JP2004043352A - 環状脂肪族オキシムを製造する方法 - Google Patents
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Abstract
【効果】本発明により、触媒の失活を抑制しながらも高い選択率で環状脂肪族オキシムを製造することができる。また、酸化剤として過酸化物を用いた場合のような取扱い上の危険性を回避でき、比較的簡単な操作で環状脂肪族オキシムを工業的に製造することが可能である。
【選択図】 選択図なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状脂肪族第一級アミンを分子状酸素を用いて酸化させて、環状脂肪族オキシムを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環状脂肪族オキシムは、酸化防止剤等として有用な化合物であり、医薬、農薬等、有機工業化学の分野において原料として利用されている。環状脂肪族オキシムは環状脂肪族第一級アミンの酸化によって得られ、例えば、環状脂肪族第一級アミンがシクロヘキシルアミンである時には、対応する環状脂肪族オキシムとしてシクロヘキサノンオキシムが得られる。シクロヘキサノンオキシムは、ナイロン−6の原料であるε−カプロラクタムの中間体として有用な化合物である。
【0003】
脂環式又は脂肪族の第一級アミンを酸化してオキシムを製造する方法としては、脂環式又は脂肪族の第一級アミンを、モリブデン、タングステン又はウランを活性金属種として含有する無機塩触媒の存在下で過酸化水素と反応させる方法、脂環式又は脂肪族の第一級アミンを有機溶媒中でチタン、モリブデン、タングステン又はバナジウムを含有する触媒の存在下にて有機ヒドロペルオキシドと反応させる方法が知られている。
【0004】
しかしながら、過酸化水素や有機ヒドロペルオキシドを酸化剤として用いるこれらの方法を工業的に実施する際には、既知の操作により酸化剤を取扱うが、この操作には危険性が伴う。また、有機ヒドロペルオキシドを用いる場合には、ヒドロペルオキシドの還元に由来する副生成物が反応液に含まれる為、目的とするオキシムの分離及び精製が煩雑になる等の問題があった。
上記の問題を解決する為に、空気又は酸素等の分子状酸素を酸化剤として用いる次の方法(1)〜(6)が提案されている。
【0005】
(1)モリブデン、タングステン及び/又はウランの水溶性塩類を触媒として用い、水の存在下で水銀ランプを用いて第一級アミンを光酸化させる方法(ドイツ特許第1021358号明細書)。
(2)第三級アルコールの存在下に、加圧条件下において、好ましくはアンモニアガスを存在させ、タングステン酸、リンタングステン酸、モリブデン酸、セレン酸、亜セレン酸等の触媒を用いて第一級アミンを酸化させる方法(特公昭47−25324号公報)。
(3)周期律表の4族に属する金属を含有する均一系又は不均一系触媒及び分子状酸素の存在下、加圧条件下において、液相中で第一級アミンを酸化させる方法(欧州特許第395046号明細書)。
【0006】
(4)限定された比表面積を有するシリカゲル固体触媒の存在下、気相にて第一級アミンを酸化させる方法(米国特許第4337358号明細書)。
(5)ゾルゲル法調製アルミナ、フッ素化アルミナ又はγ−アルミナと共に酸化タングステンを含有する固体触媒の存在下、気相にて第一級アミンを酸化させる方法(米国特許第4504681号明細書、同第4560797号明細書、同第4624939号明細書及びJOURNAL OF CATALYSIS 83、487−490(1983))。
(6)γ−アルミナ、シリカ又はハイドロタルサイトと共に酸化タングステンを含有する固体触媒の存在下、気相にて第一級アミンを酸化させる方法(JOURNAL OF MOLECULAR CATALYSIS A ;CHEMICAL 160、393−402(2000)及び、PETROLEUM AND COAL 41、177−180(1999))。
【0007】
上記の方法のうち、方法(1)を実施するためには光が必要であり、その為の電力が多量に必要である上に、水銀ランプ等の維持管理が煩雑である。また方法(1)及び(2)においては、通常は、均一系触媒を用いる為、反応後の触媒成分の分離回収工程が煩雑になるという問題点がある。
