[go: up one dir, main page]

JP2014098192A - 原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及び皮膜形成装置 - Google Patents

原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及び皮膜形成装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2014098192A
JP2014098192A JP2012250898A JP2012250898A JP2014098192A JP 2014098192 A JP2014098192 A JP 2014098192A JP 2012250898 A JP2012250898 A JP 2012250898A JP 2012250898 A JP2012250898 A JP 2012250898A JP 2014098192 A JP2014098192 A JP 2014098192A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon steel
film
steel member
decontamination
pipe
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012250898A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeshi Ito
伊藤  剛
Hideyuki Hosokawa
秀幸 細川
Makoto Nagase
誠 長瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Original Assignee
Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi GE Nuclear Energy Ltd filed Critical Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Priority to JP2012250898A priority Critical patent/JP2014098192A/ja
Publication of JP2014098192A publication Critical patent/JP2014098192A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin

Landscapes

  • Chemical Treatment Of Metals (AREA)

Abstract

【課題】プラントの炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮できる原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を提供する。
【解決手段】原子力プラントの停止中に、皮膜形成装置を炭素鋼製の給水配管に接続する(S1)。この給水配管の内面への、化学除染の酸化除染及び還元除染を実施する(S2)。還元除染の終了後、還元除染液に含まれる還元除染剤の一部を分解し(S3b)、酸化剤及びpH調整剤を注入して酸化剤及びpH調整剤を含みpHが5.5以上になる還元除染液を生成する(S4)。この還元除染液を給水配管の内面に接触させ、酸化剤の作用により給水配管から溶出する鉄とその酸化剤との化学反応により給水配管の内面にマグネタイト皮膜を形成する。酸化剤及びpH調整剤の注入を停止し(S7)、還元除染剤及びS4で注入したpH調整剤を分解する(S3c)。
【選択図】図1

