以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、以下に説明する実施の形態および実施例において、同一部分または同様の機能を有する部分には、同一の符号または同一のハッチパターンを異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
「ソース」や「ドレイン」の機能は、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。ただし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
また、酸化物半導体膜を有するトランジスタはnチャネル型トランジスタであるため、本明細書において、ゲート電圧が0Vの場合、ドレイン電流が流れていないとみなすことができるトランジスタを、ノーマリーオフ特性を有するトランジスタと定義する。また、ゲート電圧が0Vの場合、ドレイン電流が流れているとみなすことができるトランジスタを、ノーマリーオン特性を有するトランジスタと定義する。
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、酸化物半導体膜(またはトランジスタがオン状態のときに酸化物半導体膜の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
チャネル幅とは、例えば、酸化物半導体膜(またはトランジスタがオン状態のときに酸化物半導体膜の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、実効的なチャネル幅とよぶ。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、見かけ上のチャネル幅とよぶ。)と、が異なる場合がある。例えば、立体的な構造を有するトランジスタでは、実効的なチャネル幅が、トランジスタの上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつ立体的な構造を有するトランジスタでは、酸化物半導体膜の上面に形成されるチャネル領域の割合に対して、酸化物半導体膜の側面に形成されるチャネル領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも、実際にチャネルの形成される実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
ところで、立体的な構造を有するトランジスタにおいては、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、酸化物半導体膜の形状が既知という仮定が必要である。したがって、酸化物半導体膜の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
そこで、本明細書では、トランジスタの上面図において、酸化物半導体膜とゲート電極とが重なる領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さである見かけ上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel Width)」とよぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを取得して、その画像を解析することなどによって、値を決定することができる。
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
(実施の形態1)
酸素欠損が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナス方向に変動しやすく、ノーマリーオン特性となりやすい。これは、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損に起因して電荷が生じてしまい、低抵抗化するためである。また、酸化物半導体膜に酸素欠損が含まれると、経時変化やストレス試験(代表的には、光ゲートBT(Bias−Temperature)ストレス試験等)により、トランジスタの電気特性、代表的にはしきい値電圧が変動してしまうという問題がある。そこで、本実施の形態では、しきい値電圧の変動が少なく、信頼性の高い半導体装置およびその作製方法について説明する。また、電気特性の優れた半導体装置およびその作製方法について説明する。
<半導体装置の構成例>
本実施の形態では、トップゲート構造のトランジスタの作製方法について説明する。
図1(A)乃至図1(C)は、半導体装置が有するトランジスタ100の上面図および断面図である。図1(A)はトランジスタ100の上面図であり、図1(B)は、図1(A)の一点鎖線A−B間の断面図であり、図1(C)は、図1(A)の一点鎖線C−D間の断面図である。なお、図1(A)では、明瞭化のため、例えば、基板101、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜115、ゲート絶縁膜117、絶縁膜121、絶縁膜123などを省略している。
また、図1(B)は、トランジスタ100のチャネル長方向の断面図であり、図1(C)は、トランジスタ100のチャネル幅方向の断面図である。
図1に示すトランジスタ100は、基板101上に設けられる。トランジスタ100は、基板101上に形成されるゲート電極103と、基板101およびゲート電極103上のゲート絶縁膜105と、ゲート絶縁膜105に接する酸化物半導体膜107と、酸化物半導体膜107に接する酸化物半導体膜111と、酸化物半導体膜111の上面および側面並びに酸化物半導体膜107の側面に少なくとも接する一対の電極113a、113bと、酸化物半導体膜111および一対の電極113a、113bと接する酸化物半導体膜115と、酸化物半導体膜115を介して酸化物半導体膜111と重なるゲート絶縁膜117と、ゲート絶縁膜117と接し、且つ酸化物半導体膜115およびゲート絶縁膜117を介して酸化物半導体膜111と重なるゲート電極119とを有する。また、一対の電極113a、113b、酸化物半導体膜115、ゲート絶縁膜117、およびゲート電極119を覆う絶縁膜121と、絶縁膜121を覆う絶縁膜123とを有してもよい。
なお、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの、表面、側面、上面、および/または、下面の少なくとも一部(または全部)に設けられている。
または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの、表面、側面、上面、および/または、下面の少なくとも一部(または全部)と、接触している。または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの少なくとも一部(または全部)と、接触している。
または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの、表面、側面、上面、および/または、下面の少なくとも一部(または全部)と、電気的に接続されている。または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの一部(または全部)と、電気的に接続されている。
または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの、表面、側面、上面、および/または、下面の少なくとも一部(または全部)に、近接して配置されている。または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの一部(または全部)に、近接して配置されている。
または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの、表面、側面、上面、および/または、下面の少なくとも一部(または全部)の横側に配置されている。または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの一部(または全部)の横側に配置されている。
または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの、表面、側面、上面、および/または、下面の少なくとも一部(または全部)の斜め上側に配置されている。または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの一部(または全部)の斜め上側に配置されている。
または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの、表面、側面、上面、および/または、下面の少なくとも一部(または全部)の上側に配置されている。または、電極113a(および/または、電極113b)の、少なくとも一部(または全部)は、酸化物半導体膜107(および/または、酸化物半導体膜111)などの一部(または全部)の上側に配置されている。
トランジスタ100は2つのゲート電極を有する。一方の電極は、トランジスタ100のオン状態およびオフ状態を制御する機能を有する。他方の電極は、トランジスタ100のしきい値電圧を制御する機能を有する。トランジスタ100のゲート電極の一方にしきい値電圧が正となる電圧を印加することで、トランジスタの電気特性をノーマリーオフ特性とすることができる。
トランジスタ100に含まれるゲート絶縁膜105は、凸部を有する。また、該凸部上に順に酸化物半導体膜107、111が形成される。このため、図1(C)に示すように、チャネル幅方向において、ゲート電極119はゲート絶縁膜117を介して酸化物半導体膜107、111の側面と対向する。即ち、ゲート電極119に電圧が印加されると、酸化物半導体膜107、111は、チャネル幅方向においてゲート電極119の電界で囲まれる。ゲート電極119の電界で酸化物半導体膜が囲まれるトランジスタの構造を、surrounded channel(s−channel)構造とよぶ。s−channel構造のトランジスタにおいて、オン状態では酸化物半導体膜111の全体(バルク)にチャネルが形成されるため、オン電流が増大する。一方、オフ状態の場合、酸化物半導体膜111に形成されるチャネル領域の全領域を空乏化するため、オフ電流をさらに小さくすることができる。
以下に、トランジスタ100の各構成について説明する。
基板101の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等を、基板101として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどを用いた単結晶半導体基板または多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI(Silicon on Insurator)基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板101として用いてもよい。または、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)に適用可能なヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、ヒ化インジウムガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、シリコンゲルマニウムなどを基板101として用いてもよい。これらの半導体を基板101として用いることで、高速動作をすることに適したトランジスタを作製することができる。すなわち、基板101は、単なる支持基板に限らず、他のトランジスタなどのデバイスが形成された基板であってもよい。この場合、トランジスタ100のゲート電極、ソース電極、またはドレイン電極の少なくとも一つは、上記他のデバイスと電気的に接続されていてもよい。
なお、基板101として、可撓性基板(フレキシブル基板)を用いてもよい。可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に、トランジスタや容量素子などの半導体素子を直接作製してもよいし、他の作製基板上に半導体素子を作製し、その後可撓性基板に半導体素子を剥離、転置してもよい。なお、作製基板から半導体素子を可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と半導体素子との間に、剥離層を設けるとよい。
ゲート電極103は、トランジスタ100のしきい値電圧を制御する機能を有する。ゲート電極103は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、マンガン、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極103は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、マンガンを含む銅膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造、銅−マグネシウム合金膜と、その銅−マグネシウム合金膜に重ねて銅膜を積層し、さらにその上に銅−マグネシウム合金膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の一、または複数を組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
また、ゲート電極103は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
なお、ゲート電極103に含まれる元素がゲート絶縁膜105に拡散しないことが好ましい。例えば、ゲート電極103として、タングステン、タンタル、モリブデン、銅、チタン、アルミから選らばれた元素の一、または複数を組み合わせた合金膜、または微量元素を添加した合金膜等を用いることで、ゲート電極103に含まれる元素がゲート絶縁膜105に拡散しにくい。
また、ゲート電極103として、In−Ga−Zn酸化窒化物膜、In−Sn酸化窒化物膜、In−Ga酸化窒化物膜、In−Zn酸化窒化物膜、金属酸化窒化物膜(SnON,InONの金属酸化窒化膜等、金属窒化膜(InN、ZnN等)等を設けてもよい。例えば、In−Ga−Zn酸化窒化物膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜111より高い窒素濃度、具体的には7原子%以上のIn−Ga−Zn酸化窒化物膜を用いる。なお、上記金属酸化窒化膜、または金属窒化膜を用いてゲート電極103を形成する場合、ゲート電極103上に金属、酸素、または窒素の拡散を防ぐ保護膜を形成することが好ましい。保護膜の一例としては、タングステン、タンタル、モリブデン、銅、チタン、アルミから選らばれた元素の一、または複数を組み合わせた合金膜、または微量元素を添加した合金膜がある。
ゲート絶縁膜105は、酸化物半導体膜107の下地膜としての機能を有する。ゲート絶縁膜105としては、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn金属酸化物などを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、ゲート絶縁膜105としては、欠陥の少ない膜または不純物の少ない膜を用いることで、トランジスタの電気特性の変動、またはしきい値電圧のシフト等を低減することが可能であるため、好ましい。
また、ゲート絶縁膜105として、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜を設けることで、酸化物半導体膜107からの酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜107への水素、水等の侵入を防ぐことができる。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等を用いて形成する。
また、ゲート絶縁膜105として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウムなどのhigh−k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
ゲート絶縁膜105の厚さは、5nm以上400nm以下、または5nm以上300nm以下、または10nm以上50nm以下とするとよい。なお、ゲート絶縁膜105の厚さを小さくすることで、ゲート電極103に印加する電圧を低くすることが可能であり、半導体装置の消費電力を低減することができる。
ゲート絶縁膜105は、窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁膜を用いて形成することができる。窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁膜とは、具体的には、真空準位から4.6eV以上8eV以下にある欠陥準位の密度が少ない酸化物絶縁膜であり、言い換えると、窒素酸化物に起因する欠陥準位の密度が少ない酸化物膜である。窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁膜として、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜、窒素酸化物の放出量の少ない酸化シリコン膜、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化アルミニウム膜、または窒素酸化物の放出量の少ない酸化アルミニウム膜等を用いることができる。
窒素酸化物(NOx、xは0より大きく2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的にはNO2またはNOは、ゲート絶縁膜105などに準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体膜107のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、ゲート絶縁膜105及び酸化物半導体膜107の界面に拡散すると、当該準位が酸化物半導体膜107のゲート絶縁膜105側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、ゲート絶縁膜105及び酸化物半導体膜107界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。
ゲート絶縁膜105として、窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上基板歪み点未満の加熱処理により、ゲート絶縁膜105は、100K以下のESR(電子スピン共鳴)で測定して得られたスペクトルにおいて、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルが観測されない。なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリット幅、並びに第2のシグナル及び第3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測定において約5mTである。また、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピンの密度の合計が検出下限未満であり、代表的には1×1017spins/cm3以下である。
なお、100K以下のESRスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下の第1シグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルは、二酸化窒素起因のシグナルに相当する。即ち、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピンの密度の合計が少ないほど、酸化物絶縁膜に含まれる窒素酸化物の含有量が少ないといえる。
また、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上基板歪み点未満の加熱処理における、窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁膜は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定される窒素濃度が2×1020atoms/cm3未満、7×1019atoms/cm3未満、2×1019atoms/cm3未満である。なお、ゲート絶縁膜105の成膜温度が高いほど、ゲート絶縁膜105の窒素酸化物の含有量を低減することが可能である。ゲート絶縁膜105の成膜温度は、450℃以上基板歪み点未満、500℃以上基板歪み点未満、または500℃以上550℃以下が好ましい。
酸化物半導体膜111は、In若しくはGaを含む酸化物半導体膜であり、代表的には、In−Ga酸化物膜、In−Zn酸化物膜、In−Mg酸化物膜、Zn−Mg酸化物膜、In−M−Zn酸化物膜(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、またはNd)がある。
なお、酸化物半導体膜111がIn−M−Zn酸化物膜であるとき、InとMの原子の比率は、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくは、Inが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくは、Inが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。
酸化物半導体膜111中のインジウムやガリウムなどの含有量は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)や、X線電子分光法(XPS)、ICP質量分析(ICP−MS)で比較できる。
酸化物半導体膜111は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上であるため、トランジスタ100のオフ電流を低減することができる。
酸化物半導体膜111の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115は、酸化物半導体膜111を構成する元素の一種以上から構成される酸化物半導体膜である。このため、酸化物半導体膜111と酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115との界面において、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されないため、トランジスタ100の電界効果移動度が高くなる。
酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115は、代表的には、Ga酸化物膜、In−Ga酸化物膜、In−Zn酸化物膜、In−Mg酸化物膜、Zn−Mg酸化物膜、In−M−Zn酸化物膜(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、またはNd)であり、且つ酸化物半導体膜111よりも伝導帯下端のエネルギー準位が真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115の伝導帯下端のエネルギーと、酸化物半導体膜111の伝導帯下端のエネルギーとの差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.2eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下である。即ち、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115の電子親和力と、酸化物半導体膜111との電子親和力との差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.2eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下である。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115として、Al、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、またはNdを、Inより高い原子数比で有することで、以下の効果を有する場合がある。(1)酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115のエネルギーギャップを大きくする。(2)酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115の電子親和力を小さくする。(3)外部からの不純物を遮蔽する。(4)酸化物半導体膜111と比較して、絶縁性が高くなる。(5)Al、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、またはNdは、酸素との結合力が強い金属元素であるため、酸素欠損が生じにくくなる。
酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115がIn−M−Zn酸化物であるとき、ZnおよびOを除いてのInおよびMの原子数比率は、好ましくは、Inが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくは、Inが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。
また、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115がIn−M−Zn酸化物膜(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、またはNd)の場合、酸化物半導体膜111と比較して、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115に含まれるM(Al、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、またはNd)の原子数比が高く、代表的には、酸化物半導体膜111に含まれる上記原子と比較して、1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比である。前述のMで表した元素はインジウムよりも酸素と強く結合するため、酸素欠損が酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115に生じることを抑制する機能を有する。即ち、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115は酸化物半導体膜111よりも酸素欠損が生じにくい酸化物半導体膜である。
