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JP2015020940A - 過酸化水素合成方法 - Google Patents

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JP2015020940A
JP2015020940A JP2013152163A JP2013152163A JP2015020940A JP 2015020940 A JP2015020940 A JP 2015020940A JP 2013152163 A JP2013152163 A JP 2013152163A JP 2013152163 A JP2013152163 A JP 2013152163A JP 2015020940 A JP2015020940 A JP 2015020940A
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暢之 間瀬
Nobuyuki Mase
暢之 間瀬
貞人 井上
Sadato Inoue
貞人 井上
松本 純一
Junichi Matsumoto
純一 松本
良一 赤石
Ryoichi Akaishi
良一 赤石
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Shizuoka University NUC
Osaka Organic Chemical Industry Co Ltd
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Shizuoka University NUC
Osaka Organic Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

【課題】過酸化水素を,これを利用しようとする工業施設,危険性のない比較的低濃度の過酸化水素水の形で,低コスト,簡便且つ高率的に製造が行える手段の提供。
【解決手段】過酸化水素含有水溶液の製造方法であって,(a)アントラヒドロキノン誘導体の有機溶媒溶液を容器内に準備するステップであって,該有機溶媒が水と非混和性のものであるステップと,(b)該溶液に,常圧下に,酸素ガスをナノバブルの形で連続注入して該溶液中に酸素ガスのナノバブルが分散された状態を維持することにより,該溶液中の該アントラヒドロキノン誘導体をアントラキノン誘導体へと酸化させるステップと,(c)酸素ガスの注入を停止し,該容器内に水を加えて該溶液と混合するステップと,(d)該容器内の混合物を静置し有機溶媒相と水相とを2層に分離させるステップと,(e)該容器から水相を回収するステップとを含んでなる,製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は,過酸化水素の合成方法に関し,より詳しくは,過酸化水素を利用しようとする工業施設で必要時に必要量を製造〔オンサイト(on-site)製造〕するのに適した,過酸化水素の簡便で効率的な製造方法に関する。
過酸化水素(H)は,酸素よりも酸化還元電位が高く、幅広い基質を酸化することができ,工業的には,漂白,排水処理,消毒,洗浄の用途で主に使用されている。酸化反応に用いたときの過酸化水素の共生成物は水のみであるから,無害であり,環境に負荷をかけず,また反応試薬として有効酸素割合が高い(無駄がない)という利点も有する。
過酸化水素の工業的製造は,主としてアントラキノン法によっている。この方法は,アントラヒドロキノン誘導体が酸素ガスによりアントラキノン誘導体へと自動酸化される性質を利用し,対反応として起こる酸素の還元による過酸化水素発生を利用したものである。アントラキノン法では,具体的には,アントラヒドロキノン誘導体を有機溶媒溶液中,例えば30〜60℃の温度で,常圧(1気圧)の酸素ガスと接触させてアントラキノン誘導体へと自動酸化させる際に酸素が還元されて生ずる過酸化水素を水で抽出し,次いでこれを減圧蒸留することにより,高濃度(約30 w/v%の水溶液)の過酸化水素水の形で過酸化水素が製造される。水による抽出後に有機溶媒中に残存するアントラキノン誘導体は,加圧及び加熱下(例えば4気圧,40〜50℃)での接触水素化反応によりアントラヒドロキノン誘導体へと再生され,過酸化水素の製造に再利用される。このように,工業製品としての過酸化水素の製造は,耐圧容器を必要とし,加熱・加圧の工程や抽出・減圧蒸留の工程を含み,また発生した副生成物の除去工程を含むなど,多段階のプロセスよりなる。
アントラキノン法の改良として,触媒としての貴金属−黒を含有する過酸化水素製造用アントラキノン法の水素化循環系の作動溶液から,触媒不含の作動溶液を分離する方法が知られている(特許文献1)。この方法は,特定のセラミック製フィルターカートリッジを使用し,フィルターの閉塞を起こすことなしに触媒の除去を可能にするものである。
