ES細胞特異的発現遺伝子及びその利用
技術分野
[0001] 本発明は、 ES細胞(embryonic stem cells)に特異的に発現している遺伝子及びそ の利用に関する。
背景技術
[0002] 胚性幹細胞 (ES細胞)は哺乳動物胚盤胞の内部細胞塊より榭立した幹細胞であり 、すべての細胞へと分化する能力(分化多能性)を維持したまま、無限に増殖させる ことができる。 ES細胞は 1981年にまずマウスで榭立され、ノックアウトマウスによる遺 伝子機能解析という画期的な技術をもたらした。さらに、 1998年にヒト ES細胞の榭立 が報告されて力もは、再生医学への応用が大きく期待されるようになった。 ES細胞か ら分化させた心筋や神経細胞を心筋梗塞や神経変性疾患の患者へ移植して機能回 復を計ろうというものである。
[0003] 白血病に対する骨髄移植に代表されるように細胞移植療法は既に実施されて ヽる 力 十分な移植細胞の確保と拒絶反応の抑制という 2つの課題を抱えている。半永 久的に分裂する ES細胞を用いると、十分な細胞の確保という問題を一気に解決でき る。さらに体細胞クローン技術と組み合わせると、拒絶反応も克服することが可能であ る。患者の体細胞力 作製したクローン胚力 ES細胞を榭立し移植に用いれば、患 者と同じ遺伝子を持っため拒絶は起こり得ない。したがって、 ES細胞は細胞移植療 法における 2つの課題をともに克服する可能性を持つ。
[0004] このように大きな可能性を秘めた ES細胞である力 ヒト ES細胞はマウスの ES細胞 に比べて榭立と維持が困難であり、確実な榭立技術および培養技術の開発が必要 である。さらにヒト ES細胞を榭立するためには胚を犠牲にする必要がある。さらに体 細胞クローン技術と組み合わせた場合は、クローン人間の作製に容易につながる。こ のような倫理的問題点を解決するために、分化多能性を持った ES様細胞を体細胞 力 胚を経ずに直接作り出す技術の開発が望まれて 、る。
[0005] これらの技術開発にぉ 、て重要な役割を果たすのが ES細胞等分ィ匕多能性細胞で
特異的に発現する遺伝子(ES cell associated transcript gene,以下 ECAT遺伝子)で ある。 ECAT遺伝子は、細胞が ES細胞であるかどうかのマーカーとなる。また ECAT 遺伝子の ES細胞特異的発現を引き起こす調節領域と薬剤耐性遺伝子を組み合わ せることにより、多種類の細胞の混合培養力 ES細胞を効率よく選択することができ る(特許文献 1を参照)。さらに体細胞において ECAT遺伝子を発現誘導することによ り、 ES様細胞への変換を促進させる可能性もある。
これまでに ECAT遺伝子として報告されているものとしては、転写因子 Oct3(Oct4、 P OU5flとも呼ばれる。以下 Oct3/4という)遺伝子が知られている。また、同様な遺伝子 がヒトでも報告されて ヽるが (h〇ct3/4遺伝子;非特許文献 1を参照)、 hOct-3/4遺伝 子につ!、ては ES細胞特異的な発現を証明したと 、う報告はな!/、。
[0006] 近年我々のグループは、 ES細胞と内部細胞塊の両方で分ィ匕多能性を積極的に維 持する未知因子の探索をめざし、 ESTデータベースを Digital Differential Displayで 解析し、 ES細胞で特異的に発現する 9個の遺伝子を見出し、これを ECAT1遺伝子〜 ECAT9遺伝子と命名した (特許文献 2を参照)。このうち ECAT4は Nanogとも呼ばれる 因子であり、 ES細胞が有する全能性 (分ィ匕多能性)の維持に必須の因子であること が明ら力となった (非特許文献 2を参照)。また ECAT5は ERasとも呼ばれる因子であり 、 ES細胞の増殖を促進する因子であることが明らかになつている (非特許文献 3を参 照)。
前記の解析においては、他にも実験的に多能性細胞特異的な発現が報告されて いる Oct3/4、 UTF1、 REX1なども同定されており、スクリーニング法として極めて有効 であることが証明されている。
[0007] 特許文献 1:米国特許第 6146888号公報
特許文献 2 :WO 02/097090号公報
非特許文献 l :Takeda et al, Nucleic Acids Research, 20:4613-4620(1992) 非特許文献 2 : Mitsui, K., et al" Cell, 113: 631-642(2003)
非特許文献 3 :Takahashi, K., et al., Nature, 423: 541-545(2003)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明は、新規な ECAT遺伝子を提供することを目的とする。さら〖こ詳しくは、本発 明は、新たな ECAT遺伝子である ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺 伝子、 Rnfl7遺伝子および LOC380905(TDRD4)遺伝子を利用した ES細胞の検出法 、体細胞核初期化物質のスクリーニング法または ES細胞維持物質のスクリーニング 法などを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者は、 ES細胞の基礎研究や再生医学、 ES細胞の細胞移植への応用と 、 つた観点から、新たな ECAT遺伝子の探索を進めて 、る。
[0010] 本発明者は新たな ECAT遺伝子を同定するために、 ESTデータベースを Digital Dif ferential Displayで解析し、候補遺伝子の探索を行った。候補遺伝子のうち、 DNA結 合ドメインである SAPモチーフを含有する ECAT15-1遺伝子、および癌遺伝子 mycへ の結合が示唆されている Rnfl 7遺伝子にまず着目し、鋭意検討を進めた結果、以下 の(1)〜(5):
(1) ECAT 15-1遺伝子(配列番号: 1〜4)、
(2) ECAT15-2遺伝子(配列番号: 5〜8)、
(3) ECAT16遺伝子(配列番号: 17〜18および配列番号: 33〜34)、
(4) Rnfl 7遺伝子(配列番号: 9〜 12)、
(5) LOC380905遺伝子(配列番号: 13〜16)、
の 5種類の遺伝子 (上記配列番号は対応のアミノ酸配列も含む)、中でも ECAT15-1遺 伝子、 ECAT15-2遺伝子および ECAT16遺伝子は、いずれも ES細胞特異的に発現 する ECAT遺伝子であり、 ES細胞を特徴付けるマーカー遺伝子であることが明らかと なった。
本発明の新規 ECAT遺伝子は、 Vヽずれも ES細胞特異的に発現する遺伝子であるた め、これら遺伝子または当該遺伝子よりコードされるタンパク質は、 ES細胞の検出、 体細胞核初期化物質のスクリーニング、または ES細胞維持物質のスクリーニング等 において有効に用いられる。
本発明はこのような知見に基づき完成するに至ったものである。
[0011] すなわち本発明は、下記に掲げるものである:
(1) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝 子または LOC380905 (TDRD4)遺伝子の!/ヽずれかに由来するポリヌクレオチドを 含有する、 ES細胞検出用マーカー、
(2) ECAT15— 1遺伝子が配列番号: 1または 3に記載の塩基配列を含有する遺 伝子である、前記(1)記載のマーカー、
(3) ECAT15— 2遺伝子が配列番号: 5または 7に記載の塩基配列を含有する遺 伝子である、前記(1)記載のマーカー、
(4) ECAT16遺伝子が配列番号: 17または 33に記載の塩基配列を含有する遺伝 子である、前記(1)記載のマーカー、
(5) Rnf 17遺伝子が配列番号: 9または 11に記載の塩基配列を含有する遺伝子で ある、前記(1)記載のマーカー、
(6) LOC380905 (TDRD4)遺伝子が配列番号: 13または 15に記載の塩基配列 を含有する遺伝子である、前記(1)記載のマーカー、
(7) 連続する少なくとも 15塩基を含有するポリヌクレオチド及び Z又は該ポリヌクレ ォチドに相補的なポリヌクレオチドを含有する、前記(1)〜(6) V、ずれか記載のマー カー、
(8) 酉己歹 IJ番号: 1、 3、 5、 7、 9、 11、 13、 15、 17また ίま 33の!/、ずれ力に記載の塩基 配列にお 、て、連続する少なくとも 15塩基を含有するポリヌクレオチド及び Ζ又は該 ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドを含有する、 ES細胞検出用マーカー、
(9) ES細胞の検出においてプローブまたはプライマーとして使用される、前記(1) 〜(8) V、ずれか記載のマーカー、
(10) ECAT15- 1, ECAT15- 2, ECAT16, Rnf 17¾yt«LOC380905 (TD RD4)のいずれかを認識する抗体を含有する、 ES細胞検出用マーカー、
(11) ECAT15— 1が配列番号: 2または 4に記載のアミノ酸配列を含有するタンパ ク質である、前記(10)記載のマーカー、
( 12) ECAT15 2が配列番号: 6または 8に記載のアミノ酸配列を含有するタンパ ク質である、前記(10)記載のマーカー、
(13) ECAT16が配列番号: 18または 34に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク
質である、前記(10)記載のマーカー、
(14) Rnfl7が配列番号: 10または 12に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質 である、前記(10)記載のマーカー、
(15) LOC380905 (TDRD4)が配列番号: 14または 16に記載のアミノ酸配列を 含有するタンパク質である、前記(10)記載のマーカー、
[0013] (16) 下記の工程 (a)、(b)及び (c)を含む、 ES細胞の検出方法:
(a)被験細胞に由来する RNAまたはそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと、 前記(1)〜(9) V、ずれか記載のマーカーとを結合させる工程、
(b)該マーカーに結合した被験細胞由来の RNAまたは該 RNAから転写された相補 的ポリヌクレオチドを、上記マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記 (b)の測定結果に基づ!/、て、被験細胞力 ¾S細胞であるか否かを判断する 工程、
(17) 下記の工程 (a)、(b)及び (c)を含む、 ES細胞の検出方法:
(a)被験細胞に由来するタンパク質と、前記( 10)〜( 15) 、ずれか記載のマーカーと を結合させる工程、
(b)該マーカーに結合した被験細胞由来のタンパク質を、上記マーカーを指標として 測定する工程、
(c)上記 (b)の測定結果に基づ!/、て、被験細胞力 ¾S細胞であるか否かを判断する 工程、
[0014] (18) 以下の(a)および (b)の工程を含む、体細胞の核初期化物質のスクリーニング 方法:
(a) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子 または LOC380905 (TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位 置にマーカー遺伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞と、被験物質とを接触さ せる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、マーカー遺伝子発現細胞の出現の有無を調べ、該細胞を 出現させた被験物質を体細胞の核初期化候補物質として選択する工程、
(19) マーカー遺伝子が、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、発光酵素遺
伝子、発色酵素遺伝子またはこれらの組み合わせに係る遺伝子である、前記(18) 記載のスクリーニング方法、
(20) 以下の(a)および (b)の工程を含む、前記(18)または(19)記載のスクリー- ング方法:
(a) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子 または LOC380905 (TDRD4)遺伝子に薬剤耐性遺伝子を含む遺伝子をノックイン した遺伝子を含有する体細胞と、被験物質とを接触させる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、選択培地中での生存細胞の有無を調べ、該生存細胞を生 じさせた被験物質を体細胞の核初期化候補物質として選択する工程、
[0015] (21) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝 子または LOC380905 (TDRD4)遺伝子にマーカー遺伝子をノックインした遺伝子 を含有するノックインマウス、
(22) 前記(21)記載のノックインマウスの、前記(18)〜(20)いずれか記載のスクリ 一ユング方法にぉ 、て用いる体細胞の供給源としての使用、
[0016] (23) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝 子または LOC380905 (TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける 位置にマーカー遺伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞、
(24) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnf 17遺伝 子または LOC380905 (TDRD4)遺伝子にマーカー遺伝子をノックインした遺伝子 を含有する、前記(23)記載の体細胞、
[0017] (25) 以下の(a)および (b)の工程を含む、 ES様細胞の選択方法:
(a) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子 または LOC380905 (TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位 置にマーカー遺伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞と、体細胞の核初期化 物質とを接触させる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、マーカー遺伝子発現細胞を ES様細胞として選択する工程 (26) 以下の(a)および (b)の工程を含む、前記(25)記載の選択方法:
(a) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子 または LOC380905 (TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位 置に薬剤耐性遺伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞と、体細胞の核初期化 物質とを接触させる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、選択培地中での生存細胞を ES様細胞として選択するェ 程、
(27) 前記(23)または(24)記載の体細胞の、前記(18)〜(20)いずれか記載のス クリーニング方法または前記(25)〜(26) V、ずれか記載の選択方法における使用、 [0018] (28) 以下の(a)および (b)の工程を含む、 ES細胞の未分化'多能性維持物質のス クリーニング方法:
(a) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子 または LOC380905 (TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位 置にマーカー遺伝子を存在させた遺伝子を含有する ES細胞を、 ES細胞の未分化' 多能性を維持できない培地中で被験物質と接触させる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、マーカー遺伝子発現細胞の存在の有無を調べ、該細胞を 存在させた被験物質を ES細胞未分化 ·多能性維持の候補物質として選択する工程
(29) 以下の(a)および (b)の工程を含む、前記(28)記載のスクリーニング方法:
(a) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子 または LOC380905 (TDRD4)遺伝子に薬剤耐性遺伝子を含む遺伝子をノックイン した遺伝子を含有する ES細胞を、 ES細胞の未分化 ·多能性を維持できな!/ヽ培地中 で被験物質と接触させる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、選択培地中での生存細胞の有無を調べ、該生存細胞を存 在させた被験物質を ES細胞未分化 ·多能性維持の候補物質として選択する工程、
[0019] (30) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝 子または LOC380905 (TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける 位置にマーカー遺伝子を存在させた遺伝子を含有する ES細胞、
(31) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝
子または LOC380905 (TDRD4)遺伝子にマーカー遺伝子をノックインした遺伝子 を含有する、前記(30)記載の ES細胞、
(32) 前記(30)または(31)記載の ES細胞の、前記(28)または(29)記載のスクリ 一二ング方法における使用、
[0020] (33) ECAT15- 1, ECAT15- 2, ECAT16, Rnf 17¾yt«LOC380905 (TD RD4)の ヽずれかを含有するタンパク質と、当該タンパク質の細胞内への取り込みを 促進する物質との結合体、
(34) ECAT15— 1、 ECAT15— 2、 ECAT16、 Rnf 17または LOC380905 (TD RD4)の ヽずれかを含有するタンパク質と、当該タンパク質の細胞内への取り込みを 促進するタンパク質との融合タンパク質である、前記(33)記載の結合体、
(35) 前記(34)記載の融合タンパク質をコードする塩基配列を含有するポリヌクレ ォチド、
(36) 前記(35)記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、
(37) 前記(36)記載の発現ベクターを導入した細胞、
[0021] (38) ECAT15- 1, ECAT15- 2, ECAT16, Rnf 17¾yt«LOC380905 (TD RD4)の ヽずれかを含有するタンパク質、若しくは前記(33)または(34)記載の結合 体を有効成分として含有する ES細胞の機能維持剤、
(39) ECAT15— 1遺伝子、 ECAT15— 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnf 17遺伝 子または LOC380905 (TDRD4)遺伝子の!/、ずれかを含有するポリヌクレオチド、ま たはこれを含有する発現ベクターを有効成分として含有する ES細胞の機能維持剤、 [0022] (40) 以下の (a)〜(d)のいずれかよりなる ECAT16遺伝子のポリヌクレチド:
(a)配列番号: 17または 33に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号: 18または 34に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有する ポリヌクレオチド、
(c)前記 (a)または (b)のポリヌクレオチドと 70%以上の相同性を有し、且つ ECAT1 6の機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)前記 (a)または (b)のポリヌクレオチド (相補鎖)に対してストリンジェントな条件下 でハイブリダィズし、且つ EC ATI 6の機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレ
ォチド、
(41) 以下の(a)〜(c)の!、ずれかよりなる ECAT16タンパク質:
(a)配列番号: 18または 34に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b)前記 (a)のタンパク質と 70%以上の相同性を有し、且つ ECAT16の機能を有す るタンノ ク質、
(c)前記 (a)のタンパク質において 1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失及び Z又 は付加されたアミノ酸配列を含有し、且つ ECAT16の機能を有するタンパク質、 (42) 配列番号: 1または 5に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(43) 配列番号: 2または 6に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(44) 前記 (40)または (42)記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、
(45) 前記 (44)記載の発現ベクターを導入した細胞、
(46) 前記 (45)記載の細胞を、前記 (44)記載の発現ベクターの発現可能な条件 下で培養することを特徴とする、組換えタンパク質の製造方法、
(47) 前記 (41)または (43)記載のタンパク質に特異的に結合する抗体、
(48) 前記 (40)または (42)記載のポリヌクレオチドの 、ずれかに特異的な、連続す る少なくとも 15塩基を含有するポリヌクレオチド及び Z又は該ポリヌクレオチドに相補 的なポリヌクレオチド、
(49) 前記 (41)または (43)記載のタンパク質のいずれかに特異的な、連続する少 なくとも 6アミノ酸を含有するポリペプチド、
(50) 前記 (40)または (42)記載のポリヌクレオチドの 、ずれかを人為的に染色体 中に挿入したか、あるいは 、ずれかをノックアウトさせた遺伝子改変動物、
(51) 前記 (40)または (42)記載のポリヌクレオチドの 、ずれかに相補的なアンチセ ンス核酸または短 、干渉 RNA (siRNA)、
(52) ECAT15— 1および ECAT15— 2の複合体、
(53) 前記(52)記載の複合体、または当該複合体の細胞内への取り込みを促進す る物質との結合体を有効成分として含有する、前記(38)記載の ES細胞の機能維持 剤、ならびに
(54) 以下の(a)および (b) :
(a) ECAT15— 1遺伝子を含有するポリヌクレオチドまたはこれを含有する発現べク ター、
(b) ECAT15 2遺伝子を含有するポリヌクレオチドまたはこれを含有する発現べク ター、
を有効成分として含有する、前記(39)記載の ES細胞の機能維持剤。
発明の効果
[0024] 本発明の ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 RnH7遺伝子及 び LOC380905(TDRD4)遺伝子は、 ES細胞で特異的に発現する遺伝子であることか ら、これら遺伝子または当該遺伝子よりコードされるタンパク質は、 ES細胞の検出、 体細胞核初期化物質のスクリーニング、または ES細胞維持物質のスクリーニング等 において有効に用いられる。
発明を実施するための最良の形態
[0025] 以下、本明細書にぉ 、て、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号 による表示は、 IUPAC— IUBの規定〔IUPAC- IUB Communication on Biological No menclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明 細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における 慣用記号に従う。
[0026] 本明細書にお!、て「遺伝子(ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝 子、 RnH7遺伝子、 LOC380905(TDRD4)遺伝子)」という用語を用いる場合、技術内 容に応じて、 cDNA(mRNA)のみならずゲノム DNAを指す場合もある。
本明細書にぉ 、て「ポリヌクレオチド」とは、 RNAおよび DNAの!、ずれをも包含する 趣旨で用いられる。
本明細書において「抗体」とは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗 体、一本鎖抗体、または Fabフラグメントや Fab発現ライブラリーによって生成されるフ ラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
[0027] 本明細書において「ECAT15-1遺伝子」とは、配列番号: 1に記載の塩基配列を含 有するマウス ECAT15-1遺伝子、配列番号: 3に記載の塩基配列を含有するヒト ECA T15-1遺伝子、またはこれら塩基配列に類似の塩基配列を含有する遺伝子が挙げら
れる。
本明細書において「ECAT15-2遺伝子」とは、配列番号: 5に記載の塩基配列を含 有するマウス ECAT15-2遺伝子、配列番号: 7に記載の塩基配列を含有するヒト ECA T15-2遺伝子、またはこれら塩基配列に類似の塩基配列を含有する遺伝子が挙げら れる。
[0028] 本明細書において「ECAT16遺伝子」とは、配列番号: 17に記載の塩基配列を含有 するマウス ECAT16遺伝子、配列番号: 33に記載の塩基配列を含有するヒト ECAT16 遺伝子、またはこれら塩基配列に類似の塩基配列を含有する遺伝子が挙げられる。
