明 細 書
Pim-1活性/蛋白阻害医薬品
技術分野
[0001] 本発明は、癌の治療 '予防に有用な分子およびそのスクリーニング方法に関する。
背景技術
[0002] 現在、癌による死亡例は心疾患についで第 2位を占める重要な原因となっている。
癌の治療は通常手術療法,放射線療法,化学療法,免疫療法,温熱療法などによつ て行われている。これらの癌治療法は,すべての癌細胞を除去するか死に至らしめる ことを通じて達成されると考えられている。手術療法が不可能と判断された場合には ,放射線療法や化学療法などが選択される。現在化学療法に用いられている抗癌剤 としては多くの種類のものが知られて 、る。しかしながら臨床的に用いられて 、る抗 癌剤の多くが固型癌に対しては多くの問題点を抱えている。いったんは効果のあつ た抗癌剤が効力なくなるという抗癌剤耐性癌細胞が出現したり、最初力 固型癌に効 きにくいという点が指摘されている。従来より酸素分圧の低い癌ほど抗癌剤が効きに くいことが報告されているが,最近癌内部が低酸素状態であることが,固型癌が抗癌 剤に効きにくい原因と考えられている。
[0003] 進行性の癌においては、癌細胞内部の増殖速度が周囲の正常細胞よりも速いため 、新しく生成された血管の供給が足りず、血液の供給が不十分となり、低酸素状態に なると考えられる。例えば、非特許文献 1一 6には、低酸素状態にある癌細胞が、高 い酸素状態にある癌細胞よりも、化学療法、放射線療法に対して耐性を有しており、 低酸素状態が、固形癌細胞において薬剤耐性を誘導することが開示されている。
[0004] 一方、セリン Zスレオニンキナーゼである Pim-1 (アミノ酸配列 Z配列番号: 1、塩基 配列 Z配列番号: 2)は、最初はマウス白血病ウィルス(MuLV)によって引き起こされ る T細胞リンパ腫内において白血病ウィルスの挿入によってしばしば活性ィ匕される遺 伝子として同定されたセリン Zスレオニンキナーゼである(非特許文献 7)。また、細胞 質内の Pim-1が種々の造血細胞内においてアポトーシスを阻害するための因子とし て機能することが報告されている(非特許文献 8)。し力しながら固型癌における
Pim-1の機能につ!、ては知られて!/、な!/、。
[0005] なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
非特干文献 1 : Teicner, B.A. Hypoxia and drug resistance. Cancer Metastasis Rev., 13: 139-168, 1994
非特許文献 2 : Brown, J.M. & Giaccia, A.J. The unique physiology of solid tumors: opportunities (and problems) for cancer therapy. Cancer Res., 58: 1408—1416, 1998 特許文献 3 : Brown, J.M. Exploiting the hypoxic cancer cell: mechanisms and therapeutic strategies. Mol. Med. Today, 6: 157-162, 2000
非特許文献 4 : Luk, C.K., Veinot— Drebot, L., Tjan, E. & Tannock, I.F. Effect of transient hypoxia on sensitivity to doxorubicin in human and murine cell lines. J Natl. Cancer Inst., 82:684 - 692, 1990
非特許文献 5 : Sakata, K., Kwok, Τ.Τ., Murphy, B.J., Laderoute, K.R., Gordon,
G.R., Sutherland, R.M. Hypoxia— induced drug resistance: comparison to
P— glycoprotein— associated drug resistance. Br. J Cancer, 64:809—814, 1991 特許文献 6 : Sanna, K. & Rofstad, E.K. Hypoxia— induced resistance to doxorubicin and methotrexate in human melanoma cell lines in vitro. Int. J Cancer, 58:258-262,
1994
非特許文献 7 : Cuypers, H.T., Selten, G., Quint, W., Zijlstra, M., Maandag, E.R., Boelens, W., van Wezenbeek, P., Melief, C, Berns, A. Murine leukemia
virus-induced T— cell lymphomagenesis: integration of proviruses in a distinct chromosomal region. Cell, 37: 141 - 150, 1984
特許文献 8 : Selten, G., Cuypers, H.T. & Berns, A. Proviral activation of the putative oncogene Pim— 1 in MuLV induced T— cell lymphomas. EMBO J,
4: 1793-1798, 1985
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] 本発明にお ヽては、 Pim-1蛋白の機能を阻害する新規分子を提供することを目的と する、さらに、該分子を含む、癌の予防または治療のための薬剤を提供することを目
的とする。本発明の好ましい態様において、 Pim-1蛋白の機能を阻害する新規分子と して、 dominant negative Pim-1およびこれを発現する naked DNAを提供する。さらに 、本発明は、 Pim-1プロモーターを利用した癌の予防または治療のための薬剤の候 補のスクリーニング方法を提供することをも目的とする。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、低酸素下でほぼすベての 固型癌細胞中に発現亢進するするタンパク質 (セリン Zスレオニンキナーゼ Pim-1)を 見出し、さらにその蛋白がュビキチン'プロテアソーム系にて分解されて 、ることを見 出し、さらに dominant negative Pim-1によって腫瘍血管新生が抑制されることを見出 し,この知見に基づいて本発明を完成させた。
[0008] 本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、より詳しくは、以下の〔1〕一〔18 〕を提供するものである。
〔1〕下記 (a)から(d)の 、ずれかに記載の分子。
、a)酉己列番 :3に ci載の Dominant negative Pim-1
(b)配列番号: 11 13のいずれかに記載の anti-sense DNA
(c)配列番号: 5— 10のいずれかに記載の short interference RNA
(d)配列番号: 3に記載の Dominant negative Pim-1をコードする DNAをプラスミド型発 現ベクターに組み込んでなる naked DNA
〔2〕Pim-lの抗アポトーシス阻害作用および腫瘍血管新生作用を阻害することによる 癌の予防または治療に用いる、〔1〕に記載の分子。
〔3〕〔1〕に記載の分子を含有する、癌の予防または治療のための薬剤。
〔4〕下記 (a)から(e)の 、ずれかに記載の分子を含有する癌の予防または治療のた めの薬剤。
(a) Pim-1遺伝子の転写を制御する転写因子の活性を阻害する化合物又はその塩
(b) Pim-1蛋白の分解に関与する heat shock protein
(c)ュビキチン ·プロテアソーム分解系の活性化により Pim-1蛋白の作用を阻害する 化合物又はその塩
(d) Pim-1蛋白の腫瘍血管新生作用を阻害する、 Pim-1蛋白と血管内皮細胞上の受
容体との相互作用を阻害する化合物又はその塩
(e) Pim-1蛋白の作用による腫瘍血管新生に至る信号伝達を阻害する化合物又はそ の塩
〔5〕さらに、癌化学療法剤を含有する、〔3〕または〔4〕に記載の薬剤。
〔6〕癌が固型癌である、〔3〕から〔5〕の 、ずれかに記載の薬剤。
