JP2000128088A - 飛行機の造波抵抗低減方法 - Google Patents
飛行機の造波抵抗低減方法Info
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Abstract
流体素子を配置し、この流体素子により発生した空気流
を主翼上面空気流と積極的に重ね合わせることにより主
翼上面の負圧ピークを低下させ、衝撃波の発生を遅らせ
て造波抵抗を低減する。 【解決手段】 エンジンナセルを主翼上面に配置し、且
つエンジンナセルの前端の前後方向位置を主翼の翼弦の
前端から63%〜100%の範囲に設定すると(b,i
参照)、遷音速領域において主翼上面に衝撃波が発生し
て造波抵抗が増加するのを抑制し、燃料消費量の増加を
回避しながら巡航速度を増加させることができる。エン
ジンナセルの前端が翼弦の63%位置よりも前方になる
と(e,f参照)、衝撃波を抑制する効果は発揮されず
に造波抵抗が増加してしまう。
Description
飛行機の主翼上面における衝撃波の発生を遅らせて造波
抵抗を低減する飛行機の造波抵抗低減方法に関する。
も、機体の一部で加速した流れによって局所的に音速を
越える領域が生じる遷音速領域では、飛行速度を増して
いくと或る飛行速度で衝撃波が発生する(図20参
照)。このようにして主翼上面に衝撃波が発生すると、
この衝撃波によって造波抵抗が生じ、抗力の急増および
揚力の急減が生じる。
抗力発散といい、そのときの主流のマッハ数を抗力発散
マッハ数MDDという。飛行機の飛行速度が抗力発散マッ
ハ数MDDに達すると、抗力の増加によって燃料消費量が
増加するだけでなく、風圧中心の移動によって機体の釣
合いにも悪影響がでるため、衝撃波の発生をできるかぎ
り遅らせて抗力発散マッハ数MDDを高めることが必要と
なる。
に、 抗力発散マッハ数MDDの高い翼型を用いる 主翼に後退角をつける 等の手法が採用されている。
ジンナセルを備えた飛行機では、主翼や胴体とエンジン
ナセルとの空力的な干渉により発生する抗力を最小限に
抑えるべく、そのエンジンナセルの取り付け位置に考慮
が払われている。一般的には、ビジネスジェット機では
主翼との干渉が小さい後部胴体の左右両側部にエンジン
ナセルを取り付けることにより、また大型旅客機では主
翼上面に比べて流速の小さい主翼下面にパイロンを介し
てエンジンナセルを取り付けることにより干渉抗力の低
減を図っている。
型は抗力発散マッハ数MDDが高くなるが、翼厚を減少さ
せると主翼の容積が減少するため、主翼内に燃料タンク
を設ける場合には燃料搭載量が減少する問題があり、し
かも翼厚の減少に伴う強度の低下を補うために構造重量
が増加する問題がある。そこで遷音速領域における主翼
の圧力分布を改良することにより、必要な翼厚を確保し
ながら衝撃波の発生を抑制する翼型としてピーキー翼や
スーパークリティカル翼が提案されていた。
ある程度確保しながら抗力発散マッハ数MDDを高めるこ
とができるが、低速時における失速特性が悪化したり、
主翼の翼根部に作用する大きな曲げモーメントに対抗す
るために構造重量が増加したり、またスパン方向の流れ
により摩擦抵抗が小さい層流翼の採用が困難になるとい
う問題がある。
ンナセル等の流体素子を配置し、この流体素子により発
生した主流の減速領域を主翼上面空気流と積極的に重ね
合わせることにより、衝撃波の発生を遅らせて造波抵抗
を低減することを目的とする。
に、請求項1に記載された発明は、遷音速で巡航する飛
行機の主翼の上面に負圧を発生させる主翼上面空気流の
後部上方の主流内に流体素子を配置し、該流体素子の前
方に発生する主流の減速領域と前記主翼上面空気流とを
重ね合わせて該主翼上面空気流を減速することにより、
前記主翼の上面の負圧を低下させて衝撃波の発生を抑制
することを特徴とする。
と、主翼上面に衝撃波が発生して造波抵抗が急激に増加
する。主翼上面空気流の後部上方の主流内に流体素子を
配置すると、流体素子の前方に発生する主流の減速領域
との重ね合わせにより主翼上面空気流が減速するため、
主翼の上面の負圧を低下させて衝撃波の発生を抑制する
