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JP2016178180A - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

色素増感型太陽電池 Download PDF

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JP2016178180A JP2015056259A JP2015056259A JP2016178180A JP 2016178180 A JP2016178180 A JP 2016178180A JP 2015056259 A JP2015056259 A JP 2015056259A JP 2015056259 A JP2015056259 A JP 2015056259A JP 2016178180 A JP2016178180 A JP 2016178180A
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中島 淳二
Junji Nakajima
淳二 中島
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Aisin Seiki Co Ltd
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Abstract

【課題】 対極を必要としない簡素な構成で、且つ、発電効率の良好な、完全固体型の色素増感型太陽電池を提供すること。
【解決手段】 色素増感型太陽電池セル1は、透明基板2と、透明基板の一方の面に形成された透明導電膜3と、透明導電膜3の表面上に形成され、色素により増感された多孔質半導体層5と、Cu化合物を含むp型半導体により構成されるとともに、多孔質半導体層5の表面上に形成されたp型半導体層6と、を備える。また、p型半導体層6内に炭素粒子が含有されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、色素増感型太陽電池に関する。
湿式タイプの色素増感型太陽電池は、その構成要素に電解質溶液を含むため、電解質溶液の流出による性能低下が懸念される。そこで、液体を含まない固体電解質を用いた完全固体型の色素増感型太陽電池が開発されている。
特許文献1は、固体電解質である正孔輸送層にp型無機化合物半導体とチオシアン酸塩が含有された完全固体型の色素増感型太陽電池を開示する。特許文献2は、酸化チタン多孔質層からなる光吸収層(電子輸送層)内の酸化チタン微粒子同士が酸化亜鉛粒子によってネッキング結合されてなる、完全固体型の色素増感型太陽電池を開示する。特許文献3は、Cu化合物の濃度に対する添加剤としてのイオン性液体の濃度の割合を0.6%以上12.5%以下とした溶液を用いて正孔輸送層を作製する、完全固体型の色素増感型太陽電池の製造方法を開示する。
特許第4307701号 特開2003−273381号公報 特開2012−204276号公報
(発明が解決しようとする課題)
ところで、従来の完全固体型の色素増感型太陽電池は、透明基板と、透明基板上に形成された透明導電膜と、色素により増感されるとともに透明導電膜上に形成され、酸化チタン等の多孔質半導体により構成される多孔質半導体層と、を有する光電極と、固体状の正孔輸送層と、正孔輸送層を介して光電極に対向配置する対極と、を備える。対極は、正孔輸送層上に直接導電材を塗布、メッキ、或いは蒸着することにより形成されるか、又は、導電性を有する金属箔や片面が導電材で被覆された基板の導電材側を正孔輸送層に張り付けることにより形成される。ここで、正孔輸送層にはCu化合物が含まれており、Cu化合物として代表的にはCuのヨウ化物が例示される。従って、対極の構成材料として、ヨウ化物に対して腐食しない金属が用いられる。そのような金属として金や白金が例示できるが、これらのコストは高い。よって、対極を有する完全固体型の色素増感型太陽電池は高価である。また、対極として金を用いた場合、表面の化学反応(ヨウ化金への変質)が進行するために、長期的な耐久性に乏しい。
また、複数の太陽電池セルを直列接続して太陽電池モジュールを作製する場合、一つの太陽電池セルの対極と、その太陽電池セルに隣接する太陽電池セルの光電極に備えられる透明導電膜とを、導電性部材により電気的に接続する必要がある。従って、このような導電性部材を太陽電池モジュールに組み込むことによって太陽電池モジュールの製造工程が煩雑化するとともに、部品点数が増加してコストが増大し、さらに、導電性部材と他の部材との電気的接続部分の導電性に関する長期信頼性の面において不利であるという問題がある。
また、特許文献3に開示された太陽電池モジュールの各セルに備えられる対極は、その断面がL字状にされており、断面L字状の対極によって、一つの太陽電池セルの正孔輸送層と、それに隣接する太陽電池セルの透明導電膜とが直列接続される。このような構成によれば、断面L字状の対極と電子輸送層との間に、両者の電気的接触を防止するためのセパレータが設けられる。セパレータが太陽電池内に設けられた場合、光の透過面積に対するセパレータの占有面積分だけ、発電に必要な光活性面の面積が減少する。このため光活性面の面積比率が低下し、その結果、エネルギー変換効率が低下する。
このように、従来の完全固体型の色素増感型太陽電池は、対極やセパレータ、或いは対極と透明導電膜とを接続する導電性部材といった構成部材が設けられていることによって、構成が複雑化してコストが増大するとともに、エネルギー変換効率が低下するという問題を有する。そこで、本発明は、簡素な構成で、且つ、エネルギー変換効率の良好な、完全固体型の色素増感型太陽電池を提供することを、目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、透明基板(2)と、透明基板の一方の面に形成された透明導電膜(3)と、透明導電膜の表面上に形成され、色素により増感された多孔質半導体層(5)と、多孔質半導体層の表面上に形成され、Cu化合物を含むp型半導体により構成されるp型半導体層(6)と、を備え、p型半導体層内に炭素粒子が含有されている、色素増感型太陽電池(1)を提供する。