酸化物半導体膜111がIn−M−Zn酸化物膜(Mは、Al、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、またはNd)の場合、酸化物半導体膜111を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると、x1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/y1を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜111としてCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1等がある。
酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115がIn−M−Zn酸化物膜(Mは、Al、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Mg、またはNd)の場合、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x2:y2:z2とすると、x2/y2<x1/y1であって、z2/y2は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z2/y2を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115としてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:2:4、In:M:Zn=1.1:2.9:7.5、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6、In:M:Zn=1:3:8、In:M:Zn=1:4:4、In:M:Zn=1:4:5、In:M:Zn=1:4:6、In:M:Zn=1:4:7、In:M:Zn=1:4:8、In:M:Zn=1:5:5、In:M:Zn=1:5:6、In:M:Zn=1:5:7、In:M:Zn=1:5:8、In:M:Zn=1:6:8等がある。
なお、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111および酸化物半導体膜115の原子数比はそれぞれ、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
なお、原子数比はこれらに限られず、必要とする半導体特性に応じて適切な原子数比のものを用いればよい。
また、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115は同じ組成でもよい。例えば、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115としてIn:Ga:Zn=1:3:2、1:3:4、または1:4:5の原子数比のIn−Ga−Zn酸化物を用いてもよい。
または、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115は異なった組成でもよい。例えば、酸化物半導体膜107としてIn:Ga:Zn=1:3:2の原子数比のIn−Ga−Zn酸化物を用い、酸化物半導体膜115としてIn:Ga:Zn=1:3:4または1:4:5の原子数比のIn−Ga−Zn酸化物を用いてもよい。
酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115の厚さは、3nm以上100nm以下、または3nm以上50nm以下とする。
ここで、酸化物半導体膜111の厚さは、少なくとも酸化物半導体膜107よりも厚く形成することが好ましい。酸化物半導体膜111が厚いほど、トランジスタのオン電流を高めることができる。また、酸化物半導体膜107は、酸化物半導体膜111の界面準位の生成を抑制する効果が失われない程度の厚さであればよい。例えば、酸化物半導体膜111の厚さは、酸化物半導体膜107の厚さに対して、1倍よりも大きく、または2倍以上、または4倍以上、または6倍以上とすればよい。なお、トランジスタのオン電流を高める必要のない場合にはその限りではなく、酸化物半導体膜107の厚さを酸化物半導体膜111の厚さ以上としてもよい。この場合、酸化物半導体膜107により多くの酸素を添加することが可能であるため、加熱処理により、酸化物半導体膜111に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
また、酸化物半導体膜115も酸化物半導体膜107と同様に、酸化物半導体膜111の界面準位の生成を抑制する効果が失われない程度の厚さであればよい。例えば、酸化物半導体膜107と同等またはそれ以下の厚さとすればよい。酸化物半導体膜115が厚いと、ゲート電極103による電界が酸化物半導体膜111に届きにくくなる恐れがあるため、酸化物半導体膜115は薄く形成することが好ましい。また、酸化物半導体膜115に含まれる酸素が一対の電極113a、113bに拡散し、一対の電極113a、113bが酸化するのを防ぐため、酸化物半導体膜115の膜厚は薄い方が好ましい。例えば、酸化物半導体膜115は酸化物半導体膜111の厚さよりも薄くすればよい。なおこれに限られず、酸化物半導体膜115の厚さはゲート絶縁膜117の耐圧を考慮して、トランジスタを駆動させる電圧に応じて適宜設定すればよい。
酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115それぞれの組成が異なる場合、界面は、STEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)を用いて観察することができる場合がある。
酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。当該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合することで、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。
このため、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115は、酸素欠損と共に、水素ができる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115において、SIMS分析により得られる水素濃度を、5×1019atoms/cm3以下、または1×1019atoms/cm3以下、または5×1018atoms/cm3以下、または1×1018atoms/cm3以下、または5×1017atoms/cm3以下、または1×1016atoms/cm3以下とする。この結果、トランジスタ100は、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)を有する。
なお、酸化物半導体膜107、111、115中の不純物濃度はSIMSで測定することができる。
また、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115における酸素欠損が増加し、n型領域が形成されてしまう。このため、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。この結果、トランジスタ100は、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)を有する。
また、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115において、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。この結果、トランジスタ100は、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)を有する。
また、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型領域が形成されてしまう。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体膜において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、二次イオン質量分析法により得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115の不純物を低減することで、酸化物半導体膜のキャリア密度を低減することができる。このため、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115は、キャリア密度が1×1017個/cm3以下、好ましくは1×1015個/cm3以下、さらに好ましくは1×1013個/cm3以下、より好ましくは1×1011個/cm3以下であることが好ましい。
酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115として、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる場合がある。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)になりやすい。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下という特性を得ることができる。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。
酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC−OS、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC−OSは最も欠陥準位密度が低い。
酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115は、例えば微結晶構造でもよい。微結晶構造の酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115は、例えば、1nm以上10nm未満のサイズの微結晶を膜中に含む。または、微結晶構造の酸化物膜および酸化物半導体膜は、例えば、非晶質相に1nm以上10nm未満の結晶部を有する混相構造である。
酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115は、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物膜は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
なお、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115が、CAAC−OS、微結晶構造、および非晶質構造の二以上の構造の領域を有する混合膜であってもよい。混合膜として、例えば、非晶質構造の領域と、微結晶構造の領域と、CAAC−OSの領域と、を有する単層構造がある。または、混合膜として、例えば、非晶質構造の領域と、微結晶構造の領域と、CAAC−OSの領域と、の積層構造がある。
なお、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および酸化物半導体膜115は、例えば、単結晶構造を有してもよい。
酸化物半導体膜111と比較して酸素欠損の生じにくい酸化物半導体膜を酸化物半導体膜111に接して設けることで、酸化物半導体膜111における酸素欠損を低減することができる。また、酸化物半導体膜111は、酸化物半導体膜111を構成する金属元素の一以上を有する酸化物半導体膜107、115と接するため、酸化物半導体膜107と酸化物半導体膜111との界面、酸化物半導体膜111と酸化物半導体膜115との界面における界面準位密度が極めて低い。このため、酸化物半導体膜107または酸化物半導体膜115に酸素を添加した後、加熱処理を行うことで該酸素が酸化物半導体膜107、115から酸化物半導体膜111へ酸素が移動するが、このときに界面準位において酸素が捕獲されにくく、効率よく酸化物半導体膜107、115に含まれる酸素を酸化物半導体膜111へ移動させることが可能である。この結果、酸化物半導体膜111に含まれる酸素欠損を低減することが可能である。また、酸化物半導体膜107、115に酸素が添加されるため、酸化物半導体膜107、115の酸素欠損を低減することが可能である。即ち、酸化物半導体膜107、115及び酸化物半導体膜111の局在準位密度を低減することができる。
また、酸化物半導体膜111が、構成元素の異なる絶縁膜(例えば、酸化シリコン膜を含むゲート絶縁膜)と接する場合、界面準位が形成され、該界面準位はチャネルを形成することがある。このような場合、しきい値電圧の異なる第2のトランジスタが出現し、トランジスタの見かけ上のしきい値電圧が変動することがある。しかしながら、酸化物半導体膜111を構成する金属元素を一種以上含む酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115が酸化物半導体膜111と接するため、酸化物半導体膜107と酸化物半導体膜111の界面、および酸化物半導体膜115と酸化物半導体膜111の界面に界面準位を形成しにくくなる。
また、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115は、ゲート絶縁膜105、117の構成元素が酸化物半導体膜111へ混入して、不純物による準位が形成されることを抑制するためのバリア膜としても機能する。
例えば、ゲート絶縁膜105、117として、シリコンを含む絶縁膜を用いる場合、該ゲート絶縁膜105、117中のシリコン、またはゲート絶縁膜105、117中に混入されうる炭素が、酸化物半導体膜107または酸化物半導体膜115の中へ界面から数nm程度まで混入することがある。シリコン、炭素等の不純物が酸化物半導体膜111中に入ると不純物準位を形成し、不純物準位がドナーとなり電子を生成することでn型化することがある。
しかしながら、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜115の膜厚が、数nmよりも厚ければ、混入したシリコン、炭素等の不純物が酸化物半導体膜111にまで到達しないため、不純物準位の影響は低減される。
よって酸化物半導体膜107、115を設けることにより、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきを低減することができる。
また、ゲート絶縁膜105、117と酸化物半導体膜111との界面にチャネルが形成される場合、該界面で界面散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低くなる。しかしながら、酸化物半導体膜111を構成する金属元素を一種以上含む酸化物半導体膜107、115が酸化物半導体膜111に接して設けられるため、酸化物半導体膜111と酸化物半導体膜107、115との界面ではキャリアの散乱が起こりにくく、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
本実施の形態においては、酸化物半導体膜111の酸素欠損量、さらには酸化物半導体膜111に接する酸化物半導体膜107の酸素欠損量を低減することが可能であり、酸化物半導体膜111の局在準位密度を低減することができる。この結果、本実施の形態に示すトランジスタ100は、しきい値電圧の変動が少なく、信頼性が高い。また、本実施の形態に示すトランジスタ100は優れた電気特性を有する。
一対の電極113a、113bは、導電材料として、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、マンガン、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、マンガンを含む銅膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造、銅−マグネシウム合金膜と、その銅−マグネシウム合金膜に重ねて銅膜を積層し、さらにその上に銅−マグネシウム合金膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
なお、酸化物半導体膜111において、ゲート電極119と重なり、且つ一対の電極113a、113bの間に挟まれる領域をチャネル形成領域という。また、チャネル形成領域において、キャリアが主に流れる領域をチャネル領域という。ここでは、一対の電極113a、113bの間に設けられる酸化物半導体膜111がチャネル領域である。また、一対の電極113a、113bの間の距離をチャネル長という。
また、一対の電極113a、113bとして、タングステン、チタン、アルミニウム、銅、モリブデン、クロム、またはタンタル単体若しくは合金等の、酸素と結合しやすい導電材料を用いることが好ましい。後のプロセス温度が比較的高くできることなどから、融点の比較的高いタングステンやチタンを用いることが好ましい。なお、酸素と結合しやすい導電材料には、酸素が拡散しやすい材料も含まれる。この結果、酸化物半導体膜111に含まれる酸素と一対の電極113a、113bに含まれる導電材料とが結合し、酸化物半導体膜111において、酸素欠損領域が形成される。また、酸化物半導体膜111に一対の電極113a、113bを形成する導電材料の構成元素の一部が混入する場合もある。この結果、少なくとも酸化物半導体膜111において、一対の電極113a、113bと接する領域にn型領域(低抵抗領域)が形成される。n型領域(低抵抗領域)は、ソース領域およびドレイン領域として機能する。
なお、低抵抗領域に接する一対の電極113a、113bでは、一部酸素の濃度が高い領域が形成されうる。また、低抵抗領域に接する一対の電極113a、113bでは、酸化物半導体膜111の構成元素が混入することがある。すなわち、酸化物半導体膜111の一対の電極113a、113bに接触する界面近傍には、当該接触した2層の混合領域または混合層とも呼ぶことのできる箇所が形成されていることもある。
n型領域(低抵抗領域)は導電性が高いため、酸化物半導体膜111と一対の電極113a、113bとの接触抵抗を低減することが可能であり、トランジスタのオン電流を増大させることが可能である。
ゲート絶縁膜117は、ゲート絶縁膜105の材料を適宜用いることができる。
ゲート電極119は、ゲート電極103の材料を適宜用いることができる。
絶縁膜121、123は、ゲート絶縁膜117に適用できる材料および形成方法を適宜用いて形成することができる。なお、ここでは、絶縁膜121、123の積層構造としたが、単層構造としてもよい。
絶縁膜121または絶縁膜123として、酸化アルミニウム膜を用いることが好ましい。酸化アルミニウム膜は、水素、水、および酸素のバリア膜として機能するため、絶縁膜121または絶縁膜123として、酸化アルミニウム膜を用いることで、酸化物半導体膜111に含まれる酸素の脱離を抑制すると共に、外部から酸化物半導体膜111へ水、水素等が拡散するのを防ぐことが可能である。
絶縁膜121および絶縁膜123が酸化物絶縁膜の場合、絶縁膜121および絶縁膜123の一方または双方は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いてもよい。このようにすることで、絶縁膜に含まれる当該酸素を酸化物半導体膜に移動させ、酸素欠損を該酸素で補填することで、さらに酸素欠損を低減することが可能となる。
化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜として、昇温脱離ガス分析(以下、TDS分析とする。)おいて、膜の表面温度が100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲における酸素分子の放出量が、1.0×1018分子/cm3以上である酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。
化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、酸化物半導体膜111に酸素を供給する機能を発揮できる厚さとする。例えば、50nm以上500nm以下、または50nm以上400nm以下とすることができる。
また、絶縁膜121および絶縁膜123の一方または双方として、水素含有量が少ない窒化絶縁膜を設けてもよい。当該窒化絶縁膜としては、例えば、膜の表面温度が100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲で行われるTDS分析によって測定される水素分子の放出量が、5.0×1021分子/cm3未満、または3.0×1021分子/cm3未満、または1.0×1021分子/cm3未満である窒化絶縁膜が好ましい。
窒化絶縁膜は、外部から水素や水などの不純物の侵入を抑制する機能を発揮できる厚さとする。例えば、50nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上150nm以下、さらに好ましくは50nm以上100nm以下とすることができる。
ゲート絶縁膜105として、窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁膜を有するトランジスタにおいて、ゲートに正の電圧または負の電圧を印加するゲートBTストレス試験の前後における、ストレス時間に対するしきい値電圧の変動量(ΔVth)を図2に示す。図2において、横軸はストレス時間の対数を表し、縦軸はしきい値電圧の変動量を表す。また、ストレス試験の条件としては、使用最高温度として150℃、駆動最大電圧として3.3Vを印加し、任意の時間、50時間以上、または100時間以上のストレスを与える条件を用いることができる。
ここで、ゲートBTストレス試験の測定方法について説明する。はじめに、基板温度を任意の温度(以下、ストレス温度という。)に一定に維持し、トランジスタの初期特性におけるVg−Id特性を測定する。
次に、基板温度をストレス温度に維持したまま、トランジスタのソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極を同電位とし、当該一対の電極とは異なる電位をゲート電極に一定時間(以下、ストレス時間という。)印加する。次に、基板温度はストレス温度に維持したまま、トランジスタのVg−Id特性を測定する。この結果、ゲートBTストレス試験前後の電気特性におけるしきい値電圧及びシフト値の差を、変動量として得ることができる。
なお、ゲート電極に負の電圧を印加するストレス試験をマイナスゲートBTストレス試験(ダークマイナスストレス)といい、正の電圧を印加するストレス試験をプラスゲートBTストレス試験(ダークプラスストレス)という。また、光を照射しつつゲート電極に負の電圧を印加するストレス試験を光マイナスゲートBTストレス試験(フォトマイナスストレス)といい、正の電圧を印加するストレス試験を光プラスゲートBTストレス試験(フォトプラスストレス)という。
図2において、実線は、ストレス時間に対するしきい値電圧の変動量を示す。図2に示すように、本実施の形態に示すトランジスタは、ストレス時間に対してしきい値電圧の変動量が−0.1Vより大きく、0.1Vより小さい。
本実施の形態に示すトランジスタは、経年変化によるしきい値電圧の変動量が小さく、信頼性の高いトランジスタである。
酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する絶縁膜を、酸化物半導体膜の加熱処理の温度より高い温度で成膜することで、絶縁膜の窒素濃度を低下することが可能である。このため、加熱処理を行っても、絶縁膜における窒素酸化物の生成及び欠陥量の増加を抑制することが可能である。
また、酸化物半導体膜107に酸素を添加した後、酸化物半導体膜111を形成し、加熱処理することで、酸化物半導体膜107に含まれる酸素が酸化物半導体膜111に拡散する。この結果、酸化物半導体膜111の酸素欠損を低減することができる。
<半導体装置の作製方法>
次に、半導体装置の作製方法について、図3および図4を用いて説明する。
トランジスタを構成する膜(絶縁膜、酸化物半導体膜、金属酸化物膜、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法を用いて形成することができる。あるいは、塗布法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例として、MOCVD(有機金属化学堆積)法やALD(原子層成膜)法を使ってもよい。
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行う。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行う。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブともよぶ)を切り替えて2種類以上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスはキャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入してもよい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の層が第1の層上に積層されて薄膜が形成される。
このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なトランジスタを作製する場合に適している。
図3(A)に示すように、基板101上にゲート電極103を形成し、基板101およびゲート電極103上に後に絶縁膜104を形成し、絶縁膜104上に酸化物半導体膜106を形成する。次に、酸化物半導体膜106に酸素108を添加する。
なお、絶縁膜104はのちの加工によりゲート絶縁膜105となる。また、酸化物半導体膜106はのちの加工により酸化物半導体膜107となる。
