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WO2026009541A1 - 風速検出装置、風速検出方法、及び飛行体制御装置 - Google Patents

風速検出装置、風速検出方法、及び飛行体制御装置

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WO2026009541A1
WO2026009541A1 PCT/JP2025/015614 JP2025015614W WO2026009541A1 WO 2026009541 A1 WO2026009541 A1 WO 2026009541A1 JP 2025015614 W JP2025015614 W JP 2025015614W WO 2026009541 A1 WO2026009541 A1 WO 2026009541A1
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measurement
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共則 中村
賢一郎 池村
大岳 福岡
龍男 道垣内
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Hamamatsu Photonics KK
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Abstract

風速検出装置1は、測定光Lmによる検出距離に基づいて、測定光学系7から出力する測定光Lmの状態を制御する制御部15を備え、制御部15は、検出距離が第1閾値T1以下の近距離範囲R1に属する場合には、大気M中に出力される測定光Lmが集光されるように測定光学系7を制御し、検出距離が第1閾値T1を超える遠距離範囲R2に属する場合には、大気M中に出力される測定光Lmが平行光化されるように測定光学系7を制御する。

Description

風速検出装置、風速検出方法、及び飛行体制御装置
 本開示は、風速検出装置、風速検出方法、及び飛行体制御装置に関する。
 光を用いたセンシング技術の一つとして、LIDAR(Light Detection and Ranging)が知られている。LIDARは、近年では自動運転の分野での応用が進展しているが、元々は気象などの分野で広く用いられている技術である。気象の分野で用いられるLIDARとしては、風速を検出する、いわゆるWindLIDARが知られている。WindLIDARは、例えば風力発電機の設置場所を選定するための風況調査などに利用されているほか、近年では、ドローンなどの無人飛行体、AAM(Advanced Air Mobility)或いはUAM(Urban Air Mobility)などの有人飛行体の安全な運行管理への応用が期待されている。
 LIDARでの風速検出には、コヒーレント検波が用いられている。この手法では、光源から出力したレーザ光を測定光及び参照光に分岐し、測定光に変調及び増幅を加えた後、大気中に出射する。WindLIDARでの信号源は、測定光が大気中の無数のエアロゾルで散乱して生じる散乱光である。風が吹くと、風に乗ってエアロゾルが移動し、散乱光の周波数が変化(ドップラーシフト)する。したがって、大気からの散乱光を信号光として参照光と干渉させ、干渉光のビートスペクトルにおけるピーク周波数のシフト量を求めることで、大気中の風速を検出できる(例えば特許文献1参照)。
米国特許出願公開第2021/0109218号明細書
S. Kameyama et al., "Compact all-fiber pulsed coherent Doppler lidar system for wind sensing" Applied Optics, Vol. 46, NO. 11, 10 April 2007, p.1953-1962
 LIDARの方式には、測定光にパルス光を用いる方式がある(例えば非特許文献1参照)。現存のパルス光をコリメートして用いる方式では、距離分解能が検出距離には依存しない一方でパルス幅に依存すること、及び数十m以下の近距離での測定の実現が技術的な課題となっている。また、LIDARの方式には、測定光にCW(Continuous Wave)光を用いる方式もある。現存のCW光を集光して用いる方式では、測定光の焦点位置を変えながら計測を行うため、距離分解能が測定光の焦点深度に依存し、検出距離に対する依存性を有することが技術的な課題となっている。
 本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、検出距離に応じた最適な風速検出を実施できる風速検出装置、風速検出方法、及び飛行体制御装置を提供することを目的とする。
本開示の要旨は、以下に示すとおりである。
 [1]レーザ光を出力する出力部と、前記レーザ光を測定光及び参照光に分岐する分岐部と、前記測定光をパルス光に変換する変換部と、前記測定光を大気中に出力し、前記大気中での前記測定光の散乱光を信号光として受光する測定光学系と、前記参照光と前記信号光との干渉結果に基づく検出信号を出力する検出部と、前記測定光による検出距離に基づいて、前記測定光学系から出力する前記測定光の状態を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記検出距離が第1閾値以下の近距離範囲に属する場合には、前記大気中に出力される前記測定光が集光されるように前記測定光学系を制御し、前記検出距離が前記第1閾値を超える遠距離範囲に属する場合には、前記大気中に出力される前記測定光が平行光化されるように前記測定光学系を制御する、風速検出装置。
 この風速検出装置では、検出距離が近距離範囲に属する場合には、パルス光である測定光を集光して大気中に出力する。パルス光を集光する場合、CW光を集光する場合に比べて、同一のエネルギー及び同一の集光状態で比較した際の信号光のCNR(Carrier to Noise ratio)を向上できる。したがって、近距離範囲において高速且つ精度良く風速検出を実施できる。また、この風速検出装置では、検出距離が遠距離範囲に属する場合には、パルス光である測定光を平行光化して大気中に出力する。パルス光を平行光化する場合、CW光を集光する場合とは異なり、距離分解能がパルス幅に依存する一方で、検出距離に依存せずに一定の距離分解能を維持できる。このように、この風速検出装置では、検出距離に基づいて測定光の状態を制御することで、検出距離に応じた最適な風速検出を実施できる。
 [2]前記制御部は、前記検出距離が前記近距離範囲に設定された第2閾値以下の超近距離範囲に属する場合には、前記レーザ光として周波数が変調された光が出力されるように前記出力部を制御する、[1]記載の風速検出装置。検出距離が超近距離範囲に属する場合、測定光学系などで生じる迷光成分が信号成分に対して大きくなり、かつ時間的に重なるため、参照光と信号光との干渉結果に基づく風速の解析が難しくなることが考えられる。これに対し、レーザ光として周波数が変調された光を用いることで、信号成分と迷光成分とを周波数軸上で分離することが可能となる。これにより、検出距離が超近距離範囲に属する場合であっても、風速検出を精度良く実施できる。
 [3]前記制御部は、前記検出距離が前記近距離範囲に設定された第2閾値を超える中近距離範囲に属する場合には、前記検出距離に応じて前記測定光のパルス幅が変化するように前記変換部を制御する、[1]又は[2]記載の風速検出装置。一般に、測定光のパルス幅が大きいほど信号光のCNRが高くなる傾向がある。したがって、検出距離に応じて測定光のパルス幅を変化させることで、中近距離範囲において高速且つ精度良く風速検出を実施できる。
 [4]前記出力部は、前記レーザ光としてCW光を出力し、前記検出部は、CW光である前記参照光と前記信号光との干渉結果に基づく検出信号を出力する、[1]~[3]のいずれか記載の風速検出装置。この風速検出装置では、近距離範囲から遠距離範囲にわたって広範囲に検出距離が設定される。参照光をCW光とすることで、信号光がパルス光であっても、或いは複数のパルス光の時間的な重ね合わせの状態であっても、検出距離の設定に依らずに信号光と参照光との干渉信号を得ることができる。
 [5]前記測定光学系は、前記大気中に向かう前記測定光の出力方向を偏向する偏向部を有する、[1]~[4]のいずれか記載の風速検出装置。この場合、測定光の出力方向が可変となり、風向及び風速の情報を含む三次元風速ベクトルの測定が可能となる。
 [6]前記制御部は、前記検出距離が前記遠距離範囲に属する場合には、前記検出距離が前記近距離範囲に属する場合に比べて、前記測定光の出力方向の走査速度が小さくなるように前記偏向部を制御する、[5]記載の風速検出装置。パルス光である測定光を平行光化する遠距離範囲では、パルス光である測定光を集光する近距離範囲に比べて、信号光のCNRが低下することが考えられる。偏向部による測定光の出力方向の走査速度を小さくすることで、信号の平均化回数を増やすことが可能となり、遠距離範囲における風速検出の精度を十分に担保できる。