[0029] 本明細書において「Rnfl7遺伝子」とは、配列番号: 9に記載の塩基配列を含有する マウス Rnfl 7遺伝子、配列番号: 11に記載の塩基配列を含有するヒト Rnfl 7遺伝子、ま たはこれら塩基配列に類似の塩基配列を含有する遺伝子が挙げられる。
本明細書において「LOC380905(TDRD4)遺伝子」とは、 LOC380905遺伝子または T DRD4遺伝子と呼ばれる遺伝子であり、具体的には配列番号: 13に記載の塩基配列 を含有するマウス LOC380905遺伝子、配列番号: 15に記載の塩基配列を含有するヒ ト TDRD4遺伝子(マウス LOC380905のヒト相同遺伝子)、またはこれら塩基配列に類 似の塩基配列を含有する遺伝子が挙げられる。
[0030] 前記にお!、て「類似の塩基配列を含有する遺伝子」とは、前記配列番号に示される 塩基配列中、 1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を 含有する遺伝子や、前記配列番号で示される塩基配列と高!ヽ相同性を有する塩基 配列を含有する遺伝子が挙げられる。
ここで「高い相同性を有する塩基配列を含有する遺伝子」とは、具体的には前記配 列番号で示された塩基配列に対して 70%以上、好ましくは 80%以上、より好ましくは 9 0%以上、特に好ましくは 95%以上の相同性を有する塩基配列を含有する遺伝子が 挙げられる。また別の態様としては、前記配列番号で示された塩基配列 (相補鎖)と ストリンジェントな条件下でノヽイブリダィズする遺伝子が挙げられる。ここでストリンジェ ントな条件とは、ハイブリダィズ反応や洗浄の際の温度、塩濃度等を適宜変化させる ことにより調節することができ、所望の相同性に応じて設定されるが、例えば塩濃度: 6 X SSC、温度: 65°Cのハイブリダィズ条件が挙げられる。
[0031] これら「 (本発明の各 ECAT遺伝子と)類似の塩基配列を含有する遺伝子」は、マー カーとして使用する場合は、各 ECAT遺伝子の ES細胞特異的な発現を検出できると Vヽぅ特徴を有すればよ!ヽ。また後述の ES細胞の機能維持剤として使用する場合は、 各 ECAT遺伝子と同様の ES細胞の機能維持活性を有すれば良い。
[0032] 本明細書において「ECAT15-1」とは、配列番号: 2に記載のアミノ酸配列を含有す るマウス ECAT15-1タンパク質、配列番号: 4に記載のアミノ酸配列を含有するヒト EC AT15-1タンパク質、またはこれらアミノ酸配列に類似のアミノ酸配列を含有するタン パク質が挙げられる。
本明細書において「ECAT15-2」とは、配列番号: 6に記載のアミノ酸配列を含有す るマウス ECAT15-2タンパク質、配列番号: 8に記載のアミノ酸配列を含有するヒト EC AT15-2タンパク質、またはこれらアミノ酸配列に類似のアミノ酸配列を含有するタン パク質が挙げられる。
[0033] 本明細書において「ECAT16」とは、配列番号: 18に記載のアミノ酸配列を含有する マウス ECAT16タンパク質、配列番号: 34に記載のアミノ酸配列を含有するヒト ECAT 16タンパク質、またはこれらアミノ酸配列に類似のアミノ酸配列を含有するタンパク質 が挙げられる。
[0034] 本明細書において「Rnfl7」とは、配列番号: 10に記載のアミノ酸配列を含有するマ ウス RnH7タンパク質、配列番号: 12に記載のアミノ酸配列を含有するヒト Rnfl7タンパ ク質、またはこれらアミノ酸配列に類似のアミノ酸配列を含有するタンパク質が挙げら れる。
本明細書において「LOC380905(TDRD4)」とは、配列番号: 14に記載のアミノ酸配 列を含有するマウス LOC380905タンパク質、配列番号: 16に記載のアミノ酸配列を 含有するヒト TDRD4タンパク質(マウス LOC380905のヒト相同タンパク)、またはこれら アミノ酸配列に類似のアミノ酸配列を含有するタンパク質が挙げられる。
[0035] 前記にお!ヽて「 (本発明の各 ECATと)類似のアミノ酸配列を含有するタンパク質」と は、前記「 (本発明の各 ECAT遺伝子と)類似の塩基配列を含有する遺伝子」によりコ ードされるタンパク質が挙げられる。具体的には前記配列番号で示されたアミノ酸配 列と 70%以上、好ましくは 80%以上、より好ましくは 90%以上、特に好ましくは 95%以
上の相同性を有するアミノ酸配列を含有するタンパク質が挙げられる。
[0036] これら「 (本発明の各 ECATと)類似のアミノ酸配列を含有するタンパク質」は、マー カー (抗体)を作製するための抗原として使用する場合は、各 ECATと同様の抗原性 を有すると!ヽぅ特徴を有すればよ!ヽ。また後述の ES細胞の機能維持剤として使用す る場合は、各 ECATと同様の ES細胞の機能維持活性を有すれば良 、。
[0037] (1)ES細胞検出用マーカー
(1-1)ポリヌクレオチド
本発明は前述するように、 ES細胞において、 ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝 子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子及び LOC380905(TDRD4)遺伝子(以下、本発明 遺伝子と称する場合がある)が ES細胞で特異的に発現しているという知見を発端に、 これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって、被験細胞が ES 細胞であるか否かを検出できるという知見に基づくものである。具体的には本発明は 、これら ECAT15- 1遺伝子、 ECAT15- 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子また は LOC380905(TDRD4)遺伝子の!/、ずれかに特異的なポリヌクレオチドからなる、 ES 細胞検出用マーカーを提供する。
ここで「ES細胞」とはいわゆる ES細胞の他、 ES様細胞も含まれる。当該「ES様細胞」 とは、 ES細胞としての性質を有する細胞、すなわち未分化'多能性を有する細胞を意 味する。
[0038] ここで「特異的なポリヌクレオチド」とは、前記各遺伝子を他の遺伝子と区別して特 定することのできる長さを有するポリヌクレオチドを指す。なお本発明遺伝子の中には 、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子および LOC380905(TDRD4)遺伝子という、遺伝子配 列上オーバーラップする遺伝子が存在して ヽる。これらの遺伝子は!ヽずれも ES細胞 特異的発現遺伝子であるため、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子および LOC380905(T DRD4)遺伝子の 2種以上に結合するポリヌクレオチドをマーカーとして使用しても何ら 支障はない。よって ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子および LOC380905(TDRD4)遺伝 子はお互いに「他の遺伝子」の範疇から除外するものとする。具体的には、 ECAT16 遺伝子、 Rnfl7遺伝子および LOC380905(TDRD4)遺伝子のうちの 2種以上を認識す るポリヌクレオチドであっても、これらと無関係な他の遺伝子を認識しない限り、前記「
特異的なポリヌクレオチド」の範疇に含まれる。
また、同一因子に関してヒトとマウスといった種間の相違は「他の遺伝子」の範疇か ら除外するものとする。具体的には、 ECAT15-1遺伝子の 2種以上の種 (例えばマウス とヒト)、 ECAT15-2遺伝子の 2種以上の種(例えばマウスとヒト)、 ECAT16遺伝子の 2 種以上の種 (例えばマウスとヒト)、 Rnfl 7遺伝子の 2種以上の種 (例えばマウスとヒト)、 または LOC380905(TDRD4)遺伝子の 2種以上の種(例えばマウスとヒト)を認識するポ リヌクレオチドであっても、これと無関係な他の遺伝子を認識しない限り、前記「特異 的なポリヌクレオチド」の範疇に含まれる。
[0039] 本発明の ES細胞検出用マーカーは、具体的には、通常 15塩基もあれば、 1つの遺 伝子を他の遺伝子から区別して特定することが可能である。従って本発明のマーカ 一の具体例として、前記 ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rn fl7遺伝子又は LOC380905(TDRD4)遺伝子の塩基配列において、連続する少なくと も 15塩基を含有するポリヌクレオチド及び Zまたはそれに相補的なポリヌクレオチドか らなる ES細胞検出用マーカーが挙げられる。
より具体的には、本発明のマーカーは、配列番号: 1、 3、 5、 7、 9、 11、 13、 15、 17ま たは 33の 、ずれかに記載の塩基配列にお!/、て、連続する少なくとも 15塩基を含有 するポリヌクレオチド及び Zまたはそれに相補的なポリヌクレオチドを含有する ES細 胞検出用マーカーが挙げられる。
[0040] ここで相補的なポリヌクレオチド (相補鎖、逆鎖)とは、前記本発明遺伝子の塩基配 列からなるポリヌクレチドの全長配列、または該塩基配列にぉ 、て少なくとも連続した 15塩基長の塩基配列を有するその部分配列に対して、 A:Tおよび G:Cといった塩基 対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味する。ただ し、力かる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合 に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイスすることができる 程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、 Berger and Kimmel (1987, uuide to Molecularし lonmg Techniques Metnods in Enzy mology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA)に教示されるように、複合体或い はプローブを結合する核酸の融解温度 (Tm)に基づ 、て決定することができる。例え
ばノヽイブリダィズ後の洗浄条件として、通常「1 X SSC、 0.1%SDS、 37°C」程度の条件を 挙げることができる。相補鎖は力かる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダィ ズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいノヽイブ リダィズ条件として「0.5 X SSC、 0.1%SDS、 42°C」程度、さらに厳しいハイブリダィズ条 件として「0.1 X SSC、 0.1%SDS、 65°C」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的 には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある 塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも 90%、好ましくは 95%の相同性を有す る塩基配列力もなる鎖を例示することができる。
[0041] ここで、正鎖側のポリヌクレオチドには、本発明遺伝子の塩基配列、またはその部 分配列を有するものだけでなぐ上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関 係にある塩基配列力もなる鎖を含めることができる。
[0042] さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖 (逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一 本鎖の形態でマーカーとして使用されても、また二本鎖の形態でマーカーとして使用 されてもよい。また前記ポリヌクレオチドが検出用に標識されたものも、本発明のポリ ヌクレオチドの範疇に含まれる。
[0043] 本発明の ES細胞検出用マーカーは、具体的には、本発明遺伝子の塩基配列 (全 長配列)力もなるポリヌクレオチドであってもよ 、し、その相補配列力もなるポリヌクレ ォチドであってもよい。また本発明遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチ ドを選択的に (特異的に)認識するものであれば、上記全長配列またはその相補配 列の部分配列力もなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては 、上記全長配列またはその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも 15 個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
[0044] なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンプロット法にお いては、本発明遺伝子またはこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に検出でき ること、また RT-PCR法においては本発明遺伝子またはこれらに由来するポリヌクレオ チドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなぐ当業者が上 記検出物または生成物が本発明遺伝子に由来するものであると判断できるものであ ればよい。
[0045] 本発明のマーカーは、例えば配列番号: 1で示されるマウス ECAT15-1遺伝子、配 列番号: 3で示されるヒト ECAT15-1遺伝子、配列番号: 5で示されるマウス ECAT15-2 遺伝子、配列番号: 7で示されるヒト ECAT15-2遺伝子、配列番号: 9で示されるマウス Rnfl 7遺伝子、配列番号: 11で示されるヒト Rnfl 7遺伝子、配列番号: 13で示されるマウ ス LOC380905遺伝子、配列番号: 15で示されるヒト TDRD4遺伝子、配列番号: 17で 示されるマウス ECAT16遺伝子、配列番号: 33で示されるヒト ECAT16遺伝子の塩基 酉己歹 IJをもとに、例えば primer 3 ( HYPERLINK http://www.genome.wi.mit.edu/cgi-bin I primer/ primer ^ gi http://www.genome.wi.mit.edu/ cgi— bin/ primer/ primer «3. egリあ るいはベクター NTI (Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には前記 本発明遺伝子の塩基配列を primer 3またはベクター NTIのソフトウェアにかけて得ら れる、プライマーまたはプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含 む配列をプライマーまたはプローブとして使用することができる。具体例としては、配 列番号: 19〜32に記載の塩基配列からなるプライマーが例示される。
[0046] 本発明のマーカーは、上述するように連続する少なくとも 15塩基の長さを有するも のであればよいが、具体的にはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定す ることがでさる。
[0047] (1-2)プローブまたはプライマーとしてのポリヌクレオチド
被験細胞力 ¾S細胞であるか否かの検出は、被験細胞における本発明遺伝子の!/ヽ ずれかの発現の有無または発現レベル (発現量)を評価することによって行われる。 この場合、上記本発明のマーカーは、本発明遺伝子の発現によって生じた RNAま たはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーと して、または該 RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するため のプローブとして利用することができる。
[0048] 本発明のマーカーを ES細胞の検出においてプライマーとして用いる場合には、通 常 15bp〜100bp、好ましくは 15bp〜50bp、より好ましくは 15bp〜35bpの塩基長を有す るものが例示できる。さらに好ましくは 20bp〜35bpの塩基長を有するものが例示され る。また検出プローブとして用いる場合には、通常 15bp〜全配列の塩基数、好ましく は 15bp〜 lkb、より好ましくは 100bp〜 lkbの塩基長を有するものが例示できる。
[0049] 本発明のマーカーは、ノーザンブロット法、 RT- PCR法、 in situハイブリダーゼーショ ン法、 DNAチップなどといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法におい て、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができる。該利用によ つて被験細胞における本発明遺伝子の発現の有無または発現レベル (発現量)を評 価することができる。
測定対象試料としては、被験細胞から常法に従って調製した total RNAを用いても よいし、さらに該 RNAをもとにして調製される各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。 また細胞そのものを測定対象試料として用いてもょ 、。
[0050] (1-3)抗体
本発明は、 ES細胞検出用マーカーとして、 ECAT15-1、 ECAT15-2、 ECAT16、 Rnf 17または LOC380905(TDRD4) (以下、本発明タンパク質と称する場合がある)の!、ず れカを特異的に認識することのできる抗体を提供する。
当該抗体として、具体的には、配列番号: 2に記載のアミノ酸配列を含有するマウス ECAT15- 1、配列番号: 4に記載のアミノ酸配列を含有するヒト ECAT15-1、配列番号 : 6に記載のアミノ酸配列を含有するマウス ECAT15- 2、配列番号: 8に記載のアミノ酸 配列を含有するヒト ECAT15-2、配列番号: 10に記載のアミノ酸配列を含有するマウス Rnfl7、配列番号: 12に記載のアミノ酸配列を含有するヒト Rnfl7、配列番号: 14に記 載のアミノ酸配列を含有するマウス LOC380905、配列番号: 16に記載のアミノ酸配列 を含有するヒト TDRD4、配列番号: 18に記載のアミノ酸配列を含有するマウス ECAT1 6または配列番号: 34に記載のアミノ酸配列を含有するヒト ECAT16を特異的に認識 することのできる抗体を挙げることができる。これらの抗体は、被験細胞における本発 明タンパク質の発現の有無またはその程度を検出することによって、被験細胞が ES 細胞であるか否かを検出することのできるツールとして有用である。
[0051] ここで「(本発明タンパク質を)特異的に認識する抗体」とは、前記「特異的なポリヌク レオチド」と同様の特異性を意味する。すなわち、 ECAT16、 RnH7および LOC380905 (TDRD4)のうちの 2種以上を認識する抗体であっても、これらと無関係な他のタンパク を認識しない抗体である限り、前記「特異的な抗体」の範疇に含まれる。
また ECAT15-1の 2種以上の種(例えばマウスとヒト)、 ECAT15-2の 2種以上の種(例
えばマウスとヒト)、 ECAT16の 2種以上の種(例えばマウスとヒト)、 Rnfl7の 2種以上の 種(例えばマウスとヒト)、または LOC380905(TDRD4)の 2種以上の種(例えばマウスと ヒト)を認識する抗体であっても、これと無関係な他のタンパクを認識しな ヽ抗体であ る限り、前記「特異的な抗体」の範疇に含まれる。
[0052] 本発明の抗体は、その形態に特に制限はなぐ本発明タンパク質を免疫抗原とする ポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよい。さらに本 発明タンパク質のアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常 8アミノ酸、好ましくは 1 5アミノ酸、より好ましくは 20アミノ酸力 なるポリペプチドに対して抗原結合性を有す る抗体も、本発明の抗体に含まれる。
[0053] これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従 つて製造することができる(Current Protocol in Molecular Biology, Chapter 11.12〜1 1.13(2000)) o具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に 従って大腸菌等で発現し精製した本発明タンパク質を用いて、あるいは常法に従つ て本発明タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等 の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。 一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本 発明タンパク質、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴぺプチ ドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合さ せて調製したハイプリドーマ細胞の中力 得ることができる(Current protocols in Mol ecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. Jonn Wiley and bons. Section 11. 4〜11.11)。
[0054] 抗体の作製に免疫抗原として使用される本発明タンパク質は、本発明により提供さ れる遺伝子の配列情報(配列番号 1,3,5,7,9,11, 13,15, 17,33)に基づいて、 DNAクロ 一-ング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフエクシヨン、形質転換体の培養およ び培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当 業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じ て行うことができる。
[0055] 具体的には、本発明タンパク質をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現で きる組み換え DNA (発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し 、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、 目的タンパク質を回収すること〖こ よって、本発明抗体の製造のための免疫抗原としてのタンパク質を得ることができる。 また、これら本発明タンパク質の部分ペプチドは、本発明により提供されるアミノ酸配 列の情報(配列番号 2,4,6,8, 10, 12, 14, 16, 18,34)に従って、一般的な化学合成法 (ぺ プチド合成)〖こよって製造することもできる。
[0056] 本発明抗体はまた、本発明タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチド を用いて調製されるものであってょ 、。力かる抗体の製造のために用いられるオリゴ( ポリ)ペプチドは、本発明タンパク質と同様な免疫原特性を有するものであることが望 ましい。好ましくはこの免疫原特性を有し、且つ本発明タンパク質のアミノ酸配列にお いて少なくとも連続する 8アミノ酸、好ましくは 15アミノ酸、より好ましくは 20アミノ酸から なるオリゴ (ポリ)ペプチドを例示することができる。
[0057] かかるオリゴ (ポリ)ペプチドに対する抗体の製造は、宿主に応じて種々のアジュバ ントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、 そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラ ルゲル、並びにリゾレシチン、プル口ニックポリオル、ポリア-オン、ペプチド、油乳剤 、キーホールリンペットへモシァニン及びジニトロフエノールのような表面活性物質、 B CG (カルメット一ゲラン桿菌)やコリネバタテリゥム-パルヴムなどのヒトアジュバントが 含まれる。
[0058] 本発明の抗体は本発明タンパク質に特異的に結合する性質を有することから、該 抗体を利用することによって、本発明タンパク質(ECAT15-1、 ECAT15-2、 ECAT16、 Rnfl7または LOC380905(TDRD4))を特異的に検出することができる。すなわち、当該 抗体は被験細胞 袓織における本発明タンパク質の発現の有無を検出するためのプ ローブとして有用である。
[0059] (2)ES細胞の検出方法
本発明は、前述した本発明のマーカーを利用した ES細胞の検出方法を提供する ものである。
具体的には、本発明の ES細胞検出方法は、被験細胞に含まれる本発明遺伝子 (E CAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子または LOC380 905(TDRD4)遺伝子)の遺伝子発現レベル、およびこれらの遺伝子に由来するタンパ ク質レベル(ECAT15- 1、 ECAT15- 2、 ECAT16、 Rnfl7または LOC380905(TDRD4)) を測定し、被験細胞が ES細胞である力否かを判断すると 、うものである。
本発明の検出方法は、具体的には下記のようにして実施される。
[0060] (2-1)測定対象として RNAを利用する場合
