本発明のガスバリア性フィルムは、樹脂基材と、該樹脂基材の少なくとも一方の面側に形成されるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子を含むガスバリア層と、を含むガスバリア性フィルムであって、前記ガスバリア層は、85℃85%RH環境下で300時間保存前後のSi−C結合の変化率が15%以下であり、かつ前記ガスバリア層は、層厚方向に組成が連続的に変化し、下記要件(1)および(2)を満たすことを特徴とする。
(1)前記ガスバリア層についてのX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、当該ガスバリア層の層厚方向における前記ガスバリア層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量(100at%)に対する炭素原子の量の比率(「炭素原子比率(at%)」という)との関係を示す炭素分布曲線において、少なくとも1つの極値を有し、前記炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差の絶対値が5at%以上である:
(2)前記ガスバリア層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、下記式(A)または(B)で表される序列の大小関係を有する。
かような構成を有する本発明のガスバリア性フィルムは、高温高湿環境下においても長期間安定したガスバリア性能や密着性を有する。
本発明のガスバリア性フィルムにより、なぜ上記のような効果が得られるのか、詳細は不明であるが、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子を含むガスバリア層は、−Si−O−Si−(シロキサン結合)のネットワークの中に、−Si−C−Si−結合などの構造を有する。結合エネルギーは、Si−O結合が約444kJ/mol、Si−C結合が約337kJ/molであるため、Si−O結合の方が強い結合である。しかし、Si−O−Si結合およびSi−C−Si結合の結合角は、Si−O−Si結合が約134°、Si−C−Si結合が約120°であるため、Si−C−Si結合の方が、回転障壁が大きく流動性に乏しいことからガスバリア性が高い(ガス透過性が小さい)と考えられる。すなわち、高温高湿環境下などで劣化する結合の主要部は、Si−O結合よりも結合エネルギーが小さいSi−C結合であるが、ガスバリア性に寄与しているのはSi−C結合と考えられる。よって、膜の緻密化やガスバリア層の架橋度の向上を行い、85℃85%RH環境下で300時間保存前後のSi−C結合の変化率を15%以下とすることにより、高温高湿環境下においても長期間安定したガスバリア性能を発揮するようになる。
また、本発明に係るガスバリア層は、上記(1)および(2)の要件を満たす。このような構成をとることにより、ガスバリア層中に、炭素原子が多く存在しガラス性が低下したいわば応力緩和層が存在することになる。したがって、本発明のガスバリア性フィルムは、高温高湿環境下においても長期間安定して、樹脂基材とガスバリア層との密着性を発揮するようになる。
なお、上記のメカニズムは推定によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら拘泥されるものではない。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態のみには限定されない。なお、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
また、本発明でいう「ガスバリア性」とは、実施例に記載の方法により測定した透過水分量が1×10−3g/m2/day未満であることを意味する。
〔樹脂基材〕
本発明に係る樹脂基材としては、プラスチックフィルムまたはプラスチックシートが好ましく用いられ、無色透明な樹脂からなるフィルムまたはシートがより好ましく用いられる。用いられるプラスチックフィルムは、ガスバリア層等を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムを有機EL素子等の電子デバイスの基板として使用する場合は、前記樹脂基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の樹脂基材が使用される。
本発明のガスバリア性フィルムは、有機EL素子等の電子デバイスとして利用されることから、樹脂基材は透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、本発明のガスバリア性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、樹脂基材として不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明に係るガスバリア性フィルムに用いられる樹脂基材の厚みは、用途によって適宜選択されるため特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層、クリアハードコート層等の機能層を有していても良い。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落番号「0036」〜「0038」に記載されているものを好ましく採用できる。
樹脂基材は、表面の平滑性が高いものが好ましい。表面の平滑性としては、平均表面粗さ(Ra)が2nm以下であるものが好ましい。下限は特に制限されないが、実用上、0.01nm以上である。必要に応じて、樹脂基材の両面、少なくともバリア層を設ける側を研摩し、平滑性を向上させておいてもよい。
また、上記に挙げた樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸処理されたフィルムでもよい。
本発明で用いられる樹脂基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の樹脂基材を製造することができる。未延伸の樹脂基材を製造した後は、必要に応じて、上記のような従来公知の方法により、延伸処理や熱処理を行うことが好ましい。
樹脂基材の少なくともガスバリア層を設ける側には、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、またはプラズマ処理や、後述するクリアハードコート層の積層等を行ってもよく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行うことが好ましい。
〔ガスバリア層〕
本発明に係るガスバリア層は、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子を含有し、85℃85%RH環境下で300時間保存前後のSi−C結合の変化率が15%以下である。Si−C結合の変化率が15%を超える場合、例えば85℃85%RHのような高温高湿環境下で保存した後のガスバリア性能および密着性が低下する。該Si−C結合の変化率は、好ましくは5〜10%である。
該Si−C結合の変化率は、例えば、後述する有機ケイ素化合物を含む原料ガス、酸素ガス、およびキャリアガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有するプラズマ化学気相成長法を用いたガスバリア層の形成において、原料ガスとキャリアガス(ヘリウムガス、アルゴンガス等、好ましくはアルゴンガス)との流量比を制御する、メタンやエチレンなどの低分子量の炭化水素ガスを添加する、成膜時低圧にする、原料ガスを多く用いる、等の方法により制御することができる。
加えて、本発明に係るガスバリア層は、層厚方向に組成が連続的に変化し、下記要件(1)および(2)を同時に満たす。
(1)ガスバリア層についてのX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、当該ガスバリア層の層厚方向における前記ガスバリア層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量(100at%)に対する炭素原子の量の比率(「炭素原子比率(at%)」という)との関係を示す炭素分布曲線において、少なくとも1つの極値を有し、前記炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差の絶対値が5at%以上である。
