JP2018039931A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】サーマル方式で吐出されるインクにおいて、ジルコニアに起因するコゲによる吐出性の低下を抑制することができ、かつ、優れた光沢性を有する画像を記録することが可能な水性インクを提供する【解決手段】熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いる水性インクである。酸化ジルコニウム、顔料、アクリル系の樹脂分散剤、ウレタン樹脂、及び不飽和脂肪酸を含有し、酸化ジルコニウム含有量(Zr換算;ppm)が、0.5ppm以上20.0ppm以下であり、顔料はフタロシアニン顔料などであり、不飽和脂肪酸の不飽和結合数が3以下であり、かつ、炭素数が16以上22以下である。【選択図】なし
Description
本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
近年、インクジェット記録方法により、銀塩写真やオフセット印刷で実現されているような高精細で高発色性の画像を記録することが可能となっている。インクに用いられる色材としては、染料及び顔料があり、耐ガス性、耐光性、耐水性などの画像の堅牢性の観点から顔料が広く用いられている。
また、写真印刷やグラフィックアート印刷などの用途の多様化に伴い、より広い色再現範囲が求められるようになっている。そのため、シアン、マゼンタ、及びイエローの基本3原色のインクに加えて、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、及びバイオレットなどの、基本3原色以外のいわゆる特色インクを追加し、色再現範囲の拡大を図ることが種々検討されている。それに伴い、インクジェット記録方法で用いられる顔料の種類も多様となっている。例えば、従来からシアン顔料として広く用いられてきたフタロシアニン顔料;マゼンタ顔料として広く用いられてきたキナクリドン顔料;イエロー顔料として広く用いられてきたアゾ顔料などがある。さらに、これらの顔料に加えて、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、及びアントラキノン顔料などの様々な種類の顔料が用いられるようになってきている。
写真印刷やグラフィックアート印刷においては、より高精細かつ光沢性に優れた画像が求められる。このような用途に適用されるインクは、樹脂分散剤により顔料を分散する、いわゆる樹脂分散顔料を含有するものが多い。樹脂分散顔料は、疎水性ユニットにより顔料の粒子表面に物理的に吸着するとともに、親水性ユニットの水和力により、本質的に疎水性である顔料を水性媒体に分散させるものである。疎水性の顔料は樹脂分散剤の作用によりインク中に安定に分散されている。但し、顔料の分散状態が不安定となり、記録ヘッドからのインクの吐出性に影響を及ぼすと、画像ムラなどが生じやすくなる。したがって、インクの吐出性に対する要求も、これまで以上に高いレベルとなっている。特に、記録ヘッドからの累積の吐出回数の増加に伴ってインクの吐出性が変化する場合、各ノズルの累積の吐出回数に応じた吐出性の差に起因する、画像ムラなどが生じる。したがって、ノズルごとに累積の吐出回数が異なっても、インクの吐出性が変化しないことも求められるようになってきている。
インクジェット用のインクに用いられる樹脂分散顔料の分散方法は、メディア分散方式とメディアレス分散方式の2つに大別される。メディア分散方式はビーズなどのメディアを用いて顔料に物理的な力をかけて分散する方式であり、ボールミルやビーズミルなどを用いる。メディアレス分散方式は液体を利用してせん断応力やキャビテーションなどの力を生じさせ、これを顔料に作用させることによって分散する方式であり、高速ホモジナイザーや高圧分散機などを用いる。
高速ホモジナイザーを用いるメディアレス分散方式では、粒子に与えることができるせん断応力に限界があるため、長時間の撹拌が必要となったり、分散可能な顔料の種類が制限されたりすることがある。また、高圧分散機を用いるメディアレス分散方式では、チャンバー内に目詰まりが生じたり、分散に必要なパス回数が多くなったりするため、分散に時間がかかることが多い。このため、主として生産性及び汎用性の観点から、メディアレス分散方式ではなく、メディア分散方式が広く採用されている。
メディア分散方式で用いられるビーズには、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズなどがある。これらのうち、顔料に対してより強い力を与えられる点から、密度の高いビーズであるジルコニアビーズが幅広く用いられている。しかし、ジルコニアビーズを用いて分散された顔料を用いて調製したインクには、ビーズの摩耗などによってジルコニアが混入することが知られている。但し、ジルコニアが混入したとしても、水性インク中のジルコニアの含有量は、ジルコニウム(Zr)換算で高くても数十ppmというようなかなり少ないレベルに制御される。しかし、この程度の含有量であったとしても、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させるサーマル方式の場合、熱エネルギーを付与するためのヒーター上にジルコニアなどを含むコゲが堆積することがある。
ヒーター上にコゲが堆積するとインクに付与される熱エネルギーが減少するため、吐出性が低下する。これにより、上記のノズルの累積の吐出回数に応じた吐出性の変化が引き起こされる。すなわち、累積の吐出回数が少ないノズルは吐出性が良好であるが、累積の吐出回数が多いノズルは吐出性が劣る状態となり、この違いが画像ムラなどにつながることになる。なお、ピエゾ素子の変形によりインクを吐出させる、いわゆるピエゾ方式の場合にはコゲが生じないため、コゲに起因する吐出性の変化や画像ムラなどの課題は生じない。
ヒーター上のコゲを抑制すべく、例えば、ジルコニウムなどの特定の金属、金属イオン、及び金属酸化物の合計含有量を、金属換算で30ppm以下としたインクが提案されている(特許文献1)。また、インクの不吐出を抑制すべく、多価アルコールモノアルキルエーテルや含窒素環状化合物、多価アルコール類、不飽和脂肪酸、炭素数1〜4のアルキルアルコール類、及び界面活性剤を含有する顔料インクが提案されている(特許文献2)。さらに、ブリーディング及び白抜けを抑制すべく、自己分散顔料、ポリウレタン、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及びオレイン酸を含有するインクが提案されている(特許文献3)。
本発明者らの検討の結果、特許文献1で提案された技術では、顔料としてカーボンブラックを用いた場合には効果は得られるが、特定の有機顔料を用いた場合には効果が得られないことがわかった。また、特許文献2で提案された技術では、ノズルの不吐出は抑制できたものの、一定量のジルコニアを含有する場合には、累積の吐出回数に応じて吐出性が変化することがわかった。さらに、特許文献3で提案された技術では、ブリーディング及び白抜けを抑制しうるが、色材が自己分散含有であるインクであるため、近年要求される高いレベルの光沢性を有する画像が得られないことがわかった。
したがって、本発明の目的は、サーマル方式で吐出されるインクにおいて、ジルコニアに起因するコゲによる吐出性の低下を抑制することができ、かつ、優れた光沢性を有する画像を記録することが可能な水性インクを提供することにある。また、本発明の目的は、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いる水性インクであって、酸化ジルコニウム、顔料、前記顔料を分散するためのアクリル系の樹脂分散剤、ウレタン樹脂、及び不飽和脂肪酸を含有し、前記酸化ジルコニウムのジルコニウム換算の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、0.5ppm以上20.0ppm以下であり、前記顔料が、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、及びアントラキノン顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記不飽和脂肪酸の不飽和結合数が3以下であり、かつ、炭素数が16以上22以下であることを特徴とする水性インクが提供される。