測定対象物として RNAを利用する場合、 ES細胞の検出は、具体的に下記の工程 (a )、(b)及び (c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験細胞に由来する RNAまたはそれ力 転写された相補的ポリヌクレオチドと、 本発明のマーカー(ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7 遺伝子または LOC380905(TDRD4)遺伝子の!/、ずれかに由来するポリヌクレオチド)と を結合させる工程、
(b)該マーカーに結合した被験細胞由来の RNAまたは該 RNAから転写された相補 的ポリヌクレオチドを、上記マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記 (b)の測定結果に基づいて、被験細胞力 ¾S細胞であるか否かを判断するェ 程。
[0061] 測定対象物として RNAを利用する場合は、本発明の検出方法は該 RNA中の本発 明遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、前 述のポリヌクレオチド力 なる本発明のマーカーをプライマーまたはプローブとして用 いて、ノーザンブロット法、 RT- PCR法、 DNAチップ解析法、 in situハイブリダィゼーシ ヨン解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
[0062] ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明のマーカーをプローブとして用いるこ とによって、 RNA中の本発明遺伝子の発現の有無やその発現レベルを検出、測定す ることができる。具体的には、本発明のマーカー湘補鎖)を放射性同位元素 (32P、 33 Pなど: RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にト ランスファーした被験細胞由来の RNAとハイブリダィズさせた後、形成されたマーカ 一と RNAとの二重鎖を、マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナ
ルを X線フィルム等で検出するカゝ、放射線検出器 (BAS-1800II、富士フィルム社製)ま たは蛍光検出器等で検出、測定する方法を例示することができる。また、 AlkPhos Dir ect Labelling ana Detection System、 マンャムファノレマン /'ノ ィオアク社製)を用 ヽ て、該プロトコールに従ってマーカー(プローブ DNA)を標識し、被験細胞由来の RN Aとハイブリダィズさせた後、マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオ イメージヤー STORM860 (アマシャムフアルマシアバイオテク社製)で検出、測定する 方法を使用することもできる。
[0063] RT-PCR法を利用する場合は、本発明のマーカーをプライマーとして用いることによ つて、 RNA中の本発明遺伝子の発現の有無や発現レベルを検出、測定することがで きる。具体的には、被験細胞由来の RNAから常法に従って cDNAを調製して、これを 铸型として標的遺伝子 (本発明遺伝子)の領域が増幅できるように、本発明のマーカ 一(一対のプライマー)をこれとハイブリダィズさせて、常法に従って PCR法を行 、、 得られた増幅二本鎖 DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅され た二本鎖 DNAの検出は、ァガロースゲル電気泳動後ェチジゥムブロマイド染色によ り検出する方法、上記 PCRを予め RIや蛍光物質で標識してぉ 、たプライマーを用い て行うことによって産生される標識二本鎖 DNAを検出する方法、産生された二本鎖 DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した本発明 のマーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダィズさせて検出する方法などを 用いることができる。なお、生成された標識二本鎖 DNA産物はアジレント 2100バイオ アナライザ (横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、 S YBR Green RT- PCR Reagents (アプライドバイオシステム社製)で該プロトコールに 従って RT- PCR反応液を調製し、 ABI PRIME 7700 Sequence Detection System (ァプ ライドバイオシステム社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
[0064] DNAチップ解析を利用する場合は、本発明のマーカーを DNAプローブ(1本鎖ま たは 2本鎖)として貼り付けた DNAチップを用意し、これに被験細胞由来の RNAから 常法によって調製された cRNAとハイブリダィズさせて、形成された DNAと cRNAとの二 本鎖を、本発明のマーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法 を挙げることができる。
[0065] (2-2)測定対象としてタンパク質を用いる場合
測定対象物としてタンパク質を用いる場合、本発明の ES細胞の検出方法は、被験 細胞中の本発明タンパク質(ECAT15-1、 ECAT15-2、 ECAT16、 Rnfl7または LOC38 0905(TDRD4))を検出することによって実施される。具体的には下記の工程 (a)、(b)及 び (c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験細胞に由来するタンパク質と、本発明のマーカー(ECAT15- 1、 ECAT15-2、 ECAT16、 Rnfl7または LOC380905(TDRD4)のいずれかを認識する抗体)とを結合さ せる工程、
(b)該マーカーに結合した被験細胞由来のタンパク質を、上記マーカーを指標として 測定する工程、
(c)上記 (b)の測定結果に基づいて、被験細胞力 ¾S細胞であるか否かを判断するェ 程。
[0066] より具体的には、抗体に関する本発明のマーカーを用いて、被験細胞、または被験 細胞抽出液などを試料として用い、ウェスタンプロット法や組織免疫学的染色法など の公知方法で、本発明タンパク質を検出、定量する方法を挙げることができる。
[0067] ウェスタンブロット法は、一次抗体として本発明のマーカーを用いた後、二次抗体と して1251などの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルォキシターゼ (HR P)などの酵素等で標識した標識抗体 (一次抗体に結合する抗体)を用い、得られる 標識化合物の放射性同位元素、蛍光物質などに由来するシグナルを X線フィルム 等で検出するか、放射線測定器 (BAS-1800II :富士フィルム社製など)、蛍光検出器 などで検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明のマー カーを用いた後、 ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャムファノレマ シァバイオテク社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオィメー ジャー STORM860(アマシャムフアルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
[0068] (2-3)ES細胞の検出
ES細胞 (ES様細胞)である力否かの判断は、被験細胞にぉ 、て本発明遺伝子の V、ずれかの発現量 (レベル)、若しくは本発明タンパク質の 、ずれかの発現量 (レべ ル)を測定することで実施できる。本発明遺伝子またはタンパク質のいずれかが発現
していること、または体細胞での発現と比較して発現レベルが高いことをもって、被験 細胞が ES細胞であると判断することができる。その際、 Oct3/4や Nanog(ECAT4)とい つた他の ES細胞特異的発現遺伝子が発現して ヽることも、併せて確認することが望 ましい。
[0069] (3)体細胞核初期化物質または ES細胞未分化 ·多能性維持物質等のスクリーニング 参考例 1に記載したように、本発明者らは、本発明遺伝子と同じく ES細胞特異的発 現遺伝子である ECAT3遺伝子にマーカー遺伝子である β geo遺伝子をノックインした ノックインマウスカゝら体細胞(リンパ球)を調製した。この体細胞を ES細胞の培養条件 で培養し、 G418で選択したところ、全て死滅し、薬剤耐性コロニーは一つも得られな かった。一方、前記体細胞を正常 ES細胞と融合し、 ES細胞の培養条件で培養し、 G4 18で選択したところ、生存細胞が出現した。この生存細胞を解析した結果、 ECAT4や Oct3/4を発現し、 ES細胞としての性質を有する ES様細胞であることが分力つた。以上 の実験結果より、体細胞と ES細胞との融合により体細胞の核が初期化(リブログラミン グ)されたために ES様細胞が出現し、そして ECAT3遺伝子に置き換えられた β geoが 発現して薬剤耐性となったことが明らかとなった。
[0070] このように ES細胞特異的発現遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置 にマーカー遺伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞は、 ES様細胞に変換され た時にのみ、マーカー遺伝子を発現する。すなわち ES様細胞への変換を薬剤耐性 等のマーカー遺伝子の発現で容易にモニターすることができる。この性質を利用す れば、体細胞力も ES様細胞への変換を誘導する核初期化因子を、薬剤耐性等のマ 一力一遺伝子の発現を指標として効率的にスクリーニングすることができる。また同様 に、前記マーカー遺伝子の発現を指標として、 ES様細胞を効率的に選択することが できる。
[0071] さらに「ES様細胞への変換を薬剤耐性等のマーカー遺伝子の発現で容易にモニタ 一する」という前記システムは、 ES細胞の未分化'多能性維持物質のスクリーニング にも応用することができる。すなわち本発明の前記システムによれば、 ES細胞状態を 薬剤耐性等のマーカー遺伝子の発現で容易にモニターすることができるため、例え ば ES細胞状態を維持できな ヽ培養条件下に被験物質を添加し、マーカー遺伝子発
現細胞の存在の有無を調べることにより、 ES細胞の未分化 ·多能性維持 (候補)物質 を容易にスクリーニングすることができる。
[0072] 以上のスクリーニング方法等については既に特許出願がなされている(特願 2004-2
76572、出願日: 2004年 9月 24日(優先日: 2004年 2月 19日)、出願人:山中伸弥、住 友製薬株式会社)(その後 2005年 2月 16日国際出願。国際出願番号: PCT/JP2005/0
02842、国際公開番号: WO2005/080598)。
[0073] なお、前記で体細胞力 核初期化物質により変換されて生じた「ES様細胞」とは、 E
S細胞としての性質を有する細胞、すなわち未分化 ·多能性を有する細胞を意味する 以下において「本発明遺伝子」とは、技術常識に応じてゲノム遺伝子を指す場合も ある。
[0074] (3-1)本発明の体細胞核初期化物質のスクリーニング方法
本発明は、以下の (a)および (b)の工程:
(a) ECAT15-l遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子または LOC 380905(TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺 伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞と、被験物質とを接触させる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、マーカー遺伝子発現細胞の出現の有無を調べ、該細胞を出 現させた被験物質を体細胞の核初期化候補物質として選択する工程、
を含む、体細胞の核初期化物質のスクリーニング方法を提供する。
[0075] 前記で「マーカー遺伝子」とは、当該マーカー遺伝子を細胞に導入することにより、 細胞の選別や選択を可能とするような遺伝子全般を指す。具体的には薬剤耐性遺 伝子、蛍光タンパク質遺伝子、発光酵素遺伝子、発色酵素遺伝子またはこれらの組 み合わせに係る遺伝子が挙げられる。
[0076] 薬剤耐性遺伝子としては、具体的にはネオマイシン耐性遺伝子 (neo)、テトラサイク リン耐性遺伝子 (tet)、カナマイシン耐性遺伝子、ゼォシン耐性遺伝子 (zeo)、ハイグ ロマイシン耐性遺伝子 (hygro)等が挙げられる。各薬剤を含有する培地 (選択培地と いう)で細胞を培養することにより、薬剤耐性遺伝子が導入'発現した細胞のみが生 き残る。従って、選択培地で細胞を培養することにより、薬剤耐性遺伝子を含有する
細胞を容易に選択することができる。
[0077] 蛍光タンパク質遺伝子としては、具体的には GFP (緑色蛍光タンパク質)遺伝子、 Y FP (黄色蛍光タンパク質)遺伝子、 RFP (赤色蛍光タンパク質)遺伝子、ェクオリン遺 伝子等が挙げられる。これら蛍光タンパク質遺伝子が発現した細胞は、蛍光顕微鏡 で検出することができる。また蛍光強度の違いを利用することによりセルソーター等で 分離 '選択することや、細胞を限界希釈して 1ゥエルあたり 1細胞以下とした後に培養 •増殖させ、蛍光を発する細胞 (ゥエル)を蛍光顕微鏡下で検出することにより当該細 胞を選択することができる。さらに、軟寒天培地などの上でコロニーを形成させ、蛍光 顕微鏡下などでコロニーを選択することもできる。
[0078] 発光酵素遺伝子としては、具体的にはルシフェラーゼ遺伝子等が挙げられる。これ ら発光酵素遺伝子を発現した細胞は、発光基質を加えて発光光度計で発光量を測 定すること〖こより検出することができる。また細胞を限界希釈して 1ゥエルあたり 1細胞 以下とした後に培養 ·増殖させ、各ゥエルから一部の細胞を採取し、発光基質を加え て発光光度計で発光の如何を測定することにより当該細胞を選択することができる。
[0079] 発色酵素遺伝子としては、具体的には j8ガラクトシダーゼ遺伝子、 j8ダルク口ニダ ーゼ遺伝子、アルカリフォスファターゼ遺伝子、又は分泌型アルカリフォスファターゼ である SEAP遺伝子等が挙げられる。これら発色酵素遺伝子が発現した細胞は、発色 基質を加えて発色の有無を観察することにより検出することができる。また細胞を限 界希釈して 1ゥエルあたり 1細胞以下とした後に培養 ·増殖させ、各ゥエル力 一部の 細胞を採取し、発色基質を加えて発色の如何を観察することにより当該細胞を選択 することができる。
[0080] これらマーカー遺伝子の組み合わせに係る遺伝子としては、具体的にはネオマイ シン耐性遺伝子 (neo)と βガラクトシダーゼ遺伝子( β -gal)との融合遺伝子である β g eo遺伝子が挙げられる。
[0081] 以上のようなマーカー遺伝子はいずれも当業者に周知であり、このようなマーカー 遺伝子を含有するベクターはインビトロジェン社、アマシャムバイオサイエンス社、プ 口メガ社、 MBL (医学生物学研究所)等から市販されて ヽる。
[0082] 前記マーカー遺伝子のうち、細胞の選択が容易であるという観点から、特に好まし
いのは薬剤耐性遺伝子、または当該薬剤耐性遺伝子を含む遺伝子である。
[0083] 前記において「体細胞」とは、正常 ES細胞等の未分化'多能性維持細胞を除く全て の細胞を意味する。具体的には、例えば(1)神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細 胞、精子幹細胞等の組織幹細胞 (体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)リンパ球、 上皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞等の分化した細胞、(4)ES細胞力 何らかの手法 で未分化 ·多能性を消失させた細胞、(5)体細胞と ES細胞との融合細胞であって未分 化 ·多能性を有さな 、細胞、などが挙げられる。
[0084] 本発明のスクリーニング方法においては、本発明遺伝子の発現調節領域により発 現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞を、ス クリーニング用細胞として用いる。
ここで「発現調節領域」とは、遺伝子の発現 (転写)を調節する領域のことであり、「 プロモーター領域」、若しくは「プロモーター及びェンノ、ンサ一領域」を含む領域を意 味する。
本発明遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を 存在させる方法は、いろいろ知られており、当業者に周知の如何なる方法を用いて マーカー遺伝子を存在させても良い。大別すると、 (3-1-1)個体 (マウス)を利用して マーカー遺伝子を存在させる場合と、 (3-1-2)個体を利用せずに細胞レベルでマー カー遺伝子を存在させる場合がある。
[0085] (3-ト 1)個体 (マウス)を利用してマーカー遺伝子を存在させる方法
個体 (マウス)を利用してマーカー遺伝子を存在させる場合は、本発明遺伝子の発 現調節領域により発現調節を受けるゲノム上の位置にマーカー遺伝子を存在させる 。この場合、個体が有する本発明遺伝子自身は、発現可能な形で存在していても良 く、また本発明遺伝子が破壊された形で存在して ヽても良 、。
遺伝子の発現調節領域は、通常ェクソン 1より上流域に存在する。従って、本発明 遺伝子の発現調節領域によりマーカー遺伝子が発現調節を受けるためには、当該 マーカー遺伝子は、本発明遺伝子のェクソン 1開始部位より下流域に存在させること が望ましい。この場合、ェクソン 1開始部位より下流であれば、どのような位置に存在 していても良い。
[0086] (3- 1-1- a)本発明遺伝子を破壊する場合
本発明遺伝子を破壊する方法は、当業者に周知の如何なる方法を用いても良いが 、最も良く使われる手法としては、マーカー遺伝子を含有し、かつ本発明遺伝子の任 意の位置で相同組換えを起こすベクター(以下ターゲッティングベクターと称する)を 用いて、相同組換えにより当該本発明遺伝子を標的破壊し、代わりにマーカー遺伝 子をこの位置に存在させる方法が挙げられる。このように本発明遺伝子を破壊し、そ の位置にマーカー遺伝子を存在させることを、「本発明遺伝子にマーカー遺伝子をノ ックインする」と言う。
[0087] すなわち本発明の体細胞核初期化物質のスクリーニング法の具体例として、本発 明は以下の (a)および (b) :
(a) ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子または LO C380905(TDRD4)遺伝子に薬剤耐性遺伝子を含む遺伝子をノックインした遺伝子を 含有する体細胞と、被験物質とを接触させる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、選択培地中での生存細胞の有無を調べ、該生存細胞を生 じさせた被験物質を体細胞の核初期化候補物質として選択する工程、
の工程を含む、体細胞核初期化物質のスクリーニング方法を提供する。
[0088] マーカー遺伝子をノックインする方法は種々知られている力 中でもプロモータート ラップ法が好適に用いられる。当該プロモータートラップ法は、プロモーターを持たな V、ターゲッティングベクターを相同組換えによりゲノム中に挿入し、相同組換えが正し く起こった場合に内在性プロモーター (本発明遺伝子のプロモーター)によりマーカ 一遺伝子が発現するというものである。以下、当該プロモータートラップ法により本発 明遺伝子発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を存在させ る方法につき具体例を示す。
[0089] まず、ターゲッティングに必要な本発明遺伝子のゲノム配列を決定する。当該ゲノ ム酉己歹 IJは、例えば公的ァータベースである Mouse Genome Resources (http://www.n cbi.nlm.nih.gov/genome/guide/mouse/)等において既に公知である場合はこの配列 情報を利用して配列決定することができる。また未知の場合は、配列番号: 1、 3、 5、 7 、 9、 11、 13、 15、 17、 33に記載の本発明遺伝子の一部をプライマーとして用い、当業
者に入手可能なゲノムライブラリーを PCR法等でスクリーニングすることなどにより、所 望の本発明遺伝子のゲノム領域を含有するゲノミッククローンを単離することや、ゲノ ム塩基配列を決定することができる。ここで用いるゲノムライブラリ一としては、例えば マウス BAし (bacterial artincial chromosomeノフィフフリ ~~ (Invitrogen)や PAC(P1— denv ed artificial chromosome)フイブフリ ~~ (Invitrogen)等力 けられる。
[0090] 次に、前記で同定した本発明遺伝子のゲノム DNA配列に基づき、マーカー遺伝子 と置き換える本発明遺伝子のゲノム領域を決定する (以下、本発明遺伝子ゲノム領域 Aと称する)。この本発明遺伝子ゲノム領域 Aを挟む 5'側領域 (5'アーム)と 3'側領域 (3 'アーム)を、ゲノム DNAを铸型として PCRを行うことなどにより増幅する。ここで铸型と なるゲノム DNAとしては、本発明遺伝子を含有するマウス BACクローンのゲノム DNA 等が挙げられる。 PCRのプライマーは前記本発明遺伝子ゲノム DNAの配列に基づき 設計することができる。増幅した 5'アームおよび 3'アームを、プロモータートラップ用タ ーゲッティングベクターのマーカー遺伝子カセットを挟む両側に挿入する。ここで用 いるプロモータートラップ用ターゲッティングベクターとしては、例えば IRES (internal r ibosome entry site)- β geo( βガラクトシダーゼとネオマイシン耐性遺伝子の融合遺伝 子)カセット(Mountford P.et al, Proc.Natl.Sci.USA,91 :4303- 4307(1994))を含有する pBSSK(- )- IRES- j8 geoや、 IRES- Hygro (ハイグロマイシン而性遺伝子)カセットを含有 する同様のベクターなどを挙げることができる。ここで IRES-Hygroカセットは、前記 IR ES- β geoカセットの β geo部分を Hygro (Invitrogen)に置き換えることなどにより作製す ることがでさる。
次に作製されたターゲッティングベクターを制限酵素で消化して直鎖化し、これを エレクト口ポレーシヨン等により ES細胞に導入する。
[0091] 導入に用いる ES細胞としては、たとえば RF8細胞(Meiner,V. et al.,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA,93: 14041- 14046(1996))、 JI細胞(Li,E. et al.,Cell,69:915— 926(1992))、 CG R8細胞 (Nichols, J. et al., Development, 110: 1341-1348(1990》、 MG1.19細胞(Gassm ann,M. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,92: 1292- 1296(1995))や、市販されているマ ウス ES細胞 129SV(No.R- CMTI- 1- 15, R- CMTI- 1A)、マウス ES細胞 C57/BL6 (No. R-CMTI-2A)、マウス ES細胞 DBA- 1 (No.R- CMTI- 3A) (以上大日本製薬)等の ES細
胞が挙げられる。
[0092] ターゲッティングベクターの ES細胞への導入は、エレクト口ポレーシヨン(Meiner,V. et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93: 14041- 14046(1996)等参照)、リン酸カルシウム法 、 DEAE-デキストラン法、エレクト口ポレーシヨン法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectam ine、 Lipofectin; Invitrogen)を用いる方法などにより行われる。その後当該ターゲッテ イングベクターが導入された ES細胞を、用いたマーカー遺伝子 (例えば薬剤耐性遺 伝子)の特性に基づき選択する。選択された ES細胞において正しく相同組み換えが 起こっていることは本発明遺伝子の一部をプローブとして用いたサザンプロット等に より確認することができる。以上のようにして本発明遺伝子 (ゲノム遺伝子)にマーカ 一遺伝子をノックインした遺伝子をへテロで含有する ES細胞を作製することができる
[0093] ES細胞の培養には、当業者に知られた如何なる培地を用いても良い。例えば RF8 細胞の場合、以下の組成: 15%FBS、 O.lmM Non Essential Amino Acids (GIBCO BR L)、 2mM L- glutamine、 50U/mlペニシリン-ストレプトマイシン、 0.1 ImM 2- ME(GIBCO BRL)/Dulbecco's Modified Eagle Medium (DMEM)の培地等が挙げられる。また巿販 の調製済み培地 (例えば大日本製薬 No.R-ES-101等)を用いることもできる。
[0094] ES細胞の培養においてフィーダ一細胞を用いる場合、当該フィーダ一細胞は、マ ウス胚から常法により調製した繊維芽細胞や繊維芽細胞由来の STO細胞株 (Meiner, V. et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93: 14041- 14046(1996))を用いても良ぐまた巿販 品を用いても良い。市販品としては、例えば PMEF-N、 PMEF-NL、 PMEF- H、 PMEF -HL (以上大日本製薬)などのフィーダ一細胞が挙げられる。フィーダ一細胞は、マイ トマイシン C処理することにより増殖を停止させた後に ES細胞の培養に用いることが 望ましい。