(2)ガスバリア層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、下記式(A)または(B)で表される序列の大小関係を有する。
なお、樹脂基材界面領域における測定精度は、樹脂基材の構成原子のノイズ等でやや精度が低下するため、上記式(A)または式(B)で規定する関係を満たす領域としては、ガスバリア層の全層厚の90〜95%の範囲内の領域であることが好ましい。
以下、本発明に係るガスバリア層の詳細について説明する。
(ガスバリア層における炭素原子分布プロファイル)
本発明に係るガスバリア層は、ガスバリア層の構成元素としてケイ素原子、酸素原子、および炭素原子を含み、層厚方向に組成が連続的に変化し、X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、当該ガスバリア層の層厚方向における前記ガスバリア層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量(100at%)に対する炭素原子の量の比率(「炭素原子比率(単位:at%)」とも称する)との関係を示す炭素分布曲線において、少なくとも1つの極値を有し、前記炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差の絶対値が5at%以上である。上記記炭素分布曲線における炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)の差の絶対値が5at%未満の場合、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合のガスバリア性および密着性が不十分となる。
炭素原子比率の極大値および極小値の差の絶対値は、6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましい。
また、本発明に係るガスバリア層においては、炭素原子比率がガスバリア層の特定の領域において、濃度勾配を有して連続的に変化する構成を有することが、高温高湿条件下でガスバリア性フィルムを提供する観点から好ましい態様である。
このような炭素原子分布プロファイルを有する本発明に係るガスバリア層においては、層内における炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有するが、さらに、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することがさらに好ましい。炭素分布曲線が極値を有さない場合には、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が不十分となる。また、このように少なくとも2つまたは3つの極値を有する場合においては、前記炭素分布曲線が有する1つの極値および該極値に隣接する極値における前記ガスバリア層の層厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
なお、本発明において分布曲線の極値とは、ガスバリア層の層厚方向における、ガスバリア層の表面からの距離に対する元素の原子比率の極大値または極小値の測定値のことをいう。
本発明において極大値とは、ガスバリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比率の値よりも、該点からガスバリア層の層厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離をさらに20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が3at%以上減少する点のことをいう。
さらに、本発明において極小値とは、ガスバリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、且つその点の元素の原子比率の値よりも、該点からガスバリア層の層厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上増加する点のことをいう。
なお、炭素原子分布プロファイルに関する上記説明において、「ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量」とは、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計at%を意味し、「炭素原子の量」とは、炭素原子数を意味する。本発明でいうat%とは、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の総原子数を100at%としたときの各原子の原子数比率を意味する。また、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線についてのケイ素原子の量、酸素原子の量についても同様である。
(ガスバリア層における各元素プロファイル)
本発明に係るガスバリア層においては、構成元素として、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子を含有するが、ケイ素原子および酸素原子のそれぞれの原子の比率と、極大値および極小値とについての好ましい態様を、以下に説明する。
<ケイ素原子比率の極大値と極小値との関係>
本発明に係るガスバリア層においては、ケイ素分布曲線における極大値および極小値の差の絶対値が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%未満であれば、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性および機械的強度が十分となる。ここでいうケイ素分布曲線とは、ガスバリア層についてのX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、当該ガスバリア層の層厚方向における前記ガスバリア層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子、および酸素原子の合計量(100at%)に対するケイ素原子の量の比率(「ケイ素原子比率(単位:at%)」とも称する)との関係を示すケイ素原子の分布曲線を指す。
<酸素原子比率の極大値と極小値との関係>
本発明に係るガスバリア層においては、酸素分布曲線における極大値および極小値の差の絶対値が5at%以上であることが好ましく、6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましい。前記絶対値が5at%以上であれば、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が十分となる。ここでいう酸素分布曲線とは、ガスバリア層についてのX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、当該ガスバリア層の層厚方向における前記のガスバリア層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量(100at%)に対する酸素原子の量の比率(「酸素原子比率(単位:at%)」とも称する)との関係を示す酸素元素の分布曲線を指す。
また、本発明に係るガスバリア層においては、層厚方向における該層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量(100at%)に対する酸素原子および炭素原子の合計量の比率(酸素−炭素合計の原子比率とも称する)である酸素−炭素合計の分布曲線(酸素炭素分布曲線とも称する)において、前記酸素−炭素合計の原子比率の最大値および最小値の差の絶対値が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%未満であれば、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性が十分となる。
本発明に係るガスバリア層においては、ガスバリア層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、上記式(A)または(B)で表される序列の大小関係を有する。かような要件を満たすことで、本発明のガスバリア性フィルムは、高温高湿環境下においても長期間安定したガスバリア性能や密着性を有する。
