JP2004084069A - 無機酸化物コート金属粉及びその無機酸化物コート金属粉の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属粉の粉粒表面に無機酸化物層を備える無機酸化物コート金属粉であって、無機酸化物層は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等で構成されており、且つ、金属粉の粉粒の持つ結晶子径が50nm以上である無機酸化物コート金属粉等を用いる。そして、この無機酸化物コート金属粉の製造方法は、金属粉の粉粒の表面に、無機酸化物をメカノケミカル的な手法で固着させることで当該粉粒の表面に無機酸化物層を形成し、その後、熱処理することで金属粉の結晶子径を50nm以上に調整することを特徴としたものである。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本件出願に係る発明は、無機酸化物コート金属粉及びその無機酸化物コート金属粉の製造方法に関する。なお、特にセラミック材料用途に好適な無機酸化物コート金属粉の提供を目的とする。
【0002】
【従来の技術】
従来から銅粉及び銀粉は、銅ペースト及び銀ペーストの原料、低温焼成セラミック基板の原料として広く用いられる。前者の金属ペーストは、その取り扱いの容易さ故に、実験目的の使用から、電子産業用途に到るまで広範な領域において、簡便に導体回路を形成するために使用されてきた。例えば、電子顕微鏡の試料調整用、プリント配線板の導体回路の引き回し、多層プリント配線板の層間導通を得るためのスルーホールの代替えとしての層間導通導体の形成、セラミックコンデンサの電極形成等である。そして、種々の用途の中でも特に、低温焼成セラミック基板に用いる場合には、グリーンシートに加工して、焼結したときの寸法安定性は重要な問題である。
【0003】
このような低温焼成セラミック用途の金属粉の製造は、大別して乾式製造法と湿式製造法とに分類して捉えることができる。後者の湿式製造法とは、目的とする金属元素を含む溶液中から金属粉を直接析出させることにより製造する方法であると考えるのが妥当である。従って、前者の乾式製造法には、完全にメカニカルな手法のみを用いる粉砕法はもちろん、溶融金属を用いるアトマイズ法を含むものとなる。
【0004】
これらの手法で得られる金属粉の特徴としては、前者の乾式製造法で得られる金属粉は、その結晶子径が40〜50nmであり比較的大きく、金属粉を低温焼成セラミック基板の焼成を行う場合の耐酸化性及び耐収縮性に優れるという長所を有している。これに対し、湿式製造法で製造した金属粉は、その結晶子径が一般的に35nm以下であり乾式製造法で得られる金属粉と比較して小さく、低温焼成セラミック基板の焼成時の耐酸化性及び耐収縮性に劣るという短所を有している。耐収縮性は、金属粉の結晶子の大きさにより左右されると言われる。即ち、結晶子径が大きいほど、高温加熱されたときの収縮性が小さく、耐収縮性に優れるものとなる。
【0005】
本件明細書でいう金属粉は、金属粉含有スラリーの製造に用いられ、低温焼成セラミックのグリーンシートに加工し、焼成することで低温焼成セラミックとする用途に主に用いられる。従って、酸化が容易で耐酸化性に劣る金属粉は低温焼成セラミックの品質を大きく変質させるものとなる。更に、結晶子径が小さな場合は、収縮率が大きく、耐収縮性に劣る金属粉となり、焼成して金属粉含有スラリーのバインダを除去する際に、収縮挙動が大きくなり低温焼成セラミックの寸法精度を良好に維持することが困難となる。これらのことを考える限り、乾式製造法で製造した金属粉を用いることが望ましいように思われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、乾式製造法で得られる粉体の特性として、粒度分布がブロードであり、精度の高い微粉の製造が困難という欠点が存在する。近年の、低温焼成セラミックの表面の仕上げ精度に対する要求は益々厳しくなっており、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50の値が10μm以下で、狭い粒度分布を持つ金属粉で、分散性に優れた金属粉に対する要求が顕著になってきているのである。
【0007】
しかも、そのような微細な金属粉であっても、低温焼成セラミックの焼成時の耐酸化性、焼成時の収縮挙動の小さな耐収縮性に優れた粉体であることが市場に於いて望まれてきたのである。この要求を満たそうとすると、湿式製造法で得られた微細な粒径とシャープな粒度分布を持つ金属粉を用いて、これらの要求を満たすことが望ましい。
【0008】
そして、耐収縮性を改善するため、湿式法で得られた金属粉の結晶子径を大きくしようとする場合には、当該金属粉を加熱して、粉粒の内部のグレインサイズを成長させればよい。従って、湿式法で得られた金属粉を、単に加熱すればよいと考えられる。
【0009】
