ところで、紙幣をテープと共にリールに巻き取って収納する巻き取り式の収納部を備えた紙幣処理装置において、収納部の収納容量を増やそうとすれば、リールに巻き取る紙幣同士の収納間隔を狭く設定すればよい。
そのように収納間隔を狭く設定したときには、収納部から繰り出した紙幣を搬送路に沿って搬送する際に、紙幣同士の搬送間隔が収納間隔と同様に狭くなってしまう。しかしながら、紙幣を搬送する際には、識別部における識別精度を確保する上で、その搬送間隔を所定以上の間隔にしなければならないという制約がある。この識別精度に関する制約から、収納部における紙幣の収納間隔を狭くすることができず、収納容量がその分、少なくなってしまうという不都合がある。
収納容量の増大と識別精度の確保とを両立するために、収納間隔を狭くする一方で、搬送間隔を広くすることが考えられる。例えば収納部から紙幣を繰り出す繰り出し速度を、搬送路上で紙幣を搬送する搬送速度よりも低速にすれば、搬送路上での紙幣の搬送間隔を、収納部での紙幣の収納間隔よりも広くすることが可能になる。ところが、本願発明者等が検討したところ、紙幣の繰り出し速度を搬送速度よりも低速にすることは、紙幣の斜行状態を悪化させる場合があることが判明した。
すなわち、図11に示すように、例えば短手搬送される紙幣100の、長手方向に間隔を空けて配置した2本のベルト101、101が、収納部からの紙幣の繰り出し、及び、搬送路上の紙幣100の搬送を行う場合を考える。図11において、一点鎖線よりも紙面左側が収納部に対応し、紙面右側が搬送部に対応する。収納部は、紙面の左から右の方向に紙幣100を繰り出し、搬送部は、紙面の左から右の方向に紙幣100を搬送する。ここで、搬送路上の紙幣100の搬送速度をV1、収納部からの紙幣100の繰り出し速度をV2とする。紙幣100の繰り出し速度V2を搬送速度V1よりも低速にした場合(V2<V1)、図11に破線で示すように、収納部から繰り出される紙幣100が傾いていると、紙幣の長手方向の一側(図11における紙面上側)が、他側(図11における紙面下側)よりも先に、高速のベルト101に触れるようになる。これにより、紙幣100の長手方向の一側と他側との間に速度差(V1−V2)が生じるから、図11の例では、紙幣100が時計回り方向に回転するようになる(図11の実線参照)。すなわち、紙幣の繰り出し速度V2を搬送速度V1よりも低速にした場合は、収納部から繰り出す紙幣100が傾いているときに、その傾きをさらに大きくする場合があるから、斜行状態が悪化するのである。尚、図11では、2本のベルト101、101によって紙幣100の繰り出し及び搬送を行う例を示したが、斜行状態が悪化する現象はベルトが1本の構成においても同様に生じ得る。
斜行状態の悪化は、当該紙幣がリジェクトと識別される可能性を高める。また、収納部からの繰り出しを繰り返し行うことは、紙幣の斜行状態を次第に悪化させることになる。巻き取り式の収納部は、紙幣を先入れ後出しに収納するため、先に収納された紙幣は、なかなか出金されずに当該収納部内に長く収納される場合がある。その間に当該収納部の在高を確定させる精査処理が繰り返し行われると、収納部からの繰り出しを繰り返し行うことになるから、紙幣の傾きが次第に大きくなって斜行状態が悪化し得る。
このように収納容量の増大と識別精度の確保とを両立する上では、収納部から紙幣を繰り出す繰り出し速度を、搬送路上で紙幣を搬送する搬送速度よりも低速にすることが好ましい一方で、繰り出し速度と搬送速度とを異ならせることは、紙幣の斜行状態を悪化させるという別の問題を生む。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、巻き取り式の収納部を備えた紙幣処理装置において、収納容量の増大と識別精度の確保との両立、及び、紙幣の斜行状態の悪化の回避を適宜切り替えることで、紙幣処理装置の運用の適正化を図ることにある。
ここに開示する技術は、紙幣処理装置に係り、筐体内に配設されかつ、所定の収納間隔を設けながら紙幣をリールに巻き取って収納すると共に、当該リールに巻き取っている紙幣を繰り出し可能に構成された巻き取り式の収納部と、前記収納部に接続された搬送路を有しかつ、前記紙幣を、所定の搬送間隔を空けた状態で前記搬送路に沿って搬送するように構成された搬送部と、少なくとも前記収納部及び前記搬送部の制御を通じて所定の処理を実行するように構成された制御部と、を備える。
そして、前記制御部は、前記収納部から前記紙幣を繰り出す際に、前記紙幣の繰り出し速度と前記搬送路上の前記紙幣の搬送速度とが等速の状態で前記紙幣を繰り出す第1の繰り出しモードと、前記繰り出し速度が前記搬送速度よりも低速の状態で前記紙幣を繰り出す第2の繰り出しモードと、を切り替え可能に構成されている。
第1の繰り出しモードでは、収納部からの紙幣の繰り出し速度と、搬送路上の紙幣の搬送速度とが等速の状態で紙幣を繰り出すため、仮に紙幣が傾いていたとしても、その傾きをさらに大きくすることにはならず、紙幣の斜行状態が悪化することはない。
一方、第2の繰り出しモードでは、紙幣の繰り出し速度が紙幣の搬送速度よりも低速の状態で、収納部から紙幣を繰り出すため、仮に紙幣が傾いていたときには、その傾きをさらに大きくする可能性がある。一方で、第2の繰り出しモードを利用することによって、収納部内の紙幣の収納間隔を相対的に狭くかつ、搬送路上の紙幣の搬送間隔を相対的に広くすることが実現し得るから、収納部の収納容量の増大と識別精度の確保とが両立し得る。
前記の構成は、第1の繰り出しモードと第2の繰り出しモードとを切り替え可能であるから、斜行状態の悪化を回避することと、収納容量の増大と識別精度の確保とを両立することとを適宜切り替えることによって、紙幣処理装置の運用を適正化することが可能になる。
前記制御部は、実行する処理の内容に応じて、前記第1の繰り出しモードと、前記第2の繰り出しモードとを切り替える、としてもよい。
つまり、収納部からの紙幣の繰り出しを伴う処理の内容に応じて、第1の繰り出しモードと第2の繰り出しモードとを切り替えることにより、紙幣処理装置の運用が適正化する。
前記制御部は、前記収納部から繰り出した前記紙幣が前記筐体内に留まる処理を実行するときには、前記第1の繰り出しモードで前記収納部から前記紙幣を繰り出す、としてもよい。
収納部から繰り出した紙幣が筐体内に留まる場合には、紙幣の斜行状態が維持され得る、つまり、紙幣が傾いたままになるから、第2の繰り出しモードで収納部から紙幣を繰り出すことを繰り返せば、紙幣の傾きが次第に大きくなって斜行状態を大きく悪化させる可能性がある。これに対し、第1の繰り出しモードで収納部から紙幣を繰り出すことは、前述の通り、紙幣の斜行状態を悪化させない。
