以下、本発明の生理用吸収性物品をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1及び図2は、本発明の生理用吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1が示されている。ナプキン1は、図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有すると共に、前方部A、排泄部対向部B及び後方部Cを縦方向Xに有している。排泄部対向部Bは、その横方向Yの中央部に、着用者の排泄部(膣口等)が対向配置される部分であり、前方部Aは、排泄部対向部Bよりも着用者の腹側即ち前側に配される部分であり、後方部Cは、排泄部対向部Bよりも着用者の背側即ち後側に配される部分である。
ナプキン1は、図1に示すように、縦方向に長い形状の吸収性本体6と、吸収性本体6における排泄部対向部Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部6W,6Wとを有している。本発明の吸収性物品における排泄部対向部は、ナプキン1のように吸収性物品がウイング部を有する場合には、該吸収性物品の縦方向(長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域を意味し、ナプキン1を例にとれば、一方のウイング部6Wの縦方向Xに沿う付け根と他方のウイング部6Wの縦方向Xに沿う付け根とに挟まれた領域である。また、ウイング部を有しない吸収性物品における排泄部対向部は、吸収性物品が3つ折りの個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向(幅方向、図中のY方向)に横断する2本の折り曲げ線(図示せず)について、該吸収性物品の縦方向の前端から数えて第1折曲線と第2折曲線とに囲まれた領域を意味する。
吸収性本体6は、肌対向面を形成する表面シート2、非肌対向面を形成する裏面シート3、及び両シート2,3間に介在された吸収体4を具備する。吸収性本体6は、縦方向Xにおいて着用者の腹側から順に、前方部A、排泄部対向部B及び後方部Cの3つの領域に区分される。縦方向Xは、ナプキン1及び吸収性本体6の長手方向に一致し、横方向Yは、ナプキン1及び吸収性本体6の長手方向に直交する幅方向に一致する。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、即ち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。尚、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、即ち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味し、吸収性物品が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
吸収体4は、図2に示すように、液保持性の吸収性コア40と、該吸収性コア40の肌対向面を被覆する親水性のコアラップシート41を含んで構成されている。吸収性コア40は単層構造であり、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状をなしており、従って、吸収性コア40の長手方向は、ナプキン1の縦方向Xと同方向であり、吸収性コア40の幅方向は、ナプキン1の横方向Yと同方向である。コアラップシート41は、吸収性コア40の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続した液透過性シートであり、図2に示すように、吸収性コア40の肌対向面の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の下方に巻き下げられて、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆している。ここでいう「全域を被覆している」には、吸収性コア40の被覆面(肌対向面又は非肌対向面)の全域にわたって配されているコアラップシート41について、1)該コアラップシート41が該被覆面の全面をまんべんなく覆う形態、及び2)該コアラップシート41が破断部を有し、その破断部では該被覆面がコアラップシート41で被覆されていない形態の双方が含まれる。前記2)の形態は、具体的には例えば図2及び図3に示すように、吸収性コア40の肌対向面の全域にわたって配されたコアラップシート41が、吸収性コア40の後述する窪み部42の形成位置において破断部としての貫通孔を有し、その貫通孔では窪み部42がコアラップシート41で被覆されていない形態である。また、後述する図8に示す形態は、前記1)の形態に含まれ得る。
尚、コアラップシートはこのような1枚のシートでなくても良く、例えば、吸収性コア40の肌対向面を被覆する1枚の肌側コアラップシートと、該肌側コアラップシートとは別体で、吸収性コア40の非肌対向面を被覆する1枚の非肌側コアラップシートとを含んで構成されていても良い。吸収性コア40とコアラップシート41との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されている。
吸収性コア40は、親水性繊維、高吸収性ポリマーなどの吸収性材料が積繊されてなる繊維集合体であり、公知の積繊装置を用いて常法に従って製造することができる。吸収性コア40の主体をなす親水性繊維としては、化学繊維に代表される、本来的に疎水性の繊維を親水化処理したものと、木材パルプに代表される、本来的に親水性の繊維とが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
吸収性コア40は、親水性繊維に加えてさらに高吸収性ポリマーを含有する。吸収性コア40に含有される高吸収性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでも良い。粒子状の高吸収性ポリマーを用いる場合、その形状は球状、塊状、俵状又は不定形のいずれでも良い。高吸収性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられる。ポリアクリル酸塩やポリメタクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸又はメタクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合物も用いることができる。
図2に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆し、さらに吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、さらに吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、表面シート2の吸収体4の両側縁からの延出部よりもさらに横方向Yの外方位置にて、後述するサイドシート7と共にサイドフラップ部6Sを形成している。裏面シート3とサイドシート7とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。また、表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の縦方向Xの両端からの延出部において、公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていても良い。表面シート2、裏面シート3としては、生理用ナプキン等の吸収性物品に従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート3としては、透湿性の樹脂フィルム等を用いることができる。
サイドフラップ部6Sは、図1に示すように、排泄部対向部Bにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体6の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部6W,6Wが延設されている。ウイング部6Wは、図1に示す如き平面視において、下底(上底よりも長い辺)が上底よりもナプキン1の横方向Yの内方に位置する略台形形状を有しており、その非肌対向面には、該ウイング部6Wをショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。ウイング部6Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられる。前記ウイング部粘着部は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。