ところが、通常の金属粉の状態で、単に加熱を行うだけでは、当該金属粉の表面は酸化してしまい、表面に酸化物被膜を形成し著しく凝集状態が進行することになり、粉体の分散性が著しく損なわれるものとなる。このような粉体を低温焼成セラミックの製造に用いると、得られる低温焼成セラミックの表面状態が荒れる結果となるのである。従って、通常の銅粉を単に加熱するのみでは、粉粒の分散性の確保と同時に、優れた耐酸化性及び耐収縮性を兼ね備え、粒度分布がシャープで粒径の小さな金属粉の提供を行うことが困難であった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、鋭意研究の結果、本件発明者等は、湿式製造法で得られた金属粉を無機酸化物層で予め被覆することで、結晶子径を大きくした金属粉を得ることが可能であることに想到したのである。以下に、本件発明を説明する。
【0011】
請求項には、「金属粉の粉粒表面に無機酸化物層を備える無機酸化物コート金属粉であって、無機酸化物層は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛のいずれかで構成されており、且つ、金属粉の粉粒の持つ結晶子径が50nm以上であることを特徴とする無機酸化物コート金属粉。」としている。即ち、結晶子径が50nm以上の金属粉の粉粒の表面に無機酸化物層を備える構成とするのである。結晶子径を、従来の湿式製造法で得られた金属粉の結晶子径よりも大きくすることで、耐収縮性を改善することが可能となるのである。
【0012】
この段階での金属粉は、低温焼成セラミックに用いることの出来る金属材であれば、特にその材質は限定を受けるものではない。ところが、近年の低温焼成セラミックの製造に用いる金属粉に求められる粉体特性を考慮すれば、湿式製造法で得られた銅粉及び銀粉のいずれかを使用することが好ましい。
【0013】
そして、無機酸化物層には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛のいずれかを用いるものである。中でも酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれかを用いることが好ましいのである。また、酸化亜鉛は、芯材に銀粉を用いる場合に特に好ましいものである。酸化ケイ素並びに酸化アルミニウム並びに酸化マグネシウムは、金属粉の粉粒の表面に均一に固着させやすいのである。しかも同時に、低温焼成セラミックの焼成温度が、一般的に900℃以上であることを考えれば、最も有効に芯材である金属粉の凝集を防止するためのバリア層として機能するからである。
【0014】
しかしながら、この無機酸化物層の厚さを物理的にゲージ厚さとして示すことは、微細な粉粒の集合体である金属粉という性格上困難である。従って、本件発明者等は、無機酸化物層の厚さを、換算質量厚さとして表すこととした。換算質量厚さとは、無機酸化物コート金属粉重量の中の無機酸化物層の占める割合として質量%で表示するものである。そして、厳密に考えれば、換算質量厚さを適用して考える場合には、金属粉の持つ粒径を考慮することが必要になる。金属粉の重量が一定として、粒径が小さい金属粉と粒径が大きな金属粉とが存在していれば、前者の比表面積の方が大きく、同量の無機酸化物で粉粒の表面被覆を行えば、前者の金属粉の無機酸化物層の方が薄くなるからである。
【0015】
そこで、本件発明者等は、現在の低温焼成セラミックに於いて求められる金属粉の粒径を考慮し、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50の値が0.1μm〜10μmである金属粉を対象にした場合の無機酸化物層の厚さ(換算質量厚さ)は、無機酸化物コート金属粉の無機酸化物被覆量が0.1質量%〜10質量%であることを明らかにしている。
【0016】
被覆量が0.1質量%未満の場合には、低温焼成セラミックの焼成時の加熱による粉粒の凝集進行の防止バリア層としての役割を果たさない。これに対して、10質量%を超える厚さの場合には、得られる無機酸化物コート金属粉の分散性が悪くなるのである。このような厚さの均一な無機酸化物層を作り込むことによって、本件発明に係る無機酸化物コート金属粉は、その粉体自体では、導電性を有しないものとなる。更に、製造上のバラツキを無くして安定した非導電性を確保し、得られる耐収縮性を安定化させるためには、1質量%〜10質量%を採用することが、より好ましいのである。以上に述べたような、無機酸化物のコート量を採用することで、初めて十分な熱処理が行えることで、結晶子径の調整が可能となるのである。
【0017】
以上に述べてきた無機酸化物コート金属粉の製造は、以下のような方法で行われる。本件発明に係る導体回路形成用の無機酸化物コート金属粉の製造方法は、金属粉の粉粒の表面に、無機酸化物をメカノケミカル的な手法で固着させることで当該粉粒の表面に無機酸化物層を形成し、熱処理することで金属粉の結晶子径を50nm以上に調整することを特徴とするものである。即ち、金属粉の表面を無機酸化物層で被覆することで、熱処理温度を高く設定することが可能となるのである。その結果、結晶子径を、乾式製造方法で得られた金属粉の持つ結晶子径と同等若しくはそれ以上の大きさとすることができるのである。
