図11には一般的な熱延工程が示されており、この圧延工程では、まず連続加熱炉1により1200℃程度まで加熱された被圧延材(スラブ)をサイジングプレス2により板幅方向に鍛造することで板幅を調整し、次いでこの被圧延材を粗圧延機群3により圧延して厚み30〜50mmのシートバー10とし、続いてこのシートバー10を連続圧延可能な6〜7スタンドの仕上げ圧延機群6により1.2〜25mmまで圧延して圧延鋼帯とし、次いでランアウトテーブル7により冷却してコイラー8で巻き取る。
熱延鋼板のうち、ラインパイプに代表される構造用鋼板は8〜25mmの厚みを有し、特に寒冷地向けラインパイプ素材のように強度と靭性が重視されるものは、圧延工程において制御圧延(Controlled-Rolling;CR)が実施されることが多い。制御圧延とは、鋼の結晶粒の成長速度が遅い低温条件下で圧延することで、結晶組織を微細化し靭性を向上させる技術である。制御圧延を開始する温度(制御圧延開始温度)は、NbやVなどの添加元素により異なるが、おおよそ950℃以下であり、制御圧延開始時の板厚から製品厚みになるまで少なくとも60%程度の圧下率で圧延を行う。例えば、圧下率60%で制御圧延を行う場合、製品厚みが25mmとすると、制御圧延開始時の厚みは63mmであり、粗圧延機群3では、厚み例えば250mmのスラブから厚み63mmのシートバーとなるまで圧延を行う必要がある。
そのために、まず粗圧延機群3で粗圧延終了までにシートバー10の厚みが所定の制御圧延開始板厚となるよう粗圧延を行い、次いでシートバー10の中心温度が950℃以下となるまで仕上げ圧延機群6の前でシートバー10を空冷待機させ、その後仕上げ圧延機群6で圧延する手法がとられる。この際に、仕上げ圧延機群6の前でシートバー10を待機させる時間は200〜300秒程度必要であるため、この間に次材を圧延することが出来ず圧延能率が大きく低下する。熱延鋼帯の製造ラインに関して、待機時間の問題を解決するための先行文献は少ないが、厚鋼板の製造ラインでは数多く検討されており、例えば以下のような技術が開示されている。
特許文献1に記載の技術は、可逆式の粗圧延機の入側若しくは出側に15〜300℃/秒程度の冷却装置を設置し、粗圧延機の圧延パスのパス間で冷却を実施することにより、つまり制御圧延開始厚みよりも板厚みが厚い段階で上記冷却装置により被圧延材の水冷を実施することにより、制御圧延開始までに目標の制御圧延開始温度にする技術である。しかしこの技術は、冷却速度が高く且つ板厚みが大きい場合は、鋼材の表面と中心の温度差が大きくなり、水冷中にシートバーの表層がフェライト相変態温度(フェライト相変態が始まる温度)を下回る可能性がある。シートバーの表層が相変態温度を下回った場合、シートバーの表層においてオーステナイト組織からフェライト組織への相変態が起こり、この状態で圧延を行うと軟質であるフェライト粒界に歪みが集中して表層割れが発生する可能性がある。
特許文献2に記載の技術は、複数の被圧延材を同時に圧延する手法に関するものであり、制御圧延前の厚みまで圧延が完了した後に、被圧延材を一旦圧延機から遠方の搬送テーブル上で待機させておき、その間に次材の圧延を実施することで、圧延機のアイドリング時間を極小化する技術である。しかし本技術は、制御圧延開始までの空冷による待機時間と圧延時間がほぼ一致しているときには能率向上効果が大きいものの、大きく異なる場合は圧延能率があまり上がらないという問題がある。
特許文献3には、制御圧延前の圧延が完了した鋼板を、次の被圧延材が通過できる高さに持ち上げて待機状態に保持する片持ちフォーク状のアームを有する昇降装置が開示されている。シートバーの厚みが十分厚く、且つ待機させるシートバーの待機時間が通過させるシートバーの圧延時間と一致している時には非常に有用な技術である。一方、熱延鋼帯では、厚鋼板と比較してスラブの重量が20〜30トンと大きく、またシートバーの長さが例えば20mを超えるなど極めて長くなることから、大規模な昇降装置が必要になる。また、昇降装置のアームとシートバーが長時間接するため、その接触部の温度が低くなるという問題もある。さらに、待機装置を用いて次材を追い越して圧延を行うことができることが示唆されているが、冷却待ちを要する制御圧延材が含まれている場合に、どのように圧延を行えば、熱間圧延機の空き時間を低減して、圧延能率を向上させることができるかについては示されていない。
特許文献4には、上記文献の弱点を補強するために、特許文献3の昇降装置に加えて、圧延機の前後に水冷装置を設置することが開示されている。しかし本文献にも、特許文献3と同様、様々なサイズおよび温度条件のシートバーに対してどのように圧延を行えば、熱間圧延機の空き時間を低減して、圧延能率を向上させることができるかについては示されていない。
そこで、本発明者らが、熱延鋼帯の製造ラインに関して、上記の問題を解決するため鋭意研究を行った結果、粗圧延機群の複数の圧延機のうち少なくとも1機を可逆式圧延機とすると共に、この可逆式圧延機の上流側または下流側に、圧延方向に互いに隣り合って配置された水量密度1000L/min・m2以上の急冷却装置と水量密度1000L/min・m2未満の緩冷却装置とからなる冷却装置を設け、可逆圧延機の圧延パスに関連して、シートバーの板厚が比較的大きい圧延パスでは緩冷却装置による緩冷却を行い、シートバーの板厚が比較的小さい圧延パスでは急冷却装置による急冷却を行うことで、シートバーの表層が相変態温度(例えば600℃)を下回ることを防止しつつ、制御圧延開始までに要する時間を低減して能率よく熱延鋼帯を製造することに成功した。
