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JP2006200700A - 車輪支持用転がり軸受装置 - Google Patents

車輪支持用転がり軸受装置 Download PDF

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JP2006200700A
JP2006200700A JP2005015468A JP2005015468A JP2006200700A JP 2006200700 A JP2006200700 A JP 2006200700A JP 2005015468 A JP2005015468 A JP 2005015468A JP 2005015468 A JP2005015468 A JP 2005015468A JP 2006200700 A JP2006200700 A JP 2006200700A
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Kazumi Ochi
和美 越智
Koji Ueda
光司 植田
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NSK Ltd
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Abstract

【課題】生産性に優れることに加えて軽量で長寿命な車輪支持用転がり軸受装置を提供する。
【解決手段】車輪支持用転がり軸受装置1のハブ輪2,内輪3,及び外輪4は、炭素の含有量が0.45質量%以上0.6質量%以下、ケイ素の含有量が0.5質量%以上0.8質量%以下、マンガンの含有量が0.6質量%以上1質量%以下、バナジウムの含有量が0.03質量%以上1質量%以下である合金鋼に、プレス加工又は塑性加工を施すことにより成形されたものである。また、この合金鋼は、ビッカース硬さHvと限界圧縮率X(%)とがX≧0.05×Hv+50なる式を満足するものである。そして、ハブ輪2及び外輪4には高周波焼入れによる硬化層22が形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する車輪支持用転がり軸受装置に関する。
自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する車輪支持用転がり軸受装置は、外周面に軌道面を有する内方部材と、内周面に軌道面を有する外方部材と、これら両軌道面の間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えている。また、内方部材の外周面には、車輪を取り付けるためのフランジが設けられ、外方部材の外周面には、懸架装置を取り付けるためのフランジが設けられている。そして、このような車輪支持用転がり軸受装置はユニット化が進んでおり、前述のフランジは内方部材や外方部材に一体化された構造となっている。
近年、自動車の燃費向上及び走行性能向上のため、車輪支持用転がり軸受装置の軽量化の要求が高まっており、例えば、車輪や懸架装置を取り付けるためのフランジのさらなる薄肉化も考慮されている。しかしながら、フランジを単に薄肉化した場合には、フランジに加わる応力が大きくなるため、フランジの強度が不足することが懸念される。
特に、車輪が取り付けられる部材に設けられたフランジの付け根部分は、回転しながら曲げ応力が負荷される。また、フランジには、車輪の回転に伴って捩り応力が加わるため、これに対する十分な強度が確保できない場合には疲労破壊が生じるおそれがある。
また、フランジには、車輪及びディスクロータを取り付けるためのスタッドやボルトを挿通する通孔が形成されるが、薄肉化されるとフランジの強度が低下するので、フランジに車輪を取り付けるためにスタッドとナットとを締結する際や、通孔に挿通したボルトを締結する際に、フランジのうちのスタッドの基端部を内嵌した通孔の周囲部分が変形しやすくなることも懸念される。
通孔の周囲部分が変形すると、フランジに取り付けられているディスクロータのハブの回転軸に対する直角度が悪化する。すなわち、被制動面であるディスクロータの両側面は、ハブの回転軸に対し直角をなすべきであるが、上記変形によって回転軸に対する前記両側面の直角度が悪化する。その結果、ディスクロータの両側面が回転に伴って軸方向に変位して、振れが発生する。このような原因で生じる振れの振幅が数十μm程度であっても、制動時にジャダーと呼ばれる振動が発生するおそれがあり、乗り心地性が低下することになる。したがって、フランジを薄肉化して軽量化を図る場合には、非焼入れ部において十分な疲労強度,降伏強度等が必要不可欠となる。
