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WO2026009464A1 - 窒化ケイ素基板の製造方法 - Google Patents

窒化ケイ素基板の製造方法

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WO2026009464A1
WO2026009464A1 PCT/JP2024/038274 JP2024038274W WO2026009464A1 WO 2026009464 A1 WO2026009464 A1 WO 2026009464A1 JP 2024038274 W JP2024038274 W JP 2024038274W WO 2026009464 A1 WO2026009464 A1 WO 2026009464A1
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silicon nitride
silicon
powder
particles
sheet
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大 草野
先炳 陳
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Jsg Japan Co Ltd
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Jsg Japan Co Ltd
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Abstract

ケイ素の急激な窒化反応を防止し、均一な窒化反応により高い放熱性と優れた機械特性を有する窒化ケイ素基板の製造方法を提供する。金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合して微粉砕処理することにより複合化粉末を形成する第1工程と前記複合化粉末に焼結助剤と分散媒とを混合することにより前記複合化粉末に前記焼結助剤が分散されたシート体形成用スラリーを形成する第2工程と前記シート形成用スラリーを成形してシート体を形成する第3工程と前記シート体を250~600℃で加熱して樹脂成分を脱脂することにより脱脂処理シート体を形成する第4工程と前記脱脂処理シート体を1200~1500℃で加熱して前記シート体に含まれるケイ素を窒化することにより窒化処理シート体を形成する第5工程と前記窒化処理シート体を焼結することにより窒化ケイ素基板とする第6工程とを含み、前記複合化粉末は、金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子とが吸着して形成されていることを特徴とする。

Description

窒化ケイ素基板の製造方法
 本発明は、窒化ケイ素基板の製造方法に関する。さらに詳しくは、ケイ素源として金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合して微粉砕処理することにより形成された複合化粉末を用い、ケイ素の急激な窒化反応等を防止することによって高い放熱性と優れた機械特性を有する窒化ケイ素基板の製造方法に関する。
 近年、パワーデバイスの需要が年々増加している。すなわち、ハイブリッド自動車、電気自動車等の普及に伴って、パワーデバイスの傾向は、高出力化、高密度化、高温動作化等にある。このようなパワーデバイスの傾向に応えるため、パワーデバイスに用いられる絶縁基板には、高い放熱性と優れた機械特性が要求されるようになっている。
 つまり、パワーデバイスに用いられる絶縁基板において、半導体素子から発生する熱の放熱技術が極めて重要になってきている。
 放熱性を有する絶縁基板の材料として、窒化アルミニウムが当該絶縁基板の材料として採用されている。すなわち、窒化アルミニウムは優れた絶縁性と高熱伝導率を合わせ持つことから、パワーモジュール用放熱性絶縁基板の材料として使用されている。しかしながら、窒化アルミニウムは強度・破壊靭性等の機械的特性が低く、信頼性に欠けるためその用途は非常に限定的であった。
 一方、窒化ケイ素焼結体は、高い強度と高い靱性を合わせ持つ優れた構造用セラミック材料として広く知られている。そして、窒化ケイ素焼結体は、単結晶での熱伝導率が200~320W/mKという極めて高い値を示すと予測されている。このため、窒化ケイ素焼結体は、放熱性絶縁基板の材料として利用されることが期待されている。
 しかしながら、一般的な窒化ケイ素焼結体においては、当該窒化ケイ素焼結体を構成している窒化ケイ素粒子内部に不純物酸素等が固溶している。このため、熱伝導を担うフォノンが散乱されてしまい、窒化ケイ素焼結体は、その熱伝導率が20~80W/mKと単結晶で予測されている理論値よりも遙かに低くなっていた。
 このような技術的観点から、ケイ素粉末を含む原料粉末から製造でき、焼結体を形成後に変質層を除去する必要のない緻密な窒化ケイ素基板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1)。すなわち、特許文献1には、ケイ素粉末と希土類元素化合物とマグネシウム化合物とを含有する所定の原料粉末を準備する原料粉末準備工程と、前記原料粉末をシート状に成形してシート体を形成するシート成形工程と、シート体を窒素雰囲気中で加熱し、シート体に含まれるケイ素を窒化する窒化工程と、窒化工程を終えたシート体を窒素雰囲気下で焼結する焼結工程と、を有する窒化ケイ素基板の製造方法が記載されている。
 また、厚さ方向に優れた熱伝導性を有する窒化ケイ素基板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2)。すなわち、特許文献2には、ケイ素粉末、焼結助剤および分散媒を混合してスラリーを作製する工程と、スラリーからシート体を成形する工程と、シート体を窒素含有雰囲気中で熱処理して、シート体中のケイ素を窒化させ、窒化ケイ素を形成する工程と、窒化ケイ素を含む前記シート体を焼結して、窒化ケイ素基板を製造する工程とを含む窒化ケイ素基板の製造方法が記載されている。そして、特許文献2に記載された窒化ケイ素基板の製造方法に含まれる窒化珪ケイ素を形成する工程は、焼結助剤の揮発を制御し焼結助剤の移動の方向である厚み方向に窒化ケイ素粒子を配向させることを特徴としている。
 さらに、セラミックス基板が破損等することなく高い分離性で窒化珪ケイ素基板を形成可能な製造方法が提案されている(例えば、特許文献3)。すなわち、特許文献3には、窒化ケイ素粒子からなる主相と、焼結助剤からなる粒界相とで構成された焼結体である窒化ケイ素基板において、表面のうねりが1.0μm以下であり、所望の曲げ強度、熱伝導率および金属板との接合性を有する窒化ケイ素基板および焼結後、複数枚積層された状態のセラミックス基板から個々のセラミックス基板を分離するに際し、セラミックス基板が破損等することなく高い分離性で窒化ケイ素基板を形成可能な製造方法が記載されている。
特許第5836522号公報 特開2022-027444号公報 国際公開第2013/054852号
 しかしながら、上記各従来技術には以下のような解決しなければならない課題がある。すなわち、特許文献1に記載されたケイ素粉末を含む原料粉末から製造できる窒化ケイ素基板の製造方法は、ケイ素粉末を多量に使用すると、当該ケイ素粉末に含まれるケイ素の急激な窒化反応による発熱が起こる。すなわち、かかる窒化ケイ素基板の製造方法は、原料粉末であるケイ素粉末に含まれるケイ素の急激な発熱を制御するために窒化反応時間を非常に長く取らなければならず、また急激な反応により金属ケイ素の溶融や未反応が生じるという問題点を有する。
 原料粉末であるケイ素粉末に含まれるケイ素の発熱を抑制するために窒化ケイ素基板の原料として、ケイ素粉末に窒化ケイ素粉末を混合した混合粉末を用いることが考えられる。しかしながら、ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合するだけでは、ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とが均一に混合した混合粉末を得ることができない。このため、原料粉末であるケイ素粉末に含まれるケイ素の窒化反応に伴う発熱に伴い、窒化反応を制御することができない。このように、特許文献1に記載されたケイ素粉末を含む原料粉末から製造できる窒化ケイ素基板の製造方法は、窒化ケイ素基板のケイ素源として金属ケイ素粉末を多量に用いることができない。
 また、特許文献2~3に記載された窒化珪素基板の製造方法は、シート体中の珪素を窒化させ、窒化珪素を形成する工程における焼結助剤の揮散を促し、厚み方向に窒化ケイ素粒子を配向させるものであって、ケイ素粉末の急激な窒化反応による発熱を考慮しているものではない。
 このように、従来の窒化ケイ素基板の製造方法から製造される窒化ケイ素基板は、その製造コストと熱伝導率及び機械的特性との共生の2つの観点からそのような要求をすべて満足するものでなかった。
 そこで、原料粉末に要するコストを低減させるという観点から、原料粉末として安価なケイ素粉末を用い、その成形体を窒素中で窒化後、高温で焼結するいわゆる反応焼結手法を用いた場合であっても、ケイ素粉末の急激な窒化反応による発熱を抑制し、ケイ素粉末の均一な窒化反応による窒化工程を備えた窒化ケイ素基板の製造方法が必要となっている。
 本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、窒化ケイ素基板の製造工程におけるケイ素の急激な窒化反応を防止し、均一な窒化反応により高い放熱性と優れた機械的特性を有する窒化ケイ素基板を提供することを目的とする。
 発明者らは、これらの問題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、窒化ケイ素基板のケイ素源として、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合して微粉砕処理をすることにより形成された複合化粉末を用いることにより、ケイ素の急激な窒化反応や反応の不均質等を防止できることを見出し、本発明に到達した。
 すなわち、上記課題を有利に解決する本発明に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合して微粉砕処理することにより複合化粉末を形成する第1工程と、前記複合化粉末に焼結助剤と分散媒とを混合することにより前記複合化粉末に前記焼結助剤が分散されたシート体形成用スラリーを形成する第2工程と、前記シート形成用スラリーを成形してシート体を形成する第3工程と、前記シート体を250~600℃で加熱して前記シート体に含まれる樹脂成分を脱脂して脱脂処理シート体を形成する第4工程と、前記脱脂処理シート体を1200~1500℃で加熱して前記脱脂処理シート体に含まれるケイ素を窒化することにより窒化処理シート体を形成する第5工程と、前記窒化処理シート体を焼結することにより形成された窒化ケイ素焼結体を窒化ケイ素基板とする第6工程と、を含み、前記複合化粉末は、金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子とが吸着して形成されていることを特徴とする。
