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WO2026014442A1 - 多層構造体、その用途及びその製造方法 - Google Patents

多層構造体、その用途及びその製造方法

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WO2026014442A1
WO2026014442A1 PCT/JP2025/024508 JP2025024508W WO2026014442A1 WO 2026014442 A1 WO2026014442 A1 WO 2026014442A1 JP 2025024508 W JP2025024508 W JP 2025024508W WO 2026014442 A1 WO2026014442 A1 WO 2026014442A1
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ディディエ ウシエ,
真人 岡本
昌宏 北村
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

バリア層(A)、ポリオレフィン系接着性樹脂層(B1、B2)、ポリプロピレン層(C1、C2)、ポリウレタン系接着性樹脂層(D)及びシーラント層(E)を少なくとも含み、これらの層がC1/B1/A/B2/C2/D/Eの順に配置され、バリア層(A)がエチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)とポリアミド(a2)を含み、エチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)とポリアミド(a2)の質量比(a1/a2)が70/30以上95/5以下であり、エチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)のエチレン単位含有量が20モル%以上40モル%以下であり、かつシーラント層(E)がポリプロピレンを含む、多層構造体とする。これにより、レトルト処理後のガスバリア性に優れ、リサイクル性にも優れた多層構造体が提供される。

Description

多層構造体、その用途及びその製造方法
 本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含むバリア層とポリプロピレン層を有する多層構造体に関する。また、当該多層構造体からなる熱シール用包装材に関する。また、当該多層構造体を含む包装容器に関する。また、当該包装容器に内容物が充填されてなる包装体に関する。さらに、当該多層構造体の製造方法に関する。
 食品などをレトルト処理するための容器の素材として、ガラス、金属及び金属箔が、現在でも広く用いられている。しかしながら最近では、食品などをレトルト処理するための容器として、プラスチック製の容器が一般的に使用されるようになっている。なかでも、エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある)は、加工性が良好であり、優れたガスバリア性を有することから、プラスチック製容器のためのバリア性樹脂として広く採用されている。
 EVOHはその化学構造に由来して、高温で相対湿度が高い環境ではそのガスバリア性が大きく低下することが知られている。これは水がEVOHの可塑剤として作用し、EVOHの非晶領域の水素結合を弱めて自由体積を増加させ、結果として高分子マトリックス中のガス拡散を増加させるためと考えられている。そのため、包装体を110~132℃で15~80分間処理する典型的なスチームレトルト処理を行った際に、EVOHの酸素透過速度が劇的に増加し、食品が酸化劣化して、風味が低下したり賞味期限が短くなったりすることがあった。
 EVOH層を含む多層構造体からなる容器を用いる場合、EVOH層をできるだけ乾燥状態に維持することによって、容器のガスバリア性が適切に保たれる。特許文献1には、ポリマーフィルムからなる内外層と、EVOHフィルムからなる中間層とを有し、外層のポリマーフィルムが内層のポリマーフィルムよりも透湿度が大きく、かつ薄い多層構造体からなるレトルト食品用容器が記載されている。この容器を用いることで、レトルト処理後のEVOH層の乾燥時間が短くなり、短時間で容器の酸素バリア性が回復すると記載されている。透湿度の高い外層の材料としては、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートが記載され、透湿度の低い内層の材料としては、ポリオレフィンが記載されている。
 一方、環境問題や廃棄物問題が契機となり、市場で消費された包装材料を回収して再資源化する、いわゆるポストコンシューマーリサイクル(以下、単にリサイクルと略称することがある)の要求が世界的に高まっている。リサイクルにおいては、回収された包装材料を裁断し、必要に応じて分別・洗浄した後に、押出機を用いて溶融混練する工程が一般に採用される。しかしながら、特許文献1に記載の多層構造体のように、内層と外層とで異なる種類の材料を用いたのでは、回収して溶融混練した際に、互いに相溶することができず、リサイクルが困難である。また、外層に含まれる樹脂と内層に含まれる樹脂の融点に大きな差がある場合はさらに溶融混練が困難である。そのため、中間層にEVOHを用い、内外層にポリオレフィンを用いながらも、レトルト処理後の酸素透過速度の低い多層構造体が求められている。
 特許文献2には、ポリプロピレン(以下、PPと略記することがある)を含む層、EVOHを含む酸素バリア層及びポリプロピレンを含むシーラント層がこの順で積層されてなる多層構造体が記載されていて、レトルト処理後のガスバリア性が良好で、リサイクル性も良好であるとされている。しかしながら、レトルト処理後のガスバリア性については、用途によっては未だ不十分な場合があり、その改善が望まれていた。
特開平2-231138号公報 WO 2022/054887 A1
 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、レトルト処理後のガスバリア性に優れ、リサイクル性にも優れた多層構造体並びにそれを含む包装容器及び包装体を提供することを目的とする。また、そのような多層構造体を製造する方法を提供することを目的とする。
 本発明は以下のとおりである。