ことができる。これにより、遷音速領域における造波抵
抗の発生を遅らせて抗力発散マッハ数を増加させ、巡航
速度を高めることができる。
1の構成に加えて、前記主翼上面空気流が音速になると
きの負圧を臨界圧力係数とし、主翼の上面の翼弦方向の
圧力分布が前記臨界圧力係数以上の状態から以下の状態
に変化する基準点を翼弦上に設定し、前記基準点から翼
弦長の5%前方位置よりも後方に前記流体素子の前端を
配置することを特徴とする。
の衝撃波の発生は抑制されるが、主翼の翼弦の後部側に
新たな衝撃波が発生してしまう。そこで主翼上面の負圧
が臨界圧力係数以上の状態から以下の状態に変化する基
準点、すなわち主翼上面空気流の流速が音速以上の状態
から音速以下の状態に変化する基準点から翼弦長の5%
前方位置よりも後方に流体素子の前端を配置すると、流
体素子により発生する主流の減速領域を主翼上面空気流
と効果的に重ね合わせて衝撃波の発生を確実に抑制する
ことができる。
1の構成に加えて、前記流体素子の前端と主翼の前縁と
の前後方向距離が、翼弦長の68%〜100%であるこ
とを特徴とする。
距離を翼弦長の68%〜100%に設定すると、衝撃波
の抑制効果を発揮させることができる。
1の構成に加えて、前記流体素子の前端と主翼の前縁と
の前後方向距離が、翼弦長の75%〜85%であること
を特徴とする。
距離を翼弦長の75%〜85%に設定すると、衝撃波の
抑制効果を更に効果的に発揮させることができる。
1の構成に加えて、前記流体素子の前端と主翼の前縁と
の前後方向距離の増加に伴って、前記流体素子の下面と
主翼の上面との上下方向距離を減少させることを特徴と
する。
距離の増加に伴って流体素子の下面と主翼の上面との上
下方向距離を減少させると、流体素子の前後方向距離が
変化しても衝撃波の抑制効果を維持することができる。
1の構成に加えて、前記流体素子がガスタービンエンジ
ンを覆う概略円筒状のエンジンナセルであることを特徴
とする。
エンジンナセルを流体素子として利用して衝撃波の抑制
効果を発揮させるので、特別の流体素子を新たに設ける
必要がない。
6の構成に加えて、前記主翼上面空気流が音速になると
きの負圧を臨界圧力係数とし、主翼の上面の翼弦方向の
圧力分布が前記臨界圧力係数以上の状態から以下の状態
に変化する基準点を翼弦上に設定し、前記基準点よりも
翼弦長の5%前方位置と、前記基準点よりもエンジンナ
セルのリップ前縁の直径に等しい距離だけ後方位置との
間に、前記エンジンナセルの前端を配置することを特徴
とする。
と当初の衝撃波の発生は抑制されるが、主翼の翼弦の後
部側に新たな衝撃波が発生してしまう。そこで主翼上面
の負圧が臨界圧力係数以下に変化する基準点、すなわち
主翼上面空気流の流速が音速以上の状態から音速以下の
状態に変化する基準点から翼弦長の5%前方位置よりも
後方にエンジンナセルの前端を配置すると、エンジンナ
セルにより発生する主流の減速領域を主翼上面空気流と
効果的に重ね合わせて衝撃波の発生を確実に抑制するこ
とができる。またエンジンナセルの前端の位置が後方過
ぎると、エンジンナセルにより発生する主流の減速領域
の影響が小さくなって衝撃波の発生を抑制する効果が減
少してしまう。そこで前記基準点よりもエンジンナセル
のリップ前縁の直径に等しい距離だけ後方位置よりも前
方にエンジンナセルの前端を配置すると、エンジンナセ
ルにより発生する主流の減速領域を主翼上面空気流と効
果的に重ね合わせて衝撃波の発生を確実に抑制すること
ができる。
6の構成に加えて、主翼の上面とエンジンナセルの下面
との上下方向距離が、該エンジンナセルの外径の30%
〜100%であることを特徴とする。
下方向距離をエンジンナセルの外径の30%〜100%
に設定すると、流体素子の前後方向距離が変化しても衝
撃波の抑制効果を維持することができる。
6の構成に加えて、主翼の上面に立設したパイロンを介
してエンジンナセルを支持したことを特徴とする。
面に取り付けると、エンジンナセルを胴体に取り付ける
場合に比べて胴体のキャビンスペースを広く確保するこ
とができ、しかも揚力により主翼の翼根部に作用する曲
げモーメントをエンジンの慣性重量で軽減して構造重量