Description

本発明は、原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及び皮膜形成装置に係り、特に、沸騰水型原子力発電プラントに適用するのに好適な原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及び皮膜形成装置に関する。
原子力プラントとして、例えば、沸騰水型原子力発電プラント(以下、BWRプラントという)及び加圧水型原子力発電プラント(以下、PWRプラントという)が知られている。BWRプラントは、原子炉圧力容器(RPVと称する)内に炉心を内蔵した原子炉を有する。再循環ポンプ(またはインターナルポンプ)によって炉心に供給された冷却水は、炉心内に装荷された燃料集合体内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、原子炉からタービンに導かれ、タービンを回転させる。タービンから排出された蒸気は、復水器で凝縮され、水になる。この水は、給水として原子炉に供給される。給水は、原子炉内での放射性腐食生成物の発生を抑制するため、給水配管に設けられたろ過脱塩装置で主として金属不純物が除去される。
BWRプラント及びPWRプラント等の発電プラントでは、原子炉圧力容器などの主要な構成部材は、水と接触する表面の腐食を抑制するために、ステンレス鋼及びニッケル基合金などを用いている。ただし、原子炉冷却材浄化系、余熱除去系、原子炉隔離時冷却系、炉心スプレイ系、給水系及び復水系などの構成部材は、プラントの製造所要コストを低減する観点、あるいは給水系や復水系を流れる高温水に起因するステンレス鋼の応力腐食割れを避ける観点などから、主に炭素鋼部材が用いられる。
しかし、原子炉冷却材浄化系、余熱除去系、原子炉隔離時冷却系、炉心スプレイ系、給水系及び復水系などを構成する炭素鋼部材も、水と接触する表面を有するので、その表面が腐食するおそれがある。この場合において、炭素鋼部材が浄化装置の下流側に配置されていると、炭素鋼部材の腐食生成物は、放射性腐食生成物の元になることがある。また、PWRプラントでは、炭素鋼部材の腐食生成物に起因して二次系の熱交換効率が低下する原因になる場合がある。
そこで、緻密なフェライト皮膜(例えば、マグネタイト皮膜、ニッケルフェライト皮膜)を沸騰水型原子力プラントの構成部材である炭素鋼部材の表面に形成することが提案されている(例えば、特開2007−182604号公報及び特開2007−192672号公報参照)。具体的には、沸騰水型原子力プラントの停止中において、鉄(II)イオン及び有機酸(例えば、ギ酸)を含む薬剤、鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに酸化する酸化剤、及びpHを調整するpH調整剤を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調整された皮膜形成水溶液を用いて、炭素鋼部材の表面にフェライト皮膜を形成している。このフェライト皮膜は、炭素鋼部材の表面に冷却水が接触するのを遮断する保護膜になるので、炭素鋼部材の冷却水と接する表面の腐食が抑制される。
なお、ステンレス鋼で製造された、BWRプラントの再循環系配管の内面にフェライト皮膜を形成する方法が、特開2006−38483号公報に記載されている。
原子力プラントの構成部材の表面に形成されるフェライト皮膜の形成量を水晶振動子電極装置によって計測することが、特開2010−127788号公報に記載されている。特開2010−127788号公報では、水晶振動子電極装置によって計測したフェライト皮膜の形成量に基づいて、その構成部材の表面へのフェライト皮膜の形成が終了したかを判定している。
特開2007−182604号公報 特開2007−192672号公報 特開2006−38483号公報 特開2010−127788号公報
原子力発電プラントの炭素鋼部材の表面に緻密なフェライト皮膜を形成する、特開2007−182604号公報及び特開2007−192672号公報に記載されたフェライト皮膜形成方法は、皮膜形成水溶液への鉄(II)イオン及び有機酸を含む薬剤、酸化剤、及び皮膜形成液のpHを5.5〜9.0の範囲内に調整するpH調整剤の添加を、鉄(II)イオン及び有機酸を含む薬剤、酸化剤及びpH調整剤の順に行っている。
発明者らは、特開2007−182604号公報及び特開2007−192672号公報に記載された炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜の形成について、検討したところ、炭素鋼部材の表面に所定厚みのフェライト皮膜が形成されるまでに要する時間が長く、この時間を短縮する必要があることが分かった。
本発明の目的は、プラントの炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮できる原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及び皮膜形成装置を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、酸化剤及びpH調整剤を含む皮膜形成液を原子力プラントの構成部材である炭素鋼部材の表面に接触させ、その酸化剤により、イオン化された、炭素鋼部材の鉄と、その酸化剤との反応により炭素鋼部材のその表面にフェライト皮膜を形成することことにある。
炭素鋼部材の、酸化剤及びpH調整剤を含む皮膜形成液が接触する表面でイオン化された鉄と、その酸化剤の反応により、その表面にフェライト皮膜を形成するので、フェライト皮膜の形成に要する時間を短縮することができる。
好ましくは、炭素鋼部材の表面に接触する、酸化剤及びpH調整剤を含む皮膜形成液のpHが5.5〜9.5の範囲内にあることが望ましい。皮膜形成液のpHが5.5以上であるので、炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜の形成ができないほどに炭素鋼部材から鉄が溶出することを避けることができ、その表面へのフェライト皮膜の形成を容易に行うことができる。
本発明によれば、プラントの炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮することができる
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法の手順を示すフローチャートである。 図1に示す原子力原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を実施する際に用いられる皮膜形成装置を沸騰水型原子力発電プラントの給水配管に接続した状態を示す説明図である。 図2に示す皮膜形成装置の詳細構成図である。 炭素鋼試験片の表面に形成された鉄を含む皮膜のラマンスペクトルを示す説明図である。 未処理試験片及び皮膜形成試験片のそれぞれへの60Coの付着量を示す説明図である。 本発明の他の実施例である実施例2の原子力原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法の手順を示すフローチャートである。 本発明の他の実施例である実施例3の原子力原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法の手順を示すフローチャートである。 本発明の他の実施例である実施例4の原子力原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法に用いられる皮膜形成装置の詳細構成図である。 本発明の他の実施例である実施例5の原子力原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法において用いられる皮膜形成装置を沸騰水型原子力発電プラントの浄化系配管に接続した状態を示す説明図である。 本発明の他の実施例である実施例6の原子力原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法の手順を示すフローチャートである。
発明者らは、特開2007−182604号公報及び特開2007−192672号公報のそれぞれに記載された炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜の形成について、検討した。この検討の結果、発明者らは、炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮する必要があることを見出した。なお、特開2007−182604号公報及び特開2007−192672号公報のそれぞれに記載された炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜の形成は、実質的に同じ三種類の薬剤を含む皮膜形成液を炭素鋼部材の表面にフェライト皮膜を形成しているため、以下において、従来技術を特開2007−182604号公報を用いて説明する。
そこで、発明者らは、炭素鋼部材表面にフェライト皮膜をより短時間で形成できる対応策について種々検討した。この検討の一環として、発明者らは、炭素鋼部材の表面への接触により、この表面に鉄を含む皮膜を形成することができる、皮膜形成液の成分について詳細な検討を行った。この結果、発明者らは、炭素鋼部材の表面に接触する皮膜形成液のpHを5.5以上に保つことにより、この皮膜形成液が接触する炭素鋼部材の表面に存在する炭素鋼部材の鉄を利用し、この鉄を含む皮膜を炭素鋼部材の表面に形成することができることを突き止めた。すなわち、酸化剤を含むpHが5.5以上に保たれた皮膜形成液が炭素鋼部材の表面に接触すると、炭素鋼部材表面のFe2+の一部が、皮膜形成液に含まれる酸化剤の作用によりFe3+にイオン化され、酸化剤の作用によってFe3+にイオン化された鉄と酸化剤が作用していないFe2+とが化学反応する。この結果、鉄を含む皮膜が炭素鋼部材の表面に形成されるのである。発明者らは、特開2007−182604号公報に記載された鉄(II)イオン、酸化剤及びpH調整剤を含む皮膜形成液ではなく、鉄(II)イオンが含まれていない、酸化剤及びpH調整剤を含む皮膜形成液を用いることにより、炭素鋼の表面に鉄を含む皮膜を形成できることを新たに見出したのである。
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、及びオゾン、酸素を溶解した溶液のいずれかを用いる。pH調整剤としては、ヒドラジン及びアンモニアのいずれかを用いる。
一方、特開2007−182604号公報に記載された炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法では、段落0045に記載されているように、皮膜形成液に鉄(II)イオンを含む薬剤及び酸化剤を注入すると、皮膜形成液中において注入された鉄(II)イオンの酸化剤による酸化反応が開始され、皮膜形成液内で鉄(III)イオンが生成される。この結果、皮膜形成液に含まれる鉄(II)イオンと鉄(III)イオンの比率が炭素鋼部材の表面におけるフェライト皮膜の生成反応に適した条件になる。このときの皮膜形成液は酸性であってこのままではフェライト皮膜の生成反応が進行しないために、pH調整剤の注入により皮膜形成液のpHをアルカリ側に大きくすると、炭素鋼部材の表面での皮膜生成反応が開始される。
発明者らがこのような特開2007−182604号公報に記載された炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を詳細に検討した結果、皮膜形成液に注入されて皮膜形成液内に多量に存在する鉄(II)イオンは、皮膜形成液と流動している状態で及び炭素鋼部材の表面に吸着された状態でそれぞれ酸化されて鉄(III)イオンを生成するため、鉄(II)イオンの酸化反応速度が速いこともあって、皮膜形成液に注入された酸化剤が、前述の各状態における鉄(II)イオンの酸化に全量消費されてしまうことを発見した。この結果、特開2007−182604号公報に記載されたその方法では、炭素鋼部材に接触した、鉄(II)イオン、鉄(III)イオン及びpH調整剤を含む皮膜形成液には酸化剤が含まれておらず、前述した、炭素鋼部材の表面に存在するこの炭素鋼部材の鉄が皮膜形成液に含まれる酸化剤の作用によりイオンになるという現象が起こりえないことが明らかになった。もし、炭素鋼部材の表面に接触した、鉄(II)イオン、鉄(III)イオン及びpH調整剤を含む皮膜形成液に酸化剤が含まれるほどに酸化剤を皮膜形成液に注入した場合には、炭素鋼部材の表面には緻密なフェライト皮膜が形成されなくなる。
特開2007−182604号公報の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法では、pH調整剤を含む皮膜形成液内の鉄(II)イオン及び鉄(III)イオンを利用した皮膜生成反応により、フェライト皮膜が炭素鋼部材の表面全面に亘って形成される。このため、その皮膜形成方法では、フェライト皮膜の形成に要する時間が長くなる。この従来の方法で、炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間が長くなる理由は、以下のとおりである。従来の方法では、皮膜形成液に注入した鉄(II)イオンの多くは、そのフェライト皮膜であるマグネタイト皮膜の形成に使用されず、皮膜形成液中でマグネタイト粒子として析出する。このような現象が、従来の方法において、フェライト皮膜の形成に要する時間を長くしているのである。
これに対し、発明者らが新たに見出した皮膜形成方法では、炭素鋼部材の表面でイオン化された、炭素鋼部材の鉄をフェライト皮膜の形成に利用しているため、鉄(II)イオンが皮膜形成液中でマグネタイト粒子として析出することが生じない。その新たに見出した皮膜形成方法では、鉄(II)イオンを含んでいなく、酸化剤及びpH調整剤を含むpHが5.5〜9.5の皮膜形成液を炭素鋼部材の表面に接触させることにより、前述したように、炭素鋼部材の表面でイオン化された、炭素鋼部材の鉄が炭素鋼部材の表面で酸化剤と化学反応し、炭素鋼部材の表面を覆う鉄を含む皮膜を形成することができる。この皮膜形成溶液のpHを5.5未満にした場合には、炭素鋼部材から皮膜形成液に溶出する鉄の量が増大し、炭素鋼部材の表面に鉄を含む皮膜の形成ができなくなる。このため、皮膜形成溶液のpHは5.5以上にすることが好ましい。
さらに、発明者らは、上記した鉄を含む皮膜を原子力プラントの運転停止時において原子力プラントの炭素鋼部材の表面に形成することを検討した。そして、鉄(II)イオンを含んでいなく、酸化剤及びpH調整剤を含むpHが5.5〜9.5の皮膜形成液の温度を100℃以下にした場合でも、鉄を含む皮膜を炭素鋼部材の表面に形成することができた。鉄を含む皮膜を炭素鋼部材の表面への形成は、下記の(1)式及び(2)式で表される反応に基づいて行われることが分かった。
Fe2++2OH- → 2Fe(OH)2 ……(1)
2Fe3++Fe(OH)2 → Fe34+H2O+O2- ……(2)
