明 細 書
タンパク質の検出方法及びそれに用いる蛍光色素 技術分野
[0001] 本発明は、タンパク質の検出方法及びそれに用いる蛍光色素に関する。
背景技術
[0002] 近年、ヒトゲノムの全容が明らかにされ、遺伝子治療や遺伝子診断等を目的とした ポストゲノム研究が盛んに行われている。特に、ゲノム情報を利用して、一つの生物 や細胞に含まれるすべてのタンパク質について網羅的'系統的に性質や発現動態を 解析するプロテオーム解析にぉレ、ては、遺伝子の発現により産生される微量タンパク 質を高感度に検出'同定する必要がある。また、ガンやウィルスによる感染症などの 疾病は、それぞれ特殊なタンパク質を生成させるため、これら特殊なタンパク質を疾 病のマーカーとして取り扱レ、、疾病の診断や治療に応用することが可能であるが、こ れら特殊なタンパク質を高感度に検出 ·同定する必要がある。
[0003] タンパク質の高感度分析法としては、例えば、試料タンパク質を蛍光色素により標 識し (非特許文献 1)、電気泳動による分離を行った後、 MALDI-TOF MS等の質量分 析計を用いて分画されたタンパク質の分子量を測定し、データベース検索を行って タンパク質の同定を行う方法が用いられている。また、ウェスタンブロッテイングなどの ブロッテイング法、更に発現解析やタンパク質間の相互作用の解析には、 DNAチップ の技術を利用したプロテインチップが使用されている(例えば、非特許文献 2)。プロ ティンチップは、蛍光色素により標識されたタンパク質を用レ、、疎水性物質やイオン 交換体や金属イオン等を貼り付けてタンパク質の発現解析に使用し、あるいは抗体 等を貼り付けてタンパク質間の相互作用の解析に使用する。プロテインチップを用い ることにより、多種類のタンパク質の発現動態や相互作用の同時解析を簡便かつ迅 速に行うことができる。
[0004] また、電気泳動を用いたタンパクの分割は、ゲルにタンパク質を乗せた後、両末端 にセットした電極に電気を通じることでクロマト上を移動させ、分子量等の違いによつ て分割する。この後、ゲルを蛍光色素溶液に浸すことで蛍光標識を行う(例えば、特
許文献 1及び 2)。しかし、ゲルを乾燥させると蛍光消光が生じるため、湿潤状態で定 量を行っているが膨潤したゲルの厚みなどから正確な定量が行えないのが現状であ る。
特許文献 1 :特表 2003— 531946号公報
特許文献 2:特開 2004— 317297号公報
非特許文献 1 : Michael Brinkley, Bioconjugate Chem" 1992, 3, 2-13
非特許文献 2 : Paul Cutler, Proteomics, 2003, 3, 3-18
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] しかしながら、蛍光強度の変化を測定する場合、蛍光強度の増大幅に再現性がな ぐまた蛍光強度が微弱で遊離状態との差異が小さい場合、タンパク質の高感度の 検出が困難であるという問題がある。微弱な蛍光強度を測定しょうとすると、励起光の 強度を増加せざるを得ず、光源が大型化したり、試料のダメージが大きくなるという問 題もある。さらに、プロテインチップを用いて測定を行う場合、チップ上の試料が乾燥 することにより、タンパク質に結合している蛍光色素の蛍光が消光するという問題もあ る。特に、 πから といった微量試料の場合、試料が乾燥しやすいため、非常に大き な問題となる。また、蛍光色素によっては温度安定性が低ぐ測定に時間を要すれば 、定量性に問題が生じる事も考えられる。
[0006] そこで、本発明は、上記の課題を解決し、高感度の検出が可能で操作の簡便なタ ンパク質の検出方法及びそれに用いる蛍光色素を提供することを目的とした。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、従来の蛍光強度の変化 に基づく検出方法と異なる全く新しいタンパク質の検出方法が可能なことを見出して 本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明のタンパク質の検出方法は、蛍光色素で標識したタンパク質を検 出するタンパク質の検出方法であって、遊離状態で観測される第 1の蛍光波長より短 波長であって、タンパク質に結合した状態で観測される第 2の蛍光波長に基づく蛍光 を計測してタンパク質を検出することを特徴とする。
[0008] 本発明によれば、結合状態における蛍光強度が弱い場合であっても、遊離状態で 観測される第 1の蛍光波長より短波長であって、タンパク質に結合した状態で観測さ れる第 2の蛍光波長の蛍光を測定する、例えば、第 2の蛍光波長値やその蛍光強度 を測定すれば良いので、従来の検出方法に比べより高感度の検出が可能となる。ま た、微弱な蛍光強度を測定するため、励起光の強度を上げる必要もない。また、熟練 していない検査員でも容易に判別することが可能となる。また、タンパク質を段階的に 添加すると、タンパク質との結合量の増加と供に、第 2の蛍光波長は短波長にシフト するので、第 1の蛍光波長からのシフト値とタンパク質の量との関係からタンパク質を 定量することちできる。
[0009] また、本発明の検出方法の一態様として、試料中のタンパク質を分離手段に供し、 分離した画分を質量分析に供する検出方法の場合、タンパク質を分離手段に供する 前に、第 2の蛍光波長を発生する第 1の蛍光色素によりタンパク質を標識することが できる。さらに、第 1の蛍光色素によりタンパク質を標識するに先立って又は同時に、 タンパク質に結合した状態で第 1の蛍光波長が短波長にシフトしない第 2の蛍光色素 によりタンパク質を標識し、次いで分離手段に供することもできる。
[0010] また、本発明の検出方法の別の態様として、タンパク質と上記第 2の蛍光波長を発 生する第 1の蛍光色素とを溶液中で反応させ、その溶液を測定基板に点着し、その 測定基板からの第 2の蛍光波長に基づく蛍光画像を計測することができる。さらに、 タンパク質と第 1の蛍光色素とを溶液中で反応させるに先立って又は同時に、タンパ ク質に結合した状態で第 1の蛍光波長が短波長にシフトしない第 2の蛍光色素をタン パク質と溶液中で反応させることもできる。
[0011] また、第 1の蛍光色素はタンパク質と静電結合するァニオン性基を有することが好ま しい。また、第 2の蛍光色素はタンパク質と共有結合する共有結合性基を有すること が好ましい。その共有結合には、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、エステル結合 又はグァニジン結合等を挙げることができる。
[0012] 本発明の検出方法には、第 1の蛍光色素として、タンパク質と結合するァニオン性 基が直接あるいは連結部を介して有機 EL色素に結合したァニオン性蛍光色素を用 レ、ることができる。ここで、上記ァニオン性基は、カルボキシル基、スルホニル基、硫
酸塩基、リン酸塩基及びそれらの組み合わせのいずれかを用いることができる。
[0013] また、上記連結部には、 -CH - - NHCOO- - CONH - - CH NH - - CH NR - - C
2 2 2
00- -SO NH - - HN-C(=NH)_NH - _0_ -S - -NR- (Rはアルキル基)、 - (CH - C
2 2
H - 0) - (nは 1から 10の整数)、- CH=CH - - C≡C - - Ar_及び- CO- Ar_NR-からな
2 n
る群から選択される官能基を少なくとも 1種用いることができる。
[0014] また、上記有機 EL色素には、 1種以上のへテロ原子、セレン原子又はボロン原子を 含む 5員環化合物と共役系を有する 6員環化合物とから成る縮合多環化合物を用い ること力 Sできる。
