明 細 書
脳機能改善のための医薬および方法
技術分野
[0001] 本発明は、脳機能改善のための医薬および方法に関する。さらに詳しくは、本発明 は、細胞増殖因子などを有効成分として含有する脳機能改善のための医薬および方 法などに関する。
背景技術
[0002] 脳は、各種臓器の中で、最も重要な臓器であるが、最も研究が遅れて ヽる分野でも あり、その中でも、脳機能の制御については、全く分力つていないのが現状である。 特に、脳の生理的条件の改善 (例えば、血管新生)を行っても、機能に直結するかど うか不明な点が多ぐ脳機能の制御 (例えば、改善または悪化の予防など)について は、未知の点が多い。
[0003] 脳動脈のァテローム性動脈硬化症によって引き起こされる脳閉塞性疾患、もやもや 病等はしばしば脳の慢性的な血流量低下を引き起こす。この状態から、その後の脳 虚血性事象だけでなく痴呆を含む神経病理学的変化、すなわち脳機能の低下を引 き起こすことがある(非特許文献 l = Sekhon LH, Morgan MK, Spence I, We ber NC. , Stroke 25, 1022— 1027 (1994);非特許文献 2 = Stroke 29, 10 58 - 1062 (1998);非特許文献 3 = Stroke 24, 259— 264 (1993);非特許文献 4 =Kalaria RN, Bhatti SU, Lust WD, Perry G. , Ann. N. Y, Acad. Sci. 695, 190—193 (1993) )。しかし、これらの脳機能の低下を改善する有効な治療 法は未だ確立されて!、な!/、。
[0004] 新しい血管の発生や血管新生は親血管の内皮細胞の活性化と共に開始されるが 、インビボでこの血管新生を刺激するだけでなぐインビトロで内皮細胞に対してマイ トジエニックであることが示されて 、る増殖因子を「血管新生増殖因子」と称して 、る。 血管新生増殖因子の治療的な関与は、 Folksmanらによって最初に文献発表された (非特許文献 5=Folksmanら, N. Engl. J. Med. 285, 1182—1186 (1971) )。 またその後の研究によって、組換え血管新生因子、例えば繊維芽細胞増殖因子 (F
GF)ファミリー(非特許文献 6 = Science 257, 1401— 1403 (1992)、非特許文 献 7=Nature 362, 844— 846 (1993) )、内皮細胞増殖因子(非特許文献 8 =J. Surg. Res, 54, 575— 583 (1993) )、および血管内皮増殖因子(VEGF)などを 使用して心筋および後肢虚血症の動物モデルにおける側副血行路の発達を促進お よび Zまたは増進させ得ることが確認されている(非特許文献 9 = Circulation 90, II 228— II 234 (1994) )。さらに本発明者らは、 HGFが VEGFと同様に内皮特 異的増殖因子として作用することを見出している(非特許文献 10=J. Hypertens. 1 4, 1067—1072 (1996) )。
[0005] 血管障害を治療するために前記の如き血管新生増殖因子を用いる戦略は、「治療 的血管新生」と称されている。より最近では、この戦略はヒトの虚血性疾患に適用され ている。し力しながら、脳機能の低下の改善または悪ィ匕の予防に対してもこの戦略が 有効であるかどうかは、今日までのところ知られていないし、これまでの知見からは予 測不可能である。
[0006] 肝細胞増殖因子 (HGF)は、多様な細胞に対して分裂誘発活性、運動性促進活性 および形態形成活性を示すプレイオト口フィックなサイト力インである(非特許文献 11 = Nature 342, 440—443 (1989) )。
[0007] HGFの脳における作用については、以下のような報告がなされている。すなわち、 HGFと膜貫通型チロシンキナーゼの c MetZHGFレセプターは共に脳の種々の 領域で発現しており、 HGFと c Met間の機能的な結合によって初代培養海馬の- ユーロンの生存が高められることや、インビト口での-ユーロン発達において神経突起 の伸長が誘導されることが知られている(非特許文献 12 =J. Cell. Biol. 126, 485 —494 (1994)、特許文献 1 =特開平 7— 89869号公報)。最近、 HGFが虚血中の ニューロン内で誘導されることが報告されており(非特許文献 13 = BrainRes. 799, 311— 316 (1998) )、また組換え HGFが海馬における虚血後の遅発性神経細胞死 に対して神経保護効果を有して ヽることや、組換え HGFを脳内に連続的に注入する ことにより梗塞の大きさの減少に有効であったことが報告されている(非特許文献 14 =J. Cereb. Blood Flow Metab. 18, 345— 348 (1998)。これらの知見力も、 HGFは脳虚血中の重要な神経栄養因子として作用するものと考えられる。しかし、
脳機能の改善に HGFが有効であるかどうか知られておらず、また予測可能でもな!/ヽ
[0008] 他方、血管内皮増殖因子 (VEGF)は、内皮細胞に対してマイトジ ニックな二量体 糖タンパク質であり、そして血管透過性を高める能力を有している。 VEGFは内皮細 胞に対して直接的且つ特異的なマイトジヱニックな効果を有している(非特許文献 15 = Biochem. Biophys. Res. Commun. , 161, 851— 858 (1989) )。チロシンキ ナーゼレセプター Flt、 Flk—lおよび KDRを含む VEGFの結合部位は、他のタイプ の細胞ではなく内皮細胞上に存在しているため、 VEGFの効果は内皮細胞に限定さ れている。
[0009] VEGFの脳における作用に関しては、中枢神経系において VEGFは虚血性障害 によって脳内に急速に誘導されることが報告されており(非特許文献 16 = Mol. Cell . Biol. , 16, 4604— 4613 (1996) )、また糸且換え VEGFの月 g表面への投与力 S、梗 塞量の減少に有効であったことが報告されている(非特許文献 17 =J. Cereb. Bloo d Flow Metab. 18, 887— 895 (1998) )。し力し詳し!/ヽことは分力つて!ヽな!、。ま た、脳機能の改善に HGFが有効であるかどうか知られておらず、また予測可能でも ない。
[0010] FGFの脳における作用に関しても、ほとんどが不明であり、脳機能の改善に FGF が有効であるかどうか知られておらず、また予測可能でもな 、。
[0011] 別の観点において、上のような HGF、 VEGF, FGFなどの細胞増殖因子の作用の 他、前述の如くこれらの因子は強力な血管新生増殖因子である (非特許文献 15、非 特許文献 18 =J. Cell. Biol. 119, 629— 641 (1992) )。それ故、血管新生は脳虚 血症の回復または将来の発作予防で重要な役割を果たすと考えられる。しかしなが ら、血管新生の作用が、脳の機能低下の改善または悪ィ匕の予防 (例えば、記憶機能 の改善、学習機能の改善)に関与することは知られていないし、予測可能でもない。
[0012] さらに、組換え血管新生増殖因子は急速に消失するので脳内に連続的に注入しな ければならず、そしてこの操作は臨床状況下ではかなり危険であり、非現実的である 。それ故、遺伝子導入技術を適用して虚血性の脳内や周辺で血管新生増殖因子を 持続して発現および分泌できれば合理的であると考えられる。し力しながら、 HGFや
VEGFの脳虚血性障害への適用(遺伝子治療)については全く例がなぐまた脳とい う組織の特殊性を反映してか、現在までのところ脳機能に関する研究はほとんどなさ れておらず、機能改善に有効力どうか不明であるのが現状である。
[0013] 脳の疾患および障害は、ほとんどの疾患について何らかの解決策が見出されてい る現代において、解決策がさほど見出されていない最後の領域といえ、特に脳機能 の低下の改善または悪ィ匕の予防という目的において、その治療および予防に対する 需要は年々増えるば力りである。脳疾患の中でも、大脳動脈のァテローム性動脈硬 化症、モャモャ病などによって引き起こされる大脳閉塞疾患は、しばしば、脳の慢性 的な灌流不足を引き起こす。このような状態は、大脳虚血事象を導くのみでなく痴呆 を含む神経病理学変化もまた導く(非特許文献 1〜4)が、脳機能の改善のための有 効な処置は、未だ確立されていない。
[0014] このように、前臨床研究によって、血管内皮増殖因子 (VEGF)、線維芽細胞増殖 因子 (FGF)および肝細胞増殖因子 (HGF)のような血管形成増殖因子が、動物脳 虚血モデルにぉ 、て側副血管の発達を刺激することは報告があるものの (非特許文 献 l9 = Harrigan MR, Ennis ¾ , Masada T, Keep RF. , Neurosurgery. 2002;50:589-98;非特許文献 20=Lyons MK, Anderson RE, Meyer F B. , Brain Res.1991;558:315-20. ;および非特許文献 21=Yoshimura S , et al. , Hypertension.2002 ;39: 1028— 34.;)。月 g機會の改善に有効である t 、う話は分かって!/ヽな 、し、予測可能でな!、のが現状である。
非特許文献 1: Sekhon LH, Morgan MK, Spence I, Weber NC. , Stroke
25, 1022-1027(1994)
非特許文献 2:Kurumatani T, Kudo T, Ikura Y, Takeda M. , Stroke29, 1058-1062(1998)
非特許文献 3: Kudo T, Takeda M, Tanimukai S, Nishimura T. , Stroke 2 4, 259-264(1993)
非特許文献 4:Kalaria RN, Bhatti SU, Lust WD, Perry G. , Ann. N. Y, Acad. Sci.695, 190-193(1993)
非特許文献 5:Folksmanら, N. Engl. J. Med.285, 1182-1186(1971)
非特許文献 6: Yanagisawa— Miwa A, Uchida Y, et al. , Science 257 , 1401-1403(1992)
非特許文献 7:Nabel EG, et al. , Nature 362, 844-846(1993) 非特許文献 8: Pu LQ, Sniderman AD, Arekat Z, Graham AM, Bra ssard R, Symes JF. , J. Surg. Res, 54, 575— 583(1993)
非特許文献 9:Takeshita S, Pu LQ, Stein LA, Sniderman AD, Bun ting S, Ferrara N, Isner JM, Symes JF, Circulation 90, 11— 228
-11-234(1994)
非特許文献 10: Y. Nakamura, R. Morishita, J. Higaki, I. kida, M. Aok i, A. Moriguchi, K. Yamada, S. Hayashi, Y. Yo, H. Nakao, K. M atsumoto, T. Nakamura and T. Ogihara , J. Hypertens.14, 10り 7— 10 72(1996)
非特許文献 11: T. Nakamura, T Nishizawa, M Hagiya, T. Seki, M. Snimonishi, A. Sugimura, K. Tasniro and S. Shimizu, Nature 342, 440-443(1989)
非特許文献 12:Jung W, Castren E, Odenthal M, Vande Woude GF , Ishii T, Dienes HP, Lindholm D, Schirmacher P. J, Cell. Biol . 126, 485-494(1994)
非特許文献 13: Hayashi T, Abe K, Sakurai M, Itoyama Y. , Brain Res.799, 311-316(1998)
非特許文献 14:Morita F, et al. , J. Cereb. Blood Flow Metab.18, 34 5-348(1998)
^^特許文献 15: Ferrara, N. and Henzel, WJ , Biochem. Biophys. Res. Commun. , 161, 851-858(1989)
非特許文献 16:Forsythe, JA, Jiang, BH, Iyer, NV, Agani, F, Le ung, SW, Koos, RD, and Semenza, GL, Mol. Cell. Biol. , 16, 46 04-4613(1996)
非特許文献 17: Hayashi, T. , Abe, Κ. , & Itoyama, Υ. J. Cereb. Bio
od Flow Metab.18, 887-895(1998)
非特許文献 18:Bussolino, F. , et al. , J. Cell. Biol. 119, 629-641(19 92)
非特許文献 19:Harrigan MR, Ennis SR, Masada T, Keep RF. , Neurosu rgery.2002;50:589-98
非特許文献 20: Lyons MK, Anderson RE, Meyer FB. , Brain Res.1991 ;558:315-20.