また、 ES細胞の培養において前記フィーダ一細胞を用いない場合は、 LIF (Leukem ia Inhibitory Factor)を添カ卩して培養を行うことができる。 LIFとしてはマウス組み換え L IF、ラット組み換え LIF (ケミコン社等)などが用いられる。
[0095] 次に、前記ターゲッティングベクターを含有する ES細胞をマウスに導入してノックァ ゥトマウス(マーカー遺伝子ノックインマウス)を作製する。当該マーカー遺伝子ノック
インマウスの作製方法は当業者に周知である。具体的には、前記 ES細胞をマウス (例 えば C57BL/6等)の胚盤胞(blastocyst)にインジヱタトし、偽妊娠させたメスのマウス(I CR等)の子宫内に移植することによりキメラマウスを作製する。その後キメラマウスと通 常のマウス (C57BL/6等)とを交配させ、マーカー遺伝子がヘテロでノックインされた ヘテロ変異マウスを作製する。ヘテロ変異マウス同士を交配させることにより、マーカ 一遺伝子がホモでノックインされたホモ変異マウスが得られる。
以上のノックインマウスの作製については、 ECAT3ノックインマウス(Tokuzawa, Y., et al, Molecular and Cellular Biology, 23(8): 2699- 2708(2003))、 ECAT4ノックインマ ウス(Mitsui, K., et al., Cell, 113: 631- 642(2003))、 ECAT5ノックインマウス(Takahas hi, K., K. Mitsui, and S. Yamanaka, Nature,423(6939): p541- 545(2003)、特開 2003- 265166号公報)等を参考にされたい。
[0096] 本発明の体細胞核初期化物質のスクリーニングで用いる体細胞は、前記へテロノッ クインマウスから単離された体細胞、ホモノックインマウスから単離された体細胞が挙 げられる。
[0097] (3-1-1-b)本発明遺伝子を破壊しな!ヽ場合
本発明遺伝子を破壊することなぐ本発明遺伝子の発現調節領域により発現調節 を受ける位置にマーカー遺伝子を存在させる手法としては、当該本発明遺伝子の発 現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を存在させた BACベクタ 一または PACベクター等を、マウスやラット等の個体に導入して作製したトランスジェ ニック非ヒト動物を利用する手法が挙げられる。以下 BACベクターを例にとり説明する ここで用いる本発明遺伝子の発現調節領域を含有する BACクローンは、前記 (3-1- 1-a)に記述したように、本発明遺伝子の配列情報に基づき単離 ·同定することができ る。本発明遺伝子含有 BACクローンにおいて、本発明遺伝子の一部をマーカー遺伝 子に置き換えるには、例えば Red/ET Recombination(Gene Bridges)を用いて容易に 行うことができる。各本発明遺伝子の発現調節領域は、通常、本発明遺伝子のェクソ ン 1より上流域に存在する。従って、本発明遺伝子の発現調節領域によりマーカー遺 伝子が発現調節を受けるためには、当該マーカー遺伝子は、本発明遺伝子のェクソ
ンはり下流域に存在させることが望ましい。この場合、ェクソン 1より下流であれば、 本発明遺伝子上のどのような位置にマーカー遺伝子を存在させても良い。
[0098] 以上のようにして作製された本発明遺伝子の発現調節領域により発現調節を受け る位置にマーカー遺伝子を存在させた BACベクター(以下、マーカー遺伝子含有 BA Cベクターと称することがある)を導入したトランスジヱニック動物を作製する方法は周 知であり、例えば実験医学別冊「新遺伝子工学ハンドブック改訂第 3版」(羊土社, 199 9年)等に基づき作製することができる。以下、マウスを例にとりトランスジエニック動物 の作製につき説明する。
マウス受精卵への遺伝子の導入方法は特に限定されるものではなぐマイクロイン ジェクシヨン法やエレクト口ポレーシヨン法等により導入することができる。導入後、得 られた卵細胞を培養し、仮親マウスの輸卵管に移植し、その後被移植マウス^!司育し 、産まれた仔マウス力も所望の仔マウスを選択する。当該選択は、例えば仔マウス由 来の DNAをドットブロットハイブリダィゼーシヨン法や PCR法で導入遺伝子の可否を調 ベること〖こより行うことができる。
前記仔マウスと野生型マウスとを交配させ、ヘテロトランスジヱニックマウス (導入遺 伝子をへテロで含有するマウス)を作製する。ヘテロマウス同士を交配させることによ り、マーカー遺伝子含有 BACベクターをホモで含有するトランスジエニックマウスを得 ることがでさる。
[0099] 本発明の体細胞核初期化物質のスクリーニングにおいては、前記へテロトランスジ エニックマウスから単離された体細胞、ホモトランスジェニックマウスから単離された体 細胞のいずれも用いることができる。トランスジエニックマウスの場合、マウスが本来有 している本発明遺伝子は破壊されていないため、ホモトランスジエニックマウス由来の 体細胞を利用することが好まし 、。
さらに異なる ECAT遺伝子のトランスジエニックマウス同士を交配させることにより、ダ ブルトランスジェニックマウスを作製することができる。その際、交配させる各トランスジ エニックマウスは、それぞれ異なるマーカー遺伝子を含有して 、ることが好ま 、。
[0100] 以上のノックインマウスまたはトランスジエニックマウスから単離する体細胞は、マー カー遺伝子の発現して 、な ヽ (若しくは発現量の少な 、)如何なる細胞であっても良
い。具体的には ES細胞等の分ィ匕全能性細胞以外の細胞が挙げられ、例えば(1)神 経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、精子幹細胞等の組織幹細胞 (体性幹細胞) 、(2)組織前駆細胞、または (3)リンパ球、上皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞等の分 化した細胞が挙げられる。
[0101] (3-1-2)個体を利用せずに細胞レベルでマーカー遺伝子を存在させる方法
個体を利用せずに、細胞内において、本発明遺伝子発現調節領域により発現調 節を受ける位置にマーカー遺伝子を存在させる方法はいろいろ知られており、当業 者に周知の如何なる方法を用いてマーカー遺伝子を存在させても良い。一般的には 、マーカー遺伝子を含有するベクターを細胞に導入する方法が挙げられる。
[0102] 遺伝子導入に用いられる細胞は、体細胞であっても ES細胞であっても良 、。ここで 用いる体細胞としては、マウス、ヒト、サル等の如何なる種に由来する体細胞であって も良い。当該体細胞は初代培養細胞であっても株化細胞であっても良ぐ具体的に は、胎児繊維芽細胞 (MEF)、骨髄由来間葉系幹細胞、または精子幹細胞等の初代 培養細胞や、 NIH3T3のような株化細胞などが挙げられる。また ES細胞としては、前記 に挙げたマウス ES細胞の他、ヒトゃサルの ES細胞も用いることができる。ここでヒト ES 細胞としては、 KhES-l、 KhES-2あるいは KhES-3 (以上、京大再生研付属幹細胞医 学研究センター)などが挙げられ、またサル ES細胞としては力-クイザル ES細胞 (旭 テクノグラス)を挙げることができる。これら ES細胞を本発明のスクリーニングに用いる 場合は、何らかの手法で ES細胞の未分化'多能性を消失させて力 用いる。
[0103] 細胞へのベクターの導入方法としては、前記宿主細胞に適合した通常の導入方法 を用いれば良い。具体的にはリン酸カルシウム法、 DEAE-デキストラン法、エレクト口 ポレーシヨン法、遺伝子¾人用リヒッド (Lipofectamine、 Lipofectin; Invitrogen)を用 ヽ る方法などが挙げられる。
[0104] 導入に用いるベクターとしては、約 300kbの DNAまでクローユング可能なベクターで ある BACベクターや PACベクター、プラスミドベクター、さらには前記 (3-1-1)に記載し たターゲッティングベクターなどが挙げられる。以下これら各ベクターを用いて本発明 遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を存在させ た体細胞を作製する方法にっ 、て記載する。
[0105] (3- 1- 2- a)BACベクター、 PACベクターを用いる場合
本発明遺伝子の発現調節領域を含有する BACベクターや PACベクターを利用する ことにより、本発明遺伝子発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺 伝子を存在させることができる。以下 BACベクターを例にとり説明する。
ここで用いる本発明遺伝子の発現調節領域を含有する BACクローン (以下本発明 遺伝子含有 BACクローンと称する)は、前記 (3- 1-1)に記述したように、本発明遺伝子 の配列情報に基づき単離'同定することができる。本発明遺伝子含有 BACクローンに おいて、本発明遺伝子の一部をマーカー遺伝子に置き換えるには、例えば Red/ET Recombination(Gene Bridges)を用いて容易に行うことができる。各本発明遺伝子の 発現調節領域は、通常、本発明遺伝子のェクソン 1より上流域に存在する。従って、 本発明遺伝子の発現調節領域によりマーカー遺伝子が発現調節を受けるためには 、当該マーカー遺伝子は、本発明遺伝子のェクソン 1開始部位より下流域に存在さ せることが望ましい。この場合、ェクソン 1開始部位より下流であれば、本発明遺伝子 上のどのような位置にマーカー遺伝子を存在させても良い。
[0106] 以上のようにして作製された本発明遺伝子の発現調節領域により発現調節を受け る位置にマーカー遺伝子を存在させた BACベクターを体細胞に導入することにより、 本発明のスクリーニング用の体細胞とすることができる。ここで導入する BACベクター は 1種類であっても、異なる本発明遺伝子を含有する 2種類以上の BACベクターであ つても良い。なお、当該 BACベクター導入細胞を選択培地中で容易に選択できるよう に、 BACベクター中に薬剤耐性遺伝子を含む遺伝子 (以下第 2の薬剤耐性遺伝子と 称する)が挿入されていることが好ましい。この場合、体細胞での発現を可能とするた めに、当該第 2の薬剤耐性遺伝子の 5'側または 3'側に体細胞で発現するプロモータ 一が付加されている必要がある。また当該第 2の薬剤耐性遺伝子は、本発明遺伝子 の発現調節領域により発現調節を受ける位置に存在するマーカー遺伝子と同じ種類 の薬剤耐性遺伝子であっても良ぐ異なる種類の薬剤耐性遺伝子であっても良 、が 、異なる種類の薬剤耐性遺伝子であることが望ましい。前記で同じ種類の薬剤耐性 遺伝子を用いた場合は、第 2の薬剤耐性遺伝子の両側に loxP配列または FRT配列を 付加しておき、 BACベクター導入細胞を選択培地中で選択した後に、リコンビナーゼ
Creまたは FLPにより第 2の薬剤耐性遺伝子を切り出すことができる。
前記と異なり、 BACベクター中に第 2の薬剤耐性遺伝子を挿入しない場合は、当該 第 2の薬剤耐性遺伝子を含有する第 2の発現ベクターを、前記 BACベクターと共に共 導入 (co-transfection)し、選択培地で選択しても良い。その場合、第 2の発現べクタ 一よりも BACベクターを大過剰に用いて導入を行うことが望ま U、。
[0107] 前記本発明遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝 子を存在させた BACベクターを ES細胞に導入した場合は、用いたマーカー遺伝子の 性質に基づき、マーカー遺伝子が導入'発現している ES細胞を選択することができる 。その後、当該 ES細胞を体細胞に分化させることにより、本発明のスクリーニングに用 V、る体細胞とすることができる。 ES細胞はフィーダ一細胞の存在しな 、培養条件下で 分化するため、このような条件下で分化させて得られた体細胞や、レチノイン酸等の 当業者に知られた分化誘導剤で分化させて得られた体細胞を、本発明のスクリー- ングに用いることができる。ここで ES細胞力も分ィ匕させた体細胞としては、例えば組織 幹細胞、組織前駆細胞、または体細胞 (神経細胞、皮膚角質細胞、心筋細胞、骨格 筋細胞、血液細胞、脾島細胞または色素細胞など)が挙げられる。
[0108] (3-1-2-b)プロモーターを有さな!/、プラスミドベクターを用いる場合
本発明遺伝子の発現調節領域とマーカー遺伝子との融合遺伝子を、プロモーター を有さないプラスミドベクターに挿入し、細胞を形質転換することにより、本発明のスク リーニング用の細胞を作製することができる。
ここで用いるベクターとしては、例えば pBluescript(Stratagene)、 pCR2.1(Invitrogen) と!、つたプロモーターを有さな!/、プラスミドベクターが挙げられる。
ここで用いる本発明遺伝子の発現調節領域は、例えば該遺伝子の転写開始部位 上流約 lkb、好ましくは約 2kbが挙げられる。
[0109] 各本発明遺伝子の発現調節領域は、例えば (i)5'-RACE法 (例えば、 5'foll Race Co re Kit (宝酒造社製)等を用いて実施される)、オリゴキャップ法、 S1プライマーマツピン グ等の通常の方法により 5'末端を決定するステップ; (ii)Genome Walker Kit (クローン テック社製)等を用いて 5'-上流領域を取得し、得られた上流領域について、プロモー ター活性を測定するステップ;を含む手法等により同定することができる。このようにし
て同定した本発明遺伝子発現調節領域の 3'側にマーカー遺伝子を融合し、これを 前記プラスミドベクターに挿入することにより、本発明遺伝子の発現調節領域により発 現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を存在させたプラスミドベクターを作製するこ とがでさる。
以上のようにして作製したベクターを、前記 (3- l-2-a)と同様にして体細胞や ES細胞 に導入することにより、本発明のスクリーニング用体細胞を作製することができる。
[0110] (3-1-2-c)ターゲッティングベクターを用いる場合
前記 (3- 1-1)に記載したターゲッティングベクターを体細胞若しくは ES細胞に導入 することによつても、本発明のスクリーニング用体細胞を作製することができる。
前記ターゲッティングベクターを体細胞に導入する場合は、ベクター導入細胞を選 択培地中で容易に選択できるように、前記 (3-1-2-a)と同様に薬剤耐性遺伝子を含 む遺伝子 (第 2の薬剤耐性遺伝子)をターゲッティングベクター上に存在させるか、ま たはターゲッティングベクターと共に第 2の薬剤耐性遺伝子を含有する第 2の発現べ クタ一を共導入 (co-transfection)し、選択培地で選択して得られた体細胞を本発明 のスクリーニングに用いることがより好ましい。その場合、第 2の発現ベクターよりも前 記ターゲッティングベクターを大過剰に用いて導入を行うことが望ましい。
[0111] 前記ターゲッティングベクターを ES細胞に導入する場合は、ターゲッティングベクタ 一上のマーカー遺伝子の性質に基づいて、マーカー遺伝子導入'発現細胞を選択 することができる(作製法については Tokuzawa, Y., et al., Molecular and Cellular Bio logy, 23(8): 2699-2708(2003)等を参照)。 ES細胞から体細胞への誘導方法は、前記 ( 3-1-2-a)と同様である。
[0112] 本発明のスクリーニング工程 (a)においては、以上のようにして作製した体細胞と、 被験物質とを接触させる。
ここで用いられる被験物質 (被験試料)は制限されないが、核酸、ペプチド、タンパ ク質、有機化合物、無機化合物あるいはこれらの混合物などであり、本発明のスクリ 一二ングは、具体的にはこれらの被験物質を前記体細胞と接触させることにより行わ れる。力かる被験物質としてより具体的には、細胞抽出液、遺伝子 (ゲノム、 cDNA)ラ イブラリー、 RNAiライブラリー、アンチセンス核酸、遺伝子(ゲノム、 cDNA、 mRNA)、タ
ンパク質、ペプチド、低分子化合物、高分子化合物、天然ィ匕合物などが挙げられる。 より具体的には、後述の参考例に示したような ES細胞、卵、 ES細胞や卵の細胞抽出 物 (抽出画分)、 ES細胞や卵由来の cDNAライブラリー、ゲノムライブラリーまたはタン ノ ク質ライブラリー、あるいは増殖因子などが挙げられる。
[0113] cDNAライブラリー、タンパク質ライブラリーまたは細胞抽出物 (有機化合物や無機 化合物等)の由来としては、前述のように ES細胞や卵のような未分ィ匕細胞が好ま 、 ここで cDNAライブラリ一は、巿販の cDNAライブラリー作製キット(例えばクローンマ イナ一 cDNAライブラリー作製キット (Invitrogen)や Creator SMART cDNAライブラリー 作製キット (BD Biosciences)等)を用いて作製することができる。またタンパク質ライブ ラリーは WO 00/71580等を参考にして作製することができる。
[0114] これら被験物質は、体細胞への取り込み可能な形態で体細胞と接触させる。例え ば被験試料が核酸 (cDNAライブラリ一等)の場合は、リン酸カルシウム、 DEAE-デキ ストラン、遺伝子導入用リピッドまたは電気パルス等を用いて体細胞に導入する。
[0115] 体細胞と被験物質とを接触させる条件は、該細胞が死滅せず且つ被験物質が取り 込まれるのに適した培養条件 (温度、 pH、培地組成など)であれば特に制限はない。 前記体細胞と被験物質との接触の前に、接触の際に、若しくは接触後に、 ES細胞 の培養条件で細胞培養を行う。 ES細胞の培養は、当業者に知られた如何なる方法を 用いても良い。例えば RF8細胞の場合、以下の組成: 15%FBS、 O.lmM Non Essentia 1 Amino Acids (GIBCO BRL)、 2mM L— glutamineゝ 50U/mlペニシリン—ストレプトマイシ ン、 0.1 ImM 2-ME(GIBCO BRL)/Dulbecco's Modified Eagle Medium (DMEM)の培 地等が挙げられる。また市販の調製済み培地 (例えば大日本製薬 No.R-ES-101等) を用いることちでさる。
[0116] ES細胞の培養においてフィーダ一細胞を用いる場合、当該フィーダ一細胞は、マ ウス胚から常法により調製した繊維芽細胞や繊維芽細胞由来の STO細胞株 (Meiner, V. et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93: 14041- 14046(1996))を用いても良ぐまた巿販 品を用いても良い。市販品としては、例えば PMEF-N、 PMEF-NL、 PMEF- H、 PMEF -HL (以上大日本製薬)などのフィーダ一細胞が挙げられる。フィーダ一細胞は、マイ
トマイシン C処理することにより増殖を停止させた後に ES細胞の培養に用いることが 望ましい。
また、 ES細胞の培養において前記フィーダ一細胞を用いない場合は、 LIF (Leukem ia Inhibitory Factor)を添カ卩して培養を行うことができる。 LIFとしてはマウス組み換え L IF、ラット組み換え LIF (ケミコン社等)などが挙げられる。
前記 ES細胞の培養条件における培養日数は、細胞の状態等により適宜変更できる 力 1日〜 3日程度が好ましい。
[0117] マーカー遺伝子として薬剤耐性遺伝子を含む遺伝子を用いた場合は、対応する薬 剤を含む培地 (選択培地)で選択を行う。当該薬剤は、体細胞と被験物質との接触の 際に培地に含まれていても良ぐまた接触後に含ませても良い。さらに、 ES細胞の培 養条件で培養した後に前記薬剤を培地に含ませても良!ヽ。
[0118] 前記工程の後、マーカー遺伝子発現細胞の出現の有無を調べ、該細胞を出現さ せた被験物質を体細胞の核初期化物質の候補物質として選択する(工程 (b))。以下 当該工程 (b)につ 、て記述する。
[0119] マーカー遺伝子が薬剤耐性遺伝子を含む遺伝子の場合は、前記のように選択培 地で培養することによりマーカー遺伝子発現細胞を選択することができる。またマー カー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子の場合は蛍光顕微鏡で観察することによって、 発光酵素遺伝子の場合は発光基質を加えることによって、また発色酵素遺伝子の場 合は発色基質を加えることによって、マーカー遺伝子発現細胞を検出することができ る。
被験物質非添加の場合に比してマーカー遺伝子発現細胞が検出された場合 (発 現量が増力!]した場合も含む)、ここで用いた被験試料 (被験物質)を、体細胞核初期 化物質の候補物質として選択する。
前記スクリーニングは、必要に応じて何度でも繰り返し行うことができる。例えば 1回 目のスクリーニングで cDNAライブラリーや細胞抽出物と 、つた混合物を用いた場合、 2回目以降は、さらに当該混合物を細分化 (分画)して同様のスクリーニングを繰り返 し行うことにより、最終的に、体細胞核初期化因子の候補物質を選択することができ る。
[0120] なお、スクリーニングの効率を上げるための 1つの例として、前記体細胞をそのまま スクリーニングに用いるのではなぐ体細胞と ES細胞とを融合させた融合細胞に対し て、被験物質を添加するスクリーニング系が有効である。即ち本発明のスクリーニング 方法には、
以下の (a)および (b) :
(a) ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子または LO C380905(TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー 遺伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞と ES細胞とを融合させた融合細胞 (体 細胞)と、被験物質とを接触させる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、マーカー遺伝子発現細胞の出現の有無を調べ、該細胞を出 現させた被験物質を体細胞の核初期化候補物質として選択する工程、
を含む、体細胞の核初期化物質のスクリーニング方法も含まれる。
ここで「融合細胞」とは、体細胞と ES細胞との融合細胞であって前記マーカー遺伝子 が発現して!/、な!、 (若しくは発現量が少な!/、)細胞を意味する。体細胞と ES細胞とを 融合させて生じる ES様細胞のコロニー数に比して、さらに被験物質を添加した際にコ ロニー数が増加した場合、当該被験物質は体細胞核初期化候補物質として選択す ることがでさる。
[0121] 本発明のスクリーニングで選択された体細胞核初期化 (候補)物質が体細胞の核を 初期化する力否かは、 (1)当該核初期化 (候補)因子により体細胞力も変換された ES 様細胞が Oct3/4や Ecat4(Nanog)といった ES細胞のマーカー遺伝子を発現している か否か、(2)前記 ES細胞が in vitroにおいてレチノイン酸刺激等で分ィ匕するカゝ否力、 (3)前記 ES細胞をマウスブラストシストにインジェクションしてキメラマウスが誕生する か等を調べることにより、確認することができる。
[0122] (3-2)本発明のノックインマウス及び当該ノックインマウスの新規用途 (本発明スクリー ニング用体細胞の供給源としての使用)
本発明は、 ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子 または LOC380905(TDRD4)遺伝子にマーカー遺伝子をノックインした遺伝子を含有 するノックインマウス、および当該マウスの本発明のスクリーニングにおいて用いる体
細胞の供給源としての用途を提供するものである。当該ノックインマウスの作製法等 については、前記 (3-1)本発明の体細胞核初期化物質のスクリーニング方法におい て述べた通りである。
[0123] (3-3)本発明の体細胞
本発明は、本発明遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー 遺伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞を提供する。すなわち本発明は、 ECA T15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子または LOC380905 (TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を 存在させた遺伝子を含有する体細胞を提供する。具体的には ECAT15-1遺伝子、 E CAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 RnH7遺伝子または LOC380905(TDRD4)遺伝子 にマーカー遺伝子をノックインした遺伝子を含有する体細胞が例示される。
当該体細胞の作製法等については、前記 (3-1)本発明の体細胞核初期化物質のス クリーニング方法において述べた通りである。本発明の体細胞は、前記本発明のスク リー-ング方法、または後述の本発明の ES様細胞の選択方法において、有効に使 用される。
[0124] (3-4)本発明の ES様細胞の選択方法
本発明はまた、以下の (a)および (b)の工程:
(a) ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子または LO C380905(TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー 遺伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞と、体細胞の核初期化物質とを接触さ せる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、マーカー遺伝子発現細胞を ES様細胞として選択する工程、 を含む ES様細胞の選択方法を提供する。
