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WO2026014048A1 - 方向性電磁鋼板の製造方法および絶縁被膜処理液の評価方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法および絶縁被膜処理液の評価方法

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WO2026014048A1
WO2026014048A1 PCT/JP2025/017640 JP2025017640W WO2026014048A1 WO 2026014048 A1 WO2026014048 A1 WO 2026014048A1 JP 2025017640 W JP2025017640 W JP 2025017640W WO 2026014048 A1 WO2026014048 A1 WO 2026014048A1
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龍一 末廣
修司 西田
建樹 清水
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JFE Steel Corp
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JFE Steel Corp
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Abstract

鋼板の表面上に、絶縁被膜を形成するために用いる絶縁被膜処理液を、絶縁被膜処理液の調合完了からX分以内に塗布し、焼付することにより、鋼板と、鋼板の表面上に配置された絶縁被膜と、を備える方向性電磁鋼板を製造する。絶縁被膜処理液の調合完了からX分後の降伏値Yと、絶縁被膜処理液の調合完了から5分後の降伏値Yとの比Y/Yが、8.00以下を満たす。これにより、製造された方向性電磁鋼板は、外観が優れる。

Description

方向性電磁鋼板の製造方法および絶縁被膜処理液の評価方法
 本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法および絶縁被膜処理液の評価方法に関する。
 方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機などの鉄心として用いられる軟磁性材料であり、鉄の磁化容易軸である〈001〉方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶集合組織(集合組織)を有する。このような集合組織は、方向性電磁鋼板を製造する過程において、ゴス(Goss)方位と称される{110}〈001〉方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、仕上げ焼鈍(二次再結晶焼鈍)を通じて形成される。
 このような方向性電磁鋼板は、一般的に、鋼板と、この鋼板の両面側に配置された絶縁被膜とを備える。絶縁被膜は、鋼板に張力を付与して方向性電磁鋼板の鉄損を低下させるほか、方向性電磁鋼板に、絶縁性、加工性、防錆性などの特性も付与する。
 このような絶縁被膜として、例えば、従来、環境保全への観点から、クロムを含有しない絶縁被膜が提案されている(特許文献1~4)。
特開2000-169972号公報 特開2017-137540号公報 特開2008-266743号公報 特表2017-511840号公報
 絶縁被膜は、例えば、リン酸塩、コロイド状シリカ等を含有する絶縁被膜処理液を、鋼板(例えば、二次再結晶板)の表面上に、例えばロールコーターを用いて塗布し、その後、焼付することにより形成される。
 このとき、鋼板を搬送しながら、絶縁被膜処理液を塗布する場合があるが、搬送速度が高くなると、得られる方向性電磁鋼板において、外観不良が生じる場合がある。
 本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、外観に優れる方向性電磁鋼板を製造することを目的とする。
 本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
 すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供する。
 [1]鋼板と、上記鋼板の表面上に配置された絶縁被膜と、を備える方向性電磁鋼板を製造する方法であって、上記鋼板の表面上に、上記絶縁被膜を形成するために用いる絶縁被膜処理液を、上記絶縁被膜処理液の調合完了からX分以内に塗布し、焼付して、上記絶縁被膜処理液の調合完了からX分後の降伏値Yと、上記絶縁被膜処理液の調合完了から5分後の降伏値Yとの比Y/Yが8.00以下を満たす、方向性電磁鋼板の製造方法。