方法(3)には、反応後の触媒成分の分離回収が容易となる不均一系触媒の存在下、加圧条件下において、液相中で第一級アミンを反応させる方法が開示されており、例えば、酸化チタン等を不均一系触媒として用いた反応が例示されている。しかし、生成するオキシムの選択率は低く、約30〜50%である。
【0008】
方法(4)、(5)及び(6)は、気相において、固体触媒を用いる不均一系反応であり、反応後の触媒成分の分離回収は容易である。しかし、方法(4)のシリカゲル触媒を用いる方法は、生成するオキシムの選択率は低く、約60%である。
方法(5)及び(6)には、好適な触媒として酸化タングステンを含有するアルミナ触媒(以下、「WA触媒」、という)を用いる反応が例示されている。方法(5)には、「WA触媒」の調製法として、タングステン化合物を溶解した水溶液中に結晶性酸化物であるγ−アルミナを分散させ、蒸発乾固法による含漬後、焼成することによって酸化タングステンをアルミナに担持させる方法、及びアルミニウムアルコキシドに所定量のタングステン含有水溶液を添加し加水分解するゾルゲル調製法が記載されている。方法(6)には、「WA触媒」の調製法として、酸化タングステンと結晶性酸化物であるγ―アルミナを水中で分散混合させ、蒸発乾固法によって酸化タングステンとアルミナの混合触媒を得る方法が記載されている。
【0009】
方法(5)及び(6)に開示されている「WA触媒」を用いる方法は、生成するオキシムの選択率は約70%程度であり、方法(4)より高い選択率を示しているが、本発明者等の検討によれば、反応温度160℃以上の気相の操作条件においては、反応開始後、短時間において反応活性が低下し、触媒が容易に失活するという問題点を有していることがわかった。
上記から明らかなように、従来技術には以下のような問題があった。酸化剤として過酸化物を使用するオキシムの製造方法には過酸化物の使用に由来する危険性及び操作の煩雑性を伴う。また、分子状酸素を酸化剤として用いる方法は、触媒成分の分離回収が煩雑である、オキシムの選択率が低い、触媒が容易に失活する等の問題を有している。したがって、触媒の失活を抑制しながらも高いオキシム選択率を達成し、かつ、反応液と触媒成分の分離が容易な固体触媒を用いる製造方法の開発が望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、環状脂肪族第一級アミンを酸化して環状脂肪族オキシムを製造する際に、酸化剤として過酸化物を使用することに伴う危険性及び操作の煩雑性を解消すること、及び分子状酸素を用いる方法において、触媒の失活を抑制しながらも高いオキシム選択率を達成し、かつ、反応液と触媒成分の分離が容易な固体触媒を用いる環状脂肪族オキシムの製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、環状脂肪族第一級アミンと分子状酸素を固体触媒の存在下に反応させて環状脂肪族オキシムを製造する際に、特定構造の水酸化アルミニウムと水溶性タングステン化合物を原料として調製される固体触媒を用いることにより、触媒の失活を抑制しながらも環状脂肪族オキシムを高選択率にて製造できることを見い出した。
すなわち、本発明は、環状脂肪族第一級アミンを、結晶性水酸化アルミニウムと水溶性タングステン化合物を用いて調製された酸化タングステン含有アルミナ固体触媒の存在下で、分子状酸素を用いて酸化させることを特徴とする環状脂肪族オキシムの製造方法である。
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる環状脂肪族第一級アミンには限定はないが、飽和の環状脂肪族第一級アミンが好ましい。具体的には、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロドデカニルアミン等を用いることができる。シクロヘキシルアミンからはシクロヘキサノンオキシム、シクロオクチルアミンからはシクロオクタノンオキシム、シクロペンチルアミンからはシクロペンタノンオキシム、シクロヘプチルアミンからはシクロヘプタノンオキシム、シクロドデカニルアミンからはシクロドデカノンオキシムを製造することができる