アントラキノン法の改良として,有機作動溶液,酸素含有ガス及び水性抽出溶媒を一つの同一反応器に供給し,三相の混合体を形成させることにより,酸化と抽出を同一領域で行い,次いで反応器から出た反応液を相分離させて過酸化水素水溶液を回収するものであり,複数の反応器を一連に繋いで酸化反応を行わせることにより,生成される過酸化水素水溶液の濃度コントロールを可能にしたものが知られている(特許文献2)。
現在,工業用には,過酸化水素は30w/v%の水溶液(過酸化水素水)として生産・販売されている。過酸化水素は分解性であり,酸化力が強く,高濃度のものは爆発性があり消防法により危険物第6類(酸化性液体)に指定されており,大量に保有することにはリスクが伴う。このため,その製造施設の設置及び管理,運営にはコストがかかる。その上,6重量%を超える濃度の水溶液は毒物及び劇物取締法により指定された劇物であって輸送,取扱,貯蔵,譲渡等の行為が制約を受けることもあり,過酸化水素は,酸化剤として工業的に利用するには全体としてのコストが高くつく。上述のように環境に優しい優れた酸化剤として,より広範な種々の用途が考えられてはいるが,このような安全面確保に伴うコストの高さが,多方面に過酸化水素の工業的利用を拡張する上での大きな足枷となっており,これまでのところ工業的酸化剤としての使用は,限定的な用途に止まっている。
従って,より低コストで工業的に過酸化水素を利用できることに対する潜在的需要がある。
他方,アントラキノン法により過酸化水素を生成させ直接に酸化反応に用いることを開示した計算化学による文献が知られている(非特許文献1)。この文献では,アントラキノン法で生成させた過酸化水素を抽出し,メタノールを添加し,混合物を,アンモニアのシクロヘキサン溶液と混合してアンモキシデーションを行い,生成物を取り出し,これをアンモニアとシクロヘキサンオキシムへと分離することで,シクロヘキサンオキシムを製造できることが記載されている。但し,計算によるシミュレーションであり,実験的データはない。
また,2−エチルアントラキノンを接触水素化して生成させた2−エチルアントラヒドロキノンを含む有機層を,そのまま次の反応(自動酸化による2−エチルアントラキノンの再生と過酸化水素の生成)に利用することが知られている(非特許文献2)。
また,マイクロバブル或いはマイクロナノバブルと呼ばれる直径が数十μm〜数百nmの気泡を用いて,酸素によるアルコールの酸化反応や,Pd等の触媒を用いた接触水素化反応が,常温,常圧下に,機械的撹拌を要することなく効率的に進行することが知られている(非特許文献3〜7)。また,そのような微細な気泡を生じさせるための装置も知られ,複数のメーカーにより市販されている。
2−エチルアントラキノンを含有する溶液をマイクロリアクター中に流しつつ,マイクロリアクター内において,水素を含んだガスを濾過膜を介しマイクロバブルの形で溶液中に導入し,マイクロバブルを分散させた溶液を固定化された触媒のカラムに導入して2−エチルアントラヒドロキノンへと還元する方法が知られている(非特許文献8)。
過酸化水素の利用が可能な工業上の用途のうちには,高濃度の過酸化水素水である必要のないものも多くある。十分に低濃度の過酸化水素であれば,爆発の危険性はなく,劇物でもないため,危険物や劇物に対応させた特別の施設や管理を必要とせず,そのためのコストは生じない。また,過酸化水素を,これを利用しようとする工業施設で製造するのであれば,運送のコストも生じない。従って,過酸化水素の工業的利用を拡げるには,特別の施設を要しない低濃度の過酸化水素水を,これを利用する施設自体において必要な時に必要な量だけ,低コストで高率的に製造できるようにすることが望ましい。
特開平7−330311号公報 特開平8−325003号公報
T. Liu et al., Ind. Eng. Chem. Res., Vol. 43,p. 166-172 (2004). N. Zhou et al., Applied Catalysis A: General 250, p. 239-245 (2003). 酒井拓磨他,中部化学関係学協会連合秋季大会後援予稿集,第43巻第127頁(2012年) 酒井拓磨他,日本プロセス化学会サマーシンポジウム講演要旨集,第2012巻第254-255頁(2012年) 酒井拓磨他,日本プロセス化学会サマーシンポジウム講演要旨集,第2012巻第137-137頁(2012年) 間瀬暢之他,配管技術,第53巻第5号第48-52頁(2011年) N. Mase, et al., Chem. Commun, Vol. 47, p. 2086-2088 (2011). J. Tan et al., AIChE Journal, Vol. 58, No. 5, p. 1326-1335 (2012).