の軽減に寄与することができる。
付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
ので、図1は本発明を適用した双発ビジネスジェット機
の斜視図、図2はエンジンナセルの前後位置を定義する
パラメータの説明図、図3はエンジンナセルの上下位置
を定義するパラメータの説明図、図4はエンジンナセル
のスパン方向位置を定義するパラメータの説明図、図5
はエンジンナセル位置X/Cと造波抵抗との関係を示す
グラフ、図6はエンジンナセル位置X/Cと抗力発散マ
ッハ数MDDとの関係を示すグラフ、図7は翼弦に沿う主
翼上面の圧力係数CPを示すグラフ、図8は各エンジン
ナセル位置でのマッハ数Mと全機の抗力係数CDtotal
から形状抗力係数CD0 を引いた抗力係数と抗力発散マ
ッハ数MDDとの関係を示すグラフ、図9は各エンジンナ
セル位置および2つのマッハ数での全機の抗力係数CD
total を示すグラフ、図10はエンジンナセル無しの場
合の翼弦に沿う圧力分布を示すグラフ、図11はエンジ
ンナセル回りの速度分布を示す図、図12はエンジンナ
セルの先端部近傍の速度分布を示す図、図13はエンジ
ンナセル位置X/C=80%の場合の翼弦に沿う圧力分
布を示すグラフ、図14はエンジンナセル位置X/C=
85%の場合の翼弦に沿う圧力分布を示すグラフ、図1
5はエンジンナセル位置X/C=65%の場合の翼弦に
沿う圧力分布を示すグラフ、図16はエンジンナセルを
持たない機体形状を示す図、図17はエンジンナセルを
主翼上面に配置した機体形状を示す図、図18はエンジ
ンナセルを主翼下面に配置した機体形状を示す図、図1
9はエンジンナセルを後部胴体に配置した機体形状を示
す図、図20は衝撃波および造波抵抗の説明図である。
基のガスタービンエンジンを備えたビジネスジェット機
であって、胴体Fと、胴体Fの中央部下面に取り付けら
れた左右の主翼W,Wと、胴体Fの後部に取り付けられ
た垂直尾翼Vと、垂直尾翼Vの上端に取り付けられた水
平尾翼Hとを備える。2基のガスタービンエンジンをそ
れぞれ覆う概略円筒状のエンジンナセルN,Nは、左右
の主翼W,Wの上面に立設した一対のパイロンP,Pの
上端にそれぞれ支持される。
ンナセルNの近傍の空気流との干渉を積極的に利用する
ことにより、主翼Wの上面における衝撃波の発生を抑制
するものであり、従って機体に対するエンジンナセルN
の相対的な取付位置が重要な要素となる。
後方向の取付位置は、エンジンナセルNの下方の主翼翼
弦の前縁を基準とするもので、前記翼弦の前縁からエン
ジンナセルNの前端(リップ)までの前後方向距離X
と、前記翼弦の翼弦長Cとにより、X/C(%)で定義
される。従って、エンジンナセルNの前端が主翼Wの前
縁の上方に位置しているときにX/C=0%となり、エ
ンジンナセルNの前端が主翼Wの後縁の上方に位置して
いるときにX/C=100%となる。
下方向の取付位置は、エンジンナセルNの下方の主翼W
の最上面を基準とするもので、主翼Wの最上面からエン
ジンナセルNの最下面までの上下方向距離Zと、エンジ
ンナセルNの最大径Dとにより、Z/D(%)で定義さ
れる。前記上下方向距離Zは、機体の正面図である図3
において、主翼Wの最上面およびエンジンナセルNの最
下面間の上下方向の間隔に相当する。
パン方向の取付位置は、胴体Fのスパン方向外端を基準
とするもので、胴体Fのスパン方向外端からエンジンナ
セルNのスパン方向内端までのスパン方向距離Yと、エ
ンジンナセルNの最大幅Dwとにより、Y/Dw(%)
で定義される。
ラメータX/Cと、エンジンナセルNの上下位置を定義
するパラメータZ/Dと、エンジンナセルNのスパン方
向位置を定義するパラメータY/Dwとのうち、衝撃波
の発生を抑制する上で最も支配的なパラメータはX/C
であり、そのパラメータX/Cに比べてエンジンナセル
Nの上下位置を定義するパラメータZ/Dは影響度が小
さくなり、エンジンナセルNのスパン方向位置を定義す
るパラメータY/Dwは更に影響度が小さくなる。
ジンナセルNの前後位置を定義するX/Cを主要なパラ
メータとして選択し、Z/Dを固定値(Z/D=0.
