明 細 書
距離及び速度の測定方法及び装置
技術分野
[0001] 本発明は、 FMCW方式のレーダを用いて物体との距離及び速度を測定する方式 及び装置に関する。
背景技術
[0002] 一般に、対象物までの距離及び相対速度を測定するレーダとして FMCW方式の レーダが実用化されている。例えば、車載用レーダとして使用され、車の前方にある 車両を検出し、距離、相対速度、方位等を求め、これらの情報を基にして車両制御 や警報出力などを行なっている。
[0003] この FMCW方式は、連続波信号を FM変調した電波(以下、「発射波」 t 、う)を対 象物に対して放射して得られる反射波と発射波とを混合した時に生じるビート信号の 周波数 (以下、「ビート周波数」という)を測定し、反射波が戻ってくるまでの時間 (距 離に比例)とドップラー効果湘対速度に比例)で決まる 2種類のビート周波数カも距 離と相対速度を求める方式である。
[0004] 図 1 A (a)は、 FMCW方式における発射波及び反射波を示し、図 1 A (b)は、その 時のビート信号の波形を示して 、る。
図 1A (a)の実線は発射波を示し、破線は反射波を示している。また、同図に示す 反射波は、対象物が移動体である場合の反射波を示しており、ドップラー効果によつ て同図に示す矢印の方向に遷移した波形となっている。
[0005] 図 lA(b)は、図 1A (a)で示した発射波と反射波の混合によって得られるビート信 号を示し、一定周波数 bl (例えば、期間(1) )及び b2 (例えば、期間(2) )の区間を備 えている。
[0006] ここで、対象物までの距離を d [m]、光の速度を c [m/s]、図 1 A (a)に示した発射 波及び反射波の周波数変化の傾きを k[HzZs]とし、ドップラー効果を無視した場合 、図 lA(b)に示したビート周波数 bl、 b2は、次式より求まる。
[0007] bl =b2=k * A t=k* (2*dZc)
さらに、対象物との相対速度を v[mZs]として、ドップラー効果を加味すると、ドッブ ラー効果による周波数の変動は(2* vZc) *fOであることから、ビート周波数 bl、 b2 は、次式より求まる。
[0008] bl = (2*kZc) *d+(2*fOZc) *v ··· (la)
b2 = (2*kZc) *d— (2*fOZc) *v ··· (lb)
ここで、簡単のために、
D = (2*kZc) *d、 V=(2*fOZc) *v ··· (2)
とすると、式(la)、(lb)は、
bl = D+V ··· (3a)
b2 = D-V ··· (3b)
となり、式(3a)、(3b)を解くことにより D及び Vが下記の様に求められる。
[0009] D = (bl+b2)/2 ··· (4a)
V = (bl-b2)/2 ··· (4b)
特許文献 1には、 FM— CW波を発射波として車両前方に送信し、反射波から得るビ ート信号を周波数分析して前方車両との車間距離を測定する装置において、前方車 両が複数存在しても正確な変調周波数のピークの組み合わせを見出して車間距離 及び速度の測定を行なう装置につ!、て開示されて!、る。
[0010] また、特許文献 2には、複数の測定対象が存在する場合に、個々の距離、相対速 度を決定することのできる連続波レーダ、距離速度測定装置、周波数変調方法につ いて開示されている。
特許文献 1:特開平 07 - 020233号公報
特許文献 2:特開 2001—337160号公報
発明の開示
[0011] しかし、ビート周波数は、発射波と反射波との差の絶対値として取得されるので、取 得したビート周波数にはその符号についての情報が含まれていない。したがって、そ の符号については考慮されていな力つた。実際に、式(3a)、(3b)においては、 D> I V Iという関係を前提として D及び Vが求められていた。
[0012] その結果、対象物までの距離及び相対速度が一定の条件 (D> I V I )を満たす
場合以外は、正確な距離及び相対速度を求めることができな 、と 、う問題があった。 例えば、 Dに比べて I V Iが大きい場合、すなわち、近距離に存在する対象物が 大きな相対速度で移動する場合には、正確な距離及び相対速度が求められないと いう問題があった。
