WO2026004978A1 - 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤 - Google Patents
神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤Info
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Abstract
本発明は、新規な神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤を提供する。式(I) (式中、環Aは、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子、及び酸素原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環であり;R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基、C1-6アルキル-カルボニル基、ホルミル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;R1及びR2は、互いに結合して、置換されていてもよい5又は6員環を形成してもよく;nは0、1、又は2である)で示される複素環化合物又はその塩を有効成分として含有する、神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤。
Description
本発明は、神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤に関する。
1 神経変性疾患の根本的治療薬の必要性
神経変性疾患は、中枢神経系の神経細胞が徐々に機能を失い、最終的には死滅する疾患群を指す。このような疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などがある(非特許文献1)。これらの疾患は、記憶喪失、運動機能障害、認知機能低下など、深刻な症状を引き起こし、患者の生活の質を大きく損なう。神経変性疾患は近年高齢者人口が増加していることもあり、世界的に増加の一途を辿っている(非特許文献2)。しかし、現在のところ、神経変性疾患の治療は対症療法が主流であり、根本的な治療法は確立されていない。例えば、アルツハイマー病に対しては、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬が使用されているが、これらの薬剤は症状の進行を遅らせるに過ぎず、神経細胞の死滅を防ぐことはできないとされる(非特許文献3、4)。また、パーキンソン病の治療には、レボドパなどのドーパミン補充療法が用いられるが、これもまた症状の緩和を目的としたものであり、病気の進行そのものを止めることはできないと考えられている(非特許文献5)。その他の神経変性疾患に対しても、同様の対症療法が行われているが、根本的な治療には至っていない。
神経変性疾患は、中枢神経系の神経細胞が徐々に機能を失い、最終的には死滅する疾患群を指す。このような疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などがある(非特許文献1)。これらの疾患は、記憶喪失、運動機能障害、認知機能低下など、深刻な症状を引き起こし、患者の生活の質を大きく損なう。神経変性疾患は近年高齢者人口が増加していることもあり、世界的に増加の一途を辿っている(非特許文献2)。しかし、現在のところ、神経変性疾患の治療は対症療法が主流であり、根本的な治療法は確立されていない。例えば、アルツハイマー病に対しては、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬が使用されているが、これらの薬剤は症状の進行を遅らせるに過ぎず、神経細胞の死滅を防ぐことはできないとされる(非特許文献3、4)。また、パーキンソン病の治療には、レボドパなどのドーパミン補充療法が用いられるが、これもまた症状の緩和を目的としたものであり、病気の進行そのものを止めることはできないと考えられている(非特許文献5)。その他の神経変性疾患に対しても、同様の対症療法が行われているが、根本的な治療には至っていない。
2 既に生成したアミロイドの除去では治療効果が限定的
異常なタンパク質の凝集体であるアミロイドの脳内への蓄積は、これらの神経変性疾患の特徴的な病理学的所見の一つである。それぞれの疾患ごとに蓄積するアミロイドの種類は異なり、アルツハイマー病ではアミロイドβ及びタウ、パーキンソン病ではα-シヌクレイン、ハンチントン病ではハンチンチンに由来するアミロイドが脳内に蓄積する(非特許文献6)。近年の研究で、これらのアミロイドが脳内に蓄積するメカニズムの解明が進み、脳内のアミロイドを除去したり蓄積を阻止したりする薬剤の開発が可能となった。このような薬剤の例として、2021年にFDAに承認されたアミロイドβの抗体であるAducanumabがある。アルツハイマー病では、脳内のアミロイド斑の蓄積が原因となり神経細胞の破壊が起こり、その結果、認知機能が低下するというアミロイドカスケード仮説が長らく受け入れられてきた。この仮説が正しいとすると、もし、脳内のアミロイドを除去する薬剤が開発できれば、既に破壊された神経細胞の再生は困難にしても、さらなる神経細胞の破壊による認知機能低下の進行を抑制する根本的な進行抑制薬になると期待される。しかし、臨床試験の結果は、この期待に充分に応えるものではなかった。Aducanumabの投与により脳内のアミロイド斑の大幅な減少が確認されたものの、認知機能を改善したり認知機能の低下を抑制したりする効果は限定的にすぎなかったからである。このことは、アミロイドβなどの単一種類のアミロイドの蓄積を抑制するだけでは認知機能の改善が困難であることを示唆する(非特許文献7、8、9)。さらに、アミロイドβは健常な人の脳にも存在し、神経細胞の保護、シナプス機能の制御、認知機能を含むさまざまな正常な生理機能を担うことが示されている。従って、アミロイドβの除去は神経細胞の保護や脳機能の維持に悪影響を与える可能性がある。アミロイドβを除去する認知症治療薬の効果が限定的であったのと同様に、その他の神経変性疾患に関連するアミロイドに関しても、既に生成したアミロイドの除去を目指した薬剤の投与では治療効果が限定的となることが懸念される。
異常なタンパク質の凝集体であるアミロイドの脳内への蓄積は、これらの神経変性疾患の特徴的な病理学的所見の一つである。それぞれの疾患ごとに蓄積するアミロイドの種類は異なり、アルツハイマー病ではアミロイドβ及びタウ、パーキンソン病ではα-シヌクレイン、ハンチントン病ではハンチンチンに由来するアミロイドが脳内に蓄積する(非特許文献6)。近年の研究で、これらのアミロイドが脳内に蓄積するメカニズムの解明が進み、脳内のアミロイドを除去したり蓄積を阻止したりする薬剤の開発が可能となった。このような薬剤の例として、2021年にFDAに承認されたアミロイドβの抗体であるAducanumabがある。アルツハイマー病では、脳内のアミロイド斑の蓄積が原因となり神経細胞の破壊が起こり、その結果、認知機能が低下するというアミロイドカスケード仮説が長らく受け入れられてきた。この仮説が正しいとすると、もし、脳内のアミロイドを除去する薬剤が開発できれば、既に破壊された神経細胞の再生は困難にしても、さらなる神経細胞の破壊による認知機能低下の進行を抑制する根本的な進行抑制薬になると期待される。しかし、臨床試験の結果は、この期待に充分に応えるものではなかった。Aducanumabの投与により脳内のアミロイド斑の大幅な減少が確認されたものの、認知機能を改善したり認知機能の低下を抑制したりする効果は限定的にすぎなかったからである。このことは、アミロイドβなどの単一種類のアミロイドの蓄積を抑制するだけでは認知機能の改善が困難であることを示唆する(非特許文献7、8、9)。さらに、アミロイドβは健常な人の脳にも存在し、神経細胞の保護、シナプス機能の制御、認知機能を含むさまざまな正常な生理機能を担うことが示されている。従って、アミロイドβの除去は神経細胞の保護や脳機能の維持に悪影響を与える可能性がある。アミロイドβを除去する認知症治療薬の効果が限定的であったのと同様に、その他の神経変性疾患に関連するアミロイドに関しても、既に生成したアミロイドの除去を目指した薬剤の投与では治療効果が限定的となることが懸念される。
3 脳内のATP増加により認知機能の改善やアミロイド沈着抑制が期待できる
脳にある神経細胞やグリア細胞に限らず、一般に、細胞のATP合成はミトコンドリア機能に依存する。ミトコンドリア機能が不全の状態では活性酸素の発生が亢進し、細胞機能障害や、炎症の増悪が起こる。この結果、細胞やミトコンドリアの機能障害がさらに進みATPの産生が低下進行する。神経変性疾患においてはミトコンドリアの異常が多く観察され、ミトコンドリア異常に伴うATPの低下が神経変性疾患の原因になる可能性が指摘されている(非特許文献10)。
脳にある神経細胞やグリア細胞に限らず、一般に、細胞のATP合成はミトコンドリア機能に依存する。ミトコンドリア機能が不全の状態では活性酸素の発生が亢進し、細胞機能障害や、炎症の増悪が起こる。この結果、細胞やミトコンドリアの機能障害がさらに進みATPの産生が低下進行する。神経変性疾患においてはミトコンドリアの異常が多く観察され、ミトコンドリア異常に伴うATPの低下が神経変性疾患の原因になる可能性が指摘されている(非特許文献10)。
正常な認知機能や運動制御機能の維持には神経ネットワークの情報伝達の維持が必須であり、これには多量のエネルギーが必要となる。細胞のエネルギー源はATPである。神経変性疾患の患者の脳では炎症やミトコンドリア障害などにより、脳内のATPが不足した状態となり、正常な認知機能や運動制御機能を維持することが困難となる。
また、ATPはアミロイドの生成を防ぐためにも必要である。アミロイドの原因となるタンパク質やペプチドはもともと脳に存在する内在性の生体分子であり、正常な状態では脳の機能を阻害しない。しかし、これらが異常な形態で折りたたまれると凝集が促進され繊維状のアミロイドとなり脳に沈着する。タンパク質の正しい構造への折りたたみや、異常な折りたたみの修復には、シャペロンタンパク質が重要で、その機能にはATPが必要となる。また、ATPはより直接的に疎水性分子を溶解させ凝集を防ぐ生体ハイドロトロープとしても機能することが知られる(非特許文献11)。アルツハイマー病との関連では、ATPがアミロイドβに結合し異常な折りたたみを防止することや、脳脊髄液のATP量はアルツハイマー病が進行した患者では低下することが報告されている(非特許文献12)。
