しかしながら、高誘電率ゲート絶縁膜を有するNチャネル型FETにおいて、閾値電圧の制御性が悪い場合があるという課題が知られ始めており、本願発明者らによる検討においても確認された。
また、高誘電率ゲート絶縁膜を有するPチャネル型FETにおいても、同様に閾値電圧の制御性が悪い場合があるという課題が知られ始めており、やはり、本願発明者らによる検討においても確認された。
以上に鑑み、本発明は、高誘電率ゲート絶縁膜を有するNチャネル型及びPチャネル型のFETを有する半導体装置及びその製造方法において、閾値電圧の制御性を向上させることを目的とする。
高誘電率ゲート絶縁膜を有するFETに関し、閾値電圧の制御性が低下する理由を本願発明者らが検討したところ、以下に説明するような新規な知見を得た。
まず、Nチャネル型FETについて説明する。
Nチャネル型FETにおいて、イクステンション領域を形成するためには、N型不純物として主にAsを基板に注入するのが一般的である。ここで、高誘電率ゲート絶縁膜を用いる場合には、Asの注入量が一定量より多くなると、逆短チャネル効果(リバースショートチャネル効果)が顕著に発生する。このため、閾値電圧の制御性が悪くなる。
このような、逆短チャネル効果が顕著に発生する現象は、SiO2 膜又はSiN膜等をゲート絶縁膜として用いる場合には発生しない。つまり、高誘電率ゲート絶縁膜を用いる場合に特有の現象である。また、N型不純物の一つとしてAsを用いる場合に発生する現象であり、例えばP等の他のN型不純物を用いる場合には発生しない。
また、以上のような顕著な逆短チャネル効果は、Asの注入量が一定の値以下の場合には発生せず、該一定の値を超えると発生する。つまり、Asの注入量には、顕著な逆短チャネル効果の発生に関する臨界点が存在する。更に、このような臨界点は、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に依存する。
Nチャネル型FETについて、以上のようなことが本願発明者らによって見出された。
尚、逆短チャネル効果とは、閾値電圧がゲート長に依存して大きく変化する現象である。更に詳しくは、ゲート長が短くなるに従って閾値電圧が急に高くなり、ゲート長が更にある一定の値より短くなると今度は閾値電圧が急激に低下するという現象である。
通常、Nチャネル型FETにおける逆短チャネル効果は、イクステンション領域の下部に形成されるポケット領域に導入されているP型不純物が原因であるとされる。ポケット領域中にプラス電荷であるP型不純物が存在することから、チャネルの閾値が上昇し、より大きな電圧がトランジスタのオンオフ制御に必要となるのである。
これに対して、本願発明者らが見出した逆短チャネル効果は、イクステンション領域を形成するためのN型不純物としてのAsが原因となっている。
次に、Pチャネル型FETの場合について説明する。
Pチャネル型FETにおいて、ポケット領域を形成するためには、N型不純物として主にAsを基板に注入するのが一般的である。ここで、高誘電率ゲート絶縁膜を用いる場合には、Asの注入量が一定量より多くなると、短チャネル効果(ショートチャネル効果)が異常に顕著になる。このため、閾値電圧の制御性が悪くなる。
このような、異常な短チャネル効果についても、SiO2 膜又はSiN膜等をゲート絶縁膜として用いる場合には発生しない。つまり、高誘電率ゲート絶縁膜を用いる場合に特有の現象である。また、N型不純物の一つとしてAsを用いる場合に発生する現象であり、例えばP等の他のN型不純物を用いる場合には発生しない。
また、以上のような顕著な短チャネル効果は、Asの注入量が、一定の値以下の場合には発生せず、該一定の値を超えると発生する。つまり、Asの注入量には、異常な短チャネル効果の発生に関する臨界点が存在する。更に、このような臨界点は、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に依存する。
Pチャネル型FETについて、以上のようなことが本願発明者らによって見出された。
尚、短チャネル効果とは、閾値電圧がゲート長に依存して変化する現象であり、詳しくは、ゲート長が短くなるに従って急速に閾値電圧が小さくなる現象である。
以上の新規な知見に基づき、前記の目的を達成するため、本発明に係る第1の半導体装置の製造方法は、Nチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置の製造方法であって、該Nチャネル型電界効果トランジスタの形成方法は、基板上に、高誘電率ゲート絶縁膜を形成する工程と、高誘電率ゲート絶縁膜の上にゲート電極を形成する工程と、少なくともゲート電極をマスクとして基板にN型不純物を導入することにより、イクステンション領域を形成する工程と、少なくともゲート電極をマスクとして、基板におけるイクステンション領域の下にP型不純物を導入することにより、ポケット領域を形成する工程とを備え、N型不純物としての砒素(As)の導入量を、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に基づいて定められる所定値以下である範囲に設定するようになっている。
本発明の第1の半導体装置の製造方法によると、イクステンション領域を形成するために導入するAsの量を、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に依存する臨界点よりも小さくしている。
先に説明したように、イクステンション領域を形成するためのAsの導入量が大きくなると、逆短チャネル効果が顕著になることを本願発明者らが見出している。そのため、このようなAsの導入量を所定の範囲に制限することによって、逆短チャネル効果の発生を抑制することができ、閾値電圧の制御性が向上する。
ここで、Asの導入量が大きくなると逆短チャネル効果が顕著になる理由は、Asと高誘電率ゲート絶縁膜中の元素とが結合することによってマイナスの固定電荷が発生するためと考えられる。このため、Asの導入量に関する臨界点は、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に依存している。
尚、所定値以下である範囲は、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚をX1 [nm]、Asの導入量をY1 [/cm2 ]とするとき、X1 に対してY1 がY1 ≦−2.5×1014・X1 +1.5×1015となる範囲であることが好ましい。
