以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の放熱性電気・電子部品用熱可塑性樹脂組成物(以下、「熱可塑性樹脂組成物」と記載する場合がある。)は、(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)ガラス繊維を配合してなる。
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂とは、アミド結合を有する高分子からなる樹脂のことであり、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするものである。本発明の熱可塑性樹脂組成物にポリアミド樹脂を配合することにより、耐熱性、機械的強度および射出成形時の流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。かかる熱可塑性樹脂組成物を放熱性電気・電子部品(以下、「電気・電子部品」と記載する場合がある。)に適用することにより、成形品薄肉部への充填率、落下耐性、スクラッチ耐性を高めることができる。
ポリアミド樹脂の原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム;テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン;アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを2種以上配合してもよい。
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂は、200〜300℃の融点を有する耐熱性に優れたポリアミド樹脂である。ここで融点とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下、溶融状態から20℃/分の降温速度で20℃まで降温して2分間保持した後、20℃/分の昇温速度で昇温した際に現れる吸熱ピークの温度と定義する。融点の異なる複数のポリアミド樹脂を併用する場合、最も融点の高いポリアミド樹脂の融点が200〜300℃であることが好ましい。融点が200℃以上のポリアミド樹脂を配合することにより、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。例えば、コネクター等の電気・電子部品に電極をつないで長時間電気を流した場合、場合によっては200℃付近にまで発熱するが、耐熱性の高い熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、電気・電子部品の熱劣化を抑制することができ、長時間使用後の落下耐性も向上させることができる。ポリアミド樹脂の融点は220℃以上がより好ましい。一方、最も融点が高いポリアミド樹脂の融点を300℃以下とすることにより、溶融混練および射出成形時に、ポリアミド樹脂の劣化および水酸化マグネシウムの脱水反応を抑制することができるため、熱可塑性樹脂組成物を射出成形して作製した電気・電子部品内の空洞の形成などを抑制して、成形品の充填率と熱伝導率をより向上させることができる。ポリアミド樹脂の融点は280℃以下がより好ましい。
ポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリデカンアミドコポリマー(ポリアミド6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンアジパミドコポリマー(5T/56)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド/ポリ2−メチル−1,8−オクタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド9T/M8T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド10T/66)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカミドコポリマー(ポリアミド10T/612)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。ここで「/」は共重合体を示し、以下同じである。これらのポリアミド樹脂を、機械的物性、流動性、離型性、表面外観、耐熱性などの必要特性に応じて2種以上配合することも実用上好適である。
これらの中でも、ポリアミド6/66、ポリアミド66/6I、ポリアミド66/6I/6、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/12、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T/M5T、ポリアミド9T/M8T、ポリアミド10T/66、ポリアミド10T/612は、機械的強度、射出成形時の流動性、溶融粘度の剪断速度依存性、成形時の離型性、成形品の表面外観、耐熱性(加熱後の落下耐性)の特性をバランス良く発現できるため好ましく使用される。ポリアミド66/6I、ポリアミド66/6I/6、ポリアミドMXD6がさらに好ましく使用され、ポリアミド66/6I/6が最も好ましく使用される。
ポリアミド樹脂の合計100重量%中、ポリアミド66/6I/6を70〜100重量%含むことが好ましい。ポリアミド樹脂中のポリアミド66/6I/6の含有量が70重量%以上であれば、機械的強度、射出成形時の流動性、溶融粘度の剪断速度依存性、成形時の離型性、表面外観、落下耐性の特性をよりバランス良く発現できる。80重量%以上がより好ましい。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限はないが、相対粘度が1.5〜2.8であることが好ましい。ここでいう相対粘度とは、ポリアミド樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃の条件でオストワルド式粘度計を用いて測定した値をいう。複数のポリアミド樹脂を併用する場合、ポリアミド樹脂全体としての相対粘度が1.5〜2.8であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度をより高くすることができ、成形品の落下耐性やスクラッチ耐性がより向上する。1.7以上がより好ましい。一方、相対粘度が2.8以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を適切な範囲に抑えて流動性をより向上させ、射出成形時の成形品のバリをより低減することができ、また薄肉かつ複雑形状の電気・電子部品に用いても、特にウエルド部分の強度が高く、落下耐性がより向上する。2.4以下がより好ましい。
本発明に用いられる(B)水酸化マグネシウムとしては、化学式Mg(OH)2で示される無機物を80重量%以上含む純度の高い水酸化マグネシウムが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物に水酸化マグネシウムを配合することにより、熱可塑性樹脂組成物に熱伝導率、溶融粘度の剪断速度依存性を付与し、成形時の離型性を向上させることができる。熱伝導率、溶融粘度の剪断速度依存性、離型性をより向上させる点から、Mg(OH)2で示される無機物を80重量%以上含み、CaO含量5重量%以下、塩素含量1重量%以下である高純度水酸化マグネシウムがより好ましく、Mg(OH)2を98重量%以上含み、CaO含量0.1重量%以下、塩素含量0.1重量%以下である高純度水酸化マグネシウムがさらに好ましい。
本発明に用いられる水酸化マグネシウムの形状は、粒子状、フレーク状、繊維状いずれでもよいが、押出溶融混練時のフィード性、分散性などの観点から、粒子状、フレーク状が好ましい。また、その粒子径に関して特に限定はないが、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度、熱伝導率、溶融粘度の剪断速度依存性、離型性をより向上させる点から、レーザー回折法によって測定した平均粒子径が0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、0.3〜4μmの範囲のものがより好ましい。