[0125] 前記本発明のスクリーニング方法において述べたような本発明遺伝子の発現調節 領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を存在させた体細胞は、 ES様細 胞の選択のためにも有効に用いられる。例えば幹細胞療法を念頭においた場合、ヒ トの体細胞を核初期化物質で刺激することにより出現した ES様細胞を、他の細胞 (体 細胞)から分離 (純化)し、後の治療に用いることが望ましい。前述のように、本発明の
システムは、薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子の発現を指標として、 ES様細胞を 容易に選択できるシステムであるため、 ES様細胞を選択 ·分離する際に有効に用い ることがでさる。
本発明の ES様細胞の選択方法は、前記ヒトの治療のみならず、イン'ビトロおよびィ ン ·ビボでの ES細胞関連の様々な研究にぉ 、て、 ES細胞を選択 (分離)する如何なる 目的においても使用することができる。
[0126] 前記において、 1)本発明遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマ 一力一遺伝子を存在させた遺伝子を含有する体細胞の作製方法、 2)当該体細胞と 体細胞核初期化物質との接触方法、および 3)マーカー遺伝子発現細胞の選択方法 については、全て「(3-1)本発明の体細胞核初期化物質のスクリーニング方法」に記 述したものと同様である。なお、マーカー遺伝子として薬剤耐性遺伝子を含む遺伝 子を用いた場合は選択培地で培養することにより、マーカー遺伝子発現細胞を容易 に選択 (分離)することができる。またマーカー遺伝子として蛍光タンパク質遺伝子、 発光酵素遺伝子、または発色酵素遺伝子を用いた場合は、セルソーター、限界希釈 法または軟寒天コロニー法などを利用することにより、当該細胞を選択 (分離)するこ とがでさる。
前記で「核初期化物質」とは前記体細胞核初期化物質のスクリーニングで得られる ような、体細胞の核初期化に関与する物質を指す。なお、後述の参考例においては 、体細胞の核初期化物質として ES細胞自身を用いることにより、マーカー遺伝子発 現細胞を ES様細胞として選択して 、る。
[0127] ES様細胞の選択方法にぉ 、て用いる体細胞は、ヒトの治療を念頭にぉ 、た場合は 、本発明遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を 挿入したベクターを含有するヒト体細胞であることが望ましい。具体的には以下のよう にして作製された体細胞が用いられる。
[0128] すなわちまず、患者の体細胞をヒトから単離することなどにより調製する。体細胞と しては、疾患に関与する体細胞、疾患治療に関与する体細胞などが挙げられる。こ のヒト体細胞に対し、前記 (3- 1-2)の項に記載のいずれかのベクターを導入する。具 体的には BACベクター (本発明遺伝子の発現調節領域の下流にマーカー遺伝子を
存在させた BACベクター)または PACベクターを導入することが望まし 、。ここで導入 する BACベクター(PACベクター)は 1種類であっても、異なる本発明遺伝子を含有す る 2種類以上の BACベクターであっても良い。この BACベクター導入細胞に対して核 初期化物質を添加することにより、 ES様細胞を出現させる。この ES様細胞を、用いた マーカー遺伝子の性質に応じて選択する。例えばマーカー遺伝子として薬剤耐性遺 伝子を用いた場合は、核初期化物質添加後に選択培地で選択することにより、薬剤 耐性を指標として、 ES様細胞を容易に選択することができる。
[0129] (3-5)本発明の ES細胞未分化'多能性維持物質のスクリーニング方法
本発明は、以下の (a)および (b)の工程:
(a) ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子または LO C380905(TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー 遺伝子を存在させた遺伝子を含有する ES細胞を、 ES細胞の未分化 ·多能性を維持 できない培地中で被験物質と接触させる工程、
(b)前記 (a)の工程の後、マーカー遺伝子発現細胞の存在の有無を調べ、該細胞を 存在させた被験物質を ES細胞未分化 ·多能性維持の候補物質として選択する工程 を含む ES細胞の未分化 ·多能性維持物質のスクリーニング方法を提供する。
[0130] 本発明遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を 存在させた ES細胞を、 ES細胞としての状態 (未分化 ·多能性)を維持できな 、培地中 で培養した場合、マーカー遺伝子の発現は消失若しくは低下する。一方、前記培地 中に ES細胞の未分化 ·多能性維持物質が存在して!/ヽれば、マーカー遺伝子の発現 は存続する。この性質を利用することにより、 ES細胞の未分化'多能性維持 (候補)物 質を容易にスクリーニングすることができる。
[0131] 前記スクリーニング工程 (a)において用いられる ES細胞としては、本発明遺伝子の発 現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を存在させた遺伝子を 含有する ES細胞であればどのようなものであっても良い。具体的には、例えば、前記 ( 3-1- 1-a)に記載されたノックインマウス由来の ES細胞、前記 (3-1- 1-b)に記載されたト ランスジヱニックマウス由来の ES細胞、前記 (3-1-2- a)に記載された BACベクター若し
くは PACベクターを含有する ES細胞、前記 (3-1-2-b)に記載されたプラスミドベクター を含有する ES細胞、若しくは前記 (3- l-2-c)に記載されたターゲッティングベクターを 含有する ES細胞を挙げることができる。
[0132] 前記スクリーニング工程 (a)にお 、て用いられる「ES細胞の未分化 ·多能性を維持で きない培地」とは、 ES細胞としての状態を維持できない培地、未分化状態を維持でき ない培地であれば、どのような培地であっても良い。例えばマウス ES細胞は、低密度 では、その維持 (未分化'多能性維持)に血清またはフィーダ一細胞が必須であるこ とが知られているため、当該 ES細胞の培養条件から血清、フィーダ一細胞又はその 両者を除去した条件が挙げられる。またヒト ES細胞の維持 (未分化'多能性維持)に はフィーダ一細胞が必須であるため、ヒト ES細胞の培養条件力もフィーダ一細胞を除 去した条件が挙げられる。さらにヒト ES細胞の場合はフィーダ一細胞存在下でも分ィ匕 する細胞が出現するため、フィーダ一細胞存在下の培養条件でも良い。
具体的には、文献(Meiner, V丄., et al.'Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 93(24): pl40 41-14046(1996))に記載の ES細胞の培養条件力 血清、フィーダ一細胞又はその両 者を除去した条件などが例示される。
[0133] 前記工程 (a)は、前記 ES細胞を、 ES細胞の未分化'多能性を維持できない培地中で 被験物質と接触させることにより行われる。被験物質は、 ES細胞を未分化,多能性非 維持培地に移す前に、また移す際に、若しくは移した後に、当該 ES細胞と接触させる 本スクリーニングで用いられる被験物質 (被験試料)は制限されないが、核酸、ぺプ チド、タンパク質、有機化合物、無機化合物またはこれらの混合物などであり、本発 明のスクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質を前記 ES細胞と接触させること により行われる。力かる被験物質としては、細胞分泌産物、血清、細胞抽出液、遺伝 子(ゲノム、 cDNA)ライブラリー、 RNAiライブラリー、核酸(ゲノム、 cDNA、 mRNA)、ァ ンチセンス核酸、低分子化合物、高分子化合物、タンパク質、ペプチド、天然化合物 などが挙げられる。具体的には、動物血清またはその画分、フィーダ一細胞の分泌 産物またはその画分などが挙げられる。
これら被験物質 (被験試料)は、体細胞への取り込み可能な形態で体細胞と接触さ
せる。例えば被験物質が核酸 (cDNAライブラリ一等)の場合は、リン酸カルシウム、 D EAE-デキストランや遺伝子導入用リピッドを用いて体細胞に導入する。
[0134] マーカー遺伝子として薬剤耐性遺伝子を含む遺伝子を用いた場合は、対応する薬 剤を含む培地 (選択培地)で選択を行う。当該薬剤は、 ES細胞と被験物質との接触 の際に培地に含まれていても良ぐまた接触後に含ませても良い。さらに被験物質存 在下、 ES細胞の未分化 ·多能性非維持培地中で培養した後に前記薬剤を培地に含 ませても良い。
[0135] 前記工程 (a)の後、マーカー遺伝子発現細胞の存在の有無を調べ、該細胞を存在 させた被験物質を ES細胞の未分化 ·多能性維持の候補物質として選択する(工程 (b ))。当該工程 (b)については、前記「(3-1)本発明の体細胞核初期化物質のスクリー二 ング方法」に記載した通りである。マーカー遺伝子発現細胞が認められた場合、ここ で用 ヽた被験試料 (被験物質)を、 ES細胞の未分化 ·多能性維持の候補物質として 選択する。
前記スクリーニングは、必要に応じて何度でも繰り返し行うことができる。例えば 1回 目のスクリーニングでフィーダ一細胞分泌産物や血清と 、つた混合物を用いた場合、 2回目以降は、さらに当該混合物を細分化 (分画)して同様のスクリーニングを繰り返 し行うことにより、最終的に、 ES細胞の未分化'多能性維持の候補物質を選択するこ とがでさる。
なお、前記のように被験試料として混合物を用いてスクリーニングを行った場合、 ES 細胞の未分化 ·多能性維持物質と共に ES細胞の増殖促進物質も選択される可能性 がある。すなわち、ある混合物 (画分 A)を前記本発明のスクリーニング方法に供し、 生存細胞が確認され且つ当該生存細胞の細胞数が増加した場合には、当該画分中 には、 ES細胞の未分化'多能性維持物質と共に、 ES細胞の増殖促進物質も含まれ ていると考えられる (もちろん 1つの物質が両方の性質を兼ね備えている場合もある) 。その場合、当該画分 Aをさらに分画し、片方の画分 (画分 B)を本発明のスクリーニン グに供した場合には生存細胞が確認されるが細胞数の増加は認めらず、もう片方の 画分 (画分 C)を本発明のスクリーニングに供した場合は生存細胞が認められなかつ た場合、画分 Bには ES細胞の未分化 ·多能性維持物質が含まれ、画分 Cには ES細胞
の増殖促進物質が含まれることが考えられる。本発明のスクリーニングは、そのような ES細胞の増殖促進 (候補)物質の選択にも有用である。
また、生存細胞が確認され且つ当該生存細胞が不死化状態を保った場合には、前 記 ES細胞の増殖促進 (候補)物質と同様にして、 ES細胞の不死化維持物質を選択す ることちでさる。
[0136] 前記本発明のスクリーニングにより選択された ES細胞の未分化'多能性維持 (候補) 物質が ES細胞の未分化 ·多能性を維持するか否かは、 ES細胞の未分化 ·多能性を 維持できない培地中に当該候補物質を添加した培養条件下で ES細胞を培養し、 ES 細胞としての種々の能力を調べることにより、確認することができる。具体的には、例 えば前記培養条件下で培養した ES細胞力 (1) Oct3/4や Ecat4(Nanog) t\、つた ES 細胞のマーカー遺伝子を発現しているか否か、(2)前記 ES細胞が in vitroにおいて レチノイン酸刺激等で分化するか否か、 (3)前記 ES細胞をマウスブラストシストにイン ジェクシヨンしてキメラマウスが誕生するか等を調べることにより、確認することができる
[0137] (3-6)本発明の ES細胞
本発明は、 ECAT遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー 遺伝子を存在させた遺伝子を含有する ES細胞を提供する。すなわち本発明は、 ECA T15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 Rnfl7遺伝子または LOC380905 (TDRD4)遺伝子の発現調節領域により発現調節を受ける位置にマーカー遺伝子を 存在させた遺伝子を含有する ES細胞を提供する。当該 ES細胞の作製法等にっ ヽて は、前記 (3-1)において詳しく述べたとおりである。本発明の ES細胞は、 ES細胞の未 分ィ匕 ·多能性維持物質のスクリーニング方法にぉ 、て有効に使用される。
[0138] (4)タンパク質の細胞内取り込み促進物質との結合体
本発明は、 ECAT15- 1、 ECAT15- 2、 ECAT16、 Rnfl7または LOC380905(TDRD4)の いずれかを含有するタンパク質と、当該タンパク質の細胞内への取り込みを促進する 物質との結合体を提供する。
本発明のタンパク質は、 ECAT4 (Nanog)や ECAT5(ERas)と同様の解析手法により見 出された ES細胞で特異的に発現するタンパク質であり、 ES細胞の機能維持に関与し
ている。このような ES細胞の機能維持に関わる作用を発揮するために、本発明のタン パク質と各種細胞への取り込みを促進する物質との結合体が有効に用いられる。 ここで「細胞内への取り込みを促進する物質」とは、タンパク質、化学物質のいずれ であっても良い。
[0139] 細胞内への取り込み促進物質がタンパク質 (ペプチド)の場合、当該タンパク質と本 発明タンパク質との融合タンパク質の形態とすることができる。当該細胞内への取り 込み促進タンパク (ペプチド)としては、例えば以下の G)〜Gii)が例示される:
(i) HIV由来の TAT (Green and Loewnstein, Cell, 56(6), 1179-88 (1988)、 Frankel and Pabo, Cell, 55(6), 1189-93 (1988))、ショウジヨウバエ由来のアンテナぺディア'ホメォ ドメイン(Vives et al., J. Biol. Chem, 272(25), 16010-7 (1997))、 HSV由来の VP22 (Ell iott and O'Hare, Cell, 88(2), 223-33 (1997))、またはこれらのフラグメント。
(ii) HIV Revのフラグメント、 flock house virus Coat (FHV Coat)のフラグメント、 brome mosaic virus Gag (BMV Gag)のフラグメント、 human T cell leukemia— II Rex(HTLV—II Rex)のフラグメント、 cowpea chlorotic mottle virus Gag (CCMV Gag)のフラグメント、 P 22 Nのフラグメント、 λ Νのフラグメント、 φ 21Νのフラグメントまたは酵母 PRP6のフラグ メント(J.Biol.Chem., 276, 5836-5840(2001)) 0
(iii)オリゴアルギニンを有するペプチド(J.Biol.Chem., 276, 5836-5840(2001)、 J.Biol. Chem., 277(4), 2437-2743 (2002)) 0
[0140] 前記 (i)におけるフラグメントとしては、細胞膜を貫通する能力を有する蛋白トランス ダクシヨンドメイン(以下「PTD」 )が同定されて ヽるため、タンパク質導入ドメインである HIV TATのフラグメント、アンテナぺディア ·ホメォドメインのフラグメントおよび HSV V P22のフラグメントとしては、これらの PTD力もなるフラグメントが例示される。異種蛋白 と PTDを融合することにより、培養細胞中に導入することができることは公知であり、そ の作製方法も知られている(Fawell et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91(2), 664-8 ( 1994)、 Elliott and O'Hare (1997), Phelan et al., Nature Biotech. 16, 440—443 (1998) および Dilber et al., Gene Ther., 6(1), 12-21 (1999)、特許番号第 2702285号)。 HIV TATの PTDについては、 HIV TAT蛋白由来の 11アミノ酸よりなる PTDに融合した j8— ガラクトシダーゼ蛋白力 生きたマウスの組織に浸潤し、すべての単一細胞に到達で
きることが報告されている(Schwarze et al., Science, 285(5433), 1569-72 (1999))。
[0141] HIV TATのフラグメントとしては、具体的には、前記の公知文献等に記載されてい るものを挙げることができるが、好ましくは特許番号第 2702285号に記載の HIV TAT フラグメントが挙げられる。
アルギニンに富む塩基性ペプチドは細胞膜透過能を有しており、 HIV TATのフラグ メントは分子中央部を全てアルギニンに置換しても、該フラグメント (ペプチド)は細胞 膜透過能を有することが知られているため(J.Biol.Chem., 276, 5836-5840(2001))、 H IV TATのフラグメント、アンテナぺディア ·ホメォドメインのフラグメントおよび HSV VP 22のフラグメントは、複数個のアミノ酸がアルギニンに置換されていても良い。
[0142] 前記 (ii)における HIV Revのフラグメントとしては HIV Rev-(34-50)ペプチドが、 FHV Coatのフラグメントとしては FHV Coat-(35-49)ペプチドが、 BMV Gagのフラグメントと しては BMV Gag- (7- 25)ペプチドが、 HTLV- II Rexのフラグメントとしては HTLV- II Re x-(4-16)ペプチドが、それぞれ挙げられる。また CCMV Gagのフラグメントとしては CC MV Gag- (7-25)ペプチドが、 P22 Nのフラグメントとしては P22 N-(14-30)ペプチドが、 λ Νのフラグメントとしては λ Ν- (1-22)ペプチドが、 φ 21Nのフラグメントとしては φ 21N -(12- 29)ペプチド力 酵母 PRP6のフラグメントとしては酵母 PRP6- (129- 144)ペプチド 力 それぞれ挙げられる。また、これらのフラグメントの配列において複数個のァミノ 酸がアルギニンに置換されても良い。
[0143] 前記 (iii)のオリゴアルギニンを有するペプチドとしては、オリゴアルギニン (n=5〜9) を有するペプチドが好ましぐオリゴアルギニン (n=6〜8)を有するペプチドが更に好 ましい。
[0144] 前記細胞内への取り込み促進タンパク質 (ペプチド)は、本発明タンパク質の N末端 側、 C末端側のいずれに融合しても良いが、好ましくは本発明タンパク質の N末端側 に融合する。その際、細胞内への取り込み促進タンパクと本発明タンパク質との間に リンカ一配列を挿入しても良い。当該融合タンパク質は、常法により融合タンパク質を コードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを作製し、適当な宿主細胞に導 入することにより製造することができる(発現ベクターや細胞の具体例については後 述の (5)及び (6)を参照)。また、例えば PureGeneシステム等を用いて in vitroで合成、
精製することちでさる。
[0145] 細胞内への取り込み促進物質が化学物質の場合、当該化学物質としては、例えば P糖タンパク質に結合活性を持つ化合物や、アルギニンを有する分岐型ペプチド等 が例示される。
ここで「P糖タンパク質に結合活性を持つ化合物」とは、例えば BCRPインヒビターを 挙げることができる。具体的には、例えば、 BCRPインヒビターである GF120918などを 挙げることができる。 P糖タンパク質に結合活性を持つ化合物と本発明タンパク質と化 学的に結合させることにより、化学的結合体は SP細胞と呼ばれる各種体性幹細胞特 異的に取り込まれる。
前記で「アルギニンを有する分岐型ペプチド」とは、例えば、文献 (Biochemistry, 41, 7925-7930, (2002》に記載されて 、るような細胞膜透過能をもつ 8個程度のアルギ- ンを有する分岐型ペプチドのことであり、具体的には、該文献の (R )ペプチドや (RG
2 4 3
R)ペプチドなどが挙げられる。
4
[0146] 本発明のタンパク質と当該タンパク質の細胞内への取り込み促進物質との結合様 式としては、共有結合やイオン結合が挙げられる。例えばイオン結合の場合には、コ ラーゲンとの静電複合体や N-ァセチル-キトサンとの静電複合体等が挙げられる。
[0147] (5)ES細胞の機能維持剤
本発明は、本発明タンパク質(ECAT15-1、 ECAT15-2、 ECAT16、 Rnfl7または LO C380905(TDRD4))の!、ずれかを含有するタンパク質を有効成分として含有する、 ES 細胞の機能維持剤を提供する。
本発明のタンパク質は、 ECAT4 (Nanog)や ECAT5(ERas)と同様の解析手法により見 出された ES細胞で特異的に発現するタンパク質であり、 ES細胞の機能維持に関与し ている。ここで「ES細胞の機能維持」とは、 ES細胞の未分化能維持、 ES細胞の多能性 維持、 ES細胞の増殖能維持、 ES細胞の不死化状態維持、または ES細胞以外の細胞 に導入した際の ES細胞の機能維持 (ES様細胞化、体細胞核初期化)に関与すること を意味する。特に ES細胞の未分化能維持、および ES細胞の増殖能維持に関与する ことを意味する。
[0148] 有効成分となる本発明タンパク質(ECAT15-1、 ECAT15_2、 ECAT16、 RnH7または
LOC380905(TDRD4》の!、ずれかを含有するタンパク質としては、本発明タンパク質 そのものを用いることもできれば、前記細胞内への取り込み促進物質との結合体を用 いることもできる。これらタンパク質または結合体は、当業者に周知の細胞内への取り 込み可能な形態で、細胞に導入することができる。
なおタンパク質の形態での細胞導入は、不可逆的な遺伝子導入 (染色体への組み 込み)と異なり可逆的であり、必要な時だけ培地に添加し、不必要であれば培地から 除去すれば良 、と 、うメリットを有する。
[0149] また、これら本発明のタンパク質や結合体 (融合タンパク質)をコードする遺伝子を 含有するポリヌクレオチドも、 ES細胞の機能維持剤の有効成分とすることができる。こ の場合、前記ポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入し、組換え発現ベクターの形態 で細胞に導入することが好まし 、。
[0150] ここで発現ベクターとしては、用いる宿主や目的等に応じて適宜選択することができ 、プラスミド、ファージベクター、ウィルスベクター等が挙げられる。具体的には、例え ば pCEP4、 pKCR、 pCDM8、 pGL2、 pcDNA3.1、 pRc/RSV、 pRc/CMVなどのプラスミ ドベクターや、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウィルスべ クタ一などのウィルスベクターが挙げられる。
前記ベクターは、発現誘導可能なプロモーター、シグナル配列をコードする遺伝子 、選択用マーカー遺伝子、ターミネータ一などの因子を含有していても良い。また、 マーカータンパク質をコードする遺伝子 (マーカー遺伝子)を含有していても良い。
[0151] ここで「マーカー遺伝子」とは、 目的遺伝子導入細胞と非導入細胞とを区別すること の可能な遺伝子のことであり、例えば、 GFPや GFPの変異体である CFPや YFPなど の蛍光タンパク質遺伝子、薬剤耐性遺伝子、発光酵素遺伝子、発色酵素遺伝子等 を挙げることができる。詳しくは前記 (3-1)項を参照されたい。このようなマーカー遺伝 子を付加したベクターを細胞内に導入することにより、本発明遺伝子を発現する細胞 を簡便に検出、選別することができる。
更に、本発明の遺伝子を含む発現ベクターをコンデイショナルな遺伝子発現制御 システムを利用して作製することもできる。例えばテトラサイクリンの共存下では導入し た目的遺伝子が発現し、非共存下では発現しない強制発現システムを挙げることが
できる(Niwa et al. , (2000). Nat Genet 24, 372-6.)。また目的遺伝子の発現をオン/ オフするシステムとしてリコンビナーゼ Cre-loxPシステムや、リコンビナーゼ FLP-FRT システムなども用いることができる。
さらに前記ベクターは、一定条件下で消失する性質を有するベクターであってもよ い。具体的には、例えば、 pCAG-IPベクターを挙げることができる。
[0152] 細胞への導入法としては、例えばリン酸カルシウム法、 DEAE-デキストラン法、エレ タトロポレーシヨン法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、 Lipofectin; Gibco- BRL 社)を用いる方法、マイクロインジヱクシヨン法、電気パルス法等の公知の方法が挙げ られる。
[0153] 本発明の ES細胞の機能維持剤は、種々の哺乳動物細胞に導入される。ここで哺乳 動物細胞とは、ヒト、サル、マウスやラット等の哺乳動物の組織'臓器等由来の細胞を 意味し、個体力も取り出した初代細胞であっても、また培養細胞であっても良い。細 胞の種類としては、 ES細胞等の未分化'多能性維持細胞であっても良ぐまた体細胞 ((a)神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、精子幹細胞等の組織幹細胞 (体性 幹細胞)、(b)組織前駆細胞、(c)リンパ球、上皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞等の 分化した細胞)であっても良 、。これら細胞の詳細にっ 、ては前記 (3)体細胞核初期 化物質または ES細胞未分化 ·多能性維持物質等のスクリーニングの項に記載した通 りである。
[0154] 本発明の ES細胞機能維持剤の細胞への添加量は、細胞の種類、細胞数等により 適宜調整することができる力 通常培地に 0.0001 μ Μ〜1000 μ Μ、好ましくは 0.0001 μ Μ〜10 μ Μ、より好ましくは 0.0001 μ Μ〜1 μ Μであり、これを必要に応じて細胞に 添加する。
本発明の ES細胞の機能維持剤は、再生医療における治療薬または試薬として、ま た再生医療に関連する研究用試薬として、有効に用いられる。