脂肪族環が反応条件下において不活性な置換基(例えば、アルキル基)で置換された環状脂肪族第一級アミン(例えば、メチルシクロヘキシルアミン)を用いることもできる。
【0013】
環状脂肪族第一級アミンとしては、シクロヘキシルアミンが最も好ましい。シクロヘキシルアミンの製造方法には限定はないが、例えば、シクロヘキセンとNH3による直接アミノ化反応によってシクロヘキシルアミンを製造する方法(特開昭57−4948号公報、特開昭64−75453号公報、特開平9−194438号公報、特開平10−72409号公報、特開平10−291968号公報等);シクロヘキサノールとNH3によるアミノ化反応によってシクロヘキシルアミンを製造する方法(特公昭41−7575号公報、特公昭51−41627号公報、特公昭51−32601号公報、特開平6−1758号公報等);アニリン、ニトロベンゼン、ニトロシクロヘキサン等の水素化反応によってシクロヘキシルアミンを製造する方法等が挙げられる。
【0014】
シクロヘキシルアミンの純度には制限は無く、例えば、シクロヘキサノール、ジシクロヘキシルアミン、ニトロシクロヘキサン、N−シクロヘキシリデン−シクロヘキシルアミン等の、上記したシクロヘキシルアミンの製造方法において副生する有機化合物や水が微量に含まれていてもよい。しかしながら、シクロヘキシルアミンに含まれる有機化合物の総濃度は5モル%以下が好ましい。シクロヘキシルアミン中の水の含有量は、気相下で反応を行う場合は制限は無いが、液相下で反応を行う場合は、反応条件下で液相が不均一相にならない量であることが好ましい。換言すれば、液相酸化反応を溶媒を用いて実施する際に、反応条件下で液相が水を主成分とする相と溶媒が主成分とする相に分離しないことが好ましい。
【0015】
本発明に用いる「WA触媒」は、結晶性水酸化アルミニウムと水溶性タングステン化合物を用いて調製される固体触媒である。
本発明の固体触媒の調製に用いる結晶性水酸化アルミニウムとは、X線回折や電子線回折分析で特定の結晶構造を示す水酸化アルミニウムのことであり、ギブサイト、バイヤライト、ノルドストランダイト、ベーマイト、擬ベーマイト及びジアスポアよりなる群から選ばれた少なくとも一種の水酸化アルミニウム結晶相の結晶構造を示す水酸化アルミニウムのことである(これらの構造に関しては、例えば、「元素別触媒便覧」:地人書館刊の27〜32項に記載されている)。
【0016】
これらの結晶性水酸化アルミニウムの内、好ましくはベーマイト構造又は擬ベーマイト構造を示す水酸化アルミニウムが用いられる。
ベーマイト構造を示す水酸化アルミニウムは、一般式;AlO(OH)として知られる結晶性水酸化アルミニウムであり、X線回折インデックスは、ASTMカードNo21−1307に記載されている。ベーマイト構造を示す水酸化アルミニウムは、例えば、ギブサイト、バイヤライト又は無定型アルミナゲルを200〜300℃で水熱処理することにより合成される。ベーマイトの形態には制限は無く、製造方法に応じて、粉状、球状又は水スラリー状のものが用いられる。
【0017】
擬ベーマイト構造を示す水酸化アルミニウムは、結晶内に余分の水分子を持ち、一般式;Al2O3・XH2O(Xは1以上2以下である)として知られる結晶性水酸化アルミニウムであり、ベーマイトゲルとも呼ばれ、X線回折インデックスは、ASTMカードNo5−0190等に記載されている。X線の回折線はベーマイトに似ているが、各回折線がきわめてブロードである。擬ベーマイト構造を示す水酸化アルミニウムは、例えば、無定型アルミナゲルを100℃以下で水熱処理することにより合成される。擬ベーマイトの形態には制限は無く、乾燥粉状、水スラリー状又は一般にアルミナゾルと呼ばれる擬ベーマイト微粒子を鉱酸又は酢酸の陰イオンを共存させて安定化させた水溶液ゾルが用いられる。
【0018】
水溶性タングステン化合物としては、タングステン酸、パラタングステン酸アンモニウム又はメタタングステン酸アンモニウムが挙げられ、なかでも、メタタングステン酸アンモニウムが好ましい。
