明 細 書
トリフエ二レン化合物、 その製造方法、 およびそれを用いた有機電界発光素子 技術分野
本発明は、 励起三重項エネルギーの大きい、 シリルェチニル基を有する新規な トリフエ二レン化合物、 その製造方法、 およびそれを用いた有機電界発光素子に 関する。 背景技術
多層積層構造からなる燐光を利用した有機電界発光素子(以下、 燐光を利用し た有機電界発光素子を燐光発光素子とも称する) は既に知られている (米国特許 第 6097147号明細書参照)。 蛍光のみを利用して発光させる場合、 励起一 重項状態を利用するため、 内部量子効率の理論上の限界値は 25%であるが、 燐 光発光素子は三重項状態の励起エネルギーが発光に寄与するため、 内部量子効率 の理論的限界値は 100 %と考えられている。従つて、燐光発光素子は発光効率、 即ち、 駆動電流密度に対する発光輝度の比率を向上させることができるため、 蛍 光発光素子に比べて優れている。
燐光発光素子は発光層のホスト化合物に燐光発光性の燐光ドーパントを少量 ドーピングすることで得られる。ホスト化合物は燐光ドーパントの励起三重項ェ ネルギ一より大きい励起三重項エネルギーを有する必要があり、利用可能な化合 物が限られている。例えば App 1. Phy s. Le t t., 75, 4 (1999) に開示されているカルバゾール誘導体ゃ特開 2004- 103463号公報、 A pp 1. Phy s. Le t t., 83, 3818 (2003) に開示されている匕 合物が燐光ホスト化合物に用いられている。 しかしながら、 既存の燐光ホスト化 合物を用いた燐光発光素子は駆動時の電圧が高い等の問題を有するため、新規な ホスト化合物の開発が必要とされている。
ケィ素を含む置換基を有するトリフエニレン化合物としていくつかの化合物 が知られている (特開 2003-252818号公報、 特開平 11— 25578
1号公報、 特開 2003-252880号公報参照)。 特開 2003— 2528 18号公報および特開平 11— 255781号公報では、 ゲイ素を含む側鎖が酸 素原子を介してトリフエ二レン骨格に結合した化合物が開示されている。 また、 特開 2003— 252880号公報参照ではケィ素を含む側鎖が直接ケィ素を 介してトリフエ二レン骨格に結合した化合物が開示されている。 しかしながら、 シリルェチニル基を有するトリフエ二レン化合物については知られていなかつ た。 そしてシリルェチニル基を有するトリフエ二レン化合物 (末端 Hのもの) に 関して、 2, 3,6,7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ二 レンの脱シリル化反応を行い単離を試みたが、そのものが空気中で不安定であり、 すぐに重合反応を起こしポリマ一状の生成物となつてしまうため、単離すること は困難であった。 発明の開示
本発明は、 このような従来技術の実状に鑑みてなされたもので、 励起三重項ェ ネルギ一の大きい、 シリルェチニル基を有する新規な卜リフエ二レン化合物、 そ の製造方法、 およびそれを燐光発光素子における発光層に用いることで、 低電圧 駆動が可能な新規燐光発光素子を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサブ口モトリフエニレ ンとトリアルキルシリルアセチレンを反応させることによって 2, 3, 6, 7, 10, 11- へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ二レンなどを製造することに 成功した。 また、 この化合物を包含する下記一般式 (I) で表される新規トリフ ェニレン化合物 (以下、 本発明の化合物とも称する) が同様の手法によって得ら れることを見出した。 さらに、 本発明の化合物を燐光発光素子における発光層に ホスト化合物として用い、 これに燐光ドーパントをドーピングすることで、 発光 素子から低電圧で燐光を取り出し得ることを見出した。以上の知見に基づいて本 発明を完成した。 すなわち、 本発明は以下のとおりである。
式中、 Ri〜R6はそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(II)で表される置 換基であって、 1〜!^のうちの少なくとも 1個は一般式 (II)で表される置換 cある。
C=C—— SiRaRbRc (Π)
式中、 Ra、 Rb、 Rcはそれぞれ独立に炭素数 1〜10の脂肪族炭化水素基、 ま たは芳香族炭化水素基である。
(2)前記一般式 (I) において、 1〜!^6の全てが一般式 (II)で表される置 換基であり、 かつ、 前記一般式 (II) において、 Ra、 Rb、 Rcはそれぞれ独立 に炭素数 1〜: L 0の脂肪族炭化水素基である (1) の化合物。
(3) 前記一般式 (II) において、 置換基 Ra、 Rb、 Rcの全てがアルキル基で ある (1) の化合物。
(4) 前記アルキル基がイソプロピル基またはメチル基である (3) の化合物。
(5) 前記一般式 (I) において、 〜116のうちの任意の 1または 2個が一般 式(Π)で表される置換基であり、かつ、前記一般式 (II)において、 Ra、 Rb、 Rcがフエニル基である (1) の化合物。
(6) 下記一般式 (III) で表される化合物に下記一般式 (IV) で表される化合 物を反応させることを特徵とする一般式 (I) で表される化合物の製造方法。
式中、 丄〜
6はそれぞれ独立に水素原子、臭素原子またはヨウ素原子であって、 χΐ〜χ6のうちの少なくとも 1個は臭素原子、 ヨウ素原子のいずれかである。
H-C=C—— SiRaRbRc ( )
式中、 Ra、 Rb、 Reはそれぞれ独立に炭素数 1〜: L 0の脂肪族炭化水素基、 ま たは芳香族炭化水素基である。
式中、 :^〜 6はそれぞれ独立に Hまたは下記一般式 ι)で表される置換基で あって、 1〜!^のうちの少なくとも 1個は一般式(II)で表される置換基であ る。
=C—— SiRaRbRc (ii)
式中、 Ra、 Rb、 Reはそれぞれ独立に炭素数 1〜: L 0の脂肪族炭化水素基、 ま たは芳香族炭化水素基である。