発明者らは、上記した鉄を含む皮膜の組成を確認するために、鉄(II)イオンを含んでいなく、酸化剤及びpH調整剤を含むpHが5.5〜9.5の皮膜形成液を炭素鋼で作られた炭素鋼試験片の表面に接触させ、この試験片の表面に鉄を含む皮膜を形成した。その後、形成された鉄を含む皮膜の組成分析を行った。得られた組成分析結果、すなわち、その鉄を含む皮膜のラマンスペクトルを図4に示す。炭素鋼試験片の表面に形成された鉄を含む皮膜のラマンスペクトル(本発明)は、図4に示すように、波数668.3/cmでピークが形成され、波数668.3/cmでピークが形成されるマグネタイトの標準スペクトル(Fe34標準)と一致した。この結果、炭素鋼試験片の表面に形成された鉄を含む皮膜は、フェライト皮膜であるマグネタイト皮膜であることを確認した。
鉄(II)イオンを含んでいない上記皮膜形成液を用いて表面にマグネタイト皮膜を形成した炭素鋼試験片(以下、皮膜形成試験片という)を用いて60Coの付着量を確認した。比較のため、マグネタイト皮膜を形成していない炭素鋼試験片(以下、未処理試験片という)における60Coの付着量も確認した。皮膜形成試験片及び未処理試験片を、60Coを含む模擬炉水に浸漬させ、60Coの付着量を確認する実験を行った。この実験により、図5に示す結果が得られた。皮膜形成試験片に対する60Coの付着量は、未処理試験片に対するその付着量の1/2以下に低減した。
鉄(II)イオンを含んでいない上記皮膜形成液によって炭素鋼部材の表面に形成されたマグネタイト皮膜は、原子力プラントの運転状態における炉水に対して保護膜になり、炭素鋼部材への放射性核種の付着を抑制している。
以上の検討結果から、鉄(II)イオンを含んでいなく、酸化剤及びpH調整剤を含むpHが5.5〜9.5の皮膜形成液を炭素鋼部材に接触させることにより、特開2007−182604号公報に記載された炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法に比べて、炭素鋼部材表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を著しく短縮できることが分かった。
鉄(II)イオンを含んでいなく、酸化剤及びpH調整剤を含むpHが5.5〜9.5の皮膜形成液を炭素鋼部材に接触させるときには、この皮膜形成液の温度は、60℃〜100℃の範囲内に調節することが望ましい。その皮膜形成液の温度が低い場合には炭素鋼部材の表面におけるフェライト皮膜の生成速度が遅くなり、フェライト皮膜の形成に時間を要することになる。このため、その皮膜形成液の温度は、炭素鋼部材表面でのフェライト皮膜の生成速度が実用範囲になる60℃以上の温度範囲にすることが望ましい。また、その皮膜形成液の温度が100℃よりも高くなると、その皮膜形成液の沸騰を抑制するために皮膜形成液を加圧しなければならない。このため、仮設設備である皮膜形成装置に耐圧性が要求され、その装置が大型化する。したがって、皮膜形成液の温度は100℃以下にするとよい。
運転を経験した原子力プラントでは、原子力プラントが運転を停止しているときに、保守点検作業を容易に行うために、原子力プラントの構成部材である配管の内面に対して酸化除染及び還元除染を含む化学除染を実施している。発明者らは、この化学除染の作業中に、鉄(II)イオンを含んでいない上記皮膜形成液によって炭素鋼部材の表面にフェライト皮膜を形成することによって、化学除染に要する時間及びフェライト皮膜の形成に要する時間の合計時間をさらに短縮することができるのではと考えた。このため、発明者らは、化学除染を実施しているときに、炭素鋼部材の表面にフェライト皮膜を形成することが可能であるかについて検討した。
化学除染は、酸化除染工程、酸化除染剤分解工程、還元除染工程、還元除染剤分解工程及び浄化工程の5つの工程を含んでいる。これらの工程のうち酸化除染工程及び還元除染工程では酸化除染液及び還元除染液を用いて原子力プラントの炭素鋼部材の表面に付着している酸化被膜及び放射性核種を溶解して除去する。このため、酸化除染工程及び還元除染工程、及び酸化除染工程と還元除染工程の間で行われる酸化除染剤分解工程でのフェライト皮膜の形成は不可能である。発明者らは、還元除染工程が終了した後に、フェライト皮膜の形成を行えば良いとの結論に達した。還元除染工程が終了した後にフェライト皮膜の形成を行う方法として、以下の2つの方法が考えられる。第1の方法では、還元除染工程の後で浄化工程前の還元除染剤分解工程において還元除染剤の一部を分解した後にフェライト皮膜の形成を行い、フェライト皮膜の形成終了後に、この皮膜形成に用いたpH調整剤を残りの還元除染剤の分解と併せて分解する。第2の方法では、還元除染工程終了後で還元除染剤分解工程開始前にフェライト皮膜の形成を行い、フェライト皮膜の形成後に行われる還元除染剤分解工程において、還元除染剤の分解と併せて、その皮膜形成に用いたpH調整剤の分解も実施する。
以上の検討の結果、発明者らは、鉄(II)イオンを含んでいなく、酸化剤及びpH調整剤を含むpHが5.5〜9.5の皮膜形成液を用いた炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜の形成は、上記の第1の方法及び第2の方法のいずれかで可能であることを見出した。
そこで、発明者らは、化学除染の、還元除染工程終了後における還元除染剤の分解工程において、原子力プラントの構成部材を模擬した炭素鋼製の試験片の表面にフェライト皮膜を形成できるかを確認する実験を行った。この実験においては、還元除染工程終了後における還元除染剤の分解工程での還元除染剤の分解途中の還元除染液を模擬した水溶液(模擬還元除染液)が用いられた。この模擬還元除染液は、還元除染剤であるシュウ酸濃度が50ppmであるpH4のシュウ酸水溶液である。シュウ酸に比べてヒドラジンは分解しやすいので、シュウ酸濃度が50ppmまで低下したとき、還元除染液にはヒドラジンが含まれていない。なお、還元除染工程で使用される還元除染液は、シュウ酸濃度が2000ppmでヒドラジン濃度が600ppmであるpH2.5の水溶液である。上記の模擬還元除染液は、還元除染工程が終了した時点でシュウ酸濃度が2000ppmである還元除染液のシュウ酸を、その後の化学除染の還元除染剤分解工程でシュウ酸を分解してシュウ酸が50ppmになったときの還元除染液を模擬している。
シュウ酸濃度が50ppmでpHが4の、模擬還元除染液であるシュウ酸水溶液に、鉄(II)イオンを含んでいなく、酸化剤である過酸化水素及びpH調整剤であるヒドラジンを純水に添加して生成した皮膜形成液を混合し、この混合液に上記の炭素鋼製の試験片を浸漬させた。なお、皮膜形成液が混合されたシュウ酸水溶液のpHが5.5以上、例えば、6になるように、皮膜形成液に含まれるヒドラジンの濃度が調整されている。この結果、混合液は、シュウ酸、過酸化水素及びヒドラジンを含み、pHが6で温度が90℃の水溶液である。この混合液に炭素鋼製の試験片を所定時間(例えば、2時間)浸漬させ、所定時間経過した後、この試験片を混合液から取り出した。試験片の表面にはフェライト皮膜である緻密なマグネタイト皮膜が形成されていた。
以上の検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を、図1、図2及び図3を用いて説明する。本実施例の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法は、沸騰水型原子力発電プラント(BWRプラント)の給水配管に適用される。
原子力発電プラントであるBWRプラントは、図2に示すように、原子炉1、タービン3、復水器4、再循環系、原子炉浄化系及び給水系等を備えている。原子炉1は、炉心13を内蔵する原子炉圧力容器(以下、RPVという)12を有し、RPV12内にジェットポンプ14を設置している。炉心13には多数の燃料集合体(図示せず)が装荷されている。燃料集合体は、核燃料物質で製造された複数の燃料ペレットが充填された複数の燃料棒を含んでいる。再循環系は、ステンレス鋼製の再循環系配管22、及び再循環系配管22に設置された再循環ポンプ21を有する。給水系は、復水器4とRPV12を連絡する炭素鋼製の給水配管10に、復水ポンプ5、復水浄化装置(例えば、復水脱塩器)6、低圧給水加熱器7、給水ポンプ8及び高圧給水加熱器9を、復水器4からRPV12に向って、この順に設置して構成されている。原子炉浄化系は、再循環系配管22と給水配管10を連絡する浄化系配管20に、浄化系ポンプ24、再生熱交換器25、非再生熱交換器26及び炉水浄化装置27をこの順に設置している。浄化系配管20は、再循環ポンプ21の上流で再循環系配管22に接続される。原子炉1は、原子炉建屋(図示せず)内に配置された原子炉格納容器11内に設置されている。
RPV12内の冷却水は、再循環ポンプ21で昇圧され、再循環系配管22を通ってジェットポンプ14内に噴射される。ジェットポンプ14のノズルの周囲に存在する冷却水が、その冷却水の噴射によってジェットポンプ14内に吸引され、噴射された冷却水と共に炉心13に供給される。炉心13に供給された冷却水は燃料棒内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、加熱された冷却水の一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV12内に設けられた気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)にて水分が除去された後に、RPV12から主蒸気配管2を通ってタービン3に導かれ、タービン3を回転させる。タービン3に連結された発電機(図示せず)が回転し、電力が発生する。
タービン3から排出された蒸気は、復水器4で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管10を通りRPV12内に供給される。給水配管10を流れる給水は、復水ポンプ5で昇圧され、復水浄化装置6で不純物が除去され、給水ポンプ8でさらに昇圧される。給水は、低圧給水加熱器7及び高圧給水加熱器9で加熱されてRPV12内に導かれる。タービン3から抽気された抽気蒸気が、抽気配管15を通って低圧給水加熱器7及び高圧給水加熱器9にそれぞれ供給され、給水の加熱源となる。
再循環系配管22内を流れる冷却水の一部は、浄化系ポンプ24の駆動によって原子炉浄化系の浄化系配管20内に流入し、再生熱交換器25及び非再生熱交換器26で冷却された後、炉水浄化装置27で浄化される。浄化された冷却水は、再生熱交換器25で加熱されて浄化系配管20及び給水配管10を経てRPV12内に戻される。
1つの運転サイクルでのBWRプラントの運転が停止された後、仮設設備である皮膜形成装置30の循環配管31の両端が、炭素鋼製の給水配管(炭素鋼部材)10に接続される。すなわち、BWRプラントの運転停止後に、例えば、復水脱塩器6と低圧給水加熱器7の間で給水配管10に設けられているバルブ16のボンネットを開放してこのボンネットの復水脱塩器6側を閉止するとともに、バルブ16のフランジを用いて皮膜形成装置30の循環配管31の一端を、低圧給水加熱器8よりも上流で給水配管10に接続する。これと同時に、高圧給水加熱器9よりも下流で給水配管10(例えば、給水配管10に接続されたドレン配管またはサンプリング配管)を切り離し、給水配管10の切り離した部分に循環配管31の他端を接続する。循環配管31の両端が給水配管10に接続され、給水配管10及び循環配管31を含む閉ループが形成される。
皮膜形成装置30は給水配管10の内面に対する化学除染作業及び給水配管10の内面へのフェライト皮膜の形成作業に用いられる。給水配管10に接続された皮膜形成装置30は、BWRプラントの放射線管理区域であるタービン建屋(図示せず)内に配置されている。本実施例では、化学除染の最終工程である最後の浄化工程が終了した後、皮膜形成装置30が給水配管10から取り外される。その後、次の運転サイクルにおけるBWRプラントの運転が開始される。
皮膜形成装置30の詳細な構成を、図3を用いて説明する。皮膜形成装置30は、循環配管31、サージタンク32、循環ポンプ33,34、酸化剤注入装置35、pH調整剤注入装置40、フィルタ45、加熱器56、カチオン交換樹脂塔48、分解装置50及びエゼクタ69を備えている。
開閉弁51、循環ポンプ33、加熱器46、弁54,55及び56、サージタンク32、循環ポンプ34、弁57及び開閉弁58が、上流よりこの順に循環配管31に設けられている。弁53をバイパスして循環配管31に接続される配管63に、弁52及びフィルタ45が設置される。加熱器46及び弁54をバイパスする配管64が循環配管31に接続され、冷却器47及び弁59が配管64に設置される。両端が循環配管31に接続されて弁55をバイパスする配管65に、カチオン交換樹脂塔48及び弁60が設置される。両端が配管65に接続されてカチオン交換樹脂塔48及び弁60をバイパスする配管66に、混床樹脂塔49及び弁61が設置される。カチオン交換樹脂塔48は陽イオン交換樹脂を充填しており、混床樹脂塔49は陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を充填している。
分解装置50及び弁62が設置される配管67が弁56をバイパスして循環配管31に接続される。分解装置50は、内部に、例えば、ルテニウムを活性炭の表面に添着した活性炭触媒を充填している。サージタンク32が弁56と循環ポンプ34の間で循環配管31に設置される。弁70及びエゼクタ69が設けられる配管68が、循環ポンプ34と弁57の間で循環配管31に接続され、さらに、サージタンク32に接続されている。給水配管10の内面の汚染物を酸化溶解するために用いる過マンガン酸カリウム(酸化除染剤)、さらには再循環系配管22の内面の汚染物を還元溶解するために用いるシュウ酸(還元除染剤)をサージタンク32内に供給するためのホッパ(図示せず)がエゼクタ69に設けられている。
酸化剤注入装置35が、薬液タンク36、供給ポンプ37及び注入配管39を有する。薬液タンク36は、供給ポンプ37及び弁38を設けた注入配管39によって循環配管31に接続される。薬液タンク36には酸化剤である過酸化水素が充填される。酸化剤としては、オゾンを溶解した水を用いてもよい。供給ポンプ37と弁38の間で注入配管39に接続された酸化剤供給管71が分解装置73より上流で配管67に接続される。弁72が酸化剤供給管71に設けられる。
pH調整剤注入装置40が、薬液タンク41、注入ポンプ42及び注入配管44を有する。薬液タンク41は、注入ポンプ42及び弁43を有する注入配管44によって循環配管31に接続される。薬液タンク41にはpH調整剤であるヒドラジンが充填される。
酸化剤注入装置35の循環配管31への接続点(注入配管39と循環配管31の接続点)は、pH調整剤注入装置40の循環配管31への接続点(注入配管44と循環配管31の接続点)よりも上流に位置している。前者の接続点は後者の接続点よりも下流に配置してもよい。
pH計74が注入配管44と循環配管31の接続点よりも下流で循環配管31に取り付けられる。導電率計73が、注入配管39と循環配管31の接続点と、注入配管44と循環配管31の接続点の間で循環配管31に取り付けられる。
