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WO2026004362A1 - 色素タンパク質で標識された哺乳類細胞の製造方法、及び色素タンパク質のスクリーニング方法 - Google Patents

色素タンパク質で標識された哺乳類細胞の製造方法、及び色素タンパク質のスクリーニング方法

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WO2026004362A1
WO2026004362A1 PCT/JP2025/017189 JP2025017189W WO2026004362A1 WO 2026004362 A1 WO2026004362 A1 WO 2026004362A1 JP 2025017189 W JP2025017189 W JP 2025017189W WO 2026004362 A1 WO2026004362 A1 WO 2026004362A1
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chromoprotein
cells
mammalian cells
nucleic acid
protein
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PCT/JP2025/017189
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French (fr)
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康造 竹内
修 安彦
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Hamamatsu Photonics KK
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Hamamatsu Photonics KK
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Abstract

色素タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養することを含む、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞の製造方法、並びに、候補タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養すること、及び前記哺乳類細胞の可視光吸収を評価すること、を含む、色素タンパク質のスクリーニング方法。

Description

色素タンパク質で標識された哺乳類細胞の製造方法、及び色素タンパク質のスクリーニング方法
 本開示は、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞の製造方法、及び色素タンパク質のスクリーニング方法に関する。
 色素タンパク質(Chromoprotein)は、可視光領域の吸光度が大きいタンパク質である(非特許文献1)。色素タンパク質は、そのモル吸光係数の大きさを利用した、細胞に発現させた際の着色を指標としたマーカーや、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のアクセプターとしての応用が期待されている(非特許文献2)。
国際公開第2023/182169号
Josefine Liljeruhm et al., "Engineering a palette of eukaryotic chromoproteins for bacterial synthetic", Journal of Biological Engineering 12:8 (2018). F Hafna Ahmed et al., "Over the rainbow: structural characterization of the chromoproteins gfasPurple, amilCP, spisPink and eforRed", Acta Crystallogr D Struct Biol. 78(Pt 5):599-612 (2022).
 本発明者らは、色素タンパク質を遺伝的手法によって哺乳類細胞に発現させようとしたところ、哺乳類細胞の培養に一般的に用いられる温度条件では、哺乳類細胞に色素タンパク質が発現しにくいという新規の課題を見出した。
 本開示は、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞の製造方法を提供することを目的とする。また、本開示は、色素タンパク質の候補タンパク質を哺乳類細胞に発現させることを含む、色素タンパク質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
 本発明者らは、哺乳類細胞を、一般的な培養温度よりも低温条件で培養すると、哺乳類細胞に色素タンパク質を効率よく発現させることができることを見出した。
 本開示は、例えば、以下に関する。
[1]色素タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養することを含む、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞の製造方法。
[2]色素タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養すること、及び
 上記哺乳類細胞の可視光吸収を評価すること、
を含む、色素タンパク質による哺乳類細胞標識の評価方法。
[3]候補タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養すること、及び
 上記哺乳類細胞の可視光吸収を評価すること、
を含む、色素タンパク質のスクリーニング方法。
[4]可視光吸収を評価する前に、37℃未満で培養された上記哺乳類細胞を濃縮することをさらに含み、
 上記哺乳類細胞の可視光吸収の評価が、濃縮された上記哺乳類細胞の呈色を指標として行われる、[3]に記載の方法。
[5]上記色素タンパク質の400~800nmの領域における極大吸収波長のモル吸光係数が、5.0×10[L/mol・cm]以上である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の方法。
[6]上記色素タンパク質が、哺乳類動物以外の生物由来の色素タンパク質又はその改変タンパク質である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の方法。
[7]上記色素タンパク質を発現させる核酸は、導入された細胞の娘細胞にも分配導入される核酸又は導入された細胞のゲノムDNAに上記色素タンパク質をコードする領域が取り込まれる核酸である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の方法。
[8]上記培養することが、33℃以下で行われる、[1]~[7]のいずれか一つに記載の方法。
 本開示の一実施形態によれば、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞の製造方法が提供される。本実施形態によれば、色素タンパク質を、遺伝的手法を用いて簡便かつ選択的に効率よく細胞に導入することができる。
 本開示の一実施形態によれば、色素タンパク質による哺乳類細胞標識の評価方法が提供される。本実施形態によれば、哺乳類細胞の可視光吸収を指標として、色素タンパク質による哺乳類細胞標識を簡便に評価できる。
 本開示の一実施形態によれば、色素タンパク質のスクリーニング方法が提供される。本実施形態によれば、哺乳類細胞の可視光吸収を指標として、哺乳類細胞の標識に適した色素タンパク質を簡便にスクリーニングできる。さらに、本実施形態の一態様が哺乳類細胞を濃縮することをさらに含むと、濃縮された哺乳類細胞の呈色を指標として、哺乳類細胞に適した色素タンパク質をより簡便にスクリーニングできる。