ところで、粗圧延工程には、シートバーの表層の酸化スケールを除去するために15MPa以上の高圧水をシートバー上面に噴射するデスケーリング工程や、冷却水の吹き付けにより平均温度約60〜80℃に調整されたロールによる圧延工程、さらに上述したような冷却装置を用いた冷却工程も含まれるが、いずれの工程でもシートバーは表層から抜熱され、シートバーの表面温度は板厚方向の中心部より低くなる。板厚方向の温度勾配が生じると鋼板内部の伝熱作用により、一定時間経過すれば板厚方向の温度勾配は緩和される。この現象を復熱という。復熱には、粗圧延工程のシートバーの厚みにおいて30秒〜60秒程の時間を要するため、圧延能率の観点から、シートバーの表層の温度が回復するまでシートバーを待機させることは一般的に行われず、表層温度が低下したままの状態で粗圧延工程は継続される。
一方、上記冷却装置を設置する目的は、シートバーの中心温度が圧延開示温度まで低下する時間を短縮することで圧延能率を向上させることであり、このために設備能力を最大活用できる条件は、表面温度を相変態温度(例えば600℃)以上に保持するという制約下で最大の温度降下量が得られる条件となる。この条件を得るために、熱伝導方程式を差分近似した数値計算を解く差分法が用いられる。この際、シートバーからの熱損失として、デスケーリング処理や冷却装置による水冷、搬送期間中の空冷、圧延ロールとの接触等による種々の熱損失を考慮し、シートバーの板厚方向の断面温度分布を算出する。水冷による熱損失に関しては、水量密度とともにシートバー表面上の冷却水の噴射領域が大きく影響する。噴射領域は、冷却水用のヘッダーやノズルの設備上の配置により決まり、上記数値計算にも反映される。この数値計算により冷却中のシートバーの表面温度を予想し、相変態温度を下回らない範囲で冷却条件を調整する。シートバーを冷却装置に通過させながら冷却する場合、シートバーの搬送速度がセットアップ時の設定項目となる。
しかしながら、実施の圧延ラインでは、上記数値計算には反映されない、シートバー表面温度の低下を誘発する不確定因子が存在する。例えば、デスケーリング処理中の水の飛散防止のために遮蔽板が用いられるが、種々の事情により漏洩水が発生することがあり、このような場合、漏洩水がデスケーリング設備の前後領域でシートバーの上面に滞留し、表面温度を低下させる原因となる。また、通常、圧延ロール用の冷却装置には、圧延ロールに吹き付ける冷却水がシートバーの表面に乗らないようにロール水切り装置が設けられるが、冷却水の一部が漏出することもある。また、前材(先に圧延されたシートバー)との間隔が狭くなると、シートバー同士の衝突を防ぐためにテーブル上で次材(前材に続いて圧延されるシートバー)をオシレーションさせながら待機させることもある。
図12(a)は、一例として、可逆式圧延機31による圧延に際してデスケーリング処理を行った際に、シートバー10の上面に飛散水が滞留する様子を示した模式図であり、(b)は、そのときのシートバー10の表面温度を可逆式圧延機31の上流側に設置した放射温度計35で測定した結果を経過時間とともに示したグラフである。図中、(i)はシートバー10を上流側へ搬送し放射温度計35に到達した時点を示し、(ii)は反転のためシートバー10の搬送を一時的に停止した時点を示し、(iii)はシートバー10を下流側へ搬送した後にその先端部がデスケーリング装置の、上流側のスプレーヘッダー36に到達した時点を示し、(iv)はシートバー10の尾端部が放射温度計35から外れた時点を示している。なお、デスケーリング装置は、上下で対をなし、可逆式圧延機31の前後にそれぞれ隣接配置された2対のスプレーヘッダー36,37からなり、各スプレーヘッダー36,37からはシートバー10表層に生成されたスケールを除去するために高圧水が噴射される。前後のスプレーヘッダー36,37は、圧延方向に応じて交互に噴射を行う。また、高圧水の噴射は、シートバー10が圧延機に噛み込まれる前に開始される。
図12(b)のグラフによれば、圧延機31を出た直後のシートバー10の表面温度は、シートバー10の先端が放射温度計35を通過して30〜40秒後の温度より約100℃低いことが分かる。また、リバース圧延を開始すると、デスケーリング装置のスプレーヘッダー36,37からの飛散水およびシートバー10上面の乗り水の影響を受け、表面温度が約42℃低下しており、不安定であることが分かる。このため、冷却装置により当初のセットアップ計算に基づく設定どおりに、シートバー10の表面温度が相変態温度を下回らないように冷却を行っても、シートバー10の表面温度が想定よりも低くなり、製造された熱延鋼帯の表層に相変態に起因する割れが発生する可能性がある。
それ故本発明の課題は、制御圧延に先立って行う冷却中にシートバーの表層が相変態温度を下回ることを確実に防止しつつ、制御圧延開始までに要する時間を低減して能率よく熱延鋼帯を製造することができる熱延鋼帯の製造方法および熱延鋼帯の製造設備を提案することにある。
前記課題を有利に解決する本発明の熱延鋼帯の製造方法は、少なくとも1機の可逆式圧延機を含む複数の粗圧延機からなる粗圧延群と、前記可逆式圧延機の上流側または下流側に配置された冷却装置とを備え、前記冷却装置が、圧延方向で互いに隣り合って配置された、1000L/min・m2未満の水量密度で被圧延材を緩冷却する緩冷却装置と1000L/min・m2以上の水量密度で被圧延材を急冷却する急冷却装置とからなる、熱延鋼帯の製造設備を用い、被圧延材を前記可逆式圧延機の圧延パスに関連して前記緩冷却装置により緩冷却した後に、被圧延材を前記可逆式圧延機の圧延パスに関連して前記急冷却装置により急冷却する、熱延鋼帯の製造方法であって、
