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WO2026022969A1 - 切削工具 - Google Patents

切削工具

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WO2026022969A1
WO2026022969A1 PCT/JP2024/026444 JP2024026444W WO2026022969A1 WO 2026022969 A1 WO2026022969 A1 WO 2026022969A1 JP 2024026444 W JP2024026444 W JP 2024026444W WO 2026022969 A1 WO2026022969 A1 WO 2026022969A1
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titanium carbonitride
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titanium
carbonitride layer
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PCT/JP2024/026444
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French (fr)
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将仁 引地
貴翔 山西
敦洋 米田
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Sumitomo Electric Hardmetal Corp
Original Assignee
Sumitomo Electric Hardmetal Corp
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Publication date
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Abstract

基材と上記基材の上に設けられている被膜とを備える切削工具であって、 上記被膜は、 上記基材の上に設けられているアルミナ層と、 上記アルミナ層の直上に設けられている中間層と、 上記中間層の直上に設けられている炭窒化チタン層と、を含み、 上記中間層は、炭窒酸化チタンからなり、 上記炭窒化チタン層は、Ti(1-y)で表される化合物からなり、 上記中間層と上記炭窒化チタン層との界面Iから厚み方向に上記炭窒化チタン層の側に0.2μm離れた地点Aにおいて、 上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、1.3以上1.6以下であり、 上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.4以上0.6以下であり、 上記界面Iの反対側に位置する上記炭窒化チタン層における界面Jから厚み方向に上記炭窒化チタン層の側に1.0μm離れた地点Bにおいて、 上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、0.8以上1.2以下であり、 上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.3以上0.5以下であり、 上記地点Aと上記地点Bとの中点である地点Cにおいて、 上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、上記原子比xを超えて上記原子比x未満であり、 上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、上記原子比yを超えて上記原子比y未満であり、 上記中間層の厚みは、0.5μm以上1.5μm以下であり、 上記炭窒化チタン層の厚みは、1.5μm以上3.5μm以下である、切削工具。

Description

切削工具
 本開示は、切削工具に関する。
 従来より、基材上に被膜を被覆した切削工具が用いられている。たとえば、特表2020-516469号公報(特許文献1)は、耐摩耗性多層コーティングでコーティングされた基材を備える、コーティングされた切削工具であって、該耐摩耗性多層コーティングは、α-Al層と、該α-Al層上に堆積された、炭窒化チタン層Ti1-y(式中、0.85≦x≦1.3、好ましくは1.1≦x≦1.3、0.4≦y≦0.85)とを含むものであり、ここでTi1-yは、X線回折によりCuKα線及びθ~2θスキャンを用いて測定して、ハリス式により規定される組織係数TC(hkl)を示し、使用される(hkl)反射は、(1 1 1)、(2 0 0)、(2 2 0)、(3 1 1)、(3 3 1)、(4 2 0)、及び(4 2 2)であり、かつTC(1 1 1)≧3である、コーティングされた切削工具を開示している。
 また、国際公開第2021/193676号(特許文献2)は、基体と、該基体の上に位置する被覆層とを有する被覆工具であって、前記被覆工具は、第1面と、該第1面と隣り合う第2面と、前記第1面と前記第2面の稜線部の少なくとも一部に位置する切刃とを備え、前記被覆層は、Al粒子を含有する第1層と、該第1層の上に位置する第2層とを有する第1被覆層を有し、前記第2層は、前記基体の側から順に、第1膜と、該第1膜に接する第2膜と、該第2膜に接する第3膜とを有し、前記第1膜、前記第2膜および前記第3膜は、それぞれTiを含有し、前記第1膜、前記第2膜および前記第3膜は、それぞれCおよびNから選ばれる少なくとも1種を含有し、前記第1膜に含まれるN含有量を第1N量とし、前記第2膜に含まれるN含有量を第2N量とし、前記第3膜に含まれるN含有量を第3N量とした場合、第1N量>第3N量>第2N量の関係を充足する、被覆工具を開示している。
特表2020-516469号公報 国際公開第2021/193676号
 本開示に係る切削工具は、
 基材と前記基材の上に設けられている被膜とを備える切削工具であって、
 前記被膜は、
  前記基材の上に設けられているアルミナ層と、
  前記アルミナ層の直上に設けられている中間層と、
  前記中間層の直上に設けられている炭窒化チタン層と、を含み、
 前記中間層は、炭窒酸化チタンからなり、
 前記炭窒化チタン層は、Ti(1-y)で表される化合物からなり、
 前記中間層と前記炭窒化チタン層との界面Iから厚み方向に前記炭窒化チタン層の側に0.2μm離れた地点Aにおいて、
  前記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、1.3以上1.6以下であり、
  前記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.4以上0.6以下であり、
 前記界面Iの反対側に位置する前記炭窒化チタン層における界面Jから厚み方向に前記炭窒化チタン層の側に1.0μm離れた地点Bにおいて、
  前記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、0.8以上1.2以下であり、
