は、各種疾患の中でも特に活性酸素種が直接的又は間接的に関与する疾患に対して有効に適用される。
4.脳への送達
本発明の薬物送達デバイスは、特に脳への薬物送達に好適である。上記の通り、ミセル状構造体の表面の少なくとも一部をグルコース又はGLUT1に結合するグルコースの誘導体(GLUT1リガンド)で修飾することにより、外表面に露出したグルコース又はその誘導体が脳の血管内皮細胞の血管内表面に発現するグルコーストランスポーターであるGLUT1に結合し、これにより高分子複合体が血管内皮細胞に取り込まれ、血液脳関門(BBB)を通過して脳実質に移行することが可能となりうる。
本明細書では、「GLUT1リガンド」とは、GLUT1と特異的に結合する物質を意味する。GLUT1リガンドとしては、様々なリガンドが知られ、特に限定されないが例えば、グルコースおよびヘキソースなどの分子が挙げられ、GLUT1リガンドは、いずれも本発明でグルコースの代わりにキャリアまたはコンジュゲートの調製に使用することができる。GLUT1リガンドは、好ましくはGLUT1に対してグルコースと同等またはそれ以上の親和性を有する。2−N−4−(1−アジ−2,2,2−トリフルオロエチル)ベンゾイル−1,3−ビス(D−マンノース−4−イルオキシ)−2−プロピルアミン(ATB−BMPA)、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−2−デオキシグルコース(6−NBDG)、4,6−O−エチリデン−α−D−グルコース、2−デオキシ−D−グルコースおよび3−O−メチルグルコースもGLUT1と結合することが知られ、これらの分子もGLUT1リガンドとして本発明に用いることができる。
グルコース又はGLUT1に結合するグルコースの誘導体GLUT1リガンドで修飾したブロックコポリマーおよびこれを用いた薬物輸送体の製造方法は国際公開第2015/075942号に記載されており、当該開示を参照することができる。同文献にはBBBを構築する血管内皮細胞にGLUT1が桁違いに発現(局在)しており、さらに血糖値によって局在箇所が変化する(低い血糖値:血管側、高い血糖値:脳実質側)ことを利用して薬物を脳へ送達する技術が提案されている。
脳は全身の20〜25%の酸素を消費するといわれており、主に酸素を代謝する過程で生じた活性酸素種により生体組織への障害が生じることが知られている(酸化ストレス)。また、脳脊髄液から核酸等の酸化修飾物が検出されたこと及びAβオリゴマーが酸化ストレスを誘導することが報告され、酸化ストレスがアルツハイマー病の大きな要因であることが示唆された(A. Nunomura, et al., J Neuropathol Exp Neurol 65, 631-641, 2006)。例えば、アルツハイマー病患者の脳内のROS濃度は約1.0mMものH濃度に相当すると考えられている。一実施形態の高分子複合体は、血中のH濃度に相当する約0.04mM以下においては結合が開裂せず低分子薬物がブロックコポリマー内に安定に保持される一方で、アルツハイマー病患者の脳におけるような高ROS濃度下(高酸化ストレス下;例えば高濃度のH 約1mM以上)においては結合が開裂し、低分子薬物が放出される。
本発明の薬物送達デバイスは活性酸素種の濃度が高い組織(例えば、アルツハイマー病患者の脳)への薬物送達デバイスとして有効に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
[実施例1:各種ブロック共重合体PEG−PAsp(DET/FPBA)の合成]
PEG−PAsp(DET/FPBA)を下記合成スキームに従って合成した。
1.1.PEG−PBLAの合成
α−メトキシ−ω−アミノ−ポリエチレングリコール(MeO−PEG−NH,PEGのM:2kDa)を開始剤としたβ−ベンジル−L−アスパルテート−N−カルボン酸無水物(NCA−BLA)の開環重合によって、PEG−poly(β−benzyl L−aspartate)(PEG−PBLA)を合成した。MeO−PEG−NHを100mgとり、ベンゼンに溶解させて一晩凍結乾燥させた。凍結乾燥後、Ar雰囲気下においてジメチルホルムアミド(DMF):ジクロロメタン(DCM)=1:10混合溶媒にMeO−PEG−NH及びNCA−BLAをそれぞれ完全に溶解させ、NCA−BLA溶液及びMeO−PEG−NH溶液を得た。NCA−BLA溶液をMeO−PEG−NH溶液に添加し、35℃で3日間撹拌した。反応溶液をn−ヘキサン/酢酸エチル(3:2)混合溶液に再沈殿させ、PEG−PBLAを回収した。その後、PEG−PBLAを真空乾燥させ、白色粉末を得た。PBLAの重合度は35(m=35)であった(PEG−PBLA(m=35))。