 [7]少なくとも前記出力部、前記分岐部、及び前記検出部は、光集積回路によって構成されている、[1]~[6]のいずれか記載の風速検出装置。少なくとも出力部、分岐部、及び検出部を光集積回路で構成することで、装置の小型化を実現できる。
 [8]前記検出信号に基づいて前記大気中での風速を解析する解析部を更に備える、[1]~[7]のいずれか記載の風速検出装置。この場合、レーザ光の出力から風速の解析までの一連の処理を一つの装置内で実施できる。
 [9]レーザ光を出力する出力ステップと、前記レーザ光を測定光及び参照光に分岐する分岐ステップと、前記測定光をパルス光に変換する変換ステップと、前記測定光を大気中に出力し、前記大気中での前記測定光の散乱光を信号光として受光する測定ステップと、前記参照光と前記信号光との干渉結果に基づく検出信号を出力する検出ステップと、を備え、前記測定ステップでは、前記測定光による検出距離が第1閾値以下の近距離範囲に属する場合には、前記大気中に出力される前記測定光を集光し、前記測定光による前記検出距離が前記第1閾値を超える遠距離範囲に属する場合には、前記大気中に出力される前記測定光を平行光化する、風速検出方法。
 この風速検出方法では、検出距離が近距離範囲に属する場合には、パルス光である測定光を集光して大気中に出力する。パルス光を集光する場合、CW光を集光する場合に比べて、同一のエネルギー及び同一の集光状態で比較した際の信号光のCNR(Carrier to Noise ratio)を向上できる。したがって、近距離範囲において高速且つ精度良く風速検出を実施できる。また、この風速検出方法では、検出距離が遠距離範囲に属する場合には、パルス光である測定光を平行光化して大気中に出力する。パルス光を平行光化する場合、CW光を集光する場合とは異なり、距離分解能がパルス幅に依存する一方で、検出距離に依存せずに一定の距離分解能を維持できる。このように、この風速検出方法では、検出距離に基づいて測定光の状態を制御することで、検出距離に応じた最適な風速検出を実施できる。
 [10]前記出力ステップでは、前記検出距離が前記近距離範囲に設定された第2閾値以下の超近距離範囲に属する場合には、前記レーザ光として周波数が変調された光を出力する、[9]記載の風速検出方法。検出距離が超近距離範囲に属する場合、測定光学系などで生じる迷光成分が信号成分に対して大きくなり、かつ時間的に重なるため、参照光と信号光との干渉結果に基づく風速の解析が難しくなることが考えられる。これに対し、レーザ光として周波数が変調された光を用いることで、信号成分と迷光成分とを周波数軸上で分離することが可能となる。これにより、検出距離が超近距離範囲に属する場合であっても、風速検出を精度良く実施できる。
 [11]前記変換ステップでは、前記検出距離が前記近距離範囲に設定された第2閾値を超える中近距離範囲に属する場合には、前記検出距離に応じて前記測定光のパルス幅を変化させる、[9]又は[10]記載の風速検出方法。一般に、測定光のパルス幅が大きいほど信号光のCNRが高くなる傾向がある。したがって、検出距離に応じて測定光のパルス幅を変化させることで、中近距離範囲において高速且つ精度良く風速検出を実施できる。
 [12]前記出力ステップでは、前記レーザ光としてCW光を出力し、前記検出ステップでは、CW光である前記参照光と前記信号光との干渉結果に基づく検出信号を出力する、[9]~[11]のいずれか記載の風速検出方法。この風速検出方法では、近距離範囲から遠距離範囲にわたって広範囲に検出距離が設定される。参照光をCW光とすることで、信号光がパルス光であっても、或いは複数のパルス光の時間的な重ね合わせの状態であっても、検出距離の設定に依らずに信号光と参照光との干渉信号を得ることができる。
 [13]前記測定ステップは、前記大気中に向かう前記測定光の出力方向を偏向する偏向ステップを有する、[9]~[12]のいずれか記載の風速検出方法。この場合、測定光の出力方向が可変となり、風向及び風速の情報を含む三次元風速ベクトルの測定が可能となる。
 [14]前記偏向ステップでは、前記検出距離が前記遠距離範囲に属する場合には、前記検出距離が前記近距離範囲に属する場合に比べて、前記測定光の出力方向の走査速度を小さくする、[13]記載の風速検出方法。パルス光である測定光を平行光化する遠距離範囲では、パルス光である測定光を集光する近距離範囲に比べて、信号光のCNRが低下することが考えられる。偏向の際の測定光の出力方向の走査速度を小さくすることで、信号の平均化回数を増やすことが可能となり、遠距離範囲における風速検出の精度を十分に担保できる。
 [15]前記検出信号に基づいて前記大気中での風速を解析する解析ステップを更に備える、[9]~[14]のいずれか記載の風速検出方法。この場合、レーザ光の出力から風速の解析までの一連の処理を実施できる。
 [16][1]~[8]のいずれか記載の風速検出装置と、前記風速検出装置から出力する前記検出信号に基づいて、飛行体の離発着に関する制御信号を生成する制御装置と、を備える、飛行体制御装置。この飛行体制御装置では、風速検出装置において検出距離に応じた最適な風速検出を実施することで、ドローン、AAM、UAMなどの飛行体の安全な運行管理を実現できる。
 本開示によれば、検出距離に応じた最適な風速検出を実施できる。
(a)及び(b)は、本開示の一実施形態に係る飛行体制御装置の模式図である。 LIDARの方式と距離分解能の関係を示す図である。 パルス集光方式及びCW集光方式のCNR比較結果を示す図である。 従来のパルス方式における近距離範囲での迷光成分と信号成分との関係を示す図である。 本開示の一実施形態に係る風速検出装置の模式図である。 (a)は、周波数シフタを用いない場合の信号光と参照光とのビートスペクトルの模式図であり、(b)は、周波数シフタを用いた場合の信号光と参照光とのビートスペクトルの模式図である。 (a)は、測定光の強度の時間波形を示す模式図であり、(b)は、測定光の周波数変調を示す模式図である。 検出距離毎の測定光の状態を示す図である。 (a)及び(b)は、本実施形態における近距離範囲での迷光成分と信号成分との関係を示す図である。 (a)~(c)は、チャープレートを変数とした場合の信号成分のピーク強度と迷光成分の裾から僅かにずれた周波数におけるスペクトル強度との関係を示す図である。 窓関数の一例を示す図である。 (a)~(c)は、窓関数の位置に対する信号成分及び迷光成分の分離の様子を示す図である。 本実施形態における中近距離範囲での迷光成分と信号成分との関係を示す図である。 パルス幅とCNRとの関係を示す図である。 本開示の一実施形態に係る風速検出方法の一例を示すフローチャートである。 (a)~(c)は、検出距離10mでの風速検出の様子を示す図である。 (a)及び(b)は、検出距離10mでの風速検出結果を示す図である。 (a)~(c)は、検出距離30mでの風速検出の様子を示す図である。 (a)及び(b)は、検出距離30mでの風速検出結果を示す図である。 (a)及び(b)は、検出距離60m~900mでの風速検出の様子を示す図である。 検出距離60m~900mでの風速検出の様子を示す図である。 検出距離60m~900mでの風速検出結果を示す図である。 検出距離60m~900mでの風速検出結果を示す図である。 変形例に係る風速検出装置の模式図である。
 以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る風速検出装置、風速検出方法、及び飛行体制御装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
 図1(a)及び図1(b)は、本開示の一実施形態に係る飛行体制御装置を模式的に示す図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、飛行体制御装置101は、風速検出装置1と、風速検出装置1から出力する検出信号D(図5参照)に基づいて、飛行体Hの動作を制御する制御装置102とを備えて構成されている。飛行体Hとしては、例えばドローンなどの無人飛行体、AAM(Advanced Air Mobility)或いはUAM(Urban Air Mobility)などの有人飛行体が挙げられる。
 飛行体制御装置101は、例えば地表面付近に設置される。飛行体制御装置101の設置高さとしては、例えば接地層と称される大気層が想定される。接地層は、地表面からの高さが100m以下で、風速や気温の鉛直勾配が特に大きい大気層を指す。飛行体制御装置101は、例えば図1(a)に示すように、地上面に設置されていてもよい。飛行体制御装置101は、図1(b)に示すように、ビルなどの建物の屋上や屋根に設置されていてもよい。飛行体制御装置101は、飛行体Hを運行する管制塔内の装置として組み込まれていてもよい。