 [2]上記絶縁被膜処理液は、Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、AlおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するリン酸塩と、コロイド状シリカと、金属元素を含有する金属化合物と、を含有し、上記コロイド状シリカの含有量が、上記リン酸塩の固形分100質量部に対して、SiO固形分換算で、50~120質量部であり、上記金属化合物の含有量が、上記リン酸塩の固形分100質量部に対して、金属元素換算で、5~60質量部である、上記[1]に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
 [3]上記降伏値Yが1.50×10-5N/cm以下である、上記[1]または[2]に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
 [4]上記絶縁被膜処理液の調合完了から5分後のConsistency Indexが10.0mPa・s以下であり、上記絶縁被膜処理液の調合完了から5分後のFlow Indexが0.80以上1.20以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
 [5]上記金属化合物が、Zn、Ba、Sr、Mn、Ca、V、Ti、Mg、Hf、ZrおよびNbからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
 [6]方向性電磁鋼板が備える絶縁被膜を形成するために用いる絶縁被膜処理液を評価する方法であって、上記絶縁被膜処理液を、鋼板の表面上に塗布し、焼付することにより、上記絶縁被膜が形成され、上記絶縁被膜処理液の調合完了から180分後の降伏値Y180と、上記絶縁被膜処理液の調合完了から5分後の降伏値Yとの比Y180/Yが8.00以下を満たす場合、得られる上記方向性電磁鋼板の外観が良好であると判定する、絶縁被膜処理液の評価方法。
 本発明によれば、外観に優れる方向性電磁鋼板を製造できる。
[本発明者らが得た知見]
 本発明者らは、以下の知見を得た。
 絶縁被膜処理液は、一般的に、ロールコーターを用いて、鋼板の表面に塗布される。その後、焼付が実施されて、鋼板の表面上に、絶縁被膜が形成される。
 絶縁被膜処理液が鋼板の表面に塗布される際、絶縁被膜処理液の粘度(高せん断速度域での粘度)が高いと、鋼板とロールコーターのロールとの間の液面(絶縁被膜処理液の液面)が不安定化し、リビング欠陥(スジ状の欠陥)等の塗布ムラが生じやすい。
 塗布ムラが生じたまま、焼付が実施されると、得られる方向性電磁鋼板において、外観不良が生じ得る。
 もっとも、リビング欠陥等の塗布ムラが生じた場合であっても、鋼板の表面に塗布された絶縁被膜処理液の粘度(低せん断速度域での粘度)が低く、焼付までの間に、十分にレベリングされて均一化された場合には、外観不良を抑制できる。
 すなわち、良好な外観を得るためには、塗布ムラの改善だけでなく、絶縁被膜処理液のレベリング性の改善が有効である。
 ところで、絶縁被膜処理液は、例えば、調合用容器内で、原料(リン酸塩、コロイド状シリカなど)が混合されて調合されるが、調合完了後の絶縁被膜処理液は、調合用容器内で静置された状態(または、一時保管用容器内で攪拌された状態)で、保管される。
 その後、保管された絶縁被膜処理液は、ポンプ等によって、ロールコーターに移送されて、鋼板の表面上に塗布される。鋼板の表面から溢れて塗布されなかった絶縁被膜処理液は、回収されて、再びロールコーターに移送(循環移送)されることが多い。
 このように、絶縁被膜処理液は、調合完了から塗布までの間に、一定程度の時間が経過する場合があり、その間に、粘度特性が変化する場合があることが分かった。
 すなわち、絶縁被膜処理液の粘度のうち、低せん断速度域の粘度に関して、調合完了の直後においては低い場合であっても、調合完了から塗布までの時間経過中に、高く変化する場合がある。この場合、塗布された絶縁被膜処理液は、焼付までの間に、十分にレベリングされず、外観不良を抑制できない。
 一方、この粘度の変化が少ない場合、塗布された絶縁被膜処理液は、焼付までの間にレベリングされるので、良好な外観が得られる。
 本発明は、上記知見に基づき、更に検討を加えて、なされたものである。
 次に、本発明の好適な実施形態について、説明する。
[方向性電磁鋼板の製造方法]