ゲート電極103の形成方法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法(有機金属化学堆積(MOCVD)法、メタル化学気相堆積法、原子層成膜(ALD)法あるいはプラズマ化学気相堆積(PECVD)法を含む。)、蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法等により導電膜を形成する。次に、該導電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜をエッチングして、ゲート電極103を形成する。この後、マスクを除去する。
また、ALD法を利用する成膜装置により導電膜としてタングステン膜を成膜することができる。この場合には、WF6ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2ガスを同時に導入してタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを用いてもよい。
ここでは、スパッタリング法により、厚さ20nmのタングステン膜を導電膜として形成する。次に、導電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、該マスクを用いて該導電膜をウエットエッチングして、ゲート電極103を形成する。
絶縁膜104は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法(有機金属化学堆積(MOCVD)法、原子層成膜(ALD)法あるいはプラズマ化学気相堆積(PECVD)法を含む。)、パルスレーザー堆積(PLD)法、塗布法、印刷法等を用いて形成することができる。
絶縁膜104として酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体および酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。
酸化性気体として窒素を含む気体、代表的には一酸化二窒素、二酸化窒素等を用いたCVD法で絶縁膜104を形成する場合、成膜温度を450℃以上基板歪み点未満、500℃以上基板歪み点未満、または500℃以上550℃以下とすることで、絶縁膜104に含まれる窒素量、または窒素酸化物量を低減することができる。このため、のちの酸化物半導体膜106bの酸素添加において、絶縁膜104に酸素が添加されても、のちの加熱処理工程において、窒素酸化物の生成量を低減することが可能である。
また、絶縁膜104として酸化ガリウム膜を形成する場合、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成することができる。
また、絶縁膜104として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH)などのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(O3)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハフニウムの化学式はHf[N(CH3)2]4である。また、他の材料液としては、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
また、絶縁膜104として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA)など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチルアルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などがある。
また、絶縁膜104として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
ここでは、絶縁膜104としてCVD法により厚さ100nmの酸化シリコン膜を用いる。また、原料ガスとしてシラン及び一酸化二窒素を用い、成膜温度を500℃とする。
なお、こののち加熱処理を行って、絶縁膜104に含まれる水、水素等を脱離させてもよい。この結果、のちに形成されるゲート絶縁膜105に含まれる水、水素等の濃度を低減することが可能であり、加熱処理によって、酸化物半導体膜111への該水、水素等の拡散量を低減することができる。
酸化物半導体膜106は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザーアブレーション法、有機金属化学堆積(MOCVD)法、原子層成膜(ALD)法等を用いて形成することができる。
スパッタリング法で酸化物半導体膜106を形成する場合、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガスおよび酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガスおよび酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜106の組成にあわせて、適宜選択すればよい。
なお、酸化物半導体膜を形成する際に、例えば、スパッタリング法を用いる場合、基板温度を150℃以上750℃以下、好ましくは150℃以上450℃以下、さらに好ましくは200℃以上350℃以下として、酸化物半導体膜を成膜することで、CAAC−OS膜を形成することができる。
また、CAAC−OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
成膜時の不純物混入を抑制することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
ALD法を利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばInGaZnOX(X>0)膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してInO2層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを同時に導入してGaO層を形成し、更にその後Zn(CH3)2とO3ガスを同時に導入してZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてInGaO2層やInZnO2層、GaZnO層などの混合化合物層を形成してもよい。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングしたH2Oガスを用いてもよいが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Ga(CH3)3ガスにかえて、Ga(C2H5)3ガスを用いてもよい。
ここでは、酸化物半導体膜106としてスパッタリング法により、厚さ20nmのIn−Ga−Zn酸化物膜(In:Ga:Zn=1:3:4)を形成する。
酸化物半導体膜106に添加する酸素108として、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン等のいずれか一以上を用いる。また、酸化物半導体膜106に酸素108を添加する方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法等がある。
なお、酸素108を添加する方法としてイオン注入法を用いる場合、酸化物半導体膜106に添加する酸素108として、酸素分子イオンを用いると、酸化物半導体膜106へのダメージを低減することが可能である。酸素分子イオンは、酸化物半導体膜106の表面で分離し、酸素原子イオンとなって、酸化物半導体膜106に添加される。酸素分子から酸素原子に分離するためにエネルギーが使用されるため、酸素分子イオンを酸化物半導体膜106に添加した場合における酸素原子イオンあたりのエネルギーは、酸素原子イオンを酸化物半導体膜106に添加した場合と比較して低い。このため、酸素分子イオンを酸化物半導体膜106へ添加することで、酸化物半導体膜106へのダメージを低減できる。
また、酸素分子イオンを用いることで、絶縁膜104に注入される酸素原子イオンそれぞれのエネルギーが低減するため、酸素原子イオンが注入される位置が浅い。このため、のちの加熱処理において、酸素原子が移動しやすくなり、のちに形成される酸化物半導体膜109に、より多くの酸素を供給することができる。
また、酸素分子イオンを注入する場合は、酸素原子イオンを注入する場合と比較して、酸素原子イオンあたりのエネルギーが低い。このため、酸素分子イオンを用いて注入することで、加速電圧を高めることが可能であり、スループットを高めることが可能である。また、酸素分子イオンを用いて注入することで、酸素原子イオンを用いた場合と比較して、ドーズ量を半分にすることが可能である。この結果、スループットを高めることができる。
酸化物半導体膜106に酸素を添加する場合、酸化物半導体膜106に酸素原子イオンの濃度プロファイルのピークが位置するような条件を用いて、酸化物半導体膜106に酸素を添加することが好ましい。この結果、のちに形成されるゲート絶縁膜105へのダメージを低減することが可能である。即ち、ゲート絶縁膜105の欠陥量を低減することができ、トランジスタの電気特性の変動を抑制することが可能である。さらには、絶縁膜104および酸化物半導体膜106界面における酸素原子の添加量が、1×1021atoms/cm3未満、または1×1020atoms/cm3未満、または1×1019atoms/cm3未満となるように、酸化物半導体膜106に酸素を添加することで、のちに形成されるゲート絶縁膜105に添加される酸素の量を低減できる。この結果、のちに形成されるゲート絶縁膜105へのダメージを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を抑制することができる。
また、当該酸素の添加工程において、絶縁膜104にも酸素が添加されたとしても、絶縁膜104の窒素濃度が低い。このため、のちの加熱処理において、窒素酸化物の生成量を低減することが可能である。トランジスタのバックチャネルにおける欠陥量を低減することが可能である。トランジスタのバックチャネルにおけるキャリアトラップが少ないため、トランジスタのGBTストレス試験におけるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
また、酸素を有する雰囲気で発生させたプラズマに酸化物半導体膜106を曝すプラズマ処理により、酸化物半導体膜106に酸素を添加してもよい。酸素を有する雰囲気としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等の酸化性気体を有する雰囲気がある。なお、基板101側にバイアスを印加した状態で発生したプラズマに酸化物半導体膜106を曝すことで、酸化物半導体膜106への酸素添加量を増加させることが可能であり好ましい。このようなプラズマ処理を行う装置の一例として、アッシング装置がある。
ここでは、加速電圧を5kVとし、ドーズ量が1×1016/cm2の酸素原子イオンをイオン注入法により酸化物半導体膜106に添加する。
以上の工程により、図3(B)に示す酸素が添加された酸化物半導体膜106aを形成することができる。この結果、この後の加熱処理により酸化物半導体膜109の酸素欠損量を低減することができる。なお、酸素が添加された酸化物半導体膜106aは、酸素が添加される前の酸化物半導体膜106と比較して、膜密度が低くなる。
次に、図3(B)に示すように、酸素が添加された酸化物半導体膜106a上に酸化物半導体膜109を形成する。
酸化物半導体膜109は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザーアブレーション法、有機金属化学堆積(MOCVD)法、原子層成膜(ALD)法を用いて形成することができる。
酸化物半導体膜109を形成する場合、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガスおよび酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガスおよび酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。
また、ターゲットは、酸化物半導体膜109の組成にあわせて、適宜選択すればよい。
なお、酸化物半導体膜109を形成する際に、例えば、スパッタリング法を用いる場合、基板温度を100℃以上450℃以下、さらに好ましくは170℃以上350℃以下として、加熱しながら酸化物半導体膜109を形成してもよい。
ここでは、酸化物半導体膜109としてスパッタリング法により、厚さ20nmのIn−Ga−Zn酸化物膜(In:Ga:Zn=1:1:1)を形成する。
次に、加熱処理を行って、酸素が添加された酸化物半導体膜106aに含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜109に移動させ、酸化物半導体膜109の酸素欠損を低減させることができる。酸素欠損が低減された酸化物半導体膜を図3(C)において酸化物半導体膜109aと示す。また、酸素が添加された酸化物半導体膜106aの酸素欠損を低減させることができる。該酸化物半導体膜を図3(C)において酸化物半導体膜106bと示す。また、酸素が添加された酸化物半導体膜106aおよび酸化物半導体膜109に含まれる水素、水等を脱離させることができる。この結果、酸素が添加された酸化物半導体膜106aおよび酸化物半導体膜109に含まれる不純物の含有量を低減することができる。
加熱処理の温度は、酸素が添加された酸化物半導体膜106aから酸化物半導体膜109へ酸素が移動する温度範囲が好ましい。また、加熱処理の温度は、絶縁膜104の成膜温度より低いことが好ましい。この結果、当該加熱処理によって、絶縁膜104に窒素酸化物が形成されにくく、電子トラップ量を低減することが可能である。加熱処理の温度は、代表的には、250℃以上基板歪み点未満、好ましくは300℃以上550℃以下、更に好ましくは350℃以上510℃以下、更に好ましくは350℃以上450℃以下とする。
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素を含む不活性ガス雰囲気で行う。または、不活性ガス雰囲気で加熱した後、酸素雰囲気または乾燥空気(露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下、好ましくは−120℃以下である空気)雰囲気で加熱してもよい。なお、上記乾燥空気の他、不活性ガスおよび酸素に水素、水などが含まれないことが好ましく、代表的には露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下であることが好ましい。処理時間は3分から24時間とする。
なお、加熱処理において、電気炉の代わりに、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、不活性ガスが用いられる。
ここでは、窒素雰囲気において、450℃で1時間の加熱処理を行った後、酸素雰囲気において、450℃で1時間の加熱処理を行う。
以上の工程により、酸化物半導体膜の酸素欠損を低減することができる。また、局在準位密度が低減された酸化物半導体膜を形成することができる。
なお、当該加熱処理は、当該工程で行わず、後の工程で行ってもよい。即ち、後の工程に行われる別の加熱工程によって、酸素が添加された酸化物半導体膜106aに含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜109に移動させてもよい。この結果、加熱工程数を削減することが可能である。
次に、酸化物半導体膜109a上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて、酸化物半導体膜106bおよび酸化物半導体膜109aのそれぞれ一部をエッチングすることで、図3(D)に示すように、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜110を形成する。この後、マスクを除去する。なお、当該エッチング工程において、絶縁膜104の一部をエッチングすることが好ましい。この結果、チャネル幅方向において、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜111の側面がゲート絶縁膜を介してゲート電極119と対向する、s−channel構造のトランジスタを作製することができる。ここでは、一部がエッチングされた絶縁膜104をゲート絶縁膜105と示す。
ここでは、酸化物半導体膜109a上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、該マスクを用いて酸化物半導体膜106bおよび酸化物半導体膜109aをウエットエッチングして、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜110を形成する。
次に、図4(A)に示すように、酸化物半導体膜110上に一対の電極113a、113bを形成する。
一対の電極113a、113bの形成方法を以下に示す。スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法(有機金属化学堆積(MOCVD)法、メタル化学気相堆積法、原子層成膜(ALD)法あるいはプラズマ化学気相堆積(PECVD)法を含む。)、蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法等で導電膜を形成する。次に、該導電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜をエッチングして、一対の電極113a、113bを形成する。この後、マスクを除去する。
なお、チャネル長が極めて短いトランジスタを形成する場合は、少なくとも一対の電極113a、113bとなる導電膜を分断する領域において、電子ビーム露光、液浸露光、EUV露光などの細線加工に適した方法を用いてレジストマスク加工を行い、エッチング工程によって当該領域をエッチングすればよい。なお、当該レジストマスクとしては、ポジ型レジストを用いれば、露光領域を最小限にすることができ、スループットを向上させることができる。このような方法を用いれば、チャネル長を100nm以下、さらには30nm以下とするトランジスタを形成することができる。または、極めて波長の短い光(例えば極端紫外光(EUV:Extreme Ultra− violet))や、X線等を用いた露光技術によって微細な加工を行ってもよい。
ここでは、厚さ10nmのタングステン膜をスパッタリング法により導電膜として形成する。次に、該導電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いて該導電膜をドライエッチングして、一対の電極113a、113bを形成する。
なお、一対の電極113a、113bを形成した後、エッチング残渣を除去するため、洗浄処理をすることが好ましい。この洗浄処理を行うことで、一対の電極113a、113bの短絡を抑制することができる。当該洗浄処理は、TMAH(Tetramethylammonium Hydroxide)溶液などのアルカリ性の溶液、希フッ酸、シュウ酸、リン酸などの酸性の溶液を用いて行うことができる。なお、洗浄処理により、一部がエッチングされ、凹部を有する酸化物半導体膜111が形成される。
次に、図4(B)に示すように、酸化物半導体膜111および一対の電極113a、113b上に酸化物半導体膜115を形成し、酸化物半導体膜115上にゲート絶縁膜117を形成し、ゲート絶縁膜117上にゲート電極119を形成する。
酸化物半導体膜115、ゲート絶縁膜117、およびゲート電極119の形成方法を以下に示す。はじめに、酸化物半導体膜106と同様の方法を適宜用いて酸化物半導体膜を形成する。次に、絶縁膜104と同様の方法を適宜用いて絶縁膜を形成する。次に、導電膜を形成する。次に、該導電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて酸化物半導体膜、絶縁膜、および導電膜をエッチングして、酸化物半導体膜115、ゲート絶縁膜117、およびゲート電極119を形成する。この後、マスクを除去する。
ここでは、スパッタリング法により、厚さ5nmのIn−Ga−Zn酸化物膜(In:Ga:Zn=1:3:2)を酸化物半導体膜として形成する。次に、CVD法により厚さ10nmの酸化窒化シリコン膜を絶縁膜として形成する。次に、スパッタリング法により厚さ20nmのタングステン膜を導電膜として形成する。次に、該導電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて酸化物半導体膜、絶縁膜、および導電膜をエッチングして、酸化物半導体膜115、ゲート絶縁膜117、およびゲート電極119を形成する。この後、マスクを除去する。
トランジスタ100においては、酸素欠損が生じにくい酸化物半導体膜115を設けることにより、チャネル幅方向における酸化物半導体膜111の側面からの酸素の脱離が抑制され、酸素欠損の生成を抑制することができる。その結果、電気的特性が向上され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
次に、図4(C)に示すように、ゲート絶縁膜105、一対の電極113a、113b、酸化物半導体膜115、ゲート絶縁膜117およびゲート電極119上に、絶縁膜121および絶縁膜123を順に積層形成する。こののち加熱処理を行うことが好ましい。
絶縁膜121および絶縁膜123は、スパッタリング法、CVD法等を適宜用いることができる。
絶縁膜121および絶縁膜123として化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜を形成する場合、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜は、CVD法またはスパッタリング法等により形成することができる。また、CVD法またはスパッタリング法等により酸化絶縁膜を形成した後、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマ処理などを用いて当該酸化絶縁膜に酸素を添加してもよい。
加熱処理は、絶縁膜104の成膜温度より低いことが好ましい。この結果、当該加熱処理によって、絶縁膜104において窒素酸化物が形成されにくい。また、トランジスタのバックチャネルにおけるキャリアトラップ量を低減することが可能である。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは250℃以上500℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。
ここでは、絶縁膜121として、スパッタリング法により厚さ40nmの酸化アルミニウム膜を形成し、絶縁膜123として、CVD法により厚さ150nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。また、酸素雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行う。
以上の工程により、酸化物半導体膜の局在準位密度が低減され、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。また、経時変化やストレス試験による電気特性の変動の少ない、信頼性の高いトランジスタを作製することができる。
<バンド構造>
ここで、バンド構造について説明する。バンド構造は、理解を容易にするためゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、酸化物半導体膜115およびゲート絶縁膜117の伝導帯下端のエネルギー(Ec)を示す。
図5(A)、図5(B)に示すように、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、酸化物半導体膜115において、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化する。これは、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、酸化物半導体膜115を構成する元素が共通することにより、酸素が相互に拡散しやすい点からも理解される。したがって、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、酸化物半導体膜115は組成が異なる膜の積層体ではあるが、物性的に連続であるということもできる。
主成分を共通として積層された酸化物半導体膜は、各層を単に積層するのではなく連続接合(ここでは特に伝導帯下端のエネルギーが各層の間で連続的に変化するU字型の井戸(U Shape Well)構造)が形成されるように作製する。すなわち、各層の界面にトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を形成するような不純物が存在しないように積層構造を形成する。仮に、積層された多層膜の層間に不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップあるいは再結合により消滅してしまう。
なお、図5(A)では、酸化物半導体膜107と酸化物半導体膜115のEcが同様である場合について示したが、それぞれが異なっていてもよい。例えば、酸化物半導体膜107よりも酸化物半導体膜115の伝導帯下端のエネルギー(Ec)が真空準位側である場合、バンド構造の一部は、図5(B)のように示される。
図5(A)、図5(B)より、酸化物半導体膜111がウェル(井戸)となり、トランジスタ100において、チャネルが酸化物半導体膜111に形成されることがわかる。なお、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、酸化物半導体膜115は伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化するU字型の井戸構造のチャネルを埋め込みチャネルということもできる。
なお、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115と、酸化シリコン膜などの絶縁膜との界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得る。酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115があることにより、酸化物半導体膜111と当該トラップ準位とを遠ざけることができる。ただし、酸化物半導体膜107または酸化物半導体膜115の伝導帯下端のエネルギーEcと、酸化物半導体膜111の伝導帯下端のエネルギーEcとのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体膜111の電子が該エネルギーを越えてトラップ準位に達することがある。マイナスの電荷となる電子がトラップ準位に捕獲されることで、絶縁膜界面にマイナスの固定電化が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。