〔7〕癌が脾臓癌である、〔3〕力も〔5〕の 、ずれかに記載の薬剤。
〔8〕癌の治療または予防が腫瘍血管新生作用の阻害によるものである、〔3〕力も〔5〕 のいずれか〖こ記載の薬剤。
〔9〕〔3〕または〔4〕に記載の薬剤を患者に投与する、癌の予防または治療の方法。 〔10〕癌化学療法剤を併用する、〔9〕に記載の方法。
〔11〕癌が固型癌である、〔9〕または〔10〕に記載の方法。
〔12〕癌が脾臓癌である、〔9〕または〔10〕に記載の方法。
〔13〕癌の予防または治療のための薬剤の候補ィ匕合物のスクリーニング方法であって
(a) Pim-1のプロモーター領域に機能的に結合されたレポーター遺伝子を含む発現 ベクターが導入された細胞を提供する工程、
(b)該細胞に被検物質を接触させ、該細胞におけるレポーター遺伝子の発現を検出 する工程、
(c)被検物質非存在下で検出した場合と比較して、レポーター遺伝子の発現を低下 させる被検物質を選択する工程、を含む方法。
〔14〕さらに、(d)工程 (c)で選択された被検物質が、腫瘍血管新生作用を阻害する か否かを検出する工程、および (e)腫瘍血管新生作用を阻害する被検物質を選択 する工程、を含む、〔13〕に記載の方法。
〔15〕〔13〕または〔14〕に記載の方法に用いるキットであって、 Pim-1のプロモーター 領域に機能的に結合されたレポーター遺伝子を含む発現ベクターが導入された細 胞を含むキット。
〔16〕〔13〕または〔14〕に記載の方法により得られる化合物、または〔15〕に記載のキ ットを用いて得られる化合物を含有する、癌の予防または治療のための薬剤。
〔17〕癌が固型癌である、〔16〕に記載の薬剤。
〔18〕癌が脾臓癌である、〔16〕に記載の薬剤。
図面の簡単な説明
[0009] [図 1]プロテアソーム阻害剤存在下での Pim-1蛋白の発現亢進を示す写真である。
[図 2]Dominant negative Pim- 1導入株の Dominant negative Pim-1蛋白発現を示す 写真である。
[図 3]血管内皮細胞を染色した結果を示す写真である。
[図 4]分泌型 Dominant negative Pim- 1による治療効果を示す図である。
[図 5]Pim-lプロモーターおよびレポーター遺伝子を利用した本発明のスクリーニング 方法の概略を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0010] 本発明において、「セリン Zスレオニンキナーゼ Pim-1」(以下、本明細書において、 「Pim-l」ともいう)とはセリン Zスレオニンキナーゼ活性を有するポリペプチドである。 また、 Pim-1は、マウス白血病ウィルス(MuLV)によって引き起こされた T細胞リンパ 腫内で MuLVの挿入によって活性ィ匕される遺伝子として同定された (Cuypers, H.T., Selten, u., Quint, W., Zijlstra, M., Maandag, E.R., Boelens, W., van Wezenoee , P., Melief, C, Berns, A. Murine leukemia virus-induced T— cell lymphomagenesis: integration of proviruses in a distinct chromosomal region. Cell, 37:141-150, 1984)
[0011] Pim-1の活性を阻害する化合物は、アポトーシスを誘導する薬剤の候補となり、癌 の治療'予防への応用(アポトーシス誘導剤ゃ抗癌剤の増強剤としての応用も含む) が考えられる。
[0012] Pim-1の活性を阻害する化合物として、本発明は、 Dominant negative Pim-1を提供 する。本発明における Dominant negative Pim-1は、配列番号: 3で表わされるァミノ 酸配列よりなるポリペプチドと同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列よりなるポリべ プチドである。
[0013] 配列番号: 3で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、配列番号: 1で表わ されるアミノ酸配列を有する Pim-1のキナーゼ活性ドメインを欠失したポリペプチドで
あり、配列番号: 1の 1一 80番目のアミノ酸残基を欠失したポリペプチドである。配列 番号: 3で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、キナーゼ活性ドメインを欠 失したポリペプチドであり、このポリペプチドが存在すると、 Pim-1の活性が阻害され、 その結果、このポリペプチドは癌の治療または予防のための薬剤として用いることが できる。
[0014] 配列番号: 3で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチドや配列番号: 3で表わ されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと実質的に同一なポリペプチドは、合成ポリ ペプチドであってもよ 、。
[0015] 配列番号: 3で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列 番号: 3で表わされるアミノ酸配列と約 50%以上、好ましくは約 60%以上、さらに好ま しくは約 70%以上、より好ましくは約 80%以上、特に好ましくは約 90%以上、最も好 ましくは約 95%以上(例えば、 96%以上、 97%以上、 98%以上、 99%以上)の相同 性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
[0016] 配列番号: 3で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列よりなるポリべ プチドとしては、例えば、配列番号: 3で表わされるアミノ酸配列中の 1又は 2個以上( 例えば、 1一 50個程度、好ましくは 1一 30個程度)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列 を有するタンパク質、配列番号: 1で表わされるアミノ酸配列に 1又は 2個以上 (例え ば、 1一 100個程度、好ましくは 1一 30個程度)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列を 有するタンパク質、配列番号: 1で表されるアミノ酸配列に 1又は 2個以上 (例えば 1一 100個程度、好ましくは 1一 30個程度)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列を有する タンパク質、配列番号: 1で表されるアミノ酸配列中の 1又は 2個以上(例えば 1一 100 個程度、好ましくは 1一 30個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配 列を有するペプチド、又はそれらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質 等も含まれる。上記のアミノ酸の挿入、置換、欠失がなされている場合、その挿入、置 換、欠失の位置は、とくに限定されない。
[0017] 本発明の Dominant negative Pim-1は、 C末端がカルボキシル基(一 COOH)、カル ボキシレート (一 COO")、アミド (一 CONH )またはエステル (一 COOR)の何れであって
2
もよい。また、エステルにおける Rとしては、例えば、メチル、ェチル、 n—プロピル、ィ