本実施例の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を、図1を用いて詳細に説明する。フェライト皮膜の給水配管10の内面への形成は化学除染における還元除染の終了後で還元除染剤の分解途中で行われる。図1に示す手順は、フェライト皮膜を給水配管10の内面に形成する工程だけでなく、その給水配管内面の化学除染、及びフェライト皮膜の形成に用いたpH調整剤(例えば、ヒドラジン)の分解の各工程も含んでいる。
まず、皮膜形成装置を皮膜形成対象の配管系に接続する(ステップS1)。すなわち、BWRプラントの運転が炉心内の燃料集合体の交換のために停止された後のBWRプラントの運転停止期間において、前述したように、循環配管31が皮膜形成対象物の配管系である給水配管(原子力プラントの構成部材である炭素鋼部材)10に接続される。
皮膜形成装置30が給水配管10に接続された後、化学除染がこの給水配管を対象に実施される。実施される化学除染は、公知の方法(例えば、特開2000−105295号公報参照)である。この化学除染は、前述したように、酸化除染工程、酸化除染剤分解工程、還元除染工程、還元除染剤分解工程及び浄化工程の5つの工程を含んでいる。
皮膜形成対象物に対して化学除染における酸化除染及び還元除染を実施する(ステップS2)。運転を経験したBWRプラントでは、放射性核種を含む酸化皮膜が給水配管10の内面に形成されている。化学除染は、薬剤を用いた化学的な処理によりその酸化皮膜を、皮膜形成対象物である給水配管10の内面から取り除く処理である。皮膜形成対象物の配管系へのフェライト皮膜の形成は、その給水配管10の内面の腐食抑制及びその内面への放射性核種の付着抑制を目的とするものであるが、そのフェライト皮膜の形成に際しては、予め存在する酸化被膜を除去するために給水配管10の内面に対して事前に化学除染を実施することが好ましい。
まず、給水配管10の内面に対して酸化除染を実施する。弁51及び53〜58をそれぞれ開き、他の弁を閉じた状態で、循環ポンプ33及び34を駆動する。これにより、循環配管31及び給水配管10を含む閉ループ内にサージタンク32内の水を循環させる。加熱器46により循環する水を加熱し、この水の温度が90℃になったときに弁70が開けられる。エゼクタ69につながっているホッパから供給される必要量の過マンガン酸カリウム(酸化除染剤)が、配管68内を流れる水によりサージタンク32内に導かる。過マンガン酸カリウムがサージタンク32内で水に溶解し、過マンガン酸カリウム水溶液が生成される。過マンガン酸カリウム水溶液は酸化除染液である。この酸化除染液は、循環ポンプ34の駆動によってサージタンク32から循環配管31を経て給水配管10内に供給される。酸化除染液は、給水配管10の内面に形成されている酸化皮膜などの汚染物を酸化して溶解する(酸化除染工程)。
酸化除染が終了した後、給水配管10の内面に対して還元除染が実施される。上記のホッパからエゼクタ69を通してシュウ酸(還元除染剤)をサージタンク32内に注入する。このシュウ酸によって酸化除染液に含まれている過マンガン酸カリウムが分解される(酸化除染剤分解工程)。過マンガン酸カリウムの分解後に、サージタンク32内で生成されてpHが調整された還元除染液(シュウ酸水溶液)は、循環ポンプ32の駆動によって循環配管31から給水配管10内に供給され、給水配管10の内面に付着している腐食生成物(放射性核種を含む)の還元溶解を行う(還元除染工程)。弁43を開いて注入ポンプ42を駆動すると、薬液タンク41内のヒドラジンが、注入配管44を通して循環配管31内に注入される。循環配管31を流れる還元除染液のpHが、そのヒドラジンの注入によって調整される。給水配管10に供給される還元除染液のシュウ酸濃度が2000ppmであり、還元除染液のpHは2.5である。溶解された放射性核種及び腐食生成物を含む還元除染液が、給水配管10から循環配管31に排出される。弁60を開いて弁55の開度を調節することにより、給水配管10から循環配管31に排出された還元除染液の一部が、配管65を通して、カチオン交換樹脂塔48に導かれる。還元除染液に含まれた放射性核種の金属陽イオン及び鉄イオン等の金属陽イオンは、カチオン交換樹脂塔48内のカチオン交換樹脂に吸着されて除去される。カチオン交換樹脂塔48から排出された還元除染液及び弁55を通過した還元除染液は、循環配管31から給水配管10に再び供給される。このように、還元除染液は、循環配管31及び給水配管10を含む閉ループ内を循環しながら、給水配管10の内面の還元除染を行う。
薬液タンク41にアンモニアを充填し、pH調整剤としてヒドラジンの替りにアンモニアを、還元除染工程において、循環配管31内を流れる還元除染液に注入してもよい。
還元除染剤の分解工程を実施する(ステップS3)。ステップS3で実施される還元除染剤の分解工程は、還元除染に用いられた還元除染液(シュウ酸水溶液)に含まれる還元除染剤(シュウ酸)及びpH調整剤(例えば、ヒドラジン)を分解する工程(ステップ3a)、及び分解されずに残っている還元除染剤(シュウ酸)及びフェライト皮膜の形成のために還元除染液に注入したpH調整剤(例えば、ヒドラジン)を分解する工程(ステップS3c)を含んでいる。
還元除染工程が終了した後に、還元除染剤の分解工程が開始され、還元除染に用いられた還元除染液に含まれる還元除染剤及びpH調整剤が分解される(ステップ3a)。ステップ3aにおいて、還元除染剤の一部を分解する工程(ステップS3b)が実施される。注入ポンプ42の駆動を停止して弁43を全閉にし、薬液タンク41から循環配管31へのヒドラジンの注入を停止する。さらに、弁62を開いて弁56の開度を調整して循環配管31内を流れる還元除染液、すなわち、シュウ酸水溶液の一部を分解装置50に供給する。このとき、弁72を開いて供給ポンプ37を駆動し、薬液タンク36内の過酸化水素(酸化剤)を、酸化剤供給管71を通して分解装置50に供給する。注入配管39に設けられた弁38は閉じている。分解装置50に導かれたシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンは、分解装置50に供給された過酸化水素、及び分解装置50内の活性炭触媒の作用によって分解される。還元除染液であるシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の一部が分解されてこのシュウ酸水溶液のpHが設定pHになって後述のステップS4が開始されるまで、カチオン交換樹脂塔48による金属陽イオンの除去が継続して行われる。シュウ酸及びヒドラジンの分解装置50内での分解は、シュウ酸水溶液を給水配管10及び循環配管31により形成される閉ループ内を循環させながら行われる。
シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の分解により還元除染液のpHは徐々に大きくなる。シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の一部が分解されて、還元除染の終了時において2000ppmであった、シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が、50ppmまで減少する。このとき、還元除染液のpHが4になる。pH計74で測定した還元除染液であるシュウ酸水溶液のpHが、設定pHである、例えば、4になったとき、弁60を閉じてシュウ酸水溶液のカチオン交換樹脂塔48への供給を停止する。シュウ酸の分解によりpHが4になったシュウ酸水溶液には、ヒドラジンが含まれていない。ヒドラジンはシュウ酸よりも早く分解されるため、シュウ酸水溶液のpHが4になったとき、シュウ酸水溶液に含まれたヒドラジンは全て分解されている。
酸化剤及びpH調整剤を注入する(ステップS4)。還元除染剤であるシュウ酸の一部が分解されてシュウ酸水溶液のpHが4になったとき、すなわち、pH計74で測定したシュウ酸水溶液のpHが4になったとき、ステップS3bが終了し、薬液タンク41内のpH調整剤であるヒドラジンが循環配管31内を流れるシュウ酸水溶液に注入される。このヒドラジンの注入は、弁43を開いて注入ポンプ42を駆動することにより行われる。ヒドラジンの注入により、ヒドラジンを含むシュウ酸水溶液のpHが設定pH、例えば、pH7になったとき、弁38を開き、薬液タンク36内の過酸化水素を、注入配管39を通して、循環配管31内を流れるヒドラジンを含むシュウ酸水溶液に注入する。過酸化水素及びヒドラジンを含みpHが7で90℃のシュウ酸水溶液、すなわち、皮膜形成液が、循環配管31内で生成され、循環配管31を通って給水配管10内に供給される。このシュウ酸水溶液に含まれた過酸化水素の濃度は、例えば、数十ppmである。
pH7のそのシュウ酸水溶液が給水配管10の内面に接触すると、シュウ酸水溶液に含まれている過酸化水素の作用によって、給水配管10の母材である炭素鋼に含まれる鉄が給水配管10の内面でイオン化される。このイオン化された鉄が給水配管10の内面で過酸化水素と化学反応し、フェライト皮膜であるマグネタイト皮膜が給水配管10の内面に形成される。給水配管10から循環配管31に排出されたシュウ酸水溶液に、過酸化水素が酸化剤注入装置35から、ヒドラジンがpH調整剤注入装置40からそれぞれ注入される。過酸化水素及びヒドラジンが注入されたpH7のシュウ酸水溶液が、再び、循環配管31を通して給水配管10に供給される。皮膜形成液が循環配管31及び給水配管10を含む閉ループ内を循環し、皮膜形成液の給水配管10への供給開始から所定時間が経過したとき、緻密なマグネタイト皮膜が、皮膜形成液が接触する給水配管10の内面全面に亘って形成される。このマグネタイト皮膜は溶出した鉄と過酸化水素の化学反応によって形成されるため、給水配管10の内面を覆う緻密なマグネタイト皮膜が非常に短時間に形成される。皮膜形成液を供給して給水配管10の内面にマグネタイト皮膜を形成している間も、皮膜形成液の一部が分解装置50に供給されて皮膜形成液に含まれたシュウ酸及びマグネタイト皮膜の形成のために注入されたヒドラジンが分解される。分解装置50から排出されて循環配管31内を流れるシュウ酸水溶液に、酸化剤注入装置35から所定量の過酸化水素が、pH調整剤注入装置40からヒドラジンがそれぞれ注入される。このときのpH調整剤注入装置40からのヒドラジンの注入量は、分解装置50で分解されたヒドラジンの量に実質的に等しい。
フェライト皮膜形成の終了を判定する(ステップS5)。pH7の過酸化水素及びヒドラジンを含むシュウ酸水溶液が接触する、給水配管10の内面全面に、フェライト皮膜の一種であるマグネタイト皮膜が形成されたとき、給水配管10の内面から鉄が溶出しなくなり、給水配管10の内面へのマグネタイト皮膜の形成が終了する。フェライト皮膜形成の終了の判定は、pH7の過酸化水素及びヒドラジンを含むシュウ酸水溶液の給水配管10への供給が開始されてから所定時間が経過したとき、フェライト皮膜の形成が終了したと判定される。この時間が経過するまでの間は、ステップS5の判定が「NO」であり、過酸化水素及びヒドラジンのシュウ酸水溶液への注入が継続される。
特開2010−127788号公報に記載されているように、水晶振動子電極装置を用いてマグネタイト皮膜の形成量を測定し、この測定された形成量に基づいてフェライト皮膜形成の終了を判定しても良い。この場合には、特開2010−127788号公報の図3、図4及び図7に示されているように、水晶振動子電極装置を内部に設置した弁ボンネットを、開閉弁51と循環ポンプ33の間で循環配管31に設けて、水晶振動子電極装置の、給水配管10の材質と同じ炭素鋼製の金属部材の表面を循環配管31内を流れる皮膜形成液に接触させ、金属部材のその表面に形成されたマグネタイト皮膜の量を測定する。
酸化剤及びpH調整剤の注入を停止する(ステップS6)。フェライト皮膜の形成が終了したと判定されたとき、すなわち、ステップS5の判定が「YES」のとき、弁38が閉じられて過酸化水素の循環配管31への供給が停止され、注入ポンプ42の停止及び弁43の閉鎖によるヒドラジンの循環配管31への供給が停止される。
残っている還元除染剤及びpH調整剤の分解を実施する(ステップS3c)。ステップS4〜S6の各工程を実施している間も、シュウ酸水溶液が、過酸化水素が供給されている分解装置50に供給されるので、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の分解が継続して行われている。ステップS4において過酸化水素及びヒドラジンが注入されたとき、皮膜形成液である、pH7の過酸化水素及びヒドラジンを含むシュウ酸水溶液の一部が、給水配管10から排出された後に分解装置50に供給されるので、そのヒドラジンも分解される。
給水配管10の内面へのマグネタイト皮膜の形成が終了した後、給水配管10から循環配管31に排出される皮膜形成液に残っているシュウ酸及びその皮膜形成に使用されたヒドラジンが分解される。これらの分解は、過酸化水素及びヒドラジンの注入停止後に、pH7の過酸化水素及びヒドラジンを含むシュウ酸水溶液の一部を、過酸化水素が酸化剤供給管71を通して供給される分解装置50に供給しながら行われる。弁60を開いてそのシュウ酸水溶液をカチオン交換樹脂塔48に供給する。ただし、このシュウ酸水溶液のカチオン交換樹脂塔48への供給は、そのシュウ酸水溶液に含まれる過酸化水素が分解装置50で消費され、過酸化水素の濃度が、カチオン交換樹脂塔48内の陽イオン交換樹脂が過酸化水素により損傷を受けなくなる濃度まで低下した後に行われる。残っているシュウ酸が分解装置50においてさらに分解されてシュウ酸水溶液におけるシュウ酸濃度がさらに低下し、そのシュウ酸水溶液のヒドラジン濃度も低下する。
分解装置50から排出されたシュウ酸水溶液が弁56を通過するシュウ酸水溶液に混合され、この混合された水溶液の導電率が導電率計73で測定される。測定されたシュウ酸水溶液の導電率が設定導電率に低下したとき、そのシュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が10ppmに低下し、シュウ酸及びヒドラジンの分解が終了する。このとき、そのシュウ酸水溶液のヒドラジン濃度は0になっている。供給ポンプ37が停止され、弁62,72が閉じられて全閉状態になる。
還元除染剤及びpH調整剤が分解された水溶液の浄化を実施する(ステップS7)。シュウ酸及びヒドラジンの分解が終了した後、弁59を開いて弁54を閉じ、弁61を開いて弁58を閉じる。加熱器46による、シュウ酸濃度が10ppmに低下したシュウ酸水溶液の加熱が停止され、このシュウ酸水溶液が冷却器47で冷却されてこの水溶液の温度が例えば60℃に調節される。冷却により60℃になったシュウ酸水溶液が、混床樹脂塔49に供給される。シュウ酸水溶液に含まれている陰イオン及び陽イオンが混床樹脂塔49内の陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。
廃液を処理する(ステップS8)。浄化工程が終了した後、ポンプ(図示せず)を有する高圧ホース(図示せず)により循環配管31と廃液処理装置(図示せず)を接続する。浄化工程の終了後に循環配管31及び給水配管10内に存在する水溶液は、放射性廃液である。その水溶液は高圧ホースに設けられたポンプを駆動して循環配管31から高圧ホースを通して廃液処理装置(図示せず)に排出され、廃液処理装置で処理される。循環配管31及び給水配管10内の全ての水溶液が、廃液処理装置に排出されたとき、廃液処理工程が終了する。