5)とし、Y/Dwを固定値(Y/Dw=0.73)と
して風洞実験および解析を行った。ここで、Z/D=
0.5は衝撃波の抑制効果が有効に得られるエンジンナ
セルNの上下位置であり、Y/Dw=0.73は胴体F
および主翼wの結合部の干渉の影響を有効に回避できる
エンジンナセルNのスパン方向位置である。
抵抗との関係を示すグラフであって、主流のマッハ数は
主翼Wの上面に衝撃波が発生するマッハ数に対応するM
=0.78に設定され、揚力係数は本機の巡航速度に対
応するCL=0.40に設定されている。エンジンナセ
ル位置X/Cを翼弦の68%位置よりも後方に配置する
と、造波抵抗はエンジンナセル無しの場合の造波抵抗よ
りも最大値で40%程度減少し、エンジンナセル位置X
/Cを翼弦の68%位置よりも前方に配置すると、造波
抵抗はエンジンナセル無しの場合の造波抵抗よりも急激
に増加する。
発散マッハ数MDDとの関係を示すグラフであって、揚力
係数はCL=0.40である。エンジンナセル位置X/
Cを翼弦の68%位置よりも後方に配置すると、抗力発
散マッハ数MDDはエンジンナセル無しの場合の抗力発散
マッハ数MDDから増加し、エンジンナセル位置X/C=
80%の最適位置で最大値MDDに達している。一方、エ
ンジンナセル位置X/Cを翼弦の68%位置よりも前方
に配置すると、抗力発散マッハ数MDDはエンジンナセル
無しの場合の抗力発散マッハ数MDDから急激に減少す
る。
する主翼上面の圧力係数CPを示すグラフであって、実
線はエンジンナセル無しの場合、破線はエンジンナセル
位置X/C=75%の場合、二点鎖線はエンジンナセル
位置X/C=50%の場合にそれぞれ対応しており、何
れの場合も主流のマッハ数はM=0.78、揚力係数は
CL=0.40である。エンジンナセル無しの場合には
翼弦の60%位置付近で強い圧力勾配により衝撃波が発
生しているが、エンジンナセル位置X/C=75%の場
合には、翼弦の60%位置付近の負圧が低下して前記強
い圧力勾配が緩和され、衝撃波の発生が抑制されてい
る。
の場合には、圧力分布は翼弦の15%位置付近および8
5%位置付近に2つの負圧ピークを持つ凹状の分布とな
り、特にエンジンナセル無しの場合に負圧ピークがあっ
た翼弦の60%位置付近では、圧力係数が大幅に低下し
ており、これにより衝撃波の発生および造波抵抗の増加
が防止されている。
場合には、翼弦の40%位置付近の圧力係数が大幅に低
下し、圧力分布は翼弦の10%位置付近および80%位
置付近に2つの負圧ピークを持つ凹状の分布となる。し
かしながら、翼弦の80%位置付近には負圧ピークと、
それに続く強い圧力勾配とが存在するために衝撃波が発
生している。
を翼弦の68%位置よりも後方に設定すると、エンジン
ナセル無しの場合に比べて抗力発散マッハ数MDDが増加
して衝撃波が発生し難くなるが、エンジンナセル位置X
/Cを翼弦の68%位置よりも前方に設定すると、衝撃
波が発生して抗力発散マッハ数MDDが減少する。
マッハ数Mと、全機の抗力係数CD total から形状抗力
係数CD0 を引いた抗力係数と、抗力発散マッハ数MDD
との関係を示すグラフであって、何れの場合も揚力係数
はCL=0.40である。ラインaは基準となるエンジ
ンナセル無しのもの(図16参照)、ラインb,d,e
はエンジンナセルを主翼の上面に配置したもの(図17
参照)、ラインf,gはエンジンナセルを主翼の下面に
配置したもの(図18参照)、ラインh,iはエンジン
ナセルを胴体の後部に配置したもの(図19参照)であ
る。また各ライン上にプロットした▲は、各々のエンジ
ンナセル位置毎の抗力発散マッハ数MDDを示している。
合には、エンジンナセル位置X/C=75%のもの(ラ
インb)が最も優れており、全てのマッハ数領域で抗力
係数(CDtotal −CD0 )がラインa(エンジンナセ
ル無しのもの)を下回っている。
(ラインd)は抗力係数(CDtota l −CD0 )が最も
高くなっており、強い衝撃波が発生していると推定され
る。エンジンナセル位置X/C=−120%のもの(ラ
インe)は、前記エンジンナセル位置X/C=50%の
ものよりは抗力係数(CDtotal −CD0 )が低下して
おり、衝撃波の発生を抑制する効果は一応認められる。
合には、エンジンナセル位置X/C=−120%のもの
(ラインf)も、エンジンナセル位置X/C=80%の
もの(ラインg)も衝撃波の発生を抑制する効果は認め
られない。但し、ラインfで示すエンジンナセルを主翼
の前下方に配置したもの(大型旅客機等で広く採用され
ている配置)は、ラインgで示す主翼の後下方に配置し
たものに比べれば抗力係数(CDtotal −CD0 )が若
干低いことが確認される。
合には、エンジンナセル位置X/C=75%のもの(ラ
インh)が、エンジンナセルを主翼上面のX/C=75
%位置に配置したのもの(ラインb)と同等の優れた特
性を発揮している。このことは、エンジンナセル位置X
/C=75%であれば、エンジンナセルを主翼に取り付
けても胴体に取り付けても同等の衝撃波抑制効果が得ら
れることを示している。またラインiで示すエンジンナ
セルの一般的な胴体後部配置(X/C>100%)で
は、衝撃波の発生を抑制する効果は大幅に減少してしま
う。
機の抗力係数CDtotal を2種類のマッハ数(M=0.