上記したガスバリア層の層厚方向におけるケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線、および酸素−炭素合計の分布曲線等は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は層厚方向における前記ガスバリア層の層厚方向における前記ガスバリア層の表面からの距離におおむね相関することから、「ガスバリア層の層厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリア層の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar+)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO2熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。より詳細には、上記ケイ素分布曲線、上記酸素分布曲線、上記炭素分布曲線、および上記酸素−炭素合計の分布曲線は、実施例に記載の方法により測定することができる。
また、本発明においては、膜面全体において均一で、かつ優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成するという観点から、ガスバリア層が膜面方向(ガスバリア層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。本発明において、ガスバリア層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりガスバリア層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記炭素分布曲線、前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、および前記酸素−炭素合計の分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値および最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかまたは5at%以内の差であることをいう。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、本発明で規定する前記要件(1)および(2)を同時に満たすガスバリア層を少なくとも1層備えることが必須の要件であるが、そのような条件を満たす層を、2層以上を備えていてもよい。さらに、このようなガスバリア層を2層以上備える場合には、複数のガスバリア層の材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、このようなガスバリア層を2層以上備える場合には、このようなガスバリア層は前記樹脂基材の一方の表面上に形成されていてもよく、前記樹脂基材の両方の表面上に形成されていてもよい。
また、前記ガスバリア層中における前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、および前記炭素分布曲線において、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子比率は、20〜45at%の範囲であることが好ましく、25〜40at%の範囲であることがより好ましい。また、前記ガスバリア層中における前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、および前記炭素分布曲線において、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子比率は、45〜75at%の範囲であることが好ましく、50〜70at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記ガスバリア層中における前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、および前記炭素分布曲線において、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子比率は、1〜25at%の範囲であることが好ましく、2〜20at%の範囲であることがより好ましい。
<ガスバリア層の層厚>
本発明に係るガスバリア層の層厚は、5〜1000nmの範囲内であることが好ましく、10〜1000nmの範囲内であることがより好ましく、100〜1000nmの範囲内であることがさらに好ましい。ガスバリア層の層厚が前記範囲内であれば、カールが小さく、水蒸気や酸素等の各種ガスに対するガスバリア性に優れ、屈曲によるガスバリア性の低下がみられない。特に、ガスバリア層の層厚を上記範囲内で厚膜化した場合であっても、フィルムカールが大きくなるのを効果的に抑制することができる点で優れている。
ガスバリア層が2層以上の場合においても、ガスバリア層の層厚の合計値が5〜1000nmの範囲内であることが好ましく、10〜1000nmの範囲内であることより好ましく、100〜1000nmの範囲内であることが特に好ましい。ガスバリア層の層厚の合計値が上記範囲内であれば、所望の平面性を実現することができると共に、カールが小さく、水蒸気や酸素等の各種ガスに対するガスバリア性に優れ、屈曲によるガスバリア性の低下がみられない。さらに、ガスバリア層の層厚の合計値を上記範囲内で厚膜化した場合、フィルムカールが大きくなるのを効果的に抑制することができる。
<ガスバリア層の形成方法>
本発明に係るガスバリア層の形成方法としては、特に制限されないが、上記の要件(1)および(2)を満たすような、緻密に元素分布が制御させたガスバリア層を形成することが容易にできる観点から、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD、PECVD(plasma−enhanced chemical vapor deposition)、以下、単に「プラズマCVD法」とも称する)が好ましい。
プラズマCVD法としては、特に限定されないが、国際公開第2006/033233号に記載の大気圧または大気圧近傍でのプラズマCVD法、対向ロール電極を持つプラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法が挙げられる。
中でも、生産性が高いことから、対向ロール電極を有するプラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法により第1の層を形成することが好ましい。なお、前記プラズマCVD法はペニング放電プラズマ方式のプラズマCVD法であってもよい。
以下、対向ロール電極を有するプラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法によりガスバリア層を形成する方法について説明する。
プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに樹脂基材(ここで樹脂基材には、樹脂基材が処理された、または樹脂基材上に機能層を有する形態も含む)を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に樹脂基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する樹脂基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する樹脂基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できる。加えて、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にでき、なおかつ、略同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく上記要件(1)および(2)を満たすガスバリア層を形成することが可能となる。
また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。また、本発明のガスバリア性フィルムにおいては、ガスバリア層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
