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JP2011174168A - 酸化物焼結体および該酸化物焼結体を用いて得られる高抵抗酸化物透明導電膜 - Google Patents

酸化物焼結体および該酸化物焼結体を用いて得られる高抵抗酸化物透明導電膜 Download PDF

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Riichiro Wake
理一郎 和気
Takayuki Abe
能之 阿部
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Abstract

【課題】工業的に汎用される直流スパッタリング法やイオンプレーティング法により、抵抗式タッチパネル用の透明電極として好適に用いうる、欠陥が少なく、比抵抗が0.9〜1.8×10-3Ω・cmの範囲にある高抵抗透明導電膜を低コストで提供する
【解決手段】酸化インジウムを主成分とし、プラセオジムを含む酸化物焼結体であり、プラセオジムの含有量が、Pr/In原子比で0.0025以上0.043以下、好ましくは0.008以上0.035以下であり、酸化プラセオジム結晶相が存在しない酸化物焼結体を、スパッタリングターゲットまたはイオンプレーティング用蒸着材として用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、抵抗式タッチパネルなどに用いられる高抵抗酸化物透明導電膜、および該酸化物透明導電膜を、直流スパッタリング法やイオンプレーティング法により製造する際に、原料として使用されるスパッタリングターゲットおよびタブレット用の酸化物焼結体に関する。
酸化物透明導電膜は、高い導電性と可視光領域における高い透過性とを有することから、太陽電池、液晶表示素子、抵抗式タッチパネルなどの電極として利用されているほか、自動車や建築用の熱線反射膜、帯電防止膜、冷凍ショーケースなどの各種の防曇用の透明発熱体としても利用されている。
このような酸化物透明導電膜の材料としては、アンチモンやフッ素をドーパントとして含む酸化錫(SnO2)、アルミニウムやガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛(ZnO)、錫をドーパントとして含む酸化インジウム(In23)などが利用されている。このうち、ITO膜と称される、錫をドーパントとして含む酸化インジウム系膜は、その比抵抗が約4×10-4Ω・cm程度であり、特に低抵抗の膜が容易に得られることから、広く利用されている。
これらの酸化物透明導電膜を製造する主な手段として、スパッタリング法がある。スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料の成膜や精密な膜厚制御が必要とされる際に有効な手法であって、操作が非常に簡便であることから、工業的にも広範に利用されている。
スパッタリング法では、一般に、約10Pa以下のガス圧のもとで、透明導電膜を成膜する基板を陽極とし、スパッタリングターゲットを陰極として、これらの間にグロー放電を起こしてアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のスパッタリングターゲットに衝突させ、これによって弾き飛ばされるターゲット成分の粒子を基板上に堆積させることにより、膜を形成している。
スパッタリング法は、直流放電を利用する直流スパッタリング法と、高周波放電を利用する高周波スパッタリング法とに分類される。高周波スパッタリング法は、導電性ターゲットだけでなく、高抵抗ターゲットや、導電性材料と高抵抗材料が混合されたターゲットでも安定して成膜できるという利点を有するが、成膜速度が遅い、装置コストが高価などのデメリットを有している。一方、直流スパッタリング法は、装置価格が安価で、成膜操作も簡易であり、高速成膜に優れていることから、工業的には一般的に利用されている方法であるが、良質の導電性ターゲットを用いる必要がある。すなわち、導電性ターゲット内に微小の高抵抗物質が含まれていると、アルゴンイオンの照射で高抵抗物質が帯電して、成膜時にアーキングが発生してしまうため、このような高抵抗物質を含まない導電性ターゲットが必要とされる。
一方、これらの酸化物透明導電膜を、イオンプレーティング法を用いて作製することが検討されている。イオンプレーティング法では、その原料として、蒸着タブレットや蒸着ペレットと呼ばれる蒸着材が利用されるが、かかる蒸着材の場合も同様に、高抵抗物質を含まない良質の導電性蒸着材が必要とされる。
