これ以降の説明において特に記載がない限り、「%」は「重量%」を、「部」は「重量部」を、それぞれ意味する。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
また。明細書における「樹脂」は「重合体」よりも広い概念である。樹脂は、例えば1種または2種以上の重合体からなってもよいし、必要に応じて、重合体以外の材料、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、フィラーなどの添加剤、相溶化剤、安定化剤などを含んでいてもよい。
《セルロース系樹脂(A)》
本発明に係るセルロース系樹脂としては、特に限定はされず、例えば芳香族カルボン酸エステル等も用いられるが、光学特性等の得られるフィルムの特性を鑑みると、セルロースの低級脂肪酸エステルを使用するのが好ましい。本発明においてセルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が5以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースピバレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましいものとして挙げられる。力学特性と溶融製膜性の双方を両立させるために、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等のように混合脂肪酸エステルを用いてもよい。その中でも、アクリル系重合体と相溶性が高いことから、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートが好ましく用いられる。
セルロース系樹脂(A)は、50000〜150000の数平均分子量(Mn)を有することが好ましく、55000〜120000の数平均分子量を有することが更に好ましく、60000〜100000の数平均分子量を有することが最も好ましい。また、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が1.3〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜5.0であり、更に好ましくは1.7〜4.0であり、更に好ましくは2.0〜3.5のセルロース系樹脂が好ましく用いられる。
セルロース系樹脂(A)の原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜時の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロース系樹脂は適宜混合して、或いは単独で使用することができる。
セルロース系樹脂(A)は、例えば、原料セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/またはブチル基を置換することで得られる。このようなセルロース系樹脂の合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号或いは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することができる。
セルロース系樹脂(A)は、公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;アンチブロッキング剤;マット剤;酸補足剤;金属不活性化剤;可塑剤;滑剤;難燃剤;ASAやABSなどのゴム質量体などである。添加剤の添加量は、例えば0.01〜20%であり、好ましくは0.1〜5%であり、より好ましくは0.1〜0.5%である。
《アクリル系樹脂(B)》
本発明に係るアクリル系樹脂(B)は、(I)ガラス転移温度が110℃以上であり、(II)負の固有複屈折を示し、且つ、(III)、以下の式(1)、(2)もしくは(3)に示される分子構造または複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を有する。
(前記式(1)において、nは1〜4の範囲の自然数、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。)
ここでアクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または(メタ)アクリル酸単位を構成単位として有する樹脂のことである。アクリル系樹脂が有する全構成単位における(メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位の割合の合計は、10重量%以上が好ましく、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。また、アクリル系樹脂(B)は、重合後の環化反応などにより主鎖に環構造を導入してもよい。この場合、(メタ)アクリル酸エステル単位および環構造の合計が全構成単位の50重量%以上であれば、アクリル系樹脂(B)とする。
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルおよび2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどのα−ヒドロキシアクリル酸メチル、などの各単量体に由来する構成単位である。アクリル系樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸メチル単位を有することが特に好ましく、この場合、成形品の光学特性と熱安定性が向上する。アクリル系樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度は110℃以上である。好ましくは、110℃〜200℃、より好ましくは115℃〜200℃、さらに好ましくは120℃〜200℃、特に好ましくは125℃〜190℃、最も好ましくは130℃〜180℃である。110℃未満であると、厳しくなる使用環境に対して耐熱性が不足することがあるため好ましくない。また、200℃を超えると成形加工性が低下する場合があるため好ましくない。