ソプロピル、 n—ブチル等の炭素数が 1一 6個のアルキル基、シクロペンチル、シクロ へキシルなどの炭素数が 3— 8個のシクロアルキル基、フエ-ル、 α—ナフチル等の 炭素数が 6— 12個のァリール基、ベンジル、フエネチル等のフエ-ルーアルキル基、 α—ナフチルメチル等の α—ナフチルーアルキル基、炭素数が 7— 14個のァラルキル 基、ビバロイルォキシメチル基等が挙げられる。配列番号: 1で表わされるタンパク質 力 末端以外にカルボキシル基 (またはカルボキシレート)を有して 、る場合、カルボ キシル基がアミド化またはエステル化されて 、るものであってもよ 、。この場合のエス テルとしては、例えば上記した C末端のエステル等が挙げられる。さらに、配列番号: 3で表わされるタンパク質には、 Ν末端のアミノ酸残基 (例、メチォニン残基)のァミノ 基が保護基 (ホルミル基、ァセチル基等の炭素数が 1一 6個のアルカノィル等の炭素 数が 1一 6個のァシル基等)で保護されているもの、生体内で切断されて生成される Ν末端のグルタミン残基がピログルタミン酸ィ匕したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の 置換基 (-OH、 -SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グァ-ジノ基等)が適 当な保護基 (例えば、ホルミル基、ァセチル基等の炭素数が 1一 6個のアルカノィル 基等の炭素数カ^ー 6個のァシル基等)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合 した!/、わゆる糖タンパク質などの複合タンパク質などでもよ!/、。
本発明の Dominant negative Pim-1は、塩の形態であってもよぐこのような塩として は、生理学的に許容される酸 (例、無機酸、有機酸)や塩基 (例、アルカリ金属塩)な どとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な 塩としては、例えば、無機酸 (例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、ある いは有機酸 (例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒 石酸、クェン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸) との塩が挙げられる。本発明で用いられるポリペプチドまたはその塩は、前述したヒト や温血動物の細胞又は組織から公知のタンパク質の精製方法によって製造すること もできる。また、タンパク質をコードする DNA (例えば、配列番号: 4で表わされる塩基 配列からなる DNA)を含有する形質転換体を培養することによつても製造することが できる。また、公知のペプチド合成法に準じて製造することもできる。ヒトゃ哺乳動物 の組織または細胞力 製造する場合、ヒトゃ哺乳動物の組織または細胞をホモジナ
ィズした後、酸等を用いて抽出を行ない、得られた抽出液を逆相クロマトグラフィー、 イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単 離することができる。
[0019] 本発明の Dominant negative Pim-1は、公知のペプチド合成法によって合成するこ ともできる。ペプチド合成については、通常市販のタンパク質合成用榭脂を用いるこ とができる。そのような榭脂としては、例えば、クロロメチル榭脂、ヒドロキシメチル榭脂 、ベンズヒドリルアミン榭脂、アミノメチル榭脂、 4—ベンジルォキシベンジルアルコー ル榭脂、 4 メチルベンズヒドリルアミン榭脂、 PAM榭脂、 4ーヒドロキシメチルメチルフ ェ-ルァセトアミドメチル榭脂、ポリアクリルアミド榭脂、 4-(2' , 4,ージメトキシフエ- ルーヒドロキシメチル)フエノキシ榭脂、 4一(2,, 4,ージメトキシフエ-ルー Fmocアミノエ チル)フエノキシ榭脂等を挙げることができる。このような榭脂を用い、ひ-アミノ基と側 鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、 目的とするタンパク質の配列通りに、公知の 各種縮合方法に従い、榭脂上で縮合させる。反応の最後に榭脂からタンパク質また は部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、 目的のタンパク質もしくは 部分ペプチドまたはそれらの塩を取得する。上記した保護アミノ酸の縮合に関しては 、タンパク質合成に使用できる各種活性ィ匕試薬を用いることができるが、特に、カル ボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、 DCC、 N, N,ージイソプロピルカルボ ジイミド、 N—ェチルー N,—(3—ジメチルァミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられ る。これらによる活性ィ匕にはラセミ化抑制添加剤(例えば、 HOBt, HOOBt)とともに 保護アミノ酸を直接樹脂に添加するカゝまたは、対称酸無水物または HOBtエステル あるいは HOOBtエステルとしてあら力じめ保護アミノ酸の活性ィ匕を行なった後に榭 脂に添加することができる。
[0020] 保護アミノ酸の活性ィ匕ゃ榭脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合 反応に使用しうることが知られている溶媒力 適宜選択されうる。例えば、 N, N—ジメ チルホルムアミド, N, N—ジメチルァセトアミド, N メチルピロリドンなどの酸アミド類、 塩化メチレン,クロ口ホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルォロエタノールなど のアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジォキサン, テトラヒドロフランなどのエーテル類、ァセトニトリル,プロピオ二トリルなどの二トリル類
、酢酸メチル,酢酸ェチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用 いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範 囲から適宜選択され、通常約— 20°C— 50°Cの範囲力も適宜選択される。活性化され たアミノ酸誘導体は通常 1.5— 4倍過剰で用 、られる。ニンヒドリン反応を用 、たテス トの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返 すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得ら れな 、ときには、無水酢酸またはァセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をァ セチルイ匕することによって、後の反応に影響を与えな 、ようにすることができる。
原料のァミノ基の保護基としては、例えば、 Z、 Boc、 t ペンチルォキシカルボ-ル 、イソボルニルォキシカルボニル、 4ーメトキシベンジルォキシカルボニル、 C1 Z、 Br Z、ァダマンチルォキシカルボ-ル、トリフルォロアセチル、フタロイル、ホルミル、 2 —ニトロフエ-ルスルフエ-ル、ジフエ-ルホスフイノチオイル、 Fmocなどが用いられ る。カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、ェチル、プロ ピル、ブチル、 tーブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロへプチル、シクロォ クチル、 2—ァダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、 ァラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、 4 -トロベンジルエステル、 4ーメ トキシベンジルエステル、 4—クロ口べンジルエステル、ベンズヒドリルエステルイ匕)、フ ェナシルエステル化、ベンジルォキシカルボ-ルヒドラジド化、 t ブトキシカルボ-ル ヒドラジドィ匕、トリチルヒドラジド化等によって保護することができる。セリンの水酸基は 、エステルイ匕またはエーテルィ匕によって保護することができる。このエステルイ匕に適 する基としては、例えば、ァセチル基などの低級 (炭素数が 1一 6個)アルカノィル基、 ベンゾィル基などのァロイル基、ベンジルォキシカルボ-ル基、エトキシカルボニル 基などの炭酸力も誘導される置換基等を用いることができる。また、エーテル化に適 する置換基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロビラ-ル基、 t ブチル基等が 挙げられる。チロシンのフエノール性水酸基の保護基としては、例えば、 Bzl、 C1— Bz
2
1、 2—-トロベンジル、 Br— Z、 t ブチル等が用いられる。ヒスチジンのイミダゾールの 保護基としては、例えば、 Tos、 4ーメトキシー 2, 3, 6—トリメチルベンゼンスルホ -ル、 DNP、ベンジルォキシメチル、 Bum、 Boc、 Trt、 Fmoc等が用いられる。