ところで、抵抗式タッチパネル用途の透明電極には、400〜500Ω/□程度の表面抵抗を有する高抵抗透明導電膜が要求されている(非特許文献1)。このような用途に、低い比抵抗を有するITO膜を用いると、その膜厚を約10nm未満に制御する必要があり、薄すぎて膜厚の制御が非常に困難であるだけでなく、膜強度が弱くなり、抵抗式タッチパネルの電極に用いたときの摺動性に劣るという問題がある。また、パネルサイズが大きくなるにつれて、膜厚のばらつきを制御することも困難となり、膜厚の変動による表面抵抗の変動が生じてしまうなどの問題が生じてしまう。
抵抗式タッチパネル用途の透明電極に用いられる透明導電膜には、このように高抵抗であることが要求されるが、透明導電膜の比抵抗が高くても、膜厚が大きくなりすぎてしまうと、膜の可視光透過率が悪化するため、膜厚を最大でも50nm程度に抑える必要がある。また、上述のように、膜厚が10nm未満と小さすぎる場合には、成膜時の膜厚制御が極めて困難となる。よって、その膜厚としては、10〜50nmの範囲が最適である。
このような膜厚と表面抵抗を兼ね備えた透明導電膜の比抵抗は、0.9〜1.8×10-3Ω・cm程度の高抵抗となるが、このような透明導電膜を安定的に実現するための材料は、現在までのところ実現していない。
特許文献1には、絶縁性酸化物を含有する酸化物焼結体を用いてタッチパネル用高抵抗透明導電膜を得ることが記載されている。これによれば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化イットリウム、酸化プラセオジムなどの絶縁性酸化物を添加したスパッタリングターゲットを用いて、直流スパッタリング法により、0.8〜10×10-3Ω・cm程度の高抵抗透明導電膜が得られるとされている。
しかしながら、特許文献1に記載の酸化物焼結体では、工業的に汎用な直流スパッタリング法に用いるターゲットの原料として安定的に用いることができないという問題がある。すなわち、特許文献1の酸化物焼結体では、焼結体の内部に絶縁性酸化物が含有するため、長時間にわたって成膜を行うことができず、また、成膜レートを上げるために高パワーでの直流スパッタリング法を用いた成膜を行うことが困難である。
さらに、特許文献1に記載の酸化物焼結体を用いた場合、その比抵抗が0.9〜1.8×10-3Ω・cmという所定範囲にある高抵抗透明導電膜を得ようとしても、その特性を有する膜を安定して得ることができないという問題がある。
特開2004−149883号公報
「タッチパネルの基礎と応用」、テクノタイムズ社、2001年刊、p120〜p129、初版(2001年12月26日)
本発明は、工業的に汎用される直流スパッタリング法やイオンプレーティング法により、抵抗式タッチパネル用の透明電極として好適に用いうる、欠陥が少なく、比抵抗が0.9〜1.8×10-3Ω・cmの範囲にある高抵抗透明導電膜を低コストで提供することを目的とする。
本発明の酸化物焼結体は、直流スパッタリング法におけるスパッタリングターゲットもしくはイオンプレーティング法における蒸着材の材料として用いられる。
特に、本発明の酸化物焼結体は、酸化インジウムを主成分とし、プラセオジム(Pr)を含む酸化物焼結体であり、プラセオジムの含有量が、Pr/In原子比で0.0025以上0.043以下であることを特徴とする。
プラセオジムの含有量は、Pr/In原子比で0.008以上0.035以下であることが好ましい。
また、本発明の酸化物焼結体においては、酸化プラセオジム結晶相が存在しないこと、特に、プラセオジムが固溶したビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相、もしくは、プラセオジムが固溶したビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相とインジウム酸プラセオジム結晶相との二相で構成されていることが好ましい。
本発明の酸化物焼結体は、工業的に汎用される直流スパッタリング法におけるスパッタリングターゲットの材料として、もしくは、イオンプレーティング法における蒸着材の材料として、好適に適用することができる。
このような本発明のスパッタリングターゲットもしくは蒸着材を利用して、直流スパッタリング法もしくはイオンプレーティング法により、プラセオジムを含有する酸化インジウムを主成分とした導電性の透明薄膜であって、プラセオジムの含有量が、Pr/In原子比で0.0025以上0.043以下であり、比抵抗値が0.9〜1.8×10-3Ω・cmの範囲にある高抵抗透明導電膜を得ることができる。なお、該透明導電膜は結晶膜であることが好ましい。