[1]バリア層(A)、ポリオレフィン系接着性樹脂層(B1、B2)、ポリプロピレン層(C1、C2)、ポリウレタン系接着性樹脂層(D)及びシーラント層(E)を少なくとも含み、これらの層がC1/B1/A/B2/C2/D/Eの順に配置され、
 バリア層(A)がエチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)とポリアミド(a2)を含み、エチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)とポリアミド(a2)の質量比(a1/a2)が70/30以上95/5以下であり、
 エチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)のエチレン単位含有量が20モル%以上40モル%以下であり、かつ
 シーラント層(E)がポリプロピレンを含む、多層構造体。
[2]バリア層(A)が、マグネシウム換算で10ppm以上1400ppm以下のマグネシウム塩を含む、[1]に記載の多層構造体。
[3]前記マグネシウム塩が水酸化マグネシウムである、[2]に記載の多層構造体。
[4]バリア層(A)よりポリプロピレン層(C1)側にある層の合計厚みをT1、バリア層(A)よりシーラント層(E)側にある層の合計厚みをT2としたときの比(T1/T2)が0.3以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の多層構造体。
[5]全体厚みに対するバリア層(A)の厚みの割合が10%以下である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の多層構造体。
[6]ポリアミド(a2)がナイロン6である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の多層構造体。
[7]シーラント層(E)が、無延伸ポリプロピレンからなる、[1]~[6]のいずれか1項に記載の多層構造体。
[8]前記多層構造体を、120℃、30分間レトルト殺菌処理してから、シーラント層(E)側を20℃、100%RHに、ポリプロピレン層(C1)側を20℃、65%RHに、それぞれ2週間維持した後の、JIS K7126-2(等圧法;2006年)に準拠して測定される酸素透過速度が5cc/m・day・atm以下である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の多層構造体。
[9][1]~[8]のいずれか1項に記載の多層構造体からなる、熱シール用包装材。
[10][1]~[8]のいずれか1項に記載の多層構造体を含み、シーラント層(E)同士を溶融して封止してなる包装容器。
[11]パウチである、[10]に記載の包装容器。
[12]水蒸気又は熱水による殺菌処理用である、[10]又は[11]に記載の包装容器。
[13][10]~[12]のいずれか1項に記載の包装容器に内容物が充填されてなる包装体。
[14]バリア層(A)、ポリオレフィン系接着性樹脂層(B1、B2)、ポリプロピレン層(C1、C2)を少なくとも含み、これらの層がC1/B1/A/B2/C2の順に配置された多層フィルムを共押出成形によって製造し、該多層フィルムのポリプロピレン層(C2)側にポリウレタン系接着性樹脂を用いてポリプロピレンフィルムを接着する、[1]~[8]のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
 本発明の多層構造体は、レトルト処理後のガスバリア性に優れているとともに、リサイクル性にも優れている。したがって、それを含む包装容器は、レトルト処理など高温高湿度下での処理を要する食品等を包装して長期間保管するのに適している。また、本発明の製造方法によれば、そのような多層構造体を製造することができる。
 本発明の多層構造体は、バリア層(A)、ポリオレフィン系接着性樹脂層(B1、B2)、ポリプロピレン層(C1、C2)、ポリウレタン系接着性樹脂層(D)及びシーラント層(E)を少なくとも含み、これらの層がC1/B1/A/B2/C2/D/Eの順に配置されたものである。本発明の多層構造体の層構成の最大の特徴は、ポリプロピレン層(C2)と、ポリプロピレンを含むシーラント層(E)の間にポリウレタン系接着性樹脂層(D)を有することである。このような層構成を採用することによってレトルト処理後のガスバリア性が向上することを、本発明者は見出だした。
 この点について、本願明細書の実施例1と比較例3を対比しながら説明する。実施例1の多層構造体の層構成では、バリア層(A:10μm)から、ポリオレフィン系接着性樹脂層(B2:5μm)を介して、ポリプロピレン層(C2:15μm)、ポリウレタン系接着性樹脂層(D:4μm)及びポリプロピレン層(シーラント層(E):70μm)が配置されていて、合計厚み85μmのポリプロピレン層の間に、4μmのポリウレタン系接着性樹脂層が挿入されている。一方、比較例3の多層構造体の層構成は、バリア層(A:10μm)からポリオレフィン系接着性樹脂層(B2:5μm)を介してポリプロピレン層(C2:85μm)が配置されていて、ポリウレタン系接着性樹脂層は含まれていない。このように、実施例1の層構成と比較例3の層構成の相違点は、厚い(85μm)ポリプロピレン層の内部に薄い(4μm)ポリウレタン系接着性樹脂層が挿入されているか否かだけであるが、当該ポリウレタン系接着性樹脂層の存在によって、レトルト処理後の酸素透過速度(OTR)が半分以下に低下する。
 このことから、ポリプロピレン層(C2)とポリプロピレン層(シーラント層(E))の間にポリウレタン系接着性樹脂層(D)を配置することによって、レトルト処理後のバリア層(A)(EVOH(a1)とポリアミド(a2)を含む樹脂組成物層)から水分が迅速に排出されるようになったと考えられる。ポリプロピレン層とポリプロピレン層という同種の樹脂からなる層の間には、本来接着剤層を設ける必要がないところ、敢えてポリウレタン系接着性樹脂層を配置することによって、レトルト処理後のOTRが大きく低下したことは驚きである。なお、本明細書では「レトルト処理」という用語を使って説明するが、それ以外の高温高湿度下での水蒸気や熱水を用いた処理を行った場合であっても本発明の効果が奏される。以下、本発明について、詳細に説明する。
[バリア層(A)]