 本実施形態の方向性電磁鋼板の製造方法は、鋼板と、この鋼板の表面上に配置された絶縁被膜と、を備える方向性電磁鋼板を製造する方法であり、概略的には、鋼板の表面上に、絶縁被膜処理液を塗布し、焼付することにより、絶縁被膜を形成する方法である。
 なお、以下の説明は、絶縁被膜処理液の評価方法の説明も兼ねる。
 〈鋼板〉
 本実施形態において用いる鋼板は、例えば、表面上にフォルステライト被膜が形成された二次再結晶板(仕上げ焼鈍板)である。
 二次再結晶板は、例えば、次のように製造される。
 まず、従来公知の精錬プロセスを用いて製造された溶鋼から、連続鋳造法または造塊-分塊圧延法を用いて、上述した成分組成(鋼組成)を有する鋼スラブを得る。
 鋼スラブに熱間圧延を施して、熱延板を得る。その後、熱延板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、最終板厚の冷延板を得る。
 次いで、冷延板に、一次再結晶焼鈍および脱炭焼鈍を施し、その後、MgOを主成分として含有する焼鈍分離剤を塗布して、仕上げ焼鈍(二次再結晶焼鈍)を施して、フォルステライト被膜を形成する。
 こうして、表面上にフォルステライト被膜を有する二次再結晶板が得られる。
 鋼板の成分組成(鋼組成)は、例えば、C:0.001~0.10%、Si:1.0~5.0%(好ましくは2.0~5.0%)、sol.Al:0.003~0.050%、N:0.001~0.020%、SおよびSeからなる群から選ばれる少なくとも1種:0.001~0.05%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
 なお、成分組成における「%」は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。
 鋼板の成分組成は、更に、Cu:0.01~0.2%、Ni:0.01~0.5%、Cr:0.01~0.5%、Sb:0.01~0.1%、Sn:0.01~0.5%、Mo:0.01~0.5%、および、Bi:0.001~0.1%からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。
 鋼板の成分組成は、更に、B:0.001~0.01%、Ge:0.001~0.1%、As:0.005~0.1%、P:0.005~0.1%、Te:0.005~0.1%、Nb:0.005~0.1%、Ti:0.005~0.1%、および、V:0.005~0.1%からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。
 〈絶縁被膜処理液〉
 本実施形態において用いる絶縁被膜処理液は、リン酸塩およびコロイド状シリカを含有し、更に、金属元素を含有する金属化合物を含有することが好ましい。
 《リン酸塩》
 リン酸塩は、Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、AlおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましい。
 リン酸塩は、例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸ストロンチウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸マンガンである。以下、例えば、リン酸マグネシウムを「リン酸Mg」とも表記する(他のリン酸塩も同様)。
 リン酸塩としては、第一リン酸塩(重リン酸塩)が入手容易であり、好ましい。
 《コロイド状シリカ》
 コロイド状シリカの含有量は、リン酸塩の固形分100質量部に対して、SiO固形分換算で、例えば30質量部以上であり、形成される絶縁被膜の耐吸湿性が優れるという理由からは、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましい。
 また、コロイド状シリカの含有量は、リン酸塩の固形分100質量部に対して、SiO固形分換算で、例えば150質量部以下であり、形成される絶縁被膜の耐吸湿性が優れるという理由からは、120質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましい。
 《金属化合物》
 クロムフリーの絶縁被膜を形成する場合、良好な耐吸湿性および耐食性を確保し、かつ、絶縁被膜が鋼板に付与する張力(付与張力)を高くする観点から、絶縁被膜処理液には、金属化合物を含有させることが好ましい。
 金属化合物が含有する金属元素は、Crを除く元素であり、耐吸湿性などの観点から、Zn、Ba、Sr、Mn、Ca、V、Ti、Mg、Hf、ZrおよびNbからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