被圧延材の表面温度を測定する温度計を、前記冷却装置からみて前記可逆式圧延機の反対側と、前記可逆式圧延機および前記冷却装置相互間と、前記可逆式圧延機からみて前記冷却装置の反対側とのうちの少なくとも1箇所に設置し、
前記温度計により前記冷却装置による冷却直前の被圧延材の表面温度を実測し、
前記温度計による測定で得られた被圧延材の実測表面温度に基づき、前記冷却装置に通過させる際の被圧延材の搬送速度と前記冷却装置における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正することを特徴とするものである。
なお、本発明の熱延鋼帯の製造方法にあっては、被圧延材の表面温度が、被圧延材の表層の相変態に関連した所定の基準温度以上に維持されるように、被圧延材の前記実測表面温度に基づき、前記冷却装置に通過させる際の被圧延材の搬送速度と前記冷却装置における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正することが好ましい。
また、本発明の熱延鋼帯の製造方法にあっては、前記実測表面温度によりセットアップ計算を行い、該セットアップ計算の結果に基づき、前記冷却装置に通過させる際の被圧延材の搬送速度と前記冷却装置における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正することが好ましい。
さらに、本発明の熱延鋼帯の製造方法にあっては、前記被圧延材の搬送速度の修正量が所定量以上の場合に、前記被圧延材の搬送速度の修正に加えて、前記使用する噴射ヘッダー数の修正を行うことが好ましい。
しかも、本発明の熱延鋼帯の製造方法にあっては、前記使用する噴射ヘッダー数の修正数がどの程度の前記搬送速度の修正量に相当するかの換算表をあらかじめ作成しておき、この換算表に基づき、前記搬送速度の修正量が前記所定量未満となるよう、使用する噴射ヘッダー数の修正数を決定することが好ましい。
また、前記課題を有利に解決する本発明の熱延鋼帯の製造設備は、少なくとも1機の可逆式圧延機を含む複数の粗圧延機からなる粗圧延群と、前記可逆式圧延機の上流側または下流側に配置された冷却装置と備え、前記冷却装置が、圧延方向で互いに隣り合って配置された1000L/min・m2未満の水量密度で被圧延材を緩冷却する緩冷却装置と1000L/min・m2以上の水量密度で被圧延材を急冷却する急冷却装置とからなる熱延鋼帯の製造設備であって、
前記冷却装置からみて前記可逆式圧延機の反対側と、前記可逆式圧延機および前記冷却装置相互間と、前記可逆式圧延機からみて前記冷却装置の反対側とのうちの少なくとも1箇所に設置された、被圧延材の表面温度を実測する温度計と、
前記温度計による測定で得られた被圧延材の実測表面温度に基づき、前記冷却装置に通過させる際の被圧延材の搬送速度と前記冷却装置における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正する修正手段と、を備えることを特徴とするものである。
なお、本発明の熱延鋼帯の製造設備にあっては、前記修正手段は、被圧延材の表面温度が、被圧延材の相変態に関連した所定の基準温度以上に維持されるように、被圧延材の前記実測表面温度に基づき、前記冷却装置に通過させる際の被圧延材の搬送速度と前記冷却装置における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正することが好ましい。
また、本発明の熱延鋼帯の製造設備にあっては、前記修正手段は、前記実測表面温度によりセットアップ計算を行い、該セットアップ計算の結果に基づき、前記冷却装置に通過させる際の被圧延材の搬送速度と前記冷却装置における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正することが好ましい。
さらに、本発明の熱延鋼帯の製造設備にあっては、前記修正手段は、前記被圧延材の搬送速度の修正量が所定量以上の場合に、前記被圧延材の搬送速度の修正に加えて、前記使用する噴射ヘッダー数の修正を行うことが好ましい。
しかも、本発明の熱延鋼帯の製造設備にあっては、前記修正手段は、あらかじめ作成された、前記使用する噴射ヘッダー数の修正数がどの程度の前記搬送速度の修正量に相当するかの換算表に基づき、前記搬送速度の修正量が前記所定量未満となるよう、使用する噴射ヘッダー数の修正数を決定することが好ましい。
本発明の熱延鋼帯の製造方法および熱延鋼帯の製造設備によれば、被圧延材が冷却装置に進入する前に、被圧延材の表面温度を実測し、その測定結果(実測表面温度)に基づき冷却装置に通過させる被圧延材の搬送速度と冷却装置における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正するようにしたので、例えば冷却装置に進入する被圧延材の表面温度が想定よりも低い場合には、被圧延材の搬送速度を増大させたり使用する噴射ヘッダー数を減少させたりすることで冷却速度を緩やかにして冷却中に被圧延材の表面温度が相変態温度を下回ることを確実に防止することができる。
以下、一般的な熱延鋼帯の製造方法および製造設備を説明した後、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図11は、一般的な熱延鋼帯の製造設備を圧延パスとともに模式的に示す構成図である。