[0013] 本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しょうとする課題は 、対象物までの距離と相対速度との関係に依存することなぐ正確な距離及び相対 速度を求めることを可能とする距離と速度の測定方法及び装置を提供することである
[0014] 上記課題を解決するために、本発明に係る FMCW方式レーダを用いた距離及び 速度の測定方法は、 3つ以上の周波数変化のパターンを備える波形パターンを生成 する波形パターン生成処理と、該波形パターン生成処理によって生成された波形パ ターンを周波数変調して発射波を生成し、該発射波を送信する送信処理と、前記発 射波が対象物に反射した反射波を受信する受信処理と、前記発射波と前記反射波 とを混合して前記パターンに対応するビート周波数を取得するビート周波数取得処 理と、該ビート周波数は前記反射波の時間遅れに基づく第 1の周波数成分とドッブラ 一効果に基づく第 2の周波数成分との和又は差の絶対値であるという関係力 前記 対象物の距離及び相対速度を算出する距離及び速度算出処理と、を備えることを特 徴とする。
[0015] 距離及び速度算出処理において、ビート周波数取得処理によって得られる各ビー ト周波数が前記反射波の時間遅れに基づく第 1の周波数成分 (D)とドップラー効果 に基づく第 2の周波数成分 (V)との和又は差の絶対値に等 、と 、う関係から対象 物の距離及び相対速度を算出するので、従来前提条件としていた D> I V Iという 制約条件に拘束されることなく正確な距離及び相対速度を求めることが可能となる。
[0016] また、本発明に係る FMCW方式レーダを用いた距離及び速度の測定方法は、前 記距離及び速度算出処理において、前記 3つの周波数変化のパターンの傾きを kl 、 k2、及び k3、中心周波数を fO、光速を cとした場合に、第 1のビート周波数 bl及び 第 2のビート周波数 b2及び第 3のビート周波数と前記第 1の周波数成分及び前記第 2の周波数成分との関係式
bl = I (2水 kl/c)水 d+ (2水 fO/c)水 v I
b2 = I (2 *k2Zc) * d+ (2 * fOZc) *v I
b3 = I (2水 k3/c)水 d+ (2水 fO/c)水 v I
から前記対象物の距離及び相対速度と特定する特定処理と、を備えてもょ ヽ。
[0017] これにより、前記候補算出処理において、従来前提条件としていた D> I V Iとい う制約条件に拘束されることなく対象物の距離 d及び相対速度 Vの解候補を算出する ことができ、さらに、特定処理において正しい対象物の距離 d及び相対速度 Vの解を 特定することが可能となる。
[0018] また、本発明に係る FMCW方式レーダを用いた距離及び速度の測定方法は、前 記波形パターン生成処理において、上昇部と下降部と一定部の 3つの周波数変化 のパターンを備える波形パターンを生成し、前記算出処理において、第 1のビート周 波数は前記第 1の周波数成分と前記第 2の周波数成分との和の絶対値であり、第 2 のビート周波数は前記第 1の周波数成分と前記第 2の周波数成分との差の絶対値で あるという関係から、前記第 1の周波数成分と前記第 2の周波数成分の解候補を算 出する候補算出処理と、第 3のビート周波数は前記第 2の周波数成分の絶対値であ るという関係に基づいて、前記候補算出処理によって算出した解候補から解を特定 し、該特定した前記第 1の周波数成分及び前記第 2の周波数成分から前記対象物の 距離及び相対速度を算出する特定処理と、を備えてもよい。
[0019] さらに、周波数の上昇と下降の傾きの絶対値を同じにして、前記候補算出処理に おいて、前記第 1のビート周波数 bl及び前記第 2のビート周波数 b2、前記第 1の周 波数成分 D及び前記第 2の周波数成分 Vについての関係式
bl = I D+V I
b2= I D-V I
を解くことによって解候補を算出し、前記特定処理は、前記第 3のビート周波数 b3に ついての関係式
b3= I V I
と前記解候補との距離が最小となる解候補を前記対象物の距離及び相対速度と特 定してちよい。
[0020] また、前記受信処理によって 2つの反射波を受信した場合にぉ 、て、前記特定処 理は、 D— V平面上において前記解と特定する 2つの解候補を通る 4本の直線の D軸 又は V軸における切片の値力 前記ビート周波数取得処理によって取得する 4つの ビート周波数と一致することを制約条件としてもよい。 これにより、前記受信処理で 受信した 2つの反射波力 ビート周波数取得処理によって取得する 4つのビート周波 数に基づいて前記候補算出処理によって得られる解候補から正しい 2つの解を特定 することが可能となる。