前記制御部は、前記収納部の在高を確認する精査処理時には、精査対象の収納部が繰り出した前記紙幣を、当該収納部とは別の収納部に一旦収納すると共に、前記別の収納部が繰り出した前記紙幣を前記精査対象の収納部に再び収納しかつ、前記精査対象の収納部と前記別の収納部との間で前記搬送路に沿って前記紙幣を搬送している途中で各紙幣について識別を行った結果に基づき、前記精査対象の収納部の在高を確認し、前記制御部はまた、前記精査処理を実行するときには、前記第1の繰り出しモードで前記収納部から前記紙幣を繰り出す、としてもよい。
精査処理は、収納部から繰り出した紙幣が筐体内に留まる処理の一例である。精査処理を実行するときには、精査対象の収納部から紙幣を繰り出す際、及び、精査対象とは別の収納部から紙幣を繰り出す際のそれぞれで、第1の繰り出しモードで紙幣を繰り出すことにより、紙幣の斜行状態が悪化してしまうことが回避される。従って、精査処理を繰り返し行ったとしても、リジェクトと識別される紙幣は増えない。
前記制御部は、前記収納部から繰り出した前記紙幣を前記筐体外に払い出す処理を実行するときには、前記第2の繰り出しモードで前記収納部から前記紙幣を繰り出す、としてもよい。
筐体外に紙幣を払い出すことに伴い紙幣の傾きはなくなり、斜行状態が解消される。従って、収納部から繰り出した紙幣を筐体外に払い出す処理を実行するときには、第2の繰り出しモードで収納部から紙幣を繰り出す。これにより、収納容量の増大と識別精度の確保とが両立し得る。一方で、第2の繰り出しモードによって仮に紙幣の斜行状態が悪化したとしても、それによる不都合は生じない。
前記制御部は、前記収納部から繰り出した紙幣を、前記搬送路に沿って搬送した後に、出金部に払い出す出金処理を実行するときには、前記第2の繰り出しモードで前記収納部から前記紙幣を繰り出す、としてもよい。
出金処理は、収納部から繰り出した紙幣を筐体外に払い出す処理の一例である。この出金処理時の第2の繰り出しモードにおいて、例えば搬送路上の紙幣の搬送速度を高めるようにすれば、出金処理に要する時間が短縮し得る。
前記紙幣処理装置は、前記筐体内に着脱可能に装着されるよう構成された、前記巻き取り式の一時保留部をさらに備え、前記制御部は、前記一時保留部が装着されているときには、前記第1の繰り出しモードで前記収納部から紙幣を繰り出すと共に、前記一時保留部が非装着のときには、前記第2の繰り出しモードで前記収納部から紙幣を繰り出す、としてもよい。
一時保留部が装着されているときには、この一時保留部を利用して精査処理を実行することが可能である。そこで、一時保留部が装着されているときには、紙幣の斜行状態が悪化することを回避すべく、第1の繰り出しモードで収納部から紙幣を繰り出す。一方、一時保留部が装着されていないときには精査処理は行われないから、精査処理の繰り返しにより紙幣の斜行状態が悪化してしまうことを考慮する必要がない。そこで、第2の繰り出しモードで収納部から紙幣を繰り出すことにより、収納容量の増大と識別精度の確保とが両立し得る。
前記紙幣処理装置は、前記収納部に収納している紙幣の在高を確認する精査処理の実行可否を設定するよう構成された設定部をさらに備え、前記制御部は、前記設定部によって、前記精査処理が実行可能に設定されているときには前記第1の繰り出しモードで前記収納部から紙幣を繰り出すと共に、前記精査処理が実行不可能に設定されているときには前記第2の繰り出しモードで前記収納部から紙幣を繰り出す、としてもよい。
精査処理を実行可能に設定されているときには、紙幣の斜行状態が悪化することを回避すべく、第1の繰り出しモードで収納部から紙幣を繰り出す。一方、精査処理の実行が不可に設定されているときには、紙幣の斜行状態の悪化を考慮する必要がないから、収納容量の増大と識別精度の確保との両立を優先して、第2の繰り出しモードで収納部から紙幣を繰り出す。
前記第1の繰り出しモード及び前記第2の繰り出しモードのいずれか一方が設定されており、前記制御部は、前記第1の繰り出しモードが設定されているときには、第1の収納間隔で前記収納部に紙幣を収納する一方、前記第2の繰り出しモードが設定されているときには、前記第1の収納間隔よりも狭い第2の収納間隔で前記収納部に紙幣を収納する、としてもよい。
第1の繰り出しモードが設定されているときには、収納部内の紙幣の収納間隔と搬送路上の紙幣の搬送間隔とは同じになるため、搬送間隔は、識別精度を確保する上で必要な所定間隔以上としなければならず、それに伴い、収納間隔も当該所定間隔以上としなければならない。つまり、第1の収納間隔は、識別精度の制約から比較的広くすることが望ましい。このことは、識別精度の確保を可能にする一方で、収納容量は少なくなる。
これに対し、第2の繰り出しモードが設定されているときには、搬送路上の紙幣の搬送間隔は、収納部内の紙幣の収納間隔よりも広くなるから、第2の収納間隔を比較的狭くしても、識別精度の確保が可能になる。第2の収納間隔を比較的狭くすることは、収納容量を増やす上で有利になる。すなわち、収納容量の増大と識別精度の確保とが両立する。
ここに開示する技術はまた、紙幣処理装置の制御方法に係り、この制御方法は、巻き取り式の収納部内に所定の収納間隔で巻き取って収納している紙幣を、当該収納部から順次繰り出すステップ、及び、前記収納部から繰り出した紙幣を、所定の搬送間隔を空けた状態で搬送路に沿って搬送するステップを備え、前記紙幣を繰り出すステップは、前記紙幣の繰り出し速度と前記搬送路上の前記紙幣の搬送速度とが等速の状態で前記紙幣を繰り出す第1の繰り出しモード、及び、前記繰り出し速度が前記搬送速度よりも低速の状態で前記紙幣を繰り出す第2の繰り出しモードのいずれか一方を選択して、前記収納部から前記紙幣を繰り出す。
第1の繰り出しモードと第2の繰り出しモードとを選択的に行うことにより、斜行状態の悪化を回避することと、収納容量の増大と識別精度の確保との両立することとが適宜切り替わり、紙幣処理装置の運用が適正化する。
以上説明したように、前記の紙幣処理装置及び紙幣処理装置の制御方法によると、巻き取り式の収納部を備えた紙幣処理装置の運用が適正化する。