しかしながら、前述したようにフランジを有する部材にあっては、車輪や懸架装置を取り付けるためのスタッドやボルトを挿通する通孔を精度良く加工する必要があるので、強度向上を図るために単に硬さを増加させると、著しく加工性が低下して大幅に生産性が悪化する。
以上のような観点から、車輪支持用転がり軸受装置においては、転がり疲労を受ける内方部材の軌道面と外方部材の軌道面だけでなく、それ以外の非焼入れ部においても、成形後において十分な強度と加工性とが求められる。
一般に、鋼の強度は硬さと良好な相関性があり、例えば、0.7質量%以上の炭素を含有する高炭素鋼を用いて成形後の硬さを向上させれば、強度を向上させることが可能である。ただし、その反面、加工性が著しく低下して、大幅なコストアップを余儀なくされる。また、この場合には、加締め方式の車輪支持用転がり軸受装置においては、加締め部の塑性加工性が低下して、加締め加工自体が困難となる。
車輪支持用転がり軸受装置を構成する材料としては、日本工業規格のS53CやSAE1055等の構造用炭素鋼がよく用いられている。そして、内方部材の軌道面及び外方部材の軌道面には、転動体から高面圧が繰り返し負荷されるので、十分な転がり疲労寿命と耐摩耗性とを兼ね備えるように、高周波焼入れによる硬化層が形成されている。一方、外方部材の軌道面以外の部分や内方部材の軌道面以外の部分は、加工性等の観点から、焼入れ等の硬化処理を施さずに、焼鈍しと冷間成形とを施したままの状態で使用される(本明細書においては、このような状態の部分を「非焼入れ部」と記す)。
特許文献1には、合金元素として、炭素を0.5〜0.7質量%、ケイ素を0.6〜1.2質量%、マンガンを0.6〜1.0質量%含有し、且つ、11271C%+5796Si%+2665Mn%−6955なる式で算出されるLが5000以上で、48.0C%+5.7Si%+11.5Mn%−16.2なる式で算出されるHが23〜25である、加工性,疲労強度,及び転がり疲労寿命に優れる転動部品が開示されている。ただし、非焼入れ部の硬さ及び硬化層の表面硬さについて言及されているのみである。
特開2002−363700号公報
このように、特許文献1に記載のものは、非焼入れ部の強度と加工性との両方を十分に満足するものではない。また、車輪支持用転がり軸受装置は、一般の転がり軸受と同様に、内方部材の軌道面及び外方部材の軌道面において転がり疲労を受けるため、軌道面の硬化層においては十分な転がり疲労寿命が求められるが、特許文献1に記載のものは、軌道面の硬化層の転がり疲労寿命に関してほとんど考慮されていない。
さらに、車輪支持用転がり軸受装置の場合は、成形時の素材の状態によっても、硬さ,組織,及び強度が多様に変化するので、製品の品質を向上させるためには、成形された車輪支持用転がり軸受装置の硬さやミクロ組織なども考慮する必要がある。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、生産性に優れることに加えて軽量で長寿命な車輪支持用転がり軸受装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の車輪支持用転がり軸受装置は、外周面に軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内方部材及び前記外方部材の少なくとも一方に設けられ車輪又は懸架装置が取り付けられるフランジと、を備えるとともに、前記内方部材及び前記外方部材の一方が回転輪、他方が固定輪とされる車輪支持用転がり軸受装置において、前記内方部材及び前記外方部材の少なくとも一方が下記の4つの条件を満足することを特徴とする。
条件1:炭素の含有量が0.45質量%以上0.6質量%以下、ケイ素の含有量が0.5質量%以上0.8質量%以下、マンガンの含有量が0.6質量%以上1質量%以下、バナジウムの含有量が0.03質量%以上1質量%以下である合金鋼で構成されている。
条件2:前記合金鋼のビッカース硬さHvと限界圧縮率X(%)とがX≧0.05×Hv+50なる式を満足する。
条件3:プレス加工又は塑性加工で成形されたものである。
条件4:前記軌道面に高周波焼入れによる硬化層が形成されている。