【0018】
この製造方法に於いて、「金属粉の粉粒の表面に、無機酸化物をメカノケミカル的な手法で固着させる」とは、金属粉とその表面に固着させる無機酸化物の粉体とを、攪拌混合したり、ボールミル方式のメディアを用いる等して、金属粉の粉粒表面に無機酸化物を固着させるのであり、金属粉の粉粒と無機酸化物粉体の粉粒とを混合衝突させることのできる装置であれば足りるのであり、特殊な設備を必要とするものではない。このときに用いる無機酸化物粉体としては、粉体の持つ比表面積が50m2/g以上のものを用いることが好ましい。この比表面積は、主に無機酸化物粉体の粉粒の径により左右されるものであり、比表面積が大きくなれば、粉粒の径も小さくなるものと言える。
【0019】
そして、熱処理は、以下のようなコンディションの下で行われる。厳密に言えば、金属粉の種類に応じてコンディションを変更して行われる。この熱処理は、いわゆる再結晶化を促し、結晶子径を大きくするためのものである。しかしながら、この熱処理は、無機酸化物コート金属粉の品質を変質させないよう、金属粉の表面自体の凝集を促進するものであってはならない。
【0020】
これらのことを考慮して、金属粉に銅粉を用いる場合に於いては、熱処理は500℃〜1000℃の還元雰囲気若しくは不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましい。500℃未満の温度での加熱では、湿式製造法で得られた銅粉の結晶を再結晶化させることが困難となる。これに対して、1000℃を越える温度での加熱を行うと、無機酸化物層が存在しても、芯材である銅粉の凝集が進行すると共に、銅粉自体が軟化して粉粒形状が悪化する事となるのである。そして、銅自体は非常に酸化しやすい傾向にあるため、加熱雰囲気は還元雰囲気若しくは不活性ガス雰囲気を採用することが好ましいのである。
【0021】
また、金属粉に銀粉を用いる場合に於いては、熱処理は350℃〜900℃の温度で、大気雰囲気、還元雰囲気若しくは不活性ガス雰囲気のいずれかの雰囲気中で行うことが望ましい。この加熱処理は、結晶子径を調整することと、銀粉内に含まれ、加熱膨張の原因になる有機不純物を気化させ脱ガス処理することを目的として行うものである。従って、350℃未満の温度での加熱では、不純物の脱ガス処理が良好に行えず、湿式製造法で得られた銀粉の結晶を再結晶化させることが困難となる。これに対して、900℃を越える温度での加熱を行うと、無機酸化物層が存在しても、芯材である銀粉の表面までも酸化の進行が著しくなると共に、銀粉自体が軟化して粉粒形状が悪化する事となるのである。そして、銀の場合には銅と比較して酸化しにくいため、加熱雰囲気には大気雰囲気を用いることが可能であり、当然に還元雰囲気若しくは不活性ガス雰囲気を採用することも品質の安全性を考えれば好ましいのである。
【0022】
このような製造方法を採用することで、無機酸化物コート金属粉の凝集の進行を防止して、「レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50と粒度分布の標準偏差SDとの関係式SD/D50×100で表される工程変動指数CV値」を悪化させないようにできるのである。なお、「標準偏差SD」とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて測定した結果として得られる粉体の粒度分布のから得られる標準偏差のことであり、このCV値の値が小さいほど、粉粒の粒径が揃っており、分散性に優れ、大きなバラツキをもっていないことを意味している。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態を通じて、比較例と対比しつつ、本件発明に関し、より詳細に説明する。
【0024】
第1実施形態: 最初に芯材として用いた銅粉の製造方法を説明する。硫酸銅(五水塩)4kg及びアミノ酢酸120gを水に溶解させて、液温60℃の8L(リットル)の銅塩水溶液を作製した。そして、この水溶液を撹拌しながら、5.75kg(1.15当量)の25wt%水酸化ナトリウム溶液を約30分間かけて定量的に添加し、液温60℃で60分間の撹拌を行い、液色が完全に黒色になるまで熟成させて酸化第二銅を生成した。その後30分間放置し、グルコース1.5kg添加して、1時間熟成することで酸化第二銅を酸化第一銅に還元した。さらに、水和ヒドラジン1kgを5分間かけて定量的に添加して酸化第一銅を還元することで金属銅にして、銅粉スラリーを生成した。
【0025】