上記背景において,本発明の目的は,過酸化水素を,これを利用しようとする工業施設において製造(オンサイト製造)でき,しかも危険性のない比較的低濃度の過酸化水素水の形で,低コスト,簡便且つ高率的にそのような製造が行える手段を提供することである。
本発明者は,アントラキノン法における有機作動溶液を酸化及び還元する各反応において,それぞれ反応に用いる酸素ガス及び水素ガスを,1μmより小さい粒径を有する微細な気泡(ナノバブル)の形で有機作動溶液中に供給することにより,常温・常圧において,非常に効率的かつ安全にアントラキノン法の酸化・還元を実施でき,酸化後の有機作動溶液からの過酸化水素の水による抽出で非常に高い収率で過酸化水素水が得られることを見出した。以下に示す本発明は,これらの発見に基づき完成されたものである。
1.過酸化水素含有水溶液の製造方法であって,
(a)アントラヒドロキノン誘導体の有機溶媒溶液を容器内に準備するステップであって,該有機溶媒が水と非混和性のものであるステップと,
(b)該溶液に,常圧下に,酸素ガスをナノバブルの形で連続注入して該溶液中に酸素ガスのナノバブルが分散された状態を維持することにより,該溶液中の該アントラヒドロキノン誘導体をアントラキノン誘導体へと酸化させるステップと,
(c)酸素ガスの注入を停止し,該容器内に水を加えて該溶液と混合するステップと,
(d)該容器内の混合物を静置し有機溶媒相と水相とを2層に分離させるステップと,
(e)該容器から水相を回収するステップとを含んでなる,
製造方法。
2.ステップ(a)におけるアントラヒドロキノン誘導体の有機溶媒溶液が,
該容器内に入れられた対応するアントラキノン誘導体の有機溶媒溶液に,常圧下に,水素ガスをナノバブルの形で連続注入して該有機溶媒相中に水素ガスのナノバブルが分散された状態を維持しつつ,該有機溶媒相を,該容器外に配置された接触還元触媒に通して該容器との間で循環させて,該容器内の該有機溶媒相中の該アントラキノン誘導体をアントラヒドロキノン誘導体へと還元することにより準備されたものである,上記1の製造方法。
3.ステップ(e)を行った後に該容器中に残された該有機溶媒相に,常圧下に,水素ガスをナノバブルの形で連続注入して該有機溶媒相中に水素ガスのナノバブルが分散された状態を維持しつつ,該有機溶媒相を,該容器外に配置された接触還元触媒に通して該容器との間で循環させて,該容器内の該有機溶媒相中の該アントラキノン誘導体をアントラヒドロキノン誘導体へと還元することにより,該アントラヒドロキノン誘導体の有機溶媒溶液を該容器内に再生させるものであるステップ(f)を更に含んでなることを特徴とする,上記1又は2の製造方法。
4.ステップ(b)〜(f)が1回以上反復されるものである,上記3の製造方法。
5.該ナノバブルが,5nm以上1000 nm未満の粒子径を有する泡の個数が,泡の全個数の90%以上のものであることを特徴とする,上記1〜4の何れかの製造方法。
6.アントラヒドロキノン誘導体が,アントラヒドロキノンのアルキル誘導体である,上記1〜5の何れかの製造方法。
7.該アルキル誘導体のアルキル基が,炭素数1〜4個のアルキル基である,上記6の製造方法。
8.該アルキル基が,アントラヒドロキノンの2位の炭素に結合しているものである,上記6又は7の製造方法。
9.該有機溶媒が,炭素数1〜4のアルコールと酢酸とのエステルである,上記1〜8の何れかの製造方法。
本発明によれば,耐圧容器を必要とせず,過酸化水素を利用しようとする施設において簡単な設備のみを用い,常温・常圧で,安全面に懸念のない低濃度の過酸化水素水の形で,必要な量だけ随時効率よく製造(on-site製造)することが可能となる。低濃度の過酸化水素水である限り,爆発のリスクはなく,劇物にも該当しないため,取扱も容易でありまた,オンサイト製造では運送に起因するコストも生じない。また本発明によれば,用いるガスの利用率が非常に高いため,ガスの消費量を最小限に抑えることができる。