アクリル系樹脂(B)は負の固有複屈折を示す。一般のアクリル系樹脂の固有複屈折は弱い負を示すが、耐熱アクリル系樹脂は主鎖に環構造を導入しているため、正の固有複屈折となることが知られている。本発明に係るアクリル系樹脂(B)は、式(1)、(2)もしくは(3)に示される分子構造または複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を有しているため、主鎖に環構造を導入した場合においても負の固有複屈折を示す。
なお、重合体の固有複屈折の正負は、重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えば、シートあるいはフィルム)において、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n1から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n2を引いた値「n1−n2」に基づいて判断できる。固有複屈折の値は、各々の重合体について、その分子構造に基づく計算により求めることができる。また、樹脂の固有複屈折の正負は、当該樹脂に含まれる各重合体によって生じる複屈折の兼ね合いにより決定される。
アクリル系樹脂(B)は、上記式(1)、(2)または(3)に示される分子構造もしくは複素芳香族基を有する。式(1)、(2)、(3)に示される分子構造および複素芳香族基を分子構造Xとすると、例えば、アクリル系樹脂(B)は、分子構造Xが結合した構成単位(繰り返し単位)を有する重合体を含む。また、アクリル系樹脂(B)は、2種以上の分子構造Xを有していてもよい。
アクリル系樹脂(B)の一例は、以下の式(4)、(5)または(6)に示される単位もしくは複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する重合体(B−1)である。換言すれば、アクリル系樹脂(B)は、以下の式(4)、(5)または(6)に示される単位もしくは複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する重合体(B−1)を含んでいてもよい。また、重合体(B−1)は2種以上の構成単位Yを有してもよい。
(式(4)において、nは1〜4の範囲の自然数、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。)
以下、式(4)、(5)、(6)に示される単位および複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を、構成単位Yと呼ぶ。また、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を、単に、不飽和単量体単位と記載する。
構成単位Yのうち式(4)、(5)、(6)に示される単位は、各々、式(1)、(2)、(3)に示される分子構造に、重合性基であるビニル基またはメチレン基が結合した単量体の重合により形成される構成単位である。また、不飽和単量体単位は、典型的には、複素芳香族基に重合性基であるビニル基またはメチレン基が結合した単量体の重合により形成される構成単位である。
重合体(B−1)は、式(4)または(5)に示される単位もしくは不飽和単量体単位を有することが好ましく、式(4)に示される単位または不飽和単量体単位を有することがより好ましい。
式(4)に示される単位は、式(1)に示されるラクタム構造に、重合性基であるビニル基が結合した単量体(ビニルラクタム)の重合により形成される。式(4)に示される単位は、例えばN−ビニル−2−ピロリドン単位、N−ビニル−ε−カプロラクタム単位、N−ビニル−2−ピペリドン単位、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン単位、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン単位およびN−ビニル−ω−ヘプタラクタム単位から選ばれる少なくとも1種である。
式(5)に示される単位は、ビニルアントラセン単位である。当該単位は、式(2)に示されるアントラセン構造に、重合性基であるビニル基が結合した単量体(ビニルアントラセン)の重合により形成される。なお、式(5)に示す環上の水素原子の一部が、後述の式(8)における有機残基として例示した基によって置換されていてもよい。
式(6)に示される単位は、ジベンゾフルベン単位である。当該単位は、式(3)に示されるフルオレン構造に、重合性基であるメチレン基が結合した単量体(ジベンゾフルベン)の重合により形成される。なお、式(6)に示す環上の水素原子の一部が、後述の式(8)における有機残基として例示した基によって置換されていてもよい。
複素芳香族基は、例えばカルバゾール基、ピリジン基、イミダゾール基およびチオフェン基から選ばれる少なくとも1種である。その中で、セルロース系樹脂との相溶性からはカルバゾール基が好ましい。
不飽和単量体単位は、例えばビニルカルバゾール単位、ビニルピリジン単位、ビニルイミダゾール単位およびビニルチオフェン単位から選ばれる少なくとも1種である。ビニルカルバゾール単位を、以下の式(7)に示す。なお、式(7)に示す環上の水素原子の一部が、後述の式(8)における有機残基として例示した基によって置換されていてもよい。
アクリル系樹脂(B)は、主鎖に環構造を有することが好ましい。主鎖に環構造を有することにより、耐熱性が向上する。アクリル系樹脂(B)が主鎖に環構造を有する場合は、(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリル酸単位および環構造の割合の合計が50重量%以上であれば、主鎖に環構造を有するアクリル系樹脂とする。