 なお、本発明に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、
(a)前記微粉砕処理がジェットミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、アトライタ及びメカノケミカルから選ばれるいずれか1種類又はこれらの組み合わせにより行われること、
(b)前記窒化ケイ素粒子の平均粒子径DSN50に対する前記金属ケイ素粒子の平均粒子径DS50の比率である粒子径比Xが0.2~2.0であること、
(c)前記第1工程において、前記金属ケイ素粉末と前記窒化ケイ素粉末とを窒化ケイ素換算におけるモル比で70:30~95:5の割合で含むこと、
(d)前記金属ケイ素粒子は、当該金属ケイ素粒子の表面に前記焼結助剤からなる微粒子が均一に分散していること、
(e)前記焼結助剤がマグネシウム化合物であって、前記マグネシウム化合物が酸化マグネシウム、ケイ化マグネシウム、及び窒化ケイ素マグネシウムから選択された1種類以上のマグネシウム化合物を含むこと、
(f)前記焼結助剤が前記希土類元素化合物であって、前記希土類元素がY、Sc、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Er及びYbから選ばれる1種類以上の元素を含むこと、
(g)前記シート体の相対密度が45%以上であること、
(h)前記窒化ケイ素基板の熱伝導率がキセノンフラッシュ法による測定値において、80W/mK以上であること等がより好ましい課題解決手段になる。
 本発明によれば、ケイ素の急激な窒化反応等を防止することによって高い放熱性と優れた機械特性を有する窒化ケイ素基板を製造することができる。
本発明に係る窒化ケイ素板の製造方法の各工程を示したフローである。 本発明に係る窒化ケイ素板の製造方法に用いられる複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子が粉砕される前のSEM画像である。 本発明に係る窒化ケイ素板の製造方法に用いられる複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子が粉砕された後のSEM画像である。 複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子が粉砕された後のEDS画像である。 複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子が粉砕された後のEDS画像の拡大画像である。 複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子の表面に焼結助剤からなる微粒子を分散した複合ケイ素粒子のSEM画像である。 複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子の表面に焼結助剤からなる微粒子を分散した複合ケイ素粒子のEDS画像である。
 以下、本発明に係る実施形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
[第1実施形態]
 第1実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法について説明する。図1は、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法の各工程を示したフローである。図1に示されるように、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合して微粉砕処理することにより複合化粉末を形成する第1工程と、前記複合化粉末に焼結助剤と分散媒とを混合することにより前記複合化粉末に前記焼結助剤が分散されたシート体形成用スラリーを形成する第2工程と、前記シート形成用スラリーを成形してシート体を形成する第3工程と、前記シート体を250~600℃で加熱して前記シート体に含まれる樹脂成分を脱脂し脱脂処理シート体を形成する第4工程と、前記脱脂処理シート体を1200~1500℃で加熱して前記脱脂処理シート体に含まれる金属ケイ素を窒化することにより窒化処理シート体を形成する第5工程と、前記窒化処理シート体を焼結することにより窒化ケイ素基板とする第6工程と、を含み、前記複合化粉末は、金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子とが吸着して形成されていることを特徴とする。
 以下、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法に含まれる各工程について説明する。
<第1工程:複合化粉末を形成する工程>
 本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合して微粉砕処理によるメカノケミカル効果により複合化粉末を形成する複合化粉末形成工程を含む。
 複合化粉末形成工程は、窒化ケイ素基板を製造するために必要となる焼結された窒化ケイ素シート体の原料である複合化粉末を形成する工程である。
 すなわち、第1工程である複合化粉末形成工程は、窒化ケイ素基板を製造するために必要となる窒化ケイ素焼結体の原料として、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合して微粉砕処理によるメカノケミカル効果により複合化粉末を形成する工程である。
 ここで、メカノケミカル効果は、物質に機械的エネルギーを与えると、物質の結合状態が変化を起こして活性化される効果である。メカノケミカル効果は、粒子が粉砕操作によって微粒子化する過程において、粒子に衝撃、圧縮、せん断、ずり応力、摩擦などの機械的エネルギーを与え続けると、粒子の結晶構造が変化し、粒子表面が活性化して、当該粒子の周りに存在する物質と化学的な反応を生じることによって得られる。
 ここで、従来の窒化ケイ素焼結体の製造方法においては、窒化ケイ素焼結体のケイ素供給源として窒化ケイ素粉末のみを用いる方法が提案されていた。しかしながら、窒化ケイ素粉末は、高価なため、窒化ケイ素のケイ素供給源として窒化ケイ素粉末のみを用いると製造コストが上昇するという問題があった。これに対して本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法においては、窒化ケイ素焼結体の原料として金属ケイ素粒子を用い、焼結反応により窒化ケイ素基板を製造することができる。
 さらに、本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、窒化ケイ素基板を製造するために必要となる窒化ケイ素焼結体のケイ素供給源として金属ケイ素粉末に加えて、窒化ケイ素粉末を用いる。
 すなわち、本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、窒化ケイ素焼結体のケイ素供給源として、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末との混合粉末を用い、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末との混合粉末を微粉砕処理して形成される金属ケイ素-窒化ケイ素からなる複合化粉末を用いることを特徴とする。
(金属ケイ素粉末および窒化ケイ素粉末)
 本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法において、窒化ケイ素基板を製造するために必要となる窒化ケイ素焼結体のケイ素供給源として金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを含む混合粉末を用いる。混合粉末に含まれる窒化ケイ素基板のケイ素供給源のうち、窒化ケイ素粉末は20mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましい。より望ましくは5mol%以下であることが、窒化ケイ素基板を製造するための製造コストを抑制することが可能であるため好ましい。
 すなわち、窒化ケイ素基板を製造するために必要となる窒化ケイ素焼結体のケイ素供給源として金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを含む混合粉末に含まれる金属ケイ素は、80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましく、より望ましくは95mol%以下である。
 なお、混合粉末中の窒化ケイ素のモル濃度は、当該混合粉末に含まれるケイ素を窒化ケイ素に換算して計算した値、すなわち、ケイ素粉末のケイ素1molを1/3molとして計算した場合の値である。具体的には、例えば原料粉末がケイ素供給源としてケイ素粉末3mol、窒化ケイ素粉末1molを含む場合、原料粉末中に含まれるケイ素供給源のうち、窒化ケイ素粉末は50mol%含まれることになる。
 金属ケイ素粉末を構成する金属ケイ素粒子の平均粒径は、0.1~10.0μm、好ましくは、2.0~5.0μmである。窒化ケイ素粉末を構成する窒化ケイ素粒子の平均粒径は、1.0~25.0μm、好ましくは3.0~10.0μmである。
 ここで、本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法が採用する微粉砕処理によるメカノケミカル効果を付与する前における金属ケイ素粒子の平均粒径は、20.0~30.0μmであり、窒化ケイ素粒子の平均粒子は、40.0~50.0μmである。
 なお、平均粒径は、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。一般に市販されている窒化ケイ素粉末、ケイ素粉末には、不可避的な不純物が含まれている。
 窒化ケイ素粉末および金属ケイ素粉末に不純物として含まれる酸素量は、これらの粉末の性状により異なるが、例えば、窒化ケイ素粉末の場合、1.2mass%程度である、金属ケイ素粉末の場合、0.2mass%から数mass%程度である。本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法に用いる窒化ケイ素粉末の純度は98.0%以上99.99%以下の範囲に含まれていることが好ましく、99.0%以上99.90%以下の範囲に含まれていることがさらに好ましい。本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法に用いるケイ素粉末の純度は99.0%以上の範囲に含まれていることが好ましく、99.5%以上の範囲に含まれていることがさらに好ましい。
 窒化ケイ素基板を製造する際、窒化ケイ素基板の熱伝導率を向上させるためには、窒化ケイ素焼結体の結晶中に含まれる固溶酸素量を低減することが好ましい。本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、反応焼結を用いており、金属ケイ素粉末を出発原料としているため、ケイ素供給源として窒化ケイ素のみを出発原料として用いる場合と比較して酸素量の低減という観点から大きな利点を有する。これは、ケイ素粉末を出発原料として用いた場合、出発原料である金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末からなる複合化粉末をシート状に成形するシート成形工程の後、複合化粉末を含むシート体を窒化する窒化工程を実施することとなる。そして窒化工程においては、以下の反応式(1)に示す窒化反応が進行する。