非特許文献 21:Yoshimura S, et al. , Hypertension.2002;39:1028-34. 特許文献 1:特開平 7— 89869号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0015] 本発明は、脳機能を改善または悪ィ匕を予防するための新規な治療剤、およびこの 治療剤の新規な投与方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0016] 本発明は、 HGF (肝細胞増殖因子または肝実質細胞増殖因子)遺伝子および Zま たは VEGF (血管内皮増殖因子)遺伝子などの増殖因子を有効成分として含有する 組成物が、脳機能の障害の治療または悪ィ匕の予防の効果および神経突起伸長の促 進またはシナプス形成の効果を有することを見出したことによって上記課題を解決し た。
[0017] 従って、本発明は以下に関する:
(1)細胞増殖因子を有効成分として含む、脳機能の悪化を予防する力 または脳機 能を改善するための糸且成物。
(2)上記細胞増殖因子は、血管増殖作用を有する、項目 1に記載の組成物。
(3)上記細胞増殖因子は、血管内皮増殖因子 (VEGF)、線維芽細胞増殖因子 (FG F)および肝細胞増殖因子 (HGF)力 なる群より選択される、項目 1に記載の組成物
(4)上記細胞増殖因子は、肝細胞増殖因子 (HGF)である、項目 1に記載の組成物
(5)上記脳機能は、認知機能または運動機能である、項目 1に記載の組成物。
(6)上記脳機能は、脳梗塞、脳血流障害、脳出血または脳血管障害による認知機能 障害または運動機能障害を受けている、項目 1に記載の組成物。
(7)上記脳機能は、記憶機能および空間学習機能力もなる群より選択される、項目 1 に記載の組成物。
(8)上記脳機能の悪ィ匕の予防または脳機能の改善は、星状細胞の活性ィ匕により達 成される、項目 1に記載の組成物。
(9)上記細胞増殖因子は、タンパク質形態または核酸形態で提供される、項目 1に 記載の組成物。
(10)上記細胞増殖因子は、ウィルスエンベロープとともに投与される、項目 1に記載 の組成物。
(11)上記ウィルスエンベロープは、不活性ィ匕されている、項目 10に記載の組成物。
(12)上記ウィルスエンベロープは、 RNAウィルスのエンベロープである、項目 10に 記載の組成物。
(13)上記ウィルスエンベロープは、パラミクソウィルス科のウィルスのエンベロープで ある、項目 10に記載の組成物。
(14)上記ウィルスエンベロープは、 HVJのエンベロープである、項目 10に記載の組 成物。
(15)上記細胞増殖因子は、上記ウィルスエンベロープ中に含有される、項目 10に 記載の組成物。
(16)上記組成物は、クモ膜下腔または大槽内投与によって送達される、項目 1に記 載の組成物。
(17)上記組成物は、脳梗塞、脳血流障害、脳出血、脳血管障害または脳機能の障 害の発症後 6日以降に投与される、項目 1に記載の組成物。
(18)上記細胞増殖因子は、核酸形態であり、脳梗塞、脳血流障害、脳出血、脳血 管障害または脳機能の障害の発症後 6日以降に投与される、項目 1に記載の組成物
(19)脳機能の悪ィ匕を予防する力、または脳機能を改善するための方法であって:
A)細胞増殖因子を患者に投与する工程、
を含む、方法。
(20)上記細胞増殖因子は、血管増殖作用を有する、項目 19に記載の方法。
(21)上記細胞増殖因子は、血管内皮増殖因子 (VEGF)、線維芽細胞増殖因子 (F GF)および肝細胞増殖因子 (HGF)力もなる群より選択される、項目 19に記載の方 法。
(22)上記細胞増殖因子は、肝細胞増殖因子 (HGF)である、項目 19に記載の方法
(23)上記細胞増殖因子は、ウィルスエンベロープとともに投与される、項目 19に記 載の方法。
(24)上記ウィルスエンベロープは、 HVJのエンベロープである、項目 23に記載の方 法。
(25)上記脳機能は、認知機能または運動機能である、項目 19に記載の方法。
(26)上記脳機能は、脳梗塞、脳血流障害、脳出血または脳血管障害による認知機 能障害または運動機能障害を受けている、項目 19に記載の方法。
(27)上記脳機能は、記憶機能および空間学習機能力 なる群より選択される、項目 19に記載の方法。
(28)上記細胞増殖因子は、タンパク質形態または核酸形態である、項目 19に記載 の方法。
(29)上記細胞増殖因子は、クモ膜下腔または大槽内投与によって送達される、項目 19に記載の方法。
(30)上記細胞増殖因子は、脳梗塞、脳血流障害、脳出血、脳血管障害または脳機 能の障害の発症後 6日以降に投与される、項目 19に記載の方法。
(31)脳機能の悪ィ匕を予防する力、または脳機能を改善するための医薬の製造にお ける、細胞増殖因子の使用。
(32)上記細胞増殖因子は、血管内皮増殖因子 (VEGF)、線維芽細胞増殖因子 (F GF)および肝細胞増殖因子 (HGF)力もなる群より選択される、項目 31に記載の使 用。
(33)上記細胞増殖因子は、肝細胞増殖因子 (HGF)である、項目 31に記載の使用
(34)上記細胞増殖因子は、タンパク質形態または核酸形態である、項目 31に記載 の使用。
(35)細胞増殖因子を含む、神経突起伸長またはシナプス形成の促進のための組成 物。
(36)上記細胞増殖因子は、血管内皮増殖因子 (VEGF)、線維芽細胞増殖因子 (F GF)および肝細胞増殖因子 (HGF)カゝらなる群より選択される、項目 35に記載の組 成物。
(37)上記細胞増殖因子は、肝細胞増殖因子 (HGF)である、項目 35に記載の組成 物。
(38)上記細胞増殖因子は、タンパク質形態または核酸形態である、項目 35に記載 の組成物。
(39)神経突起伸長またはシナプス形成の促進のための方法であって:
A)細胞増殖因子を上記神経突起伸長またはシナプス形成の促進を必要とする個 体に投与する工程、
を包含する、方法。
(40)上記細胞増殖因子は、血管内皮増殖因子 (VEGF)、線維芽細胞増殖因子 (F GF)および肝細胞増殖因子 (HGF)力 なる群より選択される、項目 39に記載の方 法。
(41)上記細胞増殖因子は、肝細胞増殖因子 (HGF)である、項目 39に記載の方法
(42)上記細胞増殖因子は、タンパク質形態または核酸形態である、項目 39に記載 の方法。
(43)神経突起伸長の促進またはシナプス形成のための医薬を製造するにおける、 細胞増殖因子の使用。
(44)上記細胞増殖因子は、血管内皮増殖因子 (VEGF)、線維芽細胞増殖因子 (F GF)および肝細胞増殖因子 (HGF)力 なる群より選択される、項目 43に記載の使
用。
(45)上記細胞増殖因子は、肝細胞増殖因子 (HGF)である、項目 43に記載の使用
(46)上記細胞増殖因子は、タンパク質形態または核酸形態である、項目 43に記載 の使用。
[0018] 本発明者らは、 HGF、 FGFおよび VEGFなどの細胞増殖因子の脳への投与によ つて、脳機能を改善することができるかどうかを in vivoで検討した。その結果、記憶 機能および空間学習機能などの脳機能にお!、て顕著な改善を示したこと、および神 経突起伸長の促進またはシナプス形成を、特に、脳梗塞領域またはその周囲におけ る状態を改善したことを明らかにした。本発明は、以上のような知見に基づき完成す るに至ったものである。
[0019] 以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該 分野における周知慣用技術力もその実施形態などを適宜実施することができ、本発 明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
[0020] 従って、本発明のこれらおよび他の利点は、添付の図面等を参照して、以下の詳 細な説明を読みかつ理解すれば、当業者には明白〖こなることが理解される。
発明の効果
[0021] 本発明は、脳機能の低下を改善または悪ィ匕を予防するため、および神経突起伸長 の促進またはシナプス形成を、特に、脳梗塞領域またはその周囲における状態の改 善のための組成物を提供する。このような脳機能の制御に直接関わるような組成物も 神経突起伸長の促進またはシナプス形成を、特に、脳梗塞領域またはその周囲にお ける状態を改善するための糸且成物もこれまでに知られておらず、従って、本発明は、 従来にない格別の効果を示すことが示される。
図面の簡単な説明
[0022] [図 1]図 1は、処置プロトコルを示す。認知機能障害に対する肝 (実質)細胞増殖因子
(HGF)遺伝子の治療効果を試験するために、 HGFを、その発作の 7日後に注射し た。虚血後の第 56日において、認知機能障害を、モリスの水迷路および一回性受動 的回避学習によって評価した。
[図 2]図 2は、脳の核磁気共鳴像を示す。(a) T2強調画像によるラットの梗塞の体積 を示す。両方の群における差異は存在しな力つた。強度の高い領域は、梗塞領域を 示す。(b)ラット脳の前頭部の T2強調画像の代表的な画像である。これらの画像は、 3つの群に分類される。 A型:高い強度の領域が皮質および脳幹神経節 (基底核)に ぉ 、て見出される。 B型:高 、強度の領域が皮質にぉ 、て力または脳幹神経節の幾 つかの部分にぉ 、て見出される。 C型:高 、強度の領域が皮質および脳幹神経節の いくつかの部分において見出される。(c)各タイプにおけるラットの数。殆どのラットが A型であることを示し、殆どのものが B型および C型ではなかった。 A型における挙動 を解析した。(d)A型における梗塞の体積である。有意差は見出されない。
[図 3]図 3は、知覚運動欠損および自発運動を示す。(a)知覚運動欠損のスコアを示 す。知覚運動欠損は、各々の群において自発的に回復され、そして、有意差は存在 しな力つた。 (b)自発運動。中大脳動脈閉塞に供されたラットは、野外における交差 点数が増大した力 群の間で差異は存在しな力 た (ビヒクル処理ラットで n= 15、 H GF処置ラットで n= 17であり、擬似処理ラットで n= 10)。
圆 4]図 4は、モリスの水迷路試験を示す。(a)不可視プラットホーム試験。中大脳動 脈閉塞に供したラットは、擬似処理ラットと比較して不可視プラットホームにほとんど 到達しな力つた。第 4〜6日で、 HGF処置ラットは、ビヒクル処置したラットよりも速く到 達することができたことが顕著であった。(b)可視プラットホーム試験。不可視プラット ホーム試験と違って、両方の群におけるラットは、そのプラットホームに到達し得た。こ れらの群の間に有意差は存在しなかった(ビヒクルで n= 15, HGF処理ラットで n= 1 7、擬似処理ラット【こお!ヽて n= 10, 水 p< 0. 05)
[図 5]図 5は、一回性受動的回避学習を示す。(a)習得試験 (Acquisition trial)。 記憶の習得について必要とされる学習の数は、中大脳動脈梗塞に供したラットおい て有意に高力つた。しかし、ビヒクルと HGF処理ラットとの有意差は認められな力つた 。 (b)維持試験。照明室に滞在するラットの潜伏時間は、第 1日および第 3日では、ビ ヒクル処理ラットと比較して HGF処理ラットで長かった。(ビヒクル処理ラットで n= 15、 HGF処理ラットで n= 17、擬似処理ラットで n= 10, * p< 0. 05)。
[図 6]図 6は、 GFAPについて免疫組織ィ匕学を示す。第 14日および第 56日での、同
側の皮質における GFAPにつ ヽての免疫組織化学の代表的画像である。 HGF処理 ラットの梗塞周辺領域(# )において、免疫反応性は、第 14日で増大し、そして、第 5 6日で減少した。 IC :虚血中心(各群において n= 3であり、
ΐηである)。
[図 7]図 7は、 ΜΑΡ2陽性細胞または GFAP陽性細胞についての定量分析である。 皮質における、 ΜΑΡ2陽性細胞または GFAP陽性細胞の定量。 ΜΑΡ2陽性細胞の 数は 2群の間で差異はな力つた力 HGF処理ラットの GFAPに対する免疫反応性は 、ビヒクル処理ラットと比較して第 14日で高ぐそして、第 56日で低力つた。(ΡΙ :梗塞 周辺領域、 C :対側領域、各々群において η= 3である。 * ρ< 0. 05, * * ρ< 0. 01 である)。
[図 8]図 8は、 Cdc42についての免疫組織ィ匕学を示す。(a)第 14日での同側の皮質 における Cdc42についての免疫組織ィ匕学の代表的画像である。 Cdc42に対する免 疫反応性の数は、 HGF処理マウスにおける梗塞周辺領域(# )において有意に増大 した。(IC :虚血中心, Β&Γ= 100 ^ ΠΙ) ο (b) Cdc42免疫反応性細胞についての定 量分析。この数は、梗塞周辺領域(# )において計数した。 HGF処理ラットは、 Cdc4 2免疫反応性細胞の増大を示す。(各群において n= 3である。 * p< 0. 05)。
[図 9]図 9は、 ALP染色の代表的な図である。同側皮質における ALPによって染色さ れる冠状切片。梗塞周辺領域(# )の動脈の構造は、第 14日では変わっていなかつ た。しかし、 HGF処理したラットの動脈は、第 56日でより複雑なパターンを示した (IC :虚血中心)。
[図 10]図 10は、 ALP染色の定量分析を示す。皮質での ALPによって染色した血管 の定量を示す。血管の面積および長さは、第 14日で異なっており、それらは、第 56 日にて HGF処理ラットで有意に増大した(n= 3, * p< 0. 05)。
[図 11]図 11は、コントロール遺伝子または HGF遺伝子を投与したときの、梗塞領域 および対側領域における Cdc42およびシナプトフイシンについての免疫組織ィ匕学の 代表的画像である。 aは、領域を Cdc42について免疫染色した結果を示し、 aの左側 は、梗塞領域を示し、 aの右側は対側領域を示す。 aの上段は、コントロール遺伝子( ベクター)を投与した結果を示し、 aの下段は、 HGF遺伝子を投与したときの結果を 示す。 ICは、虚血中心であり、 #は梗塞周辺領域を示し、バーは、 100 μ mを示す。