まず、一般的な熱延鋼帯の製造では、図11に示すように、連続加熱炉1で例えば板厚み260mmの被圧延材(スラブ)を1250℃に加熱し、その後、粗圧延機群3により所定の厚みのシート状の被圧延材であるシートバー10とする。この際に、シートバー10の板幅を調整するために、連続加熱炉1の出側に設置されているサイジングプレス2で、所定のサイズまで幅方向に圧下した後に、粗圧延機群3の圧延機に近接した位置に設置されているエッジャー4で同じく幅方向に圧下する。次いで、クロップシャー5によりシートバー10の先端および尾端を切断した後に、そのシートバー10を仕上げ圧延機群6で所定の厚み(例えば20mm)まで仕上げ圧延して熱延鋼帯とし、その後、ランアウトテーブル7にて所定の温度まで冷却した後に、コイラー8で巻き取る。
図示例では粗圧延機群3は2機の粗圧延機から構成されており、粗圧延機群3のうち上流側(加熱炉側)には、リバース圧延可能な可逆式圧延機31、下流側には下流側への搬送方向のみの圧延が可能な非可逆式圧延機32が配置されている。この粗圧延機群3により、例えば、可逆式圧延機31で5〜11パス程度圧延した後に、非可逆式圧延機32で1パスのみ圧延をする。
従来、所定の制御圧延開始厚みまで圧延されたシートバー10は、所定の制御圧延開始温度に下がるまで粗圧延機群3と仕上げ圧延機群6の間でオシレーション待機される。シートバー10の表面温度は放射温度計33で測定し、シートバー10の表面温度が所定の制御圧延開始温度にまで下がったことを確認した後、仕上げ圧延機群6に送り制御圧延を実施する。この際、空冷により150〜250℃程度温度を低下させるため、60〜300秒程度待機させる必要がある。この間、仕上げ圧延機群6では圧延を行うことができないため圧延能率の低下につながる。また、このときのシートバー10の厚みを例えば50mmとすると、シートバー10の長さは50m程度と極めて長いため、上記先行文献3や4に開示されるような、シートバーを持ち上げる昇降装置等の機構を導入するのは現実的ではない。
そこで、本発明の実施形態では、図1に示すように、粗圧延機群3の可逆式圧延機31の上流側または下流側(図示例では下流側)に、水量密度1000L/min・m2以上でシートバー10を冷却する急冷却装置41と水量密度1000L/min・m2未満でシートバー10を冷却する緩冷却装置42とを有する冷却装置43を設けて、粗圧延機群3内で圧延に加えて冷却を実施する構成を採用している。これにより、粗圧延機群3での圧延が完了した時点でシートバー10の温度を制御圧延開始温度と等しくなるように調整することができ、制御圧延温度待ち時間を大幅に短縮することができる。
急冷却装置41および緩冷却装置42は圧延方向で互いに隣り合って配置される。「隣り合って配置される」とは、急冷却装置41と緩冷却装置42とがその相互間に粗圧延機を介さず圧延方向に直接隣り合って配置されることを意味する。
急冷却装置41および緩冷却装置42によるシートバー10の冷却順序としては、まず緩冷却装置42によりシートバー10を緩冷却し、該緩冷却が完了した後に急冷却装置41によりシートバー10を急冷却することが肝要である。具体的には、可逆式圧延機31で繰り返し圧延されていくシートバー10の厚みに応じて急冷却装置41と緩冷却装置42を使い分ける。つまりシートバー10の厚みが比較的厚い圧延初期では、可逆式圧延機31の圧延パスに関連して、緩冷却装置42による緩冷却を行い、シートバー10の厚みが比較的薄い圧延後期では、可逆式圧延機31の圧延パスに関連して、急冷却装置41による急冷却を行う。このような冷却を行う理由は次の通りである。
図2に一例として板厚み40mmのシートバー10を様々な冷却水量密度で冷却したときの表面の温度履歴を示す。図中、急激に温度が低下している時間領域は水冷を実施したことを示しており、下限温度を経て温度が上昇している時間領域は水冷を停止し放冷(空冷)を実施したことを示している。この図から冷却水の水量密度が多くなるに連れて表面の冷却速度(温度の時間勾配)は早くなることが分かる。一方、シートバー10の温度が相変態に関連した所定の基準温度(以下、相変態温度と称す)である600℃を下回ると、相変態が起こりオーステナイト組織からフェライト組織に変化する。このような状態で制御圧延を行った場合、表面延性が低下しフェライト粒界からの割れが発生するリスクがある。そのため、水冷中のシートバー10の最表層の温度は600℃以上に保持することが好ましい。図2に示す例ではそのような観点から、シートバー10の表面温度が下限温度の600℃となったところで水冷を停止している。図3は、そのときのシートバー10の断面平均温度を示す。同じく図中の急激に温度が低下している時間領域は水冷を実施したことを示す。冷却水の水量密度が高いとシートバー10の断面平均温度の時間勾配、つまり冷却速度は急峻になるものの、表面温度を600℃以上に保持しフェライト粒界からの割れを防止する観点から冷却水の供給を途中で停止しているため、冷却水の水量密度が高いほど冷却終了時の温度も高くなる。そのため、冷却水の水量密度を小さくするほど、冷却速度は遅いものの、1回で冷却可能な温度降下量を大きくすることができることが分かる。
図4には初期の表面温度が1000℃の様々な板厚のシートバー10について、冷却水量密度と表面温度が600℃となるまで冷却をしたときの断面平均の温度降下量との関係を示す。先に説明したように、表面温度を600℃以上に保持するという制約条件があることで、板厚みが大きくなるほど、また冷却水の水量密度が大きくなるほど1回の水冷による冷却温度降下量は小さくなる。以後、表面温度600℃の制約から1回の冷却で降下させることができる温度を限界温度降下量と呼ぶ。
図5には初期の表面温度が1000℃の様々な板厚のシートバー10について、冷却水の水量密度とシートバー10の冷却速度の断面平均との関係を示す。冷却水の水量密度が大きいほど冷却速度は速い。そのため、先の制約を併せて考えると、限界温度降下量以下の冷却を実施する場合は、冷却水の水量密度を高くするほうが短い時間で温度を降下させることが出来るため、圧延時間の短縮には有利となる。