さらに 2つ以上の反射波があった場合においては、前記特定処理は、 D— V平面上に おいて前記解と特定する複数の解候補を通る直線群の D軸又は V軸における切片 の値が、前記ビート周波数取得処理によって取得する複数のビート周波数をすベて 網羅することを制約条件としてもよい。 また、本発明は、 3つ以上の周波数変化のパ ターンを備える波形パターンを生成する波形パターン生成部と、該波形パターン生 成部によって生成された波形パターンを周波数変調して発射波を生成し、該発射波 を送信する送信部と、前記発射波が対象物に反射した反射波を受信する受信部と、 前記発射波と前記反射波とを混合して前記パターンに対応するビート周波数を取得 するビート周波数取得部と、該ビート周波数は前記反射波の時間遅れに基づく第 1 の周波数成分とドップラー効果に基づく第 2の周波数成分との和又は差の絶対値で あるという関係力 前記対象物の距離及び相対速度を算出する距離及び速度算出 部と、を備えることを特徴とする FMCW方式レーダを用いた距離及び速度の測定装 置であってもよい。
[0021] 以上のように、本発明によると、対象物までの距離と相対速度との関係に依存する ことなく、正確な距離及び相対速度を求めることを可能とする距離と速度の測定方法 及び装置を提供することが可能となる。
図面の簡単な説明
[0022] [図 1A]FMCW方式における発射波、反射波、及びビート信号の従来例を示す図で ある。
[図 1B]本発明の実施例に係る FMCW方式レーダの機能ブロックを示す図である。
[図 2]本実施例に係る FMCW方式レーダの発射波、反射波、及びビート信号を示す
図である。
[図 3]制御部における距離及び速度算出部の処理を示すフローチャートである。
[図 4A]bl >b2の場合における式(5a)— (5c)の関係の例を表わす図である。
[図 4B]bl≤b2の場合における式(5a)—(5c)の関係の例を表わす図である。
[図 5]従来例で対象としていた領域と本発明で対象としている領域との関係を示す図 である。
[図 6A]反射波を 2つ受信した場合の式(5a)— (5c)の関係の例を示す図である。
[図 6B]反射波を 2つ受信した場合の式(5a)—(5c)の関係の例を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
[0023] 以下、本発明の実施形態について図 1Bから図 6Bに基づいて説明する。
図 1Bは、本発明の実施例に係る FMCW方式レーダの機能ブロック図を示している 同図に示すレーダは、対象物に対して発射波を送出する送出部 1と、対象物からの 反射波を受信してビート信号を生成する受信部 2と、発射波の波形パターン生成や ビート信号カゝら対象物との距離や相対速度等の算出を行なう制御部 3とを少なくとも 備えている。
[0024] 送出部 1は、 DZA変換部 4と VCO (電圧制御発信装置) 5と送出アンテナ 6とを少 なくとも備えており、波形パターン生成部 10で生成される例えば三角波データは、 D
ZA変換部 4によって周波数変調及びアナログ変換されて VC05に出力される。
[0025] VC05は、 DZA変換部 4によって周波数変調された信号力 発射波を生成し、送 信アンテナ 6を介して対象物に送出することとなる。
受信部 2は、受信アンテナ 7と混合部 8と AZD変換部 9とを少なくとも備えており、 対象物からの反射波は、受信アンテナ 7によって受信されて混合部 8に出力される。
[0026] 混合部 8は、 VC05で生成された発射波と受信アンテナ 7によって受信した受信波 とを混合してビート波を生成し AZD変換部 9に出力する。そして、 AZD変換部 9〖こ よってデジタルィ匕されたビート信号は制御部 3に出力される。
[0027] 制御部 3は、波形パターン生成部 10と、候補算出部 12及び特定処理部 13で構成 される距離及び速度算出部 11と、を少なくとも備えて ヽる。