また、本発明に係るガスバリア性フィルムは、生産性の観点から、ロールツーロール方式で樹脂基材の表面上にガスバリア層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマCVD法によりガスバリア層を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図1に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロールツーロール方式で製造することも可能となる。
以下、図1を参照しながら、本発明に係るガスバリア性フィルムを構成するガスバリア層の製造方法についてより詳細に説明する。なお、図1は、本発明に係るガスバリア性フィルムを構成するガスバリア層の製造において好適に利用することができる磁場を印加したプラズマCVD装置の一例を示す模式図である。
図1に示すプラズマCVD装置は、主には、送り出しローラー14と、搬送ローラー15、16、17および18と、成膜ローラー19および20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、成膜ローラー19および20の内部に設置された磁場発生装置23および24と、巻取りローラー25と、を備えている。また、このようなプラズマCVD装置においては、少なくとも成膜ローラー19および20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、磁場発生装置23および24とが、図示を省略した真空チャンバ内に配置されている。さらに、このようなプラズマCVD装置において、真空チャンバは、真空ポンプ(図示せず)に接続されており、この真空ポンプにより真空チャンバ内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このようなプラズマCVD装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19と成膜ローラー20)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源22に接続されている。一対の成膜ローラー(成膜ローラー19と成膜ローラー20)に、プラズマ発生用電源22より電力を供給することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間に放電することが可能となり、これにより成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間(放電空間ともいう)にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー19と成膜ローラー20を電極として利用することになるため、電極として利用可能な材質や設計を適宜変更すればよい。また、このようなプラズマCVD装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19および20)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19および20)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。そして、このような製造装置によれば、CVD法により樹脂基材12の表面上にガスバリア層を形成することが可能であり、成膜ローラー19上において樹脂基材12の表面上にガスバリア層成分を堆積させつつ、さらに成膜ローラー20上においても樹脂基材12の表面上にガスバリア層成分を堆積させることもできるため、樹脂基材12の表面上にガスバリア層を効率よく形成することができる。
また、成膜ローラー19および成膜ローラー20の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置23および24がそれぞれ設けられていることが特徴である。
成膜ローラー19および成膜ローラー20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23および24は、一方の成膜ローラー19に設けられた磁場発生装置23と他方の成膜ローラー20に設けられた磁場発生装置24との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置23、24がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23、24を設けることにより、各成膜ローラー19、20の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束され易くなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー19および成膜ローラー20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23および24は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置23と他方の磁場発生装置24は向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。例えば、図1の磁場発生装置23および24では、断面山形の中央の長い突起部分に上記レーストラック状の磁極(各成膜ローラーごとに1つ、合計2つ)を設け、この磁極が共に同一極性(N極ないしS極)となるように配置し、断面山形の中央の両側の短い突起部分にも上記レーストラック状の磁極(各成膜ローラーごとに2つ、合計4つ)を設け、この磁極がいずれも、上記中央の長い突起部分の磁極の対極となる同一極性(S極またはN極)となるように配置している。但し、それぞれの磁極(N極とS極)を逆に配置してもよい。このような磁場発生装置23、24を設けることにより、それぞれの磁場発生装置23、24について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の樹脂基材12を用いて効率的に蒸着膜であるガスバリア層を形成することができる点で優れている。
さらに、成膜ローラー19および20としては、適宜公知のローラーを用いることができる。成膜ローラー19および20としては、より効率よく薄膜を形成することができる観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、成膜ローラー19および20の直径としては、放電条件、チャンバのスペース等の観点から、直径が100〜1000mmφの範囲、特に100〜700mmφの範囲が好ましい。直径が100mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量がフィルム(樹脂基材12)にかかることを回避でき、残留応力が大きくなりにくく好ましい。一方、直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
また、このようなプラズマCVD装置に用いる送り出しローラー14、ならびに搬送ローラー15、16、17および18としては、公知のローラーを適宜選択して用いることができる。また、巻取りローラー25としても、ガスバリア層26を形成した樹脂基材12を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
ガス供給管21および真空ポンプとしては、原料ガスおよび酸素ガスを所定の速度で供給または排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管21と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に効率良く成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
さらに、プラズマ発生用電源22としては、従来公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源22は、これに接続された成膜ローラー19と成膜ローラー20とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWの範囲とすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲とすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置23および24としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
