ユメノさんが遺した言葉
私のパソコンにユメノさんを最初に取材した際の音声が残っていた。オンラインで取材を始めたが、途中で上手くいかず電話に切り替えたのだ。その音声が残っていた。聞くのがつらく、頭のほうしか再生できなかった。しかし、池添さんが書いた「彼女の生きた証」という言葉がこころにあった。カナタくんに聞いてもらってはどうかと提案した。
池添さんは「そんなん残ってたんや。嬉しい。ぜひ聞かせてあげたい」と喜んだが、「でも、カナタの状態次第やな。あの子がもう大丈夫、ってなるまでタイミングを見よう」と私たちは待った。
ユメノさんの一周忌が近づいたころ、池添さんから「新しい児童施設に移ってかなり落ち着いてる。1年遅れだけど高校にも通うことになった。いいタイミングかもしれない」と連絡をもらった。
16歳に成長したカナタくんと、入所している児童施設で初めて会った。マスクの上から澄んだ瞳がのぞいていた。スマホに移したインタビューの音声データを聞いてもらった。
「どうも、よろしくお願いいたします」
ユメノさんの明るい声が部屋に響いた。ハキハキとインタビューに答えていた。記事にしなかったので忘れていたが、私は最後に「お母さんはこれからのカナタくんの将来とかについてどういうふうに思ってますか?」と尋ねていた。彼女は「もう、なんかね、好きを追求して欲しいなって思ってる」と言った。希望に満ちた声だった。今思えば、目の前の子どもが不登校の母親に対し、我ながらよくぞこんな質問をしたものだと驚く。だが、彼女がこころの底から息子を信頼していると感じたからこそつい聞いてしまったのだろう。