JP2012033910A - 多孔性絶縁体及び電界効果トランジスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】例えば、チタン酸ストロンチウムを活性層とした電界効果トランジスタのゲート絶縁体としても使用することのできる、新規な絶縁体を提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁性を示す材質中に直径5〜100nmである空孔を複数有し、全体の体積に対する前記空孔の占める体積の割合である空孔率が20体積%以上であり、前記空孔には水分が含まれ、前記空孔の体積に対する前記水分の占める体積の割合である水分占有率が23〜100体積%である多孔性絶縁体を使用する。
【選択図】図1
【解決手段】絶縁性を示す材質中に直径5〜100nmである空孔を複数有し、全体の体積に対する前記空孔の占める体積の割合である空孔率が20体積%以上であり、前記空孔には水分が含まれ、前記空孔の体積に対する前記水分の占める体積の割合である水分占有率が23〜100体積%である多孔性絶縁体を使用する。
【選択図】図1
Description
本発明は、多孔性絶縁体及び電界効果トランジスタに関する。
チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)は、ストロンチウムとチタンの複合酸化物であり、透明な絶縁体として知られている。この物質は、高い誘電率を示し、かつ誘電率の温度変化が小さいことから、セラミックコンデンサの誘電体として好ましく使用される。また、近年、チタン酸ストロンチウムは、ニオブ等の金属がドープされることにより、容易に半導体化することが見出され、バリスタ等の半導体材料としての利用が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
一方、絶縁体であるチタン酸ストロンチウムを電界効果トランジスタの活性層として使用する検討も行われている。例えば、非特許文献1には、チタン酸ストロンチウムの単結晶の表面に、12CaO・7Al2O3ガラスをゲート絶縁体として形成させた電界効果トランジスタが提案されている。このトランジスタは、ゲート電圧が印加されることにより、ソース−ドレイン間に熱起電力を誘起させる。なお、このトランジスタにおいて、ゲート絶縁膜として使用される12CaO・7Al2O3ガラスは、均一で緻密なアモルファス膜として形成される。
また、非特許文献2には、チタン酸ストロンチウムの単結晶の表面に電解質を介してゲート電極を形成させた電気二重層トランジスタが提案されている。このトランジスタでは、ゲート電圧が印加されることにより、電解質とチタン酸ストロンチウムとの界面に電気二重層が形成される。このような作用により、チタン酸ストロンチウムの単結晶の表面に伝導キャリアが高密度に誘起され、絶縁体であったチタン酸ストロンチウムの表面が伝導状態となるとされる。
Ohta,H.,Masuoka,Y.,Asahi,R.,Kato,T.,Ikuhara,Y.,Nomura,K.,&Hosono,H.,Field−modulated thermopower in SrTiO3−based field−effect transistors with amorphous 12CaO・7Al2O3 glass gate insulator,Appl.Phys.Lett.95,113505(2009).
Ueno,K.,Nakamura,S.,Shimotani,H.,Ohtomo,A.,Kimura,N.,Nojima,T.,Aoki,H.,Iwasa,Y.,&Kawasaki,M.,Nature Mater.7,855−858(2008).
非特許文献2記載の電気二重層トランジスタは、絶縁体であるチタン酸ストロンチウムを活性層としながら、ソース−ドレイン間の抵抗値を100kΩ以下の伝導状態とすることが可能であり、新たな酸化物半導体デバイスとしての用途が期待される。しかしながら、この電気二重層トランジスタにおいてゲート絶縁体として使用される電解質は、室温で液体であり、しかも有機物であるので可燃性であって室温以上の温度で発火する可能性もある。そのため、このトランジスタを実用的なデバイスとして使用するには、さらなる検討が必要である。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、例えば、チタン酸ストロンチウムを活性層とした電界効果トランジスタのゲート絶縁体としても使用することのできる、新規な絶縁体を提供することを目的とする。また、本発明は、上記とは別の側面において、上記活性層と上記絶縁体とを組み合わせた新規な熱電変換材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、絶縁性を示す材質中に直径5〜100nmである微細な空孔を複数有し、所定の水分量を含んだ多孔性絶縁体が特異な電気特性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、この多孔性絶縁体をゲート絶縁体とし、チタン酸ストロンチウム等の金属酸化物を活性層とする電界効果トランジスタが、意外にも、多孔性でない絶縁体を備えた電界効果トランジスタよりも高い熱電変換効率を示すことを見出した。
本発明の第1の態様は、絶縁性を示す材質中に直径5〜100nmである空孔を複数有し、全体の体積に対する前記空孔の占める体積の割合である空孔率が20体積%以上であり、前記空孔には水分が含まれ、前記空孔の体積に対する前記水分の占める体積の割合である水分占有率が23〜100体積%である多孔性絶縁体である。
また、本発明の第2の態様は、上記多孔性絶縁体をゲート絶縁体とする電界効果トランジスタである。
また、本発明の第3の態様は、上記多孔性絶縁体と、金属酸化物からなる活性層と、が接合されてなる熱電変換材料である。
本発明によれば、例えば、チタン酸ストロンチウムを活性層とした電界効果トランジスタのゲート絶縁体としても使用することのできる、新規な絶縁体が提供される。また、本発明によれば、上記活性層と上記絶縁体とを組み合わせた新規な熱電変換材料が提供される。
以下、本発明の多孔性絶縁体の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の多孔性絶縁体の一実施形態を示す斜視図である。なお、図1では、多孔性絶縁体1の内部の構造が明らかになるように、多孔性絶縁体1の一部を切り取った状態で示している。
