[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法は以下の工程を備えている。第1の主面10aと、第1の主面10aと反対側の第2の主面10bとを有する炭化珪素基板10が形成される。炭化珪素基板10を形成する工程は、エピタキシャル成長により第1導電型を有する第1不純物領域12を形成する工程と、第1不純物領域12に対してイオン注入を行うことより、第1導電型とは異なる第2導電型を有し、かつ周期的に配置された埋込領域17を形成する工程と、第1不純物領域12と埋込領域17とに接し、第2導電型を有し、かつ埋込領域17よりも低い不純物濃度を有する第2不純物領域13をエピタキシャル成長により形成する工程と、第1導電型を有し、かつ第2不純物領域13によって第1不純物領域12から隔てられる第3不純物領域14を形成する工程とを含む。第2不純物領域13と第3不純物領域14とを貫通して第1不純物領域12に至る側部SWと、側部SWと連接する底部BTとを有し、かつ埋込領域17と同じ周期で配置されたトレンチTRが形成される。トレンチTRの側部SWにおいて、第1不純物領域12と、第2不純物領域13と、第3不純物領域14とに接するゲート絶縁膜15が形成される。
上記(1)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法によれば、第1不純物領域12に対してイオン注入を行うことより埋込領域17が形成された後、第1不純物領域12と埋込領域17とに接して、埋込領域17よりも低い不純物濃度を有する第2不純物領域13がエピタキシャル成長により形成される。そのため、第2不純物領域13を形成した後に第2不純物領域13の表面からイオン注入することにより埋込領域17を形成する場合と比較して、イオン注入エネルギーを低減することができる。結果として、高イオン注入エネルギーのためにイオンのチャネリングおよび多重散乱が発生し、イオン注入された不純物が拡がることで電流の流れを妨げることを抑制することができる。また第1不純物領域12と埋込領域17とで形成されるpn接合が炭化珪素基板10の第1の主面10aから深く離れた位置に形成されるため、トレンチTRにおける電界を効果的に遮断することができる。さらにチャネルとなる第2不純物領域13がエピタキシャル成長により形成されるため、高品質のチャネルを実現することができる。
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、トレンチTRを形成する工程において、トレンチTRの側部SWが埋込領域17から第1不純物領域12によって離間されるようにトレンチTRが形成される。第1の主面10aと平行な方向における、トレンチTRの側部SWと、側部SWに対向する埋込領域17の側面との距離は0.2μm以上5μm以下である。トレンチTRの側部SWと埋込領域17の側面との距離Dが0.2μmよりも小さい場合、チャネルからの電流の拡がりが妨げられオン抵抗が増加する。トレンチTRの側部SWと埋込領域17の側面との距離Dが5μmよりも大きい場合、埋込領域17によってトレンチTRの底部BTにおける電界が遮蔽される効果が低減する。そのため、炭化珪素基板10の第1の主面10aと平行な方向における、トレンチTRの側部SWと、側部SWに対向する埋込領域17の側面との距離Dは、0.2μm以上5μm以下であることが好ましい。
(3)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、トレンチTRを形成する工程において、埋込領域17がトレンチTRの底部BTに露出するようにトレンチTRが形成される。これにより、トレンチTRの底部BTが効果的に高電界から遮蔽されることにより、耐圧を向上させることができる。
(4)上記(3)に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、第1の主面10aと平行な方向における、トレンチTRの底部BTの幅は、埋込領域17の幅よりも大きい。これにより、埋込領域17の側面から広がる空乏層によって電流の流れが妨げられることを抑制することができる。結果として、オン抵抗を低減することができる。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、第1の主面10aの法線方向におけるトレンチTRの深さH1は、0.3μm以上3μm以下であり、かつ第1の主面10aと平行な方向におけるトレンチTRの幅よりも小さい。トレンチTRの深さH1が0.3μmよりも小さい場合、チャネルの形成が困難となる。トレンチTRの深さH1が3μmよりも大きい場合、トレンチの形状を制御することが困難となる。そのため、トレンチTRの深さH1は、0.3μm以上3μm以下であることが好ましい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板の第1の主面は、{0001}面からオフ方向にオフした面である。トレンチTRの側部SWは、オフ方向に垂直であり、かつ第1の主面10aの法線方向と垂直な面方位を有する面SW1を含む。オフ方向と直角方向の法線を有する面を主なトレンチの側壁とすることにより、側壁の面方位のずれを最小限にすることができる。またオフ方向がたとえば<11−20>方向である場合、より平坦な炭化珪素エピタキシャル層5を形成することができる。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、埋込領域17を形成する工程は、第1の主面10aの法線方向から、オフ方向に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向に対して2°以上10°以下傾いた方向にイオン注入が行われる。オフ方向に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向に対して2°以上10°以下傾いた方向にイオン注入が行われることにより、効果的にチャネリングを抑制することができる。また耐圧の劣化が発生しやすいトレンチTRの底部BTの角部CRに埋込領域17を形成する場合に、埋込領域17の位置ずれが発生することを効果的に抑制することができる。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、トレンチTRを形成する工程において、第1の主面10aの法線方向から見て、トレンチTRの底部BTの角部CRが埋込領域17に重なるようにトレンチTRが形成される。これにより、耐圧の劣化が発生しやすいトレンチTRの底部BTの角部CRにおける電界を遮蔽することができる。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板10を形成する工程は、第2の主面10b側から第1不純物領域12に対してイオン注入を行うことにより、第2導電型を有し、周期的に配置されたキャリア注入領域28を形成する工程をさらに含む。これにより、キャリア注入領域28からキャリアの注入を促進することにより、オン抵抗を低減することができる。
(10)本発明の一態様に係る炭化珪素半導体装置1は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜15とを備えている。炭化珪素基板10は、第1の主面10aと、第1の主面10aと反対側の第2の主面10bとを有する。炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第1不純物領域12と、第1不純物領域12と接し、かつ第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2不純物領域13と、第1導電型を有し、第2不純物領域13によって第1不純物領域12から隔てられた第3不純物領域14と、第2導電型を有し、第2不純物領域13よりも高い不純物濃度を有し、かつ第2の主面10b側の第2不純物領域13の端部13aの一部から第2の主面10bに向かって延在する埋込領域17と含む。炭化珪素基板10の第1の主面10aには、第1の主面10aと連接する側部SWと、側部SWと連接する底部BTとを有するトレンチTRが形成されている。ゲート絶縁膜15は、トレンチTRの側部SWにおいて、第1不純物領域12と、第2不純物領域13と、第3不純物領域14とに接し、かつトレンチTRの底部BTにおいて第1不純物領域12と接する。埋込領域17における、第2不純物領域13の不純物濃度の4倍の不純物濃度を有する位置の中で第2不純物領域13に最も近い位置から、第2不純物領域13と埋込領域17との境界部までの、第1の主面10aの法線方向に沿った距離は0.3μm以下である。これにより、埋込領域17で、十分に電界を遮蔽してソース部の容量を低減する効果がある。
(11)上記(10)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、第1の主面10aの法線方向から見て、トレンチTRの底部BTの角部CRは、埋込領域17と重なるように配置されている。これにより、耐圧の劣化が発生しやすいトレンチTRの底部BTの角部CRにおける電界を遮蔽することができる。