本実施形態においては、吸収性本体6はセカンドシート5を具備している。具体的には図2に示すように、表面シート2と吸収体4との間に液透過性のセカンドシート5が配されている。セカンドシート5は、本技術分野においてサブレイヤーシートなどとも呼ばれる生理用吸収性物品の構成部材であり、表面シート2から吸収体4への液の透過性の向上、吸収体4に吸収された液の表面シート2への液戻りの低減などの役割を担う。セカンドシート5は、表面シート2と共に、「吸収性コア40よりも着用者の肌に近い位置に配された表面層」を構成し、該表面層は、吸収性コア40に近い順にセカンドシート5と表面シート2とを含む。本実施形態においては、セカンドシート5は吸収体4の肌対向面の略全域を被覆している。セカンドシート5としては、親水性不織布や親水性の繊維集合体を用いることができ、不織布としては、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、レジンボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布等が挙げられる。セカンドシート5の坪量は、好ましくは10g/m2、さらに好ましくは15g/m2以上、そして、好ましくは50g/m2以下、さらに好ましくは40g/m2以下である。また、セカンドシート5の厚みは、好ましくは0.1mm以上5mm以下である。
吸収性本体6の肌対向面即ち表面シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート7,7が吸収性本体6の縦方向Xの略全長に亘って配されている。一対のサイドシート7,7は、それぞれ縦方向Xに延びる図示しない接合線にて、接着剤等の公知の接合手段によって表面シート2に接合されている。
吸収性本体6の肌対向面即ち表面シート2の肌対向面には、防漏溝8,9が形成されている。防漏溝8,9は何れも、表面シート2及びセカンドシート5からなる表面層並びに吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥して形成されており、防漏溝8,9の周辺部に比して高密度である。防漏溝8は、図1に示す如き平面視において括れ部を有する閉じた環状をなし、前方部Aの排泄部対向部B寄りの部分から後方部Cの排泄部対向部B寄りの部分にかけて縦方向Xに延びている。防漏溝9は、排泄部対向部Bにおいて防漏溝8の横方向Yの両外方に一対形成されており、図1に示す如き平面視において、横方向Yの外方に向けて凸の弧状をなしている。防漏溝8,9によって、吸収体4の平面方向特に横方向Yの液の拡散が抑制される、吸収体4のヨレが防止される、などの効果が期待できる。防漏溝8,9は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。防漏溝8,9においては、表面シート2、セカンドシート5及び吸収体4が熱融着等により一体化している。
本発明の生理用吸収性物品においては、表面層に、該表面層を厚み方向に貫通する切り込み又は貫通孔が複数形成されていると共に、吸収性コアに、該吸収性コアの肌対向面に開口部を有する窪み部又は貫通孔が複数形成されている。図3には、ナプキン1における表面層即ち表面シート2とセカンドシート5との積層体と、該積層体の近傍に位置する吸収性コア40の肌対向面側とが拡大して示されている。ナプキン1においては、図1〜図3に示すように、縦方向Xの中央部即ち排泄部対向部Bにおいて、表面シート2とセカンドシート5との積層体からなる表面層に、両シート2,5を貫通する表面層貫通孔20が複数形成されていると共に、吸収性コア40に、該吸収性コア40の肌対向面に開口部を有する窪み部42が複数形成されている。窪み部42は、窪み部42の開口部とは反対側に位置する底壁部42Uと、該底壁部42Uの周縁から肌対向面側に向けて起立する側壁部42Sとによって画成された空間部である。
また、本発明の生理用吸収性物品においては、平面視において、表面層の複数の切り込み又は貫通孔のうちの少なくとも一部と、吸収性コアの複数の窪み部又は貫通孔のうちの少なくとも一部とが重なっている。この点、ナプキン1においては、表面シート2とセカンドシート5との積層体における複数の表面層貫通孔20と、吸収性コア40における複数の窪み部42とは、それぞれ1対1で重なっており、図1に示す如きナプキン1の肌対向面の平面視において、窪み部42の底壁部42Uがこれに対応する表面層貫通孔20を介して確認され得る。つまりナプキン1においては、複数の表面層貫通孔20と複数の窪み部42とは、数と配置とで決定されるパターンが一致している。
ナプキン1においては、図1に示すように、複数の表面層貫通孔20はそれぞれ平面視円形状をなし、ナプキン1の肌対向面即ち表面シート2の肌対向面に散点状に形成されている。複数の窪み部42もそれぞれ平面視円形状をなし、吸収性コア40(吸収体4)の肌対向面に散点状に形成されている。表面層貫通孔20及び窪み部42は双方ともに千鳥状のパターンで一致している。
本発明において、表面層における切り込み又は貫通孔と、吸収性コアにおける窪み部又は貫通孔とは、公知のエンボス加工によって形成できる。ナプキン1を例にとると、表面層としての表面シート2及びセカンドシート5と、吸収体4としての吸収性コア40及びコアラップシート41とが積層された状態で、その積層体に対して表面シート2側からピンエンボス加工を施す。ピンエンボス加工とは、ローラーなどからなる加圧体の表面に設けられたピンを使用して行う公知のエンボス加工である。ピンエンボス加工により、表面シート2及びセカンドシート5においては、ピンによって押圧された部分が破断して、表面層貫通孔20又は図示しない切り込みが形成され、吸収性コア40においては、その肌対向面側がピンよって押圧されて非肌対向面側に凹陥して、窪み部42又は図示しない貫通孔が形成される。このように、表面層と吸収性コア(吸収体)とが積層された状態で両者に対して一体的にエンボス加工を施した場合には、表面層における複数の切り込み又は貫通孔と、吸収性コアにおける複数の窪み部又は貫通孔とは、平面視において1対1で重なることになる。
尚、ナプキン1においては、吸収体4の構成部材として、吸収性コア40に加えてこれを被覆するコアラップシート41が配されているところ、コアラップシート41における吸収性コア40の肌対向面を被覆する部分(肌側コアラップシート)は、前記ピンエンボス加工によって通常、表面層を構成するシート2,5と同様に破断され、図3に示すように、表面層貫通孔20と連通する貫通孔が形成される。即ちナプキン1においては、吸収性コア40の肌対向面側の全域にわたってコアラップシート41が配され、窪み部42の開口部では該コアラップシート41が開口している。
但し、本発明においては、肌側コアラップシートは、表面層における切り込み若しくは貫通孔の形成位置、又は吸収性コアにおける窪み部若しくは貫通孔の形成位置において、破断していなくても良く(即ち切り込み及び貫通孔の何れも有していなくても良く)、例えば、前記ピンエンボス加工によって肌側コアラップシートが破断せずに、吸収性コア側に隆起するように変形し、その変形したコアラップシートの隆起部が、吸収性コアにおける窪み部又は貫通孔内に入り込んでいても良い。また図8には、本発明の他の実施形態として、肌側コアラップシートが破断も変形もせずに吸収性コアの肌対向面の開口部を被覆している形態が示されているが、これについては後述する。
前記のように表面層にピンエンボス加工を施した場合には、表面層におけるピンとの接触部分が切断され、ピンが表面層を厚み方向に貫通する必要がある。表面層がピンによって切断されずに変形するだけでは、本発明の生理用吸収性物品が備えるべき、「表面層を厚み方向に貫通する切り込み又は貫通孔」が形成されないからである。この点、表面層がこの種の吸収性物品において表面シートやセカンドシートなどとして通常用いられている材料(典型的には不織布)であれば、公知のピンエンボス加工によってほとんどの場合、その表面層にこれを厚み方向に貫通する切り込み又は貫通孔を形成することが可能である。また例えば、表面層に熱融着部が格子状、散点状などの所定パターンで形成されている場合、そのような表面層は、熱融着部において本来有する伸長性が失われているため、ピンエンボス加工の際に伸びずに切断されやすい傾向がある。また、ピンエンボス加工で使用するピンの先端形状を先鋭にする、ピンの表面層に対する押し込み量を大きくするなどの工夫によって、表面層を切断しやすくすることが可能である。
本発明において、切り込みは、表面層の構成繊維が切断されて形成された細隙(スリット)であって、表面層を厚み方向に貫通しているものである。切り込みは、ピンエンボス加工によっても形成し得るが、一般的には例えば、表面層の肌対向面に刃を押し当て、該刃を所定方向にスライドさせることによって形成する。切り込みは、表面層を厚み方向に貫通する点で貫通孔と共通するが、これを画成する相対向する壁部(切り込みの長手方向に延びる壁部)どうしの間隔が貫通孔のそれに比して短い点で異なる。貫通孔の場合は通常、その壁部で囲まれた空間部を目視で確認できるが、切り込みの場合は通常、その壁部どうしが接触しているか又は接触していないとしても極めて近接しているために、空間部を目視で確認し難い。
また本発明において、表面層には、切り込み及び貫通孔の何れか一方のみが存していても良く、双方が混在していても良い。また、表面層における複数の切り込み又は貫通孔は、平面視における形状及び/又は大きさが互いに同一でも良く、異なっていても良い。以上の表面層についての説明は、吸収性コアにおける窪み部及び貫通孔についても当てはまる。また、表面層又は吸収性コアにおける貫通孔及び窪み部の平面視形状は、図1に示す如き円形に限定されず、例えば、三角形、正方形、長方形などの多角形、星形、楕円形でも良い。