[0015] また、上記縮合多環化合物には、以下の一般式(1)、(2)又は(3)のいずれか 1種 で示されるァゾール誘導体を用いることができる。
[0016] [化 1]
(3)
ここで、式中、 R R R Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキ
1 2 3 4
ル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、シァノ 基、スルホニル基、芳香族炭化水素基、複素環基、ヘテロ原子を環内に含む芳香族
基などの置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基又 はへテロ原子を環内に含む芳香族基を示し、 Xは置換基を有していてもよい窒素原 子又は硫黄原子又は酸素原子又はセレン原子、ボロン原子を示し、 R'は芳香環を含 んでも良いアルキル基又はアルケニル基等の脂肪族炭化水素基あるいは芳香族炭 化水素基、 An—は、 CI—、 Br―、 I—等のハロゲン化物イオン、 CF SO―、 BF―、 PF—を示す。
[0018] また、上記の Rと Rに、チオフヱン誘導体、フラン誘導体、ピロール誘導体、イミダゾ ール誘導体、ォキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ピラゾール誘導体及びピリ ジン誘導体からなる群から選択された 1種を用いることができる。
[0019] また、上記の Rと Rに、スルホ二ル基を有するフエ二ル基を用いることができる。
[0020] また、上記縮合多環化合物に、以下の一般式 (4)、(5)、(6)、(7)又は (8)で示さ れるイミダゾール誘導体を用いることもできる。
[0021] [化 2]
(7) (8) ここで、式中、 R、 R、 R、 R、 Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ァ
1 2 3 4 5
ノレキル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、シ ァノ基、スルホニル基、芳香族炭化水素基、複素環基、ヘテロ原子を環内に含む芳 香族基などの置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環
基又はへテロ原子を環内に含む芳香族基を示し、 R、 R、 R、 R、 Rは同じでも異な
1 2 3 4 5
つていても良ぐ R\ R"は芳香環を含んでも良いアルキル基又はアルケニル基等の 脂肪族炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基、 An—は、 Cl—、 Br―、 Γ等のハロゲンィ匕 物イオン、 CF SO―、 BF―、 PF—を示す。
3 3 4 6
[0023] また、上記の Rと Rに、チオフヱン誘導体、フラン誘導体、ピロール誘導体、イミダゾ
2 3
ール誘導体、ォキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ピラゾール誘導体及びピリ ジン誘導体からなる群から選択された 1種を用いることができる。
[0024] また、上記の Rと Rに、スルホ二ル基を有するフヱニル基を用いることもできる。
2 3
[0025] 本発明のァニオン性蛍光色素は、試料が乾燥しても消光することがないので、乾燥 状態でも高感度の検出が可能となる。例えば、溶液中でァニオン性蛍光色素とタン パク質とを反応させ、その溶液をプロテインチップの基板上に点着させて、イメージス キヤナなどで画像化して検出することもできる。また、本発明に用いるァニオン性蛍光 色素は最近開発されたドライアッセィにも用いることが可能であり、使用方法を選ばな い試薬である。また、熱に対して安定であり、常温での長期保存に耐えることができる ので、取り扱いが容易である。
[0026] 上記のァニオン性蛍光色素が本発明の検出方法に好適に使用できる理由につい ては、以下の理由が考えられる。本発明者の知見によれば、ァニオン性基を有する 従来の蛍光色素、例えば、メチルオレンジ、オレンジ G等を用いても、蛍光波長のシ フトは全く観測されなかった。これに対し、上記のァニオン性蛍光色素を用いると、蛍 光波長がより短波長にシフトし (ブルーシフトし)、蛍光強度が増加した。また、吸収波 長がより長波長にシフトし (レッドシフトし)、その強度は低下した。ァニオン性蛍光色 素はタンパク質の正荷電基、例えばァミノ基と静電結合するが、有機 EL色素を発色 部に用いると、有機 EL色素は近接したタンパク質との相互作用によりエネルギーが 流出し易くなることによると考えられる。また、ァニオン性基から成る結合部を有しない 場合、発色部が有機 EL色素から成る色素を用いても、蛍光波長のブルーシフトも蛍 光強度の増カロも観測されなかった。ァニオン性基から成る結合部を有しなレ、蛍光色 素を用いる場合、蛍光色素はタンパク質の表面の官能基のみと反応して共有結合を 形成すると考えられる。これに対し、ァニオン性基から成る結合部を有する蛍光色素
は、分子量も小さく立体障害も少ないため静電結合によりタンパク質の表面のァミノ 基のみならず深部のアミノ基とも結合するため、前述のようにタンパク質の深部(疎水 場)にも位置することとなり、これにより、ブルーシフトと蛍光強度の増加が起きたもの と考えられる。
発明の効果
[0027] 本発明の検出方法は、以下のような効果を有する。
すなわち、遊離状態で観測される第 1の蛍光波長より短波長であって、タンパク質 に結合した状態で観測される第 2の蛍光波長値及びその蛍光強度を測定することに より、従来に比べ、より高感度の検出が可能となる。また、タンパク質との結合量の増 加に伴い第 2の蛍光波長はより短波長にシフトするので、蛍光色素に段階的にタン パク質を添加し、第 1の蛍光波長からの蛍光波長のシフト値からタンパク質を定量す ることもできる。また、試料が乾燥状態でも蛍光を発することができるので、タンパク質 の検出を簡便且つ高精度な定量を行うことができる。更に、本発明に用いる蛍光色 素は、 Cy3や Cy5、 Alexa色素よりも熱安定性が高ぐ退光性も観測されないので、取り 扱いは容易で、さらに Cy3や Cy5に比べ安価であるので、より低コストでタンパク質の 検出を行うことができる。また、本発明の蛍光色素は乾燥したときに最大の量子収率 を示すことから、電気泳動によりタンパク質を分割する場合に、ゲルを乾燥させること で極力厚みを薄くすることができるため従来よりも精度の高い定量を行うことができる 図面の簡単な説明
[0028] [図 1]本発明における蛍光色素の色調の変化の一例を示す写真である。
[図 2]本発明の実施例 1における蛍光色素の UVスぺタトノレの変化を示す図である。
[図 3]本発明の実施例 1における蛍光色素の蛍光スペクトルの変化を示す図である。
[図 4]本発明の実施例 1における蛍光色素の UVスぺタトノレの変化を示す図である。
[図 5]本発明の実施例 2における蛍光色素の蛍光スペクトルの変化を示す図である。
[図 6]本発明の実施例 2におけるインスリン濃度と蛍光ピーク波長との関係を示すダラ フである。
[図 7]本発明の実施例 2におけるインスリン濃度と蛍光強度との関係を示すグラフであ
る。
[図 8]本発明の実施例 3における蛍光色素の蛍光スペクトルの変化を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