したがって、トランジスタのしきい値電圧の変動を低減するには、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115の伝導帯下端のエネルギーEcと、酸化物半導体膜111の伝導帯下端のエネルギーEcとの間にエネルギー差を設けることが必要となる。それぞれの当該エネルギー差は、0.1eV以上が好ましく、0.2eV以上がより好ましい。
なお、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、酸化物半導体膜115には、結晶部が含まれることが好ましい。特にc軸に配向した結晶を有する酸化物半導体膜を用いることでトランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
また、図5(B)に示すようなバンド構造において、酸化物半導体膜115を設けず、酸化物半導体膜111とゲート絶縁膜117の間にIn−Ga酸化物膜(たとえば、原子数比がIn:Ga=7:93のIn−Ga酸化物膜)を設けてもよい。
酸化物半導体膜111として、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115よりも電子親和力の大きい酸化物半導体を用いる。例えば、酸化物半導体膜111として、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜115よりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.2eV以上0.4eV以下大きい酸化物半導体を用いる。
本実施の形態に示すトランジスタは、酸化物半導体膜111を構成する金属元素を一種以上含んでいる酸化物半導体膜107、115を有しているため、酸化物半導体膜107と酸化物半導体膜111との界面、および酸化物半導体膜115と酸化物半導体膜111との界面に界面準位が形成されにくくなる。よって酸化物半導体膜107、115を設けることにより、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきや変動を低減することができる。
また、ゲート絶縁膜117と酸化物半導体膜111との界面にチャネルが形成される場合、該界面で界面散乱がおこり、トランジスタの電界効果移動度が低下する場合がある。しかしながら、本構成のトランジスタにおいては、酸化物半導体膜111を構成する金属元素を一種以上含む酸化物半導体膜115を有しているため、酸化物半導体膜111と酸化物半導体膜115との界面ではキャリアの散乱が起こりにくく、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
<変形例1>
図1に示すトランジスタ100に含まれる酸化物半導体膜115およびゲート絶縁膜117の形状の異なるトランジスタについて、図6を用いて説明する。
図6(A)に示すトランジスタ100aは、酸化物半導体膜111および一対の電極113a、113bに接する酸化物半導体膜115aと、該酸化物半導体膜115aに接するゲート絶縁膜117aとを有する。また、ゲート絶縁膜117aは、ゲート電極119と接する。
トランジスタ100aに含まれる酸化物半導体膜115aおよびゲート絶縁膜117aの端部は、ゲート電極119より外側に位置する。
また、図6(B)に示すトランジスタ100bは、酸化物半導体膜111および一対の電極113a、113bに接する酸化物半導体膜115bと、該酸化物半導体膜115bに接するゲート絶縁膜117bとを有する。また、ゲート絶縁膜117bは、ゲート電極119と接する。
トランジスタ100bに含まれる酸化物半導体膜115bおよびゲート絶縁膜117bは分断されず、一対の電極113a、113bおよびゲート絶縁膜105を覆う。
また、図6(C)に示すトランジスタ100cは、酸化物半導体膜111および一対の電極113a、113bに接する酸化物半導体膜115cと、該酸化物半導体膜115cに接するゲート絶縁膜117bとを有する。また、ゲート絶縁膜117bは、ゲート電極119と接する。
トランジスタ100cに含まれる酸化物半導体膜115cの端部はゲート電極119より外側に位置する。また、ゲート絶縁膜117bは分断されず、酸化物半導体膜115c、一対の電極113a、113bおよびゲート絶縁膜105を覆う。
酸化物半導体膜115a、115b、115cは、酸化物半導体膜115と同じ材料を適宜用いて形成することができる。ゲート絶縁膜117a、117bは、ゲート絶縁膜117と同じ材料を適宜用いて形成することができる。
ここで、トランジスタ100a、100b、100cの作製方法について説明する。
はじめに、トランジスタ100aの作製方法を説明する。図3(A)乃至図3(D)および図4(A)の工程を経て、基板101上にゲート電極103、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および一対の電極113a、113bを形成する。
次に、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜111、および一対の電極113a、113b上に酸化物半導体膜115aとなる酸化物半導体膜を形成し、酸化物半導体膜115aとなる酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜117aとなる絶縁膜を形成する。次に、ゲート絶縁膜117aとなる絶縁膜上に、導電膜を形成する。次に、導電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて導電膜をエッチングして、ゲート電極119を形成する。こののち、マスクを除去する。
なお、当該エッチング工程において、一対の電極113a、113bが、ゲート絶縁膜117aとなる絶縁膜で覆われているため、一対の電極113a、113bの表面に電荷が帯電しない。このため、ゲート電極119と一対の電極113a、113bとの間において静電破壊が生じにくく、歩留まりを高めることが可能である。
次に、ゲート電極119およびゲート絶縁膜117aとなる絶縁膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて、酸化物半導体膜115aとなる酸化物半導体膜およびゲート絶縁膜117aとなる絶縁膜をエッチングして、酸化物半導体膜115aおよびゲート絶縁膜117aを形成する。
なお、当該エッチング工程において、ゲート電極119が、マスクで覆われているため、ゲート電極119の表面に電荷が帯電しない。このため、酸化物半導体膜115aおよびゲート絶縁膜117aの形成と共に、一対の電極113a、113bが露出されても、ゲート電極119と一対の電極113a、113bとの間において静電破壊が生じにくく、歩留まりを高めることが可能である。
こののち、実施の形態1に示すトランジスタ100と同様の工程を経ることで、トランジスタ100aを作製することができる。
また、トランジスタ100bは、図3(A)乃至図3(D)および図4(A)の工程を経て、基板101上にゲート電極103、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および一対の電極113a、113bを形成する。
次に、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜111、および一対の電極113a、113b上に酸化物半導体膜115bを形成し、酸化物半導体膜115b上にゲート絶縁膜117bを形成する。次に、ゲート絶縁膜117b上に、ゲート電極119を形成する。
こののち、実施の形態1に示すトランジスタ100と同様の工程を経ることで、トランジスタ100bを作製することができる。
また、トランジスタ100cは、図3(A)乃至図3(D)および図4(A)の工程を経て、基板101上にゲート電極103、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111、および一対の電極113a、113bを形成する。
次に、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜111、および一対の電極113a、113b上に酸化物半導体膜115cとなる酸化物半導体膜を形成した後、酸化物半導体膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて酸化物半導体膜をエッチングして、酸化物半導体膜115cを形成する。こののち、マスクを除去する。
次に、酸化物半導体膜115c上にゲート絶縁膜117bを形成する。次に、ゲート絶縁膜117b上に、ゲート電極119を形成する。
こののち、実施の形態1に示すトランジスタ100と同様の工程を経ることで、トランジスタ100cを作製することができる。
<変形例2>
図1に示すトランジスタ100に含まれる一対の電極113a、113bの形状の異なるトランジスタについて、図7を用いて説明する。
図7(A)乃至図7(D)は、半導体装置が有するトランジスタ100dの上面図および断面図である。図7(A)はトランジスタ100dの上面図であり、図7(B)は、図7(A)の一点鎖線A−B間の断面図であり、図7(C)は、図7(A)の一点鎖線C−D間の断面図であり、図7(D)は、図7(A)の一点鎖線E−F間の断面図である。
また、図7(B)は、トランジスタ100dのチャネル長方向の断面図であり、図7(C)は、トランジスタ100dのチャネル幅方向の断面図であり、図7(D)は、トランジスタ100dのチャネル幅方向であって、且つ一対の電極および酸化物半導体膜が積層する領域の断面図である。
なお、図7(A)では、明瞭化のため、例えば、基板101、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、ゲート絶縁膜117、絶縁膜121、絶縁膜123などを省略している。
図7に示すトランジスタ100dは、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜111の側面と接せず、酸化物半導体膜111の上面と接する一対の電極113c、113dを有する。また、絶縁膜121および絶縁膜123に設けられた開口部125a、125bにおいて、一対の電極113c、113dと接するプラグ127a、127bを有する。
図7(D)に示すように、チャネル幅方向において、酸化物半導体膜107、111の側面は一対の電極113c、113dと接していないため、ゲート電極119の電界が一対の電極113c、113dに遮蔽されない。この結果、酸化物半導体膜107、111の側面におけるゲート電極119の電界の影響を高めることが可能である。この結果、サブスレッショルド係数(以下、S値という。)が優れ、且つ電界効果移動度の高いトランジスタとなる。なお、S値は、オン電流を一桁変化させるのに必要なゲート電圧であり、S値が小さいほど、トランジスタ特性は優れている。
次に、図3および図8を用いてトランジスタ100dの作製方法について説明する。ここでは、図7(A)の一点破線A−BおよびC−Dの断面図を用いて、トランジスタ100dの作製方法を説明する。
図3(A)乃至図3(C)の工程を経て、基板101上にゲート電極103、絶縁膜104、酸化物半導体膜106b、酸化物半導体膜109aを形成する。次に、酸化物半導体膜109a上に導電膜112を形成する(図8(A)参照。)。
導電膜112は、実施の形態1に示す一対の電極113a、113bの形成方法を適宜用いることができる。
次に、導電膜112上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて、酸化物半導体膜106b、酸化物半導体膜109a、および導電膜112をエッチングして、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜110、および導電膜113を形成する。なお、当該工程において、絶縁膜104の一部もエッチングされ、ゲート絶縁膜105が形成される(図8(B)参照。)。
エッチング工程において、レジストマスクは形状が変形するため、ハードマスクを設けず、レジストマスクのみでエッチングを行うと、酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜110の形状が変化してしまい、所望の形状と異なってしまう。電子ビーム露光、液浸露光、EUV露光などの細線加工において、このような問題が顕著に現れる。しかしながら、ここでは、酸化物半導体膜109a上に設けられた導電膜112が、ハードマスクとして機能するため、所望の形状の酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜110を得ることができる。
次に、導電膜113上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて導電膜113をエッチングして、一対の電極113c、113dを形成する。なお、マスクとして、ポジ型のフォトレジストを用いることで、露光時間を短くすることが可能である。なお、当該工程において、酸化物半導体膜110の一部がエッチングされ、凹部を有してもよい。ここでは、凹部を有する酸化物半導体膜を酸化物半導体膜111と示す(図8(C)参照。)。
こののち、図4(B)と同様の工程により、酸化物半導体膜115、ゲート絶縁膜117、およびゲート電極119を形成することで、図7に示すトランジスタ100dを作製することができる。
なお、図9に示すように、一対の電極113c、113d上であって、且つトランジスタのチャネル方向において酸化物半導体膜107および酸化物半導体膜111の側面に接する一対の電極113g、113hを有してもよい。なお、図9において、電極113gは電極113cと接し、電極113hは電極113dと接する。
<変形例3>
図1に示すトランジスタ100に含まれる酸化物半導体膜111の形状の異なるトランジスタについて、図10を用いて説明する。
図10(A)乃至図10(C)は、半導体装置が有するトランジスタ100eの上面図および断面図である。図10(A)はトランジスタ100eの上面図であり、図10(B)は、図10(A)の一点鎖線A−B間の断面図であり、図10(C)は、図10(A)の一点鎖線C−D間の断面図である。
また、図10(B)は、トランジスタ100eのチャネル長方向の断面図であり、図10(C)は、トランジスタ100eのチャネル幅方向の断面図である。
なお、図10(A)では、明瞭化のため、例えば、基板101、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、ゲート絶縁膜117、絶縁膜121、絶縁膜123などを省略している。
図10(C)に示すように、トランジスタ100eは、チャネル幅方向において、断面形状が略三角形または略台形である酸化物半導体膜111aを有する。なお、ここでの略三角形または略台形とは、酸化物半導体膜111aにおいて、酸化物半導体膜107と接する底面と、酸化物半導体膜115と接する側面のなす角度が0°より大きく85°以下、または30°以上80°以下である形状のことをいう。また、底面と反対側の面において、角を有してもよく、または角丸状でもよい。または、底面と反対側において頂点を有してもよい。
チャネル幅方向における断面形状が略矩形の酸化物半導体膜と比較すると、断面形状が略三角形または略台形の酸化物半導体膜111aの方が、頂部における断面積が小さい。このため、ゲート絶縁膜117側において、高い電流密度の領域が低減する。この結果、S値が優れると共に、オン電流が増加する。
断面形状が略三角形または略台形の酸化物半導体膜111の作製方法を説明する。図3(C)に示す酸化物半導体膜109a上にリソグラフィ工程を用いてマスクを形成した後、マスクを後退させながら酸化物半導体膜109aをエッチングすることで、図10(C)に示すように、チャネル幅方向において断面形状が略三角形または略台形である酸化物半導体膜を形成することができる。
<変形例4>
図1に示すトランジスタ100に含まれるゲート電極の形状の異なるトランジスタについて、図11を用いて説明する。
図11(A)乃至図11(C)は、半導体装置が有するトランジスタ100jの上面図および断面図である。図11(A)はトランジスタ100jの上面図であり、図11(B)は、図11(A)の一点鎖線A−B間の断面図であり、図11(C)は、図11(A)の一点鎖線C−D間の断面図である。
また、図11(B)は、トランジスタ100jのチャネル長方向の断面図であり、図11(C)は、トランジスタ100jのチャネル幅方向の断面図である。
なお、図11(A)では、明瞭化のため、例えば、基板101、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、ゲート絶縁膜117、絶縁膜121、絶縁膜123などを省略している。
図11(A)および図11(B)に示すように、トランジスタ100jは、チャネル長方向において、一対の電極113a、113bと、ゲート電極119aとが重ならないこと特徴とする。この結果、一対の電極113a、113bと、ゲート電極119aとの間の寄生容量を低減することが可能であり、トランジスタのオン電流を増大させることができる。
なお、ゲート電極119aを形成した後、ゲート電極119aおよび一対の電極113a、113bをマスクとして、酸化物半導体膜111に不純物を添加して、不純物領域111e、111fを形成することが好ましい。この結果、トランジスタのオン電流を増大させることが可能である。なお、酸化物半導体膜111に添加する不純物としては、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ホウ素、窒素、リン、または砒素がある。
<変形例5>
図1に示すトランジスタ100の変形例について、図43を用いて説明する。
トランジスタは、酸化物半導体膜107及び酸化物半導体膜111と、一対の電極113a、113bのと間に、低抵抗領域133a、133bを有してもよい。低抵抗領域133a、133bは、ゲート電極103で列挙した透光性を有する導電性材料を用いて形成することができる。または、低抵抗領域133a、133bは、酸化物半導体膜107及び酸化物半導体膜111の表面に水素または窒素を添加することで形成することができる。
酸化物半導体膜107及び酸化物半導体膜111と、一対の電極113a、113bとの間に、低抵抗領域133a、133bを設けることで、酸化物半導体膜107及び酸化物半導体膜111と、一対の電極113a、113bと間の接触抵抗を低減することが可能である。この結果、トランジスタのオン電流を増大させることができる。
<変形例6>
トランジスタに含まれる一対の電極の変形例について、図44を用いて説明する。ここでは、図1(B)において、破線で囲まれた領域の拡大図を図44に示す。
一対の電極113a、113bは、Cu−X合金膜(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)、以下単にCu−X合金膜として記す。)を少なくとも含むことが好ましく、例えば、Cu−X合金膜の単層構造、またはCu−X合金膜を含む積層構造とすることで、一対の電極の抵抗値を低減することが可能である。ここでは、電極の一例として、電極113aを用いて説明する。
図44(A)に示す電極113aは、Cu−X合金膜134と、Cu−X合金膜134の表面に形成される被覆膜135とが積層されている。被覆膜135としては、Cu−X合金膜中のXと、酸化物半導体膜111、115または絶縁膜121に含まれる元素とが反応して形成されるXを含む化合物である。Xを含む化合物としては、Xを含む酸化物、Xを含む窒化物、Xを含む珪化物、Xを含む炭化物等がある。Xを含む酸化物の一例としては、Xの酸化物、In−X酸化物、Ga−X酸化物、In−Ga−X酸化物、In−Ga−Zn−X酸化物等がある。該被覆膜135が形成されることで、被覆膜135がブロッキング膜となり、Cu−X合金膜中のCuが、酸化物半導体膜111、115または絶縁膜121に入り込むのを抑制することができる。
なお、Cu−X合金膜134の一例として、Cu−Mn合金膜を用いることで、酸化物半導体膜111、115または絶縁膜121と、電極113aとの密着性を高めることが可能となる。また、Cu−Mn合金膜を用いることで、電極113aは、酸化物半導体膜111、115と良好なオーミックコンタクトを取ることが可能となる。
具体的には、Cu−X合金膜134としてCu−Mn合金膜を形成後、例えば、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上350℃以下の熱処理することで、酸化物半導体膜111、115及び絶縁膜121とCu−X合金膜134との界面にCu−Mn合金膜中のMnが偏析し、被覆膜135が形成される場合がある。被覆膜135としては、偏析したMnが酸化されたMn酸化物、または、偏析したMnが酸化物半導体膜111、115中の構成元素と反応して形成された、In−Mn酸化物、Ga−Mn酸化物、In−Ga−Mn酸化物、In−Ga−Zn−Mn酸化物等がある。被覆膜135によって、酸化物半導体膜111、115と電極113aとの密着性が向上する。また、上記Cu−Mn合金膜中のMnの偏析に伴い、Cu−Mn合金膜の一部が純Cu膜となることで、導電率の高い電極113aを得ることができる。
図44(B)に示す電極113aは、導電膜136と、Cu−X合金膜137と、被覆膜138とが、順に積層されている。導電膜136は、タングステン、チタン等の単体または合金を用いて形成することができる。Cu−X合金膜137及び被覆膜138は、図44(A)に示すCu−X合金膜134及び被覆膜135と同様の材料をそれぞれ用いて形成することができる。導電膜136を用いることで、Cu−X膜に含まれるCuが酸化物半導体膜111、115に拡散するのを防ぐことが可能である。
本実施の形態に示す構成および方法などは、他の実施の形態および実施例に示す構成および方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と異なる方法で、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損を低減する方法について、説明する。ここでは、一対の電極113a、113b上の酸化物半導体膜に酸素を添加する点が実施の形態1と異なる。
図12(A)に示すように、基板101上にゲート電極103を形成し、ゲート電極103上に絶縁膜104を形成する。次に、絶縁膜104上に酸化物半導体膜106を形成し、酸化物半導体膜106上に酸化物半導体膜109を形成する。
次に、酸化物半導体膜109上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、該マスクを用いて絶縁膜104、酸化物半導体膜106、および酸化物半導体膜109のそれぞれ一部をエッチングして、図12(B)に示すように、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、および酸化物半導体膜110aを形成する。
次に、加熱処理を行って、酸化物半導体膜109に含まれる水、水素等を脱離させてもよい。なお、当該加熱処理を行わず、のちの工程で行われる加熱処理において、酸化物半導体膜109に含まれる水、水素等を脱離させてもよい。
次に、酸化物半導体膜110a上に一対の電極113a、113bを形成する。なお、一対の電極113a、113bを形成した後、エッチング残渣を除去するため、洗浄処理をすることが好ましい。この洗浄処理を行うことで、一対の電極113a、113bの短絡を抑制することができる。洗浄処理により、一部がエッチングされた酸化物半導体膜111bが形成される(図12(C)参照。)。
次に、図12(D)に示すように、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜111b、および一対の電極113a、113b上に酸化物半導体膜114を形成する。次に、酸化物半導体膜114に酸素108を添加する。
酸化物半導体膜114に添加する酸素108として、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン等のいずれか一以上を用いる。また、酸化物半導体膜114に酸素108を添加する方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法等がある。
酸化物半導体膜114に酸素を添加する場合、酸化物半導体膜114に酸素原子イオンの濃度プロファイルのピークが位置するような条件を用いて、酸化物半導体膜114に酸素を添加することが好ましい。なお、酸化物半導体膜114の膜厚が薄い場合、酸化物半導体膜111bに酸素が添加される場合もあるが、酸化物半導体膜114に酸素原子イオンの濃度プロファイルのピークが位置するような条件を用いることで、酸化物半導体膜111bへのダメージを低減することが可能である。即ち、酸化物半導体膜111bの欠陥量を低減することができ、トランジスタの電気特性の変動を抑制することが可能である。さらには、絶縁膜104および酸化物半導体膜106界面における酸素原子の添加量が、1×1021atoms/cm3未満、または1×1020atoms/cm3未満、または1×1019atoms/cm3未満となるように、酸化物半導体膜114に酸素を添加することで、後の加熱処理により酸化物半導体膜111bへのダメージを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を抑制することができる。
なお、酸素108を添加する方法としてイオン注入法を用いる場合、酸化物半導体膜114に添加する酸素108として、酸素分子イオンを用いると酸化物半導体膜114へのダメージを低減することが可能である。
または、酸素を有する雰囲気で発生させたプラズマに酸化物半導体膜114を曝すプラズマ処理により酸化物半導体膜114に酸素を添加してもよい。
以上の工程により、図13(A)に示す酸素が添加された酸化物半導体膜114aを形成することができる。
次に、加熱処理を行って、酸素が添加された酸化物半導体膜114aに含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜111bに移動させ、酸化物半導体膜111bの酸素欠損を低減させることができる。該酸化物半導体膜を図13(B)において酸化物半導体膜111cと示す。また、酸素が添加された酸化物半導体膜114aの酸素欠損を低減させることができる。該酸化物半導体膜を図13(B)において酸化物半導体膜114bと示す。