多孔性絶縁体1は、絶縁材質2に空孔3が複数形成されてなる。空孔3は、多孔性絶縁体1の表面及び内部に形成され、いわゆるナノポアと呼ばれる微細な構造を有する。空孔3の直径は、5〜100nmであり、5〜50nmがより好ましく、5〜20nmがさらに好ましい。空孔3の形状は、一例として球状が挙げられるが、特に限定されない。
絶縁材質2は、絶縁性を示す材質であり、酸化物絶縁体が好ましく例示される。このような酸化物絶縁体としては、12CaO・7Al2O3、CaO、Al2O3、12SrO・7Al2O3、Y2O3、HfO2、SiO2、MgO、LaAlO3、ZrO2、MgAl2O4、Nb2O5、Ta2O5、Si3N4、SrTiO3、BaTiO3、CaTiO3、SrZrO3、CaZrO3、BaZrO3が例示される。絶縁材質2は、これらの絶縁性を示す材質を1種又は複数含むことができる。
空孔3は多孔性絶縁体1の表面及び内部に複数形成されるので、全ての空孔3の体積の合計は、多孔性絶縁体1の全体の体積の一部を占めることになる。ここで、多孔性絶縁体1の全体の体積に対する、全ての空孔3の体積の合計の占める割合を空孔率と呼ぶ。本実施形態の多孔性絶縁体1では、この空孔率が20体積%以上である。つまり、多孔性絶縁体1は、その全体の体積のうち20体積%以上が空孔3で占められる。逆に言えば、多孔性絶縁体1は、その全体の体積のうち80体積%以下が絶縁材質2で占められる。空孔率は、5〜70体積%であることが好ましく、20〜50体積%であることがより好ましい。
空孔3の内部には、水分4が含まれる。ここで、多孔性絶縁体1における、全ての空孔3の体積の合計に対する、全ての水分4の体積の合計の占める割合を水分占有率と呼ぶ。本実施形態の多孔性絶縁体1では、この水分占有率が23〜100体積%である。なお、一つ一つの空孔3における水分4の体積占有率は、必ずしも23〜100体積である必要はない。水分占有率は、50〜100体積%であることが好ましく、80〜100体積%であることがより好ましい。
上記のように、本実施形態の多孔性絶縁体1における上記水分占有率は、23体積%以上の数値となる。この数値は、直径5〜100nmの空孔を有する一般的な多孔質体における上記水分占有率に比べて大きな数値である。つまり、直径5〜100nmの空孔を有する一般的な多孔質体であっても、その空孔の内部に水分を吸着することができるが、この場合、上記水分占有率は23体積%未満の数値となる。このことを次に説明する。
一般的な多孔質体が水分を吸着する場合、多孔質体の内部に含まれる空孔の表面に、水分子が単分子で吸着することになる。この多孔質体が本実施形態の多孔性絶縁体1のように直径5〜100nmの空孔を有する場合、上記水分占有率が最も大きな数値となるのは、空孔の直径が最も小さい場合、すなわち、多孔質体が直径5nmの空孔を有する場合となる。この場合における上記水分占有率を計算すると、直径3Å(0.3nm)の水分子が半径2.5nm(直径5nm)である空孔の表面に単分子吸着するので、
上記水分占有率(体積%)=[1−(空孔の半径2.5nm−水分子の直径0.3nm)2/(空孔の半径2.5nm)2]×100=22.56
となり、約22.6体積%となる。このことから、通常の多孔質体では、上記水分占有率が23体積%以上とはならない。
上記水分占有率(体積%)=[1−(空孔の半径2.5nm−水分子の直径0.3nm)2/(空孔の半径2.5nm)2]×100=22.56
となり、約22.6体積%となる。このことから、通常の多孔質体では、上記水分占有率が23体積%以上とはならない。
多孔性絶縁体1において、上記水分占有率が23体積%以上になることは、単分子吸着を超える量の水分4が空孔3の内部に含まれることを意味する。多孔性絶縁体1は、空孔3の内部にこのような多量の水分4が含まれることにより、電界が印加された際に水分4が電気分解を受け、特異な電気化学的挙動を示す。次に、電界が印加された際に、多孔性絶縁体1が示す電気化学的挙動について説明する。
多孔性絶縁体1は、上記のような絶縁材質2を含むので、多孔性絶縁体1を挟むように設けられた正負の対電極によって厚さ方向に電場が印加されると、多孔性絶縁体1の表面のうち、正極に近い表面が負になり、負極に近い表面が正になるように分極する。このとき、多孔性絶縁体1に含まれる水分4は、電気分解を受け、水素イオンと水酸化物イオンとに解離する。解離した水素イオン及び水酸化物イオンは、多孔性絶縁体1に印加された電場によって引力又は斥力を受け、多孔性絶縁体1の表面のうち、負電荷を有する水酸化物イオンが正極に近い表面に移動し、正電荷を有する水素イオンが負極に近い表面に移動すると考えられる。その結果、正に分極した多孔性絶縁体1の表面付近に正電荷を有する水素イオンが集まり、かつ負に分極した多孔性絶縁体の表面付近に負電荷を有する水酸化物イオンが集まることになる。このような作用により、多孔性絶縁体1は、それに加えられる電場により通常の絶縁体よりも大きく分極することができるし、表面付近に集まった水素イオンや水酸化物イオンの存在により、特異な化学反応を起こすことが可能になる。これらの特性に関するさらなる事項は、後述する。
次に、本実施形態の多孔性絶縁体1の作製方法の一例について説明する。この例では、パルスレーザー堆積法により、基板(図示せず)の表面に多孔性絶縁体1を形成させる。
多孔性絶縁体1を形成させるための基板(図示せず)としては、特に限定されず、多孔性絶縁体1の使用目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、多孔性絶縁体1を電界効果トランジスタのゲート絶縁体として使用するのであれば、基板(図示せず、以下同様である)は、電界効果トランジスタの活性層となる。
パルスレーザー堆積法により多孔性絶縁体1を形成させるには、定法に従い、減圧としたチャンバーの内部で、絶縁材質で構成されたターゲットにパルスレーザーを照射し、発生させたプルームを基板に接触させればよい。チャンバーの内部のベース圧力は、10−7〜100Paの範囲とする。そして、パルスレーザー堆積を行うにあたり、チャンバーの内部に酸素を導入し、チャンバー内部の酸素圧力を10−1〜102Paの範囲とすることが必要である。チャンバー内部の酸素圧力を上記の範囲にすることにより、多孔性絶縁体1における上記空孔率を20体積%以上とすることができる。すなわち、本発明は、パルスレーザー堆積法における酸素圧力を変化させることに伴い、形成される多孔性絶縁体1における上記空孔率が変化することを見出し、完成されたものである。例えば、下記の実施例及び比較例でも示すが、パルスレーザー堆積法におけるチャンバー内部の酸素圧力が0.1Pa以下の場合、形成される絶縁体の上記空孔率が0%となり緻密な膜となるが、パルスレーザー堆積法におけるチャンバー内部の酸素圧力が5Paの場合には、形成される絶縁体の上記空孔率が42%となる。チャンバー内部の酸素圧力は、多孔性絶縁体1が所望とする空孔率で形成されるように、適宜設定すればよい。パルスレーザー堆積を行う際のチャンバー内部の酸素圧力は、10−1〜102Paであることが好ましく、1〜10Paであることがより好ましい。