波形パターン生成部 10は、送出部 1によって送出する波形パターンのデータを生 成して DZA変換部 4に出力する。また、距離及び速度算出部 11を構成する候補算 出部 12は、 AZD変換部 9からのビート信号に基づいて対象物との距離及び相対速 度の解候補を算出し、さらに特定処理部 13によって、解候補の中から最適な解 (距 離及び相対速度)を特定する。
[0028] 図 2 (a)は、本実施例に係る FMCW方式レーダの発射波及び反射波を示して 、る 同図に示す発射波は、図 1Bに示した VC05の出力波形を示しており、同図に示す 反射波は、図 1Bに示した混合部 8への入力波形を示している。
[0029] また、同図に示す発射波は、図 2 (a)に示すような発射波、すなわち、期間(1)の上 昇部、期間(2)の下降部、及び期間(3)の一定部の 3つのパターンから成り、制御部 3を構成する波形パターン生成部 10が生成した波形パターンのデータを DZA変換 部 4を介してアナログ変換し、さらに VC05を介して得られる。
[0030] 一方、同図に示す反射波は、送出部 1から送出された発射波が、対象物に反射し て受信アンテナ 7で受信されることによって得られる受信波である。
図 2 (b)は、図 2 (a)における発射波と受信波力 得られるビート信号の周波数を示 している。
[0031] 同図に示すビート信号は、図 2 (a)で示した VC05の出力波形 (発射波)と、当該発 射波が対象物に反射して得られる反射波とを混合部 8で混合することによって得られ 、期間(4)のビート周波数 bl、期間(5)のビート周波数 b2、及び期間(6)のビート信 号周波数を備えている。
[0032] 同図に示すビート信号は、 AZD変換部 9に出力されてデジタルィ匕された後に、制 御部 3に出力される。
そして、制御部 3を構成する距離及び速度算出部 11において、ビート周波数 bl、 b 2、及び b3に基づいて対象物との距離及び相対速度を算出することとなる。
[0033] 図 3は、制御部 3における距離及び速度算出部 11の処理を示すフローチャートで ある。
制御部 3に AZD変換部 9からの入力信号 (ビート信号)が入力されると、ステップ S
301において、制御部 3は、入力されたビート信号について FFT等の処理を行なつ て図 2(b)に示した期間(4)一(6)のビート周波数 bl、 b2、及び b3を取得する。
[0034] ビート周波数が取得されると、ステップ S 302に処理を移行し、候補算出部 12によ つて、取得したビート周波数力 対象物の距離及び相対速度を算出する。
ここで、ビート周波数 bl、 b2、及び b3は、対象物までの距離を d[m]、光の速度を c [mZs]、図 2 (a)に示した発射波及び反射波の変調の傾きを k[HzZs]、対象物と の相対速度を v[mZs]とすると、
bl = I (2*kZc) *d+(2*fOZc) *v I
b2 = I (2*kZc) *d— (2*fOZc) *v I
b3 = I (2水 fO/c)水 v I
となり、式(2)を用いることによって、式(5a)、式(5b)、及び式(5c)が得られる。
[0035] bl = I D+V I ··· (5a)
b2 = I D-V I ··· (5b)
b3 = I V I ··· (5c)
まず、候補算出部 12は、式 (5a)及び式 (5b)力 D及び Vの解候補を算出する。す なわち、式(5a)及び式(5b)は、 D及び Vの関係から、 D> I V Iの場合は、
D = (bl+b2)/2
V = (bl-b2)/2
となり、 D<Vの場合は、
D = (bl-b2)/2
V = (bl+b2)/2
となる。さらに、 Dく一 Vの場合は、
D = (-bl+b2)/2
V = (-bl-b2)/2
となる。
[0036] 以上の場合において、 Dは対象物までの距離に比例した値であるので負とは成り 得ないこと力も bl及び b2の大小関係力も以下の 2つの場合に解が絞られ、 bl >b2 の場合は、
D = (bl+b2)/2 • · · (6a)
V = (bl-b2)/2 • · · (6b)
又は、
D = (bl-b2)/2 • · · (7a)
V = (bl+b2)/2 • · · (7b)
となり、 bl≤b2の場合は、
D = (bl+b2)/2 • · · (8a)
V = (bl-b2)/2 • · · (8b)
又は、
D = (-bl+b2)/2 • · · (9a)
V = (-bl-b2)/2 • · · (9b)
となる。