このような構成であれば、内方部材や外方部材が優れた静的強度及び疲労強度を有しているので、内方部材や外方部材に過大なモーメント荷重や衝撃荷重が加わるような条件下で使用されても、変形が生じにくい。よって、肉厚を厚くしたり、製造工程を通常よりも増やすことにより、強度向上を図る必要がない。また、合金鋼の加工性が優れているため、フランジを有する内方部材や外方部材を容易に加工することができる。よって、車輪支持用転がり軸受装置は、製造が容易である。
以下に、本発明の車輪支持用転がり軸受装置について、さらに詳細に説明する。
〔炭素の含有量について〕
炭素(C)は、非焼入れ部の硬さと、焼入れ,焼戻し後の硬化層の硬さとを確保するために、なくてはならない元素である。転がり疲労寿命の観点から0.45質量%以上必要であるが、多すぎると非焼入れ部の硬さが高くなりすぎるとともに、塑性加工性が低下するおそれがある。よって、合金鋼中のC含有量は、0.45質量%以上0.6質量%以下とする必要がある。
〔ケイ素の含有量について〕
ケイ素(Si)は、製鋼時に脱酸剤として作用するとともに、非焼入れ部の硬さと焼入れ性とを向上させる作用を有している。特に、焼入れ,焼戻し後においては、マルテンサイト組織を強化し、転がり疲労寿命を向上させるだけでなく、非焼入れ部においては、フェライトに固溶し、フェライト組織の強度を向上させ、降伏強度や疲労強度を高める作用を有している。
ただし、Siが多すぎると、非焼入れ部の硬さが高くなりすぎて、成形時及び成形後の塑性加工性が低下するおそれがある。よって、合金鋼中のSi含有量は、0.5質量%以上0.8質量%以下とする必要がある。
〔マンガンの含有量について〕
マンガン(Mn)は、Siと同様に脱酸剤として作用するとともに、非焼入れ部の硬さと焼入れ性とを向上させる作用を有しているので、0.6質量%以上添加する必要がある。ただし、Mnが多すぎると、非焼入れ部の硬さが高くなりすぎて、成形時及び成形後の冷間加工性が低下するおそれがある。よって、合金鋼中のMn含有量は、1質量%以下とする必要がある。
〔バナジウムの含有量について〕
バナジウム(V)は、合金鋼中で安定な炭化物又は炭窒化物を形成し、焼鈍し時及び高周波焼入れ時に旧オーステナイト結晶粒が成長することを極少量で効果的に抑制する作用を有している。また、旧オーステナイト結晶粒を微細化することにより、フェライトを分断化し、強度と加工性とのバランスを著しく改善する作用を有している。
このようなことから、Vは必要に応じて添加してもよいが、その効果を十分に得るためには、0.03質量%以上添加する必要がある。ただし、Vが多すぎると、非焼入れ部の硬さが高くなりすぎて、成形時及び成形後の冷間加工性が低下するおそれがある。よって、合金鋼中のV含有量は、1質量%以下とする必要があり、0.5質量%以下とすることがより好ましい。
〔条件2について〕
塑性加工性は変形抵抗及び限界圧縮率で表され、変形抵抗及び限界圧縮率は材料の合金成分と組織とに影響される。良好な塑性加工性を得るためには、変形抵抗が低く限界圧縮率が高い材料を用いることが好ましい。一般に変形抵抗は硬さに依存し、変形抵抗が高い材料は硬度が高くなり、変形抵抗が低い材料は硬度が低くなる。一方、変形抵抗が低すぎると一般に硬さが低下し、軸受装置としての使用に耐えない。
そこで、本発明においては、硬さの上限をHv300とし、硬さそのものよりも、むしろ硬さと限界圧縮率との比に着目した。すなわち、ビッカース硬さHvと限界圧縮率X(%)とがX≧0.05×Hv+50なる式を満足する合金鋼で、内方部材や外方部材を構成した。前記式を満足する合金鋼は、塑性加工性が良好である。
なお、外方部材の軌道面以外の部分や内方部材の軌道面以外の部分(非焼入れ部)は、ビッカース硬度Hvが180以上300以下とすることが好ましい。
また、限界圧縮率及び硬さは組織に影響されるため、合金鋼中のフェライトの含有量を面積率で10%以上25%以下とし、日本工業規格JIS G0551に規定の方法で測定された旧オーステナイト結晶粒度を粒度番号で6以上とすることが好ましい。詳述すると、非焼入れ部のフェライトの含有量が多いと強度面で問題が生じるおそれがあるため、面積率で25%以下であることが好ましい。また、非焼入れ部の旧オーステナイト結晶粒及び初析フェライトが共に微細化して組織が緻密化されるためには、非焼入れ部の旧オーステナイト結晶粒度が粒度番号で6以上であること、及び、フェライトの含有率が面積率で10%以上であることが好ましい。
軌道面を含む部分に成形される硬化層においては、転がり疲労寿命の観点から、十分な表面硬さと硬化層深さとが要求されるが、硬化層の諸品質は、非焼入れ部の諸品質と同様に、高周波焼入れ条件等によって異なるが、十分な転がり疲労寿命を確保するためには、硬化層の表面硬さはビッカース硬さHvで650以上780以下とすることが好ましく、硬化層の有効硬化層深さは1.5mm以上とすることが好ましい。