パルスレーザー堆積法で使用するレーザー光は、公知のものを使用することができ、一例としてKrFエキシマレーザーが挙げられる。発生させたレーザー光は、レンズにより集光され、チャンバー内に導入される。上記のように減圧されたチャンバーの内部で、絶縁材質で構成されたターゲットは、レーザー光の焦点付近に45°に傾けて設置され、多孔性絶縁体1が形成される基板は、発生するプルームに対して垂直に、かつターゲットに対して平行になるように固定される。絶縁材質で構成されたターゲットにパルスレーザーが照射されると、ターゲットの表面から絶縁材質が気化してプルームとなり、このプルームが基板の表面に接触することにより、基板の表面に絶縁材質2が堆積する。このとき、絶縁材質2は、パルスレーザーの照射により高温のプルームとなった直後に、基板の表面で急冷される。このため、絶縁材質2は、結晶化することができず、アモルファス状態で基板の表面に堆積する。絶縁材質2がアモルファス状態で堆積することにより、多孔性絶縁体1の柔軟性や低電流リーク特性が多孔質結晶薄膜よりも良好になるので好ましい。
なお、パルスレーザー堆積法で使用するレーザー光としては、上記のKrFエキシマレーザーの他にも、Nd:YAGの第4高調波のレーザーやArFエキシマレーザー等も例示することができる。
なお、パルスレーザー堆積法で使用するレーザー光としては、上記のKrFエキシマレーザーの他にも、Nd:YAGの第4高調波のレーザーやArFエキシマレーザー等も例示することができる。
パルスレーザーを発生させる条件は、特に限定されないが、KrFエキシマレーザーを使用する場合、波長248nm、パルス幅20ns、繰り返し周波数10Hzとすることが例示される。
基板の表面に、多孔性絶縁体1が形成されたら、チャンバー内の減圧を解除し常圧とする。このとき、多孔性絶縁体1の内部に存在する空孔3の内部には、空気中に含まれる水分が取り込まれ、水分4が含まれるようになる。このとき、単分子吸着に基づく量を超える量の水分4が空孔3の内部に含まれる。以上により、基板の表面に本実施形態の多孔性絶縁体が形成される。
以上で説明した多孔性絶縁体1の作製方法では、例示として、パルスレーザー堆積法を挙げたが、多孔性絶縁体1の作製方法はこれに限定されない。多孔性絶縁体1の作製方法としては、パルスレーザー堆積法の他に、スパッタ法、絶縁体の前駆体を塗布し、次いで加熱してこれを焼成する塗布法、CVD法、原子層堆積法等が挙げられる。
次に、上記実施形態の多孔性絶縁体1の応用例の一つとして、多孔性絶縁体1がゲート絶縁体として使用された電界効果トランジスタ5の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の多孔性絶縁体1がゲート絶縁体として使用された電界効果トランジスタ5の一実施形態を示す斜視図である。なお、図2では、理解を容易にするために、各部材の寸法の比を実際のものとは異なるように記載している。
本実施形態の電界効果トランジスタ5では、活性層6の表面に、ゲート絶縁体として多孔性絶縁体1の膜が形成される。また、活性層6の表面に、多孔性絶縁体1をその左端及び右端から挟むようにソース電極8及びドレイン電極9が対向して形成される。ソース電極8及びドレイン電極9は、それぞれの一部が多孔性絶縁体1の左端又は右端に食い込むように配置される。多孔性絶縁体1の表面には、ゲート電極7が形成される。ゲート電極7は、対向して配置されたソース電極8及びドレイン電極9間の通電方向に対して垂直方向に電界を印加することができる。電界効果トランジスタ5は、ゲート電極7に電荷を印加することにより、ソース電極8及びドレイン電極9の間が導通状態となり、電界効果トランジスタの特性であるスイッチング特性を発現する。
活性層6は、絶縁体である金属酸化物で構成される。このような金属酸化物としては、SrTiO3、ZnO、TiO2、NiO等が例示されるが、トランジスタのオン/オフ比を大きくすることができることから、SrTiO3が好ましく使用される。活性層6は、単結晶で構成されることが好ましく、特に限定されないが、その(001)面に多孔性絶縁体1が形成される。活性層6は、0.4〜1000nmの薄膜でも、1000nm以上のバルク単結晶でもよい。
活性層6の表面に形成される多孔性絶縁体1の膜厚は、電界効果トランジスタ5の所望する特性に応じて適宜設定すればよい。多孔性絶縁体1の膜厚としては、10〜1000nmが例示されるが、特に限定されない。
ゲート電極7は、導電性を有する物質で形成される。このようなゲート電極7としては、チタン、金、ニッケル、アルミニウム、モリブデン等の膜又は層が挙げられる。ゲート電極7の厚さは、電界効果トランジスタ5の所望とする特性に応じて適宜設定すればよい。ゲート電極7の厚さとしては、10〜30nmが例示されるが、特に限定されない。
ソース電極8及びドレイン電極9は、導電性を有する物質で形成される。このようなソース電極8及びドレイン電極9としては、それぞれ独立して、チタン、金、ニッケル、アルミニウム、モリブデン等の膜又は層が挙げられる。ソース電極8及びドレイン電極9の厚さは、それぞれ独立して、電界効果トランジスタ5の所望とする特性に応じて適宜設定すればよい。ソース電極8及びドレイン電極9の厚さとしては、それぞれ独立して、10〜30nmが例示されるが、特に限定されない。
次に、上記のような電界効果トランジスタ5が、電界効果トランジスタの特性であるスイッチング特性を発現する理由について、考えられる機構を説明する。上記のように、電界効果トランジスタ5の活性層6は、金属酸化物からなる絶縁体であるので、ゲート電極7からの電界が印加されない状態ではソース電極8及びドレイン電極9間に電流が流れない。