 風速検出装置1は、大気中の風速を検出する装置である。飛行体制御装置101においては、風速検出装置1は、特に地上付近の多くの構造物に起因して生じる複雑な乱流を検出し、検出信号Dを制御装置102に出力する。制御装置102は、飛行体Hの離発着に関する制御信号Qを生成する装置である。制御装置102は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部、ディスプレイ等の表示部を備えたコンピュータシステムである。制御装置102は、風速検出装置1からの検出信号Dに基づいて、例えば飛行体Hの離発着時の速度、走行経路、或いは離着陸の許可・禁止に関する制御信号Qを飛行体Hに出力する。
 風速検出装置1は、検出信号Dを気象情報提供者が所有するサーバに送信してもよい。この場合、例えば気象情報提供者は、サーバに送信された検出信号Dや気象データを元に気象予報を行い、生成した気象予報情報を端末装置等から管制塔内の飛行体制御装置101に送信してもよい。管制塔内の飛行体制御装置101は、気象予報情報に基づいて制御信号Qを生成してもよい。風速検出装置1は、検出信号Dを管制塔内の飛行体制御装置101に直接送信してもよい。
 次に、上述した風速検出装置1について説明する。風速検出装置1は、LIDAR(Light Detection and Ranging)によって大気M中の風速を検出する装置である。風速検出装置1では、レーザ光をパルス化した測定光Lmを用い、信号光Lsと参照光Lrとによるコヒーレント検波を実施することで、大気M中の風速を検出する。
 従来のLIDARの方式としては、図2に示すように、平行光化したパルス光を測定光として大気中に出力するパルスコリメート方式と、CW光を測定光として大気中で集光するCW集光方式とが挙げられる。パルスコリメート方式では、距離分解能がパルス幅に依存し、検出距離に対する依存性を持たないことが特徴的である。CW集光方式では、測定光の焦点位置を変えながら計測を行うため、距離分解能が測定光の焦点深度に依存し、検出距離に対する依存性を有することが特徴的である。
 パルス光を測定光として大気中で集光するパルス集光方式は、CW集光方式と同様に、距離分解能が検出距離に対する依存性を有するが、同一のエネルギー及び同一の集光状態で比較した場合に、信号光のCNR(Carrier to Noise ratio)が高くなる傾向がある。図3は、パルス集光方式及びCW集光方式のCNR比較結果を示す図である。図3では、パルス光及びCW光の光エネルギーをいずれも8μJとし、パルス光の場合のパルス幅を100nsとした場合の信号光のCNRを検出距離60m~180mの範囲でプロットしたものである。
 図3に示す結果から、検出距離に関わらず、パルス集光方式の方がCW集光方式に比べてCNRが大きくなっていることが分かる。また、CW集光方式のCNRに対するパルス集光方式のCNRの比は、検出距離が小さい場合(特に100m以下である場合)ほど高くなっていることが分かる。CNRが高いほど、高速且つ精度良く風速検出できる。このことから、パルス集光方式は、近距離での複雑な乱流の検出に適していることが分かる。
 一方、パルス方式は、例えば検出距離が40m以下の近距離範囲では、風速検出が困難であるとされてきた。これは、検出距離が測定光のパルス幅に相当する距離以下である場合、図4に示すように、測定光学系などで生じる迷光成分(例えば光ファイバの端面や光学素子の表面で生じる反射成分など)Irが信号成分Isに対して大きくなり、かつ時間的に重なるため、信号成分Isが迷光成分Irに埋もれてしまうことが一因であると考えられる。
 本実施形態に係る風速検出装置1は、後述する周波数変調及びパルス幅変調により、近距離範囲でのパルス集光方式による風速検出を可能とする。そして、風速検出装置1は、近距離範囲と遠距離範囲とでパルス集光方式とパルスコリメート方式とを切り替えることで、検出距離に応じた最適な風速検出を実現する。以下、風速検出装置1の各構成要素について詳述する。
 図5は、本開示の一実施形態に係る風速検出装置の模式図である。出力部2と、分岐部3と、周波数シフタ4と、第1増幅部(変換部)5と、第2増幅部6と、測定光学系7と、合波部8と、検出部9と、デジタイザ10と、解析部11と、制御部15とを含んで構成されている。本実施形態では、出力部2と分岐部3、分岐部3と周波数シフタ4、周波数シフタ4と第1増幅部5、第1増幅部5と第2増幅部6、第2増幅部6と測定光学系7、測定光学系7と合波部8、分岐部3と合波部8、合波部8と検出部9は、いずれも光ファイバFによって光学的に接続されている。
 風速検出装置1では、少なくとも出力部2、分岐部3、及び検出部9は、光集積回路(PIC:Photonic Integrated Circuit)12によって構成されている。本実施形態では、出力部2、分岐部3、周波数シフタ4、第1増幅部5、第2増幅部6、合波部8、検出部9、及びこれらを接続する光ファイバFが光集積回路12によって構成されている。
 出力部2は、レーザ光Lを出力する部分である。出力部2を構成するレーザ装置としては、例えば分布帰還型(DFB)レーザ装置、分散型ブラッグ反射(DBR)レーザ装置、外部共振型レーザ装置などが挙げられる。ここでは、出力部2から出力されるレーザ光Lは、CW光となっている。レーザ光Lは、拡散光のような光ではなく、一定の指向性を有するビーム状の光となっている。
 出力部2には、不図示の電流制御部及び温度制御部が接続されている。電流制御部は、出力部2を構成するレーザ装置に駆動電流を供給する制御器である。電流制御部は、駆動電流を変調することにより、出力部2から出力されるレーザ光Lの周波数を変調する。温度制御部は、出力部2を構成するレーザ装置の温度を一定に維持する制御器である。温度制御部は、例えばサーミスタ及びペルチェ素子を含んで構成されており、レーザ装置に取り付けられたサーミスタの温度測定値に基づいて、レーザ装置の温度が一定に維持されるようにペルチェ素子を駆動する。
 出力部2には、信号生成部13が接続されている。信号生成部13は、レーザ光Lに対する変調信号Gを生成する部分である。信号生成部13は、例えば波形生成器、ファンクションジェネレータなどによって構成されている。信号生成部13は、出力部2に接続される電流制御部から出力される電流波形を任意の形状に変調するための電圧信号を生成する。信号生成部13で生成される変調信号Gは、出力部2の動作と解析部11の動作との同期のため、デジタイザ10にも出力される。
 分岐部3は、出力部2からのレーザ光Lを測定光Lm及び参照光Lrに分岐する部分である。分岐部3は、例えば光ファイバカプラによって構成されている。測定光Lmは、分岐部3の一の出力ポートから周波数シフタ4に出力され、参照光Lrは、分岐部3の別の出力ポートから合波部8に出力される。参照光Lrは、CW光のまま合波部8に入力される。
 本実施形態では、分岐部3と合波部8との間にディレイファイバ16が接続されている。ディレイファイバ16は、例えば偏波保持ファイバ、ファイバコイルなどによって構成されている。ディレイファイバ16により、合波部8に入力される信号光Lsと参照光Lrとの間の光路長差を調整できる。信号光Lsと参照光Lrとの間の光路長差を小さくすることで、PIIN(Phase Induced Intensity Noise)の低減が図られる。
 周波数シフタ4は、測定光Lmの周波数をシフトさせる部分である。周波数シフタ4は、例えば音響光学素子、電気光学素子、IQ変調器、位相変調器、強度変調器などによって構成されている。周波数シフタ4は、当該周波数シフタ4を駆動するための電圧信号を生成する信号生成部(不図示)を有していてもよい。当該信号生成部は、例えば波形生成器、ファンクションジェネレータなどによって構成され得る。
 周波数シフタ4によって測定光Lmの周波数をシフトさせることで、測定光Lmの光軸方向の風向の判別が可能となる。測定光Lmの周波数をシフトさせない場合、後述の干渉光Ldのビートスペクトルは、例えば図6(a)に示すように、風向に依らず、風速に応じて基準のビートスペクトル(風速が無い場合のビートスペクトル)に対して高周波数側にシフトする。一方、測定光Lmの周波数をシフトさせる場合、後述の干渉光Ldのビートスペクトルは、例えば図6(b)に示すように、測定光Lmの光軸に対して正の方向に吹く風(追い風)であれば、基準のビートスペクトルに対して低周波数側にシフトし、測定光Lmの光軸に対して負の方向に吹く風(向かい風)であれば、基準のビートスペクトルに対して高周波数側にシフトする。したがって、周波数シフタ4によって測定光Lmの周波数をシフトさせることで、測定光Lmの光軸方向の風速及び風向の双方を好適に検出することができる。
 第1増幅部5は、分岐部3からの測定光Lmをパルス光に変換する部分である。第1増幅部5は、例えば半導体光増幅器、光ファイバ増幅器などによって構成されている。第1増幅部5は、測定光Lmのうちの特定の成分を増幅することで、CW光である測定光Lmをパルス光に変換する。第1増幅部5には、不図示の電流制御部及び温度制御部が接続されている。電流制御部は、第1増幅部5を構成する増幅装置に駆動電流を供給する制御器である。電流制御部は、駆動電流を変調することにより、第1増幅部5での測定光Lmの増幅率を制御する。温度制御部は、第1増幅部5を構成する増幅装置の温度を一定に維持する制御器である。温度制御部は、例えばサーミスタ及びペルチェ素子を含んで構成されており、増幅装置に取り付けられたサーミスタの温度測定値に基づいて、増幅装置の温度が一定に維持されるようにペルチェ素子を駆動する。なお、上述した周波数シフタ4によって、測定光Lmのうちの特定の成分を周波数シフトすることで、CW光である測定光Lmをパルス光に変換することも可能である。