ただし、必要以上の有効硬化層深さを得ようとすると、合金鋼に高い焼入れ性が要求されることによって加工性が犠牲となったり、加熱条件によっては硬化層の結晶粒の粗大化を招いて転がり疲労寿命が不十分となる場合があるため、有効硬化層深さは4mm以下とすることが好ましい。また、硬化層の旧オーステナイト結晶粒が粗大であると転がり疲労寿命が不十分となる場合があるため、硬化層の旧オーステナイト結晶粒度(日本工業規格JIS G0551に規定の方法で測定されたもの)は粒度番号で8以上であることが望ましい。
本発明の車輪支持用転がり軸受装置は、優れた静的強度及び疲労強度を有し、大きな荷重が負荷されても変形が生じにくい。また、加工性に優れるため製造が容易であることに加えて、軽量で長寿命である。
本発明に係る車輪支持用転がり軸受装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る車輪支持用転がり軸受装置の一実施形態の構造を示す断面図である。なお、本実施形態においては、車輪支持用転がり軸受装置を自動車等の車両に取り付けた状態において、車両の幅方向外側を向いた部分を外端側部分と称し、幅方向中央側を向いた部分を内端側部分と称する。すなわち、図1においては、左側が外端側となり、右側が内端側となる。
図1の車輪支持用転がり軸受装置1は、ハブ輪2と、内輪3と、外輪4と、二列の転動体5,5と、転動体5を保持する保持器6,6と、を備えている。また、外輪4の内端側部分の内周面と内輪3の内端側部分の外周面との間、並びに、外輪4の外端側部分の内周面とハブ輪2の中間部の外周面との間には、それぞれシール装置7a,7bが設けられている。
さらに、ハブ輪2の外周面の外端側部分には、図示しない車輪を支持するための車輪取り付け用フランジ10が設けられている。そして、外輪4の外周面には、車輪取り付け用フランジ10から離間する側の端部に、懸架装置取り付け用フランジ13が設けられている。
ハブ輪2の内端側部分には外径の小さい円筒部11が形成されており、該円筒部11に内輪3が圧入され、内輪3とハブ輪2とが一体的に固定されている。なお、内輪3とハブ輪2とが一体的に固定されたものが、本発明の構成要件である内方部材に相当し、外輪4が本発明の構成要件である外方部材に相当する。
この車輪支持用転がり軸受装置1においては、ハブ輪2,内輪3,及び外輪4は、炭素の含有量が0.45質量%以上0.6質量%以下、ケイ素の含有量が0.5質量%以上0.8質量%以下、マンガンの含有量が0.6質量%以上1質量%以下、バナジウムの含有量が0.03質量%以上1質量%以下であり、残部が鉄及び不可避的不純物元素である合金鋼で構成されている。また、この合金鋼は、ビッカース硬さHvと限界圧縮率X(%)とがX≧0.05×Hv+50なる式を満足するものである。そして、ハブ輪2,内輪3,及び外輪4は、上記のような合金鋼にプレス加工又は塑性加工を施すことにより成形されたものである。
ハブ輪2の外周面の軸方向中間部及び内輪3の外周面には、それぞれ軌道面が形成されており、ハブ輪2の軌道面は第一内側軌道面20a、内輪3の軌道面は第二内側軌道面20bとされている。また、外輪4の内周面には、前記両内側軌道面20a,20bに対向する軌道面が形成されており、第一内側軌道面20aに対向する軌道面は第一外側軌道面21a、第二内側軌道面20bに対向する軌道面は第二外側軌道面21bとされている。さらに、第一内側軌道面20aと第一外側軌道面21aとの間、及び、第二内側軌道面20bと第二外側軌道面21bとの間には、それぞれ複数の転動体5が転動自在に配置されている。なお、図示の例では、転動体として玉を使用しているが、車輪支持用転がり軸受装置1の用途等に応じて、ころを使用してもよい。
また、ハブ輪2の第一内側軌道面20a,内輪3の第二内側軌道面20b,及び外輪4の第一,第二内側軌道面21a,21bには、転動体5から高面圧が繰り返し負荷されるため、十分な転がり疲労寿命と耐摩耗性とを兼ね備えるように、ハブ輪2の外周面のうち、円筒部11の外端に形成された段差部12の近傍から第一内側軌道面20aの近傍までの部分と、外輪4の内周面のうち、第一外側軌道面21aの近傍から第二外側軌道面21bの近傍までの部分とに、高周波焼入れによる硬化層22が形成されている。この硬化層22のビッカース硬さHvは650以上780以下であり、日本工業規格JIS G0551に規定の方法で測定された旧オーステナイト結晶粒度は粒度番号で6以上である。