  前記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.3以上0.5以下であり、
 前記地点Aと前記地点Bとの中点である地点Cにおいて、
  前記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、前記原子比xを超えて前記原子比x未満であり、
  前記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、前記原子比yを超えて前記原子比y未満であり、
 前記中間層の厚みは、0.5μm以上1.5μm以下であり、
 前記炭窒化チタン層の厚みは、1.5μm以上3.5μm以下である。
図1は、切削工具の基材の一態様を例示する斜視図である。 図2は、本実施形態の一態様における切削工具の模式断面図である。 図3は、本実施形態の他の態様における切削工具の模式断面図である。 図4は、本実施形態の一態様における被覆層の模式断面図である。 図5は、被膜の製造に用いられる化学気相蒸着装置の一例を示す模式断面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
 特許文献1及び特許文献2に開示されている切削工具では、上記のような構成の被膜を有することにより、耐摩耗性が向上し、以って切削工具の寿命が長くなることが期待されている。さらに、特許文献2に開示されている切削工具では、耐摩耗性と共に耐溶着性も向上している。
 しかしながら、近年の切削加工においては、高速化及び高能率化が進行し、切削工具にかかる負荷が増大し、切削工具の寿命が短期化する傾向があった。このため、切削工具の被膜の機械特性(例えば、耐摩耗性、耐剥離性及び耐欠損性等)を更に向上させることが求められている。
 本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性及び耐剥離性に優れる切削工具を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
 本開示によれば、耐摩耗性及び耐剥離性に優れる切削工具を提供することが可能になる。
 [本開示の実施形態の説明]
 最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
 [1]本開示に係る切削工具は、
 基材と上記基材の上に設けられている被膜とを備える切削工具であって、
 上記被膜は、
  上記基材の上に設けられているアルミナ層と、
  上記アルミナ層の直上に設けられている中間層と、
  上記中間層の直上に設けられている炭窒化チタン層と、を含み、
 上記中間層は、炭窒酸化チタンからなり、
 上記炭窒化チタン層は、Ti(1-y)で表される化合物からなり、
 上記中間層と上記炭窒化チタン層との界面Iから厚み方向に上記炭窒化チタン層の側に0.2μm離れた地点Aにおいて、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、1.3以上1.6以下であり、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.4以上0.6以下であり、
 上記界面Iの反対側に位置する上記炭窒化チタン層における界面Jから厚み方向に上記炭窒化チタン層の側に1.0μm離れた地点Bにおいて、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、0.8以上1.2以下であり、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.3以上0.5以下であり、
 上記地点Aと上記地点Bとの中点である地点Cにおいて、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、上記原子比xを超えて上記原子比x未満であり、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、上記原子比yを超えて上記原子比y未満であり、
 上記中間層の厚みは、0.5μm以上1.5μm以下であり、
 上記炭窒化チタン層の厚みは、1.5μm以上3.5μm以下である。
 上記切削工具は、上述のような構成を備えることによって、耐摩耗性及び耐剥離性に優れる。ここで「耐摩耗性」とは、切削加工に用いた場合被膜が摩耗することに対する耐性を意味する。「耐剥離性」とは、切削加工に用いた場合中間層から炭窒化チタン層が剥離することに対する耐性を意味する。なお、耐剥離性は、「密着性」と表現することもできる。
 従来、炭窒化チタン層の上に炭窒酸化チタン層を形成することは行われていた。この場合、炭窒酸化チタンの針状結晶が炭窒化チタン層(柱状晶)の上に形成されている。そのため、当該針状結晶のアンカー効果によって両層の耐剥離性が向上している。しかしながら、炭窒化チタン層と炭窒酸化チタン層との積層順序を逆にして、両層の耐剥離性が向上している態様はこれまで知られていなかった。本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、炭窒酸化チタン層(中間層)の上に炭窒化チタン層を形成する場合、当該炭窒化チタン層の中間層側においてチタンの原子比を増やすことで、当該中間層を構成する炭素及び窒素が当該炭窒化チタン層に拡散しやすくなり、当該炭窒化チタン層の耐摩耗性を維持しつつ、両層の耐剥離性が向上することを初めて見いだした。
 [2]上記アルミナ層の厚みは、2μm以上20μm以下であってもよい。このように規定することで、耐摩耗性に更に優れる切削工具となる。
 [3]上記地点Aにおいて、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、1.4以上1.5以下であり、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.45以上0.55以下であってもよい。このように規定することで、耐剥離性に更に優れる切削工具となる。
 [4]上記地点Bにおいて、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、0.8以上1.1以下であり、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.3以上0.45以下であってもよい。このように規定することで、耐摩耗性に更に優れる切削工具となる。
 [5]上記被膜の厚みは、6μm以上30μm以下であってもよい。このように規定することで、耐摩耗性に更に優れる切削工具となる。
 [6]上記被膜は、上記基材と上記アルミナ層との間に設けられている下地層を更に含んでもよい。このように規定することで、耐摩耗性に更に優れる切削工具となる。
 [7]上記被膜は、上記炭窒化チタン層の上に設けられている表面層を更に含んでもよい。このように規定することで、使用済み刃先の視認性に優れる切削工具となる。
 [本開示の実施形態の詳細]