水酸化マグネシウムは、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物、ステアリン酸、オレイン酸、モンタン酸、ステアリルアルコールなどの長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールなどにより表面処理が施されていてもよい。特に、エポキシシラン化合物および/またはアミノシラン化合物により表面処理が施された水酸化マグネシウムは、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度をより高めることができるため、好ましく使用される。
本発明に用いられる(C)ガラス繊維は、特に制限はなく、公知のものが使用できる。本発明の熱可塑性樹脂組成物にガラス繊維を配合することにより、機械的強度、離型性、耐熱性を高めることができる。ガラス繊維は、所定長さにカットしたチョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバーなどの形状のものがあるが、いずれを使用してもよい。繊維径は特に制限はないが、4〜11μmのものが好ましい。繊維径が4μm以上であれば、成形品薄肉部への充填率を高めることができる。一方、11μm以下であれば、熱可塑性樹脂組成物中のガラス繊維の本数を多くすることができ、ガラス繊維による補強効果が得られやすくなることから、機械的強度を高めることができる。ここで、ガラス繊維の繊維径とは、各ガラス繊維の繊維径の数平均値を指し、以下の方法により求めることができる。SEM(走査型電子顕微鏡)を使用してガラス繊維の断面(繊維の長さ方向に対して直角な面)を観察し、最大径と最小径を測定し、その平均値を各ガラス繊維の繊維径とする。無作為に選んだ10本のガラス繊維の繊維径の数平均値を算出することにより、ガラス繊維の繊維径を求めることができる。チョップドストランドを使用する場合、繊維長に特に制限はないが、押出混練作業性の高いストランド長3mmのガラス繊維が好ましく使用される。ロービングストランドを使用する場合、押出機にロービングストランドを直接投入する公知の技術により複合することができる。これらのガラス繊維を2種以上併用してもよい。
ガラス繊維は、公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤を用いて表面処理することが好ましく、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができる。シラン系カップリング剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシランなどが挙げられる。
また、ガラス繊維は、集束剤(結束剤)で被覆されていることが好ましく、溶融混練する際の作業性を向上させることができる。さらに、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度をより向上させる効果を発現する場合もある。集束剤(結束剤)としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル酸系樹脂、アミノ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウム、(C)ガラス繊維の配合量は、(A)と(B)と(C)の合計を100重量%として、(A)ポリアミド樹脂25〜45重量%、(B)水酸化マグネシウム25〜74重量%、(C)ガラス繊維1〜40重量%である。
(A)ポリアミド樹脂の配合量が25重量%より少ないと、得られる熱可塑性樹脂組成物の機械的強度、射出成形時の流動性、成形品の表面外観が低くなり、成形品の落下耐性やスクラッチ耐性も低下する。30重量%以上がより好ましい。一方、ポリアミド樹脂の配合量が45重量%より多いと、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率、離型性が悪くなる。40重量%以下がより好ましい。
(B)水酸化マグネシウムの配合量が25重量%より少ないと、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率、溶融粘度の剪断速度依存性が小さくなる。30重量%以上がより好ましい。一方、水酸化マグネシウムの配合量が74重量%より多いと、溶融混練で良好なペレットを採取することができなくなる。60重量%以下がより好ましい。
(C)ガラス繊維配合量が1重量%より少ないと、得られる熱可塑性樹脂組成物の機械的強度、離型性、耐熱性が低くなり、成形品の落下耐性やスクラッチ耐性も低下する。10重量%以上がより好ましい。一方、ガラス繊維の配合量が40重量%より多いと、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率、射出成形時の流動性、表面外観が悪くなる。35重量%以下がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱流計法で測定した熱伝導率が1W/m・K以上である必要がある。熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が1W/m・K未満であると、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるコネクター等の電気・電子部品に電極をつけて電気を流した場合、発生する熱は熱可塑性樹脂組成物を伝わって空気中に放熱されにくいため、電気・電子部品が熱劣化する。このため、長時間使用後には、例えば落下させたときの割れなどが発生しやすくなり、落下耐性が低減する。ここで、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率とは、熱可塑性樹脂組成物を射出成形することにより角板成形品(50mm×50mm×厚み3mm、フィルムゲート)を作製し、この成形品の両表面を深さ0.5mm切削して厚さ2mmの試験片としたものを用いて、熱流計法熱伝導率測定装置(リガク株式会社製、GH−1S)により測定して得られる熱伝導率を指す。熱伝導率は1.2W/m・K以上であることがより好ましい。例えば、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)ガラス繊維を前述のように特定量配合することにより、上記の熱伝導率を満足する熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、下記(I)〜(III)の全てを満足する必要がある。
(I)前記熱可塑性樹脂組成物から抽出したポリアミド樹脂の、0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃における相対粘度が1.5〜2.8。
(II)前記熱可塑性樹脂組成物の融点が200〜300℃。
(III)前記熱可塑性樹脂組成物の融点と降温結晶化温度の差が45〜70℃。
(I)に関し、熱可塑性樹脂組成物から抽出したポリアミド樹脂の、0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃における相対粘度は、前述の、熱可塑性樹脂組成物に配合されるポリアミド樹脂の相対粘度にほぼ等しい。複数のポリアミド樹脂を併用する場合、配合されるポリアミド樹脂全体としての相対粘度にほぼ等しい。相対粘度が1.5より小さいと、得られる熱可塑性樹脂組成物の機械的強度が低くなり、成形品の落下耐性やスクラッチ耐性が低下する。また、高剪断速度領域での溶融粘度が低下するため、製品取りのため下限圧以上で成形すると、例え、下限圧+10kgf/cm2であっても、バリ長さが大きくなる。1.7以上がより好ましい。一方、相対粘度が2.8より大きいと、得られる熱可塑性樹脂組成物の射出成形時の流動性、溶融粘度の剪断速度依存性が低下し、射出成形時にバリが生じやすくなる。2.4以下がより好ましい。例えば、所望の相対粘度を有するポリアミド樹脂を配合することにより、上記(I)を満足する熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
ここで、熱可塑性樹脂組成物から抽出したポリアミド樹脂の相対粘度は、以下の方法で測定する。熱可塑性樹脂組成物のペレット10gを、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)100mLに浸漬して24時間撹拌した後、ガラスフィルターでろ過してろ液を回収する。その後、ろ液中の溶媒(HFIP)をエバポレートして除去し、残存したポリアミド樹脂を回収して、80℃で24時間以上真空乾燥する。その乾燥品を使用して、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸中、25℃の条件でオストワルド式粘度計を用いて、相対粘度(ηr)を測定する。