本発明によれば、サーマル方式で吐出されるインクにおいて、ジルコニアに起因するコゲによる吐出性の低下を抑制することができ、かつ、優れた光沢性を有する画像を記録することが可能な水性インクを提供することができる。また、本発明によれば、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。また、物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値とする。
本発明者らは、特定の顔料(フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、及びアントラキノン顔料)を色材として含有するインクについて検討した。その結果、上記特定の顔料は、インクに混入する酸化ジルコニウムの含有量が、ジルコニウム濃度換算で0.5ppm以上であると、吐出のための熱エネルギーが付与された際に、酸化ジルコニウムの作用によって分散状態が不安定になることがわかった。分散状態が不安定化した上記顔料の粒子はヒーター上にコゲとして堆積しやすいため、コゲによる吐出性の低下が生ずる。
また、酸化ジルコニウムの作用によって分散状態が不安定化した顔料を含有するインクが記録媒体に付与されると、インクからの水分蒸発とともに顔料が急激に凝集して不均一な顔料層が形成される。このため、画像の光沢性が低下することがわかった。さらに、このような現象はカーボンブラックやアゾ顔料などを色材として含有するインクで記録した場合には生じないこともわかった。特定の顔料の分散状態が酸化ジルコニウムの作用によって不安定化しやすい理由について、本発明者らは以下のように推測している。
酸化ジルコニウムは、固体の状態でインク中に存在し、顔料の粒子表面やヒーター表面に吸着しやすい性質を有する。また、上記の特定の顔料は、その分子構造中に複数の環構造が連なった平面構造を有する化合物で構成されるため、凝集しやすい性質を有する。樹脂分散顔料は、その粒子表面が樹脂分散剤で被覆されることで分散安定性が確保されている。しかし、サーマル方式で吐出される際の熱エネルギーがインクに加えられると、顔料の粒子表面の一部が露出する。露出した粒子表面に酸化ジルコニウムが吸着し、その分散状態が不安定化した顔料が生ずる。そして、分散状態が不安定化した顔料同士は凝集しやすいため、コゲの堆積によってインクの吐出性が低下するとともに、記録される画像の光沢性が低下すると考えられる。
カーボンブラックも環構造を有する平面性の高い化合物で構成される顔料であるが、粒子表面の疎水性が非常に高いために、粒子表面に強固に吸着した樹脂分散剤が剥がれにくく、酸化ジルコニウムはカーボンブラックの粒子表面に吸着しにくい。また、アゾ顔料の粒子表面には高親水性の部位は存在するが、その他の構造に起因して、顔料の粒子間での相互作用が生じにくい。このため、カーボンブラックやアゾ顔料の場合は、インクの吐出性が低下しにくく、画像の光沢性も低下しにくいと考えられる。
次に、本発明者らは、上記特定の顔料を樹脂分散剤によって分散させたインクの吐出性を確保し、記録される画像の光沢性を向上させる手法について種々検討した。まず、画像の光沢性の向上及び酸化ジルコニウムが存在する場合の顔料の分散状態を安定にするために、ウレタン樹脂を添加したインクについて検討した。その結果、記録される画像の光沢性は若干向上したものの、インクの吐出性は向上しないことがわかった。酸化ジルコニウムは、その吸着性が高いため、水性インク中で安定して存在するウレタン樹脂ではなく、疎水性の高い顔料の粒子表面に吸着したために、インクの吐出性が変化しなかったものと考えられる。
そこで、本発明者らは、酸化ジルコニウムの吸着性を低下させることが可能な材料について検討した。その結果、不飽和結合数が3以下であり、かつ、炭素数が16以上22以下である不飽和脂肪酸と、ウレタン樹脂とを併用することで、インクの吐出性の低下を抑制するとともに、画像の光沢性を向上させることが可能であることが判明した。この理由について、本発明者らは以下のように推測している。
上記の特定の不飽和脂肪酸はインクへの溶解性が低く、不飽和結合を有する炭素鎖を中心として凝集力の弱い会合体を水性インク中で形成し、安定して存在していると考えられる。特に、不飽和結合を有する炭素鎖は、不飽和結合を有しない炭素鎖に比べて、炭素鎖同士の相互作用が弱い。酸化ジルコニウムのような吸着性の高い材料と、凝集力の弱い会合体を形成する特定の不飽和脂肪酸とを併用すると、不飽和脂肪酸は酸化ジルコニウムの表面に素早く吸着すると考えらえる。その結果、顔料の粒子表面への酸化ジルコニウムの吸着が抑制されるとともに、不飽和脂肪酸で取り囲まれた酸化ジルコニウムの周囲が適度な疎水性を示す。このため、不飽和脂肪酸で取り囲まれた酸化ジルコニウムにウレタン樹脂が効率よく吸着する。これにより、水性インク中で安定化した酸化ジルコニウムは吐出時に顔料の粒子表面に吸着しにくくなり、ヒーター上にコゲが堆積しにくくなるため、インクの吐出性が向上すると考えられる。さらに、インクが記録媒体に付与された際にも、水分蒸発によっても顔料は凝集しにくいとともに、酸化ジルコニウムにウレタン樹脂が吸着しているため、形成される顔料層にウレタン樹脂を効率的に残すことができる。これにより、顔料層の表面エネルギーが高まり、画像の光沢性が向上すると考えられる。
また、本発明者らの検討の結果、「ジルコニアに起因して生じたコゲによるインクの吐出性の低下」という技術課題は、カーボンブラックやアゾ顔料などの色材を含有するインクについては生じないことが判明した。カーボンブラックは疎水性が非常に高い顔料であるため、樹脂分散剤が脱離しにくいとともに、樹脂分散剤の顔料への吸着が親水性の酸化ジルコニウムによって妨げられることもない。このため、カーボンブラックを色材として含有するインクの場合、コゲにつながるような顔料の分散状態の不安定化が生じにくい。また、アゾ顔料の粒子表面には高親水性の部位は存在するが、その他の構造に起因して、顔料の粒子間での相互作用が生じにくい。また、酸化ジルコニウムも付着しにくいため、コゲにつながるような顔料の分散状態の不安定化が生じにくい。以上のような理由から、「ジルコニアに起因して生じたコゲによるインクの吐出性の低下」は、特定の顔料を色材として含有するインクに特有の技術課題であると考えられる。
<インク>
本発明の水性インクは、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いる水性インクであり、酸化ジルコニウム、顔料、顔料を分散するための樹脂分散剤、ウレタン樹脂、及び不飽和脂肪酸を含有する。以下、本発明のインクを構成する成分やインクの物性などについて詳細に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載によって限定されるものではない。
本発明の水性インクは、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いる水性インクであり、酸化ジルコニウム、顔料、顔料を分散するための樹脂分散剤、ウレタン樹脂、及び不飽和脂肪酸を含有する。以下、本発明のインクを構成する成分やインクの物性などについて詳細に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載によって限定されるものではない。
(酸化ジルコニウム)