[0155] (6)ECAT16
(6-l) ECAT16遺伝子
本発明は、以下の (a)〜(d) :
(a)配列番号: 17または 33に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号: 18または 34に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポ リヌクレ才チド、
(c)前記 (a)または (b)のポリヌクレオチドと 70%以上の相同性を有し、且つ ECAT16の 機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)前記 (a)または (b)のポリヌクレオチド (相補鎖)に対してストリンジェントな条件下で ハイブリダィズし、且つ ECAT16の機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチ ド、、
のいずれかよりなる ECAT16遺伝子のポリヌクレオチドを提供する。
[0156] 本発明の ECAT16遺伝子は、公知の遺伝子である Rnfl7遺伝子と LOC380905遺伝 子とがー部オーバーラップして連結した長い転写産物であり、本発明者により見出さ れた新規な遺伝子である。
ここで「ECAT16遺伝子」とは、具体的には配列番号: 17に記載の塩基配列を含有 するマウス ECAT16遺伝子が例示される力 これに限定されず、前述のように、配列 番号: 17に記載の塩基配列を含有するマウス ECAT16遺伝子と 70%以上の相同性を 有し、且つ ECAT16の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子や、配列番号: 17 に記載の塩基配列を含有するマウス ECAT16遺伝子の相補鎖に対してストリンジェン トな条件下でハイブリダィズし、且つ ECAT16の機能を有するタンパク質をコードする 遺伝子も、本発明の ECAT16遺伝子の範疇に含まれる。このような遺伝子として具体 的には、ヒト ECAT16遺伝子 (配列番号: 33)が例示される。
[0157] また、配列番号: 33に記載の塩基配列を含有するヒト ECAT16遺伝子のみならず、 配列番号: 33に記載の塩基配列を含有するヒト ECAT16遺伝子と 70%以上の相同性 を有し、且つ ECAT16の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子や、配列番号: 3 3に記載の塩基配列を含有するヒト ECAT16遺伝子の相補鎖に対してストリンジェント な条件下でハイブリダィズし、且つ ECAT16の機能を有するタンパク質をコードする遺 伝子も、本発明の ECAT16遺伝子の範疇に含まれる。
なお Rnfl7遺伝子、および LOC380905遺伝子は前記「ECAT16遺伝子」の範疇には 含まれない。
[0158] 前記 (c)において「70%以上の相同性を有するポリヌクレオチド」とは、具体的には
前記配列番号で示された塩基配列に対して 70%以上、好ましくは 80%以上、より好 ましくは 90%以上、特に好ましくは 95%以上の相同性を有する塩基配列を含有する ポリヌクレオチドを指す。また前記 (d)において「ストリンジ ントな条件」とは、前記配 列番号で特定された遺伝子の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダィズする 遺伝子が挙げられる。
ここで「ストリンジェントな条件」とは、 Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego C A)や目 ij 己 Molecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度 (Tm)に基づ いて決定することができる。
[0159] ハイブリダィゼーシヨンの条件としては、例えば、 6 X SSC(20 X SSCは、 333mM Sodiu m citrate, 333mM NaClを示す)、 0.5%SDSおよび 50%ホルムアミドを含む溶液中で 42 °Cにてハイブリダィズさせる条件、または 6 X SSCを含む (50%ホルムアミドは含まな!/、) 溶液中で 65°Cにてハイブリダィズさせる条件などが挙げられる。
またハイブリダィゼーシヨン後の洗浄の条件としては、「1 X SSC、 0.1%SDS、 37°C」程 度の条件を挙げることができる。相補鎖は力かる条件で洗浄しても対象とする正鎖と ノ、イブリダィズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より 厳しいハイブリダィズ条件として「0.5 X SSC、 0.1%SDS、 42°C」程度、さらに厳しいハイ ブリダィズ条件として「0.1 X SSC、 0.1%SDS、 65°C」程度の洗浄条件を挙げることがで きる。
[0160] 前記において「ECAT16の機能を有する」とは、具体的には、 ECAT16の特徴である
ES細胞で特異的に発現するという性質を有すること、あるいは ECAT16の作用である
ES細胞の機能維持作用を有することを意味する。
[0161] ECAT16遺伝子のポリヌクレオチドが 2本鎖の場合、発現ベクターに挿入することに より、 ECAT16タンパク質を発現するための組換え発現ベクターを作製することができ る。
[0162] ここで用いる発現ベクターとしては、用いる宿主や目的等に応じて適宜選択するこ とができ、プラスミド、ファージベクター、ウィルスベクター等が挙げられる。
[0163] 例えば、宿主が大腸菌の場合、ベクターとしては、 pUC118、 pUC119、 pBR322、 pC R3等のプラスミドベクター、 λ ΖΑΡΠ、 gtllなどのファージベクターが挙げられる。宿 主が酵母の場合、ベクターとしては、 pYES2、 pYEUra3などが挙げられる。宿主が昆 虫細胞の場合には、 pAcSGHisNT-Aなどが挙げられる。宿主が動物細胞の場合には 、 pCEP4、 pKCR、 pCDM8、 pGL2、 pcDNA3.1、 pRc/RSV、 pRc/CMVなどのプラスミド ベクターや、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウィルスべク ターなどのウィルスベクターが挙げられる。
[0164] 前記ベクターは、発現誘導可能なプロモーター、シグナル配列をコードする遺伝子 、選択用マーカー遺伝子、ターミネータ一などの因子を含有していても良い。また、 マーカータンパク質をコードする遺伝子 (マーカー遺伝子)を含有していても良い。マ 一力一遺伝子にっ ヽては前記 (3-1)項を参照された ヽ。
[0165] また前記発現ベクターは、前述のようなコンデイショナルな遺伝子発現制御システ ム(Niwa et al. , (2000). Nat Genet 24, 372- 6.)や、リコンビナーゼ Cre- loxPシステム 、リコンビナーゼ FLP-FRTシステムなどに対応した配列を含有しても良い。さらに前 記ベクターは、一定条件下で消失する性質を有するベクター(例えば pCAG-IPベクタ 一)であっても良い。
[0166] また、単離精製が容易になるように、チォレドキシン、 Hisタグ、あるいは GST (ダルタ チオン S-トランスフェラーゼ)等との融合タンパク質として発現する配列が付加されて いても良い。この場合、宿主細胞内で機能する適切なプロモーター(lac、 tac、 trc、 tr p、 CMV、 SV40初期プロモーターなど)を有する GST融合タンパクベクター(pGEX4T など)や、 Myc、 Hisなどのタグ配列を有するベクター(pcDNA3.1/Myc-Hisなど)、さら にはチォレドキシンおよび Hisタグとの融合タンパク質を発現するベクター(pET32a) などを用いることができる。
[0167] 前記で作製された発現ベクターで宿主を形質転換することにより、当該発現べクタ 一を含有する形質転換細胞を作製することができる。
ここで用いられる宿主としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げら れる。大腸菌としては、 E.coli K- 12系統の HB101株、 C600株、 JM109株、 DH5 α株、 AD494(DE3)株などが挙げられる。また酵母としては、サッカロミセス'セルビジェなど
が挙げられる。動物細胞としては、 L929細胞、 BALB/c3T3細胞、 C127細胞、 CHO細 胞、 COS細胞、 Vero細胞、 Hela細胞、 293-EBNA細胞などが挙げられる。昆虫細胞と しては sl9などが挙げられる。また前記 (5)項に記載の各種細胞 (ES細胞、体細胞)も 用!/、ることができる。
[0168] 宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、前記宿主細胞に適合した通常の 導入方法を用いれば良い。具体的にはリン酸カルシウム法、 DEAE-デキストラン法、 エレクト口ポレーシヨン法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、 Lipofectin; Gibco- B RL社)を用いる方法、電気パルス法などが挙げられる。導入後、選択マーカーを含む 通常の培地にて培養することにより、前記発現ベクターが宿主細胞中に導入された 形質転換細胞を選択することができる。
[0169] 以上のようにして得られた形質転換細胞を好適な条件下で培養し続けることにより 、 ECAT16を製造することができる。得られたタンパク質は、一般的な生化学的精製 手段により、さらに単離 ·精製することができる。ここで精製手段としては、塩析、ィォ ン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、ァフィ-ティークロマトグラフィー、 ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。また本発明のタンパク質を、前述のチォ レドキシンや Hisタグ、 GST等との融合タンパク質として発現させた場合は、これら融合 タンパク質やタグの性質を利用した精製法により単離'精製することができる。
[0170] (6- 2) ECAT16タンパク質
また本発明は、以下の (a)〜(c) :
(a)配列番号: 18または 34に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b)前記 (a)のタンパク質と 70%以上の相同性を有し、且つ ECAT16の機能を有するタ ンパク質、
(c)前記 (a)のタンパク質において 1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失及び Z又 は付加されたアミノ酸配列を含有し、且つ ECAT16の機能を有するタンパク質、 の!、ずれかよりなる ECAT16タンパク質を提供する。
[0171] ここで「ECAT16」とは、具体的には配列番号: 18に記載のアミノ酸配列を含有する マウス ECAT16タンパク質が例示される力 これに限定されず、前述のように、配列番 号: 18に記載のアミノ酸配列を含有するマウス ECAT16タンパク質と 70%以上の相同
性を有し、且つ ECAT16の機能を有するタンパク質や、配列番号: 18に記載のァミノ 酸配列を含有するマウス ECAT16タンパク質にお ヽて 1若しくは複数個のアミノ酸が 置換、欠失及び Z又は付加されたアミノ酸配列を含有し、且つ ECAT16の機能を有 するタンパク質も、本発明の ECAT16の範疇に含まれる。このようなタンパク質として 具体的には、ヒト ECAT16 (ヒト ECAT16タンパク質、配列番号: 34)が例示される。
[0172] また、配列番号: 34に記載のアミノ酸配列を含有するヒト ECAT16タンパク質と 70% 以上の相同性を有し、且つ ECAT16の機能を有するタンパク質や、配列番号: 34に記 載のアミノ酸配列を含有するヒト ECAT16タンパク質において 1若しくは複数個のァミノ 酸が置換、欠失及び Z又は付加されたアミノ酸配列を含有し、且つ ECAT16の機能 を有するタンパク質も、本発明の ECAT16の範疇に含まれる。
なお Rnfl7および LOC380905は、前記「ECAT16」の範疇には含まれない。
[0173] 前記 (b)において「70%以上の相同性を有するタンパク質」とは、具体的には前記 配列番号で示されたアミノ酸配列に対して 70%以上、好ましくは 80%以上、より好ま しくは 90%以上、特に好ましくは 95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含有する ポリヌクレオチドを指す。
[0174] 前記 (c)において「1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失及び Z又は付加された アミノ酸配列を含有するタンパク質」とは、人為的に作製したいわゆる改変タンパク質 や、生体内に存在するアレル変異対等のタンパク質を意味する。
ここでタンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、 ECAT16の活性が保持 される限り制限はない。このように活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように 、何個欠失、置換及び Z又は付加されればよいかを決定する指標は、当業者に周知 のコンピュータプログラム、例えば DNA Star softwareを用いて見出すことができる。例 えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の 10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の 5 %以内である。また置換されるアミノ酸は、タンパク質の構造保持の観点から、残基の 極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た 性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、 Ala、 Val、 Leu、 Ile、 Pro, Met, P he及び Trpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、 Gly、 Ser、 Thr、 Cys、 Tyr、 Asn及び Ginは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、 Asp及び G1
uは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、また Lys、 Arg及び Hisは互いに 塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属す るアミノ酸を適宜選択することができる。
[0175] 前記において「ECAT16の機能を有する」とは、具体的には、 ECAT16の特徴である ES細胞で特異的に発現するという性質を有すること、あるいは ECAT16の作用である ES細胞の機能維持作用を有することを意味する。
以上の ECAT16タンパク質は、前記形質転換体を培養することにより得ることができ る。また例えば PureGeneシステム等を用いて in vitro合成することもできる。
[0176] (6-3) ECAT16タンパクに特異的に結合する抗体
本発明は、 ECAT16に特異的に結合する抗体を提供する。当該抗体については、 前記(1-3)に記載した方法により作製することができる。
[0177] (6-4) ECAT16遺伝子の部分ポリヌクレオチド
本発明は、 ECAT16のポリヌクレオチドに特異的な、連続する少なくとも 15塩基を含 有するポリヌクレオチド及び Z又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドを 提供する(ただし Rnfl7遺伝子、および LOC380905遺伝子は含まれない)。当該ポリヌ クレオチドの詳細については、前記(1-1)及び(1-2)に記載した通りである。
[0178] (6- 5) ECAT16の部分ポリペプチド
本発明は、 ECAT16に特異的な、連続する少なくとも 6アミノ酸を含有するポリぺプ チドを提供する(ただし Rnfl7および LOC380905は含まれない)。ここで「少なくとも 6ァ ミノ酸」との定義は、一般に 6アミノ酸あれば 1つのタンパク質を他のタンパク質と区別 して定義するのに充分であるという理由による。好ましくは 8アミノ酸、更に好ましくは 1 0アミノ酸以上のアミノ酸を含有するポリペプチドが提供される。
[0179] (6-6) ECAT16遺伝子の遺伝子改変動物
本発明は、 ECAT16遺伝子を人為的に染色体中に挿入した力 あるいはいずれか をノックアウトさせた遺伝子改変動物を提供する。ここで「ECAT16遺伝子を人為的に 染色体中に挿入した遺伝子改変動物」とは ECAT16遺伝子のトランスジヱニック動物 を指し、また「ECAT16遺伝子をノックアウトさせた遺伝子改変動物」とは ECAT16遺伝 子ノックアウト動物、ノックイン動物を指す。
当該遺伝子改変動物の作製法は当業者に周知であり、例えば前記 (3-1)項に記 載の方法にて作製することができる。
[0180] (6-7) ECAT16遺伝子のアンチセンス核酸または siRNA
本発明は、 ECAT16遺伝子のアンチセンス核酸または siRNAを提供する。ここで「ァ ンチセンス核酸」とはアンチセンスポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドを 指し、具体的には配列番号: 17または配列番号: 33に記載の塩基配列またはその一 部分に相補的なアンチセンス核酸が例示される。
[0181] アンチセンス核酸は通常、 10〜1000個程度、好ましくは 15〜500個程度、更に好ま しくは 16〜30個程度の塩基力 構成される。ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による 分解を防ぐために、アンチセンス DNAを構成する各ヌクレオチドのリン酸残基 (ホスフ エート)は、例えば、ホスホロチォエート、メチノレホスホネート、ホスホロジチォネートな どの化学修飾リン酸残基に置換されていてもよい。これらのアンチセンス核酸は、公 知の DNA合成装置などを用いて製造することができる。
[0182] 前記アンチセンス核酸は、 ECAT16遺伝子の RNA若しくは転写後プロセッシングに より該 RNAを生じる初期転写産物とハイブリダィズすることができ、 ECAT16遺伝子の RNAの合成または機能を阻害することができる力 ある 、は該 RNAとの相互作用を介 して ECAT16遺伝子の発現を調節 ·制御することができる。
[0183] 本発明のアンチセンス核酸は、リボゾーム、ミクロスフエアのような特殊な形態で用 いることもできる。このような形態としては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働く ポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを 増大せしめるような脂質 (例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のもの が挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体 (例、 コレステリルクロ口ホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の 3, 端または 5'端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付 着させることができうる。その他の基としては、核酸の 3'端または 5'端に特異的に配 置されたキャップ用の基で、ェキソヌクレアーゼ、 RNaseなどのヌクレアーゼによる分 解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレン グリコール、テトラエチレンダリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知ら
れた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
[0184] 前記において「siRNA」とは短い干渉 RNAのことであり、具体的には ECAT16遺伝子 の mRNAまたはその初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場 合はイントロン部分を含む)に相補的な二本鎖オリゴ RNAを指す。短い二本鎖 RNAを 細胞内に導入するとその RNAに相補的な mRNAが分解される、いわゆる RNA干渉(R NAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていた力 最近、この 現象が動物細胞でも起こることが確認されて 、る (Nature,411(6836):p494-498(2001) ;)。当該 RNAi活性を有する二本鎖オリゴ RNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖を DNA /RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中でアニーリングさ せること〖こより調製することができる。
[0185] 以上の (6- 1)〜(6- 7)に記載した各物質は、 ES細胞に関連するメカニズム解析や再 生医療に関連する研究用試薬として、有効に用いられる。
[0186] (7) 129マゥスES細胞由来のECAT15
本発明は、配列番号: 1に記載の塩基配列を含有するマウス ECAT15-1遺伝子 (ポ リヌタレチド)、および配列番号: 5に記載の塩基配列を含有するマウス ECAT15-2遺 伝子 (ポリヌクレチド)を提供する。また本発明は、配列番号: 2に記載のアミノ酸配列 を含有するマウス ECAT15- 1、および 6に記載のアミノ酸配列を含有するマウス ECAT 15-2を提供する。これら 129マウス ES細胞由来の ECAT15の塩基配列およびアミノ酸 配列は、公共ジーンバンク(GenBak等)に登録されている遺伝子と、アミノ酸残基で 数アミノ酸異なる新規な遺伝子である。
当該 ECAT15-1遺伝子および ECAT15-2遺伝子についても、前記(6-1)〜(6-7)に 基づき、遺伝子、タンパク質、発現ベクター、形質転換細胞、抗体、部分ポリヌクォチ ド、部分ペプチド、および遺伝子改変動物を作製することができる。
[0187] (8) ECAT15-1及び ECAT15-2の複合体
本発明は、 ECAT15- 1および ECAT15- 2の複合体を提供する。当該 ECAT15- 1およ び ECAT15-2の複合体を形成している限り、さらなる ECAT15-1が結合して複合体を 形成していても良ぐまた、さらなる ECAT15-2が結合して複合体を形成していても良 い。また当該複合体は、細胞内への取り込みを促進する物質との結合体の形にする
こともできる (前記 (4)項参照)。
これら ECAT15-1および ECAT15-2の複合体、または当該複合体の細胞内への取 り込みを促進する物質との結合体は、前記 (5)項に示した ES細胞の機能維持剤の有 効成分とすることができる。より具体的には、 ES細胞の未分化能維持剤、および ES細 胞の増殖能維持剤の有効成分とすることができる。 ECAT15-1および ECAT15-2は複 合体を形成するため、 ES細胞の機能維持剤にぉ 、て同時に用いることが好ま 、。
[0188] さらに本発明は、以下の (a)および (b) :
(a) ECAT15-l遺伝子を含有するポリヌクレオチドまたはこれを含有する発現ベクター
(b) ECAT15-2遺伝子を含有するポリヌクレオチドまたはこれを含有する発現ベクター を有効成分として含有する ES細胞の機能維持剤も提供する。両者は発現して複合体 を形成するため、 ES細胞の機能維持剤にぉ 、て同時に用いることが好ま 、。
なお、前記において「ECAT15-1」、 「ECAT15-2」、 「ECAT15-1遺伝子」および「EC AT15-2遺伝子」は、前述のように特定の配列に限定されるものではなぐ特定配列に 類似のアミノ酸配列または塩基配列を含有するものも含まれる。
[0189] 以下、実施例により本発明を具体的に説明する力 本発明はこれらの実施例により なんら限定されるものではな 、。
実施例 1
[0190] ES細朐特異的発現遺伝子の同定
ES細胞特異的発現遺伝子を同定するために、 Expressed Sequence Tag(EST)デー タベースを Digital Differential Display法で解析した。すなわち、 Digital differential dis play法により次に示す 5つの細胞や臓器由来のライブラリ一群における遺伝子発現 頻度解析を行った。各群の括弧内の数字は解析したクローン数を示している。 1群か ら 5群までは該当するライブラリーをすベて解析した。 6群はデーター数が膨大である ため、全身の臓器、細胞を可及的に含むように抽出した 23ライブラリーを解析した。
[0191] 1群 1細胞期よりブラストシストまでの受精卵(49050クローン)
2群 ES細胞または Embryonic carcinoma細胞(32277クローン)
3群 受精後 8.5日までの胎児(46728クローン)
4群 受精後 9日以降の胎児(128882クローン)
5群 精巣(65685クローン)
6群 その他の細胞、糸且織(272460クローン)
Digital differential display法により受精卵と ES細胞等の多能性細胞で特異的に発 現することが予想されたセットについては、マウス由来の ESTデータベースを BlastNに て検索し、多能性細胞由来のライブラリーでのみ ESTが存在するかどうかを検討した
[0192] 使用したデータベースおよび解析プログラムの URLは以下の通りである。
Unigene Mouse Sequenceし ollection