 以下、本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。本明細書において「X~Z」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちX以上Z以下)を意味し、Xにおいて単位の記載がなく、Zにおいてのみ単位が記載されている場合、Xの単位とZの単位とは同じである。さらに、本明細書において、例えば「TiC」等のように、構成元素の組成比が限定されていない化学式によって化合物が表された場合には、その化学式は従来公知のあらゆる組成比(元素比)を含むものとする。このとき上記化学式は、化学量論組成のみならず、非化学量論組成も含むものとする。例えば「TiC」の化学式には、化学量論組成「Ti」のみならず、例えば「Ti0.8」のような非化学量論組成も含まれる。このことは、「TiC」以外の化合物の記載についても同様である。
 ≪切削工具≫
 本開示に係る切削工具は、
 基材と上記基材の上に設けられている被膜とを備える切削工具であって、
 上記被膜は、
  上記基材の上に設けられているアルミナ層と、
  上記アルミナ層の直上に設けられている中間層と、
  上記中間層の直上に設けられている炭窒化チタン層と、を含み、
 上記中間層は、炭窒酸化チタンからなり、
 上記炭窒化チタン層は、Ti(1-y)で表される化合物からなり、
 上記中間層と上記炭窒化チタン層との界面Iから厚み方向に上記炭窒化チタン層の側に0.2μm離れた地点Aにおいて、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、1.3以上1.6以下であり、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.4以上0.6以下であり、
 上記界面Iの反対側に位置する上記炭窒化チタン層における界面Jから厚み方向に上記炭窒化チタン層の側に1.0μm離れた地点Bにおいて、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、0.8以上1.2以下であり、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.3以上0.5以下であり、
 上記地点Aと上記地点Bとの中点である地点Cにおいて、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、上記原子比xを超えて上記原子比x未満であり、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、上記原子比yを超えて上記原子比y未満であり、
 上記中間層の厚みは、0.5μm以上1.5μm以下であり、
 上記炭窒化チタン層の厚みは、1.5μm以上3.5μm以下である。
 本実施形態の切削工具50は、基材10と、上記基材10上に設けられている被膜40とを備える(以下、単に「切削工具」という場合がある。)(図2)。上記被膜40は、上記基材10の上に設けられているアルミナ層20と、上記アルミナ層20の直上に設けられている中間層21と、上記中間層21の直上に設けられている炭窒化チタン層22と、を含む。上記切削工具50は、上述の各層の他にも、上記基材10と上記アルミナ層20との間に設けられている下地層23を更に含んでいてもよい(図3)。上記切削工具50は、上記炭窒化チタン層22上に設けられている表面層24を更に含んでいてもよい(図3)。下地層23、及び表面層24等の他の層については、後述する。
 本実施形態の一側面において、上記被膜は、上記基材におけるすくい面を被覆していてもよいし、すくい面以外の部分(例えば、逃げ面)を被覆していてもよい。上記切削工具は、例えば、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ等であり得る。
 <基材>
 本実施形態の基材は、この種の基材として従来公知のものであればいずれの基材も使用することができる。例えば、上記基材は、超硬合金(例えば、炭化タングステン(WC)基超硬合金、WCの他にCoを含む超硬合金、WCの他にCr、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加した超硬合金等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等)、立方晶型窒化硼素焼結体(cBN焼結体)及びダイヤモンド焼結体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよく、超硬合金、サーメット及びcBN焼結体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
 これらの各種基材の中でも、特にWC基超硬合金又はcBN焼結体を選択してもよい。その理由は、これらの基材が特に高温における硬度と強度とのバランスに優れ、上記用途の切削工具の基材として優れた特性を有するためである。
 基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は、組織中に遊離炭素又はη相と呼ばれる異常相を含んでいても本実施形態の効果は示される。なお、本実施形態で用いる基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。例えば、超硬合金の場合はその表面に脱β層が形成されていたり、cBN焼結体の場合には表面硬化層が形成されていてもよく、このように表面が改質されていても本実施形態の効果は示される。
 図1は、切削工具の基材の一態様を例示する斜視図である。このような形状の基材は、例えば、旋削加工用刃先交換型切削チップの基材として用いられる。上記基材10は、すくい面1と、逃げ面2と、上記すくい面1と逃げ面2とが交差する刃先稜線部3とを有する。すなわち、すくい面1と逃げ面2とは、刃先稜線部3を挟んで繋がる面である。刃先稜線部3は、基材10の切刃先端部を構成する。このような基材10の形状は、上記切削工具の形状と把握することもできる。
 上記切削工具が刃先交換型切削チップである場合、上記基材10は、チップブレーカーを有する形状も、有さない形状も含まれる。刃先稜線部3の形状は、シャープエッジ(すくい面と逃げ面とが交差する稜)、ホーニング(シャープエッジに対してアールを付与した形状)、ネガランド(面取りをした形状)、ホーニングとネガランドを組み合わせた形状の中で、いずれの形状も含まれる。
 以上、基材10の形状及び各部の名称を、図1を用いて説明したが、本実施形態に係る切削工具50において、上記基材10に対応する形状及び各部の名称については、上記と同様の用語を用いることとする。すなわち、上記切削工具は、すくい面と、逃げ面と、上記すくい面及び上記逃げ面を繋ぐ刃先稜線部とを有する。
 <被膜>
 本実施形態に係る被膜40は、上記基材10の上に設けられているアルミナ層20と、上記アルミナ層20の直上に設けられている中間層21と、上記中間層21の直上に設けられている炭窒化チタン層22と、を含む(図2参照)。「被膜」は、上記基材の少なくとも一部(例えば、切削加工時に被削材と接するすくい面等)を被覆することで、切削工具における耐欠損性、耐摩耗性、耐溶着性、耐剥離性等の諸特性を向上させる作用を有するものである。上記被膜は、上記基材の一部に限らず上記基材の全面を被覆してもよい。しかしながら、上記基材の一部が上記被膜で被覆されていなかったり被膜の構成が部分的に異なっていたりしていたとしても本実施形態の範囲を逸脱するものではない。
