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JP2017025283A - セルロースエステル水性分散体 - Google Patents

セルロースエステル水性分散体 Download PDF

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JP2017025283A
JP2017025283A JP2015229284A JP2015229284A JP2017025283A JP 2017025283 A JP2017025283 A JP 2017025283A JP 2015229284 A JP2015229284 A JP 2015229284A JP 2015229284 A JP2015229284 A JP 2015229284A JP 2017025283 A JP2017025283 A JP 2017025283A
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JP
Japan
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cellulose
anion
cellulose ester
dispersion
aqueous
Prior art date
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Withdrawn
Application number
JP2015229284A
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English (en)
Inventor
靖成 林野
Yasunari Hayashino
靖成 林野
和人 神野
Kazuto Jinno
和人 神野
洋介 後居
Yosuke Goi
洋介 後居
達也 難波
Tatsuya Namba
達也 難波
将虎 城籔
Masatora Joyabu
将虎 城籔
繁 氣賀澤
Shigeru Kikazawa
繁 氣賀澤
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DKS Co Ltd
Original Assignee
Dai Ichi Kogyo Seiyaku Co Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】 分散性に優れるとともに、乾燥塗膜のタック性を抑制できるセルロースエステル水分散体を提供する。【解決手段】 セルロースエステル(A)およびアニオン変性セルロースナノファイバー(B)を含有するセルロースエステル水性分散体である。前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)は、最大繊維径が1000nm以下、数平均繊維径が2〜150nmおよびアスペクト比が50以上であることが好ましい。前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)におけるアニオン基は、少なくともカルボキシル基を含有することが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースエステル水性分散体に関するものである。
セルロースエステルは、乾燥性を向上できることから、塗料やフィルムなどの用途に広
く使用されている。例えば、特許文献1では、アクリル樹脂を含む被覆用樹脂組成物が開
示されており、セルロースアセテートブチレートを用いることにより塗膜の乾燥性が向上
することが開示されている。
特開2008−156415号公報
近年、環境保護やVOC削減などの観点から、塗料やフィルム材料を水系化することが検
討されている。しかし、セルロースエステルは疎水性であるため、単独で水に分散するこ
とは困難である。また、分散性を高めるために一般的に用いられる界面活性剤は、セルロ
ースエステルを水に分散することが困難であることがわかった。さらに、界面活性剤はブ
リードアウトしやすく、乾燥塗膜にタックが生じやすいため、用途によっては使用できな
い場合がある。そこで、本発明は、分散性に優れるとともに、乾燥塗膜のタック性を抑制
できるセルロースエステル水分散体を提供するものである。
本発明に係るセルロースエステル水性分散体は、セルロースエステル(A)およびアニ
オン変性セルロースナノファイバー(B)を含有するものである。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)は、最大繊維径が1000nm以下
、数平均繊維径が2〜150nmおよびアスペクト比が50以上であることが好ましい。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)におけるアニオン基は、少なくとも
カルボキシル基を含有することが好ましい。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)におけるアニオン基は、有機アミン
との塩を形成していることが好ましい。
前記セルロースエステル(A)は、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロ
ピオネートおよびセルロースアセテートブチレートから選択される少なくとも1種である
ことが好ましい。
本発明に係るコーティング組成物は、上記セルロースエステル水性分散体を含有するも
のである。
本発明によれば、分散性に優れるとともに、乾燥塗膜のタック性を抑制できるセルロー
スエステル水性分散体を得ることができる。
本実施形態に係るセルロースエステル水性分散体は、セルロースエステル(A)を含有
する。
本発明のセルロースエステル(A)は、セルロースに含まれる水酸基のうち少なくとも
一部が有機エステル基に置換されたものである。
前記有機エステル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などの脂肪族
アシル基、ベンゾイル基、トルイル基などの芳香族アシル基などが挙げられる。これらの
うち、脂肪族アシル基であることが好ましい。また、ブチリル基を含有することが好まし
く、アセチル基とブチリル基を含有することが好ましい。
前記セルロースエステル(A)は、ブチリル基を20〜80質量%含有することが好ま
しい。上記範囲内とすることにより、塗料などの乾燥性をより向上できるとともに、顔料
の配向性をより向上することができる。ブチリル基の含有量は、25〜70質量%である
ことがより好ましく、30〜65質量%であることがさらに好ましい。
前記セルロースエステル(A)の具体的な化合物としては、例えば、セルロースアセテ
ート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロ
ースプロピオネート、セルロースプロピオネートブチレート、セルロースブチレートなど
が挙げられる。これらのうち、塗料などの乾燥性をより向上できること、また、顔料の配
向性をより向上できることから、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレー
トが好ましく、セルロースアセテートブチレートがより好ましい。
前記セルロースエステル(A)における有機エステル基の平均数は、グルコース単位当
たりの構成グルコース4単位あたり8〜12個であることが好ましい。上記範囲内とする
ことにより、塗料などの乾燥性をより向上することができる。上記割合は、グルコース単
位あたり9〜12個であることがより好ましく、10〜12個であることがさらに好まし
い。
前記セルロースエステル(A)は、水酸基含有量が0.5〜8質量%であることが好ま
しい。上記範囲内とすることにより、塗料などの乾燥性をより向上することができる。上
記水酸基含有量は、0.8〜5質量%であることがより好ましく、1〜3質量%であるこ
とがさらに好ましい。