本発明のインクは、酸化ジルコニウムを含有する。酸化ジルコニウムは、顔料の分散工程などの、インクの製造工程におけるコンタミネーションに由来して非意図的に混入される。酸化ジルコニウムは、通常、インク中では微小な固体状の結晶として存在する。その結晶中に、例えばイットリウムなどの他の元素を含んでいてもよい。インクが酸化ジルコニウムを含有することは、例えば、以下のようにして確認できる。まず、熱エネルギーを利用して記録ヘッドからインクを吐出させて、記録ヘッドのヒーター部分にコゲを堆積させる。次いで、X線電子分光法(XPS)、エネルギー分散型X線分光法(EDS)、電子エネルギー損失分光法(EELS)などの手法により、堆積したコゲの構成成分を分析する。なお、樹脂分散剤により分散された顔料以外の水性インクの構成材料に由来して、酸化ジルコニウムなどのジルコニウム化合物がインクに混入することはほとんどないと言える。例えば、水や水溶性有機溶剤などの構成材料に由来して、ごく微量のジルコニウム化合物の混入があったとしても、その含有量は分析可能なレベルを下回っている。このため、簡易的には、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)により、インク中にジルコニウムが存在することが確認できれば、インク中に酸化ジルコニウムが存在すると推定することができる。同様の理由から、ICP−OESにより測定したインク中のジルコニウムの含有量(ppm)は、酸化ジルコニウムに由来するものであると推定することができる。
本発明のインクは、酸化ジルコニウムを含有する。酸化ジルコニウムは、顔料の分散工程などの、インクの製造工程におけるコンタミネーションに由来して非意図的に混入される。酸化ジルコニウムは、通常、インク中では微小な固体状の結晶として存在する。その結晶中に、例えばイットリウムなどの他の元素を含んでいてもよい。インクが酸化ジルコニウムを含有することは、例えば、以下のようにして確認できる。まず、熱エネルギーを利用して記録ヘッドからインクを吐出させて、記録ヘッドのヒーター部分にコゲを堆積させる。次いで、X線電子分光法(XPS)、エネルギー分散型X線分光法(EDS)、電子エネルギー損失分光法(EELS)などの手法により、堆積したコゲの構成成分を分析する。なお、樹脂分散剤により分散された顔料以外の水性インクの構成材料に由来して、酸化ジルコニウムなどのジルコニウム化合物がインクに混入することはほとんどないと言える。例えば、水や水溶性有機溶剤などの構成材料に由来して、ごく微量のジルコニウム化合物の混入があったとしても、その含有量は分析可能なレベルを下回っている。このため、簡易的には、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)により、インク中にジルコニウムが存在することが確認できれば、インク中に酸化ジルコニウムが存在すると推定することができる。同様の理由から、ICP−OESにより測定したインク中のジルコニウムの含有量(ppm)は、酸化ジルコニウムに由来するものであると推定することができる。
酸化ジルコニウムのジルコニウム換算の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)によるジルコニウム濃度の測定から、求めることができる。インク中の酸化ジルコニウムのジルコニウム換算の含有量(ppm)は、インク全質量を基準として、0.5ppm以上20.0ppm以下である。ジルコニウムの含有量が0.5ppm未満であると、コゲによる吐出性の低下が生じないため、ノズルごとの累積の吐出回数に応じた吐出性の変化が生じない。一方、ジルコニウムの含有量が20.0ppm超であると、ジルコニウムの含有量が多すぎるため、ウレタン樹脂及び不飽和脂肪酸を含有させたとしても、吐出性及び光沢性の低下を抑制できない。
(顔料)
本発明のインクに含有される顔料は、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、及びアントラキノン顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種である。フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58などを挙げることができる。キナクリドン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19との組み合わせなどの固溶体などを挙げることができる。ジケトピロロピロール顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントオレンジ71などを挙げることができる。ジオキサジン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット23などを挙げることができる。ペリノン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ43などを挙げることができる。ペリレン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド149などを挙げることができる。アントラキノン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177などを挙げることができる。これらの顔料は、1種のみを用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。さらに、上記の顔料と、上記の顔料以外の顔料とを組み合わせて用いてもよい。
本発明のインクに含有される顔料は、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、及びアントラキノン顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種である。フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58などを挙げることができる。キナクリドン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19との組み合わせなどの固溶体などを挙げることができる。ジケトピロロピロール顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントオレンジ71などを挙げることができる。ジオキサジン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット23などを挙げることができる。ペリノン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ43などを挙げることができる。ペリレン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド149などを挙げることができる。アントラキノン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177などを挙げることができる。これらの顔料は、1種のみを用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。さらに、上記の顔料と、上記の顔料以外の顔料とを組み合わせて用いてもよい。
インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.20質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。顔料の含有量が0.20質量%未満であると、画像の発色性が低下する場合がある。一方、顔料の含有量が10.00質量%超であると、インクの粘度が過度に上昇して、吐出不良が生じる場合がある。
(樹脂分散剤)
本発明のインクは、インク中に顔料を分散するためのアクリル系の樹脂分散剤を含有する。すなわち、本発明のインクに色材として用いる顔料は、アクリル系の樹脂分散剤によってインク中に分散させる分散方式の樹脂分散顔料である。樹脂分散顔料を色材として含有させることで、高い光沢性が付与された画像を記録することができる。ウレタン系の樹脂分散剤で分散された顔料は凝集性が高いため、ヒーター上に付着すると脱離しにくく、吐出性を向上させる効果を得ることができない。