(7)少なくとも一対の電極おょぴ該電極間に配置された発光層を有する燐光を 利用した有機電界発光素子であって、 該発光層が一般式 (I) で表される化合物 の少なくとも 1種、 および燐光ドーパントを含有する、 燐光を利用した有機電界 発光素子。
中、
6はそれぞれ独立に水素原子または下記一般式 (II) で表される置 換基であって、 !^〜
6のうちの少なくとも 1個は一般式(II) で表される置換 基である。
C=C—— SiRaRbRc (II)
式中、 R Rb、 Reはそれぞれ独立に炭素数 1〜10の脂肪族炭化水素基、 ま たは芳香族炭化水素基である。
(8) 前記一般式(I) において、 !^〜 6の全てが一般式(II) で表される置 換基であり、 かつ、 前記一般式 (II) において、 Ra、 Rb、 Rcはそれぞれ独立 に炭素数 1〜10の脂肪族炭化水素基である、 (7) の燐光を利用した有機電界 発光素子。
(9) 前記一般式 (II) において、 置換基 Ra、 Rb、 Rcの全てがアルキル基で ある、 (7) の燐光を利用した有機電界発光素子。
(10) 前記アルキル基がイソプロピル基またはメチル基である、 (7) の燐光 を利用した有機電界発光素子。
(11) 前記一般式 (I) において、 1〜!^のうちの任意の 1または 2個が一 般式 (II) で表される置換基であり、 かつ、 前記一般式 (II) において、 Ra、 Rb、 ITがフエニル基である、 (7) の燐光を利用した有機電界発光素子。
(12) 前記燐光ドーパントがイリジウム錯体、 白金錯体、 オスミウム錯体及び 金錯体から選ばれる少なくとも 1種である、 (7) の燐光を利用した有機電界発 光素子。
(13) 少なくとも一対の電極間に、 さらに、 電子輸送層、 正孔阻止層、 正孔輸 送層及ぴ正孔注入層を有する、 (7) の燐光を利用した有機電界発光素子。
本発明の化合物は、 耐熱性、 耐光性が高く安定であり、 また、 有機溶媒に可溶 であるため加工性が高い。 また、 本発明の化合物は、 蛍光や燐光を発する性質を 有するため有機電界発光素子などの光学材料として有用である。
さらに、 本発明の化合物の化合物のうち燐光を発光するものは、 励起三重項の エネルギーが大きく、燐光発光素子における発光層のホスト化合物として適して おり、 新規な燐光発光素子を提供することが可能となる。 図面の簡単な説明
図 1は、 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチェル) 卜リフエ 二レンの X線結晶構造解析の結果を示す 0RTEP図 (上から見た図) である。 図 2は、 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (卜リメチルシリルェチニル) トリフエ 二レンの X線結晶構造解析の結果を示す 0RTEP図 (横から見た図) である。 図 3は、 2, 3, 6, 7, 10, 11_へキサキス (卜リメチルシリルエヂニル) 卜リフエ 二レンの X線結晶構造解析の結果を示す 0RTEP図 (a軸方向から見た図) であ る。
図 4は、 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルエヂニル) トリフエ 二レンの X線結晶構造解析の結果を示す 0RTEP図 (b軸方向から見た図) であ る。
図 5は、 2, 3, 6, 7, 10, 11一へキサキス (卜リメチルシリルェチニル) トリフエ 二レンの結合距離を示す図である。
図 6は、 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) 卜リフエ 二レンの結合角を示す図である。
図 7は、 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ 二レンのおよびトリフエ二レンの紫外一可視吸収スペクトルを示す図である。 図 8は、 2,3,6, 7, 10, 11—へキサキス (卜リメチルシリルェチニル) トリフエ 二レンおよび卜リフエ二レンの蛍光スぺク卜ルを示す図である。
図 9は、 2, 3, 6, 7, 10, 11一へキサキス (卜リメチルシリルェチニル) トリフエ 二レンおよびトリフエ二レンの 3-MP 中、 脱気封管、 励起波長 296腿、 77Kに
おける発光スぺクトルを示す図である。
図 1 0は、各トリフエ二レン化合物の紫外—可視吸収スペクトルを示す図であ り、 1は 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ二 レン、 2は 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリイソプロビルシリルェチニル) ト リフエ二レンを示す。
図 1 1は、 各トリフエ二レン化合物の蛍光スペクトルを示す図であり、 1は 2, 3, 6, 7, 10, 11 -へキサキス (トリメチルシリルェチェル) トリフエ二レン、 2 は 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリイソプロビルシリルェチニル) トリフエ二 レンを示す。
図 1 2は、 各トリフエ二レン化合物の 3-MP 中、 脱気封管、 励起波長 296皿、 77Kにおける発光スぺクトルを示す図であり、 1は 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) 卜リフエ二レン、 2は 2, 3, 6, 7, 10, 11一へキサキ ス (トリイソプロビルシリルェチニル) トリフエ二レンを示す。 発明を実施するための最良の形態
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物は、 一般式 (I ) で表される化合物である。
R 1〜 R 6はそれぞれ独立に水素原子または下記一般式(I I)の置換基であつて、 1〜!^ 6のうちの少なくとも 1個は一般式(II) の置換基である。好ましくは R i R6のうちの 3〜6個が一般式 (II)で表される置換基であり, より好ましく は 〜1 6の 6個全てが一般式 (II) で表される置換基である。
