JP2010285690A - 金属部材の焼入れ方法および焼入れ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】使用後の水溶性焼入剤13bから、使用前の水溶性焼入剤26中の水溶性ポリマーの重量平均分子量よりも低い分子量を持つ低分子量ポリマー24(水溶性ポリマー)を分離する第1工程を備える。すなわち分離除去装置22(分離装置)を備える。また、分離除去装置22で分離を行った水溶性焼入剤13cに、使用前の水溶性焼入剤26を追加する第2工程を備える。すなわち調整装置25を備える。
【選択図】図4
Description
この焼入れ装置201では、約800℃〜900℃に加熱された金属部材の焼入れを繰り返すことにより、水溶性焼入剤213中の水溶性ポリマーが例えば熱分解や酸化分解する(水溶性ポリマーを構成する炭素間の結合が切れる)。この分解により水溶性ポリマーの分子量が小さくなる。分子量の小さい水溶性ポリマーは冷却緩和能が低いことが知られている。すなわち、繰り返し使用により水溶性焼入剤213は劣化し、冷却緩和能が低下する(以下、劣化した水溶性焼入剤が溶けた、使用後の水溶液を「使用液」という)。
したがって、劣化した水溶性焼入剤の全量を使用前の水溶性焼入剤と取り替える場合に比べ、少ない量の使用前の水溶性焼入剤の追加により、冷却緩和能を向上できる。よって、水溶性焼入剤にかかるコストを低減できる。
また、本発明では、分子量の低い(冷却緩和能の低い)水溶性ポリマーを含む水溶性焼入剤が噴射される第1被噴射部は、金属部材の軸方向中央部(一般に冷却速度が低い部分)である。また、分子量の高い(冷却緩和能の高い)水溶性ポリマーを含む水溶性焼入剤が噴射される第2被噴射部は、金属部材の軸方向両端部(一般に冷却速度が高い部分)である。よって、第1被噴射部と第2被噴射部との冷却速度の相違を小さくできる。したがって、金属部材を均等な温度分布に近づけることができる。その結果、焼割れ、変形(歪み)や残留応力が生じるという問題を抑制できる。
図1は新液と使用液それぞれの、水溶性ポリマーの分子量の分布である。図2は新液と使用液それぞれの冷却速度である。図3は所定の分子量の水溶性ポリマーを含む焼入剤の冷却速度である。図4は本発明に係る金属部材の焼入れ方法を用いた焼入れ装置である。以下、図1〜図4を参照して、本発明に係る金属部材の焼入れ方法を用いた焼入れ装置について詳細に説明する。
まず、水溶性焼入剤中の水溶性ポリマーは使用により低分子量化することを示す。図1は、新液(劣化していない水溶性焼入剤が溶けた、未使用の水溶液)と、使用液(劣化した水溶性焼入剤が溶けた、使用後の水溶液)それぞれの水溶性ポリマーの分子量分布を示すグラフである。縦軸は割合、横軸は分子量を示す。実線は新液を、破線は使用液を示す。水溶性焼入剤の水溶性ポリマーはポリアルキレングリコールであり、主成分はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールである。
新液および使用液に含まれる水溶性ポリマーの分子量の分布は次のようになった。図1に示すように、新液では分子量約20000にピークを持つ、比較的シャープな分布となった。一方、使用液は分布のピーク値が新液に比べ、やや低分子量側になった。また使用液では、分子量が約20000より大きい水溶性ポリマーに比べ、分子量が20000以下の水溶性ポリマーの割合が多くなった。このように、水溶性焼入剤中の水溶性ポリマーは使用により低分子量化することが分かる。これは、水溶性ポリマーが熱分解や酸化分解したことによる。
次に、使用液は新液よりも冷却速度が速い(冷却緩和能が低い)ことを示す。図2は、新液と使用液それぞれの、冷却速度を示したグラフである。この冷却速度は、鋼のマルテンサイト変態が起こる350℃〜150℃領域での冷却速度である。すなわち、この領域での冷却速度が速いほど、金属部材の焼割れ、変形(歪み)、残留応力などの問題が生じやすい。なお、ここで示す結果は操業で用いる大型焼入槽での結果ではなく、実験室規模での試験結果である。また、冷却速度は金属部材の中心温度より算出している。
新液および使用液の冷却速度は次のようになった。図2に示すように、使用液では約10K/秒となった。新液では約7K/秒となった。したがって、新液に比べ、使用液の冷却速度は速い(冷却緩和能が低い)ことが分かる。
一方の試料は次のように調整した。新液に重量平均分子量20000のポリエチレングリコール(以下PEG)を添加した。新液とPEGの体積割合は50:50である。以下、この水溶性焼入剤を「分子量20000」という。
他方の試料は次のように調整した。新液に重量平均分子量2000のPEG(「PEG2000」という)と、重量平均分子量7500のPEG(PEG7500」という)とを添加した。新液とPEG2000とPEG7500との体積割合は、50:25:25である。以下、この水溶性焼入剤を「分子量2000+7500」という。なお、「分子量20000」と「分子量2000+7500」とで水溶性ポリマーの分子数がほぼ同じになるよう調整した。