 バリア層(A)は、EVOH(a1)ポリアミド(a2)を含むものである。EVOH(a1)は、通常、エチレンとビニルエステルとを重合して得られるエチレン-ビニルエステル共重合体をけん化することにより得られる。EVOH(a1)のエチレン単位含有量は20モル%以上40モル%以下である。エチレン単位含有量が20モル%未満の場合、前記多層構造体の溶融成形性が悪化する。エチレン単位含有量は、25モル%以上が好ましい。一方、エチレン単位含有量が40モル%を超える場合、前記多層構造体のガスバリア性が低下する。エチレン単位含有量は、35モル%以下が好ましい。また、EVOH(a1)のけん化度は85モル%以上であることが好ましい。けん化度とは、EVOH(a1)中のビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合を意味する。けん化度が85モル%以上である場合、前記の多層構造体のガスバリア性がさらに向上する。けん化度は95モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。EVOH(a1)のエチレン単位含有量及びけん化度は、H-NMR測定で求められる。
 EVOH(a1)のMFR(210℃、2.16kg荷重下)は0.1g/10min以上50g/10min以下が好ましい。EVOH(a1)のMFRは1g/10min以上がより好ましく、2g/10min以上がさらに好ましい。一方、EVOH(a1)のMFRは30g/10min以下がより好ましく、15g/10min以下がさらに好ましい。EVOH(a1)のMFRが上記範囲であると、前記多層構造体の溶融成形性がさらに向上する。
 EVOH(a1)は、複数種のEVOHの混合物であっても構わない。その場合のエチレン単位含有量、けん化度及びMFRは、平均値が上記範囲を満足すればよい。
 EVOH(a1)は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、エチレン、ビニルエステル及びビニルアルコール以外の他の単量体単位を含有していてもよい。他の単量体単位の含有量は5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。他の単量体単位としては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン;(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;アルキルビニルエーテル;N-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド又はその4級化物、N-ビニルイミダゾール又はその4級化物、N-ビニルピロリドン、N,N-ブトキシメチルアクリルアミド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
 バリア層(A)は、EVOH(a1)に加えてポリアミド(a2)を含む。バリア層(A)がポリアミドを少量含有することにより、レトルト処理後であっても、白化やシワの発生が抑制されて、前記多層構造体の外観が良好になる。EVOH(a1)とポリアミド(a2)の質量比(a1/a2)は、70/30以上95/5以下である。質量比(a1/a2)が70/30未満の場合、リサイクル性が低下するとともにガスバリア性も低下する。質量比(a1/a2)は、75/25以上であることが好ましく、80/20以上であることがより好ましい。一方、質量比(a1/a2)が95/5を超える場合、レトルト処理後に外観不良となる場合がある。質量比(a1/a2)は、93/7以下であることが好ましい。
 ポリアミド(a2)としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)、エチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン26/66/610)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(ナイロン6I/6T)、11-アミノウンデカンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド、ポリノナメチレンシクロヘキシルアミドあるいはこれらのポリアミドをメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミンなどの芳香族アミンで変性したものが挙げられる。また、メタキシリレンジアンモニウムアジペートなども挙げられる。前記ポリアミドとして、脂肪族ポリアミドが好ましく、カプロアミドを主体とするポリアミドがより好ましく、前記ポリアミドの構成単位の75モル%以上がカプロアミド単位であるポリアミドがさらに好ましい。中でも、EVOHとの相溶性の観点から、前記ポリアミドがナイロン6であることが好ましい。
 バリア層(A)は、マグネシウム換算で10ppm以上1400ppm以下のマグネシウム塩を含むことが好ましい。10ppm以上のマグネシウム塩を含むことにより、長時間溶融成形した場合に、ゲルの発生を抑制することができ、ロングラン性が良好になる。マグネシウム塩の含有量は、マグネシウム換算で20ppm以上がより好ましく、30ppm以上がさらに好ましい。一方、マグネシウム塩の含有量が多すぎる場合には、長時間溶融成形した場合に色相が悪化する場合がある。マグネシウム塩の含有量は、マグネシウム換算で500ppm以下がより好ましく、200ppm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において「ppm」は、「質量ppm」を意味する。
 マグネシウム塩としては、水酸化マグネシウム、カルボン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。ロングラン性の観点から、水酸化マグネシウム、カルボン酸マグネシウムが好ましく、水酸化マグネシウムがより好ましい。カルボン酸マグネシウムとしては、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
 バリア層(A)は、炭素-炭素二重結合を有する酸素吸収性樹脂を含むとともに、酸化を促進するコバルト塩などの遷移金属触媒を含んでもよく、それによってレトルト処理後でも高い酸素バリア性を維持できる場合がある。
[ポリオレフィン系接着性樹脂層(B)]