本発明のインクは、インク中に顔料を分散するためのアクリル系の樹脂分散剤を含有する。すなわち、本発明のインクに色材として用いる顔料は、アクリル系の樹脂分散剤によってインク中に分散させる分散方式の樹脂分散顔料である。樹脂分散顔料を色材として含有させることで、高い光沢性が付与された画像を記録することができる。ウレタン系の樹脂分散剤で分散された顔料は凝集性が高いため、ヒーター上に付着すると脱離しにくく、吐出性を向上させる効果を得ることができない。
樹脂分散剤によってインク中に分散させる方式の顔料としては、例えば、顔料の粒子表面に樹脂分散剤を物理的に吸着させて分散させたものや、マイクロカプセル顔料などを挙げることができる。マイクロカプセル顔料は、顔料の粒子表面を樹脂分散剤で被覆してインク中に分散させたものである。
樹脂分散剤としては、水溶性樹脂を用いることが好ましい。本発明における「水溶性樹脂」とは、水性媒体に溶解し、粒子径を有する粒子を形成しない状態で水性媒体中に存在しうる樹脂を意味する。樹脂分散剤が水分散性(水不溶性)であると、インクの保存安定性がやや低下しやすくなる場合がある。
樹脂分散剤として用いる樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、以下のようにすることができる。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA−EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
なかでも、アクリル系の樹脂分散剤としては、アニオン性基を持ったユニット(親水性ユニット)及びアニオン性基を持たないユニット(疎水性ユニット)を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることが好ましい。なお、以下の記載における「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」、また、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を意味する。
アニオン性基を持ったユニット(親水性ユニット)は、例えば、アニオン性基を持ったモノマーを重合することで形成することができる。アニオン性基を持ったモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有するモノマー、これらのモノマーの無水物や塩などを挙げることができる。アニオン性基を持ったモノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。
アニオン性基を持たないユニット(疎水性ユニット)は、例えば、アニオン性基を有しないモノマーを重合することで形成することができる。アニオン性基を持たないモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾールなどの芳香環を有するモノマー;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有するモノマーなどを挙げることができる。
本発明のインクは、アクリル系の樹脂分散剤及びウレタン樹脂、の2種の樹脂を含有する。インクに含まれるいずれの樹脂が顔料を分散させている樹脂であるかについては、以下に示す方法で判断することができる。インクを濃縮又は希釈して全固形分の含有量が10質量%程度になるように調製した液体を、12,000rpmで1時間遠心分離する。これにより、水溶性有機溶剤や分散に寄与しない樹脂などが含まれる液層と、顔料を含む沈降成分とを分離し、沈降成分を回収する。そして、回収した沈降成分に含まれている樹脂が、顔料を分散させている樹脂であると判断することができる。すなわち、沈降成分に主成分として含まれている樹脂が、顔料の分散に寄与する樹脂(アクリル系の樹脂分散剤)である。一方、液層に主成分として含まれている樹脂は、顔料の分散に寄与しない樹脂である。
(ウレタン樹脂)
本発明のインクは、ウレタン樹脂を含有する。ウレタン樹脂をインクに含有させることで、記録される画像の光沢性を高めることができる。ウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得ることができる。これに加えて、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。
本発明のインクは、ウレタン樹脂を含有する。ウレタン樹脂をインクに含有させることで、記録される画像の光沢性を高めることができる。ウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得ることができる。これに加えて、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。
インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。ウレタン樹脂の重量平均分子量は3,000以上60,000以下であることが好ましく、10,000以上30,000以下であることがさらに好ましい。ウレタン樹脂の重量平均分子量が3,000未満であると、ウレタン樹脂が顔料層にとどまりにくくなるため、画像の光沢性が十分に得られない場合がある。ウレタン樹脂の重量平均分子量が60,000超であると、画像表面に凹凸が生じやすくなるため、画像の光沢性が十分に得られない場合がある。ウレタン樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上110mgKOH/g以下であることが好ましい。
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネートや芳香族ポリイソシアネートなどを用いることができる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの環状構造を有するポリイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネートなどを挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのアニオン性基を有しないポリオール;アニオン性基を有するポリオールなどを挙げることができる。なかでも、ポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテルポリオールを用いて合成されたウレタン樹脂は加水分解しにくいため、インクを長期間保存した後であっても光沢性に優れた画像を記録することができる。
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイド及びポリオール類の付加重合物;(ポリ)アルキレングリコールなどのグリコール類;などを挙げることができる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイドなどを挙げることができる。また、アルキレンオキサイドと付加重合するポリオール類としては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4−ジヒドロキシフェニルメタン、水素添加ビスフェノールA、ジメチロール尿素及びその誘導体などのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールメラミン及びその誘導体、ポリオキシプロピレントリオールなどのトリオール;などを挙げることができる。グリコール類としては、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの(ポリ)アルキレングリコール;エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体;などを挙げることができる。
