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WO2026018922A1 - SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞及びその製法 - Google Patents

SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞及びその製法

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Publication number
WO2026018922A1
WO2026018922A1 PCT/JP2025/025788 JP2025025788W WO2026018922A1 WO 2026018922 A1 WO2026018922 A1 WO 2026018922A1 JP 2025025788 W JP2025025788 W JP 2025025788W WO 2026018922 A1 WO2026018922 A1 WO 2026018922A1
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WO
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cells
cov
sars
tcr
cell
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Application number
PCT/JP2025/025788
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French (fr)
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宏 河本
淳二 上堀
雄真 加藤
晶 山▲崎▼
絵里 石川
孝和 川瀬
貴彦 美山
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Fujita Health University
National Center for Child Health and Development
Kyoto University NUC
University of Osaka NUC
Original Assignee
Fujita Health University
Osaka University NUC
National Center for Child Health and Development
Kyoto University NUC
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Publication date
Application filed by Fujita Health University, Osaka University NUC, National Center for Child Health and Development, Kyoto University NUC filed Critical Fujita Health University
Publication of WO2026018922A1 publication Critical patent/WO2026018922A1/ja
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Abstract

本開示は、新型コロナウイルス感染症に対し、汎用性が高く即納型の他家T細胞並びにその製法を提供することを目的とする。SARS-CoV-2に特異的なヒトT細胞受容体(TCR)を、インビトロでT細胞またはT前駆細胞に単独あるいは複数個発現させる工程を含む、SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現するT細胞またはT前駆細胞を含む、SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団の製造方法、ならびにかかる方法にて製造された他家由来のT細胞またはT前駆細胞を含む、SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団を提供する。

Description

SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞及びその製法
 本開示はSARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞及びその製法に関する。
 世界保健機関(WHO)が2020年3月に新型コロナウイルス感染症を「パンデミック(世界的大流行)」と表明してから4年がたった。WHOが2023年5月に緊急事態の終了を宣言し、日本でも同月、感染症法上の5類に移行したが、新型コロナウイルスの流行は続いている。新型コロナウイルス感染症の治療には抗ウイルス薬の他に回復患者から採取した血清/血漿を用いる方法、抗体分子をクローニングして作製したモノクローナル抗体を用いる方法などが開発されている。一方で治療用や予防用のT細胞製剤開発についてはほとんど報告されていない。
 一般にウイルス感染症に対する免疫反応は抗体とキラーT細胞が2本柱として働くことが知られている。抗体はウイルスに結合して中和する働きを持ち、感染を防ぐ、症状を軽くするなど、主に感染初期に作用する。一方キラーT細胞は感染細胞を殺傷することにより病原体を駆逐することにより、感染初期から感染後期に渡りウイルス感染症へ作用する。
 ウイルス感染症に対する細胞療法として、第三者のT細胞を材料にして体外でウイルス抗原特異的T細胞を増幅して投与するという方法はこれまでも行われている。かかる治療が造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルスやEBウイルスの再活性化に対して有効であることは示されている(非特許文献1)。しかし、第三者ドナーとレシピエントのHLAを完全に一致させるのは難しく、HLA部分的ミスマッチのT細胞が投与されることになる。したがって、かかる治療法は移植などの治療のために免疫不全状態とされた患者にしか使えない。
 SARS-CoV-2感染症に対しても同様の治療法を準備する動きはあった(非特許文献2)が、ほとんど使われることはなかった。第三者のT細胞を利用する場合、HLAを合致させることが困難であるという問題がある。造血幹細胞移植後の患者は免疫不全状態であり、そのウイルス再活性化の治療のために部分的に合致しないHLAを有するT細胞を投与することは可能である。しかしながら、一般のウイルス感染症患者に同じ方法を用いるのは困難である。
 また、他家ではなく、自家のT細胞にSARS-CoV-2特異的外来T細胞受容体(TCR)を導入してT細胞製剤を作製し患者に戻すというアイデアは、シンガポールのBertolettiらによって2020年4月に提唱されたことがある(非特許文献3)。しかし、その後続報がなく、実現には至らなかったと推察される。患者数が多い場合、オーダーメイドのT細胞製剤の作製は現実的ではない。
 他家の多能性幹細胞由来のT細胞をコロナの治療や予防に使うという事業は、申請者の知る限りではあるが、報告が無い。SARS-CoV-2感染症について重症化した患者や、重症化に向かう中等症の患者に対して、根治につながる有効な治療法は現時点で得られていない。抗体療法は初期にしか効果がなく、また新たな変異株に対しては効力を発揮しない可能性がある。ワクチンによる予防は大きく進展したが、治療薬を提供するものではない。
 SARS-CoV-2感染症に起因する重度のサイトカインストームに対してステロイド剤や抗IL-6R抗体などの投与による対症療法の開発は進んでいる。一方で、感染症の治療法の開発が望まれている。
Blood, 121: 5113, 2013 Front Immunol,12:751869, 2021 Duke-NUS Medical Schoolの2020年4月21日付プレスリリース
 本開示は、新型コロナウイルス感染症の治療および/または予防のための、汎用性が高く即納型の他家T細胞並びにその製法を提供することを目的とする。
 本願は、下記を提供する:
(1) SARS-CoV-2に特異的なヒトT細胞受容体(TCR)を、インビトロでT細胞またはT前駆細胞に単独あるいは複数個発現させる工程を含む、SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現するT細胞またはT前駆細胞を含む、SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団の製造方法。
(2) SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現するT細胞またはT前駆細胞が、CD8αβを発現している、(1)に記載の製造方法。
(3) SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現するT細胞を含み、T細胞がキラー活性を持つT細胞である、(1)または(2)に記載の製造方法
(4) SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現するT細胞またはT前駆細胞が、HLAのいずれかあるいは全てが欠失している細胞である、(1)~(3)いずれかに記載の製造方法。
(5) T細胞に分化し得る細胞へ、ヒトT細胞受容体(TCR)を導入する工程、およびヒトT細胞受容体(TCR)を導入した細胞をT細胞またはT前駆細胞へ分化する工程を含む、(1)~(4)いずれかに記載の製造方法。
(6) T細胞に分化し得る細胞が、多能性幹細胞である、(5)に記載の製造方法。
(7) 多能性幹細胞が、HLAのいずれかあるいは全てが欠失している多能性幹細胞である、(6)記載の製造方法。
(8) 多能性幹細胞がヒトES細胞株SEES3由来のES細胞である、(6)または(7)記載の製造方法。
(9) SARS-CoV-2に特異的なTCRが、配列番号1~7のいずれかのエピトープに特異的である、(1)~(8)いずれかに記載の製造方法。
(10) SARS-CoV-2特異的なTCRのCDRが、下記の組み合わせより選択される、(9)に記載の製造方法。
(11) SARS-CoV-2特異的なTCRのアミノ酸配列が、下記の組み合わせより選択される、(10)に記載の製造方法。
(12) (1)~(11)いずれか1項に記載の方法で作成された、SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現する他家由来のT細胞またはT前駆細胞を含む、SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団。
(13) SARS-CoV-2に特異的な同一のヒトTCRが発現され、HLAのいずれかあるいは全てが欠失している他家由来のT細胞またはT前駆細胞集団を含む、SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団。
(14) SARS-CoV-2のSタンパク質に特異的な同一のヒトTCRが発現され、HLAのいずれかあるいは全てが欠失している他家由来のT細胞またはT前駆細胞集団を複数種組み合わせて含む、(13)記載の細胞集団。
(15) T細胞またはT前駆細胞が、CD8αβを発現する、(13)記載の細胞製剤。
(16) T細胞がキラー活性を持つT細胞である、(13)~(15)いずれかに記載の細胞集団。
(17) SARS-CoV-2特異的なTCRが、配列番号1~7のいずれかのエピトープに特異的である、(13)~(16)いずれかに記載の細胞集団。
(18) SARS-CoV-2特異的なTCRのCDRが、下記の組み合わせより選択される、(17)に記載の細胞集団。
(19) SARS-CoV-2特異的なTCRのアミノ酸配列が、下記の組み合わせより選択される、(18)に記載の細胞集団。
(20) SARS-CoV-2に特異的なヒトT細胞受容体(TCR)を、必要な患者のT細胞へ発現させる工程を含む、SARS-CoV-2治療および/または予防法。
参考例1、ES細胞からT細胞への分化誘導法の概略。 参考例2、HLA-I/IIダブルノックアウトES細胞由来T細胞の作製法の概略。 参考例2、HLA-I/IIダブルノックアウトのためにB2M/CIITA遺伝子座に導入した変異。 参考例2、HLA-I/IIダブルノックアウト、及び、NY-ESO-1-TCR遺伝子導入ES細胞をT細胞へ分化誘導してDP細胞を得た。 参考例2、HLA-I/IIダブルノックアウト、及び、NY-ESO-1-TCR遺伝子導入ES細胞をT細胞へ分化誘導して得たCD8SP細胞は、HLA-I/IIを発現していないことを確認した。 実施例1、SARS-CoV-2特異的TCR遺伝子クローニングの概略。 実施例1、SARS-CoV-2特異的TCRの抗原特異性を確認した。 実施例1で得たSARS-CoV-2特異的TCRの抗原ペプチドに対する結合親和性を確認した。 実施例1で得たSARS-CoV-2特異的TCRの抗原ペプチドに対する結合親和性を確認した。 実施例2、SARS-CoV-2特異的TCR遺伝子のクローニング法の概略。 実施例2、得られたTCRのエピトープ特異的活性化の確認。 実施例4のキリングアッセイのためのターゲット細胞の製造方法の概略。 実施例4のキリングアッセイの概略。 実施例4のキリングアッセイの概略(エフェクター細胞の作製および細胞傷害活性の測定) 実施例4のキリングアッセイの結果(QYI A1、QYI_B1、QYI H5、RLQ 3およびYLQ 28)。 実施例4のキリングアッセイの結果(10BA、CE2AB)。 実施例4のキリングアッセイの結果(2BA)。 実施例4のペプチド特異的キリングアッセイの結果(10BA、CE2AB)。 実施例5および6のアッセイに用いるA24:02発現A549+ACE2細胞の製造。 実施例5のキリングアッセイの概略。 実施例5のキリングアッセイの結果(CE2AB、10BA)。 実施例6のxCELLigenceシステムを用いたペプチド特異的キリングアッセイの結果(10BA)。 実施例6のSARS-CoV感染細胞に対するキリングアッセイの概略。 実施例6のSARS-CoV感染細胞に対するキリングアッセイの結果(CE2AB、QYI_B1)。 実施例7、SARS-CoV-2特異的TCR単独発現再生CTLの取得の概略。 実施例7、SARS-CoV-2特異的TCR(10BA、2BA)単独発現再生CTLとしてダブルポジティブ細胞を得た。 実施例7のSARS-CoV-2特異的TCR(2BA)単独発現再生CTLの、キリングアッセイの結果。 実施例7のSARS-CoV-2特異的TCR(QY1 B1)単独発現再生CTLの、キリングアッセイの結果。
 本開示は、SARS-CoV-2に特異的なヒトT細胞受容体(TCR)を、インビトロでT細胞またはT前駆細胞に単独あるいは複数個発現させる工程を含む、SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現するT細胞またはT前駆細胞を含む、SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団の製造方法を提供する。
 SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRは、SARS-CoV-2への感染歴がある、またはSARS-CoV-2ワクチン接種歴のあるドナーより取得することができる。SARS-CoV-2ワクチンとしては、不活化ワクチン、組換えタンパク質ワクチン、ペプチドワクチン、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、DNAワクチン、ウイルスベクターワクチンなどが例示されるが、これらに限定されない。SARS-CoV-2に特異的なTCRは、ドナーより取得されたT細胞から得ることができる。
 ヒトT細胞は、ヒトの組織から公知の手法により単離することができる。ヒトの組織としては、前記T細胞を含む組織であれば特に制限はないが、例えば、末梢血、リンパ節、骨髄、胸腺、脾臓、臍帯血、病変部組織が挙げられる。これらの中では、ヒトに対する侵襲性が低く、調製が容易であるという観点から、末梢血、臍帯血が好ましい。ヒトT細胞を単離するための公知の手法としては、CD4等の細胞表面マーカーに対する抗体と、セルソーターとを用いたフローサイトメトリーが挙げられる。また、サイトカインの分泌や機能性分子の発現を指標に、所望のT細胞を単離することも出来る。グランザイムやパーフォリンなどの分泌又は産生、あるいはCD8の発現を指標として、キラー活性を有するT細胞を単離することが出来る。
 SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRは、不活化したSARS-CoV-2、SARS-CoV-2由来のタンパク質またはペプチドでドナーから取得したT細胞を含む生体試料、例えば末梢血単核球を刺激することによって得ることができる。