 上記被膜の厚みは、6μm以上30μm以下であってもよいし、6μm以上25μm以下であってもよい。ここで、被膜の厚みとは、被膜を構成する層それぞれの厚みの総和を意味する。「被膜を構成する層」としては、例えば、後述するアルミナ層、中間層、炭窒化チタン層、下地層及び表面層等が挙げられる。上記被膜の厚みは、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、基材の表面の法線方向に平行な断面サンプルにおける任意の10点を測定し、測定された10点の厚みの平均値をとることで求めることが可能である。このとき上記断面サンプルの測定断面をイオンミリング処理により研磨するものとする。後述するアルミナ層、中間層、炭窒化チタン層、下地層及び表面層等のそれぞれの厚みを測定する場合も同様である。電界放出型走査電子顕微鏡としては、例えば、株式会社日立ハイテク製のSU3500(商品名)が挙げられる。イオンミリング処理する装置としては、例えば、株式会社日立ハイテク製のIM4000(商品名)が挙げられる。
 (アルミナ層)
 本実施形態におけるアルミナ層20は、上記基材10の上に設けられている。ここで「基材の上に設けられている」とは、基材の直上に設けられている態様(図2参照)に限られず、他の層を介して基材の上に設けられている態様(図3参照)も含まれる。すなわち、上記アルミナ層は、本開示の効果が奏する限りにおいて、上記基材の直上に設けられていてもよいし、後述する下地層等の他の層を介して上記基材の上に設けられていてもよい。
 上記アルミナ層は、酸化アルミニウム(Al)のみから構成されていてもよいし、酸化アルミニウム及び不可避不純物から構成されていてもよい。上記不可避不純物としては、例えば、塩素、硫黄等が挙げられる。上記酸化アルミニウムは、α型の酸化アルミニウム(α-Al)であってもよい。
 上記アルミナ層の厚みは、2μm以上20μm以下であってもよいし、3μm以上15μm以下であってもよいし、4μm以上10μm以下であってもよい。上記アルミナ層の厚みは、上述したのと同様の方法で、SEMを用いて基材と被膜の垂直断面を観察することにより確認することができる。
 (中間層)
 本実施形態に係る中間層21は、上記アルミナ層20の直上に設けられている(図2)。上記中間層は、炭窒酸化チタンからなる。本実施形態の一側面において、上記中間層は、炭窒酸化チタンのみから構成されていてもよいし、炭窒酸化チタンおよび不可避不純物から構成されていてもよい。上記不可避不純物としては、例えば、酸素、塩素等が挙げられる。
 上記中間層の厚みは、0.5μm以上1.5μm以下であり、0.6μm以上1.4μm以下であってもよいし、0.7μm以上1.3μm以下であってもよい。中間層の厚みは、上述したのと同様の方法で、SEMを用いて基材と被膜の垂直断面を観察することにより確認することができる。
 (炭窒化チタン層)
 本実施形態における炭窒化チタン層22は、上記中間層21の直上に設けられている。上記炭窒化チタン層は、Ti(1-y)で表される化合物からなる。上記炭窒化チタン層は、その上に表面層等の他の層が設けられていてもよい。また、上記炭窒化チタン層は、上記被膜の最表面であってもよい。
 (炭窒化チタン層の各地点における原子比)
 本実施形態において、上記炭窒化チタン層22における地点Aは、上記中間層21と上記炭窒化チタン層22との界面Iから厚み方向に上記炭窒化チタン層22の側に0.2μm離れた地点である(図4)。上記炭窒化チタン層22における地点Bは、上記界面Iの反対側に位置する上記炭窒化チタン層22における界面Jから厚み方向に上記炭窒化チタン層22の側に1.0μm離れた地点である(図4)。上記界面Jは、上記界面Iに対して平行であってもよい。本実施形態において「平行」とは、幾何学的な平行である場合に限られず、略平行である場合も含まれる概念である。上記炭窒化チタン層22が被膜の最表面に位置するとき、上記界面Jは、上記炭窒化チタン層22の表面と把握することができる。上記炭窒化チタン層の直上に他の層(例えば、表面層)が設けられている場合、上記界面Jは、上記炭窒化チタン層と上記他の層との界面と把握することができる。上記炭窒化チタン層22における地点Cは、上記地点Aと上記地点Bとの中点である地点である(図4)。上記地点Cは、上記地点Aと上記地点Bとを結ぶ直線上の地点であって、上記地点Aと上記地点Bそれぞれに対して等距離にある地点と把握することもできる。
 上記地点Aにおいて、上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、1.3以上1.6以下であり、1.4以上1.5以下であってもよい
 上記地点Aにおいて、上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.4以上0.6以下であり、0.45以上0.55以下であってもよい。
 本実施形態の一側面において、上記地点Aにおいて、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、1.4以上1.5以下であり、かつ、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.45以上0.55以下であってもよい。
 ここで「原子比x」および「原子比y」は、それぞれ「地点Aにおける原子比x」および「地点Aにおける原子比y」であることを意味する。後述する「原子比x」、「原子比y」、「原子比x」および「原子比y」についても同様である。これら原子比は、上記炭窒化チタン層における炭素の原子比と窒素の原子比との合計を基準とした原子比である。
 各元素(例えば、チタン、炭素、窒素、酸素)それぞれの原子比は、上述の基材の表面の法線方向に平行な断面サンプルに対して、SEMに付帯するエネルギー分散型X線分光分析装置(EDX装置)によって線分析を行うことで求めることが可能である。具体的には、まず、クロスセクションポリッシャ加工(CP加工)等によって上記断面サンプルの切断面を研磨する。研磨した切断面に対して、EDX装置を用いて中間層および炭窒化チタン層と交差する方向に沿って線分析を行う。上述の「中間層および炭窒化チタン層と交差する方向」は、更に界面Iに対して垂直となる方向であってもよい。このときの測定ピッチは、0.1μmである。EDX測定装置としては、例えば、日本電子株式会社製のJED-2300(商品名)が挙げられる。
 次に、上述の線分析の結果に基づいて、測定開始点からの距離をX軸(横軸)とし、測定対象の各元素の原子割合(at%)をY軸(縦軸)にプロットしたグラフを作成する。このグラフに基づいて酸素の原子割合が検出できない(1at%以下)となる地点であって、上記中間層により近い地点を「中間層と炭窒化チタン層との界面I」とする(図4参照)。また、このグラフに基づいて、炭素の原子割合が1at%となる地点であって、上記中間層から最も離れた地点を「界面J」とする。上記界面Iおよび上記界面Jから、上記地点A、上記地点Bおよび上記地点Cを定める。そして、上記グラフに基づいて上記地点A、上記地点Bおよび上記地点Cそれぞれにおける各元素の原子比を求める。
 上述のような測定を少なくとも3回行い、各測定で求められた各元素の原子比の平均値を、それぞれ「原子比x」、「原子比y」、「原子比x」、「原子比y」、「原子比x」および「原子比y」とする。