前記セルロースエステル(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により得るこ
とができる。また、市販品を用いることもできる。
前記セルロースエステル(A)のセルロースエステル水性分散体における濃度は、1〜
60質量%であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水
性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記濃度は、5〜50質量%であることがよ
り好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態に係るセルロースエステル水性分散体は、アニオン変性セルロースナノファ
イバー(B)を含有する。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)は、最大繊維径が1000nm以下
であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の
分散性がより優れたものとなる。上記最大繊維径は、500nm以下であることがより好
ましい。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)は、数平均繊維径が1〜500nm
であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の
分散性がより優れたものとなる。上記数平均繊維径は、2〜150nmであることがより
好ましく、2〜100nmであることがさらに好ましく、3〜80nmであることが特に
好ましい。
上記セルロース繊維の最大繊維径および数平均繊維径は、例えば、つぎのようにして測
定することができる。すなわち、固形分率で0.05〜0.1重量%の微細セルロースの
水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャス
トして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、大きな繊維径の繊維を
含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察して
もよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50
000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像
内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、
試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後
、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊
維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の
画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(し
たがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして
得られた繊維径のデータにより、最大繊維径および数平均繊維径を算出する。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)は、アスペクト比が50以上である
ことが好ましい。上記範囲内とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性
がより優れたものとなる。上記アスペクト比が100以上であることがより好ましく、2
00以上であることがさらに好ましい。
上記セルロース繊維のアスペクト比は、例えば以下の方法で測定することができる。す
なわち、セルロース繊維を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした
後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から
、先に述べた方法に従い、セルロース繊維の数平均繊維径、および繊維長を算出し、これ
らの値を用いて、下記の式(1)に従い、アスペクト比を算出することができる。
アスペクト比=数平均繊維長(nm)/数平均繊維径(nm) ・・・(1)
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)は、構成するセルロースがI型結晶
構造を有することが好ましい。I型結晶構造を有することにより、分散性がより優れたも
のとなる。ここで、上記セルロース繊維(A)を構成するセルロースがI型結晶構造を有
することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2
シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピー
クをもつことから同定することができる。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)は、セルロース上の水酸基がアニオ
ン基に置換されていることが好ましい。このようなアニオン基としては、例えば、カルボ
キシル基、カルボキシメチル基などのカルボキシル基を含む置換基またはその塩が挙げら
れる。セルロース上の水酸基がアニオン基に置換されていることにより、セルロースエス
テル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。また、前記アニオン基は、セルロース
エステル(A)の分散性がさらに優れることから、無機アルカリ金属または有機アミンと
塩を形成していることが好ましい。無機アルカリ金属としては、例えば、ナトリウムやカ
リウムなどが挙げられる。有機アミンとしては、ポリエーテルアミンであることが好まし
く、下記一般式(2)で示される化合物であることがより好ましい。
−(AO)−R−NH ・・・(2)
(式中、Rは炭素数1〜20の直鎖あるいは分岐のアルキル基またはアリール基を示し
、Rは炭素数2〜4の直鎖あるいは分岐のアルキレン基を示し、nは30以上の整数を
示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。)
上記一般式(2)で示されるポリエーテルアミンとしては、例えば、JEFFAMIN
E Mシリーズ(商品名、HUNTSMAN社製)などが挙げられる。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)は、酸化セルロース(B1)、カル
ボキシメチル化セルロース(B2)、多価カルボキシメチルセルロース、長鎖カルボキシ
セルロースおよびこれらの有機アミン塩などが挙げられる。これらのうち、分散性がより
優れることから、酸化セルロース(B1)、カルボキシメチル化セルロース(B2)およ
びこれらの有機アミン塩から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、乾
燥塗膜のタック性をより抑制することができることから、酸化セルロース(B1)および
その有機アミン塩から選択される少なくとも1種であることが好ましい。乾燥塗膜のタッ
ク性をより抑制できる理由は定かではないが、乾燥した酸化セルロースが水に溶解しにく
いことによるものと想定される。さらに、セルロースエステル水性分散体の分散性がさら
に優れることから、酸化セルロース(B1)の有機アミン塩であることが好ましい。
前記酸化セルロース(B1)は、アニオン基を0.1〜3.0mmol/g含有するこ
とが好ましい。アニオン基の含有量が上記範囲内であることにより、セルロースエステル
水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記アニオン基の含有量は、0.6〜2.