 活性化したT細胞のスクリーニングのための指標としては、活性化マーカー、例えばCD69、CD137、CD154などを単独あるいは組み合わせて用いることができる。
 特定の抗原特異的ヒトT細胞を単離する場合、SARS-CoV-2特異的T細胞を含むヒト培養細胞またはヒトの組織より、目的の抗原を固定化したアフィニティカラム等を用いて精製する方法を採用することができる。また、所望の抗原を結合させたMHC(主要組織適合遺伝子複合体)を4量体化させたもの(いわゆる「MHCテトラマー」)を用いて、ヒトの組織よりSARS-CoV-2に特異性を有するT細胞を精製する方法も採用することができる。
 また、得られたTCRが目的とする特異性を有することの確認は、当該TCRをNFAT-GFPレポーター細胞に導入し、ドナーB細胞存在下、HLAに認識され得るアミノ酸長のペプチドで刺激し、活性化の見られるTCRを選択すればよい。NFAT-GFPレポーター細胞を用いてTCRの特異性を確認する方法は、((Matsumoto et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 534:680-686.2021)に記載されている。
 SARS-CoV-2由来のタンパク質としては、Sタンパク質、Nタンパク質などが例示される。SARS-CoV-2由来のペプチドとしては、Sタンパク質、Nタンパク質由来のペプチドが例示される。ペプチドとしては、7~15マー、8~12マー、例えば8~10マーのものが好適に用いられる。
 SARS-CoV-2は変異が繰り返し生じ、様々な変異株や変異系統が報告されている。SARS-CoV-2由来のタンパク質、ペプチドとしては治療のターゲットとするSARS-CoV-2の変異株や変異系統より取得して用いればよい。
 本開示では、9種類のSARS-CoV-2特異的TCRを特定した。各TCRが認識するエピトープ、各エピトープが由来する抗原部位並びに拘束されるHLAのタイプを表5に示す。SARS-CoV-2に特異的なTCRを取得する際は、SARS-CoV-2感染歴のある対象あるいはワクチン接種歴のある対象より取得した生体試料をかかるエピトープペプチドを用いて刺激し、いずれかのペプチドに特異的な活性化を示すT細胞を取得し、特異的TCRを取得してもよい。
 本開示にて特定した各TCRのTCRα鎖およびTCRβ鎖の配列は以下の通りである。
10BA
TCRα(配列番号8)
MISLRVLLVILWLQLSWVWSQRKEVEQDPGPFNVPEGATVAFNCTYSNSASQSFFWYRQDCRKEPKLLMSVYSSGNEDGRFTAQLNRASQYISLLIRDSKLSDSATYLCVVNHLGGSNYKLTFGKGTLLTVNPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
TCRβ(配列番号9)
MSIGLLCCVAFSLLWASPVNAGVTQTPKFQVLKTGQSMTLQCAQDMNHNSMYWYRQDPGMGLRLIYYSASEGTTDKGEVPNGYNVSRLNKREFSLRLESAAPSQTSVYFCASSEGEGYEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSRG
14AB
TCRα(配列番号10)
MISLRVLLVILWLQLSWVWSQRKEVEQDPGPFNVPEGATVAFNCTYSNSASQSFFWYRQDCRKEPKLLMSVYSSGNEDGRFTAQLNRASQYISLLIRDSKLSDSATYLCVVNNGNMLTFGGGTRLMVKPHIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
TCRβ(配列番号11)
MSIGLLCCAALSLLWAGPVNAGVTQTPKFQVLKTGQSMTLQCAQDMNHEYMSWYRQDPGMGLRLIHYSVGAGITDQGEVPNGYNVSRSTTEDFPLRLLSAAPSQTSVYFCASTTLNTLEQFFGPGTRLTVLEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSRG
CE2AB
TCRα(配列番号12)
MEKNPLAAPLLILWFHLDCVSSILNVEQSPQSLHVQEGDSTNFTCSFPSSNFYALHWYRWETAKSPEALFVMTLNGDEKKKGRISATLNTKEGYSYLYIKGSQPEDSATYLCAFVPLSDGQKLLFARGTMLKVDLNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
TCRβ(配列番号13)
MGPGLLCWALLCLLGAGLVDAGVTQSPTHLIKTRGQQVTLRCSPKSGHDTVSWYQQALGQGPQFIFQYYEEEERQRGNFPDRFSGHQFPNYSSELNVNALLLGDSALYLCASSPGQGILEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSRG 
2BA
TCRα(配列番号14)
MAMLLGASVLILWLQPDWVNSQQKNDDQQVKQNSPSLSVQEGRISILNCDYTNSMFDYFLWYKKYPAEGPTFLISISSIKDKNEDGRFTVFLNKSAKHLSLHIVPSQPGDSAVYFCAAVDYGGSQGNLIFGKGTKLSVKPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
TCRβ(配列番号15)
MSLGLLCCAAFSLLWAGPVNAGVTQTPKFRVLKTGQSMTLLCAQDMNHEYMYWYRQDPGMGLRLIHYSVGEGTTAKGEVPDGYNVSRLKKQNFLLGLESAAPSQTSVYFCASILTGNTEAFFGQGTRLTVVEDLNKVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSVSYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDF
QYI-A1
TCRα(配列番号16)
MSLSSLLKVVTASLWLGPGIAQKITQTQPGMFVQEKEAVTLDCTYDTSDPSYGLFWYKQPSSGEMIFLIYQGSYDQQNATEGRYSLNFQKARKSANLVISASQLGDSAMYFCASSWGKLQFGAGTQVVVTPDIQNPDPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
TCRβ(配列番号17)
MSTRLLCWALLCLLGAGLVDAGVTQSPTHLIKTRGQQVTLRCSPKSGHDTVSWYQQALGQGPQFIFQYYEEEERQRGNFPDRFSGHQFPNYSSELNVNALLLGDSALYLCASSLVGANTGELFFGEGSRLTVLEDLKNVFPPEVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNSRAKRSGSG
QYI-B1
TCRα(配列番号18)
MLLLLVPAFQVIFTLGGTRAQSVTQLDSQVPVFEEAPVELRCNYSSSVSVYLFWYVQYPNQGLQLLLKYLSGSTLVESINGFEAEFNKSQTSFHLRKPSVHISDTAEYFCAVSDIFEGGFKTIFGAGTRLFVKANIQNPDPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
TCRβ(配列番号19)
MLLLLLLLGPGSGLGAVVSQHPSRVICKSGTSVKIECRSLDFQATTMFWYRQFPKQSLMLMATSNEGSKATYEQGVEKDKFLINHASLTLSTLTVTSAHPEDSSFYICSARDRDKAYEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNSRAKRSGSG
QYI-H5
TCRα(配列番号20)
MEKNPLAAPLLILWFHLDCVSSILNVEQSPQSLHVQEGDSTNFTCSFPSSNFYALHWYRWETAKSPEALFVMTLNGDEKKKGRISATLNTKEGYSYLYIKGSQPEDSATYLCAFPNGGSNYKLTFGKGTLLTVNPNIQNPDPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