図1に示すようなプラズマCVD装置を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、磁場発生装置の強度、真空チャンバ内の圧力、成膜ローラーの直径、並びに、樹脂基材の搬送速度を適宜調整することにより、本発明に係るガスバリア性フィルムを製造することができる。すなわち、図1に示すプラズマCVD装置を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバ内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19および20)間に、磁場を発生させながらプラズマ放電を行うことにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー19上の樹脂基材12の表面上および成膜ローラー20上の樹脂基材12の表面上に、本発明に係るガスバリア層がプラズマCVD法により形成される。なお、このような成膜に際しては、樹脂基材12が送り出しローラー14や成膜ローラー19等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより樹脂基材12の表面上にガスバリア層が形成される。
ガス供給管21から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガス等を単独または2種以上組み合わせて用いることができる。ガスバリア層の形成に用いる成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリア層の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。
このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。
これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性および得られるガスバリア層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。中でも、本実施形態の膜組成に容易に調整できることから、原料ガスとして有機ケイ素化合物を含むことが好ましい。
また、成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができ、簡便性の観点から酸素を用いることが好ましい。また、その他、窒化物を形成するための反応ガスを用いてもよく、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスとを含有する場合には、原料ガスと反応ガスとの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことで、形成されるガスバリア層によって、優れたガスバリア性や耐屈曲性を得ることができる点で優れている。また、成膜ガスが有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
以下、前記成膜ガスとして、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機ケイ素化合物、HMDSO、(CH3)6Si2O)と、反応ガスとしての酸素(O2)を含有するものとを用い、ケイ素−酸素系の薄膜を製造する場合を例に挙げて、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスとの好適な比率等について、より詳細に説明する。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CH3)6Si2O)と、反応ガスとしての酸素(O2)と、を含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させてケイ素−酸素系の薄膜を作製する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1)で表されるような反応が起こり、二酸化ケイ素が生成する。
このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまう(炭素分布曲線が存在しない)ため、炭素を含有するガスバリア層を形成することができなくなってしまう。そのため、ガスバリア層を形成する際には、上記反応式(1)の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくすることが好ましい。なお、実際のプラズマCVDチャンバ(成膜チャンバ)内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素とは、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる(例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある)。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。
このような比で、ヘキサメチルジシロキサンおよび酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がガスバリア層中に取り込まれる。なお、有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバ内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電ガスを用いてもよい。このようなキャリアガスおよび放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
本発明に係るガスバリア層を得るために、キャリアガスの種類および流量を適宜選択することが好ましい。アルゴンなどの希ガスは電離性が高く、キャリアガスとして用いることにより、ガスバリア層形成の際の気相反応を活性化し、ガスバリア層の緻密化および架橋度の向上をもたらす。より好ましくは、アルゴンガスを用いる。また、その流量比は、アルゴンガス:有機ケイ素化合物=0.1:1〜2:1であることが好ましく、アルゴンガス:有機ケイ素化合物=0.2:1〜2:1であることがより好ましい。
真空チャンバ内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5Pa〜100Paの範囲とすることが好ましい。
図1に示すようなプラズマCVD装置等を用いたプラズマCVD法においては、成膜ローラー19および20間に放電するために、プラズマ発生用電源22に接続された電極ドラムに印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概にいえるものでないが、0.1〜10kWの範囲内とすることが好ましい。このような範囲の印加電力であれば、パーティクル(不正粒子)の発生も見られず、成膜時に発生する熱量も制御範囲内であるため、成膜時の樹脂基材の表面温度の上昇による、樹脂基材の熱変形、熱による性能劣化や成膜時の皺の発生もない。また、熱で樹脂基材が溶けて、裸の成膜ローラー間に大電流の放電が発生することによる成膜ローラーに対する損傷等を防止することができる。
樹脂基材12の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲内とすることがより好ましい。ライン速度が前記範囲内であれば、樹脂基材の熱に起因する皺も発生し難く、形成されるガスバリア層の層厚も十分に制御可能となる。
該ガスバリア層は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。該ガスバリア層が2層以上の積層構造である場合、各ガスバリア層は同じ組成であっても異なる組成であってもよい。
上記のような製造方法で得られる本発明に係るガスバリア層において、ASTMD7187 05に基づいて測定される臨界荷重は、2.0μN以上であることが好ましく、4.0μN以上であることがより好ましい。かような範囲の臨界荷重を有することにより、ガスバリア性フィルムの機械的強度が向上する。このような臨界荷重は、上記のアルゴンガスの流量や真空度、電力などを制御することにより制御することができる。
〔各機能層〕
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいては、上記説明したガスバリア層の他に、必要に応じて、各機能層を設けることができる。
<オーバーコート層>