本発明に係る色素増感型太陽電池によれば、多孔質半導体層が電子輸送層として機能し、p型半導体層が正孔輸送層として機能する。そして、正孔輸送層として機能するp型半導体層に炭素粒子が含有されているため、p型半導体層の導電性が向上する。従って、このp型半導体層を、正孔輸送層のみならず、対極として利用することができる。
このように、本発明によれば、p型半導体層を、正孔輸送層のみならず、対極として利用することで、これまで正孔輸送層に隣接して設置されていた対極を必要としない簡素な構成の色素増感型太陽電池を提供することができる。また、対極を省略することにより、エネルギー変換効率を高めることができる。
また、本発明においては、p型半導体層に含まれるCu化合物が、多孔質半導体層内に浸透しているのがよい。多孔質半導体内に浸透するCu化合物の浸透量が多いほど、発電に寄与する活性面積が大きくなって、エネルギー変換効率が向上する。この場合において、本発明においてはp型半導体層中の炭素粒子がCu化合物の結晶成長を阻害するために、Cu化合物の大粒子化が阻止される。つまり、p型半導体層中の炭素粒子の存在によって、p型半導体中のCu化合物が微細化される。このためCu化合物が多孔質半導体層の微細孔内に入りやすい。よって、多孔質半導体層内へのCu化合物の浸透量を増加させることができる。その結果、エネルギー変換効率をさらに高めることができる。
また、透明導電膜と多孔質半導体層との間に、透明導電膜側から多孔質半導体層側に向かう電子の流れを阻止する再結合防止層(4)が形成されているとよい。これによれば、再結合防止層によって、透明導電膜側から多孔質半導体層側に向かう電子の流れが阻止されることにより、電子と正孔の再結合によるエネルギー変換効率の低下を防止することができる。
また、本発明において、p型半導体層に含まれる炭素粒子の径は、0.2μmよりも大きいのがよい。好ましくは、炭素粒子の径は、0.5μm以上であるのがよく、さらに好ましくは、炭素粒子の径は、1μm以上である。ここで、炭素粒子の「径」とは、一つの炭素粒子において最も長い部分の長さを意味する。
色素増感型太陽電池の多孔質半導体層には、上述したように、p型半導体層中のCu化合物が浸透しているが、Cu化合物に混じって炭素粒子が多孔質半導体層中に混入した場合、多孔質半導体層内で炭素粒子を介した微短絡が起こってエネルギー変換効率が低下する虞がある。ここで、多孔質半導体層に形成されている微細孔の径は、概ね0.2μm以下である。従って、炭素粒子径が0.2μmよりも大きければ、多孔質半導体層の微細孔内に炭素粒子が入り込むことができない。よって、多孔質半導体層に炭素粒子が入り込むことに起因したエネルギー変換効率の低下を抑えることができる。
また、炭素粒子の形状が、鱗片状又はファイバー状であるとよい。これによれば、特定の方向へのp型半導体の電気伝導度を向上させることができる。また、ファイバー状の炭素粒子を用いることにより、p型半導体層に可撓性を持たせることができる。このため、太陽電池の形状を、目的とする形状に容易に変形することができる。
また、透明導電膜は、凹溝(3a)によって分離された第一領域(31)と第二領域(32)とを有し、多孔質半導体層は、少なくとも透明導電膜の第一領域の表面上に形成され、p型半導体層が、透明導電膜の第二領域に接触するように、構成されているとよい。これによれば、対極を用いることなく、透明導電膜の第一領域に設けられる取出電極(3A)と第二領域に設けられる取出電極(3B)との間に所定の電位を生じさせることができる。
実施形態に係る色素増感型太陽電池セルの概略斜視図である。 実施形態に係る色素増感型太陽電池セルの概略断面図である。 複数の色素増感型太陽電池セルを直列接続して構成される太陽電池モジュールの概略断面図である。 実施例1に係るp型半導体被膜の断面のSEM画像である。 実施例2に係るp型半導体被膜の断面のSEM画像である。 比較例1に係るp型半導体被膜の断面のSEM画像である。 電池特性評価試験における試験状態を示す色素増感型太陽電池の断面図である。 実施例3に係る色素増感型太陽電池セルの多孔質半導体層の断面のSEM画像である。 比較例2に係る色素増感型太陽電池セルの多孔質半導体層の断面のSEM画像である。 実施例4に係る一基板型の色素増感型太陽電池セルの作製手順を示す図である。
本実施形態に係る色素増感型太陽電池は、完全固体型である。つまり、構成要素に液体が含まれない。そのため、電解質溶液等の流出による性能劣化を生じることはない。
図1は、本実施形態に係る色素増感型太陽電池セル1の概略斜視図、図2は、図1に示す色素増感型太陽電池セル1に備えられる透明基板2が上側に配置されるように示された色素増感型太陽電池セル1の概略断面図である。図1及び図2に示すように、色素増感型太陽電池セル1は、透明基板2と、透明導電膜3と、再結合防止層4(バリア層)と、多孔質半導体層5と、固体状のp型半導体層6と、を備える。透明基板2、透明導電膜3、再結合防止層4、多孔質半導体層5、p型半導体層6が、この順に積層されることにより、色素増感型太陽電池セル1が形成される。
透明基板2は、光を透過する材料によって構成される。透明基板2として、例えば、透明ガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体等が例示できる。このうち、透明ガラスが好ましい。