一般式(Π)で表される置換基は、 尺1〜!^6において互いに異なるものであつ てもよいが、 同じものであることが好ましい。
C=C—— SiRaRbRc (II)
一般式 (II) において、 Ra、 Rb、 はそれぞれ独立に炭素数 1〜10の脂 肪族炭化水素基、 または芳香族炭化水素基であり、 より好ましくは、 それぞれ独 立に炭素数 1〜10の脂肪族炭化水素基であり、 さらに好ましくは、 それぞれ独 立に炭素数 1〜 8の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は飽和でも不飽 和でもよく、 枝分かれしていてもよい。 また、 不飽和脂肪族炭化水素基の場合、 2重結合は複数あってもよい。脂肪族炭化水素基の種類は炭素数 1~10である 限り特に制限されず、 メチル基、 ェチル基など下記に示すような置換基が挙げら れるが、 イソプロピル基またはメチル基が特に好ましい。 芳香族炭化水素基とし てはフエニル基、 トリル基、 置換されたフエニル基など下記に示すようなものが 挙げられる。 なお、 Ra、 Rb、 Rcは互いに同じ置換基であってもよいし、 異な るものであってもよい。 Ra、 Rb、 Rcが全てフエニル基の場合、 一般式(I)で 表される化合物における、 一般式 (II) で表される置換基の数は 1又は 2個であ ることが好ましい。
一般式(I)の化合物として、特に好ましくは、 2, 3, 6, 7, 10, 11一へキサキス(ト リメチルシリルェチニル) トリフエ二レン、 2,3,6, 7, 10,11—へキサキス (トリ ィソプロビルシリルェチニル) トリフエ二レンなどが挙げられる。
以下に、 Ra、 Rb、 Rcの例を挙げるが、 Ra、 Rb、 Rcはこれらに限定され ない。
(アルキル基の例)
-CH3
― C H2 C Γ .3
―し H2し n2し riii
― CH2し n2し し Ho
―し ri2CH2し "HoC isし
―し tl2Ch_2 HoCHoし Γ12 [し ig
-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH3
n2 n2^ri2 n2 n2 h2 n2 H3
H2し Η·>し Ιτ·2 ig HoCh2 ig H2CH3
-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH3
(上記アルキル基は下記の例のように枝分かれしていてもよい。)
CH し OH3 CH3
― GHGH¾ ― Hし H2 H3 ― ΟΗρ Η Ηβ H H? Ho
CH, CH, CH2CH3 CH3
― CH2CHCH2CH3 ― CH2CH2CHCH3 ― CHCH Hg HoC H3
CH3
CH3 CH3 CH3
•CHCH ίΗ CH2CH3 ― CH2CHCH2CH2CH3 一 H2CH2CHCH2CH3
CHg CH3 CH3 CH3 CH3
■CH2CH2CH2CHCH3 ― CHCH2CHCH3 ― CH2CCH2CH
CHg CH3
■"Cn H
(不飽和炭化水素基の例)
一 C≡C一 R (Rは H、 炭素数 1 8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が 好ましい。)
-CH=CR2 (Rは H、 炭素数 1 8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基 が好ましい。 Rの種類が異なる場合、 シス、 トランスは問わない。)
-CH2-CH=CR2 (Rは H、炭素数 1 7の直鎖状もしくは分岐鎖状のアル キル基が好ましい。 Rの種類が異なる場合、 シス、 卜ランスは問わない。)
(フエニル基)
本発明の化合物の製造方法は、 該化合物が得られる限り特に制限されないが、 例えば、 一般式 (III) の化合物と一般式 (IV) の化合物を反応させることによ り製造することができる。
H-C^=C—— SiRaRbRc (IV)
一般式 (III) において、 X i X6はそれぞれ独立に水素原子、 臭素原子また はョゥ素原子であって、 ェ〜 6のうち少なくとも 1個が臭素原子かヨウ素原子 のいずれかである。 X i X6の全てが臭素原子であることが特に好ましい。なお、
(III) の化合物は、 例えば、 実施例に示すようにトリフエ二レンを臭素化また はヨウ素化することによって得ることができる。
一般式 (IV) において、 R a、 Rb、 R cはそれぞれ独立に炭素数 1〜1 0の脂 肪族炭化水素基、 または芳香族炭化水素基である。 脂肪族炭化水素基は飽和でも 不飽和でもよく、 枝分かれしていてもよい。 また、 不飽和脂肪族炭化水素基の場 合、 2重結合は複数あってもよい。脂肪族炭化水素基としては炭素数 1〜: L 0で ある限り特に制限されず、 ェチル基、 イソプロピル基またはメチル基などの上述 したような置換基が挙げられるが、ィソプロピル基またはメチル基が特に好まし い。 芳香族炭化水素基としてはフエニル基、 トリル基、 置換されたフエニル基な ど上述したようなものが挙げられる。 なお、 R a、 R R cは互いに同じ置換基 であってもよいし、 異なるものであってもよい。 (IV) の化合物は、 例えば、 実 施例に示すような Grignard反応によって得ることができる。
化合物 (III) と化合物 (IV) の反応は通常のハロゲン置換反応にしたがって
行うことができる。 該反応は触媒を用いて行うことが好ましい。触媒の種類は該 反応を促進できるものであれば特に制限されないが、 (PP ) 2PdCl2ZCuI、 (PPh3) 4Pd/CuL (PPh3) 2PdCl2ZCuAc2などが挙げられる。 反応に用いる溶媒は、 化合物 (III) と化合物 (IV) がそれぞれ溶解して反応できるものであれば特に 制限されないが、 例えば、 ジイソプロピルァミン、 トリェチルァミン、 ジェチル ァミン、 ピリジンなどを挙げることができ、 これらとベンゼンやトルエンを混合 して用いてもよい。