その後、同様の実験工程を踏むことにより、他2種類の鎖長の異なるPEG−PBLA(m=51、72;各PBLAの重合度はそれぞれ51、72である)を得た。
1.2.PEG−PAsp(DET)の合成(DETによるアミノリシス)
回収したPEG−PBLAのアミノリシス反応によりPEG−PAsp(DET)を合成した。
具体的には、PEG−PBLA(m=35)200mgをベンゼンに溶解させて凍結乾燥した。乾燥したPEG−PBLAをAr雰囲気下において、10mLのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させた。また、Dryジエチレントリアミン(DET)(PBLAに対して50当量)を同体積のNMPにより希釈した。これら溶液を10℃に冷却し、PEG−PBLA溶液をゆっくりDET溶液に滴下し、1時間撹拌した。反応後、溶液温度を10度以下に保ったまま5N HCl水溶液で反応溶液を中和し、0.01N HCl水溶液で4℃にて1日透析を行った。(MWCO 6000−8000Da)その後、イオン交換水で4℃にてもう1日透析を行った。透析後、溶液を凍結乾燥することでPEG−PAsp(DET)の白色粉末を得た。PAsp(DET)の重合度は31であった(PEG−PAsp(DET)(m=31))。
また、他2種類の鎖長の異なるPEG−PBLA(m=51、72)に関しても同様の実験工程を経ることによって鎖長の異なるPEG−PAsp(DET)を得た。各PAsp(DET)の重合度はそれぞれ45、70であった(PEG−PAsp(DET)(m=45、70))。
1.3.PEG−PAsp(DET/FPBA)の合成(DMT−MMによるFPBA修飾)
PEG−PAsp(DET)と4−カルボキシ−3−フルオロ−フェニルボロン酸(FPBA)との縮合反応によりPEG−PAsp(DET/FPBA)を合成した。
具体的には、PEG−PAsp(DET)(m=31)20mgおよび4−(4、6−ジメトキシ−1、3、5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドn水和物(DMT−MM)(DETのNHに対して5当量)、さらにソルビトール(DETのNHに対して5当量)を50mM NaHCO溶液に溶解し、1mg/mLに調製した。一方同量のメタノールにFPBA(DETのNHに対して1当量)を溶解した。2つの溶液を混合し、4℃で6時間反応させた。反応後、0.01N HCl水溶液で4℃にて1日透析を行った。その後、イオン交換水で4℃にてもう1日透析を行った。(MWCO 6000−8000Da)透析後、溶液を凍結乾燥することでPEG−PAsp(DET/FPBA)の白色粉末を得た。PAsp(DET)の重合度は24であり、そのうちFPBAは17ユニット結合していたため、BA導入率は24.1%となった。ただし、このBA導入率はブロックコポリマーの分子量に対するボロン酸基の分子量(BA分子量)の割合を指す。本実施例においては、BA分子量は下記構造の分子量である。
また、同様の実験工程を、FPBA添加量及びソルビトールの有無を変えながら行うことによって、同鎖長で他に3つの異なるBA導入率を持つPEG−PAsp(DET/FPBA)を合成した。BA導入率はそれぞれ14.6%、20.4%、30.2%であった。
さらに、他2種類の鎖長の異なるPEG−PAsp(DET)(m=45、70)に関しても同様の修飾を行い、それぞれの鎖長で4つの異なるBA導入率を持つPEG−PAsp(DET/FPBA)を合成した。
合成したブロック共重合体の構成(FPBA添加量およびソルビトールの有無)を表1に記載した。以降、各ブロック共重合体を2k−31−20.4%のような形で「PEG分子量−修飾前PAsp(DET)重合度−BA導入率」と表現する。
以上のように、各PAsp(DET)重合度においてBA導入率を制御したブロック共重合体の合成に成功した。
[実施例2:高分子ミセルの調製]
PEG−PAsp(DET/FPBA)およびジオール構造を持つ疎水性抗酸化剤であるルチンを用いて高分子ミセルを調製した。