本発明に係るガスバリア層の上には、屈曲性を改善する目的で、オーバーコート層を形成してもよい。オーバーコート層の形成に用いられる有機物としては、有機モノマー、オリゴマー、ポリマー等の有機樹脂、有機基を有するシロキサンやシルセスキオキサンのモノマー、オリゴマー、ポリマー等を用いた有機無機複合樹脂を好ましく用いることができる。これらの有機樹脂または有機無機複合樹脂は、重合性基や架橋性基を有することが好ましく、これらの有機樹脂または有機無機複合樹脂を含有し、必要に応じて重合開始剤や架橋剤等を含有する有機樹脂組成物塗布液から塗布形成した層に、光照射処理や熱処理を加えて硬化させることが好ましい。
〔アンダーコート層(平滑層)〕
本発明に係る支持体は、樹脂基材のガスバリア層を有する面、好ましくは樹脂基材とガスバリア層との間にアンダーコート層(平滑層)を有していてもよい。アンダーコート層(平滑層)は突起等が存在する樹脂基材の粗面を平坦化するために、あるいは、樹脂基材に存在する突起により、ガスバリア層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。また、樹脂基材とガスバリア層との接着性(密着性)の向上を目的として設けられる。
このようなアンダーコート層は、いずれの材料で形成されてもよいが、炭素含有ポリマーを含むことが好ましく、炭素含有ポリマーから構成されることがより好ましい。すなわち、本発明に係るガスバリア性フィルムは、支持体とガスバリア層との間に、炭素含有ポリマーを含むアンダーコート層をさらに有することが好ましい。
また、アンダーコート層は、炭素含有ポリマー、好ましくは硬化性樹脂を含む。前記硬化性樹脂としては特に制限されず、活性エネルギー線硬化性材料等に対して紫外線等の活性エネルギー線を照射し硬化させて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂や、熱硬化性材料を加熱することにより硬化して得られる熱硬化性樹脂等が挙げられる。該硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
アンダーコート層の形成に用いられる活性エネルギー線硬化性材料としては、例えば、アクリレート化合物を含有する組成物、アクリレート化合物とチオール基を含有するメルカプト化合物とを含有する組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを含有する組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製の紫外線硬化性材料である有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズ(シリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物)を用いることができる。また、上記のような組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している活性エネルギー線硬化性材料であれば特に制限はない。
アンダーコート層の形成方法は、特に制限はないが、硬化性材料を含む塗布液をスピンコート法、スプレー法、ブレードコート法、ダイコート法、ディップコート法、グラビア印刷法等のウエットコーティング法、または蒸着法等のドライコーティング法により塗布し塗膜を形成した後、可視光線、赤外線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等の活性エネルギー線の照射および/または加熱により、前記塗膜を硬化させて形成する方法が好ましい。活性エネルギー線を照射する方法としては、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い、好ましくは100〜400nm、より好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射する方法が挙げられる。
アンダーコート層の平滑性は、JIS B0601:2001で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、3nm以上30nm以下であることが好ましい。
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
アンダーコート層の膜厚としては、特に制限されないが、0.1〜10μmの範囲が好ましい。
<クリアハードコート層(CHC層)>
本発明のガスバリア性フィルムは、クリアハードコート層を有していてもよいし有していなくてもよい。しかしながら、ガスバリア性能や密着性が向上する観点から、本発明のガスバリア性フィルムはクリアハードコート層を有することが好ましい。クリアハードコート層は、樹脂基材とガスバリア層との密着性向上、高温高湿下での樹脂基材およびガスバリア層の膨張・収縮の差から生じる内部応力の緩和、ガスバリア層を設ける下層の平坦化、樹脂基材からのモノマー、オリゴマー等の低分子量成分のブリードアウト防止等の機能を有する。よって、クリアハードコート層を有するガスバリア性フィルムは、高温高湿環境下においても、さらに長期間安定したガスバリア性能や密着性を有する。クリアハードコート層は好ましくは樹脂基材のガスバリア層を有する面、より好ましくは樹脂基材とガスバリア層との間に設けられる。
具体的に、クリアハードコート層は、感光性樹脂組成物を樹脂基材上に塗布した後、硬化させることによって形成されうる。また、樹脂基材として、クリアハードコート層付きの樹脂基材を用いることによっても、本発明のガスバリア性フィルムはクリアハードコート層を有することになる。該ハードコート層は、上記アンダーコート層と同じ材料を用いてもよい。
上記感光性樹脂組成物は、通常、感光性樹脂、光重合開始剤、および溶媒を含む。感光性樹脂としては、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーを含有している感光性樹脂であれば特に限定されず、単独でもしくは2種以上混合された公知のものが用いられる。光重合開始剤としては、使用する感光性樹脂に合わせて、単独でもしくは2種以上混合された公知のものが用いられる。溶媒としては、使用する感光性樹脂を溶解または分散できるものであれば特に限定されず、単独でもしくは2種以上混合された公知のものが用いられる。例えば、特開2013−226673号公報の段落「0170」〜「0173」に開示される感光性樹脂、光重合開始剤、溶媒等が適宜採用される。
また、感光性樹脂組成物には、必要に応じてさらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、無機粒子、感光性樹脂以外の樹脂等の添加剤が添加されていてもよい。
これらのうち、好ましい添加剤の1つは、表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」とも称する)である。前記光重合性を有する感光性基としては、特に制限されないが、例えば(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基が挙げられる。反応性シリカ粒子が有する光重合性を有する感光性基と、感光性樹脂が有する重合性不飽和基とが反応することによってガスバリア層との密着性が向上しうる。
前記反応性シリカ粒子としては、例えば、特開2013−226673号公報の段落「0175」〜「0178」に開示される反応性シリカ粒子が適宜採用される。
また、感光性樹脂組成物はマット剤を含んでもよい。マット剤を含有することによって光学特性が調整されうる。マット剤としては、例えば、特開2013−226673号公報の段落「0180」〜「0182」に開示されるマット剤が適宜採用される。
さらに感光性樹脂組成物は、感光性樹脂以外の樹脂を含んでもよい。当該感光性樹脂以外の樹脂としては、特に制限されないが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。
また、感光性樹脂組成物は、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、例えばJSR株式会社製のOPSTAR(登録商標)シリーズ(シリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物)等が挙げられるが、これらに限定されない。
感光性樹脂組成物の樹脂基材への塗布方法としては、特に制限されないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等の湿式コーティング法、または蒸着法等の乾式コーティング法が挙げられる。