5mmol/gであることがより好ましく、1.0〜2.2mmol/gであることがさ
らに好ましい。
前記酸化セルロース(B1)は、セミカルバジド法による測定でのアルデヒド基とケト
ン基の合計含有量が0.3mmol/g以下であることが好ましい。上記範囲内とするこ
とにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記含有量
は、0.1mmol以下であることが好ましい。
なお、セミカルバジド法によるアルデヒド基とケトン基との合計含量の測定は、例えば
、次のようにして行われる。すなわち、まず、乾燥させた試料に、リン酸緩衝液によりp
H=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、
二日間振とうする。ついで、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5
N硫酸を25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌する
。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加えて、直ちに自動滴定装置を用いて、
0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記の式(3)に従い
、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めることができ
る。
カルボニル基量(mmol/g)=(D−B)×f×〔0.125/w〕 ・・・(3

D:サンプルの滴定量(ml)
B:空試験の滴定量(ml)
f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
w:試料量(g)
また、前記酸化セルロース(B1)は、フェーリング試薬によってアルデヒド基が検出
されないことが好ましい。アルデヒド基の含有量がフェーリング試薬によって検出されな
いほど少ないことにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとな
る。なお、フェーリング試薬によるアルデヒド基の検出方法は、例えば、乾燥させた試料
に、フェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液と、
硫酸銅五水和物水溶液)を加えた後、80℃で1時間加熱したとき、上澄みが青色、セル
ロース部分が紺色を呈するものは、アルデヒド基は検出されなかったと判断することがで
き、上澄みが黄色、セルロース部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基は検出されたと
判断することができる。
前記酸化セルロース(B1)は、例えば、構成するグルコースユニット上の水酸基を酸
化したものが挙げられ、特に、グルコースユニット上の6位の水酸基が選択的に酸化され
たものであることが好ましい。なお、酸化セルロース(B1)がグルコースユニット上の
6位の水酸基が選択的に酸化されたものであることは、例えば、13C−NMRチャート
により確認することができる。すなわち、酸化前のセルロースの13C−NMRチャート
で確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸
化反応後は消失し、代わりにカルボキシル基等に由来するピーク(178ppmのピーク
はカルボキシル基に由来するピーク)が現れる。このようにして、グルコース単位のC6
位水酸基が選択的にカルボキシル基等に酸化されていることを確認することができる。
前記酸化セルロース(B1)は、例えば、(1)酸化反応工程、(2)還元工程、(3
)精製工程、(4)分散工程(微細化処理工程)等により製造することができ、具体的に
は以下の各工程により製造することが好ましい。
(1)酸化反応工程
天然セルロースとN−オキシル化合物とを水(分散媒体)に分散させた後、共酸化剤を
添加して、反応を開始する。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH
を10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なす。ここで、
共酸化剤とは、直接的にセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用い
られるN−オキシル化合物を酸化する物質のことである。
前記天然セルロースは、植物,動物,バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系か
ら単離した精製セルロースを意味する。より具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パル
プ、コットンリンター,コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等
の非木材系パルプ、バクテリアセルロース(BC)、ホヤから単離されるセルロース、海
草から単離されるセルロース等をあげることができる。これらは単独でもしくは二種以上
併せて用いられる。これらのなかでも、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリン
ター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプ
が好ましい。前記天然セルロースは、叩解等の表面積を高める処理を施すと、反応効率を
高めることができ、生産性を高めることができるため好ましい。また、前記天然セルロー
スとして、単離、精製の後、乾燥させない(ネバードライ)で保存していたものを使用す
ると、ミクロフィブリルの集束体が膨潤しやすい状態であるため、反応効率を高め、微細
化処理後の数平均繊維径を小さくすることができるため好ましい。
前記反応における天然セルロースの分散媒体は水であり、反応水溶液中の天然セルロー
ス濃度は、試薬(天然セルロース)の充分な拡散が可能な濃度であれば任意である。通常
は、反応水溶液の重量に対して約5%以下であるが、機械的撹拌力の強い装置を使用する
ことにより反応濃度を上げることができる。
また、前記N−オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニ
トロキシラジカルを有する化合物があげられる。前記N−オキシル化合物は、水溶性の化
合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2
,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4−アセトアミ
ド−TEMPOが好ましい。前記N−オキシル化合物の添加は、触媒量で充分であり、好
ましくは0.1〜4mmol/l、さらに好ましくは0.2〜2mmol/lの範囲で反
応水溶液に添加する。
前記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはそ
の塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独
でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナ
トリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、前記次亜塩素酸ナトリ
ウムを使用する場合は、反応速度の点から、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在
下で反応を進めることが好ましい。前記臭化アルカリ金属の添加量は、前記N−オキシル
化合物に対して約1〜40倍モル量、好ましくは約10〜20倍モル量である。
前記反応水溶液のpHは約8〜11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度
は約4〜40℃において任意であるが、反応は室温(25℃)で行うことが可能であり、
特に温度の制御は必要としない。所望のカルボキシル基量等を得るためには、共酸化剤の
添加量と反応時間により、酸化の程度を制御する。通常、反応時間は約5〜120分、長
くとも240分以内に完了する。
(2)還元工程
前記酸化セルロースは、前記酸化反応後に、さらに還元反応を行うことが好ましい。具
体的には、酸化反応後の微細酸化セルロースを精製水に分散し、水分散体のpHを約10
に調整し、各種還元剤により還元反応を行う。本発明に使用する還元剤としては、一般的
なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH、NaBHCN、Na
BH等があげられる。なかでも、コストや利用可能性の点から、NaBHが好ましい
還元剤の量は、微細酸化セルロースを基準として、0.1〜4質量%の範囲が好ましく
、特に好ましくは1〜3質量%の範囲である。反応は、室温または室温より若干高い温度
で、通常、10分〜10時間、好ましくは30分〜2時間行う。
前記の反応終了後、各種の酸により反応混合物のpHを約2に調整し、精製水をふりか
けながら遠心分離機で固液分離を行い、ケーキ状の微細酸化セルロースを得る。固液分離
は濾液の電気伝導度が5mS/m以下となるまで行う。
(3)精製工程
つぎに、未反応の共酸化剤(次亜塩素酸等)や、各種副生成物等を除く目的で精製を行
う。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散しているわ
けではないため、通常の精製法、すなわち水洗とろ過を繰り返すことで高純度(99質量
%以上)の反応物繊維と水の分散体とする。
前記精製工程における精製方法は、遠心脱水を利用する方法(例えば、連続式デカンダ
ー)のように、上述した目的を達成できる装置であればどのような装置を利用しても差し
支えない。このようにして得られる反応物繊維の水分散体は、絞った状態で固形分(セル
ロース)濃度としておよそ10質量%〜50質量%の範囲にある。この後の分散工程を考
慮すると、50質量%よりも高い固形分濃度とすると、分散に極めて高いエネルギーが必
要となることから好ましくない。
(4)分散工程(微細化処理工程)
前記精製工程にて得られる水を含浸した反応物繊維(水分散体)を、分散媒体中に分散
させ分散処理を行う。処理に伴って粘度が上昇し、微細化処理されたセルロースナノファ
イバーの分散体を得ることができる。その後、必要に応じて前記セルロースナノファイバ
ーを乾燥してもよく、上記セルロースナノファイバーの分散体の乾燥法としては、例えば
、分散媒体が水である場合は、スプレードライ、凍結乾燥法、真空乾燥法等が用いられ、
分散媒体が水と有機溶媒の混合溶液である場合は、ドラムドライヤーによる乾燥法、スプ
レードライヤーによる噴霧乾燥法等が用いられる。なお、前記セルロースナノファイバー
の分散体を乾燥することなく、分散体の状態で用いても差し支えない。
前記分散工程で使用する分散機としては、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナ
イザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理機、ビーター、ディスク型レファイナー
、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩
解能力のある装置を使用することにより、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能
となり、経済的に有利に含水潤滑剤組成物を得ることができる点で好ましい。なお、前記
分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサ
ー、タービン型ミキサー、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、ブレンダー、ホモ
ジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ペブルミル、ビーズミル粉砕機等を
用いても差し支えない。また、2種類以上の分散機を組み合わせて用いても差し支えない
前記カルボキシメチル化セルロース(B2)としては、例えば、構成するグルコースユ
ニット上の水酸基を、カルボキシメチル化したものが挙げられる。具体的には以下の各工
程により製造することが好ましい。
前記カルボキシメチル化セルロース(B2)の製造方法としては、例えば、前記セルロ
ース原料を用いて以下の方法によって製造することができる。すなわち、セルロースを原
料とし、溶媒に質量で3〜20倍の低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール
、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチ
ルアルコール、t−ブチルアルコール等の単独、又は2種以上の混合物と水の混合媒体を
使用する。なお、低級アルコールの混合割合は、60〜95質量%である。マーセル化剤
としては、セルロースのグルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属
、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。セルロースと溶媒、マーセ
ル化剤を混合してマーセル化処理を行う。このときの反応温度は0〜70℃、好ましくは
10〜60℃であり、反応時間は15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間である。そ
の後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10倍モル添加してエー
テル化反応を行う。このときの反応温度は30〜90℃、好ましくは40〜80℃であり
、反応時間は30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間である。カルボキシメチル化
剤としては、モノクロロ酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記カルボキシメチル化セルロースを高圧ホモジナイザー等によって解繊処理すること
でセルロースナノファイバー得ることができる。高圧ホモジナイザーとは、ポンプによっ
て流体に加圧し、流路に設けた非常に繊細な間隙より噴出させる装置である。粒子間の衝
突、圧力差による剪断力等の総合エネルギーによって乳化・分散・解繊・粉砕・超微細化
を行うことができる。
本発明のホモジナイザーによる処理条件としては、特に限定されるものではないが、圧
力条件としては、30MPa以上、好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは14
0MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊・分散処理に先立って、必要に
応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、カルボ
キシメチル化セルロースに予備処理を施すことも可能である。
本発明において、カルボキシメチル化セルロース(B2)のグルコース単位当たりのカ
ルボキシメチル置換度が0.02以上0.50以下であることが好ましい。セルロースに
カルボキシメチル置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このた
め、カルボキシメチル置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。
グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換基が0.02〜0.50であることにより
、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)のセルロースエステル水性分散体に
おける濃度は、0.01〜2質量%であることが好ましい。上記範囲内とすることにより
、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上記濃度は、0.0
5〜1質量%であることがより好ましく、0.1〜0.5質量%であることがさらに好ま
しい。
前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)の含有量は、前記セルロースエステ
ル(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。上記範囲内
とすることにより、セルロースエステル水性分散体の分散性がより優れたものとなる。上
記含有量は、セルロースエステル(A)100質量部に対して0.5〜10質量部である
ことがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。
本発明のセルロースエステル水性分散体は、溶媒として水を含有するものであるが、さ
らに有機溶媒を含有していてもよい。このような有機溶媒としては、エタノール、プロパ
ノール、ブタノールなどのアルコール溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン
溶媒、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、塩化メチル、クロロホルムなどが挙げ
られる。セルロースエステル水性分散体における有機溶媒の含有量は、10質量%以下で
あることが好ましく。5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であること
がさらに好ましい。なお、上記有機溶媒は、セルロースエステル水性分散体の製造時に使
用した溶媒が残存したものであってもよく、セルロースエステル水性分散体の製造後、別
途混合したものであってもよい。
本発明のセルロースエステル水性分散体は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、公知
の添加剤を含有してもよい、このような添加剤としては、例えば、防腐剤、酸化防止剤な
どが挙げられる。
本発明のセルロースエステル水性分散体の製造方法としては、例えば、セルロースエス
テル(A)とアニオン変性セルロースナノファイバー(B)とを水を含む溶媒中で乳化し
、必要により有機溶媒を留去する方法が挙げられる。具体的には、例えば、セルロースエ
ステル(A)を含む有機溶媒溶液とアニオン変性セルロースナノファイバー(B)を含む
有機溶媒溶液とを混合した後、水を加えて乳化し、さらに有機溶媒の少なくとも一部を減
圧下で留去する方法、セルロースエステル(A)を含む有機溶媒溶液とアニオン変性セル
ロースナノファイバー(B)および水を含む溶液とを混合することにより乳化し、有機溶
媒の少なくとも一部を減圧下で留去する方法、などが挙げられる。なお、上記混合工程や
乳化工程は、公知の方法により行うことができる。
本発明のコーティング組成物は、上記セルロースエステル水性分散体を含有するもので