これらの知見から、脳でミトコンドリア機能を保護や強化し、細胞内のATPを増加させる薬剤は、正常な神経ネットワークでの情報処理機能を維持するとともに、アミロイド蓄積を防止し、また、活性酸素の発生、炎症などによる神経細胞の障害を防止する効果が期待できる。これまでに、いくつかの薬剤が神経細胞のATPを増加させることが報告されている(非特許文献13、14)。その増加割合は約10%程度である。より効果的に脳内のATPを増加させる薬剤が開発できれば、より望ましい治療効果が得られる可能性がある。
4 アセチルコリンは認知機能改善のみならず神経保護機能を持つことを発見
脳内のアセチルコリンは記憶、学習、注意、意識などの広範な認知機能や、睡眠、覚醒の制御などに関与する。認知症やせん妄では認知機能の低下が起こる。これらの疾患では脳のアセチルコリンが低下することで認知能力に異常が生じると考えられている(非特許文献15、16)。実際に、脳のアセチルコリンを増加させる薬剤の投与は認知症やせん妄患者の認知機能を改善する(非特許文献17、18)。これまで、アセチルコリンを増加させる薬剤は認知症患者の認知機能を一時的には改善できるが、進行する神経細胞の破壊を防止する作用は持たないので、認知症の進行を抑える根本的な治療薬には該当しないと考えられてきた(非特許文献19)。
脳内のアセチルコリンは記憶、学習、注意、意識などの広範な認知機能や、睡眠、覚醒の制御などに関与する。認知症やせん妄では認知機能の低下が起こる。これらの疾患では脳のアセチルコリンが低下することで認知能力に異常が生じると考えられている(非特許文献15、16)。実際に、脳のアセチルコリンを増加させる薬剤の投与は認知症やせん妄患者の認知機能を改善する(非特許文献17、18)。これまで、アセチルコリンを増加させる薬剤は認知症患者の認知機能を一時的には改善できるが、進行する神経細胞の破壊を防止する作用は持たないので、認知症の進行を抑える根本的な治療薬には該当しないと考えられてきた(非特許文献19)。
しかし、本発明者らは低酸素環境で神経細胞のATP産生に負荷がかかった状態では、脳のアセチルコリンシグナルの低下が発生し、この結果、ムスカリン型アセチルコリン受容体を介して電位依存性カルシウムチャネルによる致死的なカルシウム流入が誘導されるという、アセチルコリン低下誘導型神経細胞死という新たな現象を発見した。この発見により、脳内のアセチルコリンの増加はこれまで想定されていた認知機能の改善のみならず、神経細胞の破壊を防止する作用も持つことが初めて明らかになった。
神経変性疾患の進行を遅らせ、あるいは停止させる新しい治療薬の開発は、極めて重要かつ緊急の課題である。しかし、現在のところ充分な薬効を果たす治療薬は存在しない。本発明は、このような背景のもと、神経変性疾患の治療に有用な新規薬剤を提供することを目的とする。
また本発明は、医薬品、詳細には、せん妄又は認知症における認知機能や情動状態の異常の予防又は治療に使用される薬剤に関する。
認知症は記憶、学習、判断、言語、行動などの認知機能を正常に行う脳機能が破綻するとともに、感情の基盤となる怒り、悲しみ、食欲などの情動状態を制御する脳機能にも異常が生ずる疾患である。認知症にはいくつかの種類がある。脳内にアミロイドが蓄積すると共に神経細胞の広範な欠落が認められるアルツハイマー病が最も多く、脳の特定領域が血流障害により障害される血管性認知症などがある(非特許文献20、21)。アルツハイマー型認知症などの広範な神経欠損が進行する疾患は、一般的には年単位の時間をかけて徐々に進行する。
認知機能の異常が問題となる疾患は認知症以外にせん妄がある。せん妄は外科手術やICUへの入院などの過度のストレスを含む脳機能を阻害するさまざまな要因により認知機能や情動状態に異常が生じる疾患である。せん妄はアルツハイマー型認知症とは異なり短時間で発症する(非特許文献22、23)。両者の疾患は発生する原因や進行するスピードに相違点があるが、認知機能の低下や情動状態の変化を引き起こす点で共通性がある。従って、認知症とせん妄には共通した発症原因があると考えられる。その候補を以下に示し、それに基づく治療薬の可能性を示す。
低酸素や炎症により神経機能が阻害されることで、認知機能の低下が起こり、認知症やせん妄の増悪に繋がると考えられている。神経細胞は神経発火や内分泌などのエネルギーを必要とする情報伝達機能を維持するため、多くの酸素を利用してATPを合成する必要がある。低酸素状態などでATP産生量が低下した状態では正常な神経機能が妨げられる。さらに、重度の低酸素状態や持続する低酸素状態では神経細胞の破壊が進行し、認知機能が低下する可能性が高まる。これを反映し、低酸素状態にある患者がせん妄を発症しやすいことが報告されている(非特許文献24、25)。また、脳の炎症が認知症やせん妄の増悪を招く原因であることも示されている(非特許文献26-30)。低酸素や炎症による認知機能の低下を予防や治療するためには、脳の低酸素障害を緩和する薬剤や炎症を緩和する薬剤が有効である。
脳ではさまざまな種類の神経伝達物質が機能し、これらのバランスが正常に維持されることが正常な認知機能の維持には必要である。認知症の症状には脳内でのアセチルコリンの低下が重要であると考えられている。また、せん妄の状態では、脳内のアセチルコリンが低下し、逆に、ドーパミンやノルアドレナリンが過剰となっている(非特許文献31)。アセチルコリンは記憶・学習、注意・意識、睡眠・覚醒のコントロールに関与することが知られるので、その低下が認知機能異常を引き起こすことは理にかなっている。このことなどから、認知症とせん妄の双方に、アセチルコリン異常仮説が提唱されている(非特許文献16、32)。従って、脳内で利用可能なアセチルコリンを増加させる薬剤は認知症やせん妄の患者の認知機能を改善すると考えられる。
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神経変性疾患では脳内のATP枯渇による、神経細胞の破壊が進行するとともに、認知や運動機能を支える神経ネットワークの機能の低下が起こる。また、脳内のアセチルコリンなどの神経伝達物質の枯渇による認知機能の低下が起こる。従って、神経変性疾患の根本的な治療薬には、脳内のATPを増加させる薬理作用が重要であり、さらには、ATPと同時にアセチルコリンを増加させる薬理作用を持つことが望ましい。しかし、これまでのところATPとアセチルコリンは異なる経路で合成されると考えられており、また、両者の合成の制御するメカニズムに関する共通性も明らかになっていない。また、これまでに脳のATPを増加させる薬剤は知られるが、その効果は低い。従って、神経変性疾患の根本的な治療を目指して、脳のATPを効率的に増加させたり、ATPと同時にアセチルコリンを同時に増加させたりするためには新たな技術の開発が必要である。
認知症やせん妄の患者で認知機能に異常が生じる主要な原因としてアセチルコリン低下があり、これを引き起こす原因として、低酸素障害や炎症障害による脳機能の損傷があげられる。これらの脳で発生する異常が複合的に発生することで症状が増悪すると考えられている。従って、効果的な認知症又はせん妄の治療薬は脳内のアセチルコリンを増加しつつ、低酸素障害や炎症障害を抑制する薬理活性を持つことが望ましい。そのような活性を持つ薬剤はこれまで知られていなかったが、本発明により解決される。
本発明は、脳内のATPを増加させたり、ATPとアセチルコリンを同時に増加させたりすることで、神経変性疾患の根本的な治療薬となる、感覚神経などを刺激するチアゾリン類匂い分子に関する。本発明者らは、これまでに2-メチル-2-チアゾリン、チオモルホリンのようなチアゾリン類匂い分子が、感覚神経などに発現するTRPA1やその他の感覚受容体を介して、低酸素抵抗性と抗炎症作用を誘導することを解明した(特許文献1)。これらチアゾリン類匂い分子は、感覚神経などに発現するTRPA1やその他の感覚受容体を介して、脳幹の腕傍核の特定の神経細胞へ感覚情報を伝達し、その結果、脳が持つ統合的な生体反応制御メカニズムを駆動するという新たなメカニズムでこれまでの技術では困難であった、脳内のATPを効率的に増加させたり、ATPとアセチルコリンを同時に増加させたりする作用を持つことが判明している。これまでアセチルコリンを増加させることがATPを増加するとは考えられていなかった。しかし、本発明者らは、神経細胞におけるアセチルコリンの増加は、通常の状況や低酸素などの負荷がかかった状況においてATPを増加させるという新たな原理を発見した。従って、本発明によるチアゾリン類匂い分子は、神経変性疾患における認知機能や運動機能の低下と神経細胞の破壊を防止する根本的な治療薬となり得る。
また本発明は、脳のアセチルコリンを増加させつつ、低酸素障害と炎症を抑制できる薬剤である、感覚神経などを刺激するチアゾリン類匂い分子に関する。本発明者らは、これまでに2-メチル-2-チアゾリン、チオモルホリンのようなチアゾリン類匂い分子が、感覚神経などに発現するTRPA1やその他の感覚受容体を介して、低酸素抵抗性と抗炎症作用を誘導することを解明した(特許文献1)。これらチアゾリン類匂い分子は、感覚神経などに発現するTRPA1やその他の感覚受容体を介して、脳へ感覚情報を伝達するメカニズムで、脳の代謝変動を誘導しアセチルコリンとその原材料となるコリンを増加させると共に、脳の低酸素抵抗性と抗炎症作用を同時に誘導することが判明している。従って、本発明によるチアゾリン類匂い分子は、認知症やせん妄で異常が生じた認知機能を改善することが期待できる。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1] 式(I)
[1] 式(I)
(式中、
環Aは、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子、及び酸素原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環であり;
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基、C1-6アルキル-カルボニル基、ホルミル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;