従って,本発明によれば,これまでコスト高を理由に他の酸化剤が使用されてきた産業分野にも,過酸化水素の利用を広げることができ,環境に対する負荷を低減させることができる。また,低濃度の過酸化水素水は,3%水溶液が傷口の消毒に医薬品(オキシドール)として用いられているように,安全性の高いものであり,かつ最終的に水と酸素に分解される酸化剤であるため,殺菌・消毒,漂白,有機合成等の種々の分野において,新しい有益な用途の開発を促すことができる。
更に,本発明によれば,過酸化水素を利用する工業施設において,必要時にオンサイト製造して直ちに使用することが可能であることから,過酸化水素水を貯蔵しておくことが不要となり,過酸化水素へ安定化剤(硝酸,リン酸等)の添加も不要となるため,過酸化水素水を使用して製造される製品へのそれらの不純物の混入防止が可能となる。
図1は,本発明で使用する装置の一例の概要図である。 図2は,上記装置における,作動溶液中のアントラキノン誘導体を還元するステップでの流体の流れを示す概要図である。 図3は,上記装置における,作動溶液中のアントラヒドロキノン誘導体を酸化するステップでの流体の流れを示す概要図である。 図4は,上記装置における,作動溶液から過酸化水素を抽出するステップでの流体の流れを示す概要図である。 図5は,上記装置で形成されるバブルの粒子径分布を示すグラフである。
本明細書において,「ナノバブル」とは,液体中の気体の微細な泡であって,泡の全個数に対して,5nm以上1000 nm未満の粒子径を有する泡の個数が90%以上であるものをいい,好ましくは,50〜500 nmの粒子径を有する泡の個数が90%以上であるものを,更に好ましくは,50〜400 nmの粒子径を有する泡の個数が90%以上であるものをいう。
本発明において,作動溶液の酸化反応及び還元反応は,加温下(例えば,約30℃)に行ってもよいが,その必要はなく,単に室温(例えば,10〜25℃等)にて十分に行うことができる。
作動溶液の調製に用いられる有機溶媒としては,アントラキノン誘導体及びアントラヒドロキノン誘導体を溶解させることができ,それら誘導体とナノバブルとの間の円滑な酸化・還元反応を妨げず,生じた過酸化水素を溶解させ,水とは混和しない有機溶媒が用いられる。そのような性質を有する有機溶媒であれば適宜選択して使用することができる。好ましい有機溶媒例としては,炭素数1〜6の脂肪族アルコールと酢酸とのエステルが挙げられ,例えば,酢酸エチル,酢酸プロピル,酢酸イソプロピル,酢酸イソブチル,酢酸n−ブチル,酢酸tert-ブチル等である。これらの溶媒を用いて調製された作動溶液は,従来使用されているキシレン/2−オクタノール等の混合溶媒の場合と異なり,作動溶液から過酸化水素を水で抽出する際,油相と水相とが明瞭な界面を形成して上下に分離するため,油相の混入のおそれなしに水相を実質上完全に回収できることから,ごく少ない抽出回数で過酸化水素のほぼ完全な抽出が可能となる。
作動溶液中のアントラキノン誘導体又はアントラヒドロキノンの濃度は,これら両化合物が完全に溶解した状態を維持できる濃度である限り,特に限定はなく,その範囲内で適宜設定することができる。例えば,2−エチルアントラキノン(2−エチルアントラヒドロキノン)を酢酸エチル又は酢酸n−ブチルに溶解させてなる作動溶液の場合,適した溶質濃度の一例は,0.32 mol/L(75.6 g/L)であるが,これに限られない。
アントラキノン誘導体のアントラヒドロキノン誘導体への還元には,アントラキノン法において周知の接触水素化触媒を適宜選択して用いてよい。好ましい触媒の一例は,Pd触媒である。本発明において,アルミナ粒子に担持された0.5 wt%Pd触媒を用いることができるが,これに限られない。