(12)上記(10)または(11)に係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、第1不純物領域12は、第2不純物領域13と接する第1領域12aと、第1領域12aと接し、第1領域12aから見て第2不純物領域13と反対側に位置し、かつ第1領域12aよりも高い不純物濃度を有する第2領域12bと、第2領域12bと接し、第2領域12bから見て第1領域12aと反対側に位置し、かつ第2領域12bよりも低い不純物濃度を有する第3領域12cとを有する。これにより、オフ時には、低い不純物濃度を有する第1領域12aに空乏層が広がることでトレンチTRにおける電界が緩和されることにより、高い耐圧を維持することができる。オン時には、ゲート電極27に印加される電圧により、高い不純物濃度を有する第2領域12bからキャリアをトレンチTRの周りに集めることができる。結果として、高い導電性を実現することができるのでオン抵抗を低減することができる。つまり、オン抵抗を低減し、かつ耐圧を向上可能することができる。
(13)上記(10)〜(12)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置1において好ましくは、炭化珪素基板10は、第2導電型を有し、第2の主面10bを構成し、かつ第1不純物領域12に接して設けられた第2導電型エピタキシャル層29と、第2導電型を有し、第2導電型エピタキシャル層29と第1不純物領域12とに接し、第2導電型エピタキシャル層29よりも高い不純物濃度を有し、かつ周期的に設けられたキャリア注入領域28とをさらに含む。これにより、キャリア注入領域28からキャリアの注入を促進することにより、オン抵抗を低減することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFETの構成について説明する。
図1を参照して、実施の形態1に係るMOSFET1は、炭化珪素基板10と、ゲート電極27と、ゲート絶縁膜15と、層間絶縁膜21と、ソース電極16と、ソース配線19と、ドレイン電極20と、保護膜24とを主に有している。炭化珪素基板10は、第1の主面10aと、第1の主面10aと反対側の第2の主面10bとを有し、炭化珪素単結晶基板11と、炭化珪素単結晶基板11上に設けられた炭化珪素エピタキシャル層5とを主に含む。
炭化珪素単結晶基板11は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素単結晶からなる。炭化珪素基板10の第1の主面10aの最大径は、たとえば150mmであり、好ましくは150mm以上である。炭化珪素基板10の第1の主面10aは、たとえば{0001}面または{0001}面から8°以下オフした面である。炭化珪素単結晶基板11の厚みは、たとえば400μmである。炭化珪素単結晶基板11の抵抗率はたとえば0.017Ωcmである。
炭化珪素エピタキシャル層5は、第1不純物領域12と、ベース領域13(第2不純物領域13)と、ソース領域14(第3不純物領域14)と、コンタクト領域18と、埋込領域17と、バッファ層22とを主に有している。バッファ層22は、炭化珪素単結晶基板11上に設けられている。第1不純物領域12は、バッファ層22上に設けられている。第1不純物領域12およびバッファ層22の各々は、窒素などのn型を付与するためのn型不純物(ドナー)を含むn型(第1導電型)の領域である。第1不純物領域12は、ベース領域13と、埋込領域17とに接する。
第1不純物領域12が含む窒素などのn型不純物の濃度および第1不純物領域12の厚みは、耐圧によって変化する。耐圧が1200Vの場合、第1不純物領域12の厚みは、たとえば10μm程度であり、かつ第1不純物領域12が含む窒素濃度は1×1016cm-3程度である。また耐圧が1700Vの場合、第1不純物領域12の厚みは、たとえば20μm程度であり、かつ第1不純物領域12が含む窒素濃度は5×1015cm-3程度である。さらに耐圧が3300Vの場合、第1不純物領域12の厚みは、たとえば30μm程度であり、かつ第1不純物領域12が含む窒素濃度は3×1015cm-3程度である。
好ましくは、バッファ層22が含む窒素などのn型不純物の濃度は、炭化珪素単結晶基板11が含む窒素などのn型不純物の濃度よりも低い。炭化珪素単結晶基板11が含む窒素などのn型不純物の濃度は、たとえば5×1018cm-3以上9×1018cm-3以下である。バッファ層22が含む窒素などのn型不純物の濃度は、たとえば1×1018cm-3以上2×1018cm-3以下である。好ましくは、第1不純物領域12が含む窒素などのn型不純物の濃度は、バッファ層22が含む窒素などのn型不純物の濃度よりも低い。
ベース領域13(第2不純物領域13)は、第1不純物領域12と接するように第1不純物領域12および埋込領域17の各々上に設けられている。ベース領域13は、n型とは異なるp型(第2導電型)を有する領域である。ベース領域13は、たとえばAl(アルミニウム)またはB(ホウ素)などのp型を付与するためのp型不純物(アクセプタ)を含んでいる。ベース領域13におけるアルミニウムなどのp型不純物の濃度は、たとえば7×1015cm-3である。ベース領域13は、たとえばエピタキシャル成長により形成されたエピタキシャル層である。ベース領域13の厚みは、たとえば0.5μmである。
ソース領域14(第3不純物領域14)は、ベース領域13によって第1不純物領域12から隔てられるようにベース領域13上に設けられている。ソース領域14は、リンなどのn型を付与するためのn型不純物を含んでおり、n型を有する。ソース領域14が含むn型不純物の濃度は、第1不純物領域12が含むn型不純物の濃度よりも高い。ソース領域14が含むリンなどのn型不純物の濃度は、たとえば1×1020cm-3である。
コンタクト領域18は、たとえばアルミニウムまたはホウ素などのp型不純物を含むp型領域である。コンタクト領域18は、ソース領域14およびベース領域13の各々に挟まれるように、ソース領域14およびベース領域13の各々を貫通して埋込領域17に達するように設けられている。言い換えれば、コンタクト領域18は、炭化珪素基板10の第1の主面10aと埋込領域17とを繋ぐように形成されている。コンタクト領域18が含むp型不純物の濃度は、ベース領域13が含むp型不純物の濃度よりも高い。コンタクト領域18が含むアルミニウムなどのp型不純物の濃度は、たとえば1×1020cm-3である。
埋込領域17は、たとえばアルミニウムまたはホウ素などのp型不純物を含み、p型を有する。埋込領域17は、ベース領域13よりも高い不純物濃度を有する。埋込領域17が含むたとえばアルミニウムなどのp型不純物の濃度は、たとえば5×1017cm-3以上8×1018cm-3以下である。なお上記各領域に含まれている不純物の元素および濃度は、たとえばSCM(Scanning Capacitance Microscope)またはSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などにより測定可能である。
埋込領域17は、コンタクト領域18およびベース領域13の各々と接する。炭化珪素基板10の第2の主面10b側のベース領域13の端部13aの一部から第2の主面10bに向かって延在するように設けられている。言い換えれば、埋込領域17は、ベース領域13から見てソース領域14とは反対側に位置しており、かつコンタクト領域18から見てソース電極16とは反対側に位置している。第1の主面10aに平行な方向における埋込領域17の幅は、コンタクト領域18の幅よりも大きくてもよい。
第2の主面10b側の埋込領域17の端部および埋込領域17の側部は、断面視(炭化珪素基板10の第1の主面10aと平行な方向に沿った視野、つまり図1の視野)において、第1不純物領域12の一部は、2つの埋込領域17の部分に挟まれるように形成されている。
炭化珪素基板10の第1の主面10aには、第1の主面10aと連接する側部SWと、側部SWと連接する底部BTとを有するトレンチTRが形成されている。トレンチTRの側部SWは、ソース領域14およびベース領域13の各々を貫通し、第1不純物領域12に至り、トレンチTRの底部BTは、第1不純物領域12に位置する。つまり、第1不純物領域12と、ベース領域13と、ソース領域14とは、トレンチの側部SWに接し、第1不純物領域12はトレンチTRの底部BTに接する。トレンチTRの側部SWは、炭化珪素基板10の第1の主面10aの法線方向とほぼ平行な方向に沿って延在しており、かつトレンチTRの底部BTは、炭化珪素基板10の第1の主面10aとほぼ平行である。トレンチTRの側部SWと底部BTとの境界は曲率を有するように形成されていてもよい。埋込領域17は、トレンチTRの側部SWと底部BTとが接する角部に対向して設けられる。トレンチTRの底部BTは、第1の主面10a側の埋込領域17の端部に沿った面よりも第2の主面10b側に位置し、第2の主面10b側の埋込領域17の端部に沿った面よりも第1の主面10a側に位置する。