ある。セルロースエステル水性分散体は、コーティング組成物中におけるセルロースエス
テル(A)の含有量が0.1〜10質量%となるように用いることが好ましい。上記含有
量は、0.5〜7質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることがさらに好
ましい。
本発明のコーティング組成物は、さらに、樹脂、顔料、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、
防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、顔料分散剤などを含有することができる。
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオ
レフィン樹脂、アクリルウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、アルミニウム、マ
イカ、クレー、バリタ、炭酸カルシウム、シリカ、リンモリブデン酸アルミニウム、トリ
ポリリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
次に、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定される
ものではない。
本実施例において使用した化合物は下記のとおりである。
<セルロースエステル(A)>
(a−1)セルロースアセテートブチレート(商品名:CAB−551−0.2、イース
トマンケミカル社製、有機エステル基の平均数:グルコース4単位あたり11個、水酸基
含量1.8質量%、ブチリル基含有率:52質量%)
(a−2)セルロースアセテートブチレート(商品名:CAB−381−0.5、イース
トマンケミカル社製、有機エステル基の平均数:グルコース4単位あたり11個、水酸基
含量1.3質量%、ブチリル基含有率:37質量%)
(a−3)セルロースアセテートブチレート(商品名:CAB−553−0.4 、イー
ストマンケミカル社製、有機エステル基の平均数:グルコース4単位あたり9個、水酸基
含量4.8質量%、ブチリル基含有率:46質量%)
<アニオン変性セルロースナノファイバー(B)>
(製造例1)
針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.02
5gを加え、充分撹拌して分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸
化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が5.2mmol/gと
なるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10〜
11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見
られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加
して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維
を得た。遠心分離機で固液分離し、純水を加えて固形分濃度4重量%に調整した。得られ
た酸化セルロースに含まれるカルボキシル基量と等量の水酸化ナトリウムを加え、高圧ホ
モジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処
理した。これを、アニオン変性セルロースナノファイバーの濃度が2重量%となるように
純水で希釈し、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)により8000rpmで10
分間撹拌することにより、酸化セルロースナトリウム塩の2重量%水溶液(b1−1)を
得た。
(製造例2)
針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.02
5gを加え、充分撹拌して分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸
化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が5.2mmol/gと
なるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10〜
11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見
られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加
して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維
を得た。 遠心分離機で固液分離し、純水を加えて固形分濃度4重量%に調整した。その
後、24重量%NaOH水溶液にてスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を
30℃として水素化ホウ素ナトリウムをアニオン変性セルロースナノファイバーに対して
0.2mmol/g加え、2時間反応させることで還元処理した。反応後、0.1N塩酸
を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、酸化セルロースを得た。
つぎに、上記アニオン変性セルロースナノファイバーにエタノールを加えてろ過し、エ
タノール洗浄を繰り返して、上記アニオン変性セルロースナノファイバーに含まれる水を
エタノールに置換することにより、酸化セルロースの2重量%エタノール溶液を得た。
続いて、上記酸化セルロースに含まれるカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン
(JEFFAMINE M−2070、HUNTSMAN社製)とを加えて、高圧ホモジ
ナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し
た。これを、アニオン変性セルロースナノファイバーの濃度が10重量%となるようにエ
タノールで希釈し、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)により8000rpmで