 3Si+2N=Si4         (1)
 複合化粉末を含むシート体の重量は、窒化反応により約70%増加する。このため、複合化粉末を含むシート体の不純物酸素量は、相対的に低下する。このように、本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、ケイ素供給源として金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末からなる複合化粉末を用いることにより、ケイ素供給源として窒化ケイ素のみを出発原料として用いる場合と比較して窒化ケイ素焼結体の結晶中の酸素量を低減することができる。
 すなわち、本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、ケイ素供給源として金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末からなる複合化粉末を含むシート体の窒化反応を経ることにより相対的に複合化粉末中の不純物酸素量を低下することができる。
 その結果、複合化粉末を構成する金属ケイ素粉末及び窒化ケイ素粉末中の不純物酸素量の影響は、軽微なものとなる。従って、本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法においては、不純物酸素濃度が高い低品位の金属ケイ素粉末から、不純物酸素量の低い高品位な金属ケイ素粉末まで多様な金属ケイ素粉末を用いることができる。
 特に、窒化ケイ素基板中の不純物酸素量を低減させる必要がある場合には不純物酸素濃度が低い高品位な金属ケイ素粉末を用いることが好ましい。
 ここで、金属ケイ素粉末を構成する前記金属ケイ素粒子は、当該金属ケイ素粒子の表面に焼結助剤からなる微粒子が均一に分散しているケイ素粒子であってもよい。すなわち、金属ケイ素粉末は、焼結助剤を含んでいる。焼結助剤としては、窒化ケイ素基板の前駆体であるシート体に含まれる窒化ケイ素よりも融点が低いものであればよく、後述する第2工程のスラリー形成工程において用いられる焼結助剤である希土類元素化合物、マグネシウム化合物であってもよい。焼結助剤からなる微粒子の粒子径は、0.5μm以下であることが好ましい。金属ケイ素粒子の表面に焼結助剤からなる微粒子を均一に分散させることにより、金属ケイ素粒子の粒界エネルギーを低減させて、窒化ケイ素粒子の焼結性を向上することができる。
(微粉砕処理)
 本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法に含まれる複合化粉末の形成工程において、複合化粉末は、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合した混合粉末を微粉砕処理することにより形成される。微粉砕処理は、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、アトライタ及びメカノケミカルから選ばれるいずれか1種類又はこれらの組み合わせにより行われる。
 例えば、ジェットミルは、数気圧以上の圧搾空気または高圧蒸気、高圧ガスを噴射ノズルより噴出させ、このジェット気流によって原料粒子である金属ケイ素粒子及び窒化ケイ素粒子を加速し、加速された当該粒子同士の衝突、または加速された当該粒子との衝撃作用や摩砕によって、これらの粒子の粉砕を進めることによって行われる。ジェットミルは、このような作用を金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末に与えて粉砕を進めることができるジェットミル微粉砕機によって実施される。
 ジェットミル微粉砕機を用いて乾式粉砕により、金属ケイ素粒子及び窒化ケイ素粒子を微粉砕処理すると、0.1~10.0μm、好ましくは、1.0~5.0μmの粒径を有する微粉末を得ることができる。ジェットミルによる微粉砕処理は、温度上昇が少なく感熱性物質の粉砕に適する。しかしながら、ジェットミルによる微粉砕処理は、エネルギー効率が低く、金属ケイ素粒子及び窒化ケイ素粒子から構成される微粉末を得ることができるが消費動力が大きく、一般にその処理量が少ない。このため、ジェットミルのみならず、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、アトライタ等の他の微粉末処理手段から選ばれるいずれか1種類又はこれらの組み合わせを採用してもよい。
 ジェットミル微粉砕機の形式には、水平旋回流を作るジェット噴流を用いるマイクロナイザー型、垂直型の旋回流を使用するジェットオーマイザー型、固気混合流の対抗衝突によるBlaw-KnoxあるいはTrostジェットミル型、衝突板に固気混合噴流を衝突させる方法、超音波ノズル中での固気混合流の混流による方法などがある。
 本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法に含まれる複合化粉末形成工程において、これらの方法を適宜採択して使用することができる。また、複合化粉末形成工程において採用される多くのジェットミルでは、乾式で微粉砕を遂行するのみならず、気流を有効に利用して分級作用を行うようにしてもよいし、高性能の気流分級を直結してなるべく鋭い分級を行うようにしてもよい。
 このように、複合化粉末の形成工程において金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合した混合粉末を微粉砕処理によるメカノケミカル効果によって、窒化ケイ素基板のケイ素源となる複合化粉末が形成される。すなわち、複合化粉末の形成工程は、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合した混合粉末を微粉砕処理によるメカノケミカル反応またはメカニカルアロイング反応を利用して金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とから複合化粉末を形成する工程である。
 複合化粉末は、金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子とが吸着して形成されていることを特徴とする。金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とから形成される複合化粉末を構成する複合化粒子は、窒化ケイ素粉末によってコーティングされた金属ケイ素粒子を含んでいてもよい。
 すなわち、複合化粒子は、当該複合化粒子の中心に位置するコア粒子である金属ケイ素粒子を母材として有していてもよい。複合化粒子は、コア粒子である金属ケイ素粒子の全面又は一部をコーティング、又はコア粒子である金属ケイ素粒子の全面又は一部に吸着する窒化ケイ素粒子を有している。
 金属ケイ素粒子の全面又は一部をコーティング、又は金属ケイ素粒子の全面又は一部に吸着にするために用いられる窒化ケイ素粒子の粒子数は、コア粒子である金属ケイ素粒子の粒子数よりも多い。
 そして、金属ケイ素粒子の全面又は一部をコーティングするために用いられる窒化ケイ素粒子の平均粒径は、コア粒子である金属ケイ素粒子の平均粒径よりも小さくしてもよい。
 一方、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とから形成される複合化粉末を構成する複合化粒子は、金属ケイ素粒子によってコーティングされた窒化ケイ素粒子を含んでいてもよい。すなわち、複合化粒子は、当該複合化粒子の中心に位置するコア粒子である窒化ケイ素粒子を有していてもよい。複合化粒子は、コア粒子である窒化ケイ素粒子の全面又は一部をコーティング、又はコア粒子である窒化ケイ素粒子の全面又は一部に吸着する金属ケイ素粒子を有していてもよい。窒化ケイ素粒子の全面又は一部をコーティングするために用いられる金属ケイ素粒子の粒子数は、コア粒子である窒化ケイ素粒子の粒子数よりも多い。
 そして、窒化ケイ素粒子の全面又は一部をコーティングするために用いられる金属ケイ素粒子の平均粒径は、コア粒子である窒化ケイ素粒子の平均粒径よりも小さくしてもよい。
 このため、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とから形成される混合粉末を微粉砕処理によるメカノケミカル効果により、粒子径の大きい金属ケイ素粒子を母材とした場合には、その表面に粒子径の小さい窒化ケイ素粒子を吸着させてもよい。その結果、複合化粉末を構成する粒子として、複合化粒子の中心に位置する金属ケイ素粒子の全面又は一部が窒化ケイ素粒子によってコーティング又は吸着した複合化粒子が形成される。
 また、窒化ケイ素粉末と金属ケイ素粉末とから形成される混合粉末を微粉砕処理によるメカノケミカル効果により、粒子径の大きい窒化ケイ素を母材とした場合には、その表面に粒子径の小さい金属ケイ素粒子を吸着させてもよい。その結果、複合化粉末を構成する粒子として、複合化粒子の中心に位置する窒化ケイ素粒子の全面又は一部が金属ケイ素粒子によってコーティング又は吸着した複合化粒子が形成される。また、複合化粉末を構成する粒子として、複合化粒子の中心に位置する窒化ケイ素粒子の全面又は一部に金属ケイ素粒子が吸着している複合化粒子が形成される。
 複合化粉末を構成する複合化粒子の表面には、金属ケイ素粒子が存在していてもよい。さらに、複合化粉末を構成する複合化粒子の表面には、金属ケイ素粒子が凝集して形成された金属ケイ素粒子からなる金属ケイ素粒子層が形成されていてもよい。複合化粒子の表面に存在する金属ケイ素粒子は、後述する複合化粉末を含むシート体の窒化工程において窒化されることにより、窒化ケイ素粒子となる。そして、複合化粒子の表面に存在する金属ケイ素粒子は、すべて窒化ケイ素となる。最終的には、複合化粉末は、窒化ケイ素粒子のみから形成される。
 また、複合化粉末を構成する複合化粒子の表面には、窒化ケイ素粒子が存在していてもよい。さらに、複合化粉末を構成する複合化粒子の表面から金属ケイ素粒子が露出していてもよい。複合化粒子の表面から露出する金属ケイ素粒子は、後述する複合化粉末を含むシート体の窒化工程において窒化されることにより、窒化ケイ素粒子となる。そして、複合化粒子の表面に存在する金属ケイ素粒子は、すべて窒化ケイ素となる。最終的には、複合化粉末は、窒化ケイ素粒子のみから形成される。
<第2工程:シート体形成用スラリーを形成する工程>
 本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、前記複合化粉末に焼結助剤と分散媒とを混合することにより前記複合化粉末に前記焼結助剤が分散されたシート体形成用スラリーを形成するスラリー形成工程を含む。スラリー形成工程は、窒化ケイ素基板の前駆体であるシート体を製造するための原料スラリーを形成する工程である。
 スラリー形成工程は、複合化粉末に焼結助剤である希土類元素化合物とマグネシウム化合物とを添加し、分散媒を加えて混合して原料スラリーを形成する。原料スラリーの形成に用いられる分散媒は、水或いは有機溶剤を用いることができ、必要に応じて有機系バインダー(有機系結合剤)を用いることができる。原料スラリーの形成は、複合化粉末、焼結助剤、分散媒等を加えて混合して、ボールミル、ビーズミルや遊星ミルにより通常の方法で混合することができる。