 ポリオレフィン系接着性樹脂層(B)(以下、「Tie」と称することがある)は、バリア層(A)とポリプロピレン層(C)の間に配置され、両層を接着するために設けられる層である。ポリオレフィン系接着性樹脂層(B)に含まれる樹脂は、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基などの極性官能基を含むポリオレフィンである。例えばカルボン酸変性ポリオレフィンが挙げられる。カルボン酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンにエチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物を化学的(たとえば付加反応、グラフト反応により)に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィンのことをいう。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(低圧、中圧、高圧)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリブテン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチルエステル共重合体等の、オレフィンと該オレフィンと共重合し得るコモノマー(ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル等)との共重合体が挙げられ、これらの中でもポリプロピレンが好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸、そのモノエステル、又はその無水物が挙げられ、中でもエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が好ましい。具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル等が挙げられ、無水マレイン酸が特に好ましい。ポリオレフィン系接着性樹脂層(B1)及びポリオレフィン系接着性樹脂層(B2)に含まれる樹脂は、それぞれ異なる種類であっても同じ種類であってもよい。
[ポリプロピレン層]
 ポリプロピレン層(C)及びシーラント層(E)に含まれるポリプロピレンは、ホモポリプロピレンであってもよいし、エチレン等の他のモノマーを共重合した共重合ポリプロピレンであってもよい。当該他のモノマーに由来する単位の含有量は、通常10質量%以下であり、好適には5質量%以下である。共重合ポリプロピレンとしては、ランダム共重合ポリプロピレンであってもよいし、ブロック共重合ポリプロピレンであってもよい。ポリプロピレンを用いることによって、耐水性、耐湿性及び耐熱性に優れた包装容器を提供することができる。また、融点が比較的低いのでリサイクル性にも優れている。ポリプロピレン層(C1)、ポリプロピレン層(C2)及びシーラント層(E)に含まれるポリプロピレンは、それぞれ異なる種類であっても同じ種類であってもよい。
[ポリウレタン系接着性樹脂層(D)]
 ポリウレタン系接着性樹脂層(D)は、ポリプロピレン層(C2)とシーラント層(E)の間に配置され、両層を接着するために設けられる層である。層(D)に含まれるポリウレタンは、ポリイソシアネートとポリオールを反応させて得られるポリウレタンであればよく、特に限定されない。1液型であってもよいし、2液型であってもよいが、接着性の観点からは2液型であることが好ましい。2液型の場合、塗布に先立ってポリイソシアネートとポリオールを混合してから、ポリプロピレン層(C2)又はシーラント層(E)のいずれか又は両方の表面に塗布する。このとき、有機溶媒に溶解させたものを塗布することもできるし、水に分散させたものを塗布することもでき、そのような場合には塗布後に有機溶媒又は水を除去してからポリプロピレン層(C2)とシーラント層(E)を重ねて硬化させる。
 本発明の多層構造体に含まれる上記(A)~(E)の各層は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、他の樹脂、乾燥剤、分散剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋剤、金属塩、充填剤、各種繊維等の補強剤等が挙げられる。他の成分の含有量は、通常50質量%未満であり、好適には10質量%未満である。
[層構成]
 本発明の多層構造体においては、上記(A)~(E)の各層が、C1/B1/A/B2/C2/D/Eの順に配置される。このとき、各層が複数の層から構成されていても構わない。例えば、バリア層(A)が二層から構成されて、それぞれの層に含まれるEVOHのエチレン単位含有量が異なるような場合や、ポリプロピレン層(C)が二層から構成されて、それぞれの層に含まれるPPの種類が異なるような場合も、本発明の多層構造体に含まれる。
 また、本発明の多層構造体において、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、上記(A)~(E)の各層以外の層をさらに有していても構わない。また、例えば、ポリウレタン系接着性樹脂層(D)及びシーラント層(E)の組み合わせを2回繰り返してC1/B1/A/B2/C2/D/E/D/Eという構成にしても構わない。なおこの場合、内部に取り込まれたポリプロピレン層は、もはやシーラント層(E)ではないが、この多層構造体は本発明に含まれる。
 また、さらにガスバリア性や水蒸気バリア性を向上させるために、上記(A)~(E)の各層のいずれかの表面に、アルミニウム等の金属、あるいは酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成してもよい。ただし、リサイクル性の観点からはそのような無機蒸着膜からなる層を有さない方が好ましい。またリサイクル性の観点からは、本発明の多層構造体が、融点210℃以上の樹脂を主成分とする層を含まないことが好ましい。ここで、「主成分とする」とは、全体の50質量%以上を含むという意味である。また、上記(A)~(E)の各層のいずれかの表面に印刷層を有していてもよい。
 バリア層(A)の厚みは、1μm以上50μm以下であることが好ましい。バリア層(A)が1μm以上であることによってガスバリア性が良好になる。バリア層(A)の厚みは、2μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることがさらに好ましい。一方、バリア層(A)が50μm以下であることによって柔軟性が良好になるし、多層構造体の軽量化に資する。バリア層(A)の厚みは、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