トレンチTRの深さH1が0.3μmよりも小さい場合、チャネルの形成が困難となる。トレンチTRの深さH1が3μmよりも大きい場合、トレンチの形状を制御することが困難となる。そのため、トレンチTRの深さH1は、0.3μm以上3μm以下であることが好ましい。より好ましくは、トレンチTRの深さH1は、0.3μm以上2μm以下であり、さらに好ましくは0.8μm以上1.5μm以下である。トレンチTRの深さH1は、トレンチTRの幅よりも小さいことが好ましい。トレンチTRの深さH1がトレンチTRの幅よりも小さい場合、トレンチTRの側部SWおよび底部BTに接して均一な厚みのゲート絶縁膜15を容易に形成することができる。
トレンチTRの側部SWと埋込領域17の側面との距離Dが0.2μmよりも小さい場合、チャネルからの電流の拡がりが妨げられオン抵抗が増加する。トレンチTRの側部SWと埋込領域17の側面との距離Dが5μmよりも大きい場合、埋込領域17によってトレンチTRの底部BTにおける電界が遮蔽される効果が低減する。そのため、炭化珪素基板10の第1の主面10aと平行な方向における、トレンチTRの側部SWと、側部SWに対向する埋込領域17の側面との距離Dは、0.2μm以上5μm以下であることが好ましい。より好ましくは、トレンチTRの側部SWと、側部SWに対向する埋込領域17の側面との距離Dは、1μm以上2μm以下である。
以上のように、n型領域を有する第1不純物領域12と、p型を有する埋込領域17とによるpn接合で挟まれたJFET領域で耐圧確保のチャネルが形成される。トレンチTRの側部SWに接するベース領域13において電流制御のチャネルが形成される。電流制御のチャネルに流れる電流と、JFET領域を流れる電流の方向とをほぼ同じ方向にすることで、ゲート絶縁膜15に接するゲート電極27で電流を制御すると同時に、JFET領域で耐圧を確保する。
ゲート絶縁膜15は、たとえば二酸化珪素からなり、トレンチTRの側部SWと、底部BTとに接するように設けられている。ゲート絶縁膜15は、トレンチTRの側部SWにおいて、第1不純物領域12と、ベース領域13と、ソース領域14とに接し、トレンチTRの底部BTにおいて、第1不純物領域12と接する。ゲート絶縁膜15に接するベース領域13にチャネル領域CHが形成可能に構成されている。
ゲート電極27は、ゲート絶縁膜15に接触して配置され、ゲート絶縁膜15により形成される溝を埋めるように設けられている。ゲート電極27は、ソース領域14から露出して設けられていてもよい。ゲート電極27は、たとえば不純物がドーピングされたポリシリコンなどの導電体からなっている。
ソース電極16は、たとえばNiとTiとを含む材料からなる。ソース電極16は、炭化珪素基板10の第1の主面10aにおいてソース領域14およびコンタクト領域18の各々と接する。ソース電極16は、ソース領域14とオーミック接合している合金層を含む。合金層は、たとえばソース電極16が含む金属とのシリサイドである。好ましくは、ソース電極16は、Tiと、Alと、Siを含む材料からなる。
層間絶縁膜21は、炭化珪素基板10の第1の主面10aに対向する位置に設けられている。具体的には、層間絶縁膜21は、ゲート電極27を覆うようにゲート電極27およびゲート絶縁膜15の各々に接して設けられている。層間絶縁膜21は、たとえばTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)酸化膜と、PSG(Phosphorus Silicon Glass)とを含む。層間絶縁膜21は、ゲート電極27とソース電極16とを電気的に絶縁している。ソース配線19は、層間絶縁膜21を覆い、かつソース電極16に接するように設けられている。ソース配線19は、ソース電極16を介してソース領域14と電気的に接続されている。ソース配線19は、たとえばAlSiCuを含む材料からなる。保護膜24は、ソース配線19を覆うように、ソース配線19上に設けられている。保護膜24は、たとえば窒化膜とポリイミドとを含む。
ドレイン電極20は、炭化珪素基板10の第2の主面10bに接して設けられている。このドレイン電極20は、たとえばNiSi(ニッケルシリサイド)など、n型の炭化珪素単結晶基板11とオーミック接合可能な材料からなっている。これにより、ドレイン電極20は炭化珪素単結晶基板11と電気的に接続されている。
図2を参照して、炭化珪素基板10の面方位について説明する。炭化珪素基板10の第1の主面10aは、たとえば{0001}面(破線で示す面)からオフ角θだけオフ方向a1にオフした面である。オフ方向とは、第1の主面10aの法線ベクトルzが[0001]方向から傾斜している方向である。図2において、方向cは[0001]方向(つまり六方晶炭化珪素のc軸)であり、オフ方向a1はたとえば<11−20>方向である。オフ角θは、好ましくは8°以下の角度である。面内オフ方向とは、オフ方向を第1の主面10aに投影した方向である。図2の場合において、面内オフ方向はa11方向である。オフ方向a1と面内オフ方向a11とにより形成される角度は、オフ角θと等しい。なお、オフ方向a1はたとえば<11−20>方向に限定されない。オフ方向a1は、たとえば<1−100>方向であってもよい。
図3を参照して、半導体チップ40内に形成されたトレンチTRの平面構造について説明する。なお、図1は、図3における領域I−Iで見た断面図である。つまり、図1の奥行方向は、面内オフ方向a11に対応する。平面視(炭化珪素基板10の第1の主面10aの法線方向に沿った視野)において、トレンチTRの底部BTは、たとえば長方形の形状を有している。長方形の長手方向は、たとえば面内オフ方向a11と同じ方向である。面内オフ方向a11は、たとえば<11−20>方向を第1の主面10aに投影した方向であり、<11−20>方向の成分を含む方向である。長方形の短手方向は、第1の主面10aと平行な方向であり、かつ面内オフ方向a11と垂直な方向a21である。方向a21は、たとえば<1−100>方向である。半導体チップ40は、トレンチTRの短手方向に並んで配置された複数のトレンチTRと、複数のトレンチTRを取り囲むガードリング41とを含んでいてもよい。トレンチTRは、たとえば<1−100>方向に沿って周期的に配置されている。
図4は、図3における領域IVの拡大図である。図4に示すように、トレンチTRの側部SWは、第1側部SW1と、第2側部SW2とを含む。トレンチTRの第1側部SW1は、オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aの法線方向と垂直な方向a21の面方位を有する面である。第1側部SW1は、たとえば<1−100>方向の法線を有する(1−100)面である。トレンチTRの第2側部SW2は、面内オフ方向a11の面方位を有する面である。第2側部SW2は、たとえば<11−20>方向の成分を含む法線を有する面である。
図4を参照して、埋込領域17は、第1埋込領域17aと、第2埋込領域17bとを含んでいてもよい。平面視において、第1埋込領域17aは、トレンチTRの側部SW全体を囲うように形成されている。第2埋込領域17bは、平面視において、トレンチTRの底部BTの4つの角部CRと重なるように配置されている。言い換えれば、第1の主面10aの法線方向から見て、埋込領域17は、トレンチTRの底部BTの角部CRに重なるように配置され、隣り合う2つの角部CRに挟まれた領域においては底部BTと重ならないように、底部BTの外側に配置されている。
図5を参照して、ベース領域13と、埋込領域17とにおける不純物濃度の分布について説明する。ベース領域13および埋込領域17の各々は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでいる。ベース領域13におけるp型不純物の不純物濃度d1は、埋込領域17におけるp型不純物の不純物濃度の最大値よりも低い。ベース領域13は、エピタキシャル成長により形成された不純物領域であるため、ベース領域13内における不純物濃度は、第1の主面10aの法線方向(つまり図1の矢印Xの方向)においてほぼ一定である。埋込領域17は、多段イオン注入により形成された不純物領域であるため、第1の主面10aの法線方向に沿った方向において、複数の極大値を有する。埋込領域17における、ベース領域13の不純物濃度d1の4倍の不純物濃度d2(=d1×4)を有する位置c1、c2、c3、c4の中でベース領域13に最も近い位置c1から、ベース領域13と埋込領域17との境界部b1までの、第1の主面10aの法線方向に沿った距離Aは0.3μm以下である。
次に、実施の形態1に係るMOSFET1の動作について説明する。図1を参照して、ゲート電極27に印加された電圧が閾値電圧未満の状態、すなわちオフ状態では、ソース電極16とドレイン電極20との間に電圧が印加されても、ベース領域13と第1不純物領域12との間に形成されるpn接合が逆バイアスとなり、非導通状態となる。一方、ゲート電極27に閾値電圧以上の電圧が印加されると、ベース領域13のゲート絶縁膜15と接触する付近であるチャネル領域において反転層が形成される。その結果、ソース領域14と第1不純物領域12とが電気的に接続され、ソース電極16とドレイン電極20との間に電流が流れる。以上のようにして、MOSFET1は動作する。
次に、実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の製造方法について説明する。