ハブ輪2及び外輪4のうち硬化層22が形成されていない部分には焼入れは施されておらず、この非焼入れ部のビッカース硬さHvは180以上300以下とされている。また、フェライトの含有量が面積率で10%以上25%以下であり、日本工業規格JIS G0551に規定の方法で測定された旧オーステナイト結晶粒度が、粒度番号で6以上である。そして、内輪3には浸炭処理又は浸炭窒化処理と焼入れと焼戻しとが施され、第二内側軌道面20bには浸炭処理又は浸炭窒化処理による硬化層(図示せず)が形成されている。
このような車輪支持用転がり軸受装置1を自動車に組み付けるには、懸架装置取り付け用フランジ13を懸架装置に固定し、車輪を車輪取り付け用フランジ10に固定する。その結果、車輪支持用転がり軸受装置1によって車輪が懸架装置に対し回転自在に支持される。すなわち、内輪3とハブ輪2とが一体的に固定されたものが回転輪となり、外輪4が固定輪となる。
このような車輪支持用転がり軸受装置1は、ハブ輪2及び外輪4が優れた静的強度及び疲労強度を有しているので、フランジ10,13等に過大な荷重(モーメント荷重や衝撃荷重)が負荷されても変形が生じにくい。よって、肉厚を厚くしたり、製造工程を通常よりも増やすことにより、強度向上を図る必要がない。また、合金鋼の加工性が優れているため、フランジ10,13を有するハブ輪2及び外輪4を容易に加工することができる。よって、車輪支持用転がり軸受装置1は、製造が容易である。
以下に、前述のハブ輪2の製造方法の一例を、図2を参照しながら説明する。まず、前述の合金鋼製の圧延鋼板をA1変態点以上に加熱した後、A1変態点未満の温度に冷却して焼鈍しを施す。次に、この圧延鋼板を打ち抜いて得た円板状の素材(図2の(a)を参照)に、深絞りを施して椀型に成形した後(図2の(b)を参照)、底部に貫通孔を形成した(図2の(c)を参照)。そして、ハブ輪2の形状に成形した後(図2の(d)を参照)、ピアッシングによりフランジにボルト孔を設けた(図2の(e)を参照)。前述の合金鋼は良好な塑性加工性を有しているので、このような加工度の高い成形も容易である。また、冷間鍛造で成形することにより、従来の熱間鍛造による成形よりも格段に精度良く成形できるため、切削加工を省略することができる。よって、非焼入れ部の強度向上とともに、製造コストの低減が図られる。
得られたハブ輪2の軌道面を含む外周面に高周波焼入れ及び焼戻しを施して、硬化層22を形成した後、研削及び超仕上げ又は超仕上げのみを施して、ハブ輪2を完成した。
内輪3及び外輪4もハブ輪2と同様に製造して、これらを組み立てれば、車輪支持用転がり軸受装置1が得られる。
〔実施例〕
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。表1,2に示すような組成の合金鋼の冷間加工性を、限界圧縮率により評価した。また、非焼入れ部の物性を、旧オーステナイト結晶粒度,フェライトの含有量,硬さ,降伏強度,及び疲労強度により評価した。以下に、その評価方法について説明する。
Figure 2006200700
Figure 2006200700
合金鋼からなる棒材から切り出した素材を切削し、下記の条件で焼鈍しを施して、直径60mm,高さ90mmの円柱状の試験片を作製した。
焼鈍し条件:室温からA1変態点以上の温度(760〜820℃)に2〜4時間かけて昇温し、その温度で1〜4時間保持した後、A1変態点未満の温度(680〜720℃)に1〜4時間かけて冷却し、その温度で2〜10時間保持した。そして、660〜700℃へ2〜6時間、さらに480〜520℃へ5〜15時間かけて炉冷した後、室温まで空冷した。
限界圧縮率は、冷間鍛造時の圧力や割れ発生限界評価の指針の一つである据え込み試験における割れ発生限界歪により算出した。すなわち、前述の試験片に据え込み加工を施し、目視によりクラックの発生が確認された試験片の高さHfを測定した。そして、Hfと試験片の初期の高さH0(90mm)とから、{(H0−Hf)/H0}×100なる式により限界圧縮率を算出した。
また、非焼入れ部の硬さは、図1のような車輪支持用転がり軸受装置1のハブ輪(表1,2に示す合金鋼で構成されている)のフランジの平滑部を切り出し、樹脂に包理して、切断面をエメリー紙で仕上げ研磨した後、ビッカース硬度計を用いて測定した。また、硬さを測定した面と同一面をピクラール腐食液でエッチングした後、ミクロ組織観察及び画像処理を行うことによって、初析フェライトの含有量(面積率)及び旧オーステナイト結晶粒度を測定した。