 スラリー形成工程では、複合化粉末と焼結助剤とを予め混合して混合粉末とし、当該混合粉末と分散媒等とを混合してもよい。また、スラリー形成工程では、複合化粉末と焼結助剤とをそれぞれ秤量し、分散媒等を入れたボールミル等に複合化粉末と焼結助剤との各粉末を投入し、複合化粉末と焼結助剤との混合粉末と分散媒等との混合とを同時に実施しても良い。
 後述するように、本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、金属ケイ素粉末を含むシート体形成用スラリーを形成し、当該シート体形成用スラリーから形成されるシート体に含まれるバインダーを除去して得られる脱脂処理シート成形体が含むケイ素を窒化する窒化工程の後、焼結工程を経ることにより窒化ケイ素基板を製造する。
 しかしながら、窒化ケイ素は、難焼結体であるため窒化ケイ素のみでは焼結しないため、緻密な構造を有する窒化ケイ素焼結体を得ることはできない。そこで、窒化ケイ素を焼結し、緻密な構造を有する窒化ケイ素焼結体を得るため焼結助剤が添加される。
 ところで、窒化ケイ素焼結体の熱伝導率を向上させるためには、窒化ケイ素焼結体に含まれる窒化ケイ素粒子に含まれる固溶酸素の酸素量を低減すること、窒化ケイ素焼結体を構成する低熱伝導の粒界ガラス相を低減すること等が必要である。そこで、本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、スラリー形成工程において、焼結助剤を選択することにより、窒化ケイ素基板の高熱伝導化を達成できるようにしている。
 そして、窒化ケイ素焼結体中の窒化ケイ素粒子に含まれる固溶酸素量を低減させるためには、酸素との親和性が高く粒界ガラス相に酸素をトラップする能力に優れた希土類元素化合物を焼結助剤として用いることが好ましい。また、窒化ケイ素焼結体中の低熱伝導の粒界ガラス相の低減には、加熱時に生成する融液の融点を低下させ、焼結初期に緻密化に貢献し、更に、高温での焼結時に蒸発揮散するマグネシウム化合物を焼結助剤として用いることが好ましい。
 このように、スラリー形成工程では、焼結助剤として希土類元素化合物と、マグネシウム化合物とを好ましく用いることができる。焼結助剤として用いる希土類元素化合物及びマグネシウム化合物は、ケイ素源である複合化粉末と共に原料スラリーの原料として準備することができる。
 希土類元素化合物の添加量は、原料粉末中のケイ素を窒化ケイ素に換算した場合に、原料粉末が希土類元素化合物を酸化物換算で1.0mol%以上7.0mol%以下含有するように添加することが好ましい。希土類元素化合物の添加量(モル濃度)は、ケイ素供給源である複合化粉末、希土類元素化合物、及びマグネシウム化合物の3つの成分中の希土類元素化合物のモル濃度を意味しており、以降の記載でも同様である。
 希土類元素化合物は、酸素との親和性が高く、窒化ケイ素基板を構成する粒界ガラス相に酸素をトラップする能力に優れている。このため、希土類元素化合物の添加量が1.0mol%未満の場合、粒界ガラス相に酸素をトラップすることができず、窒化ケイ素粒子に含まれる固溶酸素量が多くなり、窒化ケイ素基板の熱伝導率が低くなるため好ましくない。また、希土類元素化合物の添加量が7.0mol%を超える場合、希土類元素化合物を含む低熱伝導の粒界相の量が多くなり、窒化ケイ素基板の熱伝導率が低くなる場合があるためである。
 特に、金属ケイ素粉末中のケイ素を窒化ケイ素に換算した場合に、原料スラリーが希土類元素化合物を酸化物換算で1.5mol%以上5.0mol以下含有するように添加することがより好ましく、2.0mol%以上4.0mol%以下含有するように添加することがさらに好ましい。
 希土類元素化合物は、当該希土類元素化合物に含まれる希土類元素がY、Sc、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Er、及びYbから選択された1種類以上の元素を含むことが好ましい。希土類元素化合物としては、希土類元素酸化物が挙げられる。具体的に、希土類元素化合物としては、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化イッテリビウムや酸化スカンジウム等を好ましく用いることができる。希土類元素化合物は1種類に限定されるものではなく、2種類以上の希土類元素化合物を同時に用いることができる。
 マグネシウム化合物の添加量は、複合粉末中のケイ素を窒化ケイ素に換算した場合に、マグネシウム化合物を酸化物換算で8.0mol%以上15.0mol%以下含有することが好ましい。マグネシウム化合物の含有量(モル濃度)は、複合化粉末に含まれるケイ素供給源、希土類元素化合物、及びマグネシウム化合物の3つの成分中のマグネシウム化合物のモル濃度を意味する。
 希土類元素化合物のみを焼結助剤として添加して窒化ケイ素焼結体を作製した場合、当該窒化ケイ素焼結体の緻密化を行なうためには10MPa程度の高窒素圧中、2000℃に及ぶ超高温での焼結が必要となり、特殊な焼結炉を要するのでプロセスコストが大きくなる。また、超高温における窒化ケイ素焼結体の焼結により、当該窒化ケイ素焼結体を構成する粒子の著しい粒成長が生じる。その結果、窒化ケイ素焼結体の機械特性の低下を招く。
 このような技術的観点から、ポスト焼結時における窒化ケイ素焼結体の緻密化を促進することにより、当該窒化ケイ素焼結体の高強度、高靭性発現を可能とするためには、希土類元素化合物の添加と同時に焼結助剤としてマグネシウム化合物を添加することが好ましい。マグネシウム化合物を添加することにより、Mgイオンが加熱時に生成する酸窒化ガラスの修飾イオンとなり、当該酸窒化ガラスの粘性を低下させ、窒化ケイ素焼結体の構造の緻密化を促進するとともに、焼結中に蒸発揮散し、残留する粒界相の量を低減することができる。
 マグネシウム化合物の添加量が8.0mol%未満の場合、焼結収縮が行われる前にマグネシウムが揮発し、緻密化した窒化ケイ素焼結体を得ることができない。また、マグネシウム化合物の添加量が15.0mol%より多い場合、焼結工程を経た後であっても多量のマグネシウムが残留し焼結体の熱伝導率を阻害する恐れがある。このため、複合化粉末中のケイ素を窒化ケイ素に換算した場合に、マグネシウム化合物を酸化物換算で8.0mol%以上15.0mol%以下含有するように添加することが好ましい。
 マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウムのケイ化物、フッ化物、ホウ化物、窒化物、更にはこれらの三元系化合物を用いることができる。特に、取り扱いの容易性、プロセス時の安定性、有害物質の発生がないことなどから、原料粉末に添加するマグネシウム化合物は、酸化マグネシウム(MgO)、ケイ化マグネシウム(MgSi)あるいは窒化ケイ素マグネシウム(MgSiN)から選択された1種類以上のマグネシウム化合物を含むことが好ましい。また、原料粉末に添加するマグネシウム化合物は、酸化マグネシウム(MgO)、ケイ化マグネシウム(MgSi)あるいは窒化ケイ素マグネシウム(MgSiN)から選択された1種類以上のマグネシウム化合物であることがより好ましい。
 以上に説明したスラリー形成工程において形成されるスラリー原料は、ケイ素供給源である複合化粉末と希土類元素化合物とマグネシウム化合物とを混合した混合粉末である。また、原料粉末に含まれる各粉末を秤量後に混合することなく、スラリー形成工程において形成される原料スラリーを形成する際に当該原料スラリーに含まれるその他の成分と共にあわせて混合、粉砕することもできる。
 スラリー形成工程において、シート体を成形する原料スラリーを調製する際に添加する分散媒や、有機系バインダー、分散剤の種類、添加量、添加方法は特に限定されるものではなく、シート体を成形する方法等に応じて任意に選択することができる。
 以下、スラリー形成工程において、複合化粉末に対して、焼結助剤、分散媒、有機系バインダーを添加して原料スラリーを形成する具体的な条件例について説明する。
 複合化粉末と焼結助剤とを秤量する。複合化粉末と焼結助剤との合計量に対して0.5~2wt%の分散剤、30~70wt%の有機溶剤等が装入されたボールミル等のミリング容器を準備する。複合化粉末と焼結助剤とを分散剤が装入されているミリング装置が装備しているミリング容器に添加する。ミリング装置としては、ジェットミル、ボールミル、遊星ミル及び、アトライタ等を例示することができる。分散剤としては、ソルビタンエステル型やポリオキシアルキレン型等を用いることができる。分散媒の有機溶剤としては、エタノールやトルエン等を用いることができる。なお、分散剤を添加せず、分散媒のみを用いても良い。ボールミルにより原料粉末の混合粉砕を行うことができる。
 混合粉砕を行う時間は、使用するミリング装置の機能、出発原料である複合化粉末及び焼結助剤の量等により異なるため特に限定されないが、複合化粉末及び焼結助剤を十分に粉砕、混合できるように時間を選択することが好ましい。混合粉砕を行う時間は、6時間以上48時間以下行うことが好ましく、12時間以上24時間以下行うことがより好ましい。
 混合粉砕を行う時間が6時間未満の場合、焼結助剤が原料スラリーに均一に混合されず、窒化処理シート体を焼結した後に当該窒化処理シートにムラが生じるため好ましくない。一方、混合粉砕を行う時間が48時間を超えて長い時間の場合には、複合化粉末及び焼結助剤の混合粉砕を行っても混合状態に大きな変化はなく、むしろボールやポットから不純物が混入する恐れがあるためである。
 なお、スラリー形成工程において、複合化粉末及び焼結助剤を混合粉砕した後、必要に応じて、原料スラリーに含まれる分散媒の除去を行うこともできる。
 また、粉砕混合の後さらに、5~30wt%以下の有機系バインダー(有機系結合剤)を添加した後、混合を行うことによって、シート体形成用スラリーを作製することもできる。有機系バインダーについても特に限定されないが、例えば、PVB系(ポリビニルブチラール樹脂)もしくはエチルセルロース系樹脂、もしくはアクリル系樹脂等を好ましく用いることができる。
 有機系バインダーを添加した後の混合時間についてもミリング装置等の混合に用いる装置の性能等により異なるため特に限定されるものではないが、例えば1時間以上24時間以下とすることが好ましく、6時間以上12時間以下とすることがより好ましい。
 混合時間が1時間未満の場合、有機系バインダーと原料粉末が均等に混合されずシート成形を行う際に、作製したシートにクラックが発生する場合があり、好ましくないためである。また通常、24時間よりも長い時間混合を行っても有機系バインダーと原料粉末との混合状態に大きな変化がないため、生産性の観点から混合時間は24時間以下とすることが好ましい。
 有機系バインダーを添加した後、混合した後、作製したスラリーの真空脱泡を行ってスラリーの粘度調整をすることによって、シート体形成用スラリーを形成することができる。このように、第2工程において形成されたシート体形成用スラリーをシート成形機によりシート形成用基板に塗工し、次工程であるシート体成形工程においてシート体の成形を行うことができる。