透明基板2の一方面に、透明導電膜3が形成される。透明導電膜3は、例えば、透明基板の一方の表面上に酸化スズを付着させることにより形成することができる。特に、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)が透明導電膜3として好ましい。また、透明導電膜3にはスクライブ溝3a(凹溝)が形成されていて、このスクライブ溝3aにより、透明導電膜3が、透明基板2上で、第一領域31と第二領域32とに分離される。
再結合防止層4は、透明導電膜3の表面上に形成される。再結合防止層4は、例えば、緻密な(すなわち多孔質状でない)酸化チタン層により構成される。再結合防止層4は、透明導電膜3に形成されたスクライブ溝3aを埋めるように、透明導電膜3の表面上に形成される。この再結合防止層4は、透明導電膜3側から多孔質半導体層5側への電子の流出による、電子と正孔との再結合を防止する機能を有する。
多孔質半導体層5は、半導体により形成され、色素により増感された多孔質状の層である。この多孔質半導体層5は、再結合防止層4を介して透明導電膜3の表面のうちの少なくとも第一領域31上に形成される。図1及び図2においては、多孔質半導体層5は、透明導電膜3の第一領域31と第二領域32とに跨るように、再結合防止層4を介して透明導電膜3の表面に形成されている。多孔質半導体層5は、色素の光励起により生じた電子を透明導電膜3に輸送する。すなわち、多孔質半導体層5は電子輸送層である。
多孔質半導体層5は、色素(例えば有機色素分子)が吸着されたn型半導体により形成されているのがよい。n型半導体としては、金属酸化物半導体、金属硫化物半導体等が適しており、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、流化カドミウム、流化亜鉛等を、n型半導体として例示できる。このうち、酸化チタンの多孔質体が、多孔質半導体層5を構成するn型半導体として好ましい。
また、多孔質半導体層5に吸着する色素は、可視光領域及び赤外光領域のうちの少なくとも一方の光を吸収する増感特性を有していればよい。色素として、例えば、カルバゾール系色素、スクワリリウム系色素、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素等を例示できる。また、金属錯体により色素分子が構成されていてもよい。
p型半導体層6は、多孔質半導体層5の表面上に形成されている。このp型半導体層6は、光励起により酸化された色素を還元する。このときp型半導体層6によって正孔が輸送される。つまり、p型半導体層6は正孔輸送層である。
p型半導体層6は、図1及び図2に示すように、多孔質半導体層5の表面、多孔質半導体層5の一端面、及び、再結合防止層4の一端面、を覆うように、断面L字状に形成されている。つまり、p型半導体層6は、多孔質半導体層5の表面を覆う第一部分6aと、第一部分6aの一方の端部から形成され、多孔質半導体層5の一端面及び再結合防止層4の一端面を覆う第二部分6bとを有する。第二部分6bの先端面は、透明導電膜3の第二領域32の表面に直接接触している。従って、透明導電膜3の第一領域31と第二領域32との間に電力負荷(外部負荷)を接続することによって、透明導電膜3の第一領域31−多孔質半導体層5−p型半導体層6−透明導電膜3の第二領域32を通る電路が形成される。
p型半導体層6は、正孔輸送層としての機能を担うCu化合物を含むp型半導体及びチオシアン酸塩により、主に構成される。Cu化合物としては、例えば、CuI、CuSCN、CuO、CuO等を例示することができ、このうち、CuI、CuSCNが好ましい。チオシアン酸塩として、例えば、EMISCN(1エチル3メチルイミダゾリウムチオシアネート)が例示できる。
本実施形態において、p型半導体層6には、炭素粒子が含有されている。p型半導体層6に含まれる炭素粒子は、結晶質炭素粒子であるのが好ましいが、導電性が良好であれば、アモルファスの炭素粒子でもよい。また、完全に結晶性を有する必要はなく、多少は非晶質の部分が存在していてもよい。
p型半導体層6内に炭素粒子が含まれているため、p型半導体層6の導電性は良好である。そのため、p型半導体層6は、正孔輸送層としての機能のみならず、対極としての機能をも兼ね備える。
結晶質炭素粒子として、粒状グラファイト、鱗片状グラファイト、グラフェン、グラファイトファイバーが、好適に用いられる。鱗片状、或いはファイバー状のグラファイトを用いた場合、p型半導体層6の特定の方向への導電性を向上させることができる。また、ファイバー状のグラファイトを用いる場合、p型半導体層6に可撓性を持たせることができる。また、結晶質炭素粒子は、多孔質半導体層5に形成されている微細孔の孔径よりも大きい直径を有するのが好ましい。多孔質半導体層5に形成されている微細孔の孔径は、概ね、0.2μm以下である。従って、例えば、直径が0.2μmよりも大きい粒状グラファイト、最大長さが0.2μmよりも大きい鱗片状グラファイト、長さが0.2μmよりも長いグラファイトファイバーが、結晶質炭素として好ましく用いられる。特に、直径が1μm以上の粒状グラファイト、最大長さが1μm以上の鱗片状グラファイト、長さが1μm以上のグラファイトファイバーが、より好ましく用いられる。
また、p型半導体層6中の炭素粒子とCu化合物の含有比率は、重量比で、炭素粒子:Cu化合物=30:70〜80:20であるのがよい。すなわち、Cu化合物と炭素粒子との混合物中における炭素粒子の含有率は、30重量%以上であり且つ80重量%以下であるのがよい。炭素粒子の含有率が30重量%未満である場合、p型半導体層6の導電率が低下し、対極としての機能が低下する。一方、炭素粒子の含有率が80重量%を超えた場合、多孔質半導体層5へのCu化合物の浸透(充填)する量の減少、及びCu化合物で炭素粒子の表面を覆うことができなくなることから、正孔輸送層としての機能が低下する。