 ポリプロピレン層(C1)の厚みは、5μm以上50μm以下であることが好ましい。ポリプロピレン層(C1)は、包装容器にしたときにバリア層(A)よりも外側に配置される層であり、レトルト処理後にバリア層(A)に吸収された水分が通過する層である。したがって、ポリプロピレン層(C1)が厚すぎると、レトルト処理中に増加したバリア層(A)の水分率が、その後低下するのに長時間を要してしまい、その間バリア性が低下しているので、食品などの内容物の酸化劣化が進行しやすくなる。そのため、ポリプロピレン層(C1)が厚すぎない方がよい。ポリプロピレン層(C1)の厚みは、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。一方、外部からの機械的な衝撃等からバリア層(A)を保護するために、ポリプロピレン層(C1)が薄すぎない方がよい。ポリプロピレン層(C1)の厚みは、8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。
 ポリプロピレン層(C2)の厚みは、2μm以上80μm以下であることが好ましい。ポリプロピレン層(C2)は、包装容器にしたときにバリア層(A)よりも内側かつポリウレタン系接着性樹脂層(D)の外側に配置される層である。前述のポリプロピレン層(C1)のような働きをするものではなく、厚みも自由度が高い。けれども、後述するように、ポリプロピレン層(C1)やバリア層(A)などとともに共押出成形するのであれば、バランス上ポリプロピレン層(C1)と同じ厚みの方が成形しやすい。したがって、ポリプロピレン層(C2)の厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。また、ポリプロピレン層(C2)の厚みは、5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。
 ポリオレフィン系接着性樹脂層(B1、B2)の厚みは、いずれも1μm以上20μm以下であることが好ましい。バリア層(A)とポリプロピレン層(C)の良好な接着性の観点からは、ポリオレフィン系接着性樹脂層(B)の厚みは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。一方、ポリオレフィン系接着性樹脂層(B)が厚すぎる場合には、多層構造体のコストと質量が上昇してしまう。ポリオレフィン系接着性樹脂層(B)の厚みは、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
 シーラント層(E)の厚みは、20μm以上150μm以下であることが好ましい。シーラント層(E)が20μm以上であることによってヒートシール時の接着力を大きくできる。シーラント層(E)の厚みは、40μm以上であることがより好ましい。一方、シーラント層(E)が150μm以下であることによって柔軟性が良好になるし、多層構造体の軽量化に資する。シーラント層(E)の厚みは、120μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
 ポリウレタン系接着性樹脂層(D)の厚みは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。ポリプロピレン層(C)とシーラント層(E)の良好な接着性の観点からは、ポリウレタン系接着性樹脂層(D)の厚みは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。一方、ポリウレタン系接着性樹脂層(D)が厚すぎる場合には、多層構造体のコストと質量が上昇してしまう。ポリウレタン系接着性樹脂層(D)の厚みは、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
 また、バリア層(A)よりポリプロピレン層(C1)側にある層の合計厚みをT1、バリア層(A)よりシーラント層(E)側にある層の合計厚みをT2としたときの比(T1/T2)が0.3以下であることが好ましい。すなわち、包装容器にした場合に、多層構造体の中でバリア層(A)が外側寄りになることが好ましい。一般に、レトルト処理を施す食品などは、多量の水分を含んでいる場合が多く、包装容器の内表面が水に濡れていることが多い。一方、包装容器の外表面は、室内の湿度と同程度であることが多いことから、内表面に比べると湿度が低い。このような場合、多層構造体内の水分の分布が平衡に達した時のバリア層(A)の水分率は外表面に近いほど低く、内表面に近いほど高くなる。したがって、ガスバリア性を良好に保つ観点から、比(T1/T2)が小さいことが好ましい。比(T1/T2)は、0.25以下であることがより好ましい。また、比(T1/T2)は、0.1以上であることが好ましい。
 バリア層(A)よりポリプロピレン層(C1)側にある層の合計厚みT1が、6μm以上70μm以下であることが好ましい。T1が厚すぎると、レトルト処理中に増加したバリア層(A)の水分率が、その後低下するのに長時間を要してしまい、その間バリア性が低下しているので、食品などの内容物の酸化劣化が進行しやすくなる。そのため、T1が厚すぎない方がよい。T1の厚みは、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。一方、外部からの機械的な衝撃等からバリア層(A)を保護するために、T1が薄すぎない方がよい。T1の厚みは、10μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることがさらに好ましい。
 バリア層(A)よりシーラント層(E)側にある層の合計厚みT2が、30μm以上250μm以下であることが好ましい。T2が厚すぎると、多層構造体の質量が大きくなってコストも増大する。そのため、T2の厚みは、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。一方、バリア層(A)水分率を下げて多層構造体のガスバリア性を良好に保つためには、T2が薄すぎない方がよい。T2の厚みは、50μm以上であることがより好ましく、60μm以上であることがさらに好ましい。
 多層構造体の全体厚みに対するバリア層(A)の厚みの割合が10%以下であることが好ましい。これにより、多層構造体のリサイクル性が向上する。バリア層(A)の厚みの割合は8%以下であることがより好ましく、6%以下であることがさらに好ましい。ガスバリア性の観点からは、通常、バリア層(A)の厚みの割合は1%以上である。