75およびM=0.78)について示すグラフであっ
て、何れの場合も揚力係数はCL=0.40である。図
9のデータは図8のデータに対応しており、図9のb,
d,e,f,g,iは、図8のb,d,e,f,g,i
と同じものである。図9によっても、エンジンナセルを
主翼上面のX/C=75%位置に配置したもの(b参
照)が、全機の抗力係数CDtotal が最小になっている
ことが確認される。
翼の上面の適切な位置に配置することにより、主翼の上
面に衝撃波が発生して造波抵抗が急増する抗力発散マッ
ハ数MDDを増加方向に変化させ、燃料消費量を低く抑え
ながら巡航速度を増加させることができる。本実施例で
は、エンジンナセル位置がX/C=63よりも後方の範
囲で衝撃波を抑制する効果が得られ、最適位置はX/C
=80%の付近となる。エンジンナセル位置の好適な範
囲はX/C=68%〜100%あるいはX/C=63%
〜95%であり、そのうち特に好適な範囲はX/C=7
5%〜85%である。
よびスパン方向位置Y/Dwの適切な値と、その効果と
について考察する。
に対する最適な上下位置はZ/D=50%であるが、上
下位置Z/Dをあまり小さくしてしまうと、エンジンナ
セルの下面と主翼の上面との間の流速が速くなり、エン
ジンナセルを前後位置X/C=0.5に配置した場合と
同様に衝撃波が発生して結果的に造波抵抗が増加してし
まう。逆に上下位置Z/Dをあまり大きくしてしまう
と、エンジンナセルが主翼上面に沿う空気流に与える影
響が減少するため、エンジンナセル無しの場合に近づい
てしまう。また操縦安定性の面からも、スラストライン
の位置が高くなって頭下げモーメントが増加するといっ
た不具合が発生する。
の抑制に有効な範囲で前後の移動させる場合、前後位置
X/Cが前方に移動するほど上下位置Z/Dを上方に移
動させ、前後位置X/Cが後方に移動するほど上下位置
Z/Dを下方に移動させることが必要である。衝撃波の
抑制に有効なエンジンナセルの上下位置Z/Dの範囲
は、Z/D=0.3〜1.0程度である。
に対する最適なエンジンナセルのスパン方向位置はY/
Dw=0.73である。エンジンナセルが衝撃波の抑制
効果を発揮する範囲は、パイロンを中心として胴体側お
よび翼端側にある程度の広がりを持っている。胴体およ
び主翼の結合部は元々干渉の大きい部分であるため、フ
ェアリングで整形したり、翼根部の翼型を改良したりし
て対策を施しているが、このエンジンナセルの配置によ
っても胴体および主翼の結合部の干渉を軽減することが
できる。
を翼端側に近づけすぎると、翼端側における衝撃波の抑
制効果が増加する反面、胴体および主翼の結合部の干渉
軽減に寄与できなくなり、逆にエンジンナセルのスパン
方向位置Y/Dwを胴体側に近づけすぎると、翼端側に
おける衝撃波の抑制効果が減少するだけでなく、胴体お
よび主翼の結合部の干渉抵抗がかえって増加してしまう
場合があるため、上述したY/Dw=0.73がエンジ
ンナセルの最適のスパン方向位置となる。
M=0.75、揚力係数CL=0.40の場合の翼弦に
沿う圧力分布を示すものであり、X/C=70%の付近
に衝撃波が確認される。一点鎖線で示す臨界圧力係数C
P* は、主翼上面の流速が音速(M=1)になるときの
圧力係数CPであって、主翼上面ではX/C=12%〜
68%の領域で流速が音速を越えていることが分かる。
主翼上面の圧力係数CPのライン(実線)は、臨界圧力
係数CP* のライン(一点鎖線)を高い側から低い側に
(図10において上から下に)横切っており、その交点
が基準点Rとされる。
=68%の位置は、その位置よりも後方にエンジンナセ
ルの前端を配置すると抗力発散マッハ数MDDを高めるこ
とができる位置である。従って、エンジンナセルの適切
な前後位置を決定するには、先ずエンジンナセル無しの
状態での主翼上面の圧力分布を求め、次いで前記圧力分
布のラインと前記臨界圧力係数CP* のラインとの交点
である基準点Rを求め、この基準点Rの後方にエンジン
ナセルの前端(リップ)を配置すれば抗力発散マッハ数