イクステンション領域を形成するためのAsの導入量をこのような範囲に設定すると、顕著な逆短チャネル効果の発生を抑制することが確実に可能であり、閾値電圧の制御性が確実に向上する。
尚、イクステンション領域を形成するために導入するN型不純物は、リン(P)を含むことが好ましい。
このようにすると、Asの導入量を前記の範囲に設定すると共に、必要とされる量のN型不純物を基板に導入してイクステンション領域を形成することができる。
また、トランジスタの構成上、N型不純物の原子の種類としてAs以外を選択できる場合は、Asの導入量 は0であることが好ましい。
このようにすると、逆短チャネル効果が顕著に発生する原因であるAsを導入しないことになるため、逆短チャネル効果を確実に抑制し、閾値電圧の制御性を向上することができる。
また、高誘電率ゲート絶縁膜は、ハフニウムの酸化物及びジルコニウムの酸化物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
ハフニウム及びジルコニウムは、Asと結合してゲート絶縁膜中にマイナスの固定電荷を発生させる現象を確実に起こす。このため、このような高誘電率ゲート絶縁膜を形成する半導体装置の製造方法においては、Asの導入量を制限することによって閾値電圧の制御性を向上させる効果が確実に実現される。
また、高誘電率ゲート絶縁膜は、窒素及びシリコンの少なくとも一方を更に含むことが好ましい。
このような高誘電率ゲート絶縁膜を用いる場合にも、本発明の半導体装置の製造方法の効果が確実に実現できる。これに加えて、窒素及びシリコンが含有されることにより、高誘電率ゲート絶縁膜の結晶化を防ぐことができ、この結果的として耐熱性を向上できると共に不要なリークパスを減らすことができる。
前記の目的を達成するため、本発明の第1の半導体装置は、Nチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置であって、該Nチャネル型電界効果トランジスタは、基板と、基板上に形成された高誘電率ゲート絶縁膜と、高誘電率ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、基板におけるゲート電極の両側の領域に形成された、N型不純物として砒素(As)及びリン(P)の少なくとも一方を含むイクステンション領域と、基板におけるイクステンション領域の下に形成されたP型不純物を含むポケット領域とを備え、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚をX1 [nm]、イクステンション領域に含まれるN型不純物の一つとしてのAsの量をY1 [/cm2 ]とするとき、X1 に対するY1 がY1 ≦−2.5×1014・X1 +1.5×1015の範囲になっている。
第1の半導体装置によると、イクステンション領域を形成するためのN型不純物としてのAsの量を、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に依存する臨界点よりも小さくしている。
先に説明したように、逆短チャネル効果が顕著に発生する原因であるAsの導入量を制限することにより、閾値電圧の制御性を向上することができる。
また、N型不純物としてAsに加え、必要に応じてPを用いることにより、Asの量を前記の範囲にすると共に、必要とされる量のN型不純物をイクステンション領域に含ませることができる。
以上から、第1の半導体装置は、閾値電圧の制御性が高いNチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置となっている。
前記の目的を達成するため、本発明の第2の半導体装置は、Nチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置であって、Nチャネル型電界効果トランジスタは、基板と、基板上に形成された高誘電率ゲート絶縁膜と、高誘電率ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、基板におけるゲート電極の両側の領域に形成された、N型不純物として砒素(As)及びリン(P)含むイクステンション領域と、基板におけるイクステンション領域の下に形成されたP型不純物を含むポケット領域とを備え、イクステンション領域に含まれるPの量がAsの量よりも多いようになっている。
第2の半導体装置によると、イクステンション領域に、N型不純物として、Asよりも多くのPが含有されている。これによって、イクステンション領域において、N型不純物の含有される量が必要を満たすと共に、Asの含有される量が抑制されている。この結果、顕著な逆短チャネル効果の発生を抑制し、Nチャネル型電界効果トランジスタにおける閾値電圧の制御性を向上させることができる。
以上から、第2の半導体装置は、閾値電圧の制御性が高いNチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置となっている。
また、高誘電率ゲート絶縁膜は、ハフニウムの酸化物及びジルコニウムの酸化物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
ハフニウム及びジルコニウムは、Asと結合してゲート絶縁膜中にマイナスの固定電荷を発生させる現象を確実に起こす。このため、このような高誘電率ゲート絶縁膜を形成を有するNチャネル型電界効果トランジスタにおいては、Asの導入量が制限されていることによって、閾値電圧の制御性が確実に向上している。
これらのことから、閾値電圧の制御性が確実に向上したNチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置が実現されている。
また、高誘電率ゲート絶縁膜は、窒素及びシリコンの少なくとも一方を更に含むことが好ましい。
このような高誘電率ゲート絶縁膜を備えたNチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置においても、本発明の効果が確実に実現できる。これに加えて、窒素及びシリコンが含有されることにより、高誘電率ゲート絶縁膜の結晶化を防ぐことができ、この結果的として耐熱性を向上できると共に不要なリークパスを減らすことができる。