以下、紙幣処理装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態の説明は例示である。図1は、紙幣入出金機(以下、単に入出金機という)1の外観を示している。この入出金機1は、例えば銀行のテラーカウンターに設置されかつ、この入出金機1を挟んだ左右二人のテラーによって共用で使用される。このため、この入出金機1は、基本的には左右対称に構成されている。
この入出金機1は、詳しくは後述するが、入金口211に投入された紙幣を収納部3に収納する入金処理、及び、収納部3に収納している紙幣を出金口231に払い出す出金処理を少なくとも実行する。この入出金機1は、いわゆる循環式の入出金機であり、出金処理時に払い出す紙幣には、入金処理時に収納部3に収納した紙幣が含まれる。
入出金機1は、図1及び2に示すように、上側の処理部11と、下側の金庫部13とに大別される。処理部11を構成する筐体111内には、入金口211を有する入金部21と、出金口231を有する出金部23と、紙幣の識別を行う識別部25と、入金部21、出金部23及び識別部25を相互に連結するループ搬送路411を含む処理部側搬送部41と、が配設されている。一方、金庫部13を構成する筐体131内には、複数の(図例では8個の)巻き取り方式の収納モジュール31を含んで構成された収納部3と、処理部側搬送部41のループ搬送路411と各収納モジュール31とを互いに接続する搬送路431を含む金庫部側搬送部43と、が配設されている。ここで、金庫部13を構成する筐体は、処理部11を構成する筐体111とは異なり、その内部に格納している収納部3等を、所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成された防護筐体131である。防護筐体131の前面には、金庫部13を開閉するための開閉扉133や電子錠1331が設けられている。
入金部21の入金口211は、前述したように、例えば入金処理の際に入金する紙幣を投入するための口である。入金口211は、処理部側筐体111の上面において上向きに開口していて、複数枚の紙幣を一度に受け入れ可能に構成されている。入金部21はまた、入金口211に投入された複数枚の紙幣を、一枚ずつ、ループ搬送路411に繰り出す繰り出し機構を備えている。
出金部23の出金口231は、前述したように、例えば出金処理の際に紙幣を払い出すための口である。出金口231は、入金口211よりも装置手前側(図2の紙面右側)の、処理部側筐体111における上面から前面にかけての位置でかつ、斜め上方に向かって開口している。この出金口231も、入金口211と同様に、複数枚の紙幣を一度に保持可能に構成されている。
識別部25は、ループ搬送路411上に配設されて、そのループ搬送路411に沿って搬送される紙幣の一枚一枚について、その真偽、金種、正損及び搬送異常等を識別するように構成されている。
処理部側搬送部41は、処理部側筐体111内においてエンドレスに設けられたループ搬送路411を備えている。紙幣は、このループ搬送路411に沿って図2における時計回り方向及び反時計回り方向に搬送される。このループ搬送路411は、図示は省略するが、多数のローラ、複数のベルト及び複数のガイドの組み合わせによって構成されている。ループ搬送路411は、その搬送路に沿って、紙幣と紙幣との間に所定の搬送間隔を隔てた状態で、紙幣を一枚ずつ短手搬送する。
ループ搬送路411と入金口211との間は、投入路413によって互いに接続されており、入金口211に投入された紙幣は、この投入路413を通ってループ搬送路411まで搬送される。
ループ搬送路411にはまた、払出路415が、紙幣の搬送方向を切り替える分岐機構417を介して接続されている。払出路415の先端は、出金口231に接続されている。分岐機構417は、ループ搬送路411を時計回り方向及び反時計回り方向に搬送されている紙幣を、そのままループ搬送路411上で搬送させるか、払出路415に引き込むかを切り替えるように動作する。この構成によって、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣は、分岐機構417の動作制御によって選択的に、払出路415を通って出金口231に搬送される。
ループ搬送路411上にはまた、第1及び第2の分岐機構419,4111が設けられている。第1及び第2の分岐機構419,4111はそれぞれ、互いに異なる3方向に延びる搬送路の集合位置において、所定方向から搬送されてくる紙幣を、それとは別の2方向それぞれに選択的に搬送させるように動作する。分岐機構の具体的な構成は、国際公開第2009/034758号に例示されている。
より具体的に、第1の分岐機構419は、ループ搬送路411と金庫部側搬送部43の搬送路431との接続位置に設けられている。第1の分岐機構419は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、選択的に、金庫部側搬送部43の搬送路431に送って、収納部3に収納させるか、又は、収納部3から繰り出されかつ、金庫部側搬送部43の搬送路431に沿って搬送されてきた紙幣を、ループ搬送路411上で時計回り方向に搬送させるか、若しくは、反時計回り方向に搬送させるかの切り替えを行う。
また、第2の分岐機構4111は、ループ搬送路411と接続路4115との接続位置に設けられている。接続路4115は、後述する一時保留部51と、ループ搬送路411とを互いに連結する。第2の分岐機構4111は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、接続路4115に送って一時保留部51に収納させるか、又は、一時保留部51から繰り出した紙幣を、ループ搬送路411上で時計回り方向に搬送させるか、若しくは、反時計回り方向に搬送させるかの切り替えを行う。
収納部3は、前述したように、図例では第1−第8の巻き取り方式(言い換えると、テープ式)の収納モジュール31−1−31−8を含んで構成されている。ここで、以下の説明において、各々の収納モジュールを総称する場合には、符号「31」を付し、第1、第2、第3…の、各々の収納モジュールを区別する場合には、符号「31−1、31−2、31−3…」を付す。尚、収納モジュール31の数は特に限定されず、1個以上で、適宜の数を設定すればよい。8個の収納モジュール31は、この例では、装置の奥行き方向(図2の紙面左右方向)に4個並んで1列を構成すると共に、その列が上下方向に2列を構成するように積み重ねられている。