[0022] 原料のカルボキシル基の活性ィ匕されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、 アジド、活性エステル〔アルコール(ペンタクロロフヱノール、 2, 4, 5—トリクロロフエノ ール、 2, 4—ジ-トロフエノール、シァノメチルアルコール、パラ-トロフエノール、 HO NB、 N—ヒドロキシスクシミド、 N—ヒドロキシフタルイミド、 HOBt)とのエステル〕等を用 いることができる。原料のァミノ基の活性ィ匕されたものとしては、例えば、対応するリン 酸アミドが挙げられる。保護基の除去 (脱離)方法としては、例えば、 Pd 黒あるいは Pd 炭素等の触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水 素、メタンスルホン酸、トリフルォロメタンスルホン酸、トリフルォロ酢酸あるいはこれら の混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルェチルァミン、トリエチルァミン、ピペリ ジン、ピぺラジン等による塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元等を 用いることが可能である。このような酸処理による脱離反応は、一般に約— 20°C— 40 °Cの温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、ァ-ソール、フエノール、チ オア二ノール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフイド、 1, 4 ブタンジチ オール、 1, 2—エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤を添加することが有効 である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる 2, 4—ジニトロフエ- ル基はチオフヱノール処理により除去され、トリブトファンのインドール保護基として用 いられるホルミル基は上述した 1, 2 エタンジチオール、 1, 4 ブタンジチオール等 の存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなど によるアルカリ処理によって除去することできる。
[0023] 原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護 基の脱離、反応に関与する官能基の活性ィ匕は公知の置換基又は公知の手段力 適 宜選択しうる。タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例 えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸の α カルボキシル基をアミドィ匕して保護した後 、アミノ基側にペプチド (タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖 の Ν末端の aーァミノ基の保護基のみを除 、たタンパク質または部分ペプチドと C末 端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質または部分ペプチドとを製 造し、これらのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。 縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質ま
たはペプチドを精製した後、上記方法によりすベての保護基を除去し、所望の粗タン ノ ク質またはペプチドを得ることができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の 各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質 またはペプチドのアミド体を得ることができる。タンパク質またはペプチドのエステル 体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸の α—カルボキシル基を所望のアル コール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド体と同 様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエステル体を得ることができる。
[0024] 本発明の Dominant negative Pim-1は、公知のペプチド合成法に従って製造するこ とができる。又は、 Pim-1を適当なぺプチダーゼで切断することによって製造すること ができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれに よっても良い。すなわち、本発明で用いられる部分ペプチドを構成し得る部分べプチ ドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基 を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。
[0025] また、本発明の Dominant negative Pim-1は、例えば、配列番号: 3で表わされるアミ ノ酸配列よりなるポリペプチドをコードする DNA (例えば、配列番号: 4で表わされる 塩基配列からなる DNA)を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を 培養し、該形質転換体から回収することによつても製造することができる。 DNAとして は、ゲノム DNA、ゲノム DNAライブラリー、上述した細胞 ·組織由来の cDNA、上述 した細胞'組織由来の cDNAライブラリー、合成 DNA等が挙げられる。ライブラリー に用いられるベクターとしては、ノ クテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミド 等が用いられる。また、上述した細胞'組織より totalRNAまたは mRNA画分を調製し 7こものを用 ヽ 俊 Reverse Transcriptase Polymeraseし hain Reaction (以" h、 RT— PCR法と略称する)〖こよって増幅することもできる。
[0026] 本発明の Dominant negative Pim-1の製造においては、配列番号: 4で表される塩 基配列を含有する DNAのみならず、配列番号: 4で表される塩基配列を有する DN Aとハイストリンジェントな条件下でノヽイブリダィズする塩基配列を含有する DNAを用 いることも可能である。
[0027] 配列番号: 4で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でノ、イブリダィズで
きる DNAとしては、例えば、配列番号: 4で表される塩基配列と約 50%以上、好まし くは約 60%以上、更に好ましくは約 70%以上、より好ましくは約 80%以上、特に好ま しくは約 90%以上、最も好ましくは約 95%以上(例えば、 96%以上、 97%以上、 98 %以上、 99%以上)の相同性を有する塩基配列を含有する DNA等が挙げられる。 ハイブリダィゼーシヨンは、公知の方法又はそれに準じる方法に従って行うことができ る。例えば、モレキュラー 'クロー-ング(Molecular Cloning) 2nd (J. Sambrook et al.Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法等に従って行なうことができ る。また、市販のライブラリーを使用する場合には、添付の使用説明書に記載の方法 に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジヱントな条件に従って行な うことができる。ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が 19一 40mM 、好ましくは 19一 20mMで、温度が 50— 70°C、好ましくは 60— 65°Cの条件を示す 。特に、ナトリウム濃度が 19mMで温度が 65°Cの場合が最も好ましい。