本発明の「WA触媒」は、γ、χ、η−アルミナ等の遷移アルミナ類に比べて表面の水酸基密度が高い結晶性を有する水酸化アルミニウムをアルミナ前駆体として用い調製されることに特徴を有する。本発明の「WA触媒」を調製する方法は、限定されるものでなく、公知の触媒調製法を用いることができる。例えば、結晶性水酸化アルミニウムとタングステン化合物を溶解させた水溶液を混合し、水酸化アルミニウム表面にタングステン成分を担持又は吸着させた後に乾燥させ、更に400〜600℃の高温下で加熱焼成を行うことにより調製される。
【0019】
本発明の「WA触媒」の特徴は、250〜350m2/gの高い比表面積を有することに加えて、表面の水酸基密度の高いアルミナ前駆体を用いることにより、調製されたアルミナ表面の酸化タングステン種は極めて高分散状態にて存在する。その結果、触媒表面に特有の酸性質が発現するものと考えられる。環状脂肪族第一級アミンの酸化反応を実施する際、触媒の劣化を抑制する為には、基質アミンの吸着速度と生成物の脱離速度のバランスが重要であり、本発明の「WA触媒」の活性点は、上記の触媒劣化を抑制する上で適切な酸性質を有していると考えられる。
【0020】
上記の調製法において、結晶性水酸化アルミニウムの代わりに、γ―アルミナを用いる方法で得られる「WA触媒」の比表面積は、原料γ−アルミナの比表面積と同等又はそれ以下である。本発明の「WA触媒」は、上記の調製法において、タングステン成分を導入しない水酸化アルミニウム単独から調製されたアルミナの比表面積に対して、タングステン成分を導入することにより比表面積が向上する。
【0021】
本発明で用いる「WA触媒」において、アルミニウム原子に対するタングステン原子の割合[(W原子)/(Al原子)原子比]は、調製方法や条件等に併せて任意に選択することができるが0.010〜0.200の範囲であることが好ましく、0.015〜0.100の範囲がより好ましい。アルミニウムに対するタングステンの原子比は、触媒中のそれぞれの金属の存在量を蛍光X線分析装置を用いて測定し、求めることができる。
【0022】
本発明の環状脂肪族オキシムの製造方法によると、上記固体触媒の存在下に、環状脂肪族第一級アミンを分子状酸素と反応させる。反応は液相でも気相でも行うことができるが、通常は気相で行われる。以下に気相反応の例を説明する。
気相反応において、反応温度は、環状脂肪族第一級アミンが気相を保つことができる温度範囲、通常、50〜250℃の範囲が好ましく、より好ましく120〜220℃、最も好ましくは130〜180℃である。250℃を越えた高温では、生成するオキシムの逐次分解反応が促進され、オキシムへの反応選択性が低下する傾向が見られる。また、50℃未満の低温では、反応速度が低下する傾向がある。反応圧力は、通常は、大気圧下で実施されるが、必要であれば加圧、減圧下で実施することもできる。
【0023】
本発明の方法によると、分子状酸素を含有する気体の存在下で環状脂肪族第一級アミンを固体触媒と接触させる。分子状酸素を含有する気体は、純酸素又は酸素と不活性気体との混合気体であり、不活性気体としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を用いることができる。混合気体には空気も含まれる。分子状酸素を含有する気体としては、空気や酸素と不活性気体の混合気体が好ましい。分子状酸素を含有する気体中に少量のNH3が含まれていてもよい。
【0024】
本発明に用いる環状脂肪族アミンは、水又は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ヘキサノール等のアルコール溶媒に任意の濃度で希釈されたものを反応に供することもできる。
本発明において、酸素と不活性気体の混合気体を用いる場合は、分子状酸素と不活性気体とを任意の混合比率のもとで反応系に供給することができるが、酸素濃度は、通常、2〜23容量%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜11容量%、最も好ましくは、酸素濃度は反応系内が爆発組成とならない範囲である。爆発組成の形成は、環状脂肪族アミン又は可燃性溶媒の蒸気圧及び酸素と不活性気体の濃度を厳密に制御することで回避することができるが、予め、限界酸素濃度以下に調整された酸素と不活性気体の混合気体を用いることにより、環状脂肪族アミン又は可燃性溶媒の蒸気濃度によらず爆発組成の形成を回避することができる。
