(1)の方法を採用する場合には、各相に所定の通電オフ期間(電流が流れない期間)を設け、ブラシレスDCモータの端子電圧を検出しなければならないのであるから、通電波形が制約されてしまい、連続した通電波形(例えば、正弦波)でブラシレスDCモータを駆動することが不可能になってしまう。
(2)の方法を採用する場合には、電流に依存することなく磁極位置検出を行うことができるので(1)の方法のような電流波形に対する制約がなくなるが、逆起電圧に3次調波を含まないモータに適用することが不可能になってしまう。
すなわち、モータの高調波損失や騒音を低減するためには、電流が滑らかに変化する正弦波や台形波で駆動することが好ましいが、(1)の方法では磁極位置の検出が不可能になるのでブラシレスDCモータを駆動することができなくなり、(2)の方法では採用できるモータが制約されてしまい、所望のモータを採用することが不可能になってしまう。
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、磁極位置角の検出を行うことなくブラシレスDCモータを駆動することができるブラシレスDCモータ制御方法およびその装置を提供することを目的としている。
この発明にかかるブラシレスDCモータ制御方法の第1の態様は、インバータ(1)の出力をブラシレスDCモータ(2)に供給するブラシレスDCモータ制御方法であって、1次磁束に基づいて回転位置角に拘束されない位相基準を生成し、前記位相基準に基づいてインバータ出力の電圧位相を設定すべく前記インバータを制御することを特徴とする。
ここで、およびこの明細書において、「1次磁束」とは、インバータ端子電圧を積分して得られるものを意味する。
この発明にかかるブラシレスDCモータ制御方法の第2の態様は、その第1の態様であって、前記ブラシレスDCモータの回転数に基づいて位相指令を生成し、前記位相基準及び前記位相指令に基づいて前記電圧位相を設定すべく前記インバータを制御する。
この発明にかかるブラシレスDCモータ制御方法の第3の態様は、その第1の態様または第2の態様であって、前記インバータの出力電位の中性点の電位を基準として前記インバータ出力の電圧を積分して前記1次磁束を得る。
この発明にかかるブラシレスDCモータ制御装置の第1の態様は、インバータ(1)の出力をブラシレスDCモータ(2)に供給するブラシレスDCモータ制御装置であって、1次磁束に基づいて回転位置角に拘束されない位相基準を生成する位相基準生成手段(3)(3’)と、前記位相基準に基づいてインバータ出力の電圧位相を設定すべくインバータ(1)を制御するインバータ制御手段(4)(5)とを含む。
この発明にかかるブラシレスDCモータ制御装置の第2の態様は、その第1の態様であって、前記インバータ制御手段は、前記ブラシレスDCモータの回転数に基づいた位相指令及び前記位相基準に基づいて、前記電圧位相を設定すべく前記インバータを制御する。
この発明にかかるブラシレスDCモータ制御装置の第3の態様は、その第1の態様または第2の態様であって、前記インバータの出力電位の中性点の電位を基準として前記インバータ出力の電圧を積分して前記1次磁束を得る。
ブラシレスDCモータ制御方法の第1の態様であれば、インバータの出力を供給してブラシレスDCモータを制御するに当たって、1次磁束を検出して位相基準を生成し、生成された位相基準に基づいてインバータ出力の電圧位相を設定すべくインバータを制御するのであるから、通電オフ期間を設けることなくブラシレスDCモータを制御して効率の改善および騒音の低減を達成することができ、しかも逆起電圧に3次調波を含まないブラシレスDCモータにも適用することができる。そして1次磁束を検出して回転位置角に拘束されない位相基準を生成するのであるから、位相基準を簡単に生成することができる。