bは、梗塞領域 (Pi)および対側領域 (C)における Cdc42陽性細胞数を示す。 *は、 統計学的有意を示す (P< 0. 05)。斜線は、 HGF遺伝子投与群を示し、水玉模様は コントロールベクター群を示す。 cは、領域をシナプトフイシンについて免疫染色した 結果を示し、 cの左側は、梗塞領域を示し、 cの右側は対側領域を示す。 cの上段は、 コントロール遺伝子 (ベクター)を投与した結果を示し、 cの下段は、 HGF遺伝子を投 与したときの結果を示す。バーは 100 mを示す。 dは、梗塞領域 (Pi)および対側領 域 (C)におけるシナプトフイシン陽性細胞数を示す。 *は、統計学的有意を示す (p < 0. 05)。斜線は、 HGF遺伝子投与群を示し、水玉模様はコントロールベクターを 示す。
配列表の説明
[0023] (配列表)
配列番号 1 :HGFの核酸配列
配列番号 2: HGFのァミノ配列
配列番号 3: VEGFの核酸配列
配列番号 4: VEGFのアミノ酸配列
配列番号 5: aFGFの核酸配列
配列番号 6: aFGFのアミノ酸配列
配列番号 7 :pcDNA3. 1 (-) HGF
配列番号 8 :pVAXlHGFZMGBl
発明を実施するための最良の形態
[0024] 以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであ り、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、 当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことが できることは明らかである。
[0025] 以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により記載 する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形 の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の表現 (例えば、英語の 場合は「a」、 「an」、 「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含む
ことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及 しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきであ る。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語お よび科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解される のと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書 (定義を含めて)が優先する。
[0026] (定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
[0027] 本明細書にぉ 、て「脳機能」とは、大脳の!/、くつものパートが共同して行う複雑な活 動をいい、例えば、言語機能、認知機能、運動機能、記憶機能、学習機能、注意機 能などを挙げることができる。
[0028] 本明細書において、「認知機能」とは、ある生物が、他の生物の同一性を識別する ことができる能力をいう。「認知機能」は、例えば、行動試験、自発活動試験、モリスの 水迷路試験などによって確認することができる。
[0029] 本明細書にお!、て「運動機能」とは、神経または脳が、運動を司ることを 、う。「運動 機能」は、例えば、行動試験、自発活動試験、モリスの水迷路試験などによって確認 することができる。
[0030] 本明細書において「記憶機能」とは、脳または神経系が、以前に受けた状態または 情報について、記録しておく機能をいう。「記憶機能」は、例えば、行動試験、モリス の水迷路試験、受動回避学習などによって確認することができる。
[0031] 本明細書において、「学習機能」とは、脳または神経系が、以前に受けた状態を記 録し、そして利用することができる機能をいう。「学習機能」は、例えば、行動試験、モ リスの水迷路試験、受動回避学習などによって確認することができる。
[0032] 本発明において使用される「肝 (実質)細胞増殖因子」(HGF)とは、例えば、 Natu re, 342, 440 (1989)、特許第 2577091号公報、 Biochem. Biophys. Res. Co mmun. , 163, 967 (1989)、 Biochem. Biophys. Res, Commun. , 172, 321 (1990)などに記載されている。代表的な配列を、配列番号 1および 2 (それぞれ、核 酸およびアミノ酸の配列)に示す。そのような HGFを発現させる際には、 HGFの cD NAを後述の如き適当な発現ベクター(非ウィルスベクター、ウィルスベクター)に組
み込んだものを使用することができる。ここで HGFをコードする cDNAの塩基配列は 、前記文献に記載されている他、 Genbank等のデータベースにも登録されている。 従ってこれらの配列情報に基づき適当な DNA部分を PCRのプライマーとして用い、 例えば肝臓や白血球由来の mRNAに対して RT— PCR反応を行うことなどにより、 H GFの cDNAをクロー-ングすることができる。これらのクロー-ングは、例えば Molec ular Cloning 2nd Edt. , Cold Spring Harbor LaboratoryPress (1989) 等の基本書に従い、当業者ならば容易に行うことができる。
[0033] さらに、本発明の HGFは前述のものに限定されず、発現されるタンパク質が HGFと 実質的に同じ作用を有するタンパク質である限り、本発明の HGFとして使用できる。 例えば、前記 cDNAによりコードされるタンパク質等の公知の HGFタンパク質のアミ ノ酸配列に対して、 1もしくは複数 (好ましくは数個)のアミノ酸配列が置換、欠失およ び Zまたは付加されたアミノ酸配列力もなるタンパク質であって、 HGFと実質的に同 じ作用を有するタンパク質もまた、本発明の HGFに包含される。
[0034] また、これらのタンパク質をコードする核酸(DNAおよび RNA)を、上記タンパク質 に代えて本発明に用いることができる。なお、本明細書中、細胞増殖因子について 言う「タンパク質形態」とは、細胞増殖因子そのもの(すなわち、タンパク質)またはそ れと実質的に同じ作用を有するタンパク質を指し、「核酸形態」とは、細胞増殖因子 そのものまたはそれと実質的に同じ作用を有するタンパク質をコードする核酸、また はこの核酸とストリンジェントな条件下でノ、イブリダィズする核酸 (本明細書中、これら の拡散を遺伝子と表記する場合がある)を含み、被験体に投与された場合、該核酸 がコードするタンパク質が被験体で発現される形態にあることを指す。「核酸形態」で 被験体に投与された場合、該核酸がコードするタンパク質が被験体内で発現され、 該タンパク質が細胞増殖因子としての作用を発揮する。
[0035] 本発明において使用される「血管内皮増殖因子 (VEGF)」は、例えば、 Science, 219, 983 (1983)、 J. Clin. Invest. , 84, 1470 (1989)、 Biochem. Biophys. Res. Commun. , 161, 851 (1989)などに記載されている。代表的な配列を、配 列番号 3および 4に示す (それぞれ、核酸およびアミノ酸の配列)。 VEGFは、例えば 、 VEGFの cDNAを後述の如き適当な発現ベクター(非ウィルスベクター、ウィルス
ベクター)に組み込んだものを使用することにより調製することができる。 VEGFは、ヒ トにおいては転写に際しての選択的スプライシングにより、 4種類のサブタイプ (VEG F121、 VEGF165、 VEGF189、 VEGF206)の存在が報告されている(Science, 219, 983 (1983)、 J. Clin. Invest. , 84, 1470 (1989)、 Biochem. Biophys. Res. Commun. , 161, 851 (1989) )。本発明においてはこれらのいずれの VEG Fをも使用することが可能である力 生物学的に最も活性が強いという観点から、 VE GF165遺伝子がより好ましい。さらに前記の HGFの場合と同様に、これら VEGFの 遺伝子に対して改変等を施した遺伝子であっても、 VEGFとしての作用を有するタン ノ ク質をコードする遺伝子である限り、本発明の VEGFの範疇に含まれる。
[0036] VEGFも HGFと同様に、文献(例えば Science, 246, 1306 (1989) )記載の配列 およびデータベースに登録されている配列情報に基づき、当業者ならば容易にクロ 一-ングすることができ、またその改変等も容易に行うことができる。
[0037] 本明細書において「繊維芽細胞増殖因子 (FGF)」は、例えば、 Dilber MS, et al. (1994) Exp Hematol 22 (12) : 1129— 33に記載されており、種々の正 常細胞,癌細胞中で発現している.遺伝子産物は,へパリンに対する強い結合性を 示すなど,構造ならびに機能の類似した少なくとも bFGF (basic)、 aFGF (acidic) , i nt—2遺伝子産物の FGF3, K—fgfZhstl遺伝子産物の FGF4, FGF5, hst2遺 伝子産物の FGF6,角化細胞増殖因子(keratinocyte growth factor, KGF) , アンドロゲン誘導増殖因子 (AIGF) , FGF9の 9種類の関連した増殖因子が知られて いる。代表的な配列を、配列番号 5および 6に示す (それぞれ、核酸およびアミノ酸の 配列 = aFGF)。
[0038] 本明細書にぉ 、て「血管新生」とは、血管が新たに形成されることおよびそのように 形成する活性をいう。
[0039] 本明細書において用いられる「血管新生作用(活性)」とは、ある因子が標的に作用 したとき、その標的において血管を新たに形成する能力をいう。
[0040] 本明細書にぉ 、て「神経突起伸長」とは、任意の神経の突起が伸長することを 、 、 、顕微鏡などによって神経の突起を観察し、実質的な突起伸長の存在により確認さ れる。
[0041] 本明細書にぉ 、て「シナプス」とは、ニューロン相互または-ユーロンと他細胞間の 接合関係 (シナプス結合)、またはその接合部位をいう。シナプスは、電子顕微鏡の観 察により観察され得、例えば、シナプスを定義する主な指標としては、(1)シナプス小 胞; (2)シナプス間隙; (3)シナプス前膜および下膜 (後膜)の肥厚の存在等を挙げること ができる。従って、本明細書では、「シナプス形成」とは、シナプスが無力つた場所に シナプスが形成されることを ヽ、上記方法に基づきシナプスの不存在および存在 を確認することによって形成した力どうかを確認することができる。
[0042] 本明細書において「センダイウィルス」または「HVJ」(Hemagglutinating virus of Japan)とは、互換的に用いられ、パラミクソウィルス科パラミクソウィルス属に属す る、細胞融合作用を有するウィルスをいう。 M. Kuroyaら(1953)がセンダイウィルス として報告した。ゲノムは,約 15500塩基長のマイナス鎖 RNAである。センダイウイ ルスのウィルス粒子にはエンベロープがあり、直径 150〜300nmの多形性を示す。 センダイウィルスは、 RNAポリメラーゼを有する。熱に不安定で,ほとんどあらゆる種 類の赤血球を凝集し、溶血性も示す。発育鶏卵および Zまたは各種動物の腎臓由 来培養細胞の細胞質中で増殖する。センダイウィルスは、株細胞に感染させた場合 は持続感染を起こしやすい。種々の細胞を融合する能力をもつことから、細胞のへテ ロカリオン形成、雑種細胞の作製などの細胞融合に広く利用されて 、る。
[0043] 本明細書にぉ 、て「(ウィルス)エンベロープ」とは、センダイウィルスなどの特定の ウィルスに存在するヌクレオキヤプシドの周囲を取り囲む脂質二重層を基本とする膜 構造をいう。エンベロープは、通常、細胞から出芽によって成熟するウィルスにみら れる。エンベロープは、概してウィルス遺伝子によりコードされたスパイクタンパク質か らなる小突起構造物と宿主由来の脂質とからなる。したがって、「(ウィルス)ェンベロ ープベクター」は、エンベロープをベクター(運び屋)として利用する際の名称であり、 本明細書では、場合に応じて(ウィルス)エンベロープと互換可能に使用され得る。
[0044] 中枢神経系(CNS)への遺伝子 (すなわち、本発明における細胞増殖因子の核酸 形態のもの)の移入は、アデノ随伴ウィルス(AAV) (Fan D, et al. , Neurosci L ett. 1998 ; 248 : 61—4)、レトロウイルス(Franceschini IA, et al. , J Neurosc i Res. 2001 ; 65 : 208— 19)、アデノウイルス(Miyaguchi K, Maeda Y, Colli
n C, Sihag RK. , Brain Res Bull. 2000 ; 51 : 195— 202. ) ,および単純疱 疼ウイルス 1 (Johnson PA, Yoshida K, Gage FH, Friedmann T. , Brain Res Mol Brain Res. 1992 ; 12 : 95— 102. )を含む種々のウィルスベクターを 用いて達成されている。これらのベクター系は、ヒト遺伝子治療に関して利点および 不利益を有する。これらの方法は、中枢神経系へのインビボ遺伝子移入には有効で あるが、安全性および産生量のような多数の問題が、特にヒトの場合の遺伝子治療に 関して生じている。 HVJ— Eベクターは、いずれもの明らかな毒性も伴わずに、遺伝 子を中枢神経系にトランスフエタトする高い効力を有する。 HVJ— Eベクターは、本発 明において利用され得る。
[0045] これらの問題を克服するために、本発明者らは、非ウィルスベクター系である、 HVJ