酸化除染工程、酸化除染剤分解工程、還元除染工程、還元除染剤分解工程及び浄化工程が複数回、例えば、2〜3回繰り返される場合には、ステップS4〜S6の各ステップは最後の還元除染剤分解工程で行われる。
ステップS8の工程が終了した後、循環配管31と廃液処理装置を接続している高圧ホースを取り外して循環配管31の両端部を給水配管10から取り外す。給水配管10が循環配管31の接続前の状態に復旧され、その後、BWRプラントの運転が開始される。
前述したように、イオン化された、給水配管10の鉄とpH7で90℃のシュウ酸水溶液に含まれる過酸化水素との化学反応により、給水配管10の内面にマグネタイト皮膜を形成する本実施例では、マグネタイト皮膜の形成に要する時間が、特開2007−182604号公報に記載された鉄(II)イオン、過酸化水素及びヒドラジンを含み、5.5〜9.0の範囲内のpHを有する水溶液を用いて給水配管の内面にマグネタイト皮膜を形成する場合に要する時間の1/5に短縮される。
本実施例では、鉄(II)イオンを含む薬剤を皮膜形成液に注入しないので、特開2007−182604号公報に記載されたフェライト皮膜形成方法のように、鉄をギ酸に溶解して鉄(II)イオンを含む薬剤を作る必要が無く、給水配管の内面にフェライト皮膜を形成した後、皮膜形成液に含まれるギ酸を分解する工程も不要である。
特開2007−182604号公報に記載されたフェライト皮膜形成方法では、給水配管内面の化学除染、すなわち、酸化除染工程、酸化除染剤分解工程、還元除染工程、還元除染剤分解工程及び浄化工程、給水配管内面へのマグネタイト皮膜の形成工程、及びマグネタイト皮膜の形成に用いた皮膜形成液に含まれたギ酸及びヒドラジンの分解工程の各工程が連続して行われる。これに対して、本実施例では、酸化除染工程、酸化除染剤分解工程、還元除染工程、還元除染剤分解工程及び浄化工程が連続して行われ、給水配管内面へのマグネタイト皮膜の形成工程が還元除染剤分解工程と並行して行われる。さらに、本実施例では、マグネタイト皮膜の形成に用いられたヒドラジンの分解が還元除染剤分解工程で行われる。このように、本実施例における給水配管内面へのマグネタイト皮膜の形成工程及びマグネタイト皮膜の形成に用いられたヒドラジンの分解工程が、特開2007−182604号公報に記載されたフェライト皮膜形成方法における化学除染の工程内で実施されることになる。このため、本実施例における化学除染及びマグネタイト皮膜形成の施工に要する時間が、特開2007−182604号公報に記載されたフェライト皮膜形成方法における化学除染及びマグネタイト皮膜形成の施工に要する時間よりも短縮される。さらに、本実施例では、給水配管10の内面にマグネタイト皮膜を形成している間においても、皮膜形成液に含まれるシュウ酸の分解を継続して行っているので、シュウ酸の分解工程、すなわち、還元除染剤の分解工程が早く終了する。
マグネタイト皮膜を給水配管10の内面に形成するとき、pHが5.5以上である7の皮膜形成液を給水配管10の内面に接触させるので、マグネタイト皮膜が給水配管10の内面に形成されないほどに多量の鉄が給水配管10から溶出されることを防ぐことができる。このため、給水配管10の内面へのマグネタイト皮膜の形成が容易になる。
本実施例では、還元除染終了後に還元除染材であるシュウ酸の一部を分解して還元除染液のpHを増加しているので、還元除染液のpHを、給水配管10の内面へのマグネタイト皮膜の形成が可能なpH5.5以上、例えば、7にするために還元除染液に注入するヒドラジンの量を低減することができる。
本実施例では、マグネタイト皮膜を形成しているときに、弁60を閉じてカチオン交換樹脂塔48への過酸化水素を含む皮膜形成液の供給を停止する。このため、カチオン交換樹脂塔48内の陽イオン交換樹脂の過酸化水素による損傷を防止できる。弁61も閉じており、過酸化水素を含む皮膜形成液の混床樹脂塔49への供給も停止されている。このため、混床樹脂塔49の陽イオン交換樹脂の過酸化水素による損傷も防止される。
給水配管10の内面に緻密なマグネタイト皮膜を形成するので、沸騰水型原子力プラントの運転中において給水が流れる給水配管10の内面の腐食を防止することができる。
また、本実施例によれば、給水配管10の内面に緻密なマグネタイト皮膜を形成するので、給水に含まれる微量の放射性核種の給水配管10の内面への付着を抑制すると共に、上記したように、給水配管10内面の腐食を抑制することができる。このため、給水配管10を通しての原子炉圧力容器12内への遷移金属の流入を防ぐことができる。これは、原子炉圧力容器12内における炉水の放射能濃度の抑制につながり、原子炉圧力容器12に連絡された配管(例えば、再循環系配管22、浄化系配管20)への放射性核種の付着抑制をもたらす。
本発明の好適な他の実施例である実施例2の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を、図2、図3及び図6を用いて説明する。本実施例の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法は、BWRプラントの給水配管に適用される。
本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法は、実施例1の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法において、ステップS3の工程(還元除染剤分解工程)をステップS3A及び3Bに分割し、ステップS4〜S6の各工程をステップS3AとステップS3Bの間で行うものである。本実施例では、還元除染剤、すなわち、シュウ酸の分解が、給水配管10の内面にマグネタイト皮膜を形成している間において行われない。
本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法では、図3に示す皮膜形成装置30が用いられ、実施例1と同様に、ステップS1で皮膜形成装置30の循環配管31の両端部が給水配管10に接続される。その後、給水配管10の内面に対する化学除染の酸化除染及び還元除染が行われる(ステップS2)。
還元除染液に含まれる還元除染剤の一部を分解する(ステップS3A)。還元除染工程が終了した後に、還元除染剤の分解工程が開始される。注入ポンプ42の駆動を停止して弁43を全閉にし、薬液タンク41から循環配管31へのヒドラジンの注入を停止する。さらに、実施例1のステップ3aと同様に、循環配管31内を流れる還元除染液、すなわち、シュウ酸水溶液の一部を分解装置50に供給する。薬液タンク36から過酸化水素が供給される分解装置50内で、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンが分解される。シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の一部が分解されてこのシュウ酸水溶液のpHが4(シュウ酸濃度50ppm)になったとき、供給ポンプ37を停止し、弁62,72を全閉にする。これにより、シュウ酸の分解が停止され、ステップS3Aの工程が終了する。
その後、ステップS4における過酸化水素及びヒドラジンの注入が実施され、実施例1と同様に、pH7の過酸化水素及びヒドラジンを含む90℃のシュウ酸水溶液(皮膜形成液)が給水配管10に供給される。これにより、マグネタイト皮膜が給水配管10の内面に形成される。ステップS5の判定が「YES」になるまで、過酸化水素及びヒドラジンが循環配管31に注入される。ステップS5の判定が「YES」になったとき、過酸化水素及びヒドラジンの注入が停止される(ステップS6)。
還元除染剤及びpH調整剤の分解を実施する(ステップS3B)。給水配管10の内面へのマグネタイト皮膜の形成が終了した後、給水配管10から循環配管31に排出される皮膜形成液、すなわち、シュウ酸、過酸化水素及びヒドラジンを含む水溶液に残っているシュウ酸及びその皮膜形成に用いられたヒドラジンが、実施例1におけるステップS3cと同様に、分解装置50において分解される。循環配管31に排出されたその水溶液に含まれる過酸化水素は、分解装置50内でのシュウ酸及びヒドラジンの分解で消費される。ステップS3A及びS3Bでは、シュウ酸水溶液がカチオン交換樹脂塔48に供給される。ステップS3Bにおけるシュウ酸水溶液のカチオン交換樹脂塔48への供給は、そのシュウ酸水溶液の過酸化水素濃度が、カチオン交換樹脂塔48内の陽イオン交換樹脂が過酸化水素により損傷を受けなくなる濃度まで低下した後に行われる。なお、ステップS4〜S6では、弁60が閉じられている。残っているシュウ酸が分解装置50においてさらに分解されてシュウ酸水溶液のシュウ酸濃度及びヒドラジン濃度がさらに低下する。導電率計73で測定されたシュウ酸水溶液の導電率が設定導電率(シュウ酸濃度が10ppm)に低下したとき、シュウ酸及びヒドラジンの分解が終了する。このとき、そのシュウ酸水溶液のヒドラジン濃度は0になっている。供給ポンプ37が停止され、弁62,72が閉じられて全閉状態になる。
ステップS3Bの後に、ステップS7(浄化工程)及びステップS8(廃液処理工程)が実行される。ステップS8の工程が終了した後、循環配管31の両端部が給水配管10から取り外される。給水配管10が循環配管31の接続前の状態に復旧され、その後、BWRプラントの運転が開始される。
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例では、給水配管10の内面にマグネタイト皮膜を形成している間、シュウ酸の分解を停止しているため、実施例1に比べて化学除染及びマグネタイト皮膜形成の施工に要する時間が長くなるが、特開2007−182604号公報に記載されたフェライト皮膜形成方法におけるその時間よりも短縮される。本実施例では、給水配管10の内面にマグネタイト皮膜を形成している間、シュウ酸の分解を停止しているため、マグネタイト皮膜のために注入したヒドラジンの分解も行われない。このため、本実施例では、実施例1に比べてヒドラジンを有効に利用することができ、マグネタイト皮膜形成のために注入するヒドラジンの量をさらに低減することができる。
本発明の好適な他の実施例である実施例3の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を、図2、図3及び図7を用いて説明する。本実施例の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法は、BWRプラントの給水配管に適用される。
実施例1の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法では、還元除染工程の終了後に、還元除染剤に含まれるシュウ酸の一部を分解して還元除染剤のpHを増大させ、その後、酸化剤及びpH調整剤を注入している。pH調整剤の注入により還元除染剤のpHをさらに増大させている。これに対して、本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法では、還元除染工程の終了後に、pH調整剤を還元除染液に注入した還元除染液のpHを5.5以上にし、その後、酸化剤を注入する。本実施例においても、実施例1と同様に、ステップ1,2,5,6,7及び8が実施される。
皮膜形成装置30の循環配管31の両端部が給水配管10に接続され(ステップS1)、給水配管10の内面に対する化学除染の酸化除染及び還元除染が行われる(ステップS2)。pH調整剤を注入する(ステップS9)。還元除染工程が終了した後、循環配管31及び給水配管10を含む閉ループ内を流れる還元除染液のpHが、5.5以上の設定pHである、例えば、7になるまで、ヒドラジン(pH調整剤)を、薬液タンク41から循環配管31に注入する。具体的には、pH計74で計測された還元除染液のpHが7になるように、ヒドラジンが循環配管31内に注入される。循環配管31内を流れる還元除染液のpHが7になったとき、ヒドラジンの注入が停止される。本実施例では、シュウ酸の一部を分解しないで還元除染液のpHが7になるまでヒドラジンを還元除染液に注入するため、ヒドラジンの還元除染液への注入量は、実施例1及び2においてシュウ酸の一部を分解した後に注入されるヒドラジンの量よりも多くなる。
酸化剤を注入する(ステップS10)。pH計74が計測した還元除染液のpHが7になった後、弁38を開いて注入ポンプ37を駆動し、薬液タンク36内の過酸化水素を、注入配管39を通して循環配管31内を流れるpH7の還元除染液、すなわち、ヒドラジンを含むシュウ酸水溶液に注入する。過酸化水素及びヒドラジンを含む、pHが7で90℃のシュウ酸水溶液が、循環配管31を通って給水配管10内に供給され、給水配管10の内面に接触する。実施例1と同様に、給水配管10の内面に緻密なマグネタイト皮膜が形成される。本実施例でも、弁60,61が、皮膜形成液に酸化剤を注入している間、閉じられている。
ステップS5において、過酸化水素及びヒドラジンを含むpH7のシュウ酸水溶液の給水配管10への供給が開始されてから所定時間が経過したとき、フェライト皮膜の形成が終了したと判定される。ステップS5でフェライト皮膜の形成が終了したと判定されたとき、過酸化水素及びヒドラジンの注入が停止される(ステップS6)。
還元除染剤及びpH調整剤を分解する(ステップS3C)。過酸化水素及びヒドラジンの注入停止後に、弁72を開いて薬液タンク36内の過酸化水素を分解装置50に供給する。さらに、弁62を開いて弁56の開度を調節し、給水配管10から循環配管31に戻された過酸化水素及びヒドラジンを含むシュウ酸水溶液の一部を分解装置50に供給する。還元除染に用いた還元除染液に含まれているシュウ酸、還元除染に用いた還元除染液に含まれているヒドラジン、及びマグネタイト皮膜の形成のために還元除染液に注入したヒドラジンが、分解装置50において過酸化水素及び活性炭触媒の作用により、分解される。マグネタイト皮膜の形成のために注入されて過酸化水素及びヒドラジンの注入停止後に給水配管10から循環配管31に排出されたシュウ酸水溶液に含まれている過酸化水素は、分解装置50においてシュウ酸及びヒドラジンの分解で消費される。そのシュウ酸水溶液が上記した閉ループ内を循環しながら、そのシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンの分解装置50での分解が継続して行われる。そのシュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が10ppmになったとき、弁56の開度が増加されて弁62が閉じられ、分解装置50によるシュウ酸の分解が停止される。本実施例では、ステップS9で多量のヒドラジンが還元除染液に注入されるが、ヒドラジンの分解速度がシュウ酸のそれよりも早いため、シュウ酸の分解が停止されるまでに、還元除染液に含まれるヒドラジンは分解されてしまう。ステップS3Cにおいても、給水配管10から排出された、シュウ酸及びヒドラジンを含むシュウ酸水溶液がカチオン交換樹脂塔48に供給される。シュウ酸水溶液のカチオン交換樹脂塔48への供給は、その水溶液の過酸化水素濃度がカチオン交換樹脂塔48内の陽イオン交換樹脂に損傷を与えない濃度まで低下したときに行われる。このシュウ酸水溶液に含まれている金属陽イオンがカチオン交換樹脂塔48で除去される。