R1及びR2は、互いに結合して、置換されていてもよい5又は6員環を形成してもよく;
nは0、1、又は2である)
で示される複素環化合物又はその塩を有効成分として含有する、神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤。
[2] 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、[1]に記載の剤。
[3] 鼻腔投与用の[1]又は[2]に記載の剤。
[4] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤を製造するための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩の使用。
[5] 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、[4]に記載の使用。
[6] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤が鼻腔投与用である、[4]又は[5]に記載の使用。
[7] 有効量の、式(I)で示される複素環化合物又はその塩を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療方法。
[8] 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、[7]に記載の方法。
[9] 前記複素環化合物又はその塩が鼻腔投与される、[7]又は[8]に記載の方法。
[10] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療に使用するための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩。
[11] 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、[10]に記載の使用のための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩。
[12] 鼻腔投与用である、[10]又は[11]に記載の使用のための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩。
[13] 神経変性疾患の予防又は治療剤である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の剤。
[14] 認知症又はせん妄の予防又は治療剤である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の剤。
[15] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤が神経変性疾患の予防又は治療剤である、[4]~[6]のいずれか1つに記載の使用。
[16] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤が認知症又はせん妄の予防又は治療剤である、[4]~[6]のいずれか1つに記載の使用。
[17] 神経変性疾患の予防又は治療方法である、[7]~[9]のいずれか1つに記載の方法。
[18] 認知症又はせん妄の予防又は治療方法である、[7]~[9]のいずれか1つに記載の方法。
[19] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療が神経変性疾患の予防又は治療である、[10]~[12]のいずれか1つに記載の使用のための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩。
[20] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療が認知症又はせん妄の予防又は治療である、[10]~[12]のいずれか1つに記載の使用のための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩。
環Aは、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子、及び酸素原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環であり;
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基、C1-6アルキル-カルボニル基、ホルミル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;
R1及びR2は、互いに結合して、置換されていてもよい5又は6員環を形成してもよく;
nは0、1、又は2である)
で示される複素環化合物又はその塩を有効成分として含有する、神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤。
[2] 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、[1]に記載の剤。
[3] 鼻腔投与用の[1]又は[2]に記載の剤。
[4] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤を製造するための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩の使用。
[5] 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、[4]に記載の使用。
[6] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤が鼻腔投与用である、[4]又は[5]に記載の使用。
[7] 有効量の、式(I)で示される複素環化合物又はその塩を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療方法。
[8] 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、[7]に記載の方法。
[9] 前記複素環化合物又はその塩が鼻腔投与される、[7]又は[8]に記載の方法。
[10] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療に使用するための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩。
[11] 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、[10]に記載の使用のための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩。
[12] 鼻腔投与用である、[10]又は[11]に記載の使用のための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩。
[13] 神経変性疾患の予防又は治療剤である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の剤。
[14] 認知症又はせん妄の予防又は治療剤である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の剤。
[15] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤が神経変性疾患の予防又は治療剤である、[4]~[6]のいずれか1つに記載の使用。
[16] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤が認知症又はせん妄の予防又は治療剤である、[4]~[6]のいずれか1つに記載の使用。
[17] 神経変性疾患の予防又は治療方法である、[7]~[9]のいずれか1つに記載の方法。
[18] 認知症又はせん妄の予防又は治療方法である、[7]~[9]のいずれか1つに記載の方法。
[19] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療が神経変性疾患の予防又は治療である、[10]~[12]のいずれか1つに記載の使用のための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩。
[20] 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療が認知症又はせん妄の予防又は治療である、[10]~[12]のいずれか1つに記載の使用のための、式(I)で示される複素環化合物又はその塩。
本発明の神経変性疾患の予防又は治療剤は、脳内のATPを効率的に増加させたり、ATPとアセチルコリンを同時に増加させたりする作用を有し、神経変性疾患の予防又は治療のために使用することができる。
本発明の認知症又はせん妄の予防又は治療剤は、脳内のアセチルコリンを増加させると共に、低酸素障害及び炎症障害を抑制する作用を有し、認知症又はせん妄の予防又は治療のために使用することができる。
式(I)の環Aは、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子、及び酸素原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環を示す。環Aは、窒素原子及び酸化されていてもよい硫黄原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環が好ましい。環Aは、窒素原子及び酸化されていてもよい硫黄原子を含む5から7員の複素環がさらに好ましい。環Aの員数は、5又は6がさらに好ましい。