作動溶媒の酸化反応及び還元反応の時間の長さは,作動溶液中のアントラキノン誘導体量,及び作動溶液に対するナノバブルの時間あたり添加量に応じて,適宜設定すればよい。これは,作動溶液の酸化反応時には,例えば作動溶液の少量をサンプリングして過酸化水素濃度を定量することで行うことができ,作動溶液の還元反応時には,例えば,作動溶液の少量をサンプリングしてアントラヒドロキノン誘導体濃度を測定することにより行うことができる。還元反応は2〜4時間,酸化反応は1.5〜2時間等とすることができるが,これに限られない。
作動溶液に対するナノバブルの形態でのガス(水素又は酸素)の添加速度は適宜であってよいが,通常は,1分あたり作動溶液の1/30(体積/体積)付近に設定するのが好ましい。それにより,添加したガスが特に無駄なく反応に利用できるため,反応効率がより高まるからである。
以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
〔過酸化水素製造装置の構成〕
図1に,本発明を実施するための装置の一例の概要図を示す。図において,1は作動溶液用容器(80mL広口瓶)であり,2はナノバブル発生装置,3は流量制御装置,4は内部にアルミナ球状担持Pd触媒を収容した接触水素化触媒固定管,5は三方コックである。ナノバブル発生装置2と三方コック5とはパイプ6で連結されており,三方コック5からは,パイプ7が直接に作動溶液用容器1内へ延び,またパイプ9が間に接触水素化触媒固定管4を介して作動溶液用容器1内へ延びている。作動溶液用容器1からはナノバブル発生装置2へとパイプ8が延びている。流量制御装置3には,行わせる酸化反応,還元反応のそれぞれに応じて,酸素ガス又は水素ガスが供給される。流量制御装置3は,使用者に調節される所定の流量で,ナノバブル発生装置2へとガスを供給するように構成されている。ナノバブル発生装置2は,作動溶液用容器1内の液体をパイプ8を通して吸引し,水素ガス又は酸素ガスをナノバブルの形でこれに加えてから,三方コック5に向けて液体を吐出するように構成されている。
液体に加えるのが水素ガスの場合すなわち作動溶液の還元反応を行う場合には,三方コックは,パイプ9(接触水素化触媒側)に対して開き,パイプ7に対しては閉じておくように,手で操作される(図2)。また液体に加えるのが酸素ガスの場合すなわち作動溶液の酸化反応を行う場合には,三方コック5は,パイプ7に対して開き,パイプ9(触媒側)に対しては閉じておくように操作される(図3)。装置は,酸化反応後に作動溶液から過酸化水素を水で抽出するときに抽出装置として使用することもでき,その場合,作動溶液用容器は抽出容器として機能し,これに抽出用の水が加えられ,三方コックがパイプ7に対して開いた状態で,ナノバブル発生装置へのガス供給を遮断してナノバブル発生装置が,循環・撹拌装置として運転され(図4),それにより作動溶液と水とを激しく撹拌・混合することができる。
ナノバブル発生装置2としては,マイクロ・ナノバブル発生装置MA3FS〔株式会社アスプ〕を用いた。ナノバブル発生装置は,液体にガスを注入し,ガス/液体混合物の流れにスタティックミキサーで剪断力を加えて液体の分割を繰り返すことで,液体中ナノバブルを作り出す機能を有する。
作動溶液用容器1内には,作動溶液が収容されている。作動溶液は,過酸化水素製造サイクルのステージに応じて,アントラキノン誘導体又はアントラヒドロキノン誘導体を含有する有機溶媒溶液であり,本実施例では,2−エチルアントラキノン又はその還元体である2−エチルアントラヒドロキノンを含有する有機溶媒溶液である。有機溶媒としては,本実施例では,酢酸エチル及び酢酸n−ブチルを用いた。
〔バブル粒子径の測定〕
ナノバブル発生装置により形成される泡の粒子径は,ナノ粒子測定装置(NanoSight,日本カンタム・デザイン(株))により行った。測定条件は次のとおりとした。
・溶媒:酢酸エチル
・気体:空気
・ナノバブル吐出圧力:0〜1.0 MPa
・液体流量:112 mL/分
・気体流量:3 mL/分