前記の目的を達成するため、本発明の第2の半導体装置の製造方法は、Pチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置の製造方法であって、該Pチャネル型電界効果トランジスタの形成方法は、基板上に、高誘電率ゲート絶縁膜を形成する工程と、高誘電率ゲート絶縁膜の上にゲート電極を形成する工程と、少なくともゲート電極をマスクとして基板にP型不純物を導入することにより、イクステンション領域を形成する工程と、少なくともゲート電極をマスクとして、基板におけるイクステンション領域の下にN型不純物を導入することにより、ポケット領域を形成する工程とを備え、N型不純物としての砒素(As)の導入量を、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に基づいて定められる所定値以下である範囲に設定するようになっている。
本発明の第2の半導体装置の製造方法によると、ポケット領域を形成するためのN型不純物としてのAsの量を、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に依存する臨界点よりも小さくしている。
先に説明したように、ポケット領域を形成するためのAsの導入量が大きくなると、短チャネル効果が異常に顕著になることを本願発明者らが見出している。そのため、このようなAsの導入量を所定の範囲に制限することによって、P型電界効果トランジスタにおける異常な短チャネル効果の発生を抑制することができ、閾値電圧の制御性が向上する。
ここで、Asの導入量が大きくなると短チャネル効果が異常に顕著になる理由は、Asと高誘電率ゲート絶縁膜中の元素とが結合することによってマイナスの固定電荷が発生するためと考えられる。このため、Asの導入量に関する臨界点は、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に依存している。
尚、所定値以下である範囲は、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚をX2 [nm]、Asの導入量をY2 [/cm2 ]とするとき、X2 に対してY2 がY2 ≦−1.5×1013・X2 +9.0×1013となる範囲であることが好ましい。
ポケット領域を形成するためのAsの導入量をこのような範囲に設定すると、異常な短チャネル効果の発生を抑制することが確実に可能であり、閾値電圧の制御性が確実に向上する。
尚、ポケット領域を形成するために導入するN型不純物は、リン(P)を含むことが好ましい。
このようにすると、Asの導入量を前記の範囲に設定すると共に、必要とされる量のN型不純物を基板に導入してポケット領域を形成することができる。
また、トランジスタの構成上、N型不純物の原子の種類としてAs以外を選択できる場合は、Asの導入量 は0であることが好ましい。
このようにすると、異常な短チャネル効果が発生する原因であるAsを導入しないことになるため、異常な短チャネル効果を確実に抑制し、閾値電圧の制御性を向上することができる。
また、高誘電率ゲート絶縁膜は、ハフニウムの酸化物及びジルコニウムの酸化物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
ハフニウム及びジルコニウムは、Asと結合してゲート絶縁膜中にマイナスの固定電荷を発生させる現象を確実に起こす。このため、このような高誘電率ゲート絶縁膜を形成するPチャネル型電界効果トランジスタの製造方法においては、Asの導入量を制限することによって閾値電圧の制御性を向上させる効果が確実に実現される。
また、高誘電率ゲート絶縁膜は、窒素及びシリコンの少なくとも一方を更に含むことが好ましい。
このような高誘電率ゲート絶縁膜を用いる場合にも、本発明の半導体装置の製造方法の効果が確実に実現できる。これに加えて、窒素及びシリコンが含有されることにより、高誘電率ゲート絶縁膜の結晶化を防ぐことができ、この結果的として耐熱性を向上できると共に不要なリークパスを減らすことができる。
前記の目的を達成するため、本発明の第3の半導体装置は、Pチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置であって、該Pチャネル型電界効果トランジスタは、基板と、基板上に形成された高誘電率ゲート絶縁膜と、高誘電率ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、基板におけるゲート電極の両側の領域に形成された、P型不純物を含むイクステンション領域と、基板におけるイクステンション領域の下に形成されたN型不純物として砒素(As)及びリン(P)の少なくとも一方を含むポケット領域とを備え、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚をX2 [nm]、ポケット領域に含まれるN型不純物としてのAsの量をY2 [/cm2 ]とするとき、X2 に対するY2 がY2 ≦−1.5×1013・X2 +9.0×1013の範囲になっている。
第3の半導体装置によると、ポケット領域を形成するためのN型不純物の一つとしてのAsの量を、高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に依存する臨界点よりも小さくしている。
先に説明したように、短チャネル効果が異常に顕著に発生する原因であるAsの導入量を制限することにより、閾値電圧の制御性を向上することができる。
また、N型不純物としてAsに加えてPを用いることにより、Asの量を前記の範囲にすると共に、必要とされる量のN型不純物をポケット領域に含ませることができる。
以上から、第3の半導体装置は、閾値電圧の制御性が高いPチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置となっている。
前記の目的を達成するため、本発明の第4の半導体装置は、Pチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置であって、該Pチャネル型電界効果トランジスタは、基板と、基板上に形成された高誘電率ゲート絶縁膜と、高誘電率ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、基板におけるゲート電極の両側の領域に形成されたP型不純物含むイクステンション領域と、基板におけるイクステンション領域の下に形成された、N型不純物として砒素(As)及びリン(P)を含むポケット領域とを備え、ポケット領域に含まれるPの量がAsの量よりも多いようになっている。