前記複素環の例としては、限定されないが、例えば、ピロール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、ピロリジン、ヘキサヒドロピリダジン、イミダゾール、イミダゾリジン、ピペリジン、チオフェン、チオラン、テトラヒドロ-2H-チオピラン、チアゾリン(例、2-チアゾリン、3-チアゾリン、4-チアゾリン)、チアゾール、チアゾリジン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チオモルホリン、チアジアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリジン、1,3-チアジナン、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、フラン、2H-ピラン、4H-ピラン、オキサゾール、イソオキサゾール、モルホリン、オキサゾリン、アゼパンなどが挙げられる。好ましくは、チアゾリン(例、2-チアゾリン、3-チアゾリン、4-チアゾリン)、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールであり、さらに好ましくは、チアゾリン(例、2-チアゾリン)、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、ピリジン、ピラジン、フラン、又は2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジンであり、さらにより好ましくは、チアゾリン(例、2-チアゾリン)、チアゾール、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、ピリジン、ピラジン、又はフランであり、特に好ましくは、チアゾリン(例、2-チアゾリン)又はチオモルホリンである。
ここで用いられる「ハロゲン原子」は、好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される。
ここで用いられる「C1-6アルキル基」(基又は基の一部として用いられる場合)は、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味する。C1-6アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基(イソブチル基)、tert-ブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-エチル-2-メチルプロピル基などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいC1-6アルキル基としては、例えば、C1-4アルキル基(1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基)が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
ここで用いられる「C1-6ハロアルキル基」は、1~5個のハロゲノ基で置換されたC1-6アルキル基を意味し、ハロゲノ基が2個以上である場合の各ハロゲノ基の種類は、同一又は異なっていてもよい。ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基などが挙げられる。C1-6ハロアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、1-フルオロエチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、1-フルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、2,2-ジフルオロプロピル基、3-フルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4-フルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、5-フルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、6-フルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基などが挙げられるが、これに限定されない。
ここで用いられる「C2-6アルケニル基」(基又は基の一部として用いられる場合)は、2~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルケニル基を意味する。C2-6アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロパ-1-エニル基、ブタ-1-エン-1-イル基、ブタ-2-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、2-メチルアリル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
ここで用いられる「C1-6アルコキシ基」(基又は基の一部として用いられる場合)は、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を意味する。C1-6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、1-メチルプロポキシ基、2-メチルプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、1-エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
ここで用いられる「C1-6アルキルチオ基」は、C1-6アルキル基で置換された-SH基を意味する。C1-6アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
ここで用いられる「C2-6アルケニルチオ基」は、C2-6アルケニルで置換された-SH基を意味する。C2-6アルケニルチオ基としては、ビニルチオ基、アリルチオ基、プロパ-1-エニルチオ基、ブタ-1-エン-1-イルチオ基、ブタ-2-エン-1-イルチオ基、ペンタ-4-エン-1-イルチオ基、2-メチルアリルチオ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
ここで用いられる「C1-6アルキル-カルボニル基」は、C1-6アルキル基が結合したカルボニル基を意味する。C1-6アルキル-カルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
ここで用いられる「C1-6アルコキシカルボニル基」は、C1-6アルコキシ基が結合したカルボニル基を意味する。C1-6アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
ここで用いられる「C6-10アリール基」は、6~10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基を意味する。C6-10アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基(1-ナフチル基、2-ナフチル基)などが挙げられるが、これらに限定されない。
ここで用いられる「5又は6員ヘテロアリール基」は、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子、及び酸素原子から選択される少なくとも1個(好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個)のヘテロ原子を含む5又は6員ヘテロアリール基を意味する。5又は6員ヘテロアリール基としては、窒素原子及び酸化されていてもよい硫黄原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5又は6員ヘテロアリール基が好ましい。
5又は6員ヘテロアリール基の例としては、ピロリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、チエニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ピリジル基、チエニル基などである。
ここで用いられる「オキソ基」なる語(基又は基の一部として用いられる場合)は、=O基を示す。
ここで用いられる「酸化されていてもよい硫黄原子」は、S、SO、又はSO2を意味する。
R1及びR2が、互いに結合して形成する、「置換されていてもよい5又は6員環」の「5又は6員環」は、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子、及び酸素原子から選択される少なくとも1個(好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個)のヘテロ原子を含んでいてもよい5又は6員環を意味する。前記5又は6員環の例としては、ベンゼン環、テトラヒドロピリミジン環などが挙げられる。前記5又は6員環は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基、C1-6アルキル-カルボニル基、ホルミル基、C1-6アルコキシカルボニル基、オキソ基などから選択される1から4個(好ましくは1又は2個)の置換基が挙げられる。置換基としては、好ましくは、C1-6アルキル基(例、メチル)及びオキソ基から選択される1から4個の置換基である。
式(I)において、好ましくは、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル)、ハロゲン原子(例、塩素原子)、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基(例、メチルチオ)、C2-6アルケニルチオ基(例、アリルチオ)、C1-6アルキル-カルボニル基(例、アセチル)、ホルミル基、C6-10アリール基(例、フェニル)、5又は6員ヘテロアリール基(例、チエニル)、又はオキソ基であり;R1及びR2は、互いに結合して、置換されていてもよい5又は6員環(例、ベンゼン環、テトラヒドロピリミジン環)を形成してもよい。
式(I)において、n=1又は2の場合、R1、R2、R3、及びR4のうち少なくとも1個は水素原子でないことが好ましい。式(I)において、n=0の場合、R1、R2、及びR3のうち少なくとも1個は水素原子でないことが好ましい。
式(I)において、好ましくは、