ブラシレスDCモータ制御方法の第2の態様であれば、ブラシレスDCモータの回転数に基づいてインバータ出力の電圧位相を設定するのであるから、脱調などがない。そして1次磁束を検出して回転位置角に拘束されない位相基準を生成するのであるから、位相基準を簡単に生成することができるほか、第1の態様と同様の作用を達成することができる。
ブラシレスDCモータ制御方法の第3の態様であれば、インバータの出力電位の中性点の電位を基準としてインバータ出力の電圧を積分して1次磁束を得るのであるから、主要な低次高調波である3次高調波が除去された相電圧の積分値として1次磁束を得ることができる。つまり、基本波電圧の時間積分(巻線磁束鎖交数)を歪みなく検出することができる。もって、検出した磁束波形に重畳する同相ノイズ成分を除去し、安定な比較器出力波形を出力することができる。
ブラシレスDCモータ制御装置の第1の態様であれば、インバータの出力を供給してブラシレスDCモータを制御するに当たって、位相基準生成手段によって1次磁束を検出して位相基準を生成し、インバータ制御手段によって、生成された位相基準に基づいてインバータ出力の電圧位相を設定すべくインバータを制御することができる。
したがって、通電オフ期間を設けることなくブラシレスDCモータを制御して効率の改善および騒音の低減を達成することができ、しかも逆起電圧に3次調波を含まないブラシレスDCモータにも適用することができる。そして、前記位相基準生成手段として、1次磁束を検出して回転位置角に拘束されない位相基準を生成するものを採用するのであるから、位相基準を簡単に生成することができる。
ブラシレスDCモータ制御装置の第2の態様であれば、ブラシレスDCモータの回転数に基づいてインバータ出力の電圧位相を設定するのであるから、脱調などがない。そして1次磁束を検出して回転位置角に拘束されない位相基準を生成するのであるから、位相基準を簡単に生成することができるほか、第1の態様と同様の作用を達成することができる。
ブラシレスDCモータ制御装置の第3の態様であれば、インバータの出力電位の中性点の電位を基準としてインバータ出力の電圧を積分して1次磁束を得るのであるから、主要な低次高調波である3次高調波が除去された相電圧の積分値として1次磁束を得ることができる。つまり、基本波電圧の時間積分(巻線磁束鎖交数)を歪みなく検出することができる。もって、検出した磁束波形に重畳する同相ノイズ成分を除去し、安定な比較器出力波形を出力することができる。
さらに説明する。
一般にd−q座標系で捉えたブラシレスDCモータの電圧方程式は、d軸を永久磁石の磁束方向と一致するように設定すると、数1で表すことができる。
ここで、R[Ω]は巻線抵抗を、λa[wb]は巻線に鎖交する永久磁石磁束数を、ω[rad/s]は回転角速度を、nはモータ極対数を、Ld[H]はd軸インダクタンスを、Lq[H]はq軸インダクタンスを、それぞれ示している。なお、pは微分演算子である。
d−q座標系における電圧をvd、vq、電流をid、iqで表せば、これら諸量は数2により3相座標系(u−v−w)に変換することができる。
なお、θeは回転子位置角[rad]を電気角(電気角=極対数×機械角)で表している。
ブラシレスDCモータに流れる3相交流電流の振幅をiとし、q軸に対する電流位相をβとすれば、iq=i・cosβid=−i・sinβとなる。そして、ブラシレスDCモータの瞬時トルクτは、τ=n・λa・i・cosβ−(1/2)・Lv・i2・sin2βとなる。ここで、Lv=Ld−Lqである。
さらに、数1において抵抗を無視し、微分項が0となる定常状態について考え、これと上記電流の式および瞬時トルクの式から、数3の関係を得る。
ここで、前記瞬時トルクの式並びに数3に着目すると、モータトルクは、電流の振幅iと位相β、もしくは電圧の振幅vと位相δにより定まることが分かる。
すなわち、モータトルクを制御するために、従来のブラシレスDCモータ駆動系は、回転子位置角信号に基づいて電流もしくは電圧位相を制御するようにしていた。
加えて、FA(ファクトリーオートメーション)などのサーボ用途では、電流に過渡現象が生じることがなく、かつ高速応答が得られるようにサーボ印加電圧を数1の電圧方程式に基づき精度よく演算決定するためにも、回転子位置角情報が用いられていた。