[0037] したがって、候補算出部 12は、ステップ S301で取得したビート周波数 blと b2を比 較し、 bl>b2の場合には、式(6a)及び(6b)、式(7a)及び(7b)を用いて(D, V)の 解の候補を算出する。
[0038] また、ビート周波数 blと b2とが bl≤b2の場合には、式(8a)及び(8b)、式(9a)及 び(9b)を用いて (D, V)の解の候補を算出する。
解の候補の算出処理が完了すると、処理をステップ S303に移行し、特定処理部 1 3によって、ステップ S302で算出された解の候補力も最適な (正しい)解を特定する 処理を行なう。ただし測定誤差により 3直線は一般に 1点で交わらないので、式(5c) の直線により近い交点を採用する。
[0039] すなわち、 bl>b2の場合は、式(6b)と式(7b)を使って、
δ 1 = | (bl-b2)/2-b3 I
δ 2 = | (bl+b2)/2-b3 I
を計算し、 δ ΐぐ δ 2の場合には、式 (6a)及び (6b)によって求められる(D, V)を解 と特定し、 δ 1> δ 2の場合には、式(7a)及び(7b)によって求められる(D, V)を解 と特定する。
[0040] 同様にして、 bl≤b2の場合は、
δ 1 = I (bl-b2)/2+b3 I
δ 2 = | (-bl-b2)/2+b3 I
を計算し、 δ ΐぐ δ 2の場合には、式 (8a)及び (8b)によって求められる(D, V)を解 と特定し、 δ 1> δ 2の場合には、式(9a)及び(9b)によって求められる(D, V)を解 と特定する。
[0041] 以上の処理によって、(D, V)が算出されると、式(2)から対象物の距離 d及び相対 速度 Vを算出して処理が終了する。
図 4Aは、 bl >b2の場合における式(5a)— (5c)の関係の例を表わす図である。
[0042] 同図には、式(5a)力 得られる
bl = D+V、
bl = -D-V
と、式(5b)力 得られる
b2 = D-V,
b2 = -D+V
とが示されており、 D>0であることを考慮すると、候補算出部 12の図 3で示したステ ップ S302の処理によって交点(1)及び交点(2)が(D, V)の解の候補として算出さ れる。
[0043] さらに、同図には、式(5c)力 得られる
b3 = V
b3 = -V
が示されており、特定処理部 13の図 3で示したステップ S303の処理によって交点(1 )及び交点(2)から交点(1)が(D, V)の解と特定される。
[0044] 図 4Bは、 bl≤b2の場合における式(5a)—(5c)の関係の例を表わす図である。
同図ついても、図 4Aと同様に、式(5a)力 得られる
bl = D+V,
bl = -D-V
と、式(5b)力 得られる
b2 = D-V,
b2 = -D+V
とが示されており、 D>0であることを考慮すると、候補算出部 12の図 3で示したステ ップ S302の処理によって交点(3)及び交点 (4)が(D, V)の解の候補として算出さ れる。
[0045] さらに、同図には、式(5c)力 得られる
b3 = V
b3 = -V
が示されており、特定処理部 13の図 3で示したステップ S303の処理によって交点(3 )及び交点 (4)から交点(3)が(D, V)の解と特定される。
[0046] 図 5は、従来例で対象としていた領域と本発明で対象としている領域との関係を示 す図である。
従来は、式(3a)及び式(3b)において、 D> I V Iの関係を前提としていたので、 同図に示す (D, V)の領域(1)のみを対象として解を求めて ヽた。
[0047] したがって、例えば、本来の解が交点(5)であった場合でも、従来例では交点(6) を解として算出していた。同様に、本来の解が交点(7)であった場合でも、従来例で は交点(8)を解として算出して 、た。
[0048] すなわち、対象物までの距離及び相対速度が D> I V I の条件を満たさない場合 には、正確な距離及び相対速度が求められな 、と 、う問題があった。
例えば、本来の解が交点(5)又は交点(7)であった場合に、交点(6)又は交点(8) を解として算出すると、本来の距離よりも遠い距離、本来の相対速度より小さい速度と 誤認することとなり、走行車両の前方にある車や障害物の検知を目的とする場合のよ うに、対象物が近距離 (D)かつ相対速度( I V I )が大きいような危険な状況を見逃 すという問題がある。