ナプキン1の主たる特徴の1つとして、前述した通り、表面層貫通孔20と吸収性コア40の窪み部42とが重なっていることに加えてさらに、吸収性コア40よりも着用者の肌に近い位置に血球凝集剤10が存在している点が挙げられる。ナプキン1において血球凝集剤10は、図2及び図3に示すように、セカンドシート5の非肌対向面に設けられている。つまり、ナプキン1の排泄部対向部Bにおいては、着用者の肌に近い順に、表面シート2、セカンドシート5、血球凝集剤10、コアラップシート41及び吸収性コア40が順次積層されている。本発明において「血球凝集剤」とは、血液中の赤血球を凝集させることができる剤を意味し、より具体的には、後述する定義に当てはまる化合物が好ましい。
一般に、高吸収性ポリマーによる水分の吸収速度や吸収量は、水分の種類によって異なり、生理食塩水と血液とを比較すると、生理食塩水よりも血液の方が吸収速度が遅く、また吸収量も少ない。この理由は以下の理由による。血液は血漿等の液体成分と赤血球等の非液体成分に大別されるところ、高吸収性ポリマーに吸収される成分は血漿等の液体成分である。図5(a)に示す通り、経血11が高吸収性ポリマー14に接触すると、経血11中の液体成分12のみが高吸収性ポリマー14に吸収され、非液体成分13である赤血球は高吸収性ポリマー14に吸収されない。高吸収性ポリマー14への液体成分12の吸収が進行すると、図5(b)に示す通り、高吸収性ポリマー14に吸収されない非液体成分13が、高吸収性ポリマー14の表面に蓄積して被膜14を形成する。この被膜14の形成に起因して、高吸収性ポリマー14の液吸収阻害が生じ、吸収速度が低下する。また被膜14の形成に起因して、高吸収性ポリマー14の膨潤阻害も生じ、吸収量が低下する。
図5(b)に示す通りの現象が生じることを防止して、吸収性能の低下を阻止するための手段について本発明者が種々検討した結果、経血中の非液体成分の大半を占める成分である赤血球を、図4に示す通り凝集させて凝集塊15を生成させることが効果的であることが判明した。赤血球の凝集塊15を生成させることで、凝集塊15の被膜が生成しづらくなり、又は、凝集塊15によって図5(b)に示す如き被膜14が生成したとしても、その被膜14内に液体成分12が透過できる空間が残存するため、液体成分12の吸収阻害が起こりづらくなる。その結果、高吸収性ポリマー14は、吸収性能を十分に発揮することができる。ここで、吸収性能は、吸収量及び吸収速度を尺度として表される。吸収量は、吸収前の高吸収性ポリマー14の体積と、吸収後の高吸収性ポリマー14の体積との比、つまり後述する体積膨潤倍率として表すことができる。また、吸収速度は、高吸収性ポリマー14の体積膨潤倍率の経時における傾きとして表すことができる。
そして、本発明の生理用吸収性物品において、経血中に赤血球の凝集塊を生成させる役割を果たすのが血球凝集剤である。本発明者の知見によれば、血球凝集剤としてはカチオン性ポリマーが有用であり、その理由は次の通りである。赤血球はその表面に赤血球膜を有する。赤血球膜は、2層構造を有している。この2層構造は、下層である赤血球膜骨格と上層である脂質皮膜からなる。赤血球の表面に露出している脂質皮膜には、グリコホリンと呼ばれるタンパク質が含まれている。グリコホリンはその末端にシアル酸と呼ばれるアニオン電荷を帯びた糖が結合した糖鎖を有している。その結果、赤血球はアニオン電荷を帯びたコロイド粒子として扱うことができる。コロイド粒子の凝集には一般に凝集剤が用いられる。赤血球がアニオン性のコロイド粒子であることを考慮すると、凝集剤としてはカチオン性の物質を用いることが、赤血球の電気二重層を中和する点から有利である。また凝集剤が高分子鎖を有していると、赤血球の表面に吸着した凝集剤の高分子鎖どうしの絡み合いが生じやすくなり、そのことに起因して赤血球の凝集が促進される。さらに、凝集剤が官能基を有している場合には、該官能基間の相互作用によっても赤血球の凝集が促進されるので好ましい。血球凝集剤(カチオン性ポリマー)によれば、以上の作用機序によって経血中に赤血球の凝集塊を生成することが可能になる。
ナプキン1においては、斯かる作用効果を奏する血球凝集剤10は、前述した通り、排泄部対向部Bにおいて、吸収性コア40よりも着用者の肌に近い位置におけるセカンドシート5の非肌対向面に設けられており、高吸収性ポリマーを含む吸収性コア40には設けられていない。斯かる構成のナプキン1の着用中において、着用者の排泄部から排泄部対向部Bに排泄された経血は、表面シート2及びセカンドシート5を順次透過して、セカンドシート5の非肌対向面に設けられている血球凝集剤10と接触し、これにより、赤血球と血漿とに分離される。そして、高吸収性ポリマーに吸収され難い赤血球は、凝集塊を形成してセカンドシート5の非肌対向面(セカンドシート5と肌側コアラップシート41との間)及びその近傍に残留し、高吸収性ポリマーに吸収されやすい血漿は、吸収性コア40全体にわたって面方向に拡散しつつ、少なくともその一部は窪み部42内に流入し、窪み部42の側壁部42S及び底壁部42Uから吸収性コア40の内部に吸収され、最終的に吸収性コア40に含まれている図示しない高吸収性ポリマーに吸収保持される。このように、ナプキン1は、吸収性コア40より着用者の肌に近い位置で血球凝集剤10によって経血を赤血球と血漿とに分離し、その分離された血漿だけを優先的に窪み部42を介して吸収性コア40の内部に引き込んで高吸収性ポリマーに吸収保持させるようになされているため、吸収性コア40は赤血球による吸収阻害を受けずに経血を素早く吸収することができ、これにより、着用者の肌と接する部分のべたつき感が大幅に低減し得る。仮に、吸収性コア40の肌対向面に直接血球凝集剤10を付与した場合には、血球凝集剤10の作用によって経血から分離された赤血球の凝集塊に影響により、吸収性コア40に含まれる高吸収性ポリマーによる液吸収が阻害されるおそれがある。
ナプキン1によれば、着用者の液排泄部に対応する部位及びその周辺部に経血などの排泄液が滞留し難く、排泄液の量が比較的多い場合であってもこれを素早く吸収することができ、また、吸収性コア40に一旦吸収された排泄液が表面シート2側に戻るいわゆる液戻りや、排泄液が吸収されずに表面シート2に残るいわゆる液残りが効果的に防止される。また、血漿などの経血中の液体成分が吸収性コア40に効率良く吸収されるため、該液体成分の蒸散やそれに起因するムレ、肌カブレ等の不都合の発生が効果的に防止される。
前述した血球凝集剤10による作用効果をより効果的に活用する観点から、ナプキン1における各部の寸法等は次のように設定することが好ましい。
表面層貫通孔20の平面視における直径R1(図3参照)は、好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは6.0mm以下、さらに好ましくは4.0mm以下である。ここでいう「平面視における直径」は、表面層貫通孔20の平面視形状が円形ではない場合は、平面視における表面層貫通孔20に内接する仮想円の直径を意味する。また、厚み方向で表面貫通孔20の平面積が一定ではなく部分的に異なる場合には、表面貫通孔20の、表面層の肌対向面側の最表面位置での平面形状における直径を「平面視における直径」とする。
隣り合う表面層貫通孔20,20どうしの間隔は、好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは8mm以下である。
排泄部対向部Bにおける平面視70mm四方の正方形形状の領域中に存する表面層貫通孔20の数は、好ましくは25個以上、さらに好ましくは36個以上、そして、好ましくは1225個以下、さらに好ましくは530個以下である。
窪み部42の平面視における直径R2(図3参照)は、好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは6.0mm以下、さらに好ましくは4.0mm以下である。ここでいう「平面視における直径」は、窪み部42の平面視形状が円形ではない場合は、平面視における窪み部42に内接する仮想円の直径を意味する。また、厚み方向で窪み部42の平面積が一定ではなく部分的に異なる場合には、窪み部42の、吸収性コア40の肌対向面側の最表面位置での平面形状における直径を「平面視における直径」とする。
窪み部42の深さD(図3参照)は、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上、そして、好ましくは12mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
隣り合う窪み部42,42どうしの間隔は、好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは8mm以下である。
排泄部対向部Bにおける平面視70mm四方の正方形形状の領域中に存する窪み部42の数は、好ましくは25個以上、さらに好ましくは36個以上、そして、好ましくは1225個以下、さらに好ましくは530個以下である。
また、表面層における全ての表面層貫通孔20のうち、平面視において吸収性コア40の窪み部42と重なるものの割合は、少なくとも5%以上、特に10%以上が好ましい。ここでいう「窪み部42と重なる」には、図1〜図3に示す如く、1個の表面層貫通孔20の全体が窪み部42と重なる場合のみならず、1個の表面層貫通孔20の一部のみが窪み部42と重なる場合も含む。ナプキン1においては、斯かる割合は100%である。