そして、得られた銅粉スラリーを濾過し、純水で十分に洗浄し、再度濾過した後、乾燥して銅粉を得た。この銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は0.93μmであり、工程変動指数CV値は0.22であり、結晶子径は32.2nmであった。そして、熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が13.0%であった。
【0026】
なお、本件明細書における結晶子径の測定は、RIGAKU社製 RINT200Vを用い結晶子解析ソフトを用いて平均結晶子径を求めたものであり、本件明細書における結晶子径とは、この平均結晶子径のことである。そして、収縮率の測定は、測定に用いる20gの粉体を、95wt%のターピネオールCと、5wt%のエチルセルロースの組成の溶液20gに入れ、三本ロールで混練後、80℃の温度で1時間乾燥し、再度粉体の状態にした。そして、得られた粉体を熱機械分析装置(セイコー電子工業社製TMA/SS6000)を用いて所定の雰囲気中で、昇温速度10℃/分で加熱しつつ熱膨張率を連続して測定し、雰囲気温度が900℃のときの熱収縮率を測定したのである。
【0027】
そして、この銅粉1kgと無機酸化物である酸化ケイ素粉0.05kgとを、ハイブリタイザーを用いて、回転数6000rpmで、5分間のメカノケミカルな固着処理を行い、酸化ケイ素コート銅粉を製造した。この段階の酸化ケイ素コート銅粉の表面に被覆された酸化ケイ素の被覆量は、5質量%であった。この加熱前の酸化ケイ素コート銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は0.94μmであり、工程変動指数CV値は0.25であり、結晶子径は28.2nmであった。そして、熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が6.3%であった。即ち、銅粉がメカノケミカルな加工を受けることで、本来の湿式製造法で得られた銅粉に比べ、結晶子径は小さくなるが、酸化物被覆層が存在している事から、熱膨張時の収縮率も小さくなるが、市場で要求されている範囲内に収まる収縮率までは及ばないものであった。
【0028】
そこで、以上のようにして得られた酸化ケイ素コート銅粉を、水素濃度1wt%の窒素ガス雰囲気中で、500℃、700℃、900℃の各温度で1時間の加熱を行い結晶子径を調整した3種類の酸化ケイ素コート銅粉を得た。この結果、▲1▼500℃の温度を採用した場合の、加熱後の酸化ケイ素コート銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は0.92μmであり、結晶子径は52.6nm、工程変動指数CV値は、0.24であり、▲2▼700℃の温度を採用した場合の、加熱後の酸化ケイ素コート銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は0.93μmであり、結晶子径は58.4nm、工程変動指数CV値は、0.25であり、▲3▼900℃の温度を採用した場合の、加熱後の酸化ケイ素コート銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は0.94μmであり、結晶子径は66.8nm、工程変動指数CV値は、0.24であった。
【0029】
この結果から、結晶子径は、500℃及び700℃の温度を採用した場合に乾式製造法で得られる銅粉と同等の結晶子径が得られ、900℃の温度で加熱した場合には乾式製造法で得られる銅粉以上の大きさの結晶子径が得られている事が分かるのである。また、いずれの温度で加熱しても、無機酸化物層を形成する前の銅粉のCV値から見て大きく悪化していないことが分かる。
【0030】
更に、3種類の酸化ケイ素コート銅粉を用いて、上述したと同様の方法で熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率は、▲1▼500℃の加熱温度を採用した場合の、加熱後の酸化ケイ素コート銅粉の収縮率が2.5%、▲2▼700℃の加熱温度を採用した場合の、加熱後の酸化ケイ素コート銅粉の収縮率が2.0%、▲3▼900℃の加熱温度を採用した場合の、加熱後の酸化ケイ素コート銅粉の収縮率が1.2%であり、全てが理想的といわれる3%以内の収縮率に収まっていた。
【0031】
第2実施形態: この実施形態で用いた銅粉は、第1実施形態で用いたと同じ製造方法で得られたものを用いたため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。即ち、レーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50が0.93μm、工程変動指数CV値は0.22、結晶子径は32.2nm、900℃での収縮率が13.0%の銅粉を芯材として用いたのである。
【0032】