 図7(a)は、測定光Lmの強度の時間波形を示す模式図である。図7(a)に示すように、測定光Lmは、出力部2から出力されるCWのレーザ光Lを周波数シフタ4、第1増幅部5、或いはその双方でパルス光に変換することによって生成されている。測定光Lmは、パルス幅Δtをもって時間軸上で間欠的に強度が立ち上がる光となる。出力部2において、周波数が変調された光をレーザ光Lとして出力する場合、図7(b)に示すように、周波数が線形且つ周期的に変調する光を測定光Lmとして用いることができる。図7(b)の例では、測定光Lmは、ランプ波形となるように周波数が変調され、周波数が徐々に線形に増大するUPランプと、周波数が徐々に線形に減少するDOWNランプとがパルス毎に交互に対応するようになっている。
 第2増幅部6は、パルス光となった測定光Lmの強度を増幅する部分である。第2増幅部6は、例えば半導体光増幅器、光ファイバ増幅器などによって構成されている。第2増幅部6には、不図示の電流制御部及び温度制御部が接続されている。電流制御部は、第2増幅部6を構成する増幅装置に駆動電流を供給する制御器である。電流制御部は、駆動電流を変調することにより、第2増幅部6での測定光Lmの増幅率を制御する。温度制御部は、第2増幅部6を構成する増幅装置の温度を一定に維持する制御器である。温度制御部は、例えばサーミスタ及びペルチェ素子を含んで構成されており、増幅装置に取り付けられたサーミスタの温度測定値に基づいて、増幅装置の温度が一定に維持されるようにペルチェ素子を駆動する。
 測定光学系7は、測定光Lmを大気M中に出力し、大気M中での測定光Lmの散乱光Lfを信号光Lsとして受光する部分である。測定光学系7は、図5に示すように、空間光学系型のサーキュレータ21と、可動ステージ22と、レンズ(光学素子)23と、ビーム偏向板24が搭載された回転ステージ(偏向部)25とを含んで構成されている。サーキュレータ21は、偏光ビームスプリッタ26と、λ/4波長板27とによって構成されている。偏光ビームスプリッタ26の前段には、レンズ28が配置され、λ/4波長板27の後段には、可動ステージ22に搭載されたレンズ29が配置されている。また、検出部9に接続される光ファイバFの前段には、当該光ファイバFへの信号光Lsの光学的な結合に用いられるレンズ30が配置されている。
 サーキュレータ21の性能の安定化のため、温度制御部(不図示)によってサーキュレータ21の全体の温度が一定となるように制御を行ってもよい。温度制御部は、例えばサーミスタ及びペルチェ素子を含んで構成されており、サーキュレータ21に取り付けられたサーミスタの温度測定値に基づいて、サーキュレータ21の全体の温度が一定に維持されるようにペルチェ素子を駆動する。
 可動ステージ22は、少なくとも測定光Lmの光軸方向に可動軸を有するステージである。可動ステージ22の駆動には、例えばステッピングモータ、ピエゾ素子などの駆動素子が用いられる。可動ステージ22には、不図示のステージコントローラが接続されている。ステージコントローラは、可動ステージ22の位置を制御する制御信号を駆動素子に出力する。
 レンズ23は、測定光Lmを平行光化して大気M中に出力する光学素子である。レンズ23としては、例えば凸レンズ、アクロマティックレンズ、非球面レンズ、複数のレンズを組み合わせてなる組み合わせレンズなどが用いられる。レンズ23,29は、望遠鏡を構成するレンズ対となっている。可動ステージ22が測定光Lmの光軸方向に変位することで、レンズ23とレンズ29との間の距離が調整される。これにより、レンズ23を介して大気M中に出射する測定光Lmの焦点位置を測定光Lmの光軸方向に変位させることができる。
 ビーム偏向板24は、大気M中に向かう測定光Lmの出力方向を任意の方向に偏向する部分である。ビーム偏向板24としては、例えばウェッジ基板などを用いることができる。回転ステージ25は、ビーム偏向板24を測定光Lmの光軸回りに回転させるステージである。回転ステージ25の駆動には、例えばステッピングモータ、ピエゾ素子などの駆動素子が用いられる。可動ステージ22には、不図示のステージコントローラが接続されている。ステージコントローラは、回転ステージの位置を制御する制御信号Jを駆動素子に出力する。当該制御信号Jは、出力部2及び解析部11の動作の同期のため、信号生成部13に出力される。
 測定光学系7においては、第2増幅部6の出力側の光ファイバFから出射した測定光Lmは、レンズ23を介し、一定の指向性を有するビーム状の光として大気M中に出射する。測定光Lmの出力方向は、回転ステージ25によるビーム偏向板24の回転角に基づいて変化する。風速検出装置1での信号源は、測定光Lmが大気M中の無数のエアロゾルPで散乱して生じる散乱光Lfである。散乱光Lfの一部は、レンズ23を介し、信号光Lsとして測定光学系7に戻る。信号光Lsは、サーキュレータ21によって測定光Lmと分離され、合波部8に出力される。
 合波部8は、分岐部3からの参照光Lrと、大気Mから戻った信号光Lsとを合波する部分である。合波部8は、例えば光ファイバカプラによって構成されている。合波部8により、参照光Lrと信号光Lsとの干渉光Ldが生成される。干渉光Ldは、合波部8の出力ポートから検出部9に出力される。
 検出部9は、参照光Lrと信号光Lsとの干渉結果に基づく検出信号Dを出力する部分である。本実施形態では、測定光Lmがパルス光であるため、特定の距離における測定光Lmの散乱で生じる散乱光Lf(信号光Ls)もパルス光である。一方、参照光Lrは、出力部2からのレーザ光Lの一部が分岐部3で分岐したものであり、CW光である。したがって、検出部9は、集光方式においては、CW光である参照光Lrとパルス光である信号光Lsとの干渉結果に基づく検出信号Dを出力する。また、検出部9は、コリメート方式においては、CW光である参照光Lrと複数のパルス光の時間的な重ね合わせである信号光Lsとの干渉結果に基づく検出信号Dを出力する。
 検出部9は、例えばフォトディテクタ、アバランシェフォトダイオード、バランス検出器などによって構成されている。検出部9は、合波部8から入力された干渉光Ldの強度に基づくアナログ電気信号を検出信号Dとしてデジタイザ10に出力する。デジタイザ10は、アナログ電気信号をデジタル信号に変換する装置である。デジタイザ10は、例えばA/D変換器などによって構成されている。デジタイザ10は、アナログ電気信号である検出信号Dをデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号を解析部11に出力する。
 解析部11は、検出信号Dに基づいて大気M中での風速を解析する部分である。解析部11は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、及びCPU、GPU等のプロセッサ、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えたコンピュータシステムである。かかるコンピュータシステムとしては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)、マイクロコンピュータ、FPGA(field-programmable gate array)などが挙げられる。当該コンピュータシステムは、メモリに格納されるプログラムをCPU或いはGPUで実行することにより、解析部11として機能する。
 上述したように、風速検出装置1での信号源は、測定光Lmが大気M中の無数のエアロゾルPで散乱して生じる散乱光Lfである。大気Mで風が吹くと、風に乗ってエアロゾルPが移動し、散乱光Lfの周波数が変化(ドップラーシフト)する。解析部11は、デジタイザ10から出力される検出信号Dを受け取ると、検出信号Dに基づいて干渉光Ldのビートスペクトルのピーク周波数を参照する。解析部11は、干渉光Ldのビートスペクトルのピーク周波数のシフト量を求めることで、大気M中の風速を検出する。
 制御部15は、測定光Lmによる検出距離に基づいて、測定光学系7から出力する測定光Lmの状態を制御する部分である。制御部15は、解析部11と同様に、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、及びCPU、GPU等のプロセッサ、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えたコンピュータシステムである。かかるコンピュータシステムとしては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)、マイクロコンピュータ、FPGA(field-programmable gate array)などが挙げられる。当該コンピュータシステムは、メモリに格納されるプログラムをCPU或いはGPUで実行することにより、解析部11として機能する。解析部11と制御部15とは、同一のコンピュータシステムによって構成されていてもよい。