TCRβ(配列番号21)
MFWYRQFPKKSLMLMATSNEGSKATYEQGVEKDKFLINHASLTLSTLTVTSAHPEDSSFYICSARDVGTGGHYEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNSRAKRSGSG
YLQ28
TCRα(配列番号22)
MISLRVLLVILWLQLSWVWSQRKEVEQDPGPFNVPEGATVAFNCTYSNSASQSFFWYRQDCRKEPKLLMSVYSSGNEDGRFTAQLNRASQYISLLIRDSKLSDSATYLCVVNNNNDMRFGAGTRLTVKPNIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
TCRβ(配列番号23)
MGTRLLCWVVLGFLGTDHTGAGVSQSPRYKVAKRGQDVALRCDPISGHVSLFWYQQALGQGPEFLTYFQNEAQLDKSGLPSDRFFAERPEGSVSTLKIQRTQQEDSAVYLCATLDENTGELFFGEGSRLTVLEDLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNSRAKRSGSG
RLQ3
TCRα(配列番号24)
MMKSLRVLLVILWLQLSWVWSQQKEVEQNSGPLSVPEGAIASLNCTYSDRGSQSFFWYRQYSGKSPELIMFIYSNGDKEDGRFTAQLNKASQYVSLLIRDSQPSDSATYLCAGSSNDYKLSFGAGTTVTVRANIQNPDPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
TCRβ(配列番号25)
MGPGLLCCAALSLLWAGPVNAGVTQTPKFQVLKTGQSMTLQCAQDMNHEYMSWYRQDPGMGLRLIHYSVGAGITDQGEVPNGYNVSRSTTEDFPLRLLSAAPSQTSVYFCASTLRDSETQYFGPGTRLLVLEDLKNVFPPEVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNSRAKRSGSG
 各TCR配列情報を、IMGT(登録商標)、the international ImMunoGeneTics information system(登録商標)により提供されるIMGT/V-QUESTに基づき解析して得られるTCRβ鎖、TCRα鎖それぞれについてV領域、J領域およびCDR3は下記となる。
 本開示においてSARS-CoV-2に特異的なTCRとしては、本開示で特定したTCRを有するものが例示される。本開示においてSARS-CoV-2に特異的なTCRとしては、表6に特定したCDR3の配列のいずれかを有するTCRが例示される。
 本願の方法は、SARS-CoV-2に特異的なヒトT細胞受容体(TCR)を、インビトロでT細胞またはT前駆細胞に単独あるいは複数個発現させる工程を含む。
 SARS-CoV-2に特異的なTCRを発現させるT細胞は、ヒトから単離されたT細胞またはT前駆細胞であってよい。T細胞またはT前駆細胞へインビトロでTCRを発現させる方法は限定されず、公知のいずれの方法を用いてもよい。
 T細胞としては、CD3を発現しており、且つCD4及びCD8からなる群から選択される少なくとも一の分子が発現しているT細胞である。このようなヒトT細胞としては、例えば、CD4陽性細胞であるヘルパー/制御性T細胞、CD8陽性細胞である細胞傷害性T細胞、ナイーブT細胞(CD45RACD62L細胞)、セントラルメモリーT細胞(CD45RACD62L細胞)、エフェクターメモリーT細胞(CD45RACD62L細胞)、及びターミナルエフェクターT細胞(CD45RACD62L細胞)が挙げられる。
 T前駆細胞としては、その分化成熟段階をおってCD34、CD43、CD45陽性、CD2、CD5、CD7、CD1a陽性、さらにCD4、CD8、CD3陽性細胞などが挙げられ、これらのマーカーを単独または組み合わせることによってタイピングもしくは分取することができる。T細胞系列特異的かつ特定の分化成熟段階のT前駆細胞を選別する場合にはCD1a、CD3、CD8、CD4などを発現する細胞が例示される。
 T細胞、またはT前駆細胞としては、CD8αβを発現するT細胞であることが好ましい。またT細胞としてはキラー活性を有するT細胞またはキラー活性を有するT細胞へ分化可能なT細胞が好適に用いられる。
 本開示において、SARS-CoV-2特異的TCRを発現するT細胞またはT前駆細胞は、HLAのいずれかあるいは全てが欠失している細胞であることが好ましい。HLAのいずれか、あるいはすべてを欠失させることによって、本開示によって提供されるSARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団は、免疫不全状態の患者で無くとも使用することが可能となる。
 HLAのノックアウトは公知の方法にて行えば良い。例えば細胞のB2MおよびCIIT遺伝子に遺伝子編集、例えばCRISPR/Cas9によって変異を入れることにより、HLA-IおよびHLA-IIの両方をノックアウトすることが可能である(Thongsin et al., Stem Cell Research, Volume 71, September 2023, 103138)。
 本開示において、SARS-CoV-2特異的TCRを発現させるT細胞またはT前駆細胞は、多能性幹細胞から分化誘導された細胞であってもよい。多能性幹細胞としては、ES細胞、iPS細胞が例示される。例えば、ヒトES細胞株SEES3由来のES細胞株が例示される。ヒトES細胞株SEES3は、理化学研究所バイオリソース研究センター(日本国茨城県)より、細胞番号HES0008、細胞名SEES3として入手可能である。ここでヒトES細胞株SEES3由来の細胞株には、SEES3そのものも含まれる。
 ヒト多能性幹細胞から所望の抗原特異性を有するT細胞を得る方法は、当業者に知られている方法を適宜用いればよい。例えばWO2017/159087、WO2016/010155、WO2016/010154、WO2016/010153、WO2017/159088、WO2017/179720、WO2018/124207などに開示の方法を用いることができる。
 ヒト多能性幹細胞は、SARS-CoV-2特異的TCRを有するT細胞から分化誘導してもよい。例えばかかるT細胞へヤマナカ因子を導入してT-iPS細胞を得ることができる(Takahashi and Yamanaka, Cell 126, 663-673 (2006), Takahashi et al., Cell 131, 861-872(2007)および Grskovic et al., Nat. Rev. Drug Dscov. 10,915-929(2011))。
 多能性幹細胞としては、すでに株化されている多能性幹細胞、T細胞以外から誘導された、もしくは目的とするSARS-CoV-2特異的TCR以外のTCRを有する多能性幹細胞を用いてもよい。かかる多能性幹細胞をT細胞へと分化誘導するにあたり、分化誘導前にSARS-CoV-2特異的TCRを多能性幹細胞へ導入した上でT細胞へと分化誘導することによって、SARS-CoV-2特異的TCRを有するT細胞を得ることができる。
 TCRをインビトロで細胞に導入するには、TCRをコードする核酸を発現ベクターに搭載して細胞に導入すればよい。TCRα鎖、TCRβ鎖を発現させるために好適に用いうるベクターとしては、プロモーターの下流にTCRβ-P2A-TCRαをコードする核酸を含むものが例示される。ベクターは、その他所望により、転写及び翻訳調節配列、リボソーム結合部位、エンハンサー、複製起点、ポリA付加シグナル、選択マーカー遺伝子などを含んでいてもよい。
 本開示においてTCRの導入には遺伝子組換えに用いられるベクターを適宜選択して用いればよく、例えばウイルス、プラスミド、人工染色体などのベクターが例示される。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる。目的に応じて市販のベクターを適宜選択して用いれば良い。