以上の工程により、酸化物半導体膜の酸素欠損を低減することができる。また、局在準位密度が低減された酸化物半導体膜を形成することができる。
こののち、実施の形態1と同様に、酸化物半導体膜114bの一部をエッチングすることで、酸化物半導体膜115dを形成することができる。また、ゲート絶縁膜117およびゲート電極119を形成することができる。また、絶縁膜121および絶縁膜123を形成することができる(図13(C)参照。)。
以上の工程により、酸化物半導体膜の局在準位密度が低減され、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。また、経時変化やストレス試験による電気特性の変動の少ない、信頼性の高いトランジスタを作製することができる。
<変形例1>
実施の形態2と異なる方法で酸化物半導体膜114に酸素を添加する方法について、図14を用いて説明する。
実施の形態2と同様に、基板101上に、ゲート電極103、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜111b、一対の電極113a、113b、および酸化物半導体膜114を形成する。次に、酸化物半導体膜114上に絶縁膜116を形成する。次に、絶縁膜116を介して酸化物半導体膜114に酸素108を添加する(図14(A)参照。)
または、酸素を有する雰囲気で発生させたプラズマに絶縁膜116を曝すプラズマ処理により、絶縁膜116を介して酸化物半導体膜114に酸素を添加してもよい。
以上の工程により、図14(B)に示す酸素が添加された酸化物半導体膜114aおよび酸素が添加された絶縁膜116aを形成することができる。
次に、加熱処理を行って、酸素が添加された酸化物半導体膜114aおよび酸素が添加された絶縁膜116aに含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜111bに移動させ、酸化物半導体膜111bの酸素欠損を低減させることができる。該酸化物半導体膜を図14(C)において酸化物半導体膜111cと示す。また、酸素が添加された酸化物半導体膜114aの酸素欠損を低減させることができる。該酸化物半導体膜を図14(C)において酸化物半導体膜114bと示す。また、酸素が添加された絶縁膜116aの欠陥を低減することができる。該絶縁膜を図14(C)において絶縁膜116bと示す。
以上の工程により、酸化物半導体膜の酸素欠損を低減することができる。また、局在準位密度が低減された酸化物半導体膜を形成することができる。
こののち、実施の形態1と同様に、酸化物半導体膜114bの一部をエッチングすることで、酸化物半導体膜115aを形成することができる。また、絶縁膜116bの一部をエッチングすることで、ゲート絶縁膜117を形成することができる。また、ゲート電極119を形成することができる。また、絶縁膜121および絶縁膜123を形成することができる。
以上の工程により、酸化物半導体膜の局在準位密度が低減され、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。また、経時変化やストレス試験による電気特性の変動の少ない、信頼性の高いトランジスタを作製することができる。
本実施の形態に示す構成および方法などは、他の実施の形態および実施例に示す構成および方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
図1に示すトランジスタ100と比較して、酸化物半導体膜の積層構造の異なるトランジスタについて、図15を用いて説明する。
図15(A)に示すトランジスタ100fは、図1(B)に示すトランジスタ100と比較して、酸化物半導体膜115を有さない点が異なる。すなわち、トランジスタ100fは、酸化物半導体膜111および一対の電極113a、113b、並びにゲート電極119と接するゲート絶縁膜117を有することを特徴とする。
なお、図15(A)に示すトランジスタ100fの作製方法において、実施の形態1に示す酸化物半導体膜111の作製方法を適宜用いることができる。
図15(B)に示すトランジスタ100gは、図1(B)に示すトランジスタ100と比較して、酸化物半導体膜107を有さない点が異なる。すなわち、トランジスタ100gは、ゲート電極103および酸化物半導体膜111と接するゲート絶縁膜105を有することを特徴とする。
なお、図15(B)に示すトランジスタ100gの作製方法において、実施の形態2に示す酸化物半導体膜111の作製方法を適宜用いることができる。
図15(C)に示すトランジスタ100hは、図1(B)に示すトランジスタ100と比較して、酸化物半導体膜115eが、酸化物半導体膜111および一対の電極113a、113bの間に有する点が異なる。すなわち、トランジスタ100hは、酸化物半導体膜111、一対の電極113a、113b、およびゲート絶縁膜117と接する酸化物半導体膜115eを有し、該酸化物半導体膜115eは酸化物半導体膜111および一対の電極113a、113bの間に設けられることを特徴とする。
なお、図15(C)に示すトランジスタ100hの作製方法において、実施の形態1または/および実施の形態2に示す酸化物半導体膜111の作製方法を適宜用いることができる。
本実施の形態に示す構成および方法などは、他の実施の形態および実施例に示す構成および方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、トランジスタに含まれる酸化物半導体膜、及び該酸化物半導体膜に接する酸化物絶縁膜に含まれる欠陥と、トランジスタ特性の劣化について説明する。
<1.NOx>
<1. はじめに、酸化物半導体膜に接する酸化物絶縁膜に含まれる窒素酸化物(以下、NOxと表記する(x=0以上2以下、好ましくは1以上2以下))について説明する。
<1−1. 酸化物絶縁膜中のNOxの遷移レベルについて>
はじめに、固体中の点欠陥の遷移レベルを用いて説明する。遷移レベルとは、ギャップ内に準位を形成する不純物あるいは欠陥(以下、欠陥Dと記す。)の荷電状態を説明する概念であり、欠陥の形成エネルギーから算出される。すなわち、遷移レベルは、ドナー準位やアクセプター準位と類似の概念である。
欠陥Dの荷電状態の形成エネルギーと遷移レベルの関係について説明する。欠陥Dは荷電状態によって形成エネルギーが異なり、フェルミエネルギーにも依存する。欠陥が電子を1つ放出した状態をD+と示し、電子を1つ捕獲した状態をD−と示し、電子の移動のない状態を、D0と示す。
欠陥D+、欠陥D0、欠陥D−それぞれの形成エネルギーと遷移レベルの関係を図16(A)に示す。また、図16(B)に、欠陥Dが中性状態で電子が1個占有した軌道を有する場合について、欠陥D+、欠陥D0、欠陥D−それぞれの電子配置を示す。
図16(A)において、点線は欠陥D+の形成エネルギー、実線は欠陥D0の形成エネルギー、破線は欠陥D−の形成エネルギーを示す。遷移レベルは、欠陥Dの異なる荷電状態の形成エネルギーが等しくなるフェルミ準位の位置を表す。欠陥D+と欠陥D0との形成エネルギーが等しくなるフェルミ準位の位置(即ち、点線と実線の交点の位置)をε(+/0)と表し、欠陥D0と欠陥D−との形成エネルギーが等しくなるフェルミ準位の位置(即ち、実線と破線の交点の位置)をε(0/−)と表す。
次に、フェルミ準位を変化させたときの欠陥のエネルギー的に安定な荷電状態の変遷の概念図を図17に示す。図17において、二点破線はフェルミ準位を表す。また、図17左図において、(1)、(2)、(3)それぞれをフェルミ準位とした場合のバンド図を図17右図に示す。
固体の遷移レベルを知ることで、フェルミ準位をパラメータとしたときに、それぞれのフェルミ準位で欠陥がどのような荷電状態でエネルギー的に安定かを定性的に把握することができる。
次に、酸化物半導体膜に接する酸化物絶縁膜の代表例として酸化窒化シリコン(SiON)を用い、酸化窒化シリコン中の欠陥準位と、該欠陥準位に起因するESRシグナルについて、計算による検証を行った。具体的には、酸化シリコン(SiO2)中にNO2、N2O、NO、及びN原子を導入したモデルについて、NO2、N2O、NO、及びN原子の遷移レベルを調べることで、NO2、N2O、NO、及びN原子がトランジスタの電子トラップとなりうるのかどうかを検証した。
計算には、低温型石英(α−quartz)結晶構造のSiO2(c−SiO2)をモデルとして用いた。欠陥のないc−SiO2の結晶モデルを図18に示す。
まず、c−SiO2の単位格子を全ての軸方向に2倍した72原子モデルに対し、格子定数、各原子座標について構造最適化計算を行った。計算には、第一原理計算ソフトウェアVASP(The Vienna Ab initio simulation package)を用いた。また、内殻電子の効果はProjector Augmented Wave(PAW)法により計算し、汎関数にはHeyd−Scuseria−Ernzerhof(HSE) DFTハイブリッド汎関数(HSE06)を用いた。計算条件を以下に示す。
最適化後のc−SiO2モデルのバンドギャップは、実験値である9.0eVに近い8.97eVであった。
続いて、上記c−SiO2モデルにおける、結晶構造内の空間(格子間)にNO2、N2O、NO、またはN原子を導入したそれぞれのモデルについて、構造の最適化計算を行った。ここで、各モデルについて、モデル全体が+1価である場合(電荷:+1)、モデル全体が電気的に中性(0価)である場合(電荷:中性)、及びモデル全体が−1価である場合(電荷:−1)、の3通りについて、それぞれ最適化計算を行った。ただし、モデル全体に課した電荷は、電子の基底状態ではそれぞれ、NO2、N2O、NO、及びN原子を含む欠陥に局在していることを確認した。
まず、c−SiO2モデルの格子間にNO2を導入したモデルについて、最適化計算を行った後の構造及びNO2分子の構造パラメータを図19に示す。なお、図19において、参考例として、気相状態におけるNO2分子の構造パラメータも付記する。
一般に電気的に中性でない分子を分子イオンなどとよぶことが多いが、ここでは結晶格子の内部に導入された分子を議論しているため、気相状態とは異なり分子の価数を定量することは困難であることなどから、便宜上、電気的に中性でない分子についても分子とよぶこととする。
図19より、NO2分子を導入したとき、モデルの電荷が+1の場合ではNO2分子がほぼ直線状であり、モデルの電荷が中性、−1の順で、O−N−O結合角が小さくなる傾向がみられた。このNO2分子の構造変化は、気相中の孤立分子の電荷数を変えたときの結合角の変化とほぼ同等であることから、仮定した電荷の殆どはNO2分子が担っており、またSiO2中のNO2分子は、孤立分子に近い状態で存在していることが推察される。
続いて、c−SiO2モデルの格子間にN2Oを導入したモデルについて、最適化計算を行った後の構造と、N2O分子の構造パラメータを図20に示す。なお、図20において、参考例として、気相状態におけるN2O分子の構造パラメータも付記する。
図20より、モデルの電荷が+1の場合と中性の場合とでは、N2O分子の構造はほぼ同じ直線状の構造となった。一方、モデルの電荷が−1の場合では、N2O分子は折れ曲がった構造であり、且つN−O間距離が他の2条件に比べて伸びている。これはN2O分子のπ*軌道であるLUMO準位に電子が入ったためと考えられる。
次に、c−SiO2モデルの格子間にNOを導入したモデルについて、最適化計算を行った後の構造と、NO分子の構造パラメータを図21に示す。
図21より、モデルの電荷が+1の場合N−O間距離は短く、逆にモデルの電荷が−1のときにはN−O間距離が長くなっている。これは、気相状態のNO分子の電荷が+1、0、または−1のときに、N−O結合の結合次数がそれぞれ3.0、2.5、2.0であり、電荷が+1のときに最も大きいことを反映していると推察される。このことから、SiO2中のNO分子は、孤立分子に近い状態で安定に存在すると推察される。
最後に、c−SiO2モデルの格子間にN原子を導入したモデルについて、最適化計算を行った後の構造を図22に示す。
図22より、いずれの荷電状態でも、N原子は格子間に孤立原子として存在するよりも、SiO2中の原子と結合した方が、エネルギー的に安定であることが分かった。
続いて、各モデルに対して、遷移レベルの計算を行った。
ここで、構造中に欠陥Dを有するモデルにおける、電荷qの状態と電荷q’の状態とを遷移する遷移レベルε(q/q’)は、以下の数式1により算出することができる。
ここで、Etot(Dq)は電荷qの欠陥Dをもつモデルの全エネルギー、Etot(bulk)は欠陥のないモデルの全エネルギー、niは欠陥に寄与する原子iの個数、μiは原子iの化学ポテンシャル、εVBMは欠陥のないモデルにおける価電子帯上端のエネルギー、ΔVqは静電ポテンシャルに関する補正項、Efはフェルミエネルギーである。
上記式より得られた遷移レベルを記載したバンドダイアグラムを図23に示す。なお、酸化物半導体膜として、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1の金属酸化物を用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物膜(以下、IGZO(111)と示す。)を用いた。また、図23には、上記4つのモデルのバンドダイアグラムに加え、IGZO(111)のバンドダイアグラムも合わせて明示している。なお、図23の数値の単位はeVである。
図23において、各遷移レベルの値は、SiO2の価電子帯上端を基準(0.0eV)とした値を示している。なお、ここではSiO2の電子親和力として文献値を用いたが、SiO2とIGZO(111)を接合した場合の各々のバンドの位置関係は、実際にはSiO2の電子親和力の影響を受ける場合がある。
また、モデルの電荷が+1の状態と0の状態を遷移する遷移レベルを(+/0)と表記し、モデルの電荷が0の状態と−1の状態を遷移する遷移レベルを(0/−)と表記する。
図23において、SiO2内にNO2分子を導入したモデルでは、IGZO(111)のバンドギャップ内に相当する位置に(+/0)及び(0/−)の2つの遷移レベルが存在し、電子のトラップ・デトラップに関与する可能性があることを示唆する。また、SiO2にNO分子を導入したモデル、及びN原子を導入したモデルでは、いずれもIGZO(111)のバンドギャップ内に相当する位置に(+/0)の遷移レベルが存在する。一方、SiO2内にN2O分子を導入したモデルの遷移レベルは、いずれもIGZO(111)のバンドギャップよりも外側に存在し、フェルミ準位の位置に関わらず中性分子として安定に存在することが推察される。
以上の結果から、トランジスタのしきい値電圧のプラスシフトの要因である電子のトラップ・デトラップに関与する、窒素を含む格子間分子は、IGZO(111)のバンドギャップ内の伝導帯よりの位置に遷移レベルを有する分子である。ここでは、IGZO(111)のバンドギャップ内の伝導帯よりの位置に遷移レベルを有する分子は、NO2分子またはNO分子、若しくはその両方である可能性が高いことが強く示唆される。
<1−2. ESRシグナルの検証>
上記遷移レベルの計算結果を受け、以下ではNO2分子のESRシグナルを計算にて求めた。また、ここではSiO2内のO原子にN原子が置換したモデルについても同様の検証を行った。
ここで、N原子は電子が7個、O原子は電子が8個存在するため、NO2分子は電子が開殻構造となる。したがって、中性のNO2分子は孤立電子を有するため、ESRで測定することが可能である。また、SiO2中のO原子にN原子が置換した場合、N原子の周りにSiが2つしかない状況となり、Nはダングリングボンドを有するため、同様にESRで測定することが可能である。また、14Nはその核スピンが1であるため、14Nが関与するESRシグナルのピークは3つにスプリットする。このとき、ESRシグナルのスプリット幅は超微細結合定数である。
そこで、酸化物絶縁膜におけるESRシグナルが3つにスプリットする起源が、NO2分子に起因するのか、またはSiO2内のO原子に置換したN原子を起因するのか、を計算により検証した。なお、SiO2の結晶構造をモデルとして用いた場合、計算量が膨大となるため、ここでは図24に示すような2種類のクラスタ構造のモデルを用い、これらに関して構造最適化を行った後、g値と超微細結合定数について計算した。図24(A)は中性状態のNO2分子のモデルであり、図24(B)は、Si−N−Si結合を有するクラスタモデルである。なお、図24(B)に示すモデルでは、Si原子の未結合手をH原子で終端したクラスタモデルを用いた。
モデルの構造最適化ならびに構造最適化されたモデルのg値及び超微細結合定数の計算にはADF(Amsterdam Density Functional software)を用いた。また、モデルの構造最適化ならびに構造最適化されたモデルのg値及び超微細結合定数の計算共に、汎関数として”GGA:BP”を、基底関数として”QZ4P”を、Core Typeとして”None”を用いた。また、g値及び超微細結合定数の計算時には、相対論効果として”Spin−Orbit”を考慮し、ESR/EPRの計算方法として、”g & A−Tensor(full SO)”を選択した。計算条件を以下に示す。
構造最適化の結果、まず、図24(A)に示すNO2分子について、N−O結合長は0.1205nm、O−N−O結合角は134.1°となった。これはNO2分子についての実験値である結合長0.1197nm、結合角134.3°と近い値となった。また、図24(B)に示すSi−N−Siクラスタモデルについては、Si−Nの結合長は0.172nm、Si−N−Si結合角は138.3°となった。これは、第一原理計算によりSiO2結晶中のO原子にN原子を置換して構造最適化計算を行った後の構造における、Si−Nの結合長0.170nm、Si−N−Si結合角139.0°と同程度であった。
計算したg値及び超微細結合定数の値を、以下に示す。
上述のように、超微細結合定数Aは、ESRシグナルの間隔(ピークのスプリット幅ともいう。)に対応する。表3より、NO2分子の超微細結合定数Aの値は、平均値がほぼ5mTである。一方、Si−N−Siクラスタモデルについては、超微細結合定数AのうちA_xのみ正の値を取るが、その値は3mT程度である。なお、g値と超微細結合定数Aから求めた、NO2及びSi−N−SiのESRスペクトルをそれぞれ図45(A)及び図45(B)に示す。
この結果から、XバンドのESR測定において、3つのシグナルを有し、約5mTの超微細構造定数を有し、g値が約2であるESRスペクトルは、SiO2結晶中のNO2分子に起因するものである可能性が高い。なお、3つのシグナルにおいて、中央のシグナルのg値が約2である。
<1−3. トランジスタの劣化メカニズムの考察>
以下では、上記の結果をもとに、プラスゲートBTストレス試験(+GBT)を行ったときの、トランジスタのしきい値電圧がプラスシフトする現象について、そのメカニズムを考察する。
図25を用いてメカニズムを考察する。図25には、酸化窒化シリコン膜(SiON膜)酸化物半導体膜(OS)、ゲート絶縁膜(GI)、ゲート(GE)が順に積層された構造を示す。ここでは、酸化物半導体膜(OS)のバックチャネル側である酸化窒化シリコン膜SiONに、窒素酸化物が含まれる場合について説明する。
まず、トランジスタにプラスゲートBTストレス試験(+GBT)を行うと、酸化物半導体膜OSのゲート絶縁膜GI側及び酸化窒化シリコン膜SiON側の電子密度は大きくなる。なお、酸化物半導体膜OSの酸化窒化シリコン膜SiON側は、ゲート絶縁膜GI側と比較して電子密度が小さい。酸化窒化シリコン膜SiONに含まれるNO2分子またはNO分子が、ゲート絶縁膜GI及び酸化物半導体膜OSの界面、並びに酸化物半導体膜OSと酸化窒化シリコン膜SiONの界面に拡散すると、プラスゲートBTストレス試験(+GBT)によって誘起されたゲート絶縁膜GI側及びバックチャネル側の電子をトラップする。その結果、トラップされた電子が、ゲート絶縁膜GI及び酸化物半導体膜OSの界面、並びに酸化物半導体膜OS及び酸化窒化シリコン膜SiONの界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧がプラス方向にシフトする。
すなわち、酸化物半導体膜と接する酸化窒化シリコン膜において、含有する窒素酸化物の濃度が低いほどトランジスタのしきい値電圧の変動を抑制することができる。ここで、酸化物半導体膜と接する酸化窒化シリコン膜としては、バックチャネル側に接する保護膜、及びゲート絶縁膜などがある。窒素酸化物の含有量が極めて低い酸化窒化シリコン膜を、酸化物半導体膜と接して設けることにより、極めて信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
(実施の形態5)
<酸化物半導体の構造>
以下では、酸化物半導体の構造について説明する。
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体とに分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous like Oxide Semiconductor)、非晶質酸化物半導体などがある。
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半導体とに分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、nc−OSなどがある。
非晶質構造の定義としては、一般に、準安定状態で固定化していないこと、等方的であって不均質構造を持たないことなどが知られている。また、結合角度が柔軟であり、短距離秩序性は有するが、長距離秩序性を有さない構造と言い換えることもできる。
逆の見方をすると、本質的に安定な酸化物半導体の場合、完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体と呼ぶことはできない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体と呼ぶことはできない。ただし、a−like OSは、微小な領域において周期構造を有するものの、鬆(ボイドともいう。)を有し、不安定な構造である。そのため、物性的には非晶質酸化物半導体に近いといえる。
<CAAC−OS>
まずは、CAAC−OSについて説明する。
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半導体の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一方、高分解能TEM像ではペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
以下では、TEMによって観察したCAAC−OSについて説明する。図47(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面の高分解能TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像の取得は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fなどによって行うことができる。
図47(A)の領域(1)を拡大したCs補正高分解能TEM像を図47(B)に示す。図47(B)より、ペレットにおいて、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層の配列は、CAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面または上面と平行となる。
図47(B)に示すように、CAAC−OSは特徴的な原子配列を有する。図47(C)は、特徴的な原子配列を、補助線で示したものである。図47(B)および図47(C)より、ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあり、ペレットとペレットとの傾きにより生じる隙間の大きさは0.8nm程度であることがわかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、CANC(C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
ここで、Cs補正高分解能TEM像をもとに、基板5120上のCAAC−OSのペレット5100の配置を模式的に示すと、レンガまたはブロックが積み重なったような構造となる(図47(D)参照。)。図47(C)で観察されたペレットとペレットとの間で傾きが生じている箇所は、図47(D)に示す領域5161に相当する。
また、図48(A)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC−OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図48(A)の領域(1)、領域(2)および領域(3)を拡大したCs補正高分解能TEM像を、それぞれ図48(B)、図48(C)および図48(D)に示す。図48(B)、図48(C)および図48(D)より、ペレットは、金属原子が三角形状、四角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なるペレット間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
次に、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図49(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSの結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、CAAC−OSのout−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。より好ましいCAAC−OSは、out−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さない。
一方、CAAC−OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。CAAC−OSの場合は、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、図49(B)に示すように明瞭なピークは現れない。これに対し、InGaZnO4の単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、図49(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