主鎖の環構造としては、シクロヘキシルマレイミド、メチルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミドなどのN−置換マレイミド、または、無水マレイン酸を共重合してN−置換マレイミド由来の環構造や無水酸無水物由来の環構造を導入してもよいし、重合後の環化反応により、主鎖にラクトン環構造、グルタル酸無水物構造、グルタルイミド構造、N−置換マレイミド由来の環構造などを導入してもよい。耐熱性からは、ラクトン環構造、環状イミド構造(N−アルキル置換マレイミド由来の環構造やグルタルイミド環など)および環状酸無水物構造(無水マレイン酸やグルタル酸無水物など)を有するものが好ましく、光学特性から、主鎖にラクトン環構造を持つものが特に好ましい。
主鎖のラクトン環構造に関しては、4〜8員環でもよいが、構造の安定性から5〜6員環の方がより好ましく、6員環が更に好ましい。また、主鎖のラクトン環構造が6員環である場合、主鎖にラクトン環構造を導入する前の重合体を合成する上において重合収率が高い点や、ラクトン環構造の含有割合の高い重合体を得易い点、更にメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性が良い点で、下記一般式(8)で表される構造であることが好ましい。
(式中、R3、R4、R5は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。)
アクリル系樹脂(B)における環構造の含有率は特に限定されないが、通常、5〜90重量%であり、10〜70重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましく、10〜50重量%がさらに好ましい。上記含有率が過度に小さくなると、樹脂組成物を成形して得た樹脂成形品の耐熱性が低下したり、耐溶剤性および表面硬度が不十分となることがある。一方、上記含有率が過度に大きくなると、樹脂組成物の成形性、ハンドリング性が低下する。
アクリル系樹脂(B)は、公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;アンチブロッキング剤;マット剤;酸補足剤;金属不活性化剤;可塑剤;滑剤;難燃剤;ASAやABSなどのゴム質量体などである。添加剤の添加量は、例えば0.01〜20%であり、好ましくは0.1〜5%であり、より好ましくは0.1〜0.5%である。
《熱可塑性樹脂組成物》
本発明の熱可塑性樹脂組成物は前記セルロース系樹脂(A)と前記アクリル系樹脂(B)を含む。好ましくは、前記セルロース系樹脂(A)5〜95重量%とアクリル系樹脂(B)95〜5重量%を含み、より好ましくは、セルロース系樹脂(A)20〜80重量%とアクリル系樹脂(B)80〜20重量%を含み、さらに好ましくは、セルロース系樹脂(A)30〜70重量%とアクリル系樹脂(B)70〜30重量%を含む。セルロース系樹脂(A)の割合が高すぎると耐湿性が低下し、低すぎると可とう性が低下する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは110℃〜200℃、さらに好ましくは115℃〜200℃、特に好ましくは120℃〜190℃、最も好ましくは130℃〜180℃である。110℃未満であると、厳しくなる使用環境に対して耐熱性が不足することがあるため好ましくない。また、200℃を超えると成形加工性が低下する場合があるため好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記セルロース系樹脂(A)と前記アクリル系樹脂(B)以外の成分を、当該組成物に占める割合にして好ましくは50重量%未満、より好ましくは30重量%、更に好ましくは10重量%未満の範囲で含んでいてもよい。
その他の熱可塑性樹脂を含む場合、その他の熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィンポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などのハロゲン含有ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレンポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシエベンジレン;ポリアミドイミド;などである。
前記例示した熱可塑性樹脂のなかでも、アクリル系重合体との相溶性、特に主鎖に環構造を有するアクリル系重合体との相溶性に優れることから、シアン化ビニル単量体に由来する構成単位と芳香族ビニル単量体に由来する構成単位とを含む共重合体が好ましい。当該共重合体は、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤を含む場合、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、サリシケート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジーヒドロキシベンゾフェノン、4−n−オクチルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノン)−ブタン等が挙げられる。サリシケート系化合物としては、p−t−ブチルフェニルサリシケート等が挙げられる。ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。また、トリアゾール系化合物としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステルが挙げられる。さらに、トリアジン系化合物としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル」−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有する紫外線吸収剤が挙げられる。市販品としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として「チヌビン1577」「チヌビン460」「チヌビン477」(チバスペシシャリティーケミカルズ社製)、トリアゾール系紫外線吸収剤として「アデカスタブLA−31」(旭電化工業社製)等が挙げられる。