シュウ酸の分解が終了した後、浄化工程(ステップS7)及び廃液処理工程(ステップS8)が順次実行される。廃液処理工程が終了した後、実施例1と同様に、皮膜形成装置30が給水配管10から取り外されてBWRプラントの運転が開始される。
本実施例は、実施例1で生じる効果のうち、マグネタイト皮膜の形成工程及びこの形成に用いたヒドラジンの分解工程をシュウ酸の分解工程と並行して行うことによって得られる効果、及びシュウ酸を一部分解することによって得られる効果を除く他の効果を得ることができる。本実施例では、シュウ酸の分解と並行してマグネタイト皮膜を形成するために注入したヒドラジンの分解を行っており、シュウ酸の分解が終了するまでの間に、還元除染時に使用したヒドラジン、及びマグネタイト皮膜を形成するために注入したヒドラジンの分解を終了する。このため、本実施例における化学除染及びマグネタイト皮膜形成の施工に要する時間が、特開2007−182604号公報に記載されたフェライト皮膜形成方法における化学除染及びマグネタイト皮膜形成の施工に要する時間よりも短縮される。
本発明の好適な他の実施例である実施例4の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を、図1、図2及び図8を用いて説明する。本実施例の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法は、BWRプラントの給水配管に適用される。
本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法は、実施例1で用いる皮膜形成装置30の替りに図8に示す皮膜形成装置30Aを用いて行われる。皮膜形成装置30Aは、皮膜形成装置30においてカチオン交換樹脂塔48及び混床樹脂塔49を分解装置50の下流に配置した構成を有する。皮膜形成装置30Aでは、弁56が弁54と弁55の間で循環配管31に設置される。さらに、分解装置50及び弁62が設けられて弁56をバイパスする配管67の上流側の端部が、配管64と弁54の下流側における循環配管31との接続点と弁56との間で循環配管31に接続される。配管67の下流側の端部が、配管65と弁55の上流側における循環配管31との接続点と弁56の間で循環配管31に接続される。皮膜形成装置30Aの他の構成は皮膜形成装置30と同じである。
本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を、図1を用いて説明する。本実施例においても、実施例1と同様に、ステップS1〜S3,S7及びS8の各工程が実施され、ステップS3におけるシュウ酸の分解工程の実施と並列に、シュウ酸の一部が分解された後におけるステップS4〜S6の各工程が実施され、さらに、ステップS6が実施された後に、ステップS3cでの、シュウ酸の分解とマグネタイト皮膜の形成に用いたヒドラジンの分解が行われる。
本実施例が、実施例1と異なる点は、ステップS4において給水配管10の内面にマグネタイト皮膜を形成しているときにおいても、給水配管10から循環配管31に排出されたシュウ酸水溶液をカチオン交換樹脂塔48に供給することである。給水配管10から排出された過酸化水素及びヒドラジンを含み、pHが7で90℃のシュウ酸水溶液が分解装置50に導かれ、このシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の一部が分解される。このシュウ酸の分解時にシュウ酸水溶液に含まれる過酸化水素が消費される。分解装置50から排出された、過酸化水素を含んでいなく、ヒドラジンを含むシュウ酸溶液がカチオン交換樹脂塔48に導かれる。シュウ酸水溶液に含まれる金属陽イオンがカチオン交換樹脂塔48で除去される。薬液タンク36内の過酸化水素及び薬液タンク41内のヒドラジンが、カチオン交換樹脂塔48から排出されたヒドラジンを含むシュウ酸水溶液に注入され、過酸化水素及びヒドラジンを含み、pHが7で90℃のシュウ酸濃度が低下したシュウ酸水溶液が循環配管31内で生成される。この水溶液がマグネタイト皮膜形成のために給水配管10内に供給される。ステップS5の判定が「YES」になるまで、そのシュウ酸水溶液が、分解装置50及びカチオン交換樹脂塔48を通過しながら、循環配管31及び給水配管10を含む閉ループ内を循環する。
過酸化水素を含まないシュウ酸水溶液をカチオン交換樹脂塔48に供給するためには、弁56を全閉状態にし、循環配管31内を流れるシュウ酸水溶液の全量を分解装置50に供給する必要がある。しかしながら、分解装置50におけるシュウ酸等の分解処理能力に合せて分解装置50に供給するシュウ酸水溶液の流量を低減する必要があるため、循環ポンプ33,34の回転数がそれぞれ低下される。
ステップS5の判定が「YES」になったとき、過酸化水素及びヒドラジンの注入が停止され(ステップS6)、ステップS3cにおけるシュウ酸及びヒドラジンの分解が行われる。ステップS3cの工程が実行されている間においても、シュウ酸水溶液が分解装置50及びカチオン交換樹脂塔48を通過する。
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、シュウ酸の分解及びカチオン交換樹脂塔48での金属陽イオンの除去を行いながら給水配管10の内面にマグネタイト皮膜を形成することができる。
本発明の好適な他の実施例である実施例5の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を、図1、図3及び図9を用いて説明する。本実施例の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法は、BWRプラントの原子炉浄化系に適用される。本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法では、図3に示す皮膜形成装置30が用いられる。
本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法は、図1に示された全てのステップが実施される。まず、ステップS1において、皮膜形成装置が皮膜形成対象の配管系に接続される。本実施例で実行されるステップS1の工程を、図9を用いて具体的に説明する。原子炉浄化系において炭素鋼で作られている部分は、例えば、再生熱交換器25のシェルである。BWRプラントの運転が停止された期間において、再生熱交換器25の上流で浄化系配管20に設けられた弁17のボンネットを開放し、皮膜形成装置30の循環配管31の開閉弁51側の端部を弁17の開放されたボンネットのフランジに接続する。なお、浄化系配管20に設けられた弁23は閉じられている。再生熱交換器25の下流で浄化系配管20に設けられた弁18のボンネットを開放し、このボンネットの非再生熱交換器26側のフランジ(図示せず)を封鎖する。皮膜形成装置30の循環配管31の開閉弁58側の端部を弁18の開放されたボンネットのフランジに接続する。このようにして、皮膜形成装置30が浄化系配管20に接続され、浄化系配管20及び循環配管31を含む閉ループが形成される。
その後、再生熱交換器25のシェルの内面に対して酸化除染及び還元除染がそれぞれ実施される(ステップS2)。還元除染に用いられた還元除染液に含まれるシュウ酸(還元除染剤)の分解がステップS3で行われる。ステップS3においてシュウ酸の一部が分解された後、過酸化水素及びヒドラジンの注入(ステップS4)、再生熱交換器25のシェルの内面へのマグネタイト皮膜の形成の終了の判定(ステップS5)及び過酸化水素及びヒドラジンの注入停止(ステップS6)の各工程が、シュウ酸の分解工程と並行して実施される。ステップ4において、マグネタイト皮膜が再生熱交換器25のシェルの内面に形成される。ステップS6の工程が終了した後、シュウ酸及びマグネタイト皮膜の形成に用いられたヒドラジンの分解が実施される(ステップS3c)。
ステップS3cの工程が終了した後、浄化工程(ステップS7)及び廃液処理工程(ステップS8)が順次実行される。廃液処理工程が終了した後、皮膜形成装置30が浄化系配管20から取り外されてBWRプラントの運転が開始される。
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。
本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法では、図1に示された手順の替りに、図6に示された手順及び図7に示された手順のいずれかを実施しても良い。
本発明の好適な他の実施例である実施例6の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法を、図2、図3及び図10を用いて説明する。本実施例の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法は、BWRプラントの給水配管10に適用される。本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法は、BWRプラントの原子炉浄化系に適用しても良い。本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法では、図3に示す皮膜形成装置30が用いられる。本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法では、給水配管10の内面へのマグネタイト皮膜の形成を、化学除染が終了した後、すなわち、酸化除染工程、酸化除染剤分解工程、還元除染工程、還元除染剤分解工程及び浄化工程の5つの工程を実施した後に行っている。
本実施例の炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法の手順を、図10を用いて説明する。皮膜形成装置30の循環配管31の両端部を、実施例1と同様に、給水配管10に接続する(ステップS1)。その後、実施例1において実施された、酸化除染工程、酸化除染剤分解工程及び還元除染工程(ステップS2)、還元除染剤の分解工程(ステップS3)及び浄化工程(ステップS7)を含む化学除染が実施される(ステップS2A)。なお、本実施例におけるステップS3では、マグネタイト皮膜の形成に用いられたヒドラジンの分解(ステップS3cで実施)が行われず、還元除染工程で用いられた還元除染液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンの分解が分解装置50において行われる。
皮膜形成液の温度を調節する(ステップS11)。皮膜形成対象物である給水配管10に対する化学除染終了後、すなわち、皮膜形成装置30を用いた最後の浄化工程が終了した後、以下の弁操作が行われる。弁52を開いて弁53を閉じ、フィルタ45への通水を開始する。弁55を開いて弁61を閉じることにより、混床樹脂塔49への通水を停止する。さらに、弁54を開いて加熱器46によって循環配管31内を流れる水を所定温度(例えば、90℃)まで加熱する。このとき、弁51及び56〜58は開いており、弁59,60,62,70,38,43及び72は閉じている。循環ポンプ33,34が回転している。皮膜形成液の温度は、給水配管10の内面に皮膜を形成している間、加熱器46によって90℃に調節され、この温度に保持される。フィルタ51への通水は、水中に残留している微細な固形物を除去し、この固形物の表面にも酸化皮膜が形成されて薬剤が無駄に使用されることを防止するためである。
酸化剤及びpH調整剤が注入される(ステップS4)。循環配管31内の水の温度が設定温度(例えば、90℃)に調節された後、循環配管31内を流れる90℃の水に、薬液タンク36内の過酸化水素及び薬液タンク41内のヒドラジンが注入される。これらの薬剤の注入により、過酸化水素及びヒドラジンを含み、pHが7で90℃の水溶液(皮膜形成液)が生成される。この皮膜形成液が循環配管31より給水配管10内に供給され、実施例1と同様に、給水配管10の内面にマグネタイト皮膜を形成する。ステップS5の判定が「YES」になったとき、過酸化水素及びヒドラジンの循環配管31への注入が停止される(ステップS6)。
pH調整剤の分解が実施される(ステップS12)。ステップS6の工程が終了した後、皮膜形成液に含まれるヒドラジンが、過酸化水素が供給される分解装置50において、ステップS2Aにおける還元除染剤の分解工程と同様に、分解される。ステップS12おいてヒドラジンの分解が終了した後、ステップS8の廃液処理工程が実施される。廃液処理工程が終了した後、皮膜形成装置30が給水配管10から取り外されてBWRプラントの運転が開始される。
本実施例においても、実施例1と同様に、過酸化水素及びヒドラジンを含み、pHが7で90℃の水溶液が給水配管10の内面に接触されるため、溶出した鉄と過酸化水素と化学反応により、給水配管10の内面にマグネタイト皮膜が形成される。このため、本実施例におけるマグネタイト皮膜の形成に要する時間が、特開2007−182604号公報に記載された方法で給水配管の内面にマグネタイト皮膜を形成する場合に要する時間よりも短縮される。また、本実施例では、鉄をギ酸に溶解して鉄(II)イオンを含む薬剤を作る必要が無く、皮膜形成液に含まれるギ酸を分解する工程も不要である。また、本実施例では、実施例1で生じる給水配管10の腐食防止、及びRPV12に接続された配管内面への放射性核種の付着抑制の各効果を得ることができる。
実施例1ないし6の各実施例で実施される化学除染の還元除染工程では、還元除染剤(例えば、シュウ酸)及びpH調整剤(例えば、ヒドラジン)を含む還元除染液が用いられる。このような化学除染に対して、還元除染剤(例えば、シュウ酸)を含みpH調整剤(例えば、ヒドラジン)を含まない還元除染液を用いて還元除染を行う化学除染が知られている。
酸化除染工程、酸化除染剤分解工程、還元除染剤を含みpH調整剤を含まない還元除染液を用いた還元除染工程、還元除染剤分解工程及び浄化工程が実施される場合においても、前述の実施例1ないし6のいずれかを適用し、酸化剤及びpH調整剤を含むpHが5.5〜9.5の範囲内に存在する或るpHになっている皮膜形成液を用いて、給水配管10の内面または再生熱交換器25のシェルの内面にマグネタイト皮膜を形成しても良い。これらの実施例では、図1に示された手順のステップS3a、図6に示された手順のステップ3A及び図7に示されて手順のステップS3Cのそれぞれにおいて、還元除染工程で用いられた還元除染液に含まれたpH調整剤(例えば、ヒドラジン)の分解は行われない。
1…原子炉、3…タービン、4…復水器、10…給水配管、12…原子炉圧力容器、20…浄化系配管、22…再循環系配管、25…再生熱交換器、30,30A…皮膜形成装置、31…循環配管、32…サージタンク、33,34…循環ポンプ、35…酸化剤注入装置、36,41…薬液タンク、37,42…注入ポンプ、39,44…注入配管、40…pH調整剤注入装置、46…加熱器、47…冷却器、48…カチオン交換樹脂塔、49…混床樹脂塔、50…分解装置、69…エゼクタ、74…pH計。