そして、この銅粉1kgと無機酸化物である酸化アルミニウム粉0.03kgとを、ハイブリタイザーを用いて、回転数6000rpmで、5分間のメカノケミカルな固着処理を行い、酸化アルミニウムコート銅粉を製造した。この段階の酸化アルミニウムコート銅粉の表面に被覆された酸化アルミニウムの被覆量は、3質量%であった。この加熱前の酸化アルミニウムコート銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は0.92μmであり、工程変動指数CV値は0.25であり、結晶子径は27.8nmであった。そして、熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が4.2%であった。即ち、銅粉がメカノケミカルな加工を受けることで、本来の湿式製造法で得られた銅粉に比べ、結晶子径は小さくなるが、酸化物被覆層が存在している事から、熱膨張時の収縮率も小さくなるが、市場で要求されている範囲内に収まる収縮率までは及ばないものであった。
【0033】
そこで、以上のようにして得られた酸化アルミニウムコート銅粉を、水素濃度1wt%の還元雰囲気中で、900℃の温度で1時間の加熱を行い結晶子径を調整した。この結果、加熱後の酸化アルミニウムコート銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は0.93μmであり、結晶子径は68.0nm、工程変動指数CV値は、0.26であった。この結晶子径は、乾式製造法で得られる銅粉以上の大きさの結晶子径が得られている事が分かるのである。更に、上述の酸化アルミニウムコート銅粉を用いて、上述したと同様の方法で熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が0.6%であり、3%以内の収縮率に収まっていた。
【0034】
第3実施形態: この実施形態で用いた銅粉は、第1実施形態で用いたと同じ製造方法で得られたものを用いたため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。即ち、レーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50が0.93μm、工程変動指数CV値は0.22、結晶子径は32.2nm、900℃での収縮率が13.0%の銅粉を芯材として用いたのである。
【0035】
そして、この銅粉1kgと無機酸化物である酸化マグネシウム粉0.03kgとを、ハイブリタイザーを用いて、回転数6000rpmで、5分間のメカノケミカルな固着処理を行い、酸化マグネシウムコート銅粉を製造した。この段階の酸化マグネシウムコート銅粉の表面に被覆された酸化マグネシウムの被覆量は、3質量%であった。この加熱前の酸化マグネシウムコート銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は0.92μmであり、工程変動指数CV値は0.28であり、結晶子径は28.2nmであった。そして、熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が5.8%であった。即ち、銅粉がメカノケミカルな加工を受けることで、本来の湿式製造法で得られた銅粉に比べ、結晶子径は小さくなるが、酸化物被覆層が存在している事から、熱膨張時の収縮率も小さくなるが、市場で要求されている範囲内に収まる収縮率までは及ばないものであった。
【0036】
そこで、以上のようにして得られた酸化マグネシウムコート銅粉を、水素濃度1wt%の還元雰囲気中で、900℃の温度で1時間の加熱を行い結晶子径を調整した。この結果、加熱後の酸化マグネシウムコート銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は0.93μmであり、結晶子径は60.6nm、工程変動指数CV値は、0.26であった。この結晶子径は、乾式製造法で得られる銅粉以上の大きさの結晶子径が得られている事が分かるのである。更に、上述の酸化アルミニウムコート銅粉を用いて、上述したと同様の方法で熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が1.1%であり、3%以内の収縮率に収まっていた。
【0037】
第4実施形態: 最初に芯材として用いた銀粉の製造方法を説明する。ここでは、反応容器内でイオン交換水360mlに硝酸銀300gを添加し、完全に溶解させた後、25wt%濃度のアンモニア水300mlを添加し、攪拌してアンミン銀錯体水溶液を調整し、17℃に温調した。そして、そのアンミン銀錯体水溶液を約3秒間で添加し、約3分間攪拌することにより銀粒子の還元析出を完了させた。その後、銀粒子を濾別採取し、純水で十分に洗浄し、乾燥して銀粉を得た。
【0038】
この銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は1.51μmであり、工程変動指数CV値は0.34であり、結晶子径は7.7nmであった。そして、熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が16.0%であった。なお、熱膨張係数の測定は、第1実施形態に記載したと同様の方法で行った。