測定の結果,測定し得た最少サイズ3nmの粒子径から泡の存在が確認された。結果を図5に示す。図において,横軸は泡の粒子径を,縦軸は,気液混合流体1mLあたりの各粒子径を有する泡の個数である(図では,約50nm以下の粒子径範囲では,グラフが横軸に接近しているため泡の個数は判別できない。)。形成された泡は実質上全数(100%)が5〜500 nmの粒子径を有しており,50〜400 nmの粒子径を有する泡が泡の全個数の95%を優に超えている。
〔過酸化水素の定量〕
製造された過酸化水素含有水中の過酸化水素の定量は,0.02 M の過マンガン酸カリウム水溶液を用いて,常法により行った。
〔実施例1〕
作動溶液用容器内に,撹拌子,酢酸エチル(80 ml)及び2−エチルアントラキノン(0.32 mol/L)を加え,撹拌して,酢酸エチルに2−エチルアントラキノンを溶解させることにより作動溶液を調製した。アルミナ球状担持Pd触媒(0.5重量%Pd/Al2O3,2〜4 mm, 2−エチルアントラキノン量に対し5.0 mol%)を触媒固定管(フィルターサイズ:7μm)に詰め,ナノバブル発生装置を酢酸エチルで洗浄した後,三方コックをパイプ9に対して(従って接触水素化触媒を通る側に)開いておき,水素ガスボンベを流量制御装置に接続させた状態にし,ナノバブル発生装置の吐出口ニードルバルブにおけるナノバブルの吐出圧力は0〜0.6 MPa,液体流量は約130
mL/分,及び水素ガス流量は 5 mL/分に,それぞれ設定して,30℃にて装置を起動させ2時間稼働させた。こうして,作動溶液を,作動溶液用容器,ナノバブル発生装置,及び接触水素化触媒固定管の間で循環させることにより,2−エチルアントラキノンの2−エチルアントラヒドロキノンへの還元反応(接触水素化)を行わせた。
装置を止め,三方コックを切り替え,触媒固定管側に残留する作動溶液を作動溶液用容器に戻し,酸素ガスボンベを流量制御装置に接続させた状態にして,30℃にて装置を起動させた。ナノバブル発生装置のニードルバルブでの吐出圧力は0〜0.6 MPa,液体流量は約130 mL/分,酸素ガス流量は 5 mL/分にそれぞれ設定して装置を2時間稼働させ,溶液を,作動溶液用容器とナノバブル発生装置との間で循環させることにより,2−エチルアントラヒドロキノンの2−エチルアントラキノンへの酸化反応及びこれと対をなす酸素の過酸化水素への還元反応を行わせた。装置を止め,作動溶液用容器に蒸留水10 mLを添加した。ナノバブル発生装置におけるガス流を遮断した状態で装置を起動させ,作動溶液用容器とナノバブル発生装置との間で作動溶液と水とを循環させて混合・撹拌することにより過酸化水素を水相に抽出した。装置を停止させ,作動溶液用容器内の液を静置させると,明瞭な界面をもって油相と水相とが分離し,油相から水相を容易に分離して取り出すことができた。作動溶液用容器に再び10 mL の蒸留水を添加して上記と同様に油相中に残存する過酸化水素を水槽に抽出した。これら2回の抽出液を合わせて(20 mL)分析の結果,水相の過酸化水素濃度は2.2重量%であり,使用した2−エチルアントラキノンのモル量に対する過酸化水素の収率は51%であることが判明した。
〔実施例2〕
アルミナ球状担持Pd触媒の使用量を2−エチルアントラキノン量に対して2.5 mol%とした以外は実施例1と同様にして,過酸化水素水を製造した。分析の結果,過酸化水素濃度は2.5重量%,使用した2−エチルアントラキノンのモル量に対する過酸化水素の収率は59%であった。
〔実施例3〕
作動溶液の還元反応の時間を4時間とした以外は実施例2と同様にして,過酸化水素水を製造した。分析の結果,過酸化水素濃度は2.6重量%,使用した2−エチルアントラキノンのモル量に対する過酸化水素の収率は63%であった。
〔実施例4〕
作動溶液を構成する溶媒を酢酸n−ブチルとした以外は実施例2と同様にして,過酸化水素水を製造した。作動溶液用容器内の液を静置させると,明瞭な界面をもって油相と水相とが分離し,油相から水相を容易に分離して取り出すことができた。分析の結果,過酸化水素濃度は2.7重量%,使用した2−エチルアントラキノンのモル量に対する過酸化水素の収率は64%であった。