実施例1の工程3において、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡で観察した結果を示す図である。 実施例1の工程3において、洗浄操作後のPBS(-)中の細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。 実施例1の工程5において、工程4で得られた、濃縮された細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。 実施例2の工程3において、37℃かつ5%COの条件で6日間培養した細胞について、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡で観察した結果を示す図である。 実施例2の工程3において、35℃かつ5%COの条件で6日間培養した細胞について、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡で観察した結果を示す図である。 実施例2の工程3において、32.5℃かつ5%COの条件で6日間培養した細胞について、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡で観察した結果を示す図である。 実施例2の工程3において、30℃かつ5%COの条件で7日間培養した細胞について、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡で観察した結果を示す図である。 実施例2の工程3において、37℃かつ5%COの条件で6日間培養され、続く洗浄操作後のPBS(-)中の細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。 実施例2の工程3において、35℃かつ5%COの条件で6日間培養され、続く洗浄操作後のPBS(-)中の細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。 実施例2の工程3において、32.5℃かつ5%COの条件で6日間培養され、続く洗浄操作後のPBS(-)中の細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。 実施例2の工程3において、30℃かつ5%COの条件で7日間培養され、続く洗浄操作後のPBS(-)中の細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。 実施例2の工程5において、工程4で得られた、濃縮された細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。 各条件の比較のために、図12に示した画像の、輝度及びコントラストが調整された画像である。 図12に示したRGB画像を、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の独立したチャンネルに分割した画像である。 図12のRGB画像を、HSB色空間、H(Hue、色相)、S(Saturation、彩度)、B(Brightness、明度)に分割した画像を示す。 図15に示したaeCP597(37℃、32.5℃、30℃)の結果に関して、偏角をH(Hue)とし、かつ極からの距離をS(Saturation)として、極座標上にプロットした結果を示す。 実施例2の工程5において、工程4で得られた、濃縮された細胞を、PBS(-)500μLに懸濁した細胞懸濁液について、室内灯下で取得したデジタル写真である。 各条件の比較のために、図17に示した画像の、輝度及びコントラストが調整された画像である。
 以下に本開示を実施するための形態について説明するが、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
 本開示において、あるタンパク質又は核酸が、所定のアミノ酸配列又は塩基配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列又は塩基配列を含む場合、それらのタンパク質又は核酸は、所定の配列と91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上又は100%の配列同一性を有してもよく、好ましい一態様においては95%以上の配列同一性を有してもよく、最も好ましい一態様においては100%の配列同一性を有してもよい。
 本開示において、あるタンパク質又は核酸が含む配列が、所定のアミノ酸配列又は塩基配列との間で変異を有する(すなわち、配列同一性が100%でない)場合、該変異は、連続又は分散して存在する1~20残基又は1~60塩基のそれぞれにおける、置換、欠失、挿入及び付加から選択される変異であってよい。好ましい一態様において、該変異は、連続又は分散して存在する1~10残基又は1~30塩基のそれぞれにおける、置換、欠失、挿入及び付加から選択される変異であってよい。より好ましい一態様において、該変異は、1~3残基又は1~10塩基のそれぞれにおける、置換、欠失、挿入及び付加から選択される変異であってよい。さらに好ましい一態様において、該変異は、1残基又は1~3塩基のそれぞれにおける、置換、欠失、挿入及び付加から選択される変異であってよい。
 本開示の第一実施形態は、色素タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養すること(培養工程)を含む、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞の製造方法である。以下では、本実施形態を、「第一実施形態の製造方法」とも称する。
 本開示において、色素タンパク質(Chromoprotein)は、可視光領域の吸光度が大きいタンパク質である(非特許文献1)。可視光領域の吸光度が大きいタンパク質は、可視光吸収によって細胞を標識することができ、また、可視光吸収を指標として、細胞におけるその発現を評価することができる。
 一態様の色素タンパク質は、その色素タンパク質を発現させる哺乳類細胞の由来の動物由来のタンパク質でないものであってよい。一態様の色素タンパク質は、その色素タンパク質を発現させる哺乳類細胞の由来の動物と異なる生物由来(すなわち、異種生物由来)であってよい。一態様の色素タンパク質は、哺乳類動物以外の生物由来であってよく、哺乳類動物以外の真核生物由来であってもよい。一態様の色素タンパク質は、脊椎動物以外の生物由来であってよく、脊椎動物以外の真核生物由来であってもよい。一態様の色素タンパク質は、無脊椎動物由来又は真菌由来であってよく、無脊椎動物由来であってもよく、真菌由来であってもよい。無脊椎動物は、例えば刺胞動物、棘皮動物、軟体動物、節足動物、環形動物又は腹足動物であってよく、刺胞動物、棘皮動物又は軟体動物であってもよく、刺胞動物であってもよく、花虫綱に属する刺胞動物であってもよく、サンゴ又はイソギンチャクであってもよい。真菌は、例えば担子菌又は子嚢菌であってよく、担子菌であってもよい。一態様の色素タンパク質は、刺胞動物由来又は担子菌由来であってよく、刺胞動物由来であってもよく、花虫綱に属する刺胞動物由来であってもよい。これらの場合において、色素タンパク質の由来となる生物、真核生物、動物及び無脊椎動物は、例えば海洋生物であってよい。一般に、海水温は37℃未満である。よって、色素タンパク質の由来となる生物、真核生物、動物及び無脊椎動物が海洋生物であると、37℃未満の条件で培養した場合、該色素タンパク質が発現しやすい、又は発現したタンパク質が適切にフォールディングされやすい可能性がある。
 一態様の色素タンパク質は、天然タンパク質又は人工タンパク質であってよい。人工タンパク質である色素タンパク質は、天然由来の色素タンパク質の改変タンパク質であってよく、例えば上述したような生物由来の色素タンパク質の改変タンパク質であってもよい。すなわち、例えば色素タンパク質は、上述した生物由来の色素タンパク質又はその改変タンパク質であってもよく、哺乳類動物以外の生物由来の色素タンパク質若しくはその改変タンパク質、無脊椎動物由来若しくは真菌由来の色素タンパク質若しくはその改変タンパク質、刺胞動物由来若しくは担子菌由来の色素タンパク質若しくはその改変タンパク質、又は刺胞動物由来の色素タンパク質若しくはその改変タンパク質であってよい。天然由来の色素タンパク質の改変タンパク質は、例えば該天然由来のタンパク質との配列同一性が90%以上のタンパク質であってよい。このような改変タンパク質は、当業者であれば、その元となる天然タンパク質の配列情報に基づいて、適宜に設計できる。