【0025】
本発明に用いられる反応器の形式は限定されるものでなく、種々の反応器を用いることができる。例えば、流通式の固定床反応器または流動床反応器を用いることができる、環状脂肪族アミンは反応器内で気体で存在し、酸素の流れに対して縦型流通式反応器の場合、上昇併流方式、下降併流方式のいずれも選択することができる。これらの反応器は単一の触媒床でもよく、多重触媒床となっていてもよい。また、並列や直列の複数の反応器を使用してもよい。
固体触媒の形状は、実施する反応形態、例えば、固定床方式、流動床方式に応じて、粉末状、真球状及び柱状、破砕状に成形したものを使用することができる。固体触媒の使用量は、実施する反応方式、反応形態、反応温度、用いる固体触媒の形状及び組成によって任意に選ぶことができ、制限はない。
【0026】
本発明の方法によると、環状脂肪族アミンの転化率を、通常、50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下に保つ条件を選択することにより、高い環状脂環族オキシムの選択率を得ることができる。生成した環状脂肪族オキシムは、生成混合物から公知の手段、例えば、蒸留または抽出によって回収される。通常、未反応の環状脂肪族第一級アミンを、好ましくは反応器に循環して再使用することができる。未反応の環状脂肪族アミンの再使用を考慮した際、工業的に本発明の酸化反応を実施する上で、目的生成物である環状脂肪族オキシムの反応選択率を向上させることは、基質アミンの転化率の向上に比して極めて重要、かつ、有効である。
本発明によれば、触媒の失活を抑制しながらも環状脂肪族オキシムを高選択率にて製造することができ、固体触媒と反応液の分離も極めて容易である。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例により具体的に説明する。
以下の実施例及び比較例においてシクロヘキシルアミンの酸化反応の結果を評価するために用いられるシクロヘキシルアミンの転化率及びシクロヘキサノンオキシムの選択率は、それぞれ以下の式によって定義される。
シクロヘキシルアミンの転化率(%)=(単位時間当たりに反応したシクロヘキシルアミンのモル数/単位時間当たりに供給したシクロヘキシルアミンのモル数)×100
シクロヘキサノンオキシムの選択率(%)=(単位時間当たりに生成したシクロヘキサノンオキシムのモル数/単位時間当たりに反応したシクロヘキシルアミンのモル数)×100。
【0028】
【実施例1】
1)ベーマイトスラリーを用いた「WA触媒」の調製
市販のベーマイトスラリー(富田製薬(株)製のAD220スラリー、固形分濃度8.7重量%)350gに、メタタングステン酸アンモニウム水溶液(メタタングステン酸アンモニウム3.55gを60gの水に溶解させたもの)を加え、室温下で約1時間撹拌混合した。
【0029】
この混合スラリー溶液をガラスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターに設置した。オイルバスの温度を90℃から120℃に昇温し、系内圧力は約2時間かけて常圧から20kPaまでゆっくりと減圧して、フラスコ内のスラリーから水分を蒸発させる濃縮乾固処理を実施した。
得られた凝集状の乾燥物を、更に、120℃にて約6時間真空乾燥させてから次の粉体化処理に付した。凝集乾燥物をステンレス製の乳鉢に入れて乳棒で粉砕し、微粉状に近づいた凝集乾燥物をめのう製乳鉢に移して、更に細かくなるように粉砕した。粉砕した乾燥物をふるい(メッシュサイズ:75μm)にかけ、ふるいを通過したもののみを回収して粒径が75μm以下の粉体を得た。
【0030】
次いで、得られた粉体をガラス製管状炉に入れ、常圧下、空気を供給しながら500℃にて4時間焼成処理を実施して「WA触媒」を得た。本調製法で得られた触媒の(W/Al)原子比は0.028、比表面積は348m2/gであり、粉末X線回折解析の結果、アルミナの結晶相はγ型であった。
2)シクロヘキシルアミンの酸化反応
1)で得られた触媒を圧縮成型し、粉砕した後、1.0〜1.4mmの粒径にふるい分けし、反応に用いた。