p型半導体層6を形成するにあたり、まず、正孔輸送層の材料となるCu化合物とチオシアン酸塩を溶解させた溶液(正孔輸送材料溶解溶液)を作製し、作製した正孔輸送材料溶解溶液に結晶質炭素粒子を分散させることにより、炭素粒子分散溶液を作製する。そして、多孔質半導体層5の表面及び一端面並びに再結合防止層4の一端面に炭素粒子分散溶液を塗布し、溶液中の溶媒を蒸発させることにより、p型半導体層6が形成される。塗布方法としては、スプレー、又は、スピンコート等の手法が例示できる。このような手法によって、正孔輸送層兼対極としての機能を有するp型半導体層6が、簡単に作製できる。また、炭素粒子分散溶液を多孔質半導体層5に塗布した場合、多孔質半導体層5に形成されている微細孔内にCu化合物及びチオシアン酸塩が入り込む。このため、多孔質半導体層5内に、正孔輸送層としての機能を担うCu化合物(例えばCuI)及びチオシアン酸塩が浸透する。なお、上述したように、多孔質半導体層5内へのCu化合物の浸透量が多いほど、エネルギー変換効率が高められる。
このような構成の色素増感型太陽電池セル1において、透明基板2及び透明導電膜3を透過した光が多孔質半導体層5に照射されると、多孔質半導体層5に設けられた色素が光励起し、続いて色素から多孔質半導体層5を構成する半導体に電子注入が起こる。半導体に注入された電子は多孔質半導体層5から再結合防止層4を経て透明導電膜3に受け渡される。また、光励起した色素は酸化される。酸化された色素は、p型半導体層6中の正孔により還元される。
上記した電子の移動によって、透明導電膜3の第一領域31と第二領域32との間に光起電力が発生する。よって、透明導電膜3の第一領域31と第二領域32との間に電力負荷を接続することにより、電力負荷を駆動させることができる。
また、色素の光励起により生じた正孔はp型半導体層6内を移動する。この場合において、本実施形態では、p型半導体層6内に炭素粒子が含まれているため、p型半導体層6を移動する正孔が専用の対極を経ることなく透明導電膜3に受け渡される。すなわち、p型半導体層6は、正孔輸送層でもあり、且つ、対極でもある。このように、本実施形態によれば、専用の対極を設ける必要がないため、色素増感型太陽電池セルを簡素に構成することができる。また、構成部品の減少によって部材間の接触界面での接続抵抗も減少するため、エネルギー変換効率を向上させることができる。
また、本実施形態においては、対極としても機能するp型半導体層6が、多孔質半導体層5の端面に直接接触している。この場合、短絡によるエネルギー変換効率の低下が懸念される。しかしながら、多孔質半導体層5の表面に対面するp型半導体層6の表面には、薄いCu化合物(例えばヨウ化銅)の層が形成されており、このCu化合物の層の形成によって、p型半導体層6内の炭素粒子が直接的に多孔質半導体層5に接触することが防止される。これにより、対極としてのp型半導体層6と多孔質半導体層5との間の短絡が効果的に防止される。よって、従来では対極と多孔質半導体層5(光電極)との間に設けられていたセパレータを廃止することができる。その結果、セパレータが設けられていることによる不具合の発生(例えば光活性面の面積比率の低下に伴うエネルギー変換効率の低下、構成の複雑化)を防止することができる。
なお、p型半導体層6の表面に薄いCu化合物の層が形成される原因は、以下の2つの現象から導くことができると思われる。まず第一に、p型半導体層6中のCu化合物(例えばヨウ化銅)は、p型半導体層6中の炭素粒子を覆うように配置される傾向にあるため、p型半導体層6の表面にCu化合物が現れ易い。それ故に、p型半導体層6の表面にCu化合物の薄膜層が形成されると考えられる。また、第二に、上述のように、多孔質半導体層5上にp型半導体層6を形成するにあたり、多孔質半導体層5の表面に炭素分散溶液が滴下される。このとき、毛細管現象により、炭素分散溶液中のCu化合物成分(例えばヨウ化銅成分)が選択的に多孔質半導体層5の表面側に引き込まれる(浸透する)。こうして多孔質半導体層5の表面側に引き込まれたCu化合物がp型半導体層6の表面に現れることにより、p型半導体層6の表面にCu化合物の薄膜層が形成されると考えられる。
この色素増感型太陽電池セル1を実際に使用する場合、複数の色素増感型太陽電池セル1が直列接続される。図3は、複数の色素増感型太陽電池セル1を直列接続して構成した太陽電池モジュール10の概略断面図である。図3に示すように、太陽電池モジュール10は、複数の色素増感型太陽電池セル1を有する。また、共通の透明基板2が、各色素増感型太陽電池セル1に備えられる。また、各色素増感型太陽電池セル1の透明導電膜3には、それぞれスクライブ溝3aが形成されている。ここで、色素増感型太陽電池セル1を図3に示すように直列接続した場合、一つの色素増感型太陽電池セル1の透明導電膜3の第一領域31が、そのセルに隣接するセルの透明導電膜3の第二領域32に接続される。
また、一方の端部(図3においては左端部)の色素増感型太陽電池セル1の透明導電膜3の第一領域31のうち、再結合防止層4からはみ出している部分を、第一取出電極3Aとし、他方の端部(図3において右端部)の色素増感型太陽電池セル1の透明導電膜3の第二領域32のうち、p型半導体層6に覆われていない部分を、第二取出電極3Bとする。
このような構成の太陽電池モジュール10において、透明基板2を透過した光がそれぞれの色素増感型太陽電池セル1の多孔質半導体層5に照射されると、それぞれの色素増感型太陽電池セル1が発電し、それぞれの色素増感型太陽電池セル1の透明導電膜3の第一領域31と第二領域32との間に所定の起電力が発生する。また、隣り合うセルの第一領域31と第二領域32が接続されているから、各セルは電気的に直列接続されていることになる。従って、この太陽電池モジュール10によって大きな起電力が発生される。そして、第一取出電極3Aと第二取出電極3Bとの間に電力負荷を接続することにより、比較的大きな電圧により作動する電力負荷を作動させることができる。