〔実施例5〕
作動溶液の還元反応の時間を3時間,酸化反応の時間を1.5時間とした以外は実施例4と同様にして,過酸化水素水を製造した。分析の結果,過酸化水素濃度は3.0重量%,使用した2−エチルアントラキノンのモル量に対する過酸化水素の収率は70%であった。
〔実施例6〕
作動溶液の還元反応の時間を4時間とした以外は実施例4と同様にして,過酸化水素水を製造した。分析の結果,過酸化水素濃度は3.2重量%使用した2−エチルアントラキノンのモル量に対する収率は75%であった。
〔実施例7〕
アルミナ球状担持Pd触媒の使用量を2−エチルアントラキノン量に対し2.6 mol%,作動溶液の還元反応の時間を3.0時間,酸化反応の時間を1.5時間とした以外は実施例1と同様にして,過酸化水素水を製造した。分析の結果,過酸化水素濃度は3.1重量%,使用した2−エチルアントラキノンのモル量に対する過酸化水素の収率は72%であった。
〔比較例1〕
ナノバブル発生装置は用いず,作動溶液用容器中で実施例2と同様の作動溶液を調製し,実施例2で用いたのと同量のアルミナ球状担持Pd触媒を作動溶液用容器中の作動溶液に直接投入し,作動溶液用容器に接続した水素ガス入りバルーンにより作動溶液の上方の空間にほぼ常圧の水素ガスを供給してこれを満たした状態として,30℃にて2時間又は4時間の還元反応を行わせ,次いで,作動溶液用容器の蓋を開け,触媒を除去した後,酸素ガス入りバルーンにより作動溶液の上方の空間にほぼ常圧の酸素ガスを供給してこれを満たした状態として,30℃にて2時間の酸化反応を行わせた。作動溶液用容器に蒸留水を加えて水溶性成分を抽出して分析したが,何れも過酸化水素の生成は認められなかった。
〔比較例2〕
ナノバブル発生装置は用いず,作動溶液用容器中で実施例2と同様の作動溶液を調製し,実施例2で用いたのと同量のアルミナ球状担持Pd触媒を作動溶液用容器中の作動溶液に直接投入し,作動溶液用容器に接続した水素ガス入りバルーンに繋いだチューブ先端に取り付けた市販のセラミックフィルターを通して,作動溶液の中央〜下方に水素ガスを持続的にバブリング(5 mL/分)した状態で,30℃にて2時間又は4時間の還元反応を行わせ,次いで,作動溶液用容器の蓋を開け,触媒を除去した後,酸素ガス入りバルーンに繋いだチューブ先端のセラミックフィルターを通して作動溶液の中央〜下方に酸素ガスを持続的にバブリング(5 mL/分)した状態で,30℃にて2時間の酸化反応を行わせた。作動溶液用容器に蒸留水を加えて水溶性成分を抽出して分析したが,何れも過酸化水素の生成は認められなかった。
〔参考例1〕
過酸化水素水によるスルフィドの酸化
実施例7に記載の方法で得た過酸化水素水(20 mL,3重量%)に,チオアニソール(1.079 mL, 8.6 mmol)を加え,室温(20℃)にて5日間撹拌した。反応終了後ガスクロマトグラフィーにより生成物を分析したところ,メチルスルフィニルベンゼンの生成が確認された。チオアニソールのメチルスルフィニルベンゼンへの転化率は99%より大であった。
〔参考例2〕
過酸化水素水による第二級アルコールの酸化
タングステン(VI)酸ナトリウム・二水和物(6.0 mg, 0.2 mol%)及び硫酸水素メチルトリ−n−オクチルアンモニウム(10.8 mg, 0.2 mol%)に,実施例7に記載の方法で得た過酸化水素水(20
mL,3重量%)を加え,室温(20℃)にて10分間撹拌した。次いでこれにDL−1−フェニルエタノール(1.062 mL, 8.6
mmol)を加え90℃にて撹拌を開始した。DL−1−フェニルエタノールからアセトフェノンへの酸化反応の進行をガスクロマトグラフィーにより追跡した。反応開始から6時間後,アセトフェノンが,99%を超える転化率で生成したことが確認された。