 ここで、作製したシート体形成用スラリーの粘度は、当該スラリーの真空脱泡前では、100~200cpsであり、当該スラリーの真空脱泡後では、6000~7000cpsとなる。その結果、真空脱泡後のシート体形成用スラリーは、シート体を形成するために適したスラリーとなる。
<第3工程:シート体を形成するシート体成形工程>
 本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、前記シート体形成用スラリーを成形してシート体を形成するシート体成形工程を含む。シート体成形工程は、所定の組成と所定の粘度を有するシート体形成用スラリーをシート状に成形してシート体を形成する工程である。シート状に形成されたシート成形体は、グリーンシート体である。
 具体的には、上述のようにボールミルや遊星ミルにより、複合化粉末と焼結助剤と分散媒とを混合した後、必要に応じて分散媒を除去し、有機系バインダーを添加した後、シート体形成用スラリーをシート状に成形してシート体を形成する。
 原料複合化粉末と焼結助剤と分散媒とバインダーとを含むシート体形成用スラリーをシート状に成形する方法は、当該シート体形成用スラリーからシート体を形成することができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば金型成形、シート成形、押し出し成形、静水圧加圧成形(CIP成形)等を用いることができる。
 シート体成形工程において形成するシート体の形状、サイズは、特に限定されるものではなく、窒化ケイ素基板とした際に要求される形状、厚さに応じて任意の形状、厚さとすることができる。例えば、シート体成形工程において形成するシート体は、その厚さを0.05~2.5mmとすることが好ましく、0.25~1.0mmとすることがより好ましい。なお、シート体成形工程において、得られたシート体に対して適宜必要に応じて、打ち抜き機等を使用することにより、形成されたシート体を所定の大きさにカットしてもよい。
 シート体成形工程において得られるシート体の相対密度は、45%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。シート体成形工程において形成されたシート体を所定の大きさにカットする場合には、カット後のシート体の相対密度が45%以上であることが好ましい。
 シート体成形工程において、形成されるシート体の相対密度は、シート体形成用スラリー形成工程において形成されたシート体形成用スラリーに含まれる原料粉末の量(固形分濃度)とスラリーに添加されるバインダーの添加量とにより調整することができる。ここで、シート体成形工程において形成されるシート体の相対密度を45%以上にすることにより、当該シート体が有する空孔を十分に少なくすることができ、後述する焼結工程後に得られる窒化ケイ素基板の焼結密度をより高くすることができるため好ましい。
 シート体成形工程において形成されるシート体の相対密度の上限値は、特に限定されない。シート体の相対密度を高くするためには、シート体形成用スラリー形成工程において使用するバインダー等の添加量を減らすことによって、シート体形成用スラリーの固形分濃度を高くする必要がある。シート体形成用スラリーの固形分濃度が高くなると、当該シート体形成用スラリーから形成されるシート体にクラック等が発生し、その取扱が困難になる。このため、シート体成形工程において得られるシート体の相対密度は、65%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
<第4工程:脱脂処理シート体を形成する脱脂工程>
 さらに、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、前記シート体を250~600℃で加熱して前記シート体に含まれる樹脂分(バインダー)を除去することにより脱脂処理シート体を形成する脱脂工程を含む。 脱脂工程では、シート成形工程で形成したシート体を空気もしくは窒素等の不活性ガスもしくはその混合ガス雰囲気中で加熱することにより、シート体に含まれる樹脂分(バインダー等)をすべて除去することが可能である。シート体に含まれる残炭素量は0.01%以下となる。
 第4工程において、シート体を加熱する温度は、シート体の平面形状、シート体の厚さ、シート体に含まれる樹脂分であるバインダー量により適宜設定することができる。
<第5工程:窒化処理シート体を形成する窒化工程>
 本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、前記脱脂処理シート体を1200~1500℃で加熱して前記脱脂処理シート体に含まれるケイ素を窒化することにより窒化処理シート体を形成する窒化工程を含む。窒化工程では、シート成形工程で形成したシート体を窒素等の不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、脱脂処理シート体を得た後、当該脱脂処理シート体に含まれる組成成分である金属ケイ素粉末をすべて窒化することができる。
 シート体成形工程において形成されるシート体は、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とから形成される複合化粉末を含んでいる。複合化粉末を構成する複合化粒子は、窒化ケイ素粒子によってコーティングされた金属ケイ素粒子を含んでいる。さらに、複合化粒子は、当該複合化粒子の中心に位置するコア粒子である金属ケイ素粒子の全面又は一部に窒化ケイ素粒子が吸着する。
 一方、複合化粉末を構成する複合化粒子は、窒化ケイ素粒子に金属ケイ素粒子が吸着した複合化粒子を含み、当該複合化粒子から金属ケイ素粒子が露出していてもよい。金属ケイ素粒子によってコーティングされた窒化ケイ素粒子を含んでいる。さらに、複合化粒子は、当該複合化粒子の中心に位置するコア粒子である窒化ケイ素粒子の全面又は一部に金属ケイ素粒子が吸着する。
 また、複合化粉末を構成する複合化粒子は、窒化ケイ素粒子に金属ケイ素粒子が吸着した複合化粒子を含み、当該複合化粒子から金属ケイ素粒子が露出していてもよい。
 窒化工程において、複合化粒子の表面に存在する金属ケイ素粒子は、窒化されることにより、窒化ケイ素粒子となる。そして、複合化粒子の表面に存在する金属ケイ素粒子は、すべて窒化ケイ素となる。また、窒化工程において、複合化粒子の表面から露出する金属ケイ素粒子は、窒化されることにより、窒化ケイ素粒子となる。そして、複合化粒子の表面から露出する金属ケイ素粒子は、すべて窒化ケイ素となる。
 最終的に、シート体成形工程において形成されたシート体に含まれる窒化ケイ素基板の原料となるケイ素源は、当初から準備した窒化ケイ素粉末と、金属ケイ素粉末が窒化反応により生成した窒化ケイ素粉末とから形成されることになる。
 また、第5工程の窒化工程を開始する前に脱脂処理シート体に含まれる組成成分であるケイ素の窒化反応を行うために使用する炉内に存在するガスを除去する必要がある。このため、一旦当該炉内を減圧にして真空引きを行い、その後に窒素ガスを炉内に供給してから、窒化工程を開始してもよい。窒素ガスを供給する前に炉内を減圧して真空引きする際の圧力は、特に限定されるものではないが、例えば、1.0Pa以下まで減圧とすることが好ましく、0.1Pa以下まで真空引きすることがより好ましい。
 窒化工程における脱脂処理シート体の加熱温度は、特に限定されないが、例えば600℃以上1500℃以下であることが好ましく、1000℃以上1480℃以下であることがより好ましい。脱脂処理シート体の窒化工程における処理時間は、1時間以上20時間以下の範囲に含まれることが好ましく、5時間以上15時間以下の範囲に含まれることがさらに好ましい。
 窒化工程における脱脂処理シート体の加熱温度が1000℃以上の場合、または窒化工程の処理時間が1時間以上の場合には、脱脂処理シート体に未反応のケイ素粉末が残存し、脱脂処理シート体の焼結工程後、緻密な構造を有する窒化ケイ素焼結体を得ることができない事態が発生しないため好ましい。
 一方、窒化工程におけるシート体の加熱温度が1480℃以下の温度で窒化反応を行う場合、または窒化工程の処理時間が15時間以下である場合には、脱脂処理シート体に含まれている組成成分である焼結助剤が揮発することにより、焼結工程において焼結助剤成分が不足する。その結果、脱脂処理シート体を焼結しても、緻密な構造を有する窒化ケイ素焼結体を得ることが難しくなる場合がないため好ましい。
 窒化工程において、脱脂処理シート体を加熱する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、脱脂処理シート体を離型用の六方晶窒化ホウ素(BN)粉や六方晶窒化ホウ素(BN)板の間に置いて積み重ね、黒鉛の断熱材と黒鉛ヒーターで構成された真空・加圧雰囲気炉にセットして実施できる。ここで、六方晶窒化ホウ素粉(h-BN)は、黒鉛と同様に燐片状結晶構造を有する白色粉末であり、熱伝導性、耐熱性、耐食性、電気絶縁性、潤滑・離型性に優れた材料である。
 脱脂処理シート体の窒化処理に使用する真空・加圧雰囲気炉は、例えば、タイトボックス式電気炉を用いることができる。このような真空・加圧雰囲気炉を使用することにより、当該炉の内部で発生したガスを当該炉の外部に排出することができる。
 さらに、真空・加圧雰囲気炉の一つであるタイトボックス式電気炉を用いることにより、例えば、シート体の成形に用いた有機系バインダーを除去する脱バインダー工程を実施する場合、脱バインダー工程、窒化工程、さらには焼結工程を1つの上記電気炉を用いて実施することができる。このように、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法に含まれる窒化工程において、真空・加圧雰囲気炉を使用することにより、窒化ケイ素基板の生産性を高めることができる。
 さらに、複合化粉末を含む脱脂処理シート体の窒化を行った場合、当該脱脂処理シート体は、寸法変化を伴うことなく、その重量が増加する。このため、窒化された脱脂処理シート体は、窒化する前の脱脂処理シート体に比べて15%程度相対密度が大きくなり、次工程である焼結工程における窒化ケイ素シート体の緻密化が容易である。
 さらに、窒化された脱脂処理シート体の相対密度が大きくなることは、次工程である焼結工程において、窒化ケイ素シート体の焼結時間の短縮化を可能とし、機械特性に悪影響を及ぼす過度の粒成長を防ぐことができる等の利点を有する。このように本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法においては反応焼結を利用するため、窒化ケイ素基板の高熱伝導化の観点から優れた特徴を有している。
<第6工程:窒化処理シート体を焼結する工程>
 本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、前記窒化処理シート体を焼結することにより形成された窒化ケイ素焼結体を窒化ケイ素基板とする焼結工程を含む。
 すなわち、最終工程である焼結工程は、窒化工程を行った後に形成された窒化処理シート体を窒素雰囲気下で焼結する工程である。そして、焼結工程において、焼結された窒化処理シート体は、最終生成物である窒化ケイ素基板となる。