 金属化合物は、例えば、金属酸化物、金属窒化物または金属の硝酸塩である。
 金属化合物としては、具体的には、例えば、TiO、ZrO、HfO、MgO、ZnO、Nb、V、TiN、ZrN、BaO、Ba(NO、Sr(NO、MnO、CaOなどが挙げられる。
 金属化合物の含有量は、リン酸塩の固形分100質量部に対して、金属元素換算で、例えば2質量部以上であり、形成される絶縁被膜の耐吸湿性が優れ、かつ、付与張力が高くなるという理由からは、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。
 また、金属化合物の含有量は、リン酸塩の固形分100質量部に対して、金属元素換算で、例えば80質量部以下であり、絶縁被膜処理液の粘度上昇を抑制しやすいという理由からは、60質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
 金属化合物の形態は、例えば、粒子(粉末)である。
 金属化合物の粒径については、後述する。
 《分散剤》
 絶縁被膜処理液は、更に、後述する分散剤を含有してもよい。
 《クロム化合物》
 絶縁被膜処理液は、無水クロム酸(三酸化クロム)、クロム酸塩、重クロム酸塩などのクロム化合物を含有しない、いわゆるクロムフリーであることが好ましい。
 具体的には、クロム化合物の含有量は、リン酸塩の固形分100質量部に対して、クロム元素(Cr)換算で、1.0質量部以下が好ましく、0.10質量部以下がより好ましく、0.01質量部以下が更に好ましい。
 〈絶縁被膜処理液の調合および塗布〉
 《調合完了からX分以内の塗布および比Y/Y
 本実施形態においては、上述した絶縁被膜処理液を、調合し、調合完了からX分以内に、鋼板の表面に塗布する。
 このとき、絶縁被膜処理液の調合完了からX分後の降伏値Yと、絶縁被膜処理液の調合完了から5分後の降伏値Yとの比Y/Yが8.00以下を満たす。
 上記条件を満たす場合、鋼板の表面に塗布された絶縁被膜処理液の粘度(低せん断速度域での粘度)が低く、焼付までの間に十分にレベリングされるので、良好な外観が得られる。より良好な外観を得る観点から、比Y/Yは、5.00以下が好ましく、4.50以下がより好ましく、3.00以下が更に好ましい。
 比Y/Yの下限は、特に限定されない。
 もっとも、比Y/Yが低すぎると、塗布された絶縁被膜処理液の粘度が焼付までの間に過剰に低下して、所望する絶縁被膜の付着量が得られない場合がある。
 このため、比Y/Yは、0.10以上が好ましく、0.50以上がより好ましく、1.00以上が更に好ましい。
 X分は、例えば、180分である。
 例えば、絶縁被膜処理液の調合完了から180分後の降伏値Y180と、絶縁被膜処理液の調合完了から5分後の降伏値Yとの比Y180/Yが上記範囲(例えば8.00以下)を満たす場合、良好な外観が得られると判定してもよい。
 《降伏値の求め方》
 絶縁被膜処理液の降伏値は、次のように求める。
 まず、B型粘度計を用いて、せん断速度γ:13.2~330.0s-1の範囲で、絶縁被膜処理液(液温:20℃)のせん断応力τを測定し、次いで、Herschel-Bulkleyの式「τ=τ+kγ」にフィッティングする(τ:降伏値、k:Consistency Index、n:Flow Index)。
 このようにして、絶縁被膜処理液について、調合完了から5分後の降伏値(τ)である「Y」と、調合完了からX分後の降伏値(τ)である「Y」を求める。
 《調合完了から5分後の降伏値Y
 絶縁被膜処理液の降伏値そのものは、特に限定されない。
 もっとも、調合完了から5分後の降伏値Yが高すぎると、絶縁被膜処理液の塗布そのものが困難となる場合がある。このため、調合完了から5分後の降伏値Yは、3.00×10-5N/cm以下が好ましく、2.50×10-5N/cm以下がより好ましく、2.00×10-5N/cm以下が更に好ましく、1.50×10-5N/cm以下が特に好ましい。
 一方、調合完了から5分後の降伏値Yは、例えば0.05×10-5N/cm以上であり、0.10×10-5N/cm以上であってもよい。
 《調合完了から5分後のk》
 調合完了から5分後のk(Consistency Index)は、例えば18.0mPa・sP以下であり、16.0mPa・s以下が好ましく、14.0mPa・s以下がより好ましく、12.0mPa・s以下が更に好ましく、10.0mPa・s以下が特に好ましい。
 一方、調合完了から5分後のkは、例えば1.0mPa・s以上であり、1.5mPa・s以上であってもよい。
 《調合完了から5分後のn》
 調合完了から5分後のn(Flow Index)は、例えば1.20以下であり、1.10以下が好ましく、1.00以下がより好ましい。