(II)に関し、熱可塑性樹脂組成物の融点とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下、溶融状態から20℃/分の降温速度で20℃まで降温して2分間保持した後、20℃/分の昇温速度で昇温した際に現れる吸熱ピークの温度と定義する。但し、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、最も温度の高いピークを融点とする。熱可塑性樹脂組成物の融点は、前述の、熱可塑性樹脂組成物に配合される最も融点の高いポリアミド樹脂の融点にほぼ等しい。熱可塑性樹脂組成物の融点が200℃より低いと、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低いものとなる。例えば、コネクター等の電気・電子部品に電極をつないで長時間電気を流した場合、場合によっては200℃付近にまで発熱するため、電気・電子部品が熱劣化し、長時間使用後の落下耐性が大きく低下する。融点は220℃以上であることが好ましい。一方、融点が300℃を超える場合、溶融混練および射出成形時に、ポリアミド樹脂の劣化および水酸化マグネシウムの脱水反応が進行し、熱可塑性樹脂組成物を射出成形して作製した成形品内に空洞が形成されて、成形品の充填率と熱伝導率が低下する。また、機械的強度が低下するため、落下耐性やスクラッチ耐性が低下する。融点は270℃以下が好ましい。例えば、所望の融点を有するポリアミド樹脂を配合することにより、上記(II)を満足する熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
ここで、熱可塑性樹脂組成物の融点は、以下の方法で測定する。示差走査熱量計(セイコーインスツル製、ロボットDSC−RDC220)を用い、熱可塑性樹脂組成物のペレットを約5mg採取して、窒素雰囲気下で測定する。溶融状態から20℃/分の降温速度で20℃まで降温して2分間保持した後、20℃/分の昇温速度で昇温した際に現れる吸熱ピークの温度を融点とする。
(III)に関し、熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化温度とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で、熱可塑性樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂の融点+30℃まで昇温して2分間保持した後、20℃/分の降温速度で20℃まで降温した際に現れる発熱ピークの温度と定義する。但し、発熱ピークが2つ以上検出される場合には、最も温度の低いピークを降温結晶化温度とする。熱可塑性樹脂組成物の融点と降温結晶化温度の差が45℃よりも小さいと、射出成形時に金型内で結晶化しやすく、成形品充填率が低くなる。また射出成形時に高圧で充填させる必要があるため、バリの長さも大きくなる。さらに、射出成形時に金型内で結晶化しやすいため、複雑な成形品の場合にはウエルド強度も低くなり、落下させたときに割れやすくなる。また、表面外観も悪くなる。熱可塑性樹脂組成物の融点と降温結晶化温度の差は48℃以上であることがより好ましい。また熱可塑性樹脂組成物の融点と降温結晶化温度の差が70℃よりも大きいと、射出成形時の金型からの離型性が悪くなる。熱可塑性樹脂組成物の融点と降温結晶化温度の差は65℃以下であることがより好ましい。
ここで、熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化温度は、以下の方法で測定する。示差走査熱量計(セイコーインスツル製、ロボットDSC−RDC220)を用い、熱可塑性樹脂組成物のペレットを約5mg採取して、窒素雰囲気下で測定する。20℃/分の昇温速度で、熱可塑性樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂の融点+30℃まで昇温して2分間保持した後、20℃/分の降温速度で20℃まで降温した際に現れる発熱ピークの温度を降温結晶化温度とする。例えば、前述の(A)ポリアミド樹脂に、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)ガラス繊維を前述の特定量配合することにより、上記(III)を満足する熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量から換算したポリアミド樹脂の降温結晶化熱量が20〜55J/gであることが好ましい。20J/g以上であれば、射出成形時の金型からの離型性をより高めることができる。30J/g以上であることがより好ましい。一方、55J/g以下であれば、射出成形時の流動性、表面外観がより良好となる。50J/g以下がより好ましい。例えば、前述の(A)ポリアミド樹脂に、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)ガラス繊維を前述の特定量配合することにより、上記の降温結晶化熱量を満足する熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
ここで、熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量から換算したポリアミド樹脂の降温結晶化熱量は、以下の方法で求める。前記した(III)における熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化温度の測定の際に現れる発熱ピークの総熱量を、熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量(J/g)と定義する。また、前記した(I)におけるポリアミド樹脂の相対粘度の測定方法において回収したポリアミド樹脂量を測定し、この値×10を熱可塑性樹脂組成物中に含有されるポリアミド樹脂含有量(重量%)と定義する。熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量から換算したポリアミド樹脂の降温結晶化熱量(J/g)は、下記式により算出する。
(熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量から換算したポリアミド樹脂の降温結晶化熱量)=100×(熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量)/(熱可塑性樹脂組成物中に含有されるポリアミド樹脂含有量)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)(B)(C)の配合量規定と、(I)(II)(III)の規定により、熱伝導率、機械的物性、射出成形時の流動性、溶融粘度の剪断速度依存性、離型性、表面外観、耐熱性のバランスを高度に発現させている。
特に本発明の熱可塑性樹脂組成物は、溶融粘度の剪断速度依存性が大きく、射出成形時の剪断速度に相当する高剪断速度領域(1216sec−1付近)での溶融粘度が低いにもかかわらず、低剪断速度領域(24sec−1付近)では溶融粘度が高いことが特徴である。この特徴は、例えば、前述の(A)ポリアミド樹脂に、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)ガラス繊維を前述の特定量配合することにより得ることができる。射出成形においては、高剪断速度領域での溶融粘度は低い方が、低圧で充填可能となるため、金型の固定側と可動側の分割面(パーティングライン:PL)に発生するバリ長さを小さくすることができる。さらに射出成形においては、成形品の流動末端では、低剪断速度で樹脂が充填されるが、低剪断速度領域の溶融粘度は高い方が、バリ長さを小さくすることができる。従って、高剪断速度領域での溶融粘度が低く、低剪断速度領域での溶融粘度が高い本発明の熱可塑性樹脂組成物は、バリ長さを著しく低減することが可能となる。さらに成形下限圧(最低充填圧力)以上で成形品の製品取りをする場合も、圧力をかけすぎてもバリ長さが大きくなりにくく、すなわち、適当に射出成形しても同様な成形品を採取できるため、成形時のプロセスウインドウを広く取ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の1216sec−1(高剪断速度領域)における溶融粘度は、250Pa・s以下であることが好ましく、200Pa・s以下であることがより好ましい。また、本発明の熱可塑性樹脂組成の24sec−1(低剪断速度領域)における溶融粘度と1216sec−1(高剪断速度領域)における溶融粘度の比は、3.5以上であることが好ましく、3.8以上であることがより好ましい。例えば、前述の(A)ポリアミド樹脂に、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)ガラス繊維を前述の特定量配合することにより、上記の溶融粘度比を満足する熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、前記(A)(B)(C)以外の成分を配合しても構わない。