また、上述したように、各色素増感型太陽電池セル1のp型半導体層6には、炭素粒子が含まれているために、p型半導体層6の導電性が高められている。この炭素粒子の形状を、例えば鱗片状、或いはファイバー状に形成することにより、特定の方向への導電性、例えば、p型半導体層6の面方向への導電性を、より高めることができる。このようにしてp型半導体層6の特定の方向(面方向)への導電性をより高めることによって、従来では必要であった、対極としての金属導電層や炭素膜等の導電性部材を省略することができる。よって、色素増感型太陽電池セル1及び太陽電池モジュール10を、より一層簡素に構成することができる。
以下、本実施形態に係る色素増感型太陽電池セルが実際に機能するかについて検証するために行ったいくつかの実験事実(実施例)を示す。
1.本実施形態に係るp型半導体層の導電性が良好であることの確認
本実施形態に係る色素増感型太陽電池セルに備えられるp型半導体層の導電性が良好であり、対極として使用できることを確認するために、以下の実験(実施例1、実施例2、比較例1)を実施した。
(実施例1)
溶媒としての50mlのアセトニトリルに、正孔輸送材料(正孔輸送層(p型半導体層)を構成する材料)として、CuI(ヨウ化銅)1.3g及びチオシアン酸塩であるEMISCN(1エチル3メチルイミダゾリウムチオシアネート)0.11gを加えた。そして、良く撹拌してこれらをアセトニトリルに溶解させた。次に、この溶液(正孔輸送材料溶解溶液)に、鱗片状の結晶質炭素粒子(直径約30μm)を0.56g加え、超音波分散することにより、結晶質炭素粒子が分散された正孔輸送材料溶解溶液(炭素粒子分散溶液)を作製した。次いで、炭素粒子分散溶液をスプレー塗布装置に装填し、このスプレー塗布装置を用いて、60℃に加熱されたホットプレート上に設置されたガラス板に向けて炭素粒子分散溶液をスプレー噴霧した。スプレー噴霧を繰り返し行うとともに、炭素粒子分散溶液中の溶媒(アセトニトリル)を蒸発させることにより、ガラス板上に、p型半導体被膜を形成した。形成されたp型半導体被膜の膜厚は約20μmであった。また、形成されたp型半導体被膜中における、結晶質炭素粒子とCuIとの配合比は、重量比で、結晶質炭素粒子:CuI=30:70であった。
(実施例2)
結晶質炭素粒子として、ファイバー状の結晶質炭素粒子(粒子線径0.5μm、平均長さ3μm)を用いたこと以外は、上記実施例1と同じ組成、方法により、p型半導体被膜をガラス板上に形成した。形成されたp型半導体被膜の膜厚は約15μmであった。
(比較例1)
炭素粒子が分散されていない正孔輸送材料溶解溶液をガラス板にスプレー噴霧すること以外は、上記実施例1と同じ組成、方法により、p型半導体被膜をガラス板上に形成した。形成されたp型半導体被膜の膜厚は約50μmであった。
[SEM画像による断面観察]
図4は、実施例1に係るp型半導体被膜の断面のSEM画像(倍率:1500倍)であり、図5は、実施例2に係るp型半導体被膜の断面のSEM画像(倍率:3000倍)であり、図6は、比較例1に係るp型半導体被膜の断面のSEM画像(倍率:500倍)である。実施例1及び実施例2においては、p型半導体被膜中に結晶質炭素粒子が含まれているので、図4及び図5に示すように、鱗片状或いはファイバー状の結晶質炭素粒子を覆うように、結晶質炭素粒子の周りにCuIが付着する。一方、比較例1においては、p型半導体被膜中に結晶質炭素粒子が含まれていないので、図6に示すように、p型半導体被膜が比較的緻密なCuIのみにより構成されている。また、図6からわかるように、比較例1に係るp型半導体被膜には、CuIが凝集することによって、比較的大きな凝集塊が形成されている。
[比抵抗の測定]
また、実施例1,2及び比較例1にて作製したp型半導体被膜のシート抵抗を、4端子型表面抵抗測定計を用いて測定し、測定値に膜厚を乗じて、それぞれのp型半導体被膜の比抵抗(Ω・cm)を算出した。算出した比抵抗を表1に示す。
表1からわかるように、実施例1及び2に係るp型半導体被膜の比抵抗(実施例1:2.5[Ω・cm]、実施例2:2.8[Ω・cm])は、比較例1に係るp型半導体被膜の比抵抗(5.6[Ω・cm])よりも小さい。従って、実施例1及び2に係るp型半導体被膜の導電性は良い。この理由は、実施例1及び2に係るp型半導体被膜の内部に結晶質炭素粒子が含まれていること、及び、結晶質炭素粒子のまわりにCuIが付着することにより、CuI同士の凝集による粒子成長が抑制され、それにより結晶質炭素粒子同士の接触が確保されて、膜厚方向における良好な導電性が維持され得ること、に起因していると考えられる。よって、本実施形態に係るp型半導体層は、対極として、十分利用できることが実証された。
2.本実施形態に係る色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率の測定
本実施形態に係る色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率が良好であることを実証するために、以下の実験(実施例3、比較例2)を実施した。なお、この実験では、透明導電膜付きガラス基板と対極としての白金板とを張り合わせた対向型の太陽電池セルを用いた。
(実施例3)
まず、縦20mm×横20mm×厚さ2mmの透明基板としての透明ガラス板に、透明導電膜としてのフッ素ドープ酸化スズ(FTO)をCVD法により形成した。これにより、透明導電膜付きガラス基板を作製した。
次に、チタン濃度が1%となるように、有機チタン化合物としてのチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)と増粘剤としてのエチルセルロースと希釈溶媒としてのターピネオールとを混合して、再結合防止層用のペーストを作製した。そして、♯400(400メッシュ)のステンレススクリーンを用いて、透明導電膜付きガラス基板の一方の面(透明導電膜が形成されている面)に、作製したペーストをスクリーン印刷した。その後、ペーストが印刷された透明導電膜付きガラス基板を、温度150℃で乾燥させ、次いで、温度500℃で30分間焼成することにより、再結合防止層としての二酸化チタン(TiO)の緻密層(厚さ100nm)を、透明導電膜上に形成した。