磁束、電圧並びに電流の位相関係、並びに通電により発生する固定子磁束と回転子の間に働く力を模式的に示すと、図1並びに図2に示すとおりとなる。
本願発明は、回転子位置角に拘束されない基準信号を基に、インバータ出力波形の位相を定める手段を設け、この位相指令に基づいて、もしくはこの位相指令をモータ負荷トルクに応答して変化させることにより、ブラシレスDCモータを駆動する。したがって、回転子位置角を直接的もしくは間接的に検出することを不要にすることができる。
さらに説明する。
回転子の表面に永久磁石を装着してなるブラシレスDCモータ(以下、表面磁石構造のブラシレスDCモータと称する)では、磁気構造的にLv=0となるため、前記瞬時トルクを表す式の第2項のトルク(以下、リラクタンストルクと称する)は発生せず、第1項のトルク(以下、磁石トルクと称する)のみが発生する。
これに対して、回転子の内部に永久磁石を装着してなるブラシレスDCモータ(以下、埋込磁石構造のブラシレスDCモータと称する)では、磁石トルクおよびリラクタンストルクが発生するため、より高効率なモータとして、省エネルギー性が求められる機器で多く採用されるようになっている。そこで、埋込磁石構造のブラシレスDCモータを例にとってその動作を説明する。用いたブラシレスDCモータの電気的諸量を表1に示す。
表1に示す電気的諸量を有するブラシレスDCモータを採用し、インバータの出力電流実効値を5[A]に固定し、モータ回転数を30[rps]に設定し、電流位相を変化させたときのトルクを前記瞬時トルクを表す式から演算した結果、図3に示す結果が得られた。
ここで、ブラシレスDCモータを駆動するために接続されたインバータは回転子位置角情報がフィードバックされておらず、すなわち、位置角情報に基づいた位相制御はされておらず、所定の周波数並びに振幅の交流電流を出力していると仮定し、さらにインバータの出力波形に同期してブラシレスDCモータが動作点A(図3参照)で回転している場合について考える。
この状態で、負荷トルクが増加すると、回転速度がインバータ出力周波数に比べ遅くなる。この場合には、図1中に破線で示す方向にd−q座標軸が変化し、逆起電圧に対するインバータ電流位相βが増加するとともに、トルクが増加する。そして、負荷トルクと等しい動作点B(図3参照)に移動し、同期速度で回転を継続する。すなわち、インバータ出力周波数とモータ回転速度を極対数倍した周波数とが等しい状態を維持する。
逆に負荷トルクが減少する場合については、上記の逆の軌跡を考えればよい。
これは、負荷トルクの変化がある範囲内であれば、ブラシレスDCモータ自身にトルクの不整合を吸収し、位相を調整する機能があり、インバータ制御側で出力波形と回転子位置角の位相とを精度よく制御しなくても、直ちにブラシレスDCモータの回転が不安定になったり停止することはなく、回転を継続できることを示している。
このことは、図2に示すように、固定子の磁束と回転子磁石との間に働く電磁力に「ばね」作用を想定することによって、定性的に簡単に理解することができる。
したがって、ブラシレスDCモータの負荷状態、すなわち、トルクや回転数に応答して、回転子位置に拘束されない位相指令を適宜変化させ、適正化することでブラシレスDCモータを制御することが可能であることが分かる。
また、表1に示す電気的諸量を有するブラシレスDCモータを採用し、インバータの出力電圧振幅を逆起電圧eと等しく固定し、モータ回転数を30[rps]に設定し、電圧位相を変化させたときのトルクを数3から演算した結果、図4に示す結果が得られた。
前記と同様にブラシレスDCモータが動作点A(図4参照)で回転している場合について考える。
この状態で、負荷トルクが増加すると、回転速度がインバータ出力周波数に比べ遅くなる。この場合には、図1中に破線で示す方向にd−q座標軸が変化し、逆起電圧に対するインバータ電流位相δが増加するとともに、トルクが増加する。そして、負荷トルクと等しい動作点B(図4参照)に移動し、回転を継続する。