 プロモーターとしては、例えば、EF1αプロモーター、CAGプロモーター、ユビキチンプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MMLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーター、TCR Vα遺伝子プロモーター、TCR Vβ遺伝子プロモーターなどが用いられる。
 本開示においてはまた、多能性幹細胞は、そのゲノム内にマーカータンパク質をコードする遺伝子を含むカセットテープ遺伝子をマーカータンパク質が発現可能なように含むカセットデッキ構造を有しているものであってもよい。かかるカセットデッキ構造を有する細胞については、WO2020/022512、WO2022/065444に開示されている。マーカータンパク質としては、既知のTCR遺伝子を用いることが例示される。
 多能性幹細胞に、既知のTCR遺伝子を含むカセットデッキ構造を含む細胞を培養して、これをT細胞またはT前駆細胞へ分化誘導した後、SARS-CoV-2に特異的な他家TCR遺伝子を含むカセットテープを用い、カセットデッキ構造に含まれる既知のTCRとSARS-CoV-2特異的TCR遺伝子を入れ替えて発現させることができる。この方法によって、TCRα、TCRβのミスペアリングを回避してもよい。
 T細胞もしくはT前駆細胞を多能性幹細胞から分化誘導して得る場合、HLAの一部もしくは全部をノックアウトした多能性幹細胞を用いることによって、HLAの一部もしくは全部がノックアウトされたT細胞を得ることができる。T細胞またはT前駆細胞へ分化誘導する多能性幹細胞としては、ゲノム内にマーカータンパク質をコードする遺伝子を含むカセットテープ遺伝子をマーカータンパク質が発現可能なように含むカセットデッキ構造を有し、HLAの一部もしくは全部をノックアウトされている多能性幹細胞が例示される。
 本開示はまた、SARS-CoV-2に特異的な1または複数個の同一のヒトTCRが発現され、HLAのいずれかあるいは全てが欠失している他家由来のT細胞またはT前駆細胞集団を含む、SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団を提供する。ここで「他家由来のT細胞またはT前駆細胞」とは、治療対象のSARS-CoV-2感染症患者に対して他家であるドナーから取得された細胞を操作して得られたT細胞またはT前駆細胞であることを意味する。本開示のSARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団は、それぞれが同一の1または複数個のヒトTCRを発現するT細胞またはT前駆細胞集団であっても、それぞれが同一の1または複数個のヒトTCRを発現するT細胞またはT前駆細胞集団を複数種類、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10種類を組み合わせて含む細胞集団であってもよい。
 本開示において提供されるSARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団は、ヒト対象におけるSARS-CoV-2の感染に対する治療や予防において好適に用いることができる。本開示において「治療」とは、SARS-CoV-2の感染によって生じる様々な症状を治癒、軽快させること、症状の進行を抑制することを意味する。本開示において「予防」とはSARS-CoV-2の感染によって生じる症状を発症していないが、かかる症状を発症する可能性が高いと予測される対象において、該ウイルスへの感染による症状の発症を抑制すること、あるいは発症する症状を減弱化させることを意味する。
 ここで、SARS-CoV-2の感染によって生じる症状を発症する可能性が高いと予測される対象とは、例えば感染者と濃厚な接触があった対象、発症はしていないが検査によりSARS-CoV-2への感染が認められた対象、抗がん剤の投与や造血幹細胞移植の前処置などにより免疫不全状態を誘導する前の対象、感染者がいる病棟で働く医療従事者等があげられる。
 本開示のSARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団は自家細胞から製造したものであっても、多家細胞から製造したものであってもよい。広くSARS-CoV-2感染症の治療および/または予防に用いるには、他家細胞から製造したものが好適に用いられる、
 本開示のSARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団は、HLA拘束性に有効であることから、搭載するSARS-CoV-2特異的TCRが認識するHLAのタイプを有する対象の治療および/または予防に用いうる。対象のHLAは、常法によって確認すればよい。
 本願の細胞集団は、適当な媒体、例えば生理的食塩水やPBS、その他細胞療法に用いられる公知の媒体に懸濁して対象へ投与する。対象への投与は経静脈的に行えばよい。
 投与細胞数は特に限定されず、対象の年齢、性別、身長、体重、対象疾患、症状等に応じて適宜定めればよい。最適な投与細胞数は臨床試験により適宜決定すればよいが、例えば10-10細胞/kgで、1回ないし複数回、対象へ経静脈投与することが例示される。
 本開示はまた、SARS-CoV-2に特異的なヒトT細胞受容体(TCR)を、必要なヒト対象のT細胞へ発現させる工程を含む細胞の製法、およびSARS-CoV-2感染症の治療および/または予防法を提供する。SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRをヒト対象のT細胞へ発現させるには、例えば当該TCRをコードするmRNAをデリバリー媒体、例えば脂質ナノ粒子に封入し、T細胞を志向する機構を付与した上で対象に投与する方法が例示される。さらに必要であれば、TCRα、TCRβのミスペアリングを回避する機構を付与してもよい。
 本開示において提供されるSARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞の特異性は、本開示の実施例に示したアッセイにて確認することができる。アッセイとしては、標的となる抗原ペプチドまたはタンパク質を添加するか発現している標的細胞に対するキリングアッセイが例示される。キリングアッセイに際しては、標的細胞は対象のHLAを発現する細胞を用いることが好ましい。さらに、同様に標的細胞からの刺激に応じたT細胞自体の増殖やT細胞活性化マーカーの発現を測定することでも細胞の特性を確認することができる。またこの方法を用いることで、対象の生体由来検体に対していずれのTCRタイプの細胞が適合しうるかまたその強度や効果を知ることができ、治療や予防の指標とすることができる。この際の検体は感染後の急性期から回復期もしくは後遺症等が疑われる慢性期の対象から採取されたものであってもよい。
 以下、本開示を参考例並びに実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例は本願発明の理解のためのものであり、本願発明を限定するものではない。
参考例1
T細胞へ分化可能なES細胞株の選択
 京都大学医生物学研究所、および成育医療研究センターで樹立された複数のES細胞株を用いた(JMA J. 2020 Oct 15; 3(4): 287-294. doi: 10.31662/jmaj.2018-0029)。表7に各細胞株名を示す。既報(「新世代フローサイトメトリー活用スタンダード」(清田 純,山本拓也/編),羊土社,141-157頁、2021)に基づきES細胞をT細胞へ分化誘導した。図1にその概略を示す。分化誘導では、最初にES細胞の胚様体を形成し、CD34/43+血液前駆細胞へ誘導した。その後、胚様体内に含まれる血液前駆細胞をOP9/DLL1上へ播種してT細胞誘導を行った。分化誘導工程の各段階において、目的の細胞が得られていることを確認するため、Day14でCD34/43、Day30でCD5/7、Day37でCD4/8両陽性の発現を確認した。これらの分化マーカーの発現は、ES細胞株ごとに異なった。その中でも、ヒトES細胞株SEES3由来のSEES-3-10は分化誘導過程で、CD34/43+血液前駆細胞、CD5/7T前駆細胞、CD4/8両陽性(DP)未熟T細胞が安定して得られることが確認でき、さらに、最も多くのCD4/8DP細胞を得ることができた。これらの結果から、以下の実施例においてSARS-CoV-2特異的TCRを導入するT細胞としてSEES3-10を使用した。
ND: No Data
参考例2
HLA-I/IIダブルノックアウトES細胞由来T細胞の作製
 HLA-I/IIを発現しないES細胞由来T細胞を作製した。概略を図2に示す。