この巻き取り方式の収納モジュール31は、特開2000−123219号公報に例示されるように、概略矩形箱状の筐体内に、紙幣をガイドする一枚のテープ、ガイド部材、及び、紙幣と共にテープを巻き取るリールを備えて構成されるか、又は、国際公開2011/036782号に例示されるように、筐体内に、紙幣を挟む2枚のテープ、及び、紙幣を挟み込んだ2枚のテープを巻き取るリールを備えて構成される。いずれの構成においても、巻き取り方式の収納モジュール31は、リール311に、紙幣を一枚ずつ巻き取って収納すると共に、その収納した順番とは逆順で、紙幣を一枚ずつ繰り出す、いわゆる先入れ後出しとなるように紙幣を収納する。各収納モジュール31は、紙幣を互いに所定の収納間隔を隔てながらリール311に巻き取る。収納モジュール31への紙幣の収納に係る制御、及び、収納モジュール31からの紙幣の繰り出しに係る制御についての詳細は後述する。各収納モジュール31にはまた、筐体の内外を連通するように形成された出入口の近傍に、紙幣の通過を検知する検知センサが設けられている。
金庫部側搬送部43の搬送路431は、処理部側搬送部41のループ搬送路411と同様に、ローラ、ベルト及びガイドの組み合わせによって構成されており、この搬送路431もまた、紙幣を一枚ずつ短手搬送する。搬送路431は、ループ搬送路411上の第1の分岐機構419から、鉛直下向きに延びると共に、その下端部において、奥行き方向の手前側(図2の紙面右側)及び奥側(図2の紙面左側)のそれぞれに分岐している。この分岐から入出金機1の奥側に向かって延びる分岐路は、上下に積み重ねられた2列の収納モジュール31の間に配設されている。各収納モジュール31は、この分岐路上に設けられた各振分機構433を介して分岐路に接続されている。各振分機構433は、後述する制御部513によって駆動制御され、そのことにより、紙幣が、識別部25によって識別された金種及び/又は正損等に応じて複数の収納モジュール31に振り分けられて収納されることになる。
この入出金機1では、紙幣を一時的に保留する一時保留部51、及び、金庫部13の防護筐体131内に着脱可能に取り付けられる回収カセット53が、オプションで装着されるように構成されている。
一時保留部51は、図2に二点鎖線で示すように、処理部側筐体111内における、奥行き方向の手前側に設けられた空きスペース内に装着される。一時保留部51は、前述したように、接続路4115を介して、第2の分岐機構4111に接続される。一時保留部51は、この例では、前述した収納モジュール31と同様に巻き取り方式であり、紙幣の順番を入れ替えることなく先入れ後出しとなるように、リール511に紙幣を巻き取って収納する。
回収カセット53は、図2に二点鎖線で示すように、防護筐体131内における、奥行き方向の手前側に設けられた空きスペース内に、着脱可能に装着される。回収カセット53は、前述したように、カセット接続路4117を介して、ループ搬送路411上の第3の分岐機構4113に接続される。回収カセット53は、巻き取り式の収納モジュール31や一時保留部51とは異なり、その内部に昇降する集積台を備えかつ、この集積台上に紙幣を重ねて収納するように構成されている。これにより、回収カセット53に収納された紙幣は、そこから繰り出すことはできない。回収カセット53には、例えば入金処理時に入金口211に投入された紙幣の内、収納部3に収納しきれなかったオーバーフロー紙幣が収納される。また、出金処理時等に識別不可であったリジェクト紙幣が、この回収カセット53に収納される場合がある。従って、回収カセット53が未装着のときには、オーバーフロー紙幣やリジェクト紙幣は、出金口231に払い出される。
尚、図示は省略するが、防護筐体131内の空きスペースには、回収カセット53が配設される代わりに、巻き取り式の収納モジュール31が、さらに追加して装着される場合がある。追加の収納モジュール31は、例えば2個のモジュールが上下に積み重ねられて配設される場合があり、これら2個の収納モジュール31はそれぞれ、搬送路431の下端の分岐から奥行き方向の手前側に延びる分岐路に対し、前述した振分機構を介して接続される。
図3は、入出金機1の動作制御に係る構成を示している。入出金機1は、例えば周知のマイクロコンピュータをベースとした制御部513を備えている。制御部513には、前述した入金部21、出金部23、第1−第nの収納モジュール31を含む収納部3、処理部側搬送部41、及び金庫部側搬送部43が、信号の送受信可能に接続されている。これらの各部21,23,3,41,43は、図示は省略するが、例えば搬送路を搬送されている紙幣を検知するといった機能を有する各種のセンサを含んでおり、各種センサの検知信号は制御部513に入力される。制御部513は、入力された検知信号等に基づいて制御信号を出力し、各部21,23,3,41,43は、その制御信号に従って動作をする。
制御部513にはまた、識別部25が接続されており、識別部25は、識別結果を制御部513に提供する。さらに、図1等では図示を省略するが、テラー等の、この入出金機1を操作するオペレータに対するヒューマンインターフェース部分としての操作部55、入出金機1が、例えばLANやシリアルバスを通じて、図示を省略する上位機及びその他の機器との間で信号の送受信を行うための通信部57、及び、各種の情報を記憶するための、例えばハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の汎用のストレージデバイスにより構成される記憶部59がそれぞれ、入出金機1に接続されている。
記憶部59は、入出金機1が収納している紙幣の金種別枚数又は金額である在高を少なくとも記憶する。また、記憶部59は、収納モジュール31毎の在高、及び、各収納モジュール31に収納されている紙幣の情報(金種及び正損等)も記憶する。
前述したように、オプション機器である一時保留部51や回収カセット53が、この入出金機1に装着されるときには、それらの機器51,53もまた、制御部513に接続されることにより、制御部513が出力する制御信号に従って動作をする。また、入出金機1には、各種の情報を表示するための、例えばフラットパネルディスプレイからなる表示部510がオプション機器として装着可能に構成されており、この表示部510もまた、制御部513に接続される。
制御部513は、通信部57を通じて受けた上位機からの指令、及び/又は、操作部55を通じて受けた各種の指令に応じて、各部21,23,25,3,41,43,51,53,55,57,59,510の動作を制御する。このことにより、入出金機1は、以下に説明する入金処理及び出金処理を含む、各種処理を行う。記憶部59は、入出金機1において実行した各種の処理の履歴を、ログとして記憶する。