逆に負荷トルクが減少する場合については、上記の逆の軌跡を考えればよい。
すなわち、電流を制御した場合と同様に、ある範囲の負荷トルクの変化であれば、安定な回転制御を実現できることが分かる。
図5はこの発明に係るブラシレスDCモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
このブラシレスDCモータ制御装置は、インバータ部1からの出力波形をブラシレスDCモータ2に供給し、ブラシレスDCモータ2の電圧、電流、もしくは磁束を検出し、検出信号を位相基準発生部3に供給して位相基準を発生し、発生した位相基準および外部から与えられる位相指令に基づいて波形制御部4から波形制御信号を出力し、出力波形位相を所定値とすべくインバータ部1を制御するようにしている。
したがって、電圧振幅が最大値に飽和した(固定化された)後も位相制御によるモータの弱め磁束制御(d軸電流により、巻線に鎖交する磁石磁束数を等価的に減少させる制御)が可能で回転数範囲(定出力範囲)の拡大を実現できる。特に、埋込磁石構造のブラシレスDCモータは弱め磁束の効果が表面磁石構造のブラシレスDCモータに比べ大きく、モータ運転範囲をさらに拡大できる(武田他、「PMモータの機器定数と出力範囲」、電学論D、110巻11号、平成2年参照)。
ブラシレスDCモータ制御方法の第1の態様によれば、通電オフ期間を設けることなくブラシレスDCモータを制御して効率の改善および騒音の低減を達成することができ、しかも逆起電圧に3次調波を含まないブラシレスDCモータにも適用することができる。そして1次磁束を検出して回転位置角に拘束されない位相基準を生成するのであるから、位相基準を簡単に生成することができる。
ブラシレスDCモータ制御方法の第2の態様によれば、脱調などがない。そして1次磁束を検出して回転位置角に拘束されない位相基準を生成するのであるから、位相基準を簡単に生成することができるほか、第1の態様と同様の作用を達成することができる。
ブラシレスDCモータ制御方法の第3の態様によれば、主要な低次高調波である3次高調波が除去された相電圧の積分値として1次磁束を得ることができる。つまり、基本波電圧の時間積分(巻線磁束鎖交数)を歪みなく検出することができる。もって、検出した磁束波形に重畳する同相ノイズ成分を除去し、安定な比較器出力波形を出力することができる。
ブラシレスDCモータ制御装置の第1の態様によれば、インバータの出力を供給してブラシレスDCモータを制御するに当たって、位相基準生成手段によって1次磁束を検出して位相基準を生成し、インバータ制御手段によって、生成された位相基準に基づいてインバータ出力の電圧位相を設定すべくインバータを制御することができる。
したがって、通電オフ期間を設けることなくブラシレスDCモータを制御して効率の改善および騒音の低減を達成することができ、しかも逆起電圧に3次調波を含まないブラシレスDCモータにも適用することができる。そして、前記位相基準生成手段として、1次磁束を検出して回転位置角に拘束されない位相基準を生成するものを採用するのであるから、位相基準を簡単に生成することができる。
ブラシレスDCモータ制御装置の第2の態様によれば、脱調などがない。そして1次磁束を検出して回転位置角に拘束されない位相基準を生成するのであるから、位相基準を簡単に生成することができるほか、第1の態様と同様の作用を達成することができる。
ブラシレスDCモータ制御装置の第3の態様によれば、主要な低次高調波である3次高調波が除去された相電圧の積分値として1次磁束を得ることができる。つまり、基本波電圧の時間積分(巻線磁束鎖交数)を歪みなく検出することができる。もって、検出した磁束波形に重畳する同相ノイズ成分を除去し、安定な比較器出力波形を出力することができる。
以下、添付図面を参照して、この発明のブラシレスDCモータ制御方法およびその装置の実施の態様を詳細に説明する。