[0029] 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の検出方法は、蛍光色素で標識したタンパク質を検出するタンパク質の検 出方法であって、遊離状態で観測される第 1の蛍光波長より短波長であって、タンパ ク質に結合した状態で観測される第 2の蛍光波長に基づく蛍光を計測してタンパク質 を検出する。
本発明に用いるァニオン性蛍光色素の蛍光波長は、タンパク質との結合量の増加 とともに、遊離状態の蛍光波長からより短波長に徐々にシフトし、それ以上蛍光波長 力 Sシフトせず、かつ蛍光強度も増加しない飽和状態に至る。従って、遊離状態から飽 和状態に至る間の中間状態の蛍光波長値及びその蛍光強度を用いて、試料中のタ ンパク質の存在の有無の確認そしてその定量を行うことができる。また、ァニオン性 蛍光色素にタンパク質を段階的に添加し、添加したタンパク質の量と遊離状態の蛍 光波長からのシフト値との関係から、タンパク質を定量することもできる。
[0030] 本発明の対象とする試料は、タンパク質を含むものであれば特に限定されなレ、。単 純タンパクであるコラーゲンも標識することが可能であり、電気泳動後、標識すること が可能である。また、アミノ基を有する糖鎖及びペプチドの検出に用いることが可能 である。また、抗体の標識においてもこれまでと同様の取り扱いで良ぐ抗原抗体反 応にも用いることが可能である。例えば、抗体抗原チップをはじめ、エバネセント波蛍 光免疫測定法など、あらゆる手法で抗体反応を観察することが可能である。
[0031] 本発明の検出方法は、溶液状態の試料であっても、固体状態の試料であっても適 用が可能である。
溶液状態の試料の場合、例えば、所定濃度のァニオン性蛍光色素を溶解させた溶 液にタンパク質を含む試料溶液を添加し、蛍光分光光度計等を用い、溶液の蛍光ス ベクトルを測定し、第 2の蛍光波長の有無及びその蛍光強度もしくは蛍光波長のシフ ト値力 試料濃度を検出する。あるいは、第 2の蛍光波長が予めわかっている場合に は、測定波長を第 2の蛍光波長に固定し、蛍光強度から試料濃度を検出することもで
きる。また、タンパク質を含む試料溶液にァニオン性蛍光色素を溶解させた溶液を添 加する方法を用いることもできる。
[0032] また、固体状態の試料の場合、例えば、以下の方法を用いることができる。タンパク 質とァニオン性蛍光色素とを溶液状態で反応させ、次いでその溶液を測定基板、例 えばプロテインチップ上にスポットして点着し、そのチップをイメージスキャナ等を用い て画像化して試料濃度を検出する。あるいは、上に予めァニオン性蛍光色素を固定 し、次いでその測定基板にタンパク質を含む試料溶液を点着させることもできる。
[0033] ここで、遊離状態で観測される第 1の蛍光波長とは、溶液中あるいは固体中で、ァ 二オン性蛍光色素が単独で存在する場合に観測される蛍光波長をいう。一方、タン パク質に結合した状態で観測される第 2の蛍光波長とは、タンパク質に結合したァニ オン性蛍光色素に基づく蛍光波長であり、第 1の蛍光波長よりも短波長である。ここ で、第 2の蛍光波長の第 1の蛍光波長からのシフト値は、タンパク質に結合したァニ オン性蛍光色素の種類に依存し、少なくとも 2nm以上、より好ましくは 10 nm以上であ る。
[0034] 本発明の検出方法に用いるァニオン性蛍光色素には、タンパク質と結合するァニ オン性基が有機 EL色素に直接結合したものと、ァニオン性基が連結部を介して有機 EL色素に結合したものが含まれる。ここで、ァニオン性基は、タンパク質のアミノ基等 の正荷電基と静電結合する、カルボキシル基、スルホニル基、硫酸塩基、リン酸塩基 及びそれらの組み合わせのいずれかを用いることができる力 スルホ二ル基を用いる ことが好ましい。
[0035] また、第 2の蛍光色素として用いる共有結合性基を有する蛍光色素には、タンパク 質と結合する共有結合性基が有機 EL色素に直接あるいは連結部を介して結合した ものが含まれる。その共有結合には、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、エステノレ 結合又はグァニジン結合等を挙げることができる。共有結合性基には、例えば、イソ チオシァネート基、イソシァネート基、エポキシ基、ハロゲン化スルホニル基、塩化ァ シノレ基、ハロゲン化アルキル基、グリオキザル基、ァノレデヒド基、トリアジン基、カルボ ジイミド基そして活性エステル化したカルボ二ル基等を用いることができる。好ましく は、イソチオシァネート基、イソシァネート基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、ト
リアジン基、カルポジイミド基そして活性エステル化したカルボニル基から選択された いずれ力 1種を用いることが好ましい。より好ましくは、イソシァネート基、エポキシ基、 ハロゲンィ匕アルキル基、トリアジン基、カルポジイミド基そして活性エステルイ匕した力 ルポニル基から選択されたいずれ力、 1種を用いることが好ましい。タンパク質のァミノ 基とアミド結合を形成することができ、またタンパク質内のイミノ基に直接結合する事 ができるからである。さらに好ましくはトリアジン基、カルポジイミド基又は活性エステ ル化したカルボニル基である。また、これらの有機 EL色素がカルボン酸基を有する場 合、カルポジイミド誘導体、トリァジン誘導体の存在下で、標的分子中に存在するアミ ノ基およびイミノ基を直接修飾する事も可能である。
[0036] また、ァニオン性蛍光色素は、ァニオン性基に加え、共有結合性基を含むこともで きる。これにより、標的分子の間にさらに強い結合を形成することができる。共有結合 性基とァニオン性基の組合せは特に限定されず、上記の官能基と上記のスルホニル 基やカルボキシノレ基等のァニオン性基の組合せを挙げることができる。
[0037] 本発明の蛍光色素に用いる連結部は、発色部と、ァニオン性基又は共有結合性基 とを連結する構成部分であって、共有結合又は原子鎖を含む部分であり、 -(CH ) - (
2 n nは 1力ら 4の整数)、 _NHC〇〇_、 _C〇NH―、 _C〇〇_、 -SO NH―、 _HN_C(=NH)_NH_
2
、 -〇_、― S―、 -NR- (Rはアルキル基)、 -(CH― CH -〇) _ (nは 1から 10の整数)、 -CH=
2 2 η
CH -、 _C≡C -、 _Ar-及び- CO_Ar-NR-からなる群から選択される官能基を 1種以上 含むものを用いることができる。
すなわち、連結部は、上記の群から選択された 1種の官能基のみで構成しても良く 、 2種以上の官能基を含む構成とすることもできる。また、選択した一の官能基を 2個 以上含む構成とすることもできる。
[0038] 例えば、 1種の官能基のみで構成する場合、 -CONH -、 _COO-、 _0_、 -NR-等が 好ましレ、。また、 2種以上の官能基で構成する場合、以下の態様とすることができる。
(1) 2種の官能基で構成する場合
以下の一般式 (I)で表されるものを用いることができる。
-X1-X2- (I)
ここで、 XIと X2は、それぞれ独立に、 -(CH ) - (nは 1から 4の整数)、 -NHCOO-、 _C
2 n
ONH -、 - COO-、 -SO NH -、 - HN- C(=NH)_NH -、 - 0_、 _S -、 - NR- (Rはアルキル基)
2
、 - (CH - CH - O) - (nは 1から 10の整数)、- CH=CH -、 - C≡C -、 - Ar-及び- CO- Ar-
2 2 η
NR-からなる群から選択される 1種の官能基を用いることができる。好ましい組み合わ せとしては、 CONH-COO—、 -CH— 0—、 -CH— NR―、 _C〇NH— (CH ) -、 _C〇NH— (C
2 2 2 n
H - CH -〇) -である。
2 2 η