次に、電子回折によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、図50(A)に示すような回折パターン(制限視野透過電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図50(B)に示す。図50(B)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図50(B)における第1リングは、InGaZnO4の結晶の(010)面および(100)面などに起因すると考えられる。また、図50(B)における第2リングは(110)面などに起因すると考えられる。
上述したように、CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、逆の見方をするとCAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合がある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリア発生源となる場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
不純物および酸素欠損の少ないCAAC−OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体である。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC−OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
<nc−OS>
次に、nc−OSについて説明する。
nc−OSは、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc−OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体と呼ぶことがある。nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC−OSにおけるペレットと起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc−OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OSに対し、ペレットよりも大きい径のX線を用いた場合、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークは検出されない。また、nc−OSに対し、ペレットよりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OSに対し、ペレットの大きさと近いかペレットより小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OSに対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
このように、ペレット(ナノ結晶)間では結晶方位が規則性を有さないことから、nc−OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、またはNANC(Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、a−like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
<a−like OS>
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。
a−like OSは、高分解能TEM像において鬆が観察される場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。
鬆を有するため、a−like OSは、不安定な構造である。以下では、a−like OSが、CAAC−OSおよびnc−OSと比べて不安定な構造であることを示すため、電子照射による構造の変化を示す。
電子照射を行う試料として、a−like OS(試料Aと表記する。)、nc−OS(試料Bと表記する。)およびCAAC−OS(試料Cと表記する。)を準備する。いずれの試料もIn−Ga−Zn酸化物である。
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試料は、いずれも結晶部を有することがわかる。
なお、どの部分を一つの結晶部と見なすかの判定は、以下のように行えばよい。例えば、InGaZnO4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnO4の結晶部と見なすことができる。なお、格子縞は、InGaZnO4の結晶のa−b面に対応する。
図51は、各試料の結晶部(22箇所から45箇所)の平均の大きさを調査した例である。ただし、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図51より、a−like OSは、電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。具体的には、図51中に(1)で示すように、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、累積照射量が4.2×108e−/nm2においては2.6nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×108e−/nm2までの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。具体的には、図51中の(2)および(3)で示すように、電子の累積照射量によらず、nc−OSおよびCAAC−OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.4nm程度および2.1nm程度であることがわかる。
このように、a−like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合がある。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど見られないことがわかる。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
また、鬆を有するため、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結晶の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3となる。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満となる。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満となる。
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
本実施の形態に示す構成および方法などは、他の実施の形態および実施例に示す構成および方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様であるトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶装置)の一例を、図面を用いて説明する。
図26(A)に半導体装置の断面図を示す。また、図26(B)に半導体装置に含まれるメモリセル760の回路図を示す。
図26(A)および図26(B)に示す半導体装置は、下部に基板700を用いたトランジスタ750を有し、上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ200、および容量素子230を有している。
基板700としては、シリコンや炭化シリコンなどを用いた単結晶半導体基板または多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどを用いた化合物半導体基板や、SOI基板などを用いることができる。半導体基板を用いて形成されたトランジスタは、高速動作が容易である。
本実施の形態では、基板700としてn型の単結晶シリコン基板を用いる例を示す。トランジスタ750は、基板700中にチャネルが形成されるトランジスタである。また、トランジスタ750は、チャネル形成領域753、LDD(Lightly Doped Drain)領域やエクステンション領域として機能するp型不純物領域754、ソース領域またはドレイン領域として機能するp型不純物領域755、ゲート絶縁膜752、ゲート電極751を有している。なお、p型不純物領域755の不純物濃度は、p型不純物領域754よりも高い。ゲート電極751の側面には側壁絶縁膜756が設けられており、ゲート電極751および側壁絶縁膜756をマスクとして用いて、p型不純物領域754、p型不純物領域755を自己整合法を用いて形成することができる。
また、トランジスタ750は、素子分離領域789により、基板700に形成される他のトランジスタと分離されている。また、ゲート電極751、側壁絶縁膜756の周囲に、絶縁膜790と絶縁膜791が形成されている。
絶縁膜791上に、ゲート電極103、導電膜203、および導電膜204が形成される。なお、導電膜203は、トランジスタ750のゲート電極751と接続する。
ゲート電極103、導電膜203、および導電膜204の間に絶縁膜205が形成される。絶縁膜205は、実施の形態1に示すゲート絶縁膜105と同様の材料を適宜用いることができる。
絶縁膜205上であって、ゲート電極103、導電膜203、および導電膜204それぞれ一部を露出する絶縁膜206が形成される。
絶縁膜206として、水および水素をブロッキングする効果を有する絶縁膜を用いることで、基板700および絶縁膜206の間に含まれる水および水素が、トランジスタ200に含まれる酸化物半導体膜へ拡散することを防ぐことが可能である。絶縁膜206としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルから選ばれた材料を用い、単層でまたは積層して形成することができる。
ゲート電極103、導電膜203、導電膜204、および絶縁膜206上にゲート絶縁膜105が形成される。トランジスタ200に含まれる一対の電極の一方の電極113hは、ゲート絶縁膜105に形成された開口を介して導電膜204と電気的に接続されている。
絶縁膜791上に、ゲート電極103、ゲート絶縁膜105、一対の電極113g、113h、ゲート電極119を有するトランジスタ200が形成される。トランジスタ200は、実施の形態1乃至実施の形態5に示すトランジスタを適宜用いることができる。ここでは、トランジスタ200として、図9に示すトランジスタを示す。
絶縁膜121は、トランジスタ200および絶縁膜206上に形成される。絶縁膜121は、実施の形態1に示す絶縁膜121を適宜用いることができる。
絶縁膜121上に絶縁膜123が形成されている。絶縁膜123は、実施の形態1に示した絶縁膜123と同様の材料および方法で形成することができる。また、絶縁膜123および絶縁膜121に形成された開口にプラグ127bが形成されている。プラグ127bは電極113hと電気的に接続している。
絶縁膜123およびプラグ127b上に、平坦化絶縁膜として絶縁膜215が形成されている。絶縁膜215としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜215を形成してもよい。
なお、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有していても良い。
絶縁膜215の形成方法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)などを用いればよい。絶縁膜215の焼成工程と他の熱処理工程を兼ねることで、効率よく半導体装置を作製することが可能となる。
また、絶縁膜215は、実施の形態1に示した絶縁膜123と同様の材料および方法で形成し、その後、絶縁膜215にCMP処理を施してもよい。
また、絶縁膜215上にプラグ216が形成され、絶縁膜215に形成された開口で、プラグ127bと電気的に接続している。
ゲート電極751は、導電膜203と電気的に接続されている。また、トランジスタ750が有するp型不純物領域755の一方は、トランジスタ770(図26(B)参照。)と電気的に接続され、p型不純物領域755の他方は、配線SL(図26(B)参照。)と電気的に接続されている。また、電極113hは、配線BL(図26(B)参照。)と電気的に接続され、電極113gはノードFN(図26(B)参照。)と電気的に接続され、ゲート電極119は配線WWL(図26(B)参照。)と電気的に接続され、ゲート電極103は配線BGL(図26(B)参照。)と電気的に接続されている。
ここで、トランジスタ750のチャネル領域が形成される領域の半導体材料と、トランジスタ200のチャネル領域が形成される領域の半導体材料は、異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、トランジスタ200のチャネル領域が形成される領域の半導体材料に酸化物半導体を用いる場合、トランジスタ750のチャネル領域が形成される領域の半導体材料に酸化物半導体以外の半導体材料を用いることが好ましい。例えば、結晶性シリコンなどの、酸化物半導体以外の半導体材料を用いたトランジスタは、酸化物半導体を用いたトランジスタよりも高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が低い電気特性により長時間の電荷保持を可能とする。
例えば、トランジスタのチャネル領域が形成される領域の半導体材料に結晶性シリコンを用いた場合、チャネル領域が形成される領域の半導体材料に酸化物半導体を用いたトランジスタよりも高速動作が可能となる。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。
なお、上記トランジスタは、いずれもpチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、nチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、特段の説明がない限り、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
トランジスタ200は、チャネル領域が形成される領域の半導体材料に酸化物半導体を用いたトランジスタである。トランジスタ200は、オフ電流が小さいため、この特性を用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置を実現することが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
また、図26(A)に示すように、トランジスタ750を形成する基板上にトランジスタ200および容量素子230を形成することができるため、半導体装置の集積度を高めることができる。
図26(B)にメモリセル760の回路図を示す。メモリセル760は、トランジスタ200、トランジスタ750、容量素子230、トランジスタ770を有する。
トランジスタ200のチャネルが形成される領域は酸化物半導体膜を有している。したがって、トランジスタ200はオフ電流が極めて低い(オフ抵抗が極めて高い)という特性を有する。トランジスタ200はデータの書き込みの際にオンとなることから書き込みトランジスタとも呼ばれる。トランジスタ200はn型またはp型のトランジスタであるが、以下ではn型であるとして説明する。
トランジスタ200は、デュアルゲート構造であり、一方ゲートは配線WWLに電気的に接続される。配線WWLは書き込みワード線として機能することができる。また、他方のゲートは配線BGLに電気的に接続される。なお、他方ゲートは、常に一定の電位に保持される構造であってもよい。
トランジスタ200のソースおよびドレインの一方は配線BLに電気的に接続される。配線BLはビット線として機能することができる。
トランジスタ200のソースおよびドレインの他方は容量素子230の一方の電極に電気的に接続される。容量素子230の他方の電極は配線CLに電気的に接続される。また、トランジスタ200のソースおよびドレインの他方はトランジスタ750のゲートに電気的に接続される。
なお、配線CLの電位を変動させることにより、トランジスタ750のゲート(ノードFN)の電位が変動する。配線CLは容量線とも呼ばれる。
トランジスタ750はp型のトランジスタである。トランジスタ750のチャネルが形成される領域は酸化物半導体、シリコンなど、様々な材料を用いることができる。トランジスタ750のソースおよびドレインの一方は、トランジスタ770のソースまたはドレインの一方に接続される。トランジスタ750のソースおよびドレインの他方は配線SLに電気的に接続される。
トランジスタ770のソースおよびドレインの他方は配線BLに電気的に接続される。トランジスタ770のゲートは配線RWLに電気的に接続される。トランジスタ770は、データの読み出しの際に、トランジスタ750と配線BLとを導通させるためのもので、選択トランジスタとも呼ばれる。
配線SLはソース線または電源線として機能することができる。配線SLは一定の電位に保持されることが好ましい。ただし、電源の遮断投入の際に電位の変動があっても構わない。
図26(B)のメモリセル760において、データはノードFNの電位として保持される。トランジスタ200のオフ抵抗が十分に高ければ、かなりの長期にわたってデータを保持することができる。理論的には、データの保持期間は、ノードFNとその他のノードとの間のすべての容量(容量素子230を含む)と、ノードFNとその他のノードとのすべての抵抗(トランジスタ200のオフ抵抗を含む)とによって決定される。
例えば、容量が30fF、抵抗が1×1022Ωであれば、時定数は9.5年であるので、10年後には、ノードFNの電位(と基準となる電位との差)は当初の35%程度まで低下している。このように電位が低下した場合でも、データの読み出しを誤らない読み出し方法が求められる。
以下、図27を用いて、メモリセル760へのデータの書き込み動作およびメモリセル760からのデータの読み出し動作を説明する。なお、トランジスタ750、トランジスタ770のしきい値は0未満かつ、−VDDより大きいものとする。
<書き込み動作>
データの書き込みは、トランジスタ200をオンとした際に、ビット線である配線BLの電位をデータに応じたものにすることでおこなわれる。基本的にはDRAMへのデータの書き込み方法と同様である。トランジスタ200は、トランジスタ750やトランジスタ770とはしきい値等が異なるので、ここでは、トランジスタ200をオンとするときには、そのゲートの電位(配線WWLの電位)をVOS_H、トランジスタ200をオフとするときには、そのゲートの電位をVOS_L、とする、なお、VOS_L=GND(<VDD)でもよい。
ここでは、データ”0”(二値のうちの一)を書き込むときには配線BLの電位をGND、データ”1”(二値のうちの他)を書き込むときには配線BLの電位をVDDとする。図27の時間T1で配線WWLの電位が上昇をはじめ、トランジスタ200がオンとなる。その結果、ノードFNの電位は、データに応じたものとなる。例えば、データ”0”を書き込む場合は、GNDに、データ”1”を書き込む場合は、VDDになる。時間T2に配線WWLの電位が低下しはじめ、トランジスタ200がオフとなり、書き込みは終了する。なお、トランジスタ200がオフとなる際に、トランジスタ200のゲート(および配線WWL)とノードFNとの間の容量結合によって、ノードFNの電位が若干降下する。
なお、書き込みの際、配線BLと配線SLの間に電流が流れないようなにすることが好ましい。例えば、配線BLと配線SLの間の電位差をなくしてもよい。すなわち、配線SLの電位を配線BLと同様、データに応じて変動させるとよい。
より効果的な方法は、配線RWLの電位をトランジスタ770がオフとなるような電位とすることである。ここでは、配線BL、配線SLの電位はGND以上VDD以下とする。したがって、配線RWLの電位をVDDとすれば、トランジスタ770がオフとなる。なお、本実施の形態では配線SLの電位は、スタンバイ期間以外は、VDDに維持されるとするが、その他の電位でもよい。
<保持動作>
データの保持の際には、トランジスタ200をオフとする。図27の時間T3から時間T4が、電源が遮断された状態でのデータを保持している期間(スタンバイ期間)を示す。なお、スタンバイ期間では、すべての配線の電位が同一(ここでは、GND)となる。ここで、ノードFNの電位がGNDより高かった場合には、ノードFNの電位は徐々に低下する。
データ”0”が書き込まれていた場合には、ノードFNの電位はGNDに近い値であるので、変動は問題とならない。しかし、データ”1”が書き込まれていた場合には、当初は、VDDに近い値であるが、時間の経過とともに低下する。電位の低下分をΔVとする。つまり、データ保持期間後のノードFNの電位(トランジスタ750のゲートの電位)は(VDD−ΔV)である。上記の条件では、保持の期間が1年程度であれば、電位の低下は10%程度であるが、10年後だと、上記のように当初の35%まで低下してしまう。すなわち、ΔV=0.65×VDD、である。ここでは、データ保持を保証する期間で、ノードFNの電位がもっとも低下する場合には、(VDD−ΔVMAX)になるとする。
<読み出し動作>
データを読み出す動作は、配線BLと配線SLの電位を異なるものとし、その後、トランジスタ770をオンとすることで、トランジスタ750のソースとドレイン間に電流が流れるか否かで判断する。ノードFNの電位により、トランジスタ750の導通状態が異なることで、書き込まれていたデータを判断できる。
具体的には、配線RWLの電位を適切な値(ここではVDD)としてトランジスタ770をオフとし、また、配線SLの電位はVDDとする。配線BLを適切な電位(ここではGND)にプリチャージしたのち、浮遊状態にする。そして、配線CLの電位を適切な値(ここではα、ただし、GND<α<VDD)とする。
この直前まで、データ”0”が書き込まれていた場合には、ノードFNの電位はGNDに近い値であるが、配線CLの電位がGNDからαに上昇したことにより、容量素子230を介した容量結合により、電位はほぼαとなる。また、データ”1”が書き込まれていた場合には、ノードFNの電位はほぼ(VDD−ΔV+α−GND)となる。その後、時間T5に、配線RWLの電位を適切な値(ここではGND)としてトランジスタ770をオンとする。
ここで、データが正しく読み出されるためには、データ”0”が書き込まれていた場合には、トランジスタ750はオンであり、配線BLの電位がGNDからVDDまで上昇することが求められ、データ”1”が書き込まれていた場合には、オフであり、配線BLの電位がGNDのままであることが求められる。
このためには、トランジスタ750のしきい値をVthとすると、α<VDD+Vth、VDD−ΔV+α−GND≧VDD+Vth、という2つの不等式を満たすことが求められる。すなわち、GND+ΔV+Vth≦GND+ΔVMAX+Vth≦α<VDD+Vthである。
例えば、VDD=+1.8[V]、GND=0[V]、Vth=−0.5[V]、ΔVMAX=1.2[V]とするとき、0.7[V]≦α<1.3[V]とすればよい。あるいは、VDD=+0.9[V]、GND=0[V]、Vth=−0.4[V]、ΔVMAX=0.6[V]とするとき、0.2[V]≦α<0.5[V]とすればよい。
なお、αは要求される範囲内の任意の値とできるが、VDDとGNDの平均値(VDD/2、ともいう)、あるいは、VDDとGNDの差をN等分したものとGNDとの和(VDD/N、ともいう、ただし、N=3、4、5、・・)を用いてもよい。前者の例では、VDD/2は0.9[V]であり、後者の例では、VDD/3は、0.3[V]である。いずれも要求される数値範囲内にある。
このようにスタンバイ期間において、ノードFNの電位が、当初より60%以上低下する場合(当初の電位の40%以下である場合)には、読み出し時に配線CLの電位を適度に上昇させることにより、ノードFNの電位を上昇させることが好ましい。
なお、データ”1”のときに当初書き込んだ電位がVDDであるのに、配線CLに出力される電位はGNDである。このようにデータが反転されて出力されることに注意する必要がある。
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁膜の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
以上のように、微細化および高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置を提供することができる。
本実施の形態に示す構成および方法などは、他の実施の形態および実施例に示す構成および方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置の構成例について説明する。
<構成例>
図28(A)は、本発明の一態様の表示装置の上面図であり、図28(B)は、本発明の一態様の表示装置の画素に液晶素子を適用する場合に用いることができる画素回路を説明するための回路図である。また、図28(C)は、本発明の一態様の表示装置の画素に有機EL素子を適用する場合に用いることができる画素回路を説明するための回路図である。
画素部に配置するトランジスタは、上記実施の形態に従って形成することができる。また、当該トランジスタはnチャネル型とすることが容易なので、駆動回路のうち、nチャネル型トランジスタで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトランジスタと同一基板上に形成する。このように、画素部や駆動回路に上記実施の形態に示すトランジスタを用いることにより、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
アクティブマトリクス型表示装置の上面図の一例を図28(A)に示す。表示装置の基板700上には、画素部701、第1の走査線駆動回路702、第2の走査線駆動回路703、信号線駆動回路704を有する。画素部701には、複数の信号線が信号線駆動回路704から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路702、および第2の走査線駆動回路703から延伸して配置されている。なお走査線と信号線との交差領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に設けられている。また、表示装置の基板700はFPC(Flexible Printed Circuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続されている。