塗布によって得られた塗膜を電離放射線を照射して硬化させることによりクリアハードコート層が形成されうる。なお、電離放射線は、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる好ましくは100〜400nm、より好ましくは200〜400nmの波長領域の真空紫外光、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線が使用されうる。また、照射条件は、それぞれのランプによって異なるが、紫外光の照射量は、通常0.05〜3J/cm2の範囲であり、0.8〜2J/cm2の範囲であることが好ましい。
クリアハードコート層の膜厚(乾燥膜厚)としては、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜7μmである。また、クリアハードコート層の算術平均表面粗さ(Ra)は、1μm以下であることが好ましい。
また、上述のように、予めクリアハードコート層が形成されている市販の樹脂基材を用いてもよい。そのような樹脂基材の例としては、例えば、株式会社きもと製、商品名「KBフィルム GSAB」等が挙げられる。
[用途]
本発明のガスバリア性フィルムは、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく用いることができる。前記デバイスの例としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等の電子デバイスを挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、有機EL素子または太陽電池に好ましく用いられ、有機EL素子に特に好ましく用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1:ガスバリア性フィルム1の作製〕
(樹脂基材の準備)
クリアハードコート層付きの透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(略称:PETフィルム、厚さ:125μm、幅:350mm、株式会社きもと製、商品名「KBフィルム GSAB」)を、樹脂基材として用いた。クリアハードコート層の厚さは4μm、クリアハードコート層の算術平均表面粗さ(Ra)は0.4〜0.5μmであった。
(ガスバリア層の形成:ローラーCVD法)
図1に記載の磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(ローラーCVD法)を用い、樹脂基材のクリアハードコート層を有する面とは反対側の面(AB層)が成膜ローラーと接触するようにして、樹脂基材を装置に装着し、下記の成膜条件(プラズマCVD条件1)によりガスバリア層を、層厚が300nmとなる条件で成膜し、ガスバリア性フィルム1を作製した。カソード電極に電圧を印加する電源としては、27.12MHzの高周波電源を用いた。
〈プラズマCVD条件1〉
原料ガス(HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O2)の供給量:500sccm
アルゴンガスの供給量:40sccm
真空チャンバ内の真空度:2Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:1kW
プラズマ発生用電源の周波数:84kHz
電極間距離:20mm
ロール温度:30℃
樹脂基材の搬送速度:2m/min。
〈元素分布プロファイルの測定〉
上記成膜条件で形成したガスバリア層について、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向のガスバリア層の表面からの距離に対する、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線を得た。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+)
エッチングレート(SiO2熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO2換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポットおよびそのサイズ:800×400μmの楕円形。
以上のようにして測定したガスバリア層の全層領域におけるケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線より、各元素組成における連続変化領域の有無、極値の有無、炭素の原子比率の最大値と最小値の差、ならびにケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の平均原子比率を求めた。
その結果、組成における連続変化領域および極値が有り、炭素の原子比率の極大値と極小値との差の絶対値が7at%であり、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の平均原子比率が、全層厚の90%以上の領域で、式(A)および式(B)で規定する関係を満たしていることを確認した。
〔Si−C結合の変化率〕
多重反射(ATR)測定装置(日本分光株式会社製、ATR−300/H)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光株式会社製、Herchel FT−IR610)を用い、ガスバリア層のIR測定を実施した。プリズムはGe結晶を用い、入射角45°で測定した。
測定により得られたIRスペクトルの810〜825cm−1に現れたピークをSi−C結合伸縮振動とし、吸収強度を測定した。また、TEM断面により絶対膜厚を算出した。その測定したIR吸収強度と算出した絶対膜厚とを用い、IR強度/絶対膜厚を算出し、単位膜厚当たりのIR吸収強度を算出した。85℃85%RH環境下で300時間保存したガスバリア性フィルムと、保存前のガスバリア性フィルムとについて、Si−C結合の吸収強度を同様の方法により測定し、以下の式により保存前後でのSi−C結合の変化率[%]を算出した。その結果、Si−C結合の変化率は8%であった。
〔実施例2:ガスバリア性フィルム2の作製〕
アルゴンガスの供給量を50sccmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム2を作製した。
上記と同様にして、XPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向のガスバリア層の表面からの距離に対する、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線を得た。
その結果、組成における連続変化領域および極値が有り、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の平均原子比率が、全層厚の90%以上の領域で、式(A)および(B)で規定する関係を満たしていることを確認した。Si−C結合の変化率は5%であった。
〔実施例3:ガスバリア性フィルム3の作製〕
アルゴンガスの供給量を25sccmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム3を作製した。
上記と同様にして、XPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向のガスバリア層の表面からの距離に対する、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線を得た。
その結果、組成における連続変化領域および極値が有り、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の平均原子比率が、全層厚の90%以上の領域で、式(A)および(B)で規定する関係を満たしていることを確認した。Si−C結合の変化率は10%であった。
〔実施例4:ガスバリア性フィルム4の作製〕
アルゴンガスの供給量を12.5sccmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム4を作製した。
上記と同様にして、XPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向のガスバリア層の表面からの距離に対する、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線を得た。