次に、市販の粒子径が150nm〜200nmであるアナターゼ型酸化チタン粒子(テイカ製、JA−1)を用意し、酸化チタン粒子の含有量が20重量%となるように、用意したアナターゼ型酸化チタン粒子をターピネオールに良く分散し、さらに増粘剤としてのエチルセルロースを混合して、多孔質半導体層用のペーストを作製した。そして、♯150(150メッシュ)のステンレススクリーンを用い、透明導電膜付きガラス基板上に形成されている再結合防止層上に、多孔質半導体層用のペーストをスクリーン印刷した。その後、再結合防止層上にペーストが印刷された透明導電膜付きガラス基板を、温度150℃で乾燥させ、次いで、温度500℃で15分間焼結することにより、厚さ10μmの多孔質半導体層である酸化チタン多孔質層を、再結合防止層上に形成した。
次に、再結合防止層上に多孔質半導体層(酸化チタン多孔質層)が形成されている透明導電膜付きガラス基板を、0.3mMの濃度に調整した色素N−719(soraonix社製)のエタノール溶液に16時間浸漬した。これにより、多孔質半導体層に色素を吸着させて、色素付き酸化チタン電極(光電極)を作製した。
作製した色素付き酸化チタン電極を、温度60℃に加熱されたホットプレート上に設置した。そして、ホットプレート上に設置した色素付き酸化チタン電極の多孔質半導体層上に、実施例1で調製した炭素粒子分散溶液(鱗片状の結晶質炭素粒子を含む正孔輸送材料溶解溶液)を、マイクロピペットにて10μlずつ滴下した。その後、滴下した溶液を乾燥させた。溶液の滴下、乾燥を30回繰り返すことにより、多孔質半導体層(酸化チタン多孔質層)内に正孔輸送材料(CuI及びEMISCN)を浸透させるとともに、多孔質半導体層の表面にp型半導体層を形成した。以上の工程を経て、色素増感型太陽電池セルを作製した。
(比較例2)
ホットプレート上に設置した色素付き酸化チタン電極の多孔質半導体層上に、結晶質炭素粒子が含まれていない正孔輸送材料溶解溶液を滴下させたこと以外は、実施例3と同じ方法により、色素増感型太陽電池のセルを作製した。
[エネルギー変換効率の測定]
以下の手順により電池特性評価試験を行い、実施例3及び比較例2に係る色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率η(%)を測定した。ここで、エネルギー変換効率η(%)は、下記(1)式によって求めることができる。
η=100×(Voc×Jsc×F.F)/PO (1)
上記1(式)において、POは入射光強度[mWcm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.Fは曲線因子(Filling Factor)である。
電池特性評価試験は、ソーラーシミュレータを用いて行った。このとき、AMフィルター(AM1.5)を通したキセノンランプ光源からの擬似太陽光の照射条件を、100[mW/cm](いわゆる「1Sun」の照射条件)とした。そして、作製した実施例3及び比較例2に係る色素増感型太陽電池セルのp型半導体層と、対極としての白金板(厚さ0.5mm)とを対面接触させた状態で、これらをクリップで挟み、セルI−Vテスターを用いて、実施例3及び比較例2に係る色素増感型太陽電池セルの室温における電流−電圧特性を測定した。図7は、電池特性評価試験における試験状態を示す色素増感型太陽電池の断面図である。図7において、図2と同一の構成については同一の符号で示す。また、図7において、符号7は、対極として用いられた白金板である。
セルI−Vテスターを用いて測定した電流−電圧特性から、開放電圧(Voc[V])、短絡電流密度(Jsc[mA・cm−2])、曲線因子(F.F[−])を求め、これらから上記(1)式に基づいてエネルギー変換効率η[%]を算出した。表2に、この電池特性評価試験で得られた結果(エネルギー変換効率η)を示す。
表2に示すように、実施例3に係る色素増感型太陽電池セルの短絡電流密度Jsc(5.3[mA・cm−2])は、比較例2に係る色素増感型太陽電池セルの短絡電流密度Jsc(3.8[mA・cm−2])よりも大きい。また、開放電圧Voc及びF.Fは、実施例3及び比較例2においてほぼ同じ値である。このため、実施例3に係る色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率η(2.17[%])は、比較例2に係る色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率η(1.58[%])よりも高い。この結果から、実施例3に係る色素増感型太陽電池セルは、比較例2に係る色素増感型太陽電池セルよりも、高性能であることがわかる。また、実施例3に係る色素増感型太陽電池セルのp型半導体層内の炭素粒子が多孔質半導体層に入り込んむことに起因したエネルギー変換効率の低下は、ほとんど生じていないと考えられる。
[SEM画像による断面観察]
図8は、実施例3に係る色素増感型太陽電池セルの多孔質半導体層(多孔質酸化チタン層)の断面のSEM画像(倍率:5000倍)であり、図9は、比較例2に係る色素増感型太陽電池セルの多孔質半導体層(多孔質酸化チタン層)の断面のSEM画像(倍率:5000倍)である。図8及び図9において、多孔質半導体層内に白く点在している部分が、多孔質半導体層内に浸透したヨウ化銅を示す。
図8と図9とを比較してわかるように、実施例3に係る色素増感型太陽電池セルの多孔質半導体層(多孔質酸化チタン層)内に浸透しているヨウ化銅の浸透量は、比較例2に係る色素増感型太陽電池セルの多孔質半導体層(多孔質酸化チタン層)内に浸透しているヨウ化銅の浸透量よりも多い。実施例3においては、p型半導体層を形成するために多孔質半導体層5に滴下された溶液中に結晶質炭素粒子が含まれており、この結晶質炭素粒子がヨウ化銅の結晶化(粒子成長)を阻害してヨウ化銅の大粒子化を阻止していると考えられる。そして、ヨウ化銅の大粒子化が阻止されたため、酸化チタン多孔質内へのヨウ化銅の浸透が促進されたと考えられる。それゆえ、実施例3に係る色素増感型太陽電池セルにおいては、発電に寄与する活性面積が大きくなり、短絡電流密度が大きくなったと考えられる。