【0031】
シクロヘキシルアミンおよび酸素をそれぞれ導入するための導入管を備え、内部に触媒層の温度を測定するための熱伝対を挿入するためのさや管を組み込み、シクロヘキシルアミンを気化するためのSUS316製充填剤層を設けた、外径12.7mm、内径9.0mm、全長100mmのSUS316製の管状反応器に上記の固体触媒2.0gを仕込み、加熱炉に組み込んだ。反応器内を窒素で置換した後、170℃まで加熱し、組成が、シクロヘキシルアミン濃度6.0容量%、酸素濃度7.0容量%となる窒素で希釈した混合ガスを空間速度が350h−1となる条件で供給し、連続的に反応を行った。
【0032】
自動的に反応器出口から反応ガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフィーによる組成分析から酸化反応の結果を評価した。シクロヘキシルアミンの転化率は、それぞれ4時間経過後28.8%、24時間経過時27.0%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は、それぞれ4時間経過後78.8%、24時間経過時80.5%であった。
上記の結果から明らかなように、本発明の方法を用いると、触媒の失活を抑制しながらも約80%前後の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。
【0033】
【実施例2】
1)ベーマイトスラリーを用いた「WA触媒」の調製
メタタングステン酸アンモニウム水溶液として、メタタングステン酸アンモニウム7.1gを60gの水に溶解させたものを用いること以外は実施例1と同一の方法にて調製して「WA触媒」を得た。本調製法で得られた触媒の(W/Al)原子比は0.056、比表面積は344m2/gであり、粉末X線回折解析の結果、アルミナの結晶相はγ型であった。
【0034】
2)シクロヘキシルアミンの酸化反応
1)で得られた触媒を圧縮成型し、粉砕した後、1.0〜1.4mmの粒径にふるい分けし、反応に用いた。
実施例2で調製した触媒を用いること以外は実施例1の方法と同一の反応条件にて酸化反応の評価を実施した。シクロヘキシルアミンの転化率はそれぞれ4時間経過後24.2%、24時間経過時22.5%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率はそれぞれ4時間経過後81.9%、24時間経過時80.5%であった。
【0035】
上記の結果から明らかなように、実施例1と同様に本発明の方法を用いると、触媒の失活を抑制しながらも80%以上の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。
【0036】
【比較例1】
1)γ−アルミナを用いた「WA触媒」の調製
市販のγ−アルミナ(西尾工業製、比表面積282m2/g)25.9gを320gの水に分散させた後、メタタングステン酸アンモニウム水溶液(メタタングステン酸アンモニウム3.55gを60gの水に溶解させたもの)を加え、室温下で約1時間撹拌混合した。
【0037】
次いで、実施例1に示す「WA触媒」の調製と同じ条件で濃縮乾固、乾燥及び空気焼成処理を行い「WA触媒」を得た。本調製法で得られた触媒の(W/Al)原子比は0.027、比表面積は245m2/gであり、粉末X線回折解析の結果、アルミナの結晶相はγ型であった。
2)シクロヘキシルアミンの酸化反応
1)で得られた触媒を圧縮成型し、粉砕した後、1.0〜1.4mmの粒径にふるい分けし、反応に用いた。
【0038】
比較例1で調製した触媒を用いること以外は実施例1の方法と同一の反応条件にて酸化反応の評価を実施した。シクロヘキシルアミンの転化率はそれぞれ4時間経過後9.6%、24時間経過時2.8%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率はそれぞれ4時間経過後67.2%、24時間経過時65.0%であった。
本比較例に示す方法によると、60%以上の選択率でシクロヘキサノンオキシムを得ることができたものの、活性の低下が大きく、触媒の失活が抑制できなかった。
【0039】
【比較例2】
1)非晶質水酸化アルミニウムを用いた「WA触媒」の調製