尚、吸収性コア40において、窪み部42に代えて貫通孔を形成する場合のその貫通孔については、窪み部42と同様に設計可能である。
血球凝集剤10の単位面積当たりの量は、好ましくは0.5g/m2以上、さらに好ましくは1.0g/m2以上、そして、好ましくは12g/m2以下、さらに好ましくは10g/m2以下である。
吸収性コア40における高吸収性ポリマーの単位面積当たりの量は、好ましくは5g/m2以上、さらに好ましくは10g/m2以上、そして、好ましくは100g/m2以下、さらに好ましくは80g/m2以下である。
以下、本発明の他の実施形態について図6〜図9を参照して説明する。後述する他の実施形態については、前述したナプキン1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、ナプキン1についての説明が適宜適用される。
図6に示すナプキン1Aにおいては、排泄部対向部Bにおいて、表面層における表面層貫通孔20を画成する部分である破断部21が、吸収性コア40の窪み部42の開口部からその内部に向けて延出している。ナプキン1Aは、表面層としての表面シート2及びセカンドシート5と、吸収体4としての吸収性コア40及びコアラップシート41とが積層された状態で、その積層体に対して表面シート2側からピンエンボス加工を施して、表面層に表面層貫通孔20を形成すると共に、吸収性コア40に窪み部42を形成する工程を経て製造されたものであるところ、破断部21は、そのピンエンボス加工で表面層が破断され吸収性コア40側に押し込まれて形成された部分であり、表面層の周辺部に比して非肌対向面側に突出している。破断部21は、窪み部42の側壁部42Sにおける、窪み部42の開口部寄りの部分をその周方向の全長にわたって被覆している。また、このピンエンボス加工によってコアラップシート41にも表面層の破断部21と同様の破断部43が形成されており、破断部21と共に窪み部42の開口部からその内部に向けて延出している。即ちナプキン1Aにおいては、吸収性コア40の肌対向面側の全域にわたってコアラップシート41が配され、窪み部42の開口部では該コアラップシート41が該開口部内に入り込んでいる。また、血球凝集剤10はセカンドシート5の非肌対向面の全域に設けられているので、窪み部42の内部に延出している破断部21を構成するセカンドシート5の非肌対向面にも血球凝集剤10が存しており、従って窪み部42の内部、具体的には側壁部42Sにおける窪み部42の開口部寄りの部分に血球凝集剤10が存在している。尚、ナプキン1Aの窪み部42の直径(図3のR2に相当する長さ)は、窪み部42の平面積が厚み方向で一定ではない場合、吸収性コア40の開口部分における側壁部42S間の距離となる。
図7には、表面層及び吸収性コアの他の実施形態が示されている。図7(a)に示すナプキン1Bは、セカンドシート5を具備しておらず、表面層が表面シート2のみからなり、その表面シート2の非肌対向面に血球凝集剤10が設けられている点以外は、図3に示すナプキン1と同じである。ナプキン1Bにおいては、非肌対向面に血球凝集剤10が設けられた表面層が窪み部42の内部に延出しておらず、窪み部42の内部に血球凝集剤10は存していない。
図7(b)に示すナプキン1Cは、セカンドシート5を具備しておらず、表面層が表面シート2のみからななり、その表面シート2の非肌対向面に血球凝集剤10が設けられている点以外は、図6に示すナプキン1Aと同じである。
図7(c)に示すナプキン1Dは、窪み部42の底壁部42U上に、表面層としての表面シート2から切り離された切離部22が存在している点以外は、図7(b)に示すナプキン1Cと同じである。この表面層の切離部22は、表面層貫通孔20を形成するためのピンエンボス加工において表面層から完全に切り離され、底壁部42U上に落下したものである。また、このピンエンボス加工によってコアラップシート41由来の切離部44が形成されており、切離部44は切離部22の非肌対向面側に位置し、両切離部22,44の間に血球凝集剤10が存在している。つまり、ナプキン1Dにおいては、窪み部42の側壁部42Sにおける、窪み部42の開口部寄りの部分と、底壁部42Uとに、血球凝集剤10が存在している。
図7(d)に示すナプキン1Eは、破断部21,43が窪み部42の開口部の周方向の全長にわたって連続してない点以外は、図7(b)に示すナプキン1Cと同じである。
図8に示すナプキン1Fは、吸収性コア40Aの肌対向面を被覆する親水性のコアラップシート41が破断しておらず(切り込み及び貫通孔を有しておらず)、窪み部42の開口部がコアラップシート41で被覆されている点以外は、図7(a)に示すナプキン1Bと同じである。このような、破断していないコアラップシート41を具備するナプキン1Fは、前述した、表面層と吸収体との積層体に対してピンエンボス加工を施す方法とは別の方法で製造することができる。即ち、窪み部42を有する吸収性コア40Aを製造し、その製造した吸収性コア40Aの肌対向面を含む外面をコアラップシート41で被覆して吸収体を得、該吸収体の肌対向面に、別途製造した、表面層貫通孔20を有する表面シート2を重ね合わせることによって、ナプキン1Fを製造することができる。
ナプキン1Fにおける吸収性コア40Aは、窪み部の無い平坦な吸収性コアを別途製造し、該吸収性コアの肌対向面にエンボス加工を施して窪み部42を形成することによって製造することもできるが、親水性繊維などのコア形成材料を積繊して吸収性コアを製造する際に、窪み部の形成予定部分の積繊量を意図的に低減することによっても製造することができる。具体的には例えば、空気流に乗せて供給したコア形成材料を、積繊装置(回転ドラム等)の外面に形成された集積用凹部の底部に吸引堆積させて吸収性コアを得る工程において、該底部における窪み部に対応する部分の開孔率を周辺部に比して低く調整しておくことで、その開孔率の低い部分におけるコア形成材料の積繊量は周辺部に比して少なくなるため、該部分に窪み部が形成される。窪み部の無い平坦な吸収性コアにエンボス加工を施して形成された窪み部42は、その底壁部42Uが圧密化されていて周辺部に比して高密度であるのに対し、前記のようにコア形成材料の積繊量を周辺部に比して低減して形成された窪み部42は、その形成過程でコア形成材料が圧密化されていないため、その周辺部との比較において密度に実質的な差は無いという特徴を有する。
図9には、ナプキン1Fにおける吸収性コア40Aの肌対向面側が示されている。吸収性コア40Aの肌対向面の排泄部対向部Bには、複数本の線状の窪み部42が縦方向Xに延びていると共に、複数本の線状の窪み部42が横方向Yにも延びており、このように互いに直交する複数本の線状の窪み部42によって、吸収性コア40Aの排泄部対向部Bに位置する部分が複数の小領域45に区画化されている。この小領域45は、窪み部42の形成位置(底壁部42U)に比してコア形成材料の積繊量が多い高坪量部45である。このように、吸収性コア40Aの排泄部対向部Bに位置する部分は、高坪量部45と該高坪量部45をその全周にわたって包囲する線状の窪み部42(低坪量部)とからなるブロック領域を多数有する、ブロック構造を有しており、各ブロック領域は個々に独立している。
以下、本発明で用いる血球凝集剤について説明する。本発明で用いる血球凝集剤とは、血液中の赤血球を凝集させ、血球が凝集した凝集塊と血漿成分とが分離されるよう作用するものである。
好ましい血球凝集剤としては、例えば以下の性質を有するものが挙げられる。
即ち、疑似血液に、測定サンプル剤を1000ppm添加した際に、血液の流動性が維持された状態で、少なくとも2個以上の血球が凝集して凝集塊を形成するとき、この測定サンプル剤が好ましい血球凝集剤である。
前記擬似血液は、B型粘度計(東機産業株式会社製 型番TVB−10M、測定条件:ローターNo.19、30rpm、25℃、60秒間)を用いて測定した粘度が8mPa・sになるように、脱繊維馬血(日本バイオテスト(株)製)の血球・血漿比率を調製したものである。
ここで、「血液の流動性が維持された状態」とは、測定サンプル剤が1000ppm添加された前記疑似血液10gをスクリュー管瓶(マルエム社製 品番「スクリュー管No.4」,口内径14.5mm,胴径27mm,全長55mm)に入れ、該疑似血液を入れたスクリュー管瓶を180度反転した際に、20秒以内で60%以上の体積の該疑似経血が流れ落ちる状態を意味する。
また、「2個以上の血球が凝集して凝集塊を形成」しているか否かは、次のようにして判断される。即ち、測定サンプル剤が1000ppm添加された前記疑似血液を、生理食塩水で4000倍に希釈し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製 型番:LA−950V2,測定条件:フロー式セル測定,循環速度1,超音波なし)を用いたレーザー回折散乱法によって、温度25℃にて測定した体積粒径平均のメジアン径が、2個以上の血球が凝集した凝集塊のサイズに相当する10μm以上である場合に、「2個以上の血球が凝集して凝集塊を形成」を形成していると判断する。