 一態様の色素タンパク質は、最大吸収波長におけるモル吸光係数が所定の下限以上であってよく、例えば細胞内環境等の生理的な環境(例えばpH6.5~8.5の環境)下で、最大吸収波長におけるモル吸光係数が所定の下限以上であってよい。一態様の色素タンパク質は、細胞内環境等の生理的な環境(例えばpH6.5~8.5の環境)下で、可視光領域における極大吸収波長のモル吸光係数が所定の下限以上であってよく、例えば400~800nmの領域における極大吸収波長のモル吸光係数が所定の下限以上であってよい。これらの場合において、上記所定の下限は、例えば3.0×10、5.0×10、8.0×10、1.0×10、1.2×10、1.4×10、1.6×10、1.8×10又は2.0×10[L/mol・cm]であってよい。上記最大吸収波長又は上記極大吸収波長が上記下限以上であると、色素タンパク質の吸光に由来するシグナル強度が大きくなるため、細胞標識に好適に用いることができる。蛍光量子収率及び燐光量子収率は、例えば分光光度計又はプレートリーダー等を用いて測定できる。
 一態様の色素タンパク質の400~800nmの領域における極大吸収波長は、例えば450nm以上、500nm以上、530nm以上、550nm以上、560nm以上又は565nm以上であってよく、750nm以下、700nm以下、670nm以下、650nm以下、630nm以下又は620nm以下であってもよく、これらの上限は自由に組み合わせることができる。一態様の色素タンパク質の400~800nmの領域における極大吸収波長は、例えば450nm以上750nm以下、530nm以上670nm以下、550nm以上650nm以下、又は565nm以上620nm以下であってよい。
 一態様の色素タンパク質は、蛍光量子収率が、30%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.3%以下、0.1%以下、0.03%以下、0.01%以下又は0.001%以下であってよく、該量子収率は例えば細胞内環境等の生理的な環境(例えばpH6.5~8.5の環境)下で測定した値であってよい。また、一態様の色素タンパク質は、燐光量子収率が、30%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.3%以下、0.1%以下、0.03%以下、0.01%以下又は0.001%以下であってよく、該量子収率は例えば細胞内環境等の生理的な環境(例えばpH6.5~8.5の環境)下で測定した値であってよい。一態様の色素タンパク質の蛍光量子収率及び/又は燐光量子収率が上記上限以下であると、タンパク質由来のシグナルの検出において蛍光及び/又は燐光に由来するノイズが抑制できる。また、一態様の色素タンパク質の蛍光量子収率及び/又は燐光量子収率が上記上限以下であると、蛍光及び/又は燐光による色素タンパク質の光褪色が抑制できる。
 一態様の色素タンパク質は、該タンパク質を含む融合タンパク質の形で、細胞に発現させるものであってよい。このような融合タンパク質は、被修飾タンパク質のN末端又はC末端に、リンカーを介してもよい態様で色素タンパク質を修飾したものであってよく、このような融合タンパク質は当業者が通常行う方法に従って設計できる。このような融合タンパク質によれば、細胞内の、被修飾タンパク質の細胞内局在に応じた箇所を色素タンパク質で標識することができ、また色素タンパク質のシグナルを指標として、細胞内における被修飾タンパク質の局在解析を行うこともできる。
 色素タンパク質を発現させる核酸の形態は、タンパク質を細胞に遺伝的に発現させる際に通常用いられる形態であればよい。そのような核酸は、色素タンパク質をコードする配列を含む。そのような核酸は、当業者がその形態に応じて適宜に設計することができる。また、そのような核酸は、例えば核酸の受託合成を行う業者に委託して取得でき、また供給業者から購入したバックボーンに制限酵素処理等を用いて色素タンパク質をコードする配列を含む核酸を挿入することによって取得することもできる。また、このような核酸は、大腸菌等の細菌に導入して培養する等の当業者が通常行う方法に従って増幅できる。
 一態様の色素タンパク質を発現させる核酸は、色素タンパク質を発現させるベクターであってよい。色素タンパク質を発現させるベクターは、例えばウイルスベクター又はプラスミドベクターであってよい。ウイルスベクターは、ゲノムがDNAであるウイルスベクター又はゲノムがRNAであるウイルスベクターであってよく、培養工程において発現を維持しやすくする観点からゲノムがDNAであるウイルスベクターであってもよい。ゲノムがDNAであるウイルスベクターは、例えばEBウイルス(Epstein-Barr Virus、Human herpesvirus 4、HHV-4)ベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであってよい。ウイルスベクターは、ウイルスの感染能力によって哺乳類細胞に遺伝子を導入し、目的のタンパク質を哺乳類細胞に発現させることができる。プラスミドベクターは、DNAベースのプラスミドベクター又はRNAベースのプラスミドベクターであってよく、培養工程において発現を維持しやすくする観点からDNAベースのプラスミドベクターであってもよい。プラスミドベクターは、例えばリポフェクション又はエレクトロポレーションによって細胞に導入できる。このようなベクターは、発現させる色素タンパク質のアミノ酸配列に応じて当業者が適宜に設計できる。
 一態様の色素タンパク質を発現させる核酸は、色素タンパク質をコードする配列を含むmRNA又はその前駆体であってよい。このようなmRNA又はその前駆体は、哺乳類細胞に該色素タンパク質を発現させることに用いることができる。mRNA前駆体は、哺乳類細胞におけるスプライシングによって、色素タンパク質をコードする配列を含むmRNAを与えるものであれば特に限定されない。このようなmRNA及びその前駆体は、発現させる色素タンパク質のアミノ酸配列に応じて当業者が適宜に設計できる。このようなmRNA及びその前駆体は、例えばリポフェクション又はエレクトロポレーションによって細胞に導入できる。
 好ましい一態様において、色素タンパク質を発現させる核酸は、色素タンパク質の恒常発現株の作成に使用できる核酸であってよい。例えば、色素タンパク質を発現させる核酸は、導入された細胞の娘細胞にも分配導入される核酸又は導入された細胞のゲノムDNAに上記色素タンパク質をコードする領域が取り込まれる核酸であってよい。好ましい一態様の核酸がこのような核酸であると、培養工程において色素タンパク質の発現が維持しやすい。
 導入された細胞の娘細胞にも分配導入される核酸は、細胞内でエピソーム(細胞の染色体に組み込まれない独立したDNA分子)として維持されるベクターであってよい。このようなベクター(エピソームベースのベクター)は、娘細胞にも分配導入される。このようなエピソームベースのベクターは、例えばEBウイルスベクター、又はEBウイルス由来のOriP(複製起点)及びEBV核抗原1(EBNA1、Epstein-Barr Virus(EBV) Nuclear Antigen 1)を含むプラスミドベクターであってよい。このようなエピソームベースのベクターとしては、pEBMultiシリーズ(富士フイルム和光純薬社)を例示できる。
 導入された細胞のゲノムDNAに上記色素タンパク質をコードする領域が取り込まれる核酸は、例えばアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又は逆転写ウイルスベクターであってよく、その中でも培養工程において色素タンパク質の発現が維持しやすくなる観点から、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターが好ましい。