第4の半導体装置によると、ポケット領域に、N型不純物として、Asよりも多くのPが含有されている。これによって、イクステンション領域において、N型不純物の含有される量が必要を満たすと共に、Asの含有される量が抑制されている。この結果、異常な短チャネル効果の発生を抑制し、閾値電圧の制御性を向上させることができる。
以上から、第4の半導体装置は、閾値電圧の制御性が高いPチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置となっている。
尚、高誘電率ゲート絶縁膜は、ハフニウムの酸化物及びジルコニウムの酸化物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
ハフニウム及びジルコニウムは、Asと結合してゲート絶縁膜中にマイナスの固定電荷を発生させる現象を確実に起こす。このため、このような高誘電率ゲート絶縁膜を有するPチャネル型電界効果トランジスタにおいては、Asの導入量を制限することによって閾値電圧の制御性を向上させる効果が確実に実現される。
これらのことから、閾値電圧の制御性が確実に向上したPチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置が実現されている。
また、高誘電率ゲート絶縁膜は、窒素及びシリコンの少なくとも一方を更に含むことが好ましい。
このような高誘電率ゲート絶縁膜を用いる場合にも、本発明のPチャネル型電界効果トランジスタの効果が確実に実現できる。これに加えて、窒素及びシリコンが含有されることにより、高誘電率ゲート絶縁膜の結晶化を防ぐことができ、この結果的として耐熱性を向上できると共に不要なリークパスを減らすことができる。
本発明に係るNチャネル型FETを有する半導体装置及びその製造方法によると、イクステンション領域形成のために導入するAsの量を設定することにより、逆短チャネル効果を抑制し、閾値電圧の制御性を向上させることができる。
また、本発明に係るPチャネル型FETを有する半導体装置及びその製造方法によると、ポケット領域形成のために導入するAsの量を設定することにより、異常な短チャネル効果を抑制し、閾値電圧の制御性を向上させることができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)、(b)、図2(a)、(b)、図3(a)、(b)、図4(a)、(b)及び図5(a)、(b)は、本実施形態に係るFETを有する半導体装置の製造方法を説明するための図であり、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )FETを有する半導体装置の製造工程を示している。
まず、図1(a)に示すように、基板の一例としての面方位(100)で用いるP型シリコン基板101に対し、STI(Shallow Trench Isolation)による素子分離領域102を形成する。これにより、NMOS(n-channel Metal Oxide Semiconductor )形成領域103とPMOS(p-channel Metal Oxide Semiconductor )形成領域104とがP型シリコン基板101上に区画される。
更に、P型シリコン基板101上に、保護膜として酸化膜105を形成する。
続いて、図1(b)に示すように、フォトレジスト膜を形成した後にパターンニングを行なうことにより、NMOS形成領域103を覆うマスク106を形成する。
次に、マスク106に覆われていないPMOS形成領域104に対し、N型不純物としてリン(P)をイオン注入してNウェル107を形成する。
また、Nウェル107に砒素(As)をイオン注入することにより、Nウェル107の表面付近の領域に、N型不純物の導入されたチャネル領域(図示省略)を形成する。
続いて、図2(a)に示すように、マスク106を除去し、フォトレジスト膜を形成した後にパターンニングを行なうことにより、PMOS形成領域104を覆うマスク108を形成する。
次に、マスク108に覆われていないNMOS形成領域103に対し、P型不純物としてボロン(B)をイオン注入してPウェル109を形成する。
また、Pウェル109にBを更にイオン注入することにより、Pウェル109の表面付近の領域に、P型不純物の導入されたチャネル領域(図示省略)を形成する。この際、注入エネルギーは例えば30keV、注入量は例えば1.0×1013/cm2 である。
続いて、図2(b)に示すように、マスク108を除去し、更に酸化膜105をエッチバックして除去する。
次に、P型シリコン基板101上に、ゲート絶縁膜110を形成する。ゲート絶縁膜110は、以下に説明するような積層膜として形成される。
まず、P型シリコン基板101上に、ゲート酸化膜として0.8〜1.3nm程度のSiO2 膜を形成する。更に、SiO2 膜上に、Arガスを用いるスパッタ法によってHfを堆積した後、希釈O2 を含むN2 ガス中においてRTO処理する。これにより、SiO2 膜上に、高誘電率膜であるHfO2 膜が形成される。場合により、このように形成されたHfO2 膜に対し、酸素中又は窒素中においてポストデポジションアニールを施す。
このようにして形成されたSiO2 膜とHfO2 膜との積層膜が、ゲート絶縁膜110として機能する。本実施形態においては、ゲート絶縁膜110は膜厚2.9nmとなっている。但し、膜厚が特に限定されるものではない。
尚、SiO2 膜に代えて、SiON膜又はシリコン窒化膜を形成しても良い。
また、ゲート絶縁膜110上に、耐熱性の向上及びゲート電極(後に形成されるゲート電極111a)に対するHfの拡散防止を目的とするキャップ層として、シリコン窒化膜等を堆積しても良い。
次に、ゲート絶縁膜110上(又は、キャップ層が形成されている場合には、キャップ層上)に、ポリシリコン層111を形成する。
続いて、図3(a)に示すように、ポリシリコン層111をパターニングして、NMOS形成領域103及びPMOS形成領域104にそれぞれゲート電極111aを形成する。