 一方、調合完了から5分後のnは、例えば0.60以上であり、0.70以上であってもよく、0.80以上が好ましい。
 《調合および調合完了の定義》
 調合は、概略的には、調合用容器に、原料(リン酸、コロイド状シリカなど)を投入し、混合をすることにより、実施される。
 具体的には、調合とは、原料(分散剤を含む)の投入、原料の混合、および、原料の混合によって得られた混合液の均一性および分散性の改善を目的とした作業全般(例えば、後述する分散処理)からなる作業を意味する。
 調合完了とは、このような調合が終了した時点を意味する。
 なお、調合完了後には、調合用容器から一時保管用容器への絶縁被膜処理液の移送;一時保管用容器内での絶縁被膜処理液の攪拌;調合用容器または一時保管用容器からコーターへの絶縁被膜処理液の移送;絶縁被膜処理液の循環移送;コーターを用いた絶縁被膜処理液の塗布;等の作業(調合完了後作業)が実施されるが、このような調合完了後作業は、調合には、含まれない。
 形成される絶縁被膜の付着量を調整する等の観点から、調合完了後において、絶縁被膜処理液を水で希釈する場合がある。この場合、あらかじめ補正式を作成し、作成した補正式を用いて、希釈する前の絶縁被膜処理液の降伏値(Y、Y)を求める。
 《調合温度》
 絶縁被膜処理液の比Y/Yを上記範囲内に制御する方法としては、例えば、調合温度を低温にする方法が挙げられる。
 調合温度とは、原料の温度、および、原料を混合した混合液(絶縁被膜処理液)の液温を意味する。
 一般的に、リン酸塩およびコロイド状シリカなどの原料は、pHが互いに異なる液体からなるため、原料を混合した際には、混合液のpHが各原料の等電点付近を通過することで凝集し、沈殿物の形成やゲル化が生じ、混合液の降伏値を増大させる場合がある。
 調合温度を低温に維持することにより、沈殿物の形成やゲル化の発生を抑制でき、比Y/Yを上述した範囲内に制御できる。
 調合温度は、具体的には、13℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、7℃以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、調合温度は、例えば0℃以上であり、3℃以上であってもよい。
 《分散処理》
 調合完了から5分後の降伏値Yを好適な範囲に制御する観点からは、調合用容器に投入された原料(混合液)に対して、分散処理を実施することが好ましい。
 分散処理は、超音波式ホモジナイザーなどのホモジナイザーを用いて実施されることが好ましい。ホモジナイザーの市販品としては、三井電気精機社製のソニミックス;エフ・ティ・アソシエイツ社製のウルトラソニック・プロセッサー微粒化装置;Hielscher社製の工業用高効率超音波発生装置(UIP1000など);等が挙げられる。
 分散処理の強度(処理強度)は、処理出力(単位:W)×処理時間(単位:h)÷処理液量(単位:L)で計算した値で示される。
 具体的には、分散処理を実施する場合、処理強度は、2Wh/L以上が好ましく、4Wh/L以上がより好ましい。一方、処理強度は、12Wh/L以下が好ましく、8Wh/L以下がより好ましい。
 《分散剤の添加》
 調合完了から5分後のk(Consistency Index)を好適な範囲に調整する観点からは、原料として、分散剤を添加することが好ましい。分散剤は、絶縁被膜処理液の粘度を低下させるとともに、コロイド状シリカ等の再凝集を抑制し、比Y/Yを上記範囲内に制御し得る。
 分散剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が挙げられ、なかでも、カチオン系界面活性剤が好ましい。その理由としては、絶縁被膜処理液中においては、上述した金属化合物の粒子表面が負に帯電しており、この表面にはカチオン系の界面活性剤が吸着しやすいと考えられるからである。
 カチオン系界面活性剤としては、発泡性が低いという理由から、第4級アンモニウム塩型のものが好ましい。第4級アンモニウム塩型のカチオン系界面活性剤の市販品としては、例えば、サンノプコ社製のSNディスパーサント4215;ADEKA社製のアデカミン4DAC-85;等が挙げられる。
 絶縁被膜処理液における分散剤の含有量は、リン酸塩の固形分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上であり、0.7質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上が更に好ましく、2.0質量部以上が特に好ましい。