 制御部15は、測定光Lmによる検出距離の設定の入力を受け付ける。制御部15は、図8に示すように、入力された検出距離の設定に基づいて、測定光学系7から出力する測定光Lmの状態を制御する。本実施形態では、検出距離に対して第1閾値T1が設定されている。制御部15は、検出距離が第1閾値T1以下の近距離範囲R1に属する場合には、大気M中に出力される測定光Lmが集光されるように測定光学系7を制御する。制御部15は、検出距離が第1閾値T1を超える遠距離範囲R2に属する場合には、大気M中に出力される測定光Lmが平行光化されるように測定光学系7を制御する。
 本実施形態では、近距離範囲R1に対して第2閾値T2が設定されている。制御部15は、検出距離が近距離範囲R1に設定された第2閾値T2以下の超近距離範囲R1aに属する場合には、レーザ光Lとして周波数が変調された光が出力されるように出力部2を制御する。制御部15は、検出距離が近距離範囲R1に設定された第2閾値T2を超える中近距離範囲R1bに属する場合には、検出距離に応じて測定光Lmのパルス幅Δtが変化するように第1増幅部(変換部)5を制御する。また、本実施形態では、制御部15は、検出距離が遠距離範囲R2に属する場合には、検出距離が近距離範囲R1に属する場合に比べて、測定光Lmの出力方向の走査速度が小さくなるようにビーム偏向板24が搭載された回転ステージ(偏向部)25を制御する。
 第1閾値T1は、例えば検出距離に依存する集光方式の距離分解能と、パルス幅に依存するコリメート方式の距離分解能とが等しくなる距離に基づいて決定される。一例では、第1閾値T1は、100m~300mの範囲で設定される。第2閾値T2は、例えば測定光Lmのパルス幅Δtに相当する距離に基づいて決定される。一例では、第2閾値T2は、20m~60mの範囲で設定される。
 図8は、検出距離毎の測定光の状態を示す図である。図8に示すように、本実施形態では、超近距離範囲R1a、中近距離範囲R1b、遠距離範囲R2において、それぞれ状態の異なる測定光Lmが大気M中に出力される。超近距離範囲R1aでは、パルス光である測定光Lmが集光された状態で大気M中に出力される。したがって、超近距離範囲R1aでは、検出距離が小さいほど高い距離分解能で風速を検出することができる。
 超近距離範囲R1aでは、距離分解能がパルス幅Δtに依存しない。一般には、測定光Lmのパルス幅Δtが大きいほど信号光LsのCNRが高くなる傾向があることから、超近距離範囲R1aにおける測定光Lmのパルス幅Δtは、中近距離範囲R1b及び遠距離範囲R2における測定光Lmのパルス幅Δtに比べて大きく設定されることが好ましい。
 超近距離範囲R1aでは、図7(b)に示したように、周波数が線形且つ周期的に変調するパルス光が測定光Lmとして用いられる。周波数が線形且つ周期的に変調するパルス光を測定光Lmとして用いる場合、図9(a)に示すように、測定光学系などで生じる迷光成分Irと信号成分Isとが時間的には重なるものの、周波数が互いに異なるものとなる。このため、検出信号Dをフーリエ変換することにより、図9(b)に示すように、信号成分Isと迷光成分Irとを周波数軸上で分離することができる。したがって、測定光Lmのパルス幅Δtを小さくすることなく、超近距離範囲R1aでの風速の検出を実施できる。
 図8の例では、チャープレートγは、検出距離に応じて小さくなるように設定されている。このようなチャープレートγの設定により、高い信号レベルを維持したまま、迷光成分Irと信号成分Isとを分離できる。図10(a)~図10(c)は、チャープレートγを変数とした場合の信号成分のピーク強度と迷光成分の裾から僅かにずれた周波数におけるスペクトル強度との関係を示す図である。信号成分のピーク強度は、検出信号Dにおける干渉光Ldのビートスペクトルのピーク強度であり、迷光成分の裾から僅かにずれた周波数におけるスペクトル強度は、迷光成分Irの裾の周波数(ここでは76MHz)における干渉光Ldのビートスペクトルの強度である。ここでは、レンズ23の直径を50mm、パルス幅Δtを800ns、パルス波形を矩形パルス、周波数シフタ4による周波数シフトを80MHzとした。また、検出距離(集光位置)を10m、20m、30mとし、信号成分Isと迷光成分Irとの分離に用いる閾値を0.05に設定した。
 図10(a)に示すように、検出距離が10mの場合、迷光成分Irの裾の周波数である76MHzでのスペクトル強度が閾値以下となるチャープレートは、94THz/sであった。図10(b)に示すように、検出距離が20mの場合、迷光成分Irの裾の周波数である76MHzでのスペクトル強度が閾値以下となるチャープレートは、50THz/sであった。図10(c)に示すように、検出距離が30mの場合、迷光成分Irの裾の周波数である76MHzでのスペクトル強度が閾値以下となるチャープレートは、36THz/sであった。また、いずれの検出距離においても、チャープレートが大きくなるほど信号成分のピーク強度が小さくなった。この結果から、信号成分Isと迷光成分Irとを分離可能なチャープレートには検出距離依存性があり、チャープレートγを検出距離に応じて小さく設定することで、高い信号レベルを維持したまま信号成分Isと迷光成分Irとを分離できることが分かる。
 立下がりが急峻な矩形状のパルス、或いはパルス端に意図しないチャープを有するパルスを用いる場合、図11に示すように、信号成分Isと迷光成分Irとの分離にあたって窓関数Iwを用いることが好ましい。窓関数Iwとしては、例えばHanning関数、Hamming関数、Blackman関数、Blackman-Nuttall関数などが挙げられる。窓関数Iwの適用にあたっては、図11に示すように、窓関数Iwの始点及び終点を、信号成分Isの始点及び終点ではなく、迷光成分Irの始点及び終点に合わせることが好ましい。
 図12(a)~図12(c)は、窓関数の位置に対する信号成分及び迷光成分の分離の様子を示す図である。ここでは、レンズ23の直径を50mm、パルス幅Δtを800ns、パルス波形を矩形パルス、チャープレートを50THz/s、周波数シフタ4による周波数シフトを80MHzとした。また、検出距離(集光位置)を30mとし、窓関数にBlackman関数を用いた。図12(a)に示すように、窓関数Iwの始点及び終点を迷光成分Irの始点及び終点に合わせた場合、信号成分Isのスペクトルと迷光成分Irのスペクトルとがほぼ完全に分離している。
 これに対し、図12(b)に示すように、窓関数Iwの始点及び終点を信号成分Isの始点及び終点に合わせた場合、及び図12(c)に示すように、窓関数Iwの始点及び終点を迷光成分の始点及び信号成分Isの終点に合わせた場合、信号成分Isのスペクトルの裾と迷光成分Irのスペクトルの裾とが重なり合っている。この結果から、信号成分Isと迷光成分Irとの分離の観点から、窓関数Iwの始点及び終点を迷光成分Irの始点及び終点に合わせることが好適である。
 超近距離範囲R1aでは、測定光Lmの出力方向の走査速度S1は、遠距離範囲R2における測定光Lmの出力方向の走査速度S2よりも相対的に大きく設定される。図8の例では、超近距離範囲R1aにおいては、検出距離に依らず、測定光Lmの出力方向の走査速度S1は一定となっている。超近距離範囲R1aでは、測定光Lmが十分なパルス幅Δtを有しており、かつ集光状態での測定となるため、信号光LsのCNRを十分に確保できると考えられる。このため、走査速度S1を十分に大きくすることで、高速な風速検出が可能となる。
 中近距離範囲R1bでは、超近距離範囲R1aと同様に、パルス光である測定光Lmが集光された状態で大気M中に出力される。中近距離範囲R1bにおいても、検出距離が小さいほど高い距離分解能で風速を検出することができる。中近距離範囲R1bでは、レーザ光Lの周波数を変調せず、これに代えて、検出距離に応じて測定光Lmのパルス幅Δtを変化させる。図8の例では、検出距離に比例して測定光Lmのパルス幅Δtが線形に増加する。測定光Lmのパルス幅Δtは、当該パルス幅Δtに相当する距離が検出距離よりも小さくなる範囲で設定される。これにより、図13に示すように、迷光成分Irと信号成分Isとを時間軸上で分離することができる。中近距離範囲R1bでは、距離分解能は、パルス幅Δtではなく、集光状態によって決まるため、距離分解能を高めるためにパルス幅Δtを小さくする必要はない。したがって、測定光Lmのパルス幅Δtを小さくすることなく、中近距離範囲R1bでの風速の検出を実施できる。
 超近距離範囲R1a及び中近距離範囲R1bの双方を含めた近距離範囲R1においても、図14に示すように、測定光Lmのパルス幅Δtが大きいほど信号光LsのCNRが高くなる傾向がある。図14は、異なるパルス幅の測定光で得られた信号光のCNRを検出距離0m~70mの範囲でプロットしたものである。図14では、パルス光の光エネルギーを1.1μJ、レンズ23の直径を50mm、強度スペクトルの平均化回数を1000回とし、CNRについては400回測定の中央値及び最小値をプロットした。