ここで実際の圧延工程を考えると、220〜260mm程度の厚みを持つスラブを45mm程度まで10パス前後で圧延する。圧延初期では板厚みが大きく限界温度降下量が小さくなる傾向にあるため、1パスあたりの表面の下限温度の点から限界温度降下量が大きい緩冷却が有利である。圧延後期の板厚みが小さくなった条件では、限界温度降下量を大きくとることができるので、冷却速度を高めて短い時間で水冷する急冷却のほうが有利になる。また、板厚みが小さいほうが限界温度降下量が大きいことから、複数の粗圧延機が設けられている場合は、最も小さい板厚みに対応した最下流の可逆式圧延機31の上流側若しくは下流側において冷却を実施するのが好適である。
また、図4から分かるように、板厚みが比較的大きい80mmおよび120mmの場合では、冷却水の水量密度が1000L/min・m2を境に、低水量密度では限界温度降下量が大きくなる。そのため、シートバー10の表面のフェライト割れを防止する観点から、板厚み80mm以上では冷却水の水量密度を1000L/min・m2未満とすることで大きな限界温度降下量を確保することができる。
このような理由から、本発明の実施形態では制御圧延に望ましい所定温度(制御圧延開始温度)までの冷却を複数パスに分散させ、1パスで20〜30℃程度の冷却を実施し、その際、板厚みが比較的大きい、特に板厚みが80mm以上である圧延初期には、水量密度が1000L/min・m2未満である緩冷却装置42で緩冷却を実施し、板厚みが比較的小さい、特に板厚みが80mm未満となる圧延後期には、水量密度が1000L/min・m2以上の急冷却装置41で急冷却を実施する構成とている。
なお、緩冷却装置42では、冷却水の水量密度を下げるほど1パスあたりの水冷による温度降下量は大きくなるが、冷却速度は遅くなるため、能率を向上させる効果が小さくなる。そこで、緩冷却装置42の冷却水量は200L/min・m2以上とするのが好ましい。一方、急冷却装置41では、冷却水量密度を大きくするほど1パスあたりの水冷による温度降下量は小さくなるが、冷却速度は速くなる。そのため、1パスあたりの限界冷却能力があまり変わらない範囲では、冷却水量増大に伴う設備コストの上昇もあるため、冷却水の水量密度を6000L/min・m2以下とするのが好ましい。
各冷却装置41,42は、複数の円管ノズルから構成される群噴流冷却、パイプラミナー、ミスト冷却、スプレー冷却などいかなる形式のものでもかまわないが、急冷却装置41では冷却水量が多いためシートバー10上に厚い滞留水が発生し易く、当該滞留水が噴射された冷却水の、鋼板表面への衝突を阻害する結果、安定した冷却が得られない可能性がある。そこで、急冷却装置41には、液膜に対する貫通力の高い、円管ノズルを複数有する群噴流冷却装置を用いることが好ましい。一方、緩冷却装置42では特に制限はなく、一般的に熱延鋼帯の冷却装置で使われているパイプラミナー方式やスプレー方式を用いることができる。
急冷却装置41および緩冷却装置42は、圧延方向でみて可逆式圧延機31に対して近い位置に急冷却装置41、遠い位置に緩冷却装置42の順に配置するのが好ましい。本実施形態では、シートバー10の厚みに応じて急冷却装置41と緩冷却装置42を使い分けると説明したが、シートバー10は各圧延パスで圧下されることで板厚みが順次小さくなり、その分だけシートバー10の長さは順次長くなる。つまり急冷却装置41を使用する圧延後期では、シートバー1の長さは最も大きくなる。一般的な粗圧延機群のレイアウトは、設計仕様のパススケジュールに基づき、各粗圧延機の間隔が決まっている。そのため、シートバー10を急冷却装置41および緩冷却装置42で通過冷却する際に、シートバー10が長いとシートバー10が急冷却装置41および緩冷却装置42から出た時点で隣接する粗圧延機まで到達して干渉する恐れがある。そこで、板厚みが小さく長いシートバー10に対して冷却を行う急冷却装置41は、可逆式圧延機31に近い位置に設置するのが好ましい。
このように、可逆式圧延機31の上流側または下流側において、まず緩冷却装置42により1000L/min・m2未満の水量密度でシートバー10を緩冷却し、その後、シートバー10を急冷却装置により1000L/min・m2以上の水量密度で急冷却することで、シートバー10の表層の温度が相変態温度を下回るのを防止しつつ、冷却に要する時間を短縮することができ、圧延能率を向上させることができる。
ところで、実際の圧延工程では、図12を参照して説明したように、設備状況の変化やテーブル上での偶発的な材料待ち等に起因して、粗圧延開始前または粗圧延工程中にシートバー10の温度が想定外に低下する場合がある。この場合、冷却装置43により当初のセットアップ計算に基づく設定どおりに冷却を行うと、シートバー10の表面温度が想定していた温度よりも低くなり、その結果シートバー10の表層が相変態温度を下回る可能性がある。