[0049] 一方、本発明に係る実施例では、図 3で示したように、 D≤ I V I の場合について も考慮して解を特定している。すなわち、図 5に示す (D, V)の領域(1)一(3)を対象 として解を求めているので、対象物までの距離 (D)と相対速度( I V I )との関係に 依存することなぐ正確な距離及び相対速度を求めることが可能となる。
[0050] 例えば、本来の解が交点(5)であった場合には、交点(5)を解として算出すること
が可能となるので、従来のように本来の距離よりも遠い距離、本来の相対速度より小 さ 、速度と誤認することを防止することが可能となる。
[0051] また、従来方式でも周波数変化の傾き kを大きくとれば Dが大きくなり、 D< I V I の状態を起きにくくできるが、完全に Dく I V Iを排除できない上、ビート周波数の 分布範囲が広がり(ビート周波数の最大値は D+ I V Iの最大値であるため Dの最 大値が大きくなると一緒に大きくなる) FFT等の周波数解析処理の負荷 (計算量や計 算に使用するメモリ容量など)が大きくなる欠点がある。本方式では kが小さくても正し い解が求まるのでビート周波数の分布範囲が狭く押さえることができ、周波数解析の 負荷が小さくできる。
[0052] 車載用を想定して具体的に計算してみる。仮に fOとして一般的な 75GHz、測定距 離範囲を 10m— 200m、相対速度範囲を- 60mZs—" h30mZs (時速 216Km—" l· 108Kmに相当)とする。相対速度の 側は対向車の存在を考えて大きい値とした。
[0053] 従来方式で正しく計算できるためには、 Dの最小値≥ I V I最大値が必要。
式 (2)から、
(2*kZc) * (dの最小値)≥ (2 * f0/c) * ( I V Iの最大値)
これ力ゝら、
k ≥ fO * ( I V Iの最大値) / (dの最小値)
= 75GHz * (60m/s) / (10m)
= 450GHz/s
ビート周波数の最大値 bmaxは
bmax = Dの最大値 + | V |の最大値
= (2*kZc) * (dの最大値)
+ (2 * f0/c) * ( I V Iの最大値)
= (2/c) * (450GHz/s * 200m + 75GHz * 60m/s)
= 630KHz
となる。(光速 c = 3 * 108mZsとした)
一方、本発明では kは原理的に 0以上の値であればよい。ただし、 kが 0に近ければ 求まる距離の精度が悪くなるので、そこに注意して kを決めれば良い。
[0054] 今、 Dの最大値が I V Iの最大値と同じ程度になるように設計すれば dと vの精度が ほぼ均衡すると考えられる。そこで Dの最大値 = | V |の最大値として
k=fo*( | V |の最大値)/ (dの最大値) = 22. 5GHz/s
としてみる。すると、ビート周波数の最大値は
bmax = (2 * k/c) * (dの最大値)
+ (2*f0/c) * ( | V |の最大値)
= (2/c) *(22. 5GHz/s*200m +75GHz*60m/s) = 60KHz
となり、従来方式の 630KHzに比べ 10分の 1以下で済むことが分かる。
[0055] ビート周波数が高!、周波数まで分布して 、ると、その分周波数分析の計算量ゃメ モリ量の増大になる事は明白である。(良く知られているように周波数が 10倍では離 散フーリエ変換で 102= 100倍、高速フーリエ変換でも lOlog 10 = 33倍の計算量増
2
加になる。 )
し力も従来方式では 0— 10mの距離にある物体力もの反射波に対して正しい距離 と相対速度が求まるとは限らないが、本発明ではその領域でも常に正しく求まる。
[0056] 以上の説明において、波形パターン生成部 10によって生成される発射波は、式(5 a)—(5c)で示した波形に限定するものではない。すなわち、 3つの異なる周波数変 化パターンを有していればよぐこの時の周波数変化の傾きを kl、 k2、及び k3とする と、ビート信号は、
bi = I (2*kiZc) *d+(2*fOZc) *v I
= (2*f0/c) I (ki/fO) *d+v I
と表わすことができ、 ai=kiZfOとおくと、
bi = (2*f0/c) I ai*d+v I ··· (10)
となる。ただし、 i=l、 2、 3。