本発明の酸化物焼結体を、工業的に汎用される直流スパッタリング法や今後に汎用が予想されるイオンプレーティング法において用いられる、スパッタリングターゲットやイオンプレーティング用タブレットに用いると、欠陥が少なく、比抵抗が0.9〜1.8×10-3Ω・cmである高抵抗透明導電膜が安定して得られるため、抵抗式タッチパネル用の高抵抗透明導電膜を低コストで提供することが可能となる。
スパッタリングターゲットのPr/In原子比と、該スパッタリングターゲットを用いて得られた透明導電膜の比抵抗との関係を示すグラフである。
1.酸化物焼結体:
本発明の酸化物焼結体は、酸化インジウムを主成分とし、プラセオジム(Pr)を含む酸化物焼結体であり、プラセオジムの含有量が、Pr/In原子比で0.0025以上0.043以下であることを特徴とする。
本発明では、酸化インジウム系の透明導電膜に高い比抵抗をもたらすために添加される添加物として、プラセオジムを用いている。
また、本発明では、抵抗式タッチパネル用の透明電極として好適である、実用的な膜厚10〜50nmを有し、0.9〜1.8×10-3Ω・cmという高い比抵抗を有する透明導電膜を得るために、酸化物焼結体中のプラセオジムの含有量を、Pr/In原子比で0.0025以上0.043以下に規制している。
かかる知見は、酸化インジウムと酸化プラセオジムとを原料粉末として、様々な製造条件より酸化物焼結体を作製して、得られた酸化物焼結体をスパッタリングターゲットに用い、直流スパッタリング法により得た透明導電膜の比抵抗を測定する試験の結果により得られたものである。
プラセオジムの含有量が、0.0025よりも少ないと、プラセオジム添加による比抵抗の所定範囲までの低下効果が現れず、比抵抗が高すぎる結果となり、一方、0.043を超えると、不純物散乱による移動度の低下が顕著になり、同様に抵抗が上昇しすぎて、抵抗式タッチパネルの透明電極として要求される特性を具備することができない。
特に、プラセオジムの含有量を、0.008以上0.035以下に規制することにより、透明導電膜の比抵抗の組成依存性(Pr/In原子比)が非常に小さくなり、組成のばらつきの影響をより受けにくくなるため、所定の表面抵抗値を有する透明導電膜を安定的に製造することが可能となる。
酸化物焼結体中に上記の所定量のプラセオジムを添加した場合、酸化物焼結体のバルク抵抗率は、2×10-4〜1kΩ・cm、好ましくは、2×10-4〜1×10-2Ω・cm程度となり、直流スパッタリング装置における透明導電膜の成膜が可能である。
このようなプラセオジムを含有する酸化インジウム膜を、さらに安定的に製造するためには、酸化物焼結体中に酸化プラセオジム結晶相が含まれないことが好ましい。これは、酸化プラセオジム結晶相が、酸化インジウム焼結体と同時に焼成しても、高抵抗相となりやすいことに起因する。このような高抵抗相が焼結体中に含まれていると、バルク抵抗率が同様であっても、直流スパッタリング成膜を行ったときに、アーキングが発生しやすく、10〜50nmの薄膜を安定的に製造することがきわめて困難となる。アーキングは、直流スパッタリング成膜時の投入電力が高いほど、発生しやすい。生産性を高めるためには高電力投入による高速成膜が好まれるが、このようなターゲットを工業的な直流スパッタリング法による成膜に使用することはできない。
本発明の酸化物焼結体の結晶構造は、酸化プラセオジム結晶相が存在せず、プラセオジムが固溶したビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相、もしくはこのビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相とインジウム酸プラセオジム結晶相との二相となっている点に特徴がある。酸化プラセオジム結晶相が検出された酸化物焼結体を使用した場合と比較して、これらの結晶構造を有する酸化物焼結体では、アーク放電の発生が抑制される。これは、導電性が低く、スパッタリング中にプラスにチャージアップして、アーク放電の起因となると考えられる酸化プラセオジム結晶相が存在しないためである。
なお、ビックスバイト(bixbyite)型構造とは、酸化インジウム(In23)の結晶構造の1つであり、希土類酸化物C型とも呼ばれる(「透明導電膜の技術」、オーム社、1999年刊、p.82)。なお、In23は、ビックスバイト型構造のほかにコランダム型構造をとることがある。ビックスバイト型構造では、プラセオジムの陽イオンが、ビックスバイト型構造の酸化インジウムのインジウム位置を置換して、固溶体を形成している。