ここで、必要に応じて、基板101及びゲート電極111a等を覆うようにSiO2 膜を形成した後、該SiO2 膜をエッチングすることにより、ゲート電極111aの側壁部分にオフセットスペーサを形成しても良い。オフセットスペーサは、後の工程において形成するイクステンション領域及びポケット領域等の電極111aに対する位置を調整するために、必要に応じて形成する。
続いて、図3(b)に示すように、フォトレジスト膜を形成した後にパターンニングを行なうことにより、PMOS形成領域104を覆うマスク112を形成する。
次に、マスク112に覆われていないNMOS形成領域103において、N型不純物としてのAsイオンをPウェル109に注入する。この際、ゲート電極111aをマスクとして用いる。これにより、Pウェル109の表面付近で且つゲート電極111aの両側の領域に、N型イクステンション領域113が形成される。この際の注入の条件については、後に説明する。
更に、N型イクステンション領域113の下にBイオンを注入することにより、P型ポケット領域114を形成する。この際、例えば注入エネルギーを10keVとすると共に、8×1012/cmを1回の注入量とする4回転注入によって注入を行なう。尚、この際にも、ゲート電極111aがマスクとして用いられる。
ここで、4回転注入とは、ポケット領域の形成等のためのイオン注入において、基板に対して垂直ではなく角度をもって注入を行なう場合に、基板を90度ずつ回転させて計4回の注入を行なうことを言う。
続いて、図4(a)に示すように、マスク112を除去し、フォトレジスト膜を形成した後にパターンニングを行なうことにより、NMOS形成領域103を覆うマスク115を形成する。
次に、マスク115に覆われていないPMOS形成領域104において、P型不純物としてのBイオンをNウェル107に注入する。この際、例えば注入エネルギーは0.5keVであると共に、8×1013/cmを1回の注入量とする4回転注入によって注入を行なう。また、ゲート電極111aをマスクとして用いる。これにより、Nウェル107の表面付近で且つゲート電極111aの両側の領域に、P型イクステンション領域116が形成される。
更に、P型イクステンション領域116の下にAsイオンを注入することにより、N型ポケット領域117を形成する。この際にも、ゲート電極111aがマスクとして用いられる。この際の注入の条件については、後に説明する。
続いて、図4(b)に示すように、マスク115を除去する。更に、P型シリコン基板101及びゲート電極111a等を覆うようにSiN等の絶縁膜を形成し、異方性エッチング等によってパターニングすることにより、ゲート電極111aの側壁部分にサイドウォール118を形成する。
次に、フォトレジスト膜を形成した後にパターンニングを行なうことにより、PMOS形成領域104を覆うマスク119を形成する。
更に、ゲート電極111a及びサイドウォール118をマスクとして、Pウェル109に対してAsイオンを注入し、続いて同様にPイオンを注入する。
この際、Asイオンについては注入エネルギー10keV、注入量5x1015/cm2 の条件とする。また、Pイオンについて、注入エネルギー5keV、注入量5x1014/cm2 の条件とする。
このようなイオンの注入と、後の工程において行なう熱処理とにより、Pウェル109における表面付近で且つサイドウォール118の両側の領域に、N型のソース領域及びドレイン領域(以後、N型ソース・ドレイン領域120と呼ぶ)が形成される。
続いて、図5(a)に示すように、マスク119を除去し、フォトレジスト膜を形成した後にパターンニングを行なうことにより、NMOS形成領域103を覆うマスク121を形成する。
次に、ゲート電極111a及びサイドウォール118をマスクとして、Nウェル107に対してBイオンを注入する。この際、注入エネルギー3keV、注入量3x1015/cm2 の条件とする。
更に、マスク121を除去した後、熱処理を行なう。これによって、Nウェル107における表面付近で且つサイドウォール118の両側の領域に、P型のソース領域及びドレイン領域(以後、P型ソース・ドレイン領域122と呼ぶ)が形成される。また、先に説明したN型ソース・ドレイン領域120は、この熱処理によって同時に形成される。
続いて、図5(b)に示すように、N型ソース・ドレイン領域120、P型ソース・ドレイン領域122及びゲート電極111aの上に、CoSi2 又はNiSi等のシリサイド層123を形成する。
この際、N型ソース・ドレイン領域120、P型ソース・ドレイン領域122及びゲート電極111aの表面には、自然酸化によって酸化膜(図示省略)等が形成されている場合がある。このような場合には、シリサイド層123を形成する前に、該酸化膜等をエッチバックして除去しておく。
この後、図示は省略するが、絶縁層及び配線等を形成する。
本実施形態に係る高誘電率ゲート絶縁膜を用いたCMOSFETを有する半導体装置は、以上に説明したような製造方法によって製造される。
ここで、本実施形態においては、CMOSFETの内、NMOS形成領域103に形成するNチャネル型FETに注目し、図3(b)に示すN型イクステンション領域113を形成する際のAsイオンの注入について説明する。
このようなAsイオンの注入において、注入エネルギーを1keVとすると共に注入量を幾つかの値とした場合、形成されるNチャネル型FETのゲート長と閾値電圧との関係は図6に示されるようになる。Asの注入量は、具体的には、2x1014、4x1014、7x1014、10x1014、11x1014、12x1014及び15x1014としている。尚、単位は全て[/cm2 ]である。
図6に示すように、ゲート長が10μm程度から短くなるのに従い、いずれのAsの注入量においても閾値電圧は緩やかに高くなる。しかし、Asの注入量が一定以上となっている場合には、ゲート長が0.1μmに近づくにつれて、閾値電圧が急激に高くなるという逆短チャネル効果が見られる。特に、Asの注入量が10x1014/cm2 以上の場合、顕著な逆短チャネル効果が発生している。
尚、ゲート長が更に短くなると、通常の短チャネル効果として、どの場合にも閾値電圧は低下する。
以上のような顕著な逆短チャネル効果が発生すると、僅かなゲート長の変動によって閾値電圧が大きく変動することになる。このため、トランジスタのオンオフ特性を決めるパラメータである閾値電圧の制御が困難になり、その結果、所定の閾値電圧を備えたNチャネル型FETの製造が困難になる。これにより、半導体装置の製品歩留りを低下させる大きな原因となる。