市販の非晶質水酸化アルミニウム(和光純薬(株)製、比表面積282m2/g)40gを320gの水に分散させた後、メタタングステン酸アンモニウム水溶液(メタタングステン酸アンモニウム3.55gを60gの水に溶解させたもの)を加え、室温下で約1時間撹拌混合した。
【0040】
次いで、実施例1に示す「WA触媒」の調製と同じ条件で濃縮乾固、乾燥及び空気焼成処理を行い「WA触媒」を得た。本調製法で得られた触媒の(W/Al)原子比は0.026、比表面積は253m2/gであり、粉末X線回折解析の結果、アルミナの結晶相はχ型であった。
2)シクロヘキシルアミンの酸化反応
1)で得られた触媒を圧縮成型し、粉砕した後、1.0〜1.4mmの粒径にふるい分けし、反応に用いた。
【0041】
比較例2で調製した触媒を用いること以外は実施例1の方法と同一の反応条件にて酸化反応の評価を実施した。シクロヘキシルアミンの転化率はそれぞれ4時間経過後7.8%、24時間経過時3.2%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率はそれぞれ4時間経過後65.5%、24時間経過時63.7%であった。
本比較例に示す方法によると、比較例1と同様、60%以上の選択率でシクロヘキサノンオキシムを得ることができたものの、活性の低下が大きく、触媒の失活が抑制できなかった。
【0042】
【実施例3】
1)球状ベーマイトを用いた「WA触媒」の調製
市販の球状ベーマイト(富田製薬(株)製:AD220NS)を45〜150μmにふるい分けしたもの28gを1500mlの水に分散させた後、メタタングステン酸アンモニウム水溶液(日本無機化学工業(株)製:MW−2、WO3換算として50重量%含有)7.6gを加え、室温下で約24時間撹拌混合を行い平衡吸着法によってタングステン化合物をベーマイト表面に担持した。
【0043】
次いで、スラリーを濾過した後、回収した固形物を約500mlの水を用いて2回洗浄した。更に、120℃にて約6時間真空乾燥した。得られた乾燥品をガラス製管状炉に入れ、常圧下、空気を供給しながら500℃にて4時間焼成処理を実施して「WA触媒」を得た。本調製法で得られた触媒の(W/Al)原子比は0.042、比表面積は311m2/gであり、粉末X線回折解析の結果、アルミナの結晶相はγ型であった。
【0044】
2)シクロヘキシルアミンの酸化反応
1)で得られた触媒を圧縮成型し、粉砕した後、1.0〜1.4mmの粒径にふるい分けし、反応に用いた。
実施例3で調製した触媒を用いること以外は実施例1の方法と同一の反応条件にて酸化反応の評価を実施した。シクロヘキシルアミンの転化率は、それぞれ4時間経過後17.9%、24時間経過時17.0%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は、それぞれ4時間経過後79.4%、24時間経過時80.8%であった。
【0045】
上記の結果から明らかなように、実施例1及び2と同様に、本発明の方法を用いると、触媒の失活を抑制しながらも約80%前後の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。
【0046】
【実施例4】
1)擬ベーマイトゾルを用いた「WA触媒」の調製
市販の擬ベーマイトゾル(触媒化成(株)製、Cataloid−AS−3、Al2O3換算濃度7重量%含有)1500gに水680gを添加し希釈した後、希釈擬ベーマイトゾルを強撹拌しながらメタタングステン酸アンモニウム水溶液(日本無機化学工業(株)製:MW−2、WO3換算として50重量%含有)26.5gを更に50gの水で希釈した水溶液を少量ずつ加えた。粘性が増加したゾルを更に2時間強撹拌混合した後、混合ゾル溶液をガラスフラスコに入れ、大型ロータリーエバポレーターに設置し、オイルバスの温度を90℃から120℃に昇温し、常圧下でフラスコ内のゾル溶液から水分を蒸発させる濃縮処理を実施した。
【0047】
ゾルをペースト状まで濃縮した後、加熱型押出成型器を用いて直径約2mmの円柱状成型体を得た。得られた乾燥成型品をマッフル炉に入れ、常圧下、空気を供給しながら500℃にて6時間焼成処理を実施して「WA触媒」を得た。本調製法で得られた触媒の(W/Al)原子比は0.028、比表面積は287m2/gであり、粉末X線回折解析の結果、アルミナの結晶相はγ型であった。