特に、本発明のプラセオジムを含有する酸化インジウム系の酸化物焼結体においては、ビックスバイト型構造をとらない場合でも、酸化プラセオジム結晶相の代わりに、インジウム酸プラセオジム(PrInOx)からなる導電性の中間化合物による相(以下、「PI相」と称する)が形成される。このように、高抵抗の酸化プラセオジム結晶相が存在しないため、広い組成範囲において、アーキングを発生させずに、安定的に直流スパッタリング法による成膜を行うことが可能となっている。
2.酸化物焼結体の製造:
このように、高抵抗の酸化プラセオジム結晶相を含まずに、ビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相、もしくは、このビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相とPI相との二相からなる酸化インジウム系酸化物焼結体を得るためには、以下の製造条件が必要である。
すなわち、本発明の酸化物焼結体を作製する際には、主成分である酸化インジウム粉末および酸化プラセオジム粉末を平均粒径0.5μm以下、好ましくは、平均粒径0.1〜0.4μmの範囲となるまで混合および粉砕し、粉砕後の原料粉末を用いてスラリーを得るか、または原料粉末を用いてスラリーを得た後、原料粉末が上記の粒径となるまで、粉砕・混合および撹拌を行い、その後、得られたスラリーを造粒および成形し、1200℃以上、好ましくは、1250〜1450℃の範囲の焼成温度で焼結を行う。
たとえば、純水、有機バインダ(ポリビニルアルコールなど)、分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩など)、原料粉として酸化インジウム粉末および酸化プラセオジム粉末を混合し、原料粉末の濃度が40〜70質量%、好ましくは60質量%程度となるようにスラリーを作製し、原料粉末の平均粒径が0.5μm以下となるまで、たとえばビーズミル装置により、湿式粉砕を行う。
このように、混合粉末を平均粒径が0.5μm以下と微細化したスラリーを用い、造粒することにより、酸化プラセオジムの凝集を取り除くことができ、焼結後のスパッタリングターゲットを酸化プラセオジム結晶相が存在しない構造とするこができる。
前記工程で得られた原料粉末を含有するスラリーを、たとえば、スプレードライヤーなどの手段により、噴霧し、乾燥させることにより、造粒粉を得る。
該造粒粉を、たとえば、冷間静水圧プレス(CIP)などにより加圧成形して、成形体を得る。この成形体を得る工程では、造粒粉を196〜294MPa(2〜3ton/cm2)の圧力を掛け、成形体密度を高めることが好ましい。
その後、得られた成形体を焼成して、酸化物焼結体を得る。この成形体を焼成する工程では、焼成温度を1200℃以上、焼成時間を10〜20時間とすることが好ましい。
このように、成形体の密度を高め、1200℃以上の温度で、焼成を行うことにより、原子の拡散が促進され、プラセオジムが固溶したビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相またはPI相が生成され、酸化プラセオジム結晶相が存在しない酸化物焼結体を作製することが可能となる。
なお、原料粉末が平均粒径0.5μm以下となるスラリー形成、造粒、成形、および1200℃以上の温度での焼成の工程が必要とされるが、それぞれの手段については、上記以外でも公知の任意の手段を採用することが可能である。たとえば、成形および焼成を、14.7〜29.4MPaの圧力および700〜900℃の温度で、1〜5時間行うホットプレスで代替することも可能である。
3.透明導電膜の成膜:
本発明の酸化物焼結体を用いて透明導電膜を工業的に成膜する手段としては、直流スパッタリング法とイオンプレーティング法がある。これらの成膜手段については公知であるので、その説明は省略する。ただし、本発明の酸化物焼結体の特徴は、これらの工業的に汎用される手段により、欠陥のない透明導電膜を成膜可能とする点にあり、適用される手段はこれらに限定されるものではない。
直流スパッタリング法の場合、得られた酸化物焼結体を、所定の大きさおよび形状に加工し、たとえば無酸素銅製のバッキングプレートに貼着して、スパッタリングターゲットとする。
成膜には、たとえば直流マグネトロンスパッタリング装置を用い、その非磁性体ターゲット用カソードに、上記スパッタリングターゲットを取り付け、ターゲットと平行かつ対向してガラス基板を設置し、所定条件により成膜を行う。通常、ターゲット−基板間距離:35〜120mm、到達真空度:2.0×10-4Pa以下、導入ガス:0〜10%のO2ガスを含むArガス、ガス圧:0.1〜10.0Pa、投入電力:直流0.55〜5.50W/cm2、基板加熱温度:RT(室温)〜500℃とする。