10分間撹拌することにより、酸化セルロースポリエーテルアミン塩の10重量%エタノ
ール溶液(b1−2)を得た。
(製造例3)
13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、針葉樹パルプ1.0gに対して6
.5mmol/gとした以外は、製造例2と同様の操作を行い、酸化セルロースポリエー
テルアミン塩の10重量%エタノール溶液(b1−3)を得た。
(製造例4)
13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、針葉樹パルプ1.0gに対して1
2.0mmol/gとした以外は、製造例2と同様の操作を行い、酸化セルロースポリエ
ーテルアミン塩の10重量%エタノール溶液(b1−4)を得た。
(製造例5)
撹拌機に、パルプ(LBKP、日本製紙社製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウ
ムを乾燥質量で106g加え、パルプ固形分濃度が15重量%になるように水を加えた。
その後、30℃で30分攪拌した後に70℃まで昇温し、モノクロロ酢酸ナトリウムを1
40g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄
した。その後、カルボキシメチル化したセルロースに水を添加して固形分濃度5重量%と
し、高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で5回処理することにより、
カルボキシメチル化セルロースの5重量%水溶液(b2−1)を得た。
(製造例6)
水酸化ナトリウムの使用量を176gとし、モノクロロ酢酸ナトリウムの使用量を23
4g(有効成分換算)とした以外は、製造例5と同様の操作を行い、カルボキシメチル化
セルロースの5重量%水溶液(b2−2)を得た。
(製造例7)
水酸化ナトリウムの使用量を308gとし、モノクロロ酢酸ナトリウムの使用量を41
0g(有効成分換算)とした以外は、製造例5と同様の操作を行い、カルボキシメチル化
セルロースの5重量%水溶液(b2−3)を得た。
上記のようにして得られたアニオン変性セルロースナノファイバーについて、下記の基
準に従って、各特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<結晶構造>
X線回折装置(リガク社製、RINT−Ultima3)を用いて、アニオン変性セル
ロースナノファイバーの回折プロファイルを測定し、2シータ=14〜17°付近と、2
シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークが見られる場合は結晶構造(I
型結晶構造)が「あり」と評価し、ピークが見られない場合は「なし」と評価した。
<数平均繊維径、アスペクト比の測定>
アニオン変性セルロースナノファイバーに純水を加えて1%に希釈し、高圧ホモジナイ
ザー(H11、三和エンジニアリング社製)を用いて圧力100MPaで1回処理した。
そのときのアニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径、および繊維長を、透
過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製JEM−1400)を用いて観察した。すなわち
、各アニオン変性セルロースナノファイバーを親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド
上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:1
0000倍)から、先に述べた方法に従い、数平均繊維径、および繊維長を算出した。さ
らに、これらの値を用いてアスペクト比を前述の式(1)に従い算出した。
<酸化セルロースのカルボキシル基量の測定>
酸化セルロース0.25gを水に分散させたセルロース水分散体60mlを調製し、0
.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水
溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが11になるまで続けた。電気伝
導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において、消費された水酸化ナトリウム量(V)か
ら、下記の式(4)に従いカルボキシル基量を求めた。
カルボキシル基量(mmol/g)=V(ml)×〔0.05/セルロース重量〕・・・(4)
<カルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測
定>
カルボキシメチル化セルロースの0.6質量%スラリーに調製し、0.1M塩酸水溶液を
加えてpH2.4とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11
になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消
費された水酸化ナトリウム量からカルボキシル基量を測定し、下記の式(5)に従い算出
した。
カルボキシメチル置換度=(162×C)/(1−58×C)・・・(5)
(式中、Cはカルボキシル基量(mmol/g)を示す。)
<酸化セルロースのカルボニル基量の測定(セミカルバジド法)>
酸化セルロースを約0.2g精秤し、これに、リン酸緩衝液によりpH=5に調整した
セミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうした
。つぎに、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸25ml、
0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌した。その後、5%ヨウ
化カリウム水溶液10mlを加え、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナト
リウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、前述の式(3)に従い、試料中のカルボニル
基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めた。