3.本実施形態に係る一基板型の色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率の測定
本実施形態に係る一基板型の色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率が良好であることを実証するために、以下の実験(実施例4,5、比較例3)を実施した。ここで、一基板型の色素増感型太陽電池セルとは、発電に係る各層を全て一枚の基板表面に形成する太陽電池セルのことである。なお、一枚の基板に、複数の太陽電池セルを形成し、これらセルを接続したものが、太陽電池モジュールとなる。
(実施例4)
図10に、実施例4に係る一基板型の色素増感型太陽電池セルの作製手順を示す。まず、透明基板2としての縦20mm×横20mm×厚さ2mmの透明ガラス板を用意した。次いで、用意した透明ガラス板の一方の表面に、透明導電膜3としてのフッ素ドープ酸化スズ(FTO)をCVDにより形成した。これにより、透明導電膜付きガラス基板GSを作製した。そして、図10(a)に示すように、透明導電膜3にレーザースクライブ加工を施して、透明導電膜3に幅0.5mmのスクライブ溝3a(凹部)を形成した。このスクライブ溝3aにより、透明導電膜3が、第一領域31と第二領域32とに分離される。その後、透明導電膜付きガラス基板GSを洗浄した。
次に、チタン濃度が1%となるように、有機チタン化合物としてのチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)と増粘剤としてのエチルセルロースと希釈溶媒としてのターピネオールとを混合して、再結合防止層用のペーストを調整した。そして、♯400(400メッシュ)のステンレススクリーンを用いて、透明導電膜3のうち、スクライブ溝3aによって分けられた第一領域31と第二領域32とにそれぞれ形成される取出電極(第一取出電極3A,第二取出電極3B)となる部分及び、後述するp型半導体層6が接触する部分、を除く部位に、再結合防止層用のペーストをスクリーン印刷した。これにより、透明導電膜3に形成されているスクライブ溝3aが再結合防止用のペーストに覆われる。その後、ペーストが印刷された透明導電膜付きガラス基板GSを、温度150℃で乾燥し、さらに、温度500℃で30分間焼成した。これにより、図10(b)に示すように、再結合防止層4としての二酸化チタン(TiO)の緻密層(厚さ100nm)を透明導電膜3上にパターン形成した。
次に、市販の粒子径が150nm〜200nmであるアナターゼ型酸化チタン粒子(テイカ製、JA−1)を用意し、酸化チタン粒子の含有量が20重量%となるように、用意したアナターゼ型酸化チタン粒子をターピネオールに良く分散し、さらに増粘剤としてのエチルセルロースを混合して、多孔質半導体層用のペーストを作製した。そして、♯150(150メッシュ)のステンレススクリーンを用い、透明導電膜付きガラス基板GS上に形成されている再結合防止層4上に、多孔質半導体層用のペーストをスクリーン印刷した。その後、再結合防止層4上にペーストが印刷された透明導電膜付きガラス基板GSを、温度150℃で乾燥させ、次いで、温度500℃で15分間焼結した。これにより、図10(c)に示すように、厚さ10μmの多孔質半導体層5である酸化チタン多孔質層を、再結合防止層4上に形成した。この多孔質半導体層5は、再結合防止層4を介して、透明導電膜3の第一領域31及び第二領域32に跨るように、透明導電膜3の表面上に形成される。
続いて、再結合防止層4上に多孔質半導体層5(酸化チタン多孔質層)が形成されている透明導電膜付きガラス基板GSを、0.3mMの濃度に調整した色素N−719(soraonix社製)のエタノール溶液に16時間浸漬した。これにより、多孔質半導体層5に色素を吸着させて、色素付き酸化チタン電極E(光電極)を作製した。
次に、色素付き酸化チタン電極Eの透明導電膜3のうち、取出電極(第一取出電極3A,第二取出電極3B)となる部分の表面に、マスキング材としてのポリイミド粘着テープ(厚さ50μm)を貼付した。その後、色素付き酸化チタン電極Eを、温度60℃に加熱されたホットプレート上に設置した。そして、ホットプレート上に設置した色素付き酸化チタン電極Eの多孔質半導体層5の表面に、実施例1で調製した炭素粒子分散溶液(鱗片状の結晶質炭素を含む正孔輸送材料溶解溶液)を、マイクロピペットにて10μlずつ滴下した。その後、滴下した溶液を乾燥させた。溶液の滴下、乾燥を30回繰り返すことにより、多孔質半導体層5(酸化チタン多孔質層)内に正孔輸送材料(CuI及びEMISCN)を浸透させるとともに、マスキング材が貼付されていない部分にp型半導体層6を形成した。これにより、図10(d)に示すような、一基板型の色素増感型太陽電池のセルを作製した。図10(d)からわかるように、p型半導体層6は、多孔質半導体層5の表面を覆う第一部分6aと、多孔質半導体層5の一端面及びその一端面に連なる再結合防止層4の一端面とを覆う第二部分6bとを有するように、断面L字状に形成される。そして、p型半導体層6の第二部分6bの先端が、透明導電膜3の第二領域32に直接接触している。
(実施例5)
p型半導体層6を形成する際に、実施例2で調製した炭素粒子分散溶液(ファイバー状の結晶質炭素を含む正孔輸送材料溶解溶液)を用いたこと以外は、実施例4と同じ方法により、一基板型の色素増感型太陽電池のセルを作製した。
(比較例3)