Claims (19)

  1. 酸化剤及びpH調整剤を含む皮膜形成液を原子力プラントの構成部材である炭素鋼部材の表面に接触させ、前記酸化剤により、イオン化された、前記炭素鋼部材の鉄と、前記酸化剤との反応により前記炭素鋼部材の前記表面にフェライト皮膜を形成することを特徴とする原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  2. 前記表面にフェライト皮膜を形成した後、前記皮膜形成液に含まれる前記pH調整剤を分解する請求項1に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  3. 前記pH調整剤の分解が酸化剤及び触媒を用いて行われ、この酸化剤として、前記皮膜形成液に含まれた前記酸化剤を用いる請求項3に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  4. 前記炭素鋼部材の前記表面に接触する前記皮膜形成液のpHが5.5〜9.5の範囲内にある請求項1ないし3のいずれか1項に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  5. 前記炭素鋼部材の前記表面に接触させる、前記皮膜形成液の温度を、60℃〜100℃の範囲内に調節する請求項2に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  6. 前記炭素鋼部材である、原子炉圧力容器に接続される第1配管に、前記皮膜形成液を昇圧するポンプ及び前記皮膜形成液を加熱する加熱装置が設けられる第2配管を接続し、前記酸化剤及び前記pH調整剤を含む前記皮膜形成液を、前記第2配管を通して前記第1配管内に供給し、前記皮膜形成液を、前記炭素鋼部材の前記表面である前記第1配管の内面に接触させる請求項1に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  7. 還元除染剤の水溶液を用いて、原子力プラントの構成部材である炭素鋼部材の表面の還元除染を行い、前記還元除染が終了した後に、前記水溶液のpHを増加させ、酸化剤、pH調整剤及び前記還元除染剤を含む、pHが増加された前記水溶液を、前記炭素鋼部材の表面に接触させ、前記酸化剤により、イオン化された、前記炭素鋼部材の鉄と、前記酸化剤との反応により前記炭素鋼部材の前記表面にフェライト皮膜を形成し、前記フェライト皮膜の形成後、前記還元除染剤及び前記pH調整剤を分解することを特徴とする原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  8. 前記水溶液のpHの増加が、前記還元除染が終了した後に実施される前記還元除染剤の分解工程内で、前記還元除染剤の一部を分解することにより行われる請求項7に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  9. 前記還元除染剤の一部が分解された後に行われる前記pHが増加された水溶液の前記表面への接触、及び前記表面への前記フェライト皮膜の形成が、前記還元除染剤の分解工程内での前記還元除染剤の分解と並行して行われる請求項8に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  10. 前記還元除染剤の一部が分解された後に行われる前記pHが増加された水溶液の前記表面への接触、及び前記表面への前記フェライト皮膜の形成が、前記還元除染剤の分解が停止されている状態で行われる請求項8に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  11. 前記還元除染に用いられる前記還元除染剤の水溶液が前記pH調整剤を含んでいるとき、このpH調整剤の分解が前記還元除染剤の前記分解工程で行われる請求項8に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  12. 前記水溶液のpHの増加が、前記水溶液への前記pH調整剤の注入により行われる請求項7に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  13. 前記還元除染に用いられる前記還元除染剤の水溶液が前記pH調整剤を含んでいるとき、このpH調整剤の分解が、前記フェライト皮膜の形成後に行われる前記還元除染剤の前記分解工程で行われる請求項12に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  14. 前記フェライト皮膜の形成時に前記炭素鋼部材の前記表面に接触する前記水溶液のpHが5.5〜9.5の範囲内にある請求項7に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  15. 前記炭素鋼部材である、原子炉圧力容器に接続される第1配管に、前記水溶液を昇圧するポンプ及び前記水溶液を加熱する加熱装置が設けられる第2配管を接続し、前記還元除染時に前記還元除染剤の前記水溶液を前記第2配管を通して前記第1配管に供給し、前記フェライト皮膜の形成時に前記酸化剤及び前記pH調整剤を含む前記水溶液を、前記第2配管を通して前記第1配管内に供給し、前記酸化剤及び前記pH調整剤を含む前記水溶液を、前記炭素鋼部材の前記表面である前記第1配管の内面に接触させる請求項7に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  16. 前記還元除染時に前記還元除染剤の前記水溶液を前記第1配管及び前記第2配管により形成される閉ループ内を循環させ、前記フェライト皮膜の形成時に前記酸化剤及び前記pH調整剤を含む前記水溶液を前記閉ループ内を循環させる請求項15に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  17. 前記還元除染剤及び前記pH調整剤の分解時に、前記還元除染剤及び前記pH調整剤を含む前記水溶液を、前記第2配管に設けられて触媒を有し、酸化剤が供給される分解装置に供給する請求項16に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  18. 前記分解装置から排出された前記水溶液を、陽イオン交換樹脂が充填されたカチオン樹脂塔に供給する請求項17に記載の原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法。
  19. 主配管と、前記主配管に接続された酸化剤注入装置と、前記主配管に接続されたpH注入装置と、前記酸化剤注入装置及び前記pH調整剤注入装置のそれぞれの前記主配管との接続点よりも上流で前記主配管に設けられた第1弁と、前記第1弁よりも上流で前記主配管に設けられた第2弁と、前記第1弁をバイパスして両端部が前記主配管に接続される第1バイパス配管に設けられた第3弁、及び陽イオン交換樹脂が充填されるカチオン樹脂塔と、前記第2弁をバイパスして両端部が前記主配管に接続される第2バイパス配管に設けられた第4弁、及び触媒が充填される分解装置とを備えたことを特徴とする皮膜形成装置。
JP2012250898A 2012-11-15 2012-11-15 原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及び皮膜形成装置 Pending JP2014098192A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012250898A JP2014098192A (ja) 2012-11-15 2012-11-15 原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及び皮膜形成装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012250898A JP2014098192A (ja) 2012-11-15 2012-11-15 原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及び皮膜形成装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014098192A true JP2014098192A (ja) 2014-05-29