 最初にCRISPR/Cas9によって、SEES3-10のB2M/CIITAをノックアウトした。B2Mのノックアウトでは、B2M遺伝子座のエクソン1の内部を標的配列(GGCCGAGATGTCTCGCTCCG)とするgRNAを設計した。CIITAのノックアウトでは、CIITA遺伝子座のエクソン3の内部を標的配列 (TCAACTGCGACCAGTTCAGC)とするgRNAを設計した。
 ノックアウト操作を行ったES細胞をシングルセルクローニングし、B2MおよびCIITAの塩基配列を確認した。その結果、B2M/CIITA遺伝子座共に、両アレルに1塩基挿入の変異が生じたES細胞クローンが得られた(図3)。得られたES細胞クローンに、レンチウイルスによってNY-ESO-1-TCR-IRES-Venus遺伝子を導入し、Venus発現細胞のコロニーを取得した。得られたコロニーを再度シングルセルクローニングした。
 HLA-I/IIノックアウト、及び、NY-ESO-1-TCR遺伝子導入を行った4つのES細胞クローン(SEES3-10-DKO-NY1/3/5/6)を得た。これらの細胞を参考例1と同じ方法にてT細胞へ分化誘導した。これらのES細胞クローンからは、全てCD4/8ダブルポジティブ(DP)細胞が得られることが確認できた(図4)。次いでCD4+細胞を磁気細胞分離法によって分離した。
 CD4/8DP細胞を含む分離後のCD4+細胞に対して、7日毎にNY-ESO-1ペプチドをパルスしたlymphoblastoid cell line(LCL)と共培養して刺激を加えることで、CD8SPT細胞(CD8シングルポジティブT細胞)を増幅した。増幅後のCD8SPT細胞は、NY-ESO-1に特異的なTCRを有し、かつHLA-I/IIを発現していないことが確認された(図5)。以下、多能性幹細胞から誘導されたCD8SPT細胞を、「再生CTL」とする。
SARS-CoV-2抗原特異的TCR遺伝子のクローニング(1)
(1)ワクチン接種者より抗原ペプチドを指標に単離(QYI_A1、QYI_B1、QYI_H5、YLQ_28、RLQ_3)
 概略を図6に示す。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種歴のある健常ボランティアドナーのHLAタイピングを行い、HLA-A24およびHLA-A02陽性のドナーを選んだ。各ドナーから採取した末梢血単核球をHLA-A24拘束性SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗原ペプチドであるQYIKWPWYI(QYI)、HLA-A02拘束性SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗原ペプチドであるYLQPRTFLL(YLQ)、およびRLQSLQTYV(RLQ)それぞれを搭載したPE蛍光標識MHCテトラマーで染色し、スパイクタンパク質抗原特異的T細胞の頻度をフローサイトメトリーで測定した。MHCテトラマーで陽性を示すCD8陽性T細胞集団をセルソーターで96ウェルPCRプレートの各ウェルに1細胞ずつ分離し、マルチプレックスRT-PCRで各ウェルの単一T細胞からcDNAの合成・増幅を行った。
 続いてIMGTデータベースから得られたリーダーペプチド配列から設計したプライマーを用いてTCRα鎖遺伝子とTCRβ鎖遺伝子それぞれを増幅し、サンガーシークエンスでTCRα鎖とβ鎖のCDR3配列を同定し、TCRクロノタイプの頻度解析を行った。
 ドナーの抹消血単核球から検出したQYI、YLQ、およびRLQ特異的CD8陽性T細胞の頻度および、シングルセルシークエンス解析によって得られたTCRクロノタイプの結果を図6に示す。シングルセル解析によって、HLA-A24拘束性抗原に対してはQYI-MHCテトラマーで陽性を示したT細胞分画から4種類の異なるTCRαβペア配列を有するクロノタイプが同定できた。HLA-A02拘束性抗原に対しては、YLQでは計4種類、RLQでは計13種類の異なるTCRαβペア配列を取得することができた。
 続いて取得したTCRの機能解析を行うために、同定したTCRαβペア遺伝子の中からQYIに対しては3種類、YLQに対しては1種類、RLQに対しては1種類のTCR遺伝子発現レトロウイルスベクターを構築した。それぞれのTCRαβのCDR3の配列情報を表8に示す。
(2)クローニングしたTCR遺伝子の抗原特異性の検討
方法)
 NFAT-ZsGreen-1レポーター遺伝子を発現させたT細胞株(Jurkat細胞)に、クローニングした各TCRαβペア遺伝子を遺伝子導入してTCR発現レポーター細胞を作製した。TCR発現レポーター細胞の抗原特異性を検討するために、HLA-A02陽性細胞株であるNALM6細胞にHLA-A24を遺伝子導入して作製したHLA-A02とHLA-A24を両発現する細胞株を、レポーター細胞に対する抗原提示細胞として用いた。培養プレート内でTCR発現レポーター細胞と抗原提示細胞の共培養をQYI、YLQ、RLQそれぞれのペプチド添加下で行い、培養開始から8時間後のレポーター活性を蛍光顕微鏡で観察した。
 結果を図7に示す。抗原提示細胞と共培養した各TCR発現レポーター細胞は、ペプチド添加下条件でのみ活性化を示し、クローニングした各TCRがSARS-CoV-2抗原由来のエピトープペプチドに対して反応性を示すことが確認できた。
(3)クローニングしたTCRの抗原ペプチドに対する結合親和性の検討
 クローニングしたTCRの抗原ペプチドに対する結合親和性を検討するために、抗原提示細胞と共培養したTCRレポーター細胞に、段階希釈したQYI、YLQ、RLQそれぞれのペプチドを添加し、共培養開始から8時間後に活性化した細胞分画の頻度をフローサイトメトリーで測定した。レポーター活性の指標としてStimulation index(ペプチド刺激された細胞におけるZsGreen-1陽性頻度%/未刺激の細胞におけるZsGreen-1陽性頻度%)を用い、最大活性の50%を示すペプチド濃度(EC50)を算出し、各TCRの抗原ペプチドに対する結合親和性を評価した。結果を図8及び図9に示す。
 各TCR発現レポーター細胞において、NFAT-ZsGreen-1の発現レベルが、ペプチド濃度が上昇するにつれて上昇することが確認できた(図8)。フローサイトメトリーで測定したZsGreen-1陽性細胞分画の頻度からStimulation indexを算出し、それらの値をペプチド濃度ごとでプロットして得られた用量反応曲線を図9に示す。
 これらの用量反応曲線によって得られた各TCRの抗原ペプチドに対するEC50の結果を表9に示す。
 同一抗原エピトープを認識するQYI特異的TCRにおいては、QYI_B1、QYI_H5、QYI_A1の順で結合親和性が高いことが確認された。データベースを用いた解析で、取得したTCRの認識する抗原ペプチド配列は、これまでに報告されている流行変異株(アルファ株からオミクロン株)のスパイク領域において変異が確認されておらず、株間で高度に保存された領域であることから、これらのTCRは現行の流行株だけでなく今後新たに出現する変異株に対しても有効であることが予想される。
 得られたTCRのTCRαおよびTCRβの配列を以下に示す。
 SARS-CoV-2抗原特異的TCR遺伝子のクローニング(2)
(1)COVID-19感染患者より単離(10BA、2BA)
 概略を図10に示す。
 COVID-19に感染後、回復した患者より採取した末梢血単核球を、不活化したSARS-CoV-2、SARS-CoV-2のSタンパク質、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質のSペプチドプール(JPT Peptide Technologies, PM-WCPV-S-1)、SARS-CoV-2の膜糖タンパク質のMペプチドプール(Miltenyi Biotec, 130-126-702)、またはSARS-CoV-2のヌクレオプロテインまたはヌクレオカプシドホスホプロテインのNペプチドプール(Miltenyi Biotec, 130-126-698)で20時間刺激した。T細胞活性化マーカーであるCD69、CD137あるいはCD154高陽性のT細胞を分取し、シングルセルTCR/RNAシークエンス(scTCR/RNA-seq)解析を行った。