図6から、As注入量が2x1014/cm2 から7x1014/cm2 までの値である場合には、閾値電圧は理想的な変化をしていることが分かる。つまり、ゲート長が10μm程度から短くなるのに従って緩やかに変化しながらも、ゲート長0.1μm付近までは、ほぼ一定の値を保つ。その後、ゲート長が更に短くなると、所定のゲート長以下において、通常のNチャネル型FETの場合と同様の短チャネル効果によって閾値電圧は緩やかに減少する。
これに対し、Asの注入量が10x1014/cm2 以上の場合、前述のように顕著な逆短チャネル効果が発生する。
そこで、図7に、ゲート長0.1μmにおける閾値電圧と、イクステンション領域に対するAsの注入量との関係を示す。つまり、図7は、図6におけるゲート長が0.1μmであるときの各As注入量に対する閾値電圧を示す。
図7に示すように、イクステンション領域に対するAsの注入量が7x1014/cm2 又はそれよりも小さい値を取る場合には、閾値電圧は大きな変動を示さず、ほぼ一定である。しかし、7x1014/cm2 を越えると、閾値電圧は急激に増加する。
このように、イクステンション領域を形成するためのAsの注入量について、顕著な逆短チャネル効果を生じるか否かの臨界が存在すると考えられる。このため、N型イクステンション領域113を形成する際に注入するAsの量を所定の範囲に制限することにより、顕著な逆短チャネル効果を抑制し、閾値電圧の制御性を向上することができる。
また、このように逆短チャネル効果がAsの注入量に依存して発生するのは、ゲート絶縁膜としてHfを主体とする膜等の高誘電率ゲート絶縁膜を使用する場合であり、ゲート絶縁膜として通常のSiO2 膜やSiON膜を使用する場合には発生しないことを本願発明者らは見出している。
これらのことから、Hfを含む膜等の高誘電率ゲート絶縁膜を有するNチャネル型FETにおいて、イクステンション領域を形成するためのAsの注入量が臨界以上となると逆短チャネル効果が発生するのは、次のような理由によるものと考える。
つまり、Asの注入量を一定の値以上に大きくすると、Asが拡散してゲート絶縁膜に使用されているHf原子と結合する。また、Asの注入を行なう際、特に、斜めの注入を行なう場合に、高誘電率ゲート膜に直接Asが注入され、Hf原子と結合することも考えられる。これによってゲート絶縁膜中にマイナスの固定電荷が発生するため、Nチャネル型MOSFETのオンオフを制御するための閾値電圧が大きくなる。
ここで、特にゲート絶縁膜の端の部分は、N型イクステンション領域113までの距離が短く、また、Asが直接注入され得ることから、マイナスの固定電荷を多く含むようになる。このため、ゲート長が充分に長い場合には、主にゲート絶縁膜の端に存在する電荷の影響は小さい。しかし、ゲート長が短くなるに従い、このようなマイナスの固定電荷の影響が大きくなる。このような理由であると考える。
ここで、本実施形態のFETを有する半導体装置の製造方法において、図2(b)に示した工程で形成するゲート絶縁膜110は膜厚2.9nmとなっている。この場合、逆短チャネル効果が顕著に発生するか否かのAs注入量についての臨界は、既に述べたように、7x1014/cm2 である。このため、ゲート絶縁膜110の膜厚が2.9nmである場合、N型イクステンション領域113に対するAsの注入量を7x1014/cm2 以下とすることにより、逆短チャネル効果を抑制して、高い閾値電圧の制御性を実現することができる。
更に、図8には、ゲート絶縁膜110の膜厚に応じたAs注入量の好ましい範囲を示している。ここでは、Hfを主体とする高誘電率ゲート絶縁膜であるゲート絶縁膜110の物理膜厚をX1 [nm]、N型イクステンション領域113に対するAsの注入量をY1 [/cm2 ]としている。
このとき、顕著な逆短チャネル効果を発生させないY1 の臨界(As注入量の上限)はX1 に依存し、次の式(1)のような直線によって表すことができる。
Y1 =−2.5×1014・X1 +1.5×1015 ……(1)
Y1 は、該直線の下の範囲になっていることが好ましいのであり、言い換えると、X1 に対して次の式(2)に示される範囲に設定されることが好ましい。
Y1 ≦−2.5×1014・X1 +1.5×1015 ……(2)
このようにすると、顕著な逆短チャネル効果の発生を抑制することができるため、閾値電圧の制御性が向上する。この結果、高誘電率ゲート絶縁膜を用いたNチャネル型FETの製造方法において、良好な閾値電圧の制御性を実現することができる。
また、X1 をN型イクステンション領域113に含まれているAsの量と考えたときに、同様に式(2)の範囲を満たすようにすると、良好な閾値電圧の制御性を有するNチャネル型FET及びそのようなNチャネル型FETを有する半導体装置を実現することができる。
尚、ゲート絶縁膜110は、本実施形態において、P型シリコン基板101との界面の側に形成されるSiO2 膜と、該SiO2 膜の上に形成されるHfO2 膜との積層膜として形成された後、ポストデポジションアニールを施された構成である。このため、ゲート絶縁膜110の物理膜厚X1 とは、P型シリコン基板101に近い側のSi含有量が高い酸化膜からゲート電極111aに近い側のHf含有量が高い膜までを含む、ゲート絶縁膜として作用する膜全体の物理膜厚である。
また、X1 が増加するとAs注入量Y1 の臨界が減少しているが、これは、ゲート絶縁膜110の膜厚が大きくなると、Asと結合するHf等の元素が増加し、これらの反応によって生じるマイナスの固定電荷が増加するためと考えられる。
尚、式(2)の範囲を満たすようにAs注入量Y1 の値を設定すると、N型イクステンション領域113を形成するためのN型不純物の量が不足する場合が考えられる。このような場合、N型不純物として、式(2)の範囲を満たす量のAsに加えて必要量のリン(P)を注入すればよい。この際、Asの注入量よりもPの導入量が多くなり、Pを主とするN型不純物となっても良い。更に、N型不純物としてAsを用いることなく、Pのみを注入してN型イクステンション領域113を形成しても良い。
本実施形態において解消しようとしている逆短チャネル効果は、Asを用いることが発生の原因であるから、この点においては、Asの注入量は少なくするのがよい。実際のAs及びPの注入量については、基板内におけるAs及びPの拡散性等、その他の要因を含めて決定する。