本発明で用いる血球凝集剤は、前記定義に当てはまる化合物又はその組み合わせ、さらには化合物の組み合わせによって前記定義を満たす(赤血球の凝集を発現し得る)剤である。つまり、血球凝集剤とは、あくまで前記定義によるところの血球凝集作用があるものに限定した剤のことである。従って、血球凝集剤に、前記定義に当てはまらない第三成分を含む場合には、それを血球凝集剤組成物と表現し、血球凝集剤と区別する。特に、前述した好ましい血球凝集剤の定義に当てはまる化合物又はその組み合わせが好ましい。
前記定義に当てはまる好ましい血球凝集剤に適合する化合物としては、カチオン性ポリマーが好適である。カチオン性ポリマーとしては、例えばカチオン化セルロースや、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン等のカチオン化デンプンなどが挙げられる。また、本発明で用いる血球凝集剤は、カチオン性ポリマーとして、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物又は第4級アンモニウム塩重縮合物を含むこともできる。本発明において「第4級アンモニウム塩」とは、窒素原子の位置にプラス一価の電荷を有している化合物、又は中和によって窒素原子の位置にプラス一価の電荷を生じさせる化合物を包含し、その具体例としては、第4級アンモニウムカチオンの塩、第3級アミンの中和塩、及び水溶液中でカチオンを帯びる第3級アミンが挙げられる。以下に述べる「第4級アンモニウム部位」も同様の意味で用いられ、水中で正に帯電する部位である。また、本発明において「共重合物」とは、2種以上の重合性単量体の共重合によって得られた重合物のことであり、二元系共重合物及び三元系以上の共重合物の双方を包含する。本発明において「重縮合物」とは、2種以上の単量体からなる縮合物を重合することで得られた重縮合物である。
本発明で用いる血球凝集剤が、カチオン性ポリマーとして、第4級アンモニウム塩ホモポリマー及び/又は第4級アンモニウム塩共重合物及び/又は第4級アンモニウム塩重縮合物を含む場合、該血球凝集剤は、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物及び第4級アンモニウム塩重縮合物のうちのいずれか1種を含んでいても良く、あるいは任意の2種以上の組み合わせを含んでいても良い。また第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。同様に、第4級アンモニウム塩共重合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに同様に、第4級アンモニウム塩重縮合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前述した各種のカチオン性ポリマーのうち、特に、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物又は第4級アンモニウム塩重縮合物を用いることが、赤血球への吸着性の点から好ましい。以下の説明においては、簡便のため、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物及び第4級アンモニウム塩重縮合物を総称して「第4級アンモニウム塩ポリマー」と言う。
第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を1種用い、これを重合することで得られたものである。一方、第4級アンモニウム塩共重合物は、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を少なくとも1種用い、必要に応じ第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体を少なくとも1種用い、これらを共重合することで得られたものである。即ち第4級アンモニウム塩共重合物は、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を2種以上用い、これらを共重合させて得られたものであるか、又は第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を1種以上と、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体を1種以上用い、これらを共重合させて得られたものである。第4級アンモニウム塩共重合物は、ランダム共重合物でも良く、交互共重合物でも良く、ブロック共重合物でも良く、あるいはグラフト共重合物でも良い。第4級アンモニウム塩重縮合物は、第4級アンモニウム部位を有する単量体1種以上からなる縮合物を用い、それら縮合物を重合することで得られたものである。即ち第4級アンモニウム塩重縮合物は、第4級アンモニウム部位を有する単量体2種以上の縮合物を用い、これを重合させて得られたものであるか、又は、第4級アンモニウム部位を有する単量体1種以上と、第4級アンモニウム部位を有さない単量体1種以上からなる縮合物を用い、これを縮重合させて得られたものである。
第4級アンモニウム塩ポリマーは、第4級アンモニウム部位を有するカチオン性のポリマーである。第4級アンモニウム部位は、アルキル化剤を用いた第3級アミンの第4級アンモニウム化によって生成させることができる。あるいは第3級アミンを酸若しくは水に溶解させ、中和で生じさせることができる。あるいは縮合反応を含む求核反応による第4級アンモニウム化によって生成させることができる。アルキル化剤としては、例えばハロゲン化アルキルや、硫酸ジメチル及び硫酸ジメチルなどの硫酸ジアルキルが挙げられる。これらのアルキル化剤のうち、硫酸ジアルキルを用いると、ハロゲン化アルキルを用いた場合に起こり得る腐食の問題が生じないので好ましい。酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、リン酸、フルオロスルホン酸、ホウ酸、クロム酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、グルコン酸、ギ酸、アスコルビン酸、ヒアルロン酸などが挙げられる。特に、アルキル化剤によって第3級アミン部位を第4級アンモニウム化した第4級アンモニウム塩ポリマーを用いると、赤血球の電気二重層を確実に中和できるので好ましい。縮合反応を含む求核反応による第4級アンモニウム化は、ジメチルアミンとエピクロルヒドリンの開環重縮合反応、ジシアンジアミドとジエチレントリアミンの環化反応のようにして生じさせることができる。
赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から、カチオン性ポリマーは、その分子量が2000以上であることが好ましく、1万以上であることがさらに好ましく、3万以上であることが一層好ましい。カチオン性ポリマーの分子量がこれらの値以上であることによって、赤血球間でのカチオン性ポリマーどうしの絡み合いや、赤血球間でのカチオン性ポリマーの架橋が十分に生じる。分子量の上限値は1000万以下であることが好ましく、500万以下であることがさらに好ましく、300万以下であることが一層好ましい。カチオン性ポリマーの分子量がこれらの値以下であることによって、カチオン性ポリマーが経血中へ良好に溶解する。カチオン性ポリマーの分子量は、2000以上1000万以下であることが好ましく、2000以上500万以下であることがさらに好ましく、2000以上300万以下であることが一層好ましく、1万以上300万以下であることがさらに一層好ましく、3万以上300万以下であることが特に好ましい。本発明に言う分子量とは、重量平均分子量のことである。また、前述の分子量範囲内で、異なる分子量のカチオン性ポリマーを2種以上組み合わせても良い。カチオン性ポリマーの分子量は、その重合条件を適切に選択することで制御することができる。カチオン性ポリマーの分子量は、東ソー株式会社製のHLC−8320GPCを用いて測定することができる。具体的な測定条件は次の通りである。
カラムとしては、東ソー株式会社製のガードカラムαと分析カラムα−Mを直列でつないだものを、カラム温度:40℃で用いる。検出器は、RI(屈折率)を用いる。測定サンプルとしては、溶離液1mLに対して1mgの測定対象の処理剤(第4級アンモニウム塩ポリマー)を溶解させる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体は、水に150mmol/Lの硫酸ナトリウムと1質量%の酢酸を溶解させた溶離液を用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体は、溶離液10mLに対して、分子量5900のプルラン、分子量47300のプルラン、分子量21.2万のプルラン、分子量78.8万のプルラン、各2.5mg溶解させたプルラン混合物を、分子量標準として用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体は流速:1.0mL/min、注入量:100μLで測定する。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体以外は、エタノール:水=3:7(体積比)に50mmol/Lの臭化リチウムと1質量%の酢酸を溶解させた溶離液を用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体以外は、溶離液20mLに対して、分子量106のポリエチレングリコール(PEG)、分子量400のPEG、分子量1470のPEG、分子量6450のPEG、分子量5万のポリエチレンオキシド(PEO)、分子量23.5万のPEO、分子量87.5万のPEO、各10mg溶解させたPEG−PEO混合物を、分子量標準として用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体以外は流速:0.6mL/min、注入量:100μLで測定する。