(入金処理)
入金処理は、入出金機1に紙幣を入金(収納)する処理であり、入出金機1は、入金口211に投入された紙幣を、識別部25による識別結果と、予め設定された収納割当とに従って、いずれかの収納モジュール31に収納する。この入金処理を、図4を参照しながらより詳細に説明するが、図4(及び、以下に説明する図5、6も)は、一時保留部51が装着された構成例を示している。入出金機1は、入金処理の際には、次のように動作する。すなわち、入金する紙幣を入金口211に投入した状態で、例えば上位機及び/又は操作部55の操作によって入金処理の開始コマンドを、入出金機1に入力する。図4に矢印で示すように、入金部21の繰り出し機構は、入金口211の紙幣を一枚ずつ繰り出し、処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送する。識別部25は、その紙幣の識別を行うと共に、計数を行う。処理部側搬送部41はまた、識別部25によって正常に識別された紙幣(この紙幣を、リジェクト紙幣の対の名称として正常紙幣と呼ぶ)を、図4に実線の矢印で示すように、ループ搬送路411から、第2の分岐機構4111を通って、一時保留部51に一旦全て収納する。こうして入金口211に投入された紙幣の計数を行う。その計数結果をオペレータが確認して所定の確定操作を行ったことを受けて、一時保留部51内の紙幣を各収納モジュール31に収納する。つまり、図4に破線の矢印で示すように、処理部側搬送部41は、一時保留部51から繰り出された紙幣を、ループ搬送路411における第1の分岐機構419を通って、金庫部側搬送部43の搬送路431へと搬送する。金庫部側搬送部43は、識別部25による識別結果、及び、予め設定された収納割当に従って、各紙幣を所定の収納モジュール31に収納する。こうして、各紙幣は、金種別や正損別に応じて、いずれかの収納モジュール31に収納される。
一方、処理部側搬送部41は、識別部25において真偽の識別ができない紙幣等、入出金機1がそのまま受け入れることができないリジェクト紙幣を、ループ搬送路411から分岐機構417を通って払出路415へと搬送する。そうして、リジェクト紙幣は、出金口231に払い出される。尚、入金処理時に発生したリジェクト紙幣は、入金口211に再度投入され、識別部25による識別が、もう一度行われることになる。
また、入金処理時に、収納モジュール31が満杯になることに起因して収納できなくなった紙幣(つまり、オーバーフロー紙幣)も、出金口231に払い出される。
尚、この入出金機1では、入金口211に投入された紙幣を一時保留部51に一旦収納した後に、各収納モジュール31に収納する入金処理以外に、入金口211に投入された紙幣を、各収納モジュール31に直接収納するダイレクト入金処理も可能に構成されている。ダイレクト入金処理は、一時保留部51が装着されていない構成においては勿論のこと、一時保留部51が装着されている構成においても実行される場合がある。
制御部513は、入金処理の終了後に、記憶部59に記憶している、各収納モジュール31の在高を更新する。制御部513はまた、入金処理の終了後に、各収納モジュール31に収納されている紙幣の情報(金種及び正損等)も更新する。
(出金処理)
出金処理は、入出金機1に収納されている紙幣を払い出す処理である。具体的には、上位機及び/又は操作部55において、出金金額を指定して最小構成枚数の金種と枚数を自動的に設定するか、又は、金種と枚数を直接指定する、所定の出金操作を行うことによって出金処理は開始する。収納部3は、図5に実線の矢印で示すように、指定された金種の紙幣を、それが収納されている収納モジュール31から、指定された枚数だけ繰り出す。金庫部側搬送部43は、繰り出された紙幣を、搬送路431を介して、処理部側搬送部41のループ搬送路411へと搬送する。処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送し、識別部25が識別を行った後に、ループ搬送路411から分岐機構417を通って払出路415へと搬送する。そうして、出金口231に各紙幣が払い出される。制御部513は、出金処理の終了後に、記憶部59に記憶している、各収納モジュール31の在高を更新すると共に、各収納モジュール31に収納されている紙幣の情報も更新する。つまり、収納モジュール31から繰り出した紙幣の情報を消去する。
ここで、図5に示すように、一時保留部51が装着されている入出金機1においては、出金処理時に、識別部25による識別が不可であった等の理由によりリジェクト紙幣と判断された紙幣は、図5に破線の矢印で示すように、一時保留部51に収納される。また、図示は省略するが、回収カセット53が装着されている入出金機1においては、出金処理時に発生したリジェクト紙幣は、回収カセット53に収納される場合がある。さらに、図示は省略するが、一時保留部51及び回収カセット53が共に装着されていない入出金機1においては、出金処理時に発生したリジェクト紙幣は、正常紙幣と共に、出金口231に払い出すことになる。出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときには、上位機及び/又は表示部510に、その旨(エラーメッセージ)が表示され、それによって、オペレータは、出金口231に払い出された紙幣に、リジェクト紙幣が含まれていることを認識することができる。こうすることで、違算の発生が未然に回避される。
(精査処理)
精査処理は、収納モジュール31に収納している紙幣を確定させるための処理であり、基本的には、収納モジュール31内に収納している紙幣を全て繰り出し、その後、繰り出した紙幣について、一枚一枚識別を行いながら、元の収納モジュール31に戻すことを行う。
精査処理は、例えば、収納モジュール31が装置から取り外されて、そこに設けられている扉が一旦開けられたことを検知したときに行われる。これは、収納モジュール31が開けられたときには、収納モジュール31内に収納されている紙幣の枚数等が不確定になり、収納モジュール31に収納されている紙幣の現物枚数と、入出金機1の記憶部59が記憶している在高とが不一致になる可能性があるためである。また、収納モジュール31が交換された場合にも精査処理が行われる。