(Hemaggiutinatmg Virus of Japan=セングイウイノレス Jェンべ口 ~~プべクタ ~~ 上述のように開発し、利用している。このベクター系は、ウィルスエンベロープおよび リボソームを用いた第 1世代の HVJベースの遺伝子移入 (HVJリボソーム方法)(Ya mada K, et al. , Am J Physiol. 1996 ; 271 :R1212- 20 ;Kaneda Y, et al. , Exp Cell Res. 1987 ; 173 : 56— 69.; Hこ基づ ヽて開発された。第 1世代の HVJベクターは、ラットおよび霊長類の中枢神経系へのトランスフエクシヨンに対して 大きな可能性を有する力 s (Yamada K. et al.前出; Hagihara Y, et al. , Gen e Ther. 2000 ; 7 : 759-63. )、複雑な手順および保存の困難さなどの理論上の 不利益がある。新規の非ウィルスベクター系である、 HVJ—エンベロープ(HVJ— E) ベクターは、外来遺伝子を移入するために HVJのエンベロープのみを利用する。
[0046] 本明細書にぉ 、て「不活性化」とは、ウィルス(例えば、センダイウィルス)につ!/ヽて 言及されるとき、ゲノムが不活性化されることをいう。不活性化されたウィルスは、複製 欠損である。不活性化は、本明細書において記載される方法 (例えば、アルキル化な ど)によって達成される。そのような不活性ィ匕の方法としては、例えば、(a)ウィルス( 例えば、 HVJ)をアルキル化剤で処理して不活性ィ匕する工程、(b)ウィルスまたは不 活性化されたウィルスの濃縮液を得る工程、並びに (c)ウィルスまたは不活性ィ匕され たウィルスをカラムクロマトグラフィー次いで限外濾過により精製する工程を含む方法 、ならびにこれらの工程の順序を入れ替えた方法などが挙げられるがそれらに限定さ
れない。
[0047] 本明細書にお!、て「アルキル化」とは、有機化合物の水素原子をアルキル基で置 換する作用を有すことをいい、「アルキル化剤」(alkylating agent)とは、アルキル 基を与える化合物をいう。アルキル化剤としては、例えば、ハロゲンィ匕アルキル,硫酸 ジアルキル、スルホン酸アルキル、アルキル亜鉛などの有機金属化合物が挙げられ る。好ましいアルキル化剤としては、 13—プロピオラタトン、ブチロラタトン、ヨウ化メチ ル、ヨウ化工チル、ヨウ化プロピル、臭化メチル、臭化工チル、臭化プロピル、ジメチ ル硫酸、ジェチル硫酸などが挙げられるがそれらに限定されな ヽ。
[0048] 1つの局面において、本発明はまた、脳機能の改善または悪ィ匕の予防のための方 法または治療に関する。
[0049] 別の局面において、本発明は、神経突起伸長の促進またはシナプス形成 (特に、 脳梗塞領域またはその周囲において生じるものを対象とするがそれに限定されない 。)のための方法または治療に関する。
[0050] 本発明の薬学的組成物および医薬の投与は、経口または非経口により達成される 。非経口送達の方法としては、局所、動脈内(例えば、頸動脈を介する)、筋肉内、皮 下、髄内、クモ膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または鼻孔内の投与が挙げら れる。本発明は、処置部位に到達する経路であれば、どのような経路でもよい。
[0051] 本明細書にぉ 、て「遺伝子治療」または「遺伝子療法」とは、患者に核酸 (例えば、 DNA)を導入することにより疾患を治療しょうとする方法をいう。遺伝子治療には、裸 で核酸を注入する工程を利用する方法もあるが、何らかのベクターを利用することが 多ぐ本発明では、ウィルスエンベロープをそのようなベクターとして使用し得る。遺 伝子治療は、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行わ れる。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコ—ドタンパク質を産生し 、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
[0052] 当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用 され得る。例示的な方法は、遺伝子治療の方法の一般的な概説書である、 Goldspie Let al. , Clinical Pharmacy 12 :488— 505 (1993); Wu and Wu, Biot herapy 3 : 87— 95 (1991); Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol.
32 : 573- 596 (1993); Mulligan, Science 260 : 926— 932 (1993);なら びに Morgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem. 62 : 191— 217 (1993) ; May, TIBTECH 11 (5) : 155— 215 (1993)【こ記載されて!ヽる。遺伝子、治療 において使用される一般的に公知の組換え DNA技術は、 Ausubelら(編), Curren t Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993); および Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manua 1, Stockton Press, NY (1990)に記載される。
[0053] 本発明の一つの実施形態では、導入にはウィルスエンベロープが使用され得るが 、ウィルスエンベロープに加えて、本発明の組成物および医薬は、賦形剤または薬 学的に使用できる製剤を調製するために、エンベロープのプロセシングを促進する 他の化合物を含む、適切な、薬学的に受容可能なキャリアーを含み得る。
[0054] 本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬を製造す るときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのよ うな薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、増量 剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントなど が挙げられるがそれらに限定されな 、。
[0055] 本発明の薬学的組成物および医薬は、任意の無菌生体適合性薬学的キャリア(生 理食塩水、緩衝化生理食塩水、および水を含むが、それらに限定されない)中で投 与され得る。これらの分子のいずれも、アジュバント、および zまたは薬学的に受容 可能なキャリアと混合する薬学的組成物中にて、単独で、あるいは他の薬剤と組み合 わせて患者に投与され得る。本発明のある実施形態において、薬学的に受容可能な キャリアは薬学的に不活性である。
[0056] 非経口投与用の薬学的製剤は活性ィ匕合物の水溶液であってもよ!/、。注射のため に、本発明の薬学的組成物は水溶液、好ましくはハンクスの溶液、リンゲル溶液、ま たは緩衝化生理食塩水のような生理学的に適合する緩衝液中に処方され得る。さら に、活性化合物の懸濁物は、リボソームを含み得る。
[0057] 本発明の薬学的組成物は、本発明のエンベロープが意図される目的を達成するの に有効な量で含有される組成物を含む。「治療的有効量」または「薬理学的有効量」
は当業者に十分に認識される用語であり、意図される薬理学的結果を生じるために 有効な薬剤の量をいう。従って、治療的有効量は、処置されるべき疾患の症状を軽 減するのに十分な量である。所定の適用のための有効量 (例えば、治療的有効量) を確認する 1つの有用なアツセィは、標的疾患の回復の程度を測定することである。 実際に投与される量は、処置が適用されるべき個体に依存し、好ましくは、所望の効 果が顕著な副作用をともなうことなく達成されるように最適化された量である。治療的 有効用量の決定は十分に当業者の能力内にある。
[0058] いずれの化合物についても、治療的有効用量は、最初に、細胞培養アツセィまた は任意の適切な動物モデルのいずれかにおいて、見積もられ得る。動物モデルはま た、所望の濃度範囲および投与経路を達成するために用いられる。次いで、このよう な情報を用いて、ヒトにおける投与に有用な用量および経路を決定することができる
[0059] 治療的有効量とは、疾患の程度または状態を軽減するエンベロープの量を 、う。こ のような化合物の治療効果および毒性は、細胞培養または実験動物における標準 的な薬学的手順 (例えば、 ED 、集団の 50%において治療的に有効な用量;およ
50
び LD 、集団の 50%に対して致死的である用量)によって決定され得る。治療効果
50
と毒性効果との間の用量比は治療係数であり、それは比率 ED ZLD
50 50として表され 得る。大きな治療係数を呈する薬学的組成物が好ましい。細胞培養アツセィおよび 動物実験力も得られたデータ力 ヒトでの使用のための量の範囲を公式ィ匕するのに 使用される。このような化合物の用量は、好ましくは、毒性をほとんどまたは全くともな わない ED を含む循環濃度の範囲内にある。この用量は、使用される投与形態、患
50
者の感受性、および投与経路に依存してこの範囲内で変化する。一例として、ェン ベロープの投与量は、年齢その他の患者の条件、疾患の種類、使用するェンベロー プの種類等により適宜選択される。
[0060] ヒトに本発明のエンベロープベクターを利用して細胞増殖因子を投与する場合、 1 被験体あたり、 400〜400, OOOHAU相当の、好ましくは 1, 200〜120, OOOHAU 相当の、より好ましくは 4, 000〜40, OOOHAU相当のエンベロープベクターが投与 され得る。投与されるエンベロープ中に含まれる外来遺伝子の量は、 1被験体あたり
、 2〜2, 000 μ g、好ましくは 6〜600 μ g、より好ましくは 20〜200 μ gであり得る。
[0061] 本明細書にぉ 、て「HAU」とは、 -ヮトリ赤血球 0. 5%を凝集可能なウィルスの活 性をいう。 1HAUは、ほぼ 2400万ウィルス粒子に相当する(Okada, Y.ら、 Biken Journal 4, 209— 213、 1961)。上記の量は、例えば、 1日 1回から数回投与する ことができる。
[0062] 正確な用量は、治療されるべき患者を考慮して、個々の臨床医によって選択される 。用量および投与は、十分なレベルの活性部分を提供するか、または所望の効果を 維持するように調整される。考慮され得るさらなる因子としては、疾患状態の重症度( 例えば、腫瘍のサイズおよび位置;患者の年齢、体重、および性別;投与の食餌制限 時間、および頻度、薬物組合せ、反応感受性、および治療に対する耐性 Z応答)が 挙げられる。特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて、持続作用性薬学 的組成物は、 3〜4日毎に、毎週、 2週間に 1回、または 1ヶ月の 1回投与され得る。特 定の用量および送達の方法に関するガイダンスは当該分野で公知の文献に提供さ れている。
[0063] 本発明の方法において使用される組成物および医薬の量は、使用目的、対象疾 患 (種類、重篤度など)、被験体の年齢、体重、性別、既往歴、細胞生理活性物質の 形態または種類、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定する ことができる。
[0064] 本発明の方法を被検体 (または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾 患 (種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを 考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日 数 ヶ月に 1回(例えば、 1週間に 1回 1ヶ月に 1回)の投与が挙げられる。 1週間 1ケ 月に 1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
[0065] 本発明の組成物および医薬は、ヒト用途でも使用され得るが、その他の宿主 (例え ば、哺乳動物など)を対象として使用されてもよい。
[0066] 本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手 法は、当該分野において周知であり、慣用されるものであり、例えば、 Ausubel F. A.ら編 (1988)、 Current Protocols in Molecular Biology、 Wilev、 New
York、 NY; Sambrook Jら (1987) Molecular Cloning: A Laboratory M anual, 2nd Ed. , Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY、別冊実験医学「遺伝子導入 &発現解析実験法」羊土社、 1997など に記載される。
[0067] 本発明では、脳内に細胞増殖因子を送達する方法であって、 1)頭部または頸部の 動脈を一過的に閉鎖する工程;および 2)該頭部または頸部の動脈が閉鎖されて 、 る間に、細胞増殖因子を脳内に導入する工程、を包含する方法を利用することがで きる。ここで、一過的に動脈を閉鎖することによって、細胞増殖因子が脳内に効率よく (例えば、 2倍以上)導入される。一過的に閉鎖する方法は、バルーンカテーテル、ク リツビング、生理的には脳梗塞などが挙げられる。バルーンカテーテル、クリッピング が好ましい。一過的とは、ここでは、細胞増殖因子を投与するのに十分な時間(例え ば、少なくとも 1分、少なくとも 5分など)である力 好ましくは、 1〜120分間であり得る
[0068] 本発明は、脳機能障害の処置のための医薬を製造するための使用に関する。この 使用において、細胞増殖因子として好ましい実施形態は、本明細書において記載さ れる任意の形態が使用され得る。