酢酸および酢酸ナトリウムを用いて10mM酢酸緩衝液(pH4.0)を調製し、これに各ブロック共重合体を1mg/mLとなるよう溶解させた。また、ルチンは1mg/mLとなるようにエタノールに溶解させた。ブロック共重合体溶液に対してルチン溶液を加え、よく撹拌した後、混合溶液をPBS(pH7.4)に対して4℃にて一晩透析(MWCO:20、000Da)した。透析後これを回収し、各高分子ミセルを調製した。
同様の実験工程を、ルチンの添加量とブロック共重合体中に含まれるFPBA量とのモル比(Rutin/FPBA)を変化させながら行うことによって、複数の高分子ミセルを調製した。
調製した高分子ミセルに対してZetasizerNano(Malvern Instruments)を用いた動的光散乱(DLS)法により流体力学直径(粒径;Size)および多分散度(PdI)を測定した(表2)。また、1%酢酸ガドリニウム溶液で陰性染色することで、高分子ミセルの形態を透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察した。代表として2k−45−22.7%を用いて調製した高分子ミセル(Rutin/FPBA=0.25)の粒径分布および透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す(図3、図4)。
以上のように、ルチンが各ブロック共重合体(PEG−PAsp(DET/FPBA))に組み込まれた高分子集合体(高分子複合体)の形成に成功した。
また、FPBA導入率およびRutin/FPBAを制御することで、高分子ミセルを形成することに成功した。特に、BA導入率およびRutin/FPBAが特定に範囲にあるものは、30nm前後の粒径を持つ高分子ミセルが形成可能な領域が限定されることが確認された。特に、本実施例では、BA導入率が20〜25%である場合に、単分散(低PDI)かつ30nm前後の高分子ミセルが得られた。また、各PAsp(DET)重合度(31、45、70)において得られた30nm前後(約20〜40nm)の粒径を持つ高分子ミセルは球形かつ単分散な粒径分布を持つことが確認された。
[実施例3:異なるpHでの粒径変化]
実施例2で調製した2k−70−23.3%(Rutin/FPBA=0.1)からなる高分子ミセルを用いた。調製した高分子ミセルの溶媒を透析により異なるpHのPBSに置換した。選択した溶媒はいずれも10mM PBSであり、置換したpHはそれぞれ7.4および8.5であった。それぞれの溶媒中の高分子ミセルの37℃における流体力学直径(粒径)をDLS法により経時的に測定した(装置:ZetasizerNano(Malvern Instruments))。その結果を図5に示す。
図5に示すように、pH7.4において高分子ミセルの粒径は徐々に増大していったのに対し、pH8.5では粒径変化が抑制された。この結果から、プロトン化したNHによる静電反発が高分子ミセルの安定性に対して負に作用していることが考えられる。
[実施例4:高分子ミセルの構造安定性評価]
実施例2で得られた高分子ミセルのうち、流体力学直径が30nm前後であり、かつPdIが0.2未満となる単分散な粒径分布を持つものを各PAsp(DET)重合度ごとに1種類ずつ選出し、PBS(pH7.4)中での37℃における構造安定性を評価した。すなわち、高分子ミセルとしては2k−31−20.4%(Rutin/FPBA=0.5)、2k−45−22.7%(Rutin/FPBA=0.25),2k−70−23.3%(Rutin/FPBA=0.1)の3種類を用いた。粒径測定は実施例3と同様に行った。その結果を図6に示す。
図6から、2k−45−22.7%が最も粒径増加が抑えられており、最も高い構造安定性を示すことが確認された。これは、重合度が小さすぎる場合にはミセルコアの充填が十分でなく、一方で重合度が大きくなるにつれFPBA数と同時にNHの数も大きくなるために実施例3で検証した通り静電反発がコアを不安定化させるためであると考えられる。
[実施例5:高分子ミセルの形成過程の検証]
実施例4で最も高い構造安定性を示した2k−45−22.7%(Rutin/FPBA=0.25)からなる高分子ミセルを用いて、高分子ミセルの形成過程に関する実験を行った。
具体的には、実地例2と同様にブロック共重合体(2k−45−22.7%)を酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解させ、ルチンをエタノールに溶解させてこれらを混合した。よく撹拌した後、異なるpHの外液に対して透析を行い、高分子ミセルを調製した。また、NaClの有無による高分子ミセル形成変化についても同様に調製した。実施例2と同様、DLS法により粒径(Size)及びPdIの測定を行った。その結果を表3に示す。