ここへ、ゲート電極7に正電荷を、ソース電極8に負電荷をそれぞれ印加すると、多孔性絶縁体1の内部には、ゲート電極7から活性層6の方向に向かって電界を生じる。すると、誘電体である多孔性絶縁体1のうち活性層6との境界となる表面に正電荷が誘起され、この誘起された正電荷によって、活性層6の表面のうち多孔性絶縁体1との境界となる表面に電子が集合する。活性層6の表面に集合した電子は、キャリアとなり、活性層6のごく表面部分にわずかな伝導性を与える。この伝導性が付与された活性層6の表面は、ソース電極8と電気的に接続されており、ソース電極8と同じく負電荷を有する。この伝導性が付与された活性層6の表面を、伝導性活性層表面(図示せず、以下同様である)と呼ぶ。
多孔性絶縁体1は、その上部に位置し正電荷を有するゲート電極7と、その下部に位置し負電荷を有するソース電極8及び伝導性活性層表面とに挟まれる。そのため、多孔性絶縁体1の内部に存在する水分4は、ゲート電極7とソース電極8及び伝導性活性層表面とからなる電界により、電気分解を受けて水素イオンと水酸化物イオンとに解離する。
電気分解によって生じた水素イオンは、電界による引力を受けつつ多孔性絶縁体1の内部を移動し、負電荷を有するソース電極8及び伝導性活性層表面付近(すなわち、多孔性絶縁体1と活性層6との境界)に集合する。このとき、多孔性絶縁体1と活性層6との境界に集合した水素イオンの一部は、活性層6の表面に存在する金属酸化物から酸素原子を引き抜いて活性層6の表面を金属化(伝導化)し、ソース電極8及びドレイン電極9の間を伝導化する。このような機構により、電界効果トランジスタ5は、スイッチング作用を発現すると考えられる。
上記機構は、空孔3の内部に存在する水分4が凍結しない温度と凍結する温度とで、電界効果トランジスタ5示すスイッチング作用に違いを生じたことから推察されたものである。また、試作した電界効果トランジスタ5における、ソースドレイン間電流−ゲート電圧特性のプロット形状は、電気化学反応におけるイオン電流の挙動とよく似ており、このことからも、水分4の電気分解作用に基づく上記機構が推察される。
なお、ソース電極8とドレイン電極9との間の導通状態は、上記と逆方向の電場をゲート電極7とソース電極8との間に印加することにより消失し、さらに、上記と同じ方向の電場をゲート電極7とソース電極との間に印加することにより再度発現する。このように、電界効果トランジスタ5のスイッチング作用は、可逆的である。
ソース電極8とドレイン電極9との間を導通させるために必要なゲート電圧は、1〜50V程度である。なお、ここでいうゲート電圧とは、ソース電極8に対するゲート電極7の電圧である。このようなゲート電圧が印加されることにより、電界効果トランジスタ5におけるシート抵抗(ソース電極8とドレイン電極9との間の抵抗をチャネル長/チャネル幅の比で割った値)は、100kΩ以下となる。なお、ここでいうチャネル長とは、ソース電極8とドレイン電極9との間の長さであり、チャネル幅とは、ソース−ドレイン電流の生じる部分のうち、上記チャネル長と平面内で直交する幅の大きさを意味する。
以上のように、電界効果トランジスタ5の例を示して、多孔性絶縁体1の具体的な用途を説明したが、多孔性絶縁体1の用途はこれに限定されない。上記のように、多孔性絶縁体1は、その内部に存在する水分4の電気分解作用に基づく大きな分極を示すため、電解コンデンサ用途としても好ましく使用される。また、多孔性絶縁体1は、高い水素イオン伝導を示すので燃料電池用途としても使用することが可能である。
また、本発明者らは、電界効果トランジスタ5において、ゲート電極7に電圧を印加してゲート電極7から活性層6の方向に向かって電界を生じさせた状態で、チャネル間(ソース−ドレイン電極間)に温度差を与えて熱電能を計測したところ、多孔性絶縁体1でないゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタよりも高い熱電変換効果が得られることを見出した。この場合、活性層6が熱電変換作用を発現することとなり、活性層6のソース電極8側の温度と、活性層6のドレイン電極9側の温度との温度差により熱起電力が生じ、この熱起電力はソース電極8及びドレイン電極9の電位差として取り出すことができる。なお、チャネル間(ソース−ドレイン電極間)に温度差を与える方法としては、特に限定されないが、ソース電極8側となる活性層6の下面に冷却手段を接触させ、ドレイン電極9側となる活性層6の下面に加熱手段を接触させる方法が例示される。このような加熱手段及び冷却手段としてはペルチェ素子を使用することが例示される。
つまり、非特許文献1にも記載されるように、チタン酸ストロンチウムのような金属酸化物を活性層とし、12CaO・7Al2O3ガラスのような絶縁体をゲート絶縁体とした電界効果トランジスタは、チャネル間(ソース-ドレイン電極間)に温度差を与えることで、ソース電極及びドレイン電極間に電圧を生じる熱電変換作用を備えるが、この絶縁体を、本発明の多孔性絶縁体1とすることにより、ゲート絶縁体の組成が同じであるにもかかわらず、熱電変換効率が向上することを本発明者らは見出した。
このことから、本発明の多孔性絶縁体1は、熱電変換材料の作製にも有用であることが理解される。こうした知見に基づく、多孔性絶縁体1と金属酸化物からなる活性層とが接合されてなる熱電変換材料もまた、本発明の一つである。
以下、実施例を示して、本発明の多孔性絶縁体及び電界効果トランジスタについてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
<電界効果トランジスタの作製>
[実施例1]
図3に示す構造を有する電界効果トランジスタ5を作製した。なお、図3では、理解を容易にするために、各部材の寸法の比を実際のものとは異なるように記載している。
まず、非特許文献1記載の手法にて、表面を原子レベルで平坦化したSrTiO3単結晶(面方位001、10mm×10mm×厚さ0.5mm、株式会社信光社製)の表面に、Tiを400μm×400μm×厚さ20nmで電子ビーム蒸着させることにより、ソース電極8及びドレイン電極9を形成した。ソース電極8とドレイン電極9との離間幅は、400μmとした。SrTiO3単結晶は、電界効果トランジスタ5の活性層6となる。次に、酸素圧力1.5Paの条件にて、パルスレーザー堆積法によりアモルファス状態の12CaO・7Al2O3を活性層6の表面、並びにソース電極8及びドレイン電極9の一部の表面に堆積させ、多孔性絶縁体1(ゲート絶縁体)を形成させた。なお、このときのチャンバーベース圧力(酸素を導入する前のチャンバー内部の圧力)は、1×10−6Paとした。多孔性絶縁体1の大きさは、800μm×1000μm×厚さ200nmとした。また、パルスレーザー堆積法を行う際の条件は、基板加熱なし、KrFエキシマレーザー、レーザエネルギー密度3J/cm2、パルス幅20ns、繰り返し周波数10Hzとした。最後に、形成させた多孔性絶縁体1の表面に、Tiを500μm×800μm×厚さ20nmで電子ビーム蒸着させることにより、ゲート電極7を形成し、実施例1の電界効果トランジスタを得た。なお、ゲート電極7は、平面視で多孔性絶縁体1の中央に位置するように形成させた。