環Aは、チアゾリン(例、2-チアゾリン)、チアゾール、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、ピリジン、ピラジン、又はフランであり;
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基(例、メチル、エチル)、又はC1-6アルキル-カルボニル基(例、アセチル)であり;
nは0又は1(好ましくはnは0)である。
環Aは、チアゾリン(例、2-チアゾリン)、チアゾール、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、ピリジン、ピラジン、又はフランであり;
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基(例、メチル、エチル)、又はC1-6アルキル-カルボニル基(例、アセチル)であり;
nは0又は1(好ましくはnは0)である。
式(I)において、より好ましくは、
環Aは、チアゾリン(例、2-チアゾリン)又はチオモルホリンであり;
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり;
nは0又は1(好ましくはnは0)である。
環Aは、チアゾリン(例、2-チアゾリン)又はチオモルホリンであり;
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり;
nは0又は1(好ましくはnは0)である。
本発明において、有効成分として用いられる好適な式(I)の複素環化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられるが、これに限定されない。
2-メチル-2-チアゾリン(2MT)
チオモルホリン(TMO)
2-エチルフラン
2,3-ジエチルピラジン
2,4,5-トリメチルチアゾール
2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン
2,6-ルチジン
2-アセチルピロール
2-メチルチオモルホリン
2-エチルチオフェン
2,5-ジメチルチオフェン
4-メチルチアゾール
4-エチル-2-メチル-2-チアゾリン
式(I)の複素環化合物としては、2-メチル-2-チアゾリン(2MT)又はチオモルホリン(TMO)が特に好ましい。
2-メチル-2-チアゾリン(2MT)
チオモルホリン(TMO)
2-エチルフラン
2,3-ジエチルピラジン
2,4,5-トリメチルチアゾール
2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン
2,6-ルチジン
2-アセチルピロール
2-メチルチオモルホリン
2-エチルチオフェン
2,5-ジメチルチオフェン
4-メチルチアゾール
4-エチル-2-メチル-2-チアゾリン
式(I)の複素環化合物としては、2-メチル-2-チアゾリン(2MT)又はチオモルホリン(TMO)が特に好ましい。
本発明において、有効成分として用いられる式(I)の複素環化合物は、試薬として一般的に知られた物質が含まれ、市販のものを利用でき、また自体公知の方法により得ることができる。式(I)の複素環化合物を、神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤として使用することはこれまで開示も示唆もされていない。
式(I)で示される複素環化合物の好ましい例としては、下記式(A)~(D)で示される化合物又はその塩が挙げられる。
(式中、
X1は、S、O、又はN(R16)であり;
X2は、N又はCR12であり;
X3は、S、SO2、O、又は-(CH2)2-であり;
X4は、N又はCR15であり;
X1は、S、O、又はN(R16)であり;
X2は、N又はCR12であり;
X3は、S、SO2、O、又は-(CH2)2-であり;
X4は、N又はCR15であり;
は、単結合又は二重結合を示し;
R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基、C1-6アルキル-カルボニル基、ホルミル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;
R13及びR14は、互いに結合して、ベンゼン環、又はC1-6アルキル基及びオキソ基から選択される1から4個の置換基で置換されていてもよいテトラヒドロピリミジン環を形成してもよい;
ただし、式(A)において、R11及びR12はオキソ基ではなく;
式(A)において、
R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基、C1-6アルキル-カルボニル基、ホルミル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;
R13及びR14は、互いに結合して、ベンゼン環、又はC1-6アルキル基及びオキソ基から選択される1から4個の置換基で置換されていてもよいテトラヒドロピリミジン環を形成してもよい;
ただし、式(A)において、R11及びR12はオキソ基ではなく;
式(A)において、
が二重結合を示すとき、R13及びR14はオキソ基ではなく;
式(D)において、R11、R12、R13、R14、及びR15はオキソ基ではなく、式(B)において、R11とR12が一緒になって、オキソ基を形成してもよい)
式(D)において、R11、R12、R13、R14、及びR15はオキソ基ではなく、式(B)において、R11とR12が一緒になって、オキソ基を形成してもよい)
式(A)から(D)において、好ましくは、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル)、ハロゲン原子(例、塩素原子)、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基(例、メチルチオ)、C2-6アルケニルチオ基(例、アリルチオ)、C1-6アルキル-カルボニル基(例、アセチル)、ホルミル基、C6-10アリール基(例、フェニル)、5又は6員ヘテロアリール基(例、チエニル)、又はオキソ基であり;R13及びR14は、互いに結合して、ベンゼン環、又はC1-6アルキル基及びオキソ基から選択される1から4個の置換基で置換されていてもよいテトラヒドロピリミジン環を形成してもよい。
本発明に係る化合物の塩としては、医薬的に許容される塩であればよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩のようなアンモニウム塩;塩酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩のような無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩のような有機酸塩などが挙げられる。
式(I)で示される複素環化合物の好ましい例としては、下記式(A-1)若しくは(C-1)示される化合物又はその塩が挙げられる。
(式中、R11Aは水素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、アミノ基、-SH、又はC1-6アルケニルチオ基であり;R13Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R14Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R13A及びR14Aは、互いに結合して、ベンゼン環を形成してもよく;
は、単結合又は二重結合を示す)
式(A-1)の好ましい態様において、R11AはC1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、アミノ基、-SH、又はC1-6アルケニルチオ基であり;R13Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R14Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R13A及びR14Aは、互いに結合して、ベンゼン環を形成してもよい。
式(A-1)の別の好ましい態様において、R11Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R13Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R14Aは水素原子又はC1-6アルキル基である。
式(A-1)の好ましい態様において、R11AはC1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、アミノ基、-SH、又はC1-6アルケニルチオ基であり;R13Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R14Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R13A及びR14Aは、互いに結合して、ベンゼン環を形成してもよい。
式(A-1)の別の好ましい態様において、R11Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R13Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R14Aは水素原子又はC1-6アルキル基である。
式(A-1)において、好ましくは、R11Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R13Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R14Aは水素原子又はC1-4アルキル基である。
式(A-1)において、R11A、R13A、及びR14Aのうち少なくとも1個は水素原子でないことがより好ましい。
式(A-1)において、さらに好ましくは、R11AはC1-4アルキル基であり;R13Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R14Aは水素原子であり;
式(A-1)において、R11A、R13A、及びR14Aのうち少なくとも1個は水素原子でないことがより好ましい。