 哺乳類細胞は、例えば培養細胞株又は初代培養細胞であってよい。哺乳類細胞の由来は、哺乳類動物であればよく、例えばヒト、マウス、ラット、ハムスター、イヌ又はサルであってよく、一態様においてはヒトであってもよい。哺乳類細胞の由来がヒトである(すなわち、哺乳類細胞がヒト細胞である)と、例えば本実施形態で製造された細胞をヒト用の薬物の評価又はスクリーニングに用いる場合に、薬効の種差の影響を排除できる。また、哺乳類細胞の由来がヒトであると、例えば本実施形態で製造された細胞をヒトタンパク質の機能解明の基礎研究に用いることができる。本実施形態に係る哺乳類細胞は、生細胞である。
 第一実施形態の製造方法は、色素タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養すること(培養工程)を含む。
 培養工程における哺乳類細胞の培養温度は、37℃未満であり、かつ生きたままの哺乳類細胞が色素タンパク質を発現する温度である。培養工程における哺乳類細胞の培養温度は、例えば10℃以上、20℃以上、23℃以上、25℃以上、27℃以上、28℃以上、29℃以上又は30℃以上であってよく、37℃未満、36℃以下、35℃以下、34℃以下、33℃以下、32.5℃以下、32℃以下、31℃以下又は30℃以下であってもよく、これらの上限及び下限は自由に組み合わせることができる。培養工程における哺乳類細胞の培養温度は、例えば10℃以上30℃以下、10℃以上31℃以下、10℃以上32℃以下、10℃以上32.5℃以下、10℃以上33℃以下、10℃以上34℃以下、10℃以上35℃以下、10℃以上36℃以下、10℃以上37℃未満、20℃以上30℃以下、20℃以上31℃以下、20℃以上32℃以下、20℃以上32.5℃以下、20℃以上33℃以下、20℃以上34℃以下、20℃以上35℃以下、20℃以上36℃以下、20℃以上37℃未満、23℃以上30℃以下、23℃以上31℃以下、23℃以上32℃以下、23℃以上32.5℃以下、23℃以上33℃以下、23℃以上34℃以下、23℃以上35℃以下、23℃以上36℃以下、23℃以上37℃未満、25℃以上30℃以下、25℃以上31℃以下、25℃以上32℃以下、25℃以上32.5℃以下、25℃以上33℃以下、25℃以上34℃以下、25℃以上35℃以下、25℃以上36℃以下、25℃以上37℃未満、27℃以上30℃以下、27℃以上31℃以下、27℃以上32℃以下、27℃以上32.5℃以下、27℃以上33℃以下、27℃以上34℃以下、27℃以上35℃以下、27℃以上36℃以下、27℃以上37℃未満、28℃以上30℃以下、28℃以上31℃以下、28℃以上32℃以下、28℃以上32.5℃以下、28℃以上33℃以下、28℃以上34℃以下、28℃以上35℃以下、28℃以上36℃以下、28℃以上37℃未満、29℃以上30℃以下、29℃以上31℃以下、29℃以上32℃以下、29℃以上32.5℃以下、29℃以上33℃以下、29℃以上34℃以下、29℃以上35℃以下、29℃以上36℃以下、29℃以上37℃未満、30℃以上31℃以下、30℃以上32℃以下、30℃以上32.5℃以下、30℃以上33℃以下、30℃以上34℃以下、30℃以上35℃以下、30℃以上36℃以下又は30℃以上37℃未満であってよく、一例としては30℃、31℃、32℃、32.5℃、33℃、34℃、35℃又は36℃である。培養工程における哺乳類細胞の培養温度が、このような一般的な培養温度よりも低い温度であると、哺乳類細胞に色素タンパク質を高効率に発現させることができる。
 培養工程における哺乳類細胞の培養時間は、上記の培養温度で培養した際に哺乳類細胞が色素タンパク質を発現する時間であればよい。培養工程における哺乳類細胞の培養時間は、例えば3日以上、5日以上、7日以上、10日以上、14日以上、18日以上、22日以上、26日以上又は30日以上であってよく、180日以下、90日以下、60日以下、50日以下、45日以下、40日以下、37日以下、35日以下、34日以下、33日以下、32日以下、31日以下、30日以下、20日以下、15日以下又は10日以下であってもよく、これらの上限及び下限は自由に組み合わせることができる。培養工程における哺乳類細胞の培養時間は、例えば3日以上180日以下、5日以上180日以下、3日以上30日以下、3日以上20日以下、3日以上15日以下、3日以上10日以下、5日以上30日以下、5日以上20日以下、5日以上15日以下、5日以上10日以下、10日以上90日以下、14日以上60日以下、18日以上50日以下、22日以上40日以下、又は26日以上35日以下であってよく、一例としては6日、7日、14日又は30日であってもよい。
 培養工程において、培養温度及び培養時間以外の培養条件としては、哺乳類細胞における色素タンパク質の発現を阻害しない限りにおいて、当業者が通常行う条件に従うことができる。例えば、培養工程における培地としては、哺乳類細胞の培養に一般的に用いられる培地を用いることができ、例えばDMEM培地、RPMI培地、Ham’s F-12培地又はHam’s F-12K培地等の汎用基礎培地に、牛胎児血清(FBS)等の血清成分を添加した培地を用いることができ、そこに細胞培養に一般的に用いられる添加剤(例えばペニシリン/ストレプトマイシンのような抗生物質)をさらに添加した培地を用いることもできる。また、培養工程における周辺環境のCO濃度は、例えば5%である。
 第一実施形態の製造方法は、一態様において、培養工程の前に、色素タンパク質を発現させる核酸を哺乳類細胞に導入すること(導入工程)を含んでよい。導入工程における導入方法は、色素タンパク質を発現させる核酸を、生きたままの哺乳類細胞に導入できる方法であれば特に限定されず、当業者が該核酸を導入する際に通常用いることがある方法を用いることができる。このような方法としては、例えば核酸と細胞の接触、リポフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション及びソノポレーション等が挙げられ、これらは核酸の種類に応じて当業者が適宜に選択でき、例えば一態様の色素タンパク質を発現させる核酸についての説明において上述したものを選択してもよい。また、哺乳類細胞に導入する核酸の量は、その核酸の種類に合わせて、続く培養工程において哺乳類細胞に色素タンパク質を発現させることができる量として当業者が適宜に設定できる。
 導入工程における核酸の導入が、ウイルスベクターと細胞の接触や、リポフェクションのような経時的な過程を経て生じるものである場合、導入工程は、核酸の導入が生じる環境で、哺乳類細胞を培養することをさらに含んでよい。核酸の導入が生じる環境とは、例えばウイルスベクターを含有する培地、又は核酸及びリポフェクションが生じるのに必要な試薬を含有する培地に哺乳類細胞が曝露された環境を意味し、その際の曝露は例えば接着状態の哺乳類細胞の培養上清をこのような培地に置換すること又は哺乳類細胞をこのような培地で懸濁することであってよい。導入工程におけるこのような培養の時間は、哺乳類細胞に核酸が導入されるものであればよく、例えば1分以上、10分以上、1時間以上、6時間以上又は24時間以上であってよく、96時間以下、72時間以下、48時間以下又は24時間以下であってもよい。導入工程におけるこのような培養の温度は、生きたままの哺乳類細胞に核酸の導入が生じるものであればよく、細胞培養に通常用いられる温度とすることができ、例えば20℃以上、25℃以上、30℃以上、31℃以上、32℃以上、33℃以上、34℃以上、35℃以上、36℃以上又は37℃以上であってよく、50℃以下、45℃以下、40℃以下、39℃以下、38℃以下又は37℃以下であってもよく、一例としては37℃であってもよい。
 導入工程において導入される核酸にセレクションマーカーが組み入れられている場合、導入工程は、核酸を導入した後に、核酸が導入された哺乳類細胞を選別することを含んでよい。核酸が導入された哺乳類細胞を選別することは、細胞を抗生物質に接触させることによって行うことができ、抗生物質と接触させた後に生き残った細胞を、核酸が導入された哺乳類細胞として選別できる。セレクションマーカーは、所定の抗生物質に対する耐性遺伝子を含む。よって、セレクションマーカーが組み入れられている核酸を哺乳類細胞に導入後に、該細胞を抗生物質に接触させると、核酸が導入された哺乳類細胞は該抗生物質への耐性を獲得しているため生き残る一方で、核酸が導入されなかった哺乳類細胞は該抗生物質への耐性を有しないため死滅する。このようなセレクションマーカーと抗生物質の組み合わせ、及び抗生物質を接触させる条件(温度及び濃度)としては、当業者がセレクションに通常用いる条件に従うことができる。このようなセレクションに用いられる抗生物質としては、ネオマイシン、ピューロマイシン、ジェノマイシンB1(G418)及びハイグロマイシンBを例示できる。