例えば、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、(A)ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合してもよい。(A)ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂を2種以上配合することも可能である。かかる熱可塑性樹脂を用いる場合、その配合量は、特に制限はないが、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、0.1〜400重量部が好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、ゴム質重合体を配合してもよい。ゴム質重合体とは、ガラス転移温度が室温より低い重合体であって、分子間の一部が共有結合・イオン結合・ファンデルワールス力・絡み合い等により、互いに拘束されている重合体を指す。ゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、ブタジエン/イソプレン共重合体などのジエン系ゴム、エチレン/プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン/ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン/α−オレフィンの共重合体、エチレン/アクリル酸エステル、エチレン/メタクリル酸エステルなどのエチレン/不飽和カルボン酸エステル共重合体、ブチルアクリレート/ブタジエン共重合体などのアクリル酸エステル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのエチレン/脂肪酸ビニル共重合体、エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/ヘキサジエン共重合体などのエチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合体、ブチレン/イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、(A)ポリアミド樹脂との相溶性の観点から、エチレン/不飽和カルボン酸エステル共重合体が好ましく用いられる。不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルである。(メタ)アクリル酸エステルの具体的な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
前記ゴム質重合体は、(A)ポリアミド樹脂との反応性の観点から、反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、オキサゾリン基、水酸基、イソシアネート基、メルカプト基、スルホン酸基等が挙げられる。これらを2種以上有してもよい。これらの中でも、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、オキサゾリン基は反応性が高く、しかも分解、架橋などの副反応が少ないため好ましく用いられる。反応性官能基をゴム質重合体に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、反応性官能基を有する単量体とゴム質重合体の原料である単量体とを共重合する方法、反応性官能基を有する化合物をゴム質重合体にグラフトさせる方法などを用いることができる。
かかるゴム質重合体を2種類以上配合することも可能である。かかるゴム質重合体を用いる場合、その配合量は、特に制限はないが、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、0.1〜400重量部が好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、(C)ガラス繊維以外の無機充填材を配合してもよい。(C)ガラス繊維以外の無機充填材としては、例えば、炭素繊維、酸化チタン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状無機充填材、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの金属珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などの非繊維状無機充填材が挙げられ、これらは中空であってもよい。また、これら無機充填材は、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理されていてもよい。かかる無機充填材は2種類以上併用することも可能である。かかる無機充填材を用いる場合、その配合量は、特に制限はないが、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、0.1〜400重量部配合が好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、各種添加剤を配合してもよい。各種添加剤としては、例えば、結晶核剤、着色防止剤、酸化防止剤(熱安定剤)、耐候剤、離型剤、可塑剤、滑剤、染料系着色剤、顔料系着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤などを挙げることができる。これらを2種以上配合してもよい。その配合量に特に制限はないが、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、0.01〜20重量部配合されることが好ましい。
酸化防止剤(熱安定剤)としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ヒドロキノン系化合物、リン系化合物およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ化化合物などが好ましく使用される。特にヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物が好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−t−ブチル−(5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。中でも、アミド型高分子ヒンダードフェノールタイプが好ましく、具体的には、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]が好ましく用いられる。
リン系化合物の具体例としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイトなどのホスファイト系化合物;3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。
耐候剤としては、レゾルシノール系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物などが好ましく使用される。
離型剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどが好ましく使用される。
可塑剤としては、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミドなどが好ましく使用される。
染料系着色剤としては、ニグロシン、アニリンブラックなどが好ましく使用される。