[0028] 配列番号: 3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドを完全にコードする DN Aのクローニングの手段としては、配列番号: 3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリ ペプチドをコードする塩基配列の一部分を有する合成 DNAプライマーを用いて PC R法によって増幅してもよぐ又は適当なベクターに組み込んだ DNAを配列番号: 3 で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドの一部あるいは全領域をコードする D NA断片もしくは合成 DNAを用いて標識したものとのハイブリダィゼーシヨンによって 選別することができる。ハイブリダィゼーシヨンの方法は例えば、モレキユラ一'クロー ニング (Molecular Cloning; 2nd (J. Sambrook et al., Cold bpnng Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使 用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
[0029] DNAの塩基配列の変換は、 PCR、公知のキット、例えば、 Mutan™- superExpress Km (宝酒造 (株))、 Mutan™- K (宝酒造 (株))等を用いて、 ODA- LAPCR法、 Gapped duplex法、 Kunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうこと ができる。クローンィ匕されたタンパク質をコードする DNAは目的によりそのまま、また は所望により制限酵素で消化したり、リンカ一を付加したりして使用することができる。 該 DNAはその 5'末端側に翻訳開始コドンとしての ATGを有し、また 3'末端側には
翻訳終止コドンとしての TAA、 TGAまたは TAGを有していてもよい。これらの翻訳 開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成 DNAアダプターを用いて付加することも できる。
[0030] 本発明の Dominant negative Pim- 1を発現する組換ベクターは、 Dominant negative Pim-1をコードするポリヌクレオチド断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下 流に連結することによって製造することができる。ベクターとしては、大腸菌由来のプ ラスミド(例えば pBR322、 pBR325、 pUC18または pUC118等)、枯草菌由来のプ ラスミド(例えば pUB110、 pTP5または pC194)、酵母由来のプラスミド(例えば pSH 19または pSH15)、 λファージ等のバタテリオファージ、レトロゥイノレス、ワクシニアゥ ィルスまたはバキュロウィルス等のウィルス等の動物ウィルスの他、 pAl— 11、 pXTl 、 pRc/CMV, pRc/RSV, pcDNAlZNeo等が用いられる。本発明で用いられる プロモーターとしては、遺伝子発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターで あればいかなるものでもよい。例えば、宿主が大腸菌である場合は、 trpプロモーター 、 lacプロモーター、 recAプロモーター、 λ PLプロモーター、 lppプロモーター、 T7プ 口モーター、 T3プロモーター、 araBADプロモーター等が、宿主がバチノレス属菌であ る場合は、 SP01プロモーター、 penPプロモーター、 XYLプロモーター、 HWPプロモー ター、 CWPプロモーター等が好ましぐ宿主が枯草菌である場合は、 SPOlプロモー ター、 SP02プロモーター、 penPプロモーター等が好ましぐ宿主が酵母である場合 は、 PH05プロモーター、 PGKプロモーター、 GAPプロモーター、 ADHプロモータ 一等が好ましい。動物細胞を宿主として用いる場合は、 SR aプロモーター、 SV40プ 口モーター、 LTRプロモーター、 CMVプロモーター、 HSV-TKプロモーター等が好 ましく用いられる。また、昆虫細胞を宿主として用いる場合はポリヘドリンプロモーター 、 OplE2プロモーター等が用いられる。
[0031] 組換ベクターには、所望により当該技術分野で公知の、ェンハンサー、スプライシ ングシグナル、ポリ A付カ卩シグナル、選択マーカー、 SV40複製オリジン(以下、 SV4 Oorgdiと略称する場合がある)等を付加することができる。また、必要に応じて、本発 明の DNAにコードされたタンパク質を他のタンパク質(例えば、ダルタチオン Sトラン スフエラーゼおよびプロテイン A)との融合タンパク質として発現させることも可能であ
る。このような融合タンパク質は、部位特異的プロテアーゼを使用して切断し、それぞ れのタンパク質に分離することができる。 上記選択マーカーとしては、例えば、ジヒド 口葉酸還元酵素(以下、 dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート (MTX) 耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、 Amp1"と略称する場合がある)、ネオマイシン 耐性遺伝子(以下、 Neofと略称する場合がある、 G418耐性)等があげられる。特に、 dhfr遺伝子欠損チャイニーズノヽムスター細胞を用いて dhfr遺伝子を選択マーカーと して使用する場合、 目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。 宿主細胞としては、例えば、エシ リヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆 虫、動物細胞等が用いられる。ェシエリヒア属菌の具体例としては、ェシエリヒア'コリ( Escherichia coli) K12 - DHl (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 60卷, 160(1968)) , J M 103 (Nucleic Acids Research, 9卷, 309(1981)) , JA221 (Journal of Molecular Biology, 120卷, 517(1978)) , HB101 (Journal of Molecular Biology, 41卷, 459( 1969))、 C600 (Genetics, 39卷, 440 (1954)、 DH5 αおよび JM109等力用いられ る。バチルス属菌としては、例えば、バチルス'サチルス(Bacillus subtilis) MI114 ( Gene, 24卷, 255(1983)) , 207-21 [Journal of Biochemistry, 95卷, 87(1984)] およびバチルス 'ブレビス等が用いられる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシェ(Saccaromyces cerevisiae) AH22, AH22R-, NA87—11A, DKD—5D , 20Β—12、シゾサッカロマイセスボンべ(Schizosaccaromyces pombe) NCYC1913 , NCYC2036、ピキアパストリス(Pichia pastoris) M71およびハンセヌラ 'ポリモーフ ァ (Hansenula polymorpha)等が用いられる。昆虫細胞としては、例えば、ウィルスが A cNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell ; Sf細胞) 、 Trichoplusia niの中腸由来の MG1細胞、 Trichoplusia niの卵由来の High Five™細 胞、 Mamestra brassicae由来の細胞または Estigmena acrea由来の細胞等が用いられ る。ウィルスが BmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N細胞; BmN細 胞)等が用いられる。該 Sf細胞としては、例えば、 Sf9細胞 (ATCC CRL1711) , Sf21 細胞(以上、 Vaughn, J丄.ら、イン'ヴイボ(In Vivo) , 13, 213- 217,(1977))等が用いられ る。昆虫としては、例えば、カイコの幼虫等が用いられる〔前田ら、ネイチヤー(Nature ) , 315卷, 592(1985)〕。哺乳動物細胞としては、例えば、サル細胞 COS— 7, Vero