 第一実施形態の製造方法によると、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞が製造できる。哺乳類細胞が色素タンパク質で標識されたことは、例えば後述する第二実施形態の評価方法における評価工程と同様の方法に従って、哺乳類細胞の可視光吸収を指標として評価してよい。また、哺乳類細胞が色素タンパク質で標識されたことは、例えば該哺乳類細胞をライセート化した後、そのライセートに含まれる色素タンパク質の量をELISA法やウエスタンブロッティング法で測定することによって評価してもよい。
 第一実施形態の製造方法によって製造された、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞は、例えば色素タンパク質が有する可視光吸光に基づく呈色を指標とした細胞の評価に用いることができる。そうすると、例えば色素タンパク質の発現の条件依存性(例えば環境依存性や所定物質の濃度依存性)を評価できる。
 第一実施形態の製造方法によって製造された、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞は、例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のアクセプターとしての色素タンパク質とドナーとして働く他のタンパク質を共発現した細胞、又はFRETアクセプターとしての色素タンパク質とドナータンパク質との融合タンパク質を発現した細胞として、ドナータンパク質による蛍光強度を指標とした細胞の評価に用いることができる。そうすると、FRETを作動原理とする蛍光プローブがその検出に用いられる細胞内環境又はイベントが評価でき、例えばタンパク質間相互作用、イオン濃度、膜電位又はpH変化等を評価できる。
 第一実施形態の製造方法によって製造された、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞は、例えば、色素タンパク質が有する吸光に基づく屈折率変化に基づいて、細胞における色素タンパク質の分布の評価に利用できる。特許文献1には、第1波長および第2波長それぞれにおける屈折率が互いに異なる標識物質で細胞の特定部位を標識する標識ステップと、上記標識ステップで上記特定部位が標識された上記細胞の屈折率分布を上記第1波長および上記第2波長それぞれにおいて取得する屈折率分布取得ステップと、上記第1波長および上記第2波長それぞれにおける屈折率分布を比較することで上記細胞における上記特定部位の分布を評価する解析ステップと、を備える、細胞評価方法が開示されており、その標識物質の一例として、色素タンパク質が挙げられている。上記方法は、標識物質の2波長における屈折率の違いを利用し、細胞を評価する。他方、色素タンパク質のような色素は、最大吸収波長付近において、屈折率が大きく変化することが知られている。よって、第一実施形態の製造方法によって製造された、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞は、特許文献1に記載の方法等の屈折率を指標とした細胞評価方法に好適であると考えられる。
 本開示の第二実施形態は、色素タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養すること(培養工程)、及び上記哺乳類細胞の可視光吸収を評価すること(評価工程)を含む、色素タンパク質による哺乳類細胞標識の評価方法である。以下では、本実施形態を、「第二実施形態の評価方法」とも称する。
 第二実施形態の評価方法に係る色素タンパク質、それを発現させる核酸、及び哺乳類細胞としては、第一実施形態の製造方法において説明したのと同様のものを用いることができる。また、第二実施形態の評価方法に係る培養工程は、第一実施形態の製造方法において説明したのと同様に行うことができる。また、第二実施形態の評価方法は、培養工程の前に導入工程を含んでよく、該導入工程は第一実施形態の製造方法において説明した導入工程と同様に行うことができる。
 評価工程では、培養工程において培養された哺乳類細胞の可視光吸収を評価する。それによって、該哺乳類細胞における色素タンパク質の発現の有無及び発現量を評価できる。
 哺乳類細胞の可視光吸収は、例えば吸光度を測定可能な光学機器を用いて評価してよい。吸光度を測定可能な光学機器としては、吸光度計及びマイクロウェルプレートリーダーを例示できる。このような光学機器によると、哺乳類細胞の可視光吸収を評価でき、例えば哺乳類細胞が懸濁された細胞懸濁液、又は接着状態の哺乳類細胞の可視光吸収を測定できる。この場合、可視光吸収の評価は、吸光度を指標として評価してよく、例えば哺乳類細胞に発現させた色素タンパク質の最大吸収波長又は可視光領域の極大吸収波長の±80nm以内、±60nm以内、±50nm以内、±40nm以内、±30nm以内、±20nm以内又は±10nm以内の波長の吸光度を評価してよく、該色素タンパク質の最大吸収波長又は可視光領域の極大吸収波長の吸光度を評価してもよい。
 哺乳類細胞の可視光吸収は、哺乳類細胞の呈色を指標として行われてもよい。この際、哺乳類細胞の呈色は、培養皿に単層で接着した状態のような空間的な密度が低い状態では観測しづらい一方、ペレット状態やコロニー状態のような空間的な密度が高い状態では観測しやすい。このような空間的な密度が高い状態の細胞の可視光吸収は、例えば目視によって評価でき、また細胞について取得したデジタル写真について画像解析ソフト(たとえばImageJ)を用いて色調を測定することによっても評価できる。すなわち、第二実施形態の一態様に係る評価方法は、哺乳類細胞の可視光吸収の評価が、哺乳類細胞の呈色を指標として行われてよい。また、第二実施形態の一態様に係る評価方法は、評価工程の前に、37℃未満で培養された哺乳類細胞を濃縮すること(濃縮工程)をさらに含み、哺乳類細胞の可視光吸収の評価が、濃縮された上記哺乳類細胞の呈色を指標として行われてよい。
 濃縮工程では、哺乳類細胞を濃縮する。すなわち、濃縮工程では、哺乳類細胞の単位体積あたりの密度(細胞濃度)を高める。濃縮工程における細胞の濃縮方法は、細胞の濃縮に当業者が通常用いる方法であればよく、例えば細胞懸濁液の遠心分離、フィルタリング又は静置であってよい。細胞懸濁液を遠心分離すると、その沈殿成分(ペレット)として、濃縮された細胞が得られる。細胞懸濁液をフィルタリングすると、フィルター上に、濃縮された細胞が得られる。細胞懸濁液を静置すると、重力によって生じた沈殿として、濃縮された細胞が得られる。
 濃縮工程では、続く評価工程において呈色が評価できる密度まで、哺乳類細胞を濃縮する。濃縮工程では、例えば濃縮産物における哺乳類細胞の占める体積が10%以上、30%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上となるように哺乳類細胞を濃縮してよい。また、濃縮工程では、濃縮産物における哺乳類細胞が多層又はそれに相当する厚みとなるように哺乳類細胞を濃縮してよく、例えば濃縮産物における哺乳類細胞が5層以上、10層以上、15層以上、20層以上、30層以上、50層以上若しくは100層以上又はそれに相当する厚みとなるように哺乳類細胞を濃縮してもよい。また、濃縮工程では、例えば濃縮産物の厚みの最大値が0.5mm以上、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、3mm以上又は5mm以上となるように哺乳類細胞を濃縮してもよい。また、濃縮工程では、例えば1.0×10個以上、2.0×10個以上、5.0×10個以上、1.0×10個以上、1.5×10個以上又は2.0×10個以上の細胞を、液体成分と分離した状態で集めてよく、そのような数の細胞を含む沈殿又はフィルター上の捕集物として集めてもよい。