顔料系着色剤としては、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなどが好ましく使用される。
帯電防止剤としては、アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどの非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤などが好ましく使用される。
難燃剤としては、メラミンシアヌレート、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、ホスフィン酸アルミニウム、ポリリン酸メラミン、ホウ酸亜鉛、赤リン、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせなどが好ましく使用される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用でき、生産性の観点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールによる溶融混練等が使用でき、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等が挙げられる。これらの押出機を複数組み合わせてもよい。混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機がより好ましい。
二軸押出機を用いた溶融混練方法としては、例えば、(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウム、(C)ガラス繊維および必要に応じて(A)(B)(C)以外の成分を予備混合して、シリンダー温度が(A)ポリアミド樹脂の融点以上に設定された二軸押出機に供給して溶融混練する手法が挙げられる。原料の混合順序に特に制限はなく、全ての原料を上記の方法により溶融混練する方法、一部の原料を上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原料を配合して溶融混練する方法、あるいは一部の原料を溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウムおよび必要により(A)(B)(C)以外のその他成分を押出機根元(原材料が供給される側を上流、溶融樹脂が吐出される側を下流とし、スクリューの上流側端部の位置)から投入して溶融混練後、サイドフィーダーを用いて(C)ガラス繊維を押出機途中から投入し、溶融混練する方法が好ましい。また押出機途中で真空状態に曝して発生するガスを除去する方法も好ましく使用される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常の成形方法(射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、インジェクションプレス成形など)により、溶融成形することが可能である。なかでも量産性の点から射出成形、インジェクションプレス成形により成形することが好ましく、射出成形により成形することが最も好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、放熱性電気・電子部品用途に好ましく使用される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形時の流動性に優れるため、例えば、図1に示すような薄肉かつ複雑形状の電気・電子部品を成形する場合でも、充填率を高くすることが可能であり、成形不良を低減できる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形時の流動性、溶融粘度の剪断速度依存性に優れるため、射出成形時のバリが少なく、かつ射出成形時のプロセスウインドウを広く取ることができ、図1に示すような薄肉かつ複雑形状の電気・電子部品を成形する場合でも、成形不良を低減できる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、金型からの離型性に優れるため、図1に示すような薄肉かつ複雑形状の電気・電子部品の離型性も良好である。さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いることで、表面外観に優れる電気・電子部品を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的強度、射出成形時の流動性に優れ、かつ融点と降温結晶化温度の差が適度に大きいため、例えば、図1に示すような薄肉かつ複雑形状の電気・電子部品に用いても、成形品の強度、特にウエルド部分の強度が高く、落下させたときの割れも抑制でき落下耐性を付与できる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱伝導率および耐熱性(融点)に優れるため、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる図1に示すようなコネクター成形品に電極をつないで電気を流しても、発生する熱が熱可塑性樹脂組成物を伝わって空気中に放熱されるため、コネクター成形品の熱劣化が抑制され、長時間使用後に落下させたときの割れも抑制できる。さらに、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる図1に示すようなコネクター成形品に電極を複数回抜き差ししても、スクラッチ耐性に優れるため削れ量を抑制できる。
本発明の放熱性電気・電子部品としては、例えば、コネクター、リレーケース、リレーベース、リレー用スプール、スイッチ、コイル、センサー、各種ギヤー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、サーマルプロテクター、コンピューター関連部品などに代表される電子部品、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、パソコン部品、パソコン筐体、携帯電話部品、携帯電話筐体、スマートフォン部品、スマートフォン筐体、電池部品、電池筐体などに代表される家庭・事務用電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連電気部品、顕微鏡部品、双眼鏡部品、カメラ部品、時計部品などに代表される光学機器・精密機械関連電気部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ周辺の電気部品、燃料関係・冷却系・ブレーキ系・ワイパー系・排気系・吸気系各種パイプ・ホース・チューブ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、燃料タンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、電池周辺部品、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、トランスミッション用オイルパン、トランスミッション用オイルフィルター、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクター等の各種コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルパン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウォッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、インストルメントパネル、エアバッグ周辺部品、ドアパッド、ピラー、コンソールボックス、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプベゼル、ドアハンドル、ドアモール、リアフィニッシャー、ワイパーなどの自動車・車両関連周辺の電気部品などに用いることができ、特にコネクター、リレー、スイッチ、パソコン筐体、携帯電話筐体、電池筐体などに有用である。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例に用いたポリアミド樹脂(A)は以下の通りである。なお、ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸中、25℃の条件でオストワルド式粘度計を用いて測定した。