これらは単独で、または2種類以上の組み合わせて使用することができる。前記紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、フィルム中に0.01〜25重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜10重量%である。添加量が少なすぎると耐候性向上の寄与が低く、また多すぎると機械強度の低下や黄変を引き起こす場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤は特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系あるいはイオウ系などの公知の酸化防止剤を、1種で、または2種以上を併用して用いることができる。
酸化防止剤はフェノール系の酸化防止剤であってもよい。フェノール系酸化防止剤は、例えば、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アセテート、n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミド−N,N−ビス−[エチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノ−N,N−ビス−[エチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−1−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタントリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオールビス[(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトールテトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカンである。
フェノール系酸化防止剤は、チオエーテル系酸化防止剤またはリン酸系酸化防止剤と組み合わせて使用することが好ましい。組み合わせる際の酸化防止剤の添加量は、アクリル系重合体に対してフェノール系酸化防止剤およびチオエーテル系酸化防止剤の各々が0.01%以上、あるいはフェノール系酸化防止剤およびリン酸系酸化防止剤の各々が0.025%以上である。
チオエーテル系酸化防止剤は、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートである。
リン酸系酸化防止剤は、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)フォスファイトである。 本発明の熱可塑性樹脂組成物における酸化防止剤の添加量は、例えば0〜10%であり、好ましくは0〜5%であり、より好ましくは0.01〜2%であり、さらに好ましくは0.05〜1%である。酸化防止剤の添加量が過度に大きくなると、成形時に酸化防止剤のブリードアウトやシルバーストリークスが発生することがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤は、例えば、位相差上昇剤、位相差低減剤などの位相差調整剤;位相差安定剤、光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;アンチブロッキング剤;マット剤;酸補足剤;金属不活性化剤;可塑剤;滑剤;難燃剤;ASAやABSなどのゴム質量体などである。本発明の熱可塑性樹脂組成物における、前記その他の添加剤の添加量は、例えば0.01〜5%であり、好ましくは0.1〜2%であり、より好ましくは0.1〜0.5%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、セルロース系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)とを公知の方法により混合して製造できる。例えば、それぞれの樹脂を溶剤に溶解してから混合した後、溶液キャスト法により成膜、乾燥することで、フィルム状の熱可塑性樹脂組成物が製造可能である。また、両樹脂を押出機などで溶融させて混合してもよく、必要に応じて、ペレタイザーなどによりペレット化してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性や耐熱性に優れるのみならず、低着色性、機械的強度、成型加工性等の所望の特性を備えると共に、特に高い光学的等方性を有する低複屈折材料であるので、例えば、光学レンズ、光学プリズム、光学フィルム、光学ファイバー、光学ディスク等の用途に有用である。これらの中でも特に、光学レンズ、光学プリズム、光学フィルムが好ましい。
本実施の熱可塑性樹脂組成物は、用途に応じて様々な形状に成形することができる。形成可能な形状としては、例えば、フィルム、シート、プレート、ディスク、ブロック、ボール、レンズ、ロッド、ストランド、コード、ファイバー等が挙げられる。成形方法としては、従来公知の形成方法の中から形状に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
《光学フィルム》
本発明の光学フィルムは上記熱可塑性樹脂組成物からなる。
本発明の光学フィルムは低複屈折であり、波長589nmにおける面内位相差Reは20nm以下であることが好ましい。より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下、特に好ましくは3nm以下である。また、本発明の光学フィルムの波長589nmにおける厚み方向位相差Rthの絶対値は5nm以下であることが好ましい。 より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下、特に好ましくは3nm以下である。
ここでいう面内位相差Reは、
Re=(nx−ny)×d
で、厚み方向位相差Rthは、
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