[0069] 製剤中の DNAの含量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調節 することができるが、通常、本発明の DNAとして 0. 0001— 100mg、好ましくは 0. 0 01— 10mgであり、これを数日ないし数ケ月に 1回投与するのが好ましい。
[0070] (好ま 、実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であ り、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべ きである。
[0071] 本発明は、 HGF、 VEGF、 FGFなどの細胞増殖因子により、脳機能障害が改善ま たは予防されることを初めて明らかにした。従来は、脳の生理的現象として、血管、細 胞レベルでの結果は出ていたが、脳がシステム全体として機能 (特に、記憶機能など )が改善されることが本発明において初めて明らかにされた。従って本発明は、 HGF または VEGFを導入することによって、機能レベルの改善または予防を実証した。従
つて HGFおよび VEGFは、脳虚血に起因する脳機能低下または障害、脳の血流量 低下に起因する脳機能低下または障害等の、種々の脳機能低下または障害に対す る治療または予防剤として、有効に使用される。
[0072] 具体例として、脳血管閉塞、脳梗塞、脳血栓、脳塞栓、脳卒中(クモ膜下出血や一 過性脳虚血、脳動脈硬化症などを含む)、脳出血、もやもや病、頭部外傷、脳血管性 痴呆、アルツハイマー型痴呆、脳出血後遺症または脳梗塞後遺症などに起因する、 脳機能低下または障害を治療または予防する薬剤として有効に使用される。
[0073] また、例えばアルツハイマー病、アルッノ、イマ一型老年痴呆症、筋萎縮性側索硬 化症、あるいはパーキンソン氏病といった神経変性疾患に起因する脳機能低下また は障害を治療または予防する薬剤としても、有効に使用することができる。
[0074] 本発明にお!/、ては、 HGF、 VEGF, FGFなどは各々単独で用いることもできれば、 または、両者を併用して使用することも可能である。また、他の血管内皮増殖因子の 遺伝子と共に用いることもできる。さらに、 HGF、 VEGF, FGFなどの核酸形態と、 H GF、 VEGF, FGFなどのタンパク質とを併用することも可能である。好ましくは HGF 核酸形態と HGFタンパク質との組み合わせ、または VEGF核酸形態と VEGFタンパ ク質との組み合わせであり、さらに好ましくは HGF核酸形態と HGFタンパク質との組 み合わせである。
[0075] なお、ここで用いる HGFタンパク質としては、医薬として使用できる程度に精製され たものであれば如何なる方法で調製されたものでも良ぐまた市販品(例えば東洋紡 績株式会社、 CodeNo. HGF— 101等)を使用することもできる。前記クローユング により得られた HGFの cDNAを適当な発現ベクターに挿入し、これを宿主細胞に導 入して形質転換体を得、この形質転換体の培養上清から目的とする組換え HGFタン パク質を得ることができる(例えば Natue, 342, 440 (1989)、特許第 2577091号 等参照)。また VEGFタンパク質も同様にして得ることができる。
[0076] FGFは、科研製薬から市販されるものまたは GenBankにおいて得られた配列から 作製して使用することができる。
[0077] 次に、本発明の遺伝子治療において用いられる遺伝子導入方法、導入形態およ び導入量等にっ ヽて具体例を記述する。
[0078] HGFの cDNAを発現しうる形で含む発現ベクターなど、核酸形態にある HGFなど の増殖因子を有効成分とする組成物を患者に投与する場合、その投与形態としては 非ウィルスベクターを用いた場合と、ウィルスベクターを用いた場合の二つに大別さ れ、実験手引書などにその調製法、投与法が詳しく解説されている (別冊実験医学, 遺伝子治療の基礎技術,羊土社, 1996、別冊実験医学,遺伝子導入 &発現解析 実験法,羊土社, 1997、 日本遺伝子治療学会編遺伝子治療開発研究ハンドブック 、ェヌ 'ティー ·エス, 1999)。以下、具体的に説明する。
[0079] A.非ウィルスベクターを用いる場合 慣用の遺伝子発現ベクターに目的とする遺 伝子が組み込まれた組換え発現ベクターを用いて、以下のような手法により目的遺 伝子を細胞や組織に導入することができる。
[0080] 細胞への遺伝子導入法としては、リボフヱクシヨン法、リン酸 カルシウム共沈法、 D EAE デキストラン法、微小ガラス管を用いた DNAの直接注入法などが挙げられる 。また、組織への遺伝子導入法としては、内包型リボソーム(internaltypeliposome )による遺伝子導入法、静電気型リボソーム(electrostatictypeliposome)〖こよる遺 伝子導入法、 HVJ—リボソーム法、改良型 HVJ—リボソーム法 (HVJ— AVEリポソ一 ム法)、レセプター介在性遺伝子導入法、パーティクル銃で担体 (金属粒子)とともに DN A分子を細胞に移入する方法、 naked— DN Aの直接導入法、正電荷ポリマー による導入法等のいずれかの方法に供することにより、組換え発現ベクターを細胞内 に取り込ませることが可能である。
[0081] このうち HVJ—リボソームは、脂質二重膜で作られたリボソーム中に DNAを封入し 、さらにこのリボソームと不活化したセンダイウィルス(Hemagglutinating virus of Japan :HVJ)とを融合させたものである。当該 HVJ—リボソーム法は従来のリポソ一 ム法と比較して、細胞膜との融合活性が非常に高いことを特徴とするものであり、好ま LV、導入形態である。 HVJ—リボソームの調製法にっ 、ては文献 (実験医学別冊, 遺伝子治療の基礎技術,羊土社, 1996、遺伝子導入 &発現解析実験法,羊土社, 1997、 J. Clin. Invest. 93, 1458— 1464 (1994)、 Am. J. Physiol. 271, R12 12— 1220 (1996) )などに詳しく述べられており、また後述の実施例にも詳しく記載 されているため、それらを参照されたい。なお HVJとしては Z株 (ATCCより入手可能
)が好ましいが、基本的には他の HVJ株(例えば ATCC VR- 907, ATCC VR- 105など)も用いることができる。
[0082] さらに、 naked— DNAの直接導入法は、上記手法のうち最も簡便な手法であり、こ の観点力も好まし 、導入法である。
[0083] ここで用いられる発現ベクターとしては、生体内で目的遺伝子を発現させることので きるベクターであれば如何なる発現ベクターであっても良いが、例えば pCAGGS (G ene 108, 193— 200 (1991) )や、 pBK—CMV、 pcDNA3. l、pZeoSV (インビ トロゲン社、ストラタジーン社)などの発現ベクターが挙げられる。
[0084] B.ウィルスベクターを用いる場合 ウィルスベクターとしては、組換えアデノウィル ス、レトロウイルス等のウィルスベクターを用いた方法が代表的なものである。より具体 的には、例えば、無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウィルス、へ ルぺスウィルス、ワクシニアウィルス、ボックスウィルス、ポリオウイルス、シンビスウイノレ ス、センダイウィルス、 SV40、免疫不全症ウイノレス (HIV)等の DNAウィルスまたは R NAウィルスに目的とする遺伝子を導入し、細胞に組換えウィルスを感染させることに よって、細胞内に遺伝子を導入することが可能である。
[0085] 本発明の遺伝子治療剤の患者への導入法としては、遺伝子治療剤を直接体内に 導入する in vivo法、および、ヒトからある種の細胞を取り出して体外で遺伝子治療 剤を該細胞に導入し、その細胞を体内に戻す ex vivo法がある(日経サイエンス、 1 994年 4月号、 20— 45頁、月刊薬事、 36 (1) , 23— 48 (1994)、実験医学増刊、 1 2 (15)、 (1994)、日本遺伝子治療学会編 遺伝子治療開発研究ハンドブック、ェヌ 'ティ一.エス、 1999)。本発明では、 in vivo法が好ましい。
[0086] 患者への投与部位としては、治療目的の疾患、症状などに応じた適当な投与部位 が選択される。例えば、頭蓋内へ直接穴を開けて遺伝子を導入する方法の他、側脳 室への投与、あるいはクモ膜下腔または大槽内への投与などが挙げられる。このうち クモ膜下腔への投与は、本発明において開示された効率的な投与法であり、本発明 の目的、すなわち脳の血流量低下を血管新生で治療し、および Zまたは脳の神経 細胞死を抑制しょうとする際には、クモ膜下腔への投与が好ましい。
[0087] 製剤形態としては、上記の各投与形態に合った種々の製剤形態 (例えば液剤など)
をとり得る。例えば有効成分である遺伝子を含有する注射剤とされた場合、当該注射 剤は常法により調製することができ、例えば適切な溶剤 (PBS等の緩衝液、生理食塩 水、滅菌水等)に溶解した後、必要に応じてフィルタ一等で濾過滅菌し、次いで無菌 的な容器に充填することにより調製することができる。当該注射剤には必要に応じて 慣用の担体等をカ卩えても良い。また、 HVJ—リボソーム等のリボソームにおいては、 懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤などのリボソーム製剤の形態とすることができ る。
[0088] また、疾患部位の周囲に遺伝子を存在し易くするために、徐放性の製剤(ミニペレ ット製剤等)を調製し患部近くに埋め込むことも可能であり、ある 、はォスモチックボン プなどを用いて患部に連続的に徐々に投与することも可能である。
[0089] 従って、 1つの局面において、本発明は、細胞増殖因子を含む、脳機能の悪化を 予防するか、または脳機能を改善するための組成物を提供する。従来、細胞増殖因 子力 脳の血管系などの物理的または外面的な改善を支持することは示されてきて いるが、機能が実際に改善されたとの報告はない。また、神経ネットワークの機能は、 外面的な改善 (例えば、血管の新生)だけでは、改善されるとは言えず、また、その連 関関係も明らかでない。従って、たとえ、血管の新生がある因子によって観察されて いたとしても、実際の機能改善が証明されない限り、機能の改善または悪化の予防 に効果があるとは予測できない。従って、本発明は、当業者に予想外の格別の効果 を示すということができる。本発明は、脳機能の改善または悪ィ匕の予防という従来達 成できなかった効果を達成する。本発明では、 HGFなどの増殖因子の脳への投与 により、モリスの水迷路試験において機能改善が示された。
[0090] あるいは、別の局面において、本発明は、細胞増殖因子を有効成分として含む、神 経突起伸長の促進またはシナプス形成のための組成物を提供する。従来、細胞増 殖因子力 脳の血管系などの物理的または外面的な改善を支持することは示されて きているが、神経突起伸長の促進またはシナプス形成が改善されたとの報告はない 。また、神経ネットワークの機能は、外面的な改善 (例えば、血管の新生)だけでは、 改善されるとは言えず、また、その連関関係も明らかでない。従って、たとえ、血管の 新生がある因子によって観察されていたとしても、実際の神経突起伸長またはシナプ
ス形成改善が証明されない限り、機能の改善または悪ィ匕の予防に効果があるとは予 測できない。従って、本発明は、当業者に予想外の格別の効果を示すということがで きる。本発明は、神経突起伸長の促進またはシナプス形成が改善されたという従来 達成できなカゝつた効果を達成する。本発明では、 HGFなどの増殖因子の脳などのへ の投与により、神経突起伸長の促進またはシナプス形成が促進されたことが見出さ れた。
[0091] 1つの実施形態において、本発明で用いられる細胞増殖因子は、血管増殖作用を 有することが好ましぐそのような細胞増殖因子としては、例えば、代表的に、 VEGF 、 FGFおよび HGFなどを挙げることができ、さらに好ましくは、 HGFが使用される。
[0092] このような細胞増殖因子は、ウィルスエンベロープとともに投与され得る。ここで、ゥ ィルスエンベロープとしては、どのような物を使用してもよいが、好ましくは、不活性化 されているものが使用される。ウィルスエンベロープのタイプとしては、どのようなもの でもよいが、好ましくは、 RNAウィルスのエンベロープが使用され得る。ここで、このゥ ィルスエンベロープは、パラミクソウィルス属のウィルスのエンベロープであることが好 ましぐより好ましくは、 HVJ (センダイウィルス)のエンベロープである望ましい。理論 に束縛されることは望まないが、遺伝子導入の効率がよく遺伝子治療により適切であ るからである力 本発明はそれに限定されないことが理解される。
[0093] 1つの実施形態では、本発明において使用される細胞増殖因子は、ウィルスェンべ ロープ中に含有される形態で提供される。
[0094] 本発明の組成物または方法が対象とし、改善または悪ィ匕予防が意図される脳機能 は、認知機能を含み、例えば、脳機能のうち認知機能または運動機能に障害を受け ているような状態にあるものが代表例として挙げられる。このような障害は、脳梗塞、 脳血流障害、脳出血または脳血管障害によって生じ、その結果、認知機能障害また は運動機能障害を受けて 、るものが例示される。
[0095] 別の実施形態では、本発明が対象とする脳機能は、記憶機能および空間学習機 能が挙げられる。特に、記憶機能および空間学習機能力 なる群より選択される機能 が改善されることを特徴とする薬物は、これまでほとんど知られておらず、その優位性 が留意されるべきである。理論に束縛されることは望まないが、この脳機能の改善は
、星状細胞の活性ィ匕により達成され得るがそれに限定されない。
[0096] 本発明において使用される細胞増殖因子は、最終的に脳で機能が発揮される限り 、どのような形態で投与されてもよいが、代表的には、タンパク質形態または核酸形 態で提供される。核酸形態で投与される場合、遺伝子治療の一形態と呼ばれる。