PdI≦0.20が球状かつ単分散の高分子ミセル形成の指標とされる。
表3に示すように、pHが低い領域(pH4.0および5.7)では単分散の高分子ミセル形成が確認されなかったが、pH6.5以上では単分散な高分子ミセル形成が確認された。このことから、高分子ミセルの形成においてもNHのプロトン化による静電反発が大きく寄与することを示唆している。DETの第2プロトン化のpKaは6.0といわれており、今回の結果ではそのpH以上でのみ単分散の高分子ミセル形成が確認された。一方、NaClの有無はこの高分子ミセルの形成には寄与しないことが示唆された。
[実施例6:H存在時の高分子ミセルの粒径変化]
実施例2で調製した2k−45−22.7%(Rutin/FPBA=0.25)からなる高分子ミセルを用い、H存在下での高分子ミセルの粒径(Size)及び多分散度(PdI)の変化を経時的に測定した。H濃度は、アルツハイマー病患者の脳内環境ROS濃度(1mM)および血中H濃度(0.1mM)に調整した。その結果を図7A及び図7Bに示す。
図7A及び図7Bに示されるように、0.1mM H存在時には高分子ミセルの粒径変化は生じなかった。一方で、1mM H存在時には高分子ミセルの粒径が速やかに増大し、PdIの上昇も確認された。これらの結果から、高分子ミセルが崩壊していることが示唆された。
[実施例7:H存在時のルチンの吸光スペクトル変化]
ルチンの吸光ピークのHによる影響を検証した。ルチンに対して1mMのHを添加して37℃に静置し、吸光スペクトルの変化を経時的に測定した。その結果を図8に示す。H非存在下(すなわちPBS中)におけるルチンの吸光スペクトルの経時変化を図8Aに示す。1mM H存在下におけるルチンの吸光スペクトルの経時変化を図8Bに示す。
この結果から、ルチンに由来する吸光ピークおよびその吸光度は本実験条件におけるH濃度に依存しないことが確認された。
[実施例8:H存在時の高分子ミセルの吸光スペクトル変化]
実施例2で調製した2k−45−22.7%(Rutin/FPBA=0.25)からなる高分子ミセルを用いた。実施例6と同様にして、H非存在下(すなわちPBS中)、1mMH存在下、0.1mM H存在下の高分子ミセルの吸光スペクトル変化を経時的に測定した。その結果を図9に示す。図9Aは1mM H存在下における高分子ミセルの吸光スペクトルの経時変化を示し、図9Bは0.1mM H存在下における高分子ミセルの吸光スペクトルの経時変化を示し、図9CはH非存在下(すなわちPBS中)における高分子ミセルの吸光スペクトルの経時変化を示す。
図9A〜図9Cから、実施例7(図8A及び図8B)での粒径変化と同様、0.1mM Hには応答せず、1mM H存在時に吸光ピークがシフトしたことが確認された。これは、FPBAとの結合によりルチン内のクエルセチン構造の電子状態が変化したためであると考えられる。つまり、吸光ピークのシフトはFPBA−ルチン結合の開裂を表し、Hに応答した高分子ミセルの崩壊を示唆している。
上記実施例から、ボロン酸基との結合部位を含む低分子薬物としてのルチンが、当該結合部位とブロック共重合体のボロン酸基との結合を介して、共重合体に安定に担持されることが確認された。
さらに、ブロック共重合体へのボロン酸基の導入率(BA導入率)および低分子薬物/ボロン酸基の比率(Rutin/FPBA)を制御することで、ボロン酸基との結合部位を含む低分子薬物(Rutin)が内包された高分子ミセルを形成することが確認された。
ボロン酸基との結合部位を含む低分子薬物(Rutin)が内包された高分子ミセルは、H応答性を示し、特定濃度以上のH存在下において薬物の結合部位とブロック共重合体のボロン酸基との結合が開裂することにより薬物が放出されることが確認された。
本発明の高分子複合体は、DDSの分野において好適に適用され得る。
1 高分子セグメント
2 ボロン酸基
3 親水性高分子鎖セグメント
4 リガンド
5、5a、5b ブロックコポリマー
6 低分子薬物
7 薬物内包高分子ミセル
8 活性酸素種(ROS)

Claims (13)

  1. フェニルボロン酸基又はピリジルボロン酸基から選択される少なくとも一つのボロン酸基を側鎖に有する高分子セグメントと、親水性高分子セグメントと、を有するブロックコポリマーと、
    前記ボロン酸基との結合部位を含む低分子薬物と、
    を含む、高分子複合体。