[0057] ここで、 1, a 2, a 3) = (k/fO, -k/fO, 0)とすれば式(5a)、 (5b)、 (5c)とな ることがゎカゝる。
また、式(10)において、 i=l, 2について
bi = (2*fOZc) i*d+v)
bi = —(2*fOZc) i*d+v)
を vについて解くと、
v = ai*d+(cZ(2*fO)) *bi
v = ai*d— (cZ(2*fO)) *bi
となる。これは 2本の平行線が 2組、計 4本の直線力 なるので、
V = —a2*d+(cZ(2*fO)) *b2
v = —al*d+(cZ(2*fO)) *bl
の交点と、
v = —a2*d+(cZ(2*fO)) *b2
v = al*d— (cZ(2*fO)) *bl
の交点と、
v = a2*d— (cZ(2*fO)) *b2
v = —al*d+(cZ(2*fO)) *bl
の交点と、
v = a2*d— (cZ(2*fO)) *b2
v = al*d— (cZ(2*fO)) *bl
の交点、 4点が求められる。
[0058] すなわち、候補算出部 12においてこの 4交点を実際に計算すると
dl= cZ(2*fO(al—a2)) * (bl— b2)
d2= cZ(2*fO(al— α2)) * (bl+b2)
vl= c/(2*f0(al-a2)) * (b2* al— bl* a 2)
v2= c/(2*f0(al-a2)) * (b2* αΐ+bl* a 2)
として
(dl、 vl)、(d2、 -v2)、(— dl、— vl)、(— d2、 v2)
という解候補を算出することができる。
[0059] さらに、特定処理部 13において、 d<0の解を除外すると、解は 2つに絞られる。そ して、残った 2点と、下記の 2直線
V = —a3*d+(cZ(2*fO)) *b3
v = a3*d— (cZ(2*fO)) *b3
との関係によって 1点を決定すれば解を特定することができる。
[0060] 例えば、 d>0の解が(d, V) = (dl, vl)、 (d2, i2)であったとすると、 2直線との v 成分の距離を下記の式力 算出し、
δ 11 = I vl+ a3*dl— (cZ(2*fO)) *b3 I
δ 12 = I vl+ a3*dl+(cZ(2*fO)) *b3 I
621 = I v2+ a3*d2— (cZ(2*fO)) *b3 I
622 = I v2+ a3*d2+(cZ(2*fO)) *b3 I
min( δ 11, δ 12)<min( δ 21, δ22)の場合には、(dl, vl)を解と特定し、 min( δ 11, δ 12) >min( δ 21, δ 22)の場合には、 (d2, v2)を解と特定すればよい。 この過程は、 3組の平行直線,計 6本の直線から 3本の直線を選択する事に対応して いる。
[0061] さらに精度を高めるために、選ばれた 3直線で囲まれる 3角形の重心点の座標を解 としても良い。
式(10)にお 、て、 i= 1の場合の直線と i= 2の場合の直線と i= 3の場合の直線に 平行線が含まれると交点が定まらなくなるので、互いに異なる傾きに設定する必要が ある。例えば互!、に等 、角度で交差するように ex i (ki)を決定すれば良!、。
[0062] 以上に説明した本実施例は、複数の対象物からの反射波があった場合にも有効で ある。以下に、複数の対象物からの反射波があった場合の距離及び相対速度の算 出処理について図 3に示したフローチャートに基づいて説明する。
[0063] なお、以下では周波数変化パターンの一番単純なケースとして図 2で示した発射波 と同様の周波数変化パターンを波形パターン生成部 10で生成して送出し、受信部 2 (受信アンテナ 7)で反射波を 2つ受信した場合について説明するが、これに限定す る趣旨ではない。
[0064] ステップ S301において、受信アンテナ 7で受信した 2つの反射波と発射波とを混合 部 8で混合して生成したビート周波数をそれぞれ b 11 (周波数上昇時)、 bl2(周波数 上昇時)、 b21(周波数下降時)、及び b22(周波数下降時)とすると、式 (5a)、 (5b) 力 以下に示す 8本の直線を得る。
[0065] すなわち、式(5a)力 得られる
bll = D V .·· (11a)
bll = — D- -v ··· (lib)
bl2 = D V ··· (11c)
