本発明の一実施形態においては、坂道での停車中にある程度のブレーキ液圧を保持することにより、運転者のブレーキペダルからアクセルペダルへの踏み替え時の車両のずり下がりを防止するブレーキ制御装置が提供される。ブレーキ制御装置は、このずり下がり防止制御を解除するときに減圧制御弁での自励振動を防止または軽減するように減圧プロファイルをその都度決定する。例えば、減圧制御弁の最大流量よりも緩和された減圧勾配を有する減圧プロファイルで液圧保持を解除する。
ブレーキ制御装置は、減圧開始時点での保持液圧と、予め設定されている減圧完了目標時間とに基づいて減圧プロファイルを決定してもよい。減圧完了目標時間は所望の発進性能を満足するよう設定される時間であり、例えば、アクセルペダルの踏込開始時点からブレーキ保持液圧の解除状態に到達するまでの所要時間として許容された時間である。ブレーキ制御装置は、減圧完了目標時間にわたって減圧を継続し減圧完了目標時間が経過した時点で減圧を完了するようにしてもよい。あるいは保持液圧が十分に低い場合にはもちろん、減圧完了目標時間が経過する前に減圧を完了してもよい。
ブレーキ制御装置の制御部は、減圧完了目標時間の経過時点で減圧が完了するよう減圧開始時点のホイールシリンダ圧に応じて定まる一定の減圧勾配で保持液圧を解除してもよい。減圧勾配は制御弁の最大流量よりも小さい値に設定される。また、制御部は、この一定勾配よりも緩やかな勾配で減圧当初は減圧し、減圧完了に向けて減圧勾配を大きくしてもよい。制御部は、減圧完了目標時間で減圧を完了する一定の減圧勾配よりも小さい初期減圧勾配を、減圧開始時点のホイールシリンダ圧に応じて決定してもよい。制御部は、減圧完了目標時間では減圧を完了し得ない値に減圧勾配の初期値を決定し、減圧当初は該初期値で減圧し、減圧開始時点から減圧完了目標時間が経過したときに減圧が完了するように減圧完了時点の減圧勾配は該初期値よりも大きい値としてもよい。減圧完了時点の減圧勾配は、減圧制御弁に可能な最大の減圧勾配であってもよい。
制御部は、制御弁の自励振動の発生が想定される液圧領域における減圧勾配を、自励振動が生じないことが保証されている大きさに設定してもよい。通常、自励振動は高圧領域で発生しやすく、特に高圧領域で大流量であるほど発生しやすい。よって、制御部は、自励振動想定域では緩やかに減圧し、該自励振動想定域外ではそれよりも急速に減圧する減圧プロファイルを設定してもよい。例えば、減圧開始から自励振動非発生しきい値に減圧されるまでは自励振動が生じないことが保証されている第1の減圧勾配で減圧し、自励振動非発生しきい値以下では第1の減圧勾配より大きい第2の減圧勾配で減圧してもよい。
一実施形態においては、制御部は、停車中のホイールシリンダ圧を少なくとも、停車状態を維持するために停車位置の路面状態例えば傾斜量に基づいて設定される最低保持圧に保持する液圧保持制御を実行してもよい。制御部は、最低保持圧を状況によらず一定値に設定してもよく、例えば想定される最大の傾斜量で停車を維持する大きさに設定してもよい。制御部は、運転者のブレーキペダル操作により加圧された操作液圧が最低保持圧を超える場合には、ホイールシリンダ圧を操作液圧に一致させるようにしてもよい。
制御部は、運転者が停車中にブレーキペダルを所定値以上踏み込んだことを含む開始条件が成立した場合に液圧保持制御を実行してもよい。また制御部は、運転者がアクセルペダルを操作したことを含む終了条件が成立した場合に液圧保持制御を終了してもよい。終了条件は、運転者がブレーキペダルの操作を解除してから所定時間が経過したことを含んでもよい。制御部は、液圧保持制御の終了条件が成立した場合に、減圧プロファイルを決定して保持液圧の減圧を開始してもよい。
ブレーキ制御装置は、運転者の加速要求を検出する手段を備えてもよい。制御部は、加速要求が検出された場合に減圧勾配緩和処理を実行してもよい。制御部は、加速要求が検出されていない場合には、自励振動が生じないことが保証されている減圧勾配を維持して保持液圧の減圧を完了してもよいし、あるいは、減圧完了目標時間よりも長い時間をかけて保持液圧を減圧してもよい。
図1は、本発明の各実施形態に係るブレーキ制御装置20を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置20は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、車両に設けられた4つの車輪に付与される制動力を制御する。本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、例えば、走行駆動源として電動モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両に搭載される。このようなハイブリッド車両においては、車両の運動エネルギを電気エネルギに回生することによって車両を制動する回生制動と、ブレーキ制御装置20による液圧制動とのそれぞれを車両の制動に用いることができる。本実施形態における車両は、これらの回生制動と液圧制動とを併用して所望の制動力を発生させるブレーキ回生協調制御を実行することができる。
ブレーキ制御装置20は、図1に示されるように、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット27と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。
ディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。本実施形態におけるマニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット27は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧されたブレーキフルードをディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出する。動力液圧源30は、動力の供給により加圧された作動流体としてのブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット27から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット27、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下で更に詳しく説明する。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR〜23RLを含む。そして、各ホイールシリンダ23FR〜23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR〜23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
マスタシリンダユニット27は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を含む。液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に連結されており、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。なお、マスタシリンダ圧とレギュレータ圧とは厳密に同一圧にされる必要はなく、例えばレギュレータ圧のほうが若干高圧となるようにマスタシリンダユニット27を設計することも可能である。
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を含む。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。ポンプ36により、アキュムレータ圧は維持されるべき設定範囲(本明細書ではこれを許容範囲という場合もある)に保たれる。ブレーキECU70は、アキュムレータ圧センサ72の測定値に基づいて、アキュムレータ圧が許容範囲の下限を下回った場合にポンプ36をオンとしてアキュムレータ圧を加圧し、アキュムレータ圧が許容範囲の上限を超えた場合にポンプ36をオフとして加圧を終了する。
また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット27に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開弁し、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
上述のように、ブレーキ制御装置20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。そして、マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。
液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42,43および44と、主流路45とが含まれる。個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL,21RR,21RLのホイールシリンダ23FR、23FL,23RR,23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は主流路45と連通可能となる。
また、個別流路41,42,43および44の中途には、ABS保持弁51,52,53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。つまり、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを流すことができるとともに、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すことができる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
更に、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46,47,48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46,47,48および49の中途には、ABS減圧弁56,57,58および59が設けられている。各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開弁されると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット27のリザーバ34に接続されている。
主流路45は、中途に分離弁60を有する。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪用のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開弁されると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、マスタシリンダ32から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開弁されると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されると好ましい。
レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65は、レギュレータ33から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
液圧アクチュエータ40には、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧制御弁として設けられている。つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。このように増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67を各ホイールシリンダ23に対して共通化すれば、ホイールシリンダ23ごとにリニア制御弁を設けるのと比べて、コストの観点からは好ましい。
なお、ここで、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と主流路45におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応し、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力とリザーバ34におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。従って、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
ブレーキ制御装置20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御部としてのブレーキECU70により制御される。ブレーキECU70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。そして、ブレーキECU70は、上位のハイブリッドECU(図示せず)などと通信可能であり、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54,56〜59,60,64〜68を制御する。
また、ブレーキECU70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に格納保持される。
分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示すので、この出力値を増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。更に、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通しており、各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
さらに、ブレーキECU70に接続されるセンサには、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に格納保持される。本実施形態においてはストロークセンサ25は2つの接点を有しており、見かけ上2つのセンサであるかのように2つの測定値をブレーキECU70に出力することができる。
また、ブレーキECU70にはストップランプスイッチが接続されている。ストップランプスイッチはブレーキペダル24が踏み込まれるとオン状態となる。これによりストップランプが点灯される。また、ブレーキペダル24の踏込が解除されるとストップランプスイッチはオフ状態となり、ストップランプは消灯される。ストップランプスイッチの点灯状態を示す信号がストップランプスイッチからブレーキECU70へと所定時間おきに入力され、ブレーキECU70の所定の記憶領域に格納保持される。
上述のように構成されたブレーキ制御装置20は、ブレーキ回生協調制御を実行することができる。ブレーキ制御装置20は制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、例えば運転者がブレーキペダル24を操作した場合など、車両に制動力を付与すべきときに生起される。制動要求を受けてブレーキECU70は要求制動力を演算し、要求制動力から回生による制動力を減じることによりブレーキ制御装置20により発生させるべき制動力である要求液圧制動力を算出する。ここで、回生による制動力の実効値は、ハイブリッドECUからブレーキ制御装置20に供給される。そして、ブレーキECU70は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ23FR〜23RLの目標液圧を算出する。ブレーキECU70は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御則により増圧リニア制御弁66や減圧リニア制御弁67に供給する制御電流の値を決定する。
なお、本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、回生制動力を利用せずに液圧制動力だけで要求制動力をまかなう場合にも、当然ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御することができる。ブレーキ回生協調制御を実行しているか否かにかかわらず、ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御する制御モードを以下では適宜「リニア制御モード」と称する。あるいは、ブレーキバイワイヤによる制御と呼ぶ場合もある。