図7を参照して、たとえば改良レーリー法により成長させた炭化珪素単結晶インゴットをスライスして基板を切り出し、基板の表面に対して鏡面研磨を行うことにより、炭化珪素単結晶基板11が準備される。炭化珪素単結晶基板11は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素である。炭化珪素単結晶基板11の主面の直径はたとえば150mmであり、厚みはたとえば400μmである。炭化珪素単結晶基板11の主面は、たとえば{0001}面または{0001}面から8°以下程度オフした面である。
次に、n型エピタキシャル層形成工程(S10:図6)が実施される。たとえば、炭化珪素単結晶基板11上に、水素を含むキャリアガスと、シラン、プロパンを含む原料ガスと、窒素を含むドーパントガスが供給され、100mbar(10kPa)の圧力下、炭化珪素単結晶基板11が、たとえば1550℃程度に加熱される。これにより、図8に示すように、n型を有する炭化珪素エピタキシャル層5が炭化珪素単結晶基板11上に形成される。炭化珪素エピタキシャル層5は、炭化珪素単結晶基板11上に形成されたバッファ層22と、バッファ層22上に形成された第1不純物領域12とを有する。第1不純物領域12には窒素がドーピングされており、窒素の濃度は、たとえば1.0×1016cm-2である。第1不純物領域12の厚みは、たとえば10μmである。以上のように、エピタキシャル成長によりn型を有する第1不純物領域12が形成される。
次に、p型埋込領域形成工程(S20:図6)が実施される。具体的には、図9を参照して、炭化珪素エピタキシャル層5の第1不純物領域12上にイオン注入マスク31が形成される。イオン注入マスクは、TEOS酸化膜を含む材料からなり、イオン注入マスク31の厚みはたとえば1.6μmである。次に、CHF3およびO2を用いてイオン注入マスク31に対してRF(Radio Frequency)エッチングが行われる。これにより、イオン注入が行われる予定の部分上に、たとえば80nm程度のスルー膜が残される。次に、スルー膜を有するイオン注入マスク31を用いて、炭化珪素エピタキシャル層5の第1不純物領域12に対してイオン注入が実施される。たとえばAl(アルミニウム)イオンが、スルー膜を通して炭化珪素エピタキシャル層5内に対して矢印の方向にイオン注入されることにより、p型を有し、かつベース領域13よりも高い不純物濃度を有する埋込領域17が形成される(図10参照)。断面視において、埋込領域17は、間隔を隔てて配置されている複数の埋込領域17の部分を有する。具体的には、埋込領域17は、炭化珪素基板10の第1の主面10aと平行な方向であって、かつ方向a21方向(図3参照)に沿って周期的に配置されている。
第2の主面10b側の埋込領域17の不純物濃度が、第1の主面10a側の埋込領域17の不純物濃度よりも高くなるように、加速電圧およびドーズ量などのイオン注入の条件が調整される。好ましくは、埋込領域17を形成する工程において、第1の主面10aの法線方向から、オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向に対して2°以上10°以下傾いた方向に、たとえばアルミニウムイオンが注入される。オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向とは、たとえば<1−100>方向である。以上のように、第1不純物領域12に対してイオン注入を行うことより、n型とは異なるp型を有し、かつ周期的に配置された埋込領域17が形成される。
次に、p型エピタキシャル層形成工程(S40:図6)が実施される。具体的には、たとえばアルミニウムが7×1015cm-3の不純物濃度でドーピングされたp型を有するベース領域13がエピタキシャル成長により形成される。ベース領域は、埋込領域17と第1不純物領域12とに接するようにエピタキシャル成長により形成される(図11参照)。ベース領域13の厚みは、たとえば0.5μmである。以上のように、第1不純物領域12と埋込領域17とに接し、p型を有し、かつ埋込領域17よりも低い不純物濃度を有するベース領域13がエピタキシャル成長により形成される。
次に、n型ソース領域形成工程(S50:図6)が実施される。図12を参照して、ベース領域13上にイオン注入マスク33が形成される。イオン注入マスクは、たとえばTEOS酸化膜を含む材料からなり、イオン注入マスク31の厚みはたとえば1.6μmである。次に、CHF3およびO2を用いてイオン注入マスク33に対してRFエッチングが行われる。これにより、ソース領域14が形成される領域上に、たとえば80nm程度のスルー膜が残される。次に、スルー膜を有するイオン注入マスク33を用いて、炭化珪素エピタキシャル層5のベース領域13に対してイオン注入が実施される。たとえばP(リン)イオンが、矢印の方向にスルー膜を通して炭化珪素エピタキシャル層5のベース領域13内にイオン注入されることにより、n型を有するソース領域14が形成される(図12参照)。好ましくは、ソース領域14を形成する工程において、第1の主面10aの法線方向から、オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向に対して2°以上10°以下傾いた方向に、たとえばリンイオンが注入される。オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向とは、たとえば<1−100>方向である。以上のように、n型を有し、かつベース領域13によって第1不純物領域12から隔てられるソース領域14が形成される。
次に、p型コンタクト領域形成工程(S60:図6)が実施される。図13を参照して、ベース領域13およびソース領域14上にイオン注入マスク34が形成される。イオン注入マスクは、たとえばTEOS酸化膜を含む材料からなり、イオン注入マスク31の厚みはたとえば1.6μmである。次に、CHF3およびO2を用いてイオン注入マスク34に対してRFエッチングが行われる。これにより、コンタクト領域18が形成される領域上に、たとえば80nm程度のスルー膜が残される。次に、スルー膜を有するイオン注入マスク34を用いて、炭化珪素エピタキシャル層5のベース領域13に対してイオン注入が実施される。たとえばアルミニウムイオンが、埋込領域17に達する深さまで、ベース領域13に対して注入される。これにより、ソース領域14およびベース領域13の各々に挟まれ、炭化珪素基板10の第1の主面10aと埋込領域17とを繋ぐように形成され、かつ導電型がp型のコンタクト領域18が形成される(図13参照)。好ましくは、コンタクト領域18を形成する工程において、第1の主面10aの法線方向から、オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向に対して2°以上10°以下傾いた方向に、たとえばアルミニウムイオンが注入される。オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向とは、たとえば<1−100>方向である。
次に、活性化アニール工程が実施される。イオン注入マスク34が、炭化珪素基板10の第1の主面10aから除去された後、炭化珪素基板10の第1の主面10aが保護膜により覆われる。次に、炭化珪素基板10が、アルゴン雰囲気中において、たとえば1650℃以上1750℃以下の温度で30分間程度加熱される。これにより、ベース領域13が含んでいるアルミニウムなどのp型不純物と、ソース領域14が含んでいるリンなどのn型不純物と、コンタクト領域18が含むアルミニウムなどのp型不純物とが活性化される。
次に、トレンチ形成工程(S70:図6)が実施される。図14を参照して、ソース領域14およびコンタクト領域18上にエッチングマスク35が形成される。エッチングマスク35、たとえばTEOS酸化膜を含む材料からなり、エッチングマスク35の厚みはたとえば1.6μmである。次に、CHF3およびO2を用いて、トレンチTRが形成される領域上のエッチングマスク35に対してRFエッチングが行われるによりエッチングマスク35に開口が形成される。次に、トレンチTRが形成される領域上に開口が形成されたエッチングマスク35を用いて、炭化珪素基板10に対してエッチングが行われる。たとえば、SF6およびO2を用いて、炭化珪素基板10に対してECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマエッチングが行われる。これにより、炭化珪素基板10の第1の主面10aに連接する側部SWと、側部SWと連接する底部BTとを有するトレンチTRが形成される。ソース領域14と、ベース領域13と、第1不純物領域12とはトレンチTRの側部SWに露出し、かつ第1不純物領域12はトレンチTRの底部BTに露出する。