MDDを高めることが可能となる。
は、抗力発散マッハ数MDDを高めるための普遍的な閾値
ではなく、一般的には基準点Rよりも5%前方のX/C
=63%の位置の後方にエンジンナセルの前端を配置す
れば、抗力発散マッハ数MDDを高めることができる。但
し、基準点R(X/C=68%)の後方にエンジンナセ
ルの前端を配置した方が、抗力発散マッハ数MDDを確実
に高めて一層大きな効果を得ることができる。
後方に大きく離れ過ぎると、エンジンナセルにより発生
する主流の減速域を主翼上面の空気流に重ね合わせるこ
とができなくなり、衝撃波の発生を抑制する効果が減少
してしまう。エンジンナセルのリップ前縁の直径をD
LIP としたとき、基準点Rからリップ前縁の直径DLIP
だけ後方位置を設定し、その位置よりも前方にエンジン
ナセルの前端を配置すれば、抗力発散マッハ数MDDを高
めて衝撃波の発生を抑制することができる。実施例では
リップ前縁の直径DLIP は翼弦長Cの27%であり、従
って、X/C=95%の位置よりも前方にエンジンナセ
ルの前端を配置すれば良いことになる。
が無く、空気流がエンジンナセルを貫通している状態
(Flow−Through状態)におけるエンジンナ
セル回りの速度分布を示すものであり、このとき主流の
マッハ数はM=0.75である。図11におけるVの値
は主流の流速に対するエンジンナセル回りの流速の比を
示すもので、エンジンナセルの前端を境にして前方側の
流速は主流よりも減速し、後方側の流速は主流よりも増
速していることが分かる。ここではエンジンの吸気を考
慮していないが、遷音速領域ではエンジンの吸気速度は
主流の流速に比べて遅いのが一般的であり、エンジンの
吸気を考慮するとエンジンナセルの前方における減速領
域は広がる傾向にある。
速度分布を拡大して示すものである。エンジンナセルの
リップ前縁の直径をDLIP とすると、エンジンナセルの
前方において、DLIP を半径とする略半円形の領域で主
流の流速が5%以上減速している。またエンジンナセル
のリップ前縁よりも後方の流速は、主流の流速よりも増
速している。
数CL=0.40の状態でエンジンナセルの前端を主翼
上面のX/C=80%の位置に配置した場合の圧力分布
を示すものである。同条件でエンジンナセル無しの場合
の圧力分布(図10参照)と比較すると明らかなよう
に、図13ではエンジンナセルの前方の減速領域(斜線
部分)において負圧ピークが大幅に低下し、その結果、
図10のものに比べて圧力傾斜が緩くなって衝撃波の発
生が抑制されていることが分かる。前記図7に破線で示
した圧力分布(エンジンナセル位置X/C=75%の場
合)も、図13のものと同様に圧力傾斜が緩くなって衝
撃波の発生が抑制されていることが分かる。
数CL=0.40の状態でエンジンナセルの前端を主翼
上面のX/C=85%の位置に配置した場合の圧力分布
を示すものである。図13と比較すると明らかなよう
に、エンジンナセルの位置が5%後退したことにより、
前方の負圧ピークが高くなって後方の負圧ピークが消滅
しており、全体として中央部に負圧ピークを有する凸状
分布になっている。その結果、翼弦の60%付近に比較
的に圧力勾配の大きい領域が発生しているが、その圧力
勾配はエンジンナセル無しの場合の圧力勾配(図10参
照)に比べて小さくなっており、衝撃波の発生を抑制す
る効果が一応は認められる。
数CL=0.40の状態でエンジンナセルの前端を主翼
上面のX/C=65%の位置に配置した場合の圧力分布
を示すものである。図13と比較すると明らかなよう
に、エンジンナセルの位置が15%前進したことによ
り、前方の負圧ピークが消滅した代わりに後方の強い負
圧ピークが発生しており、そこに衝撃波が発生して抗力
発散マッハ数MDDを低下させていることが分かる。
由は以下のように考えられる。主翼の上面にエンジンナ
セルを配置すると、そのエンジンナセルの前方に形成さ
れた主流の減速領域(図12参照)が主翼上面の空気流
と重ね合わされ、その主翼上面の空気流が部分的に減速