また、入金処理時に収納モジュール31の出入口付近において紙幣のジャムが生じたとき(エラー時)にも精査処理が行われる。これは、エラー時に、収納モジュール31の出入口付近に設けたセンサが紙幣の通過を検知していたにも拘わらず、出入口付近においてジャムとなった紙幣が例えば手で取り除かれたり、逆に、センサが紙幣の通過を検知していないにも拘わらず、ジャムとなった紙幣が手で収納モジュール31内に収納されたりすることで、収納モジュール31内に収納されている紙幣の枚数等が不確定になるためである。
さらに、出金処理時にリトライが発生したときにも精査処理が行われる。このリトライとは、巻き取り式の収納モジュール31から紙幣を繰り出そうとしたときに、紙幣とテープとの分離ができなかったため、リールを巻き直してもう一度、紙幣の繰り出しを行うことであり、リールを巻き直した際に、紙幣同士が重なり合ってしまう可能性があり、収納モジュール31から繰り出した紙幣の枚数が不確定、言い換えると、収納モジュール31内に収納している紙幣の枚数が不確定になるためである。
こうした現物枚数と在高との不一致の状態は、収納モジュール31内の紙幣の管理ができず、収納モジュール31が正常でない(異常である)と言い換えることができる。尚、上位機等において精査処理の実行が指定された場合も、精査処理は行われる。精査処理は予め設定されたスケジュールに従って、定期的に行われる場合もある。こうした精査処理は、個々の収納モジュール31について個別に行われる場合と、全ての収納モジュール31について、順次行われる場合とがある。
精査処理における入出金機1の動作は、次の通りである。つまり、図6の上図に示すように、精査処理の対象である収納モジュール31(図6の例では、第1の収納モジュール31−1)から紙幣を一枚ずつ繰り出し、識別部25において識別を行った後に、処理部側搬送部41は、紙幣を一時保留部51に収納する(同図の矢印参照)。そうして、収納モジュール31内の紙幣が全て繰り出されることで当該収納モジュール31は空になる。
精査対象の収納モジュール31内に収納されている紙幣の全てが一時保留部51に収納されれば、図6の下図に示すように、一時保留部51から紙幣が一枚ずつ繰り出され、処理部側搬送部41は、繰り出した紙幣を、ループ搬送路411を通じて識別部25に搬送する。そうして、識別部25が再度、識別を行う。識別の結果、正常と識別された紙幣は、元の収納モジュール31、つまり、精査対象の収納モジュール31に収納される(同図の矢印参照)。
こうして、収納モジュール31に収納している紙幣の金種及び枚数が確定し、当該収納モジュール31について、記憶部59内に記憶されている在高及び紙幣の情報のそれぞれが更新される。複数の収納モジュール31の全てについて精査処理が行われる場合は、その複数の収納モジュール31について順次、精査処理が行われることになり、精査処理が完了する毎に、記憶部59内に記憶されている当該収納モジュール31の在高及び紙幣の情報が更新される。
(収納モジュールへの紙幣の収納及び収納モジュールからの紙幣の繰出に係る制御)
次に、収納モジュール31に紙幣を収納する際のリール311の駆動制御について、図7、8を参照しながら説明する。尚、一時保留部51が紙幣を収納する際も同様である。図7(a)は収納モジュール31の外に設けられた紙幣検知センサ(図示省略)の検知結果を示し、図7(b)は収納モジュール31内に設けられた紙幣検知センサ(図示省略)の検知結果を示し、図7(c)は収納モジュール31内のリール311の外周速度の変化を示し、図7(d)は、リール311に巻き取られるテープの巻き取り長さの変化を示す。また、図8は、リール311による紙幣の巻き取り状態を説明するための図であり、巻き取られている紙幣とテープとを共に引き出した状態の模式図である。収納モジュール31の内外に配置される紙幣検知センサはそれぞれ、例えば検知光が紙幣によって遮光したことを検知する光センサとすればよい。
先ず、図7(a)に示すように、収納モジュール31に収納する紙幣が、所定位置に搬送されてきたことを、紙幣検知センサが検知する。収納モジュール31のリール311は、図7(c)に示すように、この紙幣の検知後、所定の待機時間が経過した時点で、回転を開始する。その後リール311は、回転速度を加速して、その外周速度が目標速度に達すると、回転速度を一定に保つ。目標速度は、紙幣の搬送速度に対応する。
リール311の回転に伴い、リール311はテープを巻き取る。そうして、紙幣が収納モジュール31内まで搬送されれば、当該紙幣は、テープと共にリール311に巻き取られる。収納モジュール31内の紙幣は、図7(b)に示すように、紙幣検知センサによって検知され、当該紙幣検知センサが紙幣の通過を検知すれば、リール311の回転を停止するためのブレーキ制御が実行されてリール311が停止する。
そうして、収納モジュール31外の紙幣検知センサが、次に収納される紙幣を検知すれば、前記と同様の収納動作が繰り返される。このように、紙幣を収納モジュール31に収納するときには、当該収納モジュール31に収納する紙幣の搬送に合わせて、リール311を間欠的に回転させることによって、紙幣同士の収納間隔を所定の間隔に設定しながら、紙幣をリール311に巻き取る。
一連の収納動作において、リール311の回転開始から停止までの間に巻き取られたテープの巻き取り長さの内、紙幣が巻き取られる前にリール311に巻き取った部分の長さ(x1)が、先に収納された紙幣との間隔の一部となり、紙幣が巻き取られた後にリール311に巻き取った部分の長さ(x2)が、後に収納される紙幣との間隔の一部となる。従って、x1+x2が、収納モジュール31内のリール311に巻き取られる紙幣同士の収納間隔に相当する(図8も参照)。
そうして、図7に一点鎖線で示すように、収納モジュール31外の紙幣検知センサが紙幣を検知してから、リール311の回転を開始するまでの待機時間を短くしたときには、紙幣が巻き取られる前にリール311に巻き取ったテープの長さ(x1)が相対的に長くなるから、リール311に巻き取られる紙幣同士の収納間隔が、相対的に大きくなる。
ここで、リール311に巻き取られる紙幣同士の収納間隔が大きいときには、収納モジュール31に収納される紙幣の最大枚数が少なくなる(言い換えると収容容量が小さくなる)。詳しくは後述するが、この入出金機1では、リール311に巻き取られる紙幣同士の収納間隔の大きさを、比較的大きいD2と、比較的小さいD3とに切り替えるように構成されている。