 上記地点Bにおいて、上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、0.8以上1.2以下であり、0.8以上1.1以下であってもよいし、0.9以上1.1以下であってもよい。
 上記地点Bにおいて、上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.3以上0.5以下であり、0.3以上0.45以下であってもよいし、0.3以上0.4以下であってもよい。
 本実施形態の一側面において、上記地点Bにおいて、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、0.8以上1.1以下であり、かつ、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.3以上0.45以下であってもよいし、
  上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、0.9以上1.1以下であり、かつ、
  上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.3以上0.4以下であってもよい。
 上記地点Cにおいて、上記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、上記原子比xを超えて上記原子比x未満である。
 上記地点Cにおいて、上記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、上記原子比yを超えて上記原子比y未満である。
 本実施形態の一側面において、上記炭窒化チタン層は、層中に界面があってもよいし、無くてもよい。このとき、層中に存在する界面は、上記界面Iおよび上記界面Jとはなりえないことは言うまでもない。
 従来、炭窒化チタン層の上に炭窒酸化チタン層を形成することは行われていた。この場合、炭窒酸化チタンの針状結晶が炭窒化チタン層(柱状晶)の上に形成されている。そのため、当該針状結晶のアンカー効果によって両層の耐剥離性が向上している。しかしながら、炭窒化チタン層と炭窒酸化チタン層との積層順序を逆にすると上述のアンカー効果が得られないため、炭窒酸化チタン層の直上に炭窒化チタン層を形成した際における両層の耐剥離性に改善の余地があった。本開示に係る炭窒化チタン層は、当該炭窒化チタン層の中間層側においてチタン原子が偏在している。そのため、上記中間層を構成する炭素及び窒素が当該炭窒化チタン層に拡散しやすくなり、当該炭窒化チタン層の耐摩耗性を維持しつつ、両層の結晶状態に依存することなく耐剥離性が向上する。
 上記炭窒化チタン層の厚みは、1.5μm以上3.5μm以下であり、1.7μm以上3.3μm以下であってもよいし、2.0μm以上3.0μm以下であってもよい。炭窒化チタン層の厚みは、上述したのと同様の方法で、SEMを用いて基材と被膜の垂直断面を観察することにより確認することができる。
 (下地層)
 上記被膜40は、上記基材10と上記アルミナ層20との間に設けられている下地層23を更に含んでいてもよい(図3参照)。上記下地層23は、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)又は炭窒酸化チタン(TiCNO)を含んでいてもよい。上記TiN、TiCN及びTiCNOそれぞれは、立方晶であってもよい。
 上記下地層の厚みは、3μm以上20μm以下であってもよく、5μm以上15μm以下であってもよい。このような厚みは、上述したのと同様にSEMを用いて基材と被膜の垂直断面を観察することにより確認することができる。
 (表面層)
 上記被膜40は、上記炭窒化チタン層22の上に設けられている表面層24を更に含んでいてもよい。上記表面層24は、チタン元素と、C、N及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を含んでいてもよい。本実施形態の一側面において、上記表面層の組成は、上記炭窒化チタン層の組成と異なっていてもよい。
 上記表面層24に含まれる化合物としては、例えば、TiC、TiN、TiCN及びTiB等が挙げられる。
 上記表面層の厚みは、0.1μm以上1.5μm以下であってもよく、0.2μm以上1.0μm以下であってもよい。このような厚みは、上述したのと同様にSEMを用いて基材と被膜の垂直断面を観察することにより確認することができる。
 (他の層)
 本実施形態に係る切削工具が奏する効果を損なわない範囲において、上記被膜は、他の層を更に含んでいてもよい。上記他の層は、上記アルミナ層、上記中間層、上記炭窒化チタン層、上記下地層又は上記表面層とは組成が異なっていてもよいし、同じであってもよい。他の層に含まれる化合物としては、例えば、TiN、TiCN、TiBN及びAl等を挙げることができる。なお、上記他の層は、その積層の順も特に限定されない。上記他の層の厚みは、本実施形態の効果を損なわない範囲において、特に制限はないが例えば、0.1μm以上20μm以下が挙げられる。
 ≪切削工具の製造方法≫
 本実施形態に係る切削工具の製造方法は、
 上記基材を準備する第1工程(以下、単に「第1工程」という場合がある。)と、
 化学気相蒸着法で、上記基材上に上記アルミナ層を形成する第2工程(以下、単に「第2工程」という場合がある。)と、
 化学気相蒸着法で、上記アルミナ層の直上に上記中間層を形成する第3工程(以下、単に「第3工程」という場合がある。)と、
 化学気相蒸着法で、上記中間層の直上に上記炭窒化チタン層を形成する第4工程(以下、単に「第4工程」という場合がある。)と、
を含み、
 上記第4工程において、950℃以上1030℃以下の温度下で、チタンを構成元素として含むガス、窒素を構成元素として含むガス及び炭素を構成元素として含むガスを含む原料ガスを用いて、上記チタンを構成元素として含むガスの流量を減少させながら、かつ、窒素を構成元素として含むガスの流量を増加させながら、上記炭窒化チタン層を形成させる。
 <第1工程:基材を準備する工程>
 第1工程では基材を準備する。例えば、基材として超硬合金基材が準備される。超硬合金基材は、市販品を用いてもよく、一般的な粉末冶金法で製造してもよい。一般的な粉末冶金法で製造する場合、例えば、ボールミル等によってWC粉末とCo粉末等とを混合して混合粉末を得る。該混合粉末を乾燥した後、所定の形状に成形して成形体を得る。さらに該成形体を焼結することにより、WC-Co系超硬合金(焼結体)を得る。次いで該焼結体に対して、ホーニング処理等の所定の刃先加工を施すことにより、WC-Co系超硬合金からなる基材を製造することができる。第1工程では、上記以外の基材であっても、この種の基材として従来公知の基材であればいずれも準備可能である。
 <第2工程:基材上にアルミナ層を形成する工程>
 第2工程では、化学気相蒸着法(CVD法)で、上記基材上にアルミナ層を形成する。また、上記第2工程において、アルミニウムを構成元素として含むガス、及び酸素を構成元素として含むガスを含む原料ガスを用いて、上記アルミナ層を形成させる。