 本開示の第三実施形態は、候補タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養すること(培養工程)、及び上記哺乳類細胞の可視光吸収を評価すること、を含む、色素タンパク質のスクリーニング方法である。以下では、本実施形態を、「第三実施形態のスクリーニング方法」とも称する。
 第三実施形態のスクリーニング方法に係る、候補タンパク質を発現させる核酸としては、色素タンパク質の代わりに候補タンパク質を発現させる点を除き、第一実施形態の製造方法において説明したのと同様のものを用いることができる。第三実施形態のスクリーニング方法に係る哺乳類細胞としては、第一実施形態の製造方法において説明したのと同様のものを用いることができる。また、第三実施形態のスクリーニング方法に係る培養工程は、哺乳類細胞に候補タンパク質を発現させる核酸が導入されていることを除き、第一実施形態の製造方法において説明したのと同様に行うことができる。また、第三実施形態のスクリーニング方法は、培養工程の前に導入工程を含んでよく、該導入工程は、候補タンパク質を発現させる核酸を導入することを除き、第一実施形態の製造方法において説明した導入工程と同様に行うことができる。
 第三実施形態のスクリーニング方法に係る哺乳類細胞における評価工程は、第二実施形態の評価工程において説明したのと同様に行うことができる。また、第三実施形態のスクリーニング方法は、評価工程の前に濃縮工程をさらに含んでもよく、濃縮工程は、第二実施形態の評価方法において説明した濃縮工程と同様に行うことができる。第三実施形態のスクリーニング方法が濃縮工程を含むと、吸光度計のような光学機器を用いずに、呈色を指標として簡便に哺乳類細胞における色素タンパク質の発現を評価できるため、ハイスループットに色素タンパク質をスクリーニングできる。
 第三実施形態のスクリーニング方法に係る候補タンパク質は、色素タンパク質の候補タンパク質である。色素タンパク質の候補タンパク質は、例えば哺乳類以外の生物から取得したタンパク質、哺乳類以外の生物から取得した核酸から発現させたタンパク質、又は色素タンパク質のランダム改変タンパク質であってよい。色素タンパク質のランダム改変タンパク質は、色素タンパク質をコードする核酸の一部にランダムな塩基配列を導入した核酸を鋳型として、大腸菌等の細菌に生合成させることによって得られる。また、候補タンパク質が色素タンパク質のランダム改変タンパク質である場合、第三実施形態のスクリーニング方法は、例えば色素タンパク質のランダム改変タンパク質を発現させる核酸を細胞に導入(導入工程)し、培養工程によってランダム改変タンパク質を細胞に発現させた後、得られたヘテロな細胞集団を限界希釈法等によって個々の細胞毎に分離し、それぞれの細胞を増殖させてコロニーを形成させた後に、コロニーの呈色を指標として可視光吸収を評価すること(評価工程)によって行ってもよい。
 第三実施形態のスクリーニング方法では、培養工程と評価工程の間、又は培養工程と濃縮工程の間に、可視光吸収の評価に用いる、候補タンパク質を発現させた細胞の数を調整する工程(細胞数調整工程)を含んでよい。細胞数調整工程では、例えば評価に用いられる細胞の数を一定数に揃えてよく、この場合、続く評価工程において、該細胞において呈色が生じやすい色素タンパク質をスクリーニング方法できる。また、細胞数調整工程では、例えば評価に用いられる細胞の数を、発現させる候補タンパク質の可視光領域におけるモル吸光係数に反比例するように調整してよく、この場合、続く評価工程において、該細胞において発現しやすい色素タンパク質をスクリーニング方法できる。細胞数調整工程は、例えば単位体積の細胞懸濁液に含まれる細胞数を数えること、及び可視光吸収の評価に用いられる細胞が所望の数になるように、適切な体積の細胞懸濁液を分離することを含んでもよい。単位体積の細胞懸濁液に含まれる細胞数を数えることは、常法に従って行ってよく、例えばトリパンブルー染色を伴って生細胞数を数えてもよい。
 第三実施形態のスクリーニング方法では、評価工程において得られた評価結果に基づいて、候補タンパク質の中から色素タンパク質を選別する。すなわち、第三実施形態の一態様に係るスクリーニング方法は、評価工程の後に、評価工程における可視光吸収の評価結果に基づいて、候補タンパク質の中から色素タンパク質を選別すること(選別工程)を含んでよい。
 選別工程における選別方法は、第一実施形態に係る製造方法において説明した色素タンパク質の要件を満たすタンパク質を選別できるものであればよく、例えば第一実施形態に係る製造方法に係る色素タンパク質の態様として説明した少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの要件を満たすタンパク質を選別できるものであってよい。好ましい一態様において、選別工程における選別方法は、第一実施形態に係る製造方法に係る色素タンパク質の態様として説明した、色素タンパク質の吸光度及び蛍光量子収率についての要件を満たすタンパク質を選別できるものであってよく、例えばモル吸光係数が5.0×10[L/mol・cm]以上かつ蛍光量子収率が1%以下のタンパク質を、色素タンパク質として選別してよい。
 また、第三実施形態のスクリーニング方法が濃縮工程を含む場合、選別工程は、評価工程において呈色が観測された候補タンパク質を選別することを含んでよい。また、この場合、選別工程は、まず候補タンパク質から評価工程において呈色が観測された候補タンパク質を選別すること(一次選別)の後に、選別された候補タンパク質について上述のように第一実施形態に係る製造方法に係る色素タンパク質の態様として説明した、色素タンパク質の要件を満たすタンパク質をさらに選別すること(二次選別)を含んでもよい。
 第三実施形態のスクリーニング方法によると、色素タンパク質が選別できる。そうすると、第一実施形態の製造方法において説明したような用途への利用可能性がある色素タンパク質を、高効率に見出すことができる。
 また、第三実施形態のスクリーニング方法の一態様において、候補タンパク質が色素タンパク質のランダム改変タンパク質であると、色素タンパク質について、光学特性等のパラメータが改良されたタンパク質をスクリーニングできる。そうすると、色素タンパク質へのランダムな改変の導入による候補タンパク質集団の形成と、第三実施形態のスクリーニング方法による候補タンパク質集団からの所望の性質を有する色素タンパク質の選別と、からなるサイクルを複数回繰り返すことによって、分子進化的に所望の性質を有する色素タンパク質を取得できる。
 以下に実施例を用いて本開示をより詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
 本実施例では、色素タンパク質としてcjBlue、rpulFkz1、gfasCP、asFP595、Rtms5及びaeCP597を用いた。これらの色素タンパク質の光学特性は例えば非特許文献1に記載されている。
 cjBlueは、Epiactis japonica(イソギンチャクの一種)由来の色素タンパク質であり、そのアミノ酸配列は配列番号1に示される。
 rpulFkz1は、Rhizostoma pulmo(クラゲの一種)由来の色素タンパク質であり、そのアミノ酸配列は配列番号2に示される。
 gfasCPは、Galaxea fascicularis(サンゴの一種)由来の色素タンパク質であり、そのアミノ酸配列は配列番号3に示される。
 asFP595は、Anemonia sulcata(イソギンチャクの一種)由来の色素タンパク質であり、そのアミノ酸配列は配列番号4に示される。
 Rtms5は、Montipora efflorescens(サンゴの一種)由来の色素タンパク質であり、そのアミノ酸配列は配列番号5に示される。
 aeCP597は、Actinia equina(イソギンチャクの一種)由来の色素タンパク質であり、そのアミノ酸配列は配列番号6に示される。
[実施例1:30℃で培養した場合の色素タンパク質発現の評価]
<工程1:色素タンパク質発現プラスミドの構築>