その結果、ブレーキ制御装置20においては、ブレーキフルードが動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介して各ホイールシリンダ23に供給され、車輪に制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ23からブレーキフルードが減圧リニア制御弁67を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が調整される。本実施形態においては、動力液圧源30、増圧リニア制御弁66及び減圧リニア制御弁67等を含んでホイールシリンダ圧制御系統が構成されている。ホイールシリンダ圧制御系統によりいわゆるブレーキバイワイヤ方式の制動力制御が行われる。ホイールシリンダ圧制御系統は、マスタシリンダユニット27からホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路に並列に設けられている。なお、本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、回生制動力を利用せずに液圧制動力だけで要求制動力をまかなう場合にも、当然ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御することができる。
ブレーキバイワイヤ方式の制動力制御を行う場合には、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65を閉状態とし、レギュレータ33から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23へ供給されないようにする。更にブレーキECU70は、マスタカット弁64を閉状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。これは、運転者によるブレーキペダル24の操作に伴ってマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23ではなくストロークシミュレータ69へと供給されるようにするためである。ブレーキ回生協調制御中は、レギュレータカット弁65及びマスタカット弁64の上下流間には、回生制動力の大きさに対応する差圧が作用する。またブレーキECU70は、分離弁60を開状態とする。これにより各ホイールシリンダ圧が共通の液圧に制御される。
図2は、本発明の一実施形態に係る停車中のずり下がり防止のためのホイールシリンダ圧保持制御を説明するための図である。図2の縦軸は作動液圧を示し、横軸は時間を示す。停車中のホイールシリンダ圧の時間変化の一例を実線で示している。このずり下がり防止液圧制御においては、ホイールシリンダ圧を少なくとも最低保持圧(図2で一点鎖線で示す)Pbに保つよう制御する。そのために、ブレーキECU70は、レギュレータ圧(図2で破線で示す)と最低保持圧Pbとのうち高いほうを目標圧としてリニア制御モードでホイールシリンダ圧を制御する。最低保持圧Pbは例えば、停車位置の路面の傾斜量に応じて設定される。ブレーキECU70は、最低保持圧Pbを解除する際には減圧リニア制御弁67での自励振動を防止するよう設定された減圧プロファイルで減圧する。減圧プロファイルは、減圧完了目標時間Tで減圧が完了するよう最低保持圧Pbに応じて決定される。
図2に示されるように、ブレーキ操作が開始されると操作量に応じてレギュレータ圧が増加していく。ブレーキECU70は、停車中にブレーキ操作量が液圧保持開始しきい値を超えたことを含む液圧保持制御開始条件が成立した場合に液圧保持制御を開始する。図2においては、レギュレータ圧センサ71の測定値が液圧保持制御開始液圧Paを超えたときに液圧保持制御が開始され、最低保持圧Pbが設定される。本実施形態では、ブレーキECU70は、レギュレータ圧が液圧保持制御開始液圧Paを超えたことを液圧保持制御開始条件としているが、これに代えてまたはこれとともに例えばストロークセンサ25の測定値が液圧保持開始しきい値を超えたことを液圧保持制御開始条件に含めてもよい。
時刻taにレギュレータ圧が液圧保持制御開始液圧Paに達して液圧保持制御が開始される。上述のようにブレーキECU70は、レギュレータ圧と最低保持圧Pbとのうち高いほうを目標圧としてリニア制御モードでホイールシリンダ圧を制御する。通常は図2に示されるように、レギュレータ圧のほうが最低保持圧Pbよりも大きいため、ホイールシリンダ圧はレギュレータ圧に一致するように増圧リニア制御弁66及び減圧リニア制御弁67を通じて制御される。この場合、ブレーキECU70は、レギュレータ圧をそのまま目標圧とするのではなく、レギュレータ圧を補正して得られる目標圧にホイールシリンダ圧を制御してもよい。また、液圧保持制御の開始以前(図2のta以前)においては、レギュレータカット弁65を開弁してレギュレータ圧をホイールシリンダ23に導入するブレーキモードとし、液圧保持制御開始条件の成立によりリニア制御モードにブレーキモードを切り替えてもよい。
ブレーキECU70は、車両に搭載されているGセンサ(図示せず)の測定値に基づいて最低保持圧Pbを決定する。すなわち、Gセンサの測定値から得られる停車位置の傾斜量が大きいほど最低保持圧Pbを大きな値とし、停車位置の傾斜量が小さいほど最低保持圧Pbを小さな値とする。最低保持圧Pbは例えば、車両のずり下がりを防ぎ停車状態を維持することを保証する最低限の液圧に所定のマージンを加えた大きさに設定される。この所定のマージンは例えばセンサの測定誤差等を考慮し、停車状態を維持する必要最低限の液圧に余裕を与えるために付加される。
図2においては、液圧保持制御の開始後ブレーキ操作量すなわちレギュレータ圧がある期間一定に保たれ、その後ゼロへと減少する場合が一例として示されている。時刻tbにおいてレギュレータ圧は最低保持圧Pbまで減少し、その後時刻tcにゼロとなっている。よって、ブレーキECU70は、時刻tb以降のホイールシリンダ圧を最低保持圧Pbに保持する。