赤血球の凝集塊を一層効果的に生成させる観点から、カチオン性ポリマーとして第4級アンモニウム塩ポリマーを用いる場合、該第4級アンモニウム塩ポリマーは、その流動電位が1500μeq/L以上であることが好ましく、2000μeq/L以上であることがさらに好ましく、3000μeq/L以上であることが一層好ましく、4000μeq/L以上であることがさらに一層好ましい。第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位がこれらの値以上であることによって、赤血球の電気二重層を十分に中和することができる。流動電位の上限値は13000μeq/L以下であることが好ましく、8000μeq/L以下であることがさらに好ましく、6000μeq/L以下であることが一層好ましい。第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位がこれらの値以下であることによって、赤血球に吸着した第4級アンモニウム塩ポリマーどうしの電気的反発を効果的に防止することができる。第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位は、1500μeq/L以上13000μeq/L以下であることが好ましく、2000μeq/L以上13000μeq/L以下であることがさらに好ましく、3000μeq/L以上8000μeq/L以下であることが一層好ましく、4000μeq/L以上6000μeq/L以下であることがさらに一層好ましい。
第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位は、例えば構成しているカチオン性モノマー自体の分子量、共重合体を構成しているカチオン性モノマーとアニオン性モノマー又はノニオン性モノマーの共重合モル比を調整することで制御することができる。第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位は、スペクトリス株式会社製の流動電位測定器(PCD04)を用いて測定することができる。具体的な測定条件は次の通りである。まず市販のナプキンに対して、ドライヤーなどを用いて各部材を接着しているホットメルトを無効化し、表面シート、吸収体、裏面シートなどの部材に分解する。分解した各部材に対して、非極性溶媒から極性溶媒までの多段階溶媒抽出法を行い、各部材に用いられている処理剤を分離し、単一の組成物を含んだ溶液を得る。得られた溶液を乾燥・固化させ、1H−NMR(核磁気共鳴法)、IR(赤外分光法)、LC(液体クロマトグラフィ)、GC(ガスクロマトグラフィ)、MS(質量分析法)、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)、蛍光X線などを複合して、処理剤の構造を同定する。測定対象の処理剤(第4級アンモニウム塩ポリマー)0.001gを生理食塩水10gに溶解させた測定サンプルに対して、0.001Nのポリエチレンスルホン酸ナトリウム水溶液(測定サンプルが負電荷を有する場合は、0.001Nのポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液)を滴定し、電極間の電位差がなくなるまでに要した滴定量XmLを測定する。その後、下記式1により第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位を算出する。
流動電位 = (X+0.190※)×1000 ・・・ 式1
(※ 溶媒の生理食塩水に要した滴定量)
カチオン性ポリマーが、赤血球の表面に首尾よく吸着するためには、該カチオン性ポリマーが、赤血球の表面に存在しているシアル酸と相互作用しやすいことが有利である。この観点から本発明者が検討を推し進めたところ、物質の無機性値と有機性値との比率である無機性値/有機性値の値(以下「IOB(Inorganic Organic Balance)値」という。)を尺度として、シアル酸結合物とカチオン性ポリマーとの相互作用の程度を評価できることが判明した。詳細には、カチオン性ポリマーとして、シアル酸結合物のIOB値と同じか、それに近似した値のIOB値を有するものを用いることが有利であることが判明した。シアル酸結合物とは、生体内でシアル酸が存在し得る形態となっている化合物のことであり、例えばガラクト脂質などの糖脂質の末端にシアル酸が結合している化合物などが挙げられる。
一般に、物質の性状は、分子間の各種分子間力に大きく支配され、この分子間力は主に分子質量によるVan Der Waals力と、分子の極性による電気的親和力からなっている。物質の性質の変化に対して大きな影響を与えるVan Der Waals力と、電気的親和力のそれぞれを個別に把握することができれば、その組み合わせから未知の物質、あるいはそれらの混合物についてもその性状を予測することができる。この考え方は、「有機概念図論」として良く知られている理論である。有機概念図論は、例えば藤田穆著の「有機分析」(カニヤ書店、昭和5年)、藤田穆著の「有機定性分析:系統的.純粋物編」(共立出版、1953年)、藤田穆著の「改編 化学実験学−有機化学編」(河出書房、1971年)、藤田穆・赤塚政実著の「系統的有機定性分析(混合物編)」(風間書房、1974年)、及び甲田善生・佐藤四郎・本間善夫著の「新版 有機概念図 基礎と応用」(三共出版、2008年)等に詳述されている。有機概念図論では、物質の物理化学的物性について、主にVan Der Waals力による物性の程度を「有機性」と呼び、また主に電気的親和力による物性の程度を「無機性」と呼び、物質の物性を「有機性」と「無機性」の組み合わせでとらえている。そして、炭素(C)1個を有機性20と定義し、それに対して各種極性基の無機性及び有機性の値を、以下の表1に記載のとおり定め、無機性値の和と有機性値の和を求め、両者の比をIOB値と定義している。本発明においては、これらの有機性値及び無機性値に基づき、上述したシアル酸結合物のIOB値を決定し、その値に基づきカチオン性ポリマーのIOB値を決定する。
具体的には、カチオン性ポリマーがホモポリマーである場合、該ホモポリマーの繰り返し単位に基づき無機性値及び有機性値を決定し、IOB値を算出する。例えば後述する実施例1で用いているカチオン性ポリマーであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(日本ルーブリゾール社製の商品名「マーコート106」)の場合、−C−×8=160の有機性値と、Ammo and NH4 salt×1=400の無機性値と、Ring(non-aromatic single ring)×1=10の無機性値と、−Cl×1=40の有機性値及び10の無機性値とを有することから、無機性値の合計は400+10+10=420となり、有機性値の合計は160+40=200となる。したがってIOB値は420/200=2.10となる。
一方、カチオン性ポリマーが共重合物である場合には、共重合に用いられるモノマーのモル比に応じて以下の手順でIOB値を算出する。すなわち、共重合物がモノマーAとモノマーBとから得られ、モノマーAの有機性値がORAで、無機性値がINAであり、モノマーBの有機性値がORBで、無機性値がINBであり、モノマーA/モノマーBのモル比がMA/MBである場合、共重合物のIOB値は以下の式から算出される。
このようにして決定されたカチオン性ポリマーのIOB値は、0.6以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましく、2.1以上であることがさらに好ましく、2.2以上であることが一層好ましい。また、カチオン性ポリマーのIOB値は、4.6以下であることが好ましく、3.6以下であることがさらに好ましく、3.0以下であることが一層好ましい。具体的には、カチオン性ポリマーのIOB値は、0.6以上4.6以下であることが好ましく、1.8以上3.6以下であることがより好ましく、2.1以上3.6以下であることがさらに好ましく、2.2以上3.0以下であることが一層好ましい。なお、シアル酸のIOB値は、シアル酸単体で4.25であり、シアル酸結合体で3.89である。前記シアル酸結合物とは、糖脂質における糖鎖とシアル酸が結合したものであり、シアル酸結合体は、シアル酸単体よりも有機性値の割合が高くなり、IOB値は低くなる。
カチオン性ポリマーのIOB値は前述の通りであるところ、有機性値そのものは40以上であることが好ましく、100以上であることがさらに好ましく、130以上であることが一層好ましい。また、310以下であることが好ましく、250以下であることがより好ましく、240以下であることがさらに好ましく、190以下であることが一層好ましい。例えば有機性値は、40以上310以下であることが好ましく、40以上250以下であることがより好ましく、100以上240以下であることがさらに好ましく、130以上190以下であることが一層好ましい。カチオン性ポリマーの有機性値をこの範囲に設定することで、該カチオン性ポリマーが赤血球に一層首尾よく吸着するようになる。