で、定義される。なお、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内でnxと垂直方向の屈折率、nzはフィルム厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率が最大となる方向とする。
本発明の光学フィルムの厚さは特に限定されないが、例えば10μm〜500μmであり、20μm〜300μmが好ましく、30μm〜100μmが特に好ましい。
本発明の光学フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%以上である。全光線透過率は、透明性の目安であり、85%未満であると透明性が低下し、光学フィルムとして適さない。
本発明の光学フィルムは、着色が少なく、250μm厚みあたりのb値が好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下である。
本発明の光学フィルムは、好ましくはヘイズが5%以下であり、より好ましくは3%以下である。ヘイズが5%を越えると透過率が低下し、光学用途に適さないことがある。
本発明の光学フィルムのガラス転移温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは110℃〜200℃、さらに好ましくは115℃〜200℃、特に好ましくは120℃〜190℃、最も好ましくは130℃〜180℃である。110℃未満であると、厳しくなる使用環境に対して耐熱性が不足することがあるため好ましくない。また、200℃を超えると加工性が低下する場合があるため好ましくない。
次に、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。本発明の光学フィルムの製造方法は特に限定されず、公知の製法が可能である。フィルム成形の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
溶融押出法の具体的な例としては、押出混練に用いる混練機は特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機、あるいは加圧ニーダーなどの公知の混練機を用いることができる。また、熱可塑性樹脂組成物と、必要に応じて添加剤を添加し、オムニミキサーなどの混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を混練機から押出混練してもよい。
溶融押出法には、例えば、Tダイ法、インフレーション法などがあり、その際の成形温度は、好ましくは200〜350℃、より好ましくは250〜300℃、さらに好ましくは255〜300℃、特に好ましくは260〜300℃である。
Tダイ法を用いる場合、押出機の先端部にTダイを取り付け、このTダイから押し出したフィルムを巻き取ることで、ロール状に巻回させた樹脂フィルムを得ることができる。このとき、巻き取りの温度および速度を制御して、フィルムの押し出し方向に延伸(一軸延伸)を加えることも可能である。また、押し出し方向と垂直な方向にフィルムを延伸して、逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸などを実施してもよい。
押出成形に押出機を用いる場合、その種類は特に限定されず、単軸であっても二軸であっても多軸であってもよいが、そのL/D値は(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dはシリンダー内径)、熱可塑性樹脂組成物を十分に可塑化して良好な混練状態を得るために、好ましくは10以上100以下であり、より好ましくは15以上80以下であり、さらに好ましくは20以上60以下である。L/D値が10未満の場合、熱可塑性樹脂組成物を十分に可塑化できず、良好な混練状態が得られないことがある。一方、L/D値が100を超えると、熱可塑性樹脂組成物に対して過度に剪断発熱が加わることで、組成物中の樹脂が熱分解する可能性がある。
またこの場合、シリンダーの設定温度は、好ましくは200〜350℃以下であり、より好ましくは250〜300℃以下である。設定温度が200℃未満では、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が過度に高くなって、樹脂フィルムの生産性が低下する。一方、設定温度が350℃を超えると、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂が熱分解する可能性がある。
押出成形に押出機を用いる場合、その形状は特に限定されないが、押出機が1個以上の開放ベント部を有することが好ましい。このような押出機を用いることによって、開放ベント部から分解ガスを吸引することができ、得られた樹脂フィルムに残存する揮発成分の量を低減できる。開放ベント部から分解ガスを吸引するためには、例えば、開放ベント部を減圧状態にすればよく、その減圧度は、開放ベント部の圧力にして、931〜1.3hPaの範囲が好ましく、798〜13.3hPaの範囲がより好ましい。開放ベント部の圧力が931hPaより高い場合、揮発成分、あるいは樹脂の分解により発生する単量体成分などが、熱可塑性樹脂中に残存しやすい。一方、開放ベント部の圧力を1.3hPaより低く保つことは工業的に困難である。
本発明の光学フィルムを製造する場合、ポリマーフィルターで濾過するなどの濾過工程を取り入れることが好ましい。濾過工程を取り入れることにより、熱可塑性樹脂組成物中に存在する異物を除去できるため、得られたフィルムの外観上の欠点を低減できる。なお、ポリマーフィルターによる濾過時には、熱可塑性樹脂組成物は高温の溶融状態となる。このため、ポリマーフィルターを通過する際に熱可塑性樹脂組成物が劣化し、劣化により形成されたガス成分や着色劣化物が組成物中に流れだして、得られたフィルムに、穴あき、流れ模様、流れスジなどの欠点が観察されることがある。この欠点は、特にフィルムの連続成形時に観察されやすい。このため、ポリマーフィルターで濾過した熱可塑性樹脂組成物を成形する際には、その成形温度は、熱可塑性樹脂の溶融粘度を低下させ、ポリマーフィルターにおける熱可塑性樹脂の滞留時間を短くするために、例えば255〜350℃であり、260〜320℃が好ましい。