上記反応によって得られた化合物は、カラムクロマトグラフィーなどの通常の 単離操作によって回収することができる。 化合物の構造は X線結晶構造解析や 匿などによつて確認することができる。
実施例に示すように本発明の化合物は、 蛍光や燐光を発するので、 有機発光素 子などの光学材料に応用することができる。
次に、 本発明の化合物を利用した燐光発光素子について説明する。
本発明の燐光発光素子は、少なくとも一対の電極および該電極間に配置された 発光層を有する燐光発光素子であって、 該発光層が一般式(I)で表される化合物 の少なくとも 1種、 および燐光ドーパントを含有する、 燐光発光素子である。 陽極としては、 4 e Vより大きな仕事関数を有する金属、 合金、 電気伝導性化 合物およびこれらの混合物を用いることができる。その具体例は、 Au等の金属、 C u l、 インジウムースズ酸化物 (以下、 I TOと略記する)、 S n 02、 Z n O等である。
陰極としては、 4 e Vより小さな仕事関数の金属、 合金、 電気伝導性化合物、 およびこれらの混合物を使用できる。その具体例は、アルミニウム、カルシウム、 マグネシウム、 リチウム、 マグネシウム合金、 アルミニウム合金等である。 合金 の具体例は、 アルミニウム Z弗化リチウム、 アルミニウム/リチウム、 マグネシ ゥムノ銀、 マグネシウム/インジウム等である。 燐光発光素子の発光を効率よく 取り出すために、電極の少なくとも一方は光透過率を 1 0 %以上にすることが望 ましい。電極としてのシート抵抗は数百 Ω /口以下にすることが好ましい。なお、 膜厚は電極材料の性質にもよるが、 通常 1 0 nm〜l m、 好ましくは 1 0〜4
0 0 nmの範囲に設定される。 このような電極は、 上述の電極物質を使用して、 蒸着やスパッ夕リング等の方法で薄膜を形成させることにより作製することが できる。
本発明の燐光発光素子の発光層は一般式 (I) の化合物をホスト化合物として 含み、さらに燐光を放射する燐光ド一パントを含む。発光層に含まれる一般式(I) の化合物は、 1種類であってもよいし、 2種類以上であってもよい。 燐光ド一パ ントとして好ましい化合物としては、 イリジウム錯体、 白金錯体、 オスミウム錯 体及び金錯体が挙げられるが、 これらに限定されるものではない。それらの具体 例として、 トリス [ 2 - ( 2—ピリジニル) フエニル— C, N]—イリジウム(以 下記号 I r (p p y) 3で表記する)、 ビス [(4, 6—ジフルオロフェニル) 一 ピリジネート一 N, C 2'] ピナコレートイリジウム、 ビス (4,, 6, ージフル オロフェニルピリジネート) テトラキス ( 1—ピラゾリル) ボレート、 ビス ( 2 —フエ二ルペンゾチアゾ一ル)イリジウムァセチルァセトナート及ぴ 2 , 3, 7 , 8 , 1 2, 1 3 , 1 7, 1 8—ォク夕ェチニルー 2 1 H, 2 3 H—ポルフィリン 白金 (Π) 等、 化学工業 2 0 0 4年 6月号 1 3ページおよび、 それにあげられた 参考文献などに記載された化合物などが挙げられる。 なお、 発光層に含まれる燐 光ド一パントは、 2種類以上の化合物であってもよい。
ド一パントの使用量はド一パントによって異なり、そのド一パントの特性に合 わせて決めれば良い。 ドーパントの使用量の目安は発光材料全体の 0. 0 0 1 ~ 5 0重量%であり、 好ましくは 0. 1〜: L 0重量%である。
本発明の燐光発光素子は、 電極間に、 さらに電子輸送層、 正孔阻止層、 正孔輸 送層、 正孔注入層を含むものであることが好ましい。
本発明の燐光発光素子の各層の積層順は特に制限されないが、 陰極、 電子輸送 層、 正孔阻止層、 正孔輸送層、 正孔注入層及ぴ陽極の順に積層されることがより 好ましい。
本発明の燐光発光素子の電子輸送層に用いる材料の具体例として、 キノリノ一 ル系金属錯体、 フエナント口リン誘導体、 ピリジン誘導体、 ォキサジァゾール誘 導体、 トリァゾール誘導体、 キノキサリン誘導体、 トリアジン誘導体、 ボラン誘
導体が挙げられるが、 これらに限定されるものではない。 キノリノール系金属錯 体の具体例は、 トリス (8—ヒドロキシキノリン) アルミニウム (以下 Al q3 と略記する)、 ビス (2—メチル一8—ヒドロキシキノリン) 一 (4—フエニル フエノール) アルミニウム (以下 BA1 qと略記する) 等である。 フエナント口 リン誘導体の具体例は、 4, 7—ジフエ二ルー 1, 10—フエナント口リン、 2, 9ージメチル一 4, 7—ジフエニル— 1, 10—フエナント口リン (以下、 BC Pと略記する)等である。ピリジン誘導体の具体例は、 2, 5-ビス(6,—(2 ', 2"ービピリジル) 一 1, 1ージメチル一 3, 4ージフエニルシロール、 9, 1 0—ジ (2,, 2" 一ビビリジル) アントラセン、 2, 5—ジ (2,, 2" —ピピ リジル) チォフェン等である。
本発明の燐光発光素子の正孔阻止層に用いる材料の具体例として、 キノリノー ル系金属錯体、 フエナント口リン誘導体、 ォキサジァゾ一ル誘導体、 トリァゾ一 ル誘導体、 ポラン誘導体、 アントラセン誘導体が挙げられるが、 これらに限定さ れるものではない。キノリノール系金属錯体及びフエナントロリン誘導体の具体 例は先述 BA1 Q及び B CP等である。ォキサジァゾール誘導体の具体例は 2 _
(4, 一 t e r t—ブチルフエニル) -5- (4"—ビフエ二ルー 1, 3, 4— ォキサジァゾール等である。 トリァゾ一ル誘導体の具体例は 1—フエニル一 2― ビフエ二ルー 5—パラー t e r t—ブチルフエ二ルー 1, 3, 4一トリァゾ一ル 等である。 アントラセン誘導体の具体例は 9, 10—ビスナフチルアントラセン 等である。
本発明の燐光発光素子の正孔注入層に用いる材料および正孔輸送層に用いる 材料の具体例として、 力ルバゾール誘導体、 トリアリールァミン誘導体、 フタ口 シァニン誘導体が挙げられるが、 これらに限定されるものではない。 カルパゾー ル誘導体の具体例は、 4, 4, 一ビス (カルパゾール一9一ィル) ービフエニル