,チャイニーズハムスター細胞 CHO (以下、 CHO細胞と略記), dhfr遺伝子欠損チ ャィニーズノヽムスター細胞 CHO (以下、 CHO (dhfr—)細胞と略記),マウス L細胞,マ ウス AtT— 20,マウスミエローマ細胞,ラット GH3,ヒト FL細胞等が用いられる。また、 必要に応じて、宿主細胞に適したシグナル配列をコードするポリヌクレオチドを、 dominant negative Pim-1をコードするポリヌクレオチドの 5,末端側に付カ卩してもよい。 宿主細胞としてェシエリヒア属菌を用いる場合は、 PhoA'シグナル配列、 ΟπιρΑ·シグ ナル配列等が用いられ、宿主細胞としてバチルス属菌を用いる場合は、 α アミラー ゼ'シグナル配列、サブチリシン'シグナル配列等が用いられ、宿主細胞として酵母を 用いる場合は、 MF o; ·シグナル配列、 SUC2 'シグナル配列等が用いられ、宿主細 胞として動物細胞を用いる場合には、インシュリン 'シグナル配列、 ひ インターフエ口 ン'シグナル配列、抗体分子 'シグナル配列等のシグナル配列が用いられる。このよう にして構築された本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する発現 ベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
[0033] 上述した宿主細胞の形質転換は、当該技術分野で公知の方法に従って行うことが できる。例えば、以下に記載の文献に宿主細胞を形質転換する方法が記載されてい る。 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69卷, 2110(1972) ; Gene, 17卷, 107(1982) ; Molecular & General Genetics, 168卷, 111(1979) ; Methods in Enzymology, 194 卷, 182—187 (1991); Proc. Natl. Acad. Sci. USA) , 75卷, 1929(1978) ;細胞ェ 学別冊 8新細胞工学実験プロトコール. 263—267 (1995) (秀潤社発行);及び Virology, 52卷, 456(1973)。
[0034] 大腸菌等の細菌への組換ベクターの導入方法は、細菌に DNAを導入することの できる方法であれば特に限定されるものではなぐ例えばカルシウムイオンを用いる 方法 (Cohen, S.N. et al.:Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69:2110(1972)、エレクト口ポレーシ ヨン法等が挙げられる。
[0035] 酵母を宿主とする場合は、酵母への組換ベクターの導入方法は、酵母に DNAを 導入することのできる方法であれば特に限定されず、例えばエレクト口ポレーシヨン法 、スフエロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
[0036] 動物細胞を宿主とする場合は、動物細胞への組換ベクターの導入方法は、動物細
胞に DNAを導入することのできる方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロボ レーシヨン法、リン酸カルシウム法、リポフエクシヨン法等が挙げられる。
[0037] 昆虫細胞を宿主とする場合は、昆虫細胞への組換ベクターの導入方法は、昆虫細 胞に DNAを導入することのできる方法であれば特に限定されず、例えばリン酸カル シゥム法、リポフエクシヨン法、エレクト口ポレーシヨン法等が挙げられる。
[0038] 遺伝子が宿主に組み込まれたか否かを確認するための方法としては、例えば PCR 法、サザンハイブリダィゼーシヨン法、ノーザンハイブリダィゼーシヨン法等により行う ことができる。例えば、形質転換体から DNAを調製し、 DNA特異的プライマーを設 計して PCRを行う。次いで、増幅産物についてァガロースゲル電気泳動、ポリアタリ ルアミドゲル電気泳動又はキヤピラリー電気泳動等を行い、臭化工チジゥム、 SYBR Green液等により染色し、次いで増幅産物を 1本のバンドとして検出し、形質転換され たことを確認することができる。予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いて P CRを行い、増幅産物を検出してもよい。更に、マイクロプレート等の固相に増幅産物 を結合させた後、蛍光又は酵素反応を用いて増幅産物を確認する方法を用いること ちでさる。
[0039] 本発明の Dominant negative Pim-1は、上記宿主細胞をポリペプチドの発現に適し た条件下で培養し、得られた培養物カゝらポリペプチドを回収する工程を含む。
[0040] 具体的には、上述した宿主細胞をホモジナイズした後、酸等で抽出を行!、、該抽出 液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを組 み合わせことによる公知のタンパク質の精製方法によって実施することができる。
[0041] 得られたポリペプチドが遊離体である場合には、公知の方法によって適当な塩に変 換することができる。また、塩として得られた場合には、公知の方法によって遊離体又 は他の塩に変換することができる。
[0042] 本発明の Dominant negative Pim-1をコードする DNAゃ該 DNAをプラスミド型発現 ベクターに組み込んでなる naked DNAは、 Pim-1の活性を阻害する化合物として、癌 の予防または治療のための薬剤として用いることができる。
[0043] また、本発明は、 Pim-1の活性を阻害する化合物として、 Pim-1をコードする遺伝子
、すなわち配列番号: 2で表わされる塩基配列力 なるポリヌクレオチドに対する二本
鎖 RNA (以下、本明細書において short interfering RNAともいう)(配列番号: 5— 10) およびアンチセンスヌクレオチド (配列番号: 11— 13)を提供する。配列番号 5— 13は 代表例を列挙しており,配列は異なっていても Pim-1発現を阻害する限り、本発明に 含まれる。
[0044] 配列番号: 2で表わされる塩基配列力 なるポリヌクレオチドに対する二本鎖 RNA は、配列番号: 2で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドの発現を抑制するた め、その結果、 Pim-1の発現が抑制され、 Pim-1の活性を阻害することができる。この ような二本鎖 RNAとしては、 21— 23塩基対の short interference RNAが好ましい。 二本鎖 RNAの調製法としては、従来公知の方法を特に制限なく用いることができ、 例えば、 Silencer si RNA construction kit (Ambion社製)を用いて製造することがで きる。
[0045] 配列番号: 2で表わされる塩基配列力 なるポリヌクレオチドに対する二本鎖 RNAと しては、例えば、配列番号: 5で表わされる配列力もなるポリヌクレオチド (5' — aaugaugaagucgaagagaucccugucuc— 3 )と、酉己歹 U番号: 6で表わ れる酉己歹 U力らなるポリ ヌクレオチド (5— aagaucucuucgacuucaucaccugucuc— 3 )と; g、りなる二本鎖 RNA、目 3歹 U 番号: 7で表わされる配列力 なるポリヌクレオチド (5'
— aaaucuaaugagaugcugacaccugucuc— 3 )と、目 il歹 U番号: 8で表わ れる目 3歹 U»りなるポリ ヌクレオチド (5— aaugucagcaucucauuagauccugucuc— 3 )と; g、りなる二本鎖 RNA、目 3歹 [J 番号: 9で表わされる配列力 なるポリヌクレオチド (5'
— aaauccauggaugguucuggaccugucuc— 3 )と、目己列番号: 10で表わされる酉己列力らなるホ リヌクレオテド (5— aauccagaaccauccauggauccugucuc— 3 )と; g、りなる二本鎖 RNA力举 げられる力 これらに制限されない。