ポリマーフィルターの構成は特に限定されないが、ハウジング内に多数枚のリーフディスク型フィルターを配したポリマーフィルターを好適に用いることができる。リーフディスク型フィルターの濾材は、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、あるいはそれらを組み合わせたハイブリッドタイプのいずれでもよいが、金属繊維不織布を焼結したタイプが最も好ましい。
ポリマーフィルターによる濾過精度は特に限定されないが、通常15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。濾過精度が1μm以下になると、熱可塑性樹脂組成物の滞留時間が長くなることで当該組成物の熱劣化が大きくなる他、樹脂フィルムの生産性が低下する。一方、濾過精度が15μmを超えると、熱可塑性樹脂組成物中の異物を除去することが難しくなる。
ポリマーフィルターにおける、時間あたりの樹脂組成物処理量に対する濾過面積は特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物の処理量に応じて適宜設定できる。前記濾過面積は、例えば、0.001〜0.15m2/(kg/時間)である。
ポリマーフィルターの形状は特に限定されず、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型;断面が複数の頂点もしくは面においてリーフディスクフィルタの内周面に接し、センターポールの外面に樹脂の流路がある外流型;などがある。特に、樹脂の滞留箇所の少ない外流型を用いることが好ましい。
ポリマーフィルターにおける熱可塑性樹脂の滞留時間に特に制限はないが、好ましくは20分以下であり、より好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは5分以下である。また、濾過時におけるフィルター入口圧およびフィルター出口圧は、例えば、それぞれ、3〜15MPaおよび0.3〜10MPaであり、圧力損失(フィルターの入口圧と出口圧の圧力差)は、1MPa〜15MPaの範囲が好ましい。圧力損失が1MPa以下になると、熱可塑性樹脂がフィルターを通過する流路に偏りが生じやすく、得られた樹脂フィルムの品質が低下する傾向がある。一方、圧力損失が15MPaを超えると、ポリマーフィルターの破損が起こり易くなる。
ポリマーフィルターに導入される熱可塑性樹脂組成物の温度は、その溶融粘度に応じて適宜設定すればよく、例えば250〜300℃であり、好ましくは255〜300℃であり、さらに好ましくは260〜300℃である。
ポリマーフィルターを用いた濾過処理により、異物、着色物の少ない樹脂フィルムを得る具体的な工程は、特に限定されない。例えば、(1)クリーン環境下で熱可塑性樹脂組成物の形成および濾過処理を行い、引き続いてクリーン環境下で熱可塑性樹脂の成形を行うプロセス、(2)異物または着色物を有する熱可塑性樹脂を、クリーン環境下で濾過処理した後、引き続いてクリーン環境下で熱可塑性樹脂の成形を行うプロセス、(3)異物または着色物を有する熱可塑性樹脂を、クリーン環境下で濾過処理すると同時に成形を行うプロセス、などが挙げられる。それぞれの工程毎に、複数回、ポリマーフィルターによる熱可塑性樹脂組成物の濾過処理を行ってもよい。
ポリマーフィルターによって熱可塑性樹脂組成物を濾過する際には、押出機とポリマーフィルターとの間にギアポンプを設置して、フィルター内の熱可塑性樹脂組成物の圧力を安定化することが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物は、その製造後、そのまま押出成形して樹脂フィルムとすることが好ましい。熱可塑性樹脂組成物をペレット化した後に、得られたペレットを再溶融して光学フィルムを成形する場合に比べて、熱履歴を少なくできるため、熱可塑性樹脂組成物の熱劣化を抑制できる。また、この手法では、環境からの異物の混入を抑制できるため、得られた光学フィルムに異物が存在したり、得られた光学樹脂フィルムが着色することを抑制できる。なお、押出機とTダイの間に、ギアポンプおよびポリマーフィルターを配置することが好ましい。
溶液キャスト法の場合、セルロース系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)とを含む溶液を作成し、キャスト法により成膜、乾燥することで、フィルム状の熱可塑性樹脂組成物が製造可能である。工程としては、(1)溶解工程、(2)流延工程、(3)乾燥工程を有する。
(1)溶解工程:
主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロース系樹脂を溶媒に溶解する場合、個別に溶媒に溶解してから溶液同士を混合しても良いし、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロース系樹脂を含む樹脂組成物を溶剤に溶解しても良い。主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は脱揮工程を経ずに重合溶剤を含んだ重合溶液の状態とで溶解工程に用いることが可能であり、別に準備したセルロース系樹脂溶液を攪拌しながら、アクリル系重合体溶液を少しずつ添加していくことで、溶液製膜に用いるドープを用意することが出来る。溶解中または後のドープに必要な添加剤を加えて溶解した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。 濾過の濾材は、絶対濾過精度0.04mm以下のものが好ましく、0.01〜0.02mmの範囲がより好ましい。濾材の材質には特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