Family

ID=50940429

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012250898A Pending JP2014098192A (ja) 2012-11-15 2012-11-15 原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及び皮膜形成装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014098192A (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001235584A (ja) * 2000-02-25 2001-08-31 Hitachi Ltd 原子力プラント及びその運転方法
JP2007182604A (ja) * 2006-01-06 2007-07-19 Hitachi Ltd 炭素鋼の腐食抑制方法およびその装置
JP2010229543A (ja) * 2009-03-06 2010-10-14 Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd 炭素鋼部材へのニッケルフェライト皮膜形成方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001235584A (ja) * 2000-02-25 2001-08-31 Hitachi Ltd 原子力プラント及びその運転方法
JP2007182604A (ja) * 2006-01-06 2007-07-19 Hitachi Ltd 炭素鋼の腐食抑制方法およびその装置
JP2010229543A (ja) * 2009-03-06 2010-10-14 Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd 炭素鋼部材へのニッケルフェライト皮膜形成方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6034149B2 (ja) 原子力プラントの構成部材への貴金属付着方法
JP6620081B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属の付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP2012247322A (ja) プラント構成部材への白金皮膜形成方法
JP6619717B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属の付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP2011247651A (ja) プラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法
JP2016102727A (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種付着抑制方法及び皮膜形成装置
JP5420472B2 (ja) プラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法
JP5377147B2 (ja) 炭素鋼部材へのニッケルフェライト皮膜形成方法
JP6552892B2 (ja) 原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法
JP5500958B2 (ja) 原子力部材へのフェライト皮膜形成方法、応力腐食割れの進展抑制方法及びフェライト成膜装置
JP6931622B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属の付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP6751044B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属の付着方法、及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP6322493B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種付着抑制方法
JP6868545B2 (ja) プラントの炭素鋼部材の腐食抑制方法
JP6059106B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法
JP2013164269A (ja) 原子力プラント構成部材の線量低減方法及び原子力プラント
JP2011149764A (ja) 原子力プラント構成部材の線量低減方法
JP6751010B2 (ja) 放射性物質付着抑制皮膜の形成方法
JP2017122593A (ja) 放射性核種の付着抑制方法、及び炭素鋼配管への皮膜形成装置
JP2014098192A (ja) 原子力プラントにおける炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及び皮膜形成装置
JP2017138139A (ja) 化学除染方法並びに化学除染装置及びこれを用いる原子力プラント
JP7001534B2 (ja) 原子力プラントの構造部材への放射性核種の付着抑制方法
JP6894862B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種付着抑制方法
JP7142587B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP5645759B2 (ja) 原子力プラント構成部材の線量低減方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150305

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160125

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160202

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20160920