また、N型イクステンション領域113を形成するためのAs又はPの注入に関して、Si又はGeの注入によって基板の一部をプレアモルファス化した後に行なっても良い。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るFETを有する半導体装置及びその製造方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態におけるFETを有する半導体装置の製造方法は、工程としては、第1の実施形態において図面を参照して説明したCMOSFETを有する半導体装置の製造方法と同様である。そのため、本実施形態の特徴的な部分について詳しく説明し、他の工程については第1の実施形態を参照することによって説明を省略する。
具体的には、CMOSFETの内、PMOS形成領域104に形成するPチャネル型FETに注目し、図4(a)に示すN型ポケット領域117を形成する際のAsイオンの注入について説明する。
このようなAsイオンの注入において、注入エネルギーを40keVとすると共に注入量を幾つかの値とした場合、形成されるPチャネル型FETのゲート長と閾値電圧との関係は図9に示されるようになる。Asの注入量は、具体的には、1×1013、2×1013、3×1013、4.5×1013、5×1013及び6×1013としている。尚、単位は全て[/cm2 ]である。
ここで、Pチャネル型FETであるから、ゲート電圧として印加するのは負の電圧である。しかし、図9においては閾値電圧を絶対値によって示しており、このような絶対値が小さい場合を閾値電圧が低い、絶対値が大きい場合を閾値電圧が高いと表現している。
図9に示すように、ゲート長が10μm程度から短くなるのに従い、いずれのAsの注入量においても閾値電圧は緩やかに低くなる。また、ゲート長が0.1〜0.2μmである付近において、急激に閾値電圧が低くなる短チャネル効果が発生している。
更に、Asの注入量が4.5x1013/cm2 以上である場合には、通常予想されるよりも異常に顕著な短チャネル効果が発生している。
このような、異常な短チャネル効果が発生すると、僅かなゲート長の変動によって閾値電圧が大きく変動することになる。このため、トランジスタのオンオフ特性を決めるパラメータである閾値電圧の制御が困難になり、その結果、所定の閾値電圧を備えたPチャネル型FET製造が困難になる。これにより、半導体装置の製品歩留りを低下させる大きな原因となる。
理想的には、ゲート長が10μm程度から短くなるのに従って、閾値電圧は緩やかに変化しながらも、ゲート長が0.1〜0.2μm程度までは、ほぼ一定の値になることが望まれる。その後、更にゲート長が短くなると、所定のゲート長以下において、通常のPチャネル型FETの場合と同様の短チャネル効果によって閾値電圧は緩やかに減少するのが望ましい。
そこで、図10に、ゲート長0.1μmにおける閾値電圧と、ポケット領域に対するAsの注入量との関係を示す。つまり、図10は、図9におけるゲート長が0.1μmであるときの各As注入量に対する閾値電圧を示す。
図10に示すように、ポケット領域に対するAsの注入量が4.5x1013/cm2 又はそれよりも小さい値を取る場合には、閾値電圧は大きな変動を示さず、ほぼ一定である。しかし、4.5x1013/cm2 を越えると、閾値電圧は急激に低下する。
このように、ポケット領域を形成するためのAsの注入量について、異常な短チャネル効果を生じるか否かの臨界が存在すると考えられる。このため、N型ポケット領域117を形成する際に注入するAsの量を所定の範囲に制限することにより、異常な短チャネル効果を抑制し、閾値電圧の制御性を向上することができる。
また、このように異常な短チャネル効果がAsの注入量に依存して発生するのは、ゲート絶縁膜としてHfを主体とする膜等の高誘電率ゲート絶縁膜を使用する場合であり、ゲート絶縁膜として通常のSiO2 膜やSiON膜を使用する場合には発生しないことを本願発明者らは見出している。
これらのことから、Hfを含む膜等の高誘電率ゲート絶縁膜を有するPチャネル型FETにおいて、ポケット領域を形成するためのAsの注入量が臨界以上となると異常な短チャネル効果が発生するのは、次のような理由によるものと考える。
つまり、Asの注入量を一定の値以上に大きくすると、Asが拡散してゲート絶縁膜に使用されているHf原子と結合する。また、Asの注入を行なう際、特に、斜めの注入を行なう場合に、高誘電率ゲート膜に直接Asが注入され、Hf原子と結合することも考えられる。これによってゲート絶縁膜中にマイナスの固定電荷が発生するため、Pチャネル型MOSFETのオンオフを制御するための閾値電圧が小さくなる。
ここで、特にゲート絶縁膜の端の部分は、N型イクステンション領域113までの距離が短く、また、Asが直接注入され得ることから、マイナスの固定電荷を多く含むようになる。このため、ゲート長が充分に長い場合には、主にゲート絶縁膜の端に存在する電荷の影響は小さい。しかし、ゲート長が短くなるに従い、このようなマイナスの固定電荷の影響が大きくなる。このような理由であると考える。
ここで、本実施形態のFETを有する半導体装置の製造方法において、図4(a)に示した工程で形成するゲート絶縁膜110は膜厚2.9nmとなっている。この場合、異常な短チャネル効果が顕著に発生するか否かのAs注入量についての臨界は、既に述べたように、4.5x1013/cm2 である。このため、ゲート絶縁膜110の膜厚が2.9nmである場合、N型ポケット領域117に対するAsの注入量を4.5x1013/cm2 以下とすることにより、異常な短チャネル効果を抑制して、高い閾値電圧の制御性を実現することができる。
更に、図11には、ゲート絶縁膜110の膜厚に応じたAs注入量の好ましい範囲を示している。ここでは、Hfを主体とする高誘電率ゲート絶縁膜であるゲート絶縁膜110の物理膜厚をX2 [nm]、N型ポケット領域117に対するAsの注入量をY2 [/cm2 ]としている。
このとき、異常な短チャネル効果を発生させないY2 の臨界(As注入量の上限)はX2 に依存し、次の式(3)のような直線によって表すことができる。
Y2 =−1.5×1013・X2 +9.0×1013 ……(3)
Y2 は、該直線の下の範囲になっていることが好ましいのであり、言い換えると、X2 に対して次の式(4)に示される範囲に設定されることが好ましい。
Y2 ≦−1.5×1013・X2 +9.0×1013 ……(4)