(2) 3種以上の官能基で構成する場合
(i)以下の一般式 (Π)で表されるものを用いることが好ましい。
-(CHRl)p-X3-(CHR2)q- (II)
式中、 X3は直接結合又は、 _NHCOO-、 -C0NH -、 - C00_、 -SO NH -、 -HN-C(=N
2
H)-NH -、 - 0-、 -S -、 - NR -、 -CH=CH -、 _C≡C -、 - Ar-及び- C0_Ar- NR-からなる群 から選択された少なくとも 1種の官能基を用いることができ、好ましくは- C〇〇_、 -co NH -、 - 0_、 -CH=CH -、 -C三 C-又は- Ar -、より好ましくは- C〇〇_、 - CONH -、 - 0-又 は- Ar-を用いることができる。また、 R1と R2はそれぞれ独立に、水素原子、あるいは 芳香環を含んでも良いアルキル基又はアルケニル基等の脂肪族炭化水素基、ある いは芳香族炭化水素基であって、必要によりスルホニル基、ヒドロキシル基、 4級アミ ン基及びカルボキシル基からなる群から選択されたいずれ力 1種の荷電基により置 換されたものを用いることができる。また、 Arはァリール基、好ましくは、フエ二レン基 又はナフチレンで基あり、必要に応じてスルホニル基で置換されたものを用いること ができる。 pと qはそれぞれ独立に 0から 20の整数、好ましくは 0から 10の整数、より好 ましくは 0から 5の整数であり、 p+q≥lである。
この連結部の具体例を挙げると、 _(CH2)p-CONH-(CH2)q -、 -(CH2)p-COO-(CH2 )q -、 _(CH2)p- CH(-R1-S03H)- (CH2)q -、 _(CH2)p-CH(-Rl_N+H3)-(CH2)q -、 -(CH 2)p-CH(- Rl- COOH)-(CH2)q -、 -(CH2)p_CH(- Rl- OH)-(CH2)q -、 _(CH2)p-(0_CH -) n-(CH2)q -、 _(CH2)p-CONH(-Rl_S03H)- (CH2)q -、 _(CH2)p- CONH(- Rl- S03H) _(CH2)q―、 _(CH2)p-C0NH(— Rl— N+H3)_(CH2)q -、 _(CH2)p_C0NH(— Rl— OH)-(CH2 )q -、 _(CH2)p- CONH(- Rl- COOH)-(CH2)q -、 _(CH2)p- C00_R1(_S03H)- (CH2)q- 、 _(CH2)p- COO-Rl(_OH)-(CH2)q -、 _(CH2)p_C00_Rl(- N+H3)- (CH2)q -、 -(CH2) p-C00_Rl(- COOH)- (CH2)q -、 _(CH2)p- Ar_(CH2)q -、 _(CH2)p-(Ar- COO)- (CH2)
q -、 _(CH2)p- (Ar- S03H)- (CH2)q -、 _(CH2)p- (Ar- N+H3)_(CH2)q -、 _(CH2)p- (Ar- O H)- (CH2)q -、 _(CH2)p- (Ar- COOH)- (CH2)q -、 _(CH2)p- C≡C_(CH2)q -、 -(CH2)p- C=C_(CH2)q -、 _(CH2)p-NR-(CH2)q -、 -(CH2)p-0_(CH2)q -、 -(CH2)p-S-(CH2)q- 、 -(CH2)p-HN-C(=NH)-NH- (CH2)q -、 _(CH2)p-CO_Ar-NR-(CH2)q-等を挙げるこ とができる。より好ましくは、 _(CH2)p- CONH_(CH2)q -、 - (CH2)p_C〇〇- (CH2)q- で ある。
(ii)以下の一般式 (III)で表されるものを用いることが好ましい。
-X4-(CHR3)r-X5- (III)
ここで、 X4及び X5は、それぞれ独立に、 -NHCOO-、 -CONH -、 - COO_、 -SO NH-
2
、 -HN_C(=NH)-NH―、 -CH NH―、 _CH NR―、 _〇-、 _S―、 _NR―、 _CH二 CH -、 _C≡C_
2 2
、 -Ar -及び _CO-Ar_NR -からなる群から選択された 1種の官能基であり、好ましくは、 -C〇NH-と- COO-、 -C〇0-と- CO〇-、 - COO-と- NR-等の組み合わせである。また 、 R3は、水素原子、あるいは芳香環を含んでも良いアルキル基又はアルケニル基等 の脂肪族炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基であって、必要によりスルホニル 基、ヒドロキシノレ基、 4級ァミン基及びカルボキシル基からなる群から選択されたいず れカ 1種の荷電基により置換されたものを用いることができる。また、 Arはァリール基、 好ましくは、フエ二レン基又はナフチレンで基あり、必要に応じてスルホニル基で置換 されたものを用いることができる。 rは 0から 20の整数、好ましくは 0から 10の整数、より 好ましくは 0から 5の整数である。このスぺーサ一部の具体例を挙げると、 -CONH-(C H2)r- COO-、 -CONH-CH(- R3- OH)- COO-、 -CONH-CH(-R3- COOH)- COO-、 - CONH- CH(R3-S03H)-COO-、 - COO-(CH2)r-COO- 等を挙げることができる。 また、連結部に、アミノ酸又は 2〜20のアミノ酸力も成るペプチドリンカ一を用いるこ ともできる。アミノ酸には天然又は合成のアミノ酸を用いることができる。ここで、天然 アミノ酸には、グリシン、ァラニン、ノ リン、ロイシン、イソロイシン、 4 -ァミノ _2 -ヒドロキ シブタン酸、ホモセリン、セリン、トレオニン、ァスパラギン酸、グノレタミン酸、ァスパラギ ン、グノレタミン、リシン、ヒドロキシリシン、ァノレギニン、システィン、システィン酸、 2-アミ ノ -3-スルホサルファニルプロパン酸、 2 -ァミノ- 3-スルホキシプロパン酸、シスチン、メ チォニン、フエ二ルァラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン及び 4 -ヒド
ロキシプロリン等が含まれる。
[0040] 合成アミノ酸には、上記天然アミノ酸の D体や、分子内に少なくともァミノ基とカルボ キシル基とを有する修飾アミノ酸が含まれる。修飾アミノ酸は、一般式: H-N(R1)_(R2- C〇)_OHで表すことができる。ここで、 R1と R2は、それぞれ独立に、エステル、エーテ ノレ、チォエステル、チォエーテル、アミド、カルバミド又はチォカルバミドを介して又は 介さずに、スルホニル基、ヒドロキシル基、 4級ァミン基、及びカルボキシル基からなる 群から選択されたいずれ力 4種の荷電基により置換された炭化水素基又は芳香族基 又はへテロ環基を表す。さらに炭化水素基又は芳香族基又はへテロ環基は、それぞ れ、ハロゲン原子、ァノレキノレ基、アルケニル基、アルキニル基又はアルコキシ基の少 なくとも 1種で置換されていても良い。
[0041] 本発明の連結部に用いるより好ましいアミノ酸は、スルホ二ル基を有するアミノ酸で ある、システィン酸、 2-ァミノ- 3-スルホサルファニルプロパン酸、 2-ァミノ- 3-スルホキ シプロパン酸、そしてヒドロキシル基を有するチロシン、スレオニン、 4-ァミノ- 2-ヒドロ キシブタン酸、ホモセリン、セリンからなる群から選択されたいずれ力 1種である。さら に好ましくは、システィン酸、ホモセリン又はセリンである。