 一方、分散剤が多すぎると、比Y/Yが低くなりすぎる場合がある。このため、絶縁被膜処理液における分散剤の含有量は、例えば5.0質量部以下であり、4.0質量部以下が好ましく、3.5質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下が更に好ましい。
 なお、分散剤が溶媒で希釈されている場合には、分散剤の含有量は、溶媒を含まない量を意味する。
 《金属化合物の粒径》
 調合完了から5分後のn(Flow Index)を好適な範囲に調整する観点からは、金属化合物の粒径を制御することが好ましい。
 金属化合物の粒径が適度に小さい場合、絶縁被膜処理液の非ニュートン流体性が強く表れ、n(Flow Index)は、1よりも小さくなる、または、大きくなる。
 また、金属化合物の粒径が大きすぎる場合、焼付の際に、絶縁被膜処理液と鋼板との反応性が不足し、絶縁被膜の耐吸湿性および付与張力が不十分となりやすい。
 このため、金属化合物の粒径は、例えば1.50μm以下であり、1.20μm以下が好ましく、1.00μm以下がより好ましく、0.80μm以下が更に好ましい。
 一方、金属化合物の粒径は、例えば0.01μm以上であり、0.03μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。
 粒径は、レーザー回折・散乱法により求められる、体積基準で50%の粒子径(メディアン径)である。
 なお、上述した分散処理、分散剤の添加および金属化合物の粒径制御は、それぞれ、降伏値、k(Consistency Index)およびn(Flow Index)だけに独立して影響を与えるものではなく、複数の因子に影響を与える。
 上記記載は、特に大きな影響を与える因子を挙げて説明したものである。
 《塗布方法》
 絶縁被膜処理液を鋼板の表面に塗布する際、鋼板を搬送しながら、ロールコーターを用いて、絶縁被膜処理液を鋼板の表面に塗布することが好ましい。
 この場合、鋼板の搬送速度は、例えば100mpm(m/min)以上であり、200mpm以上が好ましく、300mpm以上であってもよい。
 絶縁被膜処理液を塗布する前に、リン酸などを用いて、鋼板の表面を酸洗してもよい。
 〈絶縁被膜処理液の焼付〉
 絶縁被膜処理液を鋼板の表面に塗布した後、必要に応じて乾燥してから、焼付を実施して、絶縁被膜を形成する。焼付を兼ねた平坦化焼鈍を実施してもよい。
 焼付温度は、600~1000℃が好ましく、700~930℃がより好ましく、800~860℃が更に好ましい。焼付雰囲気は、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気が好ましい。焼付時間は、1~300秒間が好ましく、5~200秒間が好ましく、10~100秒間がより好ましい。
 形成される絶縁被膜の付着量は、両面で、例えば2.0~12.0g/mであり、4.0~10.0g/mが好ましい。
[方向性電磁鋼板]
 本実施形態の製造方法によって得られる方向性電磁鋼板は、外観不良が抑制されており、外観に優れる。
 また、得られる方向性電磁鋼板においては、磁気特性に優れるという理由から、絶縁被膜が鋼板に付与する張力(付与張力)は10.0MPa以上が好ましく、鉄損W17/50は0.88W/kg以下が好ましい。
 また、得られた方向性電磁鋼板においては、耐吸湿性に優れるという理由から、リン溶出量は、150μg/150cm以下が好ましく、100μg/150cm以下がより好ましい。
 付与張力、鉄損およびリン溶出量の測定方法は、後述する(下記[実施例]参照)。
 以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
[試験1]
 〈方向性電磁鋼板の製造〉
 板厚0.23mmの二次再結晶板(仕上げ焼鈍板)を鋼板として準備した。準備した鋼板の表面を、リン酸を用いて酸洗した。
 その後、調合用容器に原料(リン酸塩、コロイド状シリカおよび金属化合物)を投入し、混合した。こうして、下記表1に示す調合温度で、下記表1に示す成分組成を有する絶縁被膜処理液(溶媒:純水、比重:1.150)を調合した。
 リン酸塩としては、第一リン酸塩を用いた。また、コロイド状シリカとしては、スノーテックスN(日産化学社製)を用いた。
 金属化合物の粒径は、0.05~0.60μmの範囲内であった。
 分散処理および分散剤の添加は、実施しなかった。
 下記表1において、リン酸塩の含有量は、リン酸塩の固形分の含有量(単位:質量部)を意味する。
 また、コロイド状シリカの含有量は、リン酸塩の固形分100質量部に対する、SiO固形分換算の含有量(単位:質量部)を意味する。
 また、金属化合物の含有量は、リン酸塩の固形分100質量部に対する、金属元素換算の含有量(単位:質量部)を意味する。
 これらは、後述する[試験2]においても、同様である。