なお、説明の便宜上、断りのない限り、以降の説明では「1次磁束」を単に「磁束」と呼ぶことにする。
図6はこの発明のブラシレスDCモータ制御装置の一実施態様を示す電気回路図、図7は図6の制御マイコンの内部処理を説明するブロック図である。
このブラシレスDCモータ制御装置は、制御マイコン5から出力されるスイッチング指令がベース駆動回路11を通して供給される電圧形インバータ部12と、電圧形インバータ部12の3相分の出力端子に対してY結線された抵抗回路13と、電圧形インバータ部12の各相の出力電圧を入力として積分動作を行う積分器14と、2つづつの積分器14からの積分出力の大小を比較する比較器15と、各比較器15からの比較出力を入力とするフォトカプラ16と、全てのフォトカプラ16からの出力を入力として磁束ゼロクロス信号を生成し、制御マイコン5の外部割り込み端子に供給する磁束ゼロクロス信号生成部17とを有している。
前記各積分器14は、電圧形インバータ部12の各相の出力端子とオペアンプの反転入力端子との間に抵抗を直列接続し、反転入力端子と出力端子との間に抵抗とコンデンサとを互いに並列接続し、非反転入力端子を抵抗回路13の中性点と接続してなる不完全積分器である。ただし、ブラシレスDCモータ18を駆動する周波数帯域では完全積分器として動作するように抵抗、コンデンサの値を設定することにより、完全積分器として考えることができる。
前記磁束ゼロクロス信号生成部17は、全てのフォトカプラ16からの出力のうち、2つづつを入力とする3つの第1NANDゲートと、全ての第1NANDゲートからの出力を入力とする第2NANDゲートとを含んでいる。そして、全てのフォトカプラ16からの出力をSu、Sv、Swとし、第2NANDゲートからの出力をSφとした場合のロジック真理値表は表2に示すとおりに設定されている。
図6に示すブラシレスDCモータ制御装置の作用は次のとおりである。
電圧形インバータ部12の各相の出力電位をvu’、vv’、vw’と表せば、抵抗回路13の中性点の電位vn’は、vn’=(vu’+vv’+vw’)/3となり、インバータ12の出力波形のうち各相が同相になる3n次高調波成分で変動することになる。差動入力で構成されたオペアンプの1入力端(非反転入力)がこの中性点に接続されるため、各相出力に接続されたオペアンプの出力は、主要な低次高調波成分である3次調波が除去された相電圧の積分値として得られる。換言すれば、基本波電圧の時間積分(巻線磁束鎖交数)を歪みなく検出することができる。
そして、検出された各相の磁束波形をそれぞれ比較器15に入力する。例えば、u相磁束を比較器Quwの非反転入力端子、w相磁束を比較器Quwの反転入力端子に供給する。したがって、この比較器Quwは、各相磁束波形の交点(u−w線間電圧の積分した波形のゼロクロスと等価)で反転する矩形波を出力する。他の比較器においても同様にして各相磁束波形の交点で反転する矩形波を出力する。これらの比較処理を行うことにより、検出した磁束波形に重畳する同相ノイズ成分を除去し、安定な比較器出力波形を出力することができる。
このようにして得られる3つの比較器出力は磁束ゼロクロス信号生成部17に供給され、表2のロジック真理値表に示す論理演算を行って1ビットの磁束ゼロクロス信号Sφを生成し、制御マイコン5の外部割り込み端子に供給する。
前記制御マイコン5は、磁束ゼロクロス信号Sφを外部割り込み信号として動作するキャプチャ部51、インデックス演算部52と、キャリア割り込みタイマ53と、フリーランタイマ54と、フリーランタイマ54のタイマ値をキャプチャ部51を通して読み込み、これを前回タイマ値として記憶する前回タイマ値記憶部55と、キャプチャ部51を通して読み込んだフリーランタイマ54のタイマ値と前回タイマ値とを入力として周期演算を行う周期演算部56と、周期演算結果から速度演算を行う速度演算部57と、演算された速度と外部から与えられる速度指令とを入力として速度制御