 図14に示すように、検出距離10mでは、パルス幅50nsの場合のCNRのみを示しているが、検出距離20mでは、パルス幅50nsの場合のCNRに比べて、パルス幅100nsのCNRの方が高くなっている。また、検出距離30mでは、パルス幅50ns及び100nsの場合のCNRに比べて、パルス幅200nsのCNRの方が高くなっている。検出距離60mでは、パルス幅50ns、100ns、200nsの場合のCNRに比べて、パルス幅400nsのCNRの方が高くなっている。この結果から、測定光Lmのパルス幅Δtが大きいほど信号光LsのCNRが高くなり、検出距離に応じて測定光Lmのパルス幅Δtを変化させることで、高速且つ精度良く風速検出を実施できることが分かる。
 なお、パルス幅Δtを過剰に小さくしてしまうと、干渉光Ldのビートスペクトルが拡がり過ぎて風速分解能が低下してしまうことが考えられる。また、一般には、パルス幅が狭いほど光増幅に要するコストが増加する。本実施形態では、近距離範囲R1のうち第2閾値T2を超える中近距離範囲R1bにおいて、検出距離に応じて測定光Lmのパルス幅Δtを変化させており、第2閾値T2以下の超近距離範囲R1aでは、レーザ光Lの周波数の変調を行うことで、中近距離範囲R1bよりも測定光Lmのパルス幅Δtを大きく設定している。これにより、パルス幅Δtが過剰に小さくなることによる風速分解能の低下及び光増幅のコスト増加の問題を回避できる。
 中近距離範囲R1bでは、測定光Lmの出力方向の走査速度S1は、遠距離範囲R2における測定光Lmの出力方向の走査速度S2よりも相対的に大きく設定される。図8の例では、中近距離範囲R1bにおける測定光Lmの出力方向の走査速度S1は、超近距離範囲R1aにおける測定光Lmの出力方向の走査速度S1と同じであり、検出距離に依らず一定となっている。走査速度S1を十分に大きくすることで、高速な風速検出が可能となる。
 遠距離範囲R2では、パルス光である測定光Lmが平行光化された状態で大気M中に出力される。遠距離範囲R2では、レーザ光Lの周波数の変調は行われず、検出距離に依らずに測定光Lmのパルス幅Δtは一定である。遠距離範囲R2におけるパルス幅Δtは、CNRと距離分解能とのバランスが取れる範囲に設定される。一例として、遠距離範囲R2におけるパルス幅Δtは、超近距離範囲R1aにおけるパルス幅Δtよりも小さい範囲に設定される。また、遠距離範囲R2におけるパルス幅Δtは、中近距離範囲R1bで用いられる最小のパルス幅Δtより大きく、最大のパルス幅Δtより小さい範囲に設定される。遠距離範囲R2では、距離分解能が測定光Lmのパルス幅Δtによって定まり、検出距離に依存せずに一定の距離分解能が維持される。
 遠距離範囲R2では、測定光Lmの出力方向の走査速度S2は、近距離範囲R1における測定光Lmの出力方向の走査速度S1よりも相対的に小さく設定される。図8の例では、遠距離範囲R2においては、検出距離に依らず、測定光Lmの出力方向の走査速度S2は一定となっている。パルス光である測定光Lmを平行光化する遠距離範囲R2では、パルス光である測定光Lmを集光する近距離範囲R1に比べて、信号光LsのCNRが低下することが考えられる。偏向の際の測定光Lmの出力方向の走査速度を小さくすることで、信号の平均化回数を増やすことが可能となり、遠距離範囲R2における風速検出の精度を十分に担保できる。
 図15は、本開示の一実施形態に係る風速検出方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る風速検出方法は、上述した風速検出装置1を用いて実施される。この風速検出方法は、図15に示すように、設定ステップS01と、出力ステップS02と、分岐ステップS03と、変換ステップS04と、測定ステップS05と、検出ステップS06と、解析ステップS07とを含んで構成されている。
 設定ステップS01は、風速検出に用いる各種の測定条件を設定するステップである。設定ステップS01では、まず、検出距離に依存しないパラメータを設定する。検出距離に依存しないパラメータとしては、例えばレンズ23の直径、測定光Lmのパルス波形、周波数シフタ4による周波数シフト、測定光Lmのパルスの繰り返し周波数などが挙げられる。次に、設定ステップS01では、検出距離を設定し、設定した検出距離が超近距離範囲R1a、中近距離範囲R1b、遠距離範囲R2のいずれに属するかに基づいて、出力部2から出力するレーザ光Lの周波数変調の有無、第1増幅部5において生成されるパルス光のパルス幅Δt、測定光学系7における可動ステージ22の位置、ビーム偏向板24が搭載された回転ステージ25による測定光Lmの走査速度などを設定する。
 出力ステップS02は、レーザ光Lを出力するステップである。出力ステップS02では、出力部2からCW光であるレーザ光Lを出力する。レーザ光Lの周波数を変調する場合は、信号生成部13で生成した変調信号Gを出力部2に入力する。これにより、周波数が線形且つ周期的に変調するレーザ光Lを生成し、出力部2から出力する。
 分岐ステップS03は、レーザ光Lを測定光Lm及び参照光Lrに分岐するステップである。分岐ステップS03では、出力部2から出力したレーザ光Lを分岐部3によって分岐し、一方を測定光Lmとし、他方を参照光Lrとする。測定光Lmは、周波数シフタ4を経て第1増幅部5に入力され、参照光Lrは、ディレイファイバ16による遅延を経て合波部8に入力される。
 変換ステップS04は、測定光Lmをパルス光に変換するステップである。変換ステップS04では、第1増幅部5で測定光Lmのうちの特定の成分を増幅することで、CW光である測定光Lmをパルス光に変換する。パルス光に変換された測定光Lmは、第2増幅部6による強度の増幅を経て測定光学系7に入力される。
 測定ステップS05は、測定光Lmを大気M中に出力し、大気M中での測定光Lmの散乱光Lfを信号光Lsとして受光するステップである。測定ステップS05では、測定光学系7を介し、測定光Lmを平行光化した状態で大気M中に出射する。測定光Lmは、大気M中の無数のエアロゾルPで散乱し、散乱光Lfとなる。散乱光Lfの一部は、測定光学系7に戻り、信号光Lsとして合波部8に入力される。合波部8では、CW光である参照光Lrと信号光Lsとが合波し、干渉光Ldが生成される。
 測定ステップS05では、検出距離に応じて状態が異なる測定光Lmを大気M中に出射する。検出距離が超近距離範囲R1aに属する場合、周波数を変調したパルス光を測定光Lmとして大気M中に集光する。また、検出距離が超近距離範囲R1aに属する場合、遠距離範囲R2における走査速度S2よりも相対的に大きい走査速度S1で、ビーム偏向板24による測定光Lmの出力方向を走査する。検出距離が中近距離範囲R1bに属する場合、周波数を変調せず、検出距離に応じたパルス幅Δtを有するパルス光を測定光Lmとして大気Mに集光する。また、検出距離が中近距離範囲R1bに属する場合、遠距離範囲R2における走査速度S2よりも相対的に大きい走査速度S1で、ビーム偏向板24による測定光Lmの出力方向を走査する。
 検出距離が遠距離範囲R2に属する場合、周波数を変調せず、検出距離に依らず一定のパルス幅Δtを有するパルス光を測定光Lmとし、平行光化した状態で大気M中に出力する。また、検出距離が遠距離範囲R2に属する場合、超近距離範囲R1a及び中近距離範囲R1bにおける走査速度S1よりも相対的に小さい走査速度S2で、ビーム偏向板24による測定光Lmの出力方向を走査する。
 検出ステップS06は、参照光Lrと信号光Lsとの干渉結果に基づく検出信号を出力するステップである。検出ステップS06では、合波部8で生成された干渉光Ldを検出部9で検出し、干渉光Ldに基づくアナログ電気信号を検出信号Dとして生成する。生成された検出信号Dは、デジタイザ10によってアナログ/デジタル変換され、解析部11に出力される。
 解析ステップS07は、検出信号Dに基づいて大気M中での風速を解析するステップである。解析ステップS07では、検出信号Dに基づいて干渉光Ldのビートスペクトルのピーク周波数を参照する。そして、干渉光Ldのビートスペクトルにおけるピーク周波数のシフト量を求めることで、大気M中の風速を検出する。異なる距離で検出を行う場合には、ステップS01にて検出距離などを再設定し、ステップS02~ステップS07を再実行する。所望の距離の範囲で風速の検出を実施した後、処理を終了する。
 以上説明したように、風速検出装置1では、検出距離が第1閾値T1以下の近距離範囲R1に属する場合には、パルス光である測定光Lmを集光して大気M中に出力する。パルス光を集光する場合、CW光を集光する場合に比べて、同一のエネルギー及び同一の集光状態で比較した際の信号光LsのCNRを向上できる。したがって、近距離範囲R1において高速且つ精度良く風速検出を実施できる。また、風速検出装置1では、検出距離が第1閾値T1を超える遠距離範囲R2に属する場合には、パルス光である測定光Lmを平行光化して大気中に出力する。パルス光を平行光化する場合、CW光を集光する場合とは異なり、距離分解能がパルス幅Δtに依存する一方で、検出距離に依存せずに一定の距離分解能を維持できる。このように、風速検出装置1では、検出距離に基づいて測定光Lmの状態を制御することで、検出距離に応じた最適な風速検出を実施できる。