以上説明した紙幣の収納に対し、収納モジュール31から紙幣を繰り出す際には、リール311の回転速度(言い換えると、収納モジュール31から紙幣を繰り出す際の、紙幣の繰り出し速度)を、搬送路上での紙幣の搬送速度と実質的に同じに設定することで、搬送路に沿って搬送される紙幣同士の搬送間隔を、リール311に巻き取られている紙幣同士の収納間隔と同じにすることが可能になる。尚、収納モジュール31から、複数枚の紙幣を連続的に繰り出す際には、リール311は間欠的に回転するのではなく、連続的に回転する。
ここで、搬送している紙幣の搬送間隔は、識別部25における識別精度を確保する上では、所定の間隔以上に設定することが必要になるが、前述した比較的大きい収納間隔D2は、識別精度の確保が可能な搬送間隔に相当するのに対し、比較的小さい収納間隔D3は、識別精度の確保が可能な搬送間隔よりも狭い。
従って、収納間隔D2で紙幣を収納しているときには、紙幣の繰り出し速度を、紙幣の搬送速度と実質的に同じにする。これは、後述の通り、第1の繰り出しモードに相当する。
一方、この入出金機1では、比較的小さい収納間隔D3で紙幣を収納しているときには、紙幣の繰り出し速度を、搬送速度よりも低速となるようにし、そのことにより、搬送路に沿って搬送される紙幣同士の搬送間隔を、リール311に巻き取られている紙幣同士の収納間隔よりも広くする。こうすることで、識別精度の確保が可能な搬送間隔D2を確保しつつ、収納容量の増大を実現することが可能になる。
ところが、紙幣の繰り出し速度を、搬送速度よりも低速となるようにした場合は、図11を参照しながら説明したように、紙幣の斜行状態を悪化させる可能性がある。また、巻き取り式の収納モジュール31は、先入れ後出しとなるように紙幣を収納するから、先に収納された紙幣は、なかなか出金されずに、そのまま、収納モジュール31内に収納され続ける場合が起こり得ると共に、巻き取り式の収納モジュール31は、その収納の機構上、紙幣の傾きをそのまま維持して、紙幣の収納及び繰出を行うことになる。そのため、巻き取り式の一時保留部51が装着されることによって精査処理を行うように設定された入出金機1においては、収納モジュール31等から繰り出した紙幣を、筐体の外に払い出さずに筐体内に留める精査処理を行う度に、収納モジュール31又は一時保留部51から繰り出した紙幣の傾きが次第に大きくなって斜行状態が悪化する結果、リジェクト紙幣になってしまうことも起こり得る。
そこで、この入出金機1では、収納モジュール31から紙幣を繰り出す際の繰り出し速度を、搬送路上で紙幣を搬送する搬送速度と同じにする第1の繰り出しモードと、繰り出し速度を、搬送速度よりも低速にする第2の繰り出しモードと、を切り替え可能に構成している。
図9は、入出金機1の構成及び設定内容と、第1及び第2の繰り出しモードとの対応を示している。同図に示すように、入出金機1は、一時保留部51の装着、非装着に応じて、第1の繰り出しモード及び第2の繰り出しモードが切り替わる。つまり、一時保留部51が非装着であるときには、前述した精査処理が実行されない。そのため、紙幣の斜行状態の悪化を考慮する必要は無く、この構成では、収納モジュール31から紙幣を繰り出す際、具体的には出金処理時に紙幣を繰り出す際に、第2の繰り出しモードで、紙幣を収納モジュール31から繰り出す。また、一時保留部51が装着されている入出金機1であっても、設定により、精査処理の実行を行わないときには前記と同様に、斜行状態の悪化を考慮する必要は無く、出金処理時に紙幣を繰り出す際には、第2の繰り出しモードで収納モジュール31から紙幣を繰り出す。
これに対し、一時保留部51が装着されており、しかも精査処理の実行が設定されている構成では、精査処理時に、精査対象の収納モジュール31内の紙幣を一時保留部に収納するために、その収納モジュール31から紙幣を繰り出す際、及び、一時保留部51に収納している紙幣を精査対象の収納モジュール31に戻すために、その一時保留部51から紙幣を繰り出す際のそれぞれにおいて、第1の繰り出しモードで紙幣を繰り出す。尚、この設定は、全ての収納モジュール31について共通である。これにより、紙幣の繰り出し時に紙幣の斜行状態が悪化してしまうことが回避される。
ここで、精査処理の可否の設定は、一時保留部51が装着されている構成において、ユーザが、入出金機1における操作部55を手動操作することによって行うことが可能にされており、その設定内容は記憶部59に記憶される。設定時には、入出金機1の表示部510に設定用画面を表示してもよい。また、通信部57を介して入出金機1に接続される上位機において、ユーザが手動操作することによって設定を行うことも可能に構成されている。上位機において設定した内容は、上位機から通信部57に設定内容信号として送信され、通信部57が受信した信号に基づいて、記憶部59に設定内容が記憶される。従って、入出金機1における操作部55又は通信部57が設定部に相当する。
前述の通り、第1の繰り出しモードでは、収納モジュール31又は一時保留部51における紙幣の収納間隔と、搬送路上の紙幣の搬送間隔とが同じになるため、識別部25における識別精度を確保するには、紙幣の収納間隔として、比較的大きい収納間隔D2としなければならない。つまり、第1の繰り出しモードが設定されているときには、入金処理時に収納モジュール31に紙幣を収納する際に、その収納間隔が相対的に広いD2に設定される。これに対し、第2の繰り出しモードでは、前述の通り、搬送間隔は、収納間隔よりも広くなるため、収納間隔を狭くすることが可能である。つまり、第2の繰り出しモードが設定されているときには、入金処理時に収納モジュール31に紙幣を収納する際に、その収納間隔が相対的に狭いD3に設定される。
また、精査処理の際には第1の繰り出しモードで紙幣を繰り出すことが設定されていても、収納モジュール31から繰り出した紙幣を、筐体の外に払い出す、具体的には出金口231に払い出す出金処理時には、第2の繰り出しモードで紙幣を繰り出すことが設定されている。これによって、紙幣の搬送間隔はD4(>D2)に広がる。このように、実行する処理の内容に応じて(ここでは、精査処理であるか、出金処理であるか)、第1及び第2の繰り出しモードを切り替えるようにしている。