そこで本実施形態では、図1に示すように、シートバー10の表面温度を測定する温度計45,46を、冷却装置43からみて可逆式圧延機31の反対側(可逆式圧延機31の上流側)と、可逆式圧延機31からみて冷却装置43の反対側(冷却装置43の下流側)の2箇所に設置する。温度計45,46としては、測定対象表面の放射エネルギを検知する放射温度計を用いることが好ましい。図1(a)に示すように、可逆式圧延機31と冷却装置43との距離が、冷却を行う時点でのシートバー10の長さよりも小さい場合は、可逆式圧延機31で圧延しながら水冷を実施することになる。このような場合には、可逆式圧延機31の上流側に設置されている温度計45でシートバー10の表面を測定(実測)する。「実測」とは、実際のシートバー10から得られる情報に基づいてシートバー10の表面温度を求めることを指す。そして、温度計45による測定で得られたシートバー10の表面温度(以下、実測表面温度と称す)が、セットアップ計算であらかじめ算出(予測)した同一時点、同一位置における表面温度(以下、計算表面温度と称す)よりも低い場合、実測表面温度を起点として、冷却後のシートバー10の表面温度が相変態温度以上となるよう、再度セットアップ計算を行い、該セットアップ計算の結果に基づき、冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度と冷却装置43における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正する。
冷却装置43に通過させて冷却したシートバー10をリバース搬送し、再び冷却装置43で冷却する場合は、図1(b)に示すように、冷却直前のシートバー10の表面温度は可逆式圧延機31からみて冷却装置43の反対側(冷却装置43の下流側)に設置された温度計46で測定する。シートバー10の実測表面温度が、セットアップ計算であらかじめ算出した同一時点、同一位置における計算表面温度よりも低い場合、実測表面温度を起点として、冷却後のシートバー10が相変態温度以上となるよう再度セットアップ計算を行い、該セットアップ計算の結果に基づき、冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度と冷却装置43における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正する。
冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度を変更すると冷却装置43で冷却される冷却時間を調整できる。また、冷却装置43の急冷却装置41および緩冷却装置42はそれぞれ、所定ピッチで配列された複数の噴射ヘッダーを有しており、一部の噴射ヘッダーのバルブを閉止して使用する噴射ヘッダー数を減らすことにより冷却長を短くし、冷却時間を短くすることができる。例えば、冷却時間を当初予定されていた冷却時間の75%にまで減少させるためには、噴射ヘッダー数を25%減らすか、搬送速度を1.33(=1/0.75)倍に増大させればよい。
図6に示すように、可逆式圧延機31と冷却装置43との間に温度計47を配置してもよい。図6(a)に示すように、可逆式圧延機31と冷却装置43との距離が、水冷時の厚みにおけるシートバー10の長さよりも大きい場合、可逆式圧延機31でシートバー10を圧下した後でかつ冷却装置43への進入前に温度計47によりシートバー10の表面温度を測定し、必要に応じてシートバー10の搬送速度と使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正した後に冷却装置43を通過させることで、冷却時の温度降下量を自在に調整することができる。図6(b)は、リバース搬送時の様子を示しており、この場合は、冷却装置43の下流側に設置された温度計46により、冷却装置43への進入前にシートバー10の表面温度を測定し、必要に応じてシートバー10の搬送速度と使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正してから冷却装置43に通過させる。
シートバー10の実測表面温度を起点として再度セットアップ計算を行い、該セットアップ計算の結果に基づき、冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度と冷却装置43における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正するためには、数値演算機能を有する図示しない既存のプロセスコンピュータを利用することができ、このプロセスコンピュータが本発明における修正手段を構成する。
図7に、冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度を修正しない場合と修正する場合のシミュレーション例を示す。ここで図7(a)は、冷却対象であるシートバー10の板厚が80mm、該シートバー10の表面温度および断面平均温度が共に800℃、緩冷却装置42の水量密度が500L/min・m2という初期条件で、セットアップ計算によりシートバー10の表面温度が600℃となるまで冷却するよう搬送速度を決定したときのシートバー10の温度経過のシミュレーション結果を示している。図7(b)は、シートバー10の断面平均温度が800℃で図7(a)と同条件であるが、上述したような設備状況の変化等に起因してシートバー10の表面温度が100℃低下した場合を想定し、冷却前のシートバー10の表面温度を700℃として、シートバー10の温度経過をシミュレーションしたときの結果を示すものである。シートバー10の搬送速度は図7(a)と同じである。このシミュレーションの結果から、冷却中にシートバー10の表面温度は577℃まで低下し、制約条件(下限条件)の600℃よりも23℃低くなることが分かる。図7(c)は、シートバー10の温度に関する初期条件は図7(b)のものと同じであるが、シートバー10の搬送速度を図3(a),(b)のシミュレーションにおける搬送速度よりも50%高く修正しており、その結果、シートバー10の表面温度が600℃を下回るのは回避されている。