<酸化セルロースのアルデヒド基の検出>
酸化セルロースを0.4g精秤し、日本薬局方に従って調製したフェーリング試薬(酒
石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液5mlと、硫酸銅五水和物水溶
液5ml)を加えた後、80℃で1時間加熱した。そして、上澄みが青色、アニオン変性
セルロースナノファイバー部分が紺色を呈するものはアルデヒド基が検出されなかったと
判断し、「なし」と評価した。また、上澄みが黄色、アニオン変性セルロースナノファイ
バー部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基が検出されたと判断し、「あり」と評価し
た。
(実施例1)
セルロースエステル(a−1)30gをメチルエチルケトン70gに溶解した。この溶
液をT.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて5000rpmで攪拌しながら
、製造例1で得られた酸化セルロースナトリウム塩の2重量%水溶液(b1−1)20g
と水70gとの混合物を徐々に滴下することにより乳化した。続いて、セルロースエステ
ル(a−1)の濃度が20重量%になるようにエバポレーターで溶媒(メチルエチルケト
ン)を留去することにより、セルロースエステル水性分散体を得た。
(実施例2)
表2に記載の化合物および割合とした以外は実施例1と同様の操作を行い、セルロース
エステル水性分散体を得た。なお、留去した溶媒はメチルエチルケトンとエタノールの混
合物であった。
(実施例3)
セルロースエステル(a−1)30gをメチルエチルケトン70gに溶解し、さらに製
造例2で得られた酸化セルロースポリエーテルアミン塩の10重量%エタノール溶液(b
1−2)20gを加えた。この混合物を、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を
用いて5000rpmで攪拌しながら、水88gを徐々に滴下することにより乳化した。
続いて、セルロースエステル(a−1)の濃度が20重量%になるようにエバポレーター
で溶媒(メチルエチルケトンとエタノール)を留去することにより、セルロースエステル
水性分散体を得た。
(実施例4〜13)
表2に記載の化合物および割合とした以外は実施例3と同様の操作を行い、セルロース
エステル水性分散体を得た。なお、実施例11〜13においては、留去した溶媒はメチル
エチルケトンと水の混合物であった。
(比較例1)
酸化セルロースポリエーテルアミン塩の10重量%エタノール溶液(b1−2)に代え
て、エタノール18gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ったが、セルロースエス
テル分散体を得ることができなかった。
(比較例2)
酸化セルロースポリエーテルアミン塩の10重量%エタノール溶液(b1−2)に代え
て、アニオン性界面活性剤(商品名:ハイテノール NF−13、第一工業製薬社製)の
10重量%エタノール溶液20gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ったが、セル
ロースエステル分散体を得ることができなかった。
実施例1〜13で得られたセルロースエステル水性分散体を用いて、分散性を下記の方
法で評価した。結果を表2に示す。
(分散性)
得られたセルロースエステル水性分散体を、20℃、40℃に静置した。1日(24時
間)ごとに沈殿物または分離の有無を確認し、沈殿物または分離のいずれかが見られるま
での日数を評価結果とした。
実施例1〜13で得られたセルロースエステル水性分散体3gと、市販の水性塗料(商
品名:水性塗料ビッグ10多用途用、アサヒペイント社製)100gとを混合し、コーテ
ィング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、分散性、塗装性およびタッ
クを下記の方法で評価した。結果を表2に示す。
(分散性)
コーティング組成物を20℃で静置し、1日(24時間)ごとに沈殿物または分離の有無
を確認し、沈殿物または分離のいずれかが見られるまでの日数を評価結果とした。
(塗装性)
コーティング組成物をコーターで乾燥膜厚50μmとなるように塗布した。これを、5
0℃で3時間乾燥し、塗膜状態を下記の基準で評価した。
○:塗りムラおよびピンホールがない。
×:塗りムラまたはピンホールがある。
(タック)
上記塗装性の評価で作製した塗膜表面に水を塗布した。水を拭き取った後の塗膜表面のタ
ック間の有無を、指触にて下記の基準で評価した。
○:タック感がない。
×:タック感がある。

Claims (6)

  1. セルロースエステル(A)およびアニオン変性セルロースナノファイバー(B)を含有
    するセルロースエステル水性分散体。
  2. 前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)が、最大繊維径が1000nm以下
    、数平均繊維径が2〜150nmおよびアスペクト比が50以上である請求項1に記載の
    セルロースエステル水性分散体。
  3. 前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)におけるアニオン基が、少なくとも
    カルボキシル基を含有する請求項1または2に記載のセルロースエステル水性分散体。
  4. 前記アニオン変性セルロースナノファイバー(B)におけるアニオン基が、有機アミン
    との塩を形成している請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステル水性分散
    体。
  5. 前記セルロースエステル(A)が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロ
    ピオネートおよびセルロースアセテートブチレートから選択される少なくとも1種である
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースエステル水性分散体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステル水性分散体を含有するコーテ
    ィング組成物。
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