【0039】
そして、この銀粉1kgと無機酸化物である酸化ケイ素粉0.05kgとを、ハイブリタイザーを用いて、回転数6000rpmで、5分間のメカノケミカルな固着処理を行い、酸化ケイ素コート銀粉を製造した。この段階の酸化ケイ素コート銀粉の表面に被覆された酸化ケイ素の被覆量は、5質量%であった。この加熱前の酸化ケイ素コート銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は1.30μmであり、工程変動指数CV値は0.27であり、結晶子径は6.8nmであった。そして、熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が7.0%であった。即ち、銀粉がメカノケミカルな加工を受けることで、本来の湿式製造法で得られた銀粉に比べ、結晶子径は小さくなるが、酸化物被覆層が存在している事から、熱膨張時の収縮率も小さくなるが、市場で要求されている範囲内に収まる収縮率までは及ばないものであった。
【0040】
そこで、以上のようにして得られた酸化ケイ素コート銀粉を、大気雰囲気中で、450℃の温度で1時間の加熱を行い結晶子径を調整した酸化ケイ素コート銀粉を得た。この結果、加熱後の酸化ケイ素コート銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は1.32μmであり、結晶子径は60.0nm、工程変動指数CV値は、0.33であった。
【0041】
この結果から、結晶子径は、乾式製造法で得られる銀粉(乾式製造法で得られる銀粉の結晶子径は、一般的に30〜40nm)以上の大きさの結晶子径が得られている事が分かるのである。また、加熱後に於いても、無機酸化物層を形成する前の銀粉のCV値から見て大きく悪化していないことが分かる。
【0042】
更に、加熱後の酸化ケイ素コート銀粉を用いて、上述したと同様の方法で熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が2.1%であり、理想的といわれる5%以内の収縮率に収まっていた。
【0043】
第5実施形態: この実施形態で用いた銀粉は、第4実施形態で用いたと同じ製造方法で得られたものを用いたため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。即ち、レーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50が1.51μm、工程変動指数CV値は0.34、結晶子径は7.7nm、900℃での収縮率が16.0%の銀粉を芯材として用いたのである。
【0044】
そして、この銀粉1kgと無機酸化物である酸化アルミニウム粉0.05kgとを、ハイブリタイザーを用いて、回転数6000rpmで、5分間のメカノケミカルな固着処理を行い、酸化アルミニウムコート銀粉を製造した。この段階の酸化アルミニウムコート銀粉の表面に被覆された酸化アルミニウムの被覆量は、5質量%であった。この加熱前の酸化アルミニウムコート銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は1.33μmであり、工程変動指数CV値は0.27であり、結晶子径は6.3nmであった。そして、熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が6.5%であった。即ち、銀粉がメカノケミカルな加工を受けることで、本来の湿式製造法で得られた銀粉に比べ、結晶子径は小さくなるが、酸化物被覆層が存在している事から、熱膨張時の収縮率も小さくなるが、市場で要求されている範囲内に収まる収縮率までは及ばないものであった。
【0045】
そこで、以上のようにして得られた酸化アルミニウムコート銀粉を、大気雰囲気中で、450℃の温度で1時間の加熱を行い結晶子径を調整した。この結果、加熱後の酸化アルミニウムコート銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は1.31μmであり、結晶子径は68.0nm、工程変動指数CV値は、0.32であった。この結晶子径は、乾式製造法で得られる銀粉以上の大きさの結晶子径が得られている事が分かるのである。また、加熱後においても、加熱前の無機酸化物層を形成した後の銀粉のCV値から見て、むしろ良好な値となっていることが分かるのである。更に、上述の酸化アルミニウムコート銀粉を用いて、上述したと同様の方法で熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が1.8%であり、5%以内の収縮率に収まっていた。
【0046】