[実施例1]
図3に示す構造を有する電界効果トランジスタ5を作製した。なお、図3では、理解を容易にするために、各部材の寸法の比を実際のものとは異なるように記載している。
まず、非特許文献1記載の手法にて、表面を原子レベルで平坦化したSrTiO3単結晶(面方位001、10mm×10mm×厚さ0.5mm、株式会社信光社製)の表面に、Tiを400μm×400μm×厚さ20nmで電子ビーム蒸着させることにより、ソース電極8及びドレイン電極9を形成した。ソース電極8とドレイン電極9との離間幅は、400μmとした。SrTiO3単結晶は、電界効果トランジスタ5の活性層6となる。次に、酸素圧力1.5Paの条件にて、パルスレーザー堆積法によりアモルファス状態の12CaO・7Al2O3を活性層6の表面、並びにソース電極8及びドレイン電極9の一部の表面に堆積させ、多孔性絶縁体1(ゲート絶縁体)を形成させた。なお、このときのチャンバーベース圧力(酸素を導入する前のチャンバー内部の圧力)は、1×10−6Paとした。多孔性絶縁体1の大きさは、800μm×1000μm×厚さ200nmとした。また、パルスレーザー堆積法を行う際の条件は、基板加熱なし、KrFエキシマレーザー、レーザエネルギー密度3J/cm2、パルス幅20ns、繰り返し周波数10Hzとした。最後に、形成させた多孔性絶縁体1の表面に、Tiを500μm×800μm×厚さ20nmで電子ビーム蒸着させることにより、ゲート電極7を形成し、実施例1の電界効果トランジスタを得た。なお、ゲート電極7は、平面視で多孔性絶縁体1の中央に位置するように形成させた。
[実施例2]
パルスレーザー堆積法を実施する際の酸素圧力を3Paとしたこと以外は実施例1と同様の手順にて、実施例2の電界効果トランジスタを作製した。
パルスレーザー堆積法を実施する際の酸素圧力を3Paとしたこと以外は実施例1と同様の手順にて、実施例2の電界効果トランジスタを作製した。
[実施例3]
パルスレーザー堆積法を実施する際の酸素圧力を5Paとしたこと以外は実施例1と同様の手順にて、実施例3の電界効果トランジスタを作製した。
パルスレーザー堆積法を実施する際の酸素圧力を5Paとしたこと以外は実施例1と同様の手順にて、実施例3の電界効果トランジスタを作製した。
[比較例1]
パルスレーザー堆積法を実施する際の酸素圧力を0.1Paとしたこと以外は実施例1と同様の手順にて、比較例1の電界効果トランジスタを作製した。
パルスレーザー堆積法を実施する際の酸素圧力を0.1Paとしたこと以外は実施例1と同様の手順にて、比較例1の電界効果トランジスタを作製した。
<多孔性絶縁体1における空孔の観察>
実施例2の電界効果トランジスタにおける多孔性絶縁体1の断面を、走査型透過電子顕微鏡(HAADF−STEM)で観察した。その結果、多孔性絶縁体1には、無数の空孔が含まれており、その空孔の直径が約10nmであることがわかった。実施例1及び3の電界効果トランジスタにおける多孔性絶縁体1について同様の観察を行った結果、これらの多孔性絶縁体にも直径約10nmの空孔が無数に含まれていることを確認した。また、実施例1及び3の多孔性絶縁体についても、同様に、直径約10nmの空孔が無数に含まれていることを確認した。
一方、比較例1の電界効果トランジスタにおける(多孔性)絶縁体1について同様の観察を行った結果、この(多孔性)絶縁体には空孔が含まれず、緻密な構造を有していることがわかった。したがって、比較例1の電界効果トランジスタにおけるゲート絶縁体は、実施例1〜3のゲート絶縁体のような多孔性絶縁体ではなく、単なる絶縁体であることが確認された。
実施例2の電界効果トランジスタにおける多孔性絶縁体1の断面を、走査型透過電子顕微鏡(HAADF−STEM)で観察した。その結果、多孔性絶縁体1には、無数の空孔が含まれており、その空孔の直径が約10nmであることがわかった。実施例1及び3の電界効果トランジスタにおける多孔性絶縁体1について同様の観察を行った結果、これらの多孔性絶縁体にも直径約10nmの空孔が無数に含まれていることを確認した。また、実施例1及び3の多孔性絶縁体についても、同様に、直径約10nmの空孔が無数に含まれていることを確認した。
一方、比較例1の電界効果トランジスタにおける(多孔性)絶縁体1について同様の観察を行った結果、この(多孔性)絶縁体には空孔が含まれず、緻密な構造を有していることがわかった。したがって、比較例1の電界効果トランジスタにおけるゲート絶縁体は、実施例1〜3のゲート絶縁体のような多孔性絶縁体ではなく、単なる絶縁体であることが確認された。
<空孔率及び水分占有率の測定>
実施例1〜3及び比較例1の電界効果トランジスタで形成させた多孔性絶縁体1と同様の手法にて、多孔性絶縁体のみをそれぞれ作製した。これらの多孔性絶縁体は、それぞれ実施例1〜3及び比較例1の電界効果トランジスタにおける多孔性絶縁体1と同様の構造を有することになる。
作製された多孔性絶縁体のそれぞれについて、空孔率及び水分占有率を測定した。その結果を表1に示す。
なお、空孔率及び水分占有率という用語の示す意味は、それぞれ既に述べたとおりである。
また、空孔率(%)は、形成された12CaO・7Al2O3からなる多孔性絶縁体の膜密度をエックス線反射率測定により計測し、この膜密度aと、12CaO・7Al2O3の膜が緻密に形成された場合の膜密度bとを使用して、(b−a)/b×100の式から算出した。
さらに、水分占有率(%)は、室温から400℃まで加熱したときに多孔性絶縁体から放出される水分を質量分析する昇温脱離法によって、多孔性絶縁体に含まれていた水分量を求め、この水分量から多孔性絶縁体に含まれていた水分の体積を算出し、さらに、水分の体積/(多孔性絶縁体の体積×空孔率)×100の式により算出した。なお、水分の体積を求める際に使用した水分の比重は、1.0g/cm3とした。ここで、酸素圧力が0.1Paの場合の(多孔性)絶縁膜に含まれる水分は、昇温脱離法によって、0.9体積%と算出されたが、このときの(多孔性)絶縁膜の空孔率は0%であるから、当該水分は空孔に含まれるのではなく、(多孔性)絶縁膜の表面に付着していたものと推察される。この場合、水分に占有されるべき空孔が存在しないので、水分占有率を算出することができない。そこで、表1では、酸素圧力が0.1Paの場合の水分占有率を「−」と記載した。