http://www.ncbi.nim.nin.gov/Uniuene/Mm.Home.html
Digital differential display
http : // www.ncbi . nlm . nih . gov/ UniGene/ info— ddd . html
Blast search
http:// www.ncbi . nlm . nih . gov/BL AST/
[0193] Digital differential display法による解析と BlastNによる ESTデータベース検索により 選択された ECATの候補遺伝子のうち、 DNA結合ドメインである SAP (SAF-A/B, Acin us, and PIAS) motif^含有するECAT15-l、および癌遺伝子 mycへの結合が示唆され ている Rnfl7に着目した。これら 2つの遺伝子の ES細胞および 13種類の臓器における 発現を、 RT-PCRにより解析した。即ち ES細胞 (未分化 Z分化)と成体マウスの 13種 類の臓器における ECAT15-1遺伝子および RNF17 (RNF17,long form)遺伝子の発現 を、 RT-PCRにより解析した。用いたプライマーの配列は以下のとおりである。
[0194] [ECAT15-1]
ECAT15- 1- gw- s: CACCATGGAGACTGCTGGAGACAAGAAG (配列番号: 19) ECAT15-l-gw-as2: GGACCTATTCCAGAGGAACTGTCAC (配列番号: 20)
[RNF17]
Rnfl7-RT-S: GACCGGGCTGGCTTCCTGTCACCTAGT (配列番号: 27)
Rnfl 7-RT-AS: TTTACCATTTTCGGTGGCAAGGCTTCC (配列番号: 28)
ECAT15-1遺伝子の解析結果を図 1に、また Rnfl 7遺伝子の解析結果を図 2に示す
[0195] ECAT15-1遺伝子は未分化 ES細胞(MG1.19 ES細胞および RF8 ES細胞)で発現し ており、その発現は ES細胞をレチノイン酸で分化誘導すると著しく低下した。成体マ ウスの 13種類の臓器においては発現が認められな力つた。また Rnfl 7遺伝子(図中 Rn fl7L)は未分化 ES細胞(MG1.19 ES細胞および RF8 ES細胞)及び精巣でのみ発現が 認められた。精巣での発現は Oct3/4遺伝子と同様に始原生殖細胞や精母細胞に由 来する可能性が高い。これらの結果から、 5じ 丁15-1遺伝子ぉょび1¾117遺伝子は、 いずれも ES細胞特異的発現遺伝子であることが明らかとなった。
[0196] ECAT15-1遺伝子と配列上及び構造上類似の遺伝子として ECAT15-2遺伝子が存 在しており、この ECAT15-2についても同様の RT-PCR解析を行った(図 1)。用いた プライマーの配列は以下の通りである。
[ECAT15-2]
ECAT15- 2- gw- s: CACCATGTCATACTTCGGCCTGGAGACT (配列番号:21) ECAT15-2-gw-as2: ACTCTACTCTTTTCTCCTTTGGCACCC (配列番号: 22) その結果、 ECAT15-1と同様の発現パターンを示し、 ES細胞特異的発現遺伝子で あることが示された。
[0197] また Rnfl7につ!/、てはゲノム上重複するもう 1つの遺伝子 LOC380905が存在して!/ヽ る。この LOC380905についても同様の RT-PCR解析を行った(図 2)。用いたプライマ 一の配列は以下の通りである。
[LOC380905]
LOC380905-RT-S: AAGCTGGCATATGTTGAACCAAGTAAA (配列番号: 29) LOC380905-RT-AS: TTCATAAGATGCTAGGCCCTCTTTCAC (配列番号: 30) その結果、 Rnfl 7と同様の発現パターンを示し、 ES細胞特異的発現遺伝子であるこ とが示された。
以上のように ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 1¾117遺伝子ぉょびし0じ3809 05遺伝子は、いずれも ES細胞特異的に発現する ECAT遺伝子であり、 ES細胞を特徴 付けるマーカー遺伝子であることが明ら力となった。
実施例 2
[0198] 各遣伝子の塩某西 R列及びアミノ酸西 R列の同定
次に、前記 ECAT15-1遺伝子、 ECAT15-2遺伝子、 Rnfl7遺伝子および LOC38090 5遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を同定した。
[0199] ECAT15- 1遺伝子および ECAT15- 2遺伝子について、 RF8 ES細胞の mRNAより RT- PCR法により cDNAを増幅し、その塩基配列を決定した。決定したマウス ECAT15-l(m ECAT15-1)の塩基配列を配列番号: 1に、アミノ酸配列を配列番号: 2に示す。またマ ウス ECAT15-2(mECAT15-2)の塩基配列を配列番号: 5に、アミノ酸配列を配列番号 : 6に示す。これら塩基配列およびアミノ酸配列は、公共ジーンバンク(GenBak等)に 登録されて!ヽる遺伝子のそれと、アミノ酸残基で数アミノ酸異なる新規な遺伝子であ つた o
マウス ECAT15のヒト相同遺伝子として、 hECAT15- 1 (配列番号: 3、 4)および hECA T15- 2 (配列番号 : 7、 8)を、それぞれ遺伝子データベースより同定した。
[0200] マウス Rnfl7(mRnfl7)として配列番号: 9及び 10を、そのヒト相同遺伝子として hRnfl7
(配列番号: 11、 12)を同定した。またマウス LOC380905 (mLOC380905)として配列番 号: 13及び 14を、そのヒト相同遺伝子として hTDRD4 (配列番号: 15、 16)を、それぞれ 遺伝子データベースより同定した。
実施例 3
[0201] EC AT 16遣伝子の同定
RF8 ES細胞における Rnfl7遺伝子および LOC380905遺伝子の発現を、ノーザンブ ロット解析により調べた。その結果 Rnfl 7特異的プローブ、 LOC380905特異的プロ一 ブのどちらを用 ヽた場合も、 Rnfl 7や LOC380905に相当する約 2kbのバンドは確認さ れず、変わりに約 4kbの新規なバンドのみが確認された。この新規なバンドに相当す る遺伝子を ECAT16遺伝子と命名した。
次にこれらの遺伝子発現を RT-PCRにより解析した。用いたプライマーの配列は以 下の通りである。
[0202] 〔RnH7Lの ORF増幅用プライマー〕
Rnfl 7-S: CACCATGGCGGCAGAGGCTTCGTCGACCGG (配列番号:23)
Rnfl 7L-AS: CTAAAACTCCACAGCCTTTGAGGGAGAATC (配列番号: 24) 〔LOC380905の ORF増幅用プライマー〕
LOC380905-ORF-S: CACCATGAAGTCTGAACCATACAGTGA (配列番号: 25) LOC380905-ORF-AS: TTAGGAGGAGGAGGCCCTTCTCTCTCT (配列番号: 26 )
〔ECAT16の ORF増幅用プライマー〕
Rnfl 7-S: CACCATGGCGGCAGAGGCTTCGTCGACCGG (配列番号:23) LOC380905-ORF-AS: TTAGGAGGAGGAGGCCCTTCTCTCTCT (配列番号: 26)
[0203] その結果、 Vヽずれの遺伝子(ECAT16遺伝子、 1¾117遺伝子ぉょびし0じ380905遺 伝子)についても発現が認められた力 ECAT16遺伝子の発現量が格段に多力つた 。従って図 2における Rnfl7(Rnfl7L)遺伝子および LOC380905遺伝子の発現は、その 殆どが ECAT16遺伝子の発現であったこと、すなわち ECAT16遺伝子が ES細胞特異 的発現遺伝子の主体であることが明ら力となった。
[0204] ECAT16遺伝子について、 RF8 ES細胞の mRNAより RT- PCR法により cDNAを増幅し 、その塩基配列を決定した。決定されたマウス ECAT16遺伝子の塩基配列を配列番 号: 17に、またアミノ酸配列を配列番号: 18に示す。 5じ 丁16遺伝子は1¾117遺伝子と LOC380905遺伝子とがー部オーバーラップして連結した長い転写産物であり、新規 な遺伝子であることが明ら力となった。
[0205] 次に、ヒト ECAT16遺伝子の同定を行った。ヒト由来 testisの mRNAより、 RT-PCR法 によりヒト ECAT16遺伝子の cDNAを増幅し、その塩基配列を決定した。増幅に用いた プライマーの配列は以下の通りである。
〔hECAT16〕
hRnfl7-S: CACCATGGCGGCAGAGGCTTCGAAGAC (配列番号:31) hLOC380905-AS: TTATTCATCTTTATCTGCAAGCCCCATTT (配列番号: 32) [0206] 決定されたヒト ECAT16遺伝子の塩基配列を配列番号: 33に、またアミノ酸配列を配 列番号: 34に示す。 blastp、 blastn、 BLAT、 blast(genome)検索の結果、マウス ECATl 6遺伝子同様、ヒト ECAT16遺伝子についても塩基配列、アミノ酸配列共に公開され て ヽな 、新規な遺伝子であった。マウス ECAT16とヒト ECAT16の遺伝子レベルでの
相同性は 71%、タンパクレベルでの相同性は 72.5%であった。
実施例 4
[0207] (参 ) 遣伝^ 禾 II用した :細 淑 の;巽 システム
ECAT3遺伝子のコーディング領域を /3ガラクトシダーゼとネオマイシン耐性遺伝子 の融合遺伝子( j8 geo)に置き換え、 ECAT3遺伝子をノックアウトするとともに、 ECAT3 遺伝子の発現を X-Gal染色や薬剤耐性でモニターできるようにしたホモ変異ノックィ ンマウス (以下、 ECATS^^ ge。マウス)を作製した。この ECATS^^ ge。マウスの作製 は文献(Tokuzawa, Y., et al, Molecular and Cellular Biology, 23(8): 2699-2708(200 3))の記載に基づき行った。
[0208] 次に、 ECATS^^ ge。マウスの胸腺力も常法によりリンパ球を採取した。この細胞を 文献(Meiner, V丄., et al.Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 93(24): pl4041- 14046(1996 ))に記載の ES細胞の培養条件で 2日間培養し、 G418 (0.25mg/ml)で選択した。その 結果、これらリンパ球はすべて死滅し、薬剤耐性コロニーは一つも得られな力つた。 またこの G418濃度では正常 ES細胞はすべて死滅することも確認された。
[0209] 次に、 ECATS13 ^。マウス由来のリンパ球と RF8細胞とを、多田らの方法 (Tada, M ., et al., Curr. Biol, 11(19): pl553- 1558(2001》に従って電気的に融合し、前記 ES 細胞の培養条件でフィーダ一細胞 (STO細胞)上で 2日間培養し、 G418 (0.25mg/ml) で選択したところ、多数の ES細胞様コロニーが得られた。これらのコロニーを単離、培 養し、 RNAを回収した。ノザンブロットによりこれらの細胞は全クローンにおいて Oct3/ 4や ECAT4 (Nanog)を発現しており、またこのクローンをマウスブラストシストに移植し たところキメラマウスが形成されたことから、 G418で選択された細胞は確かに ES細胞 としての性質を有する ES様細胞であることが明ら力となった。これらの細胞をフローサ ィトメトリー(FACS)で解析したところ、大きさ(Forward scatter)は約 2倍となり、 DNA量 も 4倍体となっていた。以上のことから、これらのコロニーは ECATS13 13^マウス由来 のリンパ球と正常 ES細胞との融合により、リンパ球核の初期化 (ES細胞化)が起こった ために G418耐性になったことが分力つた。このように Ε。ΑΤ3 ∞/^。マウス由来の体 細胞は、 ES様細胞に変換された時のみ薬剤耐性となる。従ってこの性質を利用すれ ば、 ES様細胞の選択や、 ES様細胞への変換を誘導する核初期化因子を容易にスク
リー-ングできることが明ら力となった。
実施例 5
[0210] ECAT15-1および ECAT15-2のターゲティング 機能解析
1.実験方法
1)BACのスクリーニング
ECAT15の BACクローンを得るためにマウス BACライブラリー (Research Genetics Co., Catalog No.96021)の DNAプールを、マニュアルに従って PCRによりスクリー-ン グを行った。プライマーは ECAT15-1の第 1ェクソンより約 2 kbp上流に設計したプ ライマー (5,:ECAT15— BAC— S2:AGATTCATTTACTTCACCGCTCCATCATAC/3,: ECAT15-BAC -AS2:TCCTGGTAATAAAATTCCGTCGCTGTTG) (それぞれ配列 番号: 35、 36)を用いた。反応条件は以下に記した。
[0211] 反応溶液 (25 μ L):dNTP 2 mM, 5,及び 3 ' primer 5 pmol, rTaq polymerase lunit, template DNA 100 ng。温度条件: 94°C , 5 sec. (94°C , 2 sec. 55°C , 2 sec. 72°C , 5 min.) X 55 cycle, 68 °C , 5 min. 4°C。 PCR反応後、 EtBrを含む 2.0 %ァガロースゲ ルで電気泳動し、約 560 bpのバンド増幅したクローンをスクリーニングした。その結果 、同定できた #290プレートを新たに入手した。 # 290プレートは 384穴プレートであつ たため、まず 4穴分を 1穴にまとめた DNAプールを作成した。このプールを铸型にし 、同様の条件で PCRを行って、 目的のクローンを含むプールを決定した。最後に、こ のプールに含まれた各 DNAを铸型に PCRを行って、最終的に ECAT15遺伝子の 15-1、 15-2の両方を含むクローンを得た。得られた BACクローンは 500 mLの LB 培地(12.5 μ g/mLクロラムフエ-コール)で 37°Cでー晚振とう培養し、集菌した後に nucleobond kit (MACHEREY- NAGEL Co.)を用いて BACクローンの精製を行った。 精製の際、ボルテックス等での激しい攪拌は避け、シェーカーでゆっくり振とうするこ とによって懸濁した。また、 S 1溶液 23 mLをカ卩えて振とうし、細胞の沈殿が完全に懸 濁された後に塩化リゾチーム (50 mg/mL)を lmLカ卩え、さらに室温で 5分間振とうする ことで細胞を溶菌しゃすくした。その後、 S2、 S3溶液をピペットで均一に懸濁するま で混ぜた後、氷上で 5分間振とうした。カラム精製後、 DNAをイソプロ沈殿し、 70 % エタノールで洗浄した後、 3-5分風乾し、 lOmM Tris-HCl (PH8.0)に溶かして、 4°Cで
保存した。
[0212] 2)BACターゲティングベクターの作成
ECAT15-1及び 15-2を含み、全長約 140 kbpの BACクローンを大腸菌の組み換 え酵素である Rec/ETを用いて BACターゲテイングベクターの作成を以下の様に行 つた o
[0213] (l)Rec/ETによる相同組み換えのためのオリゴ設計
15-1部位をネオマイシン耐性遺伝子カセットに、 15-2部位にハイグロマイシン耐 性遺伝子カセットを導入したターゲテイングベクターを作成する。このためのセレクシ ヨンマーカー(ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子)を铸型にして PCRにより BACに導入する部位を作成した。この PCRのプライマーとして铸型に相 同な部位 24 bp、 BACに相同な部位 50 bpを含む、計 74 bpのオリゴを用いた。 BA Cに相同な部位に関しては繰り返し配列がな 、ことを確認して設計した (RepeatMask er2: http :/ 1 ftp . genome .Washington. edu/)G
[0214] 15-1部位に用いたプライマー
15- lrecomb5し s
GTTGGCAGAACATATCCATCGC - 3') (配列番号: 37)
15- lrecomb - as
ACTATCAACAGGTTGAACTGATGGC - 3') (配列番号: 38)
15-2部位に用いたプライマー
15- 2- 5'Recomb- s
GCCCTATGCTACTCCGTCGAAGTTC - 3') (配列番号: 39)
15— 2recomb3—as
AGCTGGCAGTTT ATGGCGGGCGTCCT - 3,)(配列番号: 40)
[0215] (2)PCRの条件
下記の条件で KOD +により反応を行った。
94°C 1分
20サイクル; 94°C 2秒; 68°C 2分
68°C 5分後, 4°Cで維持
[0216] (3)Rec/ET発現プラスミドのトランスフォーメーション
ECAT15 BACを含有する DH10Bを 12.5 μ g/mLのクロラムフエ-コールを含む 1.0 mL LB培地で 37 °Cオーバーナイトで培養する。そして、そこから 30 μ Lを先程と 同様の新しい培地 1.4 mL〖こカロえ、 37°C 2時間培養する。 11000 rpm、 30秒遠心し、 上清を捨てる。ペレットをミリ Q水で再懸濁し再度遠心し、上清を捨てる。 40 Lのミ リ Q水に懸濁し、 pSC-101-BAD-gbaAベクターを 200 ng加え、 1 mmキュベットに移 し、エレクト口ポレーシヨン(BioRad Electroporator: 1350 V, 10 μ F, 600 Ohms)を行 つた。 1 mL LB培地でエツペンに移し、 30°C、 70分培養した。導入した Rec/ET発現 プラスミドは 37 °Cで培養すると消失する。 12.5 μ g/mLのクロラムフエ-コール、 10 μ g/mLのテトラサイクリンを含む LBプレートで 30 °Cオーバーナイト、遮光下で培養 した。
[0217] (4)Rec/ETによる組み換え反応
生えてきたコロニーを 12.5 μ g/mLのクロラムフエ-コール、 10 μ g/mLのテトラサイ クリンを含む 1 mL LB培地で 30 °Cオーバーナイト、遮光下で培養した。そして、そ こから 30 Lを先程と同様の新しい培地 1.4 mLに加え、 30 °C 2時間培養する。 最終濃度が 0.2%となるように L-ァラビノースをカ卩え、 30 °C 1時間培養する。 11000 rpm、 30秒遠心し、上清を捨てる。ペレットをミリ Q水で再懸濁し再度遠心し、上清を 捨てる。 40 μ Lのミリ Q水に懸濁し、上で作成したオリゴ(PCR産物)を 0.3 g加え、 1 mmキュベットに移し、エレクト口ポレーシヨン(BioRad Electroporator: 1350 V、 10 μ F、 600 Ohms)を行った。 lmL LB培地でエツペンに移し、 37°C、 70分培養した。 12 .5 μ g/mLのクロラムフエ-コール、及びセレクションマーカーによる抗生物質(15-1 部位: 50 μ g/mLのカナマイシン、 15-2部位: 50 μ g/mLのハイグロマイシン)を含 む LBプレートで 30 °Cオーバーナイト、培養した。生えてきたコロニーより BACター ゲティングベクターを得た。
[0218] (5)BACジーンターゲティング
作製した BACターゲテイングベクターを Sail (NEB)でー晚処理して直線ィ匕し、フエ ノールクロ口ホルム抽出後にエタノール沈殿を行い PBSに溶力した。前日に 10 cmの 細胞培養用プレートにコンフルェントな状態の RF8細胞を 1:2で継代し、当日 PBSで 洗浄した後、トリプシン処理を行い 15mlチューブに回収した。これを 800 rpmで 5分 間遠心分離して上清を除去し、 800 /z Lの PBSに再懸濁した。この細胞懸濁液に直 線化したターゲテイングベクター 20 gを加え、エレクト口ポレーシヨン用キュベット(B M Equipment.Co.)に移した。 Gene pullser II (BIO- RAD. Co.)を 0.25kV、 500 ^ F、抵 抗無限に設定してエレクト口ポレーシヨンを行った。室温で 15分放置し、これを 100m m細胞培養用プレートで培養している MSTOに 1:2で播種し、インキュベーターで培 養した。エレクト口ポレーシヨンの翌日は ES mediumで培地交換を行い、 2 日後からは 250 μ g/mLの G418(SIGMA. Co.),及び 100 μ g/mLのハイグロマイシン(SIGMA. Co .)をカ卩えて選択を行った。 10日後にマイクロピペットでコロニーを拾い、トリプシン 20 Lが入った 96wellプレートに移してトリプシン処理を行い、 ES medium 180 Lを加え て中和してから 24wellプレートの MSTO上に継代した。コンフノレェントになった細胞は トリプシン処理して、一部は 0.1%ゼラチンコートした 24wellプレートにゲノム抽出用に 継代し、残りは細胞凍結用培地を加えてプレートごと凍結した。ゲノム抽出用に継代 した細胞がコンフルェントになったら、 PBSで 2回洗浄してゲノムを抽出した。
[0219] (6)サザンブロット
抽出したゲノム DNA 10 gを Bel I(NEB)でー晚処理したものを 0.7 %ァガロースゲル で電気泳動した。泳動後のゲルを denaturingbuffer (0.5M NaOH, 1.5MNaCl)に浸し 、 50rpmで 30分間、室温で振とうした。ゲルを蒸留水ですすぎ、 neutralizing buffer (0 .5M Tris-HCl pH7.0、 1.5M NaCl)に浸して 50rpmで 30分間、室温で振とうした。ゲ ルを蒸留水ですすぎ、 20 X SSC (3M NaCl、 0.3M Na citratepH7.0)に浸して 50rpmで 30分間、室温で振とうした後、 TURBOBLOTTER Rapid Downward Transfer System/ Stack Tray (Schleicher &Schuell)のマニュアルに従ってナイロンメンブレン(Hybond N.Amersham Biosciences)にー晚かけてブロットした。翌日、ナイロンメンブレンに DN Aが移っていることを確認した。ナイロンメンブレンを 2 X SSCで洗浄し、 UV照射を
行いナイロンメンブレンに DNAを固定した。このメンブレンをハイブリダィゼーシヨン ボトルに移し, PerfectHyb Plus HYBRIDIZATION Buffer (SIGMA. Co.)を 7mlカロえて 6 8°Cで 1時間プレハイブリダィゼーシヨンした。 ECAT 15の遺伝子型を確認する際の プローブは、 ECAT15 BACを铸型にして ECAT15- 3' probe- s (5, - GCTCCAAATG ACCACAAGACTAACAGGC - 3,) (配列番号: 41)と ECAT15- 3 ' probe-as (5,- GTG CACATTCCTCCAAGTAGGTAT GAA A - 3') (配列番号: 42)を用いて PCRを行って 得りれた断ハ'を、 Rediprime II Random Prime Labelling system (AmershamBioscience s. Co.)を用いて [32P]-dCTPでラベリングしたものを用いた。ラベリングしたプローブ を液体シンチレーシヨンにより放射線強度を測定した。 1.2 X 107 dpmのプローブを 1 00°Cで 5分間処理したものを、プレハイブリダィゼーシヨンを行なったメンブレンの入 つたボトルに加え、 68°Cで 3時間ハイブリダィゼーシヨンを行なった。 3時間後、 first wash buffer(2 X SSC, 10%SDS)を適量カ卩えて室温で 5分間洗浄した。次に second wash buffer (0.2 X SSC, 10%SDS)を適量カ卩え、 68°Cで 20分間の洗浄を 2回行なった。洗 浄後のメンブレンをラップで包み、イメージングプレート(Fuji. Co.)でー晚露光し、翌 日 BAS 5000 (Fuji. Co.)を用いて解析を行った。
[0220] (7)定量 PCR
定量 PCR用プライマー、 taq manプローブの設計
Taq manプローブは長さが 20〜 30塩基で 5 '末端の Gは避けた。 4つ以上の Gの 連続はさけた。このプローブを挟む形でプライマーを設計した。以上の部位は繰り返 し配列がないことを確認して設計した (RepeatMasker2)。 15-1、 15-2、及びコントロー ルとして Nanog遺伝子をターゲテイングした部位 (Cell, 113,p631-642(2003》で設計し た。これらを用いて以下の様に定量 PCRを行った。
[0221] 定量 PCR反応条件:
2 X buffer 6.25 ; primer 1.25, 1.25 ; taq man probe 1.25 ; template 0.5 ; DDW 2 ; Total 1
94°C 3分; 94°C 2秒 50 °C 15秒 72°C 1分(40 cycle) ; 72°Cで維持
[0222] 用いたプライマー:
Q 15-l-s2 (5 ' -AGAAGAGAAGAATGAGCGTTACAA T -3,) (配列番号: 43),
Q15-l-as2 (5' -GGATTCTAAATTCCTTCCTAACAA A- 3') (配列番号: 44), Q15-2-S (5 -ATG AATACAGTGTATTTACCAGTGT - 3') (配列番号: 45), Q15-2-as (5,- GAGCTACTACTGCCAGTTGATGACT - 3,)(配列番号: 46), Qnanog-s (5 ' -GTCCTTAGAAGTTGCTGTAATGTA A - 3') (配列番号: 47), Qnanog-as (5, - TCACATAATTATGATTTTAACAGGC - 3,)(配列番号: 48) バッファー: QuickGoldSt ar Mastermix Plus (NIPPON GENE Co.)