[0046] なお、本発明は、 Pim-1の活性を阻害する化合物としては、上記した分子以外に、 さらに、(a) Pim-1遺伝子の転写を制御する転写因子の活性を阻害する化合物又は その塩、(b) Pim-1蛋白の分解に関与する heat shock protein
(c)ュビキチン ·プロテアソーム分解系の活性化により Pim-1蛋白の作用を阻害する 化合物又はその塩、(d) Pim-1蛋白の腫瘍血管新生作用を阻害する、 Pim-1蛋白と 血管内皮細胞上の受容体との相互作用を阻害する化合物又はその塩、あるいは (e)
Pim-1蛋白の作用による腫瘍血管新生に至る信号伝達を阻害する化合物又はその 塩、を用いることも考えられる。従って、本発明は、 Pim-1の活性を阻害する化合物と して、これら分子をも提供するものである。
[0047] 上述した Pim-1の活性を阻害する化合物や後述するスクリーニングにより同定され る化合物は、患者に直接投与する以外に、公知の製剤学的方法によって製剤化して 投与を行うことが可能である。例えば、薬理学上許容される担体又は媒体、具体的に は、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤等と適宜 組み合わせて製剤化して投与することができる。患者への投与は、例えば、動脈内 注射、静脈内注射、皮下注射等の他、鼻腔内的、経気管支的、筋肉的、又は経口的 に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法等 により変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。
[0048] Pim-1の活性を阻害する化合物がポリペプチドである場合は、好ましくは 90%、更 に好ましくは 95%以上、更に好ましくは 98%以上、最も好ましくは 99%以上に精製 されたポリペプチドを使用することが好ましい。上記ポリペプチドは、例えば、必要に 応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等として経 口的に、あるいはエアロゾル化して吸入剤の形で、あるいは水もしくはそれ以外の薬 学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤等の注射剤の形で非経口的 に使用できる。
[0049] 上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが挿入された糸且換ベクターも上記と 同様に製剤化され、通常、非経口的に使用される。このようにして得られる製剤は、 安全で低毒性であるので、例えば、温血動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット 、ゥサギ、トリ、ヒッジ、ブタ、ゥシ、ゥマ、ネコ、ィヌ、サル、チンパンジー等)に対して 投与することができる。
[0050] Pim-1の活性を阻害する化合物は、特に癌の予防や治療のための薬剤として有用 である。対象となる癌としては、例えば、脾臓癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆道癌、脾 臓癌、腎癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、甲状腺癌、脾臓癌、脳腫瘍及び血 液腫瘍等が挙げられ、また、細胞内の酸素濃度が低下している固形癌に特に有効で ある。癌の予防や治療のための薬剤として、上記 Pim-1の活性を阻害する化合物を
用いる場合には、該薬剤には、癌化学療法剤が含まれていてもよい。本発明の癌の 予防や治療のための薬剤の好ま 、態様は、 Pim-1の抗アポトーシス阻害作用およ び腫瘍血管新生作用を阻害することにより、癌の予防や治療の効果を発揮するもの である。
[0051] また、本発明は、上記の薬剤を患者に投与する、癌の予防または治療の方法をも 提供するものである。患者に対して遺伝子治療を行なう場合には、 in vivo法および ex vivo法が、本発明の治療方法に含まれる。即ち、癌の患者等に対して、治療用のポ リヌクレオチドを標的細胞内で機能し得るプロモーターの制御下においた発現べクタ ーを該患者に投与して生体内で本発明のポリペプチドを発現させることによって、あ るいは患者から取り出した細胞に治療用のポリヌクレオチドを上記と同様に導入し、 上記ポリペプチドを発現させた後に、該細胞を患者に移植することによって、治療を 行うことができる。遺伝子治療においては、治療用ポリヌクレオチドを単独あるいはレ トロウィルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスァソシエーテッドウィル スベクター等の適当なベクターに挿入した後、常套手段に従つて投与してもよ 、。
[0052] 実施例 1に示したようにュビキチン ·プロテアノームの蛋白分解系が Pim-1蛋白の発 現量の調節に関与しており、ュビキチンィ匕ゃプロテアソーム等の蛋白分解系を活性 化する化合物が Plm— 1蛋白の消失を誘導する。従って、 Geldanamydnなどの蛋白分 解系活性化剤やィ匕学療法剤を併用する癌の予防や治療が効果的でありうる。
[0053] 本発明は、また、 Pim-1のプロモーターを利用した癌の予防または治療のための薬剤 の候補ィ匕合物のスクリーニング方法を提供する。具体的には、 Pim-1のプロモーター 領域 (配列番号: 14)をレポーター遺伝子の発現ベクターに連結し、これを宿主細胞 に導入する。この形質転換細胞を被検物質と培養 (好ましくは、低酸素下で培養)し てレポーター活性を測定することで Pim-1産生抑制物質を検出する工程を含む、方 法である。
[0054] レポーター遺伝子としては、特に限定されないが、安定でかつ活性の定量が容易 なものが好ましい。このようなレポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ、 13 ガラクトシダーゼ、 j8—グルクロニダーゼ、クロラムフエ-コールァセチルトランスフエ ラーゼ、ペルォキシダーゼ、 HIS3遺伝子、グリーンフルォレツセンスプロテイン(GF
P)等をコードする DNAが挙げられるが、これらに限定されな!、。
[0055] すなわち、上述したスクリーニング方法においては、被検物質が Pim-1産生を抑制 する活性を有して 、る場合、レポーター遺伝子の発現が抑制又は阻害されるので、 そのレポーター遺伝子の発現を検出することにより、被検物質が Pim-1産生を活性を 促進又は阻害する力否かを検出することが可能となる。
[0056] 被検物質の非存在下における活性と比較して、活性物質の存在を確認すること〖こ よってスクリーニングを行う。この方法によって、アポトーシス誘導剤のスクリーニング の実施も可能である。
[0057] 本発明のスクリーニング方法においては、さらに、上記スクリーニングにより選択され た被検物質が、腫瘍血管新生作用を阻害するか否かを検出し、腫瘍血管新生作用 を阻害する被検物質を選択することを含んで 、てもよ 、。
[0058] 本発明のスクリーニング方法にぉ 、て用いられる被検試料としては、例えば、細胞 抽出物、植物抽出物、精製又は粗精製タンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、 合成低分子化合物、天然化合物、遺伝子ライブラリ一等が挙げられる。
[0059] また、本発明は、上記本発明のスクリーニングのためのキットを提供する。 本発明 のスクリーニング用キットは、 Pim-1のプロモーター領域に機能的に結合されたレポ一 ター遺伝子を含む発現ベクターが導入された細胞を含むキットである。ここで「機能 的に結合」とは、 Pim-1のプロモーター領域の活性ィ匕に応答して、連結されたレポ一 ター遺伝子が発現するように、 Pim-1のプロモーター領域とレポーター遺伝子とが結 合していることを意味する。キットには、必要に応じて使用説明書が含まれていてもよ い。このようなキットを利用すれば、効率的に癌の予防や治療のための医薬候補ィ匕 合物をスクリーニングすることが可能となる。
実施例
[0060] 以下に、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する力 本発明はこれに限定 されるものではない。
[0061] ¾細
正常酸素分圧下において、 Pim-1がプロテアーゼによって分解されているか否かを 調べた。 PCI - 43細胞を、低酸素分圧下、及び正常酸素分圧下にて培養した。低酸