「分子量20000」および「分子量2000+7500」それぞれの冷却速度は次のようになった。図3に示すように、「分子量20000」では冷却速度が約7.5K/秒になった。すなわち、新液の冷却速度(約7K/秒。図2参照)と比較して、若干の速度上昇にとどまっている。「分子量2000+7500」では冷却速度が約9.6K/秒になった。すなわち使用液の冷却速度(約10K/秒。図2参照)と比較して、同程度の冷却速度である。
このことから、分子量10000以下の水溶性ポリマーの割合が多い(体積の割合で50%)場合、冷却速度が速くなることが分かる。
以上の実験結果をふまえ、本発明に係る金属部材の焼入れ方法を用いた焼入れ装置1を図4を参照して説明する。
分離除去装置22(分離装置)は、使用液から低分子量ポリマーを分離または分離除去するために設ける(以下では、分離または分離除去することを単に「分離除去する」などという)。この分離除去装置22は次のようなものである。分析器21側から水溶性焼入剤13bを入れる。水溶性焼入剤13bに含まれる水溶性ポリマーから、低分子量ポリマー24を分離除去する。分離除去する低分子量ポリマー24の分子量は10000以下であることが望ましい。なお、この分子量は未使用の水溶性焼入剤13中の水溶性ポリマーの重量平均分子量(約20000)よりも低い。
この分離除去装置22は、例えばカラムである。このカラムは筒状の容器の中に例えばシリカゲルやポリマーゲルを充填したものである。この容器の中に水溶性焼入剤13bを入れることで、分子量10000以下の低分子量ポリマー24を分離除去できる。なお、この分離除去装置22は、例えば水溶性焼入剤13bを加熱分解することで、低分子量ポリマー24を分離除去するものでも良い。
そして低分子量ポリマー24を分離除去した後の、残りの水溶性焼入剤13c(分子量10000より大きい水溶性ポリマーを含むもの)を分析器23側へ排出する。なお、分析器21での分析結果により、この分離除去が不要であると判定した場合は、分離除去をせずに、水溶性焼入剤13bをそのまま分析器23側へ出す。
調整装置25は、新液を加えるため設ける。この調整装置25は、次のように機能する。分析器23から水溶性焼入剤13cが入れられる。この水溶性焼入剤13cに新液を追加する。この新液は未使用(使用前)の水溶性焼入剤26を水27に溶かしたものである。この水溶性焼入剤26の水溶性ポリマーの分子量は20000以上が望ましい。この新液の水溶性ポリマーの濃度は、分析器23で測定した水溶性焼入剤13cの濃度に応じて調整する。そして、新液を追加した水溶性焼入剤13dを冷却塔14側へ排出する。
具体的には、この調整装置25は、例えば自動調液装置である。この自動調液装置は、例えば、未使用の水溶性焼入剤26を入れる容器、水27を入れる容器、低分子量ポリマー24の分離除去を行った水溶性焼入剤13cを入れる容器、および、これらの液を混合したものを攪拌する攪拌部を有する。これらの各容器から各液を量を調整して出す。これらの液を混合し、攪拌部で攪拌する。これにより、高分子量ポリマー28を含む水溶性焼入剤13dを調製する。
本実施形態の金属部材の焼入れ方法および金属部材の焼入れ装置1には以下の特徴がある。
そこで、図4に示すように、分離除去装置22では、低分子量ポリマー24(冷却緩和能が低い)を、使用後の水溶性焼入剤13bから分離除去する(第1工程)。なお、低分子量ポリマー24は、使用前の水溶性焼入剤26中の水溶性ポリマーの重量平均分子量よりも低い分子量のものである。また、この分離除去装置22では、分子量の高い(冷却緩和能の高い)水溶性ポリマーは分離除去しない。
そして、調整装置25では、分離除去装置22を経た水溶性焼入剤13cに、未使用の水溶性焼入剤26および水27(すなわち新液)を追加する(第2工程)。すなわち、高分子量ポリマー28(冷却緩和能が高い)を含む水溶性焼入剤13cを調整する。
したがって、劣化した水溶性焼入剤13bの全量を使用前の水溶性焼入剤26と取り替える場合に比べ、少ない量の使用前の水溶性焼入剤26の追加により、冷却緩和能を向上できる。よって、水溶性焼入剤13にかかるコストを低減できる。
図5は、焼入れ試験に用いた水溶性ポリマーの分子量の分布を示すグラフである。図6は、棒状の金属部材の端面部における、各水溶性焼入剤の冷却速度の分布である。図7は、棒状の金属部材の中心部における、各水溶性焼入剤の冷却速度の分布である。図8は、第2実施形態に係る金属部材の焼入れ方法を用いた焼入れ装置である(図4相当図)。まず、棒状の金属部材の焼入れ試験について説明する。その後、焼入れ装置101について説明する。