図28(A)では、第1の走査線駆動回路702、第2の走査線駆動回路703、信号線駆動回路704は、画素部701と同じ基板700上に形成される。そのため、外部に設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板700外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続数が増える。同じ基板700上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、または歩留まりの向上を図ることができる。
<液晶表示装置>
また、画素の回路構成の一例を図28(B)に示す。ここでは、VA型液晶表示装置の画素に適用することができる画素回路を示す。
この画素回路は、一つの画素に複数の画素電極を有する構成に適用できる。それぞれの画素電極は異なるトランジスタに接続され、各トランジスタは異なるゲート信号で駆動できるように構成されている。これにより、マルチドメイン設計された画素の個々の画素電極に印加する信号を、独立して制御できる。
トランジスタ716のゲート配線712と、トランジスタ717のゲート配線713には、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として機能するソース電極またはドレイン電極714は、トランジスタ716とトランジスタ717で共通に用いられている。トランジスタ716とトランジスタ717は上記実施の形態で説明するトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。
トランジスタ716と電気的に接続する第1の画素電極と、トランジスタ717と電気的に接続する第2の画素電極の形状について説明する。第1の画素電極と第2の画素電極は、分離されている。なお、第1の画素電極及び第2の画素電極の形状としては、特に限定は無い。例えば、第1の画素電極は、V字状とすればよい。
トランジスタ716のゲート電極はゲート配線712と接続され、トランジスタ717のゲート電極はゲート配線713と接続されている。ゲート配線712とゲート配線713に異なるゲート信号を与えてトランジスタ716とトランジスタ717の動作タイミングを異ならせ、液晶の配向を制御できる。
また、容量配線710と、誘電体として機能するゲート絶縁膜と、第1の画素電極または第2の画素電極と電気的に接続する容量電極とで保持容量を形成してもよい。
マルチドメイン構造は、一画素に第1の液晶素子718と第2の液晶素子719を備える。第1の液晶素子718は第1の画素電極と対向電極とその間の液晶層とで構成され、第2の液晶素子719は第2の画素電極と対向電極とその間の液晶層とで構成される。
なお、図28(B)に示す画素回路は、これに限定されない。例えば、図28(B)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、または論理回路などを追加してもよい。
<有機EL表示装置>
画素の回路構成の他の一例を図28(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用いた表示装置の画素構造を示す。
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極の一方から電子が、他方から正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、電子および正孔が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
図28(C)は、適用可能な画素回路の一例を示す図である。ここではnチャネル型のトランジスタを1つの画素に2つ用いる例を示す。なお、本発明の一態様の酸化物半導体膜は、nチャネル型のトランジスタのチャネル形成領域に用いることができる。また、当該画素回路は、デジタル時間階調駆動を適用することができる。
適用可能な画素回路の構成およびデジタル時間階調駆動を適用した場合の画素の動作について説明する。
画素720は、スイッチング用トランジスタ721、駆動用トランジスタ722、発光素子724および容量素子723を有している。スイッチング用トランジスタ721は、ゲート電極が走査線726に接続され、第1の電極(ソース電極およびドレイン電極の一方)が信号線725に接続され、第2の電極(ソース電極およびドレイン電極の他方)が駆動用トランジスタ722のゲート電極に接続されている。駆動用トランジスタ722は、ゲート電極が容量素子723を介して電源線727に接続され、第1の電極が電源線727に接続され、第2の電極が発光素子724の第1の電極(画素電極)に接続されている。発光素子724の第2の電極は共通電極728に相当する。共通電極728は、同一基板上に形成される共通電位線と電気的に接続される。
スイッチング用トランジスタ721および駆動用トランジスタ722は上記実施の形態で説明するトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い有機EL表示装置を提供することができる。
発光素子724の第2の電極(共通電極728)の電位は低電源電位に設定する。なお、低電源電位とは、電源線727に供給される高電源電位より低い電位であり、例えばGND、0Vなどを低電源電位として設定することができる。発光素子724の順方向のしきい値電圧以上となるように高電源電位と低電源電位を設定し、その電位差を発光素子724に印加することにより、発光素子724に電流を流して発光させる。なお、発光素子724の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向しきい値電圧を含む。
なお、容量素子723は駆動用トランジスタ722のゲート容量を代用することにより省略できる。駆動用トランジスタ722のゲート容量については、チャネル形成領域とゲート電極との間で容量が形成されていてもよい。
次に、駆動用トランジスタ722に入力する信号について説明する。電圧入力電圧駆動方式の場合、駆動用トランジスタ722が十分にオンするか、オフするかの二つの状態となるようなビデオ信号を、駆動用トランジスタ722に入力する。なお、駆動用トランジスタ722を線形領域で動作させるために、電源線727の電圧よりも高い電圧を駆動用トランジスタ722のゲート電極にかける。また、信号線725には、電源線電圧に駆動用トランジスタ722の閾値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ722のゲート電極に発光素子724の順方向電圧に駆動用トランジスタ722の閾値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。なお、駆動用トランジスタ722が飽和領域で動作するようにビデオ信号を入力し、発光素子724に電流を流す。また、駆動用トランジスタ722を飽和領域で動作させるために、電源線727の電位を、駆動用トランジスタ722のゲート電位より高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子724にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
なお、画素回路の構成は、図28(C)に示す画素構成に限定されない。例えば、図28(C)に示す画素回路にスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタまたは論理回路などを追加してもよい。
図28で例示した回路に上記実施の形態で例示したトランジスタを適用する場合、低電位側にソース電極(第1の電極)、高電位側にドレイン電極(第2の電極)がそれぞれ電気的に接続される構成とする。さらに、制御回路等により第1のゲート電極の電位を制御し、第2のゲート電極には図示しない配線によりソース電極に与える電位よりも低い電位など、上記で例示した電位を入力可能な構成とすればよい。
例えば、本明細書等において、表示素子、表示素子を有する装置である表示装置、発光素子、および発光素子を有する装置である発光装置は、様々な形態を用いること、または様々な素子を有することが出来る。表示素子、表示装置、発光素子または発光装置の一例としては、EL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機物および無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイ(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、MIRASOL(登録商標)、IMOD(インターフェアレンス・モジュレーション)素子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブを用いた表示素子などの少なくとも一つを有している。これらの他にも、電気的または磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有してもよい。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)またはSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク、電子粉流体(登録商標)、または電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を適用した表示モジュールについて、図29を用いて説明を行う。
図29に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002との間に、FPC8003に接続されたタッチパネル8004、FPC8005に接続された表示パネル8006、バックライトユニット8007、フレーム8009、プリント基板8010、バッテリー8011を有する。なお、バックライトユニット8007、バッテリー8011、タッチパネル8004などは、設けられない場合もある。
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル8006に用いることができる。
上部カバー8001および下部カバー8002は、タッチパネル8004および表示パネル8006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
タッチパネル8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル8006に重畳して用いることができる。また、表示パネル8006の対向基板(封止基板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。または、表示パネル8006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。または、表示パネル8006の各画素内にタッチセンサ用電極を設け、静電容量方式のタッチパネルとすることも可能である。
バックライトユニット8007は、光源8008を有する。光源8008をバックライトユニット8007の端部に設け、光拡散板を用いる構成としてもよい。
フレーム8009は、表示パネル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号およびクロック信号を出力するための信号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であっても良いし、別途設けたバッテリー8011による電源であってもよい。バッテリー8011は、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
また、表示モジュール8000には、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた電子機器の一例について説明する。
本発明の一態様に係る半導体装置を用いた電子機器として、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、置き時計、壁掛け時計、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、タブレット型端末、パチンコ機などの大型ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍端末、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、エアコンディショナー、加湿器、除湿器などの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、チェーンソー等の工具、煙感知器、透析装置等の医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム、電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置等の産業機器が挙げられる。また、燃料を用いたエンジンや、非水系二次電池からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電子機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型または大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。
図30(A)は携帯型ゲーム機の一例であり、筐体901、筐体902、表示部903、表示部904、マイクロフォン905、スピーカー906、操作キー907、スタイラス908等を有する。なお、図30(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部903と表示部904とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。表示部903、904等に含まれるトランジスタに実施の形態1乃至実施の形態4のトランジスタを用いることができる。また、図示されないCPU、記憶装置等に実施の形態1乃至実施の形態4のトランジスタを用いることができる。
図30(B)は携帯データ端末の一例であり、第1筐体911、第2筐体912、第1表示部913、第2表示部914、接続部915、操作キー916等を有する。第1表示部913は第1筐体911に設けられており、第2表示部914は第2筐体912に設けられている。そして、第1筐体911と第2筐体912とは、接続部915により接続されており、第1筐体911と第2筐体912の間の角度は、接続部915により変更が可能である。第1表示部913における映像を、接続部915における第1筐体911と第2筐体912との間の角度にしたがって、切り替える構成としてもよい。また、第1表示部913および第2表示部914の少なくとも一方に、位置入力装置としての機能が付加された表示装置を用いるようにしてもよい。なお、位置入力装置としての機能は、表示装置にタッチパネルを設けることで付加することができる。または、位置入力装置としての機能は、フォトセンサとも呼ばれる光電変換素子を表示装置の画素部に設けることでも、付加することができる。第1表示部913、第2表示部914等に含まれるトランジスタに実施の形態1乃至実施の形態4のトランジスタを用いることができる。また、図示されないCPU、記憶装置等に実施の形態1乃至実施の形態4のトランジスタを用いることができる。
図30(C)はノート型パーソナルコンピュータの一例であり、筐体921、表示部922、キーボード923、ポインティングデバイス924等を有する。表示部922等に含まれるトランジスタに実施の形態1乃至実施の形態4のトランジスタを用いることができる。また、図示されないCPU、記憶装置等に実施の形態1乃至実施の形態4のトランジスタを用いることができる。
図30(D)は電気冷凍冷蔵庫の一例であり、筐体931、冷蔵室用扉932、冷凍室用扉933等を有する。図示されないCPU、記憶装置等に実施の形態1乃至実施の形態4のトランジスタを用いることができる。
図30(E)はビデオカメラの一例であり、第1筐体941、第2筐体942、表示部943、操作キー944、レンズ945、接続部946等を有する。操作キー944およびレンズ945は第1筐体941に設けられており、表示部943は第2筐体942に設けられている。そして、第1筐体941と第2筐体942とは、接続部946により接続されており、第1筐体941と第2筐体942の間の角度は、接続部946により変更が可能である。表示部943における映像を、接続部946における第1筐体941と第2筐体942との間の角度にしたがって切り替える構成としてもよい。表示部943等に含まれるトランジスタに実施の形態1乃至実施の形態4のトランジスタを用いることができる。また、図示されないCPU、記憶装置等に実施の形態1乃至実施の形態4のトランジスタを用いることができる。
図30(F)は自動車の一例であり、車体951、車輪952、ダッシュボード953、ライト954等を有する。図示されないCPU、記憶装置等に実施の形態1乃至実施の形態4のトランジスタを用いることができる。
本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
本実施例では、酸化物半導体膜に酸素イオンを注入した場合の、深さ方向における注入した酸素濃度を計算し、その結果を示す。なお、本実施例では、酸素イオンが注入された酸化物半導体膜として、図1に示す、ゲート絶縁膜105に接する酸化物半導体膜107を想定している。
なお、計算には、TRIM(Transport of Ion in Matter)を用いた。
計算に用いた試料は、シリコンウェハ上に、酸化シリコン膜および酸化物半導体膜が順に積層された構造である。
酸化シリコン膜は、元素の原子数比がSi:O=1:2であり、膜厚を100nm、密度を2.2g/cm3とした。酸化物半導体膜は、元素の原子数比がIn:Ga:Zn:O=1:3:4:10のIGZO膜であり、膜厚を20nm、密度を5.91g/cm3とした。また、イオン種としては、分子量が16の酸素原子イオンを用い、ドーズ量を1×1016ions/cm2とした。
イオン種を注入する際の加速電圧をそれぞれ、2.5kV、5kV、7.5kVとして計算した結果を図31に示す。図31において、酸化シリコン膜をSiO2と示し、酸化物半導体膜をIGZO(134)と示す。
図31において、横軸は深さ方向、縦軸は酸素濃度を示す。また、実線は加速電圧を2.5kVとしたときの計算結果であり、破線は加速電圧を5kVとしたときの計算結果であり、一点破線は加速電圧を7.5kVとしたときの計算結果である。
この結果から、イオン種の加速電圧と酸化物半導体膜の膜厚を制御することで、酸化シリコン膜および酸化物半導体膜の界面における注入された酸素の濃度を制御することができる。また、酸化シリコン膜における、酸素の注入量を制御することができる。
本実施例では、酸化物半導体膜に酸素イオンを注入した場合の、深さ方向における注入した酸素濃度を計算し、その結果を示す。なお、本実施例では、酸素イオンが注入された酸化物半導体膜として、図1に示す、ゲート絶縁膜117に接する酸化物半導体膜115を想定している。
なお、計算には、TRIMを用いた。
計算に用いた試料は、シリコンウェハ上に、酸化シリコン膜、第1の酸化物半導体膜、第2の酸化物半導体膜、および第3の酸化物半導体膜が順に積層された構造である。
酸化シリコン膜は、元素の原子数比がSi:O=1:2であり、膜厚を100nm、密度を2.2g/cm3とした。第1の酸化物半導体膜は、元素の原子数比がIn:Ga:Zn:O=1:3:4:10のIGZO膜であり、膜厚を20nm、密度を5.91g/cm3とした。第2の酸化物半導体膜は、元素の原子数比がIn:Ga:Zn:O=1:1:1:4のIGZO膜であり、膜厚を15nm、密度を6.24g/cm3とした。第3の酸化物半導体膜は、元素の原子数比がIn:Ga:Zn:O=1:3:2:8のIGZO膜であり、膜厚を5nm、密度を5.71g/cm3とした。また、イオン種としては、分子量が16の酸素原子イオンを用い、ドーズ量を1×1016ions/cm2とした。
イオン種を注入する際の加速電圧をそれぞれ、2.5kV、5kV、7.5kV、10kV、15kVとして計算した結果を図32に示す。図32において、酸化シリコン膜をSiO2と示し、第1の酸化物半導体膜をIGZO(134)と示し、第2の酸化物半導体膜をIGZO(111)と示し、第3の酸化物半導体膜をIGZO(132)と示す。
図32において、横軸は深さ方向、縦軸は酸素濃度を示す。また、細実線は加速電圧を2.5kVとしたときの計算結果であり、細破線は加速電圧を5kVとしたときの計算結果であり、細一点破線は加速電圧を7.5kVとしたときの計算結果であり、太実線は加速電圧を10kVとしたときの計算結果であり、太破線は加速電圧を15kVとしたときの計算結果である。
この結果から、イオン種の加速電圧と酸化物半導体膜の膜厚を制御することで、酸化シリコン膜および酸化物半導体膜の界面における注入された酸素の濃度を制御することができる。また、酸化シリコン膜における、酸素の注入量を制御することができる。
本実施例では、酸化物半導体膜に接する酸化物絶縁膜の欠陥量について測定し、その結果を示す。
<試料の作製方法>
本実施例では、試料A1および試料A2をそれぞれ作製した。
<試料A1>
図33(A)乃至図33(D)を用いて、試料A1の作製方法を説明する。
図33(A)に示すように、石英基板301上に、厚さ100nmの酸化シリコン膜303を形成し、酸化シリコン膜303上に、厚さ40nmの第1のIGZO膜305を形成した。次に、第1のIGZO膜305に酸素原子イオン306を注入した。この結果、図33(B)に示すように、酸素原子イオンが添加された第1のIGZO膜305aが形成された。
ここでは、酸化シリコン膜303は、原料ガスとして、1sccmのシラン及び800sccmの一酸化二窒素を用い、反応室内の圧力を40Paとし、基板温度を500℃とし、150Wの電力を供給したプラズマCVD法により形成した。
ここでは、第1のIGZO膜305は、スパッタリングターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:3:4(原子数比)のIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用い、流量11%の酸素(アルゴン希釈)をスパッタリングガスとして用い、反応室内の圧力を0.7Paとし、基板温度を200℃とし、0.5kWの直流電力を供給したスパッタリング法により形成した。
ここでは、加速電圧を5kVとし、ドーズ量を1×1016ions/cm2としたイオン注入法により、酸素原子イオン306を第1のIGZO膜305に添加した。
次に、図33(C)に示すように、酸素原子イオンが添加された第1のIGZO膜305a上に、厚さ50nmの第2のIGZO膜307を形成した。
ここでは、第2のIGZO膜307は、スパッタリングターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)のIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用い、アルゴンに対して流量33%の酸素をスパッタリングガスとして用い、反応室内の圧力を0.7Paとし、基板温度を300℃とし、0.5kWの直流電力を供給したスパッタリング法により形成した。
次に、図33(D)に示すように、加熱処理を行った。この結果、第1のIGZO膜305aに含まれる酸素の一部が第2のIGZO膜307に拡散した。加熱後の第1のIGZO膜を図33(D)において第1のIGZO膜305bとし、加熱後の第2のIGZO膜を図33(D)において第2のIGZO膜307aと示す。
ここでは、450℃窒素雰囲気において1時間加熱を行った後、450℃酸素雰囲気において、1時間加熱処理を行った。
以上の工程により、試料A1を作製した。
<試料A2>
図33(E)乃至図33(I)を用いて、試料A2の作製方法を説明する。なお、試料A2は、試料A1と比較して、基板の材料が異なる。また、酸化シリコン膜の成膜温度が異なる。また、酸素原子イオンを酸化シリコン膜に添加することが異なる。
図33(E)に示すように、シリコンウェハ311を加熱してシリコンウェハ311の表面に厚さ100nmの酸化シリコン膜312を形成した。次に、酸化シリコン膜312上に、厚さ300nmの酸化シリコン膜313を形成した。次に、酸化シリコン膜313に酸素原子イオン316を注入した。この結果、図33(F)に示すように、酸素原子イオンが添加された酸化シリコン膜313aが形成された。
ここでは、水蒸気雰囲気において、950℃でシリコンウェハ311を加熱して、シリコンウェハ311の表面に、酸化シリコン膜312を形成した。
ここでは、酸化シリコン膜313は、原料ガスとして、2.3sccmのシラン及び800sccmの一酸化二窒素を用い、反応室内の圧力を40Paとし、基板温度を400℃とし、50Wの電力を供給したプラズマCVD法により形成した。
ここでは、加速電圧を60kVとし、ドーズ量を2×1016ions/cm2としたイオン注入法により、酸素原子イオン316を酸化シリコン膜313に添加した。
次に、図33(G)に示すように、酸化シリコン膜313a上に、厚さ80nmの第1のIGZO膜315を形成した。次に、第1のIGZO膜315上に厚さ15nmの第2のIGZO膜317を形成した。
ここでは、第1のIGZO膜315は、スパッタリングターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:3:2(原子数比)のIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用い、流量11%の酸素(アルゴン希釈)をスパッタリングガスとして用い、反応室内の圧力を0.7Paとし、基板温度を200℃とし、0.5kWの直流電力を供給したスパッタリング法により形成した。
ここでは、第2のIGZO膜317は、スパッタリングターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)のIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用い、アルゴンに対して流量33%の酸素をスパッタリングガスとして用い、反応室内の圧力を0.7Paとし、基板温度を300℃とし、0.5kWの直流電力を供給したスパッタリング法により形成した。