実施例1〜3及び比較例1の電界効果トランジスタで形成させた多孔性絶縁体1と同様の手法にて、多孔性絶縁体のみをそれぞれ作製した。これらの多孔性絶縁体は、それぞれ実施例1〜3及び比較例1の電界効果トランジスタにおける多孔性絶縁体1と同様の構造を有することになる。
作製された多孔性絶縁体のそれぞれについて、空孔率及び水分占有率を測定した。その結果を表1に示す。
なお、空孔率及び水分占有率という用語の示す意味は、それぞれ既に述べたとおりである。
また、空孔率(%)は、形成された12CaO・7Al2O3からなる多孔性絶縁体の膜密度をエックス線反射率測定により計測し、この膜密度aと、12CaO・7Al2O3の膜が緻密に形成された場合の膜密度bとを使用して、(b−a)/b×100の式から算出した。
さらに、水分占有率(%)は、室温から400℃まで加熱したときに多孔性絶縁体から放出される水分を質量分析する昇温脱離法によって、多孔性絶縁体に含まれていた水分量を求め、この水分量から多孔性絶縁体に含まれていた水分の体積を算出し、さらに、水分の体積/(多孔性絶縁体の体積×空孔率)×100の式により算出した。なお、水分の体積を求める際に使用した水分の比重は、1.0g/cm3とした。ここで、酸素圧力が0.1Paの場合の(多孔性)絶縁膜に含まれる水分は、昇温脱離法によって、0.9体積%と算出されたが、このときの(多孔性)絶縁膜の空孔率は0%であるから、当該水分は空孔に含まれるのではなく、(多孔性)絶縁膜の表面に付着していたものと推察される。この場合、水分に占有されるべき空孔が存在しないので、水分占有率を算出することができない。そこで、表1では、酸素圧力が0.1Paの場合の水分占有率を「−」と記載した。
<電界効果トランジスタの電気特性の測定>
図4(a)に、実施例2の電界効果トランジスタにおける、室温での、ゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idをプロットしたグラフを示す。また、図4(b)に、実施例2の電界効果トランジスタにおけるゲート電圧Vgに対するゲート電流Igをプロットしたグラフを示す。また、図4(c)に、実施例2の電界効果トランジスタにおけるゲート電圧Vgに対するゲート容量をプロットしたグラフを示す。また、図4(d)に、比較例1の電界効果トランジスタにおける、室温での、ゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idをプロットしたグラフを示す。また、図4(e)に、比較例1の電界効果トランジスタにおけるゲート電圧Vgに対するゲート電流Igをプロットしたグラフを示す。また、図4(f)に、比較例1の電界効果トランジスタにおけるゲート電圧Vgに対するゲート容量をプロットしたグラフを示す。
図4(a)に、実施例2の電界効果トランジスタにおける、室温での、ゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idをプロットしたグラフを示す。また、図4(b)に、実施例2の電界効果トランジスタにおけるゲート電圧Vgに対するゲート電流Igをプロットしたグラフを示す。また、図4(c)に、実施例2の電界効果トランジスタにおけるゲート電圧Vgに対するゲート容量をプロットしたグラフを示す。また、図4(d)に、比較例1の電界効果トランジスタにおける、室温での、ゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idをプロットしたグラフを示す。また、図4(e)に、比較例1の電界効果トランジスタにおけるゲート電圧Vgに対するゲート電流Igをプロットしたグラフを示す。また、図4(f)に、比較例1の電界効果トランジスタにおけるゲート電圧Vgに対するゲート容量をプロットしたグラフを示す。
図4(a)に示すように、実施例2の電界効果トランジスタにおけるドレイン電流Id−ゲート電圧Vg特性には、大きな反時計回りのヒステリシスが見られ、印加するゲート電圧の増加に伴ってヒステリシスも増大する傾向が見られた。これに対して、比較例1の電界効果トランジスタでは、図4(d)に示すように、上記のようなヒステリシス効果が観察されなかった。
また、ゲート電流Ig−ゲート電圧Vg特性を調査した結果、図4(b)及び(e)に示すように、実施例2の電界効果トランジスタでは、比較例1の電界効果トランジスタと比較して100倍以上のゲート電流が観察され、比較例1の電界効果トランジスタよりもはるかに大きなゲート電流のヒステリシス効果が観察された。
さらに、図4(c)に示すように、実施例2の電界効果トランジスタでは、ゲート容量−ゲート電圧Vg特性にも大きなヒステリシスが観察され、ゲート電圧の変化に伴ってゲート容量が160pF〜20pFの幅で変化した。これに対して、図4(f)に示すように、比較例1の電界効果トランジスタでは、このようなヒステリシスが観察されなかった。
また、ゲート電流Ig−ゲート電圧Vg特性を調査した結果、図4(b)及び(e)に示すように、実施例2の電界効果トランジスタでは、比較例1の電界効果トランジスタと比較して100倍以上のゲート電流が観察され、比較例1の電界効果トランジスタよりもはるかに大きなゲート電流のヒステリシス効果が観察された。
さらに、図4(c)に示すように、実施例2の電界効果トランジスタでは、ゲート容量−ゲート電圧Vg特性にも大きなヒステリシスが観察され、ゲート電圧の変化に伴ってゲート容量が160pF〜20pFの幅で変化した。これに対して、図4(f)に示すように、比較例1の電界効果トランジスタでは、このようなヒステリシスが観察されなかった。
ところで、図4(a)又は(b)に示す、実施例2の電界効果トランジスタにおける電流−電圧特性の形状は、電気化学反応におけるイオン電流の挙動と類似するものである。このことから、実施例2の電界効果トランジスタにおける上記のような電気特性は、多孔性絶縁体1(ゲート電極)に含まれる水分の電気分解電流に基づくことが予想された。
そこで、多孔性絶縁体1に含まれる水分による上記電気特性への影響を評価するために、実施例2の電界効果トランジスタについて、室温(25℃)及び0℃におけるドレイン電流Id−ゲート電圧Vg特性を調べた。その結果を図5に示す。図5(a)は、25℃における、実施例2の電界効果トランジスタのゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idをプロットしたグラフである。図5(b)は、0℃における、実施例2の電界効果トランジスタのゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idをプロットしたグラフである。