図3および図14を参照して、方向a21方向に沿ったトレンチTRの周期は、方向a2方向に沿った埋込領域17の周期と同じである。トレンチTRの周期が、埋込領域17の周期と同じとは、隣接する2つのトレンチTRの間隔が、隣接する2つの埋込領域17の間隔とほぼ同じことを意味し、アライメント誤差などがあっても構わない。言い換えれば、1つのトレンチTRに対して対応する1つの埋込領域17が設けられていればよい。以上のように、ベース領域13とソース領域14とを貫通して第1不純物領域12に至る側部SWと、側部SWと連接する底部BTとを有し、かつ埋込領域17と同じ周期で配置されたトレンチTRが形成される。
好ましくは、トレンチTRを形成する工程において、トレンチTRの側部SWが埋込領域17から第1不純物領域12によって離間されるようにトレンチTRが形成される。炭化珪素基板10の第1の主面10aと平行な方向における、トレンチTRの側部SWと、側部SWに対向する埋込領域17の側面との距離D(図1参照)は0.2μm以上5μm以下である。好ましくは、炭化珪素基板10の第1の主面10aの法線方向におけるトレンチTRの深さHは、0.3μm以上3μm以下であり、かつ炭化珪素基板10の第1の主面10aと平行な方向におけるトレンチTRの幅よりも小さい。
好ましくは、炭化珪素基板10の第1の主面10aは、{0001}面からオフ方向a1にオフした面である。図4に示すように、トレンチTRの側部SWは、第1側部SW1と、第2側部SW2とを含む。トレンチTRの第1側部SW1は、オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aの法線方向と垂直な方向a21の面方位を有する面である。トレンチTRの第2側部SW2は、面内オフ方向a11の面方位を有する面である。
好ましくは、トレンチTRを形成する工程において、第1の主面10aの法線方向から見て、トレンチTRの底部BTの角部CRが埋込領域17に重なるようにトレンチTRが形成される。図4を参照して、埋込領域17は、第1埋込領域17aと、第2埋込領域17bとを含んでいてもよい。平面視において、第1埋込領域17aは、トレンチTRの側部SW全体を囲うように形成される。第2埋込領域17bは、平面視において、トレンチTRの底部BTの4つの角部CRと重なるように形成される。言い換えれば、第1の主面10aの法線方向から見て、埋込領域17が、トレンチTRの底部BTの角部CRに重なるように配置され、隣り合う2つの角部CRに挟まれた領域においては底部BTと重ならないように、底部BTの外側に配置されるようにトレンチTRが形成される。
次に、ゲート酸化膜形成工程(S80:図6)が実施される。具体的には、第1の主面10aにトレンチTRが形成された炭化珪素基板10が加熱炉内に配置される。加熱炉に対して酸素を導入し、たとえば1100℃以上1200℃以下の温度で炭化珪素基板10をドライ酸化することにより、トレンチTRの側部SWおよび底部BTに接するゲート絶縁膜15が形成される。ゲート絶縁膜15は、トレンチTRの側部SWにおいて、第1不純物領域12と、ベース領域13と、ソース領域14とに接し、かつトレンチTRの底部BTにおいて第1不純物領域12と接する(図15参照)。ゲート絶縁膜15の厚みは、たとえば90nm程度である。
次に、NOアニール工程が実施される。具体的には、窒素を含む雰囲気中において第1の主面10aにおいてゲート絶縁膜15が形成された炭化珪素基板10が、たとえば1250℃以上1350℃の温度で熱処理される。窒素を含む気体とは、たとえば窒素で10%希釈された一酸化二窒素などである。好ましくは、ゲート絶縁膜15が形成された炭化珪素基板10が、窒素を含む気体中においてたとえば60分程度保持される。
次に、ゲート絶縁膜15により形成された溝を埋めるようにゲート電極27が形成される。ゲート電極27は、たとえば不純物を含むポリシリコンを含む材料からなる。次に、ゲート電極27を覆い、かつコンタクト領域18とソース領域14とに接するように層間絶縁膜21が形成される。層間絶縁膜21は、たとえばTEOS酸化膜と、PSGとを含む。
次に、ソース電極16が形成される予定の領域において層間絶縁膜21が除去されることにより、ソース領域14およびコンタクト領域18の各々が、層間絶縁膜21から露出する。次に、ソース電極16が、炭化珪素基板10の第1の主面10aにおいて、ソース領域14およびコンタクト領域18の双方と接するように、たとえばスパッタリングにより形成される。ソース電極16は、たとえばNiおよびTiを含む。好ましくは、ソース電極16は、TiAlSiを含む材料からなる。次に、炭化珪素基板10の第1の主面10aにおいて、ソース領域14およびコンタクト領域18の各々に接して設けられたソース電極16が形成された炭化珪素基板10に対して、たとえば900℃以上1100℃以下のRTA(Rapid Thermal Anneal)が2分程度実施される。これにより、ソース電極16の少なくとも一部が、炭化珪素基板が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域14とオーミック接合するソース電極16が形成される。好ましくは、ソース電極16は、ソース領域14およびコンタクト領域18の各々とオーミック接合する。
図1を参照して、ソース電極16に接し、かつ層間絶縁膜21を覆うようにソース配線19が形成される。ソース配線19は、好ましくはAlを含む材料からなり、たとえばAlSiCuを含む材料からなる。次に、ソース配線19を覆うように保護膜24が形成される。保護膜24は、たとえば窒化膜とポリイミドとを含む材料からなる。次に、炭化珪素基板10の第2の主面10bと接して、たとえばNiSiからなるドレイン電極20が形成される。ドレイン電極20は、たとえばTiAlSiなどであっても構わない。ドレイン電極20の形成は、好ましくはスパッタリング法により実施されるが、蒸着により実施されても構わない。当該ドレイン電極20が形成された後、当該ドレイン電極20がたとえばレーザーアニールにより加熱される。これにより、当該ドレイン電極20の少なくとも一部がシリサイド化し、炭化珪素単結晶基板11とオーミック接合するドレイン電極20が形成される。以上のように、図1に示すMOSFET1が製造される。
次に、実施の形態1に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1およびその製造方法の作用効果について説明する。
実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、第1不純物領域12に対してイオン注入を行うことより埋込領域17が形成された後、第1不純物領域12と埋込領域17とに接して、埋込領域17よりも低い不純物濃度を有するベース領域13がエピタキシャル成長により形成される。そのため、ベース領域13を形成した後にベース領域13の表面からイオン注入することにより埋込領域17を形成する場合と比較して、イオン注入エネルギーを低減することができる。結果として、高イオン注入エネルギーのためにイオンのチャネリングおよび多重散乱が発生し、イオン注入された不純物が拡がることで電流の流れを妨げることを抑制することができる。また第1不純物領域12と埋込領域17とで形成されるpn接合が炭化珪素基板10の第1の主面10aから深く離れた位置に形成されるため、トレンチTRにおける電界を効果的に遮断することができる。さらにチャネルとなる第2不純物領域13がエピタキシャル成長により形成されるため、高品質のチャネルを実現することができる。
また実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、トレンチTRを形成する工程において、トレンチTRの側部SWが埋込領域17から第1不純物領域12によって離間されるようにトレンチTRが形成される。第1の主面10aと平行な方向における、トレンチTRの側部SWと、側部SWに対向する埋込領域17の側面との距離は0.2μm以上5μm以下である。トレンチTRの側部SWと埋込領域17の側面との距離Dが0.2μmよりも小さい場合、チャネルからの電流の拡がりが妨げられオン抵抗が増加する。トレンチTRの側部SWと埋込領域17の側面との距離Dが5μmよりも大きい場合、埋込領域17によってトレンチTRの底部BTにおける電界が遮蔽される効果が低減する。
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、第1の主面10aの法線方向におけるトレンチTRの深さH1は、0.3μm以上3μm以下であり、かつ第1の主面10aと平行な方向におけるトレンチTRの幅よりも小さい。トレンチTRの深さH1が0.3μmよりも小さい場合、チャネルの形成が困難となる。トレンチTRの深さH1が3μmよりも大きい場合、トレンチの形状を制御することが困難となる。
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、炭化珪素基板10の第1の主面10aは、{0001}面からオフ方向にオフした面である。トレンチTRの側部SWは、オフ方向に垂直であり、かつ第1の主面10aの法線方向と垂直な面方位を有する面SW1を含む。オフ方向と直角方向の法線を有する面を主なトレンチの側壁とすることにより、側壁の面方位のずれを最小限にすることができる。またオフ方向がたとえば<11−20>方向である場合、より平坦な炭化珪素エピタキシャル層5を形成することができる。