 本発明の多層構造体を、120℃、30分間レトルト殺菌処理してから、シーラント層(E)側を20℃、100%RHに、ポリプロピレン層(C1)側を20℃、65%RHに、それぞれ2週間維持した後の、JIS K7126-2(等圧法;2006年)に準拠して測定される酸素透過速度が5cc/m・day・atm以下であることが好ましい。このように、レトルト後の酸素透過速度(OTR)が一定以下であることによって、食品などの内容物を長期間保存する包装容器に好適に用いることができる。上記酸素透過速度は、より好適には4cc/m・day・atm以下であり、さらに好適には3cc/m・day・atm以下である。
[多層構造体の製造方法]
 本発明の多層構造体の製造方法は特に限定されないが、好適な製造方法は、バリア層(A)、ポリオレフィン系接着性樹脂層(B1、B2)、ポリプロピレン層(C1、C2)を少なくとも含み、これらの層がC1/B1/A/B2/C2の順に配置された多層フィルムを共押出成形によって製造し、該多層フィルムのポリプロピレン層(C2)側にポリウレタン系接着性樹脂を用いて、ポリプロピレンフィルムを接着する方法である。ポリウレタン系接着性樹脂は、溶融成形が困難なので、フィルム同士をドライラミネーションする接着剤として用いることが好ましい。
 C1/B1/A/B2/C2の順に配置された多層フィルムの製造方法は、共押出成形が好適である。ポリオレフィン系接着性樹脂層(B1、B2)は、バリア層(A)及びポリプロピレン層(C1、C2)と同様に熱可塑性樹脂であり、しかも比較的融点が低いので、これらをまとめて共押出成形して多層フィルムを製造することが生産性の面から好適である。Tダイから押し出して多層フィルムを成形してもよいし、円形のダイから押し出してインフレーション成形してもよい。得られた多層フィルムを、無延伸のままポリプロピレンフィルムとドライラミネーションしてもよい。また、得られた多層フィルムを1軸又は2軸に延伸してからドライラミネーションに供してもよい。
 また、シーラント層(E)を構成するためのポリプロピレンフィルムの製造方法も特に限定されない。Tダイから押し出して単層フィルムを成形してもよいし、円形のダイから押し出してインフレーション成形してもよい。得られたポリプロピレンフィルムは、無延伸であってもよいし、1軸又は2軸に延伸したフィルムであってもよい。良好なヒートシール性を得るという観点からは、無延伸のポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
 以上のようにして製造された、C1/B1/A/B2/C2の順に配置された多層フィルムと、ポリプロピレンの単層フィルムを、ポリウレタン系接着性樹脂を用いて、ドライラミネーションすることが好ましい。ドライラミネーションに際しては、ポリイソシアネートとポリオールの混合物を接着面に塗布してから重ねて、必要に応じて加熱して硬化させることによって本発明の多層構造体を製造することができる。ポリイソシアネートとポリオールの混合物は、さらに溶媒を含んでいてもよく、その場合には、塗布後に溶媒を除去してから加熱して硬化させる。
[熱シール用包装材]
 本発明の多層構造体の好適な用途が、熱シール用包装材である。多層構造体の最表面に配置されたシーラント層(E)に熱を加えて溶融させることによって多層構造体をシールすることができる。このとき、シーラント層(E)を内側にして本発明の多層構造体同士を重ねて熱シールしてもよいし、他の成形品の表面に本発明の多層構造体のシーラント層(E)を接触させて熱シールしても構わない。熱シールの方法は特に限定されず、加熱した熱板を押し付けて熱シールしてもよいし、超音波を用いて熱シールしても構わない。
[包装容器]
 本発明の多層構造体の好適な用途は、包装容器である。すなわち、多層構造体を含み、シーラント層(E)同士を溶融して封止してなる包装容器が本発明の好適な実施態様である。本発明の包装容器はレトルト処理後のガスバリア性に優れているので、水蒸気又は熱水による殺菌処理用に好適に用いられる。レトルト処理後のガスバリア性に優れるとともにリサイクル性にも優れている本発明の包装容器は、食品、飲料、輸液バッグ等の殺菌処理を必要とする様々な内容物を包装する用途に用いられる。容器の形態としては、スタンドアップパウチ、スパウト付きパウチ、チャックシール付きパウチ、平パウチ、横製袋充填シールパウチ等のパウチ、深絞りカップ容器の蓋材等が挙げられ、中でもパウチが好ましい。
 パウチを製造する場合、多層構造体のシーラント層(E)同士が接触するように重ねてシールすることが好ましい。例えば、2枚の多層構造体を用いて、3辺をシールすることによって三方袋を製造することができる。また、シーラント層(E)を内側にして折りたたんだ1枚の多層構造体の対向する2辺をシールして袋を製造することもできる。さらに、丸めた1枚の多層構造体の両端部のシーラント層(E)同士を合掌貼りすることでシールすることもできる。
 本発明の包装容器に内容物が充填されてなる包装体は、水蒸気又は熱水による殺菌処理に供することが好ましい。常圧で高温の水または水蒸気と接触させてもよいし、加圧水蒸気と接触させる、いわゆるレトルト処理を行ってもよい。本発明の包装体はレトルト処理後のガスバリア性が優れているので、殺菌処理された内容物が酸化劣化するのを効果的に抑制することができる。また、本発明の包装容器はリサイクル性に優れているので、使用後の包装容器を回収し、裁断、洗浄することによって、再度ポリオレフィンとともに溶融成形することが可能であり、ポストコンシューマーリサイクルが可能である。
[実施例1]
(酸素バリア性樹脂EVOH-1の作製)
 エチレン-ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製「エバール」L171B、エチレン単位含有量27モル%、ケン化度99.9モル%、MFR(温度210℃、荷重2160g)4g/10分、融点190℃)90質量部に、ポリアミドとしてナイロン6(宇部興産株式会社製、UBEナイロン SF1018A、融点223℃)を10質量部、水酸化マグネシウムを0.01質量部(マグネシウムイオン換算で42ppm)混合し、二軸混練押出機(スクリュー径25mmΦ、L/D=30、株式会社東洋精機製作所製)でシリンダ温度を230℃、スクリュー回転数を毎分100回転の条件で溶融混練した後、ダイスから5℃の冷却水槽中にストランド状に押し出し、ストランドカッターでペレタイズすることによりエチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドを含むバリア性樹脂EVOH-1のペレットを得た。