図5(a)に示すように、実施例2の電界効果トランジスタでは、室温(25℃)において、ドレイン電流Id−ゲート電圧Vg特性に大きなヒステリシスが観察された。しかしながら、水が凍る温度である0℃では、図5(b)に示すように、ドレイン電流Id−ゲート電圧Vg特性のヒステリシスがほとんど観察されず、一般的な電界効果トランジスタにおけるドレイン電流Id−ゲート電圧Vg特性が観察された。
このような挙動は、多孔性絶縁体1に含まれる水分が氷になることで、ゲート電圧印加時における電気分解が起こらなくなったために観察されたと推察される。
図5(a)に示すように、実施例2の電界効果トランジスタでは、室温(25℃)において、ドレイン電流Id−ゲート電圧Vg特性に大きなヒステリシスが観察された。しかしながら、水が凍る温度である0℃では、図5(b)に示すように、ドレイン電流Id−ゲート電圧Vg特性のヒステリシスがほとんど観察されず、一般的な電界効果トランジスタにおけるドレイン電流Id−ゲート電圧Vg特性が観察された。
このような挙動は、多孔性絶縁体1に含まれる水分が氷になることで、ゲート電圧印加時における電気分解が起こらなくなったために観察されたと推察される。
さらに、電気分解による影響を調べるために、実施例2の電界効果トランジスタについて、ドレイン電流Idのゲート電圧印加時間依存性を測定した。その結果を図4(a)に示す。図4(a)において、複数のヒステリシス曲線が存在するが、これらは、ゲート電圧印加時間を1、2、3、4及び5分と変化させた際の、ゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idをそれぞれプロットしたものである。図4(a)に示すように、実施例2の電界効果トランジスタでは、ゲート電圧印加時間の増加とともに、ドレイン電流Idが増加し、ソース−ドレイン間抵抗をチャネル長/チャネル幅の比で割った値であるシート抵抗が2kΩまで減少した。
上記のような電気特性は、実施例1及び3の電界効果トランジスタでも観察され、これらの電界効果トランジスタでも、シート抵抗10kΩ以下を実現することができた。しかしながら、比較例1の電界効果トランジスタでは、シート抵抗を100kΩ以下とすることができなかった。
なお、比較例1の電界効果トランジスタでは、図4(d)に示すように、一般的な電界効果トランジスタと同様なドレイン電流Id−ゲート電圧Vg特性が観察された。このときのゲート電流は、十分に小さいものであり(図4(e)を参照)、計測されたドレイン電流Id−ゲート電圧Vg特性には全く影響を及ぼさないものであった。また、図4(f)に示すように、比較例1の電界効果トランジスタにおけるゲート容量は、210pFであり、アモルファス状態の12CaO・7Al2O3の比誘電率(=12)から算出されるゲート容量と一致した。
<電界効果トランジスタの熱電特性の測定>
実施例3の電界効果トランジスタと比較例1の電界効果トランジスタにおける熱電特性を測定した。実施例3の電界効果トランジスタは、本発明に係る多孔性絶縁体1をゲート絶縁体として備え、比較例1の電界効果トランジスタは、多孔性絶縁体1とは異なり、緻密な構造を有する絶縁体をゲート絶縁体として備える。つまり、実施例3の電界効果トランジスタは、多孔性絶縁体1と、金属酸化物からなる活性層とが接合した構造を有することになる。
実施例3の電界効果トランジスタと比較例1の電界効果トランジスタにおける熱電特性を測定した。実施例3の電界効果トランジスタは、本発明に係る多孔性絶縁体1をゲート絶縁体として備え、比較例1の電界効果トランジスタは、多孔性絶縁体1とは異なり、緻密な構造を有する絶縁体をゲート絶縁体として備える。つまり、実施例3の電界効果トランジスタは、多孔性絶縁体1と、金属酸化物からなる活性層とが接合した構造を有することになる。
実施例3の電界効果トランジスタにゲート電圧を印加して、活性層表面のキャリア電子を蓄積させた状態にて、熱電性能の指標となる、室温におけるゼーベック係数を求めた。電界効果トランジスタのチャネル間(ソース−ドレイン電極間)に対応する活性層6の下面(活性層6の表面のうち、ソース電極8等を設けた面の裏面側に存在する面)に市販のペルチェ素子(図示せず、以下同様である。)を2つ設置し、当該ペルチェ素子を使用してチャネル間(ソース−ドレイン電極間)の温度差を段階的に変化させながらソース電極8とドレイン電極9との間に生じる熱起電力の温度依存性を測定し、そのプロットの傾きからゼーベック係数を算出した。なお、上記2つのペルチェ素子のうちの一方を冷却用としてソース電極8側となる活性層6の下面に設置し、他方を加熱用としてドレイン電極9側となる活性層6の下面に設置した。この2つのペルチェ素子による冷却及び加熱により、チャネル間(ソース−ドレイン電極間)には、ドレイン電極9側を高温側とし、ソース電極8側を低温側とする温度勾配が生じることとなり、ソース電極8及びドレイン電極9間に熱起電力が生じる。この際、極細熱電対(K型)を使用してチャネル両端(ソース−ドレイン電極間)の温度差を測定した。なお、上記算出において、チャネル間(ソース−ドレイン電極間)の温度差として5℃程度を付与した。また、熱起電力の測定にはデジタルマルチメータ(アドバンテスト株式会社製、形式R6552)を使用した。同様の手順にて、比較例1の電界効果トランジスタにおけるゼーベック係数を算出した。
図6(a)に、ゲート電圧(Vg)に対するゼーベック係数(熱電能|S|;以下、「熱電能」とも呼ぶ。)を示す。また、図6(b)に、ゲート電圧(Vg)に対する、トランジスタチャネルのシート電子濃度(nsheet)を示す。なお、シート電子濃度とは、ソース電極8とドレイン電極9で挟まれた領域(チャネル)間の電子濃度(cm−2)であり、Hall効果を測定することにより算出した。また、ゼーベック係数(熱電能)の計測はすべて室温で実施した。図6及び図7において、実施例3の電界効果トランジスタについての測定結果を「多孔性C12A7」と表示し、比較例1の電界効果トランジスタについての測定結果を「緻密C12A7」と表示した。