溶媒としては、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の溶液流延法で用いられる良溶媒を用いることができ、同時にメタノール、エタノール、ブタノール等の貧溶媒を用いてもよい。本発明においては、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の重合溶液に含まれる重合溶媒も用いることができる。これらの内、複数の溶媒が溶液に含まれていても良い。溶解の過程で−20℃以下に冷却したり、80℃以上に加熱したりしてもよい。
セルロース系樹脂の溶液を作成するには、セルロース系樹脂(フレーク状の)に対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該セルロース系樹脂、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体や添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成すること、あるいはセルロース系樹脂溶液に主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の溶液や添加剤溶液を混合してドープを形成することが考えられる。セルロース系樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることが出来るが、ドープ中のセルロース系樹脂の濃度は10〜35重量%が好ましい。
(2)流延工程:
ドープを支持体上に流延し、均一な膜を得る工程である。
一般に、製膜工程で変形応力を受ければ、配向が進んでフィルムの複屈折値は増大する。複屈折値の増大に伴い、フィルムの均一性を維持しにくくなり、光学特性のバラツキも増大するので、粘度の低い状態で比較的小さな応力のもとに製膜することが望ましい。また、ドープが低粘度であることは塗工後のレベリング効果によって膜厚が均一化される効果もあるため好ましい。溶解液の好ましい粘度は10ポイズ以から100ポイズであり、より好ましくは15ポイズから70ポイズである。なお、10ポイズよりも低いと支持体上から流れ出してしまうため、適宜仕切り板を設けるなどの対処が必要となる。
塗工方法としてはダイコーター、ドクターブレードコーター、ロールコーター、コンマコーター、リップコーター等が好ましいが、これらの例に限定されずに通常使用される種々の方法が可能である。
好ましい支持体としては、ステンレス鋼のエンドレスベルトや回転する金属ドラム等の金属支持体、あるいはポリイミドフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のようなフィルムを用いることができる。
(3)乾燥工程:
金属支持体上にドープを流延したドープ膜を加熱し、溶媒蒸発させて乾燥フィルムを得る工程である。
加熱乾燥は流延もしくは塗布直後の液膜が乾燥していない状態では、急激な風の流れや加熱などがあると、厚みムラが生じやすいため厚みムラをなくすよう注意しながら乾燥する。すなわち、直接的にフィルムに風を与えないようにしたり、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。また、急激な加熱・冷却を防いだりすることが重要となる。さらに、雰囲気中の湿度によってドープ膜が発泡したりするため、湿度のコントロールも重要となる。その後、半固化状態になった後に熱風等を吹きつけて残留溶媒を少なくするように乾燥するのが好ましい。
キャスト後の乾燥は、支持体に担持されたまま行うことも可能であるが、必要に応じて、自己支持性を有するまで予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥は、一般にはフロート法や、テンターあるいはロール搬送法が利用できる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルム両端を支えているピンあるいはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡縮制御を行う必要がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のためのテンションは原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい特徴を有する。従って、フィルムの乾燥は、ロール搬送法によることが最も好ましい。中でも、重力による応力を低減させるため、上下に複数のロールを配置し、フィルムを上下上下・・・と通すバーチカルパス方式(垂直懸垂パス方式)が、オーブンの設置スペースを省略しつつ長い乾燥経路を確保できるため好ましい。
また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないよう、湿度を低く保った雰囲気中で乾燥することは、機械的強度と透明度の高いフィルムを得るには有効な方法である。
本発明の光学フィルムの製造工程は前記(1)〜(3)の工程以外にも、接着性向上のために、けん化処理やコロナ処理、プラズマ処理、さらには、易接着層などの塗布などの工程を有していても良い。また、防眩層やハードコート層などの各種の機能性コーティング層を設ける工程や延伸工程を有することも可能である。
本発明の光学フィルムを延伸する場合は、一軸延伸でも良いし、二軸延伸でも良い。二軸延伸する場合は、同時二軸延伸でも良いし、逐次二軸廷伸でも良い。延伸した場合は、機械強度が向上しフィルム性能が向上する。
延伸温度としては、光学フィルムのガラス転移温度近辺で行うことが好ましく、具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+100)℃で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+80)℃である。(ガラス転移温度−30)℃よりも低いと、十分な延伸倍率が得られないために好ましくない。(ガラス転移温度+100)℃よりも高いと、樹脂の流動(フロー)が起こり安定な延伸が行えなくなるために好ましくない。