その結果、組成における連続変化領域および極値が有り、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の平均原子比率が、全層厚の90%以上の領域で、式(A)および(B)で規定する関係を満たしていることを確認した。Si−C結合の変化率は13%であった。
〔実施例5:ガスバリア性フィルム5の作製〕
アルゴンガスの供給量を75sccmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム5を作製した。
上記と同様にして、XPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向のガスバリア層の表面からの距離に対する、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線を得た。
その結果、組成における連続変化領域および極値が有り、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の平均原子比率が、全層厚の90%以上の領域で、式(A)および式(B)で規定する関係を満たしていることを確認した。Si−C結合の変化率は4%であった。
〔比較例1:ガスバリア性フィルム6の作製〕
アルゴンガスの供給量を4sccmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム6を作製した。
上記と同様にして、XPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向のガスバリア層の表面からの距離に対する、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線を得た。Si−C結合の変化率は25%であった。
〔比較例2:ガスバリア性フィルム7の作製〕
樹脂基材のクリアハードコート層を形成した面とは反対側の面(AB層)がロールと接触するようにして、樹脂基材を装置に装着し、下記の成膜条件(プラズマCVD条件2)によりガスバリア層を、層厚が300nmとなる条件で成膜し、ガスバリア性フィルム7を作製した。カソード電極に電圧を印加する電源としては、84MHzの高周波電源を用いた。
〈プラズマCVD条件2〉
原料ガス(HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O2)の供給量:500sccm
アルゴンガスの供給量:40sccm
成膜装置内の真空度:2Pa
電極ドラムに印加する電力:3kW
電極間距離:50mm
ロール温度:40℃
電源周波数:90kHz
樹脂基材の搬送速度:2m/min。
上記と同様にして、XPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向のガスバリア層の表面からの距離に対する、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線を得た。その結果、組成(炭素分布曲線、ケイ素分布曲線、および酸素分布曲線)における連続変化領域および極値が存在せず、炭素原子比率の極大値と極小値の差が0at%であった。Si−C結合の変化率は20%であった。
〔比較例3:ガスバリア性フィルム8の作製〕
アルゴンガスを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム8を作製した。
上記と同様にして、XPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向のガスバリア層の表面からの距離に対する、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線を得た。Si−C結合の変化率は21%であった。
〔比較例4:ガスバリア性フィルム9の作製〕
アルゴンガスを使用しなかったこと以外は、比較例2と同様にして、ガスバリア性フィルム9を作製した。
上記と同様にして、XPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向のガスバリア層の表面からの距離に対する、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、および炭素分布曲線を得た。その結果、組成(炭素分布曲線、ケイ素分布曲線、および酸素分布曲線)における連続変化領域および極値が存在せず、炭素原子比率の極大値と極小値の差が0at%であった。Si−C結合の変化率は25%であった。
《ガスバリア性フィルム試料の評価》
上記で作製したガスバリア性フィルム試料1〜9について、85℃85%RHの300時間の保存前後における下記物性の評価を行った。
〔ガスバリア性(透過水分量(WVTR))の評価〕
以下の測定方法に従って、各ガスバリア性フィルム試料の透過水分量を測定し、下記の基準に従って、水蒸気バリア性を評価した。
試料のガスバリア層面に、真空蒸着装置(日本電子株式会社製、真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性フィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウム(粒状)を蒸着させた(蒸着膜厚80nm)。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面に水蒸気不透過性の金属である金属アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)をもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
なお、ガスバリア性フィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な85℃、85%RHの高温高湿下保存を行い、300時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
以上により測定された各ガスバリア性フィルムの透過水分量をCa法によって評価し、以下のようにランク付けした。なお、ランク3以上であれば実使用上問題なく、合格品である。
(ランク評価)
5:1×10−4g/m2/day未満
4:1×10−4g/m2/day以上、5×10−4g/m2/day未満
3:5×10−4g/m2/day以上、1×10−3g/m2/day未満
2:1×10−3g/m2/day以上、1×10−2g/m2/day未満
1:1×10−2g/m2/day以上
〔密着性〕
JIS K5600−5−6:1999に基づき、クロスカット法により、樹脂基材とガスバリア層との密着性を下記基準で評価した。評価基準が3以上であれば、実用上問題ない。
(評価基準)
5:剥離後のマス目が90以上
4:剥離後のマス目が70以上90未満
3:剥離後のマス目が50以上70未満
2:剥離後のマス目が30以上50未満
1:剥離後のマス目が30未満。
〔ナノスクラッチ試験 臨界荷重(膜強度)の測定〕
ASTMD7187 05に基づき、ガスバリア層の臨界荷重を測定した。Hysitron社製「Triboscope system」を使用し、圧子には先端曲率半径が約1μmのダイヤモンド製60°コニカル(円錐形)を使用した。圧子の状態は、標品としてアルバック・ファイ株式会社製SiO2熱酸化膜25nm/Siウェハを測定した場合、垂直変位(Normal Displacement)4nmのとき、垂直方向荷重(Normal Force)57μNであった。測定は、試料台(支持体)にガスバリア性フィルムを吸着固定し、負荷速度約1μN/sec、スクラッチ速度約133nm/secの連続荷重試験条件で、n=3以上の測定を行い、臨界荷重の平均値を算出した。
(評価基準)
5:臨界荷重の平均値が5.0μN以上
4:臨界荷重の平均値が3.0μN以上5.0μN未満
3:臨界荷重の平均値が1.5μN以上3.0μN未満
2:臨界荷重の平均値が0.7μN以上1.5μN未満
1:臨界荷重の平均値が0.7μN未満。
各ガスバリア性フィルムの構成および評価結果を下記表1に示す。なお、表1中の要件(1)および(2)の項は、○であればその要件を満たすことを、×であればその要件を満たさないことを、それぞれ示す。
上記表1から明らかなように、本発明のガスバリア性フィルムは、85℃85%RHという高温高湿環境下においても、長期間安定したガスバリア性能や密着性を有することがわかった。