第6実施形態: この実施形態で用いた銀粉は、第4実施形態で用いたと同じ製造方法で得られたものを用いたため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。即ち、レーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50が1.51μm、工程変動指数CV値は0.34、結晶子径は7.7nm、900℃での収縮率が16.0%の銀粉を芯材として用いたのである。
【0047】
そして、この銀粉1kgと無機酸化物である酸化マグネシウム粉0.05kgとを、ハイブリタイザーを用いて、回転数6000rpmで、5分間のメカノケミカルな固着処理を行い、酸化マグネシウムコート銀粉を製造した。この段階の酸化マグネシウムコート銀粉の表面に被覆された酸化マグネシウムの被覆量は、5質量%であった。この加熱前の酸化マグネシウムコート銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は1.21μmであり、工程変動指数CV値は0.28であり、結晶子径は6.5nmであった。そして、熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が7.1%であった。即ち、銀粉がメカノケミカルな加工を受けることで、本来の湿式製造法で得られた銀粉に比べ、結晶子径は小さくなるが、酸化物被覆層が存在している事から、熱膨張時の収縮率も小さくなるが、市場で要求されている範囲内に収まる収縮率までは及ばないものであった。
【0048】
そこで、以上のようにして得られた酸化マグネシウムコート銀粉を、大気雰囲気中で、450℃の温度で1時間の加熱を行い結晶子径を調整した。この結果、加熱後の酸化マグネシウムコート銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は1.23μmであり、結晶子径は60.6nm、工程変動指数CV値は、0.33であった。この結晶子径は、乾式製造法で得られる銀粉以上の大きさの結晶子径が得られている事が分かるのである。また、加熱後においても、加熱前の無機酸化物層を形成した後の銀粉のCV値から見て、むしろ良好な値となっていることが分かるのである。更に、上述の酸化マグネシウムコート銀粉を用いて、上述したと同様の方法で熱膨張係数の測定を行った結果、900℃での収縮率が2.0%であり、5%以内の収縮率に収まっていた。
【0049】
【発明の効果】
本件発明に係る無機酸化物コート金属粉は、湿式製造法で得られた金属粉の長所である均一微細性、優れた分散性を維持したまま、大きな結晶子径を備えることから高温加熱を受けたときの耐収縮性に優れた品質を備えている。この無機酸化物コート金属粉を用いることで、低温焼成セラミック等の金属粉を含む焼結体の寸法安定性を向上させることが可能であり、製品歩留まりを飛躍的に向上させることが可能となる。また、無機酸化物コート金属粉は、芯材に銅粉、銀粉等を用い、その表層に無機酸化物層を備える構成を持つことで、芯材の金属粉の凝集を進行させることなく、高温加熱が可能であるため芯材の金属粉の結晶子径の調整を行いやすく、上述した独特の製造方法を採用することが可能となるのである。
Claims (6)
- 金属粉の粉粒表面に無機酸化物層を備える無機酸化物コート金属粉であって、
無機酸化物層は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛のいずれかで構成されており、且つ、金属粉の粉粒の持つ結晶子径が50nm以上であることを特徴とする無機酸化物コート金属粉。 - 金属粉は、銅粉若しくは銀粉である請求項1に記載の無機酸化物コート金属粉。
- レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50の値が0.1μm〜10μmの金属粉を用いる場合に於いて、無機酸化物層の厚さ(換算質量厚さ)は、無機酸化物コート金属粉重量の0.1質量%〜10質量%である請求項1又は請求項2に記載の無機酸化物コート金属粉。
- 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の無機酸化物コート金属粉の製造方法であって、
金属粉の粉粒の表面に、無機酸化物をメカノケミカル的な手法で固着させることで当該粉粒の表面に無機酸化物層を形成し、
その後、熱処理することで金属粉の結晶子径を50nm以上に調整することを特徴とした無機酸化物コート金属粉の製造方法。 - 金属粉に銅粉を用いる場合に於いて、熱処理は500℃〜1000℃の還元雰囲気若しくは不活性ガス雰囲気中で行うものである請求項4に記載の無機酸化物コート金属粉の製造方法。
- 金属粉に銀粉を用いる場合に於いて、熱処理は350℃〜900℃の温度で、大気雰囲気、還元雰囲気若しくは不活性ガス雰囲気のいずれかの雰囲気中で行うものである請求項4に記載の無機酸化物コート金属粉の製造方法。
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