式(A-1)において、さらに好ましくは、R11AはC1-4アルキル基であり;R13Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R14Aは水素原子であり;
は、単結合を示す。
(式中、X3は、S又はSO2であり;R11Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R12Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R13Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R14Aは水素原子又はC1-6アルキル基であり;R16Aは水素原子又はC1-6アルキル基である)
式(C-1)において、好ましくは、R11Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R12Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R13Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R14Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R16Aは水素原子又はC1-4アルキル基である。
式(C-1)において、さらに好ましくは、X3はSであり;R11Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R12A、R13A、R14A、及びR16Aは、それぞれ水素原子である。
式(C-1)において、好ましくは、R11Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R12Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R13Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R14Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R16Aは水素原子又はC1-4アルキル基である。
式(C-1)において、さらに好ましくは、X3はSであり;R11Aは水素原子又はC1-4アルキル基であり;R12A、R13A、R14A、及びR16Aは、それぞれ水素原子である。
本発明によって提供される薬剤は神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤として利用することができる。本発明によって提供される薬剤には、神経変性疾患の予防又は治療剤、認知症又はせん妄の予防又は治療剤が含まれる。
神経変性疾患としては、アルツハイマー病を含む認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などが挙げられる。
認知症としては、アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、混合型認知症、パーキンソン病による認知症などが挙げられる。
認知症又はせん妄の予防又は治療は、認知症又はせん妄における認知機能の異常(認知機能の低下、認知機能障害、意識障害、記憶障害、注意力又は思考力の低下、実行機能障害、見当識障害、失行、失認、失語など)又は情動状態の異常(不安、焦燥、抑うつ、幻覚、妄想、睡眠障害、多動、徘徊、過食など)の予防又は治療を含む。
神経変性疾患又はせん妄を発症した、あるいは、発症する可能性があるヒトを含む動物に対して障害発生の予防や症状の緩和を目的として、式(I)で示される複素環化合物又はその塩(以下、本発明の化合物ともいう)を投与することができる。本発明の化合物に由来する0.1から100,000 ppmの濃度で発生させた気体ガスをガスマスクや類似した機能を持つ装置を用いて鼻腔や肺を経由して吸引させることができる。あるいは、本発明の化合物を1 μg/kgから5,000 mg/kgの投与量で経口投与することができる。あるいは、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、動脈内注射、脊髄腔内注射、腹腔内注射などの方法で1 μg/kgから5,000 mg/kgの投与量の本発明の化合物を体内に注射することができる。あるいは、経皮投与、経粘膜投与、口腔内投与、舌下投与、点眼投与、点耳投与、経鼻投与(鼻腔投与)、経直腸投与、経腟投与などの方法で1 μg/kgから5,000 mg/kgの投与量の本発明の化合物を投与することができる。投与の頻度は、単回投与、あるいは、一定時間毎の継続投与や、異なる時間間隔での継続投与とすることができる。本投与対象である動物としては、哺乳類(ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、サルなど)が挙げられる。
本発明の化合物を神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤(以下、本発明の剤ともいう)として使用する場合、必要に応じて医薬的に許容可能な添加剤を配合することができる。
医薬的に許容可能な添加剤の具体例としては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、キャリア、賦形剤および/または医薬的アジュバントなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の剤の製剤形態は特に限定されないが、例えば、液剤、注射剤、徐放剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、スプレー剤、貼付剤(例、テープ剤、パップ剤)、軟膏剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、錠剤、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、丸剤、舌下錠、トローチ剤、ドロップ剤、バッカル錠、吸入剤、点眼剤、点耳剤、点鼻剤、坐剤、注腸剤、腟用坐剤、腟錠などが挙げられる。上記製剤は当該分野において公知の方法により調製することができる。本発明の剤を上記製剤として処方するために使用される溶媒としては、水性または非水性のいずれでもよい。
注射剤は当該分野において公知の方法により調製することができる。例えば、適切な溶剤(生理食塩水、PBSのような緩衝液、滅菌水など)に溶解した後、フィルターなどで濾過滅菌し、次いで無菌容器(例えば、アンプルなど)に充填することにより注射剤を調製することができる。この注射剤には、必要に応じて、慣用の薬学的キャリアを含めてもよい。非侵襲的なカテーテルを用いる投与方法も使用され得る。本発明で用いることができるキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンを含む生理食塩水などが挙げられる。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1:チアゾリン類匂い分子による脳内のアセチルコリン増強効果
・実験方法
A: 約8週齢の雄のC57BL/6マウスに200 μLの生理食塩水(saline)または1% チオモルホリン(thiomorpholine)溶液(TMO, 溶媒は生理食塩水)を腹腔内投与(ip)し、30分後に速やかに脳を摘出し液体窒素で凍結した。
B: 約8週齢の雄のC57BL/6マウスを密閉式のケージ(Innocage)に入れ、25 μLの生理食塩水(saline)を染み込ませた濾紙(no odor)、または25 μLの2-メチル-2-チアゾリン(2-Methyl-2-thiazoline)(2MT)を染み込ませた濾紙(2MT odor)をそれぞれ4枚入れた。20分間それぞれの匂いに暴露後、脳を速やかに摘出し、液体窒素で凍結した。
A, Bで採取した脳サンプルからサンプルの前処理後、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)を用いてメタボローム解析を行い、アセチルコリン関連代謝物質の量を測定した結果を図1A及び図1Bに示す。各代謝物質は、saline条件の平均を100%とした場合の相対値として示した。図中の数字は、False Discovery Rateで調整したq値を示す。
C: アセチルコリン代謝経路のモデル図を図1Cに示す。TMOや2MTの投与によって増加していた物質と減少していた物質をそれぞれincrease, decreaseとして図中に併せて記載した。
・実験方法
A: 約8週齢の雄のC57BL/6マウスに200 μLの生理食塩水(saline)または1% チオモルホリン(thiomorpholine)溶液(TMO, 溶媒は生理食塩水)を腹腔内投与(ip)し、30分後に速やかに脳を摘出し液体窒素で凍結した。
B: 約8週齢の雄のC57BL/6マウスを密閉式のケージ(Innocage)に入れ、25 μLの生理食塩水(saline)を染み込ませた濾紙(no odor)、または25 μLの2-メチル-2-チアゾリン(2-Methyl-2-thiazoline)(2MT)を染み込ませた濾紙(2MT odor)をそれぞれ4枚入れた。20分間それぞれの匂いに暴露後、脳を速やかに摘出し、液体窒素で凍結した。
A, Bで採取した脳サンプルからサンプルの前処理後、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)を用いてメタボローム解析を行い、アセチルコリン関連代謝物質の量を測定した結果を図1A及び図1Bに示す。各代謝物質は、saline条件の平均を100%とした場合の相対値として示した。図中の数字は、False Discovery Rateで調整したq値を示す。
C: アセチルコリン代謝経路のモデル図を図1Cに示す。TMOや2MTの投与によって増加していた物質と減少していた物質をそれぞれincrease, decreaseとして図中に併せて記載した。
・結果(図1)