これらのなかでも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのグリコール類が好ましい。ウレタン樹脂における、アニオン性基を有しないポリオールに由来するユニットに占める、グリコール類に由来するユニットの割合は、90.0質量%以上であることが好ましい。上記の割合は100.0質量%であること、すなわち、アニオン性基を有しないポリオールに由来するユニットの全てがグリコール類に由来するユニットであることがさらに好ましい。
また、ウレタン樹脂は、その構造中に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基や、カルボニル基、ヒドロキシ基などを有することが好ましい。これらの基は親水性基であるため、これらの親水性基をその分子構造中に有するウレタン樹脂は、水性インク中でより安定に存在することができる。特に、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸などのアニオン性基を有するジオールに由来するユニットを有するウレタン樹脂を用いることが好ましい。アニオン性基は塩を構成していてもよい。塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。各ウレタン樹脂について、酸価を与えるユニットのうちの90.0質量%以上のユニットが、アニオン性基を有するジオールに由来するユニットであることが好ましい。なかでも、ウレタン樹脂の酸価を与えるユニットの全てが、アニオン性基を有するジオールに由来するユニットであることが特に好ましい。
鎖延長剤は、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られるウレタンプレポリマー中のポリイソシアネートユニットのうち、ウレタン結合を形成しなかった残存イソシアネート基と反応しうる化合物である。鎖延長剤としては、ジメチロールエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどの多価アミン;ポリエチレンポリイミンなどの多価イミン;ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオールなどの多価アルコールを用いることができる。本発明のインクに含有させるウレタン樹脂は、架橋されていないことが好ましい。画像の光沢性の観点から、鎖延長剤としては多価アルコールが好ましく、なかでもネオペンチルグリコールがさらに好ましい。
(不飽和脂肪酸)
本発明のインクは、不飽和結合数が3以下であり、かつ、炭素数が16以上22以下である不飽和脂肪酸を含有する。不飽和脂肪酸の不飽和結合数が4以上であると、炭素鎖に占める不飽和結合の数が多いために酸化されやすく、不安定である。このため、吐出時の熱エネルギーにより一部の分子が壊れるため、インクの吐出性及び画像の光沢性の向上効果を得ることができない。不飽和脂肪酸の炭素数が16未満であると、分子鎖が短く、会合体を形成しにくくなるために酸化ジルコニウムに吸着することが困難になり、インクの吐出性及び画像の光沢性を得ることができない。一方、不飽和脂肪酸の炭素数が22超であると、不飽和脂肪酸の炭素鎖同士の相互作用が強くなって不飽和脂肪酸同士で安定に存在しうるため、酸化ジルコニウムに吸着しにくくなる。このため、インクの吐出性及び画像の光沢性を得ることができない。
本発明のインクは、不飽和結合数が3以下であり、かつ、炭素数が16以上22以下である不飽和脂肪酸を含有する。不飽和脂肪酸の不飽和結合数が4以上であると、炭素鎖に占める不飽和結合の数が多いために酸化されやすく、不安定である。このため、吐出時の熱エネルギーにより一部の分子が壊れるため、インクの吐出性及び画像の光沢性の向上効果を得ることができない。不飽和脂肪酸の炭素数が16未満であると、分子鎖が短く、会合体を形成しにくくなるために酸化ジルコニウムに吸着することが困難になり、インクの吐出性及び画像の光沢性を得ることができない。一方、不飽和脂肪酸の炭素数が22超であると、不飽和脂肪酸の炭素鎖同士の相互作用が強くなって不飽和脂肪酸同士で安定に存在しうるため、酸化ジルコニウムに吸着しにくくなる。このため、インクの吐出性及び画像の光沢性を得ることができない。
上記の特定の不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸などを挙げることができる。
不飽和脂肪酸の炭素数は、18以下であることが好ましい。不飽和脂肪酸の炭素数が18超であると、炭素鎖同士のアルキル相互作用が強くなって酸化ジルコニウムに吸着しにくくなる。このため、インクの吐出性及び画像の光沢性の向上効果が低下する場合がある。特定の不飽和脂肪酸としては、オレイン酸を用いることが好ましい。オレイン酸は、不飽和結合数が1であり、炭素数が18である不飽和脂肪酸である。オレイン酸は、不飽和結合数が1であるために安定であるとともに、炭素数に占める不飽和結合数と、水性インクへの溶解性とのバランスが最適である。このため、オレイン酸は、他の不飽和脂肪酸に比べて効率的に酸化ジルコニウムに吸着し、インクの吐出性をさらに向上させることができる。
インク中の上記特定の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。不飽和脂肪酸の含有量(質量%)が0.1質量%未満であると、ウレタン樹脂の吸着量を増加させることが困難になり、顔料層に残るウレタン樹脂の量が少なくなることがある。このため、記録される画像の光沢性が不足する場合がある。一方、不飽和脂肪酸の含有量(質量%)が2.0質量%超であると、水性インクが増粘しやすくなる。このため、顔料層表面の平滑性が低下しやすくなり、画像の光沢性が不足する場合がある。
(水性媒体)
本発明のインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクである。水性媒体には、さらに水溶性有機溶剤を含有させることができる。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.00質量%以上90.00質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクである。水性媒体には、さらに水溶性有機溶剤を含有させることができる。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.00質量%以上90.00質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はない。水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。なかでも、数平均分子量200〜2,000程度のポリエチレングリコール、1,2−アルカンジオールなどの水溶性有機溶剤を少なくとも用いることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましく、15.00質量%以上40.00質量%以下であることがさらに好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量が上記の範囲外であると、吐出不良が生じる場合がある。
(その他の樹脂)
本発明のインクは、上記のウレタン樹脂以外の樹脂(その他の樹脂)をさらに含有してもよい。その他の樹脂の種類や形態は、水性インク中に安定に存在できるものであればよい。その他の樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂の溶解性を向上させるために塩基を添加してもよい。塩基としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミンなどの有機アミン;水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの無機塩基を用いることができる。