(以下記号 C BPで表記する)、 ポリピニルカルバゾール等である。 トリアリー ルァミン誘導体の具体例は、芳香族第 3級アミンを主鎖あるいは側鎖に持つポリ マー、 1, 1一ビス(4—ジ一 p—トリルァミノフエ二ル)シクロへキサン、 N, N, —ジフエ二ルー N, N, —ジ (3—メチルフエニル) 一 4, 4'ージァミノ
ビフエニル、 N, N' —ジフエ二ルー N, N' —ジナフチル一 4, 4 '—ジアミ ノビフエニル (以下、 N P Dと略記する。)、 4 , 4 ', 4" —トリス {N— ( 3 一メチルフエニル) 一N—フエニルァミノ } トリフエニルァミン、 ス夕一バース トァミン誘導体等である。 フタロシアニン誘導体の具体例は、 無金属フタロシア ニン、 銅フタロシアニン等である。
本発明の燐光発光素子を構成する各層は、 各層を構成すべき材料を蒸着法、 ス ピンコート法またはキャスト法等の方法で薄膜とすることにより、形成すること ができる。 このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、 材 料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常 2 nm〜5 0 0 0 nmの範 囲である。 なお、 発光材料を薄膜化する方法は、 均質な膜が得やすく、 かつピン ホールが生成しにくい等の点から蒸着法を採用するのが好ましい。蒸着法を用い て薄膜化する場合、 その蒸着条件は、 本発明の発光材料の種類、 分子累積膜の目 的とする結晶構造および会合構造等により異なる。 蒸着条件は一般的に、 ポート 加熱温度 5 0〜4 0 0で、 真空度 1 0— 6〜: L 0— 3 P a、 蒸着速度 0. 0 1〜 5 0 nm/秒、 基板温度— 1 5 0〜十 3 0 0で、 膜厚 5 nm〜 5 /xmの範囲で適 宜設定することが好ましい。
本発明の燐光発光素子は、 前記のいずれの構造であっても、 基板に支持されて いることが好ましい。 基板は機械的強度、 熱安定性および透明性を有するもので あればよく、 ガラス、 透明プラスチックフィルム等を用いることができる。
次に、 一般式 (I) の化合物 (ホスト化合物) を用いて燐光発光素子を作成す る方法の一例として、 前述の陽極/正孔注入層 Z正孔輸送層/一般式 (I) のホ スト化合物 +ドーパント (発光層) /正孔阻止層 電子輸送層/陰極からなる燐 光発光素子の作製法について説明する。
適当な基板上に、 陽極材料の薄膜を蒸着法により形成させて陽極を作製した後、 この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。 この上に一般式
(I) のホスト化合物とドーパントを共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、 こ の発光層の上に正孔阻止層及び電子輸送層を形成させ、 さらに陰極用物質からな る薄膜を蒸着法により形成させて陰極とすることにより、 目的の燐光発光素子が
得られる。 なお、 上述の燐光発光素子の作製においては、 作製順序を逆にして、 陰極、 電子輸送層、 正孔阻止層、 発光層、 正孔輸送層、 正孔注入層、 陽極の順に 作製することも可能である。
このようにして得られた燐光発光素子に直流電庄を印加する場合には、 陽極を 十、 陰極を一の極性として印加すればよく、 電圧 2〜4 0 V程度を印加すると、 透明又は半透明の電極側 (陽極又は陰極、 および両方) より発光が観測できる。 また、 この燐光発光素子は、 交流電圧を印加した場合にも発光する。 なお、 印加 する交流の波形は任意でよい。
次に、 本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明する。
ぐ実施例 1 >
1 . 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエニレ ン(2, 3, 6, 7, 10, Π-Hexakis (triiethylsilyletynyl) triphenyleiie;一般式(V)) の合成
下記に示すような手順で、 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェ チニル) トリフエ二レンを合成した。
. 1 . トリフエ二レン (Triphenylene) の合成
以下の反応式にしたがって、 トリフエ二レンを合成した。
(仕込量)
2-Bromof luorobenzene (東京化成、 99¾ί) 10. 12 g / 5. 73 χ If)-2 mol
Mg (和光、 削り状、 99. 5%) 1. 54 g / 6. 30 x 10一2 mol
THF (ベンゾフエノンケチル処理) 85+15 mL
(操作および結果)
滴下ロートおよびジムロート、 スピナ一を備えた 200 iL三口フラスコをフレ —ムアウト、 アルゴン置換した。 フラスコに Mg を収め、 180 ° Cにて 2時間活 性化した。 フラスコに THF 85 mL, 滴下ロートに 2- Bromoiluorobenzeneおよび THF 15 mLを収め、 20分かけて滴下した (滴下直後から発熱)。 滴下終了後、 THF 還流温度にて 6時間還流した。 飽和 NH4C1 水溶液 (100 mL X 3) にて洗浄後、 Benzene (50 mL x 2) で水相を抽出、 有機相をあわせて無水 MgS04 にて乾燥させ た。 溶媒除去後、 昇華、 再結晶にて精製し、 目的物を無色透明針状結晶として、 収量 789 mg、 収率 18¾で得た。
1 . 2 . 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサブ口モトリフエ二レン (2, 3, 6, 7, 10, 1卜 Hexabromo t r ipheiy 1 ene) の合成
以下の反応式にしたがって、 2, 3, 6, 7, 10, 11 -へキサプロモトリフエ二レンを合 成した。
(仕込量)
Tr ipheiy 1 ene (合成品) 2. 00 g / 8. 51 x 10— 3 mol