一方、イオンプレーティング法の場合、同様に、得られた酸化物焼結体を、必要に応じて、所定の大きさおよび形状に加工し、蒸着材とする。たとえば、直径10〜50mmで、高さ10〜50mmの円柱形状のタブレット、もしくは、ペレット形状で使用することも可能であるが、このような焼結体を粉砕した1〜10mm程度の顆粒形状でも利用することもできる。
成膜には、イオンプレーティング装置を用い、通常、その成膜条件を、到達真空度:2.0×10-4Pa以下、導入ガス:0〜10%のO2ガスを含むArガス、ガス圧:0.01〜5.0Pa、電子銃の設定電圧:1〜20kV、電流値:50〜500mA、基板加熱温度:RT(室温)〜500℃とする。
このようにして得られる本発明の高抵抗透明導電膜は、プラセオジムを含有する酸化インジウムを主成分とした透明導電膜であって、プラセオジムの含有量が、Pr/In原子比で0.0025以上0.043以下であり、比抵抗値が0.9〜1.8×10-3Ω・cmの範囲にある。
透明導電膜の組成は、成膜条件に依存する場合もあるが、通常は適切な設定により、成膜材料として用いられる酸化物焼結体の組成と同様とすることができる。すなわち、透明導電膜の組成に基づいて、酸化物焼結体の組成を決定することにより、成膜によって、所望の組成の透明導電膜が得られることとなる。
なお、透明導電膜は、タッチパネルの電極として用いたときの摺動性、耐摩耗性に優れていることから、結晶膜であることが好ましい。
かかる透明導電膜は、1.8×10-3Ω・cmの比抵抗値を有する膜を45nmの膜厚とすることで400Ω/□の表面抵抗が得られ、0.9×10-3Ω・cmの比抵抗値を有する膜を18nmの膜厚とすることで500Ω/□の表面抵抗が得られる。よって、本発明の透明導電膜は、400〜500Ω/□程度の表面抵抗が要求される、抵抗式タッチパネル用の透明電極に好適に適用される。
(実施例1〜5)
平均粒径が1μm以下の酸化インジウム粉末、および平均粒径が1μm以下の酸化プラセオジム粉末を原料粉末とし、プラセオジムの含有量がPr/In原子比で0.004(実施例1)、0.008(実施例2)、0.025(実施例3)、0.035(実施例4)、0.043(実施例5)となるようにそれぞれ秤量した。
秤量した原料粉末に、純水、ポリビニルアルコールおよびポリカルボン酸アンモニウム塩を、原料粉濃度が60質量%となるように調合し、混合タンクにてスラリーを作製した。
次に、硬質ZrO2ボールを投入したビーズミル装置(アシザワ・ファインテック株式会社製、LMZ型)を用いて、原料粉末の平均粒径が0.5μm以下となるまで、粉砕および混合を行った。なお、原料粉末の平均粒径の測定には、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いた。
得られたスラリーを、スプレードライヤー装置(大川原化工機株式会社製、ODL−20型)にて、噴霧および乾燥し、粒径が約50μmである造粒粉を得た。
さらに、得られた造粒粉を、冷間静水圧プレスで294MPa(3ton/cm2)の圧力を掛けて成形し、得られた直径が約200mmの成形体を、大気圧焼結炉(丸祥電器株式会社製)にて、焼成温度を1500℃として、20時間、焼成して、酸化物焼結体を得た。この際、1℃/minで昇温し、焼結炉内に炉内容積0.1m3当たり5L/minの割合で酸素ガスを導入した。
得られた酸化物焼結体の破材を粉砕し、X線回折装置(PANalytical社製、X‘PertPROMPD)を用いて粉末X線回折測定を実施したところ、実施例1では、ビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相(In23)に起因する回折ピークのみが観察され、実施例2〜4では、ビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相(In23相)に起因する回折ピークのほか、第二相による回折ピークが観察された。実施例2〜4の酸化物焼結体を電子線マイクロアナライザ(島津製作所製、EPMA−1600)を用いてEPMA分析したところ、第二相は、PrとInが原子数比でほぼ1:1の割合で構成された新規な化合物(PrInOxと推定される。)からなるPI相であることが確認された。実施例1〜4いずれも酸化物焼結体には、X線回折測定およびEPMA分析から、酸化プラセオジム(Pr611、PrO2、Pr23)は含まれていないことを確認した。