素分圧下で培養した細胞については、培養前、培養開始 4時間、 12時間及び 24時 間経過後にサンプリングし、実施例 5と同様に操作を行い、ウェスタンプロット解析を 行った。また、正常酸素分圧下における培養においては、培地中にプロテアソーム 阻害剤である N- acety卜 L- leuciny卜 L- leuciny卜 L- norleucinal (ALLN)を 50 μ Μ濃度 加えて培養を行った。正常酸素分圧下における培養においては、培養開始前、培養 開始 6時間、及び 12時間経過後にサンプリングし、ウェスタンプロット解析を行った。 結果を図 1に示す。図 1に示すように、低酸素分圧下における培養においては、低酸 素分圧に曝して力 の時間経過に伴い、 Pim-1の量が増加しており、正常酸素分圧 下においても時間経過に伴い Pim-1の量が増加していた。これは、プロテアソーム阻 害剤のな!ヽ状況にお!ヽては、 Pim-1タンパク質が分解されて ヽることを示す。
[0062] 実飾 12
Pim-1の役割りを明らかにするため、ドミナントネガティブ Pim-1トランスフエクタントを 確立した。 Pim-1トランスフエクタントは、野生型 Pim-1のキナーゼ活性ドメインを欠如 したペプチド、すなわち配列番号: 3で表わされるペプチドを生産するものである。
[0063] キナーゼ活性ドメインを欠失した、ドミナントネガティブ Pim-1の cDNAは、 PCI— 10 細胞から精製された mRNAの RT生成物から増幅し、 PCR4— TOPO中にクローニン グした。プラスミドの配列決定は、 ABI377自動化配列決定装置 (Applied Biosystems )を用い、 DyeDeoxy Terminator kit (Perkin- Elmer)を用いて行った。クローニングさ れたフラグメント(Invitrogen)に結合した。なお、 RT— PCRの方法を以下に簡単に説 明する。
[0064] 75mM KC1、 50mM Tris- HCl(pH8.3)、 3mM MgCl、 lOmMジチオスレィトール、
2
0.5mM各 dNTP、 2 μ ランダムプライマー、及び 1000U AMLVリバーストランスクリプ ターゼ (G¾co BRL)を含む反応混合物中で 37°C、 1時間インキュベーションすることに より、各 RNA試料 (5 μ g)から cDNAの増幅を行った。 cDNAのの PCR増幅は、 50mM KC1、 10mM Tris— HCl(pH9.0)、 2.5mM MgCl、 0.1%Triton X— 100、 200 μ M 各 dNTP
2
、 10 /z M 各特異的プライマー、及び 1Uの Taqポリメラーゼ(G¾co BrL)を含む反応 混合物中で行った。 PCRは、 DNAサーマルサイクラ一(Barnstead/Thermolyne)中で 、 35サイクル(94°C、 1分、 60°C、 1分、 72°C、 2分)行った。
[0065] PCRプライマーとしては以下のものを用いた。
dnpim- 1フォヮ ~~ド: 5 '
5)
リバース: 5,- GTACTATTTGCTGGGCCCCGGCGAC- 3,(配列番号: 16)
[0066] 得られたベクターを、 PCI— 43細胞に、リポフエクタミン (Life Technologies)を用いて 発現ベクターに形質導入した。トランスフエクタントを、 1 , 200 gZmlの G-418で 選択した後、限界希釈法でクローニングし、ドミナントネガティブトランスフエクタント dnp3、 dnp4及び dnplOを得た。次いで、トランスフエクタントを 600 g/mlの G— 418 の存在下、維持した。
[0067] 得られた形質転換細胞につ!ヽて、タンパク質の電気泳動を行った。試料の調製は 、 l %NP-40 lysis buffer ( 50 ^ Μ Tris ΡΗ 7.5, 150ηΜ NaCl, 2 μ EDTA, 1 μ Μ、 EGTA, 50 NaF, 1 μ Μ Na VO , 1 μ Μ PMSF)を用いておこなった。
3 4
コントロールとして、ベクターを形質転換したものについても行った。
[0068] 結果を図 2に示す。図 2は、形質転換細胞のタンパク質電気泳動の結果である。図 2〖こ示すよう〖こ、 dnp3、 dnp4及び dnplOは、キナーゼドメインを欠失した Pim-1の存在 を表すピークが検出された。ベクターのみを形質転換したもの (v3及び v4)について は、このピークは検出されな力つた。
[0069] 実飾 13
SCIDマウスの右脇腹に、 V3、 dnp3、 dnp4及び dnplOを、それぞれ 5 X 106個づっ 皮下注射した。皮下注射後、 3日毎に 21日目まで腫瘍の大きさを観察した。腫瘍の 大きさの測定は腫瘍の大きさの測定は短径及び長径をノギスを用いて測定し、以下 の計算式にて体積を算出し、腫瘍の大きさとした。
(短径) X (短径) X (長径) Z
皮下注射後 6日経過したマウスカゝら腫瘍細胞を切除し、 CD31陽性細胞の数を判断 するために免疫組織化学染色を行った。結果を図 3に示す。
[0070] 図 3において、 aは V3を皮下注射したマウスの腫瘍組織の抗 CD31染色像であり、 b は dnP4を皮下注射したマウスの腫瘍組織の抗 CD31染色像染色像である。図 3に示
すように、 v3の CD31染色陽性細胞は認められた力 dnP4の CD31染色陽性細胞は 認められなかった。
[0071] 実施例 4
SCIDマウスの右脇腹に、脾癌細胞株 BxPc3を、それぞれ 5 X 106個づっ皮下注射 した。皮下注射後、 5日目より 14日おきに発現ベクターを大腿部筋肉内に投与し, 3 5日目まで腫瘍の大きさを観察した。腫瘍の大きさの測定は腫瘍の大きさの測定は短 径及び長径をノギスを用いて測定し、以下の計算式にて体積を算出し、腫瘍の大き さとした。
(短径) X (短径) X (長径) Z2
結果を図 4に示す。図 4は、各種ベクターを投与した場合の腫瘍の大きさの変化を示 すグラフである。
[0072] 図 4のグラフにおいて、横軸は皮下注射後の経過日数であり、縦軸は腫瘍の大きさ
(mm3)である。図 4のグラフは、 SCIDマウス 5匹を用いて行った実験における平均、 及び標準偏差を示す。図 4に示すように、 v3を投与した群においては、日数の経過と ともに腫瘍の大きさは増加した。これに対し、ドミナントネガティブ Pim-1を投与した群 においては、投与後 20日目力も腫瘍の大きさが減少した。このことより、ドミナントネ ガティブ Pim-1が腫瘍形成能を欠失していることがわかる。
[0073] 実飾 15
図 5はスクリーニング法を示す図である。図の上段にあるように Pim-1のプロモータ 一領域をルシフェラーゼなどのレポーター発言ベクター内に組み込んで細胞に発現 させて, 10,000個/ wellにまき,被検物質を 1—10 /z M加えて 24時間培養する。一方 下段にあるように正常細胞株 293細胞を 10,000個 /wellにまき,同様に被検物質を加 えて培養する。レポーター活性の低下が認められた well内に加えた被検物質が候補 物質となる。一方正常細胞に対する毒性を示した物質は候補物質力 除外する。
[0074] 以上詳述した通り、低酸素分圧下に曝された種々の癌細胞においては、 Pim-1の 量が増加しており、正常酸素分圧下においては Pim-1は分解されていたが,蛋白分 解系を阻害すると正常酸素分圧下でも Pim-1の量が増加した。ドミナントネガティブ Pim-1によって Pim-1遺伝子の機能を阻害することにより、腫瘍血管新生が低下して
腫瘍形成能が低下した。
[0075] これらのことより、 Pim-1タンパク質、又は Pim-1遺伝子の機能を阻害することにより、 癌の治療、アポトーシス誘導、抗癌剤増強効果を発揮することが可能であり、従って 、ドミナントネガティブ Pim-1及び Pim-1の機能ゃ蛋白発現をを阻害する化合物は癌 の治療等に有効である。
産業上の利用の可能性
[0076] 本発明により提供された Pim-1の機能を阻害する分子(特に、 dominant negative Pim-1およびこれを発現する naked DNA)は、癌の予防や治療において有用である。 抗癌剤が効力なくなった癌細胞や固形癌に対しても有効に用いると特に効果的であ る。また、 Pim-1遺伝子のプロモーターを利用した本発明のスクリーニング系によれば 、癌の予防や治療において有用な化合物を効率的にスクリーニングすることが可能 である。