Br2 (和光) 4. 0 iL
Fe (粉末状) 0. 484 g / 3. 29 x 10— 3 mol
PhN02 (関東、 単蒸留) 80 IDL
(操作および結果)
滴下ロートおよびジムロート、 スピナ一を備えた 200 IDL三口フラスコをフレ ームアウト、 Ar置換した。フラスコに Triphenyleneおよび Fe粉、 PM02 を収 めた。滴下口一トに Br2を収め 15分かけて滴下した。滴下終了後、室温にて 10 時間撹拌した後、 200 ° C にて 時間撹拌した。冷却後、反応混合物中に Et20 を 入れ、 不溶分をろ別し、 o-DicWorobenzene 800 iL にて再結晶を行い、 目的物 を白色粉末として、 収量 5. 18 g、 収率 87¾で得た。
1 . 3 . トリメチルシリルアセチレン (Trine thylsilyl acetylene) の合成 以下の反応式にしたがって卜リメチルシリルアセチレンを合成した。
H 二 MgBr
Me3SiBr ► e3Si = -H
THF 3
(仕込量)
アセチレン (ボンべ、 カンサン)
EtMgBr (調整品、 1. 5 M in THF) 400 mL / 600 nnnol
Me3SiBr (チッソ、 99 ) 85. 54 g / 553 mmol
THF (ベンゾフエノンケチル処理) 200 mL
(操作および結果)
滴下ロートおよびジム口一ト、 スピナ一を備えた 2000 mL 四口フラスコをフ レームアウト、 Ar置換した。 フラスコに THF 200 mL収めた。 氷浴にてァセチ レンガスを 1. 5時間パブリングした後、 滴下ロートからあらかじめ別途調製し ておいた EtMgBr を 1時間 50分かけて滴下した。 滴下終了後、 パブリングを したまま 30分撹拌し、 パブリングをやめて 40分撹拌した。 パスをドライアイ ス-メタノール浴に換え、 滴下ロートから Me3SiBr を 40分かけて滴下した。 ド ライアイス -メタノール浴のまま 30分撹拌後、 室温に戻し一晚撹泮した。 再び 氷浴にし、 飽和塩化アンモニゥム水溶液 200 mL を入れ、 反応を終了させた。 分
液操作にて有機相を集め、無水 MgS04で乾燥させた。常圧蒸留、次いで精流塔を 用いて分取をし、 目的化合物を無色透明液体として、 トリメチルシリルァセチレ ンを得た。
1 . 4. ジクロロビス (トリフエニルホスフィン) パラジウム (II)
(Dichlorobis ( t r ip eny lphosp ine) pa 11 ad ium (I I) ) の調製
以下の反応式に従って、 ジクロロビス (トリフエニルホスフィン) パラジウム (II) を合成した。
cone. HC1 aq, PP
PdCI2 ► (PPhゥ)。 PdCIゥ
EtOH, H20, 60 °C
(仕込量)
PdCl2 (和光、 98%) 1. 00 g / 5. 54 10— 3 mol
PP (関東、 99%) 3. 00 g / 1. 14 x 10"2 mol
cone. HC1 . (関東、 35-37¾) 0. 17 mL
EtOH (単蒸留) 50 mL
H20 (イオン交換水) 100 mL
(操作および結果)
200 mLの三口フラスコにイオン交換水および濃塩酸、 PdCl2 を収め、撹拌しつ つ、 キヤヌラーを用いて PPh3の EtOH溶液にゆっくりと滴下した (その間オイ ルバスで 60 ° C に加温しながら)。滴下終了後 60 ° C のまま 3 時間撹拌した。 不溶物 (目的物) を濾別し、 沸騰水 lOO niL 熱 EtOH 100 mL 熱 Et20 100 mLの 順で洗浄した(粗収量 2. 09 g、粗収率 5330。そのうち l gをとり熱 CHC13 50 BIL に溶かし、 そこに hexane 150 mL を入れ (P 3) 2PdCl2 を析出させた。 得られた (PPh3) 2PdCl2は五塩化リンを用いて 100 ° Cで加熱乾燥した(黄色微粉末結晶、 回収 0. 83 g、 回収率 83¾)o
1 . 5. 2JJ, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ 二レンの合成
以下の反応式にしたがって 2, 3, 6, 7, 10, 11一へキサキス (トリメチルシリルェ チニル) トリフエ二レンを合成した。
(仕込量)
2, 3, 6, 7, 10, 11- exabromot r ipheny 1 ene 205 mg / 2. 92 10~4 ιοΐ t r i e thy 1 silyl ace tylene 1. 68 g / 1. 71 x 10"2 lol (PPh3) 2PdCl2 245 mg / 3. 49 10"4 mol Cul (和光) 66 mg / 3. 47 10— 4 mol
/-Pr2NH (東京化成、 Ca¾ より蒸留) 200 mL
(操作および結果)
滴下ロートおよびジムロート、 スピナ一を備えた 300 mL三口フラスコをフレ ームアウト、 N2置換した。 フラスコに 2, 3, 6, 7, 10, 1卜へキサブ口モトリフエ二 レンおよび (PP ) 2PdCl2、 Cul、 -Pr2NHを収めた。滴下ロートから 30分かけて Me3SiC≡CHを滴下した(溶液はすぐに黄色 褐色)。その後、還流下で 3時間撹 拌した。 ロータリーエバポレー夕一にて溶媒を除去後、 フラッシュカラム (ヮコ 一ゲル C-60, benzene) で不溶分を除去し、 ゥエツトカラム (一回目;ヮコーゲ ル C-60, hexane I Et20 = 9 / 1、 二回目;ヮコ一ゲル C-60, hexane I C¾C12 = 81 2) にて分取を行い、 黄色結晶として 、 3, 6, 7, 10, 11一へキサキス (トリメチ ルシリルェチェル) 卜リフエ二レンを収量 210 mg、 収率 90¾で得た。
2. 2, 3, 6, 7, 10, 11一へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエニレ ンの解析
2 . 1 . X線結晶構造解析