 調合した絶縁被膜処理液について、上述した方法に従って、調合完了から5分後の降伏値Yと、調合完了から180分後の降伏値Y180とを求めた。更に、降伏値Yに対する降伏値Y180の比Y180/Yを算出した。結果を下記表1に示す。
 このとき、B型粘度計として、Brookfield社製のデジタル粘度計LVDV3Tを用いた。B型粘度計の少量サンプルアダプターに、液温20℃の絶縁被膜処理液を投入し、SC4-18スピンドルを用いて、せん断速度γ:13.2~330.0s-1の範囲で、せん断応力τを18点測定した。測定の間は、水冷ジャケットを用いて、絶縁被膜処理液の液温を20℃に維持した。
 そして、調合した絶縁被膜処理液を、調合完了から180分以内(具体的には、調合完了から180分後)に、鋼板の表面に塗布した。より詳細には、絶縁被膜処理液の塗布は、鋼板を200mpmの搬送速度で搬送しながら、ロールコーターを用いて実施した。
 その後、焼付(焼付温度:850℃、焼付時間:25秒、焼付雰囲気:窒素雰囲気)を実施して、絶縁被膜(両面の付着量:8.0g/m)を形成した。
 こうして、方向性電磁鋼板を得た。
 〈評価〉
 得られた方向性電磁鋼板について、以下に記載する試験を実施して、各種の特性を評価した。結果を下記表1に示す。
 《外観》
 得られた方向性電磁鋼板の表面状態を、目視で観察し、リビング欠陥が無かった場合は「A」を、リビング欠陥が有った場合は「B」を下記表1に記載した。「A」であった場合、外観に優れると評価した。
 《付与張力》
 得られた方向性電磁鋼板について、絶縁被膜が鋼板に付与する圧延方向の張力(付与張力)を求めた。
 方向性電磁鋼板から試験片(圧延直角方向長さ30mm×圧延方向長さ280mm)を採取した。採取した試験片の一方の面を粘着テープでマスキングし、他方の面の絶縁被膜を酸およびアルカリを用いて除去した。
 次いで、試験片の片端30mmを固定して、残りの250mmの部分を「反り測定長さ」として「反り量」を測定し、下記式から「付与張力」を求めた。なお、「鋼板のヤング率」は132GPaとした。
 付与張力[MPa]=鋼板のヤング率[GPa]×鋼板の板厚[mm]×反り量[mm]÷(反り測定長さ[mm])×10
 付与張力は、10.0MPa以上が好ましい。
 《鉄損W17/50
 得られた方向性電磁鋼板から試験片(幅30mm×長さ280mm)を採取し、採取した試験片を用いて、JIS C 2550に準拠して、鉄損W17/50を求めた。
 鉄損W17/50が低いほど、磁気特性に優れると評価できる。鉄損W17/50は、0.88W/kg以下が好ましい。
 《リン溶出量》
 得られた方向性電磁鋼板から3枚の試験片(50mm×50mm)を採取した。
 採取した3枚の試験片を100℃の蒸留水中に浸漬させて、5分間の煮沸を実施することにより、各試験片の絶縁被膜の表面からリンを溶出させ、リン溶出量(単位:μg/150cm)を、ICP発光分析装置を用いて求めた。
 リン溶出量が少ないほど、耐吸湿性に優れると評価できる。リン溶出量は、150μg/150cm以下が好ましく、100μg/150cm以下がより好ましい。
 〈評価結果まとめ〉
 上記表1に示すように、比Y180/Yが8.00超であったNo.1-3、No.1-12およびNo.1-25は、外観が不十分であった。
 これに対して、比Y180/Yが8.00以下であったNo.1-1、No.1-2、No.1-4~No.1-11、No.1-13~No.1-24およびNo.1-26~No.1-33は、外観が良好であった。
 なお、No.1-4~No.1-6を対比すると、コロイド状シリカの含有量が110質量部であったNo.1-5は、これが40質量部または130質量部であったNo.1-4およびNo.1-6よりも、リン溶出量が低く、耐吸湿性が良好であった。
 また、No.1-7~No.1-9を対比すると、金属化合物の含有量が多くなるに従い、磁気特性および耐吸湿性が良好になる傾向が見られた。
 これは、No.1-10とNo.1-13との対比結果においても、同様の傾向が見られた。
[試験2]
 〈方向性電磁鋼板の製造〉
 板厚0.18mmの二次再結晶板(仕上げ焼鈍板)を鋼板として準備した。準備した鋼板の表面を、リン酸を用いた酸洗した。
 その後、調合用容器に原料(リン酸塩、コロイド状シリカ、金属化合物、および、任意成分として分散剤)を投入し、混合した。こうして、5℃の調合温度で、下記表2に示す成分組成を有する絶縁被膜処理液(溶媒:純水)を調合した。
 リン酸塩としては、第一リン酸塩を用いた。また、コロイド状シリカとしては、スノーテックスN(日産化学社製)を用いた。