本発明の多孔性絶縁体1をゲート絶縁体として備えた、実施例3の電界効果トランジスタ5(以下、「多孔性のゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタ」とも呼ぶ。)では、ゲート電圧の増加に伴い熱電能が一旦減少したが、ゲート電圧が22Vとなる辺りを境として熱電能が上昇した。一方、緻密な絶縁体をゲート絶縁体として備えた、比較例1の電界効果トランジスタ(以下、「緻密なゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタ」とも呼ぶ。)では、高い熱電能を示した反面、ゲート電圧の増加に伴って熱電能が単調に減少した。
また、シート電子密度は、緻密なゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタの場合では、ゲート電圧を40Vとした場合においても1013cm−2程度に留まったが、多孔性のゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタの場合では、1015cm−2を超える高い値となった。なお、図6(a)及び(b)において、矢印で示した箇所は、多孔性のゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタにおいて、一旦低下した熱電能が回復したポイントを示しており、このポイントにおける熱電能及びシート電子濃度は、それぞれ270μVK−1、2.5×1014cm−2だった。
次に、多孔性のゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタに一定のゲート電圧(15V、−15V、−20V、−30V及び−40Vのいずれかとなる電圧)を印加し、熱電能及びシート電子濃度のゲート電圧印加時間依存性を調べた。その結果を図6(c)及び(d)に示す。熱電能は、+15Vのゲート電圧を印加した場合に、ゲート電圧印加時間の経過とともに270μVK−1まで一旦減少し、その後増加した。このとき、シート電子濃度は、ゲート電圧印加時間の経過とともに単調に増加した。また、負のゲート電圧を印加した場合には、熱電能はさらに増加した一方で、シート電子はわずかに減少しただけであった。
以上の結果をもとに、熱電能とシート電子濃度との関係を考察する。図7は、多孔性のゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタ及び緻密なゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタについての、室温における熱電能のシート電子濃度依存性を示すプロットである。図中の破線は、理論計算(半導体デバイスシミュレータ、シルバコ製ATLASを使用)によって算出された熱電能のシート電子濃度依存性を示す。
図7に示すように、緻密なゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタは、シート電子濃度が増加するに伴って、ほぼ理論値通りの熱電能の減少を示した。その一方で、多孔性のゲート絶縁体を備えた電界効果トランジスタは、シート電子濃度が2.5×1014cm−2までの範囲では、シート電子濃度の増加に伴って、ほぼ理論値通りの熱電能の減少を示したが、シート電子濃度が2.5×1014cm−2を超える範囲では、シート電子濃度の増加に伴って、理論値から大きく外れた熱電能の増加を示し、最終的には熱電能が理論値の約5倍となることがわかった。
熱電材料の性能評価の指標となる性能指数ZTは、ZT=S2σTκ−1(S:熱電能、σ:導電率、T:絶対温度、κ:熱伝導率)で表されるので、上記のように理論値の約5倍の熱電能が得られたことは、すなわち約25倍の性能指数ZTとなったことを意味する。このことから、本発明の多孔性絶縁体と、金属酸化物からなる活性層と、が接合してなる本発明の熱電変換材料は、高い熱電性能を有することがわかる。
ところで、誘電体ヘテロ構造の二次元電子ガス(国際公開第2006/054550号:熱電変換材料及び熱電変換材料の製造方法)や、SrTiO3人工超格子(国際公開第2007/132782号:熱電変換材料、赤外線センサ及び画像作製装置)が室温で2を超えるZTを示すことが既に知られている。いずれもSrTiO3の極薄層に高濃度のキャリア電子を局在化させたことで、量子サイズ効果と呼ばれる電子状態密度の離散化が起こり、巨大熱電能が実現したものである。実施例3の電界効果トランジスタについても、ゲート電圧によって多孔性絶縁体1とSrTiO3単結晶からなる活性層6との界面に厚さ2nmほどの極薄電子層が誘起されたため、緻密な絶縁体を有する比較例1の電界効果トランジスタの約5倍の巨大熱電能を示したと考えられる。
1 多孔性絶縁体
2 絶縁材質
3 空孔
4 水分
5 電界効果トランジスタ
6 活性層
2 絶縁材質
3 空孔
4 水分
5 電界効果トランジスタ
6 活性層
Claims (7)
- 絶縁性を示す材質中に直径5〜100nmである空孔を複数有し、
全体の体積に対する前記空孔の占める体積の割合である空孔率が20体積%以上であり、
前記空孔には水分が含まれ、前記空孔の体積に対する前記水分の占める体積の割合である水分占有率が23〜100体積%である多孔性絶縁体。 - 前記空孔の直径が5〜20nmである請求項1記載の多孔性絶縁体。
- 前記材質が12CaO・7Al2O3、CaO、Al2O3、12SrO・7Al2O3、Y2O3、HfO2、SiO2、MgO、LaAlO3、ZrO2、MgAl2O4、Nb2O5、Ta2O5、Si3N4、SrTiO3、BaTiO3、CaTiO3、SrZrO3、CaZrO3、及びBaZrO3からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項1又は2記載の多孔性絶縁体。
- 前記材質がアモルファス酸化物である請求項1〜3のいずれか1項記載の多孔性絶縁体。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の多孔性絶縁体をゲート絶縁体とする電界効果トランジスタ。
- 活性層が金属酸化物からなる請求項5記載の電界効果トランジスタ。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の多孔性絶縁体と、金属酸化物からなる活性層と、が接合されてなる熱電変換材料。
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- 2011-06-29 JP JP2011144197A patent/JP2012033910A/ja not_active Withdrawn
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