一方、カチオン性ポリマーの無機性値に関しては、70以上であることが好ましく、90以上であることがさらに好ましく、100以上であることが一層好ましく、120以上であることがさらに一層好ましく、250以上であることが特に好ましい。また、790以下であることが好ましく、750以下であることがさらに好ましく、700以下であることが一層好ましく、680以下であることがさらに一層好ましく、490以下であることが特に好ましい。例えば無機性値は、70以上790以下であることが好ましく、90以上750以下であることがさらに好ましく、90以上680以下であることが一層好ましく、120以上680以下であることがさらに一層好ましく、250以上490以下であることが特に好ましい。カチオン性ポリマーの無機性値をこの範囲に設定することで、該カチオン性ポリマーが赤血球に一層首尾よく吸着するようになる。
カチオン性ポリマーを赤血球にさらに一層首尾よく吸着させる観点から、該カチオン性ポリマーの有機性値をxとし、無機性値をyとしたとき、xとyが以下の式Aを満たすことが好ましい。
y=ax (A)
前記式A中、aは0.66以上であることが好ましく、0.93以上であることがさらに好ましく、1.96以上であることが一層好ましい。また、aは、4.56以下あることが好ましく、4.19以下であることがさらに好ましく、3.5以下であることが一層好ましい。例えばaは、0.66以上4.56以下の数であることが好ましく、0.93以上4.19以下の数であることがさらに好ましく、1.96以上3.5以下の数であることが一層好ましい。特に、カチオン性ポリマーの有機性値及び無機性値が前述の範囲内であることを条件として、該カチオン性ポリマーの有機性値及び無機性値が前記式Aを満たす場合には、該カチオン性ポリマーがシアル酸結合体と相互作用しやすくなり、該カチオン性ポリマーが赤血球にさらに一層吸着しやすくなる。
赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から、カチオン性ポリマーは水溶性であることが好ましい。本発明において「水溶性」とは、100mLのガラスビーカー(5mmΦ)に0.05gの1mm以下の粉末状又は厚み0.5mm以下のフィルム状カチオン性ポリマーを25℃の50mLイオン交換水に添加混合したときに、長さ20mm、幅7mmのスターラーチップを入れ、アズワン株式会社製マグネチックスターラーHPS−100を用いて600rpm攪拌下、その全量が24時間以内に水に溶解する性質のことである。尚、本発明において、さらに好ましい溶解性としては、全量が3時間以内に水に溶解することが好ましく、全量が30分以内に水に溶解することがさらに好ましい。
カチオン性ポリマーは、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものであることが好ましい。特に第4級アンモニウム塩ポリマーは、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものであることが好ましい。第4級アンモニウム部位は側鎖に存在していることが好ましい。この場合、主鎖と側鎖とが1点で結合していると、側鎖の可撓性が阻害されにくくなり、側鎖に存在している第4級アンモニウム部位が赤血球の表面に円滑に吸着するようになる。尤も本発明において、カチオン性ポリマーの主鎖と側鎖とが2点又はそれ以上で結合していることは妨げられない。本発明において「1点で結合している」とは、主鎖を構成する炭素原子のうちの1個が、側鎖の末端に位置する1個の炭素原子と単結合していることをいう。「2点以上で結合している」とは、主鎖を構成する炭素原子のうちの2個以上が、側鎖の末端に位置する2個以上の炭素原子とそれぞれ単結合していることをいう。
カチオン性ポリマーが、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものである場合、例えば第4級アンモニウム塩ポリマーが、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものである場合、各側鎖の炭素数は4以上であることが好ましく、5以上であることがさらに好ましく、6以上であることが一層好ましい。炭素数の上限値は、10以下であることが好ましく、9以下であることがさらに好ましく、8以下であることが一層好ましい。例えば側鎖の炭素数は4以上10以下であることが好ましく、5以上9以下であることがさらに好ましく、6以上8以下であることが一層好ましい。側鎖の炭素数とは、該側鎖における第4級アンモニウム部位(カチオン部位)の炭素数のことであり、対イオンであるアニオン中に炭素が含まれているとしても、その炭素は計数に含まない。特に、側鎖の炭素原子のうち、主鎖に結合している炭素原子から、第4級窒素に結合している炭素原子までの炭素数が前述の範囲であることが、第4級アンモニウム塩ポリマーが赤血球の表面の表面に吸着するときの立体障害性が低くなるので好ましい。
第4級アンモニウム塩ポリマーが、第4級アンモニウム塩ホモポリマーである場合、該ホモポリマーとしては、例えば第4級アンモニウム部位又は第3級アミン部位を有するビニル系単量体の重合物が挙げられる。第3級アミン部位を有するビニル系単量体を重合する場合には、重合前に及び/又は重合後に、第3級アミン部位をアルキル化剤によって第4級アンモニウム化した第4級アンモニウム塩ホモポリマーとなるか、重合前に及び/又は重合後に、第3級アミン部位を酸によって中和した第3級アミン中和塩となるか、重合後に水溶液中でカチオンを帯びる第3級アミンとなる。アルキル化剤や酸の例は、前述した通りである。
特に第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、以下の式1で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
第4級アンモニウム塩ホモポリマーの具体例としては、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。また、第4級アンモニウム部位を有する側鎖が、主鎖と1点で結合しているものであるポリ(2−メタクリルオキシエチルジメチルアミン4級塩)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムメチル硫酸塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルジメチルアミン4級塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルトリメチルアミン4級塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩)、ポリ(3−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド4級塩)、ポリメタクル酸ジメチルアミノエチル、ポリアリルアミン塩酸塩、カチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ポリアミジンなどが挙げられる。一方、第4級アンモニウム部位を有する側鎖が、主鎖と2点以上で結合しているホモポリマーの例としては、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルアミン塩酸塩が挙げられる。
第4級アンモニウム塩ポリマーが、第4級アンモニウム塩共重合物である場合には、該共重合物として、前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマーの重合に用いられる重合性単量体を2種以上用い共重合して得られた共重合物を用いることができる。あるいは、第4級アンモニウム塩共重合物として、前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマーの重合に用いられる重合性単量体を1種以上と、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体を1種以上用い共重合して得られた共重合物を用いることができる。さらに、ビニル系重合性単量体に加えて、又はそれに代えて、他の重合性単量体、例えば−SO2−などを用いることもできる。第4級アンモニウム塩共重合物は、前述した通り、二元系の共重合物又は三元系以上の共重合物であり得る。
特に、第4級アンモニウム塩共重合物は、前記の式1で表される繰り返し単位と、以下の式2で表される繰り返し単位とを有することが、赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から好ましい。