TMOの腹腔内投与、または2MTの匂いへの暴露によって脳内のアセチルコリン及びコリン量がコントロール条件に比較して有意に増加した。これらの前駆物質であるCDPコリン(CDP-choline)やグリセロホスホリルコリン(αGPC)量は逆に有意に減少していたことから、TMOや2MTの投与により、脳内においてCDPコリンやグリセロホスホリルコリンからコリンやアセチルコリンを合成する代謝経路が亢進すると考えられる。既存のアルツハイマー病治療薬として使用されているコリンエステラーゼ阻害薬はアセチルコリンからコリンへの分解を阻害するため、アセチルコリン量は増える代わりにコリンは減少するのに対し、TMOや2MTは脳内のコリンとアセチルコリンの合成量そのものを増加させることで脳内のアセチルコリン量を増加させていると考えられる。
TMOの腹腔内投与、または2MTの匂いへの暴露によって脳内のアセチルコリン及びコリン量がコントロール条件に比較して有意に増加した。これらの前駆物質であるCDPコリン(CDP-choline)やグリセロホスホリルコリン(αGPC)量は逆に有意に減少していたことから、TMOや2MTの投与により、脳内においてCDPコリンやグリセロホスホリルコリンからコリンやアセチルコリンを合成する代謝経路が亢進すると考えられる。既存のアルツハイマー病治療薬として使用されているコリンエステラーゼ阻害薬はアセチルコリンからコリンへの分解を阻害するため、アセチルコリン量は増える代わりにコリンは減少するのに対し、TMOや2MTは脳内のコリンとアセチルコリンの合成量そのものを増加させることで脳内のアセチルコリン量を増加させていると考えられる。
実施例2:チオモルホリンによる脳内のATP、GTP、UTPの増加
・実験方法
約8週齢の雄のC57BL/6マウスに200 μLの生理食塩水(saline)または1% チオモルホリン(thiomorpholine)溶液(TMO, 溶媒は生理食塩水)を腹腔内投与し、30分後に速やかに脳を摘出し液体窒素で凍結した。採取した脳サンプルからサンプルの前処理後、CE-TOFMSを用いてメタボローム解析を行い、ATP、GTP、UTPの量を測定した結果を図2に示す。各代謝物質は、saline条件の平均を100%とした場合の相対値として示した。Student t-testでsaline投与群とTMO投与群を比較した結果を図中に示す。* P<0.05, ***P<0.001。
・実験方法
約8週齢の雄のC57BL/6マウスに200 μLの生理食塩水(saline)または1% チオモルホリン(thiomorpholine)溶液(TMO, 溶媒は生理食塩水)を腹腔内投与し、30分後に速やかに脳を摘出し液体窒素で凍結した。採取した脳サンプルからサンプルの前処理後、CE-TOFMSを用いてメタボローム解析を行い、ATP、GTP、UTPの量を測定した結果を図2に示す。各代謝物質は、saline条件の平均を100%とした場合の相対値として示した。Student t-testでsaline投与群とTMO投与群を比較した結果を図中に示す。* P<0.05, ***P<0.001。
・結果(図2)
TMOを投与したマウスの脳内では、ATP、GTP、UTPが増加することが明らかになった。ATP、GTP、UTPは高エネルギー物質であり、TMO投与により、脳内のエネルギー状態が高まった状態となることが示唆された。
TMOを投与したマウスの脳内では、ATP、GTP、UTPが増加することが明らかになった。ATP、GTP、UTPは高エネルギー物質であり、TMO投与により、脳内のエネルギー状態が高まった状態となることが示唆された。
実施例3:チオモルホリンによる低酸素環境下における脳内のATP、GTP、UTPの増加
・実験方法
約8週齢の雄のC57BL/6マウスに200 μLの生理食塩水(saline)または1% チオモルホリン(thiomorpholine)溶液(TMO, 溶媒は生理食塩水)を腹腔内投与し、30分後に低酸素環境(酸素濃度4%)に暴露した。低酸素環境暴露20分後に速やかに脳を摘出し液体窒素で凍結した。また、コントロールとして、生理食塩水を腹腔投与30分後、低酸素環境に暴露していないマウスからも脳を摘出し液体窒素で凍結した。採取した脳サンプルからサンプルの前処理後、CE-TOFMSを用いてメタボローム解析を行い、ATP、GTP、UTPの量を測定した結果を図3に示す。各代謝物質は、コントロール条件の平均を100%とした場合の相対値として示した。Student t-testでsaline投与群とTMO投与群を比較した結果を図中に示す。* P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001, # P<0.05, ##P<0.01, ###P<0.001。*, **, ***はコントロールに比較して有意に減少していることを、#, ##, ###はコントロールに比較して有意に増加していることを示す。また、図の1番下にプリン(purine)およびピリミジン(pyrimidine)の代謝経路を示した。
・実験方法
約8週齢の雄のC57BL/6マウスに200 μLの生理食塩水(saline)または1% チオモルホリン(thiomorpholine)溶液(TMO, 溶媒は生理食塩水)を腹腔内投与し、30分後に低酸素環境(酸素濃度4%)に暴露した。低酸素環境暴露20分後に速やかに脳を摘出し液体窒素で凍結した。また、コントロールとして、生理食塩水を腹腔投与30分後、低酸素環境に暴露していないマウスからも脳を摘出し液体窒素で凍結した。採取した脳サンプルからサンプルの前処理後、CE-TOFMSを用いてメタボローム解析を行い、ATP、GTP、UTPの量を測定した結果を図3に示す。各代謝物質は、コントロール条件の平均を100%とした場合の相対値として示した。Student t-testでsaline投与群とTMO投与群を比較した結果を図中に示す。* P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001, # P<0.05, ##P<0.01, ###P<0.001。*, **, ***はコントロールに比較して有意に減少していることを、#, ##, ###はコントロールに比較して有意に増加していることを示す。また、図の1番下にプリン(purine)およびピリミジン(pyrimidine)の代謝経路を示した。
・結果(図3)
生理食塩水投与後に低酸素に暴露した条件では、エネルギー状態の高いATP、GTP、UTPが減少し、その代謝の下流産物であるアデノシン(Adenosine)、イノシン(Inosine)、アデニン(Adenine)、ヒポキサンチン(Hypoxantine)、グアノシン(Guanosine)、ウリジン(Uridine)、シチジン(Cytidine)が増加した。これに対して、TMO投与後に低酸素に暴露した条件では、エネルギー状態の高いATP、GTPはコントロールに比較して減少せず、UTPに関しては寧ろ増加していた。また、ATP、GTP、UTPの代謝の下流産物であるAdenosine、Inosine、Hypoxantine、Guanosine、Uridine、Cytidineはコントロールに比較して減少していた。低酸素暴露という高負荷がかかった条件において、通常はエネルギーが欠乏した状態になるのに対して、TMO投与群では高エネルギー状態が維持できることが示唆された。
生理食塩水投与後に低酸素に暴露した条件では、エネルギー状態の高いATP、GTP、UTPが減少し、その代謝の下流産物であるアデノシン(Adenosine)、イノシン(Inosine)、アデニン(Adenine)、ヒポキサンチン(Hypoxantine)、グアノシン(Guanosine)、ウリジン(Uridine)、シチジン(Cytidine)が増加した。これに対して、TMO投与後に低酸素に暴露した条件では、エネルギー状態の高いATP、GTPはコントロールに比較して減少せず、UTPに関しては寧ろ増加していた。また、ATP、GTP、UTPの代謝の下流産物であるAdenosine、Inosine、Hypoxantine、Guanosine、Uridine、Cytidineはコントロールに比較して減少していた。低酸素暴露という高負荷がかかった条件において、通常はエネルギーが欠乏した状態になるのに対して、TMO投与群では高エネルギー状態が維持できることが示唆された。
実施例4:チオモルホリンによる海馬神経細胞のATP量の増加(1)
・実験方法
約12週齢の雄のC57BL/6マウスの海馬にATPセンサーのiATPSnFRを神経細胞のプロモーター制御下で発現するアデノ随伴ウイルスを感染させ、3週間後に光ファイバーを海馬に挿入し、海馬神経細胞内のATP量をin vivoライブイメージングによりモニターした。200 μLの生理食塩水(saline)、2.5 mg/kg チオモルホリン(thiomorpholine)(TMO)、5.0 mg/kg TMOを腹腔内投与後それぞれ10分間のiATPSnFRシグナルの変動(z score)を図4に示した。
・実験方法
約12週齢の雄のC57BL/6マウスの海馬にATPセンサーのiATPSnFRを神経細胞のプロモーター制御下で発現するアデノ随伴ウイルスを感染させ、3週間後に光ファイバーを海馬に挿入し、海馬神経細胞内のATP量をin vivoライブイメージングによりモニターした。200 μLの生理食塩水(saline)、2.5 mg/kg チオモルホリン(thiomorpholine)(TMO)、5.0 mg/kg TMOを腹腔内投与後それぞれ10分間のiATPSnFRシグナルの変動(z score)を図4に示した。
・結果(図4)
2.5 mg/kg、5.0 mg/kg TMOを腹腔内投与した直後から、海馬神経細胞内のATP量が増加することが示唆された。
2.5 mg/kg、5.0 mg/kg TMOを腹腔内投与した直後から、海馬神経細胞内のATP量が増加することが示唆された。
実施例5:チオモルホリンによる海馬神経細胞のATP量の増加(2)
・実験方法
約12週齢の雄のC57BL/6マウスの海馬にATPセンサーのiATPSnFRを神経細胞のプロモーター制御下で発現するアデノ随伴ウイルスを感染させ、3週間後に光ファイバーを海馬に挿入し、海馬神経細胞内のATP量をin vivoライブイメージングによりモニターした。200 μLの生理食塩水(saline)、10 mg/kg チオモルホリン(thiomorpholine)(TMO)、20 mg/kg TMOを腹腔内投与後それぞれ10分間のiATPSnFRシグナルの変動(z score)を図5に示した。
・実験方法