演算(例えば、PI演算)を行って振幅指令を出力する速度制御部58と、演算された速度、外部から与えられる位相指令α*、フリーランタイマ54のタイマ値、インデックス演算部52から出力されるインデックス値Ix、および前回タイマ値を入力として位相演算を行い、電圧位相を出力する位相演算部59と、速度制御部58から出力される振幅指令および位相演算部59から出力される位相を入力としてパルス幅演算を行うパルス幅演算部50と、パルス幅演算結果を入力としてスイッチング指令を出力する3相PWM(パルス幅変調)制御タイマ60とを有している。
なお、位相演算部59およびパルス幅演算部50における処理は、キャリア割り込みタイマ53からの割り込み信号を受けて行われる。
次いで、制御マイコン5における処理を図8から図11のフローチャートを参照して説明する。
磁束ゼロクロス信号をトリガ信号として図8の割り込み処理が開始し、ステップSP1において、処理開始時におけるフリーランタイマ54のタイマ値T0をキャプチャ部51に読み込み、ステップSP2において、読み込まれたタイマ値T0および前回タイマ値記憶部55に記憶されている前回タイマ値T1とに基づいて周期演算部56により周期T(=T1−T0)を演算し、ステップSP3において、前記タイマ値T0を新たな前回タイマ値T1として前回タイマ値記憶部55に記憶する。そして、ステップSP4において、演算された周期Tから実速度ωを演算し、ステップSP5において、位相演算のためのインデックス値Ixを1だけインクリメントする。そして、ステップSP6において、インデックス値Ixが6よりも大きいか否かを判定し、インデックス値Ixが6よりも大きいと判定された場合には、ステップSP7において、インデックス値Ixを0にセットする。
そして、ステップSP6においてインデックス値Ixが6よりも大きくないと判定された場合、またはステップSP7の処理が行われた場合には、ステップSP8において、速度制御演算を行い、そのまま元の処理に戻る。
図9は図8のステップSP8の処理を詳細に説明するフローチャートである。
ステップSP1において、実速度ωおよび速度指令ω*を入力し、ステップSP2において、速度偏差Δω(=ω*−ω)を演算し、ステップSP3において、この速度偏差Δωを速度制御演算ごとに累積した値に加算するとともに、その結果に積分ゲインKiを乗算して積分項を求め、速度偏差Δωに比例ゲインKpを乗算した比例項と積分項とを加算して(PI演算を行って)、電圧振幅指令V*としてパルス幅演算部に供給し、そのまま元の処理に戻る。
図10はインバータ波形を制御するキャリア割り込み処理を説明するフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定の周期でキャリア割り込みタイマから出力されるトリガ信号により処理を開始する。
ステップSP1において、外部から与えられる位相指令α*、外部割り込み処理により更新されるインデックス値Ix、前回タイマ値T1、および電圧振幅指令V*を入力し、ステップSP2において、現在のフリーランタイマ値tを読み込み、ステップSP3において、電源位相φ{=60°・Ix+ω・(t−T1)+α*}を演算し、ステップSP4において、電源位相φから各相パルス幅(インバータ部のトランジスタのオン・オフタイミング)を演算し(詳細は後述する)、ステップSP5において、各相トランジスタに対するスイッチングパターンを初期化するとともに、それぞれのパルス幅を各相に対応したPWMタイマにセットし、そのまま元の処理に戻る。
図11は1相あたりのPWMタイマ処理を説明するフローチャートであり、PWMタイマに設定した時刻になったことに応答して実行される。
ステップSP1において、トランジスタ信号を反転し、そのまま元の処理に戻る。
次いで、パルス幅演算について説明する。
ブラシレスDCモータを含む3相交流モータ全般について、モータ巻線に印加すべき端子電圧は正弦波の交流電圧が理想である。
ここで、3相交流電圧を数4とする。