[0097] 本発明の組成物は、脳に送達され、機能の改善または悪ィ匕の予防が達成される限 り、どのような経路で投与されてもよいが、例えば、クモ膜下腔または大槽内投与であ ることが好ましい。
[0098] 本発明の特徴の一つは、脳機能の障害が発生してかなり時間が経過して (例えば、 1日以上、 2日以上、 3日以上、 4日以上、 5日以上、 6日以上、 7日以上など)も機能 を改善させる効果が見出された点にある。従って、障害の発生の数時間以内などの 緊急性を要しな 、点でその効果が認められるべきである。 1つの好ま 、実施形態と しては、例えば、脳機能の障害の発症後 6日以降 (すなわち、発症した日を第 1日と 数えた場合の第 7日以降)に投与される。
[0099] 特に、遺伝子治療形態として、本発明は、 1つの実施形態では、使用される細胞増 殖因子が核酸形態であり、し力も、脳機能の障害の発症後 6日以降に投与される形 態をとつても効果が認められる。
[0100] 別の局面において、本発明は、脳機能の悪ィ匕を予防するか、または脳機能を改善 するための方法であって: A)細胞増殖因子を患者に投与する工程、を包含する。本 発明の対象とする患者は、脳の機能 (高次機能、例えば、記憶または学習機能など) を有する生物 (例えば、げっ歯網、霊長網などの哺乳動物)であれば、どのような生 物を対象としてもよいことが理解される。好ましくは、ヒトを含む霊長類が対象とされ、 より好ましくはヒトが対象とされる。本発明は、脳機能の改善または悪ィ匕の予防という 用途において細胞増殖因子が有効であることを初めて示したという点でその意義は 深い。
[0101] あるいは、別の局面において、神経突起伸長の促進またはシナプス形成のための 方法であって: A)細胞増殖因子を該神経突起伸長の促進またはシナプス形成を必 要とする個体に投与する工程、を包含する、方法を提供する。本発明の対象とする 患者は、神経系 (神経突起成長またはシナプス形成が観察される系)を有する生物(
例えば、げっ歯網、霊長網などの哺乳動物)であれば、どのような生物を対象としても よいことが理解される。好ましくは、ヒトを含む霊長類が対象とされ、より好ましくはヒト が対象とされる。本発明は、脳梗塞領域またはその周囲において神経突起成長また はシナプス形成を促進させるという用途において細胞増殖因子が有効であることを初 めて示したと!、う点でその意義は深 、。
[0102] 本発明のこの方法において使用される細胞増殖因子は、本明細書において説明さ れる任意の組成物の形態を採り得ることが理解される。
[0103] 別の局面において、本発明は、脳機能の悪ィ匕を予防するか、または脳機能を改善 するための医薬を製造するにおける、細胞増殖因子の使用を提供する。本発明のこ の使用において使用される細胞増殖因子は、本明細書において説明される任意の 組成物の形態を採り得ることが理解される。好ましくは、この細胞増殖因子は、血管 内皮増殖因子 (VEGF)、線維芽細胞増殖因子 (FGF)および肝細胞増殖因子 (HG F)などを利用することができ、最も好ましくは肝細胞増殖因子 (HGF)を用いることが できる。
[0104] あるいは、別の局面において、本発明は、神経突起伸長の促進またはシナプス形 成のための医薬を製造するにおける、細胞増殖因子の使用を提供する。本明細書に おいて説明される任意の組成物の形態を採り得ることが理解される。好ましくは、この 細胞増殖因子は、血管内皮増殖因子 (VEGF)、線維芽細胞増殖因子 (FGF)およ び肝細胞増殖因子 (HGF)などを利用することができ、最も好ましくは肝細胞増殖因 子 (HGF)を用いることができる。
[0105] (投与方法例)
次に、実際の遺伝子の投与方法例を説明する。本発明は、以下のように実施しても 良いが、他の実施形態でも実験または投与することができることが理解される。
[0106] 実験 I. HGF、 VEGFによる脳の機能改善効果の検討のための実験プロトコル例 材料および実験方法
1)両側頸動脈の結紮
例えば、雄スプラーグ 'ドウリーラット(350〜400g ;Charles River Japan, 日本 国厚木巿)をペントバルビタールナトリウム(50mgZkg、腹腔内)で麻酔し、そして外
科手術の間中自然呼吸させることができる。頸部中線切開によって、両側頸動脈を 露出させ、そして 2— 0シルクで堅く結紮することができる。
[0107] 2) HVJ—リボソームコンプレックスの調製
HVJ—リボソームを調製するために使用した方法は、文献 (J. Clin. Invest. 93, 1 458— 1464 (1994)、 Am. J. Physiol. 271, R1212— 1220 (1996) )に記載され ている技術を使用することができる。簡単に述べると、ホスファチジルセリン、ホスファ チジルコリンおよびコレステロールを 1 : 4. 8 : 2の重量比で混合することができる。こ の脂質混合物(10mg)はロータリーエバポレーター内でテトラヒドロフランを除去して フラスコの側面に沈着させることができる。乾燥した脂質は、 目的遺伝子の挿入され た発現ベクターを有する 200 μ 1の平衡塩類溶液(BSS; 137 M NaCl、 5. 4 μ Μ KC1、 10 μ Μ Tris—HCl、 ρΗ7. 6)中で水和させることができる。対照群のリポソ ームは、 目的遺伝子の挿入のない発現ベクターを含有している(BSS200 1)。振と うおよび超音波処理によってリボソームを調製することができる。
[0108] 精製 HVJ (Ζ株)は、使用直前に 3分間 UV照射(1秒当たり 110エルダ Zmm2)し て不活性化した。リボソーム懸濁液 (0. 5ml、 10mgの脂質を含有する)を HVJ (総容 量 4mlの BSS中 10, 000血球凝集単位)と混合することができる。この混合物を 4°C で 5分間、そしてその後静かに振とうしながら 37°Cで 30分間インキュベートした。フリ 一の HVJはショ糖密度勾配遠心によって HVJ—リボソームから除去した。ショ糖勾配 の頂部層を集めて使用することができる。プラスミド DNAの最終濃度は、以前の報告 (J. Clin. Invest. 93, 1458— 1464 (1994)、 Am. Physiol. 271, R1212— 1 220 (1996) )に従って計算したとき、 20 /z gZmlと同等であった。この調製方法は、 最大のトランスフエクシヨン効率を達成するように最適化されて 、る。
[0109] 3)インビボ遺伝子導入
インビボでの効率的な遺伝子導入法を確立するために、我々は HVJ—リボソームと コンプレックスを形成したプラスミドを送達する 3つの異なる方法: 1)内頸動脈への直 接注入、 2)側脳室への注入、および 3)大槽 (クモ膜下腔)への注入を試験すること ができる。
[0110] 内頸動脈への注入では、雄スプラーグ 'ドウリーラット(350〜400g)をペントバルビ
タールナトリウム(50mgZkg、腹腔内)で麻酔し、そして左総頸動脈まで切開してポ リエチレンカテーテル(PE— 50、 ClayAdams,ニュージャージー州パーシツバ-一 )を左外頸動脈に導入することができる (Rakugi等)。遠位外頸動脈区域は一時的結 紮糸で短時間隔離した。 HVJ—リボソームコンプレックス(1ml)を外頸動脈区域に注 入した。注入後注入力-ユーレを除去し、そして結紮糸を緩めて総頸動脈への血流 を回復させることができる。
[0111] 側脳室への注入では、麻酔したラットを定位固定枠(Narishige Scientific Inst rument Laboratory, 日本国東京都)に置き、そして頭蓋を露出させることができる 。特別に設計したテフロン (登録商標)連結器 (FEP管、 Bioanalytical Systems, インディアナ州ウェストラファイアット)を有するステンレス鋼力-ユーレ(30ゲージ; Be cton Dickinson,ニュージャージー州フランクリンレイクス)を、文献(Am. J. Physi ol. 271, R1212— 1220 (1996) )に記載されているようにして左側脳室に導入する ことができる。定位固定座標は次のとおりのようにすることができる:ブレダマの後ろ 1 . 3mm、中線の側方 2. lmm、および頭蓋表面の下 3. 6mm。 HVJ—リボソームコン プレックスを側脳室に注入した(20 μ 1)。 HVJ—リボソームコンプレックスを注入した 後、注入力-ユーレを除去することができる。四肢の痙攣または異常運動のような挙 動変化は、注入を受けたどの動物でも観察されな 、ことを観察する。
[0112] クモ膜下腔への注入では、各動物の頭部を臥位に固定し、そして後頭骨頸中線切 開によって環椎後頭膜を露出させた。ステンレス鋼力-ユーレ(27ゲージ; Becton Dickinson,ニュージャージー州フランクリンレイクス)をクモ膜下腔に導入した。力二 ユーレの位置を確認しそして脳内圧の上昇を回避するために 100 1の脳脊髄液を 除去した後に、 HVJ—リボソーム溶液(100 1: 100 g/ml)を大槽 (クモ膜下腔) に 1分以上かけて注意深く注入した。その後、動物は 30分間頭部を下にして置いた 。予防的投与量の抗生物質 (30, 000Uのペニシリン G)を投与して無菌手順を完了 させることがでさる。
[0113] 4)記録
例えば、レーザードップラー画像化レーザードップラーイメージヤー (LDI)を使用し て、手術後 2週間に亘つて連続的血流測定を記録することができる。 LDIシステム(
Moore Instruments Ltd.、英国デボン)には、 12 X 12cmの糸且織表面を 600 mの深さまで連続的に走査する光線を発生させるために 2mWのヘリウム ネオンレ 一ザ一が組み込まれている。走査中に、血管系を移動する血球はドップラー原理に 従って投射光の振動数を変化させる。フォトダイオードは逆方向の散乱光を集めるの で、元の光強度の変動は 0〜: L0Vの範囲の電圧変動に転換される。 0Vの灌流出力 値を 0%の灌流に目盛り付けし、一方 10Vを 100%の灌流に目盛り付けすることがで きる。走査が終了しそして逆方向の散乱光が全ての測定部位から集められると、血流 分布を示す色分けされた画像がテレビモニターに表示される。灌流シグナルは 6つ の異なる区分に分けられ、そして各々は別個の色として表示される。血流量低下また は灌流無しは暗青色として示され、一方最大灌流は赤色として表示することができる
[0114] LDIを使用して、閉塞前、直後、 7日目および 14日目の脳表面の灌流を記録する ことができる。頭皮中線切開部を通して、電気ドリルで 12 X 12mmの骨窓を作ること ができる。この骨窓上で連続的測定値が得ることができる。色分けされた画像が記録 され、そして分析は各ラットについて灌流平均値を計算して実施した。周辺光や温度 を含む変数を考慮するために、灌流計算値は後 (虚血)対前 (非処置)の脳の比とし て表すことができる。
[0115] 5)組織病理学的検査
3%のパラホルムアルデヒド Z20%のショ糖溶液中で 1日間固定した後に、 X— gal 染色用に、 25 mの冠状面冷凍切片を 100 mごとに作製することができる。切片 を X— galで染色して /3—ガラタトシダーゼを発現している染色された-ユーロンを同 定することができる。アルカリホスファターゼ (ALP)染色用に、 25 mの冠状面冷凍 切片を 100 mごとに作製することができる。これらの切片を 0. 3%の過酸化水素を 含有する PBSと共にインキュベートして、内因性ペルォキーダーゼ活性を下げ、そし てその後、 10%のゥマ血清を有する PBS中で希釈した一次抗体またはレクチンと共 に室温で 60分間インキュベートすることができる。 2%のゥマ血清を含有する Tris緩 衝生理食塩液中で 3回洗浄した後、種に適するピオチン付加二次抗体、続いてアビ ジン一ビォチンペルォキシダーゼコンプレックス(Vectastain ABC kit, PK6100
、 Vector Laboratories,カリフォルニア州バーリンゲーム)をインキュベートすること ができる。抗体結合はジァミノべンジジンを使用して視覚化することができる。一次抗 体を省略し、そしてタイプおよびクラスに適合した無関係な免疫グロブリンで染色して 各抗体の陰性対照として使用することができる。
[0116] 6)脳脊髄液(CSF)中の HGFおよび VEGFに対する ELISA法
両側頸動脈の閉塞前並びに 7および 14日後のラットから得られた CSF ( 100 1)を これらの実験用に使用した。ラットおよびヒト HGFは ELISAキット(Institute of Im munology、東京都)で測定し、そしてヒト VEGFも ELISAキット(R&D systems, ミネソタ州ミネアポリス)で測定することができる。
[0117] 7)実験材料
ヒト HGFは、ヒトの HGFの cDNA (特許第 2577091号)を常法によりクローユングし 、これを発現ベクター pcDNA (インビトロゲン社製)に挿入したものを用いることがで きる。
[0118] ヒト VEGFは、ヒト VEGF165の cDNA(Science246, 1306 (1989) )を常法によ りクロー-ングし、これを発現ベクター pUC— CAGGSに挿入したものを用いることが できる。
[0119] ヒト組換え HGFは、ヒト HGFcDNA (特許第 2577091号)を発現ベクター pcDNA
(インビトロゲン社製)に挿入した組換え発現ベクターでチャイニーズノヽムスター卵巣 細胞 (ATCC)または C— 127細胞 (ATCC)をトランスフエクシヨンした後、その培養 培地から常法により精製したものを用いることができる。
[0120] 上記の材料および実験方法に基づき、本発明の投与を行うことができるがそれに限 定されない。
[0121] 本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、そ の全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援 用される。