次に、それぞれの実施例で得られた酸化物焼結体を、直径が152.4mm(6inch)、厚さが5mmとなるように加工し、その後、加工した酸化物焼結体を、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングして、スパッタリングターゲットとした。
直流マグネトロンスパッタリング装置(株式会社トッキ製、SPF503K)の非磁性体ターゲット用カソードに、前記スパッタリングターゲットを取り付け、スパッタリングターゲットの対向位置に平行となるようにガラス基板を設置した。そして、ターゲット−基板間距離を60mmとし、到達真空度を2.0×10-4Pa以下とした後、純ArガスにO2ガスを1%だけ混合させて導入し、ガス圧を0.5Paとし、直流600Wで直流プラズマを発生させ、ガラス基板をスパッタリングターゲットに対して静止対向のまま、基板を300℃に加熱して、直流スパッタリングを実施した。
積算電力量5kWhまで、直流スパッタリング法にて成膜を実施し、そのときのアーク放電の回数を調べたところ、それぞれの実施例において、初期から積算電力量5kWhまで、ほぼ変化することなく、0回〜1回/minのアーク放電しか発生しなかった。その後、膜厚が30nmとなるようにそれぞれ成膜を実施し、得られた膜の比抵抗値を四探針法で測定したところ、1.7×10-3Ω・cm(実施例1)、1.0×10-3Ω・cm(実施例2)、1.5×10-3Ω・cm(実施例3)、1.6×10-3Ω・cm(実施例4)、1.8×10-3Ω・cm(実施例5)であり、いずれも組成の変動にかかわらず、比抵抗が0.9〜1.8×10-3Ω・cmの範囲内に収まった。それぞれの評価結果を、その組成とともに、表1に示す。
なお、得られた薄膜の組成分析を実施したところ、スパッタリングターゲット組成と同等であることが確認された。また、得られた膜のX線回折測定から、酸化インジウム構造の結晶膜であることが確認された。
このような膜は、比抵抗が高いため、タッチパネルに必要な400〜500Ω/□の表面抵抗の膜を得るためには、膜厚が20〜45nmであればよく、膜厚が薄いため高い透過率を得ることができる。また、膜厚が20nm以上であるため膜厚を制御しやすいため、直流スパッタリング法やイオンプレーティング法により、工業的に低コストで、抵抗式タッチパネル用の高抵抗透明導電膜を得ることができる。
(比較例1)
Pr/In原子比が0.0008となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の破材を粉砕し、同様に粉末X線回折測定を実施したところ、ビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相に起因する回折ピークのみ観察され、酸化プラセオジム結晶相に起因する回折ピークは観察されなかった。
実施例1と同様に、スパッタリング時のアーク放電の回数を調べたところ、初期から積算電力量5kWhまで、ほぼ変化することなく、0〜1回/minのアーク放電しか発生しなかった。その後、実施例1と同様に膜を作製して実施例1と同様に評価した。膜は結晶膜であったが、比抵抗値は5×10-3Ω・cmときわめて高かった。その評価結果を、その組成とともに、表1に示す。
このような膜は、比抵抗が高すぎるため、タッチパネルに必要な400〜500Ω/□の表面抵抗の膜を得るためには、膜厚を100〜125nmとする必要がある。よって、このような厚い膜であると透過率が低いため、抵抗式タッチパネル用の透明電極として好適に適用することができない。
(比較例2)
Pr/In原子比が0.061となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の破材を粉砕し、同様に粉末X線回折測定を実施したところ、ビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相に起因する回折ピークとPI相に起因する回折ピークとが観察され、酸化プラセオジム結晶相に起因する回折ピークは観察されなかった。
実施例1と同様に、スパッタリング時のアーク放電の回数を調べたところ、初期から積算電力量5kWhまで、ほぼ変化することなく、0〜1回/分のアーク放電しか発生しなかった。また、実施例1と同様に膜を作製して特性を評価した。膜は結晶膜であったが、比抵抗値が3.9×10-3Ω・cmと非常に高かった。その評価結果を、その組成とともに、表1に示す。
このような膜は、比抵抗が高すぎるため、タッチパネルに必要な400〜500Ω/□の表面抵抗の膜を得るためには、膜厚を78〜98nmとする必要がある。よって、このような厚い膜であると透過率が低いため、抵抗式タッチパネル用の透明電極としては好適に適用することができない。
Figure 2011174168