次に、加熱処理を行った。この結果、酸化シリコン膜313aに含まれる酸素の一部が第1のIGZO膜315及び第2のIGZO膜317に拡散した。加熱後の酸化シリコン膜を図33(H)において酸化シリコン膜313bとし、加熱後の第1のIGZO膜を図33(H)において第1のIGZO膜315aと示し、加熱後の第2のIGZO膜を図33(H)において第2のIGZO膜317aと示す。
ここでは、450℃窒素雰囲気において1時間加熱を行った後、450℃酸素雰囲気において、1時間加熱処理を行った。
次に、図33(I)に示すように、第1のIGZO膜315a及び第2のIGZO膜317aを除去した。
以上の工程により、試料A2を作製した。
<ESR測定>
試料A1及び試料A2についてESR測定を行った。ここでは、下記の条件でESR測定を行った。試料A1は測定温度を10Kとし、9.45GHzの高周波電力を0.05mWとし、磁場の向きは作製した試料の膜表面と平行とした。試料A2は測定温度を100Kとし、9.15GHzの高周波電力を4mWとし、磁場の向きは作製した試料の膜表面と平行とした。なお、測定温度が100Kの際のNOxに起因するシグナルのスピン密度の検出下限は1.0×1017spins/cm3であった。スピン数が小さいほど膜中欠損が少ないといえる。
図34(A)は、試料A1の測定結果であり、図34(B)は、試料A2の測定である。試料A1において、スピン密度は検出下限未満であった。試料A2では、g値が2.037以上2.039以下の第1シグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルが観察された。これらの3つのシグナルは、NOxに起因し、Nの核スピンによる超微細構造を有するシグナルと理解される。また、NOxに起因するシグナルは、スピン種が異方性を有するため非対称な波形である。試料A2において、スピン密度は、5.5×1017spins/cm3であった。
図34より、酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜において、酸素原子イオンが添加され、加熱処理されることで、欠陥量が多い膜となることが分かった。一方、酸化物半導体膜に酸素原子イオンが添加されることで、酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜は、欠陥量が少ない膜となることが分かった。
次に、酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜の成膜温度と、欠陥量の関係について、説明する。また、酸化物半導体膜の酸素原子イオンの添加の有無と、酸化シリコン膜の欠陥量の関係について、説明する。
<試料A3>
図35(A)及び図35(B)を用いて、試料A3の作製方法を説明する。
図35(A)に示すように、シリコンウェハ321を加熱してシリコンウェハ321の表面に厚さ400nmの酸化シリコン膜322を形成した。次に、酸化シリコン膜322上に、厚さ100nmの酸化シリコン膜323を形成した。次に酸化シリコン膜323上に、厚さ20nmの第1のIGZO膜325を形成した。次に、第1のIGZO膜325上に厚さ20nmの第2のIGZO膜327を形成した。
ここでは、水蒸気雰囲気において、950℃でシリコンウェハ321を加熱して、シリコンウェハ321の表面に、酸化シリコン膜322を形成した。
ここでは、酸化シリコン膜323は、原料ガスとして、1sccmのシラン及び800sccmの一酸化二窒素を用い、反応室内の圧力を40Paとし、基板温度を500℃とし、150Wの電力を供給したプラズマCVD法により形成した。
ここでは、第1のIGZO膜325は、スパッタリングターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:3:4(原子数比)のIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用い、流量11%の酸素(アルゴン希釈)をスパッタリングガスとして用い、反応室内の圧力を0.7Paとし、基板温度を200℃とし、0.5kWの直流電力を供給したスパッタリング法により形成した。
ここでは、第2のIGZO膜327は、スパッタリングターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)のIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用い、アルゴンに対して流量33%の酸素をスパッタリングガスとして用い、反応室内の圧力を0.7Paとし、基板温度を300℃とし、0.5kWの直流電力を供給したスパッタリング法により形成した。
次に、加熱処理を行った。加熱後の第1のIGZO膜を図35(B)において第1のIGZO膜325aとし、加熱後の第2のIGZO膜を図35(B)において第2のIGZO膜327aと示す。
ここでは、450℃窒素雰囲気において1時間加熱を行った後、450℃酸素雰囲気において、1時間加熱処理を行った。
以上の工程により、試料A3を作製した。
<試料A4>
試料A4は、試料A3と成膜温度が異なる条件を用いて、酸化シリコン膜323を形成した。
ここでは、酸化シリコン膜323は、原料ガスとして、1sccmのシラン及び800sccmの一酸化二窒素を用い、反応室内の圧力を40Paとし、基板温度を400℃とし、150Wの電力を供給したプラズマCVD法により形成した。
<試料A5>
図35(C)乃至図35(F)を用いて、試料A5の作製方法を説明する。試料A5は、試料A3と比較して、第1のIGZO膜に酸素原子イオンを添加する点が異なる。
図35(C)に示すように、シリコンウェハ321を加熱してシリコンウェハ321の表面に厚さ400nmの酸化シリコン膜322を形成した。次に、酸化シリコン膜322上に、厚さ100nmの酸化シリコン膜323を形成した。次に、酸化シリコン膜323上に、厚さ20nmの第1のIGZO膜325を形成した。次に、第1のIGZO膜325に、酸素原子イオン326を添加した。この結果、図35(D)に示すように、酸素原子イオンが添加された第1のIGZO膜325aが形成された。
ここでは、試料A3と同じ条件を用いて、酸化シリコン膜322、酸化シリコン膜323、および第1のIGZO膜325を形成した。即ち、試料A5において、酸化シリコン膜323は、基板温度を500℃として形成した。
ここでは、加速電圧を5kVとし、ドーズ量を1×1016ions/cm2としたイオン注入法により、酸素原子イオン326を第1のIGZO膜325に添加した。
次に、図35(E)に示すように、第1のIGZO膜325a上に厚さ20nmの第2のIGZO膜327を形成した。
ここでは、第2のIGZO膜327は、スパッタリングターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)のIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用い、アルゴンに対して流量33%の酸素をスパッタリングガスとして用い、反応室内の圧力を0.7Paとし、基板温度を300℃とし、0.5kWの直流電力を供給したスパッタリング法により形成した。
次に、加熱処理を行った。この結果、第1のIGZO膜325aに含まれる酸素の一部が第2のIGZO膜327に拡散した。加熱後の第1のIGZO膜325aを図35(F)において第1のIGZO膜325bとし、加熱後の第2のIGZO膜を図35(F)において第2のIGZO膜327aと示す。
ここでは、450℃窒素雰囲気において1時間加熱を行った後、450℃酸素雰囲気において、1時間加熱処理を行った。
以上の工程により、試料A5を作製した。
<試料A6>
試料A6は、試料A5と成膜温度が異なる条件を用いて、酸化シリコン膜323を形成した。
ここでは、酸化シリコン膜323は、原料ガスとして、1sccmのシラン及び800sccmの一酸化二窒素を用い、反応室内の圧力を40Paとし、基板温度を400℃とし、150Wの電力を供給したプラズマCVD法により形成した。
<ESR測定>
試料A3乃至試料A6についてESR測定を行った。ここでは、下記の条件でESR測定を行った。測定温度を10Kとし、9.55GHzの高周波電力を0.1mWとし、磁場の向きは作製した試料の膜表面と平行とした。なお、測定温度が10Kの際のNOxに起因するシグナルのスピン密度の検出下限は8.7×1015spins/cm3であった。
図36(A)は、試料A3及び試料A4の測定結果であり、図36(B)は、試料A5及び試料A6の測定結果である。また、試料A3乃至試料A6のNOxに起因する3つのシグナルのスピン密度を図中に示す。図36(A)に示すように、試料A3において、スピン密度は検出下限未満であった。試料A4において、スピン密度は、8.7×1015spins/cm3であった。試料A5において、スピン密度は7.2×1016spins/cm3であった。試料A6において、スピン密度は、1.6×1017spins/cm3であった。また、図36(B)に示すように、試料A5及び試料A6において、NOxに起因する3つのシグナルが観察された。
次に、試料A3乃至試料A6における、NOxに起因する3つのシグナルのスピン密度を、図37に示す。
図36及び図37より、第1のIGZO膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜の成膜温度を高くすることで、酸化シリコン膜に含まれる欠陥量を低減できることが分かった。
また、図36及び図37より、酸化物半導体膜に酸素原子イオンの添加することで、下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜に欠陥が生成されることが分かった。
本実施例では、酸化物絶縁膜の成膜温度と加熱処理による水の放出量の関係と、酸化物絶縁膜の成膜温度と膜中の窒素濃度の関係について説明する。
<試料の作製方法>
本実施例では、試料B1乃至試料B5をそれぞれ作製した。
<試料B1>
シリコンウェハを加熱してシリコンウェハの表面に厚さ100nmの酸化シリコン膜を形成した。次に、酸化シリコン膜上に、厚さ100nmの酸化シリコン膜を形成した。
ここでは、HCl添加の酸素雰囲気において、950℃でシリコンウェハを加熱して、シリコンウェハの表面に、酸化シリコン膜を形成した。
ここでは、酸化シリコン膜は、原料ガスとして、1sccmのシラン及び800sccmの一酸化二窒素を用い、反応室内の圧力を40Paとし、基板温度を350℃とし、150Wの電力を供給したプラズマCVD法により形成した。
以上の工程により、試料B1を作製した。
<試料B2>
試料B2は、試料B1の酸化シリコン膜の成膜温度を400℃とする条件を用いて、作製した。
<試料B3>
試料B3は、試料B1の酸化シリコン膜の成膜温度を450℃とする条件を用いて、作製した。
<試料B4>
試料B4は、試料B1の酸化シリコン膜の成膜温度を500℃とする条件を用いて、作製した。
<試料B5>
試料B5は、試料B1の酸化シリコン膜の成膜温度を550℃とする条件を用いて、作製した。
<TDS測定>
次に、試料B1乃至試料B5についてTDS分析を行った。
TDS分析の結果を示す曲線におけるピークは、分析した試料(本実施例では試料B1乃至試料B5)に含まれる原子または分子が外部に放出されることで現れるピークである。なお、外部に放出される原子または分子の総量は、当該ピークの積分値に相当する。それゆえ、当該ピーク強度の高低によって酸化シリコン膜に含まれる原子または分子の総量を評価できる。
試料B1乃至試料B5についてのTDS分析結果を、図38に示す。図38は、基板温度に対する水の放出量を示したグラフである。
図38より、酸化シリコン膜の成膜温度が高くても、加熱処理温度を高くするにつれ、水の放出量が増加する。特に、酸化シリコン膜の成膜温度より高い加熱処理温度を行うことで、水の放出量が増加する傾向がある。
<SIMS分析>
次に、試料B1乃至試料B5に含まれる酸化シリコン膜について、SIMS分析を行った。なお、ここでは、シリコンウェハを加熱して酸化シリコン膜を形成することをせず、試料B1乃至試料B5のいずれかの条件を用いて、シリコンウェハ上に厚さ100nmの酸化シリコン膜を形成した。試料B1、試料B2、試料B3、試料B4、試料B5の条件を用いて酸化シリコン膜を形成した試料を、それぞれ試料B1a、試料B2a、試料B3a、試料B4a、試料B5aとする。なお、各試料において、シリコンウェハ(Si)から、酸化シリコン膜(SiON)へ向かって、窒素の濃度を測定した。試料B1a乃至試料B5aの測定結果を図39に示す。
図39において、横軸は深さ方向の距離を示し、縦軸は窒素の濃度を示す。
試料B1aの窒素濃度は6×1020atoms/cm3、試料B2aの窒素濃度は4×1020atoms/cm3、試料B3aの窒素濃度は2×1020atoms/cm3、試料B4aの窒素濃度は7×1019atoms/cm3、試料B5aの窒素濃度は2×1019atoms/cm3であった。
また、試料B1a、試料B2a、試料B3a、試料B4a、試料B5aの水素の濃度を測定した。なお、各試料において、シリコンウェハ(Si)から、酸化シリコン膜(SiON)へ向かって、測定を行った。試料B1a乃至試料B5aの測定結果を図46に示す。
図46において、横軸は深さ方向の距離を示し、縦軸は水素の濃度を示す。
試料B1aの水素濃度は7×1020atoms/cm3、試料B2aの水素濃度は6×1020atoms/cm3、試料B3aの水素濃度は5×1020atoms/cm3、試料B4aの水素濃度は4×1019atoms/cm3、試料B5aの水素濃度は3×1019atoms/cm3であった。
なお、SIMS分析は、その測定原理上、試料表面近傍や、材質が異なる膜との積層界面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。そこで、膜中における窒素の厚さ方向の分布を、SIMSで分析する場合、対象となる膜の存在する範囲において、極端な変動が無く、ほぼ一定の強度が得られる領域における平均値を採用する。
図39より、酸化シリコン膜の成膜温度を高くするにつれて、窒素濃度が低減していることが分かる。また、図46より、酸化シリコン膜の成膜温度を高くするにつれ、水素濃度が低減していることがわかる。また、図39と図46を比較すると、成膜温度を高くしたときに、窒素濃度が減少する割合は、水素濃度より大きいことがわかる。
本実施例では、トランジスタを作製した後、トランジスタの電気特性を測定し、その結果を示す。
<試料C1の作製方法>
はじめに、トランジスタを含む試料C1の作製工程について説明する。本実施例では、図3、図6、および図7を参照して、トランジスタの作製方法を説明する。
図3(A)に示すように、基板101上に絶縁膜(図示しない。)を形成し、該絶縁膜上にゲート電極103を形成した。次に、絶縁膜およびゲート電極103上に絶縁膜104を形成し、絶縁膜104上に酸化物半導体膜106を形成した。次に、酸化物半導体膜106に酸素108を添加して、図3(B)に示すように、酸素が添加された酸化物半導体膜106aを形成した。
基板101としては、シリコンウェハを用いた。
また、水蒸気雰囲気において、950℃で基板101を加熱して、基板101表面に、絶縁膜として厚さ400nmの酸化シリコン膜を形成した。
また、絶縁膜上に厚さ50nmのタングステン膜をスパッタリング法により形成した後、タングステン膜上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、タングステン膜を選択的にエッチングして、ゲート電極103を形成した。この後、マスクを除去した。
絶縁膜104として、プラズマCVD法を用いて、厚さ100nmの酸化シリコン膜を形成した。
なお、酸化シリコン膜の成膜に用いた条件としては、原料ガスとして、1sccmのシラン及び800sccmの一酸化二窒素を用い、反応室内の圧力を40Paとし、基板温度を500℃とし、150Wの電力を供給した。
酸化物半導体膜106として、スパッタリング法により、厚さ40nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を形成した。このときのスパッタリング条件としては、In:Ga:Zn=1:3:4のターゲットを用い、スパッタガスとして11%の酸素を圧力0.7Paのチャンバーに導入し、基板温度を200℃とし、供給電力を0.5kWとした。
イオン注入法を用い、ドーズ量が1×1016ions/cm2、加速電圧を5kVとして、酸素108として酸素分子イオンを添加した。
次に、図3(B)に示すように、酸素が添加された酸化物半導体膜106a上に酸化物半導体膜109を形成した。
酸化物半導体膜109として、スパッタリング法により、厚さ20nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を形成した。このときのスパッタリング条件としては、In:Ga:Zn=1:1:1のターゲットを用い、スパッタガスとして33%の酸素を圧力0.7Paのチャンバーに導入し、基板温度を300℃とし、供給電力を0.5kWとした。
つぎに、加熱処理を行って、酸化物半導体膜106aに含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜109に移動させ、図3(C)に示すように、酸素欠損が低減された酸化物半導体膜106bおよび酸化物半導体膜109aを形成した。試料C1においては、絶縁膜104の成膜温度より低い温度で加熱処理を行った。
ここでは、450℃の窒素雰囲気で1時間加熱処理を行った後、450℃の酸素雰囲気で1時間加熱処理を行った。
次に、図8(A)に示すように、酸化物半導体膜109a上に導電膜112を形成した。
ここでは、導電膜112として、スパッタリング法により厚さ100nmのタングステン膜を形成した。
次に、導電膜112上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、絶縁膜104、酸化物半導体膜106a、酸化物半導体膜109a、および導電膜112をエッチングして、図8(B)に示すように、ゲート絶縁膜105、酸化物半導体膜107、酸化物半導体膜110、および導電膜113を形成した。
次に、一対の電極113a、113b、および酸化物半導体膜111上に、酸化物半導体膜、絶縁膜、および導電膜を積層し、導電膜上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、酸化物半導体膜、絶縁膜、および導電膜をエッチングして、図7に示すように、酸化物半導体膜115、ゲート絶縁膜117、およびゲート電極119を形成した。
酸化物半導体膜115となる酸化物半導体膜として、スパッタリング法により、厚さ5nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を形成した。このときのスパッタリング条件としては、In:Ga:Zn=1:3:2のターゲットを用い、スパッタガスとして33%の酸素を圧力0.4Paのチャンバーに導入し、基板温度を200℃とし、供給電力を0.5kWとした。
ゲート絶縁膜117となる絶縁膜として、プラズマCVD法により厚さ20nmの酸化シリコン膜を形成した。
ゲート電極119となる導電膜として、スパッタリング方法により厚さ30nmの窒化チタン膜と、厚さ135nmのタングステン膜を積層して形成した。
次に、絶縁膜121を形成した後、加熱処理を行い、絶縁膜123を形成した。
絶縁膜121として、スパッタリングにより厚さ140nmの酸化アルミニウム膜を形成した。
加熱処理の条件として、400℃の酸素雰囲気で1時間の加熱を用いた。
絶縁膜123として、プラズマCVD法により、厚さ300nmの酸化シリコン膜を形成した。
次に、絶縁膜121および絶縁膜123上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、絶縁膜121および絶縁膜123のそれぞれ一部をエッチングして、一対の電極113a、113bの一部を露出した後、図7に示すプラグ127a、127bを形成した。
ここでは、プラグ127a、127bとして、スパッタリング法により、厚さ50nmのチタン膜と、厚さ300nmのアルミニウム膜と、厚さ5nmのチタン膜を積層して形成した。
以上の工程により、トランジスタを作製した。なお、トランジスタのチャネル長を0.8μmとし、チャネル幅を0.8μmとして、トランジスタを設計した。
<試料C2の作製方法>
試料C2は、試料C1の酸化物半導体膜109を形成した後の加熱処理温度を550℃とする条件を用いて、トランジスタを作製した。即ち、試料C2においては、絶縁膜104の成膜温度より高い温度で加熱処理を行った。
<電気特性の測定結果>
次に、トランジスタの電気特性を測定した。はじめに、ストレス試験を行う前の電気特性(以下、初期特性と示す。)を測定した。ここでは、ソース−ドレイン間電圧(以下、ドレイン電圧という。)を0.1Vまたは1.8Vとし、ソース−ゲート間電圧(以下、ゲート電圧という。)を−3Vから+3Vまで変化させたときのソース−ドレイン間電流(以下、ドレイン電流という。)の変化特性、すなわちVg−Id特性を測定した。
次に、トランジスタのストレス試験を行った。ここでは、BTストレス試験を行った。
ゲート電極119の電圧(Vg)を+3.3V、電極113cの電圧(Vd)を0V、電極113dの電圧(Vs)を0V、ゲート電極103の電圧(Vbg)を0Vとし、基板温度を150℃、ストレス時間を1時間として、+GBTストレス試験を行った。こののち、トランジスタのVg−Id特性を測定した。
また、ゲート電極119の電圧(Vg)を−1.8V、電極113cの電圧(Vd)を0V、電極113dの電圧(Vs)を0V、ゲート電極103の電圧(Vbg)を0Vとし、基板温度を85℃、ストレス時間を1時間として、−GBTストレス試験を行った。こののち、トランジスタのVg−Id特性を測定した。
なお、本明細書におけるしきい値電圧およびシフト値について説明する。しきい値電圧(Vth)は、ゲート電圧(Vg[V])を横軸、ドレイン電流の平方根(Id1/2[A1/2])を縦軸としてプロットしたVg−Id曲線において、曲線上の傾きが最大である点における接線と、Id1/2=0の直線(すなわちVg軸)との交点におけるゲート電圧と定義する。なお、ここでは、ドレイン電圧Vdを1.8Vとして、しきい値電圧を算出する。
また、本明細書におけるシフト値(Shift)は、ゲート電圧(Vg[V])を横軸、ドレイン電流(Id[A])の対数を縦軸としてプロットしたVg−Id曲線において、曲線上の傾きが最大である点における接線と、Id=1.0×10−12[A]の直線との交点におけるゲート電圧と定義する。なお、ここではドレイン電圧Vdを1.8Vとして、シフト値を算出する。
試料C1における+GBTストレス試験、−GBTストレス試験の前後におけるトランジスタのVg−Id特性の測定結果を図40に示す。試料C2における+GBTストレス試験、−GBTストレス試験の測定結果を図41に示す。
図40及び図41において、横軸は、ゲート電極119の電圧を表し、縦軸はドレイン電流を表す。また、初期特性を破線で示し、各ストレス試験後のVg−Id特性を実線で示す。
図40より、試料C1に含まれるトランジスタは、ノーマリオフ特性を有することが分かった。また、+GBTストレス試験及び−GBTストレス試験の前後におけるしきい値電圧の変動量およびシフト値の変動量がそれぞれ、小さいことが分かった。
一方、図41より、試料C2に含まれるトランジスタは、ノーマリオフ特性を有するが、+GBTストレス試験の前後において、しきい値電圧の変動量が大きいことが分かった。
次に、試料C1において、ストレス時間を60時間まで延長した場合の、+GBTストレス試験の前後におけるしきい値電圧の変動量(ΔVth)及びシフト値の変動量(ΔShift)を図42に示す。
試料C1に含まれるトランジスタは、+GBTストレス試験を長時間行っても、しきい値電圧及びシフト値の変動が少なく、代表的には−0.1V以上0.1V以下であった。このことから、酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜を高温で成膜し、酸化物半導体膜に酸素を添加することで、トランジスタの電気特性の変動を抑制することが可能である。
また、酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜を、酸化物半導体膜の加熱処理の温度より高い温度で成膜し、酸化物半導体膜に酸素を添加することで、トランジスタの電気特性の変動を抑制することが可能である。
また、実施例3より、酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜を高温で成膜することで、酸化シリコン膜に含まれる窒素濃度を低減することが可能である。また、下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜上の酸化物半導体膜に酸素を添加した後、加熱処理を行っても、酸化シリコン膜におけるNOxの生成及び欠陥量の増加を抑制することが可能である。
高温で酸化シリコン膜を形成することで、窒素濃度が低くなる。このため酸化物半導体膜に酸素を添加した際に、酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜に酸素が添加されたとしても、酸化シリコン膜中の窒素と酸素の結合が生じにくい。この結果、トランジスタのバックチャネルにおいて、NOxに起因する電子トラップが生成されにくく、トランジスタのGBTストレス試験におけるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
また、実施例4より、酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜において、450℃の加熱処理より、550℃の加熱処理の方が、水の放出量が多いことが分かる。また、酸化シリコン膜の成膜温度より高い加熱処理温度を行うことで、水の放出量が増加する傾向があることが分かる。これらの結果、酸化物半導体膜の加熱処理温度を550℃とすることで、酸化シリコン膜から水が酸化物半導体膜へ拡散する、または酸化シリコン膜において水が生成される可能性がある。または、酸化シリコン膜の成膜温度より高い加熱処理温度を行うことで、酸化シリコン膜から水が酸化物半導体膜へ拡散する、または酸化シリコン膜において水が生成される可能性がある。
本実施例において、試料C1は、酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜の成膜温度より低い温度で、加熱処理を行っている。また、トランジスタのGBTストレス試験におけるしきい値電圧の変動量が小さい。これらのことから、酸化物半導体膜の下地膜としての機能を有する酸化シリコン膜の成膜温度より低い温度で加熱処理を行うことで、水に起因する電子トラップが生成されにくく、トランジスタのGBTストレス試験におけるしきい値電圧の変動量を低減することができる。