[0122] 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきた力 本発 明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求 の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、
本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に 基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引 用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載さ れているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであるこ とが理解される。
実施例
[0123] 以下、実施例により、本発明の構成をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定 されるものではない。以下において使用した試薬類は、特に言及した場合を除いて、 東洋紡績 (大阪、 日本)など力も市販されているものを使用した。マウスなどは、 日本 クレア (神奈川、 日本)など力も入手した。動物の扱いは、大阪大学の倫理規定また は日本国政府が推奨する倫理規定に従った。
[0124] (実施例 1 :脳機能改善)
(方法)
(HVJ エンベロープベクターの調製)
HVJ エンベロープベクターを、公知の方法にもとづき調製した (Kaneda, Y.ら, Mol Ther 6, 219- 26 (2002) , Shimamura, M.ら, Biochem Biophys Re s Commun 300, 464— 71 (2003) )。簡単に! /、うと、ウイノレス懸淘物(15, 000赤 血球凝集単位)を UV照射(99miZcm2)により不活性ィ匕し、そしてプラスミド DNA ( 400 g)および 0. 3%Triton— Xと混合した。遠心分離後、これを lmlの平衡塩溶 液(BSS ; 10mM Tris-Cl pH7. 5、 137mM NaCl、 5. 4mM KC1)で洗浄し て界面活性剤および組み込まれな力つた DNAを除去した。遠心分離後、このェンべ ロープベクターを 100 μ 1のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した。このベクター を、使用するまで 4°Cで保存した。
[0125] (プラスミドの構築)
HGF発現ベクターを作製するために、ヒト HGF cDNA(2. 2kb)を、サイトメガロ ウィルス (CMV)プロモーター Zェンノヽンサ一を利用する真核生物発現プラスミドに 挿入した(Koike, H.ら, Faseb J5, 5 (2003)。このプロモーター/ェンハンサー を用いて、種々の細胞型においてレポーター遺伝子を発現させ、そしてそれは構成
的であるとみなせる。このコントロールベクターは、プロモーターを含むが HGF cD NAを含まない同一構造の発現ベクタープラスミドであった。プラスミドは、 QIAGEN プラスミド単離キット (Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した。作製した配 列は、配列番号 7 (pcDNA3.1(-)HGF)および配列番号 8 (pVAXIHGF/MGBl)に示 す。
[0126] (外科手順)
ウィスター雄ラット (270〜300g ; Charles River Japan, Atsugi, Japan)をこの 研究に使用した。永久 MCAoモデルを作成するために、以前に記載されたように、 ポリ L リジンコート 4 0ナイロンを MCA源の周囲に配置することにより、右中大 月 ¾動脈を閉塞した(Belayev, L.ら, Stroke 27, 1616— 22 ( 1996) )。簡単に言う と、動物に、フェイスマスクを用いてハロタン(70%N Oおよび 30%Oの混合物中に
2 2
1〜3. 5%)で麻酔した。フィードバック調節加熱パッドを用いて、直腸および頭蓋の 温度(Unique Medical, Tokyo, Japan)を、外科手順を通じて 37 ± 0. 5°Cで維 持した。手術用顕微鏡を用いて、右総頸動脈、右外頸動脈、および右内頸動脈を、 正中切開を通じて隔離した。右外頸動脈力も 4— 0ナイロンを挿入し、そして 20mm 押し込んだ。右外頸動脈は、 6— 0ナイロンで結紮した。
[0127] 公知の方法にもとづき、大槽内注入により、インビボ遺伝子移入を実施した (Shim amura, M.ら, 2003,前出)。簡単に言うと、ラットをケタミン(Sankyo, Japan)およ びキシラジン (Bayer Ltd, Japan)で麻酔した。各動物の頭をうつ伏せで固定し、そ して環椎後頭骨膜を、後部正中切開を通じて曝した。ステンレス製力-ユーレ(27ゲ ージ; Becton Dickinson)を大槽 (クモ膜下腔)に導入した。 100 1の脳脊髄液 (C SF)を除去した後に、ヒト HGFを含有する HJV エンベロープベクター(100 μ 1)を 5 0 1Z分の速度で注入した。次いで、この動物を、頭を下にして 30分間置いた。
[0128] (処置および行動試験のプロトコル)
行動試験のプロトコルの要約を、図 1に示す。 10匹のラットに麻酔のみを施し (擬似 手術)、そして 60匹のラットを MCAoに曝した (第 1日)。第 7日に評価した神経筋機 能および体重に基づき、これらのラットを、ビヒクル処置ラット (n= 23)または HGF処 置ラット (n= 23)に等分した。第 7日に麻痺症状を示さな!/、かまたは第 7日までに死
亡したラットをこの実験から除外した (n= 14)。第 55日に、生存ラット (ビヒクル処置ラ ットについては n= 20、 HGF処置ラットについては n= 22)において、神経筋機能お よび自発運動を評価した。次 、で、第 56日〜第 90日まで、 MWMおよび受動回避 学習により認知機能を試験した。第 96日に、 MRIを実施し、梗塞体積を評価した。
[0129] 第 14日および第 56日の組織病理学的分析のために、他のラット(各実験において 、ビヒクル処置ラット (n=4)または HGF処置ラット (n=4) )を上記と同様に処置し、そ して第 14日および第 56日に屠殺した。
[0130] (知覚運動障害)
知覚運動障害用に種々のノ ッテリーが存在するが、本発明者らは、以下のカテゴリ 一 (最大スコアは 4)を利用する知覚運動障害を評価するための簡単なプロトコルを 用いた(Petullo, D.ら, Life Sci 64, 1099— 108 (1999) )。前肢の屈折:ラット を、平坦面上に尾で固定した。前肢の麻痺を、左前肢の屈折の程度により評価した。 胴のねじれ:ラットを、平坦面上に尾で固定した。身体の回転の程度を調査した。側 方への押し:ラットを左力右いずれかに押した。右側に MCA閉塞を有するラットは、 左への押しに対する弱さを示した力または抵抗性がな力つた。後肢の配置: 1つの後 肢を表面力も取り除いた。右側に MCA閉塞を有するラットは、後肢を表面から取り除 V、た場合、後肢の配置が遅 、かまたは配置しな力つた。
[0131] (自発活動)
自発活動を、 自動活動ボックス(Muromachi Kikai, Tokyo, Japan)を用いて、 3 0分間のオープンフィールド試験を通じて測定した。
[0132] (モリスの水迷路学習)
直径 1. 5mの円柱タンクに水(25°C)を充填し、そして直径 15cmの透明なプラット ホームを、 4つの四分円弧のうちの 1つの中心の固定位置に置いた(O' HARA & CO. , LTD. , Tokyo, Japan) 0試験前に慣れさせるために、ラットを 1分間自由に 泳がせた。不可視プラットホーム試験においては、プラットホームを水面レベル以下 に設置し、そしてラットから見えないようにした。このプラットホームを 1つの四分円弧 に固定し、出発点を試験毎に変更した。以前の研究は、試験を 1日に 2度実施した場 合、 12〜14週前に MCAoに曝したラットとコントロールラットとの間で、セッションの 6
日目までプラットホームに到達する潜伏時間の差が存在しな 、ことを示して 、る(Mo do, Mら, J Neurosci Methods 104, 99— 109 (2000) )。これらの結果に基づ き、本発明者らは、 6日間、 1日に 2度試験を実施した。ラットがプラットホームに到達 できなかった場合、その潜伏時間を 60秒とした。可視プラットホーム試験において、 ラットから見えるように、プラットホーム上にフラッグを設置した。この試験を 6日間、 1 日に 2度実施した。この試験において、プラットホームおよび出発点を、実験毎に変 更した。これらの試験を通して、 CCDビデオカメラにより遊泳経路を撮影し、そして NI H画像により分析した。
[0133] (受動回避学習)
本実験において、ステップスルー型の受動回避学習を用いた。照明室および暗室 を有する装置(MEDICAL AGENT, Kyoto, Japan)を使用した。慣れさせるため に、ラットを照明室に入れ、そして暗室に入れるようにドアを開けておいた。ラットは喑 所を好むので、暗室に向力う習慣を有する。習得試験において、ラットを照明室に入 れ、そして暗室に入ったときに 6. 0mAのショックを足に与えた。各試験は、ラットが 3 00秒間、暗室に入らないことを学習するまで継続した。記憶試験において、習得試 験の 1、 3、 5、 7日後にラットを照明室に入れた。本発明者らは、ラットが照明室に滞 在する潜伏時間 (最大 300秒)を評価した。
[0134] (免疫組織化学)
免疫組織化学のために、ラットを屠殺し、そして通常の生理食塩水、次いで 4%パラ ホルムアルデヒドで経心腔灌流固定を行った。脳を取り出し、固定し、凍結保護処置 し、そして低温槽にて 12 mまたは 30 mに切断した。ブロッキング後、 3%通常の ャギ血清および抗 MAP2抗体(1 : 1000, Sigma -Aldrich, Saint Louis, MO, USA)、抗 GFAP抗体(1 : 1000、 318111&—八1(11: 11)、抗じ(1。4抗体2 (1 : 500、 Sa nta Cruz, CA, USA)中で、その後、抗マウス蛍光抗体(NAP2および GFAPに っ ヽて【ま1 : 1000、じ(1じ42にっ1ヽて【ま1 : 500、 八16 & Flour 488, Molecular P robes, USA)中で切片をインキュベートした。
[0135] 梗塞領域および対側領域における Cdc42およびシナプトフイシン(synaptophysi n)の免疫組織化学には次の抗体を使用した:抗 Cdc42抗体 (マウスモノクローナル;
Santa Cruz, CA, USA)および抗シナプトフイシン抗体(マウスモノクローナル; C hemicon, Temecula, CA, USA)。
[0136] (免疫組織化学のための定量分析)
GFAPの免疫反応性を定量ィ匕するために、取得した画像を Adobe Photoshop ( ノ ージョン 7. 0、 Adobe Systems, San Jose, CA, USA)にインポートした。その カラー画像を、グレースケール画像に変換した。これを、 Mac SCOPE (バージョン 2. 5、 MITANI CORPORATION, Fukui, Japan)にインポートした。 ROIを、梗 塞領域に隣接する大脳皮質の領域として設定した。シグナルが 25以上であったピク セル数を計数した。その免疫反応性を、次式:%領域 = [高シグナルのピクセル数] / [総ピクセル数]を用 、て算出した。
[0137] (ALP染色)
ALP染色のために、 Tris— HC1で切片を洗浄し、そして基質溶液 (AS— BIホスフ エート(Sigma— Aldrich)およびファーストレッドバイオレット LB塩(Sigma— Aldric h)の混合物)中で 30分間インキュベートした。
[0138] 各ラットにおける 5つの隣接する切片を観察し、そして得られた画像を Adobe Pho toshopにインポートした。そのカラー画像を、グレースケール画像に変換した。次い で、 ROIを梗塞周辺領域の領域として設定した。 Angiogenesis Image Analyzer (バージョン 1. 0、 KURABO, Tokyo, Japan)を用いて、血管の面積および長さを 分析した。
[0139] (磁気共鳴画像)
虚血体積の形態学的評価のために、高分解性 T2強調磁気共鳴画像 (MRI) (2D FSE、TR= 5000m秒、TE= 102m秒)を、3T MRIスキャナ(Sigma LX VA H/I, GE, Milwaukee, USA)を用いて得た。画像は、マトリクス 256 X 256 X 21 およびピクセルサイズ 0. 39 X 0. 39 X 1. 5mmで作製した。
[0140] (結果)
脳梗塞の重度を調査するために、第 96日に T2強調 MRIで全てのラットを観察した (図 1)。 T2強調画像力も算出した梗塞の総体積は、グループ間で差がなかったが( 図 2a)、脳梗塞のパターンは、 3のグループ:高強度領域が、皮質および脳幹神経節
に見られたグループ (A型)、皮質および脳幹神経節の一部に見られたグループ (B 型)、およびそれらよりも小さい領域で見られたグループ (C型)、に分けられた(図 2b 、 c)。本発明者らは、 MCAoモデルの多様性に基づく認知障害の多様性の可能性 を排除するため、本研究で A型ラットに注目した。本発明者らは、 A型ラットにおける 梗塞体積を再評価したが(図 2d、 n= 15 (べシクル処置ラット)、 n= 17 (HGF処置ラ ット);)、これらのグループの間に有意な差はなかった。