さらに、非焼入れ部の降伏強度は、ハブ輪のフランジから切り出して作製したJIS 14A号試験片(直径8.5mm)を用いて測定した。また、非焼入れ部の疲労強度は、小野式回転曲げ疲労試験機を用いて測定した。試験条件は、回転速度3700min-1、回転数107 サイクルである。用いた試験片は、JIS Z2271に規定された1−8号試験片であり、ハブ輪のフランジから切り出して作製した。
各評価結果を表3,4に示す。表3,4から分かるように、各実施例は好適な合金成分により旧オーステナイト結晶粒や初析フェライトが微細化されているため、冷間加工性(限界圧縮率)と強度(降伏強度,疲労強度)とのバランスが優れていた。硬さと限界圧縮率との関係を図3のグラフに示し、硬さと疲労強度との関係を図4のグラフに示す。各グラフから分かるように、硬さが同一である場合には冷間加工性,疲労強度ともに実施例が比較例よりも優れていた。
Figure 2006200700
Figure 2006200700
また、表3,4から分かるように、硬さが同一である場合には、実施例は比較例よりも降伏強度が優れており、フェライトの含有量が好適な量であった。そして、冷間加工性(限界圧縮率)を著しく低下させることなく、降伏強度500MPa及び107 サイクル疲労強度400MPaを十分に達成することができるため、車輪支持用転がり軸受装置の冷間加工性及び軽量化に有利である。
次に、車輪支持用転がり軸受装置について回転試験を行い、その寿命を評価した。その際には、外輪の外周面に設けられた懸架装置取り付け用フランジを固定し、ハブ輪の外周面に設けられた車輪取り付け用フランジに荷重を負荷して、下記の条件で回転試験を行った。そして、ハブ輪及び外輪の振動を測定することによりフレーキングの発生を検知し、内輪の軌道面又は外輪の軌道面にフレーキングが生じるまでの総回転数により寿命を評価した。結果を表5,6に示す。また、硬化層の表面硬さHvと寿命との関係を図5のグラフに示し、硬化層の旧オーステナイト結晶粒度と寿命との関係を図6のグラフに示す。なお、表5,6及び図5,6に示した寿命の数値は、比較例23の寿命を1とした場合の相対値で示してある。
ラジアル荷重 :7000N
アキシアル荷重:5000N
回転速度 :300min-1
Figure 2006200700
Figure 2006200700
表5,6及び図5,6から分かるように、実施例の車輪支持用転がり軸受装置は、比較例の車輪支持用転がり軸受装置と比べて寿命が優れていた。
本発明に係る車輪支持用転がり軸受装置の一実施形態の構造を示す断面図である。 ハブ輪の製造方法を説明する図である。 非焼入れ部の硬さと限界圧縮率との関係を示すグラフである。 非焼入れ部の硬さと疲労強度との関係を示すグラフである。 硬化層の表面硬さHvと車輪支持用転がり軸受装置の寿命との関係を示すグラフである。 硬化層の旧オーステナイト結晶粒度と車輪支持用転がり軸受装置の寿命との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 車輪支持用転がり軸受装置
2 ハブ輪
3 内輪
4 外輪
5 転動体
10 車輪取り付け用フランジ
13 懸架装置取り付け用フランジ
20a 第一内側軌道面
20b 第二内側軌道面
21a 第一外側軌道面
21b 第二外側軌道面
22 硬化層

Claims (1)

  1. 外周面に軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内方部材及び前記外方部材の少なくとも一方に設けられ車輪又は懸架装置が取り付けられるフランジと、を備えるとともに、前記内方部材及び前記外方部材の一方が回転輪、他方が固定輪とされる車輪支持用転がり軸受装置において、前記内方部材及び前記外方部材の少なくとも一方が下記の4つの条件を満足することを特徴とする車輪支持用転がり軸受装置。
    条件1:炭素の含有量が0.45質量%以上0.6質量%以下、ケイ素の含有量が0.5質量%以上0.8質量%以下、マンガンの含有量が0.6質量%以上1質量%以下、バナジウムの含有量が0.03質量%以上1質量%以下である合金鋼で構成されている。 条件2:前記合金鋼のビッカース硬さHvと限界圧縮率X(%)とがX≧0.05×Hv+50なる式を満足する。
    条件3:プレス加工又は塑性加工で成形されたものである。
    条件4:前記軌道面に高周波焼入れによる硬化層が形成されている。
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