(比較例3)
ビーズミル装置を用いた粉砕を行わず、原料粉末に、純水、ポリビニルアルコールおよびポリカルボン酸アンモニウム塩を、原料粉濃度が60%となるように調合し、混合タンクにて1時間の攪拌を行って、スラリーを得た。得られたスラリーについて、実施例と同様に粒度分析を行ったところ、平均粒径が1μm以下である原料粉のみを用いているにもかかわらず、粒子同士が凝集されており、5〜8μm程度の粒度ピークが存在していた。
その後、実施例1と同様の方法で酸化物焼結体を作製し、得られた酸化物焼結体の破材を粉砕し、粉末X線回折測定を実施したところ、ビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相に起因する回折ピークとPI相に起因する回折ピークと、さらに酸化プラセオジム結晶相に起因する回折ピークが観察された。
次に、実施例1と同様に、スパッタリングを行い、アーク放電の回数を調べたところ、使用初期より30〜50回/分もの異常放電が発生した。このため、積算電力量5kWhまで使用せずに試験を中止した。このような酸化物焼結体を用いたのでは、10〜50nmの薄い膜を安定して製造することは不可能である。
(実施例6〜10)
実施例1〜5と同じ組成の造粒粉を用いて、1ton/cm2の圧力で1軸加圧成形を行い、直径20mm×高さ20mmの円柱状の成形体を得た。次に、得られた成型体を、大気圧焼結炉(丸祥電器株式会社製)にて、焼成温度を1250℃として、2時間、焼成して、酸化物焼結体であるイオンプレーティング用タブレットを5種類作製した。この際、炉内温度は1℃/minで昇温し、焼結炉内に炉内容積0.1m3当たり5L/minの割合で酸素ガスを導入した。
このタブレットを用いて、イオンプレーティング装置により、透明導電膜を作製した。具体的には、タングステン製坩堝に、それぞれの円柱状タブレットを立てて配置し、到達真空度を2.0×10-4Pa以下とした後、純ArガスにO2ガスを1%だけ混合させて導入し、圧力を1.5×10-2Paに保持し、該円柱状タブレットの円形面の中央部に電子ビームを照射して、厚み1.1mmのコーニング7059ガラス基板上に、膜厚30nmの透明導電膜を形成した。電子銃の設定電圧は9kV、電流値は150mAとし、基板は300℃に加熱した。
得られた膜の比抵抗値を四探針法で測定したところ、1.6×10-3Ω・cm(実施例6)、0.9×10-3Ω・cm(実施例7)、1.4×10-3Ω・cm(実施例8)、1.4×10-3Ω・cm(実施例9)、1.8×10-3Ω・cm(実施例10)であり、イオンプレーティング法においても、本発明の組成範囲では、蒸着材の組成の変動にかかわらず、比抵抗は0.9〜1.8×10-3Ω・cmの範囲内に収まった。それぞれ実施例1〜5と同様の特徴を有し、抵抗式タッチパネルの透明電極に有用な透明導電膜が得られることが確認された。それぞれの評価結果を、その組成とともに、表2に示す。
Figure 2011174168

Claims (6)

  1. 酸化インジウムを主成分とし、プラセオジムを含む酸化物焼結体であり、プラセオジムの含有量が、Pr/In原子比で0.0025以上0.043以下であり、酸化プラセオジム結晶相が存在しないことを特徴とする酸化物焼結体。
  2. 前記プラセオジムの含有量が、Pr/In原子比で0.008以上0.035以下であることを特徴とする、請求項1に記載の酸化物焼結体。
  3. プラセオジムが固溶したビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相、または、プラセオジムが固溶したビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相とインジウム酸プラセオジム結晶相との二相により構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の酸化物焼結体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲット。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物焼結体からなるイオンプレーティング用蒸着材。
  6. プラセオジムを含有する酸化インジウムを主成分とした透明導電性薄膜であって、プラセオジムの含有量が、Pr/In原子比で0.0025以上0.043以下であり、比抵抗値が0.9〜1.8×10-3Ω・cmの範囲にあることを特徴とする透明導電膜。
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