p型半導体層6を形成する際に、結晶質炭素粒子が含まれていない正孔輸送材料溶解溶液を用いたこと以外は、実施例4と同じ方法により、一基板型の色素増感型太陽電池のセルを作製した。
[エネルギー変換効率の測定]
実施例4,5及び比較例3に係る一基板型の色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率ηを、実施例3と同様な方法により測定した。この場合において、それぞれの一基板型の色素増感型太陽電池セルの第一取出電極3Aと第二取出電極3Bとの間の電流−電圧特性を測定し、得られた測定結果から、エネルギー変換効率ηを求めた。その結果を表3に示す
表3からわかるように、実施例4,5に係る一基板型の色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率η(実施例4:1.68[%]、実施例5:1.64[%])は、比較例3に係る一基板型の色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率η(0.67[%])よりも高い。特に、実施例4,5に係る一基板型の色素増感型太陽電池セルにおいては、内部抵抗に相当するF.Fが高い。p型半導体層6内に結晶質炭素粒子が存在することによって、p型半導体層6(正孔輸送層)の抵抗値が小さくされていることが、F.Fが高められた一因であると考えられる。
また、実施例4,5に係るセルは、炭素粒子を含有し且つ断面L字状に形成されたp型半導体層6が、専用の対極及び導電性部材を介することなく透明導電膜3に接触するように構成されている。このようにセルを構成した場合においても、十分に高いエネルギー変換効率を得ることができる。
また、実施例4及び5においては、図10(d)に示すように、対極としても機能するp型半導体層6が、多孔質半導体層5に直接接触しているため、短絡によるエネルギー変換効率の低下が懸念される。しかしながら、実施例4及び5に係る一基板型の色素増感型太陽電池セルのエネルギー変換効率ηは高い。この理由は、上述したように、多孔質半導体層5の表面に対面するp型半導体層6の表面に薄いヨウ化銅の層が形成されており、このヨウ化銅の層の形成によって、p型半導体層6内の炭素粒子が直接的に多孔質半導体層5に接触することが防止されているためと考えられる。従って、本実施例においては、多孔質半導体層5(色素付き酸化チタン電極E)と、対極として機能するp型半導体層6とを仕切るセパレータを必要としない。このため、セパレータを設けることによる不具合(例えばエネルギー変換効率の低下)の発生を防止することもできる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施例においては、p型半導体層6に含有される炭素粒子の形状が、鱗片状或いはファイバー状であるが、球状、その他の形状であってもよい。また、鱗片状の炭素粒子とファイバー状の炭素粒子とが混合された炭素粒子をp型半導体層6に含有させてもよい。さらに、上記実施例においては、結晶質炭素粒子をp型半導体層6に含有させているが、部分的に結晶構造が崩れた炭素粒子をp型半導体層6に含有させてもよいし、或いは、アモルファスの炭素粒子をp型半導体層6に含有させてもよい。ただし、結晶質の炭素粒子の方が、アモルファスの炭素粒子よりも安定しているので、p型半導体層6に含有させる炭素粒子は結晶質であるのがよい。また、p型半導体層6の上面に、金属層やカーボン層などの導電体を積層してもよい。これによれば、対極として機能するp型半導体層6の面方向の抵抗値をより低減でき、より一層の性能向上を図ることができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
1…色素増感型太陽電池セル(色素増感型太陽電池)、2…透明基板、3…透明導電膜、3A…第一取出電極、3B…第二取出電極、3a…スクライブ溝(凹溝)、31…第一領域、32…第二領域、4…再結合防止層、5…多孔質半導体層、6…p型半導体層、6a…第一部分、6b…第二部分、10…太陽電池モジュール

Claims (6)

  1. 透明基板と、
    前記透明基板の一方の面に形成された透明導電膜と、
    前記透明導電膜の表面上に形成され、色素により増感された多孔質半導体層と、
    前記多孔質半導体層の表面上に形成され、Cu化合物を含むp型半導体により構成されるp型半導体層と、を備え、
    前記p型半導体層内に炭素粒子が含有されている、色素増感型太陽電池。
  2. 請求項1に記載の色素増感型太陽電池において、
    前記p型半導体層に含まれる前記Cu化合物が、前記多孔質半導体層内に浸透している、色素増感型太陽電池。
  3. 請求項1又は2に記載の色素増感型太陽電池において、
    前記透明導電膜と前記多孔質半導体層との間に、前記透明導電膜側から前記多孔質半導体層側に向かう電子の流れを阻止する再結合防止層が形成されている、色素増感型太陽電池。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池において、
    前記炭素粒子の径が、0.2μmよりも大きい、色素増感型太陽電池。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池において、
    前記炭素粒子の形状が、鱗片状又はファイバー状である、色素増感型太陽電池。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池において、
    前記透明導電膜は、凹溝によって分離された第一領域と第二領域とを有し、
    前記多孔質半導体層は、少なくとも前記透明導電膜の前記第一領域の表面上に形成され、
    前記p型半導体層が、前記透明導電膜の前記第二領域に接触するように、構成されている、色素増感型太陽電池。
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