約12週齢の雄のC57BL/6マウスの海馬にATPセンサーのiATPSnFRを神経細胞のプロモーター制御下で発現するアデノ随伴ウイルスを感染させ、3週間後に光ファイバーを海馬に挿入し、海馬神経細胞内のATP量をin vivoライブイメージングによりモニターした。200 μLの生理食塩水(saline)、10 mg/kg チオモルホリン(thiomorpholine)(TMO)、20 mg/kg TMOを腹腔内投与後それぞれ10分間のiATPSnFRシグナルの変動(z score)を図5に示した。
・結果(図5)
10 mg/kg、20 mg/kg TMOを腹腔内投与した直後から、海馬神経細胞内のATP量が増加することが示唆された。
10 mg/kg、20 mg/kg TMOを腹腔内投与した直後から、海馬神経細胞内のATP量が増加することが示唆された。
実施例6:2-メチル-2-チアゾリンによる大脳のATPの増加
・実験方法
約8週齢の雄のC57BL/6マウスに生理食塩水(saline)または50 mg/kg 2-メチル-2-チアゾリン(2-Methyl-2-thiazoline)溶液(2MT, 溶媒は生理食塩水)を皮下投与し、60分後に速やかに大脳を摘出し液体窒素で凍結した。採取した大脳サンプルからサンプルの前処理後、CE-TOFMSを用いてメタボローム解析を行い、ATPの量を測定した結果を図6に示す。Student t-testでsaline投与群と2MT投与群を比較した結果を図中に示す。* P<0.05。
・実験方法
約8週齢の雄のC57BL/6マウスに生理食塩水(saline)または50 mg/kg 2-メチル-2-チアゾリン(2-Methyl-2-thiazoline)溶液(2MT, 溶媒は生理食塩水)を皮下投与し、60分後に速やかに大脳を摘出し液体窒素で凍結した。採取した大脳サンプルからサンプルの前処理後、CE-TOFMSを用いてメタボローム解析を行い、ATPの量を測定した結果を図6に示す。Student t-testでsaline投与群と2MT投与群を比較した結果を図中に示す。* P<0.05。
・結果(図6)
2MTの投与により、大脳のATP量が有意に増加することが明らかになった。2MT投与により、大脳のエネルギー状態が高まった状態となることが示唆された。
2MTの投与により、大脳のATP量が有意に増加することが明らかになった。2MT投与により、大脳のエネルギー状態が高まった状態となることが示唆された。
実施例7:2MTおよびTMO関連化合物による海馬神経細胞のATP量の増加
・実験方法
約12週齢の雄性C57BL/6マウスの海馬に対し、神経細胞特異的プロモーターの制御下でATPセンサーであるiATPSnFRを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)を注入した。ウイルス注入後1週間の時点で海馬にカニューラを挿入し、その3週間後に、in vivoライブイメージングにより海馬神経細胞内ATP量のモニタリングを行った。200 μLの生理食塩水(saline)または生理食塩水に希釈した各化合物を80 mg/kgの用量で腹腔内投与し、投与後30分間にわたりiATPSnFRのシグナル変動を測定した。得られたiATPSnFRシグナルは、投与前1分間のベースラインに対して正規化を行い、さらに1分間の移動平均処理を施した。これらの結果を図7A-Kに示す。図7K中の“4-Ethyl-2-methylthiazoline”は、4-エチル-2-メチル-2-チアゾリンを意味する。
・実験方法
約12週齢の雄性C57BL/6マウスの海馬に対し、神経細胞特異的プロモーターの制御下でATPセンサーであるiATPSnFRを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)を注入した。ウイルス注入後1週間の時点で海馬にカニューラを挿入し、その3週間後に、in vivoライブイメージングにより海馬神経細胞内ATP量のモニタリングを行った。200 μLの生理食塩水(saline)または生理食塩水に希釈した各化合物を80 mg/kgの用量で腹腔内投与し、投与後30分間にわたりiATPSnFRのシグナル変動を測定した。得られたiATPSnFRシグナルは、投与前1分間のベースラインに対して正規化を行い、さらに1分間の移動平均処理を施した。これらの結果を図7A-Kに示す。図7K中の“4-Ethyl-2-methylthiazoline”は、4-エチル-2-メチル-2-チアゾリンを意味する。
・結果(図7A-K)
図中の点線(開始後60秒)は各化合物を投与したタイミングを表す。2-エチルフラン(A)、2,3-ジエチルピラジン(B)、2,4,5-トリメチルチアゾール(C)、2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン(D)、2,6-ルチジン(E)、2-アセチルピロール(F)、2-メチルチオモルホリン(G)、2-エチルチオフェン(H)、2,5-ジメチルチオフェン(I)、4-メチルチアゾール(J)、4-エチル-2-メチル-2-チアゾリン(K)の投与により、投与直後から海馬のATP量が増加することが示唆された。
図中の点線(開始後60秒)は各化合物を投与したタイミングを表す。2-エチルフラン(A)、2,3-ジエチルピラジン(B)、2,4,5-トリメチルチアゾール(C)、2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン(D)、2,6-ルチジン(E)、2-アセチルピロール(F)、2-メチルチオモルホリン(G)、2-エチルチオフェン(H)、2,5-ジメチルチオフェン(I)、4-メチルチアゾール(J)、4-エチル-2-メチル-2-チアゾリン(K)の投与により、投与直後から海馬のATP量が増加することが示唆された。
実施例1~7で使用した化合物の化学構造を図8に示す。
本発明の神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤は、アルツハイマー病を含む認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患の予防又は治療、及び認知症又はせん妄における認知機能又は情動状態の異常の予防又は治療のために使用することができる。
本出願は、日本で出願された特願2024-103558及び特願2024-103559を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含される。
Claims (9)
- 式(I)
(式中、
環Aは、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子、及び酸素原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環であり;
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基、C1-6アルキル-カルボニル基、ホルミル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;
R1及びR2は、互いに結合して、置換されていてもよい5又は6員環を形成してもよく;
nは0、1、又は2である)
で示される複素環化合物又はその塩を有効成分として含有する、神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤。 - 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、請求項1に記載の剤。
- 鼻腔投与用の請求項1又は2に記載の剤。
- 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤を製造するための、式(I)
(式中、
環Aは、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子、及び酸素原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環であり;
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基、C1-6アルキル-カルボニル基、ホルミル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;
R1及びR2は、互いに結合して、置換されていてもよい5又は6員環を形成してもよく;
nは0、1、又は2である)
で示される複素環化合物又はその塩の使用。 - 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、請求項4に記載の使用。
- 神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療剤が鼻腔投与用である、請求項4又は5に記載の使用。
- 有効量の、式(I)
(式中、
環Aは、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子、及び酸素原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環であり;
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、-SH、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基、C1-6アルキル-カルボニル基、ホルミル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;
R1及びR2は、互いに結合して、置換されていてもよい5又は6員環を形成してもよく;
nは0、1、又は2である)
で示される複素環化合物又はその塩を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における神経変性疾患又はせん妄の予防又は治療方法。 - 環Aが、チアゾリン、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン、又はイミダゾールである、請求項7に記載の方法。
- 前記複素環化合物又はその塩が鼻腔投与される、請求項7又は8に記載の方法。
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