まず、棒状の金属部材の焼入れ試験について説明する。この焼入れ試験では、棒状の金属部材の焼入れにおける、水溶性ポリマーの分子量と冷却速度との関係を調べた。なお、下記の試験結果は操業で用いる大型焼入れ槽を用いて得たものではなく、実験室規模の試験での結果である。
図8に、第2実施形態に係る金属部材の焼入れ方法を用いた焼入れ装置101を示す。第1実施形態との相違点は、(1)分離除去装置22(第1工程)により分離された低分子量ポリマー24を再利用する点、および(2)低分子量ポリマー24(水溶性焼入剤113)と高分子量ポリマー28(水溶性焼入剤13a)とを分けて金属部材11に噴射する点である。
本実施形態の金属部材の焼入れ方法および金属部材の焼入れ装置101には以下の特徴がある。
また、分離除去装置22で分離を行った(第1工程を経た)水溶性焼入剤13c、または、調整装置25により使用前の水溶性焼入剤26が追加された(第2工程を経た)水溶性焼入剤13aを、金属部材11の両端部132に第2噴射部142で噴射する。すなわち、冷却緩和能の高い高分子量ポリマー28を、両端部132に噴射する。
すなわち、中央部131と両端部132とで噴射される水溶性焼入剤113、13a(または13c)の冷却緩和能が異なる。したがって、金属部材11の被噴射部ごとに(中央部131と両端部132とで別個に)冷却速度を調節できる。
また、冷却緩和能の低い低分子量ポリマー24を含む水溶性焼入剤113を、中央部131(一般に冷却速度が低い部分)に噴射する。また、冷却緩和能の高い高分子量ポリマー28を含む水溶性焼入剤13aを両端部132(一般に冷却速度が高い部分)に噴射する。よって、金属部材11の中央部131と両端部132との冷却速度の相違を小さくできる。したがって、金属部材11を均等な温度分布に近づけることができる。その結果、焼割れ、変形(歪み)や残留応力が生じるという問題を抑制できる。
前記実施形態では、図4及び図8に示すように、水溶性焼入剤13を、循環ポンプ15から、焼入剤改善部20、冷却塔14へと連続処理した。しかしながら、焼入剤改善部20をバイパスラインに設置し、バッチ式で実施しても本発明を適用できる。
なお、焼入れ装置1(図4)または101(図8)とは別個に低分子量ポリマー24及び高分子量ポリマー28を用意し、これらを金属部材11の異なる位置に分けて噴射することも可能である。
11、211 金属部材
13、113 水溶性焼入剤
13a 使用前の水溶性焼入剤
13b 使用後の水溶性焼入剤
13c 第1工程を経た(分離を行った)水溶性焼入剤
13d 第2工程を経た(使用前の水溶性焼入剤が追加された)水溶性焼入剤
22 分離除去装置(分離装置)
24 低分子量ポリマー(分離された水溶性ポリマー)
25 調整装置
26 第2工程で追加する使用前の水溶性焼入剤
131 中央部(第1被噴射部)
132 両端部(第2被噴射部)
141 第1噴射部
142 第2噴射部
Claims (8)
- 使用後の水溶性焼入剤から、使用前の水溶性焼入剤中の水溶性ポリマーの重量平均分子量よりも低い分子量を持つ水溶性ポリマーを分離する第1工程と、
前記第1工程を経た水溶性焼入剤に、使用前の水溶性焼入剤を追加する第2工程と、を備えた金属部材の焼入れ方法。 - 前記第1工程により分離された水溶性ポリマーを含む水溶性焼入剤を前記金属部材の第1被噴射部に噴射し、
前記第1工程または第2工程を経た水溶性焼入剤を前記金属部材の第2被噴射部に噴射する、請求項1に記載の金属部材の焼入れ方法。 - 前記金属部材は棒状であり、
前記第1被噴射部は、前記金属部材の軸方向中央部であり、
前記第2被噴射部は、前記金属部材の軸方向両端部である、請求項2に記載の金属部材の焼入れ方法。 - 前記第1工程で分離する水溶性ポリマーの分子量は10000以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属部材の焼入れ方法。
- 使用後の水溶性焼入剤から、使用前の水溶性焼入剤中の水溶性ポリマーの重量平均分子量よりも低い分子量を持つ水溶性ポリマーを分離する分離装置と、
前記分離を行った水溶性焼入剤に、使用前の水溶性焼入剤を追加する調整装置と、を備えた金属部材の焼入れ装置。 - 前記分離装置により分離された水溶性ポリマーを含む水溶性焼入剤を前記金属部材の第1被噴射部に噴射する第1噴射部と、
前記分離を行った水溶性焼入剤、または、前記調整装置により使用前の水溶性焼入剤が追加された水溶性焼入剤を前記金属部材の第2被噴射部に噴射する第2噴射部と、を備えた請求項5に記載の金属部材の焼入れ装置。 - 前記金属部材は棒状であり、
前記第1被噴射部は、前記金属部材の軸方向中央部であり、
前記第2被噴射部は、前記金属部材の軸方向両端部である、請求項6に記載の金属部材の焼入れ装置。 - 前記分離装置で分離する水溶性ポリマーの分子量は10000以下である請求項5〜7のいずれか1項に記載の金属部材の焼入れ装置。
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