面積比で定義した廷伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍の範囲、より好ましくは1.3〜10倍の範囲で行われる。1.1倍よりも小さいと、延伸に伴う靱性の向上につながらないために好ましくない。25倍よりも大きいと、延伸倍率を上げるだけの効果が認められない。
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20000%/分の範囲、より好ましくは100〜10000%/分の範囲である。10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるために好ましくない。20000%/分よりも早いと、光学フィルムの破断等が起こるおそれがあるために好ましくない。
フィルムの光学等方性や力学特性を安定化させるため、溶液製膜後や延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うこともできる。
本発明の光学フィルムの表面には、必要に応じて、各種の機能性コーティング層が形成されていてもよい。機能性コーティング層は、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層などである。
本発明の光学フィルムの用途は特に限定されないが、その高い透明性、耐熱性により、光学部材として好適に用いることができる。光学部材は、例えば、光学用保護フィルム、具体的には、各種の光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)基板の保護フィルム、液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置が備える偏光板に用いる偏光子保護フィルムである。位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどの光学フィルムとして、本発明の光学フィルムを用いてもよい。特に、偏光子保護フィルムとして好適に用いられる。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
[ガラス転移温度]
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠して求めた。具体的には、脱揮示差操作熱量計(リガク社製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
[面内位相差Re]
フィルムの測定波長589nmにおける面内位相差(厚さ100μmあたり)は、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて評価した。
[厚み方向位相差Rth]
フィルムの測定波長589nmにおける厚み方向位相差(厚さ100μmあたり)は、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて評価した。
(製造例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応装置に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)20重量部、メタクリル酸メチル(MMA)65重量部、N−ビニルカルバゾール15重量部、トルエン90重量部を仕込んだ。この反応容器に窒素ガスを導入しながら、105℃まで昇温し、還流開始したところで重合開始剤として、t−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.04重量部を添加すると同時に、トルエン10重量部にt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.08重量部を溶解した溶液を3時間かけて滴下しながら、還流下、約105℃〜110℃で溶液重合を行い、さらに4時間加温し続けた。
得られた重合体溶液に、リン酸ステアリル/ジステアリル混合物0.1重量部を添加し、80℃〜105℃の還流下で2時間環化縮合反応を行った。さらに、オートクレーブ中で240℃、90分間加熱、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル系樹脂の透明な溶液(A−1)を得た。ヘキサンから再沈殿した後、真空乾燥器で揮発分を脱揮して樹脂のガラス転移温度を測定したところ、得られたアクリル系樹脂のガラス転移温度は、152℃であった。
(実施例1)
市販のセルロース化合物(Acros Organics社製、セルロースアセテートプロピオネート、数平均分子量75,000)2重量部をクロロホルム12重量部に溶解させた後、さらに製造例1で作製した重合体の溶液(A−1)3.9重量部(重合体として、1.95重量部)を混合し、アクリル系樹脂/セルロース系樹脂の重量比が、49/51である混合液(LC−1)を得た。
得られた混合液(LC−1)をガラス板上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるようにバーコーターを用いて塗布した後、60℃で10分間乾燥し、さらに100℃で10分間乾燥し、ガラス板から剥離することで、セルロース系樹脂とアクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム(FC−1)を得た。
得られたフィルム(FC−1)における面内位相差Reおよび、厚み方向位相差Rthを、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて評価した。評価結果の表1に示す。表に示す位相差は、フィルム厚100μmあたりに換算した値である。
(比較例1)
市販のセルロース系樹脂(Acros Organics社製、セルロースアセテートプロピオネート、数平均分子量75,000)のみを用いた以外は、実施例1と同様にして、セルロース系樹脂からなるフィルム(FB−3)を得た。得られたフィルム(FB−3)における面内位相差Reおよび、厚み方向位相差Rthを、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて評価した。評価結果を表1に示す。