 本実施形態では、制御部15は、検出距離が近距離範囲R1に設定された第2閾値T2以下の超近距離範囲R1aに属する場合には、レーザ光Lとして周波数が変調された光が出力されるように出力部2を制御する。検出距離が超近距離範囲R1aに属する場合、測定光学系7などで生じる迷光成分が信号成分に対して大きくなり、かつ時間的に重なるため、参照光と信号光との干渉結果に基づく風速の解析が難しくなることが考えられる。これに対し、レーザ光として周波数が変調された光を用いることで、信号成分Isと迷光成分Irとを周波数軸上で分離することが可能となる。これにより、検出距離が超近距離範囲R1aに属する場合であっても、風速検出を精度良く実施できる。
 本実施形態では、制御部15は、検出距離が近距離範囲R1に設定された第2閾値T2を超える中近距離範囲R1bに属する場合には、検出距離に応じて測定光Lmのパルス幅Δtが変化するように第1増幅部(変換部)5を制御する。上述したように、測定光Lmのパルス幅Δtが大きいほど信号光LsのCNRが高くなる傾向がある。したがって、検出距離に応じて測定光Lmのパルス幅Δtを変化させることで、中近距離範囲R1bにおいて高速且つ精度良く風速検出を実施できる。
 本実施形態では、出力部2は、レーザ光LとしてCW光を出力し、検出部9は、CW光である参照光Lrと信号光Lsとの干渉結果に基づく検出信号Dを出力する。風速検出装置1では、近距離範囲R1から遠距離範囲R2にわたって広範囲に検出距離が設定される。参照光LrをCW光とすることで、信号光Lsがパルス光であっても、或いは複数のパルス光の時間的な重ね合わせの状態であっても、検出距離の設定に依らずに信号光Lsと参照光Lrとの干渉信号を得ることができる。
 本実施形態では、測定光学系7は、大気M中に向かう測定光Lmの出力方向を偏向する偏向部として、ビーム偏向板24が搭載された回転ステージ25を有する。このような偏向部を用いることで、測定光Lmの出力方向が可変となり、風向及び風速の情報を含む三次元風速ベクトルの測定が可能となる。
 本実施形態では、制御部15は、検出距離が遠距離範囲R2に属する場合には、検出距離が近距離範囲R1に属する場合に比べて、測定光Lmの出力方向の走査速度が小さくなるように偏向部を制御する。パルス光である測定光Lmを平行光化する遠距離範囲R2では、パルス光である測定光Lmを集光する近距離範囲R1に比べて、信号光LsのCNRが低下することが考えられる。偏向部による測定光Lmの出力方向の走査速度を小さくすることで、信号の平均化回数を増やすことが可能となり、遠距離範囲R2における風速検出の精度を十分に担保できる。
 本実施形態では、風速検出装置1の構成要素のうち、少なくとも出力部2、分岐部3、及び検出部9が光集積回路12によって構成されている。少なくとも出力部2、分岐部3、及び検出部9を光集積回路12で構成することで、装置の小型化を実現できる。また、本実施形態では、検出信号Dに基づいて大気M中での風速を解析する解析部11を更に備える。これにより、レーザ光Lの出力から風速の解析までの一連の処理を一つの装置内で実施できる。
 以下、本開示の実施例について説明する。本実施例では、上記実施形態に則り、検出距離10m(超近距離範囲)、検出距離30m(中近距離範囲)、検出距離60m~900m(遠距離範囲)での風速解析例を紹介する。
 検出距離10mでの風速解析にあたっては、まず、可動ステージ22により測定光Lmの集光位置を10mに調整した。また、測定光Lmのパルス幅Δtを800ns、チャープレートγを94THz/s、偏向部の走査速度を10ラウンド/sに設定した。検出距離に依存しないパラメータとして、レンズ23の直径を50mmとした。また、図16(a)に示すように、測定光Lmのパルス波形を矩形、周波数シフタ4による周波数シフトを80MHz、測定光Lmのパルスの繰り返し周波数を100kHz(=パルス間隔Δr=10μs)とした。測定光Lmの周波数は、UPランプとDOWNランプとがパルス毎に交互に対応するように線形且つ周期的に変調した。
 大気M中への測定光Lmの出力と同時に偏向部による測定光Lmの走査を開始し、大気Mからの信号光Lsをコヒーレント検波によって検出した。デジタイザ10から出力される検出信号Dは、図16(b)に示すように、測定光Lmのパルスの繰り返し周波数に応じた時間間隔のパルス信号となる。当該信号の各パルス成分には、検出距離10mにおける干渉光Ldのビートスペクトルのピーク周波数の情報が含まれる。
 風速解析にあたっては、まず、得られた検出信号Dをパルス間隔(=10μs)毎のタイムスロットに区分する。次に、各タイムスロットにおいて、0ns~800nsの範囲の窓関数を乗算した後、フーリエ変換を行うことで、それぞれの強度スペクトルを算出する。UPランプ及びDOWNランプのそれぞれについて、500タイムスロット分の強度スペクトルを平均化することで、図16(c)に示すように、検出距離10mにおけるUPランプの平均強度スペクトルSUP及びDOWNランプの平均強度スペクトルSDOWNが得られる。得られたUPランプの平均強度スペクトルSUP及びDOWNランプの平均強度スペクトルSDOWNに基づいて、それぞれの重心周波数fUP及びfDOWNを取得する。
 重心周波数fUP,fDOWNに基づく視線風速VLOSの算出式は、以下の式(1)及び式(2)のとおりである。視線風速VLOSとは、大気M中に出射する測定光Lmの出力方向における風速である。下記式(1)及び式(2)中、λは測定光Lmの波長、fshiftは周波数シフタ4による周波数シフト、fdоpplerはドップラーシフトである。なお、風向や風速の状態により、重心周波数fUP,fDOWNの一方のみしか得られない場合は、下記式(3)又は式(4)により、fdоpplerを算出してもよい。下記式(3)及び式(4)中、γはチャープレート、Zは検出距離、cは光速である。
  VLOS=λ×(fdоppler/2)  …(1)
  fdоppler=((fUP+fDOWN)/2)-fshift  …(2)
  fdоppler=fUP+((2×γ×Z)/c)-fshift  …(3)
  fdоppler=fDOWN-((2×γ×Z)/c)-fshift  …(4)
 上記手順を10ms毎に繰り返すことで、図17(a)に示すように、検出距離10mでの10ms毎の視線風速を検出できる。偏向部の走査1周分(=100ms)の視線風速の検出結果に基づいて、図17(b)に示すように、検出距離10mでの100ms毎の三次元風速ベクトルを求めることができる。風速ベクトルを一定時間にわたって求めることで、検出距離10mでの平均風速、最大風速、平均風向、乱流強度(=風速標準偏差/平均風速)などを算出できる。
 検出距離30mでの風速解析にあたっては、まず、可動ステージ22により測定光Lmの集光位置を30mに調整した。また、測定光Lmのパルス幅Δtを200ns、チャープレートγを0THz/s、偏向部の走査速度を10ラウンド/sに設定した。検出距離に依存しないパラメータとして、レンズ23の直径を50mmとした。また、図18(a)に示すように、測定光Lmのパルス波形を矩形、周波数シフタ4による周波数シフトを80MHz、測定光Lmのパルスの繰り返し周波数を100kHz(=パルス間隔Δr=10μs)とした。
 大気M中への測定光Lmの出力と同時に偏向部による測定光Lmの走査を開始し、大気Mからの信号光Lsをコヒーレント検波によって検出した。デジタイザ10から出力される検出信号Dは、図18(b)に示すように、測定光Lmのパルスの繰り返し周波数に応じた時間間隔のパルス信号となる。当該信号の各パルス成分には、検出距離30mにおける干渉光Ldのビートスペクトルのピーク周波数の情報が含まれる。
 風速解析にあたっては、まず、得られた検出信号Dをパルス間隔(=10μs)毎のタイムスロットに区分する。次に、各タイムスロットにおいて、200ns~400nsの範囲の窓関数を乗算した後、フーリエ変換を行うことで、それぞれの強度スペクトルを算出する。1000タイムスロット分の強度スペクトルを平均化することで、図18(c)に示すように、検出距離30mにおける平均強度スペクトルS30が得られる。重心周波数fを取得する。重心周波数fに基づく視線風速VLOSの算出式は、以下の式(5)及び式(6)のとおりである。
  VLOS=λ×(fdоppler/2)  …(5)
  fdоppler=f-fshift  …(6)
 上記手順を10ms毎に繰り返すことで、図19(a)に示すように、検出距離30mでの10ms毎の視線風速を検出できる。偏向部の走査1周分(=100ms)の視線風速の検出結果に基づいて、図19(b)に示すように、検出距離30mでの100ms毎の三次元風速ベクトルを求めることができる。風速ベクトルを一定時間にわたって求めることで、検出距離30mでの平均風速、最大風速、平均風向、乱流強度(=風速標準偏差/平均風速)などを算出できる。