される。従って、主翼上面の空気流の流速が高い位置、
すなわち衝撃波が発生する位置にエンジンナセルの前方
の減速領域を重ね合わせれば、その部分の負圧を臨界圧
力係数CP* 以下に低下させて衝撃波の発生および造波
抵抗の増加を抑制し、その結果として抗力発散マッハ数
MDDを高めることができる。
することなく、また主翼の後退角を増加させることなく
造波抵抗を低減することができるので、低速飛行時の失
速特性の悪化等を招くことなく飛行機の巡航速度を増加
させることができる。しかも主翼の後退角を減少させる
ことにより低抵抗の層流翼型を採用することができるの
で、巡航時の燃料節減効果を更に高めることができる。
り、それを胴体に支持した場合に比べて以下のような利
点がある。すなわち、胴体にエンジンを支持するための
構造物が胴体内を貫通しないのでキャビンのスペースを
広く確保することができるだけでなく、元々剛性の高い
主翼にエンジンを支持することにより構造重量を軽減す
るとともに、飛行中に揚力によって主翼の翼根に作用す
る曲げモーメントをエンジンの重量で軽減して構造重量
を軽減することができる。
明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行う
ことが可能である。
ジンナセルNに限定されず、その前方に主流の減速領域
を発生させ得るものであれば良い。またパイロンPを主
翼Wの上面に設ける代わりに胴体Fの側面に設けること
ができる。
によれば、主翼上面空気流の後部上方の主流内に流体素
子を配置すると、流体素子の前方に発生する主流の減速
領域との重ね合わせにより主翼上面空気流が減速するた
め、主翼の上面の負圧を低下させて衝撃波の発生を抑制
することができる。これにより、遷音速領域における造
波抵抗の発生を遅らせて抗力発散マッハ数を増加させ、
巡航速度を高めることができる。
主翼上面の負圧が臨界圧力係数以上の状態から以下の状
態に変化する基準点、すなわち主翼上面空気流の流速が
音速以上の状態から音速以下の状態に変化する基準点か
ら翼弦長の5%前方位置よりも後方に流体素子の前端を
配置すると、流体素子により発生する主流の減速領域を
主翼上面空気流と効果的に重ね合わせて衝撃波の発生を
確実に抑制することができる。
流体素子の前端と主翼の前縁との前後方向距離を翼弦長
の68%〜100%に設定すると、衝撃波の抑制効果を
発揮させることができる。
流体素子の前端と主翼の前縁との前後方向距離を翼弦長
の75%〜85%に設定すると、衝撃波の抑制効果を更
に効果的に発揮させることができる。
流体素子の前端と主翼の前縁との前後方向距離の増加に
伴って流体素子の下面と主翼の上面との上下方向距離を
減少させると、流体素子の前後方向距離が変化しても衝
撃波の抑制効果を維持することができる。
ガスタービンエンジンを覆う概略円筒状のエンジンナセ
ルを流体素子として利用して衝撃波の抑制効果を発揮さ
せるので、特別の流体素子を新たに設ける必要がない。
エンジンナセルの前端の位置が前方過ぎると当初の衝撃
波の発生は抑制されるが、主翼の翼弦の後部側に新たな
衝撃波が発生してしまう。そこで主翼上面の負圧が臨界
圧力係数以下に変化する基準点、すなわち主翼上面空気
流の流速が音速以上の状態から音速以下の状態に変化す
る基準点から翼弦長の5%前方位置よりも後方にエンジ
ンナセルの前端を配置すると、エンジンナセルにより発
生する主流の減速領域を主翼上面空気流と効果的に重ね
合わせて衝撃波の発生を確実に抑制することができる。
またエンジンナセルの前端の位置が後方過ぎると、エン
ジンナセルにより発生する主流の減速領域の影響が小さ
くなって衝撃波の発生を抑制する効果が減少してしま
う。そこで前記基準点よりもエンジンナセルのリップ前
縁の直径に等しい距離だけ後方位置よりも前方にエンジ
ンナセルの前端を配置すると、エンジンナセルにより発
生する主流の減速領域を主翼上面空気流と効果的に重ね
合わせて衝撃波の発生を確実に抑制することができる。
主翼の上面とエンジンナセルの下面との上下方向距離を