[0141] 知覚運動障害および自発運動は、認知機能の試験にある程度影響するため、それ らを試験した(DeVries, A. C.ら, Neurosci Biobehav Res 25, 325— 42 (20 01) )。知覚運動障害は、第 55日までに、両方のグループで、自発的にある程度回 復し、グループ間の差は見られな力つた(図 3a)。ラットの自発運動を測定する自発 運動試験(DeVries, A. C.ら,前出)において、 MCAoに供したラットは、以前に記 載されたように(Robinson, R. G.ら, Science 205, 707— 10 (1979) )、擬似手 術ラットと比較して増加した活動を示した力 ビヒクル処置ラットと HGF処置ラットとの 間に差はなかった(図 3b)。
[0142] 次に、モリスの水迷路 (MWM)を実施し、空間学習および記憶を評価した (DeVri es, A. C.ら,前出)。 MWMは、 MCAoに供した全ラットにおいて、ゴールまでの潜 伏時間の増加を示した力 この潜伏時間は、不可視プラットホーム試験において、 H GF処置ラットで徐々に減少した (図 4a)。視力喪失、知覚運動障害、および意欲の 結果への影響の可能性を排除するため(DeVries, A. C.ら,前出)、本発明者らは また、可視プラットホーム試験を実施した。 MCAoに供した全ラットにおいて、増加し た潜伏時間を観察したが、ビヒクル処置ラットと HGF処置ラットとの間に有意な差はな 力つた(図 4b)。この試験を通じて、ビヒクル処置ラットと HGF処置ラットとの間に、遊 泳速度の差は見られな力つた。従って、 HFG処置ラットにおいて、空間学習および 記憶は、部分的にではあるが有意に回復した。
[0143] 関連学習を測定するために使用した受動回避学習において (DeVries, A. C.ら, 前出)、 MCAoに供したラットは、この学習を習得するのにより多くの刺激を必要とし、 また、ビヒクル処置ラットと HGF処置ラットとの間に差はな力つた(図 5a)。しかし、記 憶試験における潜伏時間は、習得試験の 3日後まで、 HGF処置ラットの方が有意に
長かった(図 5b)。このことは、 HGF処置ラットが、ビヒクル処置ラットよりも長ぐ記憶 を維持し得ることを示す。従って、本発明の処置方法により、脳の機能改善が図られ ることが明らかになった。
[0144] 次に、本発明者らは、 HGF療法による機能回復の機構の調査を試みた。両グルー プにおいて、星状細胞マーカーである GFAPに対する免疫反応性は、第 14日およ び第 56日に梗塞周辺領域で増加した力 HGF処置ラットにおける免疫反応性は、 ビヒクル処置ラットと比較して、第 14日で有意に高ぐ第 56日目で有意に低力つた( 図 6、図 7a)。成熟ニューロンのマーカーである MAP2に対する免疫反応細胞は、両 グループにおいて梗塞周辺領域で減少した力 両グループの間に有意な差はなか つた(図 7b)。以前に記載されたように、全ラットの海馬において、 Cdc42 (Rhoフアミ リーの GTPaseの一種であり、ニューロン突起の伸長に対して正の効果を有する)に 対する免疫反応性を観察した (データは示していない) (O'Kane, E. M.ら, Brain Res Mol Brain Res 114, 1 8 (2003) )。両グループにおいて、大脳皮質の 梗塞周辺領域は、 Cdc42に対する免疫反応細胞を示したが(図 8a)、 Cdc42免疫反 応細胞の数は、 HGF処置ラットにお 、て有意に多力つた(図 8b)。
[0145] 第 14日および第 56日における梗塞周辺領域または対側領域の動脈を、 ALP染色 により調査した。梗塞周辺領域において、動脈は、第 56日の HGF処置ラットにおい て有意に増加していた(図 9)。また、定量分析により、 HGF処置グループの梗塞周 辺領域において、第 56日の動脈の領域が増加し、かつ動脈が長くなつていたことが 示された(図 10)。対側領域においては、第 14日および第 56日の両グループに差は なかった(図 10)。
[0146] 次に、脳梗塞 7日目にコントロール遺伝子、 HGF遺伝子を投与した。脳梗塞 14日目 にラットを屠殺し、神経突起伸長の際に発現する smaUGタンパクである Cdc42につい ての免疫染色と、 56日目にシナプスに発現するシナプトフイシン(synaptophysin)の 免疫染色を施行したところ、脳梗塞周囲において、いずれも HGF投与群で染色性が 増加していた(図 11)。
[0147] (考察)
本発明により、第 56日の HGF処置ラットにおいて、 MWMおよび受動回避学習の
結果が有意に良好であり、し力も梗塞の大きさおよびパターンに変化がな力つたこと が示された。以前の報告(Dijkhuizen, R. M.ら,前出, Zhang, L.ら, J Neurol Sci 174, 141— 6 (2000) )と同様、知覚運動障害は、 MCAoに供したラットにお いて自発的に回復し、これは、グループ間で有意な差を示さな力つた。以前のいくつ かの研究は、虚血障害後 1月以内で、知覚運動障害の回復に対して神経栄養因子 が有益な効果を生じることを示しているが(Kawamata, Tら, Proc Natl Acad S ci USA 94, 8179— 84 (1997) )、本研究【こお!/、て、第 56曰の障害 ίま、その違!、 が検出できる程度に大きくな力つた。また、 MWMにおける自発運動および可視ブラ ットホーム試験においても、有意な差が存在しなかった。これらの結果は、 MWMお よび受動回避学習の結果が、知覚運動障害または自発運動の差ではなぐ学習およ び記憶の差を反映していることを示唆している(DeVries, A. C.ら,前出)。本発明 者らは、得られた差が、大脳皮質の梗塞周辺領域の機能に依存していると考える。な ぜならば、 MWMにおける空間学習記憶および受動回避学習における記憶の維持 が見られな力 たことは、大脳皮質に対する損傷と関連しており(Yonemori, F.ら, J Cereb Blood Flow Metab 19, 483— 94 (1999) , Hirakawa, Mら, Stro ke 25, 2471— 5 (1994) )、かつ大脳皮質の梗塞周辺領域にいくらかの組織学的 な差が存在した力もである。最近の研究は、その機能的回復が、主に、梗塞半球の 皮質における活動の保護および回復と関連することを示しており(Dijkhuizen, R. M.ら,前出)、今回の結果は、最近の研究によっても支持されている。
最近の報告から、 HGFおよび c Metが、主に、 MCAo後 4〜28日後の梗塞周辺 領域において、星状細胞でアップレギュレートされること、ならびに虚血後の脳組織 の修復に関連することが明らかになつている(Nagayama, Tら,前出)。これらの観 点から、本発明者らは、梗塞周辺領域における組織学的変化に注目した。本実施例 において、星状細胞は、第 14日に活性ィ匕された力 第 56日には不活性ィ匕された。こ れは、虚血障害に対する BDNFの効果を示した以前の研究(Schabitz, W. R.ら, Stroke 35, 992— 7 (2004) )と類似する。言い換えると、星状細胞は、この障害の 急性期に一過的に活性化されたと言える。星状の活性ィ匕は、当初、軸索の成長を阻 害するグリア瘢痕の形成の一部と考えられていた (Eng, L. F.ら, Prog Brain Re
s 71, 439— 55 (1987) , Silver, Jら, Nat Rev Neurosci 5, 146— 56 (2004 ) )。しかし、別の報告では、一過的に活性ィ匕された星状細胞が、ニューロンの生存お よび軸索の成長を促進し得ることを示している(Albrecht, P. J.ら, Expo Neurol 173, 46— 62 (2002) )。本発明者らは、外因性の HGFが、星状細胞を一過的に 活性化し、軸索の成長を促進し、そして Zまたは軸索の成長を直接的に促進するが 、それらを増殖して星状細胞の瘢痕とすることはないと考える(Sun, W.ら,前出)。 この考察は、ニューロン細胞における突起の伸長に対して正の効果を有する(O'Ka ne, E. M.ら,前出)、 Cdc42に対する梗塞周辺領域における増強された免疫反応 性により支持されている。残念ながら、ニューロン細胞におけるインビボでの外因性 H GFによる Cdc42の誘導を示す報告は存在しないが、内皮細胞の HGF刺激は、糸 状偽足およびラメリポディウムの形成を伴って Cdc42を活性ィ匕することが報告されて いる(Royal, I.ら, Mol Biol Cell 11, 1709— 25 (2000) )。星状細胞と軸索成 長との間の相互作用に対する HGFの作用を明確にするためにはさらなる研究が必 要である力 可能性のある機能のひとつは、梗塞周辺領域における-ユーロンネット ワークの再形成により、 HGF処置ラットにお 、てより良 、結果が導かれ得ると!、うこと である。
別の可能性のある機構は、梗塞周辺領域における新脈管形成の影響であり得る。 新脈管形成の程度が機能的回復に関連するか否かは依然として不明であるが、最 近の報告は、皮質脳卒中周辺の側副枝の成長および新規の毛細管が、虚血の境界 領域における灌流の回復を支持し、かつラットにおける長期的回復を支持し得ること を実証している(Wei, L.ら, Stroke 32, 2179— 84 (2001) )。さらに、 tPA療法 を受け、早期に再疎通したもののすぐに臨床的改善が見られな力つた数人の患者が 、遅れて臨床的改善を示したことが報告されている(Alexandrov, A. V.ら, Strok e 35, 449 - 52 (2004) ) 0その著者らは、微小環境の改善による、「気絶した脳(st unned brain)」の回復が可能性のある機構のひとつであると推測している。この観 点では、梗塞周辺領域における微小環境の回復は、その結果に対していくらかの影 響を有し得、そして HGF処置ラットにおける動脈の増加が認知機能の回復を支持し 得る。
[0150] 大脳虚血に対する臨床用途において、遺伝子療法は、開始するタイミングが重要 である。ほとんどの以前の報告は、その障害の前またはその発症の数時間内に標的 遺伝子を注入することによる遺伝子療法の効果を示しており、それらの目的は、アポ トーシスおよび虚血病巣の拡大を阻害することであった(Shirakura, Mら, 2004, 前出, Shirakura, Mら, 2004,前出, Hayashi, Kら, 2001,前出, Yoshimuraら , 2002,前出, Zhang, W. R.ら, 2002,前出)。これまでの遺伝子療法に関する 研究と異なり、本発明者らの標的は、虚血障害の準急性〜慢性段階での-ユーロン ネットワークの再構成および新脈管形成である。重要なことは、本発明者らが、遅いタ イミングでの遺伝子療法により機能的回復を達成し得たことである。臨床用途にぉ 、 て、その障害の数時間内に標的遺伝子を投与することは不可能である。なぜならば、 標的遺伝子を含むベクターを調製し、成長因子を用いて遺伝子療法の前に悪性腫 瘍を排除することには時間が力かるからである。「7日間」は、ベクターを調製し、その 全般的状態を評価するのに十分な時間であるので、本実験は、遺伝子療法の臨床 用途への実現性を示したと言える。遺伝子療法の最良のタイミングを明確にするには
、さらなる研究が必要である。
[0151] 図 11に示す結果から、 HGFにより脳梗塞周囲の神経突起伸張が促進され新たな シナプス形成が行われた可能性が示され、脳機能の改善が実際に神経突起伸長、 シナプス形成などの神経の物理的変化によって支持されていることが明らかになった
[0152] まとめると、大脳虚血の 7日後の HGFの外的適用は、梗塞周辺領域における軸索 成長の促進、新脈管形成、およびダリオ一シスの阻害を通じてより良好な機能的成 果を生じる。臨床用途におけるベクターの安全面および代替の投与経路を評価する のにさらなる研究が必要である力 HGFを用いる遺伝子療法は、大脳虚血の処置に 、新たな治療的選択肢を提供し得る。
[0153] (実施例 2: VEGFでの脳機能回復例)
次に、他の細胞増殖因子での脳機能の回復を実験した。実施例 1の HGFに代えて 、 VEGF (配列番号 4)を使用した以外は、すべて、実施例 1に記載のように実験した 。ヒト VEGF165の cDNA (Science246, 1306 (1989) )を常法によりクローユング
し、これを発現ベクター pUC - CAGGSに挿入したものを用 、る。
[0154] その結果、同様に記憶機能および空間学習機能が改善していることが実証される。
[0155] (実施例 3 : FGFでの脳機能回復例)
次に、さらに他の細胞増殖因子での脳機能の回復を実験した。実施例 1の HGFに 代えて、 aFGF (配列番号 6)を使用した以外は、すべて、実施例 1に記載のように実 験した。 FGFは、科研製薬より入手可能である。
[0156] その結果、同様に記憶機能および空間学習機能が改善していることが実証される。
[0157] 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきた力 本発 明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求 の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、 本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に 基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引 用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載さ れているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであるこ とが理解される。
産業上の利用可能性
[0158] 本発明は、脳機能を改善するまたは悪ィ匕を予防するための医薬を製造する医薬品 業界などにおいて産業上の利用可能性を有する。