 焼結工程における窒化処理シート体の加熱温度は、当該窒化処理シート体の構造を緻密にすることができる温度であれば、特に限定されるものではないが、例えば1700~1950℃で加熱することが好ましく、1750~1900℃で加熱することがより好ましい。焼結工程において、窒化処理シート体を窒素雰囲気下で焼結する時間は、1~48時間であることが好ましく、5~24時間であることがさらに好ましい。
 焼結工程における窒化処理シート体の焼結温度が1700℃未満の場合、または焼結工程の時間が1時間未満である場合、窒化処理シート体のミクロ構造を十分に緻密化できないため好ましくない。一方、焼結工程の加熱温度が1950℃より高温の場合、または焼結工程の時間が48時間を超える場合には、窒化処理シート体を構成する粒子に過度の粒成長が生じ、窒化処理シート体を焼結し後に得られる窒化ケイ素基板の強度が低下する場合があるため好ましくない。
 焼結工程は、窒素雰囲気下で加熱することにより行うことが好ましい。焼結工程において採用される窒素雰囲気の圧力は、特に限定されるものではなく、例えば焼結工程の加熱温度により窒化工程で生成した窒化ケイ素が分解しない程度の圧力下で加熱を行うことが好ましい。具体的には、窒素雰囲気の圧力を0.1MPa以上に設定することが好ましく、0.9MPa以上であることがより好ましい。ただし、窒素雰囲気の圧力が高くなり過ぎると、耐圧性の高い特殊な炉を使用する必要が生じるため、例えば窒素の雰囲気圧力は1MPa以下とすることが好ましく、0.92MPa以下とすることがより好ましい。
 焼結工程を実施することにより、相対密度が95%以上の窒化ケイ素基板を得ることができる。その結果、焼結工程後に得られた窒化ケイ素基板は変質層を含まない緻密な窒化ケイ素基板とすることができる。このため、焼結工程後に得られた窒化ケイ素基板は、未加工の状態において、レーザーフラッシュ法により測定された熱伝導率が85W/mK以上、好ましくは120W/mK以上とすることができる。
 また、焼結工程を実施した後に得られる焼結された窒化ケイ素シート体は、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法により製造される窒化ケイ素基板となる。かかる窒化ケイ素基板は、β相窒化ケイ素を主成分とし、希土類元素を含有した窒化ケイ素基板とすることができる。窒化ケイ素基板に含まれる希土類元素は、単体の状態であってもよく、他の物質と化合物を形成していてもよい。この際、窒化ケイ素基板には、酸化物に換算して1.0mol%以上4.0mol%以下の希土類元素が含まれていることが好ましい。また、焼結工程を実施した窒化ケイ素基板のマグネシウムの存在量は酸化物に換算して2.0mol%以下であることが好ましい。焼結工程を実施した窒化ケイ素基板がマグネシウムを含有する場合、マグネシウムは単体の状態であってもよく、他の物質と化合物を形成していてもよい。
 焼結された窒化ケイ素シート体である窒化ケイ素基板の厚さは、特に限定されるものではなく、任意の厚さとすることができるが、例えば、半導体素子や電子機器が備えている放熱性の絶縁基板として用いられる場合、0.05mm以上2.5mm以下とすることが好ましい。なお、焼結工程後に得られる窒化ケイ素基板の厚さは、シート成形工程において形成するシート体の厚さを調整することにより選択することができる。
 このように、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、窒化ケイ素板を構成するケイ素源として、金属ケイ素粒子によってコーティングされた窒化ケイ素粒子を含んでいる複合化粉末を用いる。このため、本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、金属ケイ素粉末に含まれる金属ケイ素粒子の窒化反応の急激な進行による発熱がなく、当該窒化反応が均一に進行する。
 すなわち、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、窒化ケイ素基板を構成するシート体に含まれるケイ素源として金属ケイ素を用い、当該金属ケイ素を窒化することにより得られた窒化ケイ素を含む窒化ケイ素基板を製造することができる。
 以上説明したように、第1実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法によれば、金属ケイ素粉末に含まれるケイ素の急激な窒化反応による発熱を防止し、ケイ素の均一な窒化反応を進行させることにより、高い放熱性と優れた機械特性を有する窒化ケイ素基板を製造することができる。つまり、第1実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法によれば、レーザーフラッシュ法により測定される熱伝導率が80W/mK以上の窒化ケイ素基板を製造することができる。さらには、第1実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法により製造された高熱伝導性窒化ケイ素基板及びその応用製品を提供することができる。
[第2実施形態]
 第2実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法について説明する。本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、上記実施形態において、前記窒化ケイ素粒子の平均粒子径DSN50に対する前記金属ケイ素粒子の平均粒子径DS50の比率である粒子径比Xが0.2~2.0であることを特徴とする。以下、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法の特徴的部分について説明する。
 本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法に含まれる第1工程である複合化粉末を形成する工程は、窒化ケイ素粒子の平均粒子径DSN50に対する金属ケイ素粒子の平均粒子径DS50の比率である粒子径比Xを0.2~2.0とすることを特徴とする。
 すなわち、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、焼結された窒化ケイ素シート体に含まれるケイ素源である複合化粉末を構成する複合化粒子につき、窒化ケイ素粒子を母材とし、金属ケイ素粒子によってコーティング又は吸着された金属ケイ素-窒化ケイ素粒子とするための条件を規定したものである。
 さらに、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、焼結された窒化ケイ素シート体に含まれるケイ素源である複合化粉末を構成する複合化粒子につき、金属ケイ素粒子を母材とし、窒化ケイ素粒子によってコーティングされた金属ケイ素-窒化ケイ素粒子とするための条件を規定したものである。つまり、金属ケイ素粒子のまわりに窒化ケイ素粒子が吸着している形であり、上記複合化粒子の構造と逆もあり得える。
 つまり、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法において、焼結された窒化ケイ素シート体に含まれるケイ素源である複合化粉末を構成する複合化粒子の構造は、複合化粉末の原料となる微粉砕処理によるメカノケミカル効果を付与する前の窒化ケイ素粒子の平均粒子径、金属ケイ素粒子の平均粒子径、微粉砕処理条件、窒化反応の条件により適宜採択することができる。
 複合化粉末は、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合して微粉砕処理によるメカノケミカル効果を付与することにより形成される。そして、微粉砕処理は、ジェットミル、ボールミル、遊星ミル及びアトライタから選ばれるいずれか1種類又はこれらの組み合わせである。
 このような技術的観点から、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、その第1工程において、金属ケイ素粉末を構成する金属ケイ素粒子の粒子径DS50と窒化ケイ素粉末を構成する窒化ケイ素の粒子径DSN50と制御することによって、母材である窒化ケイ素粒子の全面が金属ケイ素粒子によって均一にコーティング、又は窒化ケイ素粒子の全面又は一部に金属ケイ素粒子が吸着した複合化微粒子を形成するようにしたものである。
 また、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、その第1工程において、金属ケイ素粉末を構成する金属ケイ素粒子の粒子径DS50と窒化ケイ素粉末を構成する窒化ケイ素の粒子径DSN50と制御することによって、コア粒子又は母材である金属ケイ素粒子の全面が窒化ケイ素粒子によって均一にコーティング、金属ケイ素粒子の全面又は一部に窒化ケイ素粒子が吸着した複合化微粒子を形成するようにしたものである。
 本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法において、窒化ケイ素粒子の平均粒子径DSN50に対する金属ケイ素粒子の平均粒子径DS50の比率である粒子径比Xは、以下の関係式(1)により表すことができる。
 粒子径比X=
 金属ケイ素粒子の平均粒子径DS50/窒化ケイ素粒子の平均粒子径DSN50  (1)
 粒子径比Xは、複合化粉末に含まれる複合化微粒子を構成する金属ケイ素粒子の粒子径と窒化ケイ素粒子の粒子径とを勘案して設定することができる。粒子径比Xが0.2以上であれば、複合化粉末微粒子を構成するコア粒子である金属ケイ素粒子の表面に窒化ケイ素粒子を吸着することができるため好ましい。
 粒子径比Xが2.0以下であれば、窒化ケイ素粒子が複合化粉末微粒子を構成するコア粒子である金属ケイ素粒子の表面に吸着することなく、かつ、窒化ケイ素粒子同士が固着することがないため好ましい。
 なお、粒子径比Xは、複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子の粒径、窒化ケイ素粒子の粒径、微粉砕処理に採択されるジェットミル、ボールミル、遊星ミル及びアトライタから選ばれるいずれか1種類又はこれらの組み合わせである微粉砕処理方法に応じて適宜設定してもよい。
 このように、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、窒化ケイ素板を構成するケイ素源として、金属ケイ素粒子の平均粒子径DS50に対する窒化ケイ素粒子の平均粒子径DSN50の比率である粒子径比Xを設定することにより、金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子とを吸着させることができる。さらに、金属ケイ素粒子の平均粒子径DS50に対する窒化ケイ素粒子の平均粒子径DSN50の比率である粒子径比Xを設定することにより、金属ケイ素粒子によってコーティングされた窒化ケイ素粒子を含む複合化粉末を形成することができる。
 また、金属ケイ素粒子の平均粒子径DS50に対する窒化ケイ素粒子の平均粒子径DSN50の比率である粒子径比Xを設定することにより、窒化ケイ素粒子によってコーティング又は吸着された金属ケイ素粒子を含む複合化粉末を形成することができる。
 このため、本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、複合化粉末微粒子を構成するコア粒子である金属ケイ素粒子の表面に吸着した窒化ケイ素粒子から露出する金属ケイ素粒子の窒化反応の急激な進行による発熱がなく、当該窒化反応が金属ケイ素粒子の表面全体にわたって均一に進行する。