本発明のインクは、上記のウレタン樹脂以外の樹脂(その他の樹脂)をさらに含有してもよい。その他の樹脂の種類や形態は、水性インク中に安定に存在できるものであればよい。その他の樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂の溶解性を向上させるために塩基を添加してもよい。塩基としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミンなどの有機アミン;水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの無機塩基を用いることができる。
(その他の添加剤)
本発明のインクは、上記した成分以外にも、必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素及びその誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
本発明のインクは、上記した成分以外にも、必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素及びその誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
(インクのpH)
本発明のインクの25℃におけるpHは、8.0以上であることが好ましい。インクのpHが8.0以上であると、不飽和脂肪酸の溶解性が低くなる傾向にあり、酸化ジルコニウムに付着しやすくなるため、吐出性をさらに向上させることができる。また、インクの25℃におけるpHは、8.2以上であることがさらに好ましく、8.4以上であることが特に好ましい。インクのpHが8.2以上であると、吐出性を特に向上させることができる。
本発明のインクの25℃におけるpHは、8.0以上であることが好ましい。インクのpHが8.0以上であると、不飽和脂肪酸の溶解性が低くなる傾向にあり、酸化ジルコニウムに付着しやすくなるため、吐出性をさらに向上させることができる。また、インクの25℃におけるpHは、8.2以上であることがさらに好ましく、8.4以上であることが特に好ましい。インクのpHが8.2以上であると、吐出性を特に向上させることができる。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに熱エネルギーを付与する方式を採用する。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに熱エネルギーを付与する方式を採用する。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
本発明のインクを用いて画像を記録する対象とする記録媒体としては、どのようなものを用いてもよい。なかでも、普通紙や、コート層を有する記録媒体(光沢紙やアート紙)などの、浸透性を有する紙を用いることが好ましい。特に、インク中の顔料粒子の少なくとも一部を記録媒体の表面やその近傍に存在させることができる、コート層を有する記録媒体を用いることが好ましい。このような記録媒体は、画像を記録した記録物の使用目的などに応じて選択することができる。例えば、写真画質の光沢感を有する画像を得るのに適した光沢紙や、絵画、写真、及びグラフィック画像などを好みに合わせて表現するために、基材の風合い(画用紙調、キャンバス地調、和紙調など)を生かしたアート紙などを用いることができる。なかでも、コート層の表面が光沢性を有する、いわゆる光沢紙を用いることが特に好ましい。
本発明のインクジェット記録方法においては、40℃以上に加温した水性インクを記録ヘッドから吐出させることが好ましい。インクを加温することで、吐出性をさらに向上させることができる。インクを加温すると、不飽和脂肪酸の分子運動が生じやすいため、酸化ジルコニウムに吸着しやすくなり、吐出性をさらに向上することができる。さらに、40℃以上に加温したインクを吐出することで、記録される画像の光沢性をさらに向上させることができる。インクの温度が40℃以上であると、ウレタン樹脂の分子が広がりやすくなり、酸化ジルコニウムに吸着しやすくなる。これにより、顔料層中に存在するウレタン樹脂が増えて、画像の光沢性がさらに向上する。インクを所定の温度以上に加温するには、インクの温度を制御する手段を用いればよい。インクの温度を制御する手段としては、例えば、記録ヘッドに接触するように配設されるインク温度調整用のヒーターや、インク吐出用のヒーターなどを挙げることができる。インク吐出用のヒーターによってインクを加温するには、例えば、インクが吐出しない程度の電流を繰り返し通電すればよい。インクの温度は、記録ヘッドに設けた温度センサーで読み取ることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<アクリル樹脂の合成>
表1の上段に示すモノマー(単位:部)を常法により共重合させ、水溶性のアクリル樹脂A1〜A5を合成した。10.0%の水酸化カリウム水溶液を用いて得られたそれぞれの樹脂中のすべての酸性基を中和した後、イオン交換水を加えて、樹脂(固形分)の含有量が20.0%であるアクリル樹脂の水溶液(樹脂水溶液A1〜A5)を得た。表1の下段に樹脂の酸価を示す。
表1の上段に示すモノマー(単位:部)を常法により共重合させ、水溶性のアクリル樹脂A1〜A5を合成した。10.0%の水酸化カリウム水溶液を用いて得られたそれぞれの樹脂中のすべての酸性基を中和した後、イオン交換水を加えて、樹脂(固形分)の含有量が20.0%であるアクリル樹脂の水溶液(樹脂水溶液A1〜A5)を得た。表1の下段に樹脂の酸価を示す。
<ウレタン樹脂の合成>
温度計、撹拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、表2に示す使用量(単位:部)のポリオール、ポリイソシアネート、及びジブチル錫ジラウレート0.007部を入れ、窒素ガス雰囲気下、100℃で5時間反応させた。65℃以下に冷却した後、表2に示す使用量のアニオン性基を有するジオール、鎖延長剤、及びメチルエチルケトン150.0部を添加し、80℃で反応させた。40℃に冷却した後、メタノール20.0部を加えて反応を停止させた。適量のイオン交換水を添加した後、ホモミキサーで撹拌しながら、樹脂のアニオン性基を中和するために必要な量の10.0%水酸化カリウム水溶液を添加した。加熱減圧下でメチルエチルケトン及び未反応のメタノールを留去して、樹脂(固形分)の含有量が10.0%であるウレタン樹脂の水溶液(樹脂水溶液U1〜U7)を得た。
温度計、撹拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、表2に示す使用量(単位:部)のポリオール、ポリイソシアネート、及びジブチル錫ジラウレート0.007部を入れ、窒素ガス雰囲気下、100℃で5時間反応させた。65℃以下に冷却した後、表2に示す使用量のアニオン性基を有するジオール、鎖延長剤、及びメチルエチルケトン150.0部を添加し、80℃で反応させた。40℃に冷却した後、メタノール20.0部を加えて反応を停止させた。適量のイオン交換水を添加した後、ホモミキサーで撹拌しながら、樹脂のアニオン性基を中和するために必要な量の10.0%水酸化カリウム水溶液を添加した。加熱減圧下でメチルエチルケトン及び未反応のメタノールを留去して、樹脂(固形分)の含有量が10.0%であるウレタン樹脂の水溶液(樹脂水溶液U1〜U7)を得た。