 分散剤としては、第4級アンモニウム塩型のカチオン系界面活性剤を用いた。具体的には、サンノプコ社製のSNディスパーサント4215(下記表2では「SN4215」と表記)またはADEKA社製のアデカミン4DAC-85(下記表2では「4DAC」と表記)を用いた。
 分散剤を添加しなかった場合は、下記表2中の該当する欄に「-」を記載した。
 また、一部の例では、Hielscher社製の工業用高効率超音波発生装置(UIP1000)を用いて、原料の混合によって得られた混合液1,000Lを循環させながら、10,000Wの処理出力で、処理時間(単位:h)を変えて、分散処理を施した。分散強度(単位:Wh/L)を下記表2に示す。
 分散処理を実施しなかった場合は、下記表2中の該当する欄に「-」を記載した。
 調合した絶縁被膜処理液について、試験1と同様にして、調合完了から5分後の降伏値Yと、調合完了から180分後の降伏値Y180とを求めた。更に、降伏値Yに対する降伏値Y180の比Y180/Yを算出した。結果を下記表2に示す。
 また、調合完了から5分後のk(Consistency Index)およびn(Flow Index)も、下記表2に示す。なお、下記表2では、単に「k」および「n」と表記している。
 そして、調合した絶縁被膜処理液を、調合完了から180分以内(具体的には、調合完了から180分後)に、鋼板の表面に塗布した。より詳細には、絶縁被膜処理液の塗布は、鋼板を300mpmの搬送速度で搬送しながら、ロールコーターを用いて実施した。
 その後、焼付(焼付温度:820℃、焼付時間:30秒、焼付雰囲気:窒素雰囲気)を実施して、絶縁被膜(両面の付着量:6.5g/m)を形成した。
 こうして、方向性電磁鋼板を得た。
 〈評価〉
 得られた方向性電磁鋼板について、試験1と同様にして、各種の特性を評価した。結果を下記表2に示す。
 〈評価結果まとめ〉
 上記表2に示すように、比Y180/Yが8.00以下であったNo.2-1~No.2-25は、いずれも外観が良好であった。また、磁気特性および耐吸湿性も良好であった。

Claims (6)

  1.  鋼板と、前記鋼板の表面上に配置された絶縁被膜と、を備える方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
     前記鋼板の表面上に、前記絶縁被膜を形成するために用いる絶縁被膜処理液を、前記絶縁被膜処理液の調合完了からX分以内に塗布し、焼付して、
     前記絶縁被膜処理液の調合完了からX分後の降伏値Yと、前記絶縁被膜処理液の調合完了から5分後の降伏値Yとの比Y/Yが8.00以下を満たす、方向性電磁鋼板の製造方法。
  2.  前記絶縁被膜処理液は、Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、AlおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するリン酸塩と、コロイド状シリカと、金属元素を含有する金属化合物と、を含有し、
     前記コロイド状シリカの含有量が、前記リン酸塩の固形分100質量部に対して、SiO固形分換算で、50~120質量部であり、
     前記金属化合物の含有量が、前記リン酸塩の固形分100質量部に対して、金属元素換算で、5~60質量部である、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3.  前記降伏値Yが1.50×10-5N/cm以下である、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4.  前記絶縁被膜処理液の調合完了から5分後のConsistency Indexが10.0mPa・s以下であり、
     前記絶縁被膜処理液の調合完了から5分後のFlow Indexが0.80以上1.20以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5.  前記金属化合物が、Zn、Ba、Sr、Mn、Ca、V、Ti、Mg、Hf、ZrおよびNbからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  6.  方向性電磁鋼板が備える絶縁被膜を形成するために用いる絶縁被膜処理液を評価する方法であって、
     前記絶縁被膜処理液を、鋼板の表面上に塗布し、焼付することにより、前記絶縁被膜が形成され、
     前記絶縁被膜処理液の調合完了から180分後の降伏値Y180と、前記絶縁被膜処理液の調合完了から5分後の降伏値Yとの比Y180/Yが8.00以下を満たす場合、得られる前記方向性電磁鋼板の外観が良好であると判定する、絶縁被膜処理液の評価方法。
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