図8に、板厚80mm、断面平均温度800℃のシートバー10において、冷却実施前のシートバー10の表面温度の低下量(800℃からの偏差)と、冷却装置43の水量密度を500〜3000L/mim・m2の範囲で変更したときの、冷却中のシートバー10の表面の最低温度との関係を示す。このグラフから、同じ水量密度では、冷却前のシートバー10の表面温度の低下量が大きいほど、冷却中のシートバー10の表面の最低温度は低くなり、また、冷却前のシートバー10の表面温度の低下量が同じでも冷却装置43の水量密度が大きくなるほど、冷却中のシートバー10の表面の最低温度は低くなることが分かる。
図9は、シートバー10の実測表面温度が計算表面温度よりも低下している場合、冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度をどの程度修正すればよいかの一例を示すマップである。冷却前のシートバー10の表面温度の低下量が同じ場合、冷却装置43の水量密度が大きいほど、搬送速度を大きく修正する必要があり、例えば、冷却直前のシートバー10の実測表面温度が計算表面温度よりも100℃低い場合には、当初のセットアップ計算で算出された搬送速度に対して1.5〜1.7倍程度まで搬送速度を増大させる必要がある。
次に、冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度の修正と冷却装置43における使用する噴射ヘッダー数の修正を併用する場合について説明する。冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度が過大となると、特に可逆式圧延機31で圧延しながら冷却を行う場合に、圧延時に可逆式圧延機31のローラとシートバー10との間にスリップが発生し、圧延品質の低下等を招く虞がある。そこで、シートバー10の搬送速度の修正量(以下、速度修正量を称す)が所定量以上、例えば40%以上となる場合には、搬送速度の修正に加えて使用する噴射ヘッダー数の修正を併用することが好ましい。この際、図10に示すように、使用する噴射ヘッダー数の変更がどの程度の速度修正量に相当するかの換算表をあらかじめ作成しておき、この換算表に基づき、速度修正量が上記所定量未満となるよう、噴射ヘッダー数の修正数を決定するのが好ましい。図10(a)は、一例として、全噴射ヘッダー数が10本である緩冷却装置42の換算表であり、図10(b)は、一例として、全噴射ヘッダー数が6本である急冷却装置41の換算表である。例えば、図10(a)の換算表において、緩冷却装置42における使用する噴射ヘッダー数を10本から9本に減らすと、緩冷却装置42に通過させるシートバー10の搬送速度を11%増大させることに等しくなる。
上記構成を備えた熱延鋼帯の製造装置およびそれを用いた熱延鋼帯の製造方法によれば、シートバー10が冷却装置43に進入する前に、シートバー10の表面温度を測定し、その測定結果に基づき冷却装置10に通過させるシートバー10の搬送速度と冷却装置43における使用する噴射ヘッダー数とのうちの少なくとも一方を修正するようにしたので、例えば冷却装置43に進入するシートバー10の表面温度が想定よりも低い場合には、シートバー10の搬送速度を増大させたり使用する噴射ヘッダー数を減少させたりすることで冷却速度を緩やかにして冷却中にシートバー10の表面温度が相変態温度を下回ることを確実に防止することができる。
また、シートバー10の搬送速度の修正量が所定量(好ましくは40%)以上の場合に、シートバー10の搬送速度の修正に加えて、使用する噴射ヘッダー数の修正を行うようにしたので、シートバー10の搬送速度が過度に大きくなって可逆式圧延機31のローラとシートバー10との間にスリップが発生するのを防止することができる。
さらに、使用する噴射ヘッダー数の修正数がどの程度の搬送速度の修正量に相当するかの換算表をあらかじめ作成しておき、この換算表に基づき、搬送速度の修正量が上記所定量未満となるよう、使用する噴射ヘッダー数の修正数を決定するようにしたので、シートバー10の搬送速度の修正と使用する噴射ヘッダー数の修正とを併用する場合に、シートバー10の搬送速度の修正量と使用する噴射ヘッダー数の修正数とを決定するための演算を容易に行うことができる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例について説明する。実施例1では、冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度の修正を適用して、製品厚み24mmの熱延鋼帯(コイル)を製造した。具体的には、図1に示す熱延鋼帯の製造設備(適宜、図11を参照)を用いて、圧延素材を連続式加熱炉1で1150℃まで加熱し、その後、粗圧延機群3で板厚60mmまで圧延してシートバー10とし、このシートバー10を仕上圧延機群6で制御圧延圧下率60%として板厚24mmまで圧延した。粗圧延機群3では表1に記載の板厚スケジュールで粗圧延を実施し、奇数パスの出側で冷却装置43の急冷却装置41または緩冷却装置42を用いて、仕上圧延工程前までにシートバーの表面温度が850℃±10℃となるまで冷却した。ここで、実施例1では、図1(a)および図1(b)に示す位置に温度計45,46を設置して、可逆式圧延機31および冷却装置43にシートバー10を進入させる直前のシートバー10の表面温度を測定し、測定したシートバー10の表面温度に基づき圧延速度および冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度を修正した。表2に、セットアップ計算により得られた、圧延前に想定されていたシートバー10の表面温度(計算表面温度)と温度計により測定されたシートバー10の表面温度(実測表面温度)との差、および冷却装置43に通過させるシートバー10の速度修正量(最初のセットアップ計算で得られたシートバー10の搬送速度に対する修正後のシートバー10の搬送速度の割合[%])の一例を示す。