エンジンナセルの外径の30%〜100%に設定する
と、流体素子の前後方向距離が変化しても衝撃波の抑制
効果を維持することができる。
エンジンナセルをパイロンを介して主翼上面に取り付け
ると、エンジンナセルを胴体に取り付ける場合に比べて
胴体のキャビンスペースを広く確保することができ、し
かも揚力により主翼の翼根部に作用する曲げモーメント
をエンジンの慣性重量で軽減して構造重量の軽減に寄与
することができる。
視図
タの説明図
タの説明図
ラメータの説明図
を示すグラフ
MDDとの関係を示すグラフ
フ
抗力係数CDtotal から形状抗力係数CD0 を引いた抗
力係数と抗力発散マッハ数MDDとの関係を示すグラフ
の全機の抗力係数CDtotal を示すグラフ
分布を示すグラフ
す図
翼弦に沿う圧力分布を示すグラフ
翼弦に沿う圧力分布を示すグラフ
翼弦に沿う圧力分布を示すグラフ
状を示す図
状を示す図
状を示す図
距離 Y 胴体のスパン方向外端から流体素子のスパ
ン方向内端までのスパン方向距離 Z 流体素子の下面と主翼の上面との上下方向
距離
Claims (9)
- 【請求項1】 遷音速で巡航する飛行機の主翼(W)の
上面に負圧を発生させる主翼上面空気流の後部上方の主
流内に流体素子(N)を配置し、該流体素子(N)の前
方に発生する主流の減速領域と前記主翼上面空気流とを
重ね合わせて該主翼上面空気流を減速することにより、
前記主翼(W)の上面の負圧を低下させて衝撃波の発生
を抑制することを特徴とする飛行機の造波抵抗低減方
法。 - 【請求項2】 前記主翼上面空気流が音速になるときの
負圧を臨界圧力係数(CP* )とし、主翼(W)の上面
の翼弦方向の圧力分布が前記臨界圧力係数(CP* )以
上の状態から以下の状態に変化する基準点(R)を翼弦
上に設定し、前記基準点(R)から翼弦長(C)の5%
前方位置よりも後方に前記流体素子(N)の前端を配置
することを特徴とする、請求項1に記載の飛行機の造波
抵抗低減方法。 - 【請求項3】 前記流体素子(N)の前端と主翼(W)
の前縁との前後方向距離(X)が、翼弦長(C)の68
%〜100%であることを特徴とする、請求項1に記載
の飛行機の造波抵抗低減方法。 - 【請求項4】 前記流体素子(N)の前端と主翼(W)
の前縁との前後方向距離(X)が、翼弦長(C)の75
%〜85%であることを特徴とする、請求項1に記載の
飛行機の造波抵抗低減方法。 - 【請求項5】 前記流体素子(N)の前端と主翼(W)
の前縁との前後方向距離(X)の増加に伴って、前記流
体素子(N)の下面と主翼(W)の上面との上下方向距
離(Z)を減少させることを特徴とする、請求項1に記
載の飛行機の造波抵抗低減方法。 - 【請求項6】 前記流体素子(N)がガスタービンエン
ジンを覆う概略円筒状のエンジンナセルであることを特
徴とする、請求項1に記載の飛行機の造波抵抗低減方
法。 - 【請求項7】 前記主翼上面空気流が音速になるときの
負圧を臨界圧力係数(CP* )とし、主翼(W)の上面
の翼弦方向の圧力分布が前記臨界圧力係数(CP* )以
上の状態から以下の状態に変化する基準点(R)を翼弦
上に設定し、前記基準点(R)よりも翼弦長(C)の5
%前方位置と、前記基準点(R)よりもエンジンナセル
(N)のリップ前縁の直径(DLIP )に等しい距離だけ
後方位置との間に、前記エンジンナセル(N)の前端を
配置することを特徴とする、請求項6に記載の飛行機の
造波抵抗低減方法。 - 【請求項8】 主翼(W)の上面とエンジンナセル
(N)の下面との上下方向距離(Z)が、該エンジンナ
セル(N)の外径(D)の30%〜100%であること
を特徴とする、請求項6に記載の飛行機の造波抵抗低減
方法。 - 【請求項9】 主翼(W)の上面に立設したパイロン
(P)を介してエンジンナセル(N)を支持したことを
特徴とする、請求項6に記載の飛行機の造波抵抗低減方
法。
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