〔参考例3〕
過酸化水素水によるオレフィンのエポキシ化
タングステン(VI)酸ナトリウム・二水和物(58.3 mg, 2.0 mol%)及び硫酸水素メチルトリ−n−オクチルアンモニウム(44.3 mg, 1.0 mol%)に,実施例7に記載の方法で得た過酸化水素水(20
mL,3重量%)を加え,室温(20℃)にて10分間撹拌した。次いでこれにシクロオクテン(1.162 mL, 8.6 mmol)を加え,90℃にて撹拌を開始した。シクロオクテンから1,2−エポキシシクロオクタンへの酸化反応の進行をガスクロマトグラフィーにより追跡した。反応開始から3時間後,1,2−エポキシシクロオクタンが,99%を超える転化率で生成したことが確認された。
本発明は,安全性が高く低コストの過酸化水素オンサイト合成を可能にする点で,また,それにより過酸化水素の新たな工業的用途の開発を促すことができる点でも,有用である。
1 作動溶液容器
2 ナノバブル発生装置
3 流量制御装置
4 接触水素化触媒固定管
5 三方コック
6〜9 パイプ

Claims (9)

  1. 過酸化水素含有水溶液の製造方法であって,
    (a)アントラヒドロキノン誘導体の有機溶媒溶液を容器内に準備するステップであって,該有機溶媒が水と非混和性のものであるステップと,
    (b)該溶液に,常圧下に,酸素ガスをナノバブルの形で連続注入して該溶液中に酸素ガスのナノバブルが分散された状態を維持することにより,該溶液中の該アントラヒドロキノン誘導体をアントラキノン誘導体へと酸化させるステップと,
    (c)酸素ガスの注入を停止し,該容器内に水を加えて該溶液と混合するステップと,
    (d)該容器内の混合物を静置し有機溶媒相と水相とを2層に分離させるステップと,
    (e)該容器から水相を回収するステップとを含んでなる,
    製造方法。
  2. ステップ(a)におけるアントラヒドロキノン誘導体の有機溶媒溶液が,該容器内に入れられた対応するアントラキノン誘導体の有機溶媒溶液に,常圧下に,水素ガスをナノバブルの形で連続注入して該有機溶媒相中に水素ガスのナノバブルが分散された状態を維持しつつ,該有機溶媒相を,該容器外に配置された接触還元触媒に通して該容器との間で循環させて,該容器内の該有機溶媒相中の該アントラキノン誘導体をアントラヒドロキノン誘導体へと還元することにより準備されたものである,請求項1の製造方法。
  3. ステップ(e)を行った後に該容器中に残された該有機溶媒相に,常圧下に,水素ガスをナノバブルの形で連続注入して該有機溶媒相中に水素ガスのナノバブルが分散された状態を維持しつつ,該有機溶媒相を,該容器外に配置された接触還元触媒に通して該容器との間で循環させて,該容器内の該有機溶媒相中の該アントラキノン誘導体をアントラヒドロキノン誘導体へと還元することにより,該アントラヒドロキノン誘導体の有機溶媒溶液を該容器内に再生させるものであるステップ(f)を更に含んでなることを特徴とする,請求項1又は2の製造方法。
  4. ステップ(b)〜(f)が1回以上反復されるものである,請求項3の製造方法。
  5. 該ナノバブルが,5nm以上1000 nm未満の粒子径を有する泡の個数が,泡の全個数の90%以上のものであることを特徴とする,請求項1〜4の何れかの製造方法。
  6. アントラヒドロキノン誘導体が,アントラヒドロキノンのアルキル誘導体である,請求項1〜5の何れかの製造方法。
  7. 該アルキル誘導体のアルキル基が,炭素数1〜4個のアルキル基である,請求項6の製造方法。
  8. 該アルキル基が,アントラヒドロキノンの2位の炭素に結合しているものである,請求項6又は7の製造方法。
  9. 該有機溶媒が,炭素数1〜4のアルコールと酢酸とのエステルである,請求項1〜8の何れかの製造方法。
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