 本実施形態に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、複合化粉末微粒子を構成するコア粒子である窒化ケイ素粒子の表面に吸着した金属ケイ素粒子の窒化反応の急激な進行による発熱がなく、当該窒化反応が窒化ケイ素粒子の表面に吸着した金属ケイ素粒子の表面全体にわたって均一に進行する。
 すなわち、本実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法は、窒化ケイ素基板を構成するシート体に含まれるケイ素源として金属ケイ素を用い、金属ケイ素粒子の窒化反応により得られた窒化ケイ素を含む窒化ケイ素基板を製造することができる。
 以上説明したように、第2実施形態に係る窒化ケイ素板の製造方法によれば、金属ケイ素粉末に含まれる金属ケイ素粒子の急激な窒化反応による発熱を防止し、ケイ素の均一な窒化反応を進行させることにより、高い放熱性と優れた機械特性を有する窒化ケイ素基板を製造することができる。
[他の実施形態]
 以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステム、または装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
 以下、本発明の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<発明例1>
 本発明に係る窒化ケイ素基板の製造方法を使用し、以下のようにして窒化ケイ素基板を製造した。さらに、本発明に係る窒化ケイ素基板の製造方法を使用して得られた窒化ケイ素基板の諸特性を評価した。
 金属ケイ素粉末として、純度99.0%、平均粒径25.0μm、不純物酸素量0.40mass%の粉末を準備した。窒化ケイ素粉末として、純度99.0%、平均粒径40.0μmのβ窒化ケイ素粉末(信濃電気製錬株式会社製)を準備した。
金属ケイ素粉末の不純物酸素量は、窒素・酸素同時分析装置(堀場製作所社製 型式:EMGA-20E)を用いて測定した。
(複合体形成工程:粉末種の製造)
 金属ケイ素粉末とβ窒化ケイ素粉末とを混合して金属ケイ素-窒化ケイ素複合体を形成するために必要な装置としてジェットミル装置(株式会社栗本鐵工所 型式:KJ-25)を準備した。金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを所定の割合にて秤量して混合した後、上記ジェットミル装置を用いて金属ケイ素粉末とβ窒化ケイ素粉末とを混合して金属ケイ素-窒化ケイ素複合体を形成した。このように、発明例1において製造された複合化粉末を粉末種No.1とした。
 粉末種No.1の製造条件は、ローター回転数:12000rpm、ノズル圧:0.60MPaとし、金属ケイ素粉末とβ窒化ケイ素粉末の粉砕と金属ケイ素-窒化ケイ素からなる複合化粉末の合成を行った。金属ケイ素-窒化ケイ素からなる複合化粉末を構成する粒子の平均粒径が2.0~3.0μmとなるように複合化粉体の形成条件を調整した。
 金属ケイ素-窒化ケイ素からなる複合化粉体である粉末種No.1の形成条件を表1に示す。
(シート体形成用スラリーの製造)
 次に、発明例1において用いられる複合化粉末である粉末種No.1と、焼結助剤と、分散液とバインダーとを含むシート体形成用スラリーを製造した。発明例1において製造される窒化ケイ素基板に用いられる複合化粉末である粉末種No.1、希土類化合物、マグネシウム化合物、分散液、バインダーの量を表2に示す。
 表2に示されるように、原料複合化粉末と焼結助剤と分散媒とバインダーとを含むシート体形成用スラリーに含まれる焼結助剤としては、平均粒径0.5μmの酸化マグネシウム粉末(協和化学工業株式会社製)、あるいは平均粒径1.0μm窒化ケイ素マグネシウム粉末を使用した。また、希土類元素化合物として、平均粒径1.5μmの酸化イットリウム粉末(信越化学工業株式会社製)を使用した。
 表2において、マグネシウム化合物と、希土類元素化合物の割合のみを示しているが、残部はケイ素粉末である粉末種No.1となる。
 表2に示したモル比は、ケイ素(Si)が窒化ケイ素(Si)に完全に窒化したと仮定して、ケイ素を窒化ケイ素に換算し、マグネシウム化合物は酸化マグネシウム(MgO)に換算した時のモル比を示している。
 分散液であるエタノールを分散媒として、樹脂ポットと窒化ケイ素ボールを用いて、準備した粉末種No.1を24時間、窒化ケイ素ボールミルを用いて粉砕混合を行った。エタノールは、スラリーの濃度が50wt%となるように予め秤量し、樹脂ポットの内部に投入した。複合化粉末を粉砕混合後、有機系バインダーである樹脂バインダー(積水化学工業、商品名「エスレック」)14.3wt%を添加し、さらに24時間混合を行った。
 そして、真空脱泡機(英興株式会社製)を用いて粘度調整を行い、塗工用スラリーを作製した。粘度調整後の塗工用スラリーの粘度を300mPa・sとなるように調製した。
(シート体の成形)
 粘度調整後の塗工用スラリーとなるシート体形成用スラリーは、ドクターブレード(三庄インダストリー株式会社製)を用い、サンプルについてシート厚み0.4mmとなるようにシート成形を行った。シート体形成用スラリーをシート成形した後、成形された当該シート体を50×50×0.4mmにカットした後、シートの相対密度を評価した。
 シートの相対密度の評価は、測長により行った。その結果、得られたシートの相対密度は、60%~70%であった。
(脱脂処理シート体の製造)
 シート成形工程で製造したシート体を成形、評価した。その後、シート体の表面に窒化ホウ素粉末(以下、「BN粉末」とも記載する。)を塗布した。BN粉末を塗布した12枚の脱脂処理シート体を1セットとして積層した後、窒化ホウ素製ケース(以下、「BN坩堝」とも記載する。)中にセットした。その後、BN粉末を塗布した12枚の脱脂処理シート体がセットされたBN坩堝をBOX炉(モトヤマ株式会社製 型式:DC-6060)にセットし、大気雰囲気中600℃で60時間加熱し、脱バインダー工程を行った。すなわち、シート体形成用スラリーから形成されたシート体に含まれる樹脂成分であるバインダーを脱脂することにより脱脂処理シート体を得た。
(窒化シート体の製造)
 脱脂処理シート体がセットされたBN坩堝を、真空・加圧雰囲気炉(島津産機システム株式会社製 型式:PVLgr10 VESTA)にセットし、炉内を一旦10-1Paまで減圧してから炉内に窒素を導入して0.1MPaの窒素雰囲気中、1480℃で8時間、窒化処理を行った。窒素ガスとしては99.9vol%の窒素ガスを用いた。
 このようにして得られた窒化処理後の脱脂処理シート体を製造例1の窒化シート体とした。発明例1において、窒化シート体を得るために採用する昇温速度を0.2℃/minに設定した。
(窒化シート体の焼結)
 次に、ポスト焼結として、製造例1のサンプルについて窒化工程で窒化処理を施した窒化シート体を所定の条件に従って焼成した。焼成した製造例1の窒化シート体を発明例1の窒化ケイ素基板とした。発明例1で得られた窒化ケイ素基板にについて、X線回折測定(株式会社リガク製 型式:Mini Flex 600)を行った。X線回折測定結果を表3に示す。表3に示されるように、窒化ケイ素基板には残留Siは認められなかったことが判明した。
 なお、窒化シート体の焼結は、窒化工程と同じ真空・加圧雰囲気炉を用い、同様にして積層した窒化シート体をBN坩堝中にセットし、さらにBN坩堝を真空・加熱雰囲気炉にセットして実施した。
<窒化ケイ素基板の諸特性の測定及びその評価>
 窒化シート体を焼結した後、BN坩堝から焼結した窒化ケイ素シート体を取り出し、表面に付着しているBN粉末等をサンドブラスト装置(不二製作所製)で除去した後、最終製品として、窒化ケイ素基板とした。
 このようにして製造された窒化ケイ素基板の組織観察を実施し、その評価を行った。さらに、窒化ケイ素基板の諸特性の測定を行った。具体的には、窒化ケイ素基板の組織観察を行い、窒化ケイ素基板の相対密度、熱伝導率、機械特性(3点曲げ強度、破壊靭性)を測定した。窒化ケイ素基板の諸特性の測定結果及びその評価を表3に示す。
(組織観察)
 発明例1において製造された窒化ケイ素基板の組織観察を行った。窒化ケイ素基板の組織観察は、窒化ケイ素基板の断面研磨を行い走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製 型式:JSM-IT210)を用いて観察を行った。表3に発明例1において製造された窒化ケイ素基板の断面のSEMの観察結果を示す。なお、組織観察の評価は、以下の通りとした。
 〇:組織観察可能であった焼結体
 -:溶融したため低密度になり組織観察を行わなかった焼結体
 図2に発明例1において製造された窒化ケイ素基板の断面のSEM写真を示す。図2は、窒化ケイ素板の製造方法に用いられる複合化粉末を構成する微粒子のSEM画像である。図2Aは、複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子が粉砕される前のSEM画像であり、図2Bは、複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子が粉砕された後のSEM画像である。
 図2から明らかなように、微粉砕処理によるメカノケミカル効果により得られた複合化粉末は、複合化粉末の合成前(メカノケミカル効果前)と比較し、複合化粉末を構成する複合化粒子の粒径が小さくなっていることを確認できる。
 次に、発明例1において製造された窒化ケイ素基板の断面のSEMの観察した後、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いて、当該窒化ケイ素基板に含有されている元素を特定した。図3~4に、発明例1においてEDSを用いて検出された元素ピーク情報に基づき元素分布を色分けすることにより得られた二次元画像を示す。図3は、複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子が粉砕された後のEDS画像である。図4は、複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子が粉砕された後のEDS画像の拡大画像である。
 図3~4から明らかなように複合化粉末を構成する複合化粒子の表面の一部に窒素が分布していることが判明した。このことから、金属ケイ素粒子の表面に窒化ケイ素粒子が結合し複合化していることが確認できる。
 さらに、図5に発明例1において用いた複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子として、金属ケイ素粒子の表面に焼結助剤(マグネシウム化合物)からなる微粒子を分散した複合ケイ素粒子を製造し、当該複合ケイ素粒子のSEM画像を示した。図6に複合化粉末を構成する金属ケイ素粒子の表面に焼結助剤からなる微粒子を分散した複合ケイ素粒子のEDS画像を示した。
 図5~6から明らかなように、金属ケイ素粒子の表面に焼結助剤からなる微粒子が均一に分散していることが判明した。
 このような金属ケイ素粒子を複合化粉末の成分として採用することにより、シート体形成用スラリーの製造に用いられる焼結助剤の添加と相俟って、シート体に含まれる窒化ケイ素粒子の焼結性をより向上させることができる。