 図5は、被膜の製造に用いられる化学気相蒸着装置(CVD装置)の一例を示す模式断面図である。以下図5を用いて第2工程について説明する。CVD装置30は、基材10を保持するための基材セット治具31の複数と、基材セット治具31を覆う耐熱合金鋼製の反応容器32とを備えている。また、反応容器32の周囲には、反応容器32内の温度を制御するための調温装置33が設けられている。反応容器32にはガス導入口34を有するガス導入管35が設けられている。ガス導入管35は、基材セット治具31が配置される反応容器32の内部空間において、鉛直方向に延在し当該鉛直方向を軸に回転可能に配置されている。また、上記ガス導入管35は、ガスを反応容器32内に噴出するための複数の噴出孔36が設けられている。このCVD装置30を用いて、次のようにして上記被膜を構成するアルミナ層等を形成することができる。
 まず、基材10を基材セット治具31に配置し、反応容器32内の温度および圧力を所定の範囲に制御しながら、上記アルミナ層用の原料ガスをガス導入管35から反応容器32内に導入させる。これにより、基材10上にアルミナ層20が形成される。ここで、上記アルミナ層20を形成する前に(すなわち、第2工程の前に)、下地層用の原料ガスをガス導入管35から反応容器32内に導入させることにより、基材10の表面に下地層(例えば、TiNを含む層)を形成してもよい。以下、基材10の表面に下地層を形成した後に、上記アルミナ層20を形成する方法について説明する。
 上記下地層用の原料ガスとしては、特に制限はないが例えばTiNの層を形成する場合は、TiCl及びNの混合ガスが挙げられる。TiCNの層を形成する場合、原料ガスとしては、例えば、TiCl、N、CHCN、CH、及びCの混合ガスが挙げられる。TiCNOの層を形成する場合、原料ガスとしては、例えば、TiCl、N、CO、及びCHの混合ガスが挙げられる。
 上記下地層を形成する際の反応容器32内の温度は、1000~1100℃に制御されていてもよい。上記下地層を形成する際の反応容器32内の圧力は0.1~1013hPaに制御されていてもよい。なお、キャリアガスとしては、Hを用いてもよい。また、ガス導入時、不図示の駆動部によりガス導入管35を回転させてもよい。これにより、反応容器32内において各ガスを均一に分散させることができる。
 さらに、上記下地層を、MT(Medium Temperature)-CVD法で形成してもよい。MT-CVD法は、1000~1100℃の温度で実施されるCVD法(以下、「HT-CVD法」ともいう。)とは異なり、反応容器32内の温度を850~950℃といった比較的低い温度に維持して層を形成する方法である。MT-CVD法は、HT-CVD法と比して比較的低温で実施されるため、加熱による基材10へのダメージを低減することができる。特に、上記下地層がTiN層である場合、MT-CVD法で形成してもよい。
 次に、上記下地層上に上記アルミナ層を形成する。原料ガスとしては、例えば、AlCl、CO、CO、HCl及びHSの混合ガスを用いてもよい。
 原料ガス中におけるAlClの含有割合は、1~5体積%であってもよいし、1.5~4体積%であってもよいし、2~3.5体積%であってもよい。AlClの流量は、例えば、0.5~3.5L/minであってもよい。
 原料ガス中におけるCOの含有割合は、0.5~4体積%であってもよいし、0.8~3.5体積%であってもよいし、1~2.5体積%であってもよい。COの流量は、例えば、0.5~2L/minであってもよい。
 原料ガス中におけるCOの含有割合は、0.2~2.5体積%であってもよいし、0.3~2体積%であってもよいし、0.5~1.5体積%であってもよい。COの流量は、例えば、0.4~1.5L/minであってもよい。
 原料ガス中におけるHClの含有割合は、1~6体積%であってもよいし、1.5~5.5体積%であってもよいし、2~4.5体積%であってもよい。HClの流量は、例えば、0.5~4.5L/minであってもよい。
 原料ガス中におけるHSの含有割合は、0.5~3.5体積%であってもよいし、1.0~3.0体積%であってもよいし、1.5~2.5体積%であってもよい。HSの流量は、例えば、0.3~2.5L/minであってもよい。
 反応容器32内の温度は950~1000℃に制御されていてもよい。反応容器32内の圧力は50~100hPaに制御されていてもよい。また、キャリアガスとしてはHを用いることができる。なお、ガス導入時、ガス導入管35を回転させてもよいことは、上記と同様である。
 上記製造方法に関し、CVD法の各条件を制御することによって、各層の態様が変化する。たとえば、反応容器32内に導入する原料ガスの組成によって、各層の組成が決定される。実施時間(成膜時間)により、各層の厚みが制御される。
 <第3工程:アルミナ層の直上に中間層を形成する工程>
 第3工程では、化学気相蒸着法で、上記アルミナ層の直上に上記中間層を形成する。上記中間層は、炭窒酸化チタンからなる。
 炭窒酸化チタンの層の原料ガスとしては、例えば、TiCl、CH、N及びCOの混合ガスを用いてもよい。
 原料ガス中におけるTiClの含有割合は、2~7体積%であってもよいし、3~6体積%であってもよいし、3.5~5.5体積%であってもよい。TiClの流量は、例えば、1.4~4.9L/minであってもよい。
 原料ガス中におけるCHの含有割合は、2~7体積%であってもよいし、2.5~6.5体積%であってもよいし、3~6体積%であってもよい。CHの流量は、例えば、1~5L/minであってもよい。
 原料ガス中におけるNの含有割合は、5~35体積%であってもよいし、7.5~30体積%であってもよいし、10~25体積%であってもよい。Nの流量は、例えば、3.5~24.5L/minであってもよい。
 原料ガス中におけるCOの含有割合は、1.5~4.5体積%であってもよいし、2.0~4.0体積%であってもよいし、2.5~3.5体積%であってもよい。COの流量は、例えば、0.8~2.3L/minであってもよい。
 反応容器32内の温度は950~1000℃に制御されていてもよい。反応容器32内の圧力は50~200hPaに制御されていてもよい。また、キャリアガスとしてはHを用いることができる。なお、ガス導入時、ガス導入管35を回転させてもよいことは、上記と同様である。
 <第4工程:中間層の直上に炭窒化チタン層を形成する工程>
 第4工程では、化学気相蒸着法で、上記中間層の直上に炭窒化チタン層を形成する。上記第4工程において、950℃以上1030℃以下の温度下で、チタンを構成元素として含むガス、窒素を構成元素として含むガス及び炭素を構成元素として含むガスを含む原料ガスを用いて、上記チタンを構成元素として含むガスの流量を減少させながら、かつ、窒素を構成元素として含むガスの流量を増加させながら、上記炭窒化チタン層を形成させる。本実施形態の一側面において、上記第4工程における原料ガスの流量は、80~120L/minであってもよい。上記原料ガスの流量は、原料ガスを構成するガスそれぞれの流量の総和と把握することもできる。
 原料ガスとしては、例えば、TiCl(チタンを構成元素として含むガス)、CH(炭素を構成元素として含むガス)、CHCN、及びN(窒素を構成元素として含むガス)の混合ガスを用いる。
 原料ガス中におけるTiClの含有割合は、0.5~4体積%であってもよいし、1.0~3.5体積%であってもよいし、1.5~3.0体積%であってもよい。TiClの流量は、例えば、0.35~2.8L/minであってもよい。
 原料ガス中におけるCHの含有割合は、2~7体積%であってもよいし、2.5~6.5体積%であってもよいし、3~6体積%であってもよい。CHの流量は、例えば、1~5L/minであってもよい。