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、埋込領域17を形成する工程は、第1の主面10aの法線方向から、オフ方向に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向に対して2°以上10°以下傾いた方向にイオン注入が行われる。オフ方向に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向に対して2°以上10°以下傾いた方向にイオン注入が行われることにより、効果的にチャネリングを抑制することができる。また耐圧の劣化が発生しやすいトレンチTRの底部BTの角部CRに埋込領域17を形成する場合に、埋込領域17の位置ずれが発生することを効果的に抑制することができる。
さらに実施の形態1に係るMOSFET1の製造方法によれば、トレンチTRを形成する工程において、第1の主面10aの法線方向から見て、トレンチTRの底部BTの角部CRが埋込領域17に重なるようにトレンチTRが形成される。これにより、耐圧の劣化が発生しやすいトレンチTRの底部BTの角部CRにおける電界を遮蔽することができる。
実施の形態1に係るMOSFET1によれば、埋込領域17における、ベース領域13の不純物濃度の4倍の不純物濃度を有する位置の中でベース領域13に最も近い位置から、ベース領域13と埋込領域17との境界部までの、第1の主面10aの法線方向に沿った距離は0.3μm以下である。これにより、埋込領域17で、十分に電界を遮蔽してソース部の容量を低減する効果がある。
また実施の形態1に係るMOSFET1によれば、第1の主面10aの法線方向から見て、トレンチTRの底部BTの角部CRは、埋込領域17と重なるように配置されている。これにより、耐圧の劣化が発生しやすいトレンチTRの底部BTの角部CRにおける電界を遮蔽することができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFETの構成について説明する。実施の形態2に係るMOSFETは、埋込領域17がトレンチTRの底部BTに接している点において実施の形態1に係るMOSFETと異なっており、他の構成は、実施の形態1に係るMOSFETと同様である。そのため、同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図16を参照して、埋込領域17は、トレンチTRの底部BTから第2の主面10bに向かって延在するように設けられている。埋込領域17の側部および下端部の各々は、第1不純物領域12と接する。埋込領域17は、p型を有し、ベース領域13よりも高い不純物濃度を有する。埋込領域17は、炭化珪素基板10内の一部の領域においてコンタクト領域18と短絡(接続)されている。ゲート絶縁膜15は、トレンチTRの底部BTにおいて、埋込領域17および第1不純物領域12の双方に接している。コンタクト領域18は、ベース領域13を貫通しておらず、コンタクト領域18の下端部は、ベース領域13の下端部よりも第1の主面10a側に位置する。
好ましくは、第1の主面10aと平行な方向における、埋込領域17の幅W1は、トレンチTRの底部BTの幅W2よりも小さい。トレンチTRの底部BTの幅W2から埋込領域17の幅W1を差し引いた値は、たとえば0.1μm以上0.4μm以下である。第1の主面10aの法線方向から見た場合、埋込領域17は、トレンチの底部BTからはみ出ないように形成されていることが好ましい。トレンチTRの底部BTの幅W2を埋込領域17の幅W1よりも0.1μm以上大きくすることにより、埋込領域17の側面からの空乏層に妨げられることなく、チャネルから流れる電流が広がるのでオン抵抗を低減することができる。トレンチTRの底部BTの幅W2を埋込領域17の幅W1よりも0.4μm以下小さくすることにより、トレンチTRの側部SWと底部BTとが接続する角部に電界が集中することを抑制することができる。
図16を参照して、断面視(炭化珪素基板10の第1の主面10aと平行な方向に沿った視野、つまり図16の視野)において、トレンチTRは、埋込領域17と同じ対称軸を有し、当該対称軸に対して線対称(左右対称)であることが好ましい。トレンチTRの形状が左右対称であることにより、電界が局所的に集中することを抑制することができる。
次に、実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の製造方法について説明する。実施の形態2に係るMOSFETの製造方法は、トレンチを形成する工程において、埋込領域がトレンチの底部に露出するようにトレンチが形成される点において実施の形態1に係るMOSFETの製造方法と異なっており、他の構成は、実施の形態1に係るMOSFETの製造方法と同様である。そのため、同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図7および図8を参照して、実施の形態1で説明した方法と同様の方法により、n型エピタキシャル層形成工程(S10:図6)が実施される。次に、p型埋込領域形成工程(S20:図6)が実施される。具体的には、図17を参照して、炭化珪素エピタキシャル層5の第1不純物領域12上にイオン注入マスク31が形成される。イオン注入マスクは、TEOS酸化膜を含む材料からなり、イオン注入マスク31の厚みはたとえば1.6μmである。次に、CHF3およびO2を用いてイオン注入マスク31に対してRFエッチングが行われる。これにより、イオン注入が行われる予定の部分上に、たとえば80nm程度のスルー膜が残される。次に、スルー膜を有するイオン注入マスク31を用いて、炭化珪素エピタキシャル層5の第1不純物領域12に対してイオン注入が実施される。たとえばAl(アルミニウム)イオンが、スルー膜を通して炭化珪素エピタキシャル層5内に対して矢印の方向にイオン注入されることにより、p型を有し、かつベース領域13よりも高い不純物濃度を有する埋込領域17が形成される(図17参照)。断面視において、埋込領域17は、間隔を隔てて配置されている複数の埋込領域17の部分を有する。つまり、断面視において、埋込領域17は、炭化珪素基板10の第1の主面10aと平行な方向であって、かつ方向a21方向(図3参照)に沿って周期的に配置されている。
第2の主面10b側の埋込領域17の不純物濃度が、第1の主面10a側の埋込領域17の不純物濃度よりも高くなるように、加速電圧およびドーズ量などのイオン注入の条件が調整される。好ましくは、埋込領域17を形成する工程において、第1の主面10aの法線方向から、オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向に対して2°以上10°以下傾いた方向に、たとえばアルミニウムイオンが注入される。オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向とは、たとえば<1−100>方向である。以上のように、第1不純物領域12に対してイオン注入を行うことより、n型とは異なるp型を有し、かつ周期的に配置された埋込領域17が形成される。
次に、実施の形態1で説明した方法と同様の方法により、p型エピタキシャル層形成工程(S40:図6)およびn型ソース領域形成工程(S50:図6)が実施される。
次に、p型コンタクト領域形成工程(S60:図6)が実施される。図18を参照して、ベース領域13およびソース領域14上にイオン注入マスク34が形成される。イオン注入マスクは、たとえばTEOS酸化膜を含む材料からなり、イオン注入マスク31の厚みはたとえば1.6μmである。次に、CHF3およびO2を用いてイオン注入マスク34に対してRFエッチングが行われる。これにより、コンタクト領域18が形成される領域上に、たとえば80nm程度のスルー膜が残される。次に、スルー膜を有するイオン注入マスク34を用いて、炭化珪素エピタキシャル層5のベース領域13に対してイオン注入が実施される。たとえばアルミニウムイオンが、ソース領域14の下端部よりも第2の主面10b側であって、かつベース領域13の下端部13aよりも第1の主面10a側である深さまで、ベース領域13およびソース領域14の各々に対して注入される。これにより、ソース領域14およびベース領域13の一部の各々に挟まれ、かつ導電型がp型のコンタクト領域18が形成される(図18参照)。
次に、トレンチ形成工程(S70:図6)が実施される。図19を参照して、ソース領域14およびコンタクト領域18上にエッチングマスク35が形成される。エッチングマスク35、たとえばTEOS酸化膜を含む材料からなり、エッチングマスク35の厚みはたとえば1.6μmである。次に、CHF3およびO2を用いて、トレンチTRが形成される領域上のエッチングマスク35に対してRFエッチングが行われるによりエッチングマスク35に開口が形成される。次に、トレンチTRが形成される領域上に開口が形成されたエッチングマスク35を用いて、炭化珪素基板10に対してエッチングが行われる。たとえば、SF6およびO2を用いて、炭化珪素基板10に対してECRプラズマエッチングが行われる。これにより、炭化珪素基板10の第1の主面10aに連接する側部SWと、側部SWと連接する底部BTとを有するトレンチTRが形成される。ソース領域14と、ベース領域13と、第1不純物領域12とはトレンチTRの側部SWに露出し、かつ第1不純物領域12と埋込領域17とはトレンチTRの底部BTに露出する。言い換えれば、埋込領域17がトレンチTRの底部BTに露出するようにトレンチTRが形成される。