(相対密度の測定)
 発明例1において製造された窒化ケイ素基板の相対密度の測定を行った。窒化ケイ素基板の相対密度の測定は、X線回折により相同定を行い、アルキメデス法に従い実施した。表3に発明例1において製造された窒化ケイ素基板の相対密度の測定結果を示す。
(熱伝導率の測定)
 発明例1において製造された窒化ケイ素基板の熱伝導率の測定を行った。窒化ケイ素基板の熱伝導率の測定は、具体的に以下のようにして行った。製造された窒化ケイ素基板を10mm角にカットし、表面にAuコーティング(サンユー電子株式会社 型式:SC-701AT)を行い、キセノンフラッシュ法(NETZSCH Japan株式会社株式会社製 型式:LFA467)により熱伝導率の測定を行った。表3に発明例1において製造された窒化ケイ素基板の熱伝導率の測定結果を示す。
(機械特性の測定)
 発明例1において製造された窒化ケイ素基板の機械特性の測定を行った。窒化ケイ素基板の機械特性として3点曲げ強度と破壊靭性を採択した。窒化ケイ素基板の機会特性の測定は、具体的に以下のようにして行った。具体的には、製造された窒化ケイ素基板の3点曲げ強度(ISO 23242:2020)と、破壊靭性(ISO 21113:2018)とをISOに準拠し測定を行い評価した。表3に発明例1において製造された窒化ケイ素基板の機械特性の測定結果を示す。
 まず、図2から明らかなように、窒化ケイ素基板の断面研磨を行い走査型電子顕微鏡(SEM)写真に基づいて、X線回折による窒化ケイ素基板の相同定を行ったところ、発明例1において使用した金属ケイ素粉末から窒化ケイ素が得られていることを確認できた。SEM観察結果においても空隙が少なくバイモーダル構造となっていることが確認できた。
 さらに、発明例1において製造した窒化ケイ素基板の断面のSEM観察を行ったところ、変質層が存在しないことを確認することができた。
 表3に示した窒化ケイ素基板の測定結果から明らかなように、発明例1で作製した窒化ケイ素基板は、相対密度が99%以上の緻密体であり、熱伝導率が約80W/mKとなっていることが確認できた。
<発明例2~24、比較例1~16>
 窒化ケイ素焼結体の原料(粉末種、マグネシウム化合物)、原料組成、粉末種である複合体の形成条件、脱脂処理シート体の窒化時の昇温速度、焼結条件を変更した以外は、発明例1と同様にして、発明例2~24、比較例1~16の窒化ケイ素基板を製造した。
 具体的には、発明例2~24において製造された窒化ケイ素基板を構成する粉末種として、その製造条件を変更した粉末種No.2~10を採用した。シート体成形スラリーに含まれるマグネシウム化合物として、窒化ケイ素マグネシウム粉末を用いた。発明例2~24において、脱脂処理シート体を窒化処理する際に採用した昇温速度は、0.2~1.0℃/minとした。
 表1~5に発明例2~24、比較例1~16において製造された窒化ケイ素基板の原料、複合体形成条件、シート形成条件、窒化処理条件、焼結条件を示す。
 発明例17で作製した窒化ケイ素基板は、相対密度が99%以上の緻密体であり、熱伝導率が121W/mKとなっていることが確認できた。
 表1~5からも明らかなように、窒化ケイ素焼結体を構成する複合化粉末に含まれる金属ケイ素粉末の添加割合を増加させると(表1、粉末種No.9、比較例9~12)ケイ素の急激な窒化反応による発熱を抑えることができない。このため、窒化ケイ素焼結体の製造工程に含まれる焼結工程において、窒化シート体を焼結する際の窒化シート体に対する焼結温度の昇温速度を大きくすることができない。その結果、焼結工程により得られた窒化ケイ素焼結体は、発熱により溶融する。
 一方、窒化ケイ素焼結体を構成する複合化粉末に含まれる窒化ケイ素粉末の添加割合を増加させると(表1、粉末種No.10、比較例13~16)金属ケイ素粉末の添加割合が小さいため、ケイ素の急激な窒化反応による発熱を抑えることができる。このため、窒化ケイ素焼結体の製造工程に含まれる焼結工程において、窒化シート体を焼結する際の窒化シート体に対する焼結温度の昇温速度を大きくすることができる。その結果、焼結工程により得られた窒化ケイ素焼結体は、当該窒化ケイ素焼結体の内部に酸素を多く含有することになり、その熱伝導率が低下する。
<発明例25~48、比較例17~24>
 窒化ケイ素焼結体の原料(粉末種、マグネシウム化合物)、原料組成、粉末種である複合体の形成条件、脱脂処理シート体の窒化時の昇温速度、焼結条件を変更した以外は、発明例1と同様にして、発明例25~48、比較例17~24の窒化ケイ素基板を製造した。
 具体的には、発明例25~48において製造された窒化ケイ素基板を構成する粉末種として、その製造条件を変更した粉末種No.11~18を採用した。シート体成形スラリーに含まれるマグネシウム化合物として、酸化マグネシウム粉末を用いた。
 発明例25~48において、脱脂処理シート体を窒化処理する際に採用した昇温速度は、0.2~1.0℃/minとした。表1、表7~8に発明例25~48、比較例17~24において製造された窒化ケイ素基板の原料、複合体形成条件、シート形成条件、窒化処理条件、焼結条件を示す。
 これらの実験データより、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末との混合粉末を微粉砕処理して形成される金属ケイ素-窒化ケイ素からなる複合化粉末を用いることによって製造された窒化ケイ素基板は、熱伝導率がほぼ80W/mK以上、最も高い熱伝導率が120W/mK以上である。
 その結果、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末との混合粉末を微粉砕処理して形成される金属ケイ素-窒化ケイ素からなる複合化粉末を用いることによって製造された窒化ケイ素基板は、高い放熱性を有することが判明した。
 さらに、このような金属ケイ素-窒化ケイ素からなる複合化粉末を用いることによって製造された窒化ケイ素基板は、機械的特性を示す3点曲げ強度及び破壊靭性の測定評価結果が良好であることから、優れた機械特性を有することが判明した。
 このように、本発明に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末との混合粉末からなる金属ケイ素-窒化ケイ素からなる複合化粉末を用いる。このため、金属ケイ素粒子に吸着する窒化ケイ素粒子は、複合化粉末中で凝集することなく、均一に存在することにより、複合化粒子から露出する金属ケイ素粒子が急激な窒化反応をすることがない。さらに、窒化ケイ素粒子をコーティングする金属ケイ素粒子は、均一に窒化反応をする。
 すなわち、複合化粉末は、コア粒子として金属ケイ素粒子を含み、当該金属ケイ素粒子の表面をコーティングする窒化ケイ素粒子から露出する金属ケイ素粒子は、窒化反応により窒化ケイ素粒子となる。その結果、窒化反応が完了後、複合化粉末は、窒化ケイ素粒子のみから構成されるケイ素源である粉末となる。
 つまり、本発明に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、焼結した窒化ケイ素シート体のケイ素源として、金属ケイ素粉末を多量に使用することができるため窒化ケイ素基板の製造コストを低減することができる。このように、本発明に係る窒化ケイ素基板の製造方法は、その製造コストと、製造された窒化ケイ素基板の熱伝導及び機械特性との共生の2つの観点からこれらの要求を満足することができることができることが明らかとなった。
 本発明に係る発明によれば、ケイ素の急激な窒化反応等を防止することによって高い放熱性と優れた機械特性を有する窒化ケイ素基板を製造することができるので、半導体関連産業の発達に寄与し、産業上きわめて有用である。

Claims (9)

  1.  金属ケイ素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合して微粉砕処理することにより複合化粉末を形成する第1工程と、
     前記複合化粉末に焼結助剤と分散媒とを混合することにより前記複合化粉末に前記焼結助剤が分散されたシート体形成用スラリーを形成する第2工程と、
     前記シート形成用スラリーを成形してシート体を形成する第3工程と、
     前記シート体を250~600℃で加熱して前記シート体に含まれる樹脂成分を脱脂して脱脂処理シート体を形成する第4工程と、
     前記脱脂処理シート体を1200~1500℃で加熱して前記脱脂処理シート体に含まれるケイ素を窒化することにより窒化処理シート体を形成する第5工程と、
     前記窒化処理シート体を焼結することにより形成された窒化ケイ素焼結体を窒化ケイ素基板とする第6工程と、を含み、
     前記複合化粉末は、金属ケイ素粒子と窒化ケイ素粒子とが吸着して形成されていることを特徴とする窒化ケイ素基板の製造方法。
  2.  前記微粉砕処理がジェットミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、アトライタ及びメカノケミカルから選ばれるいずれか1種類又はこれらの組み合わせにより行われることを特徴とする請求項1に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
  3.  前記窒化ケイ素粒子の平均粒子径DSN50に対する前記金属ケイ素粒子の平均粒子径DS50の比率である粒子径比Xが0.2~2.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
  4.  前記第1工程において、前記金属ケイ素粉末と前記窒化ケイ素粉末とを窒化ケイ素換算におけるモル比で70:30~95:5の割合で含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
  5.  前記金属ケイ素粒子は、当該金属ケイ素粒子の表面に前記焼結助剤からなる微粒子が均一に分散していることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
  6.  前記焼結助剤がマグネシウム化合物であって、前記マグネシウム化合物が酸化マグネシウム、ケイ化マグネシウム、及び窒化ケイ素マグネシウムから選択された1種類以上のマグネシウム化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
  7.  前記焼結助剤が前記希土類元素化合物であって、前記希土類元素化合物がY、Sc、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Er及びYbから選ばれる1種類以上の元素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
  8.  前記シート体の相対密度が45%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
  9.  前記窒化ケイ素基板の熱伝導率がキセノンフラッシュ法による測定値において、80W/mK以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。

     
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