[0042] ペプチドリンカ一としては、それぞれ、 -C(-Rl)-CONH-C(-R2)-、 -C(-Rl)-CONH- C(- R2)- CONH-C(- R3)-、 _C(- Rl)- CONH_C(- R2)- CONH_C(- R3)- CONH_C(- R4) - 、で表されるジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドを用いることが好ましい。ここ で、 Rl、 R2、 R3、 R4は、水素原子、炭素数 1から 6のアルキル基、アルコール基、イン ドーノレ基、ヒドロキシフエニル基、ベンジル基、グァニジン基、チォエーテル基、アル キルチオール基、イミダゾール基又はアルキルアミン基等の置換基を表す。これらべ プチドは、ホモ又はへテロペプチドであって良い。具体例を挙げると、 Ala_Ser、 Glu_ Ala, Glu- Ala- Leu、 Gly_Pro、 Gly-Pro- Asn、 lie- Val、 Ile-Va卜 Met等を用いることがで きる。
[0043] また、ペプチドリンカ一の一部を必要によりスルホニル基及びカルボキシル基力、らな る群から選択された少なくとも 1種の荷電基を有するものを用いることができる。例え ば、これらのレ、ずれ力 4個の荷電基を有するアミノ酸を 1種以上含むペプチドリンカ一 を用いることができる。これにより、連結部に新たにァニオン性基を導入することなぐ
蛍光色素にァニオン性基を付与することができる。例えば、スルホ二ル基を有するシ スティン酸、 2-ァミノ- 3-スルホサルファニルプロパン酸、 2-ァミノ- 3-スルホキシプロパ ン酸、ヒドロキシル基を有するチロシン、スレオニン、 4-ァミノ- 2-ヒドロキシブタン酸、 ホモセリン、セリンを含む群から選択された少なくとも 1種のアミノ酸を含むペプチドリ ンカーを用いることができる。
[0044] 本発明の蛍光色素は、例えば、トリアジン基、カルポジイミド基及び活性エステル化 したカルボニル基のいずれ力、、より好ましくは活性エステル化したカルボ二ル基を用 いて合成することができる。活性エステル化したカルボニル基には、 N—ヒドロキシ— スクシンイミドエステルやマレイミドエステルを用いることができる力 N—ヒドロキシ一 スクシンイミドエステルを用レ、ることが好ましレ、。 N—ヒドロキシ一スクシンイミドを用レ、る ことにより、以下のスキーム 1の反応式 Iに示すように、縮合剤として DCCを用いること により N—ヒドロキシ一スクシンイミドエステル体を経由してアミド結合により EL色素と 標的分子が結合する。また、スキーム 1の反応式 IIに示すように、活性エステル化した カルボニル基には、トリァジン誘導体を用いることもできる。また、カルポジイミド基に は、 Ν,Ν'-ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)や 1-シクロへキシル -3-(2_モルホリ ノエチル)カルポジイミド等のカルポジイミド試薬を用いることができる。カルポジイミド 体を経由してアミド結合により EL色素と標的分子を結合させることができる(反応式 III )。また、分子内に予めカルポジイミド基、トリアジン基を導入した EL色素を、生体分 子内のアミノ基、イミノ基に対して直接結合させる事もできる(反応式 IV)。ここで、 Rは ァニオン性基を置換基として含む芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基 又はへテロ原子を環内に含む芳香族基を示す。なお、活性エステルにスルホニル基 を導入するには、例えば、反応式 Vの方法を用いることができる。
R *
Bye— N= C =N― Rs H
E
[0046] また、本発明の蛍光色素には、ァニオン性基に加え、共有結合を形成する反応性 基を含むものも含まれる。共有結合を形成する反応性基には、活性エステル化した カルボ二ル基を用いることが好ましい。タンパク質との間により強い結合を形成するこ とができる。
[0047] 2種以上の官能基を含む連結部においては、発色部に直接結合する官能基以外 の官能基は、発色部とァニオン性基との物理的距離を確保して、発色部とァニオン 性基の分子骨格の選択の自由度を確保する一方、ァニオン性基がタンパク質の深 部の正荷電基と結合し易くする効果を有する。これにより、特定のタンパク質のみを 選択的に標識することも可能となる。発色部に直接結合する官能基に窒素原子など
のへテロ原子を用いると、分子全体をより剛直な構造とすることができるので、発色部 同士のスタツキングを抑制することができる。また、酸素原子などを導入することで柔 軟な分子構造となり、スタツキング強度をコントロールすることが可能である。
[0048] 本発明に用レ、る有機 EL色素は、一対の陽極と陰極との間に固体状態で挟持され、 陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子とが再結合する際のエネルギー により発光可能な色素であれば特に限定されなレ、。例えば、テトラフエニルブタジェ ンゃペリレン等の多環芳香族化合物、シクロペンタジェン誘導体、ォキサジァゾール 誘導体、クマリン誘導体、ジスチリルビラジン誘導体、アタリドン誘導体、キナクドリン 誘導体、スチルベン誘導体、フヱノチアジン誘導体、ピラジノビリジン誘導体、ァゾー ノレ誘導体、イミダゾール誘導体、力ルバゾール誘導体そしてチォフェン誘導体等を 用いることができる。
[0049] 上記有機 EL色素の具体例としては、多環芳香族化合物として、ルブレン、アントラ セン、テトラセン、ピレン、ペリレン、タリセン、デカサイクレン、コロネン、テトラフェニル ブタジエン、テトラフエニノレシクロブタジエン、ペンタフェニノレシクロブタジエンを挙げ ること力 Sできる。シクロペンタジェン誘導体としては、 1 , 2, 3, 4—テトラフエ二ルー 1 , 3 シクロペンタジェン、 1 , 2, 3, 4, 5 ペンタフェニノレー 1 , 3 シクロペンタジェン を挙げることができる。ォキサジァゾール誘導体としては、 2 (4' t ブチルフエ二 ノレ)一 5— (4'—ビフエニル) 1 , 3, 4—ォキサジァゾール、 2, 5—ビス(4—ジェチル ァミノフエニル) 1 , 3, 4—ォキサジァゾールを挙げることができる。クマリン誘導体とし ては、クマリン 1 ,クマリン 6,クマリン 7,クマリン 30を挙げることができる。ジスチリルビ ラジン誘導体としては、 2, 5 ビス一(2— (4—ビフエ二ル)ェテニル)ピラジン、 2, 5 —ビス _ (4—ェチルステリル)ピラジン、 2, 9 _ビス _ (4—メトキシステリル)ピラジン を挙げることができる。アタリドン誘導体としてはアタリドンおよびその誘導体を挙げる こと力 Sできる。キナクドリン誘導体としてはキナクドリンおよびその誘導体を挙げること ができる。スチルベン誘導体としては、 1 , 1 , 4, 4—テトラフエ二ノレ一1 , 3—ブタジェ ン、 4, 4 '—ビス(2, 2—ジフエ二ルビニル)ビフエニルを挙げることができる。ァゾー ノレ誘導体、イミダゾール誘導体、力ルバゾール誘導体、チォフェン誘導体は本明細 書中に一般式で記載したもの使用することができる。
[0050] 本発明の検出方法に用いる好ましい有機 EL色素は、共役系を有する 5員環化合物 を含む化合物であって、その 5員環化合物が 1種以上のへテロ原子、セレン原子又 はボロン原子を含むものを挙げることができる。さらに、詳しくは共役系を有する 5員 環化合物から成る単環化合物と、その 5員環化合物と共役系を有する 6員環化合物 力 成る縮合多環化合物を挙げることができる。固体状態であっても、量子収率が大 きぐ強い蛍光を示すからである。 5員環化合物には、ァゾール誘導体あるいはイミダ ゾール誘導体が好ましい。さらに、ァゾール誘導体あるいはイミダゾール誘導体は 1 以上の 4級アンモニゥム基を有することが好ましい。水溶性を向上させことができるか らである。