得られた水溶液に塩酸を滴下して析出したウレタン樹脂を分取し、40℃で一晩真空乾燥させて固形状のウレタン樹脂を得た。得られたウレタン樹脂をテトラヒドロフランに溶解させて得た溶液を、酸価及び重量平均分子量を測定する対象のサンプルとした。ウレタン樹脂の酸価は、電位差自動滴定装置(京都電子工業製)を使用し、水酸化カリウム/エタノール滴定液で電位差滴定することにより測定した。ウレタン樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の値として求めた。測定装置としては、GPC(商品名「Alliance GPC 2695」、Waters製)を用いた。カラムは、商品名「Shodex KF−806M」(昭和電工製)の4連カラムを用いた。検出器としては、RI(屈折率)検出器(商品名「2414Detector」、Waters製)を用いた。標準ポリスチレン試料は、PS−1及びPS−2(Polymer Laboratories製)を用いた。ウレタン樹脂の酸価及び重量平均分子量を表2に示す。
表2中のモノマーの略記号の意味を以下に示す。なお、略記号に付した数値はポリオールの数平均分子量である。
PPG:ポリプロピレングリコール
PTMG:ポリテトラメチレングリコール
PEG:ポリエチレングリコール
IPDI:イソホロンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
DMBA:ジメチロールブタン酸
NPG:ネオペンチルグリコール
14BD:1,4−ブタンジオール
PPG:ポリプロピレングリコール
PTMG:ポリテトラメチレングリコール
PEG:ポリエチレングリコール
IPDI:イソホロンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
DMBA:ジメチロールブタン酸
NPG:ネオペンチルグリコール
14BD:1,4−ブタンジオール
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1〜26)
表3−1及び3−2に示す成分(単位:部)を混合した後、表3−1及び3−2に示す条件で分散させた。次いで、回転数5,000rpmで30分間遠心分離して凝集成分を除去した後、適量のイオン交換水を添加して顔料分散液1〜26を調製した。
(顔料分散液1〜26)
表3−1及び3−2に示す成分(単位:部)を混合した後、表3−1及び3−2に示す条件で分散させた。次いで、回転数5,000rpmで30分間遠心分離して凝集成分を除去した後、適量のイオン交換水を添加して顔料分散液1〜26を調製した。
メディア型分散機(「BM」と表記)を用いた顔料の分散は、ジルコニアビーズの充填率を80%としたメディア型分散機(商品名「ビーズミルLMZ2」、アシザワファインテック製)に混合物を入れ、周速12m/sの条件で処理することにより実施した。メディアレス分散機(「NM」と表記)を用いた顔料の分散は、高圧衝突型分散機(商品名「ナノマイザー」、吉田機械工業製)を使用し、圧力150MPa、50パスの条件で混合物を処理することにより実施した。高圧衝突型分散機を用いた分散は、メディア型分散機を用いて同様の顔料分散液を得るために必要な分散時間の約2倍の時間を要した。調製した顔料分散液中の顔料及び樹脂の含有量(%)、並びに酸化ジルコニウムのジルコニウム換算の含有量(「Zr」と表記(単位:ppm))を表3−2に示す。なお、酸化ジルコニウムのジルコニウム換算の含有量は、調製した顔料分散液をイオン交換水で希釈したものを測定試料とし、誘導結合プラズマ発光分光分析法(商品名「ICP−OES720」、アジレント・テクノロジー製)により測定した。測定は、ジルコニウム標準原液(商品名「ZrO(NO3)2・HNO3(0.1mol/L)溶液」、関東化学製)を用いた検量線法によって行った。
(顔料分散液27)
顔料として固溶体顔料(商品名「CROMOPHTAL Jet 2BC」、BASF製)を使用し、特表2002−538260号公報の「例4」の記載に準じて自己分散型有機顔料を調製した。顔料の含有量が20.0%となるようにイオン交換水を添加して、顔料分散液27を得た。顔料分散液27中の自己分散型有機顔料は、固溶体顔料の粒子表面に−C6H4−COONa基が結合したものである。
顔料として固溶体顔料(商品名「CROMOPHTAL Jet 2BC」、BASF製)を使用し、特表2002−538260号公報の「例4」の記載に準じて自己分散型有機顔料を調製した。顔料の含有量が20.0%となるようにイオン交換水を添加して、顔料分散液27を得た。顔料分散液27中の自己分散型有機顔料は、固溶体顔料の粒子表面に−C6H4−COONa基が結合したものである。
<インクの調製>
表5−1〜5−6の中段に示す各成分(単位:%)のうち、0.6mol/L硫酸及びイオン交換水1%以外の成分を混合した後、表5−1〜5−6の下段に示すpH(25℃)となるように0.6mol/L硫酸を添加した。残りのイオン交換水を添加した後に十分撹拌し、ポアサイズ1.2μmのセルロースアセテートフィルター(商品名「Minisart」、ザルトリウス製)にて加圧ろ過して各インクを調製した。用いたポリエチレングリコールの数平均分子量は1,000であった。一部のインクについては、ジルコニウムの含有量を調整するために2種類の顔料分散液を併用して調製した。表5−1〜5−6の下段には、インクのpH、顔料種、インク中の酸化ジルコニウムのジルコニウム換算の含有量(「Zr」と表記、ppm、測定条件は上記と同様)、並びに(不飽和)脂肪酸の不飽和結合数及び炭素数を示した。使用した成分の詳細を以下に示す。また、使用した脂肪酸の種類を表4に示す。
・アセチレノールE100:ノニオン性のアセチレングリコール系界面活性剤の商品名(川研ファインケミカルズ製)
・プロキセルGXL(S):防腐剤の商品名(アーチケミカルズ製)
表5−1〜5−6の中段に示す各成分(単位:%)のうち、0.6mol/L硫酸及びイオン交換水1%以外の成分を混合した後、表5−1〜5−6の下段に示すpH(25℃)となるように0.6mol/L硫酸を添加した。残りのイオン交換水を添加した後に十分撹拌し、ポアサイズ1.2μmのセルロースアセテートフィルター(商品名「Minisart」、ザルトリウス製)にて加圧ろ過して各インクを調製した。用いたポリエチレングリコールの数平均分子量は1,000であった。一部のインクについては、ジルコニウムの含有量を調整するために2種類の顔料分散液を併用して調製した。表5−1〜5−6の下段には、インクのpH、顔料種、インク中の酸化ジルコニウムのジルコニウム換算の含有量(「Zr」と表記、ppm、測定条件は上記と同様)、並びに(不飽和)脂肪酸の不飽和結合数及び炭素数を示した。使用した成分の詳細を以下に示す。また、使用した脂肪酸の種類を表4に示す。
・アセチレノールE100:ノニオン性のアセチレングリコール系界面活性剤の商品名(川研ファインケミカルズ製)
・プロキセルGXL(S):防腐剤の商品名(アーチケミカルズ製)
また、表5−1〜5−6中の顔料種の略記号の意味を以下に示す。
QA:キナクリドン顔料
PC:フタロシアニン顔料
DPP:ジケトピロロピロール顔料
DO:ジオキサジン顔料
PN:ペリノン顔料
PL:ペリレン顔料
AQ:アントラキノン顔料
CB:カーボンブラック
AZ:アゾ顔料
QA:キナクリドン顔料
PC:フタロシアニン顔料
DPP:ジケトピロロピロール顔料
DO:ジオキサジン顔料
PN:ペリノン顔料
PL:ペリレン顔料
AQ:アントラキノン顔料
CB:カーボンブラック
AZ:アゾ顔料
<評価>
熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS PRO−10」(キヤノン製))を用いて以下に示す評価を行った。上記のインクジェット記録装置では、解像度が600dpi×600dpiで、1/600インチ×1/600インチの単位領域に3.8ngのインクを8滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表6−1及び6−2に示す。
熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS PRO−10」(キヤノン製))を用いて以下に示す評価を行った。上記のインクジェット記録装置では、解像度が600dpi×600dpiで、1/600インチ×1/600インチの単位領域に3.8ngのインクを8滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表6−1及び6−2に示す。
(吐出性)
インクをインクカートリッジに充填し、上記のインクジェット記録装置にセットした。記録ヘッドのノズルのうち一部のみを用いる条件で、記録デューティが100%である20cm×30cmのベタ画像を100枚分記録した。記録時には、記録ヘッドのサブヒータにより記録ヘッド及びインクを表6−1及び6−2に示す「インクの温度」に加温した。次いで、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールド」、キヤノン製)にノズルチェックパターンを記録した。記録したノズルチェックパターンを目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがってインクの吐出性を評価した。
A:ノズルチェックパターンにムラがなかった。
B:ノズルチェックパターンの一部にムラがあった。
C:ノズルチェックパターンの全体にわたってムラがあった。
インクをインクカートリッジに充填し、上記のインクジェット記録装置にセットした。記録ヘッドのノズルのうち一部のみを用いる条件で、記録デューティが100%である20cm×30cmのベタ画像を100枚分記録した。記録時には、記録ヘッドのサブヒータにより記録ヘッド及びインクを表6−1及び6−2に示す「インクの温度」に加温した。次いで、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールド」、キヤノン製)にノズルチェックパターンを記録した。記録したノズルチェックパターンを目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがってインクの吐出性を評価した。
A:ノズルチェックパターンにムラがなかった。
B:ノズルチェックパターンの一部にムラがあった。
C:ノズルチェックパターンの全体にわたってムラがあった。
(光沢性)
インクをインクカートリッジに充填し、上記のインクジェット記録装置にセットした。そして、記録媒体(商品名「インクジェット用紙PT−101」、キヤノン製)に、記録デューティを10〜150%の範囲で変化させた単色画像パターンを8パスにて記録した。記録時には、記録ヘッドのサブヒータにより記録ヘッド及びインクを表6−1及び6−2に示す「インクの温度」に加温した。記録した単色画像パターンのうち、記録デューティが100%である部分に対し、10cm間隔で配置した2本の蛍光灯から光を投影した。なお、照明角度45度、観察角度45度とし、2m離れた距離から画像に対して光を投影した。画像に投影された蛍光灯の形状を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の光沢性を評価した。
A:2本の蛍光灯が画像にはっきり投影されていた。
B:投影された2本の蛍光灯のエッジ部分が若干ぼやけていた。
C:投影された2本の蛍光灯の境目がわからなかった。
インクをインクカートリッジに充填し、上記のインクジェット記録装置にセットした。そして、記録媒体(商品名「インクジェット用紙PT−101」、キヤノン製)に、記録デューティを10〜150%の範囲で変化させた単色画像パターンを8パスにて記録した。記録時には、記録ヘッドのサブヒータにより記録ヘッド及びインクを表6−1及び6−2に示す「インクの温度」に加温した。記録した単色画像パターンのうち、記録デューティが100%である部分に対し、10cm間隔で配置した2本の蛍光灯から光を投影した。なお、照明角度45度、観察角度45度とし、2m離れた距離から画像に対して光を投影した。画像に投影された蛍光灯の形状を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の光沢性を評価した。
A:2本の蛍光灯が画像にはっきり投影されていた。
B:投影された2本の蛍光灯のエッジ部分が若干ぼやけていた。
C:投影された2本の蛍光灯の境目がわからなかった。
Claims (8)
- 熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いる水性インクであって、
酸化ジルコニウム、顔料、前記顔料を分散するためのアクリル系の樹脂分散剤、ウレタン樹脂、及び不飽和脂肪酸を含有し、
前記酸化ジルコニウムのジルコニウム換算の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、0.5ppm以上20.0ppm以下であり、
前記顔料が、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、及びアントラキノン顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記不飽和脂肪酸の不飽和結合数が3以下であり、かつ、炭素数が16以上22以下であることを特徴とする水性インク。 - pHが8.0以上である請求項1に記載の水性インク。
- 前記不飽和脂肪酸の炭素数が、18以下である請求項1又は2に記載の水性インク。
- 前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記不飽和脂肪酸の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上2.0質量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
- インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。 - 熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。 - 40℃以上に加温した前記水性インクを前記記録ヘッドから吐出させる請求項7に記載のインクジェット記録方法。
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| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2016175911A JP2018039931A (ja) | 2016-09-08 | 2016-09-08 | 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 |
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Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2021102691A (ja) * | 2019-12-25 | 2021-07-15 | セイコーエプソン株式会社 | インクジェットインク組成物、インク組成物の製造方法、記録物、及びインクジェット記録方法 |
| JP2021176939A (ja) * | 2020-05-08 | 2021-11-11 | Dic株式会社 | インクジェットインクの脱気方法、インクジェットインクの製造方法およびインクジェットプリンタ |
-
2016
- 2016-09-08 JP JP2016175911A patent/JP2018039931A/ja active Pending
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| JP7347201B2 (ja) | 2019-12-25 | 2023-09-20 | セイコーエプソン株式会社 | インクジェットインク組成物、インク組成物の製造方法、記録物、及びインクジェット記録方法 |
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