同定は各種スぺクトルにて行い、 最終的に X線結晶構造解析にて構造を決定 した。
2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ二レンの スぺクトルデータは以下のとおりであった。
MS (質量分析) (EI, 70 eV) i/z (¾) 804 (Μ+, 83) , 789 は), 731 (3) , 716 (7) , 701 (8) , 73 (100)
IR (赤外吸収スペクトル) (KBr) cm"1 2959, 2899, 2162, 1483, 1404, 1248, 1190, 1146, 997, 864, 845, 760, 650
!H NMR (核磁気共鳴スペクトル) (500 MHz, CDC13) δ 0. 34 (s, 54H) , 8. 63 (s, 6H) 訓
13C NMR (126 MHz, CDC13) δ 0, 06, 99. 88, 103. 03, 124. 91, 127. 91, 128. 51 ppm
29Si NMR (99 MHz, CDC13) δ -17. 2 ppm
融点 300 ° C (decomposit ion and polymerization)
ジクロロメタン、へキサン、エタノール混合溶媒から再結晶し、 2, 3, 6, 7, 10, 11 —へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ二レンの黄色透明結晶を得 た。 図 1〜4に X線結晶構造解析の結果を示す。 トリフエ二レン環はほぼ平面 構造を有していたが、 トリメチルシリルェチニル基は、 若干、 環平面からずれて いた。 結合距離、 結合角のまとめを図 5, 6に示す。 芳香環は置換基が結合して いる間の結合距離が、 他より長くなつていた。 炭素-炭素三重結合は通常値 (1. 2 A) よりわずかに短い (av. 1. 181 A) o また、 一ヶ所のトリメチルシリル基の 炭素にデイスオーダーが見られた。 パッキングをみると、 それぞれの分子は矢害 型に積層していた。平行に位置する分子の層間の最近接距離は sp炭素間の 4. 5 Aである。 対角に位置するケィ素原子間距離は約 1 6 Aである。
2. 2. 2,3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチェル) トリフエ 二レンの性質など
2. 2. 1 . 物理的性質
2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ二レンは 明確な融点を示さず、 約 300 ° C まで加熱したところで、 結晶がオレンジ色に 変化し、 なお加熱し続けると約 400 ° Cで褐色に変化する (融点測定器にて観
測)。 このことから結晶内で重合が起こっていることが考えられ、 後の熱重量分 析により、 確かに重合が起こっていることがわかった。
溶解性に関しては、母体のトリフエ二レンと比較すると向上していると考えら れる。一般的な有機溶媒 (hexane, benzene, toluene, acetone, Et20、 THF、 CH2C12、 CHCI3) に可溶、 EtOH、 MeOHに難溶である。
結晶状態において空気中に放置しても、 透明度等に変化はない。
2. 2 . 2. 紫外-可視吸収スペクトル
2,3,6,7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルエヂニル) トリフエ二レンお よびトリフエ二レンの紫外一可視吸収スペクトルを hexane 中、室温で測定した 結果を図 7に示す。 それぞれの吸収帯の吸収極大とモル吸光係数 (ε ) の値をま とめたものを表 1に示す。 いずれのピークに関しても、 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサ キス (トリメチルシリルエヂニル) トリフエ二レンの方が約 40〜50皿長波長 シフトしていることがわかる。 また、 モル吸光係数の値も増大している。
2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ二レン
およびトリフエ二レンの紫外一可視吸収スぺクトル
% absorpt ion band aosorption band absorption band 化合物 / n /舰
2, 3, 6, 7, 10, 315 (214000) 339 (89300) 403 (sh) (240) U-へキサキス(ト 292 (87500) 390 (850) リメチルシリルェチニ 380 (800) ル)トリフヱニレン 370 (1120) トリフエ二レン 257 (147700) 285 (18100) 346 (sh) (40)
249 (85700) 273 (20200) 335 (290) 241 (sh) (40500) 327 (250)
320 (370) 発光 (蛍光、 燐光) スぺクトル
2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ二レンお よびトリフエ二レンの蛍光スぺクトルを 3- fflethylpentane (3-MP)中、脱気封管、 室温、 励起波長 296 nmで測定した結果を図 8 に示す。 蛍光極大は 415、 428、 439腿 であり、 トリフエ二レンの対応する蛍光極大よりも約 60 nm長波長シフ トし、 強度も強くなつている。 トリフエ二レン (Φ£ = 0. 09) を元にして算出し た蛍光の量子収率は Φί = 0. 16である。
2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリフエ二レンお よびトリフエ二レンの 3- MP 中、 脱気封管、 励起波長 296舰、 77Kにおける発 光スペクトル測定の結果を図 9に示す。 発光極大はそれぞれ約 60 nmの長波長 シフトを観測した。 これにより、 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメチルシリ ルェチニル) トリフエ二レンが燐光発光素子の発光層に使用できることがわかつ た。