bl2 = — D- -v ··· (lid)
と、式(5b)力 得られる
b21 = D-V ··· (lie)
b21 = -D+V ··· (llf)
b22 = -D+V ··· (llh)
の合計 8本の直線である(図 6A及び図 6Bに示す直線(1 la)—(1 lh) )。 ビート周 波数を取得すると、制御部 3は処理をステップ S302に移行し、候補算出部 12によつ て、式(11a)—(llh)力 解候補の算出処理を行なう。すなわち、候補算出部 12に よって、式(11a)—(llh)で表わされる直線の D>0における交点を算出する。本実 施例では、例えば、図 6Aに示すように、交点(10)—(17)の 8つの交点を取得される 。すなわち、 8つの (D, V)の解候補が算出される。
[0066] ここで、従来は、図 5で示した領域(1)のみを対象としているので、解候補として交 点(10)、 (11)、 (14)、及び(15)の 4点のみしか得られないのに対して、本発明の 実施例においては、図 5で示した領域(1)一(3)を対象としているので、交点(10)— (17)の 8点を解候補として取得することができ、最適な (正しい)解候補を特定するこ とが可能となる。
[0067] ステップ S302の処理によって解候補の算出が完了すると、処理をステップ S303に 移行し、特定処理部 13によって、ステップ S302で算出された解の候補力も最適な解 を特定する処理を行なう。
[0068] 例えば、ステップ S301にお 、て取得した無変調部 (周波数一定部)のビート周波 数を b31、 b32とすると、ステップ S302の処理によって算出した交点(10)—(17)の Vの値が士 b31又は士 b32にそれぞれ一致する交点を 2つ選び出し、この 2点(D, V )を解と特定すればよい。
[0069] 実際には誤差があり完全に一致しないので、例えば、士 b31と交点(10)—(17)の 距離 (誤差)が最小である交点、士 b32と交点(10)—(17)の距離 (誤差)が最小とな る交点をそれぞれ選び出し、この 2点(D, V)を解と特定すればよい。
[0070] ここで、距離が最小となる交点を解と特定する場合には、選び出した 2点をそれぞ れ通る計 4本の直線の D軸若しくは V軸における切片の絶対値が bl l、 bl2、 b21、 b 22の 4つを網羅しなければならないという制約条件を、特定処理部 13における解の 特定処理の条件とすることによって、間違った組み合わせを選び出すことを防止する ことができる。
[0071] 例えば、図 6Aにおいて、特定処理部 13は、士 b31と交点(10)—(17)の誤差をそ れぞれ算出し、誤差が最小である交点(14)を選び出す。この時、交点(14)は、 bl2 と b22を網羅しているので、もう一つの交点は、 bl lと b21を網羅しなければならない 。 したがって、もう一つの特定すべき交点は、交点(11)又は(12)のみとなり、士 b3 2との誤差が最小である交点(12)が選び出される。
[0072] この例では最初に士 b31を使って交点を決定した力 最初に士 b32を使って交点 を決定して、残りを士 b31を使って決定しても良い。さらにより精度を上げるために、こ の 2通りの決定方法のうち誤差が小さいほうの解を最終的に選んでも良い。
[0073] 実際の運用では、ビート周波数が縮退していることがありうる。例えば、 b21と b22が 偶然周波数が近ぐ周波数分析の結果一つのビート周波数として検出される場合等 である。また反射波が微弱すぎて 3つのビート周波数がすべて検出できな 、ケースも ある。また外来ノイズ等で本来ありえないビート周波数が検出される場合もあるが、そ の場合でもビート信号の強度を使って縮退の可能性やノイズの可能性を考慮する等 して候補を絞ることが可能である。具体的には例えば相対的に電界強度の強 、ビー ト信号は縮退の可能性ありとして 2つに分けて距離と相対速度の組み合わせを仮に 求める、電界強度の弱いビート信号についてはノイズと見なして除去した上で距離と 相対速度の組み合わせを仮に求める等、いくつかのケースを網羅的に試行し、距離 と相対速度の組み合わせ決定時の誤差が最も小さ力つたケースを採用すれば良い。 (3つのビート信号が全て捕捉できていないケースも、その物体に関して検出されたビ ート信号はノイズであると見なせる)。