(共押出フィルムの作製)
 3種5層の多層押出機の各押出機に、EVOH-1のペレット、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP EA7AD」、融点159℃、プロピレン単位含有量が99.2質量%、エチレン単位含有量が0.8質量%、以下PP)、ポリオレフィン系接着性樹脂(三井化学株式会社製無水マレイン酸変性ポリプロピレン「アドマーQF500」、融点161℃、以下Tie)を投入し、押出温度210~235℃、ダイス温度235℃の条件で、ダイスから80℃の冷却ロールにポリプロピレン樹脂が冷却ロールに接触するようにキャストすることにより、層構成がPP(15μm、層(C1))/Tie(5μm、層(B1))/EVOH-1(10μm、層(A))/Tie(5μm、層(B2))/PP(15μm、層(C2))で構成される3種5層の共押出フィルムを作製した。
(多層構造体の作製)
 2液反応型ポリウレタン系接着剤(三井化学株式会社製「タケラックA-520」65質量部、「タケネートA-50」10質量部)を酢酸エチル100質量部と混合し、接着剤溶液を調整した。次いで、厚み70μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(三井化学東セロ株式会社製「RXC-22」)のコロナ処理面上に前記接着剤溶液をワイヤーバーで塗工し、100℃で5分間乾燥させて厚み4μmのポリウレタン系接着性樹脂(LA)層を形成し、上記で得た共押出フィルムとラミネートして、PP(15μm、層(C1))/Tie(5μm、層(B1))/EVOH-1(10μm、層(A))/Tie(5μm、層(B2))/PP(15μm、層(C2))/LA(4μm、層(D))/CPP(70μm、層(E))の厚みと層構成を有する多層フィルム(多層構造体)を作製した。ラミネートの際の接着温度(加熱ロール温度)は80℃とし、次いで40℃の恒温室で3日間保管してエージングを行い、ポリウレタン系接着性樹脂を硬化させた。得られた多層フィルムにおいて、層(A)より層(C1)側にある層の合計厚みをT1、層(A)より層(E)側にある層の合計厚みをT2とした場合、それらの比T1/T2は0.21であった。また、全体厚みに対する層(A)の厚みの割合は8.1%であった。
 得られた多層フィルムを11cm角の正方形に2枚切り出し、ラミネートしたシーラント層(E)同士が接するように重ね合わせ、多層フィルムの3方それぞれを160℃に加熱した0.5cm幅の熱板式シーラーで3秒間ヒートシールして、多層フィルムの袋(パウチ)を10個作製した。
 次に、高圧調理殺菌装置(株式会社日阪製作所製)を用いて、温度120℃、ゲージ圧0.17MPaの条件で、30分間熱水中でレトルト処理を行った。レトルト処理後、パウチの一部を切り取り、表面付着水を拭き取ってから、MOCON INC.製酸素透過率測定装置OX-TRAN2/21型を用い、パウチの外側(層(C1)側)が20℃、65%RHに、パウチの内側(層(E)側)が20℃、湿度100%になるようにして、2週間後の酸素透過速度(OTR)を、ISO14663-2 Annex C(1999)に記載の方法に準じて測定した。測定結果を表1に示す。
[実施例2]
 実施例1で得られた多層構造体の層(E)側に、実施例1と同様の方法で、層(E)と同じ無延伸ポリプロピレンフィルムをポリウレタン系接着性樹脂(LA)層を介してさらにラミネートして、PP(15μm、層(C1))/Tie(5μm、層(B1))/EVOH-1(10μm、層(A))/Tie(5μm、層(B2))/PP(15μm、層(C2))/LA(4μm、層(D))/CPP(70μm、層(E))/LA(4μm、層(D))/CPP(70μm、層(E))の厚みと層構成を有する多層構造体を作製した。実施例1と同様の方法でレトルト処理を行い、酸素透過速度(OTR)を評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
 厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムの代わりに、厚み30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製「RXC-22」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PP(15μm、層(C1))/Tie(5μm、層(B1))/EVOH-1(10μm、層(A))/Tie(5μm、層(B2))/PP(15μm、層(C2))/LA(4μm、層(D))/CPP(30μm、層(E))の厚みと層構成を有する多層構造体を作製した。実施例1と同様の方法でレトルト処理を行い、酸素透過速度(OTR)を評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
 酸素バリア性樹脂を作製する際に、エチレン-ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製「エバール」F171B、エチレン単位含有量32モル%、ケン化度99.9モル%、MFR(温度210℃、荷重2160g)3.7g/10分、融点190℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして酸素バリア性樹脂EVOH-2を作製し、実施例1と同様に多層構造体及びパウチを作製し、実施例1と同様の方法で評価した。レトルト処理を行い、酸素透過速度(OTR)を評価した。結果を表1に示す。なお、本実施例では、共押出フィルムの製膜時に運転開始8時間後であってもゲルが発生しなかった。
[実施例5]
 酸素バリア性樹脂を作製する際に、水酸化マグネシウムを添加しなかった以外は、実施例4と同様にして酸素バリア性樹脂EVOH-3を作製し、実施例1と同様に多層構造体及びパウチを作製し、実施例1と同様の方法で評価した。レトルト処理を行い、酸素透過速度(OTR)を評価した。結果を表1に示す。なお、本実施例では、共押出フィルムの製膜時に、運転を開始してから3時間後までは良品を得ることができたものの、それ以降はゲルが発生した。
 実施例4と実施例5を対比すると、酸素バリア性樹脂がマグネシウム塩を含むことによって、押出成形時のロングラン性が改善されたことがわかる。
[比較例1]
 厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートしなかったこと以外は実施例1と同様に共押出して、層構成がPP(15μm、層(C1))/Tie(5μm、層(B1))/EVOH-1(10μm、層(A))/Tie(5μm、層(B2))/PP(15μm、層(C2))である3種5層の多層フィルムを作製した。実施例1と同様に該多層フィルムを2枚切り出しPP層(C2)同士が接するように重ね合わせてヒートシールしてパウチを作製した。そして、実施例1と同様の方法でレトルト処理を行い、酸素透過速度(OTR)を評価した。結果を表1に示す。
 比較例1と実施例1を対比すると、ポリウレタン系接着性樹脂(LA)層を介して無延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートすることによって、レトルト処理後の酸素透過速度を小さくできたことがわかる。
[比較例2]
 層(C1)及び層(C2)の厚みを90μmとしたこと以外は比較例1と同様にして、層構成がPP(90μm、層(C1))/Tie(5μm、層(B1))/EVOH-1(10μm、層(A))/Tie(5μm、層(B2))/PP(90μm、層(C2))である3種5層の共押出フィルムおよびパウチを作製し、実施例1に示した同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
 比較例2と比較例1を対比すると、外側のPP層(C1)及び内側のPP層(C2)の両方の厚みが大きくなったにもかかわらず、比較例2の多層フィルムのレトルト処理後の酸素透過速度は、比較例1と比べて、大きく増大した。外側のポリプロピレン層の厚みが増加した影響で、レトルト処理中にEVOH-1に吸収された水の外部への放出速度が低下し、EVOH-1中に水分が残存することによって酸素透過速度が増加したと考えられる。
[比較例3]
 層(C2)の厚みを85μmとしたこと以外は比較例1と同様にして、層構成がPP(15μm、層(C1))/Tie(5μm、層(B1))/EVOH-1(10μm、層(A))/Tie(5μm、層(B2))/PP(85μm、層(C2))である3種5層の共押出フィルムおよびパウチを作製し、実施例1に示した同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
 比較例3と実施例1の多層フィルムの層構成を対比すると、T1/T2はほぼ同じであるが、実施例1では、ポリプロピレン層(C2)とシーラント層(E)の間にポリウレタン系接着剤層(D)が挿入されているのに対し、比較例3ではポリプロピレン層(C2)の厚みが厚く、ポリウレタン系接着剤層(D)を有さない点が異なる。その結果、比較例3のレトルト処理後の酸素透過速度が実施例1よりも大きく増加した。このことから、PP層の間に挿入されたポリウレタン系接着剤層(D)が、レトルト処理中にEVOH-1層が吸収した水の放出を促進させていると推定される。
[比較例4]
 酸素バリア性樹脂を作製する際に、ナイロン6を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして酸素バリア性樹脂EVOH-4を作製し、実施例1と同様に多層構造体及びパウチを作製し、実施例1と同様の方法で評価した。レトルト処理後に作製したパウチが白化し、外観が悪化した。

 

Claims (14)

  1.  バリア層(A)、ポリオレフィン系接着性樹脂層(B1、B2)、ポリプロピレン層(C1、C2)、ポリウレタン系接着性樹脂層(D)及びシーラント層(E)を少なくとも含み、これらの層がC1/B1/A/B2/C2/D/Eの順に配置され、
     バリア層(A)がエチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)とポリアミド(a2)を含み、エチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)とポリアミド(a2)の質量比(a1/a2)が70/30以上95/5以下であり、
     エチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)のエチレン単位含有量が20モル%以上40モル%以下であり、かつ
     シーラント層(E)がポリプロピレンを含む、多層構造体。
  2.  バリア層(A)が、マグネシウム換算で10ppm以上1400ppm以下のマグネシウム塩を含む、請求項1に記載の多層構造体。
  3.  前記マグネシウム塩が水酸化マグネシウムである、請求項2に記載の多層構造体。
  4.  バリア層(A)よりポリプロピレン層(C1)側にある層の合計厚みをT1、バリア層(A)よりシーラント層(E)側にある層の合計厚みをT2としたときの比(T1/T2)が0.3以下である、請求項1又は2に記載の多層構造体。
  5.  全体厚みに対するバリア層(A)の厚みの割合が10%以下である、請求項1又は2に記載の多層構造体。
  6.  ポリアミド(a2)がナイロン6である、請求項1又は2に記載の多層構造体。
  7.  シーラント層(E)が、無延伸ポリプロピレンからなる、請求項1又は2に記載の多層構造体。
  8.  前記多層構造体を、120℃、30分間レトルト殺菌処理してから、シーラント層(E)側を20℃、100%RHに、ポリプロピレン層(C1)側を20℃、65%RHに、それぞれ2週間維持した後の、JIS K7126-2(等圧法;2006年)に準拠して測定される酸素透過速度が5cc/m・day・atm以下である、請求項1又は2に記載の多層構造体。
  9.  請求項1又は2に記載の多層構造体からなる、熱シール用包装材。
  10.  請求項1又は2に記載の多層構造体を含み、シーラント層(E)同士を溶融して封止してなる包装容器。
  11.  パウチである、請求項10に記載の包装容器。
  12.  水蒸気又は熱水による殺菌処理用である、請求項10に記載の包装容器。
  13.  請求項10に記載の包装容器に内容物が充填されてなる包装体。
  14.  バリア層(A)、ポリオレフィン系接着性樹脂層(B1、B2)、ポリプロピレン層(C1、C2)を少なくとも含み、これらの層がC1/B1/A/B2/C2の順に配置された多層フィルムを共押出成形によって製造し、該多層フィルムのポリプロピレン層(C2)側にポリウレタン系接着性樹脂を用いてポリプロピレンフィルムを接着する、請求項1又は2に記載の多層構造体の製造方法。

     
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