そして、これを便宜上、数5で複素平面に投影する。
ここで、exp(jθ)=cosθ+j・sinθ、jは虚数である。
そして、λ=∫vp・dt=j(V/ω)・exp(−j・ω・t)
により時間積(磁束)軌跡に変換し、複素平面に描くと、半径がV/ω、接線速度がVの円軌跡となる(図12参照)。
一方、インバータ端子電圧はインバータ直流部のマイナス側を基準とした場合、トランジスタのオン状態により、表3に示すような7通りの状態がある。
なお、インバータ直流部+側にコレクタ端子が接続されたトランジスタ(以下、上アームトランジスタと称する)がオンの状態を”1”、インバータ直流部−側にエミッタ端子が接続されたトランジスタ(以下、下アームトランジスタと称する)がオンの状態を”0”で表している。電圧形インバータは機能上、上アームトランジスタと下アームトランジスタを排他的にオン制御するため、表3以外のスイッチ状態を考慮する必要はない。そして、便宜上、7種のスイッチング状態を電圧ベクトルV0〜V7の記号で対応付けて示している。
ここで、各電圧ベクトルを数5により複素平面上に描くと、図13に示すように、60°毎に配置された長さVdc(=インバータ直流部の電圧)の6種のベクトルと長さのない2種のゼロベクトルとなる。
ここで、インバータの出力波形による磁束軌跡が正弦波電圧による円軌跡に近づくような各電圧ベクトルの出力時間を考える。
正弦波電圧位相ω・tが0°〜60°の範囲についての拡大図は図14に示すとおりである。
三角形P0qP1に着目すると、辺P0P1は、PWMのキャリア周期Tcが十分に短いとすれば、正弦波電圧の作る円軌跡の接線速度Vとキャリア周期Tcとの積として求めることができる。また、∠qP0P1=ω・t、∠P0qP1=120°なので、数6の関係を得る。
電圧位相0°〜60°を領域Iとして、電圧位相1周期を図15に示すように6領域に分け、それぞれの領域で用いる電圧ベクトルを表4のように選定することで、円軌跡に近接した多角形の軌跡を得ることができる。
また、例えば、領域IにおけるV4をメインベクトル、V6をサブベクトルと呼び、各領域についてメインベクトル、サブベクトルとすべき電圧ベクトルを表4に示す。
そして、各ベクトルの出力時間は、ゼロベクトル出力時間τ0/T=1−Ks・sin(π/3+ψ0)
メインベクトル出力時間τmain/T=Ks・sin(π/3−ψ0)
サブベクトル出力時間τsub/T=Ks・sinψ0ここで、Ks=(21/2・V)/Vdc(0≦Ks≦1)、ψ0=MOD(φ/60°)、MODは余りをとる関数である。となる。
図16はV0からスタートする場合{図16中(a)参照}とV7からスタートする場合{図16中(b)参照}とのそれぞれについて、各相のトランジスタ信号の初期値と各相のPWMタイマに設定すべき期間とを明らかにするために領域Iと領域IIとについて、電圧ベクトルを各相トランジスタのオンオフ状態に展開して例示している。
V0からスタートする領域Iでは、キャリア周期毎に各相のトランジスタ信号を”0”に初期化し、u相タイマにはτ0、v相タイマにはτ0+τmainを設定し、それぞれの時刻にトランジスタ信号を反転処理すればよく、w相タイマにはTcを設定し、スイッチングが行われないようにしておく。
また、V7からスタートする領域IIでは、キャリア周期毎に各相のトランジスタ信号を”1”に初期化し、w相タイマにはτ0、u相タイマにはτ0+τmainを設定し、それぞれの時刻にトランジスタ信号を反転処理すればよく、v相タイマにはTcを設定し、スイッチングが行われないようにしておけばよいことが分かる。
他の領域も同様に展開することで、設定すべきタイマ値、キャリア毎に設定するトランジスタ信号の初期値を知ることができる。
表5にキャリアの開始時刻におけるトランジスタ信号の初期値(電圧ベクトルで示す)とPWMタイマに設定するタイマ値とを各領域毎に示している。