2)シクロヘキシルアミンの酸化反応
1)で得られた成型触媒を粉砕しながら、1.0〜1.4mmの粒径にふるい分けし、反応に用いた。
【0048】
実施例4で調製した触媒を用いること以外は実施例1の方法と同一の反応条件にて酸化反応の評価を実施した。シクロヘキシルアミンの転化率は、それぞれ4時間経過後25.7%、24時間経過時23.8%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は、それぞれ4時間経過後80.9%、24時間経過時82.0%であった。
上記の結果から明らかなように、実施例1、2と同様に本発明の方法を用いると、触媒の失活を抑制しながらも約80%前後の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。
【0049】
【比較例3】
1)アルミニウムアルコキシドを用いた「WA触媒」の調製
市販のアルミニウム−セカンダリー−ブトキシド10.0gをビーカーに入れ、メタタングステン酸アンモニウム水溶液(メタタングステン酸アンモニウム0.31gを5.0gの水で溶解して水溶液としたもの)をガラス棒で激しく撹拌しながら少量ずつ滴下した。生成したゲル状生成物を常温下で1時間乾燥した後、120℃にて一夜真空乾燥させた。次いで、乾燥物をガラス製管状炉に入れ、常圧空気気流下で400℃にて4時間焼成処理を実施し、「WA触媒」を得た。本調製法で得られた触媒の(W/Al)原子比は0.03、比表面積は360m2/gであり、粉末X線回折解析の結果、アルミナは非晶質であった。
【0050】
2)シクロヘキシルアミンの酸化反応
1)で得られた触媒を圧縮成型し、粉砕した後、1.0〜1.4mmの粒径にふるい分けし、反応に用いた。
比較例3で調製した触媒を用いること以外は実施例1の方法と同一の反応条件にて酸化反応の評価を実施した。シクロヘキシルアミンの転化率は、それぞれ4時間経過後18.6%、24時間経過時9.2%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は、それぞれ4時間経過後79.0%、24時間経過時75.7%であった。
【0051】
本比較例に示す方法によると、比較例1及び2と同様、60%以上の選択率でシクロヘキサノンオキシムを得ることができたものの、活性の低下が大きく触媒の失活が抑制できなかった。
【0052】
【発明の効果】
本発明により、環状脂肪族第一級アミンと分子状酸素とを反応させて環状脂肪族オキシムを製造するに際し、触媒の失活を抑制しながらも高いオキシム選択率(好適には80%以上)を得ることができる。さらに、不均一系固体触媒を用いることにより反応液と触媒成分の分離が容易となる。加えて、酸化剤として、過酸化物を用いないので、酸化剤の取扱いに関わる操作上の危険性を回避でき、比較的簡単な操作で環状脂肪族オキシムを工業的に製造することが可能である。
Claims (6)
- 環状脂肪族第一級アミンを、結晶性水酸化アルミニウムと水溶性タングステン化合物を用いて調製された酸化タングステン含有アルミナ固体触媒の存在下で、分子状酸素を用いて酸化させることを特徴とする環状脂肪族オキシムの製造方法。
- 環状脂肪族第一級アミンが、シクロヘキシルアミンである請求項1記載の環状脂肪族オキシムの製造方法。
- 結晶性水酸化アルミニウムが、ベーマイト構造又は擬ベーマイト構造を有するものである請求項1又は2記載の環状脂肪族オキシムの製造方法。
- 水溶性タングステン化合物が、メタタングステン酸アンモニウムである請求項1、2又は3記載の環状脂肪族オキシムの製造方法。
- 固体触媒中に含まれるアルミニウム原子に対するタングステン原子の割合[(W原子)/(Al原子)原子比]が0.010〜0.200の範囲である請求項1、2、3又は4記載の環状脂肪族オキシムの製造方法。
- 酸化反応を気相条件下にて行う請求項1、2、3、4又は5記載の環状脂肪族オキシムの製造方法。
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