 色素タンパク質をコードするDNAとして、それぞれの色素タンパク質をコードする野生型DNAのコード領域のコドンをヒト細胞での発現のために最適化し、かつ3’末端に終始コドンを2つ付加した塩基配列のDNAを、ユーロフィンジェノミクス社に合成委託し取得した。cjBlueをコードするDNAの塩基配列は、配列番号7に示される。rpulFkz1をコードするDNAの塩基配列は、配列番号8に示される。gfasCPをコードするDNAの塩基配列は、配列番号9に示される。asFP595をコードするDNAの塩基配列は、配列番号10に示される。Rtms5をコードするDNAの塩基配列は、配列番号11に示される。aeCP597をコードするDNAの塩基配列は、配列番号12に示される。
 制限酵素としてBamHI及びNotIを用いて、取得した色素タンパク質をコードするDNAを、pEBMulti-Neoベクター(富士フイルム和光純薬社、057-08131)のマルチクローニングサイトにサブクローニングし、それぞれの色素タンパク質についての色素タンパク質発現プラスミド(色素タンパク質を発現させる核酸)を得た。なお、pEBMultiシリーズは、EBウイルス由来のOriP(複製起点)及びEBV核抗原1(EBNA1、Epstein-Barr Virus(EBV) Nuclear Antigen 1)を含む。そのため、pEBMulti-Neoベクターを哺乳類細胞に導入すると、エピソーム的に複製するシステムによって、ベクターも複製されて娘細胞に分配される。よって、pEBMultiシリーズを用いると、目的遺伝子を宿主細胞のゲノムに組み込まなくても、その目的遺伝子がコードするタンパク質の恒常発現細胞株を樹立できる。
<工程2:色素タンパク質発現プラスミドの哺乳類細胞への導入、及び導入された細胞の培養>
 6ウェルの平底細胞培養プレート(VIOLAMO社)に、チャイニーズハムスター由来の培養細胞株であるCHO-K1細胞を播種した。播種した細胞を、Ham’s F-12K培地(富士フイルム和光純薬社)に10%(v/v)ウシ胎児血清を添加した培地(実施例1において「培養培地」とも称する。)中で、37℃かつ5%COの条件で2日間培養した。各ウェルに、ScreenFect(登録商標) A plus(富士フイルム和光純薬社)を用いて、供給業者が提供するプロトコールに従って、1ウェルあたり2.5μgの色素タンパク質発現プラスミド、及びトランスフェクション試薬を添加し、各ウェルの細胞に色素タンパク質発現プラスミドをトランスフェクションした。トランスフェクション後の細胞を、37℃かつ5%COの条件で1日間培養した。培養後の細胞を含む各ウェルに、抗生物質G418(富士フイルム和光純薬社)を1mg/mlで添加し、トランスフェクションされた核酸からタンパク質を発現した細胞を選別した。選別後の細胞を、30℃かつ5%COの条件で35日間培養した(培養工程)。本培養においては、適時に培地交換を行い、また継代操作は行わなかった。
<工程3:標識された細胞の評価(細胞濃縮前)>
 工程2における培養後、各ウェルから培養培地を除去し、細胞をPBS(-)で洗浄した。図1は、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡(DM IL LED倒立顕微鏡、Leica社、倍率10倍)で観察した結果を示す図である。各色素タンパク質が導入された細胞は、ディッシュに接着しており、30℃かつ5%COの条件で35日間培養しても問題なく生存していることが確認された。
 図2は、洗浄操作後のPBS(-)中の細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。図1及び図2の結果によれば、確かにディッシュ上に細胞は存在する一方、細胞が平面的に接着した状態では、色素タンパク質による細胞の標識を、目視で検出することが困難であった。
<工程4:細胞の濃縮>
 工程3の後の細胞を、0.25%トリプシン(Gibco社)で処理し、ディッシュから剥離した。得られた細胞懸濁液を1.5mLチューブに回収した。遠心分離機(Suprema21、トミー精工社)を用いて、そのチューブを、室温下、3000rpmで1~3分間遠心した。上清を除去し、チューブの底に得られたペレットをPBS(-)で洗浄することで、濃縮された細胞を得た。
<工程5:標識された細胞の評価(細胞濃縮後)>
 図3は、工程4で得られた、濃縮された細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。図3によれば、供試した6つの色素タンパク質のうち、cjBlue、gfasCP、asFP595、Rtms5及びaeCP597の5つにおいて目視で細胞の呈色が観測され、そのうちgfasCP、asFP595、Rtms5及びaeCP597の4つでは呈色が強く、さらにgfasCP及びRtms5の2つでは呈色がより強かった。
 以上の結果から、色素タンパク質発現プラスミドを導入した哺乳類細胞を30℃で培養することによって、色素タンパク質を哺乳類細胞に発現させることができることが明らかとなった。さらに、以上の結果から、培養後の細胞の可視光吸収を評価することで、色素タンパク質による哺乳類細胞標識の評価、及び色素タンパク質のスクリーニングを行うことができること、及び特に色素タンパク質のスクリーニングでは、細胞を濃縮することで目視の呈色を指標として簡便かつハイスループットなスクリーニングが可能となることが示唆された。
[比較例1:37℃で培養した場合の色素タンパク質発現の評価]
 実施例1の工程2における培養工程を下記の条件で行った点以外は同様を行った。その結果、いずれの色素タンパク質を用いた場合にも、工程5の評価において、目視では呈色が観察できなかった。
<比較例1における工程2>
 6ウェルの平底細胞培養プレート(VIOLAMO社)に、ヒト由来の培養細胞株であるHepG2細胞を播種した。播種した細胞を、DMEM培地(Gibco社)に10%(v/v)ウシ胎児血清を添加した培地(比較例1において「培養培地」とも称する。)中で、37℃かつ5%COの条件で2日間又は3日間培養した。各ウェルに、ScreenFect(登録商標) A plus(富士フイルム和光純薬社)を用いて、供給業者が提供するプロトコールに従って、1ウェルあたり2.5μgの色素タンパク質発現プラスミド、及びトランスフェクション試薬を添加し、各ウェルの細胞に色素タンパク質発現プラスミドをトランスフェクションした。トランスフェクション後の細胞を、37℃かつ5%COの条件で1日間培養した。培養後の細胞を含む各ウェルに、抗生物質G418(富士フイルム和光純薬社)を1mg/mlで添加し、トランスフェクションされた核酸からタンパク質を発現した細胞を選別した。選別後の細胞を、37℃かつ5%COの条件で20日間(rpulFkz1、gfasCP、asFP595、Rtms5、aeCP597)又は38日間(cjBlue)培養した(培養工程)。本培養においては、適時に培地交換を行い、継代操作を1回行った。
[実施例2:種々の温度で培養した場合の色素タンパク質発現の評価]
 37℃、35℃、32.5℃及び30℃の4条件で細胞を培養した場合における細胞の呈色を、実施例1と同様の方法で評価して比較した。
<工程1:色素タンパク質発現プラスミドの構築>
 実施例1の工程1と同様の方法で用意したプラスミドを用いた。
<工程2:色素タンパク質発現プラスミドの哺乳類細胞への導入、及び導入された細胞の培養>
 6ウェルの平底細胞培養プレート(VIOLAMO社)に、チャイニーズハムスター由来の培養細胞株であるCHO-K1細胞を播種した。播種した細胞を、Ham’s F-12K培地(富士フイルム和光純薬社)に10%(v/v)ウシ胎児血清を添加した培地(実施例2において「培養培地」とも称する。)中で、37℃かつ5%COの条件で2日間培養した。各ウェルに、ScreenFect(登録商標) A plus(富士フイルム和光純薬社)を用いて、供給業者が提供するプロトコールに従って、1ウェルあたり2.5μgの色素タンパク質発現プラスミド、及びトランスフェクション試薬を添加し、各ウェルの細胞に色素タンパク質発現プラスミドをトランスフェクションした。トランスフェクション後の細胞を、37℃かつ5%COの条件で1日間培養した。培養後の細胞を含む各ウェルに、トランスフェクションされた核酸からタンパク質を発現した細胞を選別するために、抗生物質G418(富士フイルム和光純薬社)を1mg/mlで添加した。G418添加後の細胞を、37℃かつ5%COの条件で6日間、35℃かつ5%COの条件で6日間、32.5℃かつ5%COの条件で6日間、又は30℃かつ5%COの条件で7日間培養した(培養工程)。本培養においては、適時に培地交換を行い、また継代操作は行わなかった。