(A−1):融点228℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド66/6I/6(=76/17/7重量%)樹脂。
(A−2):融点228℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.70のポリアミド66/6I/6(=76/17/7重量%)樹脂。
(A−3):融点228℃、密度1.13g/cm3、相対粘度1.60のポリアミド66/6I/6(=76/17/7重量%)樹脂。
(A−4):融点228℃、密度1.13g/cm3、相対粘度3.00のポリアミド66/6I/6(=76/17/7重量%)樹脂。
(A−5):融点228℃、密度1.13g/cm3、相対粘度1.40のポリアミド66/6I/6(=76/17/7重量%)樹脂。
(A−6):融点225℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド6/66(=20/80重量%)樹脂。
(A−7):融点220℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド66/6I(=70/30重量%)樹脂。
(A−8):融点240℃、密度1.22g/cm3、相対粘度2.00のポリアミドMXD6樹脂。
(A−9):融点295℃、密度1.10g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド10T/612(=91/9重量%)樹脂。
(A−10):融点222℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド6樹脂。
(A−11):融点215℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド6/66(=95/5重量%)樹脂。
(A−12):融点215℃、密度1.13g/cm3、樹相対粘度3.40のポリアミド6/66(=95/5重量%)樹脂。
(A−13):融点190℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド6/66(=80/20重量%)樹脂。
(A−14):融点244℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド6/66(=10/90重量%)樹脂。
(A−15):ポリアミド6T/6I樹脂(エムスケミー・ジャパン株式会社製、グリボリーG21)。融点、降温結晶化温度は観察されず。
(A−16):融点153℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド6/66/610(=40/35/35重量%)樹脂。
(A−17):融点264℃、密度1.14g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド6T/M5T/6I(=32/48/20重量%)樹脂。
(A−18):融点310℃、密度1.14g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド6T/66(=65/35重量%)樹脂。
実施例および比較例に用いた水酸化マグネシウム(B)は以下の通りである。
(B−1):密度2.36g/cm3、Mg(OH)2で示される無機物含有量が99.7重量%、レーザー回折法によって測定した平均粒子径が0.83μmの水酸化マグネシウム「“KISUMA”(登録商標)5EU」(協和化学工業株式会社製)
実施例および比較例に用いたガラス繊維(C)は以下の通りである。
(C−1):繊維径10.5μm、密度2.55g/cm3のガラス繊維「T−275H」(日本電気硝子株式会社製)。
実施例および比較例に用いた(A)(B)(C)以外の成分は以下の通りである。
(D−1):赤リン「“ノーバエクセル”(登録商標)140」(燐化学工業株式会社製)。
(E−1):熱安定剤「IR1098」(N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド])(BASF製)。
実施例および比較例における評価は、以下の方法により行った。
(1)熱可塑性樹脂組成物から抽出したポリアミド樹脂の相対粘度の評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレット10gを、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)100mLに浸漬して24時間撹拌した後、ガラスフィルターでろ過してろ液を回収した。その後、ろ液中の溶媒(HFIP)をエバポレートして除去し、残存したポリアミド樹脂を回収して、80℃で24時間以上真空乾燥した。その乾燥品を使用して、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸中、25℃の条件でオストワルド式粘度計を用いて、相対粘度(ηr)を測定した。
(2)熱可塑性樹脂組成物の融点と降温結晶化温度の評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを約5mg採取して、示差走査熱量計(セイコーインスツル製、ロボットDSC−RDC220)を用いて、窒素雰囲気下で融点および降温結晶化温度を測定した。熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化温度は、20℃/分の昇温速度で、配合したポリアミド樹脂の融点+30℃まで昇温して2分間保持した後、20℃/分の降温速度で20℃まで降温した際に現れる発熱ピークの温度とした。但し、発熱ピークが2つ以上検出される場合には、最も温度の低いピークを降温結晶化温度とした。また、熱可塑性樹脂組成物の融点は、示差走査熱量計を用いて、溶融状態から20℃/分の降温速度で20℃まで降温して2分間保持した後、20℃/分の昇温速度で昇温した際に現れる吸熱ピークの温度とした。但し、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、最も温度の高いピークを融点とした。
(3)熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量から換算したポリアミド樹脂の降温結晶化熱量の評価
(2)において熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化温度を評価した際に現れる発熱ピークの総熱量を熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量(J/g)とした。また(1)において、熱可塑性樹脂組成物から回収したポリアミド樹脂量を測定し、この値×10を熱可塑性樹脂組成物中に含有されるポリアミド樹脂含有量(重量%)とした。ここで、熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量から換算したポリアミド樹脂の降温結晶化熱量(J/g)を、下記式により算出した。
(熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量から換算したポリアミド樹脂の降温結晶化熱量)=100×(熱可塑性樹脂組成物の降温結晶化熱量)/(熱可塑性樹脂組成物中に含有されるポリアミド樹脂含有量)
(4)テストピースでの熱伝導率の評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、表1および表3に記載のシリンダー温度(融点+50℃)、金型温度に設定し、下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2の条件で射出成形して角板成形品(50mm×50mm×厚み3mm、フィルムゲート)を作製し、この成形品の両表面を深さ0.5mm切削して厚さ2mmの試験片としたものを用いて、熱流計法熱伝導率測定装置(リガク株式会社製、GH−1S)により熱伝導率を測定した。この値が高いほど、熱伝導性に優れることを示す。
(5)テストピースでの引張強度の評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、表1および表3に記載のシリンダー温度(融点+50℃)、金型温度に設定し、下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2の条件で射出成形してASTM1号ダンベルを作製し、オートグラフAG−2000C(株式会社島津製作所製)を用いて、ASTM−D638に従い、23℃、50%RHの雰囲気下で引張試験を行い引張強度を測定した。