<実施例 2 >
2, 3, 6, 7, 10, 11一へキサキス (トリイソプロビルシリルェチニル) 卜リフエニレ ンの合成とスぺクトル解析
まず、 以下の反応によってトリイソプロビルシリルアセチレンを合成した。
H ~ ^^-MgBr
i-Pr3SiBr ► i-Pr3Si ~~≡— H
THF
これを 2, 3, 6, 7, -10, 11-へキサブロモトリフエ二レンと反応させることによつ て、 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリイソプロビルシリルェチニル) トリブェ 二レン (一般式 (VI)) を合成した。反応は 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリメ チルシリルェチニル) トリフエ二レンと同様にして行った。 収率は 5 5 %であつ た。
2, 3, 6, 7, 10. 11—へキサキス (トリイソプロビルシリルェチニル) トリフエ二 レンの紫外一可視吸収スペクトルを hexane 中、 室温で測定した。 結果を、 トリ フエ二レン及び 2, 3, 6, 7, 10, 11一へキサキス (トリメチルシリルェチニル) トリ フエ二レンのデータとともに図 1 0に示す。
2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリイソプロビルシリルェチニル) トリフエ二 レンについても、 トリフエ二レンと比較して長波長シフ卜が見られた。
2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリイソプロピルシリルェチニル) トリフエ二 レンの蛍光スぺクトルを 3-metliylpentaiie (3-MP) 中、 脱気封管、 室温、 励起波 長 296皿で測定した。 結果を、 トリフエ二レン及び 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキ ス(トリメチルシリ レエチニレ) トリフエ二レンのデータとともに図 1 1に示す。
2, 3, 6, 7, 10, U—へキサキス (トリイソプロビルシリルェチニル) トリフエ二 レンについても、 トリフエ二レンの対応する蛍光極大よりも約 60 nm長波長シ フ卜し、 強度も強くなつていることがわかった。
2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (トリイソプロビルシリルェチニル) トリフエ二 レンの発光 (蛍光'燐光) スペクトルを 3-MP 中、 脱気封管、 励起波長 296 M, 77Kで測定した。 結果を、 トリフエ二レン及び 2, 3, 6, 7, 10, 11—へキサキス (ト リメチルシリルェチニル) トリフエ二レンのデータとともに図 1 2に示す。
2, 3, 6, 7, 10, 11一へキサキス (トリイソプロピルシリルェチニル) トリフエ二 レンについても、 長波長シフトが見られた。 これにより、 2, 3, 6, 7, 10, 11一へキ
サキス (トリイソプロピルシリルェチニル) トリフエ二レンが燐光発光素子の発 光層に使用できることがわかった。 ぐ実施例 3 >
2, 3, 6, 7, 10, 11一へキサキス (トリメチルシリルエヂニル) トリフエ二レン (化 合物 1 ) をホスト化合物に用いた燐光発光素子の製造と発光の確認
ガラス基板上に I TOを 150 nmの厚さに蒸着したものを透明支持基板と した。 この透明支持基板を蒸着装置の基板ホルダ一に固定し、 銅フタロシアニン (以下記号 C uP cで表記する) を入れたモリブデン製蒸着用ポート、 NPDを 入れたモリブデン製蒸着用ポ一卜、 I r (ppy) 3を入れたモリブデン製蒸着 用ポート、 化合物 1を入れたモリブデン製蒸着用ポート、 B CPを入れたモリブ デン製蒸着用ポート、 Al q 3を入れたモリブデン製蒸着用ポー卜、 弗化リチウ ムを入れたモリブデン製蒸着用ポート、およびアルミニウムを入れたタンダステ ン製蒸着用ポートを装着した。
真空槽を 1X10— 3Paまで減圧し、 CuPcが入った蒸着用ポートを加熱し て膜厚 25 nmになるように蒸着して正孔注入層を形成し、 ついで、 NPDが入 つた蒸着用ポートを加熱して膜厚 35 nmになるように蒸着して正孔輸送層を 形成した。 次に、 I r (ppy) 3が入ったボートと化合物 1の入ったボートを 同時に加熱して膜厚 35 nmになるように蒸着して発光層を形成した。 次に、 B C Pの入ったポートを加熱して膜厚 10 nmになるように蒸着して正孔阻止層 を得た。 I r (ppy) 3と化合物 1の重量比がおよそ 5対 95になるように蒸 着速度を調節した。その後、 A 1 d 3を入れた蒸着用ポートを加熱して膜厚 40 nmになるように加熱して電子輸送層を形成した。
各層の蒸着速度は 0. 001〜3. OnmZ秒であった。 その後、 弗化リチウ ム入りの蒸着用ポートを加熱して膜厚 0. 5nmになるように 0. 003〜0. 01 nm/秒の蒸着速度で蒸着し、 次いで、 アルミニウム入りの蒸着用ボートを 加熱して膜厚 100 nmになるように 0. 1〜 1 nm/秒の蒸着速度で蒸着する ことにより、 燐光発光素子を得た。
I TO電極を陽極、 弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、 7Vの直 流電圧を印加すると約 3. 0mA/ cm2の電流が流れ、 波長 510 nmをピー クとする I r (ppy) 3由来のスペクトルを有する緑色発光を得ることが出来 た。 ぐ比較例 1>
実施例 1において、 発光層に用いた化合物 1の代わりに、 CBPを用いた以外 は、 全く同様にして燐光発光素子を得た。
I TO電極を陽極、 弗化リチウム/アルミニウム電極を陰極として、 7Vの直 流電圧を印加すると約 1. 5mA/ cm2の電流が流れ、 波長 510 nmをピ一 クとする I r (ppy) 3由来のスペクトルを有する緑色発光を得ることが出来 た。