図17は図6のブラシレスDCモータ制御装置の動作波形の一部を示す図である。なお、図6のブラシレスDCモータ制御装置では比較器入力部で磁束の差分をとっているため、便宜上、各相磁束検出の差分波形λuv、λvw、λwuを示している。
ここで、インバータ出力電圧Vが一定の場合を太実線で、インバータ出力電圧が変化した場合を細実線で示している。
以下、図17を参照して、モータ速度、すなわちインバータ出力周波数がどのように制御されているかを説明する。
図6のブラシレスDCモータ制御装置では、図17の磁束波形のゼロクロスの周期を測定して速度情報としている。
インバータ出力電圧Vが一定の場合におけるゼロクロス点はA点、B点、C点、D点であり、この場合の周期情報は一定である。
ここで、増速指令を与えると、速度制御演算によりインバータ出力電圧Vは増加する。この結果、電圧の積分波形である磁束波形は、一定電圧時に比べて早く変化する細実線の軌跡を辿り、E点でゼロクロスとなる。そして、このゼロクロス周期から演算される速度も上昇し、これが前記電圧位相φの演算に反映されることによりインバータの出力周波数が増加する。
一方、減速指令の場合には、磁束波形の軌跡がF点でゼロクロスする細実線の軌跡になり、検出速度は減速し、これが前記電圧位相φの演算に反映されることによりインバータの出力周波数が減少する。
そして、増減速共に、磁束波形のゼロクロスから検出される速度と速度指令との偏差をとり、これをPI演算するフィードバック制御により、所定の電圧振幅V、周波数ωのポイントで定常運転となる(速度指令ω*と等しくなる)。
図18は図6のブラシレスDCモータ制御装置において、回転数を変化させ、モータ運転が可能な(脱調などがない)位相指令値を実験的に定めた結果を示す図である。
したがって、このような回転数と位相指令との関係を予めテーブル化しておくことができる。
図19は回転数と位相指令との関係を示すテーブルを組み込むことによってブラシレスDCモータを制御するための構成例を示すブロック図である。
このブラシレスDCモータ制御装置は、インバータ部1からの出力電圧をブラシレスDCモータ2に印加し、ブラシレスDCモータ2の電圧を検出して磁束ゼロクロス発生部3’に供給し、磁束ゼロクロス発生部3’から出力される磁束ゼロクロス検出信号を波形制御部4および速度検出部6に供給している。そして、速度検出部6により検出された速度(回転数)を位相テーブル部7に供給して回転数に対応する位相指令を読み出し、波形制御部4に供給する。
波形制御部4においては、磁束ゼロクロス検出信号および位相指令に基づく波形制御演算を行ってスイッチング指令を出力し、インバータ部1に供給する。
したがって、この場合には、外部から位相指令を与えることなくブラシレスDCモータを制御することができる。
以上の実施態様においては、位相基準を発生させるために磁束波形のゼロクロス点を用いているが、例えば、電圧形インバータを用いる場合には、インバータ出力電流のゼロクロス点を検出して位相基準を発生させることが可能であり、電流形インバータを用いる場合には、インバータ出力電圧のゼロクロス点を検出して位相基準を発生させることが可能である。また、ゼロクロス点以外の点(例えば、ピーク点)を検出して位相基準を発生させることも可能である。
また、インバータ出力端子電圧を積分し、磁束波形を得る構成としたが、固定子に発生する磁束を正確に検出するために、インバータの各相出力電圧から巻線抵抗での電圧降下を差し引いた電圧に対して積分する構成に代えてもよい。
以上のようにこの発明に係るブラシレスDCモータ制御方法およびその装置を採用すれば、直接的に磁極位置を検出するためのセンサ(例えば、ロータリーエンコーダなど)を回転子に装着する必要がなく、しかも、磁極位置を間接的に検出するためのインバータ出力波形に対する制約{例えば、電圧形インバータの出力端子が開放状態となる非通電(オフ)期間を設けることなど}も不要となり、ブラシレスDCモータの騒音低減や効率改善の観点で好ましい波形を、磁極位置検出を伴うことなく採用することができる。