また、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体としては、カチオン性重合性単量体、アニオン性重合性単量体、又はノニオン性重合性単量体を用いることができる。これらの重合性単量体中で、特にカチオン性重合性単量体又はノニオン性重合性単量体を用いることで、第4級アンモニウム塩共重合物内において第4級アンモニウム部位との電荷相殺が起こらないので、赤血球の凝集を効果的に生じさせることができる。カチオン性重合性単量体の例としては、特定の条件下でカチオンを帯びる窒素原子を有する環状化合物としてビニルピリジンなど、特定の条件下でカチオンを帯びる窒素原子を主鎖に有する直鎖状化合物としてジシアンジアミドとジエチレントリアミンの縮合化合物などが挙げられる。アニオン性重合性単量体の例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、及び、スチレンスルホン酸、並びに、これらの化合物の塩などが挙げられる。一方、ノニオン性重合性単量体の例としては、ビニルアルコール、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどが挙げられる。これらカチオン性重合性単量体、アニオン性重合性単量体、又はノニオン性重合性単量体は、それらのうちの一つを用いることができ、あるいは任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。またカチオン性重合性単量体を2種以上組み合わせて用いることができ、アニオン性重合性単量体を2種以上組み合わせて用いることができ、あるいはノニオン性重合性単量体を2種以上組み合わせて用いることもできる。カチオン性重合性単量体、アニオン性重合性単量体及び/又はノニオン性重合性単量体を重合性単量体として用いて共重合された第4級アンモニウム塩共重合物は、その分子量が、前述の通り1000万以下であることが好ましく、特に500万以下、とりわけ300万以下であることが好ましい(以下に例示する第4級アンモニウム塩共重合物についても同様である。)。
第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体として、水素結合をすることが可能な官能基を有する重合性単量体を用いることもできる。このような重合性単量体を共重合に用いること、それから得られる第4級アンモニウム塩共重合物を用いて赤血球を凝集させたときに、硬い凝集塊が生じやすくなり、高吸収性ポリマーの吸収性能が一層阻害されにくくなる。水素結合をすることが可能な官能基としては、例えば−OH、−NH2、−CHO、−COOH、−HF、−SHなどが挙げられる。水素結合をすることが可能な官能基を有する重合性単量体の例としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルアルコール、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートなどが挙げられる。特に、水素結合が強く働く、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ジメチルアクリルアミドなどは、第4級アンモニウム塩ポリマーの赤血球への吸着状態が安定化するので好ましい。これらの重合性単量体は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体として、疎水性相互作用をすることが可能な官能基を有する重合性単量体を用いることもできる。このような重合性単量体を共重合に用いることで、前述した、水素結合をすることが可能な官能基を有する重合性単量体を用いる場合と同様の有利な効果、すなわち赤血球の硬い凝集塊が生じやすくなるという効果が奏される。疎水性相互作用をすることが可能な官能基としては、例えばメチル基、エチル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、アルキルナフタレン基、フッ化アルキル基などが挙げられる。疎水性相互作用をすることが可能な官能基を有する重合性単量体の例としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、スチレンなどが挙げられる。特に、疎水性相互作用が強く働き、第4級アンモニウム塩ポリマーの溶解性を大きく低下させない、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどは、第4級アンモニウム塩ポリマーの赤血球への吸着状態が安定化するので好ましい。これらの重合性単量体は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第4級アンモニウム塩共重合物中での、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体と、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体とのモル比は、該第4級アンモニウム塩共重合物によって赤血球が十分に凝集するように適切に調整されることが好ましい。あるいは、第4級アンモニウム塩共重合物の流動電位が、前述した値となるように調整されることが好ましい。あるいは、第4級アンモニウム塩共重合物のIOBが、前述した値となるように調整されることが好ましい。特に、第4級アンモニウム塩共重合物における第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体のモル比は10モル%以上であることが好ましく、22モル%以上であることがさらに好ましく、32モル%以上であることが一層好ましく、38モル%以上であることがさらに一層好ましい。また、100モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましく、65モル%以下であることが一層好ましく、56モル%以下であることがさらに一層好ましい。具体的には、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体のモル比は10モル%以上100モル%以下であることが好ましく、22モル%以上80モル%以下であることがさらに好ましく、32モル%以上65モル%以下であることがさらに好ましく、38モル%以上56モル%以下であることが一層好ましい。
第4級アンモニウム塩ポリマーが、第4級アンモニウム塩重縮合物である場合には、該重縮合物として、前述した第4級アンモニウム部位を有する単量体1種以上からなる縮合物を用い、それらの縮合物を重合することで得られた重縮合物を用いることができる。具体例としては、ジシアンジアミド/ジエチレントリアミン重縮合物、ジメチルアミン/エピクロルヒドリン重縮合物などが挙げられる。
前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマー及び第4級アンモニウム塩共重合物は、ビニル系重合性単量体の単独重合法又は共重合法によって得ることができる。重合方法としては、例えばラジカル重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合、配位重合、開環重合、重縮合などを用いることができる。重合条件に特に制限はなく、目的とする分子量、流動電位、及び/又はIOB値を有する第4級アンモニウム塩ポリマーが得られる条件を適切に選択すれば良い。
また、本発明で用いる血球凝集剤は、ポリカチオン(カチオン性ポリマー)以外に、第三成分、例えば、溶媒、可塑剤、香料、抗菌・消臭剤、スキンケア剤等の他の成分を1種以上含んだ組成物(血球凝集剤組成物)の形態で設けられていても良い。溶媒としては、水、炭素数1ないし4の飽和脂肪族一価アルコール等の水溶性有機溶媒、又は該水溶性有機溶媒と水との混合溶媒などを用いることができる。可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブタンジオールなどを用いることができる。香料としては、特許第4776407号公報に記載されているグリーンハーバル様香気を有する香料、植物の抽出エキス、柑橘類の抽出エキスなどを用いることができる。抗菌・消臭剤としては、特許第4526271号公報に記載されている抗菌性を有する金属を含むカンクリナイト様鉱物、特許第4587928号公報に記載されているフェニル基を有する重合性モノマーから重合された多孔性ポリマー、特許第4651392号公報に記載されている第4級アンモニウム塩、活性炭、粘土鉱物などを用いることができる。スキンケア剤としては、特許第4084278号公報に記載されている植物エキス、コラーゲン、天然保湿成分、保湿剤、角質柔軟化剤、消炎剤などを用いることができる。
前記血球凝集剤組成物に占めるカチオン性ポリマーの割合は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、5質量%以上であることが一層好ましい。また、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが一層好ましい。前記血球凝集剤組成物に占めるカチオン性ポリマーの割合をこの範囲内に設定することで、生理用吸収性物品に有効量のカチオン性ポリマーを付与することができる。
以上、本発明について説明したが、本発明は前述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。本発明は、経血の吸収に用いられる物品全般に適用することができる。そのような物品の例としては、前記実施形態の如き生理用ナプキンの他に、パンティライナ及びタンポン等が挙げられるが、それらに限られない。