  2. 前記ボロン酸基との結合部位は、ポリオール構造、ジアミン構造、ヒドロキシアミン構造、ヒドロキサム酸構造、アルコキシカルボキシアミド構造、及び二リン酸構造から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記低分子薬物は疎水性物質である、請求項1又は2に記載の複合体。
  4. 前記ブロックコポリマーが、前記高分子セグメントが内側となり、前記親水性高分子セグメントが外側となるように放射状に配列してミセルを形成し、前記ミセルに前記低分子薬物が内包されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
  5. 前記高分子セグメントは、ポリアミノ酸から構成され、前記ボロン酸基が、ポリアミノ酸の側鎖に導入されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体。
  6. 前記親水性高分子セグメントは、ポリ(エチレングリコール)、ポリサッカライド、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリアミノ酸、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、またはこれらの誘導体から選択される親水性ポリマーで構成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合体。
  7. 前記ボロン酸基は下記式(b1)で表されるフェニルボロン酸基(PBA)又は下記式(b2)で表されるピリジルボロン酸基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合体。
    (上記式中、
    は、フッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素から選択されるハロゲン、又はニトロを表し、
    nは0〜4の整数であり、
    *はポリマー鎖との結合点を示す)
  8. 前記ブロックコポリマーは下記式(3)で表される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体。
    (式中、
    は、水素原子あるいは未置換もしくは置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキル基であり;
    は、水素原子、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル基あるいは炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルカルボニル基であり、
    4aは、相互に独立して、メチレン基またはエチレン基であり、
    は、−S−S−または原子価結合であり、
    は、−NH−、−O−、−O(CHp1−NH−、または−L2a−(CHq1−L2b−であり、ここで、p1およびq1は、相互に独立して、1〜5の整数であり、L2aはOCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOであり、L2bはNHまたはOであり、
    9aは、−NH−(CHp2−〔NH−(CHq2−〕r2NH-で示される2価の基であり、p2、q2、およびr2は、それぞれ相互に独立して、1〜5の整数であり、
    9bは、−NH−(CHp3−〔NH−(CHq3−〕r3NHであり、p3、q3、およびr3は、それぞれ相互に独立して、1〜5の整数であり
    BAはボロン酸基を表し
    xは0.1〜0.9であり、
    mは1〜300の整数である。)
  9. 前記複合体の表面がグルコース又はグルコース誘導体により修飾されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合体を含む、組成物。
  11. 活性酸素種の存在下で前記高分子複合体から前記低分子薬物が放出されるものである、請求項10に記載の組成物。
  12. 前記低分子薬物を脳に送達するために用いられる、請求項12又は11に記載の組成物。
  13. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合体又は請求項10〜12のいずれか一項に記載の組成物を含む、薬物送達デバイス。
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