 CD8+T細胞にクラスタリングされたTCRクロノタイプのうち、公的データベース上で健常者に比べCOVID-19患者で多く見られたクロノタイプ約65種類を選び、クローニングした。当該TCRクロノタイプをNFAT-GFPレポーター細胞(Matsumoto et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 534:680-686.2021)に導入し、ドナーのB細胞存在下でS、Nペプチドプール(JPT Peptide Technologies, PM-WCPV-S-1およびMiltenyi Biotec, 130-126-698)で刺激し、活性化の見られたクロノタイプとして10BAおよび2BAを同定した(図11左)。
 SペプチドプールライブラリーでTCRを導入したレポーター細胞を刺激し、活性化したペプチドをTCRのエピトープとして同定した。さらに、候補となるHLA A24:02あるいはB35:01を含むドナーHLAクラスIを導入した培養細胞との共培養により、当該TCRを拘束するHLAを同定した。
(2)mRNAワクチン接種者より単離(14AB、CE2AB)
 SARS-CoV-2感染歴がないが、mRNAワクチンであるコミナティ筋注BNT162b2接種前と1回目の接種3週間後および6週間後、24週間後(それぞれ2回目の接種3、21週間後)の末梢血を、Sペプチドプールで刺激し、刺激により増殖したT細胞を分取してscTCR/RNA-seq解析を行った。各ドナーにおいてワクチン接種後に増殖したTCRクロノタイプのうち最も増殖した16クロノタイプを選び、クローニングを行った。NFAT-GFPレポーター細胞に導入後、ドナーの自家B細胞存在下においてSペプチドプールで刺激し、活性化の見られたクロノタイプとして14ABおよびCE2ABを同定した。
 エピトープと拘束性HLAの同定は上記と同様に行った。(図11右)。同定した各TCRクロノタイプのターゲットタンパク質、エピトープ並びにHLA-I拘束性を以下の表11に示す。
 得られたTCRα鎖、TCRβ鎖のアミノ酸配列を以下に示す。
 ES細胞由来再生CTLにおけるSARS-CoV-2特異的TCRの発現
(1)レトロウイルスベクターの調製
 実施例1および実施例2で得たSARS-CoV-2特異的TCRを遺伝子導入するためレトロウイルスベクターを構築した。表13に各コンストラクトを示す。遺伝子導入の確認のため、蛍光タンパク質であるBFPをコンストラクトに含ませた。パッケージング細胞であるPLAT-E細胞さらにPG13細胞でレトロウイルスを産生させこの操作により高力価のレトロウイルスを産生するPG13を得た。
(2)DKO-再生CTLにおけるSARS-CoV-2特異的TCRの発現
 参考例2にて得たES細胞由来DKO-再生CTLのうち、SEES-10-dKO-2-NY5を用いた。この細胞にはがん抗原NY-ESO-Iを認識する内在性TCR(NY5)が予め発現している。外来TCRを遺伝子導入することにより、NY5と外来TCRの両方を発現する再生CTLを作成した。なお、外来TCRを遺伝子導入することによりそれぞれのTCRのα鎖とβ鎖がミスペアリングを起こしたものが混在する可能性は否定できない。ミスペアリングTCRは未知の抗原に対する免疫応答が危惧されるが、本実施例ではin vitroでの検証であることから、ネガティブコントロール(TCRとしてNY5のみを発現するCTL)を設定することで検証を行った。
 参考例2で得たDKO-再生CTLにSARS-CoV-2特異的TCR遺伝子のレトロウイルスを感染させた。TCRベクターに含まれるBFPの発現による蛍光を、フローサイトメーターを用いて遺伝子の導入を確認した。TCR遺伝子の導入が確認された再生CTLを実施例4~6のキリングアッセイに用いた。
ES細胞由来再生CTLによるキリングアッセイ
(1)ターゲット細胞の作製
 再生CTLによるキリングアッセイを行うために、ターゲット細胞の作製を行った。実施例2で得たSARS-CoV-2特異的TCRは、Sタンパク質がA2402もしくはA0201、Nタンパク質はB3501にマウントされるペプチドを認識すると予想されるため、HLA-A24:02/02:01発現Lymphoblastoid cell line(LCL)へSARS-CoV-2ウイルスのSタンパク質遺伝子を、HLA-B35:01発現LCLにSARS-CoV-2ウイルスのNタンパク質遺伝子を、それぞれレトロウイルスベクターを用いて導入を行った。概略を図12に示す。
(2)TCRを発現させた再生CTLのHLA拘束性キリング活性
 概略を図13および図14に示す。
 実施例3で得た5種類のTCR(QYI A1、QYI B1、QYI H5、RLQ 3およびYLQ 28)をそれぞれ発現させた再生CTLを用いた。Sタンパク質を発現させたA24/A02+LCLをET比1:1で共培養し、18時間後にLCLの生細胞の割合をフローサイトメトリーで測定した。LCLは、共培養前にCTV(CeLLTrace Violet)で標識し再生CTLと区別した。結果を図15および表14に示す。
 5種類全てのSタンパク質特異的TCRを有する再生CTLは、Sタンパク発現CTLとの共培養においてキリング活性が認められた。
(3)TCRを発現させた再生CTLのHLA拘束性キリング活性
 概略を図13および図14に示す。
SARS-CoV-2特異的TCR(10BA、CE2AB)
 実施例3で得たSARS-CoV-2特異的TCR(10BA、CE2AB)発現再生CTLとSタンパク質を発現させたLCLを共培養し、18時間後にLCLの生細胞の割合をフローサイトメトリーで測定した。LCLは、共培養前にCTV (CeLLTrace Violet)で標識し再生CTLと区別した。E/T比は、LCLの細胞数を5.0×104/ウエルに固定し、BFPポジティブの再生CTL細胞数の割合を変化させた。結果を図16および表15に示す。
 10BA-TCR発現再生CTLおよびCE2AB-TCR発現再生CTLは、Sタンパク質をHLA-A24:02/02:01発現LCLに発現させたターゲットに対し再生CTLの割合依存的なキリング活性を示した。
SARS-CoV-2特異的TCR(2BA)
 図13および図14に示す方法に準じて実施した。実施例3で得たSARS-CoV-2特異的TCR(2BA)を発現する再生CTLとNタンパク質を発現させたHLA-B35:01を有するLCLを共培養し、18時間後にLCLの生細胞の割合をフローサイトメトリーで測定した。E/T比は、LCLの細胞数を3.0×104/ウエルに固定し、BFPポジティブの再生CTL細胞数の割合を変化させた。結果を図17および表16に示す。2BA-TCR発現再生CTLでは、Nタンパク質をHLA-B35:01発現LCLに発現させたターゲットに対して再生CTL割合依存的なキリング活性を示した。
 これらの結果より、LCL内でプロセッシングされたSタンパク質やNタンパク質がHLAに提示され、再生CTL上のSARS-CoV-2特異的TCRにより認識され傷害されることが明らかとなった。
(4)TCRを発現させた再生CTLのエピトープペプチド特異的キリングアッセイ
 実施例3で得た10BAおよびCE2AB-TCRをそれぞれ発現する再生CTLを用いた。エピトープペプチドとして、10BA-TCRに認識されるS448ペプチド、CE2AB-TCRに認識されるS1209ペプチドを用いた。E/T比が1.0となるように再生CTLとHLA-A24:02並びに表に記載の量の各ペプチドを共存培養し、16時間後にフローサイトメーターにより生細胞の割合を測定した。結果を図18および表17に示す。
各ペプチドに特異的なTCRを発現する再生CTLとの共培養において、ペプチド濃度依存的なキリング活性が認められた。
SARS-CoV-2感染細胞に対するキリングアッセイ
(1)標的細胞:A24:02発現A549+ACE2の作製
 SARS-CoV-2が細胞に感染するには、細胞膜上のACE2に結合した後に膜融合することが重要である。SARS-CoV-2特異的TCR発現再生CTLが感染細胞をキリングし得るかを検討するため、ACE2を発現するヒト肺がん由来上皮細胞株A549細胞株(HLA―A26:03/30:01)にHLA-A24:02をレトロウイルスベクターで遺伝子導入したA549+ACE2+A24細胞株を作製した(図19)。
(2)標的細胞に対するTCRを発現させた再生CTLのキリング活性。
 実施例3で得たCE2ABおよび10BA-TCRを発現させた再生CTLとA549+ACE2+A24:02をS1209(CE2AB)またはS448(10BA)ペプチド存在下で共培養し、16時間後にフローサイトメーターにより生細胞の割合を測定した。概略を図20に、結果を図21に示す。結果、LCLでの結果同様にSARS-CoV-2特異的TCRによるペプチド濃度依存的なキリング活性が認められた。