[0051] なお、以下に説明する縮合多環化合物は前述の連結部を介してァニオン性基と結 合させてァニオン性蛍光色素として用いる。特に、ァニオン性基が直接結合した縮合 多環化合物は、それ自身をァニオン性蛍光色素として用いることができる。また、以 下の縮合多環化合物に直接又は連結部を介して共有結合性基と結合させ、第 2の 蛍光色素として用いることもできる。
以下の縮合多環化合物は、すべて本発明の検出方法に好適に使用することができ る力 好ましくは、ジァゾール誘導体 3,イミダゾール誘導体 2、チアジアゾール誘導 体、力ルバゾール誘導体、チアゾール誘導体、であり、さらに好ましくは、ォキサゾロ ピリジン誘導体 (ォキサジァゾロピリジン誘導体)である。
[0052] 以下に、縮合多環化合物の具体例について説明する。
(モノアゾール誘導体 1)
[化 4]
ここで、式中、 R、 R、 R、 R、 R、 Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原 子、ヒドロキシノレ基、アミノ基、シァノ基、あるいはスルホニル基などの置換基を有して も良い芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基又はへテロ原子を環内に 含む芳香族基を示す。 R、 R、 R、 R、 R、 Rは同じでも異なっていてもよい。 R'は 芳香環を含んでも良いアルキル基又はアルケニル基等の脂肪族炭化水素基あるい は芳香族炭化水素基、 An—は、 Cl—、 Br―、 Γ等のハロゲン化物イオン、 CF SO―、 BF―、
PF—を示す。なお、以下の一般式においても、特に断らない限り同様である。
(モノアゾール誘導体 2)
[化 5]
ここで、式中、 R、 Rは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シァ ノ基、アミノ基、スルホニル基などの置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は炭 化水素基又は複素環基又はへテロ原子を環内に含む芳香族基を示す。 R、 Rは同 じでも異なっていてもよい。なお、以下の一般式においても、特に断らない限り同様 である。また、 nは 1以上の整数、好ましくは:!〜 5であり、以下の一般式中でも同様で ある。
(ジァゾール誘導体 1)
[化 6]
ここで、式中、 R、 R、 R、 Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒド
1 2 3 4
口キシル基、アミノ基、シァノ基、あるいはスルホニル基などの置換基を有しても良い 芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基又はへテロ原子を環内に含む芳 香族基を示す。 R、 R、 R、 R、 R、 Rは同じでも異なっていてもよレ、。 R、 Rは、
1 2 3 4 6 7 2 3 置換基を有しても良い芳香族炭化水素基を用いることが好ましい。また、 Xは、置換 基を有しても良い窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はボロン原子であり 、特に断らない限り以下の一般式中でも同様である。
(ジァゾール誘導体 4)
[化 9]
(ジァゾール誘導体 5)
[化 10]
[0062] [化 13- 2]
ここで、式中、 R 、 R は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミ
10 11
ノ基、シァノ基、あるいはスルホニル基などの置換基を有しても良い芳香族炭化水素 基又は炭化水素基又は複素環基又はへテロ原子を環内に含む芳香族基を示す。 R
1
、 R は同じでも異なっていてもょレ、。また、 R は、置換基を有してもよいォレフィン基
0 11 12
又はパラフィン基であり、 nは 1から 3の整数、好ましくは 1である。なお、以下の一般式 においても、特に断らない限り同様である。
(ジァゾール誘導体 9)
[化 14-1]
[z-m^ [ goo]
TS .SlC/900Zdf/X3d 82 6ΖΪ8Ϊ0/800Ζ OAV
[0065] 上記のジァゾール誘導体ではあれば特に限定されなレ、が、以下の一般式で表され るォキサジァゾ口ピリジン誘導体を好適に用いることができる。
[0066] [化 15]
[0067] ォキサゾロピリジン誘導体は、そのカルボン酸誘導体を合成後、例えば、以下のス キーム 2に示す反応により、 Ν,Ν'-ジシクロへキシルカルポジイミド(DCC)を縮合剤と して用い、 Ν—ヒドロキシースクシンイミドエステルを含む活性エステル体へ誘導したも のを用いることが好ましい。
[0068] [化 16]
[0069] (トリアゾール誘導体 1)
[化 17]
[化 18]
[化 19]
5員環化合物として、チォフェン基を含む以下の誘導体を用いることもできる。 (チォフェン誘導体 1)
[化 21]
(チォフェン誘導体 3)
また、チォフェン誘導体の場合、非縮合系の化合物であり、以下の一般式で示され る 2,3,4,5-テトラフヱ二ルチオフェン誘導体を用いることもできる。
[化 23]
二で、式中、 R ,R ,R はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖、分岐または環状のァ
12 13
ルキル基、置換または未置換のァリール基、あるいは置換または未置換のァラルキ ル基を表し、 Arおよび Arは置換または未置換のァリール基を表し、さらに、 Arと ΑΓ
は結合している窒素原子と共に含窒素複素環を形成してもよい。また、 Yおよび Yは
1 2 水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環 状のアルコキシ基、置換または未置換のァリール基、置換または未置換のァラルキ ル基、あるいは置換または未置換のアミノ基を表す。
[0076] (チォフェン誘導体 4)
また、以下の一般式で示される 2,3,4,5 -テトラフヱ二ルチオフェン誘導体を用いるこ ともできる。
[化 24]
ここで、式中、 Ar〜Arはそれぞれ独立に、置換または未置換のァリール基を表し、
1 6
さらに、 Arと Ar、 Arと Arおよび Arと Arは結合している窒素原子と共に含窒素複素
1 2 3 4 5 6
環を形成していても良い。
[0077] また、 5員環化合物にイミダゾールを用い、以下の一般式で示すイミダゾール誘導 体を用いることもできる。
[0078] (イミダゾール誘導体 1)
[化 25]
[0079] (イミダゾール誘導体 2)
[化 26]
[化 27]
[化 28- 1]
[0082] [化 28- 2]
ここで、イミダゾール骨格は中央のベンゼン環 R , R , R , R の任意の位置に複数
8 9 10 11
ユニットが結合していても良レ、。また、 R は、置換基を有してもよいォレフィン基又は
12
パラフィン基であり、 nは 1から 3の整数、好ましくは 1である。
(力ルバゾール誘導体)
また、以下の一般式で示される力ルバゾール誘導体を用いることもできる。
[化 29]
[0084] また、共役系を有する 5員環化合物であって、 1種以上のへテロ原子、セレン原子 又はボロン原子を含む単環化合物を用いることもできる。特に限定されないが、例え ば、以下の一般式で表されるァゾール誘導体を用いることができる。
[0085] [化 30]
ここで、式中、 R、 R、 Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキ
1 4 5