<工程3:標識された細胞の評価(細胞濃縮前)>
 工程2における培養後、各ウェルから培養培地を除去し、細胞をPBS(-)で洗浄した。培養後の細胞について、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡(DMi1倒立顕微鏡、Leica社、倍率10倍)で観察した。図4は、37℃かつ5%COの条件で6日間培養した細胞について、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡で観察した結果を示す図である。図5は、35℃かつ5%COの条件で6日間培養した細胞について、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡で観察した結果を示す図である。図6は、32.5℃かつ5%COの条件で6日間培養した細胞について、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡で観察した結果を示す図である。図7は、30℃かつ5%COの条件で7日間培養した細胞について、洗浄操作後、PBS(-)中の細胞を位相差顕微鏡で観察した結果を示す図である。図4~7中のスケールバーの長さは50μmである。各色素タンパク質が導入された細胞は、ディッシュに接着しており、37℃かつ5%COの条件で6日間、35℃かつ5%COの条件で6日間、32.5℃かつ5%COの条件で6日間、及び30℃かつ5%COの条件のいずれでも、7日間培養しても生存していることが確認された。
 図8は、37℃かつ5%COの条件で6日間培養され、続く洗浄操作後のPBS(-)中の細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。図9は、35℃かつ5%COの条件で6日間培養され、続く洗浄操作後のPBS(-)中の細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。図10は、32.5℃かつ5%COの条件で6日間培養され、続く洗浄操作後のPBS(-)中の細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。図11は、30℃かつ5%COの条件で7日間培養され、続く洗浄操作後のPBS(-)中の細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。図4~11の結果によれば、確かにディッシュ上に細胞は存在する一方、細胞が平面的に接着した状態では、色素タンパク質による細胞の標識を、目視で明確に検出し比較することが困難であった。
<工程4:細胞数のカウント、及び細胞の濃縮>
 工程3の後の細胞を、0.25%トリプシン(Gibco社)で処理し、ディッシュから剥離した。得られた細胞懸濁液を1.5mLチューブに回収した。トリパンブルー染色により生細胞数をカウントし、チューブ1本あたりの生細胞数が2.5×10細胞となるように細胞懸濁液を別の1.5mLチューブに分取した。遠心分離機(Suprema21、トミー精工社)を用いて、そのチューブを、室温下、3000rpmで3分間遠心した。上清を除去し、チューブの底に得られたペレットをPBS(-)で洗浄することで、濃縮された細胞を得た。
<工程5:標識された細胞の評価(細胞濃縮後)>
 図12は、工程4で得られた、濃縮された細胞について、室内灯下で取得したデジタル写真である。図13は、各条件の比較のために、図12に示した画像の、輝度及びコントラストが調整された画像である。図14は、図12に示したRGB画像を、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の独立したチャンネルに分割した画像である。図15は、図12のRGB画像を、HSB色空間、H(Hue、色相)、S(Saturation、彩度)、B(Brightness、明度)に分割した画像を示す。また、図16は、図15に示したaeCP597(37℃、32.5℃、30℃)の結果に関して、偏角をH(Hue)とし、かつ極からの距離をS(Saturation)として、極座標上にプロットした結果を示す。図17は、工程4で得られた、濃縮された細胞を、PBS(-)500μLに懸濁した細胞懸濁液について、室内灯下で取得したデジタル写真である。図18は、各条件の比較のために、図17に示した画像の、輝度及びコントラストが調整された画像である。
 図12~14の結果によれば、供試した6つの色素タンパク質のうち、cjBlue、gfasCP、asFP595、Rtms5及びaeCP597の5つにおいて、培養温度が30℃の低温に近づくほど呈色が強くなった。特に、cjBlue、gfasCP、Rtms5及びaeCP597では、培養温度が37℃の場合の呈色強度と、培養温度が30℃又は32.5℃の場合の呈色強度との間に、目視において差が見られた。さらに、特にcjBlue及びaeCP597では、培養温度が37℃の場合には目視における呈色がほぼ見られなかった一方で、培養温度が30℃又は32.5℃の場合には明確な呈色が見られた。これらのことは、図15及び16の結果からも明らかであり、特にaeCP597では、培養温度が37℃の場合と比較して、培養温度が30℃又は32.5℃の場合に、彩度が大きく、より強く呈色していることが半定量的にも確かめられた。
 また、図17及び18によれば、濃縮されていない細胞懸濁液の状態では、培養条件同士、又は色素タンパク質同士で、呈色の強さを比較することは難しかった。このことから、細胞を濃縮することで、目視の呈色を指標として簡便かつハイスループットなスクリーニングが可能となることが示唆された。

Claims (8)

  1.  色素タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養することを含む、色素タンパク質で標識された哺乳類細胞の製造方法。
  2.  色素タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養すること、及び
     前記哺乳類細胞の可視光吸収を評価すること、
    を含む、色素タンパク質による哺乳類細胞標識の評価方法。
  3.  候補タンパク質を発現させる核酸が導入された哺乳類細胞を、37℃未満で培養すること、及び
     前記哺乳類細胞の可視光吸収を評価すること、
    を含む、色素タンパク質のスクリーニング方法。
  4.  可視光吸収を評価する前に、37℃未満で培養された前記哺乳類細胞を濃縮することをさらに含み、
     前記哺乳類細胞の可視光吸収の評価が、濃縮された前記哺乳類細胞の呈色を指標として行われる、請求項3に記載の方法。
  5.  前記色素タンパク質の400~800nmの領域における極大吸収波長のモル吸光係数が、5.0×10[L/mol・cm]以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6.  前記色素タンパク質が、哺乳類動物以外の生物由来の色素タンパク質又はその改変タンパク質である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  7.  前記色素タンパク質を発現させる核酸は、導入された細胞の娘細胞にも分配導入される核酸又は導入された細胞のゲノムDNAに前記色素タンパク質をコードする領域が取り込まれる核酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  8.  前記培養することが、33℃以下で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
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