xCELLigenceシステムを用いたアッセイ
(1)エピトープペプチド特異的キリングアッセイ
 SARS-CoV-2感染はP3条件下での解析が必要であるが、P3条件下ではフローサイトメーターは使用できないため代替の測定機器が必要となる。そこで、P3条件下で解析可能なxCELLigence RTCA SPシステム(Agilent Technologies Japan, Ltd., CA, USA #380601030)により、再生CTLのA549細胞に対するキリング活性を調べた。
 キリング活性測定は、装置のマニュアルに従って行った。A549+ACE2+A24細胞を専用プレートに播種し、細胞がプレートに接着した後、各SARS-CoV-2のエピトープペプチド添加の約3時間後に参考例2で得たNY-ESO-1特異的TCRを発現した再生CTL(NY5)または実施例3で得た10BA-TCR発現再生CTLをE/T比1.0の割合で添加し、抵抗値をモニターした。結果を図22に示す。
 10BA-TCR発現再生CTLは、SARS-CoVエピトープペプチド依存的な抵抗値の低下が確認されたが、NY-ESO-1-TCR発現再生CTLでは変化が無かった。
(2)SARS-CoV-2感染細胞に対するキリングアッセイ
 実施例5(1)で得た標的細胞(A24:02発現A549+ACE2)を、xCELLigence専用プレートに播種した。24時間後にSARS-CoV2武漢株(UT-NCGM02)をMOI:10で1時間接触感染させた。
 接触感染完了の24時間後に、参考例2で得たNY-ESO-1特異的TCRを発現した再生CTL(NY5)、実施例3で得たCE2AB特異的TCRを発現した再生CTL、およびQYI_B1特異的TCRを発現した再生CTLを、E/T比1.0で添加し、抵抗値をモニターした。概略を図23に、結果を図24に示す。CE2AB特異的TCR発現再生CTLおよびQYI_B1特異的TCRを発現する再生CTLにおいて感染による抗原特異的な抵抗値の低下が確認された。
 これより、SARS-CoV2特異的TCRを発現させた再生CTLは、SARS-CoV2感染細胞をキリングすることが可能であることが確認された。
(1)SARS-CoV-2特異的TCR単独発現ES細胞の樹立
 参考例1で得たHLA-DKOES細胞へのSARS-CoV-2特異的TCR遺伝子導入
 実施例3から5で使用した再生CTLは、内在性TCRであるNY-ESO1特異的TCRと外来生SARS-CoV-2特異的TCRの両者と、それぞれのTCRα、TCRβがミスペアリングを起こしたTCRの計4種類が発現している可能性がある。SARS-CoV-2抗原特異的なキリング活性は認められたものの、ミスペアリングTCRが未知の抗原を認識する危険性を考慮すると、ミスペアリングの危険の無い、1種類のSARS-CoV-2特異的TCRのみが発現する再生CTLを使用することが好ましい。
 SARS-CoV-2特異的TCR発現ES細胞を樹立した。参考例1で得たHLAをDKOしたES細胞にSARS-CoV-2特異的TCRを遺伝子導入するため、レンチウイルスベクターに組み換え、レンチウイルス産生パッケージング細胞を作製した。その後、ES細胞にSARS-CoV-2特異的TCR遺伝子を含むレンチウイルスをDKO-ES細胞に感染させ、各TCRを発現するコロニーを採取した。概略を図25に示す。
(2)SARS-CoV-2特異的TCR発現ES細胞の再生CTLへの分化
 得られたSARS-CoV-2特異的TCRを遺伝子導入したES細胞クローンから再生CTLへ、参考例1と同じ方法にて分化誘導した。その結果、day13、day13+16、day13+23においてポジティブコントロールであるNY-ESO1特異的TCR導入ES細胞と似た分化パターンを示し、CD4/CD8ダブルポジティブ細胞まで分化していることが明らかとなった(図26)。
(3)TCRを発現させた再生CTLのHLA拘束性キリングアッセイ
 上記(2)で得た2BA-TCRを発現する再生CTLを、Nタンパク質を発現させたHLA-B35:01+B35LCLと共培養した。上記と同様にして得たQYI_B1-TCRを発現する再生CTLを、Sタンパク質を発現させたA24/A02+LCLと共培養した。16時間後にLCLの生細胞の割合をフローサイトメトリーで測定した。LCLは、共培養前にCTV(CeLLTrace Violet)で標識し再生CTLと区別した。E/T比は、LCLの細胞数を固定し、BFPポジティブの再生CTL細胞数の割合を変化させた。結果を図27および図28に示す。
 いずれもNタンパク質またはSタンパク質を発現するLCLにおいてのみ、再生CTLの割合依存的なキリング活性が認められた。

Claims (19)

  1.  SARS-CoV-2に特異的なヒトT細胞受容体(TCR)を、インビトロでT細胞またはT前駆細胞に単独あるいは複数個発現させる工程を含む、SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現するT細胞またはT前駆細胞を含む、SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団の製造方法。
  2.  SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現するT細胞またはT前駆細胞が、CD8αβを発現している、請求項1に記載の製造方法。
  3.  SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現するT細胞を含み、T細胞がキラー活性を持つT細胞である、請求項1または2に記載の製造方法
  4.  SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現するT細胞またはT前駆細胞が、HLAのいずれかあるいは全てが欠失している細胞である、請求項1~3いずれかに記載の製造方法。
  5.  T細胞に分化し得る細胞へ、ヒトT細胞受容体(TCR)を導入する工程、およびヒトT細胞受容体(TCR)を導入した細胞をT細胞またはT前駆細胞へ分化する工程を含む、請求項1~4いずれかに記載の製造方法。
  6.  T細胞に分化し得る細胞が、多能性幹細胞である、請求項5記載の製造方法。
  7.  多能性幹細胞が、HLAのいずれかあるいは全てが欠失している多能性幹細胞である、請求項6記載の製造方法。
  8.  多能性幹細胞がヒトES細胞株SEES3由来である、請求項6または7記載の製造方法。
  9.  SARS-CoV-2に特異的なTCRが、配列番号1~7のいずれかのエピトープに特異的である、請求項1から8いずれかに記載の製造方法。
  10.  SARS-CoV-2特異的なTCRのCDRが、下記の組み合わせより選択される、請求項9に記載の製造方法。
  11.  SARS-CoV-2特異的なTCRのアミノ酸配列が、下記の組み合わせより選択される、請求項10に記載の製造方法。
  12.  請求項1~11いずれか1項に記載の方法で作成された、SARS-CoV-2に特異的なヒトTCRを発現する他家由来のT細胞またはT前駆細胞を含む、SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団。
  13.  SARS-CoV-2に特異的な同一のヒトTCRが発現され、HLAのいずれかあるいは全てが欠失している他家由来のT細胞またはT前駆細胞集団を含む、SARS-CoV-2感染症治療および/または予防用細胞集団。
  14.  SARS-CoV-2のSタンパク質に特異的な同一のヒトTCRが発現され、HLAのいずれかあるいは全てが欠失している他家由来のT細胞またはT前駆細胞集団を複数種組み合わせて含む、請求項13記載の細胞集団。
  15.  T細胞またはT前駆細胞が、CD8αβを発現する、請求項13記載の細胞集団。
  16.  T細胞がキラー活性を持つT細胞である、請求項13~15いずれかに記載の細胞集団。
  17.  SARS-CoV-2特異的なTCRが、配列番号1~7のいずれかのエピトープに特異的である、請求項13~16いずれかに記載の細胞集団。
  18.  SARS-CoV-2特異的なTCRのCDRが、下記の組み合わせより選択される、請求項17に記載の細胞集団。
  19.  SARS-CoV-2特異的なTCRのアミノ酸配列が、下記の組み合わせより選択される、請求項18に記載の細胞集団。
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