シノレ基、アミノ基、シァノ基、あるいはスルホニル基などの置換基を有しても良い芳香 族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基又はへテロ原子を環内に含む芳香族 基を示す。 R、 R、 Rは同じでも異なっていてもよい。
1 4 5
[0086] 本発明の蛍光色素に用いる有機 EL色素には、以上、説明した縮合多環化合物及 び単環化合物であれば特に限定されないが、以下の一般式で表されるジァゾール 誘導体又はイミダゾール誘導体を好適に用いることができる。
[0087] [化 31]
(3)
[0088] [化 32]
[0089] さらに、上記のジァゾール誘導体及びイミダゾール誘導体の中で、ジァゾ口ピリジン 誘導体又はイミダゾロピリジン誘導体を好適に用いることができる。
[0090] 本発明の特に好ましい蛍光色素は、上記のジァゾ口ピリジン誘導体又はイミダゾロ ピリジン誘導体を発色部に含むものであり、以下の一般式で表すことができる。
[0091] [化 33]
)p-X3-(CHR")q-Z
[0093] -(CHR')p-X3-(CHR")q-は前述の連結部を表す。また、 Zはァニオン性基を表す。
ここで、上記の Rと Rに、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は炭化水素 基を用いることが好ましい。 Cy3に対応する緑色蛍光色素を得ることができる。芳香族 炭化水素基としてはフエニル基、トリル基、キシリル基又はナフチル基、より好ましくは フエニル基又はトリル基である。
[0094] あるいは、上記の Rと Rに、置換基を有しても良いチォフェン基、フラン基、ピロ一 ル基、イミダゾール基、ォキサゾール基、チアゾール基、ピラゾール基及びピリジン基 からなる群から選択された 1種、より好ましくはチォフェン基、イミダゾール基又はフラ ン基を用いることもできる。 Cy5に対応する赤色蛍光色素を得ることができる。
[0095] 本発明の検出方法は、溶液、固体あるいは半固体状態のタンパク質の蛍光を測定 する検出方法であれば、あらゆる検出方法に適用することができる。また、ペプチド、 抗体、アミノ基を有する糖などに関しても同様である。例えば、試料中のタンパク質を ァニオン性蛍光色素で標識し、この標識したタンパク質を分離手段に供し、 MALDI- TOF MS等の質量分析計により画分の分子量を測定し、データベース検索を行いタ ンパク質を同定することができる。ここで、分離手段には、イオン交換カラム HPLC、逆 相分配 HPLC、ゲル濾過 HPLC、又は電気泳動を用いることができる。電気泳動には 、一次及び二次泳動の用いることが可能であり、泳動後、ゲルを乾燥して定量が可能 である。
[0096] また、共有結合性蛍光色素と、それにァニオン性基を導入したァニオン性蛍光色 素とを用いることにより以下の検出方法が可能となる。ここで、共有結合性蛍光色素 は、それによりタンパク質を標識しても蛍光波長が変化しなレ、ものである。最初に、共 有結合性蛍光色素で標識する。その後、電気泳動を行い分割する。更に泳動後の
ゲル基板をァニオン性蛍光色素で標識すると蛍光波長は変化する。ァニオン性蛍光 色素は、タンパクの深部に位置するァミノ残基を標識可能なので、蛍光波長の変化 はタンパクの構造の違いによるものである。したがって、蛍光波長の変化からタンパク の構造を予測することも可能である。この際、用いる蛍光色素は、ァニオン性基以外 は構造が同じなので、蛍光色素の量子収率などの性能は全く同じである。従って、精 度の高い定量が可能となる。
[0097] また、プロテインチップを用いる検出方法には、本発明を以下のように適用すること ができる。タンパク質とァニオン性蛍光色素とを溶液中で反応させ、その溶液を測定 基板に点着し、その測定基板からの第 2の蛍光波長に基づく蛍光画像を計測するこ とができる。点着後は、所定温度で放置することによりタンパク質は基板上に固定さ れる力 必要によりインキュベーションを行うこともできる。また、プロテインチップ上で は、この蛍光色素で標識されたタンパクを捕捉する際、どのような状況下でも安定し た蛍光を発するため、これまでのように神経質に取り扱わなくてもよい。また、乾燥状 態でも蛍光消光を起こさないので乾燥状態でも安定な観測が可能である。また、前 述の、共有結合性蛍光色素と、それにァニオン性基を導入したァニオン性蛍光色素 とを用いる検出方法を用いることもできる。
実施例
[0098] 以下、実施例を用いてさらに詳細に本発明について説明する。
合成例 1.
活性エステル系ァニオン性蛍光色素の合成例を示す。
(1)発色部 (3)の合成
発色部 (3)は、以下のスキーム 2に従い合成した。
[0099] [化 35]
Sch me 2
[0100] 50 mL三口フラスコでォキサジァゾ口ピリジンカルボン酸 (1) 1.0 g (0.0026 moL)と N-ヒドロキシスクシンイミド (2) 0.30 g (0.0026 moL)を DMF 20mLに溶解した。これに N, Ν'-ジシクロへキシルカルボジイミド 0.54 g (0.0026 moUを 30分かけて滴下した。 滴下後、室温で 30時間撹拌した。減圧下、 DMFを留去した。残渣をシリカゲルカラム クロマトグラフィー(クロ口ホルム)で単離精製し、ォキサジァゾ口ピリジン活性エステル 体 (3)を 0.76 g、収率 62%で得た。
[0101] (2)スルホニル基の導入
活性エステル体 (3)を DMF中、タウリンを反応させ、スルホンィ匕された (4)へ誘導した ( scheme 3)。
[化 36]
Scheme 3
[0102] 合成例 2.
有機 EL色素として合成例 1で用レ、たォキサジァゾ口ピリジン誘導体を用レ、、連結部 にシスティン酸を用い、反応性基には活性エステル化したカルボニル基とァニオン性 基であるスルホニゥム基の両方を導入した。ォキサジァゾ口ピリジン活性エステル体 (3 )をシスティン酸と反応させ、連結部を導入したカルボン酸体 (5)を合成した。その後、 カルボン酸体 (5)をジォキサン中、 N-ヒドロキシスクシンイミドと反応させ、連結部を導 入したォキサジァゾ口ピリジン活性エステル体 (6)を合成した。以下に反応例を示す。
[0103] [化 37]
scheme 4.
[0104] 以下に、合成例 1と異なる部分のみの合成手順を示す。
(1)カルボン酸体 (5)の合成
50 mL三口フラスコでォキサジァゾ口ピリジン活性エステル体(3) 100 mg (0.21 mm ol)とシスティン酸 39 mg (0.23 mmol)を DMF 20mLに溶解した。その後、室温で 12時 間撹拌した。反応終了後、減圧下、 DMFを留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマト グラフィー(クロ口ホルム一メタノール = 7 : 3)で単離精製し、カルボン酸体 (5)を 98 mg ( 収率 88%)得た。
[0105] (2)活性エステル体 (6)の合成
次いで、 50 mL三口フラスコでォキサジァゾ口ピリジンカルボン酸体 (5) 80 mg (0.15 mmol)と N-ヒドロキシスクシンイミド 19 mg (0.17 mmol)を DMF 20mLに溶解した。これ に DMF 5 mLに溶解した N, Ν'-ジシクロへキシルカルボジイミド 35 mg (0.17 mmol)を 30分かけて滴下した。滴下後、室温で 30時間撹拌した。減圧下、 DMFを留去した。 残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロ口ホルム:メタノール = 10: 1)で単離精 製し、活性エステル体 (6)を 73 mg (収率 78%)得た。
[0106] 合成例 3.
合成例 4.