 原料ガス中におけるCHCNの含有割合は、0.1~0.5体積%であってもよいし、0.1~0.4体積%であってもよいし、0.1~0.3体積%であってもよい。CHCNの流量は、例えば、0.07~0.35L/minであってもよい。
 原料ガス中におけるNの含有割合は、5~60体積%であってもよいし、7.5~55体積%であってもよいし、10~50体積%であってもよい。Nの流量は、例えば、3.5~42L/minであってもよい。
 反応容器32内の温度は950~1000℃に制御されていてもよい。反応容器32内の圧力は50~200hPaに制御されていてもよい。また、キャリアガスとしてはHを用いることができる。なお、ガス導入時、ガス導入管35を回転させてもよいことは、上記と同様である。
 本実施形態の一側面において、上記第4工程を行う際の温度は、950℃以上1030℃以下であってもよいし、980℃以上1010℃以下であってもよい。
 上記第4工程において、上記チタンを構成元素として含むガスの流量を減少させる際の減少速度は、0.05L/min以上0.5L/min以下であってもよいし、0.05L/min以上0.3L/min以下であってもよい。
 上記第4工程において、上記窒素を構成元素として含むガスの流量を増加させる際の増加速度は、0.01L/min以上1.0L/min以下であってもよいし、0.05L/min以上0.5L/min以下であってもよい。
 <その他の工程>
 本実施形態に係る製造方法では、上述した工程の他にも、本実施形態の効果を損なわない範囲で追加工程を適宜行ってもよい。上記追加工程としては例えば、上記炭窒化チタン層上に表面層を形成する工程、及び被膜にブラスト処理を行う工程等が挙げられる。表面層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、CVD法等によって形成する方法が挙げられる。
 以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
 ≪切削工具の作製≫
 <第1工程:基材を準備する工程>
 基材として、TaC(2.0質量%)、NbC(1.0質量%)、Co(10.0質量%)及びWC(残部)からなる組成(ただし不可避不純物を含む。)の超硬合金製切削チップ(形状:CNMG120408N-UX、住友電工ハードメタル株式会社製、JIS B4120(2013))を準備した。
 <下地層を形成する工程>
 試料21、23および24については、後述の第2工程の前に、準備した基材に対し、CVD装置を用いて、表1に記載の原料ガス組成及び成膜条件で下地層を形成させた。なお、成膜時間は表5-2に示される厚みとなるように適宜調整した。また、下地層の厚み及び下地層の組成を表5-2に示す。表5-2において、下地層の組成は厚みと共に記載している。例えば、「TiCN(3)」との表記は、TiCNの層(厚み3μm)が形成されていることを意味する。
 <第2工程:基材上にアルミナ層を形成する工程>
 準備した基材、又は下地層が形成された基材に対し、CVD装置を用いて、アルミナ層を形成させて、後工程の第3工程に移った。アルミナ層の形成条件を表2に示す。なお、成膜時間は表5-1および表5-2に示される厚みとなるように適宜調整した。また、アルミナ層の厚みを表5-1および表5-2に示す。
 <第3工程:アルミナ層の直上に中間層を形成する工程>
 次に、上記アルミナ層が形成された基材に対し、CVD装置を用いて、アルミナ層の直上に中間層(炭窒酸化チタンからなる層)を形成した。中間層の形成条件を表3に示す。なお、成膜時間は表5-1および表5-2に示される厚みとなるように適宜調整した。また、中間層の厚みを表5-1および表5-2に示す。
 <第4工程:中間層の直上に炭窒化チタン層を形成する工程>
 次に、上記中間層が形成された基材に対し、CVD装置を用いて、中間層の直上に炭窒化チタン層を形成した。炭窒化チタン層の形成条件を表4-1から表4-4に示す。試料21から試料24については、試料18と同じ形成条件を用いた。第4工程では、表4-1から表4-4に示すように、序盤(5分間)→中盤(50分間)→終盤(10分間)で原料ガスの組成を変化させて炭窒化チタン層を形成した。具体的には、TiClガスを減少させながら、かつNガスを増加させながら成膜した。なお、成膜時間は表5-1および表5-2に示される厚みとなるように適宜調整した。また、炭窒化チタン層の厚みを表5-1および表5-2に示す。
 <表面層を形成する工程>
 試料22から試料24については、上記炭窒化チタン層が形成された基材に対し、CVD装置を用いて、表面層を形成させた。表面層の形成条件を以下に示す。また、表面層の厚み及び組成を表5-2に示す。なお、表5-1および表5-2において「-」で示されている箇所は、該当する層が設けられていないことを意味する。
 (TiNの場合)
原料ガス組成:TiCl(8.0vol%)、N(35.0vol%)、H(残部)
全ガス流量:60L/min
圧力  :300hPa
温度  :1005℃
 (TiCの場合)
原料ガス組成:TiCl(3.5vol%)、CH(4.5vol%)、H(残部)
全ガス流量:40L/min
圧力  :80hPa
温度  :1005℃
 以上の手順によって、試料1から試料24の切削工具を作製した。ここで、試料2から試料4、試料7から試料9、試料12から試料14、試料17から試料19及び試料21から試料24は実施例に相当し、試料1、5、6、10、11、15、16及び20は比較例に相当する。
 ≪切削工具の特性評価≫
 上述のようにして作製した試料の切削工具を用いて、以下のように、切削工具の各特性を評価した。
 <被膜を構成する各層の厚みの測定>
 被膜を構成する各層の厚みは、電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテク製、商品名:SU3500)を用いて、基材の表面の法線方向に平行な断面サンプルにおける任意の10点を測定し、測定された10点の厚みの平均値をとることで求めた。このとき上記断面サンプルの測定断面をイオンミリング処理(株式会社日立ハイテク製、商品名:IM4000)により研磨してから測定した。結果を表5-1および表5-2に示す。
 <炭窒化チタン層の各地点における原子比(EDX測定)>
 炭窒化チタン層の地点A、地点Bおよび地点Cそれぞれにおける各元素(チタン、炭素、窒素、酸素)の原子比は、上述の基材の表面の法線方向に平行な断面サンプルに対して、SEMに付帯するエネルギー分散型X線分光分析装置(EDX装置)によって線分析を行うことで求めた。具体的には、まず、クロスセクションポリッシャ加工によって上記断面サンプルの切断面を研磨した。研磨した切断面に対して、EDX装置を用いて中間層および炭窒化チタン層と交差する方向(後述する界面Iに対して垂直となる方向)に沿って線分析を行った。このときの測定ピッチは、0.1μmであった。
 (EDX装置による測定の条件)
測定装置  :日本電子株式会社製、商品名:JED-2300
 上述の線分析の結果に基づいて、測定開始点からの距離をX軸(横軸)とし、測定対象の各元素の原子割合(at%)をY軸(縦軸)にプロットしたグラフを作成した。このグラフに基づいて酸素の原子割合が検出できない(1at%以下)となる地点であって、上記中間層により近い地点を「中間層と炭窒化チタン層との界面I」とした(例えば、図4参照)。また、このグラフに基づいて、炭素の原子割合が1at%となる地点であって、上記中間層から最も離れた地点を「界面J」とした(例えば、図4参照)。上記界面Iおよび上記界面Jに基づいて、上記グラフから炭窒化チタン層の地点A、地点Bおよび地点Cを以下の様に定めた(例えば、図4参照)。