このようにすると、異常な短チャネル効果の発生を抑制することができるため、閾値電圧の制御性が向上する。この結果、高誘電率ゲート絶縁膜を用いたPチャネル型FETを有するFETの製造方法において、良好な閾値電圧の制御性を実現することができる。
また、X2 をN型ポケット領域117に含まれているAsの量と考えたときに、同様に式(4)の範囲を満たすようにすると、良好な閾値電圧の制御性を有するPチャネル型FET及びそのようなPチャネル型FETを有する半導体装置を実現することができる。
尚、ゲート絶縁膜110の物理膜厚X2 、は、第1の実施形態においてX1 について説明したのと同様に、ゲート絶縁膜として作用する膜全体の物理膜厚である。
また、X2 が増加するとAs注入量Y2 の臨界が減少しているが、これは、ゲート絶縁膜110の膜厚が大きくなると、Asと結合するHf等の元素が増加し、これらの反応によって生じるマイナスの固定電荷が増加するためと考えられる。
尚、式(3)の範囲を満たすようにAs注入量Y2 の値を設定すると、N型ポケット領域117を形成するためのN型不純物の量が不足する場合が考えられる。このような場合、N型不純物として、式(4)の範囲を満たす量のAsに加えて必要量のリン(P)を注入すればよい。この際、Asの注入量よりもPの導入量が多くなり、Pを主とするN型不純物となっても良い。更に、N型不純物としてAsを用いることなく、Pのみを注入してN型ポケット領域117を形成しても良い。
本実施形態において解消しようとしている異常な短チャネル効果は、Asを用いることが発生の原因であるから、この点においては、Asの注入量は少なくするのがよい。実際のAs及びPの注入量については、基板内におけるAs及びPの拡散性等、その他の要因を含めて決定する。
尚、式(1)及び式(3)等の式、つまり、As導入量に関する臨界値の高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚に対する依存性を示す式は、形成されるFETのゲート長及びゲート絶縁膜の種類等によって、異なる係数を有する場合が考えられる。しかし、第1及び第2の実施形態において説明したのと同様の方法によって、式(1)及び式(3)に相当する式を求めることができる。この結果、良好な閾値電圧の制御性を実現するためのAs導入量の範囲を求めることができる。
また、本明細書中における不純物の注入の条件(注入エネルギー及び注入量等)について、いずれも例示であって、記載の値に限定するものではない。
また、第1及び第2の実施形態において、高誘電率ゲート絶縁膜としてHfO2 を含む膜を用いる場合を説明したが、高誘電率ゲート絶縁膜をこれに限るものではない。例えばZrO2 を含む膜を用いる場合にも本発明の効果を得ることができる。
また、HfO2 膜又はZrO2 膜中に、Si、Al、Ta、Ti又はLa等の、酸化物を形成する元素が更に含まれていても良い。更に、BST((Ba,Sr)TiO3 )等であっても良いし、三元系酸化膜(例えば、Hfx Aly O2 等)を用いても良い。
また、これらの酸化膜にSiが更に含まれた膜であるシリケイト膜を用いることもできるし、窒素が含まれる膜であっても良い。これにより、高誘電率ゲート絶縁膜の結晶化を防ぐことができ、この結果的として耐熱性を向上できると共に不要なリークパスを減らすことができる。
また、第1及び第2の実施形態において、HfO2 膜の形成方法としてPVD法を示したが、これには限定されない。例えばCVD法を利用することができ、この場合、以下のような材料を用いることができる。つまり、液体Hfソースであるt-butoxide(C16H36HfO4 )、TDEAH(Tetrakis diethylamido hafnium 、テトラキスジエチルアミドハフニウム、C16H40N4 Hf)、TDMAH(Tetrakis dimethylamino hafnium、テトラキスジメチルアミノ ハフニウム、C8H24N4Hf)、Hf(MMP)4 (Tetrakis 1-Methoxy-2-methyl-2-propoxy hafnium、テトラキス 1メトキシ2メチル2プロポキシ ハフニウム及びHf[OC(CH3)2CH2OCH3]4 )等であり、固体ソース(例えばHf(NO3)4)等である。
更に、ALD(Atomic Layer deposition)法を用いることもできる。ALD法とは、Hf金属、HfCl4 、Hf t-butoxide、Hf nitrate又はTDEA−Hf等をHf原料とし、O2 、H2 O、NO、N2 O又はNH3 等を置換ガス原料として、各々を交互に暴露する方法である。
更に、CVD法による堆積に代えて、プラズマCVD法又はJVD(Jet Vapor Deposition)法によってもよいし、酸素含有ガスとして、O2 代えて、NO、N2O、H2O又はO3 等を用いてることもできる。
また、第1及び第2の実施形態において、ゲート電極111aはポリシリコンによって形成したが、これに限るものではなく、金属電極を用いることもできる。例えば、高誘電率膜の表面に対して窒素処理を行なった後、Al/TiNの積層構造電極又は金属窒化物(TiN又はTaN等)を形成しても良い。
更に、ゲート電極111aにはSi又はGe等が混入されていても良いし、Ti、SiGe、Ta、TaN、TaSix Ny 、Ru、RuO2 、RuO、WN、Mo、MoO及びMoNのうちの一つ以上の材料が含まれていても良い。
また、第1及び第2の実施形態において、基板としては、P型シリコン基板101を用いたが、N型シリコン基板であっても良い。また、基板は面方位(100)で用いたが、他の面方位(110)又は(111)であっても良い。また、Ge等を含有する歪みシリコン基板を用いても良い。
歪みシリコン基板(Strained Si基板)は、例えば、Si基板上に深さ方向に傾斜組成を有するSiGeバッファ層が0.5μm程度、その上にSiGe層が1.5nm程度、更にその上にSiエピタキシャル層が10nm程度形成された構造の基板である。
また、SiGe基板でも良いし、SOI(Silicon On Insulator)基板でも良い。その他、使用する基板について、特に限定するものではない。
また、第1及び第2の実施形態において説明したFETを有する半導体装置の製造方法より、良好な閾値制御性を有するFETを含む半導体装置を歩留り良く製造することができる。