次に、図10を参照しながら、紙幣の繰り出しや搬送の際の、紙幣間隔の変化について説明する。図10は、図9の構成及び設定内容に対応している。先ず図10の左側に示すように入金口211に投入された紙幣は、搬送部41、43(言い換えると搬送路)において、搬送間隔D1を空けた状態で搬送される。この搬送間隔D1は、前述した間隔D2及び間隔D3よりも大きい(つまり、D1>D2>D3)。前述したように入金処理においては、紙幣が金種別や正損別に応じて、いずれかの収納モジュール31に振り分けられて収納されるが、紙幣を比較的広い搬送間隔D1を空けた状態で搬送することにより、識別部25における識別精度を確保することと、分岐機構や振分機構の動作を考慮して紙幣の振り分けを確実に行うことと、が実現する。尚、搬送速度はV1に設定されている。
そうして搬送間隔D1で搬送される紙幣は、前述したように、収納モジュール31のリール311を間欠的に駆動制御することにより、所定の収納間隔で収納される。具体的には、第1の繰り出しモードが設定されているときには、図10の中段に示すように、相対的に広い収納間隔D2で収納モジュール31に収納される。これに対し、第2の繰り出しモードが設定されているときには、図10の下段に示すように、相対的に狭い収納間隔D3で収納モジュール31に収納される。
精査処理の実行に伴い、収納モジュール31から紙幣を繰り出す際には(図10の左から右の方向)、前述の通り第1の繰り出しモードで紙幣を繰り出す。紙幣の繰り出し速度V1は、搬送部での搬送速度V1と同じである(つまり、等速)。従って、この繰り出しの際に、紙幣の斜行状態は悪化しない。また、搬送部における搬送間隔は、収納間隔D2と同じになる。これにより、識別部25における識別精度が確保される。収納モジュール31から繰り出された紙幣は、一時保留部51に収納される(図10の右側を参照)。このとき一時保留部51のリール511は、搬送速度V1と同じ巻き取り速度V1で紙幣を巻き取る(つまり、等速)。これにより、一時保留部51に収納された紙幣の収納間隔は、D2のままになる。
収納モジュール31から繰り出された紙幣が全て、一時保留部51に収納されれば、その一時保留部51から紙幣が繰り出される(図10の右から左の方向)。このときも第1の繰り出しモードで紙幣が繰り出されるため、等速となる。これにより、一時保留部51からの繰り出し時に紙幣の斜行状態が悪化することが回避されると共に、紙幣の搬送間隔はD2となるから、一時保留部51から収納モジュール31へと搬送している最中に識別部25において識別する場合の識別精度が確保される。
一時保留部51から繰り出された紙幣は、元の収納モジュール31に収納されるが、このとき収納モジュール31のリール311は、搬送速度V1と同じ巻き取り速度V1で紙幣を巻き取る。これにより、収納モジュール31に収納される紙幣の収納間隔がD2となるため、この後、精査処理を繰り返す場合も、前述の通り、第1の繰り出しモードとすることで、紙幣の斜行状態が悪化してしまうことを回避しつつ、識別精度が確保される。
また、第1の繰り出しモードが設定されている入出金機1においても、精査処理ではなく、出金処理を行う場合は、図10の上段に示すように、第2の繰り出しモードで収納モジュール31から紙幣を繰り出す。つまり、繰り出し速度をV3(<V1)とすることによって、繰り出し速度から搬送速度へ増速することになり、搬送部における紙幣の搬送間隔は、収納間隔D2よりも広いD4になる(つまり、D4>D2)。こうすることで、出金処理時に行う識別においてリジェクト紙幣と判定された紙幣を搬送部から分岐する際に、分岐ミス等が発生する可能性が低下する。尚、第2の繰り出しモードで紙幣を繰り出すことにより、紙幣の斜行状態が悪化し得るものの、繰り出された紙幣は出金口231に払い出される結果、斜行状態が解消されると共に、斜行状態そのものが問題とならない。従って、紙幣の斜行状態が悪化することによる問題が実質的に生じない。尚、出金処理時に、第1の繰り出しモードで紙幣を繰り出すようにしてもよい。
これに対し、第2の繰り出しモードが設定されているときには、図10の下段に示すように、出金処理時に紙幣を繰り出す際に、紙幣の繰り出し速度が、搬送速度V1よりも低速のV2に設定される。その結果、搬送間隔D5は、収納間隔D3よりも大きくなる(D5≧D2>D3)。こうして、識別部25による識別精度を確保することが可能になる。また、この場合も、繰り出された紙幣は出金口231に払い出されるため、紙幣の斜行状態が悪化することによる問題が実質的に生じない。
尚、前記の構成では、収納モジュール31(又は一時保留部51)から繰り出した紙幣を識別部25において識別を行う処理、具体的には精査処理及び出金処理を実行するときに、第1の繰り出しモード及び第2の繰り出しモードで、紙幣を繰り出すようにしている。これとは異なり、識別部25において識別をしない処理、例えば収納モジュール31内の紙幣を回収する回収処理等を実行するときには、識別精度の確保という制約がないため、搬送間隔D2又はD5を確保する必要がないことから、紙幣の繰り出し速度を比較的自由に設定することが可能である。例えば第1の繰り出しモードを選択することは、第2の繰り出しモードよりも繰り出し速度が高速になるから、収納モジュール31内の紙幣の繰り出しに要する時間が短縮し、処理時間の短縮に有利になり得る。
また、前記の構成では、第1の繰り出しモード及び第2の繰り出しモードの切り替えを、紙幣の繰り出し速度を変更することにより行っているが、紙幣の搬送速度を変更することによって、第1の繰り出しモード及び第2の繰り出しモードの切り替えを行うようにしてもよい。つまり、第1の繰り出しモードでは、繰り出し速度と搬送速度とを等速にする一方で、第2の繰り出しモードでは、繰り出し速度に対して、搬送速度が高速となるように搬送速度を変更してもよい。さらに、繰り出し速度及び搬送速度をそれぞれ変更することによって、第1の繰り出しモードと第2の繰り出しモードとを切り替えてもよい。
加えて、前記の構成では、精査処理の可否に応じて全ての収納モジュール31について、収納間隔の設定を共通にしていたが、収納モジュール31毎に精査処理の可否が設定される場合には、収納モジュール31毎に異なる収納間隔を設定してもよい。例えば、複数種類の金種を収納する収納モジュール31は精査処理を行い、単一種類の金種を収納する収納モジュール31は精査処理を行わないような設定では、複数種類の金種を収納する収納モジュール31は収納間隔をD2にして第1の繰り出しモードとし、単一種類の金種を収納する収納モジュール31は収納間隔をD3にして第2の繰り出しモードにすればよい。
尚、ここに開示する技術は、金融機関等に設定される入出金機の他にも、種々の入出金機等を含む紙幣処理装置に広く適用することが可能である。