(6)テストピースでの曲げ弾性率の評価
(5)に記載の方法で作製したASTM1号ダンベルについて、テンシロンRTA1T(株式会社オリエンテック製)を用いて、ASTM−D790に従い、23℃、50%RHの雰囲気下で曲げ試験を行い曲げ弾性率を測定した。
(7)テストピースでの衝撃強度の評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、表1および表3に記載のシリンダー温度(融点+50℃)、金型温度に設定し、下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2の条件で射出成形して1/8インチノッチ付きIzod衝撃試験片を作製し、ASTM−D256に従い、23℃、50%RHの雰囲気下でIzod衝撃試験を行い衝撃強度を測定した。
(8)溶融粘度の評価
キャピログラフ1C(東洋精機株式会社製)を用いて、表1および表3に記載の射出成形におけるシリンダー温度(融点+50℃)と同じ温度に設定し、長さ10mm、直径1mmのキャピラリーを用いて、実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを5分間溶融滞留させた後の、剪断速度24sec−1と1216sec−1における溶融粘度を測定した。
(9)テストピースでの離型性の評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、表1および表3に記載のシリンダー温度(融点+50℃)、金型温度に設定し、下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2の条件でASTM1号ダンベルを100ショット連続成形した際の、成形品が金型に張り付いた個数で評価した。なお、金型に張り付いて離型しなかった場合は、成形品を取り除いた後、金型に離型スプレー(ダイキン工業株式会社製 ダイフリーGA−7500)を塗布して射出成形を再開した。少ないほど離型性が良好であることを示す。
(10)テストピースでの光沢度の評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、表1および表3に記載のシリンダー温度(融点+50℃)、金型温度に設定し、鏡面仕上げの80mm×80mm×厚み1mmの金型を使用して、下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2の条件で射出成形して角板を作製した。次にJIS−Z−8741に基づいて、デジタル変角光沢計(スガ試験機株式会社製、UGV−5D)を用いて、入射角60℃の光沢度を測定した。この値が高いほど、光沢度に優れることを示す。
(11)テストピースでの難燃性の評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、表1および表3に記載のシリンダー温度(融点+50℃)、金型温度に設定し、下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2の条件で射出成形して1/16インチ(1.6mm)厚みの燃焼試験片を得た。前記の燃焼試験片を用いて、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2の順に低下しランク付けされる。また、燃焼性に劣り上記のV−2に達せず、上記の難燃性ランクに該当しなかった材料は規格外とした。
(12)コネクター成形品の充填率の評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、表1および表3に記載のシリンダー温度(融点+50℃)、金型温度に設定し、下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2の条件で、図1に示すコネクター成形品1を射出成形した。コネクター成形品1は、図1に示す端子間ピッチ(Lp)が2mm、製品の最小肉厚部(Lt)(隔壁部3)が1mm、外形寸法が幅10mm×高さ3mm×長さ40mmのコネクター型の長尺成形品である。コネクター成形品1の片側の短尺面2に設置したピンゲートG1(ゲート径1mm)から樹脂を充填し、コネクター成形品1を得た。
成形品の比重を比重測定装置(島津製作所社株式会社製、AUW320/SMK−401)で測定し、10個の平均値を成形品比重とした。理論比重は、各配合材料の密度を元に算出し、下記式より、成形品充填率(%)を算出した。なお、この値が高いほど、薄肉部への充填率に優れることを示す。
成形品充填率=(成形品比重/理論比重)×100
(13)コネクター成形品のバリ長さの評価(成形時のプロセスウインドウ評価)
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、表1および表3に記載のシリンダー温度(融点+50℃)、金型温度に設定し、下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2および下限圧(最低充填圧力)+40kgf/cm2の条件で、図1に示すコネクター成形品1を射出成形した。この時、図2に示すスプルーAおよびランナーBを経由して、ピンゲートG1から射出成形されたコネクター成形品1の流動末端に発生するバリCの長さを測定した。なお、バリ長さは小さいほど良く、さらに下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2で射出成形したときのバリ長さと下限圧(最低充填圧力)+40kgf/cm2で射出成形したときのバリ長さの差が小さいほど、適当に射出成形しても同様な成形品を採取できるため、成形時のプロセスウインドウが広く良好であることを示す。
(14)コネクター成形品の離型性評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、表1および表3に記載のシリンダー温度(融点+50℃)、金型温度に設定し、下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2の条件で、図1に示すコネクター成形品1を20ショット連続成形した際の、成形品が金型に張り付いた個数で評価した。なお、金型に張り付いて離型しなかった場合は、成形品を取り除いた後、金型に離型スプレー(ダイキン工業株式会社製 ダイフリーGA−7500)を塗布して射出成形を再開した。個数が少ないほど離型性が良好であることを示す。
(15)コネクター成形品の表面外観の評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、表1および表3に記載のシリンダー温度(融点+50℃)、金型温度に設定し、下限圧(最低充填圧力)+10kgf/cm2の条件で、図1に示すコネクター成形品1を射出成形し、得られた成形品の天井面4の鮮明度を肉眼で観察し、以下の基準で評価した。
○:蛍光灯の反射像が輪郭まで明瞭に観察される。
△:蛍光灯の反射像が不明瞭ながらも観察される。
×:蛍光灯の反射像が観察できない。
(16)コネクター成形品の落下耐性の評価
(12)に記載の方法により図1に示すコネクター成形品1を射出成形し、得られた成形品にコネクター電極を差し込み、1mの高さから繰り返し落下させたときの、成形品が割れるまでの落下回数を測定した。尚、評価は成形直後およびコネクター電極に100V電圧を流し熱が加わってから2万時間経過後に行った。落下回数が大きいほど落下耐性が良好であることを示す。
(17)スクラッチ耐性の評価
(12)に記載の方法により図1に示すコネクター成形品1を射出成形し、得られた成形品にコネクター電極の抜き差しを1万回繰り返した際の擦れによる粉塵量を測定した。粉塵量が少ないほどスクラッチ耐性が良好であることを示す。
実施例1〜11、比較例1〜15