図3および図19を参照して、方向a21方向に沿ったトレンチTRの周期は、方向a2方向に沿った埋込領域17の周期と同じである。具体的には、複数のトレンチTRの底部BTの各々に接して、対応する1つの埋込領域17が設けられている。以上のように、ベース領域13とソース領域14とを貫通して第1不純物領域12に至る側部SWと、側部SWと連接する底部BTとを有し、かつ埋込領域17と同じ周期で配置されたトレンチTRが形成される。好ましくは、炭化珪素基板10の第1の主面10aの法線方向におけるトレンチTRの深さHは、0.3μm以上3μm以下であり、かつ炭化珪素基板10の第1の主面10aと平行な方向におけるトレンチTRの幅よりも小さい。
好ましくは、炭化珪素基板10の第1の主面10aと平行な方向における、トレンチTRの底部BTの幅は、埋込領域17の幅よりも大きくなるようにトレンチTRが形成される。図16を参照して、トレンチTRの底部BTの幅W2から埋込領域17の幅W1を差し引いた値は、たとえば0.1μm以上0.4μm以下である。好ましくは、第1の主面10aの法線方向から見た場合、埋込領域17が、トレンチの底部BTからはみ出ないようにトレンチTRが形成される。
次に、実施の形態1で説明した方法と同様の方法により、ゲート酸化膜形成工程(S80:図6)およびゲート電極形成工程(S90:図6)などが実施されることにより、図16に示すMOSFETが製造される。
次に、実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の作用効果について説明する。
実施の形態2に係るMOSFET1の製造方法によれば、トレンチTRを形成する工程において、埋込領域17がトレンチTRの底部BTに露出するようにトレンチTRが形成される。これにより、トレンチTRの底部BTが効果的に高電界から遮蔽されることにより、耐圧を向上させることができる。
また実施の形態2に係るMOSFET1の製造方法によれば、第1の主面10aと平行な方向における、トレンチTRの底部BTの幅は、埋込領域17の幅よりも大きい。これにより、埋込領域17の側面から広がる空乏層によって電流の流れが妨げられることを抑制することができる。結果として、オン抵抗を低減することができる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFETの構成について説明する。実施の形態3に係るMOSFETは、第1不純物領域12が、第1領域12aと、第2領域12bと、第3領域12cとを有している点において実施の形態1に係るMOSFETと異なっており、他の構成は、実施の形態1に係るMOSFETと同様である。そのため、同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図20を参照して、第1不純物領域12は、バッファ層22上に設けられた第3領域12cと、第3領域12c上に設けられた第2領域12bと、第2領域12b上に設けられた第1領域12aとを有する。第1領域12aは、ベース領域13と接する。第2領域12bは、第1領域12aと接し、第1領域12aから見てベース領域13と反対側に位置する。第3領域12cは、第2領域12bと接し、第2領域12bから見て第1領域12aと反対側に位置する。
第1領域12aと、第2領域12bと、第3領域12cとは、たとえば窒素などのn型不純物を含んでおり、n型を有する。第2領域12bは、第1領域12aよりも高い不純物濃度を有する。第3領域12cは、第2領域12bよりも低い不純物濃度を有する。好ましくは、第1領域12aが含む窒素などの不純物の濃度は、1.5×1016cm-3以下である。第1領域12aが含む窒素などの不純物の濃度は、第3領域12cが含む窒素などの不純物の濃度よりも高くてもよい。好ましくは、第2領域12bが含む窒素などの不純物の濃度は、2×1016cm-3以上である。第2領域12bが含む窒素などの不純物の濃度は、2×1017cm-3以下であってもよい。第2領域12bが含む窒素などの不純物の濃度が2×1017cm-3以下であれば、埋込領域17において電界集中することで埋込領域17が破壊されることを抑制することができる。
好ましくは、第1の主面10aの法線方向に沿った第1領域12aの厚みH2は、0.1μm以上0.5μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上0.4μm以下である。第1領域12aの厚みH2を0.1μm以上とすることにより、トレンチTRにおける電界集中を効果的に抑制することで耐圧を向上することができる。第1領域12aの厚みH2を0.5μm以下とすることにより、オン抵抗が増加することを抑制することができる。好ましくは、第1の主面10aの法線方向に沿った第2領域12bの厚みは、0.3μm以上2μm以下である。第2領域12bの厚みH3を0.3μm以上とすることにより、キャリアを効果的にトレンチTRに集めることにより、オン抵抗を低減することができる。第2領域12bの厚みH3を2μm以下とすることにより、オン抵抗が増加することを抑制することができる。
好ましくは、第2の主面10b側の埋込領域17の端部は、第2領域12bに接している。埋込領域17の側部は、第1領域12aおよび第2領域12bの各々と接している。第1の主面10aの法線方向に沿った埋込領域17の厚みは、第1領域12aの厚みよりも大きい。断面視において、第1領域12aと、第2領域12bの一部は、2つの埋込領域17の部分に挟まれるように形成されている。第2の主面10b側の埋込領域17の端部は、第2領域12bと第3領域12cとの境界部よりも第2の主面10b側に位置していてもよい。つまり、第2の主面10b側の埋込領域17の端部は、第3領域12cに接していてもよい。
炭化珪素基板10の第1の主面10aには、第1の主面10aと連接する側部SWと、側部SWと連接する底部BTとを有するトレンチTRが形成されている。トレンチTRの側部SWは、ソース領域14およびベース領域13の各々を貫通し、第1領域12aに至り、トレンチTRの底部BTは、第1領域12aに位置する。つまり、第1領域12aと、ベース領域13と、ソース領域14とはトレンチの側部SWに接し、第1領域12aはトレンチTRの底部BTに接する。
ゲート絶縁膜15は、たとえば二酸化珪素からなり、トレンチTRの側部SWと、底部BTとに接するように設けられている。ゲート絶縁膜15は、トレンチTRの側部SWにおいて、第1領域12aと、ベース領域13と、ソース領域14とに接し、トレンチTRの底部BTにおいて、第1領域12aと接する。好ましくは、トレンチTRの底部BTは、第2領域12bおよび第3領域12cの各々から離間して設けられている。
次に、実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の製造方法について説明する。実施の形態3に係るMOSFETの製造方法は、第1領域を形成する工程と、第2領域を形成する工程とを有している点において実施の形態1に係るMOSFETの製造方法と異なっており、他の構成は、実施の形態1に係るMOSFETの製造方法と同様である。そのため、同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図7〜図10を参照して、実施の形態1で説明した方法と同様の方法により、n型エピタキシャル層形成工程(S10:図6)およびp型埋込領域形成工程(S20:図6)などが実施される。
次に、n型第2領域形成工程が実施される。具体的には、イオン注入マスク31の中で第2領域12bが形成される予定の領域上の部分が除去され、たとえば80nmの厚みを有するスルー膜32が残される。次に、スルー膜32上から矢印の方向に、埋込領域17および第3領域12cの双方に対してたとえば窒素イオンが注入される。これにより、断面視において、2つの埋込領域17の部分に挟まれた領域に第2領域12bが形成される。
次に、n型第1領域形成工程が実施される。具体的には、スルー膜32上から矢印の方向に、埋込領域17および第2領域12bの双方に対してたとえば窒素イオンが注入される。これにより、スルー膜32と第2領域12bとに挟まれた領域に第1領域12aが形成される(図21参照)。好ましくは、第2領域12bを形成する工程におけるイオン注入エネルギー(加速電圧)は、第1領域12aを形成する工程におけるイオン注入エネルギー(加速電圧)よりも大きい。言い換えれば、第1の加速電圧を用いて第3領域12cに対してたとえば窒素イオンが注入された後に、第1の加速電圧よりも小さい第2の加速電圧を用いて第2領域12bに対してたとえば窒素イオンが注入される。次に、埋込領域17および第1領域12aの表面からスルー膜32が除去される。