[0223] Taq man Probe (NIPPON EGT Co.)
15-lTaq (5, - CGGGTGTAGATGTGTTAGGAGAGGA - 3,)(配列番号: 49), 15-2Taq (5, - CCTGCAGCTGAACTGACTGCTG -3,)(配列番号: 50),
nanogTaq (5 ' -TGAATCGAACTAACGTCTGGACGTC -3,)(配列番号: 51) ABI PRISM 7300 (Applied Biosystems Co.)
[0224] 2.結果
BAC (Bacterial artificial chromosome)のスクリーニングの結果、 ECAT15— 1、 15—2 の全長を含み、全長が約 140 kbpの ECAT15 BACクローンが得られた。この BAC を Rec/ETの組み換え酵素を用いて、 ECAT15 BACターゲティングベクターを作成 した。このベクターは 15-1の第 2ェキソンから第 7ェキソンまでをネオマイシン耐性遺 伝子で置換し、 15-2の第 2ェキソン力 第 7ェキソンまでをノヽィグロマイシン耐性遺伝 子で置換している (図 3)。
[0225] このターゲテイングベクターを ES細胞 (RF8)に導入し、 PCRにより耐性マーカーが 導入されているか調べた結果、 15-1部位でその導入が確認できた(18/18クローン) 。さらに、 15-2部位でも同様に確認できた。このクローンを用いてサザンブロットによ る相同組み換えの確認を行ったところ、相同組み換え体にのみ存在する 19.5 kbの バンドを検出するクローンを得た (3/18クローン)(図 4)。
サザンブロットでは 5'側で相同組み換えが起こる部位が 40 kb以上あり、確認が 困難だったので、定量 PCRによる確認を行った。相同組み換え体のゲノムは、通常 のゲノムに比べ、組み変わった部位の PCR増幅量が半減していると考えた。 15-1部 位でスクリーニングを行った結果 3クローン値が半減しているクローンが得られた。こ の際、コントロールとして、すでに相同組み換えの確認がなされている Nanog (+ /-)
クローン (Cell,113,p631-642(2003》のゲノムを用いた結果、予想通り値が半減してい た。また、これら 3クローンは 15-2部位でも同様の結果が得られた。
[0226] 上記で定量 PCR及びサザンブロットでともに確認できたクローンを ECAT15-1、 2 ダブルへテロ変異細胞とした。 15-1および 15-2ヘテロ変異 ES細胞はコントロール細 胞湘同組換えを起こさな力つた細胞)に比べて増殖が遅ぐ分化しやすい傾向にあ つた。以上の結果より、 ECAT15が ES細胞の増殖と未分ィ匕維持において重要な役割 を果たして!/ヽることが確認された。
実施例 6
[0227] ECAT15-1及び ECAT15-2のタンパク複合体解析
1.実験方法
1)ベクターの構築
本研究でのベクター構築の多くは GATEWAY Cloning Technology(Invitrogen. Co. )を利用した。この手法は目的遺伝子をもつエントリーベクターと、大腸菌や動物細胞 での発現をもたらすデスティネーションベクターとの間で組み換え反応を起こし、 目的 の遺伝子をもつ発現ベクターを迅速に作成できる。 RF8 cDNA産物より、以下のブラ イマ一:
ECAT15- gw- s (5, -CACCATGGAGACTGCTGGAGACAAGAAG-3,)(配列番号: 52 ),
ECAT15- 1- gw- as (5, - TTATCCTTCGAGGCTCTTAGTCAA- 3,)(配列番号: 53), ECAT15- 2- gw- s (5,- CACCATGTCATACTTCGGCCTGGAGACT -3,)(配列番号 : 54),
ECAT15- 2- gw- as (5, - TGTCTACGGCGGCATATTTGGGGG- 3,)(配列番号: 55), を用いて PCR反応を行い、 pENTR - D-TOPOに TOPOクロー-ング (Invitrogen. C
0. )により導入し、 pENTR- ECAT15 -1, 2を得た。これらと pCAG- Myc- gw- IPおよび p CAG- Flag- gw- IPベクターを用いて、 GETEWAY Cloning Technology (Invitrogen Co. )により pCAG— Myc— ECAT15— 1、 pCAG—Myc— EC AT 15—2、 pCAG— Flag— ECAT15—
1、 pCAG - Flag-ECAT15-2を作成した。また抗体作製のために、大腸菌での発現べ クタ一である PDEST17と、 pENTR— ECAT15—1, 2を反応させ、 pDEST17— ECAT15— 1,
2を作製した。
[0228] 2)組み換えタンパク質精製及び抗体作成
PDEST17-ECAT15-1 , 2を組み換えタンパク質発現用大腸菌 BL21-AIに導入し、 カルべ-シリン含有(100 μ g/mL) LBプレートに撒いた。翌日、シングルコロニーを 拾い 5 mLのカルべ-シリン含有 (100 μ g/mL) LB液体培地において 37°Cにおい て O.D. = 0.6まで培養した。これに L-ァラビノースを最終濃度が 0.2 %となるように 加え、 4時間培養した。菌体を回収し、菌体重量 lgに対して 3 mlの Buffer A ( 0.01 M Tris - HCl pH8.0、 6M Guanidine Hydrochlorideゝ 0.1 M NaH PO /Na HPO )をカロ
2 4 2 4 え、室温で 1時間攪拌した。これを 10000Gで 30分間遠心し、上清を回収した。これ に Buffer Aで洗浄した 1 mlの Ni- NTA agarose ( QIAGEN )を加え、 1時間以上室温 で撹拌した。 2 ml容量のポリスチレン製カラム(PIERCE)にこの混合溶液を入れ、余 分な Bufferを自然落下させた。 4 mlの Buffer C( 0.01 M Tris- HCl pH6.3、 8 MUrea 、 0.1 M NaH PO )で 2回洗浄後、 0.5 mlの Buffer E( 0.01 M Tris— HCl pH4.5、 8 M U
2 4
rea、 0.1 M NaH PO )で組換えタンパク質を溶出させた。溶出は 4回行い、回収した
2 4
組み換えタンパク質を Slide- A- Lyzer Cassette(PIERCE)を用いて 6 M Urea/PBSに ー晚透析した。
[0229] その後、一部に等容量の 2 X sample buffer(100 mM Tris- HCl pH6.8、 4% SDS、 10 % 2- ME, 14% glycerol, 0.0 2% BPB)を加え、 100 °Cで 5分間熱処理した。 SDS-ゲル 電気泳動および CBB染色により組み換えタンパク質の存在および量を確認した。 抗 体作製用動物として、ニュージーランドホワイト種( 10週齢、雌)を用いた。初回免疫 は、約 200 μ gの抗原タンパク質(0.5 ml)と等容量の ADJUVANT COMPLETE FREU ND (DIFCO Co.)を混合しェマルジヨンを形成したものを 5力所程度背中に皮下注 射した。 初回免疫から 4週間後、 2回目の免疫からは約 200 μ gの抗原タンパク質と 等容量の ADJUVANT INCOMPLETE FREUNDを混合しェマルジヨンを形成したも のを同様に 5力所程度皮下注射した。 2回目の免疫以降は 2週間に 1回、 5回目ま で免疫注射を行った。 2回目の免疫注射から 1週間後、 2週間おきにラビットの耳の 動脈より約 20 mlの血液を採取した。採取した血液は 37°Cで 1時間温め、 4 °Cで一 晚静置後、 3000 rpmで 10分間遠心し、上清を回収した。これをさらに 15000 rpmで 1
0分間遠心し、上清を回収した。この血清を用いて、作成した抗体の力価を western blottingによって確認した。 5回目免疫の翌週に耳動脈より可能な限り採血した後、 心窄刺による全採血を行った。これを上記と同様に処理し、抗 ECAT15-1および 15-2 血清とした。
[0230] 3)—過性過剰発現細胞を用いた免疫沈降法
Myc- tagged ECAT15- 2 (以下 Mycl5- 2)と Flag- tagged ECAT15 -1 (以下 Flagl5- 1) 、 Myc- tagged ECAT15- 1(以下 Mycl5- 1)と Flagl5- 1、または Mycl5 -2と Flag- tagged ECAT15 - 2(以下 Flagl5- 2)の組み合わせで、上記の pCAG -Myc- EC ATI 5-1、 pCA G—Myc— EC AT 15—2、 pCAG—Flag— EC ATI 5—1、 pCAG—Flag— EC AT 15—2を MG1.19 ES細胞へリポフエクタミン 2000でトランスフエクシヨンした。まず DMEM 250 μ ΐへべ クタ一を 4 /z gカロえる。また、別に DMEM 250 μ Lにリポフエクタミン 2000を 8 1カロ える。 両者を混ぜ、 20分後静置。 6 wellプレート上の細胞を PBSで洗った後に上記 混合液をカ卩える。 4時間後、培養液を 2ml加える。 24h後にタンパクを回収した。コン トロールとして Flagl5- 1、 2,pCAG-IP (Mock)を発現させたものも同時に用意した。 Bu fferに NP40 0.05 %になるよう加えソ-ケーシヨンを行い、上清を回収した。ここに No rmal mouse IgG Acを 5 L加え、 4°C 30分ローテートした。上清に cMyc (9E10)Acを 15 μ 1加え、 4°C 2時間ローテートした。 12000 rpm 10秒遠心し、 bufferに Nacl(final 1 50 mM)、 NP40 (final 0.05 %)をカ卩えたもので 4回洗った。ビーズに SDSサンプルバッ ファーを加え 100°C 5分間処理し、ウェスタンブロットを行った。
[0231] 4)内在性タンパク質での免疫沈降法
MG1.19 ES細胞よりタンパクを回収し、上記 bufferで洗った。 Bufferに NP40を 0.05 %になるよう加えソ-ケーシヨンを行い、上清を回収した。ここに Normal mouse IgG A cを 5 μ 1カ卩ぇ 4°Cで 30分ローテートした。上清に抗 15-1 , 2、ノーマル血清を 7.5 μ 1 加え、 4°C 2時間ローテートした。 ProteinA- Sepharoseを 10 μ 1加え、 1時間ローテ一 トした。 12000 rpm 10秒遠心し、 bufferに Nacl (final 150 mM)、 NP40 (final 0.05 %)を 加えたもので 4回洗った。 ビーズに SDSサンプルバッファーをカ卩ぇ 100°C 5分処理 し、ウェスタンブロットにより解析した。
[0232] 2.結果
Flagl5-1及び Mycl5-2を強制発現させ、抗 Myc抗体により免疫沈降をおこなった結 果、 Flagl5-1の共沈降が検出された(図 5左)。さらに、 Mycl5 -1及び Flagl5 -1を強 制発現させ、 Mycにより免疫沈降をおこなった結果、 Flagl5_lの共沈降が検出され た(図 5中央)。また、 Mycl5-2及び Flagl5-2を強制発現させ、 Mycにより免疫沈 降をおこなった結果、 Flagl5_2の共沈降が検出された(図 5右)。以上の結果から、 E CAT15-1同士、 ECAT15-2同士、および ECAT15-1と ECAT15-2が細胞内で結合し ていると考えられた。
[0233] 前記の結果が内在性タンパク質ではどうかを調べるため、抗血清を用いて免疫沈 降を行った。その結果、抗 15-1抗血清で免疫沈降したものでは 15-1, 15-2が検出 された。また抗 15-2抗血清で免疫沈降したものでも同様に 15-1, 15 -2が検出でき た (図 6)。以上により ECAT15-1と ECAT15-2が細胞内で結合していることが示された 産業上の利用可能性
[0234] 本発明により、 ES細胞において特異的に発現している ECAT遺伝子 5種 (ECAT15- 1遺伝子、 ECAT15- 2遺伝子、 ECAT16遺伝子、 RnH7遺伝子、 LOC380905遺伝子) を、新たに提供する。本発明の ES細胞特異的発現遺伝子およびそれがコードするタ ンパク質は、 ES細胞の検出、体細胞核初期化物質のスクリーニング、または ES細胞 維持物質のスクリ一ユング等にお 、て有効に用いられる。
図面の簡単な説明
[0235] [図 1]ES細胞と成体マウスの 13種類の臓器における mECAT15- 1及び mECAT15- 2の 発現を RT-PCTにより解析した結果を示す図である。陽性コントロールとして mNATl の発現も解析した。レーン 1 :未分化 MG1.19 ES細胞、レーン 2 :分化 MG1.19 ES細胞 、レーン 3 :未分化 RF8 ES細胞(RTマイナスコントロール)、レーン 4:未分化 RF8 ES細 胞、レーン 5 :分ィ匕 RF8 ES細胞、レーン 6 :脳、レーン 7 :心臓、レーン 8 :腎臓、レーン 9 : 精巣、レーン 10 :脾臓、レーン 11 :筋肉、レーン 12 :肺、レーン 13 :胃、レーン 14:卵巣、 レーン 15 :胸腺、レーン 16 :肝臓、レーン 17 :皮膚、レーン 18 :腸。
[図 2]ES細胞と成体マウスの 13種類の臓器における ECAT16 (mRnH7、 LOC380905) の発現を RT-PCTにより解析した結果を示す図である。陽性コントロールとして mNAT
1の発現も解析した。レーン 1 :未分化 MG1.19 ES細胞、レーン 2 :分化 MG1.19 ES細 胞、レーン 3 :未分化 RF8 ES細胞(RTマイナスコントロール)、レーン 4:未分化 RF8 ES 細胞、レーン 5 :分ィ匕 RF8 ES細胞、レーン 6 :脳、レーン 7 :心臓、レーン 8 :腎臓、レーン 9 :精巣、レーン 10 :脾臓、レーン 11 :筋肉、レーン 12 :肺、レーン 13 :胃、レーン 14:卵 巣、レーン 15 :胸腺、レーン 16 :肝臓、レーン 17 :皮膚、レーン 18 :腸、レーン 19 :水( 陰性コントロール)。
[図 3]ECAT15遺伝子のターゲッティングベクターと、それを用いた ECAT15遺伝子破 壊の概念を示した図である。図中、上段は野生型ゲノム上の ECAT15-1及び ECAT1 5-2遺伝子の位置を、中断は BACターゲッティングベクターの概念図を、下段は相同 糸且換え後のゲノムの概念図を、それぞれ示す。また図中、白抜き四角はネオマイシン 耐性遺伝子を、また黒四角はハイグロマイシン耐性遺伝子を示す。
[図 4]ECAT15遺伝子の相同組換えが行われたことをサザンブロットで確認した結果 を示す図である。図中 +/+は正常 ES細胞の結果を、また +/-は ECAT15遺伝子へテ 口変異 ES細胞の結果を示す。
[図 5]ECAT15蛋白質の複合体形成を示した図である。図中、左段は ECAT15-1と E CAT15-2の結合を、中段は ECAT15-1同士の結合を、右段は ECAT15-2同士の結 合を示す。また図中、 IPは免疫沈降 (Immunoprecipitation)を、 WBはウェスタンブロット (Western blot)を示す。
[図 6]ECAT15蛋白質(内在性)の複合体形成を示した図である。図中、左段は抗 E CAT15-1抗体で免疫沈降を行った結果を、右段は抗 ECAT15-2抗体で免疫沈降を 行った結果を示す。また図中、 Inputは免疫沈降前の細胞抽出液の結果を示す。 配列表フリーテキスト
配列番号: 19〜配列番号: 32に記載の塩基配列はプライマーである。
配列番号: 35〜配列番号: 48に記載の塩基配列はプライマーである。
配列番号: 49〜配列番号: 51に記載の塩基配列はプローブである。
配列番号: 52〜配列番号: 55に記載の塩基配列はプライマーである。