 検出距離60m~900mでの風速解析にあたっては、まず、可動ステージ22により測定光Lmが平行光となるように調整した。また、測定光Lmのパルス幅Δtを400ns、チャープレートγを0THz/s、偏向部の走査速度を1ラウンド/sに設定した。検出距離に依存しないパラメータとして、レンズ23の直径を50mmとした。また、図20(a)に示すように、測定光Lmのパルス波形を矩形、周波数シフタ4による周波数シフトを80MHz、測定光Lmのパルスの繰り返し周波数を100kHz(=パルス間隔Δr=10μs)とした。
 大気M中への測定光Lmの出力と同時に偏向部による測定光Lmの走査を開始し、大気Mからの信号光Lsをコヒーレント検波によって検出した。デジタイザ10から出力される検出信号Dは、図20(b)に示すように、測定光Lmのパルスの繰り返し周波数に応じた時間間隔の連続した信号となる。当該信号成分には、検出距離60m以上の距離での干渉光Ldのビートスペクトルのピーク周波数の情報が含まれる。
 風速解析にあたっては、まず、得られた検出信号Dをパルス間隔(=10μs)毎のタイムスロットに区分する。さらに、各タイムスロットを400ns毎のサブスロット♯1~♯15に区分する。サブスロット#1~#15の各データに対し、パルス幅Δtに基づく400ns幅の窓関数を乗算した後、フーリエ変換を行うことで、それぞれの強度スペクトルを算出する。それぞれの強度スペクトルについて、10000タイムスロット分の強度を平均化することで、図21に示すように、検出距離60m毎の平均強度スペクトルS60、S120、…S900が得られる。得られた平均強度スペクトルS60、S120、…S900に基づいて、重心周波数f60、f120、…f900を取得する。重心周波数f60、f120、…f900に基づく視線風速VLOSの算出には、上述した式(5)及び式(6)を用いることができる。
 上記手順を100ms毎に繰り返すことで、図22に示すように、検出距離60mの整数倍となる距離での100ms毎の視線風速を検出できる。偏向部の走査1周分(=1000ms)の視線風速の検出結果に基づいて、図23に示すように、検出距離60mの整数倍となる距離での1000ms毎の三次元風速ベクトルを求めることができる。風速ベクトルを一定時間にわたって求めることで、検出距離60mの整数倍となる距離での平均風速、最大風速、平均風向、乱流強度(=風速標準偏差/平均風速)などを算出できる。
 本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、測定光学系7に空間光学系型のサーキュレータ21を用いる構成を例示したが、図24に示すように、測定光学系7に光ファイバデバイス型のサーキュレータ31を用いてもよい。図24の例では、光ファイバデバイス型のサーキュレータ31の出力ポートに接続された光ファイバFの端部Faを可動ステージ32に搭載している。可動ステージ32が光ファイバFの端部Faからレンズ23までの距離を変えることで、レンズ23を介して大気M中に出射する測定光Lmの焦点位置を測定光Lmの光軸方向に変位させることができる。
 また、図5の例では、ビーム偏向板24を用いて大気M中に向かう測定光Lmの出力方向を任意の方向に偏向させているが、測定光Lmの出力方向の偏向は、他の構成を用いて実現してもよい。例えばレンズ23の外側にミラーを配置し、当該ミラーの角度を調整することで、大気M中に向かう測定光Lmの出力方向を任意の方向に偏向させてもよい。図24の例では、光ファイバFの端部Faの向きを上下左右に動かすことで、大気M中に向かう測定光Lmの出力方向を任意の方向に偏向させてもよい。
 1…風速検出装置、2…出力部、3…分岐部、5…第1増幅部(変換部)、7…測定光学系、9…検出部、11…解析部、12…光集積回路、15…制御部、24…ビーム偏向板(偏向部)、25…回転ステージ(偏向部)、M…大気、L…レーザ光、Lm…測定光、Lf…散乱光、Ls…信号光、Lr…参照光、D…検出信号、T1…第1閾値、T2…第2閾値、R1…近距離範囲、R1a…超近距離範囲、R1b…中近距離範囲、R2…遠距離範囲、101…飛行体制御装置、102…制御装置、H…飛行体、Q…制御信号。

Claims (16)

  1.  レーザ光を出力する出力部と、
     前記レーザ光を測定光及び参照光に分岐する分岐部と、
     前記測定光をパルス光に変換する変換部と、
     前記測定光を大気中に出力し、前記大気中での前記測定光の散乱光を信号光として受光する測定光学系と、
     前記参照光と前記信号光との干渉結果に基づく検出信号を出力する検出部と、
     前記測定光による検出距離に基づいて、前記測定光学系から出力する前記測定光の状態を制御する制御部と、を備え、
     前記制御部は、前記検出距離が第1閾値以下の近距離範囲に属する場合には、前記大気中に出力される前記測定光が集光されるように前記測定光学系を制御し、前記検出距離が前記第1閾値を超える遠距離範囲に属する場合には、前記大気中に出力される前記測定光が平行光化されるように前記測定光学系を制御する、風速検出装置。
  2.  前記制御部は、前記検出距離が前記近距離範囲に設定された第2閾値以下の超近距離範囲に属する場合には、前記レーザ光として周波数が変調された光が出力されるように前記出力部を制御する、請求項1記載の風速検出装置。
  3.  前記制御部は、前記検出距離が前記近距離範囲に設定された第2閾値を超える中近距離範囲に属する場合には、前記検出距離に応じて前記測定光のパルス幅が変化するように前記変換部を制御する、請求項1又は2記載の風速検出装置。
  4.  前記出力部は、前記レーザ光としてCW光を出力し、
     前記検出部は、CW光である前記参照光と前記信号光との干渉結果に基づく検出信号を出力する、請求項1~3のいずれか一項記載の風速検出装置。
  5.  前記測定光学系は、前記大気中に向かう前記測定光の出力方向を偏向する偏向部を有する、請求項1~4のいずれか一項記載の風速検出装置。
  6.  前記制御部は、前記検出距離が前記遠距離範囲に属する場合には、前記検出距離が前記近距離範囲に属する場合に比べて、前記測定光の出力方向の走査速度が小さくなるように前記偏向部を制御する、請求項5記載の風速検出装置。
  7.  少なくとも前記出力部、前記分岐部、及び前記検出部は、光集積回路によって構成されている、請求項1~6のいずれか一項記載の風速検出装置。
  8.  前記検出信号に基づいて前記大気中での風速を解析する解析部を更に備える、請求項1~7のいずれか一項記載の風速検出装置。
  9.  レーザ光を出力する出力ステップと、
     前記レーザ光を測定光及び参照光に分岐する分岐ステップと、
     前記測定光をパルス光に変換する変換ステップと、
     前記測定光を大気中に出力し、前記大気中での前記測定光の散乱光を信号光として受光する測定ステップと、
     前記参照光と前記信号光との干渉結果に基づく検出信号を出力する検出ステップと、を備え、
     前記測定ステップでは、前記測定光による検出距離が第1閾値以下の近距離範囲に属する場合には、前記大気中に出力される前記測定光を集光し、前記測定光による前記検出距離が前記第1閾値を超える遠距離範囲に属する場合には、前記大気中に出力される前記測定光を平行光化する、風速検出方法。
  10.  前記出力ステップでは、前記検出距離が前記近距離範囲に設定された第2閾値以下の超近距離範囲に属する場合には、前記レーザ光として周波数が変調された光を出力する、請求項9記載の風速検出方法。
  11.  前記変換ステップでは、前記検出距離が前記近距離範囲に設定された第2閾値を超える中近距離範囲に属する場合には、前記検出距離に応じて前記測定光のパルス幅を変化させる、請求項9又は10記載の風速検出方法。
  12.  前記出力ステップでは、前記レーザ光としてCW光を出力し、
     前記検出ステップでは、CW光である前記参照光と前記信号光との干渉結果に基づく検出信号を出力する、請求項9~11のいずれか一項記載の風速検出方法。
  13.  前記測定ステップは、前記大気中に向かう前記測定光の出力方向を偏向する偏向ステップを有する、請求項9~12のいずれか一項記載の風速検出方法。
  14.  前記偏向ステップでは、前記検出距離が前記遠距離範囲に属する場合には、前記検出距離が前記近距離範囲に属する場合に比べて、前記測定光の出力方向の走査速度を小さくする、請求項13記載の風速検出方法。
  15.  前記検出信号に基づいて前記大気中での風速を解析する解析ステップを更に備える、請求項9~14のいずれか一項記載の風速検出方法。
  16.  請求項1~8のいずれか一項記載の風速検出装置と、
     前記風速検出装置から出力する前記検出信号に基づいて、飛行体の離発着に関する制御信号を生成する制御装置と、を備える、飛行体制御装置。
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