比較例1は、実施例1と同じ板厚スケジュール(表1)に従って粗圧延を行うが、冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度は修正せずに冷却を行ったものである。
(実施例2)
実施例2では、冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度の修正と冷却装置43における使用する噴射ヘッダー数の修正との両方を適用して製品厚み18mmの熱延鋼帯(コイル)を製造した。具体的には、図1に示す熱延鋼帯の製造設備(適宜、図11を参照)を用いて、圧延素材を連続式加熱炉1で1170℃まで加熱し、その後、粗圧延機群3で表3に記載の板厚スケジュールで粗圧延を実施し、奇数パスの出側で冷却装置43の急冷却装置41または緩冷却装置42を用いて、仕上圧延工程前までにシートバー10の表面温度が850℃±10℃となるまで冷却した。シートバー10の板厚が薄くなる5パス目以降は、シートバー10の長さが長くなるため、可逆式圧延機31で圧延しながら同時に水冷を実施した。ここで、圧延速度と冷却装置43に通過させるシートバーの搬送速度とは互いに一致させる必要がある。一方、可逆式圧延機31の、シートバー10の噛み込み速度を高くすると、スリップが発生しやすくなるため、圧延速度は所定の範囲内に調整する必要がある。そこで、実施例2ではシートバー10の速度修正量が所定量(40%)以上の場合に、シートバー10の搬送速度の修正に加えて使用する噴射ヘッダー数の修正を適用した。具体的には、実施例1と同様に、図1(a)および図1(b)に示す位置に温度計45,46を設置して、可逆式圧延機31および冷却装置43にシートバー10を進入させる直前の該シートバー10の表面温度を測定して、圧延速度、搬送速度および使用する噴射ヘッダー数を修正した。
本実施例で用いた冷却装置43の修正前の噴射ヘッダー数は、緩冷却装置42が10本、急冷却装置41が6本である。表4に、圧延前に想定していたシートバー10の表面温度(計算表面温度)と温度計45,46により測定されたシートバー10の実測表面温度との差、シートバー10の速度修正量、および使用する噴射ヘッダー数を示す。使用する噴射ヘッダー数の決定は次のように行った。まず、計算表面温度と実測表面温度との差により、シートバー10の搬送速度の修正のみ実施する場合の速度修正量を算出する(表4中の「速度修正量(a)」。次にこの速度修正量(a)が40%以上のときに、使用する噴射ヘッダー数の修正を併用し、速度修正量が40%を超えないようにする。使用する噴射ヘッダー数の決定は、図10(a)で示した緩冷却装置42用の換算表および図10(b)で示した急冷却装置41用の換算表をそれぞれ用いて行った。一例として、表4中の「速度修正量(a)が40%以上である圧延5パス目の事例で説明する。圧延5パス目で上流側に搬送する速度修正量(a)は+49%となる。この圧延パスでは緩冷却装置42を使用するため、図10(a)の換算表を参照し、使用する噴射ヘッダー数を10本から9本に1本減とすれば、速度修正量を11%増大させるのと同等の効果が得られる。このように、使用する噴射ヘッダー数を1本減とすれば、速度修正量は+49%から+38%(11%減)とすることができ、最終的な速度修正量(表4中の「速度修正量(b)」)を40%未満に抑えることができる。他の圧延パスも同様に実施し、使用する噴射ヘッダー数と速度修正量(b)を算出した。
比較例2は、実施例2と同じ板厚スケジュール(表3)に従って粗圧延を行うが、冷却装置43に通過させるシートバー10の搬送速度および使用する噴射ヘッダー10は共に修正せずに冷却を行ったものである。
表5に、実施例1,2および比較例1,2にそれぞれ製造されたコイルからサンプルを採取し、表層の割れを目視と磁粉探傷試験により評価した結果を示す。これによると、本発明を適用しない場合、6%のコイルに表層割れを認めたが、本発明を適用したコイルでは表層割れは0%であった。
以上図示例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更、追加することができる。例えば、上記実施形態では、シートバー10の実測表面温度が計算表面温度よりも低い場合につき説明したが、シートバー10の実測表面温度が計算表面温度よりも高い場合には、冷却装置43に進入させるシートバー10の搬送速度を減少させたり使用する噴射ヘッダー数を増加させたりすることで、冷却速度を上げることができる。また、シートバー10の表面温度を測定する温度計の配置位置は図示例に限定されず、冷却装置43からみて可逆式圧延機31の反対側と、可逆式圧延機31および冷却装置43相互間と、可逆式圧延機31からみて冷却装置43の反対側とのうちの少なくとも1箇所に設置すればよく、これらの3箇所全てに設置してもよい。さらに、急冷却装置41および緩冷却装置42による冷却は、冷却装置41,42に向けて送り出される全ての圧延パスに関連して行わなくてもよく、水冷による温度降下量が大きく、仕上げ圧延機到達時の温度が仕上げ圧延の予定開始温度を下回る場合は、任意のパスの水冷を実施しなくてもよい。さらに、上記実施形態では、可逆式圧延機31に対して近い位置に急冷却装置41を、遠い位置に緩冷却装置42をそれぞれ配置したが、粗圧延機31,32の間隔が十分に長い場合等では、可逆式圧延機31に対して近い位置に緩冷却装置42を、遠い位置に急冷却装置41をそれぞれ配置してもよい。