ブレーキECU70は、液圧保持制御終了条件が成立したときに減圧リニア制御弁67を通じてホイールシリンダ23の減圧を開始する。液圧保持制御終了条件は例えば、ブレーキ操作の解除から所定の待ち時間が経過したことを含む。図2においては、時刻tdに待ち時間が経過して減圧が開始されている。つまり、待ち時間は時間tc−tdの長さに設定されている。液圧保持制御終了条件は、運転者がアクセルペダルを操作したことを含んでもよい。この場合、ブレーキECU70は例えば、アクセルペダルのストロークセンサからの出力に基づいてアクセルペダルの操作の有無を判定してもよい。アクセルペダルの操作がなされていると判定された場合には、ブレーキECU70は、上述の待ち時間の経過を待つことなく減圧を開始する。
本実施形態においては、減圧完了目標時間Tが予め設定されている。減圧完了目標時間Tは、アクセルペダルの操作開始から実際に車両の加速を開始させるまでに許容されるタイムラグとして所望の発進性能に基づいて設定されている。ブレーキECU70は、減圧開始時点tdから減圧完了目標時間Tが経過する時点tfにおいてちょうど減圧が完了するように設定された減圧勾配でホイールシリンダ圧を減圧する。
図2に示されるように、ブレーキECU70は例えば2段階の減圧勾配でホイールシリンダ圧を減圧するよう減圧リニア制御弁67を制御する。減圧当初は比較的緩やかな減圧勾配で減圧し、後半は比較的大きな減圧勾配で減圧する。当初の減圧勾配は減圧開始時点のホイールシリンダ圧(図2においては最低保持圧Pb)に応じて設定される。当初の減圧勾配は例えば、減圧完了目標時間Tを一定の減圧勾配としたときの勾配Pb/Tよりも小さい値に設定される。
このように設定された第1段階の減圧勾配で、減圧リニア制御弁67の自励振動が生じないことが保証されているホイールシリンダ圧Pcまで減圧する。この自励振動非発生しきい値Pcは、減圧リニア制御弁67の仕様等に応じて例えば実験的に定められる値である。自励振動非発生しきい値Pcに達した時刻te以降は、減圧完了目標時間Tで減圧を完了させるよう第2の減圧勾配で減圧する。第2の減圧勾配は例えば、減圧完了目標時間Tを一定の減圧勾配としたときの勾配Pb/Tよりも大きい値に設定される。
なお、減圧勾配の折れ点は、減圧完了目標時間Tで減圧を完了させることを重視して設定されてもよい。すなわち、残りの減圧時間で減圧を完了させるために必要である場合には、ホイールシリンダ圧が自励振動非発生しきい値Pcまで減圧される前に減圧勾配を大きくしてもよい。
また、上述の2段階の減圧プロファイルに代えて、一定の減圧勾配Pb/Tで減圧するようにしてもよいし、さらに多段階の減圧プロファイルで減圧してもよい。ホイールシリンダ圧の低下に応じて連続的に減圧勾配を大きくするようにしてもよい。
図3は、本発明の一実施形態に係る停車中の液圧保持制御の解除処理を説明するためのフローチャートである。図3に示される処理は、液圧保持制御の実行中にブレーキECU70により所定の制御周期で実行される。まずブレーキECU70は、液圧保持制御終了条件が成立したか否かを判定する(S10)。液圧保持制御終了条件は上述のように例えば、運転者のブレーキペダル24の操作解除から予め設定された待ち時間が経過したことであってもよいし、アクセルペダルが操作されたことであってもよい。液圧保持制御終了条件が成立していない場合には(S10のN)、ブレーキECU70はそのまま処理を終了し、次の処理開始タイミングまで待機する。この場合、液圧保持制御が継続される。
一方、液圧保持制御終了条件が成立したと判定された場合には(S10のY)、ブレーキECU70は、アクセルペダルが操作されているか否かを判定する(S12)。ブレーキECU70は例えば、アクセルペダルのストロークセンサからの出力に基づいてアクセルペダルの操作の有無を判定する。アクセルペダルが操作されていると判定された場合には(S12のY)、ブレーキECU70は、ホイールシリンダ圧対応減圧制御を実行する(S14)。すなわち、ブレーキECU70は現時点でのホイールシリンダ圧に基づいて初期減圧勾配を決定し、減圧完了目標時間Tで保持液圧が完全に解除されるようにホイールシリンダ圧を減圧する。例えば図2を参照して説明したように2段階の減圧勾配を有する減圧プロファイルで減圧する。
アクセルペダルが操作されていないと判定された場合には(S12のN)、ブレーキECU70は、低減圧勾配制御を実行する(S16)。具体的にはブレーキECU70は例えば、減圧開始時点のホイールシリンダ圧で減圧リニア制御弁67に自励振動が生じないことが保証されている減圧勾配で保持液圧が完全に解除されるまでホイールシリンダ圧を減圧する。例えば、ホイールシリンダ圧対応減圧制御(S14)での初期減圧勾配で均一に保持液圧を減圧してもよい。あるいは、自励振動が生じないことが保証されている予め設定された減圧勾配で減圧してもよい。なお、低減圧勾配制御中にアクセルペダルの操作が検出された場合には、ブレーキECU70はホイールシリンダ圧対応減圧制御に切り替えて残りの減圧を完了させてもよい。
以上のように本実施形態によれば、液圧保持制御を終了するときに、所望の発進性能に基づき設定された保持液圧解除許容時間を最大限活用して緩やかに減圧することが可能となる。このため、減圧時の異音を抑制するとともに、ずり下がり防止制動制御から車両発進への迅速な切替を実現することができる。
なお、上述の実施形態においては、液圧保持制御を終了するときに減圧勾配緩和制御を適用する例を説明したが、他の場合に適用することも可能である。例えば、運転者のブレーキ操作量の減少により操作液圧が最低保持圧に向かって減圧されるときに減圧勾配緩和制御を適用することも可能である。この場合、制御部は例えば、減圧開始時点から予め設定されている減圧完了目標時間が経過したときに最低保持圧に到達するよう減圧開始時点のホイールシリンダ圧に応じて減圧勾配を決定してもよい。