表1および表3に示す配合組成で各成分を予備混合し、窒素フローを行いながら、スクリュー径が30mm、スクリューが2条ネジの2本のスクリューである、L/D=35の同方向回転完全噛み合い型二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX−30α)を使用し、表1および表3に示すシリンダー温度に設定し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hで溶融混練を行い、吐出口(L/D=35)よりストランド状の溶融樹脂を吐出した。その際のスクリュー構成は、L/D=7、16、25の位置から始まる3箇所のニーディングゾーンを設け、各ニーディングゾーンの長さLk/Dは、順番にLk/D=3.0、3.0、3.0とした。さらに各ニーディングゾーンの下流側に、逆スクリューゾーンを設け、各逆スクリューゾーンの長さLr/Dは、順番にLr/D=0.5、0.5、0.5とした。また、スクリュー全長に対する前記ニーディングゾーンの合計長さの割合(%)を、(ニーディングゾーンの合計長さ)÷(スクリュー全長)×100により算出すると、26%であった。さらに、L/D=23の位置にサイドフィーダーを設置し、(C)ガラス繊維を除く全ての原料を押出機根元(L/D=1の位置)(原材料が供給される側を上流、溶融樹脂が吐出される側を下流とし、スクリューの上流側端部の位置を0%、スクリューの下流側端部の位置を100%とした場合、3%の位置)から投入し、(C)ガラス繊維を押出機途中(L/D=23の位置)(原材料が供給される側を上流、溶融樹脂が吐出される側を下流とし、スクリューの上流側端部の位置を0%、スクリューの下流側端部の位置を100%とした場合、66%の位置)から投入した。ベント真空ゾーンをL/D=30の位置に設け、ゲージ圧力−0.1MPaで揮発成分の除去を行った。ダイヘッドを通過して4mmφ×2ホールから吐出された溶融樹脂をストランド状に引いて冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより引取りながら裁断することにより、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットを80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記した評価を行った。各種評価結果を表1〜4に示す。
実施例1〜11の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形時の剪断速度に相当する高剪断速度領域(1216sec−1)での溶融粘度が低く、射出成形時の流動性に優れ、図1に示すような薄肉部分を多数持つコネクター成形品を成形する場合でも、充填率を高くすることが可能であり、成形不良を低減できる。
また、実施例1〜11の熱可塑性樹脂組成物は、溶融粘度の剪断速度依存性が大きく、前記した通り、高剪断速度領域(1216sec−1)では溶融粘度が低いが、低剪断速度領域(24sec−1)では溶融粘度が高く、バリ長さを著しく抑制可能となる。さらに下限圧以上で製品取りをする場合も、圧力をかけすぎてもバリ長さが大きくなりにくく、すなわち、適当に射出成形しても同様な成形品を採取できるため、成形時のプロセスウインドウを広く取ることができる。
また、実施例1〜11の熱可塑性樹脂組成物は、金型からの離型性にも優れるため、コネクターのような複雑成形品でも連続生産性に優れる。実施例1〜11で使用しているポリアミド樹脂をベース樹脂として使用すると、一般には金型からの離型性が不良となることが知られている(比較例14)が、本発明では、水酸化マグネシウムとガラス繊維を特定量配合することにより、離型性を発現させている。
また、実施例1〜11の熱可塑性樹脂組成物は、高い光沢度を示すため、表面外観に優れたコネクター成形品を得ることができる。
また、実施例1〜11の熱可塑性樹脂組成物は、強度・剛性・耐衝撃性が高い他に、射出成形時の流動性に優れ、かつ融点と降温結晶化温度の差が適度に大きいため、複雑な形状のコネクター成形品でもウエルド部分の強度が高く、落下耐性にも優れる。
さらに、コネクター電極に電気を流しても、発生する熱が熱可塑性樹脂組成物を伝わって空気中に放熱されるため、コネクター成形品の劣化が抑制され、長時間使用後の落下耐性も優れる。
また、実施例1〜11の熱可塑性樹脂組成物は、強度・剛性・耐衝撃性が高いため、コネクター電極抜き差しでの擦れによる削れ量も少なく、スクラッチ耐性に優れる。
比較例1は、相対粘度の高いポリアミド樹脂を使用した熱可塑性樹脂組成物であるため、高剪断速度領域(1216sec−1)での溶融粘度が高く、コネクター成形時の流動性が乏しくなり、充填率が低くなることがわかる。また、コネクター成形時に高圧で充填させるため、バリの長さも大きくなることがわかる。さらに、コネクター成形時の流動性が乏しいため、ウエルド強度も低くなり、落下耐性も低いことがわかる。
比較例2は、相対粘度の低いポリアミド樹脂を使用した熱可塑性樹脂組成物であるため、強度・剛性・耐衝撃性が低く、コネクター成形品の落下耐性およびスクラッチ耐性が低いことがわかる。また、高剪断速度領域(1216sec−1)での溶融粘度は低いため、コネクター成形品の充填率は高いが、製品取りのため下限圧以上で成形すると、高剪断速度領域での溶融粘度が低すぎるため、例え、下限圧+10kgf/cm2であっても、バリ長さが大きくなることがわかる。
比較例3〜4、7は、融点と降温結晶化温度の差が小さい熱可塑性樹脂組成物であるため、金型内で結晶化しやすく、充填率が低くなることがわかる。また、コネクター成形時に高圧で充填させる必要があるため、バリの長さも大きくなることがわかる。また、溶融粘度の剪断速度依存性が小さいため、下限圧+10kgf/cm2と下限圧+40kgf/cm2で成形したときに発生するバリ長さの差が大きく、成形時のプロセスウインドウが狭いことがわかる。さらに、結晶化しやすいため、ウエルド強度も低くなり、落下耐性も低いことがわかる。また表面外観も不十分であることもわかる。
比較例5は、比較例4で使用したポリアミド樹脂を相対粘度の高い高分子量タイプに置き換えたものである。高分子量タイプにすることで、融点と降温結晶化温度の差は大きくなるが、溶融粘度が高くなるため、コネクター成形時の流動性が乏しくなり、充填率が低くなることがわかる。またコネクター成形時にさらに高圧で充填させる必要があるため、バリの長さも大きくなることがわかる。また射出成形時の流動性がさらに乏しくなるため、ウエルド強度も低くなり、落下耐性も低くなることがわかる。また表面外観も比較例3、4と比較すると改善されているが、未だ不十分であることがわかる。
比較例6は、共重合比率の高いポリアミド樹脂を使用した融点の低い熱可塑性樹脂組成物であるが、金型からの離型性が著しく悪くなることがわかる。また、コネクター電極に長時間電気を流した場合、熱可塑性樹脂組成物が一部劣化し、長時間使用後の落下耐性が大きく低下することがわかる。
比較例8、9は、半芳香族非結晶性ポリアミドを一部添加した熱可塑性樹脂組成物であるが、溶融粘度が高いため、コネクター成形時の流動性が乏しくなり、また融点と降温結晶化温度の差が小さいため、金型内で結晶化しやすく、充填率が低く、ウエルド強度および落下耐性も低いことがわかる。またコネクター成形時に高圧で充填させるため、バリの長さも大きくなることがわかる。
比較例10は、降温結晶化温度を示さない熱可塑性樹脂組成物(融点と降温結晶化温度が70℃より大きい)であるが、金型からの離型性が著しく悪いことがわかる。
比較例11は、融点と降温結晶化温度の差が大きい熱可塑性樹脂組成物であるが、金型からの離型性が著しく悪いことがわかる。
比較例12は、融点の高いポリアミド樹脂を使用した熱可塑性樹脂組成物であるが、溶融混練時に、ポリアミド樹脂および水酸化マグネシウムの分解に由来するガスが多量に発生した。その結果、強度・耐衝撃性が低くなり、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるコネクター成形品の落下耐性およびスクラッチ耐性が低いことがわかる。
比較例13は、ポリアミド樹脂およびガラス繊維量が少なく、水酸化マグネシウム量を多くした例であるが、溶融混練で良好なペレットを採取することができなかった。
比較例14は、水酸化マグネシウム量が少なく、ガラス繊維量の多い熱可塑性樹脂組成物であるが、溶融粘度が高いため、コネクター成形時の流動性が乏しくなり、充填率が低くなることがわかる。また、コネクター成形時に高圧で充填させるため、バリの長さも大きくなることがわかる。また、実施例と比較して、離型性も悪いことがわかる。さらに、熱伝導率が低いため、コネクター電極に長時間電気を流した場合、発生する熱を空気中に放熱することができず、熱可塑性樹脂組成物が一部劣化し、長時間使用後の落下耐性が低下することがわかる。
比較例15は、ガラス繊維を配合していない熱可塑性樹脂組成物であるが、熱可塑性樹脂組成物の強度・耐衝撃性が低いため、コネクター成形品の落下耐性およびスクラッチ耐性が低いことがわかる。