有機 EL色素として合成例 1で用レ、たォキサジァゾ口ピリジン誘導体を用レ、、連結部
にセリンを用いた。ォキサジァゾ口ピリジン活性エステル体 (3)をセリンと反応させ、連 結部を導入したカルボン酸体 (7)を合成した。以下に反応例を示す。
[化 38]
scheme 5.
[0108] 以下に、合成例 1と異なる部分のみの合成手順を示す。
(1)カルボン酸体 (7)の合成
50 mL三口フラスコでォキサジァゾ口ピリジン活性エステル体(3) 100 mg (0.21 mm ol)とセリン 26 mg (0.25 mmol)を DMF 20mLに溶解した。その後、室温で 12時間撹拌し た。反応終了後、減圧下、 DMFを留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ 一(クロ口ホルム—メタノール =7 : 3)で単離精製し、カルボン酸体 (7)を 79 mg (収率 8 1%)得た。
[0109] 実施例 1.
(実験方法)
活性エステルのスルホニル体 (4)を純水に溶解し、 0.1 M HEPES Buffer (2-[4-(2-Hydroxyethyl)-l-piperazinyl]ethanesulfonic acid) ( H 7.3)を混合した後、 BSA(Bovine Serum Albumin)を添加し、色調の変化をスペクトルで観察するため、ス ルホニル体 の UVスペクトルを測定し、次いで、蛍光スペクトルを測定してスルホニル 体 (4)と BSAの相互作用を観察した。 UVスぺクトノレは、 2000 しのセルに蛍光試薬 13 μ Μ、 26 /i Μを調製して測定した。また、蛍光スペクトルは、セル中で 26 μ Μの溶液 30 00 / Lを調製し、これに所定濃度となるように BSAを添加して測定した。
[0110] (結果)
スルホニル体 を含む Buffer液の色調は、 BSAを添加すると、黄色から黄緑色へ変 化した(図 1)。図 2にスルホニル体 4の UVスペクトルを示す。この結果より、スルホニル
体 (4)の最大吸収波長は 397 nmであることが分かった。次に、励起波長に 397 nmを用 いて蛍光スペクトルを測定した。結果を図 3に示す。ここで、 BSAは 1.6 μ Μの濃度に なるよう添加している。蛍光スペクトルは、 BSAの添カロにより 18 nmのブルーシフトを示 し、かつ蛍光強度は約 5倍に増大した。これは、スルホニル体 (4)が BSAのァミノ基と静 電結合し、 BSA表面とスルホニル体 との相互作用により、ブルーシフトが観測された と考えられる。また、スルホニル体 (4)が BSAの疎水場に位置することから、水との相互 作用がある程度解消されて蛍光強度の増大を示したと考えられる。
[0111] 次に、スルホニル体 26 μ Μ水溶液 2000 μ Lを調製し、そこへ BSA 0〜15 ηΜを 8 回に分割して添加した。その時の UVスペクトルを図 4に示す。 BSAの添加により淡色 効果を示すとともに、ピーク波長はレッドシフトした(15 ηΜで 7 nmのレッドシフト)。こ れより、スルホニル体 (4)は、 BSAの深部(疎水場)に位置しているものと考えられる。
[0112] なお、比較のため、スルホニル体 (4)に代えて活性エステル体 (3)を用いた力 BSAの ピーク波長の変化及び蛍光強度の増加は観測されなかった。活性エステル体 (3)は、 活性エステル基とアミノ基との求核置換反応によって生成するアミド結合を介してタン パク質と結合するが、スクシンイミド分子などの立体障害により BSA深部に位置するァ ミノ基とは結合せず、表面のアミノ基のみと結合すると考えられる。一方、スルホニル 体 4は、静電結合により BSA表面のアミノ基のみならず深部のアミノ基とも結合するた め、前述のように BSAの深部(疎水場)にも位置する。これにより、ブルーシフトと蛍光 強度の増加が起きたものと考えられる。
[0113] 実施例 2.
(実験方法)
次に、タンパク質にインスリン (Inslin)を用いた以外は、実施例 1と同様の方法で行つ た。スルホニル体 (4) 26.7 μ Μを蛍光セル中で 2000 μ L調製し、そこへ、インスリン 0 〜 232 μ Μを 6回に分けて添加した。
[0114] (結果)
インスリンを添加した時の蛍光スペクトルを図 5に示す。 BSAの場合と同様に 19 nm のブルーシフトと、蛍光強度の増大が観測された。添加した際のセル中のインスリン 濃度と各濃度におけるピーク波長 FLmaxとの関係を図 6に、インスリン濃度とピーク波
長における蛍光強度 Δ Int. (スルホニル体 のみの蛍光強度を差し引いた値)との関 係を図 7に示す。インスリン濃度の増加とともに、ピーク波長 FLmaxが直線的に低波 長にシフトした。また、インスリン濃度の増加とともに、蛍光強度 Δ Int.が直線的に増 加するという結果が得られた。これより、蛍光強度の変化から、あるいはピーク波長の 変化からインスリンの濃度を算出することが可能であることがわかる。
[0115] 実施例 3.
(実験方法)
次に、タンパク質にリゾチームを用いた以外は、実施例 1と同様の方法で行った。ス ルホニル体 (4) 26.7 μ Μを蛍光セル中で 2000 μ L調製し、そこへ、リゾチーム 0〜 4 6.6 μ Μを 4回に分けて添加した。
[0116] (結果)
リゾチームを添カ卩した時の蛍光スペクトルを図 8に示す。リゾチームを添カ卩しても、蛍 光強度の増加も、ピーク波長のブルーシフトも観測されなかった。このことは、スルホ ニル体 (4)が、リゾチームと結合しないことを示している。これは、タンパク質の表面に 位置するアミノ基はタンパク質の種類によって異なる配座を取っていることから、スル ホニル体 が、リゾチームのァミノ基とは結合しないことを意味しているものと考えられ る。し力 ながら、スルホニル体 (4)は BSAやインスリンと結合することから、選択的にタ ンパク質を標識可能な蛍光試薬としてスルホニル体 (4)を用いることが可能であると考 えられる。
[0117] 実施例 4.
合成例 2の活性エステル体 (6)を用レ、、実施例 1と同様の方法により、 BSAを添加し た時の色調の変化をスペクトルで観察した。
[0118] 蛍光スペクトルは、 BSAの添カロにより 18 nmブルーシフトし、かつ蛍光強度は約 5倍 に増大した。
[0119] 実施例 5.
合成例 3のカルボン酸体 (7)を用レ、、実施例 1と同様の方法により、 BSAを添加した 時の色調の変化をスペクトルで観察した。
[0120] 蛍光スぺクトノレは、 BSAの添カロにより 19 nmブノレーシフトし、かつ蛍光強度は約 4.5
倍に増大した。
[0121] 比較例 1.
従来使用されているメチルオレンジを用いた以外は、実施例 1と同様の方法で行つ た。し力、し、メチルオレンジを添加しても、蛍光強度の増加も、ピーク波長のブルーシ フトも観測されなかった。
[0122] 以上説明したように、本発明の検出方法によれば、タンパク質の検出を簡便且つ高 精度な定量を行うことができる。更に、本発明に用いるァニオン性蛍光色素は、 Cy3 や Cy5、 Alexa色素よりも熱安定性が高ぐ退光性も観測されないので、取り扱いは容 易で、さらに Cy3や Cy5に比べ安価であるので、より低コストでタンパク質の検出を行う ことができる