好ましくは、第1領域12aおよび第2領域12bを形成する工程において、第1の主面10aの法線方向から、オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向に対して2°以上10°以下傾いた方向に、たとえば窒素イオンが注入される。オフ方向a1に垂直であり、かつ第1の主面10aに平行な方向とは、たとえば<1−100>方向である。
以上のようにして、埋込領域17に挟まれた領域において、第1領域12aと、第1領域12aよりも不純物濃度の高い第2領域12bとが形成される。好ましくは、第1領域12aの不純物濃度は、1.5×1016cm-3以下である。好ましくは、第2領域12bの不純物濃度は、2×1016cm-3以上である。好ましくは、第1の主面10aの法線方向に沿った第1領域12aの厚みは、0.1μm以上0.5μm以下である。好ましくは、第1の主面10aの法線方向に沿った第2領域12bの厚みは、0.3μm以上2μm以下である。なお、上記では、p型埋込領域形成工程が実施された後に、n型第2領域形成工程およびn型第1領域形成工程が実施される場合について説明したが、n型第2領域形成工程およびn型第1領域形成工程が実施された後に、p型埋込領域形成工程が実施されてもよい。
次に、実施の形態1で説明した方法と同様の方法により、p型エピタキシャル層形成工程(S40:図6)、n型ソース領域形成工程(S50:図6)、p型コンタクト領域形成工程(S60:図6)、トレンチ形成工程(S70:図6)、ゲート酸化膜形成工程(S80:図6)およびゲート電極形成工程(S90:図6)などが実施されることにより、図20に示すMOSFET1が製造される。
次に、実施の形態3に係る炭化珪素半導体装置としてのMOSFET1の作用効果について説明する。
実施の形態3に係るMOSFET1によれば、第1不純物領域12は、第2不純物領域13と接する第1領域12aと、第1領域12aと接し、第1領域12aから見て第2不純物領域13と反対側に位置し、かつ第1領域12aよりも高い不純物濃度を有する第2領域12bと、第2領域12bと接し、第2領域12bから見て第1領域12aと反対側に位置し、かつ第2領域12bよりも低い不純物濃度を有する第3領域12cとを有する。これにより、オフ時には、低い不純物濃度を有する第1領域12aに空乏層が広がることでトレンチTRにおける電界が緩和されることにより、高い耐圧を維持することができる。オン時には、ゲート電極27に印加される電圧により、高い不純物濃度を有する第2領域12bからキャリアをトレンチTRの周りに集めることができる。結果として、高い導電性を実現することができるのでオン抵抗を低減することができる。つまり、オン抵抗を低減し、かつ耐圧を向上可能することができる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る炭化珪素半導体装置としてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の構成について説明する。実施の形態4に係るIGBTは、第1不純物領域12の厚みが100μm程度と厚く、第1不純物領域12の不純物濃度が5×1014cm-3以上1×1015cm-3以下程度であり、裏面電極に接してp型エピタキシャル層を有し、p型エピタキシャル層に接してキャリア注入領域を有する点において実施の形態1に係るMOSFETと異なっており、他の構成は、実施の形態1に係るMOSFETとほぼ同様である。そのため、同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図22を参照して、実施の形態4に係るIGBT1は、炭化珪素基板10と、ゲート電極27と、ゲート絶縁膜15と、層間絶縁膜21と、エミッタ電極16と、エミッタ配線19と、コレクタ電極20と、保護膜24とを主に有している。炭化珪素基板10は、第1不純物領域12と、ベース領域13と、エミッタ領域14と、コンタクト領域18と、p型エピタキシャル層29と、キャリア注入領域28とを主に有している。第1不純物領域12の厚みは、たとえば100μm程度である。第1不純物領域12は、たとえば窒素などのn型不純物を含み、n型を有する。第1不純物領域12が含む窒素などの不純物の濃度は、たとえば5×1014cm-3以上1×1015cm-3以下程度である。
p型エピタキシャル層29(第2導電型エピタキシャル層29)は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含み、p型を有する。p型エピタキシャル層29は、炭化珪素基板10の第2の主面10bを構成し、かつ第1不純物領域12に接して設けられている。p型エピタキシャル層29は、炭化珪素基板10の第2の主面10bにおいてコレクタ電極20と接する。コレクタ電極20は、たとえばTiおよびAlを含む。キャリア注入領域28は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含み、p型を有する。キャリア注入領域28は、p型エピタキシャル層29と第1不純物領域12とに接し、p型エピタキシャル層29よりも高い不純物濃度を有する。断面視において、キャリア注入領域28は、周期的に設けられたキャリア注入領域28の部分を有する。断面視において、キャリア注入領域28は、トレンチTRの短手方向(図3参照)に沿って間隔をあけて周期的に設けられている。好ましくは、キャリア注入領域28が含むたとえばアルミニウムなどのp型不純物の濃度は、埋込領域17が含むp型不純物の濃度と同じか、もしくは埋込領域17が含む不純物の濃度よりも高い。
次に、実施の形態4に係る炭化珪素半導体装置としてのIGBT1の製造方法について説明する。実施の形態4に係るIGBTの製造方法は、キャリア注入領域28およびp型エピタキシャル層29を形成する点において実施の形態1に係るMOSFETの製造方法と異なっており、他の構成は、実施の形態1に係るMOSFETの製造方法とほぼ同様である。そのため、同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
炭化珪素基板10から炭化珪素単結晶基板11が除去されることにより、第1不純物領域12が裏面側に露出する。次に、露出している第1不純物領域12に対して、裏面側からたとえばアルミニウムなどのp型不純物が間隔をあけてイオン注入される。好ましくは、キャリア注入領域28が含むp型不純物の濃度が、埋込領域17が含むp型不純物の濃度と同じか、もしくは埋込領域17が含むp型不純物の濃度よりも高くなるように、p型不純物が第1不純物領域12に対してイオン注入される。以上のように、炭化珪素基板10の第2の主面10b側から第1不純物領域12に対してイオン注入を行うことにより、p型を有し、周期的に配置されたキャリア注入領域28が形成される。
次に、キャリア注入領域28および第1不純物領域12の双方に接するようにp型エピタキシャル層29がエピタキシャル成長により形成される。p型エピタキシャル層29は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでいる。p型エピタキシャル層29が形成された後、さらにp型エピタキシャル層29に対してアルミニウムなどのp型不純物がイオン注入されてもよい。次に、たとえば、p型エピタキシャル層29を多結晶炭化珪素基板(図示せず)に接合して表面工程が実施された後、多結晶炭化珪素基板がp型エピタキシャル層29から除去される。
次に、p型エピタキシャル層29から見て、キャリア注入領域28と反対側の方向にコレクタ電極20が形成される。コレクタ電極20は、たとえばTiおよびAlを含む。次に、コレクタ電極20に対してレーザーアニールが行われることにより、コレクタ電極20とp型エピタキシャル層29とがオーミック接合する。以上のように、図22に示すIGBTが製造される。
次に、実施の形態4に係る炭化珪素半導体装置としてのIGBT1の作用効果について説明する。
実施の形態4に係る炭化珪素半導体装置1の製造方法によれば、炭化珪素基板10を形成する工程は、第2の主面10b側から第1不純物領域12に対してイオン注入を行うことにより、第2導電型を有し、周期的に配置されたキャリア注入領域28を形成する工程をさらに含む。これにより、キャリア注入領域28からキャリアの注入を促進することにより、オン抵抗を低減することができる。
実施の形態4に係る炭化珪素半導体装置1によれば、炭化珪素基板10は、p型を有し、第2の主面10bを構成し、かつ第1不純物領域12に接して設けられたp型エピタキシャル層29と、p型を有し、p型エピタキシャル層29と第1不純物領域12とに接し、p型エピタキシャル層29よりも高い不純物濃度を有し、かつ周期的に設けられたキャリア注入領域28とをさらに含む。これにより、キャリア注入領域28からキャリアの注入を促進することにより、オン抵抗を低減することができる。
なお上記各実施の形態において、第1導電型はn型であり、かつ第2導電型はp型であるとして説明したが、第1導電型をp型とし、かつ第2導電型をn型としてもよい。またトレンチTRの側部SWは、炭化珪素基板10の第1の主面10aに対してほぼ垂直の場合について説明したが、トレンチTRの側部SWは、第1の主面10aに対して傾斜していてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。