 地点A:界面Iから厚み方向に上記炭窒化チタン層の側に0.2μm離れた地点
 地点B:界面Jから厚み方向に上記炭窒化チタン層の側に1.0μm離れた地点
 地点C:上記地点Aと上記地点Bとを結ぶ直線上の地点であって、上記地点Aと上記地点Bそれぞれに対して等距離にある地点
 そして、上記グラフに基づいて、炭窒化チタン層の地点A、地点Bおよび地点Cそれぞれにおける各元素の原子比を求めた。このような測定を3回行い、各測定で求められた各元素の原子比の平均値を、それぞれ「原子比x」、「原子比y」、「原子比x」、「原子比y」、「原子比x」および「原子比y」とした。結果を表6-1および表6-2に示す。表6-1および表6-2における各原子比は、上記炭窒化チタン層における炭素の原子比と窒素の原子比との合計を基準とした原子比である。
 ≪切削試験≫
 (切削評価:連続加工試験、耐摩耗性および耐剥離性の評価)
 上述のようにして作製した試料(試料1から試料24)の切削工具を用いて、以下の切削条件により切削加工を行い、切削時間1分ごとに逃げ面における基材の露出面積(mm)を測定した。この露出面積が0.2mmを超えた時間を切削工具の寿命として記録した。結果を表6-1および表6-2に示す。切削時間が長いほど逃げ面における耐摩耗性に優れる切削工具として評価することができる。また、切削時間が長いほど耐剥離性に優れる切削工具として評価することができる。耐剥離性が高いと、上記炭窒化チタン層が剥離することなく、逃げ面の摩耗を抑制するからである。
連続加工の切削条件
被削材 :SCM440(形状:丸棒)
切削速度:250m/min
送り速度:0.2mm/rev
切込み :2.0mm
切削油 :あり(湿式)
 表6-1および表6-2の結果より、試料2から試料4、試料7から試料9、試料12から試料14、試料17から試料19及び試料21から試料24の切削工具(実施例の切削工具)は、切削評価における切削時間が12分以上の良好な結果が得られた。一方試料1、5、6、10、11、15、16及び20の切削工具(比較例の切削工具)は、切削評価における切削時間が10分未満であった。以上の結果から、実施例の切削工具は、比較例の切削工具に比べて耐摩耗性および耐剥離性に優れることが分かった。
 以上の結果から、実施例の切削工具は、比較例の切削工具に比べて耐摩耗性および耐剥離性に優れることが分かった。
 以上のように本発明の実施形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態及び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
 今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
 1 すくい面、 2 逃げ面、 3 刃先稜線部、 10 基材、 20 アルミナ層、 21 中間層、 22 炭窒化チタン層、 23 下地層、 24 表面層、 30 CVD装置、 31 基材セット治具、 32 反応容器、 33 調温装置、 34 ガス導入口、 35 ガス導入管、 36 噴出孔、 40 被膜、 50 切削工具、 A 地点A、 B 地点B、 C 地点C、 I 界面I、 J 界面J

Claims (7)

  1.  基材と前記基材の上に設けられている被膜とを備える切削工具であって、
     前記被膜は、
      前記基材の上に設けられているアルミナ層と、
      前記アルミナ層の直上に設けられている中間層と、
      前記中間層の直上に設けられている炭窒化チタン層と、を含み、
     前記中間層は、炭窒酸化チタンからなり、
     前記炭窒化チタン層は、Ti(1-y)で表される化合物からなり、
     前記中間層と前記炭窒化チタン層との界面Iから厚み方向に前記炭窒化チタン層の側に0.2μm離れた地点Aにおいて、
      前記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、1.3以上1.6以下であり、
      前記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.4以上0.6以下であり、
     前記界面Iの反対側に位置する前記炭窒化チタン層における界面Jから厚み方向に前記炭窒化チタン層の側に1.0μm離れた地点Bにおいて、
      前記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、0.8以上1.2以下であり、
      前記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.3以上0.5以下であり、
     前記地点Aと前記地点Bとの中点である地点Cにおいて、
      前記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、前記原子比xを超えて前記原子比x未満であり、
      前記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、前記原子比yを超えて前記原子比y未満であり、
     前記中間層の厚みは、0.5μm以上1.5μm以下であり、
     前記炭窒化チタン層の厚みは、1.5μm以上3.5μm以下である、切削工具。
  2.  前記アルミナ層の厚みは、2μm以上20μm以下である、請求項1に記載の切削工具。
  3.  前記地点Aにおいて、
      前記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、1.4以上1.5以下であり、
      前記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.45以上0.55以下である、請求項1または請求項2に記載の切削工具。
  4.  前記地点Bにおいて、
      前記炭窒化チタン層におけるチタンの原子比xは、0.8以上1.1以下であり、
      前記炭窒化チタン層における炭素の原子比yは、0.3以上0.45以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の切削工具。
  5.  前記被膜の厚みは、6μm以上30μm以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の切削工具。
  6.  前記被膜は、前記基材と前記アルミナ層との間に設けられている下地層を更に含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の切削工具。
  7.  前記被膜は、前記炭窒化チタン層の上に設けられている表面層を更に含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の切削工具。
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